説明

銅回路配線基板およびその製造方法

【課題】微細な配線を有する銅配線基板およびその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の銅配線基板は、絶縁基板と、該絶縁基板に形成された複数の配線溝と、該配線溝に充填された配線と、を備えた配線基板であって、前記配線のうち任意の2つを選択し、前記配線の電流方向に対して直角に断面を取る場合、一方の配線断面の配線幅は他方の配線断面の配線幅よりも狭く、かつ、前記一方の配線断面の配線厚さは前記他方の配線断面の配線厚さよりも厚い配線を含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品に好適に用いられる微細配線を施した銅回路配線基板およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば携帯電話に代表されるように、電子機器の小型化、高機能化が進むに連れ、搭載する電子部品自体の小型化が促進され、これに伴い回路基板上の配線密度の向上が図られている。回路基板上の配線密度を向上するために、配線の多層化、微細化が行なわれ、より高密度な実装を可能にする形状へと進行している。
【0003】
回路基板上に銅配線や層間接続ビアを有する配線板を製造する方法としては、フォトリソグラフィー法が一般的である。このフォトリソグラフィーを用いた配線または層間接続ビアの形成方法は大きく二つに分けられる。一つはサブトラクティブ法であり、もう一つはアディティブ法である。サブトラクティブ法は、基板上に形成した銅膜にエッチングレジスト膜を形成し、配線やビアとなる部分以外の銅をエッチングすることによりパターンを形成する方法である。アディティブ法は、基板上の配線やビアとなる部分以外をめっきレジスト膜で覆い、配線やビアとなる部分のみにめっきをすることによりパターンを形成する方法である。
【0004】
しかし、これらの方法で配線ピッチ20μm以下の銅配線を形成する場合は課題が存在する。サブトラクティブ法では、銅をエッチングする工程でサイドエッチングによって配線断面形状が台形になるという問題がある。この問題はアスペクト比の大きな配線、つまりより微細な配線でより厚い銅膜をエッチングするときに顕著になる。一方、セミアディティブ法では、微細配線間のレジスト除去が困難になるという問題がある。また、COF(Chip On Film)などでシード層としてニッケルなどの合金を使用している場合には、このシード層の除去が困難になる問題がある。
【0005】
上記問題の改善策として、例えば特許文献1〜4では、基板に凹部を形成する処理を導入し、その後めっきで充填する方法などが提案されている。これらの方法では、まず配線用の溝やビアなどの凹部を基板に形成し、基板全面に後処理で銅めっきが析出するための給電層となるシード層を形成し、電気銅めっきにより凹部のシード層上に銅を埋め込む。これらの方法では、配線形状はレジストの形状によって決まるため、配線形状の制御が容易であり、銅配線が埋め込まれているためにエッチングにより必要以上に削られることはなく、レジスト膜やシード層の除去が不要となる。これらの方法はLSIの銅配線形成では、ダマシン法として用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−41036号公報
【特許文献2】特開2005−57277号公報
【特許文献3】特開2006−249478号公報
【特許文献4】特開2006−303438号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1、2に開示されているように、LSIの銅配線形成においてダマシン法を利用する場合、太幅の配線と細幅の配線が混在すると、微細配線部でオーバープレートが発生し、太幅配線部ではアンダープレートが発生する。このため、太幅部に銅を充分に埋め込むためにめっきを十分に行う必要があり、このため細幅部に溢れた余分な銅の研磨等が必要となる。すなわち、凹部に電気銅めっきにより銅を埋め込む従来の方法では、凹部以外に析出した余分な銅を除去するのに手間と時間がかかることが課題である。また、特許文献1、2のように、LSIなどのSiウエハを用いるプロセスの場合には、基板が極めて平坦であることから、CMP(Chemical Mechanical Polishing)法などにより配線の高さを設計値どおりに研磨することが可能であるが、プリント基板等のように緩やかな凹凸があり、かつ大面積となる基板を均一な厚みで研磨するには、ダマシン法を適用するのは極めて困難である。さらに、配線の太さや絶縁材の種類も大きく異なり、研磨屑による傷を避けることが困難という課題もある。
【0008】
また、特許文献3、4に開示されているように、ダマシン方法では電気めっきの給電層が基板全面に形成されるので、基板全面に対して均等にめっきが析出され、凹部以外でのめっき膜厚を薄くするには限界がある。したがって、凹部以外に析出した余分な銅を薄くする又は除去するために、化学的エッチングや電解エッチングなどで余計な時間がかかるという問題がある。更に、配線幅ごとに凹部の体積が異なるため、太幅部と細幅部に対して同時にめっき処理を行えば、各々の溝に析出しためっきの充填率は当然異なってくる。例えば、太幅部においては充填率が低く、逆に細幅部においては充填率が高くなる。このため、太幅部を基準に充填しようとすると、太幅部以外に析出した余分な銅を薄くする又は除去するために、化学的エッチングや電解エッチングなどで時間がかかる問題が生じる。したがって、太幅配線へのめっきの充填が不十分であると、太幅配線の一部に凹部が生じるため、当該めっき層に絶縁層を乗せた後に下層へビアを形成しようとしても、絶縁層が残存し金属部が露出しにくいという問題がある。また、配線上部に絶縁膜を形成する際に、金属層に凹凸が顕著に存在すれば、絶縁膜が金属層を充分に覆うことが出来ずにボイドが生じることもある。
【0009】
更には、配線層と同じ面内で電子素子を搭載するためのパッドを形成する際には、パット部は絶縁膜よりも凸状に形成されていないと、電子部品の接続が困難となるが、従来の方法では、パッドなどの大きなパターンを充填することが難しい。
【0010】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、配線の高密度化、微細化に対応した配線パターンを、精密かつ低コストに形成した銅配線基板およびその形成方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の配線基板は、少なくとも、絶縁基材とその表面に配線となるパターン状の凹部(配線溝)があって、微細配線部と太幅配線が混在する場合には凹部の深さは太幅部が薄くなるように形成されており、凹部にはバリヤ層となる第1の金属層と、配線となる第2の金属層とを備えた銅配線基板である。
【0012】
すなわち、本発明の配線基板は、絶縁基板と、該絶縁基板に形成された複数の配線溝と、該配線溝に充填された配線と、を備えた配線基板であって、前記配線のうち任意の2つを選択し、前記配線の電流方向に対して直角に断面を取る場合、一方の配線断面の配線幅は他方の配線断面の配線幅よりも狭く、かつ、前記一方の配線断面の配線厚さは前記他方の配線断面の配線厚さよりも厚い配線を含む。言い換えると、絶縁基板に複数の異なる配線幅および配線深さを有する配線溝に充填された配線を備え、前記配線のうち任意の配線幅および配線深さを有する配線溝に充填された配線を基準配線とする場合、前記配線は、前記基準配線よりも細い配線幅の配線深さが前記基準配線の配線深さよりも深い。
【0013】
また、本発明の配線基板は、絶縁基板と、該絶縁基板に形成された配線溝と、該配線溝に充填された配線と、を備えた配線基板であって、前記配線の任意の2点を選択し、前記配線の電流方向に対して直角に断面を取る場合、一方の配線断面の配線幅は他方の配線断面の配線幅よりも狭く、かつ、前記一方の配線断面の配線厚さは前記他方の配線断面の配線厚さよりも厚い配線を含む。言い換えると、絶縁基板に連続的に配線幅および配線深さが変化する配線溝に充填された配線を備え、該配線の任意の場所で前記絶縁基板と直角方向に前記配線溝の断面を取った場合の配線幅および配線深さに充填された配線を基準配線とする場合、前記配線は、前記基準配線を起点として連続的に太く変化する配線の配線深さが連続的に浅く、連続的に細く変化する配線の配線深さが連続的に深くなっている。
【0014】
また、本発明の配線基板の製造方法は、絶縁基板に複数の配線溝を成形する工程Aと、該成形された配線溝に下地金属膜となる第一の金属層を充填する工程Bと、を少なくとも含む配線基板の製造方法であって、前記工程Aにおいて、前記配線のうち任意の2つを選択し、前記配線の電流方向に対して直角に断面を取る場合、一方の配線断面の配線幅は他方の配線断面の配線幅よりも狭く、かつ、前記一方の配線断面の配線厚さは前記他方の配線断面の配線厚さよりも厚い配線を含むように前記複数の配線溝を成形する。
【0015】
また、本発明の配線基板の製造方法は、絶縁基板に複数の配線溝を成形する工程Aと、該配線溝の一部にパッド溝を成形する工程Bと、前記成形された配線溝およびパッド溝に下地金属膜となる第一の金属層を充填する工程Cと、を少なくとも含む配線基板の製造方法であって、前記工程Cにおいて、前記配線の電流方向に対して直角に断面を取る場合、前記パッド溝の深さは、前記配線断面の配線深さよりも薄く成形する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、微細な配線と太幅の配線が高密度に混在しても配線ムラやボイドの無い均一な配線パターンを低コストで形成することが可能となる。また、配線にバリヤ膜を有する構造とすることで、高信頼性の銅配線基板を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】銅配線基板の構成
【図2】銅配線基板の製造工程
【図3】銅配線基板の製造工程
【図4】銅配線基板の製造工程
【図5】銅配線基板の断面構造
【図6】電気めっき液の電気化学特性
【図7】銅配線基板のパターン及び断面構造
【図8】銅配線基板の断面構造
【図9】銅配線基板のパターン及び断面構造
【図10】銅配線基板の断面構造
【図11】配線幅と配線溝深さの関係の一例
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の銅配線基板は、少なくとも、絶縁基材とその表面に配線となるパターン状の凹部があって、微細配線部と太幅配線が混在する場合には凹部の深さは太幅部が薄くなるように形成されており、凹部にはバリヤ層となる第1の金属層と、配線となる第2の金属層とを備えた銅配線基板である。
【0019】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について説明する。ただし、本実施形態は本発明を実現するための一例にすぎず、本発明の技術的範囲を限定するものではないことに注意すべきである。また、各図において共通の構成については同一の参照番号が付されている。
【0020】
<銅配線基板の構成>
図1は、本発明の実施の形態における銅配線基板の構成を示す概略図である。絶縁基材1には、配線パターンとなる凹部が形成されている。凹部は配線の形状となるように溝状、孔状など任意の形状に形成することができる。凹部の幅は特に制限することはないが、0.1μm〜1mmとすることができ、特に1〜100μmの範囲では加工が容易であるため好適である。凹部の間隔は特に制限することはないが、0.1μm〜1mmとすることができ、特に1〜100μmの範囲では加工が容易であるため好適である。凹部およびその間隔は、様々な幅や形状またはそれらの組み合わせにすることもできる。また、配線幅の異なる太幅配線2と細幅配線3を形成する際には、あらかじめ形成する凹部の深さは太幅配線の方が薄くなるように形成することが肝要である。
【0021】
絶縁基材1は、特に制限することはないが例えば、ガラス、アルミナ、窒化アルミ、炭化ケイ素などのセラミック材料、PPS(ポリフェニレンスルフィド) 、PEEK (ポリエーテルエーテルケトン) 、ポリフタルアミド、PTFE(ポリエチレンテレフタラート)、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリシクロオキサイド、エポキシ樹脂、ポリイミド、LCP(液晶ポリエステル樹脂)、などの樹脂材料を用いることができる。特に電気特性に優れたエポキシ系樹脂やポリイミド系樹脂が好適に用いられる。また、この工程において形成される成形体は、少なくとも回路を形成する表面が絶縁材料で形成されておればよく、銅、アルミなどの表面に絶縁材料を被覆したメタルコア基板などの成形体を用いることもできる。また、これらの絶縁材料の形態はフィルム状、ガラスクロス入り板、銅貼り板などいずれでもよく、キャリアフィルムなどに液状ワニスを塗布した形態でも可能である。
【0022】
<銅配線基板の製造方法>
次に、本発明の銅配線基板を製造する方法について説明する。図2は本発明の銅配線基板の製造工程を示したものである。(a)〜(e) はその製造方法の主要な工程における配線基板の断面を工程順に示す。本発明の銅配線基板の製造方法は、絶縁基材1(図2(a))の表面に配線溝となる凹部2、3を形成し(図2(b))、その上に下地金属層4を形成し(図2(c))、さらにその上に配線となる第一金属層5を形成する(図2(d))。そして、凹部以外の表面に形成された金属層を除去することによって配線層が形成される(図2(e))。以下詳細に説明する。
【0023】
(配線形状について)
図2(b)に示すように、凹部は配線の幅によって深さが異なるように形成されている。このような深さの異なる絶縁基板は、配線の底の面が一致するように絶縁基板上に厚さの異なる絶縁膜を形成することによっても製造可能だが、配線の上部面が一致するように溝加工するほうが容易である。また、一つの配線の太さは均一でなくてもよく、例えば、細幅の配線から連続的もしくは段階的に太幅へと広がってもよい。その場合には、配線の太さによって溝の深さを連続的もしくは段階的に薄くすればよい。ここで、溝の深さは、1つ以上の基準となる配線幅での充填率(形成した溝深さに対する銅めっきの析出高さの比)から設計すると好適である。例えば、図8に示すように2つの配線幅(W1とW2)を選定し、それぞれ同じ深さ(H)の溝を形成した基板を用いて、配線基板の製造に用いる銅めっき液および条件にて、予め細幅配線(W1)への電気めっきで溝が充填完了する、すなわち充填率が1(=T1/H)となる際の、太幅配線での充填率X=(T2/H)を測定する。そして、図1に示すように配線基板の細幅溝深さをH1かつ太幅の溝の深さをH2=X・H1と設計すると、配線の上面を均一化することができる。
【0024】
(配線溝の形成について)
図2(b)のような凹部を形成するには、例えば、高さの異なる凸状部を有する金型を製造し、絶縁膜にレプリカパターンを転写することで、配線溝を形成することができる。金型は平坦な基材表面に凹凸を形成しても良いし、例えばロール状に形成しても良い。ロール状であれば連続的にパターンを転写することができ好適である。金型以外にも、レーザー、公知の感光性レジストを用いたフォトリソ法によって配線溝を形成することも出来る。
【0025】
また、銅配線の一部に電子素子を搭載するためのパッドのためのパッド溝を形成することもできる。パッドは銅配線の上面よりも凸状に形成されていることが望ましい。この場合には、銅配線部の深さよりもパッドの深さを薄くした凹部を有する基板に本発明のめっきをすることで形成することができる。配線溝の形成と同時に、下層配線層と接続するためのブラインドビアを形成することもできる。
【0026】
(第1の金属層の形成について)
図2(c)に示すような、後処理における銅めっき析出のためのシード層となる、凹部に形成した第1の金属層4は、スパッタリング法などの乾式法、無電解めっきなどの湿式法、ゾルゲル法などの塗布法により形成することができる。低コストとなる湿式法が好ましく、無電解めっきがより好ましい。無電解めっきの場合には、銅、ニッケルリン、ニッケルリンホウ素、ニッケルホウ素、ニッケルすずリン、ニッケル鉄リン、ニッケル亜鉛リン、ニッケルタングステンリン、ニッケルモリブデンリンなどのニッケル合金やコバルトリン、コバルトホウ素などのコバルト合金、あるいは銅すず、銅亜鉛などの銅合金、銀、すず銀などの銀合金やこれらの混合物をめっきすることができる。また、ニッケルリン、ニッケルホウ素、コバルトリンやコバルトホウ素などの無電解めっき膜に、高融点金属であるタングステンやモリブデンなどを添加すれば、配線材として用いる銅の拡散を抑制するバリヤ膜として機能するため、配線の信頼性向上につながり、好適である。また、ニッケルホウ素は絶縁基材と配線材との密着性にも優れるため更に好適である。
【0027】
また、第1の金属層の厚みは、特に限定されないが、0.01μm〜5μmであることが好ましく、0.05μm〜2μmであることがより好ましい。この金属層の厚みを0.01μm未満にすると、金属層の抵抗が大きくなり、銅めっきをする際にシードとして機能しなくなってしまう。逆に金属層を厚く析出させると、当然析出時間が長くなって製造コストが高くなる上、配線間の除去が困難になることから、厚みは5μm以下であることが望ましい。
【0028】
(第二の金属層の形成について)
図2(d)に示すような、表面に凹部を有する絶縁基材に銅のめっき膜5をする方法としては、公知の銅めっき液を用いることが出来る。更には、凹部以外への析出を最小限に抑えることが出来るような添加剤が含まれていると、余分なめっき膜を除去する工程が簡略化できるため好ましい。以下に、本発明に最も好ましいめっき方法について述べるが、これに限定されるものではない。
【0029】
本発明のめっき方法の特徴は、めっき反応を抑制する添加剤を用いて凹部内に優先的に電気銅めっきを行うことである。この方法によって実質的に凹部内にのみほぼ選択的なめっきを析出させることが可能になる。つまり、凹部内のめっき膜厚を凹部以外である基板表面部分のめっき膜厚よりも十分厚くすることができるため、凹部以外の基板表面の銅めっき膜を容易に除去することが出来る。
【0030】
(めっき液について)
銅めっきに用いる液としては、銅イオン、硫酸、塩素イオンを含むめっき液に上述の添加剤や界面活性剤が添加されためっき液が用いられる。硫酸銅五水和物を硫酸酸性水溶液に溶かした溶液に塩酸を添加することで、前記めっき液を作成することで好適に用いることができる。また、上記成分以外にも、公知の促進剤である、Bis(3-sulfopropyl)disulfideや界面活性剤としてポリエチレングリコールなどを含んでいてもよい。
【0031】
添加剤としては、後述の理由により、めっき反応を抑制し、めっき反応の進行と同時にめっき反応抑制効果を失う物質が良い。添加剤がめっき反応を抑制する効果は、めっき液中に添加剤を加え、金属の析出過電圧が大きくなることで確認できる。一方、添加剤がめっき反応の進行と同時にめっき反応抑制効果を失う効果は、めっき液の流速が速い程、めっきする金属の析出過電圧が大きくなることで確認できる。このことは、添加剤の第1の金属層表面への供給速度が速い程、めっき反応の抑制効果が高くなることを示している。添加剤がめっき反応抑制効果を失うときには、添加剤は分解されて別の物質に変化する、あるいは、還元されて酸化数の異なる物質に変化する場合がある。
【0032】
このような添加剤を含むめっき液でめっきを行うことで凹部内にほぼ選択的にめっきを析出させることができる理由を以下に述べる。このような添加剤を用いてめっきを行うと、めっき反応の進行と共に第1の金属層表面で添加剤がその効果を失う。その結果、第1の金属層表面でめっき反応に関与する実効的な添加剤濃度が減少する。添加剤の濃度が減少すると、添加剤は溶液中からの拡散によって供給されるが、凹部内はめっき液沖合い(めっき供給場所)からの距離も基板表面に比べて長い。したがって、凹部内では添加剤の供給が遅くなり、拡散による添加剤濃度の増加速度が遅い。このため、凹部内では基板表面に比べて添加剤濃度が低い状態が維持される。この添加剤はめっき反応を抑制する効果を持つので、添加剤濃度が低い凹部内ではめっき反応は抑制されず、めっき膜が凹部内で選択的に成長することができる。
【0033】
このような特性を持つめっき液としては、回転ディスク電極で測定した分極曲線において、電極が静止している時に対して電極が1000rpmで回転している時の電流値が1/100以下となる電位領域を有する特性を有することが好ましい。このようなめっき液では、図6に示すように、ある電位E’において静止時(0rpm)の電流密度Aに対して1000rpm時の電流密度Bが1/100以下となる。
【0034】
めっき液の添加剤として好適に用いることができるのは、2-[(1,3-Dihydro-1,3,3-trimethyl-2H-indol-2-ylidene)-methyl]-1,3,3-trimethyl-3H-indolium perchlorate、2-[3-(1,3-Dihydro-1,3,3-trimethyl-2H-indol-2-ylidene)-1-propenyl]-1,3,3-trimethyl-3H-indolium chloride、2-[5-(1,3-Dihydro-1,3,3-trimethyl-2H-indol-2-ylidene)-1,3-pentadienyl]-1,3,3-trimethyl-3H-indolium iodide、2-[7-(1,3-Dihydro-1,3,3-trimethyl-2H-indol-2-ylidene)-1,3,5-heptatrienyl]-1,3,3-trimethyl-3H-indolium iodide、3-Ethyl-2-[5-(3-ethyl-2(3H)-benzothiazolylidene)-1,3-pentadienyl]benzothiazolium iodide、Janus Green Bなどのシアニン色素及びその誘導体の少なくとも1種類を含むことが望ましい。
【0035】
(金属層の除去について)
図2(e)に示すように、凹部以外の表面に形成された金属層を除去することによって配線層が形成される。これにより、配線となる銅のめっき膜5が絶縁素材1に埋没された配線基板を製造することができる。
【0036】
(まとめ)
本実施形態では、基板上に凹部を形成し、凹部に配線を形成することによって、配線間を絶縁性よく分離することが可能となる。また、凹部の深さを異にすることによって、細幅部と太幅部の表面を均一にすることができる。従って、配線間の信頼性を損なうことなく、高密度な配線を有する銅回路を形成することができ、かつ微細な銅配線基板を提供することが可能となる。また、太幅部でも配線の表面が均一であるため多層化に適している。さらに本発明における配線板の特徴は、凹部内に配線を有することから、配線と絶縁基材との密着性が良いことである。
【0037】
<実施例1>
本発明の銅配線基板の製造工程を図3に示す。本実施例では、金型を用いて配線溝を形成したことを特徴とする。
【0038】
まず、図3(b)に示すように、絶縁基材1の表面に配線パターン状の凹状の溝を形成した。絶縁基材1は、ガラスエポキシ基板を使用し、その上に25μmのビルドアップ樹脂フィルム(味の素ファインテックABF-GX)を置いた後、Ni金型で熱プレス圧着した。冷却後に金型を剥離したところ、配線パターン状のレプリカが転写されていた。形成した配線用溝は、細幅10μm、深さ12μmと、太幅100μm、深さ7μmとした。細幅の溝ではアスペクト比(深さ/幅)が1.2であり、太幅の溝ではアスペクト比が0.07であった。
【0039】
次に、図3(c)に示すように、無電解ニッケルめっきによって第1の金属層4を形成した。無電解ニッケルめっきには、奥野製薬社製トップケミアロイ66を用い、ニッケル膜厚は200nmとした。下地膜の形成方法としては、蒸着法、スパッタ法、Chemical Vapor Deposition(CVD)法などを用いることができる。また、第1の金属層4としては、ニッケル、クロム、タングステン、パラジウム、チタン及びこれらの合金を用いることができる。
【0040】
続いて、図3(d)に示すように、電気銅めっきによって銅めっき膜5を形成した。電気めっきは表1に示すめっき液に2-[(1,3-Dihydro-1,3,3-trimethyl-2H-indol-2-ylidene)-methyl]-1,3,3-trimethyl-3H-indolium perchlorateを10ppm、塩素イオンを50ppm、ポリエチレングリコール100ppmを添加剤として加えて用いた。
【表1】

【0041】
めっき条件については、めっき時間は15分、電流密度は1.0A/dm、めっき液の温度は25℃とした。
【0042】
電気銅めっき後に配線断面観察を行った。図5に示すように、配線用の溝における銅めっき膜厚Hと配線以外の表面における銅めっき膜厚Tを測定した。その結果、幅10μm配線用の溝内部における銅めっき膜厚H1は12μm、幅100μmの銅めっき膜厚H2は7μm、表面における銅めっき膜厚Tは0.1μm以下であった。このことから、金型を用いて配線溝を加工した場合、銅めっき膜は溝内部へ選択的に成長し、配線幅に依存せずに均一な表面形状になることがわかった。更に、本実施例のめっき液を用いることで溝以外の表面にはほとんど銅は析出しないことがわかった。
【0043】
次に図3(e)に示すように、表面の銅およびニッケル膜を除去した。ニッケル膜の除去には、メック社製のCH-1935を用いた。ニッケル膜の除去には、メルテックス社製メルストリップ、荏原ユージライト社製シードロンプロセスなどを用いることができる。表面の銅めっき膜は、ニッケル膜と同時に除去することができた。
【0044】
以上より、本発明の銅めっき液を用いた場合には、表面の銅めっき膜除去のプロセスが不要となり、細幅と太幅の銅配線が混在する配線基板の製造が容易になった。更に、配線が絶縁基材に埋設されているため、銅配線が剥れることなく微細配線を形成することができた。
【0045】
<実施例2>
本実施例では、レーザーを用いて配線溝を形成したことを特徴とする。
まず、絶縁基材1の表面に配線パターン状の凹状の溝を形成した。絶縁基材1は、ガラスエポキシ基板を使用し、その上に25μmのビルドアップ樹脂フィルム(味の素ファインテックABF-GX)を熱圧着し、その表面にエキシマレーザーを用いて幅の異なる配線溝パターンを加工した。溝幅、溝深さはレーザーの出力強度やパルスショット数を調整し、実施例1と同様とした。レーザーによる加工後にはデスミア工程を行うことが好ましいため、本実施例ではメルテックス製(MLB495)にて処理した。
【0046】
次に、実施例1と同様に、無電解ニッケルめっきによって第1の金属層4を形成した後、電気銅めっきによって銅めっき膜5を形成した。
【0047】
電気銅めっき後に配線断面観察を行った結果、図3に示すようにレーザー加工の影響で溝底が平坦ではなく形成されていたが、幅10μm配線用の溝内部における銅めっき膜厚は12μm、幅100μmの銅めっき膜厚は6.8μm、表面における銅めっき膜厚Tは0.5μm以下であった。本実施例では、デスミア工程を行ったため、凸部表面での粗さが大きくなり、表面での析出も発生した。このことから、レーザーにより配線溝を加工した場合は、銅めっき膜は溝内部へ優先的に成長することがわかった。また、溝の深さの精度や加工形状の矩形性に劣るものの、フォトマスクや金型などが不要であり、パターンの変更などが容易で生産性が高いことがわかった。
【0048】
その後、実施例1と同様に、表面の銅およびニッケル膜を除去した。実施例1とは異なり表面の銅めっき膜の除去が必要であったものの、薄い銅膜であったため除去は容易であった。
【0049】
以上より、細幅と太幅の銅配線が混在する基板の製造が容易になった。更に、配線が絶縁基材に埋設されているため、銅配線が剥れることなく微細配線を形成することができた。
【0050】
<実施例3>
本実施例では、スパッタ法を用いて配線溝を形成したことを特徴とする。
まず、図3(b)に示すように、絶縁基材1の表面に配線パターン状の凹状の溝を形成した。絶縁基材1は、ガラスエポキシ基板を使用し、その上に25μmのビルドアップ樹脂フィルム(味の素ファインテックABF-GX)を置いた後、Ni金型で熱プレス圧着して配線溝等を加工した。
【0051】
次に、スパッタ法を用いて第1の金属層クロムを25%含有するニッケル膜で、膜厚は100nmを形成し、電気銅めっきによって銅めっき膜5を形成した。
【0052】
電気銅めっき後に配線断面観察を行った結果、幅10μm配線用の溝内部における銅めっき膜厚は12μm、幅100μmの銅めっき膜厚は7μm、表面における銅めっき膜厚Tは0.3μm以下であった。このことから、スパッタ法を用いて配線溝を形成した場合、銅めっき膜は溝内部へ選択的に成長し、配線幅に依存せずに均一な表面形状になることがわかった。その後、実施例1と同様に、表面の銅およびニッケル膜を除去した。
【0053】
本実施例の第一の金属層のエッチングでは、実施例1と同様の処理を行ったが、面内で20%のエッチング残渣があり、2倍の処理時間を要した。そのため、エッチング後の配線上面の銅めっき膜が粗な表面形状であったが、細幅と太幅の銅配線が混在する配線基板の製造が容易になった。更に、配線が絶縁基材に埋設されているため、銅配線が剥れることなく微細配線を形成することができた。
【0054】
<実施例4>
本実施例では、配線基板を多層化し、層間接続ビアを形成したことを特徴とする。本発明の銅配線基板の製造工程を図4に示す。図4は本発明による層間接続ビアの形成方法を示す基板の断面図である。
【0055】
まず、図4(a)に示すように、絶縁基材1の表面に配線パターン状の凹状の溝を形成した。絶縁基材1は、ガラスエポキシ基板を使用し、その上に25μmのビルドアップ樹脂フィルム(味の素ファインテックABF-GX)を置いた後、Ni金型で熱プレス圧着し、図4(c)のように下層への層間接続ビアと配線溝を形成した。層間接続ビアはφ10〜80μm、深さ10μmとした。ビア底での配線接続を確実なものとするために、金型側の先端を先鋭化することで絶縁層を突き破ること、樹脂残渣をデスミアによってクリーニングすること、が有効であった。
【0056】
その後、実施例1と同様に、無電解めっきによる金属層4を形成し、電気銅めっきによって銅めっき膜5を形成した。
【0057】
電気銅めっき後に配線断面観察を行った結果、幅10μm配線用の溝内部における銅めっき膜厚は12μm、幅100μmの銅めっき膜厚は7μm、表面における銅めっき膜厚Tは0.1μm以下であった。このことから、金型を用いて多層化配線および層間接続ビアを形成した場合、銅めっき膜はレジスト開口部へ選択的に成長し、絶縁膜表面にはほとんど析出しないことがわかった。
【0058】
次に、図4(f)に示すように、第二の絶縁膜表面の銅およびニッケル膜を除去した。実施例1と同様、表面の銅めっき膜は、ニッケル膜と同時に除去することができた。
【0059】
以上より、レジスト表面の銅めっき膜の除去のプロセスが不要となり、直径10〜80μmの層間接続ビアを有する配線板の製造が容易になった。
【0060】
<実施例5>
本実施例では、様々な配線幅を有する基板を形成したことを特徴とする。
まず、実施例1と同様の方法で、幅5μmから順次5μm刻みで太くなるように200μmまで変化させて配線溝を形成した。配線幅が異なる場合の各配線幅の溝深さを設定するには、予め別途用意した基板において、深さが同一で幅の異なる配線溝を形成しておき、その基板に銅めっきを施した際の各配線幅における充填率の比を調べることにより行う。今回、別途作製した基板では、幅20μmで溝の充填率が1となる場合の、幅100μmでの充填率は0.65であったことから、本実施例での溝深さを、幅5〜20では10μm、幅25〜50μmでは8μm、幅100〜200μmでは6.5μmと算出し、金型を用いてそのように形成した。本実施例では、幅20μmと100μmの配線で同時に充填率が1となるような溝深さを形成し、その他の幅の配線では深さを一定に形成したが、例えば、細幅基準配線以下ではより厚く、太幅基準配線以上の太幅配線ではより薄く、中間では深さも中間となるように、任意に設計可能である。
【0061】
次に、実施例1と同様に、無電解めっきによる金属層4を形成し、電気銅めっきによって銅めっき膜5を形成した。
【0062】
電気銅めっき後に配線断面観察を行った結果、幅20μm配線用の溝内部における銅めっき膜厚は10μm、幅100μmの銅めっき膜厚は6.5μm、表面における銅めっき膜厚Tは0.1μm以下であった。また、それ以外の配線部においても、充填率は0.85以上となり、配線幅に依存せずに基板の上面の凹凸の発生を抑制でき、均一な基板表面にできることがわかった。
【0063】
その後、実施例1と同様に、表面の銅およびニッケル膜を除去した。実施例1と同様、表面の銅めっき膜は、ニッケル膜と同時に除去することができた。
【0064】
以上より、様々な太さの銅配線が混在する配線基板の製造が容易になった。更に、配線が絶縁基材に埋設されているため、銅配線が剥れることなく微細配線を形成することができた。
【0065】
<実施例6>
本実施例は、一つの配線の太さが変化することを特徴とする。本発明の銅配線基板の製造工程を図7に示す。
【0066】
本実施例では図7に示すように(a)部では100μm、(b)部では50μm、(c)部では10μmの幅となるように配線溝パターンを形成した。また、配線溝の深さは、(a)部で6.5μm、(b)部では7.8μm、(c)部では10μmとした。溝の深さの設計にあたっては、1つ以上の基準となる配線幅での充填率(形成した溝深さに対する銅めっきの析出高さの比)から設計すると好適である。図8に示すように、例えば、2つの配線幅(W1とW2)を選定し、それぞれ同じ深さの溝を形成した基板を用いて、配線基板の製造に用いる銅めっき液および条件にて、予め細幅配線W1への電気めっきで溝が充填完了するすなわち充填率が1となる際の太幅配線W2での充填率Xを測定し、配線基板の細幅溝深さをH1かつ太幅の溝の深さをX・H1とすると、配線の上面を均一化することができる。本実施例ではW1を10μmとし、W2を100μmとし、各々10μmの溝を形成した基板にて、実施例1と同様の条件で銅めっきを実施した結果、W2の充填率が0.65であったことから、太幅の(a)部を6.5μmの深さとした。また、(b)部では配線幅に対して充填率を線形近似し7.8μmとした。
【0067】
次に、実施例1と同様に無電解めっきによる金属層4を形成し、電気銅めっきによって銅めっき膜5を形成した。電気銅めっき後に配線断面観察を行った結果、(a)部、(b)部、(c)部で、各々銅めっきが表面まで充填されており、表面における銅めっき膜厚は0.1μm以下であった。その後、実施例1と同様に、表面の銅およびニッケル膜を除去した。実施例1と同様、表面の銅めっき膜は、ニッケル膜と同時に除去することができた。
【0068】
以上より、同一配線において配線幅が変化する場合においても、基板の上面での凹凸の発生を抑制でき、様々な太さの銅配線が混在する配線基板の製造が容易になった。
【0069】
なお、本実施例では、段階的に配線幅が変わることとしたが、例えば細幅の配線から連続的もしくは段階的に太幅へと広がってもよく、その場合には、図11(a)に示すように配線の太さによって溝の深さを連続的もしくは段階的に薄くすればよい。これによって、表面の平坦性を確保することができる。
【0070】
また、図11(b)に示すように、最も細い配線溝幅Wsとテスト基板で充填率を測定した配線幅W1との関係がWs≦W1の場合には、配線溝幅Wsの配線溝深さHsを、Hs=H1とすることができる。このことによって、加工の煩雑さを低減することが可能となる。更には、最も太い配線溝幅Wtとテスト基板で充填率を測定した配線溝幅W2との関係がWt≧W2の場合には、配線溝幅Wtの配線溝深さHtを、Ht=X・H1とすることができ、溝加工の煩雑さを低減できる。
【0071】
<実施例7>
本実施例では、配線と同一面内に電子部品搭載用のパッドを形成したことを特徴とする。
【0072】
図9に示すように、実施例1と同様の方法により、配線用の溝と、円形のパッド溝とを形成した。配線溝は幅10μmと100μmとし、配線深さはそれぞれ10μm、6.5μmとして形成した。パッドはφ250μmで、深さ3μmとした。
【0073】
次に、実施例1と同様に、無電解めっきによる金属層4を形成し、電気銅めっきによって銅めっき膜5を形成した。
【0074】
電気銅めっき後に配線断面観察を行った結果、配線部は銅めっきで表面まで充填されており、パッドでは上部に2.5μm凸状になっていることがわかった。また、絶縁膜表面における銅めっき膜厚は0.1μm以下であった。
【0075】
その後、実施例1と同様に、表面の銅およびニッケル膜を除去した。実施例1と同様、表面の銅めっき膜は、ニッケル膜と同時に除去することができた。
【0076】
最後に、公知のソルダーレジストを塗布し、開口したパッドに無電解ニッケルめっき、金めっきを施した後、半田によって電子部品を搭載した。
【0077】
以上より、本実施例では、パッドでは凸状の形状を容易に形成でき、電子部品搭載を容易にすることができた。
【0078】
<実施例8>
本実施例では、異なる銅めっき液を用いたことを特徴とする。
実施例1と同様に形成した配線溝を有する基板に対して、公知のビアフィル用電気銅めっき液(荏原ユージライト製、CU-BRITE VF4)を用いて銅めっきを施した。めっき途中でサンプルを取り出し、断面の観察を行った結果、幅10μm配線用の溝内部における銅めっき膜厚は10μm、幅100μmの銅めっき膜厚は4.5μm、表面における銅めっき膜厚Tは2.5μmであった。このことから、ビアフィル用電気銅めっき液を用いた場合、銅めっき膜は溝内部へ優先的に成長しているものの表面にも析出していることがわかった。
【0079】
そこで、本実施例では、太幅部も充分に充填ができるように、めっき時間を長く銅めっきを施した。断面の観察を行った結果、幅10μm配線用の溝内部における銅めっき膜厚は17μm、幅100μmの銅めっき膜厚は12μm、表面における銅めっき膜厚Tは7μmとなり、完全に全面が銅めっき膜で覆われた状態であったが、配線部とそれ以外の部分とで凹凸を抑制することができた。
【0080】
その後、表面の銅を除去する目的で過硫酸ナトリウム100g/dm3の溶液にてエッチングすると、表面の銅と同時にニッケル膜を除去することができた。
【0081】
以上より、本実施例では、絶縁膜表面に析出していた銅を除去する際に、配線部の銅もエッチングされたため、エッチング後の銅配線は幅10μm配線用の溝内部における銅めっき膜厚は11μm、幅100μmの銅めっき膜厚は6μmと減膜していたが、細幅と太幅の銅配線が混在する配線基板の製造が容易になった。更に、配線が絶縁基材に埋設されているため、銅配線が剥れることなく微細配線を形成することができた。
【0082】
<実施例9>
本実施例では、絶縁基材としてフィルム基材を用いたことを特徴とする。
熱可塑性ポリイミドフィルム(東レデュポン製カプトン)、ポリエーテルイミド(三菱樹脂製スペリオUT)、ポリエチレンテレフタレート(帝人デュポン製テフレックス)、液晶ポリマ(ジャパンゴアテックス製BIAC)を基材とし、各々に対し、実施例1と同様に配線溝を形成した。
【0083】
電気銅めっき後に配線断面観察を行った結果、いずれの基材を用いた場合でも幅10μm、幅100μmのいずれも、溝の充填率は0.9以上であり、表面における銅めっき膜厚Tは0.1μm以下であった。このことから、絶縁基材としてフィルム基材を用いた場合、銅めっき膜は溝内部へ選択的に成長し、配線幅に依存せずに均一な表面形状になることがわかった。
【0084】
その後、実施例1と同様に、表面の銅およびニッケル膜を除去することで配線基板を製造した。
【0085】
以上より、本実施例では、細幅と太幅の銅配線が混在する配線基板の製造が容易になった。更に、配線が絶縁基材に埋設されているため、絶縁材料の影響は受けず、いずれの基材であっても銅配線が剥れることなく微細配線を形成することができた。
【0086】
<実施例10>
本実施例では、絶縁基材としてワニス状の樹脂を用いたことを特徴とする。
公知の絶縁材樹脂である、ポリイミド(宇部興産製U−ワニス)、ソルダーレジスト(太陽インキ製TF-200)、ソルダーレジスト(太陽インキ製PSR-4000)、ソルダーレジスト(日立化成製SN-9000)を、各々ガラスエポキシ基板上に25μm厚みで塗布した後に、Ni金型に圧着させキュアすることで、配線溝を形成した。樹脂が硬化する際に溶剤がガス化する影響で表面に小さなボイドが形成されていたが、溝の形状は良好に形成されていた。
【0087】
電気銅めっき後に配線断面観察を行った結果、いずれの基材を用いた場合でも幅10μm、幅100μmのいずれも溝の充填率を0.9以上であり、表面における銅めっき膜厚Tは0.1μm以下であった。このことから、絶縁基材としてワニス状の樹脂を用いた場合、銅めっき膜は溝内部へ選択的に成長し、配線幅に依存せずに均一な表面形状になることがわかった。
【0088】
その後、実施例1と同様に、表面の銅およびニッケル膜を除去することで配線基板を製造した。
【0089】
以上より、本実施例では、細幅と太幅の銅配線が混在する配線基板の製造が容易になった。更に、配線が絶縁基材に埋設されているため、絶縁材料の影響は受けず、いずれの基材であっても銅配線が剥れることなく微細配線を形成することができた。
【0090】
<実施例11>
実施例4(多層化配線と層間ビア形成)を除く実施例1〜10と同様に形成した配線基板を用いて、信頼性評価を実施した。配線評価は櫛歯パターンとし、ライン/スペースを細幅部では10/10μm、太幅部では100/100μm、となるような配線幅とした。形成した微細配線を有する試験基板に、ソルダーレジスト(日立化成製SN9000)を塗布し、150℃で90分の条件で硬化させた。
【0091】
その後、110℃、85%RHの環境中で、60Vの電圧を印加し、配線抵抗の経時変化を測定し、配線間抵抗が10MΩ以下になるまでの時間を計測した。その結果、いずれも目標とする100時間以上の絶縁信頼性が得られ、信頼性の高い配線基板を形成することができることがわかった。
【0092】
<その他>
本発明の実施例以外にも、必要に応じて、プリプレグなどを加熱積層したり、ビアホールや外層回路などを形成したり、公知の絶縁層形成工程や回路形成工程によりさらに多層化することも可能である。
【0093】
また、上記銅配線基板の表面に、ソルダーレジストなどを塗布することで配線表面の安定性を向上させ、信頼性を向上させることもできる。
【符号の説明】
【0094】
1:絶縁基材、2:太幅配線溝、3:細幅配線溝、4:第一金属層、5:銅めっき膜、6:第二絶縁層、7:絶縁層、8:接続ビア、9:多層配線板、10:金型、11:配線、12:パッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁基板と、該絶縁基板に形成された複数の配線溝と、該配線溝に充填された配線と、を備えた配線基板であって、
前記配線のうち任意の2つを選択し、前記配線の電流方向に対して直角に断面を取る場合、
一方の配線断面の配線幅は他方の配線断面の配線幅よりも狭く、かつ、前記一方の配線断面の配線厚さは前記他方の配線断面の配線厚さよりも厚い配線を含むことを特徴とする配線基板。
【請求項2】
絶縁基板と、該絶縁基板に形成された配線溝と、該配線溝に充填された配線と、を備えた配線基板であって、
前記配線の任意の2点を選択し、前記配線の電流方向に対して直角に断面を取る場合、
一方の配線断面の配線幅は他方の配線断面の配線幅よりも狭く、かつ、前記一方の配線断面の配線厚さは前記他方の配線断面の配線厚さよりも厚い配線を含むことを特徴とする配線基板。
【請求項3】
前記配線は、配線厚さと前記配線幅の比が1以上の配線が含まれることを特徴とする請求項1または2に記載の配線基板。
【請求項4】
前記配線は、底面と側面に配線材の拡散を抑制するバリヤ膜が形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の配線基板。
【請求項5】
前記配線は絶縁膜に埋設されていることを特徴とする請求項1または2に記載の配線基板。
【請求項6】
前記バリヤ膜は、ニッケルもしくはコバルトを主成分とすることを特徴とする請求項4に記載の配線基板。
【請求項7】
絶縁基板と、該絶縁基板に形成された複数の配線溝と、該配線溝に充填された配線と、該配線の一部に形成されたパッド溝と、該パッド溝に充填された電子素子を搭載するためのパッドと、を備えた配線基板であって、
前記配線の電流方向に対して直角に断面を取る場合、
前記パッド溝の深さは、前記配線断面の配線溝の深さよりも浅い配線を含むことを特徴とする請求項1に記載の配線基板。
【請求項8】
前記配線のうち任意の2つを選択した場合、
一方の配線断面の配線幅は他方の配線断面の配線幅よりも狭く、かつ、前記一方の配線断面の配線厚さは前記他方の配線断面の配線厚さよりも厚い配線を含むことを特徴とする請求項7に記載の配線基板。
【請求項9】
前記パッドが、前記配線よりも前記絶縁基板に対して凸状に形成されていることを特徴とする請求項7に記載の配線基板。
【請求項10】
絶縁基板に複数の配線溝を成形する工程Aと、
該成形された配線溝に下地金属膜となる第一の金属層を充填する工程Bと、
を少なくとも含む配線基板の製造方法であって、
前記工程Aにおいて、
前記配線のうち任意の2つを選択し、前記配線の電流方向に対して直角に断面を取る場合、
一方の配線断面の配線幅は他方の配線断面の配線幅よりも狭く、かつ、前記一方の配線断面の配線厚さは前記他方の配線断面の配線厚さよりも厚い配線を含むように前記複数の配線溝を成形することを特徴とする配線基板の製造方法。
【請求項11】
さらに、前記第一の金属層の表面に第二の金属層を形成する工程Cと、
を含み、
前記第一の金属層または第二の金属層のうち少なくとも一方が銅であることを特徴とする請求項10に記載の配線の製造方法。
【請求項12】
前記工程Cにおいて、前記第一の金属層表面に析出させる金属に対して析出過電圧を大きくする物質を含むめっき液を用いて電気めっきを行うことを特徴とする請求項11に記載の配線の製造方法。
【請求項13】
前記工程Cにおいて、前記第二の金属層形成に使用するめっき液は酸性硫酸銅電気銅めっき液であって、該酸性硫酸銅電気銅めっき液は1000rpmで回転する回転ディスク電極で測定した分極曲線において、電極静止時に対する電極回転時の電流値が1/100以下となる電位領域を有することを特徴とする請求項12に記載の配線の製造方法。
【請求項14】
前記工程Cにおいて、前記第二の金属層形成に使用するめっき液は酸性硫酸銅電気銅めっき液であって、該酸性硫酸銅電気銅めっき液は1000rpmで回転する回転ディスク電極で測定した分極曲線において、標準水素電極電位に対して、100〜200mVの範囲では電極静止時に対する電極回転時の電流値が1/100以下であり、-100mV 以下の範囲では電極静止時よりも電極回転時の電流値が大きくなることを特徴とする請求項12に記載の配線の製造方法。
【請求項15】
前記該酸性硫酸銅電気銅めっき液がシアニン色素及びその誘導体の少なくとも1種類を含むことを特徴とする請求項13または14に記載の配線の製造方法。
【請求項16】
前記シアニン色素が下記の化学構造式(nは0,1,2,3のうちいずれか1つ)で表されることを特徴とする請求項15に記載の配線の製造方法。
【化1】

【請求項17】
前記第一の金属層はニッケル、コバルト、クロム、タングステン、パラジウム、チタンのうちの少なくとも1つを含む金属または合金であり、前記第二の金属層は銅であることを特徴とする請求項10に記載の配線の製造方法。
【請求項18】
前記工程Aは、予め、配線厚さが等しく配線幅が異なる複数の仮配線溝が形成された仮配線基板を作成し、該仮配線溝へ電気めっきを行い、前記複数の仮配線溝のそれぞれについて前記電気めっきの充填率を測定する工程aを含み、
前記複数の仮配線溝の充填率に応じて決定した前記配線断面の配線厚さに基づいて前記配線溝を成形することを特徴とする請求項10に記載の配線基板の製造方法。
【請求項19】
前記工程Aは、さらに、前記複数の配線溝のうち、配線幅が基準値以下となる配線溝の配線厚さを所定の値で固定する配線を含むように前記配線溝を成形することを特徴とする請求項18に記載の配線基板の製造方法。
【請求項20】
前記工程Aは、さらに、前記複数の配線溝のうち、配線幅が基準値以上となる配線溝の配線厚さを所定の値で固定する配線を含むように前記配線溝を成形することを特徴とする請求項18に記載の配線基板の製造方法。
【請求項21】
絶縁基板に複数の配線溝を成形する工程Aと、
該配線溝の一部にパッド溝を成形する工程Bと、
前記成形された配線溝およびパッド溝に下地金属膜となる第一の金属層を充填する工程Cと、
を少なくとも含む配線基板の製造方法であって、
前記工程Cにおいて、
前記配線の電流方向に対して直角に断面を取る場合、
前記パッド溝の深さは、前記配線断面の配線深さよりも薄く成形することを特徴とする配線基板の製造方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−171170(P2010−171170A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−11735(P2009−11735)
【出願日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】