説明

電力変換装置

【課題】複数の半導体モジュールの冷却効率を向上させると共に、複数の半導体モジュールから外部へ放射される電磁ノイズを効果的に遮蔽することができる電力変換装置を提供すること。
【解決手段】複数の半導体モジュール3は、半導体モジュール配列群30として整列した状態で一対の冷却器4A、4Bの間に挟持してある。半導体モジュール配列群30に対する一方の側部101には、昇圧回路に用いるリアクトル63が配設してある。リアクトル63は、金属材料からなるリアクトルケース631内に収容してある。電力変換装置1は、一対の冷却器4A、4Bによって、複数の半導体モジュール3の冷却を行うと共に、複数の半導体モジュール3から挟持方向Eへ放射される電磁ノイズを遮蔽し、かつリアクトルケース631によって、複数の半導体モジュール3から一方の側部101へ放射される電磁ノイズを遮蔽するよう構成してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチング素子によって回転電機を制御する電力変換回路を形成してなる電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド車等に用いるモータジェネレータ等は、インバータ回路等の電力変換回路によって制御され、電力変換回路は、スイッチング素子をモールド樹脂によって覆って形成した複数の半導体モジュールを用いて構成されている。
例えば、特許文献1のインバータ装置においては、昇圧用のリアクトル、各相用スイッチングユニット、昇圧用スイッチングユニット、昇圧前平滑用コンデンサ、及び昇圧後平滑用コンデンサを含む複数の回路構成部品の中の一部を、冷却プレートの一方の面に当接させ、残りを冷却プレートの他方の面に当接させて配置している。そして、インバータ装置の各回路構成部品を効率的に冷却し、各回路構成部品を1つにまとめて効率的に配置している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−89258号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来の電力変換装置(又はインバータ装置)においては、複数の半導体モジュールから発生するノイズが、周辺の制御機器等に及ぼす影響を低減するための十分な工夫はなされていない。
本発明は、かかる従来の問題点に鑑みてなされたもので、複数の半導体モジュールの冷却効率を向上させると共に、複数の半導体モジュールから外部へ放射される電磁ノイズを効果的に遮蔽することができる電力変換装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、スイッチング素子をモールド樹脂によって覆って形成した複数の半導体モジュールを有し、上記スイッチング素子によって回転電機を制御する電力変換回路を形成してなる電力変換装置において、
上記複数の半導体モジュールは、半導体モジュール配列群として整列した状態で一対の冷却器の間に挟持してあり、該冷却器は、金属材料からなる筒形状のフレーム内に、冷媒を通過させる冷媒通路を形成してなり、
上記半導体モジュール配列群に対して、該半導体モジュール配列群が上記一対の冷却器によって挟持された挟持方向に直交する一方の側部には、上記複数の半導体モジュールへ供給する電源電圧を昇圧する回路に用いるリアクトルが配設してあり、該リアクトルは、金属材料からなるリアクトルケース内に収容してあり、
上記一対の冷却器によって、上記複数の半導体モジュールの冷却を行うと共に、該複数の半導体モジュールから上記挟持方向へ放射される電磁ノイズを遮蔽し、かつ上記リアクトルケースによって、上記複数の半導体モジュールから上記一方の側部へ放射される電磁ノイズを遮蔽するよう構成したことを特徴とする電力変換装置にある(請求項1)。
【0006】
本発明の電力変換装置においては、複数の半導体モジュールにおけるスイッチング素子から生じたノイズが、周辺の制御機器等に及ぼす影響を低減させるための工夫を行っている。
本発明においては、複数の半導体モジュールによる半導体モジュール配列群を一対の冷却器の間に挟持することによって、複数の半導体モジュールの冷却効率を向上させることができる。また、リアクトルを収容するリアクトルケースを利用することによって、複数の半導体モジュールの一方の側部へ放射される電磁ノイズを遮蔽することができる。また、一対の冷却器によって、半導体モジュールの挟持方向へ放射される電磁ノイズを遮蔽することもできる。これにより、複数の半導体モジュールから発生する電磁ノイズが、周辺の制御機器等に及ぼす影響をより効果的に低減させることができる。
【0007】
それ故、本発明の電力変換装置によれば、複数の半導体モジュールの冷却効率を向上させると共に、複数の半導体モジュールから発生する電磁ノイズが、周辺の制御機器等に及ぼす影響をより効果的に低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施例において、電力変換装置における各半導体モジュール、リアクトル等の平面配置状態を示す説明図。
【図2】実施例において、電力変換装置を示す図で、図1におけるA−A線矢視断面説明図。
【図3】実施例において、電力変換装置を示す図で、図1におけるB−B線矢視断面説明図。
【図4】実施例において、半導体モジュールの平面状態を示す説明図。
【図5】実施例において、電力変換回路の概略的な構成を示す回路図。
【図6】実施例における、支持部材に遮蔽壁を設けた電力変換装置を示す図で、図1におけるB−B線矢視断面相当の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
上述した本発明の電力変換装置における好ましい実施の形態につき説明する。
本発明において、上記リアクトルケースの1つの表面は、上記半導体モジュール配列群を上記一方の側部から覆い、上記リアクトルケースの他の1つの表面は、上記一対の冷却器の一方に対面接触させることが好ましい(請求項2)。
この場合には、一対の冷却器の一方によって、リアクトルケースを介してリアクトルを冷却することができる。
【0010】
また、上記一対の冷却器は、上記半導体モジュール配列群の上記一方の側部とは反対側の側部に、上記冷媒を通過させる冷媒配管を接続して構成し、該冷媒配管によって、上記複数の半導体モジュールから上記反対側の側部へ放射される電磁ノイズを遮蔽するよう構成することが好ましい(請求項3)。
この場合には、一対の冷却器における冷媒配管を利用して、複数の半導体モジュールから反対側の側部へ放射される電磁ノイズを遮蔽することができ、複数の半導体モジュールから発生する電磁ノイズが、周辺の制御機器等に及ぼす影響をさらに効果的に低減させることができる。
【0011】
また、上記複数の半導体モジュール、上記一対の冷却器及び上記リアクトルケースは、支持部材に対して配設し、該支持部材において、上記半導体モジュール配列群の上記一方の側部とは反対側の側部には、上記複数の半導体モジュールから上記反対側の側部へ放射される電磁ノイズを遮蔽するための遮蔽壁を設けることもできる(請求項4)。
この場合には、支持部材における遮蔽壁によって、半導体モジュールの一方の側部とは反対側の側部へ放射される電磁ノイズを遮蔽することができ、複数の半導体モジュールから発生する電磁ノイズが、周辺の制御機器等に及ぼす影響をさらに効果的に低減させることができる。
【0012】
また、上記半導体モジュールは、その一方側に、電源又は上記回転電機に接続されるパワー端子を配設すると共に、その他方側に、制御回路に接続される制御端子を配設してなり、上記半導体モジュール配列群は、上記一方の側部及び反対側の側部と直交する直交側部の一方側と他方側とに並列に並ぶ状態で上記複数の半導体モジュールを配列してなり、該複数の半導体モジュールは、上記パワー端子を上記直交側部の直交方向外側に向けると共に上記制御端子を上記直交側部の直交方向内側に向けた状態で配列してあり、上記一対の冷却器は、それぞれ上記直交側部の一方側に並ぶ複数の半導体モジュールに接触する一方側冷却部と、上記直交側部の他方側に並ぶ複数の半導体モジュールに接触する他方側冷却部とを、上記一方の側部において連結してなり、上記冷媒配管は、上記一対の冷却器における上記一方側冷却部に接続した一方側冷媒配管と、上記一対の冷却器における上記他方側冷却部に接続した他方側冷媒配管とからなることが好ましい(請求項5)。
【0013】
この場合には、電力変換装置における各構成部品の配置関係が適切であり、電力変換装置の小型化を図ることができる。また、半導体モジュール配列群においてパワー端子を設けた直交側部の直交方向外側は、このパワー端子を電源もしくはコンデンサ又は回転電機へ接続するためのスペースとして空けておくことができる。そのため、制御端子に比べて断面積が大きいパワー端子を、互いに反対の方向として直交側部の直交方向外側に向けることによって、パワー端子の配線スペースを確保し、電源又は回転電機に対するパワー端子の接続組付性を向上させることができる。
【0014】
また、この場合には、各半導体モジュールにおける制御端子同士が、半導体モジュール配列群の直交側部の直交方向内側において向き合い、各半導体モジュールにおけるパワー端子は、いずれも制御端子から最も離れる方向に向けることができる。そのため、パワー端子に流れる大電流が、制御端子にノイズ電流として重畳してしまうことを抑制することができ、制御端子に接続した制御回路の誤動作を防止することができる。
また、上記半導体モジュールにおいて、電源に接続されるパワー端子とは、電源に直接接続されることのみを意味せず、平滑コンデンサ等を介して電源に接続されることも意味する。例えば、電源の電圧を昇圧する昇圧回路を用いる場合には、パワー端子は、昇圧後の平滑コンデンサを介して電源に接続することができる。
【実施例】
【0015】
以下に、本発明の電力変換装置にかかる実施例につき、図面を参照して説明する。
本例の電力変換装置1は、図1に示すごとく、スイッチング素子31をモールド樹脂32によって覆って形成した複数の半導体モジュール3を有し、スイッチング素子31によって回転電機5A、5Bを制御する電力変換回路6を形成してなるものである。
図2、図3に示すごとく、複数の半導体モジュール3は、半導体モジュール配列群30として整列した状態で一対の冷却器4A、4Bの間に挟持してある。この冷却器4は、金属材料(アルミニウム等)からなる筒形状のフレーム内に、冷媒を通過させる冷媒通路40を形成してなる。
【0016】
半導体モジュール配列群30に対して、半導体モジュール配列群30が一対の冷却器4A、4Bによって挟持された挟持方向Eに直交する一方の側部101には、複数の半導体モジュール3へ供給する電源電圧を昇圧する回路に用いるリアクトル63が配設してある。このリアクトル63は、金属材料(アルミニウム等)からなるリアクトルケース631内に収容してある。
そして、本例の電力変換装置1は、一対の冷却器4A、4Bによって、複数の半導体モジュール3の冷却を行うと共に、複数の半導体モジュール3から挟持方向Eへ放射される電磁ノイズを遮蔽し、かつリアクトルケース631によって、複数の半導体モジュール3から一方の側部101へ放射される電磁ノイズを遮蔽するよう構成してある。
【0017】
以下に、本例の電力変換装置1につき、図1〜図6を参照して詳説する。
図5に示すごとく、本例の電力変換装置1は、ハイブリッド自動車又は電気自動車において車両駆動用(車両走行用)の回転電機(モータジェネレータ)5A、5Bを制御するために用いる。本例の電力変換装置1は、自動車に配設した車両駆動用の2つの回転電機5A、5Bを制御するよう構成してある。
図2、図3に示すごとく、本例の電力変換装置1は、一対の冷却器4A、4Bの間に半導体モジュール配列群30を挟持する挟持方向Eの一方側に回路基板2を有し、他方側に支持部材(支持プレート)47を有している。回路基板2には、各半導体モジュール3のスイッチング素子31の制御動作を行う部品による制御回路が形成してある。支持部材47は、半導体モジュール配列群30を挟持する一対の冷却器4A、4B及び回路基板2を配設するよう構成してある。
【0018】
また、図4に示すごとく、本例の半導体モジュール3は、その一方側に、昇圧前平滑コンデンサ62又は上記回転電機5A、5Bに接続されるパワー端子33を配設すると共に、その他方側に、制御回路に接続される制御端子34を配設してなる。
図1、図2に示すごとく、半導体モジュール配列群30は、一対の冷却器4A、4Bの間において、一方の側部101及び反対側の側部102と直交する直交側部103の一方側F1と他方側F2とに並列に並ぶ状態で複数の半導体モジュール3を配列してなる。複数の半導体モジュール3は、パワー端子33を直交側部103の直交方向Fの外側に向けると共に制御端子34を直交側部103の直交方向Fの内側に向けた状態で配列してある。
本例の一対の冷却器4A、4Bは、それぞれ平板形状を有しており、半導体モジュール配列群30は、平板形状の冷却器4A、4B同士の間において、平面状に配列してある。
【0019】
図1に示すごとく、本例の一対の冷却器4A、4Bは、それぞれ直交側部103の一方側F1に並ぶ複数の半導体モジュール3に接触する一方側冷却部41と、直交側部103の他方側F2に並ぶ複数の半導体モジュール3に接触する他方側冷却部42とを、一方の側部101の連結部43において連結してなる。本例においては、回路基板2の側に配設した冷却器4における連結部43Aは、リアクトルケース631を対面接触させるために、一方の側部101の外方へ曲線状(U字形状)に突出して形成してある。また、支持部材47の側に配設した冷却器4における連結部43Bは、リアクトルケース631の配置スペースを確保するために、直交側部103の形成方向(直交方向F)に直線状に形成してある。
図3に示すごとく、本例のリアクトルケース631の1つの表面632は、半導体モジュール配列群30を一方の側部101から覆い、リアクトルケース631の他の1つの表面は、回路基板2の側に配設した冷却器4Aに対面接触させてある。そして、回路基板2の側に配設した冷却器4Aによって、リアクトルケース631を介してリアクトル63を冷却することができる。
【0020】
図1、図3に示すごとく、一対の冷却器4A、4Bは、半導体モジュール配列群30の一方の側部101とは反対側の側部102に、冷媒を通過させる冷媒配管44を接続して構成してある。この冷媒配管44は、一方側冷却部41の反対側の側部102と、他方側冷却部42の反対側の側部102とに接続してある。また、各冷媒配管44は、回路基板2の側の冷却器4Aの側から配管して、一対の冷却器4A、4Bの両方に繋がっている。そして、冷媒配管44の一部は、一対の冷却器4A、4Bの間に位置して、一列に配列された半導体モジュール3に対する反対側の側部102に隣接して配置されている。そして、本例の電力変換装置1においては、一対の冷媒配管44によって、複数の半導体モジュール3から反対側の側部102へ放射される電磁ノイズを遮蔽するよう構成してある。これにより、一対の冷却器4A、4Bにおける冷媒配管44を利用して、複数の半導体モジュール3から反対側の側部102へ放射される電磁ノイズを遮蔽することができる。
【0021】
また、一方側冷却部41に接続された冷媒配管44は、一対の冷却器4A、4Bへの冷媒の入口を形成し、他方側冷却部42に接続された冷媒配管44は、一対の冷却器4A、4Bへの冷媒の出口を形成している。そして、冷媒は、ラジエータからポンプによって入口を形成する冷媒配管44に送られ、入口を形成する冷媒配管44から一対の冷却器4A、4Bの冷媒通路40を流れて、半導体モジュール配列群30及びリアクトル63を冷却し、出口を形成する冷媒配管44から排出される。
【0022】
図5に示すごとく、本例の電力変換回路6は、回転電機5A、5Bを制御するインバータ回路6Aと、インバータ回路6Aへ供給する電圧を昇圧する昇圧回路6Bとからなる。一対の冷却器4A、4Bの間において、インバータ回路6Aを構成する半導体モジュール3であるインバータ用モジュール3A、3Bと、昇圧回路6Bを構成する半導体モジュール3である昇圧用モジュール3C、3Dとが配列してある。一対の冷却器4A、4Bの間においては、直交側部103の一方側F1に配列した3つの第1インバータ用モジュール3Aのスイッチング素子31によって、一方の回転電機5Aを制御する第1ブリッジ回路6A(1)が形成してあり、直交側部103の他方側F2に配列した3つの第2インバータ用モジュール3Bのスイッチング素子31によって、他方の回転電機5Bを制御する第2ブリッジ回路6A(2)が形成してある。
【0023】
電源61には、昇圧前平滑コンデンサ62が設けてあり、昇圧後のプラス側とマイナス側の配線の間には、昇圧後平滑コンデンサ64が設けてある。昇圧回路6Bは、リアクトル63及び昇圧用モジュール3C、3Dにおけるスイッチング素子31のスイッチング動作によって昇圧した電圧を、昇圧後平滑コンデンサ64によって平滑して蓄えるよう構成してある。
【0024】
図5に示すごとく、各半導体モジュール3(各インバータ用モジュール3A、3B及び各昇圧用モジュール3C、3D)は、還流ダイオード65を並列に接続し、IGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)から構成したスイッチング素子31を、2つ直列に接続して構成してある。なお、スイッチング素子31は、MOSFET(電界効果トランジスタ)等から構成することもできる。また、図4に示すごとく、各半導体モジュール3は、板形状に形成してあり、板形状の平面方向における一方側からパワー端子33を引き出し、他方側から制御端子34を引き出して形成してある。
【0025】
図4、図5に示すごとく、各半導体モジュール3は、パワー端子33として、一方のスイッチング素子31のコレクタ端子(又はドレイン端子)が昇圧後平滑コンデンサ64のプラス側に接続されるP端子と、他方のスイッチング素子31のエミッタ端子(又はソース端子)が昇圧後平滑コンデンサ64のマイナス側に接続されるN端子と、両方のスイッチング素子31同士の間に接続されるO端子(出力端子)とを有している。また、各半導体モジュール3は、制御端子34として、各スイッチング素子31のゲート端子にスイッチング信号を送信するための端子、スイッチング素子31に流れる電流を測定するための端子、スイッチング素子31の温度を測定するための端子等を有している。本例の半導体モジュール3においては、各スイッチング素子31について、5本ずつ制御端子34が形成されている。図4、図5において、各半導体モジュール3のO端子(出力端子)を記号Oで示し、P端子を記号Pで示し、N端子を記号Nで示す。
【0026】
図5に示すごとく、本例の昇圧回路6Bにおいては、2つの昇圧用モジュール3C、3Dを昇圧後平滑コンデンサ64に対して並列に接続して構成してある。図1に示すごとく、第1昇圧用モジュール3Cは、一対の冷却器4A、4Bの間の直交側部103の一方側F1において、3つの第1インバータ用モジュール3Aと並んで配置してある。第2昇圧用モジュール3Dは、一対の冷却器4A、4Bの間の直交側部103の他方側F2において、3つの第2インバータ用モジュール3Bと並んで配置してある。
そして、一対の冷却器4A、4Bの間における直交側部103の一方側F1においては、3つの第1インバータ用モジュール3Aと1つの第1昇圧用モジュール3Cとが1列に整列して配設してあり、一対の冷却器4A、4Bの間における直交側部103の他方側F2においては、3つの第2インバータ用モジュール3Bと1つの第2昇圧用モジュール3Dとが1列に整列して配設してある。
【0027】
また、図1に示すごとく、一対の冷却器4A、4Bの間において、直交側部103の一方側F1に配列した3つの第1インバータ用モジュール3Aの本体部と、直交側部103の他方側F2に配列した3つの第2インバータ用モジュール3Bの本体部とは、直交側部103の一方側F1と他方側F2とに対称に配列してある。また、一対の冷却器4A、4Bの間において、直交側部103の一方側F1に配置した1つの第1昇圧用モジュール3Cの本体部と、直交側部103の他方側F2に配置した1つの第2昇圧用モジュール3Dの本体部とは、直交側部103の一方側F1と他方側F2とに対称に配列してある。
なお、各モジュール3A〜Dの本体部とは、スイッチング素子31をモールド樹脂32によってモールド成形した部分のことをいい、パワー端子33及び制御端子34がモールド樹脂32から引き出された部分を除く部分のことをいう。
【0028】
また、図2に示すごとく、一対の冷却器4A、4Bの間において、直交側部103の一方側F1に配列した3つの第1インバータ用モジュール3A及び1つの第1昇圧用モジュール3Cにおける各パワー端子33は、直交側部103の直交方向Fの外側に向けて引き出され、回路基板2の配設方向とは反対側に屈曲している。一方、一対の冷却器4A、4Bの間において、直交側部103の一方側F1に配列した3つの第1インバータ用モジュール3A及び1つの第1昇圧用モジュール3Cにおける各制御端子34は、直交側部103の直交方向Fの内側に向けて引き出され、回路基板2の配設方向に屈曲している。
【0029】
また、一対の冷却器4A、4Bの間において、直交側部103の他方側F2に配列した3つの第2インバータ用モジュール3B及び1つの第2昇圧用モジュール3Dにおける各パワー端子33は、直交側部103の直交方向Fの外側に向けて引き出され、回路基板2の配設方向とは反対側に屈曲している。一方、一対の冷却器4A、4Bの間において、直交側部103の他方側F2に配列した3つの第2インバータ用モジュール3B及び1つの第2昇圧用モジュール3Dにおける各制御端子34は、直交側部103の直交方向Fの内側に向けて引き出され、回路基板2の配設方向に屈曲している。そして、各パワー端子33は、昇圧後平滑コンデンサ64のプラス側もしくはマイナス側、又は回転電機5A、5Bのコイル(本例では3相のステータにおけるコイル)に、バスバー等を介して接続される。また、各半導体モジュール3における制御端子34は、回路基板2に配線される。
【0030】
図2、図3に示すごとく、本例の電力変換装置1は、一対の冷却器4A、4Bの間に半導体モジュール配列群30を配置してなるパワースタック11に対する一方の表面側には、回路基板2との間に板バネ45及びバックプレート46を積層して配置し、パワースタック11に対する他方の表面側には、支持部材47を積層して配置している。バックプレート46は、パワースタック11における冷却器4A、4Bに対面配置し、板バネ45による局所的な弾性荷重を受ける。そして、板バネ45と支持部材47とを、支持部材47に形成した支柱472を介してビス等によって固定したときには、これらの間に配置するパワースタック11に、板バネ45による押圧荷重を作用させて、各半導体モジュール3に冷却器4A、4Bを密着させる。また、支持部材47には、パワースタック11を配設した側と反対側に、コンデンサ62、64及びリアクトル63が配設してある。また、回路基板2と支持部材47とは、支持部材47に形成した支柱471を介してビス等によって固定される。
【0031】
なお、上記冷媒配管44を半導体モジュール3に対する反対側の側部102に配置しない場合には、図6に示すごとく、複数の半導体モジュール3から反対側の側部102へ放射される電磁ノイズを遮蔽するための遮蔽壁475を、金属材料(アルミニウム等)の支持部材47に設けることもできる。この場合には、支持部材47における遮蔽壁475によって、半導体モジュール3の反対側の側部102へ放射される電磁ノイズを遮蔽することができる。この場合においても、冷媒配管44及び遮蔽壁475以外の構造は、上述した構造と同様にすることができる。
【0032】
本例の電力変換装置1においては、複数の半導体モジュール3におけるスイッチング素子31から生じたノイズが、回路基板2における制御回路等の周辺の制御機器等に及ぼす影響を低減させるための工夫を行っている。
本例においては、複数の半導体モジュール3による半導体モジュール配列群30を一対の冷却器4A、4Bの間に挟持することによって、複数の半導体モジュール3の冷却効率を向上させることができる。また、リアクトル63を収容するリアクトルケース631を利用することによって、複数の半導体モジュール3の一方の側部101へ放射される電磁ノイズを遮蔽することができる。また、一対の冷却器4A、4Bにおける冷媒配管44を利用することによって、複数の半導体モジュール3から反対側の側部102へ放射される電磁ノイズを遮蔽することができる。また、一対の冷却器4A、4Bによって、複数の半導体モジュール3の挟持方向Eへ放射される電磁ノイズを遮蔽することもできる。これにより、複数の半導体モジュール3から発生する電磁ノイズが、回路基板2における制御回路等の周辺の制御機器等に及ぼす影響をより効果的に低減させることができる。
【0033】
それ故、本例の電力変換装置1によれば、複数の半導体モジュール3の冷却効率を向上させると共に、複数の半導体モジュール3から発生する電磁ノイズが、周辺の制御機器等に及ぼす影響をより効果的に低減させることができる。
【0034】
また、本例においては、各構成部品の配置関係が適切であり、電力変換装置1の小型化を図ることができる。また、半導体モジュール配列群30においてパワー端子33を設けた直交側部103の直交方向Fの外側は、このパワー端子33を昇圧前平滑コンデンサ62又は回転電機5A、5Bへ接続するためのスペースとして空けておくことができる。そのため、制御端子34に比べて断面積が大きいパワー端子33を、互いに反対の方向として直交側部103の直交方向Fの外側に向けることによって、パワー端子33の配線スペースを確保し、パワー端子33の接続組付性を向上させることができる。
また、本例においては、各半導体モジュール3における制御端子34同士が、半導体モジュール配列群30の直交側部103の直交方向Fの内側において向き合い、各半導体モジュール3におけるパワー端子33は、いずれも制御端子34から最も離れる方向に向けることができる。そのため、パワー端子33に流れる大電流が、制御端子34にノイズ電流として重畳してしまうことを抑制することができ、制御端子34に接続した制御回路の誤動作を防止することができる。
【符号の説明】
【0035】
1 電力変換装置
101 一方の側部
102 反対側の側部
103 直交側部
2 回路基板
3 半導体モジュール
30 半導体モジュール配列群
31 スイッチング素子
32 モールド樹脂
4 冷却器
40 冷媒通路
41 一方側冷却部
42 他方側冷却部
43 連結部
44 冷媒配管
5A、5B 回転電機
6 電力変換回路
63 リアクトル
631 リアクトルケース
E 挟持方向
F 直交方向
F1 一方側
F2 他方側

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチング素子をモールド樹脂によって覆って形成した複数の半導体モジュールを有し、上記スイッチング素子によって回転電機を制御する電力変換回路を形成してなる電力変換装置において、
上記複数の半導体モジュールは、半導体モジュール配列群として整列した状態で一対の冷却器の間に挟持してあり、該冷却器は、金属材料からなる筒形状のフレーム内に、冷媒を通過させる冷媒通路を形成してなり、
上記半導体モジュール配列群に対して、該半導体モジュール配列群が上記一対の冷却器によって挟持された挟持方向に直交する一方の側部には、上記複数の半導体モジュールへ供給する電源電圧を昇圧する回路に用いるリアクトルが配設してあり、該リアクトルは、金属材料からなるリアクトルケース内に収容してあり、
上記一対の冷却器によって、上記複数の半導体モジュールの冷却を行うと共に、該複数の半導体モジュールから上記挟持方向へ放射される電磁ノイズを遮蔽し、かつ上記リアクトルケースによって、上記複数の半導体モジュールから上記一方の側部へ放射される電磁ノイズを遮蔽するよう構成したことを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
請求項1において、上記リアクトルケースの1つの表面は、上記半導体モジュール配列群を上記一方の側部から覆っており、上記リアクトルケースの他の1つの表面は、上記一対の冷却器の一方に対面接触していることを特徴とする電力変換装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、上記一対の冷却器は、上記半導体モジュール配列群の上記一方の側部とは反対側の側部に、上記冷媒を通過させる冷媒配管を接続してなり、
該冷媒配管によって、上記複数の半導体モジュールから上記反対側の側部へ放射される電磁ノイズを遮蔽するよう構成したことを特徴とする電力変換装置。
【請求項4】
請求項1又は2において、上記複数の半導体モジュール、上記一対の冷却器及び上記リアクトルケースは、支持部材に対して配設してあり、
該支持部材において、上記半導体モジュール配列群の上記一方の側部とは反対側の側部には、上記複数の半導体モジュールから上記反対側の側部へ放射される電磁ノイズを遮蔽するための遮蔽壁が設けてあることを特徴とする電力変換装置。
【請求項5】
請求項3において、上記半導体モジュールは、その一方側に、電源又は上記回転電機に接続されるパワー端子を配設すると共に、その他方側に、制御回路に接続される制御端子を配設してなり、
上記半導体モジュール配列群は、上記一方の側部及び反対側の側部と直交する直交側部の一方側と他方側とに並列に並ぶ状態で上記複数の半導体モジュールを配列してなり、該複数の半導体モジュールは、上記パワー端子を上記直交側部の直交方向外側に向けると共に上記制御端子を上記直交側部の直交方向内側に向けた状態で配列してあり、
上記一対の冷却器は、それぞれ上記直交側部の一方側に並ぶ複数の半導体モジュールに接触する一方側冷却部と、上記直交側部の他方側に並ぶ複数の半導体モジュールに接触する他方側冷却部とを、上記一方の側部において連結してなり、
上記冷媒配管は、上記一対の冷却器における上記一方側冷却部に接続した一方側冷媒配管と、上記一対の冷却器における上記他方側冷却部に接続した他方側冷媒配管とからなることを特徴とする電力変換装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2010−200433(P2010−200433A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−40494(P2009−40494)
【出願日】平成21年2月24日(2009.2.24)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】