説明

電力貯蔵デバイスセル

【課題】エネルギー密度を向上させることができる電力貯蔵デバイスセルを得る。
【解決手段】電池負極板部材7と電池正極板部材8とを有し、積層方向両端部に電池正極板部材8が配置された電池本体部9と、貫通孔18aが形成された共通負極集電箔18および共通負極電極層19を有し、電池本体部9の積層方向両端部の電池正極板部材8に重ねられた共通負極板部材10と、キャパシタ正極集電箔20およびキャパシタ正極電極層21を有し、共通負極板部材10とキャパシタ正極集電箔20との間にキャパシタ正極電極層21が配置されたキャパシタ正極板部材11と、電池負極板部材7と電池正極板部材8との間、電池正極板部材8と共通負極板部材10との間、共通負極板部材10とキャパシタ正極板部材11との間のそれぞれに設けられたセパレータ12とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、リチウムイオン電池とリチウムイオンキャパシタとの構成を内蔵した電力貯蔵デバイスセルに関する。
【背景技術】
【0002】
電力貯蔵デバイスセルとしては、電気二重層キャパシタ、リチウムイオン電池(LIB)およびリチウムイオンキャパシタ(LIC)等がある。電気二重層キャパシタ(単にキャパシタ、スーパーキャパシタ、電気化学キャパシタなどとも呼称される)は、セパレータを挟んで、互いに対向する分極性電極(正極および負極)を備え、電解液中においてこの分極性電極の表面に形成される電気二重層の静電容量を利用するものである。リチウムイオン電池は、リチウムをカーボン負極に安定的に充電貯蔵することができることが特長であり、正極にはコバルト、ニッケル、マンガンなどを含んだ酸化物が用いられる。
【0003】
リチウムイオンキャパシタは、電気二重層キャパシタとリチウムイオン電池とのハイブリッド型として開発されたものである。このリチウムイオンキャパシタは、電気二重層キャパシタの正極とリチウムイオン電池の負極とを備えたものであり、電気二重層キャパシタよりも高い電圧が得られる反面、下限電圧を0Vにすることが困難であることが欠点となっている。
【0004】
電気二重層キャパシタは、アルミ電解コンデンサ程の瞬発力を有していないが、エネルギーの出力密度が大きく、短時間での充放電ができるという利点を有している。一方、リチウムイオン電池は、電力貯蔵デバイスセルの中では、圧倒的に高いエネルギー密度、即ち持続力を持った電力貯蔵デバイスセルである。電気二重層キャパシタの瞬発力とリチウムイオン電池の持続力との両方を兼ね備えた電力貯蔵デバイスセルを実現することができれば、ハイブリッド自動車等のブレーキ回生等、さまざまな用途に電力貯蔵デバイスセルを利用することができる。
【0005】
従来、リチウムイオン電池とリチウムイオンキャパシタとの構成を内蔵した電力貯蔵デバイスセルとして、リチウムイオンキャパシタ正極、共通負極およびリチウムイオン電池正極が順に重ねられ、リチウムイオンキャパシタ正極と共通負極との間、共通負極とリチウムイオン電池正極との間のそれぞれにセパレータが設けられた電力貯蔵デバイスセルが知られている。
【0006】
共通負極は、貫通孔が形成された負極集電箔およびこの負極集電箔の一方の面に塗布された負極電極層を有している。負極電極層は、リチウムイオンキャパシタ正極と負極集電箔との間に配置されている。リチウムイオンキャパシタ正極は、キャパシタ正極集電箔およびこのキャパシタ正極集電箔の一方の面に塗布されたキャパシタ正極電極層を有している。キャパシタ正極電極層は、共通負極とキャパシタ正極集電箔との間に配置されている。リチウムイオン電池正極は、電池正極集電箔およびこの電池正極集電箔の一方の面に塗布された電池正極電極層を有している。電池正極電極層は、共通負極と電池正極集電箔との間に配置されている。(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
従来の電力貯蔵デバイスセルによれば、リチウムイオン電池の持続力とリチウムイオンキャパシタの瞬発力との両方の利点を生かすことができ、また、急速充電時の電流をリチウムイオンキャパシタ部分が一旦受け取った後、リチウムイオン電池部分に電流が流れるので、急速充電時におけるリチウムイオン電池部分の劣化を抑制することができ、リチウムイオン電池部分のサイクル寿命を延ばすことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−141181号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、キャパシタ正極電極層と電池正極電極層とが互いに同じ面積となっているので、電力貯蔵デバイスセル全体の中におけるリチウムイオン電池部分が占める部分が小さくなってしまう。これにより、電力貯蔵デバイスセルのエネルギー密度が低くなってしまうという問題点があった。
【0010】
この発明は、エネルギー密度を向上させることができる電力貯蔵デバイスセルを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明に係る電力貯蔵デバイスセルは、電池負極集電箔および前記電池負極集電箔の両面に設けられた電池負極電極層を含んだリチウムイオン電池負極部と電池正極集電箔および前記電池正極集電箔の両面に設けられた電池正極電極層を含んだリチウムイオン電池正極部とを有し、積層方向端部に前記リチウムイオン電池正極部が配置されるように前記リチウムイオン電池負極部と前記リチウムイオン電池正極部とが交互に複数積層されたリチウムイオン電池本体部と、貫通孔が形成された共通負極集電箔および前記共通負極集電箔の両面に設けられた共通負極電極層を有し、前記リチウムイオン電池本体部の積層方向端部に配置された前記リチウムイオン電池正極部に重ねられた共通負極部と、キャパシタ正極集電箔および前記キャパシタ正極集電箔に設けられたキャパシタ正極電極層を有し、前記共通負極部と前記キャパシタ正極集電箔との間に前記キャパシタ正極電極層が配置されるように前記共通負極部に重ねられたリチウムイオンキャパシタ正極部と、前記リチウムイオン電池負極部と前記リチウムイオン電池正極部との間、前記リチウムイオン電池正極部と前記共通負極部との間、前記共通負極部と前記リチウムイオンキャパシタ正極部との間のそれぞれに設けられたセパレータと、前記リチウムイオン電池本体部、前記共通負極部、前記リチウムイオンキャパシタ正極部および前記セパレータを収容する容器とを備え、前記電池負極集電箔および前記共通負極集電箔は、電気的に接続され、前記電池正極集電箔および前記キャパシタ正極集電箔は、電気的に接続されている。
【発明の効果】
【0012】
この発明に係る電力貯蔵デバイスセルによれば、キャパシタ正極電極層の面積よりも電池正極電極層の面積を大きくすることができるので、電力貯蔵デバイスセル全体の中のリチウムイオン電池部分が占める部分を大きくすることができる。その結果、電力貯蔵デバイスセルのエネルギー密度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】この発明の実施の形態1に係る電力貯蔵デバイスセルを示す正面図である。
【図2】図1のII−II線に沿った矢視断面図である。
【図3】この発明の実施の形態2に係る電力貯蔵デバイスセルを示す正面図である。
【図4】図3のIV−IV線に沿った矢視断面図である。
【図5】この発明の実施の形態3に係る電力貯蔵デバイスセルを示す断面図である。
【図6】この発明の実施の形態4に係る電力貯蔵デバイスセルを示す断面図である。
【図7】この発明の実施の形態5に係る電力貯蔵デバイスセルを示す正面図である。
【図8】図7のVIII−VIII線に沿った矢視断面図である。
【図9】この発明の実施の形態6に係る電力貯蔵デバイスセルを示す正面図である。
【図10】図9のX−X線に沿った矢視断面図である。
【図11】この発明の実施の形態7に係る電力貯蔵デバイスセルを示す断面図である。
【図12】この発明の実施の形態8に係る電力貯蔵デバイスセルを示す断面図である。
【図13】図12の共通負極板部材を電池本体部側から視た平面図である。
【図14】図13の要部を示す拡大図である。
【図15】図12の共通負極集電箔の貫通孔、共通負極電極層の貫通孔および凹部を形成するための切歯ロールを示す斜視図および写真である。
【図16】図15の切歯ロールにより貫通孔が形成された共通負極集電箔を示す斜視図である。
【図17】この発明の実施の形態9に係る電力貯蔵デバイスセルを示す断面図である。
【図18】この発明の実施の形態10に係る電力貯蔵デバイスセルを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1に係る電力貯蔵デバイスセルを示す正面図、図2は図1のII−II線に沿った矢視断面図である。図2では、図1における電力貯蔵デバイスセルの奥行方向について電力貯蔵デバイスセルを拡大して示している。この発明の実施の形態1に係る電力貯蔵デバイスセルは、内部に電解液が満たされる容器1と、容器1の内側に設けられた電力貯蔵デバイスセル本体2と、電力貯蔵デバイスセル本体2に接続された負極端子3と、負極端子3を容器1に取り付ける負極シール部材4と、電力貯蔵デバイスセル本体2に接続された正極端子5と、正極端子5を容器1に取り付ける正極シール部材6とを備えている。
【0015】
電力貯蔵デバイスセル本体2は、複数枚の電池負極板部材(リチウムイオン電池負極部)7および複数枚の電池正極板部材(リチウムイオン電池正極部)8を有した電池本体部(リチウムイオン電池本体部)9と、電池本体部9を挟むように電池本体部9に重ねられた一対の共通負極板部材(共通負極部)10と、各共通負極板部材10に重ねられた一対のキャパシタ正極板部材(リチウムイオンキャパシタ正極部)11と、電池負極板部材7と電池正極板部材8との間、電池正極板部材8と共通負極板部材10との間、共通負極板部材10とキャパシタ正極板部材11との間のそれぞれに設けられたセパレータ12と、各キャパシタ正極板部材11に重ねられた一対の電解液リザーバ13とを備えている。
【0016】
電池負極板部材7および電池正極板部材8のそれぞれは、板形状に形成されている。電池負極板部材7および電池正極板部材8は、電池本体部9の積層方向両端部に電池正極板部材8が配置されるように、交互に積層されている。
【0017】
電池負極板部材7、電池正極板部材8、電池負極板部材7と電池正極板部材8との間に配置されたセパレータ12、共通負極板部材10および共通負極板部材10と電池正極板部材8との間に配置されたセパレータ12によって、電力貯蔵デバイスセルのリチウムイオン電池(LIB)部分が構成されている。
【0018】
共通負極板部材10、キャパシタ正極板部材11および共通負極板部材10とキャパシタ正極板部材11との間に配置されたセパレータ12によって、電力貯蔵デバイスセルのリチウムイオンキャパシタ(LIC)部分が構成されている。一対のリチウムイオンキャパシタ部分が、リチウムイオン電池部分を挟んでいる。
【0019】
電池負極板部材7は、電池負極集電箔14と、電池負極集電箔14の両面に塗布された電池負極電極層15とを有している。電池負極集電箔14は、厚さ10μm程度の銅箔またはアルミニウム箔から構成されている。電池負極電極層15は、リチウム二次電池に使用される黒鉛、ハードカーボン、非晶質カーボンまたはメソカーボンマイクロビーズ黒鉛等のカーボン微粒子を含んでいる。カーボン微粒子の平均粒子径は、1〜20μm程度となっている。
【0020】
電池正極板部材8は、電池正極集電箔16と、電池正極集電箔16の両面に塗布された電池正極電極層17とを有している。電池正極集電箔16は、厚さ20μm程度のアルミニウム箔から構成されている。電池正極電極層17は、リチウム含有金属酸化物微粒子を含んでいる。リチウム含有金属酸化物微粒子としては、オリビン形リン酸鉄リチウム(LiFePO)、リチウムコバルト酸化物(LiCoO)、リチウムニッケル酸化物(LiNiO)またはリチウムマンガン酸化物(LiMn)等が用いられている。リチウム含有金属酸化物微粒子の平均粒子径は、数μm程度が望ましい。
【0021】
共通負極板部材10は、板形状に形成されている。共通負極板部材10は、電池本体部9の積層方向両端部に重ねられている。共通負極板部材10は、複数の貫通孔18aが形成された共通負極集電箔18と、共通負極集電箔18の両面に塗布され複数の貫通孔19aが形成された共通負極電極層19とを有している。貫通孔18aおよび貫通孔19aは、互いに重なるように配置されている。共通負極集電箔18は、電池負極集電箔14と同様に、厚さ10μm程度の銅箔またはアルミニウム箔から構成されている。共通負極電極層19は、電池負極電極層15と同様に、リチウム二次電池に使用される黒鉛、ハードカーボン、非晶質カーボンまたはメソカーボンマイクロビーズ黒鉛等のカーボン微粒子が用いられている。カーボン微粒子の平均粒子径は、1〜20μm程度となっている。貫通孔18aおよび貫通孔19aは、共通負極集電箔18の両面に共通負極電極層19を塗布した後に、剣山等のような複数の針部材を有した貫通孔形成装置を用いて形成されている。なお、共通負極集電箔18としては、パンチングメタルまたはエキスパンドメタル等を用いてもよい。また、共通負極電極層19には、貫通孔19aが形成されなくてもよい。
【0022】
貫通孔18aの開口面積は、共通負極集電箔18の全面積に対して1%〜5%程度となっている。これにより、電力貯蔵デバイスセルが充電される初期に、リチウムイオン電池部分の電池正極電極層17に含まれるリチウムイオンが、貫通孔18aを通って、リチウムイオンキャパシタ部分に移動することができる。貫通孔18aの開口面積を調整することにより、リチウムイオンが貫通孔18aを透過するときのイオン伝導抵抗を調整することができるので、電池正極板部材8とキャパシタ正極板部材11との間の電気化学電位の差異を制御することができる。
【0023】
キャパシタ正極板部材11は、板形状に形成されている。キャパシタ正極板部材11は、キャパシタ正極集電箔20と、キャパシタ正極集電箔20の一方の面に塗布されたキャパシタ正極電極層21とを有している。キャパシタ正極板部材11は、共通負極板部材10とキャパシタ正極集電箔20との間にキャパシタ正極電極層21が配置されるように共通負極板部材10に重ねられている。キャパシタ正極集電箔20は、厚さ20μm程度のアルミニウム箔から構成されている。キャパシタ正極電極層21は、活性炭微粒子を含んでいる。活性炭微粒子としては、フェノール樹脂、石油ピッチ、石油コークスまたはヤシガラ等を原料として、水蒸気賦活またはアルカリ賦活を施した平均粒子径が1〜20μm程度の微粒子が用いられている。
【0024】
電池正極板部材8の枚数は、キャパシタ正極板部材11の枚数よりも多いので、電池正極電極層17の総面積は、キャパシタ正極電極層21の総面積よりも大きくなっている。
【0025】
電解液は、リチウムイオン電池部分とリチウムイオンキャパシタ部分とで共用されている。電解液としては、LiPFまたはLiBF等のリチウムイオンを含んだ有機電解液が用いられている。有機電解液の有機溶媒としては、炭酸プロピレン、炭酸エチレン、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、ジメトキシメタン、ジエトキシエタン、γ‐ブチルラクトン、アセトニトリルおよびプロピオニトリルから選ばれる一種または二種以上の混合溶媒等が用いられる。
【0026】
電解液リザーバ13は、容器1の内壁とキャパシタ正極板部材11との間に配置されている。電解液リザーバ13は、キャパシタ正極集電箔20に重ねられている。電解液リザーバ13は、電力貯蔵デバイスセルの充放電に伴う電解液の膨張収縮を緩和する。
【0027】
負極端子3、電池負極集電箔14および共通負極集電箔18は、超音波溶接等により互いに接合されている。負極端子3、電池負極集電箔14および共通負極集電箔18は、互いに電気的に接続されている。
【0028】
正極端子5、電池正極集電箔16およびキャパシタ正極集電箔20は、超音波溶接等により互いに接合されている。正極端子5、電池正極集電箔16およびキャパシタ正極集電箔20は、互いに電気的に接続されている。
【0029】
セパレータ12および電解液リザーバ13の材料としては、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系多孔質紙、天然パルプ、天然セルロース、溶剤紡糸セルロースまたはバクテリアセルロース等のセルロース系材料、ガラス繊維または非フィブリル化有機繊維を含有する不織布、ナイロン66、芳香族ポリアミド、全芳香族ポリアミド、芳香族ポリエステル、全芳香族ポリエステル、全芳香族ポリエステルアミド、全芳香族ポリエーテル、全芳香族ポリアゾ化合物、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリ−p−フェニレンベンゾビスチアゾール(PBZT)、ポリ−p−フェニレンベンゾビスオキサゾール(PBO)、ポリベンゾイミダゾール(PBI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリイミド、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフィリル化フォルムあるいは多孔質フィルムを用いることができる。
【0030】
セパレータ12は、厚さが10μmから50μm程度、気孔率(空隙率)が60%から80%程度、平均気孔径が数μmから数十μmのものが用いられている。平均気孔径については様々なものがあり、同じ材料でも目付け密度で簡単に変化させることができる。
【0031】
リチウムイオンキャパシタ部分の容量(蓄電エネルギー)は、リチウムイオン電池部分の容量の1%〜5%程度の容量となっている。これにより、リチウムイオン電池部分のサイクル寿命の延命効果が十分に得ることができる。
【0032】
以上説明したように、この発明の実施の形態1に係る電力貯蔵デバイスセルによれば、キャパシタ正極電極層21の面積よりも電池正極電極層17の面積を大きくすることができるので、電力貯蔵デバイスセル全体の中のリチウムイオン電池部分が占める部分を大きくすることができる。その結果、電力貯蔵デバイスセルのエネルギー密度を向上させることができる。
【0033】
また、電池負極板部材7には貫通孔を形成する必要がなく、共通負極板部材10の共通負極集電箔18にのみ貫通孔18aが形成すればよいので、電池負極板部材7の枚数を増加させても、貫通孔18aを形成する作業は増加しない。これにより、電力貯蔵デバイスセルの製造効率の悪化を抑制することができる。
【0034】
また、電力貯蔵デバイスセルは、複数枚の電池負極板部材7と複数枚の電池正極板部材8とが交互に積層されているので、電力貯蔵デバイスセルの横幅方向および縦方向の寸法を変化させずに、電池負極板部材7および電池正極板部材8の枚数を増加させることができる。
【0035】
また、キャパシタ正極板部材11は、電池本体部9、共通負極板部材10およびキャパシタ正極板部材11の中で、最も積層方向外側に配置されているので、例えば、容器1が変形したり、外部から釘等が刺さったりした場合に、リチウムイオンキャパシタ部分が先に短絡して放電する。これにより、リチウムイオン電池部分の短絡による金属酸化物(コバルト、マンガン、ニッケルの金属酸化物の場合)からの酸素発生を防止でき、電力貯蔵デバイスセルの発火を防止することができる。
【0036】
また、キャパシタ正極板部材11は、電池本体部9、共通負極板部材10およびキャパシタ正極板部材11の中で、最も積層方向外側に配置されているので、急速充電で最も発熱する部分であるキャパシタ正極板部材11の放熱が容易となり、電力貯蔵デバイスセルの内部のリチウムイオン電池部分の温度上昇を抑制することができ、温度上昇によるリチウムイオン電池部分の劣化を抑制することができる。
【0037】
また、キャパシタ正極板部材11に隣接する電池正極板部材8に含まれるリチウムイオンは、共通負極板部材10を介して、リチウムイオンキャパシタ部分に移動するので、共通負極板部材10に隣接するリチウムイオン電池部分に含まれるリチウムイオンが、他のリチウムイオン電池部分に含まれるリチウムイオンよりも少なくなる。これにより、共通負極板部材10の電位が電池負極板部材7の電位よりも高くなり、電池負極板部材7におけるリチウム金属の析出の発生を抑制することができる。すなわち、リチウムイオンキャパシタ部分に隣接するリチウムイオン電池部分の安全性は他のリチウムイオン電池部分よりもさらに向上し、より安全な層が電力貯蔵デバイスセルの外周部を占めることができる。
【0038】
実施の形態2.
図3はこの発明の実施の形態2に係る電力貯蔵デバイスセルを示す正面図、図4は図3のIV−IV線に沿った矢視断面図である。図4では、図3における電力貯蔵デバイスセルの奥行方向について拡大して示している。この発明の実施の形態2に係る電力貯蔵デバイスセルは、負極端子3と正極端子5とが、電力貯蔵デバイスセル本体2から互いに反対方向に延びて配置されている。電力貯蔵デバイスセル本体2は、実施の形態1に記載の電解液リザーバ13ではなく、電気絶縁シート22を備えている。電気絶縁シート22は、キャパシタ正極板部材11に重ねられている。また、電気絶縁シート22は、容器1の内壁とキャパシタ正極集電箔20との間に配置されている。
【0039】
電気絶縁シート22としては、ポリプロピレン、ポリエチレンまたはポリエチレンテレフタレート製の0.1mm程度のフィルム等が用いられている。容器1とキャパシタ正極板部材11との間に電気絶縁シート22が配置されているので、容器1が外部からの衝撃を受けたときに容器1の変形による電気短絡が発生するリスクを軽減させる効果が得られる。なお、電気絶縁シート22は、実施の形態1に記載の電解液リザーバ13と容器1の内壁との間に設けてもよい。その他の構成は、実施の形態1と同様である。
【0040】
以上説明したように、この発明の実施の形態2に係る電力貯蔵デバイスセルによれば、負極端子3と正極端子5とが、電力貯蔵デバイスセル本体2から互いに反対方向に延びて配置されているので、負極端子3および正極端子5のそれぞれの幅方向の寸法を大きくすることができる。これにより、負極端子3および正極端子5のそれぞれの断面積を大きくすることができる。その結果、負極端子3および正極端子5における電気抵抗を低減させることができる。
【0041】
また、容器1とキャパシタ正極板部材11との間に電気絶縁シート22を配置されているので、容器1が外部からの衝撃を受けたときに容器1の変形による電気短絡が発生するリスクを軽減させることができる。
【0042】
実施の形態3.
図5はこの発明の実施の形態3に係る電力貯蔵デバイスセルを示す断面図である。この発明の実施の形態3に係る電力貯蔵デバイスセルは、各キャパシタ正極板部材11が、2枚のキャパシタ正極集電箔20と2枚のキャパシタ正極電極層21とを有している。キャパシタ正極集電箔20およびキャパシタ正極電極層21は、交互に積層されている。各キャパシタ正極集電箔20には、貫通孔20aが形成されている。各キャパシタ正極電極層21には、貫通孔21aが形成されている。貫通孔20aおよび貫通孔21aは、互いに重ねられている。その他の構成は、実施の形態2と同様である。なお、その他の構成を実施の形態1と同様にしてもよい。
【0043】
以上説明したように、この発明の実施の形態3に係る電力貯蔵デバイスセルによれば、キャパシタ正極板部材11は、2枚のキャパシタ正極集電箔20と2枚のキャパシタ正極電極層21とを有し、キャパシタ正極集電箔20およびキャパシタ正極電極層21が交互に積層されているので、充放電の瞬発力を向上させることができ、また、キャパシタ正極電極層21を厚くすることなく、リチウムイオンキャパシタとしての容量を2倍近くに増やすことができる。これにより、リチウムイオン電池の寿命延長効果を向上させることができる。
【0044】
なお、上記実施の形態3では、2枚のキャパシタ正極集電箔20と2枚のキャパシタ正極電極層21とが交互に積層されたキャパシタ正極板部材11について説明したが、3枚以上のキャパシタ正極集電箔と3枚以上のキャパシタ正極電極層とが交互に積層されたキャパシタ正極板部材であってもよい。これにより、リチウムイオンキャパシタの容量および瞬発力をさらに向上させることができ、リチウムイオン電池の寿命延長効果をさらに向上させることができる。
【0045】
また、上記実施の形態3では、電池本体部9の積層方向両端部に設けられた一対のキャパシタ正極板部材11のそれぞれが、2枚のキャパシタ正極集電箔20と2枚のキャパシタ正極電極層21を有した構成について説明したが、電池本体部9の積層方向一端部に配置されたキャパシタ正極板部材11のキャパシタ正極集電箔20およびキャパシタ正極電極層21の枚数と、電池本体部9の積層方向他端部に配置されたキャパシタ正極板部材11のキャパシタ正極集電箔20およびキャパシタ正極電極層21の枚数とが異なる構成であってもよい。
【0046】
また、上記実施の形態3では、積層されたキャパシタ正極集電箔20のそれぞれに貫通孔20aが形成された構成について説明したが、共通負極板部材10から最も離れた位置にあるキャパシタ正極電極層21よりも共通負極板部材10側に配置されたキャパシタ正極集電箔20にのみ貫通孔20aが形成された構成であってもよい。
【0047】
また、上記実施の形態3では、キャパシタ正極電極層21に貫通孔21aが形成された構成について説明したが、キャパシタ正極電極層21には、貫通孔21aが形成されていなくてもよい。
【0048】
実施の形態4.
図6はこの発明の実施の形態4に係る電力貯蔵デバイスセルを示す断面図である。この発明の実施の形態4に係る電力貯蔵デバイスセルは、キャパシタ正極電極層21が、キャパシタ正極集電箔20の両面に塗布されている。キャパシタ正極集電箔20には、貫通孔20aが形成されている。キャパシタ正極電極層21には、貫通孔21aが形成されている。貫通孔20aおよび貫通孔21aは、互いに重ねられている。その他の構成は、実施の形態1と同様である。なお、その他の構成を実施の形態2と同様にしてもよい。
【0049】
以上説明したように、この発明の実施の形態4に係る電力貯蔵デバイスセルによれば、キャパシタ正極電極層21がキャパシタ正極集電箔20の両面に塗布されており、キャパシタ正極集電箔20には、貫通孔20aが形成されているので、キャパシタ正極集電箔20の両面で、充放電をすることができる。その結果、リチウムイオンキャパシタの容量を2倍近くに増やすことができる。
【0050】
なお、上記実施の形態4では、一枚のキャパシタ正極集電箔20とこのキャパシタ正極集電箔20の両面に塗布されたキャパシタ正極電極層21とを有したキャパシタ正極板部材11の構成について説明したが、複数枚が積層されたキャパシタ正極集電箔20とこれらのキャパシタ正極集電箔20の両面に塗布されたキャパシタ正極電極層21とを有したキャパシタ正極板部材11の構成であってもよい。この場合、隣り合うキャパシタ正極電極層21の間にセパレータ12が配置されてもよい。
【0051】
実施の形態5.
図7はこの発明の実施の形態5に係る電力貯蔵デバイスセルを示す正面図、図8は図7のVIII−VIII線に沿った矢視断面図である。この発明の実施の形態5に係る電力貯蔵デバイスセルは、負極端子3と正極端子5とが、電力貯蔵デバイスセル本体2から互いに反対方向に延びて配置されている。
【0052】
電力貯蔵デバイスセル本体2は、1枚の電池負極帯部材(リチウムイオン電池負極帯部材)23および1枚の電池正極帯部材(リチウムイオン電池正極帯部材)24を有し電池負極帯部材23および電池正極帯部材24が重ねられた状態で巻回された電池本体部(リチウムイオン電池本体部)25と、電池本体部25の周囲を覆う共通負極帯部材26と、共通負極帯部材26の周囲を覆うキャパシタ正極帯部材(リチウムイオンキャパシタ正極帯部材)27と、電池負極帯部材23と電池正極帯部材24との間、電池正極帯部材24と共通負極帯部材26との間、共通負極帯部材26とキャパシタ正極帯部材27との間のそれぞれに設けられたセパレータ(図示せず)と、キャパシタ正極帯部材27に重ねられた電解液リザーバ13とを備えている。なお、電解液リザーバ13の換わりに、実施の形態2に記載のように電気絶縁シート22を設けてもよい。また、容器1の内壁と電解液リザーバ13との間に電気絶縁シート22を設けてもよい。
【0053】
電池負極帯部材23は、実施の形態1に記載の電池負極板部材7のように、電池負極集電箔と、電池負極集電箔の両面に塗布された電池負極電極層とを有した複数の電池負極部(リチウムイオン電池負極部)を備えている。複数の電池負極部が一列に連結されることにより、帯形状の電池負極帯部材23が構成されている。
【0054】
電池正極帯部材24は、実施の形態1に記載の電池正極板部材8のように、電池正極集電箔と、電池正極集電箔の両面に塗布された電池正極電極層とを有した複数の電池正極部(リチウムイオン電池正極部)を備えている。複数の電池正極部が一列に連結されることにより、帯形状の電池正極帯部材24が構成されている。
【0055】
共通負極帯部材26は、実施の形態1に記載の共通負極板部材10のように、複数の貫通孔が形成された共通負極集電箔と、共通負極集電箔の両面に塗布され複数の貫通孔が形成された共通負極電極層とを有した複数の共通負極部を備えている。複数の共通負極部が一列に連結されることにより、帯形状の共通負極帯部材26が構成されている。
【0056】
キャパシタ正極帯部材27は、実施の形態1に記載のキャパシタ正極板部材11のように、キャパシタ正極集電箔と、キャパシタ正極集電箔の一方の面に塗布されたキャパシタ正極電極層とを有した複数のキャパシタ正極部(リチウムイオンキャパシタ正極部)を備えている。複数のキャパシタ正極部が一列に連結されることにより、帯形状のキャパシタ正極帯部材27が構成されている。
【0057】
電池負極帯部材23および電池正極帯部材24は、電池本体部25の外周部に電池正極帯部材24の部分が配置されるように巻回されている。共通負極帯部材26は、電池負極帯部材23の外周側端部に接続されている。共通負極帯部材26は、電池本体部25の外周部に位置する電池正極帯部材24の部分の外周面に重ねられている。キャパシタ正極帯部材27は、共通負極帯部材26の外周面に重ねられている。その他の構成は、実施の形態2と同様である。
【0058】
以上説明したように、この発明の実施の形態5に係る電力貯蔵デバイスセルによれば、複数の電池負極部から帯形状の電池負極帯部材23が構成され、複数の電池正極部から帯形状の電池正極帯部材24が構成され、電池負極帯部材23および電池正極帯部材24は、互いに重ねられた状態で巻回されているので、電池負極帯部材23および電池正極帯部材24の巻数を増やすだけで、電力貯蔵デバイスセル全体の中の電池本体部25が占める部分を容易に増加させることができる。その結果、電力貯蔵デバイスセルのエネルギー密度を容易に向上させることができる。
【0059】
実施の形態6.
図9はこの発明の実施の形態6に係る電力貯蔵デバイスセルを示す正面図、図10は図9のX−X線に沿った矢視断面図である。この発明の実施の形態6に係る電力貯蔵デバイスセルは、共通負極帯部材26が、電池負極帯部材23と分離されている。2枚の共通負極帯部材26は、電池本体部25を包むように電池正極帯部材24に重ねられている。2枚のキャパシタ正極帯部材27は、電池本体部25および共通負極帯部材26を包むように、共通負極帯部材26に重ねられている。キャパシタ正極帯部材27の外周面には、電気絶縁シート22が重ねられている。その他の構成は、実施の形態5と同様である。なお、電気絶縁シート22の換わりに、実施の形態5に記載のように電解液リザーバ13を設けてもよく、また、実施の形態5に記載の容器1の内壁と電解液リザーバ13との間に電気絶縁シート22を設けてもよい。
【0060】
以上説明したように、この発明の実施の形態6に係る電力貯蔵デバイスセルによれば、共通負極帯部材26は、電池負極帯部材23の外周側端部と分離されているので、共通負極帯部材26で電池本体部25の全体を容易に包むことができる。また、2枚の共通負極帯部材26が電池本体部25を包んでいるので、電力貯蔵デバイスセルを容易に製造することができる。
【0061】
実施の形態7.
図11はこの発明の実施の形態7に係る電力貯蔵デバイスセルを示す断面図である。この発明の実施の形態7に係る電力貯蔵デバイスセルは、1枚の共通負極帯部材26が、電池本体部25を包むように電池正極帯部材24に重ねられている。キャパシタ正極帯部材27は、共通負極帯部材26の外周面を2周だけ巻かれて、共通負極帯部材26に重ねられている。キャパシタ正極帯部材27のキャパシタ正極集電箔20には、複数の貫通孔20aが形成されている。キャパシタ正極帯部材27のキャパシタ正極電極層21には、貫通孔21aが形成されている。貫通孔20aおよび貫通孔21aは、互いに重ねられている。その他の構成は、実施の形態6と同様である。
【0062】
以上説明したように、この発明の実施の形態6に係る電力貯蔵デバイスセルによれば、キャパシタ正極帯部材27が共通負極帯部材26の外周面を2周巻かれているので、充放電の瞬発力を向上させることができ、また、キャパシタ正極電極層21を厚くすることなく、リチウムイオンキャパシタとしての容量を2倍近くに増やすことができる。これにより、リチウムイオン電池の寿命延長効果を向上させることができる。
【0063】
実施の形態8.
図12はこの発明の実施の形態8に係る電力貯蔵デバイスセルを示す断面図である。この発明の実施の形態8に係る電力貯蔵デバイスセルは、共通負極集電箔18の両面に設けられた一対の共通負極電極層19のうちの電池本体部9側に設けられた共通負極電極層19に、共通負極集電箔18に形成された貫通孔18aに重なるように貫通孔19aが形成されている。また、この電力貯蔵デバイスセルは、共通負極集電箔18の両面に設けられた一対の共通負極電極層19のうちのキャパシタ正極板部材11側に設けられた共通負極電極層19における共通負極集電箔18側の面に、共通負極集電箔18の貫通孔18aに対向する凹部19bが形成されている。つまり、共通負極板部材10は、電池本体部9側の部分に、キャパシタ正極板部材11側に向かって凹んだ凹部が形成されている。貫通孔18aおよび貫通孔19aは、開口面積が互いに同一となっている。
【0064】
また、共通負極板部材10は、貫通孔18a、貫通孔19aおよび凹部19bのそれぞれに充填された電子絶縁性金属酸化物微粒子28と、共通負極集電箔18の両面に設けられた一対の共通負極電極層19のうちの電池本体部9側に設けられた共通負極電極層19に重ねられた電子絶縁性金属酸化物微粒子層29とをさらに有している。電子絶縁性金属酸化物微粒子層29は、電池本体部9と共通負極板部材10との間に位置するセパレータ12と、共通負極集電箔18の両面に設けられた一対の共通負極電極層19のうちの電池本体部9側に設けられた共通負極電極層19との間に配置されている。
【0065】
図13は図12の共通負極板部材10を電池本体部9側から視た平面図、図14は図13の要部を示す拡大図、図15は図12の共通負極集電箔18の貫通孔18a、共通負極電極層19の貫通孔19aおよび凹部19bを形成するための切歯ロールを示す斜視図および写真、図16は図15の切歯ロールにより貫通孔18aが形成された共通負極集電箔18を示す斜視図である。共通負極板部材10に貫通孔18a、貫通孔19aおよび凹部19bのそれぞれを形成するためには、周囲に複数の切歯を有した切歯ロールと、切歯ロールに隣り合うように設けられた平板ゴムロールとの間に、共通負極板部材10を挟んで、共通負極板部材10に穿孔した後、ホットロールプレスを行うことにより、キャパシタ正極板部材11側の共通負極電極層19に凹部19bが形成されるように共通負極電極層19の貫通孔のキャパシタ正極板部材11側の部分を塞ぐ。
【0066】
切歯ロールの切歯円盤の先端部の形状は、四角錐形状が望ましい。これにより、共通負極集電箔18に貫通孔18aを形成する際に、共通負極集電箔18には、十字の切り込みが形成されて、4個の折り曲げ部分が形成される。各折り曲げ部分は、三角形状や台形形状となって、平面視正方形形状の貫通孔18aの内壁につながって残存する。その結果、金属片が共通負極集電箔18から千切れて散逸する場合と比較して、電気短絡の原因を減少させることができる。なお、切歯円盤の先端部の形状は、金属片が千切れて散逸する恐れがない形で共通負極集電箔18に穿孔することができれば、四角錐形状に限らず、例えば、三角錐、五角錐、六角錐、八角錐などの形状であってもよく、同様の効果が得られる。
【0067】
切歯ロールは、厚さ1.6mmのアルミニウム製の平滑円盤と、周囲に90個の切歯が等間隔に形成された厚さ0.4mmのステンレス製の切歯円盤とを交互に重ねて心棒に通すことで形成される。本願出願人は、実際に、平滑円盤および切歯円盤の枚数を、それぞれ65枚とし、幅130mmに穿孔可能な切歯ロールを開発した。切歯ロールの切歯の数は、5850個となった。平滑円盤の厚さを変更することにより、幅方向に隣り合う貫通孔18aの間隔である穿孔ピッチを変更することができる。切歯円盤の交換が容易であるので、切歯の形状が異なる切歯円盤に交換することにより、開口径および面積開口率の異なる共通負極板部材10を容易に作成することができる。
【0068】
切歯円盤は、複数の切歯円盤を重ねて、ワイヤ放電加工技術を駆使することにより形成される。これにより、ステンレス製の切歯円盤に、四角錐の精密な複数の歯を短時間にかつ安価に形成することができる。
【0069】
共通負極板部材10を穿孔する方法は、送出しロールに巻かれた共通負極板部材10を巻取りロールが巻き取りながら、送出しロールと巻取りロールとの間に配置された切歯ロールと平滑ゴムロールとの間に共通負極板部材10を挟んで穿孔する。これにより、共通負極板部材10を量産することができる。
【0070】
切歯円盤の先端部である四角錐部分の高さを調節することにより、穿孔時に共通負極板部材10のキャパシタ正極板部材11側の共通負極電極層19に形成される貫通孔の大きさを小さくすることができる。穿孔時に共通負極板部材10のキャパシタ正極板部材11側の共通負極電極層19に形成される貫通孔は、ホットロールプレスを行うことにより塞がれて、共通負極板部材10のキャパシタ正極板部材11側の共通負極電極層19に凹部19bが形成される。
【0071】
この例では、共通負極電極層19の貫通孔19aの面積開口率を、0.1%とした。この面積開口率の算出方法は、共通負極電極層19の要部を示す拡大図を用いて算出した。
【0072】
電子絶縁性金属酸化物微粒子層29の形成方法および、貫通孔18aと貫通孔19aと凹部19bとへの電子絶縁性金属酸化物微粒子28の充填方法としては、共通負極板部材10に貫通孔18a、貫通孔19aおよび凹部19bを形成した後、貫通孔18a、貫通孔19aおよび凹部19bに充填されるように電子絶縁性金属酸化物微粒子28を含むペーストを共通負極電極層19にロールコータやダイコータを用いて塗工し、その後、ホットロールプレスをする方法が挙げられる。
【0073】
貫通孔18a、貫通孔19aおよび凹部19bに充填された電子絶縁性金属酸化物微粒子28および電子絶縁性金属酸化物微粒子層29は、電解液の保持および移動を容易にする効果がある。特に、アルミナは、電解液に対する親和性が高いので、電解液の保持および移動を用にする効果が高い。また、アルミナの平均粒子径を負極の活物質である黒鉛やハードカーボンの平均粒子径である数μmよりも小さくすることで、粒子間に形成される気孔径を小さくして、さらに、電解液の保持および移動を容易にする効果を高めることができる。
【0074】
貫通孔18a、貫通孔19aおよび凹部19bに充填された電子絶縁性金属酸化物微粒子28は、負極の黒鉛やハードカーボンなどの活物質の粒子が滑落して、浮遊し、セパレータまで達して正極と負極とを電気短絡させてしまう可能性を著しく減少させる効果が得られる。
【0075】
電子絶縁性金属酸化物微粒子層29は、共通負極板部材10と電池正極板部材8との間の電子伝導による電気抵抗を高めるので、セパレータ12に熱収縮などの不具合が生じる場合であっても、電極間の電気短絡を防止する効果が得られる。
【0076】
電子絶縁性金属酸化物微粒子28としては、粒径が0.1μm程度のアルミナ粒子が望ましく、ポリフッ化ビニリデン(PolyVinylidene DiFluoride:PVDF)やスチレン・ブタジエンゴム(Styren−Butadien Rubber:SBR)などのバインダーが含まれていることが望ましい。アルミナ粒子の粒径が1μmよりも大きいと、貫通孔18a、貫通孔19aおよび凹部19bを充填することが困難となる。また、アルミナ粒子の粒径が0.1μmよりも小さいと、ペーストの分散が困難となり、共通負極電極層19への塗工が困難となる。
【0077】
電子絶縁性金属酸化物微粒子層29の厚さとしては、10μm未満程度が望ましい。電子絶縁性金属酸化物微粒子層29の厚さが10μmを超えると、内部抵抗が大きくなり、出力密度が低下する。
【0078】
なお、共通負極板部材10の凹部の面積開口率、つまり、貫通孔19aの面積開口率は、0.01%以上、かつ、1%以下であることが望ましい。この面積開口率が0.01%を下回ると、共通負極板部材10の裏面へのリチウムドープ速度が著しく遅くなる。また、この面積開口率が1%を超えると、時間の経過とともに、電池正極板部材8側の金属イオンが貫通孔19a、貫通孔18aおよび凹部19bを透過して、キャパシタ正極板部材11に達して、活性炭に吸着するリスクが増加する。電池正極板部材8側の金属イオンがキャパシタ正極板部材11の活性炭に吸着すると、キャパシタ正極板部材11の性能を損なう恐れがある。その他の構成は、実施の形態1と同様である。
【0079】
以上説明したように、この発明の実施の形態8に係る電力貯蔵デバイスセルによれば、共通負極集電箔18の両面に設けられた共通負極電極層19のうちの電池本体部9側に設けられた共通負極電極層19には、共通負極集電箔18に形成された貫通孔18aに重なるように貫通孔19aが形成され、共通負極集電箔18の両面に設けられた共通負極電極層19のうちのキャパシタ正極板部材11側に設けられた共通負極電極層19における共通負極集電箔18側の面には、共通負極集電箔18に形成された貫通孔18aに対向する凹部19bが形成されているので、リチウムイオンのドープ速度を高めることができる。また、貫通孔18aおよび貫通孔19aがセパレータ12の気孔径よりも大きい場合には、ポア吸引力の関係で、ポア吸引力の弱い貫通孔18aおよび貫通孔19aには、電解液を溜められなくなり、気体が占有する。これにより、電解液が貫通孔18aおよび貫通孔19aを通って移動しにくくなり、電池正極板部材8側とキャパシタ正極板部材11側との間の電解液の自由な移動を遮断することができる。電力貯蔵デバイスセルの寿命末期の場合であって、電解液に電池正極板部材8の金属イオンが含まれる場合には、金属イオンがキャパシタ正極板部材11の活性炭に吸着してキャパシタ正極板部材11の性能が低下する恐れがあるが、電池正極板部材8とキャパシタ正極板部材11との間の電解液の自由な移動が遮断されていれば、その恐れが低減される。電力貯蔵デバイスセルの寿命初期には、十分な量の電解液があり、貫通孔18aおよび貫通孔19aは電解液で満たされているので、リチウムイオンの電池正極板部材8側からキャパシタ正極板部材11側への移動が起こるが、その後、キャパシタ正極板部材11の活性炭の細孔に電解液が吸収されるにつれて自由に移動できる電解液の量が減り、ポア吸引力の強い気孔に優先的に電解液が吸収され、寿命末期では、貫通孔18aおよび貫通孔19aには、何も充填されずに気体が占有される。これにより、寿命末期では、電池正極板部材8の金属イオンが溶出されるものの、金属イオンがキャパシタ正極板部材11の活性炭に吸着することを低減させることができる。
【0080】
また、共通負極板部材10は、貫通孔18a、貫通孔19aおよび凹部19bに充填された電子絶縁性金属酸化物微粒子28を有しているので、貫通孔18a、貫通孔19aおよび凹部19bにおける電解液の保持および移動を容易にすることができる。
【0081】
また、共通負極電極層19の貫通孔19aの面積開口率は、0.01%以上、0.1%以下であるので、リチウムイオンのドープ速度を高めることができるとともに、電池正極板部材8側の金属イオンが共通負極板部材10を透過して、キャパシタ正極板部材11に達することを抑制することができる。
【0082】
実施の形態9.
図17はこの発明の実施の形態9に係る電力貯蔵デバイスセルを示す断面図である。この発明の実施の形態9に係る電力貯蔵デバイスセルは、実施の形態8に係る電力貯蔵デバイスセルに加えて、実施の形態4に係る電力貯蔵デバイスセルのように、キャパシタ正極電極層21が、キャパシタ正極集電箔20の両面に塗布され、キャパシタ正極集電箔20には、貫通孔20aが形成され、キャパシタ正極電極層21は、貫通孔21aが形成されている。貫通孔20aおよび貫通孔21aは、互いに重ねられている。
【0083】
キャパシタ正極板部材11は、貫通孔20aおよび貫通孔21aのそれぞれに充填された電子絶縁性金属酸化物微粒子30と、キャパシタ正極集電箔20の両面に設けられた一対のキャパシタ正極電極層21のうちの共通負極板部材10側に設けられたキャパシタ正極電極層21に重ねられた電子絶縁性金属酸化物微粒子層31とをさらに有している。電子絶縁性金属酸化物微粒子層31は、共通負極板部材10とキャパシタ正極板部材11との間に位置するセパレータ12と、キャパシタ正極集電箔20の両面に設けられた一対のキャパシタ正極電極層21のうちの共通負極板部材10側に設けられたキャパシタ正極電極層21との間に配置されている。
【0084】
電子絶縁性金属酸化物微粒子層31の形成方法および、貫通孔20aと貫通孔21aとへの電子絶縁性金属酸化物微粒子30の充填方法は、実施の形態8における電子絶縁性金属酸化物微粒子層29の形成方法および、貫通孔18aと貫通孔19aと凹部19bとへの電子絶縁性金属酸化物微粒子28の充填方法と同様であり、キャパシタ正極板部材11に穿孔した後、貫通孔20aおよび貫通孔21aに充填されるように電子絶縁性金属酸化物微粒子30を含むペーストをキャパシタ正極電極層21にロールコータやダイコータを用いて塗工し、その後、ホットロールプレスをする方法が挙げられる。
【0085】
貫通孔20aおよび貫通孔21aに充填された電子絶縁性金属酸化物微粒子30および電子絶縁性金属酸化物微粒子層31は、電解液の保持および移動を容易にする効果がある。
【0086】
貫通孔20aおよび貫通孔21aに充填された電子絶縁性金属酸化物微粒子30は、粒径が数μmの活性炭粒子が滑落して、浮遊し、セパレータまで達して正極と負極とを電気短絡させてしまう可能性を著しく減少させる効果が得られる。
【0087】
電子絶縁性金属酸化物微粒子層31は、共通負極板部材10とキャパシタ正極板部材11との間の電子伝導による電気抵抗を高めるので、セパレータ12に熱収縮などの不具合が生じる場合であっても、電極間の電気短絡を防止する効果が得られる。
【0088】
なお、貫通孔20aおよび貫通孔21aの面積占有率は、20%としている。
【0089】
電子絶縁性金属酸化物微粒子30としては、実施の形態8と同様に、粒径が0.1μm程度のアルミナ粒子が望ましく、ポリフッ化ビニリデン(PolyVinylidene FiFluoride:PVDF)やスチレン・ブタジエンゴム(Styren−Butadiene Rubber:SBR)などのバインダーが含まれていることが望ましい。また、電子絶縁性金属酸化物微粒子層31の厚さとしては、10μm未満程度が望ましい。
【0090】
以上説明したように、この発明の実施の形態9に係る電力貯蔵デバイスセルによれば、キャパシタ正極集電箔20およびキャパシタ正極電極層21には、貫通孔20aおよび貫通孔21aが形成され、貫通孔20aおよび貫通孔21aには、電子絶縁性金属酸化物微粒子30が充填されているので、活性炭粒子が滑落して、浮遊し、セパレータまで達して正極と負極とを電気短絡させてしまう可能性を著しく減少させることができる。
【0091】
また、キャパシタ正極板部材11は、キャパシタ正極集電箔20の両面に設けられた一対のキャパシタ正極電極層21のうちの共通負極板部材10側に設けられたキャパシタ正極電極層21に重ねられた電子絶縁性金属酸化物微粒子層31を有しているので、共通負極板部材10とキャパシタ正極板部材11との間の電子伝導による電気抵抗を高め、セパレータ12に熱収縮などの不具合が生じる場合であっても、電極間の電気短絡を防止することができる。
【0092】
なお、上記実施の形態9では、貫通孔20aおよび貫通孔21aに電子絶縁性金属酸化物微粒子30が充填され、キャパシタ正極電極層21に電子絶縁性金属酸化物微粒子層31が重ねられる構成について説明したが、貫通孔20aおよび貫通孔21aに電子絶縁性金属酸化物微粒子30が充填される構成のみであってもよい。この場合であっても、電解液の保持性を高め、かつ、貫通孔20aおよび貫通孔21aに面した活性炭の滑落の恐れを減少させることができる。
【0093】
また、上記実施の形態8および上記実施の形態9では、電子絶縁性金属酸化物微粒子28および電子絶縁性金属酸化物微粒子30として、アルミナを例に説明したが、チタニア、シリカ等の耐食性のある安価な電子絶縁性金属酸化物の微粒子であってもよい。
【0094】
実施の形態10.
図18はこの発明の実施の形態10に係る電力貯蔵デバイスセルを示す断面図である。この発明の実施の形態10に係る電力貯蔵デバイスセルは、実施の形態3に係る電力貯蔵デバイスセルのように、キャパシタ正極板部材11が2枚のキャパシタ正極集電箔20と2枚のキャパシタ正極電極層21とを有している。共通負極板部材10とキャパシタ正極板部材11との間に位置するセパレータ12にキャパシタ正極電極層21が重ねられるように、キャパシタ正極集電箔20およびキャパシタ正極電極層21は、交互に積層されている。2枚のキャパシタ正極集電箔20および2枚のキャパシタ正極電極層21のうち、共通負極板部材10側に位置するキャパシタ正極集電箔20およびキャパシタ正極電極層21のそれぞれには、貫通孔20aおよび貫通孔21aが形成されている。貫通孔20aおよび貫通孔21aは、開口面積が互いに同一となっている。
【0095】
キャパシタ正極板部材11は、貫通孔20aおよび貫通孔21aに充填された電子伝導性微粒子32と、共通負極板部材10側に位置するキャパシタ正極集電箔20に重ねられた電子伝導性微粒子層33とをさらに有している。電子伝導性微粒子層33は、共通負極板部材10側に位置するキャパシタ正極集電箔20と、2枚のキャパシタ正極電極層21のうちの積層方向外側に位置するキャパシタ正極集電箔20との間に配置されている。
【0096】
電子伝導性微粒子32および電子伝導性微粒子層33としては、アセチレンブラックやファーネスブラック等のストラクチャーが発達して多孔質になっているカーボン微粒子が望ましい。
【0097】
電子伝導性微粒子層33の形成方法および貫通孔20aおよび貫通孔21aへの電子伝導性微粒子32の充填方法は、キャパシタ正極集電箔20およびキャパシタ正極電極層21に穿孔した後、貫通孔20aおよび貫通孔21aに充填されるように電子伝導性微粒子32を含むペーストをキャパシタ正極集電箔20にロールコータやダイコータを用いて塗工し、その後、ホットロールプレスをする方法が挙げられる。キャパシタ正極集電箔20およびキャパシタ正極電極層21に穿孔する方向は、積層方向内側である。
【0098】
電子伝導性微粒子32および電子伝導性微粒子層33として、ストラクチャーが発達して多孔質になっているカーボン微粒子を用いることにより、イオン伝導性を高めることができる。また、電子伝導性微粒子層33は多孔質によって多くの電解液を保持するとともに、キャパシタ正極集電箔20に対しての接点を増やして、穿孔したキャパシタ正極集電箔20およびキャパシタ正極電極層21と最外層のキャパシタ正極集電箔20およびキャパシタ正極電極層21との間の電子伝導性とイオン伝導性を高める効果がある。
【0099】
なお、最外層のキャパシタ正極集電箔20およびキャパシタ正極電極層21には、貫通孔を形成する必要がないので、この例では、貫通孔を形成していないが、貫通孔が形成されてもよい。最外層のキャパシタ正極集電箔20およびキャパシタ正極電極層21に貫通孔を形成する場合には、電気絶縁シート22ではなく、電解液リザーバ13を配置して、電解液の連絡を図るのが望ましい。これにより、充放電によって電解質の膨張収縮が発生した場合であっても、最外層のキャパシタ正極集電箔20およびキャパシタ正極電極層21が電解液不足になりにくくなる効果が得られる。
【0100】
キャパシタ正極電極層21の貫通孔21aの面積開口率は、1%以上、かつ、30%以下であることが望ましい。この面積開口率が1%を下回ると、表裏間のイオン伝導性が確保できなくなり、最外層のキャパシタ正極集電箔20およびキャパシタ正極電極層21の利用率が低下する恐れがある。一方、面積開口率が30%を上回ると、キャパシタ正極集電箔20の機械強度が極端に低下し、製造する過程での品質管理上の問題を引き起こす恐れがある。
【0101】
以上説明したように、この発明の実施の形態10に係る電力貯蔵デバイスセルによれば、キャパシタ正極板部材11は、キャパシタ正極集電箔20に形成された貫通孔20aと、キャパシタ正極集電箔20の貫通孔20aに重なるようにキャパシタ正極電極層21に形成された貫通孔21aとに充填された電子伝導性微粒子32をさらに有しているので、電解液を保持することができる。
【0102】
また、キャパシタ正極電極層21の貫通孔21aの面積開口率は、1%以上、30%以下であるので、キャパシタ正極集電箔20の表裏間のイオン伝導性を確保することができるとともに、キャパシタ正極集電箔20の機械強度を確保することができる。
【0103】
なお、上記実施の形態8ないし上記実施の形態10では、積層形の電力貯蔵デバイスセルの構成について説明したが、巻回形の電力貯蔵デバイスセルであってもよい。
【0104】
また、上記実施の形態8ないし上記実施の形態10で開示した、穿孔した孔に電子絶縁性金属酸化物微粒子を充填する構造や方法、あるいは、上記実施の形態9および上記実施の形態10で開示した、穿孔した孔に電子伝導性微粒子を充填する構造や方法は、リチウムイオンキャパシタ、電気化学キャパシタやハイブリッドキャパシタなどと呼ばれる集電箔に貫通孔が形成される必要がある蓄電デバイスに適用可能であり、同様の効果を得ることができる。
【0105】
また、上記各実施の形態では、電池負極電極層15および共通負極電極層19がリチウム二次電池に使用される黒鉛、ハードカーボン、非晶質カーボンまたはメソカーボンマイクロビーズ黒鉛等のカーボン微粒子から構成されている例について説明したが、電池負極電極層15および共通負極電極層19は、カーボンコーティングしたチタン酸リチウムを主成分としてもよい。電池負極集電箔14および共通負極集電箔18にアルミニウム箔を用いることにより、銅箔が溶出することを防止することができる。また、リチウムイオンキャパシタ部分を安定的に0Vに保つことができる。その結果、セル電圧を0Vにしてもリチウムイオン電池部分の劣化を抑制することができ、電力貯蔵デバイスセルの安全性を向上させることができる。
【0106】
チタン酸リチウムは、黒鉛等のカーボンを用いた場合と比較して、高い電位に保たれるので、電池負極集電箔14および共通負極集電箔18に銅箔ではなくアルミニウム箔を用いることができる。銅箔は電位が高くなると溶出する恐れがあるが、アルミニウム箔は溶出する恐れがない。また、電力貯蔵デバイスセルの放電時には正極と負極との電位差が小さくなり、さらに、共通負極部はリチウムイオン電池負極部に比べてリチウムイオンが不足するので、共通負極部の電位はリチウムイオン電池負極部の電位よりも高くなる。したがって、リチウムイオンキャパシタ正極部と共通負極部との電位差がさらに小さくなり、セル電圧を0Vにしてもリチウムイオン電池部分の劣化が抑制され、電力貯蔵デバイスセルの安全性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0107】
1 容器、2 電力貯蔵デバイスセル本体、3 負極端子、4 負極シール部材、5 正極端子、6 正極シール部材、7 電池負極板部材(リチウムイオン電池負極部)、8 電池正極板部材(リチウムイオン電池正極部)、9 電池本体部(リチウムイオン電池本体部)、10 共通負極板部材(共通負極部)、11 キャパシタ正極板部材(リチウムイオンキャパシタ正極部)、12 セパレータ、13 電解液リザーバ、14 電池負極集電箔、15 電池負極電極層、16 電池正極集電箔、17 電池正極電極層、18 共通負極集電箔、18a 貫通孔、19 共通負極電極層、19a 貫通孔、19b 凹部、20 キャパシタ正極集電箔、20a 貫通孔、21 キャパシタ正極電極層、21a 貫通孔、22 電気絶縁シート、23 電池負極帯部材(リチウムイオン電池負極帯部材)、24 電池正極帯部材(リチウムイオン電池正極帯部材)、25 電池本体部(リチウムイオン電池本体部)、26 共通負極帯部材、27 キャパシタ正極帯部材(リチウムイオンキャパシタ正極帯部材)28 電子絶縁性金属酸化物微粒子、29 電子絶縁性金属酸化物微粒子層、30 電子絶縁性金属酸化物微粒子、31 電子絶縁性金属酸化物粒子層、32 電子伝導性微粒子、33 電子伝導性微粒子層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池負極集電箔および前記電池負極集電箔の両面に設けられた電池負極電極層を含んだリチウムイオン電池負極部と電池正極集電箔および前記電池正極集電箔の両面に設けられた電池正極電極層を含んだリチウムイオン電池正極部とを有し、積層方向端部に前記リチウムイオン電池正極部が配置されるように前記リチウムイオン電池負極部と前記リチウムイオン電池正極部とが交互に複数積層されたリチウムイオン電池本体部と、
貫通孔が形成された共通負極集電箔および前記共通負極集電箔の両面に設けられた共通負極電極層を有し、前記リチウムイオン電池本体部の積層方向端部に配置された前記リチウムイオン電池正極部に重ねられた共通負極部と、
キャパシタ正極集電箔および前記キャパシタ正極集電箔に設けられたキャパシタ正極電極層を有し、前記共通負極部と前記キャパシタ正極集電箔との間に前記キャパシタ正極電極層が配置されるように前記共通負極部に重ねられたリチウムイオンキャパシタ正極部と、
前記リチウムイオン電池負極部と前記リチウムイオン電池正極部との間、前記リチウムイオン電池正極部と前記共通負極部との間、前記共通負極部と前記リチウムイオンキャパシタ正極部との間のそれぞれに設けられたセパレータと、
前記リチウムイオン電池本体部、前記共通負極部、前記リチウムイオンキャパシタ正極部および前記セパレータを収容する容器と
を備え、
前記電池負極集電箔および前記共通負極集電箔は、電気的に接続され、
前記電池正極集電箔および前記キャパシタ正極集電箔は、電気的に接続されていることを特徴とする電力貯蔵デバイスセル。
【請求項2】
前記リチウムイオン電池負極部および前記リチウムイオン電池正極部のそれぞれは、板形状に形成されており、
複数枚の前記リチウムイオン電池負極部と複数枚の前記リチウムイオン電池正極部とが、交互に積層されていることを特徴とする請求項1に記載の電力貯蔵デバイスセル。
【請求項3】
複数の前記リチウムイオン電池負極部から帯形状のリチウムイオン電池負極帯部材が構成され、
複数の前記リチウムイオン電池正極部から帯形状のリチウムイオン電池正極帯部材が構成され、
前記リチウムイオン電池負極帯部材および前記リチウムイオン電池正極帯部材は、互いに重ねられた状態で巻回されていることを特徴とする請求項1に記載の電力貯蔵デバイスセル。
【請求項4】
複数の前記キャパシタ正極集電箔と複数の前記キャパシタ正極電極層とが交互に積層され、
前記共通負極部から最も離れた位置にある前記キャパシタ正極電極層よりも前記共通負極部側に配置された前記キャパシタ正極集電箔には、貫通孔が形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3の何れか1項に記載の電力貯蔵デバイスセル。
【請求項5】
前記キャパシタ正極電極層は、前記キャパシタ正極集電箔の両面に設けられ、
前記キャパシタ正極集電箔には、貫通孔が形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項4の何れか1項に記載の電力貯蔵デバイスセル。
【請求項6】
前記共通負極集電箔の両面に設けられた前記共通負極電極層のうちの前記リチウムイオン電池本体部側に設けられた前記共通負極電極層には、前記共通負極集電箔に形成された前記貫通孔に重なるように貫通孔が形成され、
前記共通負極集電箔の両面に設けられた前記共通負極電極層のうちの前記リチウムイオンキャパシタ正極部側に設けられた前記共通負極電極層における前記共通負極集電箔側の面には、前記共通負極集電箔に形成された前記貫通孔に対向する凹部が形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項5の何れか1項に記載の電力貯蔵デバイスセル。
【請求項7】
前記共通負極部は、前記共通負極集電箔の前記貫通孔、前記共通負極電極層の前記貫通孔および前記共通負極電極層の前記凹部に充填された電子絶縁性金属酸化物微粒子をさらに有していることを特徴とする請求項6に記載の電力貯蔵デバイスセル。
【請求項8】
前記リチウムイオンキャパシタ正極部は、前記キャパシタ正極集電箔に形成された前記貫通孔と、前記キャパシタ正極集電箔の前記貫通孔に重なるように前記キャパシタ正極電極層に形成された貫通孔とに充填された電子伝導性微粒子をさらに有していることを特徴とする請求項4または請求項5に記載の電力貯蔵デバイスセル。
【請求項9】
前記共通負極電極層の前記貫通孔の面積開口率は、0.01%以上、0.1%以下であることを特徴とする請求項6または請求項7に記載の電力貯蔵デバイスセル。
【請求項10】
前記キャパシタ正極電極層の前記貫通孔の面積開口率は、1%以上、30%以下であることを特徴とする請求項8に記載の電力貯蔵デバイスセル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2012−114415(P2012−114415A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−219306(P2011−219306)
【出願日】平成23年10月3日(2011.10.3)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成22年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「蓄電複合システム化技術開発/要素技術開発/ビルPV用蓄電システムの研究開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】