説明

電動ブレーキ装置

【課題】車両におけるブレーキ装置の省スペース化を実現し、好ましくはインホイールモータの搭載を容易とすることが可能なブレーキ装置の構造を提供する。
【解決手段】ホイール204内に配置されたインホイールモータ200の出力軸にブロック206が設けられ、ホイール204の内周面とブロック206との間にブレーキシュー220が配置される。インホイールモータ200の駆動によってブロック206が回転することによりその回転力がブレーキシュー220の半径方向の並進力に変換される。そのブロック206の回転によってブレーキシュー220が半径方向外向きに駆動されると、ブレーキシュー220の先端がホイール104に押し付けられることにより、車輪に制動力が付与される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気エネルギにより車両の制動力を得る電動ブレーキ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両の制動を行う装置として、車輪と共に回転するディスクロータと、車体側に固定されたキャリパとで構成されるディスクブレーキ装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。キャリパは、ディスクロータを挟んで配置される一対の摩擦材を含んで構成される。液圧または電動機構を介して摩擦材が駆動されることにより、その摩擦材がディスクロータを挟圧して制動力を発生させる。
【特許文献1】特開2004−360841号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、このようなディスクブレーキ装置の場合、そのディスクロータに垂直に摩擦材を押し当てる構造であるため、その駆動部となるシリンダや駆動機構が車幅方向に大きくなる。いわゆるフローティングキャリパを採用する場合には、摩擦材の摩耗とともにシリンダ等を移動させるための間隙も確保する必要があり、車両の設置スペースの観点から改善の余地があった。通常、ディスクロータの周上に1つのキャリパしか配置しないため、その一つのキャリパが設計上大きくなることもその要因の一つであった。
【0004】
一方、近年では、車両の各駆動輪に対応してインホイールモータをそれぞれ設置し、その制駆動力を独立に制御可能なインホイールモータ方式の採用が提案されている。例えば、モータの出力を減速機を介してホイールに伝えるものや、ダイレクトドライブ方式により減速機を介さずにホイールを直接モータで回転させるものがある。このようなインホイールモータによれば、モータを回生制御することにより駆動輪に回生制動力を付与することができる。ただし、この回生制動のみでは、車両全体としての制動力が不十分である場合があるため、通常、インホイールモータを搭載する車両には、液圧を用いた常用液圧ブレーキが搭載されている。すなわち、モータの回生制動力と液圧制動力の双方を用いた協調制御を行うことによりスムーズかつ安全な制動を行えるようにしている。しかし、このようなインホイールモータ方式を採用する場合、ホイール内にモータを配置するため、液圧制動用の上記ディスクブレーキ装置を搭載しようとすると、上述した設置スペースの確保が困難になるという問題があった。
【0005】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、車両におけるブレーキ装置の省スペース化を実現し、好ましくはインホイールモータの搭載を容易とすることが可能なブレーキ装置の構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の電動ブレーキ装置は、車体に取り付けられ、車輪のホイール内に配置されるインホイールモータと、インホイールモータの出力軸に固定された環状の本体を有し、その本体の外周面に半径方向外向きに突出するとともに、その先端に半径方向の高さが変化する傾斜面を有する複数の突起が設けられた押圧部材と、ホイールの内周面と押圧部材との間に配置されるように車体に対して取り付けられ、その一端側がホイールの内周面に対向配置される一方、他端側に突起の傾斜面と相補形状の対向面を有するブレーキシューと、ブレーキシューをホイールの内周面から離間する方向に付勢する付勢部材と、インホイールモータを駆動して押圧部材の回転角度を制御することにより、ブレーキシューに対する突起の相対位置を変化させ、それによりブレーキシューをホイールから離間した待機位置とホイールに押し付けられる制動位置との間で変位するように駆動する制御部と、を備える。
【0007】
ここでいうインホイールモータは、車輪に対する制動力のみを発生させるものであってもよいし、駆動力をも発生させるものであってもよい。なお、「ホイール」には、いわゆるブレーキドラムが一体に固定されたものであってもよく、その場合には、ブレーキドラムも含めて「ホイール」と解釈することができる。
【0008】
この態様では、ホイール内に配置されたインホイールモータの出力軸に押圧部材が設けられ、ホイールの内周面と押圧部材との間にブレーキシューが配置される。インホイールモータの駆動によって押圧部材が回転することによりその回転力がブレーキシューの半径方向の並進力に変換される。その押圧部材の回転によってブレーキシューが半径方向外向きに駆動されると、ブレーキシューの先端がホイールに押し付けられることにより、車輪に制動力が付与される。
【0009】
この態様によれば、車輪に制動力を付与するための機構が車輪の半径方向に配置されているため、ブレーキ装置による車輪の幅方向の占有スペースを小さく抑えることができる。インホイールモータを制動装置のみならず、駆動装置としても使用するようにすれば、車両全体の省スペース化を実現することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、車両におけるブレーキ装置の省スペース化を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照しつつ、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
[第1実施形態]
本実施形態の車両には、その駆動輪側(本実施形態では前輪側)にインホイールモータによる駆動装置が搭載され、従動輪側(本実施形態では後輪側)にインホイールモータによる制動装置が搭載されている。
【0012】
図1は、第1実施形態にかかる駆動装置の内部構造を表す概略構造図である。
車両の左右の前輪には、図示しないサスペンションに接続されたインホイールモータ100がそれぞれ配置されている。このインホイールモータ100は、駆動装置の主要部を構成し、車両に搭載された「制御部」としての図示しない電子制御装置(以下、「ECU」という)により駆動制御される。すなわち、ECUは、アクセルペダルから入力される運転者のアクセル操作量に基づいてモータ指令値(トルク指令値)を演算し、バッテリが接続された図示しない駆動回路を駆動してインホイールモータ100への通電制御を実行する。ECUには、その他、ブレーキペダルからその踏み込み操作量を示す信号や、ステアリングから舵角等を示す信号が入力され、必要に応じてインホイールモータ100の制御に反映する。例えば、運転者によりブレーキペダルが操作されて減速要求が入力された場合、ECUは、インホイールモータ100を発電機として機能させて回生制動を行うと共に、必要の応じてバッテリへの充電を行う。なお、このようなインホイールモータ方式の制御そのものは公知であるため、その詳細な説明については省略する。
【0013】
図示のように、インホイールモータ100は、タイヤ102を装着したホイール104がハブナット106によりハブホイール108に固定されている。ハブホイール108は、モータハウジング110から突出した出力軸112に固定され、出力軸112と共に回転する。モータハウジング110の内部には電動機114が収納されている。また、モータハウジング110の車体側側面には、電動機114のロータ116の回転を減速する歯車減速機118を収納したギアハウジング120が接続固定されている。電動機114の発生する回転出力は歯車減速機118を介して出力軸112、ハブホイール108、ホイール104に伝達される。この伝達された回転力によってホイール104がタイヤ102と共に回転駆動される。
【0014】
モータハウジング110の内壁面には、環状のステータ130が固定され、当該ステータ130の内側に、ロータ116が配置され、さらにそのロータ116の内部に出力軸112が回転自在に収納されている。ステータ130は、例えば板状の電磁鋼板が複数積層され、中心方向、すなわちロータ116の中心方向に延びるスロット部とティース部とが交互に形成される環状の鉄心132aと、当該鉄心132aの各ティース部に巻回配置される3相の磁界コイル132bとで構成されている。このように組み付けられた磁界コイル132bに順次所定のタイミングで電流を供給することにより、ステータ130に回転磁界を発生させ、ロータ116を回転させることができる。
【0015】
一方、ステータ130の内周側に配置されるロータ116は、その軸長全体に亘って中心部に出力軸112を回転自在に挿通するための挿通孔116aが形成されている。出力軸112は挿通孔116aに配置された複数のベアリングにより、ロータ116に対して独立的に回転するようになっている。ロータ116は、ステータ130と対向する大径部分とそれに連なり歯車減速機118側に延びる小径部分とで構成されている。大径部分の外周面には等間隔で複数の永久磁石が136が配列され、ステータ130が発生する回転磁界の移動に伴い永久磁石136を介して吸着作用と反発作用が繰り返され、当該ロータ116を所望の方向に所望の速度で回転させている。
【0016】
ロータ116の小径部分は、ギアハウジング120の内部まで延び、その先端部には、歯車減速機118の第1ギア138aと噛合するロータギア140が形成されている。その内部には、第1ギア138aを支持するギアシャフト142が複数のベアリングによって軸支されている。このギアシャフト142には、小径の第2ギア138bが固定されている。さらに、第2ギア138bは、出力軸112に固定されている大径の第3ギア138cに噛合している。従って、ロータ116の回転力は、歯車減速機118によって所定速度に減速されつつ、トルク増加を行いながら出力軸112へと伝達され、ホイール104およびタイヤ102を回転駆動する。
【0017】
図2は、第1実施形態にかかる制動装置の内部構造を簡略的に表す概略構造図である。(A)は車輪の内側からみた図を表し、(B)はその側方からみた切欠断面図を表し、(C)は(A)の部分拡大図を表している。
【0018】
左右の後輪には、図示しないサスペンションに接続されたインホイールモータ200がそれぞれ配置されている。インホイールモータ200は、車体に支持され、前輪側のインホイールモータ100とほぼ同様の内部構造を有するが、出力軸の先端にベアリング装置202を介してホイール204が遊嵌されている。すなわち、インホイールモータ200の出力軸がホイール204を支持してはいるものの、その回転力はホイール204に伝達されないように構成されている。したがって、従動輪(後輪)は、制動時を除き、駆動輪(前輪)の動作にしたがって回転駆動されるようになる。このインホイールモータ200の内部構造の詳細については説明を省略する。
【0019】
インホイールモータ200の出力軸の中央にはギアが一体に固定され、そのギアに同心状に外挿されるように円環状のブロック206(「押圧部材」に該当する)が嵌合固定されている。ブロック206の外周面にはその半径方向外向きに突出する3つの突起210,212,214が設けられている。本実施形態では、突起210を基準に回転方向に30度ずれた位置に突起212が設けられ、180度ずれた位置に突起214が設けられている。これらの突起は、ブロック206の回転、つまり出力軸の回転によって同方向に回転することになる。
【0020】
また、ブロック206の外側には円環状の支持部208が同心状に設けられている(同図(B)では図示略)。この支持部208は、所定の幅および厚みを有し、図示しないアームを介して車体に固定されている。支持部208の突起210,212,214との対向位置近傍には、ブレーキシュー220,222,224がそれぞれ半径方向に変位可能に支持されている。すなわち、支持部208の各突起との対向位置近傍には、各ブレーキシューを挿通可能な挿通孔が設けられており、その挿通孔を囲むようにばね受け部226が突設されている。各ブレーキシューの長手方向中央にはフランジ部が設けられ、このフランジ部とばね受け部226との間には、各ブレーキシューをブロック206側に付勢するスプリング228(「付勢部材」に該当する)が介装されている。このため、各ブレーキシューは、ブロック206側から半径方向外向きの力が作用しない状態においてはブロック206側に変位した状態となるが、フランジ部が支持部208の外周面に係止されることにより、その変位量は規制される。
【0021】
各ブレーキシューのホイール204の内周との対向面には、ライニング230(「摩擦材」に該当する)が固定されている。このライニング230が図示のようにホイール204の内周面に押し付けられることで、車輪に摩擦力による制動力が付与される。すなわち、同図(C)にも示すように、突起210の先端面が細い矢印の回転方向(便宜上「正回転」という)へ向かうほど短くなる傾斜面となっている一方、これに対向するブレーキシュー220の端面(ライニング230と反対側の端面)が同方向に長くなる相補形状の傾斜面となっている。非制動時においては図示のように、ブレーキシュー220の軸線と突起210の軸線とが回転方向にずれており、ブレーキシュー220はスプリング228の付勢力によってブロック206に近接した待機位置に保持される。ブレーキシュー220がこの待機位置にあるときには、ライニング230がホイール204の内周面から完全に離間しているため、この制動装置によって車輪に制動力が付与されることはない。
【0022】
一方、制動時にはECUがインホイールモータ200へ通電を行い、ブロック206を正回転させる。その結果、ブレーキシュー220がスプリング228の付勢力に抗してホイール204側(太い矢印の方向)に駆動される。ブロック206は、同図(A)に示されるようにブレーキシュー220の軸線と突起210の軸線とが一致する角度回転した制動位置にて保持され、ライニング230がホイール204の内周面に押し付けられる。このとき、ブレーキシュー222,224も同様にそのライニング230がホイール204の内周面に押し付けられ、ホイール204は3箇所において摩擦による制動力を受けることになる。このようにして目標とする制動力が得られると、ECUはインホイールモータ200を逆回転させ、ブロック206を元の位置に戻す制御を実行する。その結果、突起による押圧力が解除され、スプリング228の付勢力によって各ブレーキシューが待機位置に戻るようになる。
【0023】
以上のように、本実施形態においては、インホイールモータ200の回転を利用して複数のライニング230をホイール204に対して同時に押し付ける構造としたため、一つの摩擦材を薄く、小さくすることが可能になる。また、シリンダやピストン等を設ける必要がなくなり、車両の内側のスペースを確保することができる。
【0024】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態は、制動装置の構成が第1実施形態のそれと異なる。本実施形態において第1実施形態と実質的に同様の構成部分については同一符号を付すなどして適宜その説明を省略する。
【0025】
図3は、第2実施形態にかかる制動装置の内部構造を簡略的に表す概略構造図である。(A)は部分切欠断面図を表し、図2(B)に対応する。(B)は主要部の構成を表す斜視図である。
【0026】
本実施形態においては、ホイール204に対して同心状にブレーキディスク350が固定されている。ブレーキディスク350は、段付円板状をなし、ベアリング装置202が嵌合するように組み付けられている。すなわち、インホイールモータ200の出力軸の先端には、ベアリング装置202およびブレーキディスク350を介してホイール204が遊嵌されている。
【0027】
インホイールモータ200の出力軸にはギアが一体に固定され、そのギアに同心状に外挿されるように円板状のブロック306が嵌合固定されている。ブロック306のブレーキディスク350との対向面における外周部近傍には、同図(B)にも示すように、ブレーキディスク350側に突出する3つの突起310が、周方向に所定の間隔で設けられている。これらの突起は、ブロック306の回転、つまり出力軸の回転によって同方向に回転することになる。
【0028】
また、ブロック306とブレーキディスク350との間の各突起310に対向する位置には、ブレーキシュー320がそれぞれ配設されている(同図には便宜上、1つのみ表示)。ブレーキシュー320は、車体に固定された図示しない支持部により、ブレーキディスク350へ近接または離間する方向に変位可能に支持されている。その支持部には、ブレーキシュー320をブレーキディスク350から離間する方向に付勢する図示しないスプリングが設けられている。このスプリングおよびこれを受けるばね受けの構造としては図2に示したものと同様の構造を適用することができるが、その図示については省略している。各ブレーキシューは、ブロック306側からブレーキディスク350側への力が作用しない状態においてはブロック306側に変位した状態となる。
【0029】
各ブレーキシューのブレーキディスク350との対向面には、ライニング330が固定されている。このライニング330がブレーキディスク350に押し付けられることで、車輪に摩擦力による制動力が付与される。すなわち、同図(B)にも示すように、突起310の先端面が細い矢印の回転方向(便宜上「正回転」という)へ向かうほど短くなる傾斜面となっている一方、これに対向するブレーキシュー320の端面(ライニング330と反対側の端面)が同方向に長くなる相補形状の傾斜面となっている。非制動時においては、ブレーキシュー320がスプリングの付勢力によってブロック306に近接した待機位置に保持される。ブレーキシュー320がこの待機位置にあるときには、ライニング330がブレーキディスク350から完全に離間しているため、この制動装置によって車輪に制動力が付与されることはない。
【0030】
一方、制動時にはECUがインホイールモータ200へ通電を行い、ブロック306を正回転させる。その結果、ブレーキシュー320がスプリングの付勢力に抗してブレーキディスク350側(太い矢印の方向)に駆動される。これにより、ライニング330がブレーキディスク350に押し付けられ、ブレーキディスク350は3箇所において摩擦による制動力を受けることになる。このようにして目標とする制動力が得られると、ECUはインホイールモータ200を逆回転させ、ブロック306を元の位置に戻す制御を実行する。その結果、突起による押圧力が解除され、スプリングの付勢力によって各ブレーキシューが待機位置に戻るようになる。
【0031】
本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形を実施形態に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施形態も本発明の範囲に含まれうる。
【0032】
図4は、第2実施形態の変形例にかかる制動装置の内部構造を簡略的に表す概略構造図である。同図は、図3(A)に対応する。
第2実施形態においては図3に示したように、ブレーキディスク350の片側の面にライニング330を押し付けて制動力を得るようにした。変形例においては、図4に示すように、ブレーキディスク360の両側からライニング330を押し付けて制動力を得るようにしてもよい。
【0033】
すなわち、本変形例では、ホイール204の軸線方向の中間部に、ブレーキディスク360が固定されている。ブレーキディスク360は、ホイール204の内周面から内方に向けて所定量突出するように設けられた環状部からなる。一方、インホイールモータ200の出力軸にはギアを介して一対のブロック306が嵌合固定されている。これら一対のブロック306は、ブレーキディスク360を挟むように所定の間隔をあけて対向配置されている。各ブロック306のブレーキディスク360との対向面には、図3に示したものと同様の突起310が設けられ、その各突起310とブレーキディスク360との間には、ブレーキシュー320がそれぞれ配設されている。ブレーキシュー320は、第2実施形態と同様に、車体に固定された図示しない支持部により、ブレーキディスク350へ近接または離間する方向に変位可能に支持されている。
【0034】
非制動時においては、各ブレーキシュー320がブロック306に近接した待機位置に保持されてライニング330がブレーキディスク360から完全に離間しているため、この制動装置によって車輪に制動力が付与されることはない。一方、制動時にはブロック306が回転されることによりブレーキシュー320がブレーキディスク350側に駆動され、ライニング330がブレーキディスク350に押し付けられる。その結果、ブレーキディスク360は両面を合わせた6箇所において摩擦による制動力を受けることになる。このように、ブレーキディスク360を両側から挟圧する構成とすることで、より大きな制動力を発揮させることができる。
【0035】
各実施形態においては、インホイールモータ200をインホイールモータ100と同様の構造を有するものとして説明したが、例えばステッピングモータを適用させるなど、異なる構造のモータとして構成してもよい。
【0036】
各実施形態においては、前輪側に駆動装置を設け、後輪側に制動装置を設けた。すなわち、制動制御において前輪側で回生制動を発揮させる一方、後輪側で摩擦による制動制御を実行するようにした。変形例においては、駆動輪側において駆動装置と制動装置とを一体に構成してもよい。具体的には、図1に示したインホイールモータ100が、図2〜図4に示したインホイールモータ200を兼ねるように構成してもよい。例えば、駆動用の出力軸と制動用の出力軸とをクラッチやギヤ機構によって切り替えられるように構成してもよい。
【0037】
各実施形態においては、インホイールモータ200を含む制動装置として、ブレーキペダルの操作に基づいて作動する装置を示した。変形例においては、インホイールモータ200を含む制動装置を、制動状態をロックするいわゆるパーキングブレーキ装置として構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】第1実施形態にかかる駆動装置の内部構造を表す概略構造図である。
【図2】第1実施形態にかかる制動装置の内部構造を簡略的に表す概略構造図である。
【図3】第2実施形態にかかる制動装置の内部構造を簡略的に表す概略構造図である。
【図4】第2実施形態の変形例にかかる制動装置の内部構造を簡略的に表す概略構造図である。
【符号の説明】
【0039】
100 インホイールモータ、 102 タイヤ、 104 ホイール、 112 出力軸、 200 インホイールモータ、 202 ベアリング装置、 204 ホイール、 206 ブロック、 208 支持部、 210 突起、 212 突起、 214 突起、 220 ブレーキシュー、 222 ブレーキシュー、 228 スプリング、 230 ライニング、 306 ブロック、 310 突起、 320 ブレーキシュー、 330 ライニング、 350 ブレーキディスク、 360 ブレーキディスク。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に取り付けられ、車輪のホイール内に配置されるインホイールモータと、
前記インホイールモータの出力軸に固定された環状の本体を有し、その本体の外周面に半径方向外向きに突出するとともに、その先端に半径方向の高さが変化する傾斜面を有する複数の突起が設けられた押圧部材と、
前記ホイールの内周面と前記押圧部材との間に配置されるように前記車体に対して取り付けられ、その一端側が前記ホイールの内周面に対向配置される一方、他端側に前記突起の傾斜面と相補形状の対向面を有するブレーキシューと、
前記ブレーキシューを前記ホイールの内周面から離間する方向に付勢する付勢部材と、
前記インホイールモータを駆動して前記押圧部材の回転角度を制御することにより、前記ブレーキシューに対する前記突起の相対位置を変化させ、それにより前記ブレーキシューを前記ホイールから離間した待機位置と前記ホイールに押し付けられる制動位置との間で変位するように駆動する制御部と、
を備えることを特徴とする電動ブレーキ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−90994(P2010−90994A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−261662(P2008−261662)
【出願日】平成20年10月8日(2008.10.8)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】