説明

電源装置およびその停止方法

【課題】チョークコイルの2次側の巻き線を短絡から保護することができるようにする。
【解決手段】
PFC巻き線ショート時保護回路14は、昇圧型力率改善回路12のチョークコイルの2次側の巻き線に流れる電流を監視し、その監視結果に基づいて、2次側の巻き線の短絡の有無を検出する。電源停止回路15は、2次側の巻き線の短絡が発生していないと検出されている場合、商用電源10から入力される交流電圧の整流素子D1への入力を許可することで電源回路1を動作させ、2次側の巻き線の短絡が発生していると検出された場合、商用電源10から入力される交流電圧の整流素子D1への入力を禁止することで、電源回路1全体を停止して、昇圧型力率改善回路12のチョークコイルの2次側の巻き線を短絡から保護することができるようにする。本発明は、電源装置に適用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電源装置およびその停止方法に関し、特に、電源装置に昇圧型力率改善回路を含む場合、その昇圧型力率改善回路に内蔵するチョークコイルの2次側の巻き線が短絡したときに、電源装置全体を停止することができるようにした電源装置およびその停止方法に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、昇圧型力率改善回路を含む電源装置が普及しており、例えば、テレビ用の電源装置として、利用されている。
【0003】
この昇圧型力率改善回路は、商用電源周波数(関東以北は50Hz、関西以西は60Hz)の交流電圧が整流された脈流電圧を、内蔵する平滑キャパシタにより直流電圧に変換して出力する。さらに、この昇圧型力率改善回路は、入力電圧のレベルが低下したり、出力負荷が過負荷となっても、出力直流電圧のレベルを一定に保つように制御する。このため、昇圧型力率改善回路には、チョークコイル、スイッチング素子、およびそのスイッチング素子を制御する集積回路も内蔵している。
【0004】
このような従来の昇圧型力率改善回路として、例えば、特許文献1に示されるような電源装置が知られている。具体的には、特許文献1に開示されている電源装置とは、スイッチング素子が所定の時間オンしない場合、集積回路により、所定の時間以内にスイッチング素子を動作させる電源装置である。
【0005】
【特許文献1】特開平8−275509号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の集積回路、すなわち、起動時または軽負荷と認識したときに自動的にトリガ信号を発生する集積回路を内蔵している従来の昇圧型力率改善回路では、内蔵するチョークコイルの2次側の巻き線が短絡しても動作し続けてしまうという課題があった。この課題が発生すると、最終的には、チョークコイルが発熱する可能性もでてくる。
【0007】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、昇圧型力率改善回路のチョークコイルの2次側の巻き線が短絡した場合、その昇圧型力率改善回路を含む電源装置全体を停止することができるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の電源装置は、入力された交流電圧を整流し、整流した脈流電圧を出力する整流素子と、整流素子より出力される脈流電圧を直流電圧に変換して出力するための第1のキャパシタ、変換後の直流電圧のレベルを所定のレベルにほぼ保つためのチョークコイルの1次側の巻き線、およびスイッチング素子、並びに、チョークコイルの2次側の巻き線に発生する電圧のレベルが所定のレベル以下になった場合にスイッチング素子の状態をオフ状態からオン状態に切り替える制御を行う制御回路を少なくとも含む直流出力回路と、直流出力回路のチョークコイルの2次側の巻き線から流れ出る電流を監視し、その監視結果に基づいて、2次側の巻き線の短絡の発生の有無を検出する短絡検出回路と、短絡検出回路により2次側の巻き線の端子間の短絡の発生が検出されていない場合、交流電圧の整流素子への入力を許可することで電源装置全体を動作させ、短絡検出回路により2次側の巻き線の端子間の短絡の発生が検出された場合、交流電圧の整流素子への入力を禁止することで、電源装置全体を停止させる電源停止回路とを備えることを特徴とする。
【0009】
短絡検出回路は、直流出力回路のチョークコイルの2次側の巻き線から流れ出る電流により充電される第2のキャパシタと、充電された第2のキャパシタを電源として動作する動作素子と、動作素子の動作状態により2次側の巻き線から流れ出る電流を監視し、動作素子が動作していないことを検出することにより、2次側の巻き線の短絡の発生を検出する検出素子とを有することを特徴とする。
【0010】
本発明の電源装置は、整流素子により出力される脈流電圧が、所定のレベルを超えた場合、制御回路の制御を停止させる制御停止回路をさらに含み、短絡検出回路は、制御停止回路により制御回路の制御が停止させられて2次側の巻き線から電流が流れ出ていない場合、第2のキャパシタを充電させる充電回路をさらに含むことを特徴とする。
【0011】
本発明の電源装置の停止方法は、直流出力回路のチョークコイルの2次側の巻き線から流れ出る電流を監視し、その監視結果に基づいて、2次側の巻き線の短絡の発生の有無を検出する検出ステップと、検出ステップにより2次側の巻き線の端子間の短絡の発生が検出されていない場合、交流電圧の整流素子への入力を許可することで電源装置全体を動作させ、検出ステップにより2次側の巻き線の端子間の短絡の発生が検出された場合、交流電圧の整流素子への入力を禁止することで、電源装置全体を停止させる停止ステップとを含むことを特徴とする。
【0012】
本発明の電源装置および電源装置の停止方法においては、入力された交流電圧を整流し、整流した脈流電圧を出力する整流素子と、整流素子より出力される脈流電圧を直流電圧に変換して出力するための第1のキャパシタ、変換後の直流電圧のレベルを所定のレベルにほぼ保つためのチョークコイルの1次側の巻き線、およびスイッチング素子、並びに、チョークコイルの2次側の巻き線に発生する電圧のレベルが所定のレベル以下になった場合にスイッチング素子の状態をオフ状態からオン状態に切り替える制御を行う制御回路を少なくとも含み、チョークコイルの2次側の巻き線から流れ出る電流を監視し、その監視結果に基づいて、2次側の巻き線の短絡の発生の有無を検出し、2次側の巻き線の端子間の短絡の発生が検出されていない場合、交流電圧の整流素子への入力を許可することで電源装置全体を動作させ、2次側の巻き線の端子間の短絡の発生が検出された場合、交流電圧の整流素子への入力を禁止することで、電源装置全体を停止させる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、力率改善回路用のチョークコイルの2次側の巻き線が短絡した場合、電源装置を停止させることができる。
【0014】
また、本発明によれば、昇圧型力率改善回路から出力される直流電圧が、入力電圧の全波整流電圧よりも下回る場合、出力する直流電圧のレベルを一定に保つための集積回路が停止する回路構成であっても、電源装置を停止させることなく動作させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に本発明の最良の形態を説明するが、開示される発明と実施の形態との対応関係を例示すると、次のようになる。本明細書中には記載されているが、発明に対応するものとして、ここには記載されていない実施の形態があったとしても、そのことは、その実施の形態が、その発明に対応するものではないことを意味するものではない。逆に、実施の形態が発明に対応するものとしてここに記載されていたとしても、そのことは、その実施の形態が、その発明以外の発明には対応していないものであることを意味するものではない。
【0016】
さらに、この記載は、明細書に記載されている発明の全てを意味するものではない。換言すれば、この記載は、明細書に記載されている発明であって、この出願では請求されていない発明の存在、すなわち、将来、分割出願されたり、補正により出現し、追加される発明の存在を否定するものではない。
【0017】
本発明においては、電源装置が提供される。この電源装置は、入力された交流電圧(例えば、図1および図2の商用交流電源10から出力される交流電圧)を整流し、整流した脈流電圧(例えば、図1および図2の脈流電圧Vdin)を出力する整流素子(例えば、図1および図2の整流素子D1)と、整流素子より出力される脈流電圧を直流電圧に変換して出力するための第1のキャパシタ(例えば、図2の平滑キャパシタC1)、変換後の直流電圧のレベルを所定のレベルにほぼ保つためのチョークコイルの1次側の巻き線(例えば、図2のチョークコイルの1次側の巻き線L1)、およびスイッチング素子(例えば、図2のスイッチング素子Q1)、並びに、チョークコイルの2次側の巻き線(例えば、図2のチョークコイルの2次側の巻き線L2)に発生する電圧のレベルが所定のレベル以下になった場合にスイッチング素子の状態をオフ状態からオン状態に切り替える制御を行う制御回路(例えば、図2の集積回路22)を少なくとも含む直流出力回路(例えば、図1および図2の昇圧型力率改善回路12)と、直流出力回路のチョークコイルの2次側の巻き線から流れ出る電流を監視し、その監視結果に基づいて、2次側の巻き線の短絡の発生の有無を検出する短絡検出回路と(例えば、図1および図2のPFC巻き線ショート時保護回路14)、短絡検出回路により2次側の巻き線の端子間の短絡の発生が検出されていない場合、交流電圧の整流素子への入力を許可することで電源装置全体を動作させ、短絡検出回路により2次側の巻き線の端子間の短絡の発生が検出された場合、交流電圧の整流素子への入力を禁止することで、電源装置全体を停止させる電源停止回路(例えば、図1および図2の電源停止回路15)とを備える。
【0018】
短絡検出回路は、直流出力回路のチョークコイルの2次側の巻き線から流れ出る電流により充電される第2のキャパシタ(例えば、図2のキャパシタC5)と、充電された第2のキャパシタを電源として動作する動作素子(例えば、図2のトランジスタQ4)と、動作素子の動作状態により2次側の巻き線から流れ出る電流を監視し、動作素子が動作していないことを検出することにより、2次側の巻き線の短絡の発生を検出する検出素子(例えば、図2の短絡発生有検出時にはオン状態となり、短絡発生無検出時にはオフ状態となるフォトカプラPH1)とを有する。
【0019】
電源装置は、整流素子により出力される脈流電圧が、所定のレベルを超えた場合、制御回路の制御を停止させる制御停止回路(例えば、図1および図2のPFC停止回路13)をさらに含み、短絡検出回路は、制御停止回路により制御回路の制御が停止させられて2次側の巻き線から電流が流れ出ていない場合、第2のキャパシタを充電させる充電回路(例えば、図2の定電圧源E1をコレクタ電源とするトランジスタQ5、抵抗R14、および整流ダイオードD4からなる回路)をさらに含むことを特徴とする。
【0020】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
【0021】
図1は、本発明を適用した電源装置1の構成例を示す回路図である。
【0022】
電源装置1は、例えば、テレビ用電源として使用され、商用電源10から入力された交流電圧を昇圧して直流電圧に変換し、昇圧した直流電圧を負荷16に出力する。
【0023】
電源装置1は、リレー11、整流素子D1、定電圧源E1、昇圧型力率改善回路12、PFC停止回路13、PFC巻き線ショート時保護回路14、および電源停止回路15を含む。
【0024】
リレー11は、リレーコイル11−1および接点11−2から構成され、リレーコイル11−1に電流が流れることで(例えば、後述する図2の電源停止回路15のパワーオン51がオン状態であるとき)、接点11−2が閉じる。一方、リレーコイル11−1に電流が流れなくなることで(例えば、電源停止回路15のパワーオン51がオフ状態であるとき)、接点11−2が開放される。すなわち、リレー11は、リレーコイル11−1に流れる電流に応じて、スイッチング動作を実行する。
【0025】
以下、リレーコイル11−1に電流が流れることで、接点11−2が閉じることをリレーがオンすると称し、リレーコイル11−1に電流が流れなくなることで、接点11−2が開放されることをリレーがオフすると称する。
【0026】
このリレー11のうちの、リレーコイル11−1は、後述する電源停止回路15の出力端子Pcと出力端子Pdとに接続されている。また、接点11−2のうちの一端Raは、後述する整流素子D1の2つの入力端子のうちの一端Dbに接続され、その他端Rbは、商用交流電源10の2つの出力端子のうちの一端Ibに接続されている。この商用交流電源10の2つの出力端子のうちの他端Iaは、整流素子D1の2つの入力端子のうちの上述した端Dbの反対側の端Daに接続されている。
【0027】
従って、リレーがオフすることで、商用電源10から出力される交流電圧の整流素子D1への入力が停止するので、電源装置1全体が停止することになる。
【0028】
一方、リレーがオンすることで、商用電源10から交流電圧が出力される交流電圧は整流素子D1へ入力されるので、電源装置1全体が駆動することになる。
【0029】
整流素子D1は、例えば、ブリッジ接続された4つのダイオード(図示せず)により構成され、入力端子として上述した2つの端子Daと端子Dbを有し、出力端子として2つの端子Dcと端子Ddを有している。出力端子Dcには、昇圧型力率改善回路12の2つの入力端子(図中左側の2端)のうちの一端Caが接続され、その反対側の端である出力端子Ddには昇圧型力率改善回路12の2つの入力端子のうちの他端Cbが接続されている。
【0030】
従って、リレーがオンしている場合、整流素子D1は、商用電源10より入力された交流電圧を整流して脈流電圧(以下、脈流電圧Vdinと称する)とし、整流した脈流電圧Vdinを昇圧型力率改善回路12に供給する。換言すると、例えば図1に示されるように、昇圧型力率改善回路12の2つの入力端子のうちの図中下側の端子Cbが接地されている場合、その反対側の端子Ca、すなわち、図中上側の端子Caに脈流電圧Vdinが印加されることになる。
【0031】
なお、商用電源10から整流素子D1に入力される交流電圧とは、商用電源周波数(関東以北は50Hz、関西以西は60Hz)の交流電圧を指す。
【0032】
昇圧型力率改善回路12は、上述した2つの入力端子Caと入力端子Cbの他、端子Cc乃至端子Ceを有している。端子Cc乃至端子Ceのうちの端子Cdと端子Ceには、負荷16が接続されている。すなわち、昇圧力率改善回路12は、入力端子Caと入力端子Cbとに接続された整流素子D1から入力された脈流電圧を昇圧して直流電圧に変換し、その直流電圧を、端子Cdと端子Ceに接続された負荷16に出力する。従って、以下、端子Cdと端子Ceとのそれぞれを、特に、それぞれ出力端子Cdと出力端子Ceと称する。また、負荷16に出力される直流電圧を出力直流電圧Voutと称する。換言すると、例えば図1に示されるように、昇圧型力率改善回路12の2つの出力端子のうちの図中下側の端子Ceが接地されている場合、その反対側の端子Cd、すなわち、図中上側の端子Cdに出力直流電圧Voutが印加されることになる。
【0033】
ところで、昇圧型力率改善回路12は、このような動作、すなわち、整流素子D1から入力された脈流電圧Vdinを昇圧して直流電圧に変換し、それを出力直流電圧Voutとして負荷16に出力する動作を行うために、平滑キャパシタ、チョークコイル、スイッチング素子、およびそのスイッチング素子の状態を制御する制御回路などを有している。詳細については後述するが、昇圧型力率改善回路12は、例えば図2に示されるように、平滑キャパシタC1、チョークコイル21、スイッチング素子Q1、および制御回路としての集積回路22などを有し、これらが図2に示されるように接続されて構成される。
【0034】
また、詳細については後述するが、昇圧型力率改善回路12のこれらの構成要素のうちの、平滑キャパシタC1が、整流素子D1より出力される脈流電圧Vdinを直流電圧Voutに変換して出力する機能(以下、平滑化機能と称する)を有していると言える。
【0035】
一方、チョークコイル21、スイッチング素子Q1、および集積回路22が、出力直流電圧Voutのレベルを、脈流電圧Vdinのレベルに比較して高い所定のレベルにほぼ保つ機能、すなわち、安定化させ昇圧する機能(以下、昇圧機能と称する)を有している。すなわち、集積回路22がスイッチング素子Q1に対するスイッチング制御を実行すると、チョークコイル21の1次側の巻き線L1にエネルギーが蓄えられ、そのエネルギーが平滑キャパシタC1に放出される処理が繰り返される。このような処理の繰り返しの結果、出力直流電圧Voutのレベルはほぼ一定に保たれることになる。すなわち、出力直流電圧Voutは、昇圧されることになる。
【0036】
なお、スイッチング制御とは、スイッチング素子Q1の状態をオン状態からオフ状態に切り替えたり、オフ状態からオン状態に切り替える制御を指す。また、スイッチング素子Q1の観点に立つと、このようなスイッチング制御により、スイッチング素子Q1の状態がオン状態からオフ状態に切り替わったり、オフ状態からオン状態に切り替わる動作を、以下、スイッチング動作と称する。
【0037】
このとき、この集積回路22は、スイッチング制御のうちの、スイッチング素子21の状態をオフ状態からオン状態に切り替える制御を行う場合、チョークコイル21の2次側の巻き線L2に発生する電圧を利用している。
【0038】
従って、この2次側の巻き線L2が短絡した場合、集積回路22はスイッチング制御を行うことができなくなり、その結果、昇圧されなくなり、上述した平滑キャパシタC1による平滑化機能のみが働くことになる。すなわち、昇圧型力率改善回路12に入力された脈流電圧Vdinは昇圧されずに単に直流電圧Voutにのみ変換されて、負荷16に出力されることになる。
【0039】
ただし、集積回路22が、例えば後述する図2に示されるように構成されている場合、すなわち、起動時または軽負荷と認識したときに自動的にトリガ信号を発生するタイプの集積回路である場合、2次側の巻き線L2が短絡しても、このトリガ信号により、スイッチング素子Q1のスイッチング動作が継続されてしまうことがある。すなわち、チョークコイル21の2次側の巻き線L2が短絡しても、昇圧型力率改善回路12が動作し続けてしまうという課題が発生してしまう。そして、この課題が発生した結果、最終的には、チョークコイル21が発熱する可能性もでてくる。
【0040】
ところで、チョークコイル21の2次側の巻き線L2が短絡していない場合には、スイッチング素子Q1のスイッチング動作の結果、チョークコイル21の1次側の巻き線L1には、時間の経過に対して電流値が増減する電流が流れており、それに伴い、2次側の巻き線L2にも電圧が発生して電流が流れることになる。これに対して、2次側の巻き線L2の端子間が短絡した場合には、2次側の巻き線L2には短絡電流が流れ、外部に電流が出力されなくなる(流れ出さなくなる)。
【0041】
そこで、本発明の発明人は、例えば、2次側の巻き線L2から出力される電流を監視し、その監視結果に基づいて2次側の巻き線L2の端子間の短絡の発生の有無を検出し、2次側の巻き線L2の端子間の短絡が発生した場合には、この電源装置1全体を停止させる装置および方法を発明した。本発明が適用される電源装置1には、PFC巻き線ショート時保護回路14と電源停止回路15とが設けられている。
【0042】
すなわち、PFC巻き線ショート時保護回路14は、昇圧型力率改善回路12内のチョークコイル21の2次側の巻き線L2から出力される電流を監視する。このため、PFC巻き線ショート時保護回路14には、昇圧型力率改善回路12の端子Ccと端子Ceとのそれぞれに接続するための端として、端子Faと端子Fbとがそれぞれ設けられている。
【0043】
また、PFC巻き線ショート時保護回路14は、その監視結果に基づいて2次側の巻き線L2の端子間の短絡の発生の有無を検出し、その検出結果を電源停止回路15に供給する。このため、PFC巻き線ショート時保護回路14には、電源停止回路15の入力端子Pbと入力端子Paとのそれぞれに接続するための端として、端子Fcと端子Fdとのそれぞれが設けられている。
【0044】
ところで、このPFC巻き線ショート時保護回路14は、上述した一連の動作(機能)を実現可能な構成であれば特に限定されないが、例えば、電源用キャパシタ、動作素子、および短絡検出素子とを少なくとも含む構成とすることができる。この電源用キャパシタは、例えば後述する図2のキャパシタC5で構成され、チョークコイル21の2次側の巻き線L2に流れる電流により充電される。また、この動作素子は、例えば後述する図2のトランジスタQ4などで構成され、電源用キャパシタが充電されているとき、すなわち、電源用キャパシタに電圧が発生しているとき、その電源用キャパシタを電源として動作する素子である。また、この短絡検出素子は、例えば後述する図2のフォトカプラPH1などで構成され、動作素子の動作状態を監視して、その監視結果に基づいて、チョークコイルの2次側の巻き線L2の端子間の短絡の発生有無を検出する。すなわち、この短絡検出素子は、動作素子が動作している場合、正常(2次側の巻き線L2に短絡が発生していない)であることを検出し、動作素子が停止している場合、2次側の巻き線L2に短絡が発生していることを検出する。
【0045】
従って、詳細については図2を参照して後述するが、PFC巻き線ショート時保護回路14の端子Faと端子Fbとには、電源用キャパシタとして機能するキャパシタC5の両端が接続され、PFC巻き線ショート時保護回路14の端子Fcと端子Fdとには、短絡検出素子として機能するフォトカプラPH1の出力端が接続されることになる。
【0046】
なお、PFC巻き線ショート時保護回路14にはさらに、端子Feと端子Ffも設けられているが、これらの端子については後述する。また、PFC巻き線ショート時保護回路14のさらなる詳細については、図2を参照して後述する。
【0047】
電源停止回路15においては、上述したように、入力端子Paと入力端子Pbのそれぞれには、PFC巻き線ショート時保護回路14の端子Fdと端子Fcとのそれぞれが接続され、2次側の巻き線L2の端子間の短絡の発生有無の検出結果が入力される。また、出力端子Pcと出力端子Pdには、リレー11のリレーコイル11−1が接続されている。
【0048】
従って、昇圧型力率改善回路12のチョークコイル21の2次側の巻き線L2の端子間の短絡が発生していないという検出結果がPFC巻き線ショート時保護回路14から入力された場合、電源停止回路15は、リレーコイル11−1に電流を流すことで、接点11−2を閉じる。すなわち、リレーがオンする。これにより、商用電源10から整流素子D1への交流電圧の入力は許可されることになる。すなわち、電源装置1全体が駆動されることになる。
【0049】
これに対して、昇圧型力率改善回路12のチョークコイル21の2次側の巻き線L2の端子間の短絡が発生したという検出結果がPFC巻き線ショート時保護回路14から入力された場合、電源停止回路15は、リレーコイル11−1に流れる電流を停止することで、接点11−2を開放する。すなわち、リレーがオフする。これにより、商用電源10から整流素子D1への交流電圧の入力は禁止されることになる。すなわち、電源装置1全体が停止することになる。
【0050】
なお、電源停止回路15のさらなる詳細については、図2を参照して後述する。
【0051】
ところで、商用電源10の交流電圧のレベルは、日本においては100Vとされているが、他の国においては200V以上の高いレベルとされることもある。このような場合、昇圧型力率改善回路12の出力直流電圧Voutのレベルが、その入力電圧Vdin、すなわち、整流素子D1から出力される脈流電圧Vdinのレベルより下回り、上述した昇圧機能を実現する必要が無くなる。このため、この昇圧機能を停止させるため、すなわち、昇圧型力率改善回路12の集積回路22のスイッチング制御を停止させるために、この電源装置1には、PFC停止回路13が設けられている。
【0052】
このPFC停止回路13は、昇圧型力率改善回路12の出力直流電圧Voutのレベルが、その入力電圧である脈流電圧Vdinのレベルより下回るか否かを検出するために、脈流電圧Vdinのレベルを常時監視している。このため、PFC停止回路13には、昇圧力率改善回路12の端子Cf、すなわち、脈流電圧Vdinに対応する電圧を出力するための端子Cfに接続するための端子として、端子Sbが設けられている。
【0053】
そして、PFC停止回路13は、出力直流電圧Voutのレベルが、その入力電圧である脈流電圧Vdinのレベルより下回ったと検出した場合には、昇圧型力率改善回路12の集積回路22のスイッチング制御を停止させる。このため、PFC停止回路13には、昇圧力率改善回路12の端子Cg、すなわち、それに内蔵される集積回路22との接続端子Cgと接続するための端子として、端子Saが設けられている。
【0054】
また、詳細については図2を参照して後述するが、PFC停止回路13は、定電圧源E1を電源として動作する。このため、定電圧源E1の両端に接続するための端子として、端子Sdと端子Seが設けられている。
【0055】
ところで、このPFC停止回路13により、昇圧型力率改善回路12の集積回路12のスイッチング制御が停止された場合、その2次側の巻き線L2には電流が流れなくなる。従って、このような場合、昇圧型力率改善回路12のチョークコイル21の2次側の巻き線L2が短絡していないにもかかわらず、PFC巻き線ショート時保護回路14は、2次側の巻き線L2が短絡していると誤検出してしまうという新たな課題が発生してしまう。
【0056】
より具体的には例えば、PFC巻き線ショート時保護回路14に、上述した電源用キャパシタ(例えば、図2のキャパシタC5)、動作素子(例えば、図2のトランジスタQ5)、および、短絡検出素子(例えば、図2のフォトカプラPH1)が設けられている場合、2次側の巻き線L2に電流が流れなくなると、電源用キャパシタは充電されなくなり、動作素子の電源として機能しなくなる。従って、動作素子は動作せず、その結果、短絡検出素子は、2次側の巻き線L2に短絡が発生したと誤検出してしまうという新たな課題が発生してしまう。
【0057】
そこで、この新たな課題を解決する必要がある場合、PFC巻き線ショート時保護回路14はさらに、次のような充電回路を搭載するとよい。すなわち、この充電回路は、例えば後述する図2のトランジスタQ5、抵抗R14、およびダイオードD4などで構成される回路である。また、この充電回路は、昇圧型力率改善回路12の制御回路22のスイッチング制御がPFC停止回路13により停止された場合、すなわち、それに伴い、昇圧型力率改善回路12のチョークコイル21の2次側の巻き線L2に電流が流れなくなった場合、その2次側の巻き線L2の電流の代わりに、PFC巻き線ショート時保護回路14内の電源用キャパシタに充電させるための電流を供給する回路である。
【0058】
このような充電回路とPFC停止回路13とを接続するために、PFC巻き線ショート時保護回路14側には端子Feが設けられており、PFC停止回路13側には端子Scが設けられているのである。また、この充電回路は、電源用キャパシタに充電するための電源として、例えば上述した定電圧源E1を利用することができ、このため、PFC巻き線ショート時保護回路14には、定電圧源E1の正側端と接続するための端子として端子Ffが設けられているのである。
【0059】
以上、図1を参照して、本発明が適用される電源装置1の構成例の概略について説明したが、さらに、図2を参照して、その電源装置1の詳細な構成例の概略について説明する。
【0060】
すなわち、図2は、電源装置1の詳細な構成例を示す回路図である。図1に示す場合と同様の部分には、同様の符号が付してあり、その説明は省略する。
【0061】
初めに、昇圧型力率改善回路12の詳細について説明する。
【0062】
昇圧型力率改善回路12は、チョークコイル21、集積回路22、平滑キャパシタC1、キャパシタC2、キャパシタC3、整流ダイオードD2、整流ダイオードD3、抵抗R1、抵抗R2、抵抗R3、抵抗R4、抵抗R5、抵抗R6、抵抗R6、抵抗R7、抵抗R18、スイッチング素子Q1を有する回路である。
【0063】
また、チョークコイル21は、1次側の巻き線L1および2次側の巻き線L2からなり、チョークコイルの2次側の巻き線L2と抵抗R4とが検出回路23を構成し、さらに、キャパシタC2、抵抗R5、抵抗R18とが検出回路24を構成する。
【0064】
さらに、図2に示されるように、昇圧型力率改善回路12の入力端子Ca、Cbのうちの図中下側の端子Cbと、出力端子Cd、Ceのうちの図中下側の端子Ceは接続され、接地されているので、これら図中下側の2端の電圧(入出力端)のレベルはいずれも0となる。そこで、以下、図中上側の2端(入出力端)を、正極端と称し、図中下側の2端を負極端と称する。すなわち、以下、入力端のうち、図中上側の端(電圧のレベルが、脈流電圧Vdinと同一のレベルである端)を、入力正極端と称し、図中下側の端を入力負極端と称する。同様に、出力端のうち、図中上側の端(電圧のレベルが、出力電圧Voutと同一のレベルである端)を、出力正極端と称し、図中下側の端を出力負極端と称する。
【0065】
昇圧型力率改善回路12において、チョークコイル21の1次側の巻き線L1の一端が、昇圧型力率改善回路12の入力正極端子Caに接続され、その他端は、整流ダイオードD2のアノードに接続されている。整流ダイオードD2のカソードは、昇圧型力率改善回路12の出力正極端子Cdに接続されている。
【0066】
スイッチング素子Q1は、例えば、MOS FET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)として構成される。スイッチング素子Q1において、そのドレインは、整流ダイオードD2のカソードと昇圧型力率改善回路12の出力正極端子Cdとの接続端に、そのゲートは、後述する集積回路22のOR回路37の出力端に、そのソースは、後述する抵抗R5およびキャパシタC2を介して、昇圧型力率改善回路12の入力負極端子Cbに、それぞれ接続されている。
【0067】
平滑キャパシタC1は、その一端が、昇圧型力率改善回路12の出力正極端子Cd(すなわち、整流ダイオードD2のカソード)に、その他端が、昇圧型力率改善回路12の出力負極端子Ceに、それぞれ接続されている。
【0068】
以上のようにして構成される昇圧型力率改善回路12において、スイッチング素子Q1は、そのゲートに供給される制御信号Sc(後述する集積回路22のOR回路37から出力される制御信号Sc)の電圧のレベルに応じて、スイッチング動作をする。
【0069】
なお、以下、上述したように、スイッチング素子Q1のドレインとソースが導通された状態を、オン状態と称し、スイッチング素子Q1のドレインとソースが遮断(非導通)された状態を、オフ状態と称する。また、ここでは、スイッチング素子Q1が、その状態を、オン状態からオフ状態に切り替えたり、オフ状態からオン状態に切り替える動作を、スイッチング動作と称している。さらに、以下、スイッチング動作のうちの、オン状態からオフ状態に切り替える動作(オフ駆動動作)により、スイッチング素子Q1の状態がオフ状態となることを、ターンオフと称する。同様に、スイッチング動作のうちの、オフ状態からオン状態に切り替える動作(オン駆動動作)により、スイッチング素子Q1の状態がオン状態となることを、ターンオンと称する。
【0070】
すなわち、スイッチング素子Q1のゲートに入力される制御信号Scの電圧のレベルが、ローレベル(以下、適宜、単に「L」と記述する)からハイレベル(以下、適宜、単に「H」と記述する)に変化すると、スイッチング素子Q1は、ターンオンする。一方、スイッチング素子Q1のゲートに入力される制御信号Scの電圧のレベルが、「H」から「L」に変化すると、スイッチング素子Q1は、ターンオフする。
【0071】
スイッチング素子Q1がターンオンすると、脈流電圧Vdinにより、チョークコイル21の1次側の巻き線L1に電流Il1が流れ始める。このとき、チョークコイル21の1次側の巻き線L1には、この電流Il1のレベルに応じたエネルギーが蓄積される。
【0072】
次に、スイッチング素子Q1がターンオフすると、チョークコイル21の1次側の巻き線L1は、蓄積されたエネルギーを放出することで、ターンオン時と同様の電流Il1を流そうとする。このときの電流Il1は、スイッチング素子Q1を通らず、整流ダイオードD2を介して、平滑キャパシタC1に流れ込む。すなわち、平滑キャパシタC1は、電荷を充電することになる。
【0073】
次に、スイッチング素子Q1が再度ターンオンすると、今度は、電流Il1は、スイッチング素子Q1に流れ込み、平滑キャパシタC1には流れなくなる。従って、このとき、チョークコイル21の1次側の巻き線L1には、この電流Il1のレベルに応じたエネルギーが再度蓄積され、一方、平滑キャパシタC1は、電荷を放電することになる。
【0074】
このようにして、スイッチング素子Q1が、集積回路22のOR回路37からの制御信号Scの電圧のレベルの変化に応じて、スイッチング動作を繰り返すと、上述した一連の動作が繰り返し実行され、平滑キャパシタC1は、連続的に充放電を繰り返すことになる。その結果、平滑キャパシタC1の端子間に、一定レベルの直流電圧Voutが発生する。
【0075】
このとき負荷16が増大すると、平滑キャパシタC1の放電量が増加する(負荷16に供給される負荷電流のレベルが上がる)ことになる。従って、その分、出力電圧(平滑キャパシタC1の端子間電圧)Voutのレベルも低下する。
【0076】
または、商用電源10から出力される交流電圧のレベルが下がると、すなわち、脈流電圧Vdinのレベルが下がると、その分、チョークコイル21の1次側の巻き線L1に蓄積されるエネルギーが減少し(チョークコイルの1次側の巻き線L1に流れる電流Il1のレベルも下がり)、平滑キャパシタC1の電荷の充電量も減少することになる。従って、その分、出力電圧(平滑キャパシタC1の端子間電圧)Voutのレベルも低下する。
【0077】
このため、昇圧型力率改善回路12においては、出力電圧Voutのレベルをほぼ一定に保つ制御、すなわち、ここでは脈流電圧Vdinのレベルより昇圧した所定のレベルをほぼ一定に保つ制御をするために、集積回路22が設けられている。
【0078】
さらに、昇圧型力率改善回路12においては、集積回路22が利用する情報を検出するために、検出回路23と検出回路24が設けられている。
【0079】
検出回路23は、チョークコイル21の2次側の巻き線L2と抵抗R4とが直列に接続され、その直列回路の一端(チョークコイル21の2次側の巻き線L2側の端)が、昇圧型力率改善回路12の入力負極端子Cbに接続され(すなわち、接地され)、その他端(抵抗R4の端)が、後述する集積回路22の比較器35の正相入力(+)に接続される。すなわち、検出回路23は、チョークコイル21の1次側の巻き線L1に流れる電流Il1のレベルの変化(特に、電流Il1のレベルが低下し、略0になったこと)を、その2次側の巻き線L2に発生した電圧のレベルで検出し(電流Il1のレベルの時間変化率(微分値)に対応する電圧レベルの電圧に変換し)、検出したレベルの電圧を、集積回路22の比較器35の正相入力(+)に供給する。
【0080】
検出回路24は、抵抗R5とキャパシタC2とが直列に接続され、その直列回路の一端(抵抗R5側の端)が、スイッチング素子Q1のドレインと接続され、その他端(キャパシタC2の端)が、昇圧型力率改善回路12の出力負極端子Ceに接続され、さらに、抵抗R5とキャパシタC2側との接続端が、後述する集積回路22の比較器33の正相入力(+)に接続される。また、検出回路24には、一端がスイッチング素子Q1のドレインに接続され、他端が昇圧型力率改善回路12の出力負極端子Ceに接続されている抵抗R18も含まれる。すなわち、検出回路24は、スイッチング素子Q1に流れる電流(ドレインからソースに流れる電流)Iq1のレベルを、抵抗R5の両端のレベルで検出し、検出したレベルの電圧Vq1を、集積回路22の比較器33の正相入力(+)に供給する。
【0081】
抵抗R6および抵抗R7からなる直列回路は、一端(抵抗R6側の端)が、昇圧型力率改善回路12の出力正極端子Cdに接続され、その他端(抵抗R7側の端)が、集積回路22の定電圧源E2の負極側に接続され、さらに、抵抗R6と抵抗R7との接続端が、後述する集積回路22の誤差増幅器31の逆相入力(−)に接続される。すなわち、抵抗R6および抵抗R7からなる直列回路は、昇圧型力率改善回路12の出力電圧Voutを所定の分圧比で分圧し、その結果得られる分圧電圧Vd1を、集積回路22の誤差増幅器31の逆相入力(−)に供給する。
【0082】
また、抵抗R1、抵抗R2、および抵抗R3が直列的に接続された直列回路の一端(抵抗R1側の端)が、昇圧型力率改善回路12の入力正極端子Caに接続され、その他端(抵抗R3側の端)が、昇圧型力率改善回路12の入力負極端子Cbに接続され(すなわち、接地され)ている。また、抵抗R1と抵抗R2との接続端は、集積回路22の乗算器32に接続されている。さらに、抵抗R2と抵抗R3との接続端は、後述するPFC停止回路13の比較器41の逆相入力(−)に接続されている。
【0083】
すなわち、抵抗R1、抵抗R2、および抵抗R3からなる直列回路は、商用交流電圧(商用電源10から入力される交流電圧)が整流された脈流電圧Vdinを所定の分圧比で分圧し、その結果得られる分圧電圧Vd2を、集積回路22の乗算器32に供給する。また、抵抗R1、抵抗R2、および抵抗R3からなる直列回路は、抵抗R3の両端に発生する電圧Vd3(以下、抵抗R3の電圧Vd3と称する)をPFC停止回路13の比較器41の逆相入力(−)に供給する。
【0084】
集積回路22は、定電圧源E2、定電圧源E3、誤差増幅器31、乗算器32、比較器33、フリップフロップ回路34、比較器35、タイマ36、およびOR回路37を有する回路である。
【0085】
定電圧源E2は、その負極側は接地され、その正極側は誤差増幅器31の正相入力(+)に接続されている。すなわち、定電圧源E2は、一定レベル(抵抗R6および抵抗R7からなる直列回路の分圧比とに応じて決定されるレベル)の基準電圧Vref1を発生し、誤差増幅器31の正相入力(+)に供給する。
【0086】
誤差増幅器31においては、上述したように、その正相入力(+)が、定電圧源E2に接続され、その逆相入力(−)が、抵抗R6と抵抗R7との接続端に接続されている。また、その出力端は、乗算器32に接続されている。
【0087】
誤差増幅器31は、供給された分圧電圧Vd1のレベルと基準電圧Vref1のレベルとを比較し、比較の結果に応じたレベル、すなわち、分圧電圧Vd1と基準電圧Vref1との差分電圧のレベルが、所定のゲインで増幅されたレベルの電圧Vcを、乗算器32に供給する。すなわち、誤差増幅器31から出力される電圧Vcは、昇圧型力率改善回路12の出力電圧Voutのレベルの、定格出力電圧のレベルに対する誤差を表すことになる。従って、以下、誤差増幅器31から出力される電圧Vcを、誤差電圧Vcと称する。
【0088】
乗算器32においては、上述したように、入力端である図中左側の端には、抵抗R2と抵抗R3との接続端に接続され、他の入力端である図中下側の端には、誤差増幅器31が接続されている。また、その出力端である図中右側の端には、比較器33の逆相入力(−)が接続されている。
【0089】
乗算器32は、誤差増幅器31から供給された誤差電圧Vcのレベルと、抵抗R1、抵抗R2、および抵抗R3からなる直列回路より供給された分圧電圧Vd2のレベルとの積に応じたレベルの電圧Vm(以下、他の電圧と区別するために、乗算電圧Vmと称する)を、比較器33の逆相入力(−)に供給する。すなわち、乗算器32から出力される乗算電圧Vmは、脈流電圧Vdinに同期した誤差信号ともいえる。
【0090】
比較器33においては、上述したように、その正相入力(+)が、検出回路24に接続され、その逆相入力(−)が、乗算器32に接続されている。また、その出力端は、フリップフロップ回路34のリセット入力端Rに接続されている。
【0091】
比較器33は、その正相入力(+)に入力される電圧Vq1(検出回路24により検出された、スイッチング素子Q1に流れる電流Iq1に対応する電圧Vq1)のレベルと、その逆相入力(−)に入力される乗算電圧Vm(乗算器32より供給される、脈流電圧Vdinに同期した誤差信号)のレベルとを比較し、比較の結果を表すレベルの電圧、すなわち、「H」または「L」の電圧を、フリップフロップ回路34のリセット入力端Rに出力する。
【0092】
より具体的には、例えば、検出回路24からの電圧Vq1のレベルが、乗算器32からの乗算電圧Vmのレベル以上の場合、比較器33は、フリップフロップ回路34のリセット入力端Rに供給する電圧のレベルを「H」にする。一方、検出回路24からの電圧Vq1のレベルが、乗算器32からの乗算電圧Vmのレベルよりも低い場合、比較器33は、出力電圧のレベルを「L」にする。
【0093】
フリップフロップ回路34は、その入力端(図中左側の端)のうち、図中上側のリセット入力端Rは、上述したように比較器33と接続され、図中下側のセット入力端Sは、後述する比較器35と接続され、その出力端であるゲートQ(図中右側の端)は、後述するOR回路37に接続されている。
【0094】
フリップフロップ回路34は、その状態がセット状態である場合(すなわち、ゲートQより出力する電圧のレベルが「H」の場合)、そのリセット入力端Rに入力される電圧(比較器33の出力)のレベルが、「L」から「H」に変化すると、その状態をリセット状態に移行させる。すなわち、フリップフロップ回路34は、ゲートQより出力する電圧のレベルを「H」から「L」に変化させて、OR回路37の2つの入力端のうちの一方に供給する。詳細については後述するが、このとき、OR回路37の他方の入力端にも「L」の電圧が供給されている場合、OR回路37は、制御信号Scのレベルを「H」から「L」に変化させる。これにより、スイッチング素子Q1は、ターンオフすることになる。
【0095】
また、フリップフロップ回路34は、その状態がリセット状態である場合(すなわち、ゲートQより出力する電圧のレベルが「L」の場合)、そのセット入力端Sに入力される電圧(後述する比較器35の出力電圧)のレベルが、「H」から「L」に変化すると、その状態をセット状態に移行させる。すなわち、フリップフロップ回路34は、ゲートQより出力する電圧のレベルを「L」から「H」に変化させて、OR回路37の2つの入力端のうちの一方に供給する。詳細については後述するが、このとき、OR回路37の他方の入力端に供給される電圧のレベルが「L」と「H」とに関わらず、OR回路37は、制御信号Scの電圧のレベルを「L」から「H」に変化させる。これにより、スイッチング素子Q1は、ターンオンすることになる。
【0096】
定電圧源E3は、一定レベルの基準電圧Vref2を発生し、比較器35の逆相入力(−)に供給する。
【0097】
比較器35においては、上述したように、その正相入力(+)が、検出回路23に接続され、その逆相入力(−)が、定電圧源E3に接続され、その出力端は、フリップフロップ回路34のセット入力端Sに接続されている。
【0098】
すなわち、上述したように、比較器35の正相入力(+)には、検出回路23より電圧Vl2(すなわち、チョークコイル21の2次側の巻き線L2に発生する電圧Vl2)が供給され、逆相入力(−)には、基準電圧Vref2が供給されることになる。そこで、比較器35は、検出回路23から供給された電圧Vl2のレベルと、基準電圧Vref2のレベルとを比較し、比較の結果を表すレベルの電圧、すなわち、「L」または「H」の電圧を、フリップフロップ回路34のセット入力端Sに出力する。
【0099】
より具体的には、比較器35は、電圧Vl2のレベルが、基準電圧Vref2のレベル以上の場合、フリップフロップ回路34のセット入力端Sに供給する出力電圧のレベルを「H」とし、一方、電圧Vl2のレベルが、基準電圧Vref2のレベルより低い場合、出力電圧のレベルを「L」とする。
【0100】
従って、チョークコイル21の1次側の巻き線L1に流れる電流Il1のレベルが低下して略0になると、その2次側の巻き線L2に発生する電圧Vl2のレベルが低下していき、電圧Vl2のレベルが基準電圧Vref2のレベルを下回ることになる。このとき、比較器35は、出力電力のレベルを「H」から「L」に変化させる。これにより、フリップフロップ回路34の状態がセット状態になり、フリップフロップ回路34より、後述するOR回路37を介して、スイッチング素子Q1に供給される制御信号Scの電圧レベルが「L」から「H」に変化するので、スイッチング素子Q1はターンオンすることになる。
【0101】
このため、2次側の巻き線L2が短絡すると、電圧Vl2のレベルは略0となり、電圧Vl2のレベルは当然ながら基準電圧Vref2のレベルより低くなり、比較器35の出力電圧のレベルは、「L」のままとなってしまう。すなわち、フリップフロップ回路35のセット入力端Sには、負トリガパルスは供給されないことになり、フリップフロップ回路35の出力電圧のレベルも「H」に変化できず、その結果、後述するタイマ36とOR回路37とが存在しない場合には、制御信号Scの電圧のレベルも「H」に変化できないことになる。これに伴い、スイッチング素子Q1もターンオンできなくなることになる。
【0102】
この場合、上述したように、昇圧型力率改善回路12に入力された脈流電圧Vdinは、特に、昇圧されずに、単に平滑キャパシタC1により平滑され、その結果、特に昇圧されていない出力直流電圧Voutが負荷16に印加されることになる。
【0103】
これに対して、この集積回路22には、タイマ36とOR回路37が設けられている。このため、チョークコイル21の2次側の巻き線L2が短絡しても、スイッチング素子Q1に供給される制御信号Scのレベルは、このタイマ36とOR回路37により、強制的に「H」に変化させられる。すなわち、スイッチング素子Q1をターンオンするための上述したトリガ信号が、このタイマ36とOR回路37から強制的に出力される。その結果、2次側の巻き線L2が短絡しても、スイッチング素子Q1は動作し続けてしまうという上述した課題が発生することになる。
【0104】
以下、このタイマ36とOR回路37について説明する。
【0105】
このタイマ36においては、2つの入力端(図中左側の端)のうち、図中上側のリセット入力端Rは、比較器33の出力端に接続され、図中下側のリセット入力端Rは、比較器35の出力端に接続されている。また、その出力端(図中上側の端)は、OR回路37の2つの入力端のうちの一端に接続されている。
【0106】
タイマ36は、所定の時間(例えば、200マイクロ秒)を計時する計時動作を行い、計時動作を終了した場合、すなわち、所定の時間を計時した場合、上述したトリガ信号として「H」の電圧をOR回路37の2つの入力端のうちの一端に供給する。これにより、OR回路37の2つの入力端のうちの他端に供給される電圧、すなわち、フリップフロップ回路34の出力電圧のレベルによらず、制御信号Scとして「H」の電圧がOR回路37からスイッチング素子Q1に供給されることになる。
【0107】
また、タイマ36は、比較器33または比較器35の出力電圧のレベルが変化すると、その計時動作をリセットして、計時動作を再開する。
【0108】
従って、比較器33または比較器35の出力電圧のレベル変化は、通常、上述した所定の時間(例えば、200マイクロ秒)に行われるので、タイマ36は、計時動作を終了することなく、すなわち、上述したトリガ信号である「H」の電圧をOR回路37に出力することなく、これまでの計時動作をリセットして、新たな計時動作を始めることになる。
【0109】
ところが、負荷16の容量が極端に少ない場合などにおいては、比較器33または比較器35の出力電圧のレベル変化が、上述した所定の時間(例えば、200マイクロ秒)が経過しても行われず、その結果、タイマ36は、計時動作を終了して、上述したトリガ信号である「H」の電圧をOR回路37に出力することになる。すなわち、スイッチング素子Q1は強制的にターンオンすることになる。
【0110】
同様に、チョークコイル21の2次側の巻き線L2が短絡した場合も、上述したように、比較器35の出力電圧のレベル変化が上述した所定の時間(例えば、200マイクロ秒)が経過しても行われず、その結果、タイマ36は、計時動作を終了して、上述したトリガ信号である「H」の電圧をOR回路37に出力することになる。すなわち、スイッチング素子Q1は強制的にターンオンすることになる。
【0111】
さらに、チョークコイル21の2次側の巻き線L2が短絡した場合には、上述したように、比較器35の出力電圧のレベル変化は起こらないので、結局、タイマ36は、スイッチング素子Q1がターンオフして所定の時間(例えば、200マイクロ秒)を経過する毎に、上述したトリガ信号である「H」の電圧をOR回路37に出力することになる。その結果、チョークコイル21の2次側の巻き線L2が短絡した場合であっても、スイッチング素子Q1はそのスイッチング動作を継続し続けてしまうという上述した課題が発生することになる。
【0112】
以上、タイマ36について説明した。次に、OR回路37について説明する。
【0113】
OR回路37においては、上述したように、2つの入力端(図中下側の端)のうち、図中左側の端は、フリップフロップ回路34のゲートQに接続され、図中右側の端は、タイマ36に接続され、その出力端(図中上側の端)は、スイッチング素子Q1のゲートに接続されている。
【0114】
OR回路37は、フリップフロップ回路34のゲートQから供給される電圧のレベルと、タイマ36から供給される電圧のレベルとのうち少なくとも一方が「H」の場合、制御信号Scとして「H」の電圧を、スイッチング素子Q1のゲートに供給し、それ以外の場合、制御信号Scとして「L」の電圧を、スイッチング素子Q1のゲートに供給する。
【0115】
以上説明したように、集積回路22は、タイマ36およびOR回路37を有しているので、負荷16の容量が極端に少ないとき以外にも、チョークコイル21の2次側の巻き線L2がショートしたときにも、スイッチング素子Q1に対するスイッチング制御を継続してしまい、その結果、上述した課題が発生してしまう。
【0116】
そこで、上述したように、この電源装置1には、チョークコイル21の2次側の巻き線L2に流れる電流を監視し、その監視結果に基づいて、チョークコイル21の2次側の巻き線L2の端子間の短絡の発生の有無の検出を行うPFC巻き線ショート時保護回路14が設けられている。
【0117】
それに伴い、昇圧型力率改善回路12にも、チョークコイル21の2次側の巻き線L2に流れる電流を供給するために、整流ダイオードD3が設けられている。この整流ダイオードD3のアノードは、チョークコイル21の2次側の巻き線L2と抵抗R4との接続端に接続され、整流ダイオードD3のカソードは、昇圧型力率改善回路12の出力端子Ccに接続されている。すなわち、整流ダイオードD3のカソードは、PFC巻き線ショート時保護回路14の入力端子Faに接続されている。
【0118】
チョークコイル21の2次側の巻き線L2に流れる電流のうちの電流Id3は、チョークコイル21の2次側の巻き線L2がショートしていない場合、この整流ダイオードD3を流れて、PFC巻き線ショート時保護回路14の入力端子Faに流れ込むことになる。一方、チョークコイル21の2次側の巻き線L2がショートした場合、チョークコイル21の2次側の巻き線L2には電流が流れないので、当然ながら、整流ダイオードD3には電流Id3は流れない。すなわち、PFC巻き線ショート時保護回路14の入力端子Faには電流Id3は流れ込まない。
【0119】
以上、集積回路22について説明した。
【0120】
ところで、キャパシタC3においては、その一端が、誤差増幅器31と乗算器32との接続端に接続され、その他端が、接地されている。
【0121】
キャパシタC3が、電荷を充電している場合、集積回路22が動作し、一方、電荷を放電した場合、集積回路22が停止する。換言すれば、キャパシタC3は、集積回路22のON/OFFスイッチであるとも言える。
【0122】
次に、PFC停止回路13の詳細について説明する。
【0123】
ところで、上述したように、商用電源10の交流電圧のレベルは、各国により異なり、各国の入力電圧に対応できるように、昇圧型力率改善回路12の出力直流電圧Voutのレベルが、整流素子D1が入力電圧を整流した脈流電圧Vdinのレベルより下回る場合、上述した昇圧機能を実現する必要が無くなるので、この昇圧機能を停止させるため、すなわち、昇圧型力率改善回路12の集積回路22のスイッチング制御を停止させるために、この電源装置1には、PFC停止回路13が設けられている。
【0124】
このような、PFC停止回路13は、例えば、比較器41、定電圧源E4、キャパシタC4、抵抗R8、抵抗R9、トランジスタQ2、およびトランジスタQ3を有する回路である。
【0125】
比較器41においては、その正相入力(+)が、定電圧源E4に接続され、その逆相入力(−)が、入力端子Sbに接続され、すなわち、昇圧型力率改善回路12の出力端子Cfに接続されている。また、その出力端は、抵抗R8を介して、トランジスタQ2のベースに接続されている。
【0126】
比較器41は、その正相入力(+)に入力される基準電圧E4のレベルと、抵抗R3の電圧Vd3のレベル(すなわち、抵抗R3の電圧のレベル)とを比較し、比較の結果を表すレベルの電圧を、抵抗R8を介して、後述するトランジスタQ2のベースに出力する。すなわち、比較器41は、抵抗R3の電圧Vd3が基準電圧E4よりも高レベルの場合、「L」の電圧を出力する。一方、抵抗R3の電圧Vd3が基準電圧E4よりも低レベルの場合、「H」の電圧を出力する。
【0127】
トランジスタQ2は、図2の例では、PNP型バイポーラトランジスタとして構成され、スイッチング素子として機能する。トランジスタQ2において、そのエミッタは、定電圧源E1の正極側に接続され、そのベースは、抵抗R8を介して、比較器41に接続され、そのコレクタは、抵抗R9を介して、キャパシタC4に接続されている。すなわち、トランジスタQ2は、そのベースに供給される電圧のレベル(比較器41から供給される電圧のレベル)に応じてスイッチング動作をする。
【0128】
なお、以下、トランジスタQ2のエミッタとコレクタとが導通された状態をオン状態と称し、トランジスタQ2のエミッタとコレクタとが遮断(非導通)された状態を、オフ状態と称する。また、トランジスタQ2が、その状態を、オン状態からオフ状態に切り替える動作を、スイッチング動作と称する。
【0129】
また、以下、後述する、PNPまたはNPN型バイポーラトランジスタとして構成され、スイッチング素子として機能するトランジスタQ3、トランジスタQ4、トランジスタQ5、トランジスタQ6、トランジスタQ7、およびトランジスタQ8についても同様に称するものとする。
【0130】
トランジスタQ3は、図2の例では、NPN型バイポーラトランジスタとして構成され、スイッチング素子として動作する。トランジスタQ3において、そのエミッタは、定電圧源E1の負極側に接続され、すなわち、接地されて、そのベースは、抵抗R9を介して、トランジスタQ2のコレクタに接続され、そのコレクタは、出力端子Saに接続されている。
【0131】
より具体的には、トランジスタQ3のベースに供給される電圧のレベルが、「H」に変化した場合(すなわち、トランジスタQ2の状態がオン状態となり、キャパシタC4が充電された場合)、トランジスタQ3の状態は、オン状態となる。一方、トランジスタQ3のベースに供給される電圧のレベルが、「L」に変化した場合(すなわち、トランジスタQ2の状態がオフ状態となり、キャパシタC4が放電された場合)、トランジスタQ3の状態は、オフ状態となる。
【0132】
ここで、PFC停止回路13の出力電圧Voutのレベルが、脈流電圧Vdinのレベルよりも上回る場合と、出力電圧Voutのレベルが、脈流電圧Vdinのレベルよりも下回る場合とのそれぞれにおける動作について説明する。
【0133】
昇圧型力率改善回路12の出力電圧Voutのレベルが、脈流電圧Vdinのレベルよりも上回る場合、すなわち、上述した昇圧機能を実現する必要がある場合、抵抗R3の電圧Vd3のレベルが、基準電圧E4のレベルより低くなるので、比較器41は、抵抗R8を介して、トランジスタQ2のベースに供給する電圧のレベルを「H」にする。すなわち、トランジスタQ2の状態がオフ状態となる。このとき、トランジスタQ3の状態がオフ状態となるので、上述した、昇圧型力率改善回路12のキャパシタC3は、電荷を充電し続けることが可能になり、その結果、昇圧型力率改善回路12の集積回路22は、停止せずに動作し続ける(すなわち、上述した、集積回路22のON/OFFスイッチがONのままである)。この場合、昇圧型力率改善回路12は、集積回路22は動作しているので、脈流電圧Vdinを昇圧することになる。
【0134】
これに対して、昇圧型力率改善回路12の出力電圧Voutのレベルが、脈流電圧Vdinのレベルよりも下回る場合、すなわち、昇圧機能の実現が不要な場合、抵抗R3の電圧Vd3のレベルが、基準電圧E4のレベル以上となるので、比較器41は、抵抗R8を介して、トランジスタQ2のベースに供給する電圧のレベルを「L」にする。すなわち、トランジスタQ2の状態がオン状態になり、定電圧源E1より印加される電圧により、トランジスタQ2に電流Iq2が流れ始める。このとき、電流Iq2は、抵抗R9を介して、キャパシタC4に流れ込み、キャパシタC4は電荷を充電することになる。その結果、キャパシタC4には電圧が発生し、すなわち、トランジスタQ3のベースの電圧のレベルが「H」になり、ベース電流が流れ込むので、トランジスタQ3の状態はオン状態になる。トランジスタQ3の状態がオン状態となると、トランジスタQ3のコレクタは、出力端子Saに接続されているので、昇圧型力率改善回路12の入力端子Cgに接続されているキャパシタC3が、(トランジスタQ3のエミッタが接地されているので)電荷を放電することにより、昇圧型力率改善回路12の集積回路22を停止させることができる(すなわち、上述した、集積回路22のON/OFFスイッチがOFFになる)。この場合、昇圧型力率改善回路12は、集積回路22が停止しているので、脈流電圧Vdinを昇圧しないことになる。
【0135】
このように、PFC停止回路13は、昇圧型力率改善回路12の出力電圧Voutのレベルが、脈流電圧はVdinのレベルよりも下回る場合、脈流電圧Vdinを昇圧する必要がないので、昇圧型力率改善回路12の集積回路22を停止させることができる。
【0136】
次に、PFC巻き線ショート時保護回路14の詳細について説明する。
【0137】
ところで、上述したように、チョークコイル21の2次側の巻き線L2がショートした場合(以下、ショート時と称し、また、チョークコイル21の2次側の巻き線L2がショートしていない場合を通常時と称する)であっても、昇圧型力率改善回路12の集積回路22は、スイッチング素子Q1に対するスイッチング制御を継続してしまう。すなわち、昇圧型力率改善回路12が動作し続けるという課題が発生してしまう。この課題が発生すると、昇圧型力率改善回路12のチョークコイル21の2次側の巻き線L2が発熱する可能性もでてくる。
【0138】
そこで、本発明の発明者は、上述したように、このPFC巻き線ショート時保護回路14を電源装置1に搭載することで、ショート時に、電源装置1全体を停止できるようにした。
【0139】
このようなPFC巻き線ショート時保護回路14は、例えば、キャパシタC5、抵抗R10、抵抗R11、抵抗R12、抵抗R13、抵抗R14、フォトカプラPH1、整流ダイオードD4、トランジスタQ4、およびトランジスタQ5を有する回路である。
【0140】
キャパシタC5は、PFC巻き線ショート時保護回路14の2つの入力端子Faと入力端子Fb、すなわち、昇圧型力率改善回路12の出力端子Ccと出力端子Ceに接続されている。従って、キャパシタC5には、昇圧力率改善回路12のチョークコイル21の2次側の巻き線L2を流れる電流のうちの電流Id3が流れ込み、その結果、充電されることになる。それに伴い、キャパシタC5の図中上側の端、すなわち、PFC巻き線ショート時保護回路14の入力端子Faには、キャパシタC5に充電された電荷に比例するレベルの電圧が発生することになる。
【0141】
このような電圧が発生する、PFC巻き線ショート時保護回路14の入力端子Faには、抵抗R11を介してトランジスタQ4のベースが接続されている。
【0142】
トランジスタQ4は、図2の例では、NPN型バイポーラトランジスタとして構成され、スイッチング素子として機能する。トランジスタQ4において、そのエミッタは、入力端子Fbに接続され、すなわち接地され、そのベースは、上述したように抵抗R11を介して入力端子Faに接続され、そのコレクタは、抵抗R12と抵抗R13との接続端に接続されている。
【0143】
抵抗R12の2つの端のうちの、抵抗R13との接続端と反対側の端には、定電圧源E1の正極側が接続されている。また、抵抗R13の2つの端のうちの、抵抗R12との接続端と反対側の端には、フォトカプラPH1のLED(Light Emitting Diode)のアノードが接続されている。このフォトカプラPH1のLEDのカソードは、入力端子Fbが接続されている。すなわち、このLEDのカソードは接地されている。
【0144】
フォトカプラPH1は、このようなLEDと、スイッチング素子として機能するフォトトランジスタから構成され、フォトトランジスタは、LEDが発光することによって電流を流す。すなわち、フォトカプラPH1に電流が流れることによって、フォトカプラPH1のLEDが発光し、LEDが発光することによって、フォトカプラPH1のフォトトランジスタの状態がオン状態に遷移する。この場合、後述する定電圧源E5からの電流Ie5のうちの一部がフォトトランジスタに流れることになる。
【0145】
以上、PFC巻き線ショート時保護回路14の構成要素のうちの、抵抗R10、トランジスタQ5、抵抗R14、および、ダイオードD4を除く構成要素について説明した。
【0146】
ここで、残りの構成要素の説明をする前に、PFC巻き線ショート時保護回路14の動作のうちの、通常時とショート時とのそれぞれにおける動作について先に説明する。
【0147】
通常時には、上述したように、昇圧型力率改善回路12のチョークコイル21の2次側の巻き線L2から電流が流れ出ているので、そのうちの電流Id3も、ダイオードD3を介してキャパシタC5に流れ込み、キャパシタC5は充電されることになる。その結果、キャパシタC5には電圧が発生し、すなわち、トランジスタQ4のベースの電圧レベルが「H」になりベース電流が流れ込むので、トランジスタQ4の状態はオン状態になる。これにより、定電圧源E1からの電流Ie1のうちの一部は、抵抗R12を介してトランジスタQ4に流れ込み、さらに、入力端子Fb、すなわち、接地端からグランドレベルに流れていくことになる。このとき、フォトカプラPH1のLEDには電流がほぼ流れないので、フォトダイオードの状態はオフ状態に遷移する。その結果、PFC巻き線ショート時保護回路14の出力端子Fcと出力端子Fdとは開放される。すなわち、後述する定電圧源E5からの電流は、後述する電源停止回路15には流れ込まない。詳細については後述するが、この場合、電源停止回路15は、リレーをオンにするので、電源装置1全体は駆動することになる。
【0148】
これに対して、ショート時には、昇圧型力率改善回路12のチョークコイル21の2次側の巻き線L2には電流が流れ出さなくなるので、キャパシタC5は放電し、その結果、キャパシタC5に発生した電圧のレベルが低下し略0になる。すなわち、トランジスタQ4のベースの電圧レベルも「L」になりベース電流もほぼ流れなくなるので、トランジスタQ4の状態はオフ状態になる。これにより、定電圧源E1からの電流Ie1のうちの一部は、今度は、抵抗R12を介してフォトカプラPH1に流れ込み、フォトトランジスタの状態はオン状態に遷移する。その結果、PFC巻き線ショート時保護回路14の出力端子Fcと出力端子Fdとは閉じられ、後述する定電圧源E5からの電流は、後述する電源停止回路15には流れ込むことになる。詳細については後述するが、この場合、電源停止回路15は、リレーをオフにするので、電源装置1全体は停止することになる。
【0149】
以上のことから、PFC巻き線ショート時保護回路14の構成要素のうちのキャパシタC5とは、上述した電源用キャパシタに対応すると言える。
【0150】
また、トランジスタQ4は、この電源用キャパシタC5を電源として動作する上述した動作素子であると言える。すなわち、電源用キャパシタC5が充電されて電源として機能している場合、トランジスタQ4は、その状態をオン状態にすることで動作していると言える。一方、電源用キャパシタC5が放電されて電源として機能していない場合、トランジスタQ4は、その状態をオフ状態にすることで動作を停止していると言える。
【0151】
また、フォトカプラPH1が、動作素子の動作状態を監視して、その監視結果に基づいてチョークコイル21の2次側の巻き線L2の端子間の短絡の発生の有無を検出する上述した短絡検出回路であると言える。すなわち、フォトカプラPH1は、動作素子であるトランジスタQ4が動作してその状態をオン状態に遷移している場合、通常時であると検出し、その検出結果の出力形態のひとつとして、上述したように、PFC巻き線ショート時保護回路14の出力端子Fcと出力端子Fdを開放して、電源停止回路15への電流を禁止していると言える。これに対して、フォトカプラPH1は、動作素子であるトランジスタQ4の動作が停止してその状態をオフ状態に遷移している場合、ショート時であると検出し、その検出結果の出力形態のひとつとして、上述したように、PFC巻き線ショート時保護回路14の出力端子Fcと出力端子Fdを閉じて、電源停止回路15への電流を許可していると言える。
【0152】
ところで、上述したように、PFC停止回路13により、昇圧型力率改善回路12の集積回路12のスイッチング制御が停止された場合にも、2次側の巻き線L2に電流が流れなくなる。この場合、上述した充電回路がPFC巻き線ショート時保護回路14に搭載されていないと、電源用キャパシタであるキャパシタC5は充電されなくなり、動作素子であるトランジスタQ4の電源として機能しなくなる。従って、動作素子は動作せず、すなわち、トランジスタQ4の状態はオフ状態のままとなり、その結果、短絡検出素子であるフォトカプラPH1は、2次側の巻き線L2に短絡が発生したと誤検出してしまう、すなわち、フォトカプラPH1のLEDには電流が流れず、フォトダイオードの状態もオフ状態のままになってしまう。それに伴い、電源停止回路15はリレーをオフしてしまうので、電源装置1が停止してしまう。
【0153】
そこで、PFC巻き線ショート時保護回路14はさらに、このような充電回路として、トランジスタQ5の他、抵抗R10、抵抗R14、およびダイオードD4からなる回路が設けられているのである。
【0154】
トランジスタQ5は、図2の例では、PNP型バイポーラトランジスタとして構成され、スイッチング素子として機能する。トランジスタQ5において、そのエミッタは、抵抗R10を介して入力端子Faに接続され、すなわち電源用キャパシタC5に接続される。そのべースは、抵抗R14とダイオードD4を介してPFC巻き線ショート時保護回路14の端子Fe、すなわち、後述するPFC停止回路13の比較器41に接続される。また、そのコレクタは、抵抗R12のうちの、トランジスタQ4との接続端とは反対側の端に、すなわち、定電圧源E1の正極側に接続される。
【0155】
なお、上述した充電回路は、図2の例に限らず、同様の機能を有する回路であればよい。
【0156】
以下、このような充電回路を有するPFC巻き線ショート時保護回路14の動作のうちの、昇圧型力率改善回路12の出力電圧Voutのレベルが、脈流電圧はVdinのレベルよりも下回る場合の動作について説明する。
【0157】
すなわち、昇圧型力率改善回路12の出力直流電圧Voutのレベル(すなわち、キャパシタC1に発生する電圧)が、その入力電圧Vdin、すなわち、商用電源10からの交流電圧が整流素子D1により整流された結果得られる脈流電圧Vdinのレベルよりも下回る場合、PFC停止回路13は、昇圧型力率改善回路12の集積回路22のスッチング制御を停止させる。
【0158】
このとき、上述したように、昇圧型力率改善回路12のチョークコイル21の2次側の巻き線L2には電流が流れていないので、当然ながら電流Id3も、整流ダイオードD3を介して、キャパシタC5に流れ込まなくなる。
【0159】
ところが、このPFC巻き線ショート時保護回路14には、定電圧源E1をコレクタ電源とする、トランジスタQ5、抵抗R10、抵抗R14、および整流ダイオードD4からなる充電回路が搭載されているので、この充電回路により、定電圧源E1から流れる電流がキャパシタC5に流れ込み、キャパシタC5の充電状態を維持することが可能になる。すなわち、キャパシタC5を、動作素子であるトランジスタQ4の電源として機能させ続けることができる。その結果、フォトカプラPH1は、正常時であると検出することができ、それに伴い、電源停止回路15もリレーをオンのまま維持し続けることができるので、電源装置1も動作し続けることが可能になる。
【0160】
より具体的には、上述したように、抵抗R3の両端の電圧のレベルが、基準電圧E4のレベルより低い場合、すなわち、出力電圧Voutのレベルが、脈流電圧Vdinのレベルよりも下回る場合)、比較器41は、抵抗R8を介して、トランジスタQ2のベースに供給する電圧のレベルを「L」に変化する。
【0161】
そのとき、整流ダイオードD4および抵抗R14を介して、トランジスタQ5のベースの電圧のレベルも「L」に変化するので、トランジスタQ5の状態は、オン状態に遷移する。
【0162】
すると、定電圧源E1からの電流Ie1のうちの少なくとも一部が、トランジスタQ5を介して、キャパシタC5に流れ込む。すなわち、キャパシタC5は電荷を充電することになる。また、キャパシタC5の電荷の充電にもとなって、上述したように、トランジスタQ4のベースの電圧のレベルが「H」に変化する。
【0163】
このとき、トランジスタQ4の状態は、上述したようにオン状態に遷移するので、定電圧源E1からの電流Ie1のうちの抵抗R12に流れ込む電流は、トランジスタQ4を通ることになり、フォトカプラPH1には流れなくなる。その結果、電源回路1は動作し続けることになる。すなわち、出力電圧Voutのレベルが、脈流電圧Vdinのレベルよりも下回る場合でも、電源回路1が停止することはない。
【0164】
次に、電源停止回路15の詳細について説明する。
【0165】
上述したように、通常時には、電源停止回路15は、PFC巻き線ショート時保護回路14から入力される検出結果に基づいて、リレーコイル11−1に電流を流すことで、リレーがオンさせる。これにより、商用電源10から整流素子D1への交流電圧の入力は許可されるので、電源装置1全体が駆動することになる。また、ショート時には、電源停止回路15は、PFC巻き線ショート時保護回路14から入力される検出結果に基づいて、リレーコイル11−1に流れる電流を停止することで、リレーをオフさせる。これにより、商用電源10から整流素子D1への交流電圧の入力は禁止されるので、電源装置1全体が停止することになる。
【0166】
このような電源停止回路15は、例えば、パワーオン51、キャパシタC6、キャパシタC7、キャパシタC8、整流ダイオードD5、定電圧源E5、抵抗R15、抵抗R16、抵抗R17、トランジスタQ6、トランジスタQ7、およびトランジスタQ8を有する回路である。
【0167】
パワーオン51は、抵抗R17に接続され、例えば、ユーザの操作により、オン状態とオフ状態とが切り替えられる。また、パワーオン51がオン状態である場合、オン信号が生成され、このオン信号により、抵抗R17に電流Ir17が流れる。すなわち、パワーオン51がオフ状態である場合、抵抗R17に電流Ir17が流れない。
【0168】
トランジスタQ6は、図2の例では、PNP型バイポーラトランジスタとして構成され、スイッチング素子として機能する。トランジスタQ6において、そのエミッタは、抵抗R17に接続され、そのベースは、トランジスタQ7のコレクタに接続され、そのコレクタは、後述するキャパシタC7に接続されている。
【0169】
キャパシタC6は、その一端が、抵抗R17とトランジスタQ6のエミッタとの接続端に接続され、その他端が、トランジスタQ6のベースに接続されている。キャパシタC6が電荷を充電した場合、トランジスタQ6の状態がオフ状態となり、一方、電荷を放電した場合、トランジスタQ6の状態がオン状態となる。すなわち、キャパシタC6は、電荷の充電と放電とを繰り返すことで、トランジスタQ6をスイッチング動作させる。
【0170】
抵抗R15は、キャパシタC6と並列に接続されている。
【0171】
トランジスタQ7は、図2の例では、NPN型バイポーラトランジスタとして構成され、スイッチング素子として機能する。トランジスタQ7において、そのエミッタは、接地され、そのベースは、トランジスタQ6のコレクタとキャパシタC7のエミッタとの接続端に接続され、そのコレクタは、トランジスタQ6のベースに接続されている。
【0172】
キャパシタC7は、その一端が、トランジスタQ7のベースに接続され、その他端が、接地されている。キャパシタC7が電荷を充電した場合、トランジスタQ7の状態がオン状態となり、一方、電荷を放電した場合、トランジスタQ7の状態がオフ状態となる。すなわち、キャパシタC7は、電荷の充電と放電を繰り返すことで、トランジスタQ7をスイッチング動作させる。
【0173】
抵抗R16は、キャパシタC7と並列に接続されている。
【0174】
整流ダイオードD5は、そのアノードが抵抗R17に接続され、そのカソードがトランジスタQ8のベースに接続されている。
【0175】
トランジスタQ8は、図2の例では、NPN型バイポーラトランジスタとして構成され、スイッチング素子として機能する。トランジスタQ8において、そのエミッタは、接地され、そのベースは、整流ダイオードD5のカソードに接続され、そのコレクタは、出力端子Pcに接続されている。
【0176】
キャパシタC8は、その一端が、トランジスタQ8のベースと抵抗R17との接続端に接続され、その他端が、接地されている。キャパシタC8が電荷を充電した場合、トランジスタQ8の状態がオン状態となり、一方、電荷を放電した場合、トランジスタQ8の状態がオフ状態となる。すなわち、キャパシタC8は、電荷の充電と放電を繰り返すことで、トランジスタQ8をスイッチング動作させる。
【0177】
ここで、電源停止回路15の通常時とショート時とのそれぞれにおける動作について説明する。
【0178】
通常時には、上述したように、PFC巻き線ショート時保護回路14から、昇圧型力率改善回路12のチョークコイル21の2次側の巻き線L2の端子間の短絡が発生していないという検出結果が入力され、すなわち、入力端子Pbと入力端子Paとは開放されるので(PFC巻き線ショート時保護回路14の出力端子Fcと出力端子Fdとは開放されるので)、パワーオン51からの電流Ir17のうちの一部が、抵抗R17を介して、キャパシタC6およびキャパシタC8に流れ込む。その結果、キャパシタC6およびキャパシタC8は、電荷を充電することになる。このとき、キャパシタC6の電荷の充電にともなって、トランジスタQ6のベースの電圧のレベルが「H」になり、ベース電流が流れ込むので、トランジスタQ6の状態はオフ状態となる。また、このとき、キャパシタC8の電荷の充電にともなって、整流ダイオードD5を介して、トランジスタQ8のベースの電圧のレベルが「H」になり、ベース電流が流れ込み、トランジスタQ8の状態がオン状態となる。すると、電源E5からの電流Ie5がリレーコイル11−1に流れることで、接点11−2が閉じる。すなわち、リレーがオンする。これにより、商用電源10から整流素子D1への交流電圧の入力は許可されることになる。すなわち、電源装置1全体が駆動することになる。
【0179】
これに対して、ショート時には、上述したように、PFC巻き線ショート時保護回路14から、昇圧型力率改善回路12のチョークコイル21の2次側の巻き線L2の端子間の短絡が発生したという検出結果が入力され、すなわち、入力端子Pbと入力端子Paとは閉じられるので(PFC巻き線ショート時保護回路14の出力端子Fcと出力端子Fdとは閉じられるので)、電流Ie5のうちの一部が、PFC巻き線ショート時保護回路14の出力端子Fdから、入力端子Paに接続されたキャパシタC7に流れ込む。すなわち、キャパシタC7は、電荷を充電することになる。その結果、トランジスタQ7のベースの電圧のレベルが「H」になり、ベース電流が流れ込むので、トランジスタQ7の状態はオン状態となる。このとき、キャパシタC6は、(通常時に充電していた)電荷を放電することにより、トランジスタQ6のベースの電圧のレベルが「L」になりベース電流もほぼ流れなくなるので、トランジスタQ6の状態は、オン状態となる。また、そのとき、トランジスタQ7はオン状態となり、トランジスタQ7のエミッタは接地されているので、キャパシタC8の電荷を放電することになり、トランジスタQ8のベースの電圧のレベルが「L」になり、ベース電流もほぼ流れなくなるので、トランジスタQ8の状態は、オフ状態となる。すなわち、トランジスタQ8の状態がオフ状態となる場合、リレーコイル11−1には電流が流れないので、リレーがオフする。これにより、商用電源10から整流素子D1への交流電圧の入力は禁止されることになる。すなわち、電源装置1全体が停止することになる。
【0180】
このように、昇圧型力率改善回路12のチョークコイル21の2次側の巻き線L2がショートした場合、電源停止回路15のトランジスタQ8の状態をオフ状態にすることで、リレーをオフすることができるので、電源装置1を停止することができる。
【0181】
また、PFC巻き線ショート時保護回路14のトランジスタQ5のスイッチング動作により、出力電圧Voutのレベルが脈流電圧Vdinのレベルよりも下回る場合でも、電源装置1を停止せずに動作することができる。
【0182】
なお、出力電圧Voutのレベルが脈流電圧Vdinのレベルよりも下回る場合に、PFC停止回路13が、昇圧型力率改善回路12の集積回路22を停止させない回路構成であるときでも同様に、電源装置1を停止させることなく動作させることができる。
【0183】
さらに、上述したPFC巻き線ショート時保護回路14および電源停止回路15の一連の処理は、それと同様の機能を有するソフトウェアによっても実行することができる。
【0184】
以上、電源回路1の構成について説明した。
【0185】
以上の例では、電源装置1は、機能的な観点から、リレー11、整流素子D1、定電圧源E1、昇圧型力率改善回路12、PFC停止回路13、PFC巻き線ショート時保護回路14、または電源停止回路15のように区分してそれぞれについて説明したが、実装する場合、必ずしもこのように区分する必要は無く、電源装置1全体として図2のように接続されていればどのように区分して実装しても構わない。
【0186】
上述したように、電源装置1において、PFC巻き線ショート時保護回路14は、例えば、電源用キャパシタ(例えば、キャパシタC5)、動作素子(例えば、トランジスタQ4)、および短絡検出素子(例えば、フォトカプラPH1)などから構成され、電源用キャパシタが、昇圧型力率改善回路12のチョークコイル21の2次側の巻き線L2に流れる電流により充電され、動作素子が、電源用キャパシタを電源として、スイッチング動作をし、短絡検出素子が、動作素子のスイッチング動作に基づいて、チョークコイル21の2次側の巻き線L2の端子間の短絡の発生の有無を検出する。
【0187】
また、チョークコイル21の2次側の巻き線L2に短絡が発生していないと検出されている場合、PFC巻き線ショート時保護回路14が、商用電源10からの交流電圧の整流素子D1への入力を許可することで、電源停止回路15が、リレーをオンすることにより、電源装置1全体が動作する。このとき、昇圧型力率改善回路12は、整流素子D1から入力された脈流電圧Vdinを昇圧して直流電圧に変換し、それを出力直流電圧Voutとして負荷16に出力する。また、このとき、チョークコイル21の2次側の巻き線L2には電流が流れ続けるので、PFC巻き線ショート時保護回路14は、依然として、チョークコイル21の2次側の巻き線L2に短絡が発生していないと検出して、上述した動作が繰り返される。
【0188】
それに対して、チョークコイル21の2次側の巻き線L2に短絡が発生していると検出されている場合、PFC巻き線ショート時保護回路14が、商用電源10からの交流電圧の整流素子D1への入力を禁止することで、電源停止回路15が、リレーをオフすることにより、電源装置1全体を停止させる。
【0189】
また、出力電圧Voutのレベルが脈流電圧Vdinのレベルよりも下回る場合、PFC停止回路13が、集積回路22を停止させることにより、チョークコイル21の2次側の巻き線L2には電流が流れなくなり、PFC巻き線ショート時保護回路14が、チョークコイル21の2次側の巻き線L2に短絡が発生していると誤検出してしまうので、充電回路(例えば、定電圧源E1をコレクタ電源とするトランジスタQ5、抵抗R14、および整流ダイオードD4からなる回路)が、PFC巻き線ショート時保護回路14の電源用キャパシタ(例えば、キャパシタC5)を充電させることにより、PFC巻き線ショート時保護回路14の動作素子(例えば、スイッチング素子Q4)が、チョークコイル21の2次側の巻き線L2に短絡が発生していないと検出する。その結果、PFC巻き線ショート時保護回路14が、商用電源10からの交流電圧の整流素子D1への入力を許可することで、電源停止回路15が、リレーをオンすることにより、電源装置1全体が動作する。このとき、昇圧型力率改善回路12は、PFC停止回路13により、集積回路22が停止しているので、昇圧されていない出力直流電圧Voutを負荷16に出力する。また、このとき、充電回路により、PFC巻き線ショート時保護回路14の電源用キャパシタが電荷を充電し続けることで、PFC巻き線ショート時保護回路14の動作素子が、依然として、チョークコイル21の2次側の巻き線L2に短絡が発生していないと検出して、上述した動作が繰り返される。
【図面の簡単な説明】
【0190】
【図1】本発明を適用した電源装置の構成例を示す回路図である。
【図2】電源装置の詳細な構成例を示す回路図である。
【符号の説明】
【0191】
1 電源装置, 10 商用電源, 11 リレー, 11−1 リレーコイル, 11−2 接点, 12 昇圧型力率改善回路, 13 PFC停止回路, 14 PFC巻き線ショート時保護回路, 15 電源停止回路, 16 負荷, 21 チョークコイル, 22 集積回路, 23 検出回路, 24 検出回路, 31 誤差増幅器, 32 乗算器, 33 比較器, 34 フリップフロップ回路, 35 比較器, 41 比較器, 51 パワーオン, C1,C2,C3,C4,C5,C6,C7,C8 キャパシタ, D1 整流素子, D2,D3,D4,D5 整流ダイオード, E1,E2,E3,E4,E5 定電圧源, PH1 フォトカプラ, Q1 スイッチング素子, Q2,Q3,Q4,Q5,Q6,Q7,Q8 トランジスタ, R1,R2,R3,R4,R5,R6,R7,R8,R9,R10,R11,R12,R13,R14,R15,R17,R18 抵抗

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力された交流電圧を直流電圧に変換して出力する電源装置において、
入力された前記交流電圧を整流し、整流した脈流電圧を出力する整流素子と、
前記整流素子より出力される前記脈流電圧を前記直流電圧に変換して出力するための第1のキャパシタ、変換後の前記直流電圧のレベルを所定のレベルにほぼ保つためのチョークコイルの1次側の巻き線、およびスイッチング素子、並びに、前記チョークコイルの2次側の巻き線に発生する電圧のレベルが所定のレベル以下になった場合に前記スイッチング素子の状態をオフ状態からオン状態に切り替える制御を行う制御回路を少なくとも含む直流出力回路と、
前記直流出力回路の前記チョークコイルの前記2次側の巻き線から流れ出る電流を監視し、その監視結果に基づいて、前記2次側の巻き線の短絡の発生の有無を検出する短絡検出回路と、
前記短絡検出回路により前記2次側の巻き線の端子間の短絡の発生が検出されていない場合、前記交流電圧の前記整流素子への入力を許可することで前記電源装置全体を動作させ、前記短絡検出回路により前記2次側の巻き線の端子間の短絡の発生が検出された場合、前記交流電圧の前記整流素子への入力を禁止することで、前記電源装置全体を停止させる電源停止回路と
を備えることを特徴とする電源装置。
【請求項2】
前記短絡検出回路は、
前記直流出力回路の前記チョークコイルの前記2次側の巻き線から流れ出る電流により充電される第2のキャパシタと、
充電された前記第2のキャパシタを電源として動作する動作素子と、
前記動作素子の動作状態により前記2次側の巻き線から流れ出る電流を監視し、前記動作素子が動作していないことを検出することにより、前記2次側の巻き線の短絡の発生を検出する検出素子と
を有することを特徴とする請求項1に記載の電源装置。
【請求項3】
前記電源装置は、前記整流素子により出力される前記脈流電圧が、所定のレベルを超えた場合、前記制御回路の前記制御を停止させる制御停止回路をさらに含み、
前記短絡検出回路は、前記制御停止回路により前記制御回路の前記制御が停止させられて前記2次側の巻き線から電流が流れ出ていない場合、前記第2のキャパシタを充電させる充電回路をさらに含む
ことを特徴とする請求項2に記載の電源装置。
【請求項4】
入力された前記交流電圧を整流し、整流した脈流電圧を出力する整流素子と、前記整流素子より出力される前記脈流電圧を前記直流電圧に変換して出力するための第1のキャパシタ、変換後の前記直流電圧のレベルを所定のレベルにほぼ保つためのチョークコイルの1次側の巻き線、およびスイッチング素子、並びに、前記チョークコイルの2次側の巻き線に発生する電圧のレベルが所定のレベル以下になった場合に前記スイッチング素子の状態をオフ状態からオン状態に切り替える制御を行う制御回路を少なくとも含む直流出力回路を有する入力された交流電圧を直流電圧に変換して出力する電源装置の停止方法において、
前記直流出力回路の前記チョークコイルの前記2次側の巻き線から流れ出る電流を監視し、その監視結果に基づいて、前記2次側の巻き線の短絡の発生の有無を検出する検出ステップと、
前記検出ステップにより前記2次側の巻き線の端子間の短絡の発生が検出されていない場合、前記交流電圧の前記整流素子への入力を許可することで前記電源装置全体を動作させ、前記検出ステップにより前記2次側の巻き線の端子間の短絡の発生が検出された場合、前記交流電圧の前記整流素子への入力を禁止することで、前記電源装置全体を停止させる停止ステップと
を含むことを特徴とする停止方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−20475(P2006−20475A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−198301(P2004−198301)
【出願日】平成16年7月5日(2004.7.5)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】