説明

ガラス基板の研磨方法

【課題】ガラス基板の主表面を平坦度30nm以下に研磨することができる、EUVL光学基材用ガラス基板の研磨方法の提供。
【解決手段】両面研磨装置10のガラス基板22の両主表面を研磨するEUVL光学基材用ガラス基板の研磨方法であって、前記研磨パッド24が、微多孔が形成された表面層を有し、圧縮率が20%以上である第1の軟質プラスチックシートと、前記第1の軟質プラスチックシートの前記研磨面の背面側に接合された、圧縮率が20%未満である第2の軟質プラスチックシートと、を備えており、前記第2の軟質プラスチックシートの前記第1の軟質プラスチックシートが接合された反対面側をバフ処理した後、前記第2の軟質プラスチックシートのバフ処理された面を前記両面研磨装置の上下定盤の側にして、前記研磨パッドを該上下定盤に取り付けた状態で、前記研磨面側をドレス処理してから、前記ガラス基板の両主表面を研磨する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス基板の研磨方法に関する。より具体的には、EUV(Extreme Ultra Violet:極端紫外)光を用いたリソグラフィ(以下、「EUVL」と略する)の際に使用される反射型マスクの基材として使用されるガラス基板(以下、「EUVL光学基材用ガラス基板」と略する。)の主表面の研磨方法に関する。
ここで、ガラス基板の主表面とは使用時に基板として機能する面を指し、具体的には端面を除く表裏面である。
【背景技術】
【0002】
従来から、半導体製造工程においては、ウェハ上に微細な回路パターンを転写して集積回路を製造するための露光装置が広く使用されている。近年、半導体集積回路の高集積化、高機能化に伴い、集積回路の微細化が進み、回路パターンをウェハ面上に正確に結像させるために、露光装置のフォトマスクに使用される光学基材用ガラス基板は高度の平坦性と平滑性が求められている。
【0003】
さらに、このような技術動向にあって、次の世代の露光光源としてEUV光を使用したリソグラフィ技術(すなわち、EUVL技術)が、45nm以降の複数の世代にわたって適用可能と見られ注目されている。EUV光とは軟X線領域または真空紫外域の波長帯の光を指し、具体的には波長が0.2〜100nm程度の光のことである。現時点では、リソグラフィ光源として13.5nmの波長光の使用が検討されている。このEUVLの露光原理は、投影光学系を用いてマスクパターンを転写する点では、従来のリソグラフィと同じであるが、EUV光のエネルギー領域では光を透過する材料がないために屈折光学系は用いることができず、反射光学系を用いることとなり、反射型マスクが用いられる(特許文献1参照)。
【0004】
EUVLに用いられる反射型マスクは、(1)基材、(2)基材上に形成された反射多層膜、(3)反射多層膜上に形成された吸収体層から基本的に構成される。
反射型マスクの製造に用いられる基材(EUVL光学基材)としては、EUV光照射の下においても歪みが生じないよう低熱膨張係数を有する材料が必要とされ、低熱膨張係数を有するガラスで作製されたEUVL光学基材用ガラス基板が検討されている。EUVL光学基材用ガラス基板は、これらガラスを、高精度に研磨、洗浄することによって製造される。
【0005】
露光装置光源の短波長化に伴い、露光装置のフォトマスクに使用される光学基材用ガラス基板の主表面における平坦度の要求は年々厳しくなっている。特に、EUVLでは13.5nmと従来のリソグラフィ技術と比べて極端に波長が短い波長のため、フォトマスクに使用される光学基材用ガラス基板にも、主表面の平坦度30nm以下というかなり厳しい要求がなされている。
【0006】
一般に、磁気記録媒体用基板や半導体用基板などを平滑度の高い表面に研磨する方法は知られている。例えば、特許文献2には、メモリーハードディスクの仕上げ研磨や半導体素子用基板などの研磨について、水、研磨材、酸化合物を含有してなり、pHが酸性かつ研磨材の濃度が10重量%未満である研磨液組成物と、研磨パッドと、を用いて機械研磨する方法が記載されている。そして、研磨材として酸化アルミニウム、シリカ、酸化セリウム、酸化ジルコニウムなどが、またpHを酸性にするための酸として硝酸、硫酸、塩酸や有機酸などがそれぞれ例示されている。
EUVL光学基材用ガラス基板についても、特定の研磨スラリーと、研磨パッドと、を用いて機械研磨する方法が特許文献3〜7に記載されている。EUVL光学基材用ガラス基板の研磨では、特許文献5〜7に記載されているように、該基板の表面粗さが一定以下になるように主表面を予備研磨した後、上述した平坦度についての要求を満たすように、該主表面を仕上げ研磨するのが一般的である。
【0007】
レンズ、ハードディスク用基板の機械研磨、特に仕上げ研磨に好適な研磨パッドとして、特許文献8には、被研磨物を研磨加工するための研磨面側に微多孔が形成された表面層を有する第1の軟質プラスチックシートと、前記第1の軟質プラスチックシートの前記研磨面の背面側に接合され前記第1の軟質プラスチックシートより小さい圧縮率を有する第2の軟質プラスチックシートとを備え、前記第1及び第2の軟質プラスチックシートの全体の厚さが一様となるように前記第2の軟質プラスチックシートの前記第1の軟質プラスチックシートが接合された反対面側がバフ処理されており、前記第1の軟質プラスチックシートの前記表面層に形成された微多孔が開孔するように前記研磨面側がドレス処理されていることを特徴とする研磨パッドが開示されている。
この研磨パッドは、第1の軟質プラスチックシートに第1の軟質プラスチックシートより小さい圧縮率を有する第2の軟質プラスチックシートが接合されているため、外力に対する第2の軟質プラスチックシートの変形量が第1の軟質プラスチックシートより小さいことから、バフ処理時及びドレス処理時に第1の軟質プラスチックシートの伸縮が第2の軟質プラスチックシートで抑制されるので、第1及び第2の軟質プラスチックシートの全体の厚さ精度を向上させ、第1の軟質プラスチックシートの表面層に形成された微多孔を開孔させることができ、研磨加工時には、ドレス処理により開孔した微多孔で研磨粒子を含む研磨液が保持され、バフ処理による厚さ精度の向上で平坦化した研磨面で被研磨物が研磨加工されるので、被研磨物の平坦性を向上させることができる、という効果を得ることができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特表2003−505891号公報
【特許文献2】特開2003−211351号公報
【特許文献3】特開2005−59184号公報
【特許文献4】特開2005−275388号公報
【特許文献5】特開2006−35413号公報
【特許文献6】特開2007−213020号公報
【特許文献7】特開2009−12164号公報
【特許文献8】特開2008−036786号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献8に記載の研磨パッドを用いてEUVL光学基材用ガラス基板を研磨した場合、研磨後の主表面の平坦度が悪化し、平坦度30nm以下とすることができなかった。
本発明は、上記した従来技術の問題点を解決するため、ガラス基板の主表面を平坦度30nm以下に研磨することができる、EUVL光学基材用ガラス基板の研磨方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願発明者は、上記した従来技術の問題点を解決するため、鋭意検討することにより、以下の知見を得た。
特許文献8に記載の発明では、実施例で被研磨物としてハードディスク用基板が挙げられているように平坦性改善、特に端部形状の改善を主目的としている。EUVL光学基材用ガラス基板ほど表面欠点への要求が厳しくないため、微多孔が形成された表面層を有する第1の軟質プラスチックシートとして、圧縮率が6.4%という、圧縮率が低いポリウレタンシート(ポリウレタンシート2)を使用しているが、このような圧縮率が低いポリウレタンシートを用いて、EUVL光学基材用ガラス基板を研磨すると、ガラス基板の主表面にキズが生じるため、より圧縮率が高いポリウレタンシートを使用することが考えられる。
【0011】
しかしながら、第1の軟質プラスチックシートとして、より圧縮率が高いポリウレタンシートを用いて、特許文献8と同様の二層構造の研磨パッドを作製し、EUVL光学基材用ガラス基板の研磨を実施した場合に、ガラス基板の主表面の平坦度が悪化し、平坦度30nm以下とすることができなかった。
本願発明者らは、この点について鋭意検討した結果、第1の軟質プラスチックシートとして、より圧縮率が高いポリウレタンシートを用いて、特許文献8と同様の二層構造の研磨パッドを作製すると、第1の軟質プラスチックシートの表面層に形成された微多孔が開孔するように研磨面側をドレス処理した際に、研磨面での開口径にばらつきが生じること、および、研磨面での開口径にばらつきがある研磨パッドを用いてガラス基板を研磨した場合、研磨レートが不均一になることを見出した。EUVL光学基材用ガラス基板の研磨を実施した場合に、研磨レートが不均一となることが、ガラス基板の主表面の平坦度が悪化することの原因である。
【0012】
本発明は、上記の知見に基づいてなされたものであり、両面研磨装置の上下定盤に取り付けられた研磨パッドの研磨面で、キャリアに保持されたガラス基板を挟持し、上下両定盤の両研磨面の少なくとも一方に設けられている1つ、または、複数の供給孔から研磨粒子を含む流体を供給しつつ、前記上下定盤と、前記キャリアに保持された前記ガラス基板と、を相対的に移動させて前記ガラス基板の両主表面を研磨するEUVリソグラフィ(EUVL)光学基材用ガラス基板の研磨方法であって、
前記研磨パッドが、微多孔が形成された表面層を有し、圧縮率が20%以上である第1の軟質プラスチックシートと、前記第1の軟質プラスチックシートの前記研磨面の背面側に接合された、圧縮率が20%未満である第2の軟質プラスチックシートと、を備えており、前記第1及び第2の軟質プラスチックシートの全体の厚さが一様となるように、前記第2の軟質プラスチックシートの前記第1の軟質プラスチックシートが接合された反対面側をバフ処理した後、前記第2の軟質プラスチックシートのバフ処理された面を前記両面研磨装置の上下定盤の側にして、前記研磨パッドを該上下定盤に取り付けた状態で、前記第1の軟質プラスチックシートの前記表面層に形成された微多孔が開孔するように、前記研磨面側をドレス処理してから、前記ガラス基板の両主表面を研磨することを特徴とするEUVL光学基材用ガラス基板の研磨方法を提供する。
【0013】
本発明のEUVL光学基材用ガラス基板の研磨方法において、前記研磨面側のドレス処理に、ダイヤ微粒子を接着したドレス板、または、ダイヤ微粒子がボンド材の中に埋没されているダイヤモンドドレッサーを用いることが好ましい。
【0014】
本発明のEUVL光学基材用ガラス基板の研磨方法において、前記第1の軟質プラスチックシートの厚さが0.2〜2mmであり、前記第2の軟質プラスチックシートの厚さが0.1〜1mmであることが好ましい。
【0015】
本発明のEUVL光学基材用ガラス基板の研磨方法において、前記研磨パッドの前記第2の軟質プラスチックシートのバフ処理された面に、可撓性フィルム、不織布及び織布からなる群から選択される1種の基材を取り付けた後に、該研磨パッドを前記両面研磨装置の上下定盤に取り付けてもよい。
前記基材はポリエチレンテレフタレート(PET)製であることが好ましい。
【0016】
本発明のEUVL光学基材用ガラス基板の研磨方法において、前記上下両定盤を同心の回転軸で回転させつつ、
前記キャリアを、その中心が前記研磨面上の前記定盤の回転軸と一致しない位置に配置し、前記研磨面上で前記ガラス基板を保持する前記キャリアを前記定盤の回転軸を中心に相対的に公転させ、かつ、前記キャリアの中心を回転軸として前記研磨面上で該キャリアを自転させることによって、前記ガラス基板の両主表面を研磨することが好ましい。
【0017】
本発明のEUVL光学基材用ガラス基板の研磨方法において、前記上下両定盤の研磨面による研磨荷重が0.1〜10kPaであることが好ましい。
【0018】
本発明のEUVL光学基材用ガラス基板の研磨方法において、前記研磨パッドの平均開口径が5〜100μmであることが好ましい。
【0019】
本発明のEUVL光学基材用ガラス基板の研磨方法において、前記研磨パッドの外周部90度間隔4点と、前記研磨パッドの内周部90度間隔4点、計8点で該研磨パッドの平均開口径を測定した際に、該平均開口径の最大値と最小値との差が50μm以下であることが好ましい。
【0020】
本発明のEUVL光学基材用ガラス基板の研磨方法において、前記研磨粒子がコロイダルシリカまたは酸化セリウムであることが好ましい。
本発明のEUVL光学基材用ガラス基板の研磨方法において、前記研磨粒子が平均一次粒子径が5〜100nmのコロイダルシリカであることがより好ましい。
本発明のEUVL光学基材用ガラス基板の研磨方法において、前記研磨粒子を含む流体におけるコロイダルシリカの含有率が5〜40質量%であることがより好ましい。
本発明のEUVL光学基材用ガラス基板の研磨方法において、前記研磨粒子を含む流体のpHが8以下のコロイダルシリカ水溶液であることがより好ましい。
【0021】
本発明のEUVL光学基材用ガラス基板の研磨方法において、表面粗さ(Rms)が1nm以下、平坦度(P−V値)が1μm以下となるように、ガラス基板の両主表面が予備研磨されていることがより好ましい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、EUVL光学基材用ガラス基板の両主表面を平坦度30nm以下に研磨することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、本発明の研磨方法に用いる両面研磨装置の一構成例を示した側断面図である。
【図2】図2は、図1に示す両面研磨装置10内におけるガラス基板22の配置の一構成例を示した図である。
【図3】図3は、図1に示す両面研磨装置10における上定盤12の一構成を示す図である。
【図4】図4は、本発明の研磨方法に用いる研磨パッドを示した模式図であり、後述する手順にしたがって裏面バフ処理および研磨のドレス処理を実施する前の状態を示している。
【図5】図5(a)〜(e)は、特許文献8に記載の研磨布の作成手順および処理手順を示した模式図である。
【図6】図6(a)〜(e)は、第1の軟質プラスチックシート2の圧縮率が高い研磨パッドの作成手順および処理手順を示した模式図であり、処理手順は図6と同様である。
【図7】図7(a)〜(d2)は、本発明の研磨パッドの作成手順および処理手順を示した模式図である。
【図8】図8(a)〜(d2)は、第1の軟質プラスチックシート2を、第2の軟質プラスチックシート3と接合することなしに、研磨面のドレス処理を実施した場合を示している。
【図9】図9(a)〜(d2)は、第1の軟質プラスチックシート2を、第2の軟質プラスチックシート3と接合することなしに、研磨面のドレス処理を実施した場合を示している。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して本発明のEUVL光学基材用ガラス基板の研磨方法(以下、「本発明の基板研磨方法」という。)を説明する。
本発明の基板研磨方法では、両面研磨装置を用いてEUVL光学基材用ガラス基板の両主表面を研磨する。ここで、ガラス基板の主表面とは使用時に基板として機能する面を指し、具体的には端面を除く表裏面である。以下、本明細書において、ガラス基板の両面研磨といった場合、ガラス基板の両主表面、すなわち、ガラス基板の表裏面を研磨することを指す。
両面研磨装置には様々な構成のものがあるが、上下定盤の研磨面でキャリアに保持されたガラス基板を挟持し、上下両定盤の両研磨面の少なくとも一方に設けられている1つ、または、複数の供給孔から研磨粒子を含む流体(以下、本明細書において、「研磨スラリー」という。)を供給しつつ、上下定盤と、キャリアに保持されたガラス基板と、を相対的に移動させることにより、ガラス基板の両面を研磨する点では共通である。
以下、図面を参照して両面研磨装置について説明するが、本発明の基板研磨方法に用いる両面研磨装置は上記を満たすものであればよく、両面研磨装置の構成、動作機構、両面研磨装置でのガラス基板の配置等はこれに限定されない。
【0025】
図1は、本発明の基板研磨方法に用いる両面研磨装置の一構成例を示した側断面図である。
図1に示す両面研磨装置10は、ガラス基板22の両面を研磨する遊星歯車方式の研磨装置である。図1に示す両面研磨装置10は、上定盤12、下定盤14、太陽歯車16、及び内歯歯車18を備える。詳しくは後述するが、太陽歯車16及び内歯歯車18は、上下両定盤(上定盤12、下定盤14)と、キャリア20に保持されたガラス基板22と、を相対的に移動させる手段である。太陽歯車16及び内歯歯車18の形状は歯車形状が一般的であるが、歯車の代わりにピンが複数立っているものでも代用することができる。ピンにキャリア20の歯車をかませてキャリア20を移動させることで上下両定盤(上定盤12、下定盤14)と、キャリア20に保持されたガラス基板22と、を相対的に移動させることができる。(以下、本明細書において、歯車形状、ピン形状を区別せず「歯車」という。)
上下両定盤(上定盤12、下定盤14)は、中心部に空洞12a,14aを有するドーナツ状である。
【0026】
図2は、図1に示す両面研磨装置10内におけるガラス基板22の配置の一構成例を示した図であり、下定盤14上にガラス基板22を保持したキャリア20を配置した状態を示している。図2において、下定盤14上(実際には、上下両定盤(上定盤12、下定盤14)の間)には、複数のキャリア20が配置されている。複数のキャリア20は、例えば、図1における太陽歯車16と内歯歯車18との間のドーナツ状の領域において、下定盤14(実際には上定盤12及び下定盤14)の円周方向へ並べて配置される。
また、キャリア20は、ガラス基板22を収容する4角穴状の貫通部を中央に有する円板状体であり、外周に歯車が設けられており、外周部において太陽歯車16及び内歯歯車18と噛み合う。各キャリア20は、ガラス基板22をそれぞれ1枚保持する。なお、図2では、各キャリア20は、ガラス基板22をそれぞれ1枚保持しているが、各キャリアが複数のガラス基板を保持していてもよい。
【0027】
上定盤12及び下定盤14は、ガラス基板22の上側及び下側の定盤である。上定盤12及び下定盤14は、ドーナツ状体であり、これらのドーナツ状体の中心軸である定盤中心軸102を中心にして、キャリア20に保持されたガラス基板22をその研磨面(上下両定盤(上定盤12、下定盤14)の研磨面))の間に挟みつつ、上下定盤のうち一方または両方を回転させることで、上下定盤と、キャリアに保持されたガラス基板と、を相対的に移動させる。
上定盤12及び下定盤14は、基板22と対向する面に研磨パッド24が取り付けられている。本明細書において、上下両定盤(上定盤12、下定盤14)の研磨面と言った場合、上下両定盤(上定盤12、下定盤14)に取り付けられた研磨パッド24のパッド表面を指す。
【0028】
図3は、図1に示す両面研磨装置10における上定盤12の一構成例を示す図である。図3に示すように、上定盤12には、研磨スラリーの供給孔30が設けられている。これにより、両面研磨装置10は、上定盤12及び下定盤14の研磨面に設けられた研磨パッド24と、基板22と、の間に、研磨スラリーを供給する。図3において、上定盤12には、複数の供給孔30が設けられている。なお、図3では、上定盤12における供給孔30を示しているが、上定盤12の研磨面に設けられた研磨パッドにも、図3と同様の供給孔が存在する。
複数の供給孔30は、上定盤12の回転軸側から外側に、かつ上定盤12の回転方向の進行側に向かって、螺旋状に等間隔で配置されている。但し、図3は、上定盤12における研磨スラリー供給孔30の配置の一構成例を示したものであり、上定盤12における研磨スラリー供給孔30の配置はこれに限定されない。
また、図3では、上定盤12に複数の供給孔30が設けられているが、上定盤に設けられる供給孔の数は1つでもよい。
また、上定盤ではなく、下定盤に研磨スラリーの供給孔が設けられていてもよく、上定盤と下定盤の両方に研磨スラリーの供給孔が設けられていてもよい。
【0029】
太陽歯車16及び内歯歯車18は、キャリア20の外周面と噛み合うギアである。太陽歯車16は、上定盤12及び下定盤14の中心側からキャリア20と接する外歯の歯車であり、上下両定盤(上定盤12及び下定盤14)中心部の空洞12a,14aに備えられ、上下両定盤(上定盤12及び下定盤14)の回転軸である定盤中心軸102と同心の回転軸で回転する。また、内歯歯車18は、上定盤12及び下定盤14の外周側からキャリア20と接する内歯の歯車である。内歯歯車18は、リング状で内側に歯車を有する歯車であり、上下両定盤(上定盤12及び下定盤14)の外周に備えられ、定盤の回転軸である定盤中心軸102と同心の回転軸で回転する。
【0030】
そして、太陽歯車16と内歯歯車18は、キャリア20の歯車と噛み合うことによって、キャリア20を回転させる。また、これにより、太陽歯車16及び内歯歯車18は、上定盤12と下定盤14との間において、ガラス基板22を保持するキャリア20を公転及び自転させることにより、ガラス基板20の両面を研磨する。
【0031】
次に、本発明の基板研磨方法に用いる研磨パッドを説明する。
図4は、本発明の基板研磨方法に用いる研磨パッドの断面図であり、後述する手順にしたがって裏面バフ処理および研磨のドレス処理を実施する前の状態を示している。
図4に示すように、本発明の基板研磨方法に用いる研磨パッド(以下、「本発明の研磨パッドという。))1は、ガラス基板を研磨加工するための研磨面Pを有する第1の軟質プラスチックシート2と、第1の軟質プラスチックシート2の研磨面Pの背面側(以下、「第1の軟質プラスチックシート2の裏面側」と言う場合がある。)に接合された第2の軟質プラスチックシート3と、を備えている。
【0032】
第1の軟質プラスチックシート2は、微多孔4を有する。なお、図5で示すように、第1の軟質プラスチックシート2として、微多孔4が形成された層のみからなるものでもよく、微多孔4が形成された表面層と、該表面層以外の層(以下、「他の層」と言う。)を有するものであってもよい。ここで、他の層の構成は特に限定されず、微多孔4のような気泡を有するものであってもよい。
微多孔4は、第1の軟質プラスチックシート2(表面層)の厚み方向(図5の縦方向)に沿って丸みを帯びた断面略三角状をなしており、研磨面P側の孔径が研磨面Pの背面側より小さくなっている。すなわち、微多孔4は、研磨面P側で縮径されている。
【0033】
本発明の研磨パッド1は、研磨面Pを有する第1の軟質プラスチックシート2の圧縮率が20%以上である。本発明の研磨方法では、EUVL光学基材用ガラス基板の両主表面を研磨するため、研磨面Pを有する第1の軟質プラスチックシート2の圧縮率が20%未満だと、ガラス基板22の被研磨面にEUVL光学基材として使用するうえで問題となるようなキズを生じるおそれがあるからである。
第1の軟質プラスチックシート2の圧縮率は25%以上がより好ましく、30%以上がさらに好ましく、40%以上であることがより好ましい。上限は特にないが70%以下が好ましい。
【0034】
一方、第2の軟質プラスチックシート3の圧縮率は20%未満と、第1の軟質プラスチックシート2より小さい圧縮率に設定されている。
第1の軟質プラスチックシート2の研磨面Pの背面側に、該第1の軟質プラスチックシート2より圧縮率が小さい第2の軟質プラスチックシート3を接合することにより、外力に対する第2の軟質プラスチックシート3の変形量が、第1の軟質プラスチックシート2より小さくなる。
この結果、後述する手順で裏面バフ処理、および、研磨面のドレス処理を実施する際に、第1の軟質プラスチックシート2の伸縮が第2の軟質プラスチックシート3で抑制される。これにより、研磨パッドの厚さ精度、すなわち、第1の軟質プラスチックシート2、第2の軟質プラスチックシート3の全体での厚さ精度を向上させることができる。また、研磨面のドレス処理により、第1の軟質プラスチックシート2の表面層に形成された微多孔4を均一な開口径となるように開孔させることができ、研磨面における開口径が均一になる。
これらによって、研磨加工時には、立ち上がり時間を短縮できる上、研磨パッドの厚さ精度の向上、および、研磨面における開口径が均一になることで、ガラス基板を研磨した際に、ガラス基板の研磨面の平坦性が向上する。
第2の軟質プラスチックシート3は、圧縮率が15%未満であることが好ましく、10%未満であることがより好ましい。下限は特にないが、1.5%以上が好ましい。
【0035】
第1の軟質プラスチックシート2は、圧縮率が20%以上であること、および、微多孔4が形成された表面層を有することから、ポリウレタン樹脂製であることが好ましい。
第2の軟質プラスチックシート3についても、第1の軟質プラスチックシート2に比べると低いが、やはり高い圧縮率を有すること、および、第1の軟質プラスチックシート2との接合性を考慮すると、ポリウレタン樹脂製であることが好ましい。また、後述する裏面バフ処理、および、研磨面のドレス処理による加工が容易であることからもポリウレタン樹脂製であることが好ましい。
【0036】
第1の軟質プラスチックシート2、および、第2の軟質プラスチックシート3は、裏面バフ処理、研磨面のドレス処理、および、ガラス基板の研磨時に、両者がずれたり、剥離することがないように確実に接合されている必要がある。
このため、第1の軟質プラスチックシート2、および、第2の軟質プラスチックシート3は、接着剤や接着テープで接合されていることが好ましい。また、第1の軟質プラスチックシート2、および、第2の軟質プラスチックシート3がポリウレタン樹脂製の場合は、ポリウレタン樹脂の接着剤や接着テープで接合されていることも好ましい。
【0037】
第1の軟質プラスチックシート2は、厚さが0.2〜2mmであることが、十分な圧縮量を持つことで研磨対象であるガラス基板にキズを発生させない一方で、圧縮量が大きすぎることによって、ガラス基板外周部に局所的に荷重がかかり外周部がだれることがないことから好ましく、0.2〜1.5mmであることがより好ましく、0.2〜1mmであることがさらに好ましい。
第2の軟質プラスチックシート3は、厚さが0.1〜1mmであることが、後述する手順で裏面バフ処理、および、研磨面のドレス処理を実施する際に、第1の軟質プラスチックシート2の伸縮が第2の軟質プラスチックシート3で抑制されることにより、研磨パッドの厚さ精度、すなわち、第1の軟質プラスチックシート2、第2の軟質プラスチックシート3の全体での厚さ精度を向上させることができることから好ましく、0.1〜0.8mmであることがより好ましく、0.2〜0.7mmであることがさらに好ましい。
【0038】
本発明の研磨パッド1を上下定盤に確実に取り付けるために、研磨パッド1の裏面側、すなわち、第2の軟質プラスチックシート3の裏面側が基材に取り付けられていてもよい。この場合、研磨パッド1を上下定盤に取り付ける際、該基材が上下定盤に取り付けられることになる。
このような基材としては、可撓性フィルム、不織布及び織布を用いることができる。また、基材の材質としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)製であることが、定盤への貼り付け時に伸縮しなく、均一に貼り付けることが容易であることから好ましい。
なお、第2の軟質プラスチックシート3の裏面側に基材を取り付ける場合、後述する研磨パッドの裏面バフ処理の実施後に基材を取り付けることになる。
本発明の研磨パッド1を上下定盤に取り付ける方法としては、たとえば、両面テープを用いて両者を貼り合わせる方法がある。
【0039】
本発明の基板研磨方法では、両面研磨装置を用いてEUVL光学基材用ガラス基板の両主表面を研磨する前に、以下に述べる手順で本発明の研磨パッドの裏面バフ処理、および研磨面のドレス処理を行う。
【0040】
上記した構成の本発明の研磨パッド1となるように、第1の軟質プラスチックシート2と、第2の軟質プラスチックシート3と、を接合させた後、研磨パッド1の全体の厚さ、すなわち、第1の軟質プラスチックシート2、および、第2の軟質プラスチックシート3の全体の厚さが一様となるように、第2の軟質プラスチックシート3の第1の軟質プラスチックシート2が接合された反対面側、すなわち、第2の軟質プラスチックシート3の裏面側をバフ処理する。以下、この手順のことを、「研磨パッドの裏面バフ処理」という。研磨パッドの裏面バフ処理は、例えば、以下の手順で実施することができる。
第1の軟質プラスチックシート2の研磨面側を圧接ローラーに圧接させながら、第2の軟質プラスチックシート3の裏面側をサンドペーパーやダイヤモンドバフロールにより研削することで、研磨パッド1の全体の厚さ、すなわち、第1の軟質プラスチックシート2、および、第2の軟質プラスチックシート3の全体の厚さが一様にする。
【0041】
研磨パッドの裏面バフ処理の実施後、第2の軟質プラスチックシート3のバフ処理された面を図1に示す両面研磨装置10の上下定盤(上定盤12、下定盤14)の側にして、研磨パッド1を上下定盤(上定盤12、下定盤14)に取り付ける。すなわち、研磨パッド1の裏面側が、上下定盤(上定盤12、下定盤14)の側になるように、研磨パッド1を上下定盤(上定盤12、下定盤14)に取り付けた状態で、第1の軟質プラスチックシート2の研磨面側をドレス処理する。以下、この手順のことを、「研磨面のドレス処理」という。
研磨面のドレス処理は、例えば、以下の手順で実施することができる。
上述した手順で研磨パッド1を上下定盤(上定盤12、下定盤14)に取り付けた後、両面研磨装置1のキャリア20に、ダイヤ微粒子を接着したドレス板、または、ダイヤ微粒子がメタルボンド等のボンド材の中に埋没されているダイヤモンドドレッサーを設置する。キャリア20に保持されたドレス板またはダイヤモンドドレッサーを、上下定盤(上定盤12、下定盤14)に取り付けられた研磨パッド1の研磨面、すなわち、第1の軟質プラスチックシート2の研磨面側、の間に挟みつつ、研磨パッド1の研磨面と、ドレス板またはダイヤモンドドレッサーと、の間にドレス液を供給しながら、上述した手順でキャリア20を公転及び自転させることにより、上下両定盤(上定盤12、下定盤14)と、ドレス板またはダイヤモンドドレッサーと、を相対的に移動させることにより研磨面のドレス処理を行う。
このような手順で研磨面のドレス処理を行うことで、第1の軟質プラスチックシート2の表面層に形成された微多孔4を、均一な開口径となるように開孔させることができ、研磨面における開口径が均一になる。
【0042】
本発明では、裏面バフ処理、および、研磨面のドレス処理の実施による、研磨パッドの厚さ精度の向上、および、研磨面における開口径が均一になることにより、ガラス基板を研磨した際に、ガラス基板の研磨面の平坦性が向上する。
【0043】
なお、特許文献8に記載の研磨布は、同文献の段落番号[0034]および[0054]に記載されているように、本発明の研磨パッド1の裏面バフ処理と同様の手順で、第2の軟質プラスチックシートの第1の軟質プラスチックシートが接合された反対面側をバフ処理(すなわち、裏面バフ処理)している。
一方、特許文献8の段落番号[0017]には、同文献におけるバフ処理がポリウレタンシートの厚さバラツキを解消するほど削り取るのに対して、同文献におけるドレス処理は微多孔を開孔させる程度の軽度なサンディングを意味するとされている。そして、同文献の段落番号[0035]および[0054]の記載から明らかなように、裏面バフ処理よりも細かな砥粒のサンドペーパーやダイヤモンドバフロールを用いる点を除いて、裏面バフ処理と同様の手順で実施される。
一方、本発明における研磨面のドレス処理では、上述したように、研磨パッド1の裏面側が、上下定盤(上定盤12、下定盤14)の側になるように、研磨パッド1を上下定盤(上定盤12、下定盤14)に取り付けた状態で、第1の軟質プラスチックシート2の研磨面側を、ドレス板またはダイヤモンドドレッサーを用いてドレス処理する。
したがって、特許文献8に記載の研磨布は、本発明における「バフ処理」を研磨布の裏面側、および、研磨面側の両方に施したものに相当し、本発明における研磨面のドレス処理とは異なる処理を実施している。
【0044】
特許文献8に記載の研磨布の場合、第1の軟質プラスチックシート、および、第2の軟質プラスチックシートとして、圧縮率がそれぞれ6.4%、3.4%という、圧縮率が低いポリウレタンシートを使用しているため、本発明における「バフ処理」を研磨布の裏面側、および、研磨面側の両方に施した場合でも、研磨面における開口径にばらつきが生じることがない。この点について、図5(a)〜(e)を参照して説明する。
図5(a)〜(e)は、特許文献8に記載の研磨布の作成手順および処理手順を示した模式図である。なお、本発明の研磨パッドとの比較を容易するため、特許文献8に記載の研磨布の各部の説明には、本発明の研磨パッドと同一の用語および符号を用いる。
【0045】
図5(a)は、第2の軟質プラスチックシート3と接合する前の第1の軟質プラスチックシート2の状態を示している。第1の軟質プラスチックシート2は、微多孔4が形成された表面層を有している。
図5(b)は、第1の軟質プラスチックシート2と、第2の軟質プラスチックシート3と、を接合した状態を示している。
図5(c)は、本発明における「バフ処理」を研磨布の裏面に施す際(すなわち、裏面バフ処理実施時)の状態を示している。この手順では、第1の軟質プラスチックシート2の研磨面側(以下、「研磨面」とする。)を圧接ローラーに圧接させながら、第2の軟質プラスチックシート3の裏面側(以下、「裏面」とする。)をサンドペーパーやダイヤモンドバフロールにより研削することになるが、圧接ローラーに圧接される第1の軟質プラスチックシート2は圧縮率が低いため、裏面のバフ処理実施において、第1の軟質プラスチックシート2が圧縮されない状態でバフ処理が行われ、第2の軟質プラスチックシート3の裏面と、第1の軟質プラスチックシート2の研磨面と、が平行になる。
図5(d)は、本発明における「バフ処理」を研磨布の研磨面に施す際(すなわち、研磨面のバフ処理実施時)の状態を示している。この手順では、第2の軟質プラスチックシート3の裏面を圧接ローラーに圧接させながら、第1の軟質プラスチックシート2の研磨面をサンドペーパーやダイヤモンドバフロールにより研削することになるが、第2の軟質プラスチックシート3は、第1の軟質プラスチックシート2よりも圧縮率が低いため、第2の軟質プラスチックシート3が圧縮されない状態でバフ処理が行われ、第2の軟質プラスチックシート3の裏面と、第1の軟質プラスチックシート2の研磨面と、が平行になる。
すなわち、裏面のバフ処理実施時、および、研磨面のバフ処理実施時のいずれにおいても、第2の軟質プラスチックシート3の裏面と、第1の軟質プラスチックシート2の研磨面と、が平行になる。この結果、研磨面のバフ処理実施時において、研磨面と、第1の軟質プラスチックシート2の表面層に形成された微多孔4と、の位置関係が均一になり、研磨面のバフ処理により、微多孔4を開口させた際に、研磨面における開口径5が均一になる。
図5(e)は、研磨面のバフ処理後の研磨布を研磨装置の定盤に取り付けた状態を示しており、図中下側が定盤(図示せず)となる。図5(e)に示すように、研磨面における開口径5が均一である。
【0046】
図6(a)〜(e)は、第1の軟質プラスチックシート2の圧縮率が高い研磨パッドを、特許文献8に記載の研磨布と同様の手順で作成および処理した場合、すなわち、本発明における「バフ処理」を研磨パッドの裏面および研磨面の両方に施した場合を示した模式図である。図6(a)は、第2の軟質プラスチックシート3と接合する前の第1の軟質プラスチックシート2の状態を示している。図6(b)は、第1の軟質プラスチックシート2と、第2の軟質プラスチックシート3と、を接合した状態を示している。図6(c)は、裏面バフ処理の実施時の状態を示している。図6(d)は、研磨面のバフ処理実施時の状態を示している。図6(e)は、研磨面のバフ処理後の研磨布を研磨装置の定盤(図示せず)に取り付けた状態を示している。
この場合、裏面バフ処理の実施時には、圧接ローラーに圧接される第1の軟質プラスチックシート2の圧縮率が高いため、第1の軟質プラスチックシート2が圧縮された状態で、第2の軟質プラスチックシート3の裏面が研削されるので、図6(c)に示すように、第2の軟質プラスチックシート3の裏面と、第1の軟質プラスチックシート2の研磨面と、が十分に平行にならない。
一方、研磨面のバフ処理実施時には、圧接ローラーに圧接される第2の軟質プラスチックシート3は、第1の軟質プラスチックシート2よりも圧縮率が低いため、第2の軟質プラスチックシート3が圧縮されない状態でバフ処理が行われ、図6(d)に示すように、第2の軟質プラスチックシート3の裏面と、第1の軟質プラスチックシート2の研磨面と、が平行になる。この結果、研磨面のバフ処理実施時において、研磨面と、第1の軟質プラスチックシート2の表面層に形成された微多孔4と、の位置関係にばらつきが生じ、研磨面のバフ処理により微多孔4を開口させた際に、研磨面における開口径5にばらつきを生じる。
この結果、図6(e)に示すように、研磨面のバフ処理後の研磨布を研磨装置の定盤に取り付けた際に、研磨面の開口径5にばらつきを生じる。
【0047】
図7(a)〜(d2)は、本発明の研磨パッドの作成手順および処理手順を示した模式図である。図7(a)は、第2の軟質プラスチックシート3と接合する前の第1の軟質プラスチックシート2の状態を示している。図7(b)は、第1の軟質プラスチックシート2と、第2の軟質プラスチックシート3と、を接合した状態を示している。図7(c)は、裏面バフ処理の実施時の状態を示している。図7(d1)は、研磨面のドレス処理実施時の状態を示しており、図7(d2)は、研磨面のドレス処理実施後の状態を示している。
この場合、裏面バフ処理の実施時には、圧接ローラーに圧接される第1の軟質プラスチックシート2の圧縮率が高いため、第1の軟質プラスチックシート2が圧縮された状態で、第2の軟質プラスチックシート3の裏面が研削されるので、図7(c)に示すように、第2の軟質プラスチックシート3の裏面と、第1の軟質プラスチックシート2の研磨面と、が十分に平行にならない。
本発明では、裏面バフ処理の実施後、第2の軟質プラスチックシート3のバフ処理された面を、両面研磨装置の上下定盤の側にして、研磨パッドを上下定盤に取り付けた状態で、第1の軟質プラスチックシート2の研磨面をドレス処理する。研磨面のドレス処理実施時において、第1の軟質プラスチックシート2が圧縮された状態となるため、第1の軟質プラスチックシート2の凸部分、凹部分ともに均一に除去され、図7(d1)に示すように、研磨面と、第1の軟質プラスチックシート2の表面層に形成された微多孔4と、の位置関係が、均一になる。この結果、図7(d2)に示すように、ドレス処理により微多孔4を開口させた際に、研磨面における開口径5が均一になる。
【0048】
但し、研磨面のドレス処理により、研磨面における開口径が均一になるためには、第1の軟質プラスチックシート2と、第2の軟質プラスチックシート3と、を接合し、裏面のバフ処理を実施してから、研磨面のドレス処理を実施する必要がある。
図8(a)〜(d2)、および、図9(a)〜(d2)は、各々第1の軟質プラスチックシート2を、第2の軟質プラスチックシート3と接合することなしに、研磨面のドレス処理を実施した場合を示している。ここで、図8(a)〜(d2)は、特許文献8の研磨布のように、第1の軟質プラスチックシート2の圧縮率が低い場合を示しており、図9は(a)〜(d2)、本発明の研磨パッドのように、第1の軟質プラスチックシート2の圧縮率が高い場合を示している。図8(a)および図9(a)は研磨面のドレス処理実施前の状態、図8(d1)および図9(d1)は研磨面のドレス処理実施時の状態、図8(d2)および図9(d2)は研磨面のドレス処理実施後の状態を示している。図8(d1),(d2)、および、図9(d1),(d2)において、第1の軟質プラスチックシート2は、両面研磨装置の上下定盤12,14に取り付けた状態で示されている。
第2の軟質プラスチックシートと接合することなしに、圧縮率が低い第1の軟質プラスチックシート2の研磨面をドレス処理した場合、研磨面のドレス処理実施時において、第1の軟質プラスチックシート2が圧縮された状態とならないこと、および、第1の軟質プラスチックシート2の厚さが一様となるように裏面バフ処理を実施していないことにより、第2の軟質プラスチックシート3の裏面と、第1の軟質プラスチックシート2の研磨面と、が平行になり、図8(d1)に示すように、研磨面と、第1の軟質プラスチックシート2の表面層に形成された微多孔4と、の位置関係にばらつきが生じる。この結果、図8(d2)に示すように、研磨面のドレス処理により微多孔4を開口させた際に、研磨面における開口径5にばらつきが生じる。
一方、第2の軟質プラスチックシートと接合することなしに、圧縮率が高い第1の軟質プラスチックシート2の研磨面をドレス処理した場合、研磨面のドレス処理実施時において、第1の軟質プラスチックシート2が圧縮された状態となるが、第1の軟質プラスチックシート2の厚さが一様となるように裏面バフ処理を実施していないため、第1の軟質プラスチックシート2の凸部分と凹部分の差が大きいため凸部分と凹部分で圧力が異なり、結果として凸部分と凹部分の除去量が均一にはならず、図9(d1)に示すように、研磨面と、第1の軟質プラスチックシート2の表面層に形成された微多孔4と、の位置関係にばらつきが生じる。この結果、図9(d2)に示すように、ドレス処理により微多孔4を開口させた際に、研磨面における開口径5にばらつきが生じる。
【0049】
上述したように、研磨面のドレス処理では、ダイヤ微粒子を接着したドレス板(ダイヤ微粒子を平坦度のよい基板に接着したドレス板)、または、ダイヤ微粒子がボンド材の中に埋没されているダイヤモンドドレッサーを用いる。
ダイヤ微粒子としては、電着ダイヤ、メタルボンドダイヤ、レジンボンドダイヤ、ビトリファイドボンドダイヤ等を用いることができる。なかでも、電着ダイヤは表面の凹凸を小さく抑えやすく、またダイヤの脱落が稀少であり、脱落ダイヤが研磨パッドに残存してガラス基板の被研磨面に引掻き傷を発生させることが少ないので好ましい。ドレス板に用いる基板の材質としてはガラスエポキシ樹脂、ポリ塩化ビニル(PVC)、SUS等を用いることができるが、繊維の脱落がないPVC、SUSを用いることが好ましい。その平坦度は10μm以下であることが好ましい。
ダイヤ微粒子のサイズは限定されないが、ドレス処理の作業性と所望の最大高さ差Rhが得られるように#100〜#1200メッシュのものが好ましく、#300〜#1000メッシュのものがより好ましく、#300〜#600メッシュのものが特に好ましい。
また、ドレス板やダイヤモンドドレッサーのサイズや形状は、両面研磨装置10のキャリア20に対応して適宜決めることができ限定されない。例えば、形状としては円形または正方形が好ましく、サイズは30〜700mmの範囲を目安に径または辺の長さを決めることができる。
【0050】
上述したように、研磨面のドレス処理では、研磨パッド1の研磨面と、ドレス板またはダイヤモンドドレッサーと、の間にドレス液を供給する。
ドレス液としては、pH調整を行った純水や、各種機能水を用いることができる。ドレス液は、砥粒、水溶性高分子又は界面活性剤を含有してもよい。
【0051】
研磨面のドレス処理を実施する際、上下定盤からの荷重は特に限定されないが、3〜30kPaであることが好ましく、4〜20kPaであることがより好ましく、5〜10kPaであることがさらに好ましい。
【0052】
本発明では、上述した手順で裏面バフ処理および研磨面のドレス処理を実施することで、研磨面における開口径が均一になる。
本発明の基板研磨方法において、ガラス基板の研磨に使用する研磨パッドは、研磨面における平均開口径が5〜100μmであることが好ましく、5〜40μmであることがより好ましく、5〜30μmであることがさらに好ましく、10〜25μmであると特に好ましい。
研磨面における平均開口径が100μm超であると、研磨荷重の分布が生じ、所定の研磨品質を維持することが困難になるおそれがある。また、研磨面における平均開口径が5μm未満であると、研磨スラリーを保持してムラなく研磨することができなくなるおそれがある。
研磨面における平均開口径は、CCDカメラを用いて200倍の倍率で研磨面の画像を取り込み、得られた画像を2値化処理して算出することができる。具体的には、研磨パッドの外周部(例えば、研磨パッドの外縁から20mm以内の部分)で90度間隔4点と、研磨パッドの内周部(例えば、研磨パッドの内縁から20mm以内の部分)で90度間隔4点、計8点で研磨パッドの平均開口径を測定し、これらの測定結果から平均値を算出したものを平均開孔径とする。
ここで、上記の8点で測定した平均開口径の最大値と最小値との差が50μm以下であることが好ましく、40μm以下であることがより好ましく、30μm以下であることがさらに好ましい。
【0053】
本発明の基板研磨方法における好ましい態様を以下に示す。
【0054】
[基板]
本発明の基板研磨方法を用いて研磨するガラス基板は、EUVL光学基材用ガラス基板であることから、該ガラス基板を構成するガラスは、熱膨張係数が小さくかつそのばらつきの小さいガラスであることが好ましい。具体的には20℃における熱膨張係数が0±30ppb/℃の低膨張ガラスが好ましく、20℃における熱膨張係数が0±10ppb/℃の超低膨張ガラスがより好ましく、20℃における熱膨張係数が0±5ppb/℃の超低膨張ガラスがさらに好ましい。
上記低膨張ガラスおよび超低膨張ガラスとしては、SiO2を主成分とするガラス、典型的には石英ガラスが使用できる。具体的には例えばSiO2を主成分とし1〜12質量%のTiO2を含有する合成石英ガラス、ULE(登録商標:コーニングコード7972)を挙げることができる。ガラス基板は通常四角形状の板状体で研磨されるが、形状はこれに限定されない。
【0055】
[研磨スラリー]
上述したように、本発明における研磨スラリーとは、研磨粒子を含む流体である。
研磨粒子としては、コロイダルシリカ又は酸化セリウムなどが好ましい。コロイダルシリカを使用した場合には、より精密にガラス基板を研磨することが可能になり、その結果、より良好な精度で、凹状の欠陥が低減された又は除去されたガラス基板を得ることができるので、特に好ましい。
【0056】
コロイダルシリカを用いる場合、平均一次粒子径は、好ましくは、5nm以上100nm以下である。より好ましくは10nm以上50nm以下である。ここで、コロイダルシリカの平均一次粒子径が、5nm以上である場合には、ガラス基板の研磨効率を向上させることが可能になる。一方、コロイダルシリカの平均一次粒子径が、100nm以下である場合には、研磨スラリーを用いて研磨された基板の表面粗さを低減することが可能になる。
【0057】
研磨スラリーにおけるコロイダルシリカの含有率は、好ましくは、5質量%以上40質量%以下である。より好ましくは、10質量%以上30質量%以下である。研磨スラリーにおけるコロイダルシリカの含有率が、5質量%以上である場合には、ガラス基板の研磨効率を向上させることが可能になる。一方、研磨スラリーにおけるコロイダルシリカの含有率が、40質量%以下である場合には、研磨されたガラス基板の洗浄の効率を向上させることが可能になる。
【0058】
研磨スラリーにおける流体とは、研磨粒子の分散媒体である。分散媒としては、水、有機溶剤が挙げられ、水が好ましい。
【0059】
上記の研磨粒子および該研磨粒子の分散媒体を含む研磨スラリーとしては、pHが8以下のコロイダルシリカ水溶液を用いることが好ましい。
研磨粒子が凝集すると、ガラス基板上に付着しやすくなると考えられるが、研磨スラリーのpHが8を超えると、研磨粒子が付着していない部分のガラス基板の表面が、研磨スラリーによって溶解し、凸状の欠陥を生じさせるおそれがある。研磨スラリーのpHが8以下であることにより、このような凸状の欠陥は生じにくいものと考えられる。研磨スラリーのpHは7以下であることがより好ましい。pHは1〜4であることがさらに好ましい。
研磨スラリーのpHは、無機酸及び/又は有機酸を用い調整できる。例えば、無機酸としては、硝酸、硫酸、塩酸、過塩素酸、リン酸などが挙げられ、硝酸が好ましい。有機酸としては、シュウ酸、クエン酸などが挙げられる。
【0060】
[研磨条件]
本発明の基板研磨方法を実施する際、上下両定盤の研磨面による研磨荷重を0.1〜10kPaとすることが、ガラス基板を凹状欠点が少なく表面平滑性の優れる表面に研磨できることから好ましい。研磨荷重が0.1kPa未満では、研磨パッドの荷重制御が困難になるとともに、研磨効果が実質的に得られなくなるおそれがある。また、10kPaより大きい研磨荷重では、凹状欠点の発生を抑え表面粗さの改善を図ることが困難になる。0.1〜10kPaが好ましい。
また、本発明の基板研磨方法の実施時における研磨荷重は一定であってもよく、徐々にまたは段階的に変化させてもよい。例えば、研磨開始時は大きい荷重とし、徐々にまたは段階的に研磨荷重を下げ、研磨終了時は小さい荷重としてもよい。逆に、研磨開始時は小さい荷重とし、徐々にまたは段階的に研磨荷重を上げ、研磨終了時は大きい荷重としてもよい。
【0061】
本発明の基板研磨方法は、ガラス基板を研磨度の異なる複数の研磨工程で研磨するときの最後に行う仕上げ研磨として特に適している。このためガラス基板は、本発明の方法で研磨する前にあらかじめ所定の厚さに粗研磨し、端面研磨と面取り加工を行い、更にその両主表面を表面粗さ、および、平坦度が一定以下になるように予備研磨しておくことが好ましい。予備研磨方法は限定されないで公知の方法によってできる。例えば、複数の両面ラップ研磨機を連続して設置し、研磨材や研磨条件を変えながら該研磨機で順次研磨することにより、ガラス基板の両主表面を所定の表面粗さおよび平坦度に予備研磨できる。
予備研磨後の表面粗さ(Rms)としては、1nm以下が好ましく、0.5nm以下がより好ましい。予備研磨後の平坦度(P−V値)としては、1μm以下が好ましく、0.5μm以下がより好ましい。さらに好ましくは0.2μmである。
【実施例】
【0062】
以下に、実施例を用いて本発明を詳細に説明する。ただし、本発明はこれに限定されるものではない。
(実施例1)
図4に示す構造の研磨パッド1を下記手順で作成した。
市販の発泡ポリウレタン製の研磨パッド(商品名:KBP01(株式会社FILWEL製、圧縮率:3.0%、厚さ:0.6mm)を第2の軟質プラスチックシート3として使用し、第1の軟質プラスチックシート2として、微発泡のポリウレタンシート(商品名:250(フジボウ愛媛株式会社製)、 圧縮率:30%、厚さ:0.7mm)を上記の研磨パッドの裏面に接着剤で接合させて、図5に示す構造の研磨パッド1を作成した。
【0063】
次に、研磨パッド1の裏面バフ処理を下記手順で実施した。
裏面バフ処理
第1の軟質プラスチックシート2の研磨面側を圧接ローラーに圧接させながら、第1の軟質プラスチックシート2、および、第2の軟質プラスチックシート3の全体の厚さを一様になるように、第2の軟質プラスチックシート3の裏面側をダイヤモンドバフロールにより研削した。
【0064】
研磨面のドレス処理
次に、第2の軟質プラスチックシート3の裏面側、両面テープを用いて両面研磨装置(商品名:両面24B研磨機(浜井産業社製)の上下定盤に貼り合わせた後、両面研磨装置のキャリアにダイヤモンドドレッサー(電着ダイヤ)を設置し、下記条件で研磨面のドレス処理を実施した。
ドレス処理条件
上下定盤の回転数:10rpm
ドレス処理時間:60分
上下定盤からの荷重:4.9kPa
ドレス液:水
ドレス液流量:10リットル/min
【0065】
ドレス処理後の研磨面における平均開口径を下記手順で測定した。
研磨面における平均開口径
CCDカメラを用いて200倍の倍率で研磨面の画像を取り込み、得られた画像を2値化処理して算出した。具体的には、研磨パッドの外周部(研磨パッドの外縁から20mm以内の部分)で90度間隔4点と、研磨パッドの内周部(研磨パッドの内縁から20mm以内の部分)で90度間隔4点、計8点で研磨パッドの平均開口径を測定し、これらの測定結果から平均値を算出したものを平均開孔径とした。研磨面における平均開口径は20μmであった。また、上記の8点で測定した平均開口径の最大値と最小値との差は8μmであった。
【0066】
次に、両面研磨装置のキャリアにガラス基板(合成石英ガラス製(TiO27質量%含有)、152mm角(厚さ6.75mm)を設置し、下記条件でガラス基板の両主表面の研磨を実施した。
研磨条件
上下定盤の回転数:10rpm
研磨時間:60分
研磨荷重:4.9kPa
研磨スラリー:平均一次粒子径20nm未満のコロイダルシリカを純水(0.1μm以上異物濾過)に20質量%含有させたものを使用。
スラリー流量:10リットル/min
研磨終了後、ガラス基板を両面研磨装置のキャリアから取り出し、PVAスポンジによるスクラブ洗浄後、過酸化水素水、アルカリ洗剤、超純水に浸漬して超音波を印加し洗浄し、最後にIPAに浸漬し、高温で乾燥させた。洗浄後のガラス基板の両主表面の平坦度を、G310Sフィゾー型レーザ干渉式平坦度測定機(Fujinon社製)を用いて測定したところ平坦度は28nm、研磨前からの平坦度の変化量は27nmであった。
【0067】
(比較例1)
研磨面のドレス処理の代わりに、下記手順で研磨面のバフ処理を実施した以外は実施例1と同様の手順を実施した。
第2の軟質プラスチックシート3の裏面側を圧接ローラーに圧接させながら、第1の軟質プラスチックシート2の研磨面側をダイヤモンドバフロールにより研削した。
実施例1と同様の手順でガラス基板の両主表面の平坦度を測定したところ平坦度は111nm、研磨前からの平坦度の変化量は124nmであった。
【0068】
(比較例2)
裏面のバフ処理を実施せずに、研磨面のドレス処理を実施した以外は比較例1と同様の手順を実施した。
実施例1と同様の手順でガラス基板の両主表面の平坦度を測定したところ平坦度は145nm、研磨前からの平坦度の変化量は167nmであった。
【符号の説明】
【0069】
1:研磨パッド
2:第1の軟質プラスチックシート
3:第2の軟質プラスチックシート
4:微多孔
5:開口径
10:両面研磨装置
12:上定盤
12a:空洞
14:下定盤
14a:空洞
16:太陽歯車
18:内歯歯車
20:キャリア
22:ガラス基板
24:研磨パッド
30:研磨スラリー供給孔
102:定盤中心軸
104:キャリアの回転軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両面研磨装置の上下定盤に取り付けられた研磨パッドの研磨面で、キャリアに保持されたガラス基板を挟持し、上下両定盤の両研磨面の少なくとも一方に設けられている1つ、または、複数の供給孔から研磨粒子を含む流体を供給しつつ、前記上下定盤と、前記キャリアに保持された前記ガラス基板と、を相対的に移動させて前記ガラス基板の両主表面を研磨するEUVリソグラフィ(EUVL)光学基材用ガラス基板の研磨方法であって、
前記研磨パッドが、微多孔が形成された表面層を有し、圧縮率が20%以上である第1の軟質プラスチックシートと、前記第1の軟質プラスチックシートの前記研磨面の背面側に接合された、圧縮率が20%未満である第2の軟質プラスチックシートと、を備えており、前記第1及び第2の軟質プラスチックシートの全体の厚さが一様となるように、前記第2の軟質プラスチックシートの前記第1の軟質プラスチックシートが接合された反対面側をバフ処理した後、前記第2の軟質プラスチックシートのバフ処理された面を前記両面研磨装置の上下定盤の側にして、前記研磨パッドを該上下定盤に取り付けた状態で、前記第1の軟質プラスチックシートの前記表面層に形成された微多孔が開孔するように、前記研磨面側をドレス処理してから、前記ガラス基板の両主表面を研磨することを特徴とするEUVL光学基材用ガラス基板の研磨方法。
【請求項2】
前記研磨面側のドレス処理に、ダイヤ微粒子を接着したドレス板、または、ダイヤ微粒子がボンド材の中に埋没されているダイヤモンドドレッサーを用いる、請求項1に記載のEUVL光学基材用ガラス基板の研磨方法。
【請求項3】
前記第1の軟質プラスチックシートの厚さが0.2〜2mmであり、前記第2の軟質プラスチックシートの厚さが0.1〜1mmである、請求項1または2に記載のEUVL光学基材用ガラス基板の研磨方法。
【請求項4】
前記研磨パッドの前記第2の軟質プラスチックシートのバフ処理された面に、可撓性フィルム、不織布及び織布からなる群から選択される1種の基材を取り付けた後に、該研磨パッドを前記両面研磨装置の上下定盤に取り付ける、請求項1〜3のいずれかに記載のEUVL光学基材用ガラス基板の研磨方法。
【請求項5】
前記上下両定盤の研磨面による研磨荷重が0.1〜10kPaである、請求項1〜4のいずれかに記載のEUVL光学基材用ガラス基板の研磨方法。
【請求項6】
前記研磨パッドの平均開口径が5〜100μmである、請求項1〜5のいずれかに記載のEUVL光学基材用ガラス基板の研磨方法。
【請求項7】
前記研磨パッドの外周部90度間隔4点と、前記研磨パッドの内周部90度間隔4点、計8点で該研磨パッドの平均開口径を測定した際に、該平均開口径の最大値と最小値との差が50μm以下である、請求項6に記載のEUVL光学基材用ガラス基板の研磨方法。
【請求項8】
前記研磨粒子がコロイダルシリカまたは酸化セリウムである、請求項1〜7のいずれかに記載のEUVL光学基材用ガラス基板の研磨方法。
【請求項9】
表面粗さ(Rms)が1nm以下、平坦度(P−V値)が1μm以下となるように、ガラス基板の両主表面が予備研磨されている、請求項1〜8のいずれかに記載のEUVL光学基材用ガラス基板の研磨方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−43238(P2013−43238A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−181501(P2011−181501)
【出願日】平成23年8月23日(2011.8.23)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】