説明

サスペンション構造

【課題】コストを抑えるとともに、作動性を向上させることが可能なサスペンション構造を提供する。
【解決手段】左右一対の右クッションユニット、左クッションユニット101を備えるサスペンション構造であって、右クッションユニットを、圧縮コイルばねと右ダンパとから構成し、左クッションユニット101を、外径が圧縮コイルばねよりも小径で右ダンパよりも大径とされた左ダンパ140のみで構成した。左クッションユニット101は、左ダンパ140だけで構成され、圧縮コイルばねを備えていないため、構造が簡単になる。また、左クッションユニット101では、ストローク時に左ダンパ140が圧縮コイルばねと摺動しないため、フリクションが発生しない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サスペンション構造の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のサスペンション構造として、路面から車輪へ入力される振動や衝撃を弾性エネルギーに変換し、振動、衝撃を緩和する懸架スプリングと、この懸架スプリングの持つ弾性エネルギーを熱エネルギーに変換し、ばねの振動、衝撃を減衰させるダンパとからなる油圧緩衝器が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2000−145864公報
【0003】
特許文献1の図1を以下に説明する。
油圧緩衝器10は、車体側に図示せぬアッパーブラケット及びアンダーブラケットを介して取付けられるアウターチューブ1と、このアウターチューブ1内に摺動自在に挿入されて車軸ブラケット8を介して車輪側に取付けられるインナーチューブ2と、これらのアウターチューブ1及びインナーチューブ2のそれぞれの間に設けられた懸架スプリング3とを備え、アウターチューブ1及びインナーチューブ2がダンパ装置4の一部を構成している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、油圧緩衝器10のコストを下げようとした場合、構造の簡素化、部品数の削減が考えられる。2本の油圧緩衝器10で車軸を支持する場合、油圧緩衝器10に備える2つの機能、即ち振動衝撃吸収機能及び振動衝撃減衰機能を有していれば、2本の油圧緩衝器10の構造を同一にする必要がなく、構造の簡素化、部品数の削減が図れる。
【0005】
また、二輪のオフロード車に上記の油圧緩衝器10を使用する場合、油圧緩衝器10に長いストロークが必要になるが、油圧緩衝器10がストロークするときに、インナーチューブ2と懸架スプリング3とが摺動してフリクションが大きくなる。
【0006】
本発明の目的は、コストを抑えるとともに、作動性を向上させることが可能なサスペンション構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、左右一対の第1・第2クッションユニットを備えるサスペンション構造であって、第1クッションユニットを、振動、衝撃を緩和する圧縮コイルばねと、振動、衝撃を減衰させる第1ダンパとから構成し、第2クッションユニットを、外径が圧縮コイルばねよりも小径で第1ダンパよりも大径とされた振動、衝撃を減衰させる第2ダンパのみで構成したことを特徴とする。
【0008】
作用として、第2クッションユニットは、第2ダンパだけで構成され、圧縮コイルばねを備えていないため、構造が簡単になる。また、第2クッションユニットでは、ストローク時に第2ダンパが圧縮コイルばねと摺動しないため、フリクションが発生しない。
【0009】
請求項2に係る発明は、第2クッションユニットに、ディスクブレーキを構成するブレーキキャリパに備えるキャリパブラケットを設けたことを特徴とする。
作用として、第2クッションユニットは、キャリパブラケットの分だけ重量が増加し、圧縮コイルばねと第1ダンパとが設けられた第1クッションユニットの重量に近づく。
従って、左右でのバランスが良好になる。
【0010】
請求項3に係る発明は、第1・第2クッションユニットが、トップブリッジ及びボトムブリッジで連結されてフロントフォークを構成し、このフロントフォークを車体側に操舵自在に支持し、第1・第2クッションユニットにおけるそれぞれのトップブリッジで支持される上部支持部とボトムブリッジで支持される下部支持部とは外径が異なることを特徴とする。
【0011】
作用として、第1・第2クッションユニットのそれぞれのトップブリッジで支持される上部支持部とボトムブリッジで支持される下部支持部との外径を変更すれば、第1・第2クッションユニットのそれぞれの長さ方向で曲げ剛性が変更可能である。
【0012】
請求項4に係る発明は、第1・第2クッションユニットが、トップブリッジ及びボトムブリッジで連結されてフロントフォークを構成し、このフロントフォークを車体側に操舵自在に支持し、第1クッションユニットと第2クッションユニットとで、それぞれのトップブリッジで支持される上部支持部及びボトムブリッジで支持される下部支持部は外径が異なることを特徴とする。
【0013】
作用として、第1クッションユニットと第2クッションユニットとで、それぞれのトップブリッジで支持される上部支持部及びボトムブリッジで支持される下部支持部の外径を変更すれば、第1クッションユニットと第2クッションユニットとで曲げ剛性を変更可能である。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明では、左右一対の第1・第2クッションユニットを備えるサスペンション構造であって、第1クッションユニットを、圧縮コイルばねと第1ダンパとから構成し、第2クッションユニットを、外径が圧縮コイルばねよりも小径で第1ダンパよりも大径とされた第2ダンパのみで構成したので、第2クッションユニットが第2ダンパのみで構成されるため、構造が簡単になり、安価に出来て、コストを抑えることができる。
また、第2クッションユニットに圧縮コイルばねが設けられていないため、第2クッションユニットを低フリクションにすることができ、作動性を向上させることができる。
【0015】
請求項2に係る発明では、第2クッションユニットに、ディスクブレーキを構成するブレーキキャリパに備えるキャリパブラケットを設けたので、第2ダンパのみで構成された第2クッションユニットの重量がキャリパブラケットの分だけ増えるため、第2クッションユニットの重量を第1クッションユニットの重量に近づけることができ、第1・第2クッションユニットの重量バランスを向上させることができる。
【0016】
請求項3に係る発明では、第1・第2クッションユニットを、トップブリッジ及びボトムブリッジで連結してフロントフォークを構成し、このフロントフォークを車体側に操舵自在に支持し、第1・第2クッションユニットのそれぞれのトップブリッジで支持される上部支持部とボトムブリッジで支持される下部支持部とは外径が異なるので、例えば、第1・第2クッションユニットのそれぞれの長さ方向で曲げ剛性を変更することで、第1・第2クッションユニットでの曲げ剛性のバランスを向上させることができる。
【0017】
請求項4に係る発明では、第1・第2クッションユニットを、トップブリッジ及びボトムブリッジで連結してフロントフォークを構成し、このフロントフォークを車体側に操舵自在に支持し、第1クッションユニットと第2クッションユニットとで、それぞれのトップブリッジで支持される上部支持部及びボトムブリッジで支持される上部支持部は外径が異なるので、例えば、第1・第2クッションユニットの曲げ剛性の低い方で支持される上部支持部及び下部支持部のそれぞれの外径を大きくして曲げ剛性を高めて、第1・第2クッションユニットの曲げ剛性の高い方に曲げ剛性を近づけることができ、第1・第2クッションユニットでの曲げ剛性のバランスを向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
図1は本発明に係るサスペンション構造を備える車両の側面図であり、車両10は、車体フレーム11の前端部に、前輪12を支持するフロントフォーク13が操舵自在に取付けられ、車体フレーム11の中央部にエンジン14が配置され、車体フレーム11の下部後部に、後輪16を支持するリヤフォーク17がピボット軸18を介して上下スイング自在に取付けられた車両である。
【0019】
車体フレーム11は、前端に設けられてフロントフォーク13が回動自在に取付けられるヘッドパイプ21と、このヘッドパイプ21から後方斜め下方に延びる左右一対のメインフレーム22,23(手前側の符号22のみ示す。)と、これらのメインフレーム22,23のそれぞれの後端から下方に延びる左右一対のピボットプレート24,26(手前側の符号24のみ示す。)と、ヘッドパイプ21から下方に延びるダウンフレーム27と、これらのダウンフレーム27と左右のピボットプレート24,26のそれぞれを連結する左右一対のロアフレーム28,29と、ピボットプレート24,26のそれぞれの上端に取付けられたアッパブラケット31,32(手前側の符号31のみ示す。)から後方に延びる左右一対のシートレール33,34(手前側の符号33のみ示す。)と、これらのシートレール33,34の後端及びピボットプレート24,26の中間部のそれぞれに渡され取付けられた左右一対のサブフレーム36,37(手前側の符号36のみ示す。)とからなる。
【0020】
フロントフォーク13は、上部にバーハンドル41、前部にゼッケンプレート42、下部にディスクブレーキ43を構成するブレーキキャリパ44が取付けられている。
エンジン14は、後部に変速機46が一体的に設けられ、前部に上方に延びるシリンダ部47が設けられている。
【0021】
変速機46は、側部に出力軸51が設けられ、この出力軸51にドライブスプロケット52が取付けられ、ドライブスプロケット52には、後輪16に一体的に設けられたドリブンスプロケット53と共にチェーン54が掛けられている。
【0022】
シリンダ部47はシリンダヘッド56を備え、このシリンダヘッド56は、後部に吸気装置58が接続され、前部に排気装置61が接続されている。
吸気装置58は、シリンダヘッド56に接続された吸気管63と、この吸気管63に接続されたスロットルボディ64と、このスロットルボディ64にコネクティングチューブ66を介して接続されたエアクリーナ67とからなる。
排気装置61は、シリンダヘッド56に一端が接続された排気管71と、この排気管71の他端に接続されたマフラ72とからなる。
【0023】
ここで、81はフロントフェンダ、82はフロントフォーク13の下部前部を覆うプロテクタ、83はラジエータ、84は燃料タンク、86はシート、87はリヤフェンダ、91は上端がアッパブラケット31,32側に連結され、下端がリンク機構92を介してリヤフォーク17及びピボットプレート24,26側に連結されたリヤクッションユニットである。
【0024】
図2は本発明に係るフロントフォークの正面図であり、フロントフォーク13は、左クッションユニット101と、右クッションユニット102と、これらの左クッションユニット101及び右クッションユニット102のそれぞれを連結するトップブリッジ103及びボトムブリッジ104と、これらのトップブリッジ103及びボトムブリッジ104のそれぞれの中央に取付けられたステアリングステム106とからなり、ステアリングステム106がヘッドパイプ21に回動自在に取付けられる。なお、111,112はトップブリッジ103にステアリングステム106を固定するためのワッシャ及びナット、113は前輪用車軸である。
上記左クッションユニット101と右クッションユニット102とは、少なくとも内部構造と、前輪用車軸113を支持する部分とが異なる。詳細は図3及び図4で説明する。
【0025】
図3(a),(b)は本発明に係る左クッションユニットの断面図であり、(a)は左クッションユニット101の上部、(b)は左クッションユニット101の下部を示している。
(a),(b)において、左クッションユニット101は、上部に設けられたアウタチューブ121と、このアウタチューブ121の上端部内面にねじ結合されるとともにアウタチューブ121の内側に配置されたアッパチューブ122と、このアッパチューブ122の下部に取付けられたロアチューブ123と、アウタチューブ101に移動自在に嵌合されるとともにアウタチューブ101から下方に延びるインナチューブ124と、前輪用車軸113(図2参照)を支持するためにインナチューブ124の下端に取付けられた車軸支持部126と、この車軸支持部126に下端が取付けられるとともに上方に延びる中空のインナロッド127と、このインナロッド127の上端に取付けられるとともにロアチューブ123内に摺動自在に配置されたピストン131と、ロアチューブ123の下端部を塞ぐ下部軸封部材132と、アッパチューブ122の上端部内面にねじ結合されてアッパチューブ122の上端部を塞ぐ上部軸封部材133と、この上部軸封部材133から下方に延びる中空のアッパロッド134と、このアッパロッド134の下端に取付けられたアッパサブピストン136と、アッパロッド134に移動自在に嵌合するとともに圧縮コイルばね137で付勢されるフローティングピストン138と、内部に注入された作動油(不図示)とを備える倒立型のものである。
【0026】
車軸支持部126は、ブレーキキャリパ44(図1参照)を構成するキャリパブラケット139を一体に形成したものである。なお、126aは前輪用車軸113を通すために車軸支持部126に開けられた車軸挿通穴、139a,139bはブレーキキャリパ44を構成するキャリパボディ(不図示)を取付けるためにキャリパブラケット139に開けられた取付穴である。
【0027】
上記の左クッションユニット101のうち、アウタチューブ121及びインナチューブ124を除く部分、即ち、ピストン131、アッパサブピストン136、フローティングピストン138及び減衰力調整用ロッド141(詳細は後述する。)により圧縮側減衰力又は伸び側減衰力を発生させる部分は、左ダンパ140を構成している。
即ち、左クッションユニット101には、アウタチューブ121側とインナチューブ124側とに渡される振動、衝撃を緩和する圧縮コイルばねを有していない。
【0028】
アウタチューブ121におけるトップブリッジ103との嵌合部分である円筒状の左上部嵌合部121aの外径をDL1、アウタチューブ121におけるボトムブリッジ104との嵌合部分である円筒状の左下部嵌合部121bの外径をDL2とすると、DL2>DL1となり、左上部嵌合部121aから左下部嵌合部121bまでの間の外径は次第に拡径するテーパ状に形成され、左下部嵌合部121bからアウタチューブ121の下端までの外径は次第に縮径するテーパ状に形成されている。なお、図中のDL3はロアチューブ123の外径である。
【0029】
図では、左クッションユニット101が伸び切った状態にある。この状態から左クッションユニット101を圧縮すると、ロアチューブ123に対してピストン131が上昇し、ピストン131に備える圧縮側リーフバルブが作動油によって開かれるときに圧縮側減衰力が発生する。このとき、ロアチューブ123内にはインナロッド127が進入するため、インナロッド127が進入した体積分だけロアチューブ123内の作動油がアッパサブピストン136に備える圧縮側リーフバルブを開いて通過し、アッパチューブ122内に流入し、フローティングピストン138を上方に移動させるため、ここでも圧縮側減衰力が発生する。
【0030】
また、圧縮された左クッションユニット101が伸びる場合には、ロアチューブ123に対してピストン131が下降するため、ピストン131に備える伸び側リーフバルブが作動油によって開かれるときに伸び側減衰力が発生する。このとき、ロアチューブ123内からインナロッド127が退出するため、インナロッド127が退出した体積分だけアッパチューブ122内の作動油がアッパサブピストン136に備える伸び側リーフバルブを開いて通過し、ロアチューブ123内に流入し、フローティングピストン138が下方に移動するため、ここでも伸び側減衰力が発生する。
【0031】
更に、左クッションユニット101は、上部軸封部材133及びアッパロッド134内に減衰力調整用ロッド141が回転自在且つ上下移動自在に配置され、減衰力調整用ロッド141を回すことで減衰力調整用ロッド141の先端に設けられたニードルバルブ141aが作動油の流路を上下して流路の断面積を変更し、左クッションユニット101が伸縮するときにアッパサブピストン136を通過する作動油の流量が制御され、減衰力が調整される。
【0032】
本発明は、左クッションユニット101に、ディスクブレーキ43(図1参照)を構成するブレーキキャリパ44(図1参照)に備えるキャリパブラケット139を設けたので、左ダンパ140のみで構成された左クッションユニット101の重量がキャリパブラケット139の分だけ増えるため、左クッションユニット101の重量を右クッションユニット102の重量に近づけることができ、右クッションユニット102と左クッションユニット101の重量バランスを向上させることができる。
【0033】
図4(a),(b)は本発明に係る右クッションユニットの断面図であり、(a)は右クッションユニット102の上部、(b)は右クッションユニット102の下部を示している。図3に示した左クッションユニット101と同一構成については同一符号を付け、詳細説明は省略する。
(a),(b)において、右クッションユニット102は、上部に設けられたアウタチューブ151と、このアウタチューブ151の上端部内面にねじ結合されるとともにアウタチューブ151の内側に配置されたアッパチューブ152と、このアッパチューブ152の下部に取付けられたロアチューブ153と、アウタチューブ151に移動自在に嵌合されるとともにアウタチューブ151から下方に延びるインナチューブ124と、前輪用車軸113(図2参照)を支持するためにインナチューブ124の下端に取付けられた車軸支持部156と、この車軸支持部156に下端が取付けられるとともに上方に延びる中空のインナロッド127と、このインナロッド127の上端に取付けられるとともにロアチューブ153内に摺動自在に配置されたピストン161と、ロアチューブ153の下端部を塞ぐ下部軸封部材162と、アッパチューブ152の上端部内面にねじ結合されてアッパチューブ152の上端部を塞ぐ上部軸封部材133と、アッパロッド134と、アッパサブピストン136と、フローティングピストン138と、一端がロアチューブ153側に支持されるとともに他端が車軸支持部156側に支持される圧縮コイルぱね169と、内部に注入された作動油(不図示)とを備える倒立型の油圧緩衝器である。なお、156aは前輪用車軸113を通すために車軸支持部156に開けられた車軸挿通穴である。
【0034】
即ち、右クッションユニット102には、アウタチューブ151側とインナチューブ124側とに渡された圧縮コイルばね169と、アウタチューブ151、インナチューブ124及び圧縮コイルばね169以外の部分、即ち、ピストン161、アッパサブピストン136、フローティングピストン138及び減衰力調整用ロッド141により圧縮側減衰力又は伸び側減衰力を発生させる部分からなる右ダンパ170とを備えている。
【0035】
アウタチューブ151におけるトップブリッジ103との嵌合部分である円筒状の右上部嵌合部151aの外径をDR1、アウタチューブ151におけるボトムブリッジ104との嵌合部分である円筒状の右下部嵌合部151bの外径をDR2とすると、DR2>DR1となり、右上部嵌合部151aから右下部嵌合部151bまでの間の外径は次第に拡径するテーパ状に形成され、右下部嵌合部151bからアウタチューブ151の下端までの外径は次第に縮径するテーパ状に形成されている。
【0036】
また、図3(a)に示したアウタチューブ121の左上部嵌合部121aの外径DL1、左下部嵌合部121bの外径DL2と上記外径DR1,DR2を比較すると、DL1=DR1、DL2=DR2となる。
【0037】
また、例えば、左クッションユニット101の曲げ剛性を右クッションユニット102の曲げ剛性よりも大きくする場合は、DL1>DR1及びDL2>DR2とし、右クッションユニット102の曲げ剛性を左クッションユニット101の曲げ剛性よりも大きくする場合は、DR1>DL1及びDR2>DL2とする。
【0038】
図中のDR3はロアチューブ153の外径、DR4は圧縮コイルばね169の外径である。図3に示したロアチューブ123の外径DL3と、ロアチューブ153の外径DR3を比較すると、DL3>DR3となる。また、外径DL3は圧縮コイルばね169の外径DR4に対して、DL3≦DR4であり、DL3>DR3である。
【0039】
このように、左クッションユニット101は圧縮コイルばねを持たないので、左ダンパ140の外径、例えば、ロアチューブ123の外径DL3を、右ダンパ170、例えば、ロアチューブ153の外径DR3よりも大きくする、具体的には、圧縮コイルばね169の外径DR4まで大きくすることができ、左ダンパ140の減衰力を右ダンパ170の減衰力よりも大きくすることができる。
【0040】
図では、右クッションユニット102が伸び切った状態にある。この状態から右クッションユニット102を圧縮すると、ロアチューブ153に対してピストン161が上昇し、ピストン161に備える圧縮側リーフバルブが作動油によって開かれるときに圧縮側減衰力が発生する。このとき、ロアチューブ153内にはインナロッド127が進入するため、インナロッド127が進入した体積分だけロアチューブ153内の作動油がアッパサブピストン136に備える圧縮側リーフバルブを開いて通過し、アッパチューブ152内に流入し、フローティングピストン138を上方に移動させるため、ここでも圧縮側減衰力が発生する。
【0041】
また、圧縮された右クッションユニット102が伸びる場合には、ロアチューブ153に対してピストン161が下降するため、ピストン161に備える伸び側リーフバルブが作動油によって開かれるときに伸び側減衰力が発生する。このとき、ロアチューブ153内からインナロッド127が退出するため、インナロッド127が退出した体積分だけアッパチューブ152内の作動油がアッパサブピストン136に備える伸び側リーフバルブを開いて通過し、ロアチューブ153内に流入し、フローティングピストン138が下方に移動するため、ここでも伸び側減衰力が発生する。
更に、右クッションユニット102は、左クッションユニット101と同様に、減衰力調整用ロッド141を回すことで減衰力が調整される。
【0042】
以上の図3及び図4において、本発明は、左右一対の第1・第2クッションユニットとしての右クッションユニット102及び左クッションユニット101を備えるサスペンション構造であって、右クッションユニット102を、圧縮コイルばね169と第1ダンパとしての右ダンパ170とから構成し、左クッションユニット101を、外径DL3が圧縮コイルばね169の外径DR4と同径若しくは圧縮コイルばね169の外径DR4よりも小径で右ダンパ170の外径DR3よりも大径とされた左ダンパ140のみで構成したので、左クッションユニット101が左ダンパ140のみで構成されるため、構造が簡単になり、安価に出来て、コストを抑えることができる。
【0043】
また、左クッションユニット101に圧縮コイルばねが設けられていないため、左クッションユニット101を低フリクションにすることができ、作動性を向上させることができる。
【0044】
本発明は、右クッションユニット102、左クッションユニット101を、トップブリッジ103及びボトムブリッジ104で連結してフロントフォーク13を構成し、このフロントフォーク13を車体側に操舵自在に支持し、右クッションユニット102及び左クッションユニット101のそれぞれのトップブリッジ103で支持される上部支持部としての右上部嵌合部151a、左上部嵌合部121aと、ボトムブリッジ104で支持される下部支持部としての右下部嵌合部151b、左下部嵌合部121bとは外径が異なるようにすることで、例えば、右クッションユニット102と左クッションユニット101とのそれぞれの長さ方向で曲げ剛性を変更することで、右クッションユニット102と左クッションユニット101とでの曲げ剛性のバランスを向上させることができる。
【0045】
また、本発明は、右クッションユニット102、左クッションユニット101を、トップブリッジ103及びボトムブリッジ104で連結してフロントフォーク13を構成し、このフロントフォーク13を車体側に操舵自在に支持し、右クッションユニット102と左クッションユニット101とで、それぞれのトップブリッジ103で支持される右上部嵌合部151aと左上部嵌合部121aと、ボトムブリッジ104で支持される右下部嵌合部151bと左下部嵌合部121bとではそれぞれ外径が異なるようにすることで、例えば、右クッションユニット102及び左クッションユニット101の曲げ剛性の低い方の支持される右上部嵌合部151a又は左上部嵌合部121a、及び右下部嵌合部151b又は左下部嵌合部121bの外径を大きくして曲げ剛性を高めて、右クッションユニット102及び左クッションユニット101の曲げ剛性の高い方に曲げ剛性を近づけることができ、右クッションユニット102と左クッションユニット101とでの曲げ剛性のバランスを向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明のサスペンション構造は、二輪車に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明に係るサスペンション構造を備える車両の側面図である。
【図2】本発明に係るフロントフォークの正面図である。
【図3】本発明に係る左クッションユニットの断面図である。
【図4】本発明に係る右クッションユニットの断面図である。
【符号の説明】
【0048】
10…車両、13…フロントフォーク、43…ディスクブレーキ、44…ブレーキキャリパ、101…第2クッションユニット(左クッションユニット)、102…第1クッションユニット(右クッションユニット)、103…トップブリッジ、104…ボトムブリッジ、121a,151a…上部支持部(左上部嵌合部)、121b,151b…下部支持部(左下部嵌合部)、139…キャリパブラケット、140…第2ダンパ(左ダンパ)、169…圧縮コイルぱね、170…第1ダンパ(右ダンパ)、DL1,DL2,DR1,DR2…外径、DL3…第2ダンパの外径、DR3…第1ダンパの外径、DR4…圧縮コイルばねの外径。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右一対の第1・第2クッションユニットを備えるサスペンション構造であって、
前記第1クッションユニットは、振動、衝撃を緩和する圧縮コイルばねと、振動、衝撃を減衰させる第1ダンパとから構成され、前記第2クッションユニットは、外径が前記圧縮コイルばねよりも小径で前記第1ダンパよりも大径とされた振動、衝撃を減衰させる第2ダンパのみで構成されることを特徴とするサスペンション構造。
【請求項2】
前記第2クッションユニットは、ディスクブレーキを構成するブレーキキャリパに備えるキャリパブラケットが設けられることを特徴とする請求項1記載のサスペンション構造。
【請求項3】
前記第1・第2クッションユニットは、トップブリッジ及びボトムブリッジで連結されてフロントフォークを構成し、このフロントフォークが車体側に操舵自在に支持され、
前記第1・第2クッションユニットにおけるそれぞれの前記トップブリッジで支持される上部支持部と前記ボトムブリッジで支持される下部支持部とは外径が異なることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のサスペンション構造。
【請求項4】
前記第1・第2クッションユニットは、トップブリッジ及びボトムブリッジで連結されてフロントフォークを構成し、このフロントフォークが車体側に操舵自在に支持され、
第1クッションユニットと第2クッションユニットとで、それぞれのトップブリッジで支持される上部支持部及びボトムブリッジで支持される下部支持部は外径が異なることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のサスペンション構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2008−265534(P2008−265534A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−111551(P2007−111551)
【出願日】平成19年4月20日(2007.4.20)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】