説明

スパークプラグ

【課題】気密性に優れたスパークプラグを提供すること。
【解決手段】本発明のスパークプラグ1は、中心電極11と、絶縁碍子と、中心電極11との間に火花放電ギャップ140を形成する接地電極14と、第一ハウジング15と、副燃焼室22を形成する第二ハウジング16とを有する。第一ハウジング15は、該第一ハウジング15を第二ハウジング16の内側に螺合する際に締付工具を係合するための第一係合部151を有している。第二ハウジング16は、該第二ハウジング16を内燃機関2に螺合する際に取付工具を係合するための第二係合部161を有している。第一係合部151は、スパークプラグ1の軸方向に直交する方向の断面形状である第一断面形状が8角以上12角以下の多角形である。第一断面形状の外接円は、第二係合部161におけるスパークプラグ1の軸方向に直交する方向の断面形状である第二断面形状の外接円よりも小さい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関用のスパークプラグに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、コージェネレーション等の内燃機関に配設され、燃焼室における着火手段として用いられる、スパークプラグが知られている(例えば、特許文献1参照)。
図12に示すように、該スパークプラグ9は、中心電極(図示略)と、該中心電極を挿通保持する絶縁碍子912と、上記中心電極に対向配置され該中心電極との間に火花放電ギャップ(図示略)を形成する接地電極(図示略)とを有する。また、スパークプラグ9は、絶縁碍子912を挿通保持する第一ハウジング915と、第一ハウジング915の先端部に螺着されるとともに内側に上記火花放電ギャップを配置する副燃焼室922を形成する第二ハウジング916とを有する。
【0003】
そして、第一ハウジング915は、図12、図13に示すように、スパークプラグ9の軸方向に直交する方向の断面形状が6角形状の第一係合部914と、該第一係合部914の基端側において絶縁碍子912をかしめるかしめ部918とを有している。
また、第二ハウジング916は、スパークプラグ9の軸方向に直交する方向の断面形状が6角形状の第二係合部917を有している。そして、第二係合部917を取付工具によって締め付けることにより、スパークプラグ9を内燃機関に取り付ける。
【0004】
かかるスパークプラグ9においては、主燃焼室921内において燃料と空気とを混合してなる混合ガスを副燃焼室922に導入するとともに、上記火花放電ギャップにおいて火花放電を行うことにより混合ガスに着火し、副燃焼室922内で火炎を発生させる。
次いで、副燃焼室922から主燃焼室921に火炎ジェットを噴出させ、主燃焼室921全体に火炎を広げる。
これにより、燃焼速度の大きい内燃機関を構成することができる。
【0005】
【特許文献1】特開昭53−126412号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、かかる従来のスパークプラグ9においては、特に燃焼圧力の高い内燃機関に用いる際に以下のような問題点がある。すなわち、図13に示すように、第一係合部914の最も薄くなる部分の肉厚dを十分に確保することが困難となり、ひいてはかしめ部918の肉厚を確保することが困難となるおそれがある。そしてそのため、かしめ部918の剛性を十分に確保することが困難となり、かしめ部918によるかしめ力が低下してしまうおそれがある。
【0007】
そこで、第一係合部914の外形を大きくすることにより、肉厚dを確保することが考えられる。
ところが、かかる場合には、第一係合部914の外接円A1が大きくなり、場合によっては、第二系係合部917を締め付ける際に上記取付工具と第一係合部914とが干渉するおそれがある。
一方、絶縁碍子912を挿通するための挿通孔919の径を小さくすることも考えられるが、かかる場合には、絶縁碍子912が挿通孔919に挿通できなくなるおそれがある。
【0008】
このように、従来のスパークプラグ9においては、第一係合部914、ひいてはかしめ部918の肉厚を大きくすること困難となり、かしめ部918の剛性を十分に得ることが困難となるおそれがある。このため、かしめ部918によって絶縁碍子912を十分にかしめることが困難となるおそれがある。
その結果、特に燃焼圧力の高い内燃機関に用いるものとして十分な気密性を有するスパークプラグ9を得ることが困難となってしまうおそれがある。
【0009】
本発明は、かかる従来の問題点に鑑みてなされたもので、気密性に優れたスパークプラグを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第一の発明は、中心電極と、該中心電極を挿通保持する絶縁碍子と、上記中心電極に対向配置され該中心電極との間に火花放電ギャップを形成する接地電極と、上記絶縁碍子を挿通保持する第一ハウジングと、該第一ハウジングの先端部に螺着されるとともに内側に上記火花放電ギャップを配置する副燃焼室を形成する第二ハウジングとを有する内燃機関用のスパークプラグであって、
上記第一ハウジングは、該第一ハウジングを上記第二ハウジングの内側に螺合する際に締付工具を係合するための第一係合部と、該第一係合部の基端側において上記絶縁碍子をかしめるかしめ部とを有しており、
上記第二ハウジングは、該第二ハウジングを上記内燃機関に螺合する際に取付工具を係合するための第二係合部を有しており、
上記第一係合部は、上記スパークプラグの軸方向に直交する方向の断面形状である第一断面形状が8角以上12角以下の多角形であり、
上記第一断面形状の外接円は、上記第二係合部における上記スパークプラグの軸方向に直交する方向の断面形状である第二断面形状の外接円よりも小さいことを特徴とする内燃機関用のスパークプラグにある(請求項1)。
【0011】
本発明の作用効果について説明する。
上記第一係合部は、上記スパークプラグの軸方向に直交する方向の断面形状である第一断面形状が8角以上12角以下の多角形である。このように第一断面形状を8角以上12角以下の多角形状とすることで、第一係合部の肉厚を大きくすることができ(後述する実施例1における作用効果参照)、第一ハウジングの基端部の肉厚を大きくすることができる。そしてこれにより、第一ハウジングの基端部の剛性を増大させることができる。このため、第一ハウジングの基端部を十分な力で変形させてかしめ部を形成すれば、これにより絶縁碍子を十分にかしめることができる。そのため、第一ハウジングから絶縁碍子が抜けるときの力の大きさである碍子抜け強度を大きくすることができ、気密性に優れたスパークプラグを得ることができる。
【0012】
さらに、上記第一断面形状の外接円は、上記第二係合部における上記スパークプラグの軸方向に直交する方向の断面形状である第二断面形状の外接円よりも小さい(図6参照)。したがって、取付工具によって第二係合部を締め付けることにより、スパークプラグを容易に内燃機関に取り付けることができる。すなわち、第二係合部に係合させる取付工具は、第二係合部の外形と略同形状の内形を有するため、これを用いて第二係合部を締め付ける際には、取付工具の内形の内接円、すなわち第二断面形状の内接円よりも第一断面形状の外接円の方が大きい場合には取付工具が干渉してしまうことがある。これに対し、本発明のように第一断面形状の外接円を第二断面形状の外接円よりも小さくすることにより、第一断面形状の外接円を取付工具の内接円よりも小さくしやすくすることができ、上記のような干渉を生じにくくすることができる。その結果、スパークプラグを容易に燃機関に取り付けることができる。
【0013】
また、上記構成とすれば、取付工具によって第二係合部を締め付けることにより、スパークプラグを内燃機関に取り付けることができる。すなわち、スパークプラグを内燃機関に取り付ける際の過大なトルクは第二係合部に作用させることができ、第一係合部に作用させる必要がない。このため、第一ハウジングにおいてねじ切れ等の不具合が生じることを十分に抑制することができる。
【0014】
以上のとおり、本発明によれば、気密性に優れたスパークプラグを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明(請求項1)において、上記スパークプラグは、後述するように(請求項4)コージェネレーション等のガスエンジンにおける着火手段として用いられるほか、例えば自動車のエンジン等の内燃機関における着火手段として用いることもできる。
【0016】
なお、第一断面形状が8角未満である場合には、第一係合部の肉厚を十分に確保することが困難となり、本発明の作用効果を十分に発揮することが困難となるおそれがある。
また、第一断面形状が12角を超える場合には、平坦部分が小さくなるため締付工具と係合する部分である平坦部の幅が小さくなるため、第一係合部において取付工具が滑りやすくなるおそれがある。その結果、十分なトルクにて第一ハウジングを第二ハウジングに締め付けることが困難となるおそれがある。
【0017】
また、上記第一断面形状の外接円は、上記第二断面形状の内接円よりも小さいことが好ましい(請求項2)。
この場合には、取付工具によって第二係合部を締め付けることにより、スパークプラグを確実に内燃機関に取り付けることができる。すなわち、上記のように第一断面形状の外接円を第二断面形状の内接円よりも小さくすることにより、取付工具の干渉を確実に防いで、スパークプラグを確実に内燃機関に取り付けることができる。
【0018】
また、上記第一係合部は、上記第一断面形状における外接円が、上記第二断面形状における外接円の90%以下の直径であることが好ましい(請求項3)。
この場合には、第二断面形状の外接円、ひいてはその内接円に対して第一断面形状の外接円を十分に小さくすることができ、取付工具にて第二係合部を締め付ける際に取付工具の内側と第一係合部とが干渉することを十分に防ぐことができる。これにより、第二ハウジングを内燃機関に確実に締め付けることができる。
【0019】
また、上記第一係合部は、最も薄くなる部分の肉厚が1.5〜2.0mmであることが好ましい(請求項4)。
この場合には、気密性に十分優れたスパークプラグを得ることができる。すなわち、上記のように第一係合部の肉厚を十分に確保することにより、かしめ部の肉厚を確保することができる。これにより、絶縁碍子を十分な力でかしめることができ、ひいては、十分な碍子抜け強度を得ることができる。その結果、気密性に十分優れたスパークプラグを得ることができる。
【0020】
一方、上記肉厚が1.5mm未満である場合には、気密性に優れたスパークプラグを得ることが困難となるおそれがある。
また、上記肉厚が2.0mmを超える場合には、第一ハウジングの剛性が大きくなりすぎてかしめ部を形成しにくくなり、十分なかしめ力を得ることが困難となるおそれがある。
【0021】
また、最高燃焼圧力が15MPa以上の発電用ガスエンジンに用いられていてもよい(請求項5)。
このような燃焼圧力の高い発電用ガスエンジンに用いられるスパークプラグは、特に高い気密性が要求されるため、本発明の作用効果を効果的に発揮させることができる。
【0022】
また、上記第二ハウジングは、上記内燃機関に螺合するための外周ねじ部のねじ径をM18とすることができる(請求項6)。
この場合には、燃焼圧の高い内燃機関に適したスパークプラグとなるため、本発明の作用効果を効果的に発揮させることができる。
【実施例】
【0023】
(実施例1)
本発明の実施例に係る内燃機関用のスパークプラグについて、図1〜図7を用いて説明する。
本例のスパークプラグ1は、図1〜図4に示すように、中心電極11と、該中心電極11を挿通保持する絶縁碍子12と、中心電極11に対向配置され該中心電極11との間に火花放電ギャップ140を形成する接地電極14とを有する。
また、スパークプラグ1は、絶縁碍子12を挿通保持する第一ハウジング15と、第一ハウジング15の先端部に螺着されるとともに内側に火花放電ギャップ140を配置する副燃焼室22を形成する第二ハウジング16とを有する。
【0024】
第一ハウジング15は、図1〜図5に示すように、第一ハウジング15を第二ハウジング16の内側に螺合する際に締付工具451を係合するための第一係合部151と、該第一係合部151の基端側において絶縁碍子12をかしめるかしめ部152とを有している。
また、第二ハウジング16は、図1〜図4、図6に示すように、第二ハウジング16を内燃機関2に螺合する際に取付工具461を係合するための第二係合部161を有している。
【0025】
第一係合部151は、スパークプラグ1の軸方向に直交する方向の断面形状である第一断面形状150が8角以上12角以下の多角形である。
本例においては、図6に示すように、第一係合部151の第一断面形状150は12角としてある。
【0026】
そして、図1〜図3、図6に示すように、第一断面形状150の外接円(図6における符号A1参照)は、第二係合部161におけるスパークプラグ1の軸方向に直交する方向の断面形状である第二断面形状160の外接円(図6における符号B1参照)よりも小さい。さらに本例においては、第一断面形状150の外接円A1は、第二断面形状160の内接円(図6における符号B2参照)よりも小さくなるよう構成してある。
【0027】
なお、上記とは異なり、第一断面形状150の外接円A1は、第二断面形状160の外接円B1よりも小さく、かつ、第二断面形状160の内接円B2よりも大きくすることもできる。この場合でも、取付工具461と第一係合部151との遊びの大きさによっては、取付工具461の干渉を防ぐことができる。
【0028】
本例のスパークプラグ1について詳細に説明する。
スパークプラグ1は、上述したように、第一ハウジング15と第二ハウジング16との間に形成された副燃焼室22を有するスパークプラグである。
また、本例のスパークプラグ1は、コージェネレーションの発電用ガスエンジンにおける着火手段として用いられるスパークプラグであり、より具体的には、最高燃焼圧力が15MPa以上の発電用ガスエンジンに用いられるものである。
【0029】
そしてまた、スパークプラグ1は、図1〜図3に示すように、中心電極11と接地電極14と絶縁碍子12と第一ハウジング15とからなるプラグ本体部3と、第二ハウジング16とからなる。
上述したように中心電極11に対向配置される接地電極14は、例えば、溶接等によって第一ハウジング15に取り付けられている。
【0030】
接地電極14及び中心電極11は、図4に示すように、互いの対向部を貴金属チップ141、111によって構成してなる。
なお、これらの貴金属チップ141、111は、例えば、白金(Pt)、イリジウム(Ir)、あるいはこれらの合金(Pt−Rh、Ir−Rh等)によって構成することができる。
【0031】
また、接地電極14の貴金属チップ141は、その中心が、接地電極14の母材に搭載されている。
これにより、図4に示すように、接地電極14の貴金属チップ141は、中心電極11の貴金属チップ111と対向した状態で配置される。
【0032】
また、図1〜図3、図5に示すように、第一ハウジング15における、第一係合部151よりも基端側においては、第一ハウジング15の基端部を絶縁碍子12に向かってかしめてなるかしめ部152が形成されている。
【0033】
また、絶縁碍子12に形成された大径部121と上記かしめ部152との間には、図5に示すように、粉末状のタルク171が軸方向の両側に配されたリング172に挟まれた状態で配設されている。
そして、タルク171は、かしめ部152によって十分に押圧されて、第一ハウジング15と絶縁碍子12との間の気密性を確保している。
【0034】
また、第一係合部151は、図6に示すように、第一断面形状150における外接円A1が、第二断面形状160における外接円B1の90%以下の直径である。
また、第一係合部151における最も薄くなる部分の肉厚dを十分に確保するため、上記外接円A1の直径は上記外接円B1の直径の70%以上であることが好ましい。
なお、例えば、挿通孔153の直径が17.45mmである場合には、第一断面形状150の内接円A2の直径を21mm以上にすることにより、15MPa以上30MPa未満の異常燃焼等による燃焼最大圧力に耐えることができるようになる。
【0035】
第一係合部151は、最も薄くなる部分の肉厚dを1.5〜2.0mmとすることができる。
なお、上記肉厚dは、図5、図6に示すように、第一係合部151の外表面から、第一ハウジング15の内側に形成され絶縁碍子12を挿通するための挿通孔153までの最短距離となる。より具体的には、第一係合部151における内接円A2の半径から、挿通孔153の半径を引いた値が肉厚dとなる。
【0036】
第二ハウジング16は、内燃機関2に螺合するための外周ねじ部163のねじ径がM18である。
また、図7に示すように、第二ハウジング16は、先端部にその内側と外側とを貫通する貫通孔164を、複数設けてなる。
【0037】
そして、貫通孔164の一つは、スパークプラグ1の中心軸上に配される、第二ハウジング16の先端部の中央に形成されている。
また、他の4つの貫通孔164は、この中央の貫通孔164の周囲において斜め先端方向に向かって放射状に貫通して形成されている。
【0038】
また、これらの放射状の貫通孔164は、図7に示すように、スパークプラグ1の軸方向から見た形成方向についても、第二ハウジング16の径方向よりも周方向に傾斜した方向に形成されている。これにより、貫通孔164から噴出する火炎が主燃焼室21内において渦を巻くように広がりやすくなる。
【0039】
本例のスパークプラグ1による混合ガスの着火方法について説明する。
まず、図示しない噴射弁より内燃機関2の主燃焼室21内に、ガス燃料を噴出させて空気と十分に混合させて混合ガスを生成する。
かかる混合ガスは、内燃機関2の圧縮工程時に第二ハウジング16の先端部に形成された貫通孔164から第二ハウジング16の内側へと流入する。
【0040】
次いで、中心電極11に高電圧をかける。これにより、中心電極11の貴金属チップ111から接地電極14の貴金属チップ141へと飛火して、火花放電ギャップ140において火炎核が発生する。
また、上記のように副燃焼室22を設けているため、かかる副燃焼室22において火炎核を容易に成長させることができる。
これにより、副燃焼室22内は急激に圧力上昇する。
【0041】
次いで、圧力上昇した燃焼ガスは主燃焼室21内に、第二ハウジング16に形成された貫通孔164を介して火炎ジェットを発生させる。
この火炎ジェットが主燃焼室21内の混合ガスに着火して主燃焼室21の圧力を上昇させる。
以上の手順により、スパークプラグ1によって混合ガスに着火させ、発電用の駆動力を得ている。
【0042】
ところが、スパークプラグ1の使用により、火花放電ギャップ140が大きくなってしまうおそれがある。そのため、火花放電ギャップ140を狭めるリギャップが必要となってくる。
そこで、以下では、本例のスパークプラグ1をリギャップする方法について説明する。
【0043】
まず、スパークプラグ1の装着方法について説明する。
スパークプラグ1に装着するに当たっては、まず、プラグ本体部3を第二ハウジング16の内側に挿通する。このとき、第二係合部161をレンチ等で保持したうえで、図2に示すように、締付工具451によって第一係合部151を係合しつつこれを回し、プラグ本体部3と第二ハウジング16とを一体化して(図2における矢印W参照)スパークプラグ1を形成する。
【0044】
次いで、スパークプラグ1の先端を装着部20に挿入するとともに取付工具461によって第二係合部161を係合しつつこれを回す。このとき、第二係合部161の内接円B2は、第一係合部151の外接円A1よりも大きいため、取付工具461が第一係合部151と干渉することがない。
以上の手順により、プラグ本体部3を内側に保持した状態の第二ハウジング16の取付ねじ部163が内燃機関2の装着部20に螺合して、スパークプラグ1を内燃機関2に装着することができる。
【0045】
次に、スパークプラグ1の取り外し方法について説明する。
スパークプラグ1を取り外すに当たっては、第二係合部161をレンチ等で保持したうえで、上記取付工具461を用いて第二係合部161を回すと、内燃機関2の装着部20に螺着されていたスパークプラグ1が取り外される。
【0046】
次いで、内燃機関2から取り外されたスパークプラグ1を、第二ハウジング16とプラグ本体部3とに分離する。
具体的には、図2に示すように、締付工具451によって第一係合部151を係合しつつこれを回すことにより、プラグ本体部3と第二ハウジング16とに分離することができる。
【0047】
次いで、接地電極14を先端側からハンマーで叩くなどして接地電極14と中心電極11との間の火花放電ギャップ140の大きさを調整する。
次いで、プラグ本体部3を第二ハウジング16に挿通し、これを内燃機関2に取り付ける。
以上の手順により、スパークプラグ1をリギャップさせれば、これまでの性能と同等の性能にて着火することができる。
【0048】
次に、本例の作用効果について説明する。
第一係合部151は、スパークプラグ1の軸方向に直交する方向の断面形状である第一断面形状150が12角の多角形である。このように第一断面形状150を12角の多角形状とすることで、第一係合部151の肉厚dを大きくすることができる。
これを、図6を用いて説明する。本例のように、第一断面形状150を8角以上で構成したスパークプラグ1においては、第一断面形状150の外接円A1の直径及び挿通孔153の内形の直径を変化させることなく、第一断面形状150の内接円A2の径を十分大きくすることができる。これにより、内接円A2と挿通孔153との間の距離、すなわち肉厚dを大きくすることができる。
【0049】
そして、このように、第一係合部151の肉厚dを大きくできるため、第一ハウジング15の基端部の肉厚をも大きくすることができる。そしてこれにより、第一ハウジング15の基端部の剛性を増大させることができる。このため、第一ハウジング15の基端部を十分な力で変形させてかしめ部152を形成すれば、これにより絶縁碍子12を十分にかしめることができる。そのため、第一ハウジング15から絶縁碍子12が抜けるときの力の大きさである碍子抜け強度を大きくすることができる。その結果、気密性に優れたスパークプラグ1を得ることができる。
【0050】
さらに、第一断面形状150の外接円A1は、第二断面形状160の内接円B2よりも小さい。したがって、取付工具461によって第二係合部161を締め付けることにより、スパークプラグ1を確実に内燃機関2に取り付けることができる。すなわち、第二係合部161に係合させる取付工具461は、第二係合部161の外形と略同形状の内形を有するため、これを用いて第二係合部161を締め付ける際には、取付工具461の内形の内接円、すなわち第二断面形状160の内接円B2よりも第一断面形状150の外接円A1の方が小さくないと取付工具461が干渉してしまうことがある。これに対し、上記構成によれば、かかる干渉を生じることなく、スパークプラグ1を確実に内燃機関2に取り付けることができる。
【0051】
このように、第一断面形状150の外接円A1を第二断面形状160の内接円B2よりも小さい状態を保ちつつ、第一断面形状150を8角以上の多角形とすることにより、第一ハウジング15と取付工具461との干渉という問題を防ぎつつ、かしめ部152の剛性を向上してかしめ力を高めることができる。
【0052】
また、上記構成とすれば、取付工具461によって第二係合部161を締め付けることにより、スパークプラグ1を内燃機関2に取り付けることができる。すなわち、スパークプラグ1を内燃機関2に取り付ける際の過大なトルクは第二係合部161に作用させることができ、第一係合部151に作用させる必要がない。このため、第一ハウジング15においてねじ切れ等の不具合が生じることを十分に抑制することができる。
【0053】
また、第一係合部151は、第一断面形状150における外接円A1が、第二断面形状160における外接円B1の90%以下の直径である。これにより、第二断面形状160の内接円B2に対して第一断面形状150の外接円A1を十分に小さくすることができ、取付工具461にて第二係合部161を締め付ける際に取付工具461の内側と第一係合部151とが干渉することを十分に防ぐことができる。これにより、第二ハウジング16を内燃機関2に確実に締め付けることができる。
【0054】
また、第一係合部151は、最も薄くなる部分の肉厚dが1.5〜2.0mmであるため、気密性に十分優れたスパークプラグ1を得ることができる。すなわち、上記のように第一係合部151の肉厚dを十分に確保することにより、十分な力で第一ハウジング15を絶縁碍子12に十分な力でかしめることができ、ひいては、十分な碍子抜け強度を得ることができる。その結果、気密性に十分優れたスパークプラグ1を得ることができる。
【0055】
また、本例のスパークプラグ1は、上記のようなコージェネレーションのガスエンジンにおけるスパークプラグ1として用いられる。このような燃焼圧力の高い発電用ガスエンジンに用いられるスパークプラグ1は、特に高い気密性が要求されるため、本発明の作用効果を効果的に発揮させることができる。
また、第二ハウジング16は、内燃機関2に螺合するための外周ねじ部153のねじ径がM18である。これにより、燃焼圧の高い内燃機関に適したスパークプラグ1となるため、本発明の作用効果を効果的に発揮させることができる。
【0056】
以上のとおり、本例によれば、気密性に優れたスパークプラグを提供することができる。
【0057】
(実施例2)
本例は、図8(a)〜(d)に示すように、第一断面形状150を8角形〜12角形とした場合には、第一断面形状150を6角形とした場合より、どの程度肉厚が大きくなるかを調べた例である。すなわち、第一断面形状150を6角形〜12角形とした場合のそれぞれの肉厚d1〜d4の値を比較した。
【0058】
具体的には、6角形〜12角形の第一断面形状150において挿通孔153の半径を8.725mmで一定とするとともに、第一断面形状150の外接円A1の半径を11.1mmで一定とした状態で、第一断面形状150の角数を種々変更させてそれぞれの肉厚を算出した。
なお、本例において使用した符号は、図1において使用した符号に準ずる。
【0059】
第一断面形状150を6角形とした場合には、図8(a)に示すように、第一係合部151の内接円A2は半径が8.615mmであるため、肉厚d1は、0.11mmとなる。
一方、第一断面形状150を8角形とした場合は、図8(b)に示すように、第一断面形状150の内接円A2は半径が10.255mmであるため、肉厚d2は1.53mmとなる。
【0060】
また、第一断面形状150を10角形とした場合は、図8(c)に示すように、第一断面形状150の内接円A2は半径が10.555mmであるため、肉厚d3は1.83mmとなる。
さらに、第一断面形状150を12角形とした場合は、図8(d)に示すように、第一断面形状150の内接円A2は半径が10.72mmであるため、肉厚d4は1.995mmとなる。
【0061】
以上からわかるように、8角形の第一断面形状150は6角形の第一断面形状150よりも肉厚が1.42mm大きくなる。また、10角形の第一断面形状150は6角形の第一断面形状150よりも肉厚が1.72mm大きくなり、12角形の第一断面形状150は6角形の第一断面形状150よりも肉厚が1.885mm大きくなることがわかる。
このように、8角形〜12角形の第一断面形状150とすることにより、6角形の第一断面形状150よりも肉厚を十分に確保することができる。
【0062】
(実施例3)
本例は、図9に示すように、第一断面形状150の角数と気密性との関係を調べた例である。
すなわち、まず、第一断面形状150の外接円(図6におけるA1参照)の直径を22.2mm、絶縁碍子12の直径を14.4mmとするとともに、第一断面形状150を6角形、8角形、12角形と種々変更した試料を作製した。そして、各試料について、第一係合部151と取付ねじ部153との間に形成されたプラグ座面154を、150〜550℃までを50℃刻みで変化させていくという雰囲気を30分間保った後、その状態で副燃焼室22に1.5MPaの空気圧を加えてかしめ部152からの空気の漏れ量を調べた。
なお、本例において使用した符号は、図1における符号に準ずる。
【0063】
測定結果を図9に示す。なお、同図におけるラインL1は第一断面形状150を6角形とした場合の結果であり、ラインL2は第一断面形状150を8角形とした場合の結果であり、ラインL3は第一断面形状150を12角形とした場合の結果を示すものである。また、プラグ座面154の温度が150〜350℃がスパークプラグの実際の使用環境下における温度である。
【0064】
図9からわかるように、第一断面形状150を8角形(ラインL2)又は12角形(ラインL3)とした場合には、プラグ座面154の温度が350℃となっても漏れ量がなく、気密性を確保している。
一方、第一断面形状150を6角形(ラインL1)とした場合には、プラグ座面154の温度が250℃を超えると気密性が低下しはじめ、350℃においては、漏れ量が1mL/分を超えている。すなわち、第一断面形状150を6角とした場合には、実際のスパークプラグの使用環境下において十分な気密性を確保できるとは言い難い。
以上により、気密性を確保するという観点から、第一断面形状150を8角〜12角とすることが好ましい。
【0065】
(実施例4)
本例は、図10、図11に示すように、第一断面形状150と碍子抜け強度との関係、及び第一断面形状150の角数と第一係合部151に加わるトルクの最大値との関係を調べた例である。
【0066】
すなわち、まず、第一断面形状150が6角〜12角の多角形となるよう作製したスパークプラグに対し、第一ハウジング15から絶縁碍子12が抜けるときの力の大きさを調べた。
測定結果を図10に示す。
なお、基準値を25kNとした。この25kNという値は、異常燃焼の最大圧力の30MPaを想定し、その際の疲労強度の安全率5を想定した規格値である。
【0067】
図10からわかるように、第一断面形状150を8角以上とした場合には、碍子抜け強度は基準値を十分に上回る。これは、第一断面形状150を8角以上とした場合には、その外接円A1の径を21mm以上とすることができ、碍子抜け強度が300MPa以上の圧力に耐え得るためであると考えられる。また、図10から、第一断面形状150の角数が増えるにつれて碍子抜け強度が増大することがわかる。
一方、第一断面形状150を6角形とした場合には、碍子抜け強度は基準値を下回る。これは、第一断面形状150の内接円A2の直径が21mm未満となり、第一係合部151ひいてはかしめ部152の肉厚が小さくなり、かしめ力が不十分となるおそれがあるからであると考えられる。
【0068】
次に、第一断面形状150が6角〜12角の多角形となるよう作製したスパークプラグに対し、第一ハウジング15を第二ハウジング16に締め付ける際のトルクの最大値を調べた。
なお、本例においては、第一ハウジング15の取付ねじ部(図1における符号153参照)の直径をM14で一定とした。
測定結果を図11に示す。
また、トルクの基準値を20Nmとした。この20Nmは、スパークプラグの気密性を確保するに当たって必要なトルクである。
【0069】
図11からわかるように、第一断面形状150が12角以下である場合には、20Nm以上のトルクで締め付けることができる。
一方、第一断面形状150が12角を超える場合には、およそ10Nmのトルクをかけると第一係合部151の十分な締め付け困難となることがわかった。これは、第一係合部151が締付工具451によって擦れてしまって、レンチかじりが生じるからであると考えられる。
【0070】
以上の結果からわかるように、第一断面形状150は、十分な碍子抜け強度を確保するという観点からは8角以上とする必要があり、第一係合部151の締付トルクを大きくするという観点からは12角以下とする必要がある。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】実施例1における、スパークプラグの装着状態を示す説明図。
【図2】実施例1における、スパークプラグの組立方法を示す説明図。
【図3】実施例1における、スパークプラグの装着方法を示す説明図。
【図4】実施例1における、スパークプラグの先端部の説明図。
【図5】実施例1における、第一係合部の縦断面図。
【図6】実施例1における、第一係合部と第二係合部との大小関係を示す説明図。
【図7】実施例1における、第二ハウジングの先端部の正面図。
【図8】実施例2における、(a)6角の第一断面形状の肉厚を示す説明図、(b)8角の第一断面形状の肉厚を示す説明図、(c)10角の第一断面形状の肉厚を示す説明図、(d)12角の第一断面形状の肉厚を示す説明図。
【図9】実施例3における、座面温度と気密性との関係を示した線図。
【図10】実施例4における、角数と碍子抜け強度との関係を示す線図。
【図11】実施例4における、角数と締付トルクとの関係を示す線図。
【図12】従来例における、スパークプラグの装着状態を示す説明図。
【図13】従来例における、第一係合部と第二係合部との大小関係を示す説明図。
【符号の説明】
【0072】
1 スパークプラグ
11 中心電極
12 絶縁碍子
13 副燃焼室
14 接地電極
140 火花放電ギャップ
15 第一ハウジング
151 第一係合部
16 第二ハウジング
161 第二係合部
2 内燃機関
22 副燃焼室
362 取付工具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心電極と、該中心電極を挿通保持する絶縁碍子と、上記中心電極に対向配置され該中心電極との間に火花放電ギャップを形成する接地電極と、上記絶縁碍子を挿通保持する第一ハウジングと、該第一ハウジングの先端部に螺着されるとともに内側に上記火花放電ギャップを配置する副燃焼室を形成する第二ハウジングとを有する内燃機関用のスパークプラグであって、
上記第一ハウジングは、該第一ハウジングを上記第二ハウジングの内側に螺合する際に締付工具を係合するための第一係合部と、該第一係合部の基端側において上記絶縁碍子をかしめるかしめ部とを有しており、
上記第二ハウジングは、該第二ハウジングを上記内燃機関に螺合する際に取付工具を係合するための第二係合部を有しており、
上記第一係合部は、上記スパークプラグの軸方向に直交する方向の断面形状である第一断面形状が8角以上12角以下の多角形であり、
上記第一断面形状の外接円は、上記第二係合部における上記スパークプラグの軸方向に直交する方向の断面形状である第二断面形状の外接円よりも小さいことを特徴とする内燃機関用のスパークプラグ。
【請求項2】
請求項1において、上記第一断面形状の外接円は、上記第二断面形状の内接円よりも小さいことを特徴とする内燃機関用のスパークプラグ。
【請求項3】
請求項1又は2において、上記第一係合部は、上記第一断面形状における外接円が、上記第二断面形状における外接円の90%以下の直径であることを特徴とする内燃機関用のスパークプラグ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項において、上記第一係合部は、最も薄くなる部分の肉厚が1.5〜2.0mmであることを特徴とする内燃機関用のスパークプラグ。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項において、最高燃焼圧力が15MPa以上の発電用ガスエンジンに用いられることを特徴とする内燃機関用のスパークプラグ。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項において、上記第二ハウジングは、上記内燃機関に螺合するための外周ねじ部のねじ径がM18であることを特徴とする内燃機関用のスパークプラグ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−252665(P2009−252665A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−102154(P2008−102154)
【出願日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【Fターム(参考)】