フレキシブルプリント配線板の製造装置および製造方法
【課題】一例として、より不都合の少ない基板を製造しやすい製造装置を得る。
【解決手段】実施形態にかかるフレキシブルプリント配線板の製造装置は、複数の装置を備える。第二導体層を設ける装置は、第一導体層の面に部分的に第二導体層を設ける。第一絶縁層を設ける装置は、第一導体層の面に部分的に第一絶縁層を設ける。第一導体層、第二導体層、第一絶縁層、および第三導体層を一体化する装置は、第一導体層の面に設けられた第二導体層および第一絶縁層が第一導体層とは反対側から第三導体層で覆われた状態で、一体化する。導体パターンを形成する装置は、第一導体層、第二導体層、第一絶縁層、および第三導体層が一体化された構造の第一導体層および第三導体層のうち少なくとも一方を部分的に除去して導体パターンを形成する。第二絶縁層で覆う装置は、導体パターンが形成された構造の両側を第二絶縁層で覆う。
【解決手段】実施形態にかかるフレキシブルプリント配線板の製造装置は、複数の装置を備える。第二導体層を設ける装置は、第一導体層の面に部分的に第二導体層を設ける。第一絶縁層を設ける装置は、第一導体層の面に部分的に第一絶縁層を設ける。第一導体層、第二導体層、第一絶縁層、および第三導体層を一体化する装置は、第一導体層の面に設けられた第二導体層および第一絶縁層が第一導体層とは反対側から第三導体層で覆われた状態で、一体化する。導体パターンを形成する装置は、第一導体層、第二導体層、第一絶縁層、および第三導体層が一体化された構造の第一導体層および第三導体層のうち少なくとも一方を部分的に除去して導体パターンを形成する。第二絶縁層で覆う装置は、導体パターンが形成された構造の両側を第二絶縁層で覆う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、フレキシブルプリント配線板の製造装置、基板製造装置、および塗布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、絶縁体で構成された基層(内層)の両面に導体パターンが設けられ、該導体パターンが絶縁体で構成された外層で覆われたフレキシブルプリント配線板が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−061243号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
フレキシブルプリント配線板等の基板の製造に関しては、より不都合の少ない基板を製造しやすい製造装置が望まれていた。
【0005】
そこで、本発明の実施形態は、一例として、より不都合の少ない基板を製造しやすい製造装置を得ることを、目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態にかかるフレキシブルプリント配線板の製造装置は、第二導体層を設ける装置と、第一絶縁層を設ける装置と、第一導体層、第二導体層、第一絶縁層、および第三導体層を一体化する装置と、導体パターンを形成する装置と、第二絶縁層で覆う装置と、を備える。第二導体層を設ける装置は、第一導体層の面に部分的に第二導体層を設ける。第一絶縁層を設ける装置は、第一導体層の面に部分的に第一絶縁層を設ける。第一導体層、第二導体層、第一絶縁層、および第三導体層を一体化する装置は、第一導体層の面に設けられた第二導体層および第一絶縁層が第一導体層とは反対側から第三導体層で覆われた状態で、一体化する。導体パターンを形成する装置は、第一導体層、第二導体層、第一絶縁層、および第三導体層が一体化された構造の第一導体層および第三導体層のうち少なくとも一方を部分的に除去して導体パターンを形成する。第二絶縁層で覆う装置は、導体パターンが形成された構造の両側を第二絶縁層で覆う。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1は、第1実施形態に係るテレビジョン受像機の正面図である。
【図2】図2は、第1実施形態に係るプリント配線板を模式的に示す断面図である。
【図3】図3は、第2実施形態に係るプリント配線板を模式的に示す断面図である。
【図4】図4は、第3実施形態に係るプリント配線板を模式的に示す平面図である。
【図5】図5は、第4実施形態に係る電子機器の斜視図である。
【図6】図6は、図5中に示された電子機器の内部の下面図である。
【図7】図7は、図6中に示された一つのフレキシブルプリント配線板を示す断面図である。
【図8】図8は、実施形態にかかる基板の製造方法の一例のフローチャートである。
【図9】図9は、図8の製造方法で製造される構造の一例のステップ1での平面図である。
【図10】図10は、図9のX−X断面図である。
【図11】図11は、図8の製造方法で製造される構造の一例のステップ2での平面図である。
【図12】図12は、図11のXII−XII断面図である。
【図13】図13は、図8の製造方法で製造される構造の一例のステップ3での断面図である。
【図14】図14は、図8の製造方法で製造される構造の一例のステップ4での断面図である。
【図15】図15は、図8の製造方法で製造される構造の一例のステップ5での平面図である。
【図16】図16は、図8の製造方法で製造された基板の一例の平面図である。
【図17】図17は、図16のXVII−XVII断面図である。
【図18】図18は、第5実施形態にかかる基板の製造装置の一例の概略構成が模式的に示された平面図である。
【図19】図19は、第5実施形態にかかる基板の製造装置に含まれるスクリーン印刷装置の一例の一部の概略構成が模式的に示された側面図である。
【図20】図20は、第5実施形態にかかる基板の製造装置に含まれるインクジェット印刷装置の一例の一部の概略構成が模式的に示された正面図である。
【図21】図21は、第6実施形態にかかる基板の製造装置の一例の概略構成が模式的に示された平面図である。
【図22】図22は、第7実施形態にかかる基板の製造装置の一例の概略構成が模式的に示された平面図である。
【図23】図23は、第7実施形態にかかる基板の製造装置に含まれるインクジェット印刷装置の一例の一部の概略構成が模式的に示された正面図である。
【図24】図24は、第8実施形態にかかる基板の製造装置の一例の概略構成が模式的に示された平面図である。
【図25】図25は、第8実施形態にかかる基板の製造装置に含まれるインクジェット印刷装置および押圧装置の一例の概略構成が模式的に示された側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下の複数の実施形態には、同様の構成要素が含まれている。よって、以下では、同様の構成要素には共通の符号が付与される。また、重複する説明が省略される。
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係るテレビジョン受像機181を示す。テレビジョン受像機181は、「電子機器」の一例である。テレビジョン受像機181は、本体部182と、この本体部182を支持したスタンド183とを有する。本体部182は、筐体184と、この筐体184に収容された表示装置185とを有する。表示装置185は、画像を表示させる表示画面185aを有する。筐体184は、表示画面185aを露出させる開口部184aを有する。
【0009】
図1に示すように、筐体184は、フレキシブルプリント配線板38を収容している。なお筐体184は、本実施形態に係るフレキシブルプリント配線板38に代えて、下記の第2または第3の実施形態に係るフレキシブルプリント配線板38を収容してもよい。
【0010】
以下、フレキシブルプリント配線板38について詳しく説明する。
図2乃至図6は、第1実施形態に係るフレキシブルプリント配線板38を開示している。フレキシブルプリント配線板38は、柔軟性(可撓性)を有し、例えば比較的大きく変形させる(曲げる)ことができる。なお本明細書でいう「フレキシブルプリント配線板」は、90度を超えるような大きな角度で折り曲げ可能なものに限定されるものではなく、小さな角度(例えば5度以上の角度)で折り曲げ可能なものを含む。
【0011】
図2は、フレキシブルプリント配線板38の構成の一例を模式的に示す。フレキシブルプリント配線板38は、絶縁部102、ビア103、第1導体パターン104、第2導体パターン105、第1カバーレイ106、及び第2カバーレイ107を有する。
【0012】
絶縁部102は、例えば基材、またはベースフィルムとも呼ばれ、フィルム状の絶縁体(絶縁層)である。絶縁部102は、硬化後に柔軟性(可撓性)を有する絶縁材料111(図3、図4参照)で構成されている。絶縁部102は、例えば熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂などの絶縁材料111(絶縁樹脂)が硬化されることで設けられている。
【0013】
本実施形態に係る絶縁材料111は、例えばスクリーン印刷またはインクジェットで塗布されることが可能な特性(粘度や硬度)を有する。絶縁材料111は、例えば可溶性であり、液状(インク状)になる。
【0014】
本実施形態に係る絶縁材料111の具体例としては、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、液晶ポリマー樹脂、シリコン樹脂、ウレタン樹脂、及びフッ素樹脂のいずれか単体、またはこれらの中のいずれかを組み合わせた混合物である。なお、絶縁材料111は、上記例に限られるものではない。
【0015】
図2に示すように、絶縁部102は、第1面102aと、この第1面102aとは反対側に位置された第2面102bとを有する。絶縁部102には、第1面102aと第2面102bとに亘る穴部102cが設けられている。すなわち、穴部102cは、第1面102aと第2面102bとの間を貫通している。
【0016】
ビア103は、絶縁部102の穴部102cに位置されている。ビア103は、絶縁部102の第1面102aと第2面102bとに亘る。ビア103の厚さT1は、絶縁部102の厚さT2と略同じである。ビア103は、例えば導電性のペースト112(図3、図4参照)が硬化されることで設けられている。
【0017】
導電性のペースト112は、例えば、導電ペースト、またははんだペースト(はんだ系ペースト)である。「導電ペースト」の一例は、導電粉と熱硬化性樹脂(または熱可塑性樹脂)とを混ぜたものであり、例えば、銅ペースト、銀ペースト、またはこれらを混ぜたものがある。また、「導電ペースト」は、銅ナノペーストや銀ナノペーストといったナノペーストでもよい。「はんだペースト」の一例は、半田合金の微粒子とフラックスとを混ぜたものである。
【0018】
本実施形態に係る導電性のペースト112は、例えばスクリーン印刷またはインクジェットで塗布されることが可能な特性(粘度や硬度)を有する。なお、導電性のペースト112は、上記例に限られるものではない。
【0019】
図2に示すように、第1導体パターン104(第1導体層)は、絶縁部102の第1面102aに設けられている。第1導体パターン104は、ビア103に接続(接合)され、ビア103に電気的に接続されている。第2導体パターン105(第2導体層)は、絶縁部102の第2面102bに設けられている。第2導体パターン105は、ビア103に接続(接合)され、ビア103に電気的に接続されている。すなわち、ビア103は、第1導体パターン104と第2導体パターン105とを電気的に接続している。
【0020】
第1導体パターン104及び第2導体パターン105は、例えばそれぞれ配線パターン(信号層)である。なお第1導体パターン104及び第2導体パターン105のいずれか一方は、電源層またはグランド層となるベタ層であってもよい。
【0021】
フレキシブルプリント配線板38は、例えば第1導体パターン104及び第2導体パターン105が絶縁部102に直接に積層されたいわゆる2層材である。
【0022】
図2に示すように、第1カバーレイ106(第1カバー層)は、第1導体パターン104に重ねられている。第2カバーレイ107(第2カバー層)は、第2導体パターン105に重ねられている。第1カバーレイ106及び第2カバーレイ107は、それぞれ保護用の絶縁体(絶縁層)であり、フレキシブルプリント配線板38の外部に露出されている。
【0023】
図2に示すように、第1カバーレイ106及び第2カバーレイ107は、それぞれ例えば表面層113と、この表面層113と絶縁部102との間に位置された接着層114(接着剤)とを含む。表面層113は、例えばポリイミド樹脂やポリエチレンテレフタレート樹脂などの絶縁樹脂で構成されている。
【0024】
<第2実施形態>
図3は、第2実施形態に係るフレキシブルプリント配線板38を示す。本実施形態に係るフレキシブルプリント配線板38は、部分的に厚みが異なる。フレキシブルプリント配線板38の一例は、第1部分131と、この第1部分131よりも厚い第2部分132とを有する。
【0025】
第1部分131は、部品(電子部品)が実装されない領域であり、柔軟に変形する(曲がる)ことが優先された領域である。第1部分131は、上記第1実施形態のフレキシブルプリント配線板38と略同じ構成を有する。すなわち、第1部分131は、第1絶縁部102、ビア103、第1導体パターン104、第2導体パターン105、第1カバーレイ106、及び第2カバーレイ107を有する。
【0026】
第2部分132は、部品134(電子部品)が実装される領域であり、第1部分131に比べて変形しにくい(曲がりにくい)領域である。第2部分132は、第2絶縁部135、第1導体パターン104、第2導体パターン105(図示しない)、第1カバーレイ106、及び第2カバーレイ107を有する。第2絶縁部135は、第1絶縁部102に相当する部分であり、第1導体パターン104と第2導体パターン105との間に位置される。第2絶縁部135は、第1絶縁部102に比べて厚い。
【0027】
第2絶縁部135は、第1絶縁部102に対して、絶縁材料111の塗布される厚さを変えることで形成される。このような塗布の厚さを部分的に変えることは、例えばインクジェットによる塗布で行うことができる。このような構成によれば、部品実装の安定性が向上し、フレキシブルプリント配線板38の信頼性が向上する。
【0028】
なお、図3に示す一例では、第2部分132は、ビア103を有しないが、これに限定されるものではない。第2部分132は、ビア103を有してもよい。なおこの場合、第2部分132のビア103は、第1部分131のビア103に対して、導電性のペースト112の塗布される厚さを変えることで形成される。
【0029】
<第3実施形態>
図4は、第3実施形態に係るフレキシブルプリント配線板38を示す。なお図4では、説明の便宜上、第1導体パターン104にハッチングを施している。本実施形態に係るフレキシブルプリント配線板38は、部分的に絶縁材料の種類が異なる。図4に示すように、第1導体パターン104(または第2導体パターン105)は、パッド141と、パッド141の間を結ぶ信号線142とを有する。信号線142は、例えば高速伝送に使用される配線(例えば差動配線)である。
【0030】
本実施形態のフレキシブルプリント配線板38は、第1部分143と、第2部分144とを有する。第1部分143は、例えば信号線142が設けられていない領域である。第1部分143は、上記第1の実施形態のフレキシブルプリント配線板38と略同じ構成を有する。すなわち、第1部分143は、第1絶縁部102、ビア103、第1導体パターン104、第2導体パターン105、第1カバーレイ106、及び第2カバーレイ107を有する。
【0031】
第2部分144は、信号線142に対応した領域、すなわち信号線142が設けられた領域である。第2部分144は、例えば信号線142の直下に位置した領域である。第2部分144は、第2絶縁部146、第1導体パターン104、第2導体パターン105、第1カバーレイ106、及び第2カバーレイ107を有する。第2絶縁部146は、第1絶縁部102に相当する部分であり、第1導体パターン104と第2導体パターン105との間に位置される。第2絶縁部146は、第1絶縁部102とは異なる種類の絶縁材料111で構成されている。
【0032】
ここで、プリント配線板上の伝送では、周波数が高くなるほど伝送損失を招き、信号の減衰に伴う伝送品質の低下が課題となる。伝送損失は、信号が伝達される導体で生じる導体損失、誘電体と接することで生じる誘電損失、及び配線の屈曲部、末端などで生じる放射損失の和となる。誘電損失は、誘電率と誘電正接などに起因する。このため、誘電率及び誘電正接が小さな材料でプリント配線板を構成すると、伝送損失が小さくなる。
【0033】
しかしながら、誘電率及び誘電正接が小さな材料は、一般的に高価である。そのため、誘電率及び誘電正接が小さな材料で、プリント配線板の全体を構成すると、製造コストが高くなる。
【0034】
そこで、本実施形態では、第2絶縁部146は、第1絶縁部102に対して、塗布される絶縁材料111の種類を変えることで形成される。このような塗布される絶縁材料111の種類を部分的に変えることは、例えばインクジェットによる塗布で行うことができる。
【0035】
具体的には、第2絶縁部146の絶縁材料111として、第1絶縁部102の絶縁材料111よりも誘電率及び誘電正接が小さな材料を用いる。第2絶縁部146の絶縁材料111の一例は、フィラーを多く含むものである。一方で、第1絶縁部102の絶縁材料111として、一般的な材料を用いる。これにより、フレキシブルプリント配線板38の製造コストを抑えつつ、伝送損失を抑制することができる。
【0036】
なお、フィラーを多く含む絶縁材料111は、フィラーが少ない絶縁材料111に比べて硬い。そこで、上記第2実施形態のように、柔軟性が優先された第1部分131と、部品実装領域としての第2部分132とを有したフレキシブルプリント配線板38において、第1部分131と第2部分132との絶縁材料111を変えてもよい。例えば、第1部分131の絶縁材料111は、一般的な材料である。第2部分132の絶縁材料111は、第1部分131の絶縁材料111よりもフィラーを多く含むものが用いられる。このような構成によれば、部品実装の安定性が向上し、フレキシブルプリント配線板38の信頼性が向上する。
【0037】
<第4実施形態>
図5は、第4実施形態に係る電子機器151を示す。電子機器151は、例えばノートブック型ポータブルコンピュータ(ノートPC)である。なお本実施形態が適用可能な電子機器は、上記例に限られず、テレビジョン受像機、タブレット端末、スレート型ポータブルコンピュータ(スレートPC)、携帯電話、スマートフォン、電子書籍端末、ゲーム機などを含む種々の電子機器に広く適用可能である。
【0038】
図5に示すように、電子機器151は、第1ユニット152と、第2ユニット153と、ヒンジ部154a,154bとを有する。第1ユニット152は、例えば電子機器本体である。第1ユニット152は、第1筐体156を備えている。
【0039】
第2ユニット153は、例えば表示部であり、第2筐体157と、この第2筐体157に収容された表示装置158とを備えている。表示装置158は、例えば液晶ディスプレイであるが、これに限定されるものではない。表示装置158は、画像が表示される表示画面158aを有する。第2筐体157は、表示画面158aを外部に露出させる開口部157aを有する。
【0040】
第2筐体157は、ヒンジ部154a,154bによって、第1筐体156の後端部に回動可能(開閉可能)に連結されている。これにより電子機器は、第1ユニット152と第2ユニット153とが重ねられた第1の位置と、第1ユニット152と第2ユニット153とが開かれた第2の位置との間で回動可能である。
【0041】
次に、第1筐体156(以下、単に筐体156)の内部を詳しく説明する。
図6に示すように、筐体156は、第1回路基板161、第2回路基板162、第3回路基板163、ODD(Optical Disk Drive)ユニット164、及びHDD(Hard Disk Drive)ユニット165を備えている。
【0042】
第1回路基板161は、例えばメインボードであり、CPU166が実装されている。第2回路基板162は、筐体156の端部に位置され、第1コネクタ167が実装されている。第3回路基板163は、第2回路基板162とは異なる筐体156の端部に位置され、第2コネクタ168が実装されている。第1コネクタ167及び第2コネクタ168は、例えば高周波帯(例えばギガヘルツ帯)の信号が流される。
【0043】
電子機器151は、さらに、第2回路基板162、第3回路基板163、ODDユニット164、及びHDDユニット165のぞれぞれと、第1回路基板161との間に、これらを電気的に接続するフレキシブルプリント配線板38を有する。このフレキシブルプリント配線板38は、上記第1乃至第3の実施形態のいずれかのフレキシブルプリント配線板である。
【0044】
図7は、ODDユニット164と第1回路基板161との間を繋ぐフレキシブルプリント配線板38を示す。フレキシブルプリント配線板38は、ODDユニット164に接続されるコネクタ169が実装されている。コネクタ169は、「電子部品」の一例である。電子部品が実装されたフレキシブルプリント配線板38は、「モジュール」の一例である。
【0045】
図7に示すように、フレキシブルプリント配線板38は、例えば、筐体156の内面156aに沿う第1部分171と、この第1部分171に対して曲がり、筐体156の内面156aから離間した第2部分172とを有する。
【0046】
このような構成によれば、フレキシブルプリント配線板38の薄型化及び軽量化を通じて、電子機器151の薄型化及び軽量化を図ることができる。また、近年の電子機器151は、薄型化のためメインボード(第1回路基板161)を小型化する傾向にある。このため、第1回路基板161と筐体156の側面のコネクタ167,168との間の距離が長くなり、この間で電気的な損失を生じやすい。
【0047】
一方で、本実施形態の構成によれば、上記第1実施形態と同様に、電気抵抗率の小さな導電性のペースト112を使用することができるので、第1回路基板161とコネクタ167,168との間の損失を抑制することができる。これは、電子機器151の性能向上に寄与する。
【0048】
<第5実施形態>
(製造方法)
まずは、図8〜10が参照されながら、本実施形態にかかるフレキシブルプリント配線板38(図16参照)の製造方法が説明される。本実施形態では、一例として、図8に示される手順(ステップ(工程、アクト)S1〜S7)にしたがって、フレキシブルプリント配線板38が製造される。
【0049】
ステップS1では、一例として、図9,10に示されるように、導体層31(第一導体層、導電性膜)の面31aに、導体層32(第二導体層)が設けられる。導体層31は、一例としては、銅箔である。導体層31は、一例として、図9に示されるように、矩形状(例えば長方形状)かつ膜状である。
【0050】
導体層31は、一例として、図9,10に示されるように、パレット51(ワーク、プレート、載置板、支持部材、搬送体、台)およびクッション材52(緩衝材、弾性体)に載せられることができる。パレット51およびクッション材52は、一例としては、導体層31より広く、導体層31の周縁より外側へ張り出している。パレット51は、矩形状(例えば長方形状)かつ板状である。クッション材52は、矩形状(例えば長方形状)かつシート状である。クッション材52は、パレット51上に載せられる。導体層31は、クッション材52を介してパレット51上に載せられる。クッション材52は、パレット51より柔らかく、可撓性(柔軟性、弾性)を有している。製造中の各段階で、導体層31およびこの導体層31上に設けられる各層および各構造物は、パレット51およびクッション材52、またはパレット51のみに載せられた状態で搬送されることができる。パレット51は、柔らかく撓みやすい状態の導体層31やこの導体層31上に設けられる各層および各構造物を支持する支持部材として、機能する。
【0051】
ステップS1では、導体層32は、一例として、導体層31の面31a上に流動性を有した状態の導体32Lが塗布されることで、形成されることができる。導体32Lは、一例としては、面31a上に、選択的に(部分的に)塗布される。導体32Lの塗布は、印刷技術を利用あるいは応用して行うことができる。導体32Lは、このステップS1より後の段階(本実施形態では、一例としてステップS4)で硬化(固化、乾燥)される。また、導体32Lは、ステップS1で、局所的あるいは限定的に硬化されることができる。導体32Lは、例えば、導電性ペースト(本実施形態では、一例として銀ペーストや銅ペースト等)である。
【0052】
ステップS2では、一例として、図11,12に示されるように、導体層31の面31aに、絶縁層33(第一絶縁層)が設けられる。ステップS2では、絶縁層33は、一例として、導体層31の面31a上に流動性を有した状態の絶縁体33Lが塗布されることで、形成されることができる。絶縁体33Lは、一例としては、面31a上に、選択的に(部分的に)塗布される。この際、絶縁体33Lは、面31a上に、導体32L(導体層32)と並べて、導体32Lが塗布された部分(導体層32が設けられた部分、領域)とは外れた部分(領域)に(導体32Lを避けて)塗布される。絶縁体33Lは、このステップS1より後の段階(本実施形態では、一例としてステップS4)で硬化(固化、乾燥)される。また、絶縁体33Lは、ステップS2で、局所的あるいは限定的に硬化されることができる。絶縁体33Lは、例えば、熱硬化性の合成樹脂材料(本実施形態では、一例としてポリイミド等)である。
【0053】
ステップS1およびステップS2は、並行して行われることができる。また、ステップS1およびステップS2のうち一方が先に、他方が後に行われることができる。ステップS1がステップS2より前に行われた場合には、絶縁層33が導体層31と導体層32との接触部分(接合部分)に介在しにくくなる。また、一例として、ステップS1がステップS2より前に行われた場合には、導体層31の面31aの劣化(例えば酸化等)によって例えば導体層31と導体層32との接合部分の電気抵抗が増大したり導体層31と導体層32との接合強度が低下したりするのが、抑制されやすい。
【0054】
また、ステップS1,S2では、一例として、図12に示されるように、導体層32を絶縁層33より高く突出させることができる。この場合、後のステップS4で、導体層32と導体層34(図13,14参照)とがより確実に電気的に接続されやすい。さらに、ステップS1,S2では、一例として、図11に示されるように、導体32L(導体層32)と絶縁体33L(絶縁層33)との間に隙間gを設けることができる。この隙間gには、後のステップS4で、厚さ方向(高さ方向、図12の上下方向)に潰された導体層32または絶縁層33が入り込む。また、ステップS1,S2の後には、導体層32または絶縁層33を部分的にあるいは限定的に硬化(固化、乾燥)させるステップが行われてもよい。
【0055】
ステップS3では、一例として、図13に示されるように、導体層32および絶縁層33の、導体層31とは反対側が、導体層34(第三導体層、導電性膜)で覆われる。そして、次のステップS4では、一例として、図14に示されるように、導体層32および絶縁層33が、導体層31および導体層34によって挟まれ、押圧される。このとき、導体層32および絶縁層33が導体層31および導体層34で挟まれた構造35は、クッション材52を介して、押圧部14a(およびパレット51)に挟まれる。ステップS4では、一例として、図14の状態で、構造35が押圧されかつ加熱されて、導体層31,32,34および絶縁層33が一体化された構造40が得られる。
【0056】
その後、ステップS5では、一例として、導体層31および導体層34のうち少なくとも一方が部分的に除去されて、図15に示されるような導体パターン36が形成される。次のステップS6では、一例として、導体層31,34を覆う絶縁層37(外層、図17参照)が設けられたり、補強部材(補強板、図示されず)が設けられたり、導体層31や導体層34の表面処理(例えば、プリフラックスの塗布、メッキ処理等)が行われたりといった後処理が行われ、さらにステップS7で例えば切断等の外形の加工が行われて、一例としては、図16,17に示されるようなフレキシブルプリント配線板38(基板)が得られる。なお、図8〜10では、フレキシブルプリント配線板38の比較的単純な構成が例示されたが、上記の製造方法によって、より複雑な構成を有したフレキシブルプリント配線板38を製造できることは勿論である。
【0057】
上述した製造方法によれば、両面に導体パターン36が設けられた所謂両面板において基層(内層)となる絶縁層33を、導体層31に流動性を有した絶縁体33Lを塗布することで設けることができる。よって、一例としては、塗布の制御により、場所(位置)によって、絶縁層33(基層)の成分や厚さ等の特性を異ならせたりすることができる。よって、一例としては、より不都合の少ないフレキシブルプリント配線板38(基板)が得られやすい。また、一例としては、絶縁層33(基層)の特性がより容易に変更されやすい。
【0058】
(製造装置)
本実施形態では、一例として、図18に示されるような製造装置1A(フレキシブルプリント配線板38の製造装置、基板の製造装置)により、図8に示された上述されたフローにしたがって、フレキシブルプリント配線板38を製造することができる。製造装置1A(フレキシブルプリント配線板の製造装置、製造設備、製造システム)は、複数(本実施形態では、一例として、八つ)のセクション11〜18(装置、ステージ、ユニット、モジュール、設備)を備えている。具体的には、例えば、第1セクション11では、図8のステップS1の処理が実行される。第2セクション12では、図8のステップS2の処理が実行される。第3セクション13では、図8のステップS3の処理が実行される。第4セクション14では、図8のステップS4の処理が実行される。第5セクション15では、図8のステップS5の処理が実行される。第6セクション16では、図8のステップS6の処理のうち、補強部材や、絶縁層37(外層)等を設ける処理が実行される。第7セクションでは、図8のステップS6の処理のうち、導体層31、32,34等のうち露出している部分に対する表面処理が実行される。また、第8セクション18では、図8のステップS7の処理が実行される。また、製造装置1Aは、複数のセクション11〜18間でパレット51を搬送する搬送装置19を備えている。なお、図18に示された複数のセクション11〜18の区分や、レイアウト(位置、方向、順序等)、大きさ(広さ、高さ等)等はあくまで一例であって、製造装置1Aは種々に変形して構成することができる。
【0059】
本実施形態では、一例として、第1セクション11には、図19に示されるスクリーン印刷装置11A(塗布装置、成膜装置)が設けられている。スクリーン印刷装置11Aは、一例として、スクリーン11aや、ノズル11b(吐出部、ディスペンサ)、ブレード11c(へら)、移動装置11d(移動機構)等を有する。ノズル11bおよびブレード11cは、移動装置11dのスライダ11eに取り付けられる。スライダ11eは、移動装置11dのレール11fに沿って、導体層31の面31aに沿って往復動することができる。また、スライダ11eは、面31aに近付いた位置(図19に示された位置)と面31aから遠ざかった位置との間で移動することができる。スクリーン11aは、面31aから離れた位置で面31aに沿って設けられる。ただし、スクリーン11aは、ブレード11cに押されて、面31aに接触することができる。ノズル11bは、流動性を有した媒体(導体32L等、インク)を、スクリーン11aの面31aとは反対側に吐出する。ブレード11cの先端部(縁部、端部、辺部)は、面31aおよびスクリーン11aに沿い、移動装置11dによってスクリーン11aを面31aに押しつけながら、面31aおよびスクリーン11aに沿って(図19の例では左右方向に)移動することができる。すなわち、ブレード11c(の先端部)は、スクリーン11aおよびスクリーン11aの面31aとは反対側に吐出された媒体を、面31a側にこすりつけることができる。スクリーン11aには、媒体を通す孔11gが設けられている。このような構成において、ノズル11bは、移動装置11dによって移動しながらスクリーン11a上に媒体を吐出する。ブレード11cの先端部は、媒体が吐出されたスクリーン11aを面31aに押しつけながら、移動装置11dによって面31aに沿って移動する。これにより、インクがスクリーン11aの孔11gを通り、面31a上に塗布される。スクリーン印刷装置11Aは、孔11gのパターン(位置、大きさ、レイアウト等)に対応したパターンで、面31aに媒体(導体32L等、インク)を塗布する。
【0060】
本実施形態では、一例として、第2セクション12には、図20に示されるインクジェット印刷装置12A(塗布装置、成膜装置)が設けられている。インクジェット印刷装置12Aは、一例として、ヘッド12a(吐出部、噴射部)や、移動装置12b(移動機構)、搬送装置12c等を有する。ヘッド12aは、移動装置12bのスライダ12dに取り付けられる。スライダ12dは、移動装置12bのレール12eに沿って、導体層31の面31aに沿って移動することができる。ヘッド12aは、移動装置12bによって移動しながら、制御部(図示されず)によって制御されたタイミングで、媒体を吐出する(噴射する)。また、導体層31は、パレット51に載せられた状態で、搬送装置12c(例えば搬送ローラ12c4等)によって搬送される。移動装置12bによるヘッド12aの移動方向と、搬送装置12cによる導体層31の移動方向とは交叉(本実施形態では、一例として直交)している。制御部は、面31a上に媒体の所定のパターンが形成されるよう、ヘッド12aから媒体が吐出されるタイミング、ならびに移動装置12bおよび搬送装置12cの動作を制御する。このようにして、インクジェット印刷装置12Aは、所定のパターンで、面31aに媒体(絶縁体33L等、インク)を塗布する。
【0061】
本実施形態では、一例として、第3セクション13には、載置装置13A(図18参照)が設けられている。載置装置13Aは、一例として、パレット51を載せるステージ(載置部、図示されず)や、載置する対象物を搬送する搬送装置(載置装置、図示されず)等を有する。この載置装置13Aでは、導体層32および絶縁層33が設けられた導体層31に、導体層34が載せられる。これにより、図13に示されるように、導体層32および絶縁層33が導体層31の反対側から導体層34で覆われる。すなわち、導体層32および絶縁層33が、導体層31と導体層34とで挟まれる。載置対象物(一例としては、導体層34)は、搬送装置によって、あるいは作業者の手作業によって、載せられることができる。
【0062】
本実施形態では、一例として、第4セクション14には、押圧装置14A(プレス装置、図14参照)が設けられている。押圧装置14Aは、一例として、押圧部14aや、ヒータ14b(加熱部)等を有する。押圧部14aは、相互に対向した並行した(平行な)面14cを有している。パレット51およびクッション材52に載せられた構造35は、クッション材52で覆われた状態で、二つの押圧部14aの面14c間に挟まれる。すなわち、構造35は、クッション材52を介して二つの押圧部14aに挟まれる。押圧部14aには、ヒータ14bが設けられている。このような構造で、押圧装置14Aは、ヒータ14bで加熱しながら、押圧部14aによって構造35を押圧する(プレスする)。これにより、導体層31,32,34および絶縁層33が一体化された構造40が得られる。なお、押圧装置14Aは、一例として、積み重ねられた複数の構造35を押圧し、複数の構造40を得ることができる。また、押圧装置14Aでは、一例として、場所によってクッション材52の厚さを異ならせることで、構造40の厚さを変化させることができる。すなわち、クッション材52が厚い部分では、構造40の厚さが薄くなり(高さが低くなり)、クッション材52が薄い部分では、構造40の厚さが厚くなる(高さが高くなる)。押圧装置14Aで押圧される際(ステップS4)、導体層31,34は、導体層32(導体32L)および絶縁層33(絶縁体33L)より硬いので、クッション材52の厚さによって、導体層32または絶縁層33の厚さを局所的に変化させることができる。
【0063】
本実施形態では、一例として、第5セクション15には、第4セクション14で得られた構造40に例えばマスクエッチング等によって導体パターン36を設ける導体パターン形成装置15Aが設けられる。また、一例として、第6セクション16には、第5セクション15で導体パターン36が形成された構造の両側に例えば接着剤39を介しての接着等によって絶縁層37(外層、第三絶縁層、図16,17参照)や補強部材等を設ける外層形成装置16Aが設けられる。また、一例として、第7セクション17には、第6セクション16で絶縁層37や補強部材等が設けられた構造の露出している導体部等に表面処理を施す表面処理装置17Aが設けられる。また、一例として、第8セクション18には、第7セクション17で表面処理が施された構造を外形加工してフレキシブルプリント配線板38を得る外形加工装置18Aが設けられる。
【0064】
また、本実施形態では、一例として、搬送装置19は、レール19aや、スライダ19b、回動支持部19c、アーム19d、支持部19eを有する。本実施形態にかかる製造装置1Aでは、一例として、第1セクション11〜第4セクション14の列と、第5セクション15〜第8セクション18の列とが、間隔をあけて並行して(本実施形態では、一例として平行に)設けられている。搬送装置19は、それらの列の間に(間隔に)位置されている。レール19aは、第1セクション11〜第4セクション14の列、ならびに第5セクション15〜第8セクション18の列と並行して、これらの列に沿って延びている。スライダ19bは、レール19aに沿って移動する。回動支持部19cは、アーム19dおよび支持部19eをスライダ19bに回転可能に支持する。アーム19dは、各セクション11〜18内の位置と各セクション11〜18外でレール19a側の位置との間で、支持部19eを移動させる。支持部19eは、パレット51を支持する。このような構成により、搬送装置19は、パレット51(ならびにパレット51に載せられた製造途中あるいは完成された構造)を、各セクション11〜18間で、搬送する(移動させる)ことができる。
【0065】
以上の本実施形態によれば、一例として、流動性を有した状態で導体32Lや絶縁体33Lを塗布することで(印刷することで)、導体層31に、導体層32および絶縁層33を設けることができる。よって、本実施形態によれば、一例としては、導体層32および絶縁層33の特性を調整しやすい。具体的には、導体層32や絶縁層33の大きさ(例えば、厚さや、高さ、体積等)をフレキシブルプリント配線板38の場所によって異ならせたり、導体層32や絶縁層33の物性(例えば、硬さや、弾性率、導電率等)をフレキシブルプリント配線板38の場所によって異ならせたりしやすい。導体層32や絶縁層33の厚さ(高さ)は、一例としては、導体層31の面31a上への導体32Lや絶縁体33Lの重ね塗りによって、変化させることができる。すなわち、重ね塗りした部分(領域)や重ね塗りの回数が多い部分での導体層32や絶縁層33の大きさは、重ね塗りしない部分(領域)や重ね塗りの回数が少ない部分での導体層32や絶縁層33の大きさより大きい。なお、導体32Lや絶縁体33Lは、導体層31に塗られた後、図示されない加熱装置や乾燥装置によって加熱されたり乾燥されたりすることで、部分的あるいは限定的に固化されることができる。また、導体層32や絶縁層33の厚さ(高さ)は、一例としては、ノズル11bやヘッド12aからの流動性を有した状態の導体32Lや絶縁体33Lの吐出量や噴射量(流量)を制御することで、変化させることができる。また、導体層32や絶縁層33の物性は、一例としては、複数のノズル11bやヘッド12aを用いることで、変化させることができる。
【0066】
そして、上述したように、絶縁層33の厚さ(高さ)を局所的に異ならせることにより、一例として、絶縁層33に、局所的に他の部分(領域)より薄い部分(領域)を設けることができる。絶縁層33の薄い部分は、他の部分より曲がりやすい。よって、一例としては、フレキシブルプリント配線板38が曲げられる部分で、絶縁層33を薄くすることができる。また、上述したように、絶縁層33の厚さ(高さ)を局所的に異ならせることにより、一例として、絶縁層33に、局所的に他の部分(領域)より厚い部分(領域)を設けることができる。絶縁層3の厚い部分は、他の部分より曲がりにくい。よって、一例としては、コネクタ(図示されず)に接続される部分や、端子が設けられる部分など、フレキシブルプリント配線板38のより高い剛性や強度が求められる部分で、絶縁層33を厚くすることができる。よって、一例としては、補強部材を省略できる場合もある。
【0067】
また、本実施形態では、一例として、絶縁層33に関しては、導体層31,34の導体パターン36に重なる部分(領域)には、絶縁性がより高い(誘電率および誘電正接がより低い)絶縁体33Lを用い(塗布し)、導体層31,34の導体パターン36から外れた部分(領域)には、絶縁性がより低い(誘電率および誘電正接がより高い)絶縁体33Lを用いる(塗布する)ことができる。これにより、一例としては、導体層31,34の導体パターン36が絶縁性のより高い絶縁層33で局所的に覆われた(敷かれた)フレキシブルプリント配線板38を得ることができる。絶縁体33Lの絶縁性は、絶縁体33Lの成分(一例としてはフィラーの含有率)によって変化させることができる。絶縁性がより高い絶縁層33は、絶縁性がより低い絶縁層33より硬い場合がある。このような場合には、上記構成によれば、フレキシブルプリント配線板38の導体パターン36における信号伝送特性の向上と、フレキシブルプリント配線板38の柔軟性の向上とを、両立しやすい。
【0068】
また、本実施形態では、一例として、絶縁層33に関しては、より高い放熱性(伝熱性
)が求められる部分(領域)には、絶縁性がより高い(誘電率および誘電正接がより低い)絶縁体33Lを用い(塗布し)、それ以外の部分(領域)には、放熱性がより低い(誘電率および誘電正接がより高い)絶縁体33Lを用いる(塗布する)ことができる。これにより、一例としては、局所的に放熱性の高い部分(領域)を有する絶縁層33を有したフレキシブルプリント配線板38を得ることができる。
【0069】
なお、本実施形態では、一例として、本発明が、両面に導体パターン36が設けられたフレキシブルプリント配線板38(所謂両面板)として実施された場合が例示されたが、絶縁層33の上記構成による利点は、片面に導体パターン36が設けられたフレキシブルプリント配線板(図示されず)でも同様に得ることができる。また、本実施形態では、一例として、にかかる製造装置1Aは、より多層化されたフレキシブルプリント配線板(図示されず)を製造することもできるし、リジッド基板(プリント配線板、回路基板)を製造することもできる。また、製造装置1Aには、上述したセクション11〜18とは別に、塗布された流動性を有した導体32Lまたは絶縁体33Lを局所的あるいは限定的に硬化させるセクション(図示されず)を設けることができる。この場合、硬化させるセクションは、一例としては、加熱された高温の雰囲気を有した槽として構成することができる。
【0070】
<第6実施形態>
本実施形態でも、上記第5実施形態と同様に、図8のフローチャートに示された手順にしたがって、フレキシブルプリント配線板38が(基板)が製造される。ただし、本実施形態では、一例として、図21に示されるように、製造装置1Bの構成が、上記第5実施形態にかかる製造装置1Aとは異なる。具体的には、図21に示されるように、第1セクション11には、インクジェット印刷装置11B(塗布装置、成膜装置)が設けられている。インクジェット印刷装置11Bの構成は、第5実施形態にかかる製造装置1Aの第2セクション12に設けられたインクジェット印刷装置12A(図20参照)と同様である。よって、ここでは、インクジェット印刷装置11Bについての詳細な説明は省略される。
【0071】
本実施形態にかかる製造装置1Bは、第1セクション11で、スクリーン印刷装置11Aに替えてインクジェット印刷装置11Bが設けられた点を除き、上記第5実施形態にかかる製造装置1Aと同様である。よって、本実施形態にかかる製造装置1Bでも、導体層32および絶縁層33を、導体層31に塗布することで(印刷することで)設けることができる。よって、本実施形態によっても、上記第5実施形態と同様、一例としては、導体層32および絶縁層33の特性を調整しやすい。具体的には、導体層32や絶縁層33の大きさ(例えば、厚さや、高さ、体積等)をフレキシブルプリント配線板38の場所によって異ならせたり、導体層32や絶縁層33の物性(例えば、硬さや、弾性率、導電率等)をフレキシブルプリント配線板38の場所によって異ならせたりしやすい。
【0072】
<第7実施形態>
本実施形態でも、上記第1および第6実施形態と同様に、図8のフローチャートに示された手順にしたがって、フレキシブルプリント配線板38が(基板)が製造される。ただし、本実施形態では、一例として、図22に示されるように、製造装置1Cの構成が、上記第5実施形態にかかる製造装置1Aおよび上記第6実施形態にかかる製造装置1Bとは異なる。具体的には、図22に示されるように、第1セクション11に第2セクション12が統合され、当該統合された第1セクション11に、インクジェット印刷装置11C(塗布装置、成膜装置)が設けられている。インクジェット印刷装置11Cは、一例として、図23に示されるように、ヘッド12a(吐出部、噴射部)や、移動装置12b(移動機構)、搬送装置12c等を有する。ただし、本実施形態では、インクジェット印刷装置11Cは、ヘッド12aとして、流動性を有した状態で導体32Lを塗布するヘッド12a1(第一塗布部)と、流動性を有した状態で絶縁体33Lを塗布するヘッド12a2(第二塗布部)とを有する。そして、製造装置1Cは、移動装置12bや搬送装置12cを動作させることで、ヘッド12aと導体層31との相対位置を変化させながら、導体層31の面31aに、ヘッド12a1およびヘッド12a2から並行して流動性を有した状態の導体32Lおよび絶縁体33Lを塗布する(噴射する、印刷する)ことで、導体層32と絶縁層33とを設ける。
【0073】
本実施形態にかかる製造装置1Cでも、導体層32および絶縁層33を、導体層31に塗布することで(印刷することで)設けることができる。よって、本実施形態によっても、上記第1および第6実施形態と同様、一例としては、導体層32および絶縁層33の特性を調整しやすい。具体的には、導体層32や絶縁層33の大きさ(例えば、厚さや、高さ、体積等)をフレキシブルプリント配線板38の場所によって異ならせたり、導体層32や絶縁層33の物性(例えば、硬さや、弾性率、導電率等)をフレキシブルプリント配線板38の場所によって異ならせたりしやすい。さらに、本実施形態によれば、導体層32および絶縁層33を並行して設けることができる。よって、本実施形態によれば、一例としては、導体層32および絶縁層33を別個に設ける場合に比べて、よりフレキシブルプリント配線板38の製造に要する時間がより短縮されやすい。
【0074】
また、本実施形態にかかる製造装置1Cでは、一例としては、複数のヘッド12a(12a1〜12a4)からそれぞれ異なる媒体(特性、物性、成分等の異なる複数の導体32Lや絶縁体33L)を塗布することができる。よって、本実施形態にかかる製造装置1Cでは、一例としては、局所的に特性や、物性、成分等の異なる導体層32あるいは絶縁層33や、特性や、物性、成分等の異なる複数の導体層32あるいは絶縁層33を設けることができる。よって、より性能の高いフレキシブルプリント配線板38が、より容易に得られやすい。
【0075】
<第8実施形態>
本実施形態でも、上記第1〜第7実施形態と同様に、図8のフローチャートに示された手順にしたがって、フレキシブルプリント配線板38が(基板)が製造される。ただし、本実施形態では、一例として、図24に示されるように、製造装置1Dの構成が、上記第1〜第7実施形態にかかる製造装置1A〜1Cとは異なる。具体的には、図24に示されるように、第2〜第4セクション12〜14が第1セクション11に統合され、当該統合された第1セクション11に、インクジェット印刷装置11D(塗布装置、成膜装置)ならびに押圧装置14D(プレス装置)が設けられている。インクジェット印刷装置11Dおよび押圧装置14Dは、一例として、図25に示されるように、ヘッド12a(吐出部、噴射部)や、移動装置12b(移動機構)、搬送装置12c等を有する。押圧装置14Dは、一対の押圧ローラ14dを有する。搬送装置12cは、供給ローラ12c1,12c2(供給部)や、巻取ローラ12c3(巻取部、回収部)、搬送ローラ12c4(搬送部、ガイド部)を有する。供給ローラ12c1,12c2には、それぞれ、帯状体41a,41bが巻き取られている。帯状体41a,41bは、供給ローラ12c1,12c2から送り出され(引き出され)、搬送ローラ12c4に案内されながら移動し、途中で重ねられて、一対の並行した(平行な)押圧ローラ14dの間に挟まれてプレスされた後、巻取ローラ12c3に巻き取られる(回収される)。供給ローラ12c1から送り出される帯状体41aには、クッション材52を介して導体層31が載せられる。この導体層31に、インクジェット印刷装置11Dで、導体層32および絶縁層33が設けられる。インクジェット印刷装置11Dより下流側で、帯状体41aと帯状体41bとが重ねられる。導体層32および絶縁層33に重ねられる帯状体41bには、導体層32および絶縁層33側に導体層34(図13参照)が取り付けられている。よって、インクジェット印刷装置11Dの下流側で、帯状体41a,41bが重ねられると、導体層31と導体層34との間に、導体層32と絶縁層33とが挟まれた構造35(積層体、内部構造、図13参照)が得られる。構造35は、帯状体41a,41bに挟まれた状態で、帯状体41a,41bに沿って並べられ、順に一対の押圧ローラ14dでプレスされる。構造35は、巻取ローラ12c3で巻き取られたロール内でも帯状体41a,41b間に挟まれた状態のまま、ロールの径方向(重なり方向)に押圧される。押圧ローラ41a,41bおよび巻取ローラ12c3でのプレスにより、導体層31,32,34および絶縁層33が一体化された構造40(図14参照)が得られる。また、押圧ローラ41a,41bまたは巻取ローラ12c3では、必要に応じて絶縁層33を硬化させる加熱装置42が設けられる。加熱装置42は、例えば、温風を吹き出す装置として構成されることができる。
【0076】
そして、本実施形態でも、インクジェット印刷装置11Dは、ヘッド12aとして、流動性を有した状態で導体32Lを塗布するヘッド12a1と、流動性を有した状態で絶縁体33Lを塗布するヘッド12a2とを有する(図23参照)。そして、製造装置1Dは、移動装置12bや搬送装置12cを動作させることで、ヘッド12aと導体層31との相対位置を変化させながら、導体層31の面31aに、ヘッド12a1およびヘッド12a2から並行して流動性を有した状態の導体32Lおよび絶縁体33Lを塗布する(噴射する、印刷する)ことで、導体層32と絶縁層33とを設ける。
【0077】
本実施形態にかかる製造装置1Dでも、導体層32および絶縁層33を、導体層31に塗布することで(印刷することで)設けることができる。よって、本実施形態によっても、上記第1〜第7実施形態と同様、一例としては、導体層32および絶縁層33の特性を調整しやすい。具体的には、導体層32や絶縁層33の大きさ(例えば、厚さや、高さ、体積等)をフレキシブルプリント配線板38の場所によって異ならせたり、導体層32や絶縁層33の物性(例えば、硬さや、弾性率、導電率等)をフレキシブルプリント配線板38の場所によって異ならせたりしやすい。また、本実施形態によれば、導体層32および絶縁層33を並行して設けることができる。さらに、本実施形態によれば、ステップS11〜S14の処理を、帯状体41a,41bを利用して、統合された第1セクション11内で、一連の処理として実行することができる。よって、本実施形態によれば、一例としては、よりフレキシブルプリント配線板38の製造に要する時間がより短縮されやすい。
【0078】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、上記実施形態は一例であって、種々に変形して実施することができる。例えば、セクションや装置の数は、より多くすることができるし、より少なくすることもできる。また、装置、第一塗布部、第二塗布部、帯状体、パレット、搬送装置、導体層、絶縁層、フレキシブルプリント配線板、基板、塗布装置等のスペック(構造や、方向、形状、大きさ、長さ、幅、厚さ、高さ、数、配置、位置、材質等)は、適宜に変更して実施することができる。
【符号の説明】
【0079】
1A〜1D…製造装置(フレキシブルプリント配線板の製造装置、基板製造装置)、11…第1セクション、12…第2セクション、13…第3セクション、14…第4セクション、15…第5セクション、16…第6セクション、17…第7セクション、18…第8セクション、11A…スクリーン印刷装置(装置)、11B〜1D…インクジェット印刷装置(装置)、12A…インクジェット印刷装置(装置)、12a1…ヘッド(第一塗布部)、12a2…ヘッド(第二塗布部)、19…搬送装置、31…導体層(第一導体層)、31a…面、32…導体層(第二導体層)、33…絶縁層(第一絶縁層)、34…導体層(第三導体層)、35…構造、38…フレキシブルプリント配線板(基板)、40…構造、41a,41b…帯状体、51…パレット。
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、フレキシブルプリント配線板の製造装置、基板製造装置、および塗布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、絶縁体で構成された基層(内層)の両面に導体パターンが設けられ、該導体パターンが絶縁体で構成された外層で覆われたフレキシブルプリント配線板が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−061243号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
フレキシブルプリント配線板等の基板の製造に関しては、より不都合の少ない基板を製造しやすい製造装置が望まれていた。
【0005】
そこで、本発明の実施形態は、一例として、より不都合の少ない基板を製造しやすい製造装置を得ることを、目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態にかかるフレキシブルプリント配線板の製造装置は、第二導体層を設ける装置と、第一絶縁層を設ける装置と、第一導体層、第二導体層、第一絶縁層、および第三導体層を一体化する装置と、導体パターンを形成する装置と、第二絶縁層で覆う装置と、を備える。第二導体層を設ける装置は、第一導体層の面に部分的に第二導体層を設ける。第一絶縁層を設ける装置は、第一導体層の面に部分的に第一絶縁層を設ける。第一導体層、第二導体層、第一絶縁層、および第三導体層を一体化する装置は、第一導体層の面に設けられた第二導体層および第一絶縁層が第一導体層とは反対側から第三導体層で覆われた状態で、一体化する。導体パターンを形成する装置は、第一導体層、第二導体層、第一絶縁層、および第三導体層が一体化された構造の第一導体層および第三導体層のうち少なくとも一方を部分的に除去して導体パターンを形成する。第二絶縁層で覆う装置は、導体パターンが形成された構造の両側を第二絶縁層で覆う。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1は、第1実施形態に係るテレビジョン受像機の正面図である。
【図2】図2は、第1実施形態に係るプリント配線板を模式的に示す断面図である。
【図3】図3は、第2実施形態に係るプリント配線板を模式的に示す断面図である。
【図4】図4は、第3実施形態に係るプリント配線板を模式的に示す平面図である。
【図5】図5は、第4実施形態に係る電子機器の斜視図である。
【図6】図6は、図5中に示された電子機器の内部の下面図である。
【図7】図7は、図6中に示された一つのフレキシブルプリント配線板を示す断面図である。
【図8】図8は、実施形態にかかる基板の製造方法の一例のフローチャートである。
【図9】図9は、図8の製造方法で製造される構造の一例のステップ1での平面図である。
【図10】図10は、図9のX−X断面図である。
【図11】図11は、図8の製造方法で製造される構造の一例のステップ2での平面図である。
【図12】図12は、図11のXII−XII断面図である。
【図13】図13は、図8の製造方法で製造される構造の一例のステップ3での断面図である。
【図14】図14は、図8の製造方法で製造される構造の一例のステップ4での断面図である。
【図15】図15は、図8の製造方法で製造される構造の一例のステップ5での平面図である。
【図16】図16は、図8の製造方法で製造された基板の一例の平面図である。
【図17】図17は、図16のXVII−XVII断面図である。
【図18】図18は、第5実施形態にかかる基板の製造装置の一例の概略構成が模式的に示された平面図である。
【図19】図19は、第5実施形態にかかる基板の製造装置に含まれるスクリーン印刷装置の一例の一部の概略構成が模式的に示された側面図である。
【図20】図20は、第5実施形態にかかる基板の製造装置に含まれるインクジェット印刷装置の一例の一部の概略構成が模式的に示された正面図である。
【図21】図21は、第6実施形態にかかる基板の製造装置の一例の概略構成が模式的に示された平面図である。
【図22】図22は、第7実施形態にかかる基板の製造装置の一例の概略構成が模式的に示された平面図である。
【図23】図23は、第7実施形態にかかる基板の製造装置に含まれるインクジェット印刷装置の一例の一部の概略構成が模式的に示された正面図である。
【図24】図24は、第8実施形態にかかる基板の製造装置の一例の概略構成が模式的に示された平面図である。
【図25】図25は、第8実施形態にかかる基板の製造装置に含まれるインクジェット印刷装置および押圧装置の一例の概略構成が模式的に示された側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下の複数の実施形態には、同様の構成要素が含まれている。よって、以下では、同様の構成要素には共通の符号が付与される。また、重複する説明が省略される。
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係るテレビジョン受像機181を示す。テレビジョン受像機181は、「電子機器」の一例である。テレビジョン受像機181は、本体部182と、この本体部182を支持したスタンド183とを有する。本体部182は、筐体184と、この筐体184に収容された表示装置185とを有する。表示装置185は、画像を表示させる表示画面185aを有する。筐体184は、表示画面185aを露出させる開口部184aを有する。
【0009】
図1に示すように、筐体184は、フレキシブルプリント配線板38を収容している。なお筐体184は、本実施形態に係るフレキシブルプリント配線板38に代えて、下記の第2または第3の実施形態に係るフレキシブルプリント配線板38を収容してもよい。
【0010】
以下、フレキシブルプリント配線板38について詳しく説明する。
図2乃至図6は、第1実施形態に係るフレキシブルプリント配線板38を開示している。フレキシブルプリント配線板38は、柔軟性(可撓性)を有し、例えば比較的大きく変形させる(曲げる)ことができる。なお本明細書でいう「フレキシブルプリント配線板」は、90度を超えるような大きな角度で折り曲げ可能なものに限定されるものではなく、小さな角度(例えば5度以上の角度)で折り曲げ可能なものを含む。
【0011】
図2は、フレキシブルプリント配線板38の構成の一例を模式的に示す。フレキシブルプリント配線板38は、絶縁部102、ビア103、第1導体パターン104、第2導体パターン105、第1カバーレイ106、及び第2カバーレイ107を有する。
【0012】
絶縁部102は、例えば基材、またはベースフィルムとも呼ばれ、フィルム状の絶縁体(絶縁層)である。絶縁部102は、硬化後に柔軟性(可撓性)を有する絶縁材料111(図3、図4参照)で構成されている。絶縁部102は、例えば熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂などの絶縁材料111(絶縁樹脂)が硬化されることで設けられている。
【0013】
本実施形態に係る絶縁材料111は、例えばスクリーン印刷またはインクジェットで塗布されることが可能な特性(粘度や硬度)を有する。絶縁材料111は、例えば可溶性であり、液状(インク状)になる。
【0014】
本実施形態に係る絶縁材料111の具体例としては、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、液晶ポリマー樹脂、シリコン樹脂、ウレタン樹脂、及びフッ素樹脂のいずれか単体、またはこれらの中のいずれかを組み合わせた混合物である。なお、絶縁材料111は、上記例に限られるものではない。
【0015】
図2に示すように、絶縁部102は、第1面102aと、この第1面102aとは反対側に位置された第2面102bとを有する。絶縁部102には、第1面102aと第2面102bとに亘る穴部102cが設けられている。すなわち、穴部102cは、第1面102aと第2面102bとの間を貫通している。
【0016】
ビア103は、絶縁部102の穴部102cに位置されている。ビア103は、絶縁部102の第1面102aと第2面102bとに亘る。ビア103の厚さT1は、絶縁部102の厚さT2と略同じである。ビア103は、例えば導電性のペースト112(図3、図4参照)が硬化されることで設けられている。
【0017】
導電性のペースト112は、例えば、導電ペースト、またははんだペースト(はんだ系ペースト)である。「導電ペースト」の一例は、導電粉と熱硬化性樹脂(または熱可塑性樹脂)とを混ぜたものであり、例えば、銅ペースト、銀ペースト、またはこれらを混ぜたものがある。また、「導電ペースト」は、銅ナノペーストや銀ナノペーストといったナノペーストでもよい。「はんだペースト」の一例は、半田合金の微粒子とフラックスとを混ぜたものである。
【0018】
本実施形態に係る導電性のペースト112は、例えばスクリーン印刷またはインクジェットで塗布されることが可能な特性(粘度や硬度)を有する。なお、導電性のペースト112は、上記例に限られるものではない。
【0019】
図2に示すように、第1導体パターン104(第1導体層)は、絶縁部102の第1面102aに設けられている。第1導体パターン104は、ビア103に接続(接合)され、ビア103に電気的に接続されている。第2導体パターン105(第2導体層)は、絶縁部102の第2面102bに設けられている。第2導体パターン105は、ビア103に接続(接合)され、ビア103に電気的に接続されている。すなわち、ビア103は、第1導体パターン104と第2導体パターン105とを電気的に接続している。
【0020】
第1導体パターン104及び第2導体パターン105は、例えばそれぞれ配線パターン(信号層)である。なお第1導体パターン104及び第2導体パターン105のいずれか一方は、電源層またはグランド層となるベタ層であってもよい。
【0021】
フレキシブルプリント配線板38は、例えば第1導体パターン104及び第2導体パターン105が絶縁部102に直接に積層されたいわゆる2層材である。
【0022】
図2に示すように、第1カバーレイ106(第1カバー層)は、第1導体パターン104に重ねられている。第2カバーレイ107(第2カバー層)は、第2導体パターン105に重ねられている。第1カバーレイ106及び第2カバーレイ107は、それぞれ保護用の絶縁体(絶縁層)であり、フレキシブルプリント配線板38の外部に露出されている。
【0023】
図2に示すように、第1カバーレイ106及び第2カバーレイ107は、それぞれ例えば表面層113と、この表面層113と絶縁部102との間に位置された接着層114(接着剤)とを含む。表面層113は、例えばポリイミド樹脂やポリエチレンテレフタレート樹脂などの絶縁樹脂で構成されている。
【0024】
<第2実施形態>
図3は、第2実施形態に係るフレキシブルプリント配線板38を示す。本実施形態に係るフレキシブルプリント配線板38は、部分的に厚みが異なる。フレキシブルプリント配線板38の一例は、第1部分131と、この第1部分131よりも厚い第2部分132とを有する。
【0025】
第1部分131は、部品(電子部品)が実装されない領域であり、柔軟に変形する(曲がる)ことが優先された領域である。第1部分131は、上記第1実施形態のフレキシブルプリント配線板38と略同じ構成を有する。すなわち、第1部分131は、第1絶縁部102、ビア103、第1導体パターン104、第2導体パターン105、第1カバーレイ106、及び第2カバーレイ107を有する。
【0026】
第2部分132は、部品134(電子部品)が実装される領域であり、第1部分131に比べて変形しにくい(曲がりにくい)領域である。第2部分132は、第2絶縁部135、第1導体パターン104、第2導体パターン105(図示しない)、第1カバーレイ106、及び第2カバーレイ107を有する。第2絶縁部135は、第1絶縁部102に相当する部分であり、第1導体パターン104と第2導体パターン105との間に位置される。第2絶縁部135は、第1絶縁部102に比べて厚い。
【0027】
第2絶縁部135は、第1絶縁部102に対して、絶縁材料111の塗布される厚さを変えることで形成される。このような塗布の厚さを部分的に変えることは、例えばインクジェットによる塗布で行うことができる。このような構成によれば、部品実装の安定性が向上し、フレキシブルプリント配線板38の信頼性が向上する。
【0028】
なお、図3に示す一例では、第2部分132は、ビア103を有しないが、これに限定されるものではない。第2部分132は、ビア103を有してもよい。なおこの場合、第2部分132のビア103は、第1部分131のビア103に対して、導電性のペースト112の塗布される厚さを変えることで形成される。
【0029】
<第3実施形態>
図4は、第3実施形態に係るフレキシブルプリント配線板38を示す。なお図4では、説明の便宜上、第1導体パターン104にハッチングを施している。本実施形態に係るフレキシブルプリント配線板38は、部分的に絶縁材料の種類が異なる。図4に示すように、第1導体パターン104(または第2導体パターン105)は、パッド141と、パッド141の間を結ぶ信号線142とを有する。信号線142は、例えば高速伝送に使用される配線(例えば差動配線)である。
【0030】
本実施形態のフレキシブルプリント配線板38は、第1部分143と、第2部分144とを有する。第1部分143は、例えば信号線142が設けられていない領域である。第1部分143は、上記第1の実施形態のフレキシブルプリント配線板38と略同じ構成を有する。すなわち、第1部分143は、第1絶縁部102、ビア103、第1導体パターン104、第2導体パターン105、第1カバーレイ106、及び第2カバーレイ107を有する。
【0031】
第2部分144は、信号線142に対応した領域、すなわち信号線142が設けられた領域である。第2部分144は、例えば信号線142の直下に位置した領域である。第2部分144は、第2絶縁部146、第1導体パターン104、第2導体パターン105、第1カバーレイ106、及び第2カバーレイ107を有する。第2絶縁部146は、第1絶縁部102に相当する部分であり、第1導体パターン104と第2導体パターン105との間に位置される。第2絶縁部146は、第1絶縁部102とは異なる種類の絶縁材料111で構成されている。
【0032】
ここで、プリント配線板上の伝送では、周波数が高くなるほど伝送損失を招き、信号の減衰に伴う伝送品質の低下が課題となる。伝送損失は、信号が伝達される導体で生じる導体損失、誘電体と接することで生じる誘電損失、及び配線の屈曲部、末端などで生じる放射損失の和となる。誘電損失は、誘電率と誘電正接などに起因する。このため、誘電率及び誘電正接が小さな材料でプリント配線板を構成すると、伝送損失が小さくなる。
【0033】
しかしながら、誘電率及び誘電正接が小さな材料は、一般的に高価である。そのため、誘電率及び誘電正接が小さな材料で、プリント配線板の全体を構成すると、製造コストが高くなる。
【0034】
そこで、本実施形態では、第2絶縁部146は、第1絶縁部102に対して、塗布される絶縁材料111の種類を変えることで形成される。このような塗布される絶縁材料111の種類を部分的に変えることは、例えばインクジェットによる塗布で行うことができる。
【0035】
具体的には、第2絶縁部146の絶縁材料111として、第1絶縁部102の絶縁材料111よりも誘電率及び誘電正接が小さな材料を用いる。第2絶縁部146の絶縁材料111の一例は、フィラーを多く含むものである。一方で、第1絶縁部102の絶縁材料111として、一般的な材料を用いる。これにより、フレキシブルプリント配線板38の製造コストを抑えつつ、伝送損失を抑制することができる。
【0036】
なお、フィラーを多く含む絶縁材料111は、フィラーが少ない絶縁材料111に比べて硬い。そこで、上記第2実施形態のように、柔軟性が優先された第1部分131と、部品実装領域としての第2部分132とを有したフレキシブルプリント配線板38において、第1部分131と第2部分132との絶縁材料111を変えてもよい。例えば、第1部分131の絶縁材料111は、一般的な材料である。第2部分132の絶縁材料111は、第1部分131の絶縁材料111よりもフィラーを多く含むものが用いられる。このような構成によれば、部品実装の安定性が向上し、フレキシブルプリント配線板38の信頼性が向上する。
【0037】
<第4実施形態>
図5は、第4実施形態に係る電子機器151を示す。電子機器151は、例えばノートブック型ポータブルコンピュータ(ノートPC)である。なお本実施形態が適用可能な電子機器は、上記例に限られず、テレビジョン受像機、タブレット端末、スレート型ポータブルコンピュータ(スレートPC)、携帯電話、スマートフォン、電子書籍端末、ゲーム機などを含む種々の電子機器に広く適用可能である。
【0038】
図5に示すように、電子機器151は、第1ユニット152と、第2ユニット153と、ヒンジ部154a,154bとを有する。第1ユニット152は、例えば電子機器本体である。第1ユニット152は、第1筐体156を備えている。
【0039】
第2ユニット153は、例えば表示部であり、第2筐体157と、この第2筐体157に収容された表示装置158とを備えている。表示装置158は、例えば液晶ディスプレイであるが、これに限定されるものではない。表示装置158は、画像が表示される表示画面158aを有する。第2筐体157は、表示画面158aを外部に露出させる開口部157aを有する。
【0040】
第2筐体157は、ヒンジ部154a,154bによって、第1筐体156の後端部に回動可能(開閉可能)に連結されている。これにより電子機器は、第1ユニット152と第2ユニット153とが重ねられた第1の位置と、第1ユニット152と第2ユニット153とが開かれた第2の位置との間で回動可能である。
【0041】
次に、第1筐体156(以下、単に筐体156)の内部を詳しく説明する。
図6に示すように、筐体156は、第1回路基板161、第2回路基板162、第3回路基板163、ODD(Optical Disk Drive)ユニット164、及びHDD(Hard Disk Drive)ユニット165を備えている。
【0042】
第1回路基板161は、例えばメインボードであり、CPU166が実装されている。第2回路基板162は、筐体156の端部に位置され、第1コネクタ167が実装されている。第3回路基板163は、第2回路基板162とは異なる筐体156の端部に位置され、第2コネクタ168が実装されている。第1コネクタ167及び第2コネクタ168は、例えば高周波帯(例えばギガヘルツ帯)の信号が流される。
【0043】
電子機器151は、さらに、第2回路基板162、第3回路基板163、ODDユニット164、及びHDDユニット165のぞれぞれと、第1回路基板161との間に、これらを電気的に接続するフレキシブルプリント配線板38を有する。このフレキシブルプリント配線板38は、上記第1乃至第3の実施形態のいずれかのフレキシブルプリント配線板である。
【0044】
図7は、ODDユニット164と第1回路基板161との間を繋ぐフレキシブルプリント配線板38を示す。フレキシブルプリント配線板38は、ODDユニット164に接続されるコネクタ169が実装されている。コネクタ169は、「電子部品」の一例である。電子部品が実装されたフレキシブルプリント配線板38は、「モジュール」の一例である。
【0045】
図7に示すように、フレキシブルプリント配線板38は、例えば、筐体156の内面156aに沿う第1部分171と、この第1部分171に対して曲がり、筐体156の内面156aから離間した第2部分172とを有する。
【0046】
このような構成によれば、フレキシブルプリント配線板38の薄型化及び軽量化を通じて、電子機器151の薄型化及び軽量化を図ることができる。また、近年の電子機器151は、薄型化のためメインボード(第1回路基板161)を小型化する傾向にある。このため、第1回路基板161と筐体156の側面のコネクタ167,168との間の距離が長くなり、この間で電気的な損失を生じやすい。
【0047】
一方で、本実施形態の構成によれば、上記第1実施形態と同様に、電気抵抗率の小さな導電性のペースト112を使用することができるので、第1回路基板161とコネクタ167,168との間の損失を抑制することができる。これは、電子機器151の性能向上に寄与する。
【0048】
<第5実施形態>
(製造方法)
まずは、図8〜10が参照されながら、本実施形態にかかるフレキシブルプリント配線板38(図16参照)の製造方法が説明される。本実施形態では、一例として、図8に示される手順(ステップ(工程、アクト)S1〜S7)にしたがって、フレキシブルプリント配線板38が製造される。
【0049】
ステップS1では、一例として、図9,10に示されるように、導体層31(第一導体層、導電性膜)の面31aに、導体層32(第二導体層)が設けられる。導体層31は、一例としては、銅箔である。導体層31は、一例として、図9に示されるように、矩形状(例えば長方形状)かつ膜状である。
【0050】
導体層31は、一例として、図9,10に示されるように、パレット51(ワーク、プレート、載置板、支持部材、搬送体、台)およびクッション材52(緩衝材、弾性体)に載せられることができる。パレット51およびクッション材52は、一例としては、導体層31より広く、導体層31の周縁より外側へ張り出している。パレット51は、矩形状(例えば長方形状)かつ板状である。クッション材52は、矩形状(例えば長方形状)かつシート状である。クッション材52は、パレット51上に載せられる。導体層31は、クッション材52を介してパレット51上に載せられる。クッション材52は、パレット51より柔らかく、可撓性(柔軟性、弾性)を有している。製造中の各段階で、導体層31およびこの導体層31上に設けられる各層および各構造物は、パレット51およびクッション材52、またはパレット51のみに載せられた状態で搬送されることができる。パレット51は、柔らかく撓みやすい状態の導体層31やこの導体層31上に設けられる各層および各構造物を支持する支持部材として、機能する。
【0051】
ステップS1では、導体層32は、一例として、導体層31の面31a上に流動性を有した状態の導体32Lが塗布されることで、形成されることができる。導体32Lは、一例としては、面31a上に、選択的に(部分的に)塗布される。導体32Lの塗布は、印刷技術を利用あるいは応用して行うことができる。導体32Lは、このステップS1より後の段階(本実施形態では、一例としてステップS4)で硬化(固化、乾燥)される。また、導体32Lは、ステップS1で、局所的あるいは限定的に硬化されることができる。導体32Lは、例えば、導電性ペースト(本実施形態では、一例として銀ペーストや銅ペースト等)である。
【0052】
ステップS2では、一例として、図11,12に示されるように、導体層31の面31aに、絶縁層33(第一絶縁層)が設けられる。ステップS2では、絶縁層33は、一例として、導体層31の面31a上に流動性を有した状態の絶縁体33Lが塗布されることで、形成されることができる。絶縁体33Lは、一例としては、面31a上に、選択的に(部分的に)塗布される。この際、絶縁体33Lは、面31a上に、導体32L(導体層32)と並べて、導体32Lが塗布された部分(導体層32が設けられた部分、領域)とは外れた部分(領域)に(導体32Lを避けて)塗布される。絶縁体33Lは、このステップS1より後の段階(本実施形態では、一例としてステップS4)で硬化(固化、乾燥)される。また、絶縁体33Lは、ステップS2で、局所的あるいは限定的に硬化されることができる。絶縁体33Lは、例えば、熱硬化性の合成樹脂材料(本実施形態では、一例としてポリイミド等)である。
【0053】
ステップS1およびステップS2は、並行して行われることができる。また、ステップS1およびステップS2のうち一方が先に、他方が後に行われることができる。ステップS1がステップS2より前に行われた場合には、絶縁層33が導体層31と導体層32との接触部分(接合部分)に介在しにくくなる。また、一例として、ステップS1がステップS2より前に行われた場合には、導体層31の面31aの劣化(例えば酸化等)によって例えば導体層31と導体層32との接合部分の電気抵抗が増大したり導体層31と導体層32との接合強度が低下したりするのが、抑制されやすい。
【0054】
また、ステップS1,S2では、一例として、図12に示されるように、導体層32を絶縁層33より高く突出させることができる。この場合、後のステップS4で、導体層32と導体層34(図13,14参照)とがより確実に電気的に接続されやすい。さらに、ステップS1,S2では、一例として、図11に示されるように、導体32L(導体層32)と絶縁体33L(絶縁層33)との間に隙間gを設けることができる。この隙間gには、後のステップS4で、厚さ方向(高さ方向、図12の上下方向)に潰された導体層32または絶縁層33が入り込む。また、ステップS1,S2の後には、導体層32または絶縁層33を部分的にあるいは限定的に硬化(固化、乾燥)させるステップが行われてもよい。
【0055】
ステップS3では、一例として、図13に示されるように、導体層32および絶縁層33の、導体層31とは反対側が、導体層34(第三導体層、導電性膜)で覆われる。そして、次のステップS4では、一例として、図14に示されるように、導体層32および絶縁層33が、導体層31および導体層34によって挟まれ、押圧される。このとき、導体層32および絶縁層33が導体層31および導体層34で挟まれた構造35は、クッション材52を介して、押圧部14a(およびパレット51)に挟まれる。ステップS4では、一例として、図14の状態で、構造35が押圧されかつ加熱されて、導体層31,32,34および絶縁層33が一体化された構造40が得られる。
【0056】
その後、ステップS5では、一例として、導体層31および導体層34のうち少なくとも一方が部分的に除去されて、図15に示されるような導体パターン36が形成される。次のステップS6では、一例として、導体層31,34を覆う絶縁層37(外層、図17参照)が設けられたり、補強部材(補強板、図示されず)が設けられたり、導体層31や導体層34の表面処理(例えば、プリフラックスの塗布、メッキ処理等)が行われたりといった後処理が行われ、さらにステップS7で例えば切断等の外形の加工が行われて、一例としては、図16,17に示されるようなフレキシブルプリント配線板38(基板)が得られる。なお、図8〜10では、フレキシブルプリント配線板38の比較的単純な構成が例示されたが、上記の製造方法によって、より複雑な構成を有したフレキシブルプリント配線板38を製造できることは勿論である。
【0057】
上述した製造方法によれば、両面に導体パターン36が設けられた所謂両面板において基層(内層)となる絶縁層33を、導体層31に流動性を有した絶縁体33Lを塗布することで設けることができる。よって、一例としては、塗布の制御により、場所(位置)によって、絶縁層33(基層)の成分や厚さ等の特性を異ならせたりすることができる。よって、一例としては、より不都合の少ないフレキシブルプリント配線板38(基板)が得られやすい。また、一例としては、絶縁層33(基層)の特性がより容易に変更されやすい。
【0058】
(製造装置)
本実施形態では、一例として、図18に示されるような製造装置1A(フレキシブルプリント配線板38の製造装置、基板の製造装置)により、図8に示された上述されたフローにしたがって、フレキシブルプリント配線板38を製造することができる。製造装置1A(フレキシブルプリント配線板の製造装置、製造設備、製造システム)は、複数(本実施形態では、一例として、八つ)のセクション11〜18(装置、ステージ、ユニット、モジュール、設備)を備えている。具体的には、例えば、第1セクション11では、図8のステップS1の処理が実行される。第2セクション12では、図8のステップS2の処理が実行される。第3セクション13では、図8のステップS3の処理が実行される。第4セクション14では、図8のステップS4の処理が実行される。第5セクション15では、図8のステップS5の処理が実行される。第6セクション16では、図8のステップS6の処理のうち、補強部材や、絶縁層37(外層)等を設ける処理が実行される。第7セクションでは、図8のステップS6の処理のうち、導体層31、32,34等のうち露出している部分に対する表面処理が実行される。また、第8セクション18では、図8のステップS7の処理が実行される。また、製造装置1Aは、複数のセクション11〜18間でパレット51を搬送する搬送装置19を備えている。なお、図18に示された複数のセクション11〜18の区分や、レイアウト(位置、方向、順序等)、大きさ(広さ、高さ等)等はあくまで一例であって、製造装置1Aは種々に変形して構成することができる。
【0059】
本実施形態では、一例として、第1セクション11には、図19に示されるスクリーン印刷装置11A(塗布装置、成膜装置)が設けられている。スクリーン印刷装置11Aは、一例として、スクリーン11aや、ノズル11b(吐出部、ディスペンサ)、ブレード11c(へら)、移動装置11d(移動機構)等を有する。ノズル11bおよびブレード11cは、移動装置11dのスライダ11eに取り付けられる。スライダ11eは、移動装置11dのレール11fに沿って、導体層31の面31aに沿って往復動することができる。また、スライダ11eは、面31aに近付いた位置(図19に示された位置)と面31aから遠ざかった位置との間で移動することができる。スクリーン11aは、面31aから離れた位置で面31aに沿って設けられる。ただし、スクリーン11aは、ブレード11cに押されて、面31aに接触することができる。ノズル11bは、流動性を有した媒体(導体32L等、インク)を、スクリーン11aの面31aとは反対側に吐出する。ブレード11cの先端部(縁部、端部、辺部)は、面31aおよびスクリーン11aに沿い、移動装置11dによってスクリーン11aを面31aに押しつけながら、面31aおよびスクリーン11aに沿って(図19の例では左右方向に)移動することができる。すなわち、ブレード11c(の先端部)は、スクリーン11aおよびスクリーン11aの面31aとは反対側に吐出された媒体を、面31a側にこすりつけることができる。スクリーン11aには、媒体を通す孔11gが設けられている。このような構成において、ノズル11bは、移動装置11dによって移動しながらスクリーン11a上に媒体を吐出する。ブレード11cの先端部は、媒体が吐出されたスクリーン11aを面31aに押しつけながら、移動装置11dによって面31aに沿って移動する。これにより、インクがスクリーン11aの孔11gを通り、面31a上に塗布される。スクリーン印刷装置11Aは、孔11gのパターン(位置、大きさ、レイアウト等)に対応したパターンで、面31aに媒体(導体32L等、インク)を塗布する。
【0060】
本実施形態では、一例として、第2セクション12には、図20に示されるインクジェット印刷装置12A(塗布装置、成膜装置)が設けられている。インクジェット印刷装置12Aは、一例として、ヘッド12a(吐出部、噴射部)や、移動装置12b(移動機構)、搬送装置12c等を有する。ヘッド12aは、移動装置12bのスライダ12dに取り付けられる。スライダ12dは、移動装置12bのレール12eに沿って、導体層31の面31aに沿って移動することができる。ヘッド12aは、移動装置12bによって移動しながら、制御部(図示されず)によって制御されたタイミングで、媒体を吐出する(噴射する)。また、導体層31は、パレット51に載せられた状態で、搬送装置12c(例えば搬送ローラ12c4等)によって搬送される。移動装置12bによるヘッド12aの移動方向と、搬送装置12cによる導体層31の移動方向とは交叉(本実施形態では、一例として直交)している。制御部は、面31a上に媒体の所定のパターンが形成されるよう、ヘッド12aから媒体が吐出されるタイミング、ならびに移動装置12bおよび搬送装置12cの動作を制御する。このようにして、インクジェット印刷装置12Aは、所定のパターンで、面31aに媒体(絶縁体33L等、インク)を塗布する。
【0061】
本実施形態では、一例として、第3セクション13には、載置装置13A(図18参照)が設けられている。載置装置13Aは、一例として、パレット51を載せるステージ(載置部、図示されず)や、載置する対象物を搬送する搬送装置(載置装置、図示されず)等を有する。この載置装置13Aでは、導体層32および絶縁層33が設けられた導体層31に、導体層34が載せられる。これにより、図13に示されるように、導体層32および絶縁層33が導体層31の反対側から導体層34で覆われる。すなわち、導体層32および絶縁層33が、導体層31と導体層34とで挟まれる。載置対象物(一例としては、導体層34)は、搬送装置によって、あるいは作業者の手作業によって、載せられることができる。
【0062】
本実施形態では、一例として、第4セクション14には、押圧装置14A(プレス装置、図14参照)が設けられている。押圧装置14Aは、一例として、押圧部14aや、ヒータ14b(加熱部)等を有する。押圧部14aは、相互に対向した並行した(平行な)面14cを有している。パレット51およびクッション材52に載せられた構造35は、クッション材52で覆われた状態で、二つの押圧部14aの面14c間に挟まれる。すなわち、構造35は、クッション材52を介して二つの押圧部14aに挟まれる。押圧部14aには、ヒータ14bが設けられている。このような構造で、押圧装置14Aは、ヒータ14bで加熱しながら、押圧部14aによって構造35を押圧する(プレスする)。これにより、導体層31,32,34および絶縁層33が一体化された構造40が得られる。なお、押圧装置14Aは、一例として、積み重ねられた複数の構造35を押圧し、複数の構造40を得ることができる。また、押圧装置14Aでは、一例として、場所によってクッション材52の厚さを異ならせることで、構造40の厚さを変化させることができる。すなわち、クッション材52が厚い部分では、構造40の厚さが薄くなり(高さが低くなり)、クッション材52が薄い部分では、構造40の厚さが厚くなる(高さが高くなる)。押圧装置14Aで押圧される際(ステップS4)、導体層31,34は、導体層32(導体32L)および絶縁層33(絶縁体33L)より硬いので、クッション材52の厚さによって、導体層32または絶縁層33の厚さを局所的に変化させることができる。
【0063】
本実施形態では、一例として、第5セクション15には、第4セクション14で得られた構造40に例えばマスクエッチング等によって導体パターン36を設ける導体パターン形成装置15Aが設けられる。また、一例として、第6セクション16には、第5セクション15で導体パターン36が形成された構造の両側に例えば接着剤39を介しての接着等によって絶縁層37(外層、第三絶縁層、図16,17参照)や補強部材等を設ける外層形成装置16Aが設けられる。また、一例として、第7セクション17には、第6セクション16で絶縁層37や補強部材等が設けられた構造の露出している導体部等に表面処理を施す表面処理装置17Aが設けられる。また、一例として、第8セクション18には、第7セクション17で表面処理が施された構造を外形加工してフレキシブルプリント配線板38を得る外形加工装置18Aが設けられる。
【0064】
また、本実施形態では、一例として、搬送装置19は、レール19aや、スライダ19b、回動支持部19c、アーム19d、支持部19eを有する。本実施形態にかかる製造装置1Aでは、一例として、第1セクション11〜第4セクション14の列と、第5セクション15〜第8セクション18の列とが、間隔をあけて並行して(本実施形態では、一例として平行に)設けられている。搬送装置19は、それらの列の間に(間隔に)位置されている。レール19aは、第1セクション11〜第4セクション14の列、ならびに第5セクション15〜第8セクション18の列と並行して、これらの列に沿って延びている。スライダ19bは、レール19aに沿って移動する。回動支持部19cは、アーム19dおよび支持部19eをスライダ19bに回転可能に支持する。アーム19dは、各セクション11〜18内の位置と各セクション11〜18外でレール19a側の位置との間で、支持部19eを移動させる。支持部19eは、パレット51を支持する。このような構成により、搬送装置19は、パレット51(ならびにパレット51に載せられた製造途中あるいは完成された構造)を、各セクション11〜18間で、搬送する(移動させる)ことができる。
【0065】
以上の本実施形態によれば、一例として、流動性を有した状態で導体32Lや絶縁体33Lを塗布することで(印刷することで)、導体層31に、導体層32および絶縁層33を設けることができる。よって、本実施形態によれば、一例としては、導体層32および絶縁層33の特性を調整しやすい。具体的には、導体層32や絶縁層33の大きさ(例えば、厚さや、高さ、体積等)をフレキシブルプリント配線板38の場所によって異ならせたり、導体層32や絶縁層33の物性(例えば、硬さや、弾性率、導電率等)をフレキシブルプリント配線板38の場所によって異ならせたりしやすい。導体層32や絶縁層33の厚さ(高さ)は、一例としては、導体層31の面31a上への導体32Lや絶縁体33Lの重ね塗りによって、変化させることができる。すなわち、重ね塗りした部分(領域)や重ね塗りの回数が多い部分での導体層32や絶縁層33の大きさは、重ね塗りしない部分(領域)や重ね塗りの回数が少ない部分での導体層32や絶縁層33の大きさより大きい。なお、導体32Lや絶縁体33Lは、導体層31に塗られた後、図示されない加熱装置や乾燥装置によって加熱されたり乾燥されたりすることで、部分的あるいは限定的に固化されることができる。また、導体層32や絶縁層33の厚さ(高さ)は、一例としては、ノズル11bやヘッド12aからの流動性を有した状態の導体32Lや絶縁体33Lの吐出量や噴射量(流量)を制御することで、変化させることができる。また、導体層32や絶縁層33の物性は、一例としては、複数のノズル11bやヘッド12aを用いることで、変化させることができる。
【0066】
そして、上述したように、絶縁層33の厚さ(高さ)を局所的に異ならせることにより、一例として、絶縁層33に、局所的に他の部分(領域)より薄い部分(領域)を設けることができる。絶縁層33の薄い部分は、他の部分より曲がりやすい。よって、一例としては、フレキシブルプリント配線板38が曲げられる部分で、絶縁層33を薄くすることができる。また、上述したように、絶縁層33の厚さ(高さ)を局所的に異ならせることにより、一例として、絶縁層33に、局所的に他の部分(領域)より厚い部分(領域)を設けることができる。絶縁層3の厚い部分は、他の部分より曲がりにくい。よって、一例としては、コネクタ(図示されず)に接続される部分や、端子が設けられる部分など、フレキシブルプリント配線板38のより高い剛性や強度が求められる部分で、絶縁層33を厚くすることができる。よって、一例としては、補強部材を省略できる場合もある。
【0067】
また、本実施形態では、一例として、絶縁層33に関しては、導体層31,34の導体パターン36に重なる部分(領域)には、絶縁性がより高い(誘電率および誘電正接がより低い)絶縁体33Lを用い(塗布し)、導体層31,34の導体パターン36から外れた部分(領域)には、絶縁性がより低い(誘電率および誘電正接がより高い)絶縁体33Lを用いる(塗布する)ことができる。これにより、一例としては、導体層31,34の導体パターン36が絶縁性のより高い絶縁層33で局所的に覆われた(敷かれた)フレキシブルプリント配線板38を得ることができる。絶縁体33Lの絶縁性は、絶縁体33Lの成分(一例としてはフィラーの含有率)によって変化させることができる。絶縁性がより高い絶縁層33は、絶縁性がより低い絶縁層33より硬い場合がある。このような場合には、上記構成によれば、フレキシブルプリント配線板38の導体パターン36における信号伝送特性の向上と、フレキシブルプリント配線板38の柔軟性の向上とを、両立しやすい。
【0068】
また、本実施形態では、一例として、絶縁層33に関しては、より高い放熱性(伝熱性
)が求められる部分(領域)には、絶縁性がより高い(誘電率および誘電正接がより低い)絶縁体33Lを用い(塗布し)、それ以外の部分(領域)には、放熱性がより低い(誘電率および誘電正接がより高い)絶縁体33Lを用いる(塗布する)ことができる。これにより、一例としては、局所的に放熱性の高い部分(領域)を有する絶縁層33を有したフレキシブルプリント配線板38を得ることができる。
【0069】
なお、本実施形態では、一例として、本発明が、両面に導体パターン36が設けられたフレキシブルプリント配線板38(所謂両面板)として実施された場合が例示されたが、絶縁層33の上記構成による利点は、片面に導体パターン36が設けられたフレキシブルプリント配線板(図示されず)でも同様に得ることができる。また、本実施形態では、一例として、にかかる製造装置1Aは、より多層化されたフレキシブルプリント配線板(図示されず)を製造することもできるし、リジッド基板(プリント配線板、回路基板)を製造することもできる。また、製造装置1Aには、上述したセクション11〜18とは別に、塗布された流動性を有した導体32Lまたは絶縁体33Lを局所的あるいは限定的に硬化させるセクション(図示されず)を設けることができる。この場合、硬化させるセクションは、一例としては、加熱された高温の雰囲気を有した槽として構成することができる。
【0070】
<第6実施形態>
本実施形態でも、上記第5実施形態と同様に、図8のフローチャートに示された手順にしたがって、フレキシブルプリント配線板38が(基板)が製造される。ただし、本実施形態では、一例として、図21に示されるように、製造装置1Bの構成が、上記第5実施形態にかかる製造装置1Aとは異なる。具体的には、図21に示されるように、第1セクション11には、インクジェット印刷装置11B(塗布装置、成膜装置)が設けられている。インクジェット印刷装置11Bの構成は、第5実施形態にかかる製造装置1Aの第2セクション12に設けられたインクジェット印刷装置12A(図20参照)と同様である。よって、ここでは、インクジェット印刷装置11Bについての詳細な説明は省略される。
【0071】
本実施形態にかかる製造装置1Bは、第1セクション11で、スクリーン印刷装置11Aに替えてインクジェット印刷装置11Bが設けられた点を除き、上記第5実施形態にかかる製造装置1Aと同様である。よって、本実施形態にかかる製造装置1Bでも、導体層32および絶縁層33を、導体層31に塗布することで(印刷することで)設けることができる。よって、本実施形態によっても、上記第5実施形態と同様、一例としては、導体層32および絶縁層33の特性を調整しやすい。具体的には、導体層32や絶縁層33の大きさ(例えば、厚さや、高さ、体積等)をフレキシブルプリント配線板38の場所によって異ならせたり、導体層32や絶縁層33の物性(例えば、硬さや、弾性率、導電率等)をフレキシブルプリント配線板38の場所によって異ならせたりしやすい。
【0072】
<第7実施形態>
本実施形態でも、上記第1および第6実施形態と同様に、図8のフローチャートに示された手順にしたがって、フレキシブルプリント配線板38が(基板)が製造される。ただし、本実施形態では、一例として、図22に示されるように、製造装置1Cの構成が、上記第5実施形態にかかる製造装置1Aおよび上記第6実施形態にかかる製造装置1Bとは異なる。具体的には、図22に示されるように、第1セクション11に第2セクション12が統合され、当該統合された第1セクション11に、インクジェット印刷装置11C(塗布装置、成膜装置)が設けられている。インクジェット印刷装置11Cは、一例として、図23に示されるように、ヘッド12a(吐出部、噴射部)や、移動装置12b(移動機構)、搬送装置12c等を有する。ただし、本実施形態では、インクジェット印刷装置11Cは、ヘッド12aとして、流動性を有した状態で導体32Lを塗布するヘッド12a1(第一塗布部)と、流動性を有した状態で絶縁体33Lを塗布するヘッド12a2(第二塗布部)とを有する。そして、製造装置1Cは、移動装置12bや搬送装置12cを動作させることで、ヘッド12aと導体層31との相対位置を変化させながら、導体層31の面31aに、ヘッド12a1およびヘッド12a2から並行して流動性を有した状態の導体32Lおよび絶縁体33Lを塗布する(噴射する、印刷する)ことで、導体層32と絶縁層33とを設ける。
【0073】
本実施形態にかかる製造装置1Cでも、導体層32および絶縁層33を、導体層31に塗布することで(印刷することで)設けることができる。よって、本実施形態によっても、上記第1および第6実施形態と同様、一例としては、導体層32および絶縁層33の特性を調整しやすい。具体的には、導体層32や絶縁層33の大きさ(例えば、厚さや、高さ、体積等)をフレキシブルプリント配線板38の場所によって異ならせたり、導体層32や絶縁層33の物性(例えば、硬さや、弾性率、導電率等)をフレキシブルプリント配線板38の場所によって異ならせたりしやすい。さらに、本実施形態によれば、導体層32および絶縁層33を並行して設けることができる。よって、本実施形態によれば、一例としては、導体層32および絶縁層33を別個に設ける場合に比べて、よりフレキシブルプリント配線板38の製造に要する時間がより短縮されやすい。
【0074】
また、本実施形態にかかる製造装置1Cでは、一例としては、複数のヘッド12a(12a1〜12a4)からそれぞれ異なる媒体(特性、物性、成分等の異なる複数の導体32Lや絶縁体33L)を塗布することができる。よって、本実施形態にかかる製造装置1Cでは、一例としては、局所的に特性や、物性、成分等の異なる導体層32あるいは絶縁層33や、特性や、物性、成分等の異なる複数の導体層32あるいは絶縁層33を設けることができる。よって、より性能の高いフレキシブルプリント配線板38が、より容易に得られやすい。
【0075】
<第8実施形態>
本実施形態でも、上記第1〜第7実施形態と同様に、図8のフローチャートに示された手順にしたがって、フレキシブルプリント配線板38が(基板)が製造される。ただし、本実施形態では、一例として、図24に示されるように、製造装置1Dの構成が、上記第1〜第7実施形態にかかる製造装置1A〜1Cとは異なる。具体的には、図24に示されるように、第2〜第4セクション12〜14が第1セクション11に統合され、当該統合された第1セクション11に、インクジェット印刷装置11D(塗布装置、成膜装置)ならびに押圧装置14D(プレス装置)が設けられている。インクジェット印刷装置11Dおよび押圧装置14Dは、一例として、図25に示されるように、ヘッド12a(吐出部、噴射部)や、移動装置12b(移動機構)、搬送装置12c等を有する。押圧装置14Dは、一対の押圧ローラ14dを有する。搬送装置12cは、供給ローラ12c1,12c2(供給部)や、巻取ローラ12c3(巻取部、回収部)、搬送ローラ12c4(搬送部、ガイド部)を有する。供給ローラ12c1,12c2には、それぞれ、帯状体41a,41bが巻き取られている。帯状体41a,41bは、供給ローラ12c1,12c2から送り出され(引き出され)、搬送ローラ12c4に案内されながら移動し、途中で重ねられて、一対の並行した(平行な)押圧ローラ14dの間に挟まれてプレスされた後、巻取ローラ12c3に巻き取られる(回収される)。供給ローラ12c1から送り出される帯状体41aには、クッション材52を介して導体層31が載せられる。この導体層31に、インクジェット印刷装置11Dで、導体層32および絶縁層33が設けられる。インクジェット印刷装置11Dより下流側で、帯状体41aと帯状体41bとが重ねられる。導体層32および絶縁層33に重ねられる帯状体41bには、導体層32および絶縁層33側に導体層34(図13参照)が取り付けられている。よって、インクジェット印刷装置11Dの下流側で、帯状体41a,41bが重ねられると、導体層31と導体層34との間に、導体層32と絶縁層33とが挟まれた構造35(積層体、内部構造、図13参照)が得られる。構造35は、帯状体41a,41bに挟まれた状態で、帯状体41a,41bに沿って並べられ、順に一対の押圧ローラ14dでプレスされる。構造35は、巻取ローラ12c3で巻き取られたロール内でも帯状体41a,41b間に挟まれた状態のまま、ロールの径方向(重なり方向)に押圧される。押圧ローラ41a,41bおよび巻取ローラ12c3でのプレスにより、導体層31,32,34および絶縁層33が一体化された構造40(図14参照)が得られる。また、押圧ローラ41a,41bまたは巻取ローラ12c3では、必要に応じて絶縁層33を硬化させる加熱装置42が設けられる。加熱装置42は、例えば、温風を吹き出す装置として構成されることができる。
【0076】
そして、本実施形態でも、インクジェット印刷装置11Dは、ヘッド12aとして、流動性を有した状態で導体32Lを塗布するヘッド12a1と、流動性を有した状態で絶縁体33Lを塗布するヘッド12a2とを有する(図23参照)。そして、製造装置1Dは、移動装置12bや搬送装置12cを動作させることで、ヘッド12aと導体層31との相対位置を変化させながら、導体層31の面31aに、ヘッド12a1およびヘッド12a2から並行して流動性を有した状態の導体32Lおよび絶縁体33Lを塗布する(噴射する、印刷する)ことで、導体層32と絶縁層33とを設ける。
【0077】
本実施形態にかかる製造装置1Dでも、導体層32および絶縁層33を、導体層31に塗布することで(印刷することで)設けることができる。よって、本実施形態によっても、上記第1〜第7実施形態と同様、一例としては、導体層32および絶縁層33の特性を調整しやすい。具体的には、導体層32や絶縁層33の大きさ(例えば、厚さや、高さ、体積等)をフレキシブルプリント配線板38の場所によって異ならせたり、導体層32や絶縁層33の物性(例えば、硬さや、弾性率、導電率等)をフレキシブルプリント配線板38の場所によって異ならせたりしやすい。また、本実施形態によれば、導体層32および絶縁層33を並行して設けることができる。さらに、本実施形態によれば、ステップS11〜S14の処理を、帯状体41a,41bを利用して、統合された第1セクション11内で、一連の処理として実行することができる。よって、本実施形態によれば、一例としては、よりフレキシブルプリント配線板38の製造に要する時間がより短縮されやすい。
【0078】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、上記実施形態は一例であって、種々に変形して実施することができる。例えば、セクションや装置の数は、より多くすることができるし、より少なくすることもできる。また、装置、第一塗布部、第二塗布部、帯状体、パレット、搬送装置、導体層、絶縁層、フレキシブルプリント配線板、基板、塗布装置等のスペック(構造や、方向、形状、大きさ、長さ、幅、厚さ、高さ、数、配置、位置、材質等)は、適宜に変更して実施することができる。
【符号の説明】
【0079】
1A〜1D…製造装置(フレキシブルプリント配線板の製造装置、基板製造装置)、11…第1セクション、12…第2セクション、13…第3セクション、14…第4セクション、15…第5セクション、16…第6セクション、17…第7セクション、18…第8セクション、11A…スクリーン印刷装置(装置)、11B〜1D…インクジェット印刷装置(装置)、12A…インクジェット印刷装置(装置)、12a1…ヘッド(第一塗布部)、12a2…ヘッド(第二塗布部)、19…搬送装置、31…導体層(第一導体層)、31a…面、32…導体層(第二導体層)、33…絶縁層(第一絶縁層)、34…導体層(第三導体層)、35…構造、38…フレキシブルプリント配線板(基板)、40…構造、41a,41b…帯状体、51…パレット。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一導体層の面に部分的に第二導体層を設ける装置と、
前記第一導体層の前記面に部分的に第一絶縁層を設ける装置と、
前記第一導体層の前記面に設けられた前記第二導体層および前記第一絶縁層が前記第一導体層とは反対側から第三導体層で覆われた状態で、前記第一導体層、前記第二導体層、前記第一絶縁層、および前記第三導体層を一体化する装置と、
前記第一導体層、前記第二導体層、前記第一絶縁層、および前記第三導体層が一体化された構造の前記第一導体層および前記第三導体層のうち少なくとも一方を部分的に除去して導体パターンを形成する装置と、
前記導体パターンが形成された前記構造の両側を第二絶縁層で覆う装置と、
を備えた、フレキシブルプリント配線板の製造装置。
【請求項2】
前記第二導体層を設ける装置は、導体を流動性を有した状態で前記面に吹き付けて塗布する第一塗布部を含み、
前記第一絶縁層を設ける装置は、絶縁体を流動性を有した状態で前記面に吹き付けて塗布する第二塗布部を含み、
前記第一塗布部および前記第二塗布部が、前記面に、流動性を有した状態の前記導体および前記絶縁体を並行して吹き付ける、請求項1に記載のフレキシブルプリント配線板の製造装置。
【請求項3】
前記第二導体層を設ける装置は、前記第一絶縁層を設ける装置が前記面に前記第一絶縁層を設ける前に、前記面に前記第二導体層を設ける、請求項1に記載のフレキシブルプリント配線板の製造装置。
【請求項4】
前記第一導体層、前記第二導体層、前記第一絶縁層、および前記第三導体層を一体化する装置が、帯状体上で前記構造を構成する、請求項1〜3のうちいずれか一つに記載のフレキシブルプリント配線板の製造装置。
【請求項5】
前記第一導体層が載せられたパレットを複数の前記装置間で搬送する搬送装置を備えた、請求項1〜4のうちいずれか一つに記載のフレキシブルプリント配線板の製造装置。
【請求項6】
前記第二導体層を設ける装置は、前記面に、物性が異なる複数の前記第二導体層を設ける、請求項1〜5のうちいずれか一つに記載のフレキシブルプリント配線板の製造装置。
【請求項7】
前記第一絶縁層を設ける装置は、前記面に、物性が異なる複数の前記第一絶縁層を設ける、請求項1〜6のうちいずれか一つに記載のフレキシブルプリント配線板の製造装置。
【請求項8】
前記第一絶縁層を設ける装置は、前記面に、高さが異なる複数の前記第一絶縁層を設ける、請求項1〜7のうちいずれか一つに記載のフレキシブルプリント配線板の製造装置。
【請求項9】
前記構造を厚さ方向に挟んで押圧する装置を備え、
前記押圧する装置は、場所によって異なる厚さに前記構造を挟む、請求項1〜8のうちいずれか一つに記載のフレキシブルプリント配線板の製造装置。
【請求項10】
第一導体層の面に流動性を有した状態で導体を塗布して第二導体層を設けるセクションと、
前記第一導体層の前記面に流動性を有した状態で絶縁体を塗布して第一絶縁層を設けるセクションと、
前記第一導体層の前記面に前記第二導体層および前記第一絶縁層が第三導体層で覆われた状態で前記第二導体層および前記第一絶縁層を硬化するセクションと、
を備えた、基板製造装置。
【請求項11】
第一導体層の面に導体を流動性を有した状態で吐出して塗布する第一塗布部を含み前記面に部分的に第二導体層を設ける装置と、
第一導体層の面に絶縁体を流動性を有した状態で吐出して塗布する第二塗布部を含み前記面に部分的に第一絶縁層を設ける装置と、
を備え、
前記第一塗布部および前記第二塗布部が、前記面に、流動性を有した状態の前記導体および前記絶縁体を並行して吐出する、基板製造用の塗布装置。
【請求項1】
第一導体層の面に部分的に第二導体層を設ける装置と、
前記第一導体層の前記面に部分的に第一絶縁層を設ける装置と、
前記第一導体層の前記面に設けられた前記第二導体層および前記第一絶縁層が前記第一導体層とは反対側から第三導体層で覆われた状態で、前記第一導体層、前記第二導体層、前記第一絶縁層、および前記第三導体層を一体化する装置と、
前記第一導体層、前記第二導体層、前記第一絶縁層、および前記第三導体層が一体化された構造の前記第一導体層および前記第三導体層のうち少なくとも一方を部分的に除去して導体パターンを形成する装置と、
前記導体パターンが形成された前記構造の両側を第二絶縁層で覆う装置と、
を備えた、フレキシブルプリント配線板の製造装置。
【請求項2】
前記第二導体層を設ける装置は、導体を流動性を有した状態で前記面に吹き付けて塗布する第一塗布部を含み、
前記第一絶縁層を設ける装置は、絶縁体を流動性を有した状態で前記面に吹き付けて塗布する第二塗布部を含み、
前記第一塗布部および前記第二塗布部が、前記面に、流動性を有した状態の前記導体および前記絶縁体を並行して吹き付ける、請求項1に記載のフレキシブルプリント配線板の製造装置。
【請求項3】
前記第二導体層を設ける装置は、前記第一絶縁層を設ける装置が前記面に前記第一絶縁層を設ける前に、前記面に前記第二導体層を設ける、請求項1に記載のフレキシブルプリント配線板の製造装置。
【請求項4】
前記第一導体層、前記第二導体層、前記第一絶縁層、および前記第三導体層を一体化する装置が、帯状体上で前記構造を構成する、請求項1〜3のうちいずれか一つに記載のフレキシブルプリント配線板の製造装置。
【請求項5】
前記第一導体層が載せられたパレットを複数の前記装置間で搬送する搬送装置を備えた、請求項1〜4のうちいずれか一つに記載のフレキシブルプリント配線板の製造装置。
【請求項6】
前記第二導体層を設ける装置は、前記面に、物性が異なる複数の前記第二導体層を設ける、請求項1〜5のうちいずれか一つに記載のフレキシブルプリント配線板の製造装置。
【請求項7】
前記第一絶縁層を設ける装置は、前記面に、物性が異なる複数の前記第一絶縁層を設ける、請求項1〜6のうちいずれか一つに記載のフレキシブルプリント配線板の製造装置。
【請求項8】
前記第一絶縁層を設ける装置は、前記面に、高さが異なる複数の前記第一絶縁層を設ける、請求項1〜7のうちいずれか一つに記載のフレキシブルプリント配線板の製造装置。
【請求項9】
前記構造を厚さ方向に挟んで押圧する装置を備え、
前記押圧する装置は、場所によって異なる厚さに前記構造を挟む、請求項1〜8のうちいずれか一つに記載のフレキシブルプリント配線板の製造装置。
【請求項10】
第一導体層の面に流動性を有した状態で導体を塗布して第二導体層を設けるセクションと、
前記第一導体層の前記面に流動性を有した状態で絶縁体を塗布して第一絶縁層を設けるセクションと、
前記第一導体層の前記面に前記第二導体層および前記第一絶縁層が第三導体層で覆われた状態で前記第二導体層および前記第一絶縁層を硬化するセクションと、
を備えた、基板製造装置。
【請求項11】
第一導体層の面に導体を流動性を有した状態で吐出して塗布する第一塗布部を含み前記面に部分的に第二導体層を設ける装置と、
第一導体層の面に絶縁体を流動性を有した状態で吐出して塗布する第二塗布部を含み前記面に部分的に第一絶縁層を設ける装置と、
を備え、
前記第一塗布部および前記第二塗布部が、前記面に、流動性を有した状態の前記導体および前記絶縁体を並行して吐出する、基板製造用の塗布装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【公開番号】特開2013−80741(P2013−80741A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−218615(P2011−218615)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【特許番号】特許第5143266号(P5143266)
【特許公報発行日】平成25年2月13日(2013.2.13)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【特許番号】特許第5143266号(P5143266)
【特許公報発行日】平成25年2月13日(2013.2.13)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]