説明

リジッド−フレックス多層プリント配線板の製造方法

【課題】リジッド部分の多層化工程時に、流動性をもった接着剤層が開口部からフレキシブル部分上に流出しないようにすること。
【解決手段】リジッド部分Rとフレキシブル部分Fとの境界部に、リジッド部分R側の接着剤層16がフレキシブル部分F側へ流出することを防ぐダム効果部(接着剤硬化部分18)を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、リジッド−フレックス多層プリント配線板およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、多層化したリジッド配線板をフレキシブル配線板で接続した構造をもつリジッド−フレックス多層プリント配線板の開発が盛んに行われている(例えば、特許文献1、2)。
【0003】
図13は、リジッド−フレックス多層プリント配線板の一般的な構造例を示している。
【0004】
リジッド−フレックス多層プリント配線板は、両面FPC(Flexible Printed Circuit board)100の表裏各々の特定領域をリジッド部分Rとして多層化され、多層化部分以外がリジッド部分R同士を接続するケーブルをなすフレキシブル部分Fになっている。
【0005】
両面FPC100は、ポリイミドフィルムなどにより構成された可撓性を有するベースフィルム101の表裏両面に銅箔等による導体パターン層102を有し、それらの表面全体をカバーレイフィルム103によって被覆されている。
【0006】
リジッド部分Rは、カバーレイフィルム103上に接着剤層(層間接着剤層)104によって積層接着された銅箔106付きのガラスエポキシ基材(絶縁層)105、ガラスエポキシ基材105上に積層されたビルドアップ樹脂層107および表層銅箔108を有する。
【0007】
リジッド−フレックス多層プリント配線板は、リジッド部分Rの多層化により、高密度実装が可能であり、フレキシブル配線板で基板(リジッド部分R)間を接続するため、コネクタや接続ケーブルが不要である。さらに、フレキシブル部分Fは、折り曲げが可能であることから、立体空間が活用でき、設計の自由度が向上する。
【0008】
このように、リジッド−フレックス多層プリント配線板は、省スペース化、高密度化を実現できることから、今後ますます加速する電子機器の小型化に対応する基板として注目されている。
【0009】
リジッド・フレックス多層プリント配線板の製造方法として、フレキシブル配線板の全面にガラスエポキシ基材、ビルドアップ樹脂を積層して外層回路形成などを実施した後、所定のフレキシブル部分上のリジッド部分のみを金型打ち抜きやレーザ加工で除去する方法がある。
【0010】
しかし、この製造方法では、リジッド部分を切削する強度で金型打ち抜きまたはレーザ加工を行うと、リジッド部分だけでなく残しておきたいフレキシブル部分も切削してしまい、回路パターン部分が損傷して断線の原因となる。リジッド部分のみを除去する加工条件を選定することは現実的に困難である。
【0011】
この問題を克服した製造方法として、フレックス部分相当部をあらかじめ開口された接着剤層やガラスエポキシ基材を積層して必要な部分にのみ多層化を行い、非多層化部分をフレキシブル部分として設ける方法がある(例えば、特許文献1、2)。
【0012】
この製造方法では、図14(a)に示されているように、フレキシブル部分形成予定部相当の開口部201を形成さた接着剤層202を両面FPC100のカバーレイフィルム103上に積層し、その後、図14(b)に示されているように、同様に開口部203を形成されたガラスエポキシ基材204を接着剤層202上に積層することが行われる。
【0013】
この積層過程において、ガラスエポキシ基材204を熱可塑性樹脂による接着剤層202を介して加熱・加圧下で積層するため、流動性をもった接着剤層202が、符号202Aで示されているように、開口部201であるフレキシブル部分F上に流出する現象が生じる。このように流出した接着剤層202Aがフレキシブル部分F上で硬化すると、フレキシブル部分Fの柔軟性が低下し、リジッド−フレックス多層プリント配線板の利点の一つである折り曲げ機能に支障をきたす。
【0014】
このため、従来の製造方法では、フレキシブル部分F上に流出した接着剤層202Aを何らかの手法で除去する必要が生じる。しかし、この接着剤層202Aの除去工程には余計な時間、コストがかかってしまう。また、接着剤層202の流出に伴い接着剤202が薄くなり、所定の基板厚さを有するリジッド−フレックス多層プリント配線板の製造が困難となる。以上のことから、接着剤層をフレキシブル部分上に流出させずに積層することが求められる。
【特許文献1】特開2001−156445号公報
【特許文献2】特開2002−158445号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
この発明が解決しようとする課題は、リジッド部分の多層化工程時に、流動性をもった接着剤層が開口部からフレキシブル部分上に流出することなくリジッド−フレックス多層プリント配線板を製造することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この発明によるリジッド−フレックス多層プリント配線板は、多層化されたリジッド部分と、接続ケーブルをなすフレキシブル部分とによるリジッド−フレックス多層プリント配線板において、前記リジッド部分と前記フレキシブル部分との境界部に前記リジッド部分側の層間接着剤が前記フレキシブル部分側へ流出することを防ぐダム効果部を有する。
【0017】
この発明によるリジッド−フレックス多層プリント配線板の製造方法は、フレキシブル配線板上に、フレキシブル部分形成予定部相当の開口部を有するリジッド部分用基材を同等の開口部を有する接着剤層によって積層することにより、多層化されたリジッド部分と、接続ケーブルをなすフレキシブル部分とによるリジッド−フレックス多層プリント配線板を製造する製造方法において、前記リジッド部分用基材の積層工程に先だって、前記フレキシブル配線板のフレキシブル部分形成予定部の外縁部分のうち前記リジッド部分と前記フレキシブル部分との境界部に相当する部位にダム効果部を形成する工程を含む。
【0018】
この発明によるリジッド−フレックス多層プリント配線板の製造方法は、好ましくは、前記ダム効果部は、前記接着剤層の前記開口部の縁部のうち前記リジッド部分と前記フレキシブル部分との境界部に相当する部位を硬化させた接着剤硬化部分である。
【0019】
この発明によるリジッド−フレックス多層プリント配線板の製造方法は、好ましくは、前記接着剤層として光硬化性を付与された熱可塑性樹脂を用い、前記接着剤硬化部分は、前記リジッド部分用基材の積層工程前に、前記接着剤層の前記開口部の縁部のうち前記リジッド部分と前記フレキシブル部分との境界部に相当する部位に局部的に光照射し、当該接着剤層の前記開口部の縁部のうちの前記リジッド部分と前記フレキシブル部分との境界部に相当する部位を硬化させたものである。
【0020】
この発明によるリジッド−フレックス多層プリント配線板の製造方法は、好ましくは、前記接着剤層として熱硬化性を示す熱可塑性樹脂を用い、前記接着剤硬化部分は、前記リジッド部分用基材の積層工程前に、前記接着剤層の前記開口部の縁部のうち前記リジッド部分と前記フレキシブル部分との境界部に相当する部位を局部的に加熱し、当該接着剤層の前記開口部の縁部のうちの前記リジッド部分と前記フレキシブル部分との境界部に相当する部位を硬化させたものである。
【0021】
この発明によるリジッド−フレックス多層プリント配線板の製造方法は、好ましくは、前記ダム効果部を、前記接着剤層とは別に、光硬化性を付与された熱可塑性樹脂によって形成する。
【0022】
この発明によるリジッド−フレックス多層プリント配線板の製造方法は、好ましくは、前記ダム効果部を、前記接着剤層とは別に、前記接着剤層より低温で硬化する熱可塑性樹脂によって形成する。
【発明の効果】
【0023】
この発明によるリジッド−フレックス多層プリント配線板では、リジッド部分とフレキシブル部分との境界部にリジッド部分側の層間接着剤が前記フレキシブル部分側へ流出することを防ぐダム効果部があるから、リジッド部分の多層化工程時に、流動性をもった接着剤層がフレキシブル部分側に流出することがなく、フレキシブル部分本来の柔軟性が確保される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
この発明によるリジッド−フレックス多層プリント配線板の製造方法の実施形態1を、図1〜図3を参照して説明する。
【0025】
図1(a)に示されているように、ポリイミドフィルム11の表裏両面に銅箔12を有する両面銅箔付きポリイミド基材9を用意する。
【0026】
まず、図1(b)に示されているように、銅箔12をエッチング(サブトラクティブ法)することにより、導体パターン(回路パターン)13を形成する。
【0027】
次に、図1(c)に示されているように、導体パターン13を形成されているポリイミドフィルム11の表裏両面の全面に、カバーレイフィルム14を、真空下で加熱・加圧して積層する。これにより、両面FPC(両面フレキシブル配線板)10が得られる。
【0028】
次に、図1(d)に示されているように、ルータ加工によってフレキシブル部分形成予定部相当の開口部15を形成された接着剤層(層間接着剤層)16をカバーレイフィルム14上に、真空下で、加熱・加圧して積層する。接着剤層16には紫外光硬化性を付与された熱可塑性樹脂を用いた。
【0029】
次に、図1(e)に示されているように、光マスク17を使用して接着剤層16の開口部15のの縁部のうちリジッド部分R(図3参照)とフレキシブル部分F(図3参照)との境界部に相当する部位の縁部15Aに局部的に紫外光UVを照射し、開口部15の縁部15Aに接着剤硬化部分(ダム効果部)18を形成する。
【0030】
次に、図2(f)に示されているように、リジッド部分用基材として、ガラスエポキシ基材19の片面に銅箔20を設けられた片面銅箔付きガラスエポキシ基材21を用意し、この片面銅箔付きガラスエポキシ基材21に接着剤層16の開口部15と同様の開口部22を形成し、これを接着剤硬化部分18を含む接着剤層16上に真空下で、加熱・加圧して積層する。
【0031】
この積層工程時には、既に、開口部15の縁部15Aに接着剤硬化部分18が形成されているから、片面銅箔付きガラスエポキシ基材21の積層工程時に、流動性をもった接着剤層16が開口部15の側へ流れ出そうとすることが、接着剤硬化部分18のダム効果によってくい止められる。これにより、流動性をもった接着剤層16が開口部15へ流出することが阻止される。
【0032】
次に、図2(g)に示されているように、片面銅箔付きガラスエポキシ基材21の銅箔20をエッチング(サブトラクティブ法)することにより、導体パターン(回路パターン)23を形成する。
【0033】
次に、図2(h)に示されているように、導体パターン形成済みの片面銅箔付きガラスエポキシ基材21上に、接着剤層16の開口部15と同様の開口部24を形成したビルドアップ樹脂層25を、真空下で、加熱・加圧して積層する。
【0034】
次に、図3(i)に示されているように、積層したビルドアップ樹脂層25上に無電解銅めっき(図示省略)を施し、さらに全面パネルめっきを行った後、サブトラクティブ法によって外層導体パターン26を形成した。
【0035】
これにより、多層化されたリジッド部分Rと、そのリジッド部分R同士を接続するケーブルをなすフレキシブル部分Fとによるリジッド−フレックス多層プリント配線板が完成する。
【0036】
なお、スルーホールやバイヤホール等による層間接続部形成についての説明は省略する。
【0037】
このリジッド−フレックス多層プリント配線板では、片面銅箔付きガラスエポキシ基材21の積層工程時に、既に形成されている接着剤硬化部分18のダム効果により、つまり、リジッド部分Rとフレキシブル部分Fとの境界部に存在する接着剤硬化部分18がリジッド部分R側の層間接着剤がフレキシブル部分F側へ流出することを防ぐダム効果部として機能することにより、流動性をもった接着剤層16が開口部15の側へ流れ出そうとすることが阻止されているから、フレキシブル部分F上に接着剤層16が流出しておらず、フレキシブル部分F本来の柔軟性が確保され、リジッド−フレックス多層プリント配線板の利点の一つである折り曲げ機能に支障をきたすことがない。
【0038】
この発明によるリジッド−フレックス多層プリント配線板の製造方法の実施形態2を、図4〜図6を参照して説明する。なお、図4〜図6において、図1〜図3に対応する部分は、図1〜図3に付した符号と同一の符号を付けて、その説明を省略する。
【0039】
図4(a)〜(c)の工程は、実施形態1の図1(a)〜(c)の工程と同じであるので、その説明は省略する。
【0040】
図4(d)に示されているように、ルータ加工によって開口部27を形成された接着剤層(層間接着剤層)28をカバーレイフィルム14上に、真空下で、加熱・加圧して積層する。この実施形態では、接着剤層28には高温において熱硬化性を示す熱硬化性機能を付与された熱可塑性樹脂を用いた。
【0041】
次に、図4(e)に示されているように、ヒータ29を使用して接着剤層28の開口部27の縁部のうちリジッド部分R(図6参照)とフレキシブル部分F(図6参照)との境界部に相当する部位の縁部27Aを局部的に高温加熱し、開口部27の縁部27Aに接着剤硬化部分(ダム効果部)30を形成する。
【0042】
次に、図5(f)に示されているように、リジッド部分用基材として、ガラスエポキシ基材19の片面に銅箔20を設けられた片面銅箔付きガラスエポキシ基材21を用意し、この片面銅箔付きガラスエポキシ基材21に接着剤層28の開口部27と同様の開口部22を形成し、これを接着剤硬化部分30を含む接着剤層28上に真空下で、加熱・加圧して積層する。
【0043】
この積層工程時には、既に、開口部27の縁部27Aに接着剤硬化部分30が形成されているから、片面銅箔付きガラスエポキシ基材21の積層工程時に、流動性をもった接着剤層28が開口部27の側へ流れ出そうとすることが、接着剤硬化部分30のダム効果によってくい止められる。これにより、流動性をもった接着剤層28が開口部27へ流出することが阻止される。
【0044】
この後、図5(g)〜図6(i)に示されているように、片面銅箔付きガラスエポキシ基材21の銅箔20をエッチングすることにより、導体パターン23を形成し、その上に、ビルドアップ樹脂層25を積層して外層導体パターン26を形成する工程は、実施形態1の図2(g)〜図3(i)に示されている工程と同じである。
【0045】
これにより、この実施形態でも、多層化されたリジッド部分Rと、そのリジッド部分R同士を接続するケーブルをなすフレキシブル部分Fとによるリジッド−フレックス多層プリント配線板が完成する。
【0046】
この実施形態でも、片面銅箔付きガラスエポキシ基材21の積層工程時に、既に形成されている接着剤硬化部分30のダム効果により、つまり、リジッド部分Rとフレキシブル部分Fとの境界部に存在する接着剤硬化部分30がリジッド部分R側の層間接着剤がフレキシブル部分F側へ流出することを防ぐダム効果部として機能することにより、流動性をもった接着剤層28が開口部27の側へ流れ出そうとすることが阻止されているから、フレキシブル部分F上に接着剤層28が流出しておらず、フレキシブル部分F本来の柔軟性が確保され、リジッド−フレックス多層プリント配線板の利点の一つである折り曲げ機能に支障をきたすことがない。
【0047】
この発明によるリジッド−フレックス多層プリント配線板の製造方法の実施形態3を、図7〜図9を参照して説明する。なお、図7〜図9においても、図1〜図3に対応する部分は、図1〜図3に付した符号と同一の符号を付けて、その説明を省略する。
【0048】
図7(a)〜(c)の工程は、実施形態1の図1(a)〜(c)の工程と同じであるので、その説明は省略する。
【0049】
図7(d)に示されているように、カバーレイフィルム14上のフレキシブル部分形成予定部Fpの外縁部分のうち、リジッド部分R(図9参照)とフレキシブル部分F(図9参照)との境界部に相当する部位に、紫外光硬化性を付与された熱可塑性樹脂による接着剤凸条31を堤防状に形成する。
【0050】
次に、図7(e)に示されているように、接着剤凸条31より外側領域のカバーレイフィルム14上に、接着剤層(層間接着剤層)32を、真空下で、加熱・加圧して積層する。接着剤層32には熱可塑性樹脂を用いた。
【0051】
次に、図8(f)に示されているように、紫外光UVを照射して接着剤凸条31を硬化させ、フレキシブル部分形成予定部Fpの外縁部分に接着剤硬化部分(ダム効果部)33を形成する。
【0052】
次に、図8(g)に示されているように、リジッド部分用基材として、ガラスエポキシ基材19の片面に銅箔20を設けられた片面銅箔付きガラスエポキシ基材21を用意し、この片面銅箔付きガラスエポキシ基材21にフレキシブル部分形成予定部Fpと同様の形状の開口部22を形成し、これを接着剤硬化部分33、接着剤層32上に真空下で、加熱・加圧して積層する。
【0053】
この積層工程時には、既に、フレキシブル部分形成予定部Fp外縁部分(リジッド部分Rとフレキシブル部分Fとの境界部に相当する部位)に接着剤硬化部分33が形成されているから、片面銅箔付きガラスエポキシ基材21の積層工程時に、流動性をもった接着剤層32がフレキシブル部分形成予定部Fpの側へ流れ出そうとすることが、接着剤硬化部分33のダム効果によってくい止められる。これにより、流動性をもった接着剤層32がフレキシブル部分形成予定部Fpへ流出することが阻止される。
【0054】
この後、図8(h)〜図9(j)に示されているように、片面銅箔付きガラスエポキシ基材21の銅箔20をエッチングすることにより、導体パターン23を形成し、その上に、ビルドアップ樹脂層25を積層して外層導体パターン26を形成する工程は、実施形態1の図2(g)〜図3(i)に示されている工程と同じである。
【0055】
これにより、この実施形態でも、多層化されたリジッド部分Rと、そのリジッド部分R同士を接続するケーブルをなすフレキシブル部分Fとによるリジッド−フレックス多層プリント配線板が完成する。
【0056】
この実施形態でも、片面銅箔付きガラスエポキシ基材21の積層工程時に、既に形成されている接着剤硬化部分33のダム効果により、つまり、リジッド部分Rとフレキシブル部分Fとの境界部に存在する接着剤硬化部分33がリジッド部分R側の層間接着剤がフレキシブル部分F側へ流出することを防ぐダム効果部として機能することにより、流動性をもった接着剤層32がフレキシブル部分形成予定部Fp側へ流れ出そうとすることが阻止されているから、フレキシブル部分F上に接着剤層32が流出しておらず、フレキシブル部分F本来の柔軟性が確保され、リジッド−フレックス多層プリント配線板の利点の一つである折り曲げ機能に支障をきたすことがない。
【0057】
この発明によるリジッド−フレックス多層プリント配線板の製造方法の実施形態4を、図10〜図12を参照して説明する。なお、図10〜図12においても、図1〜図3に対応する部分は、図1〜図3に付した符号と同一の符号を付けて、その説明を省略する。
【0058】
図10(a)〜(c)の工程は、実施形態1の図1(a)〜(c)の工程と同じであるので、その説明は省略する。
【0059】
図10(d)に示されているように、カバーレイフィルム14上のフレキシブル部分形成予定部Fpの外縁部分のうち、リジッド部分R(図12参照)とフレキシブル部分F(図12参照)との境界部に相当する部位に、低温領域において熱硬化性を示す熱可塑性樹脂による接着剤凸条34を堤防状に形成する。
【0060】
次に、図10(e)に示されているように、接着剤凸条34より外側領域のカバーレイフィルム14上に、接着剤層(層間接着剤層)35を、真空下で、加熱・加圧して積層する。接着剤層35には高温領域において熱硬化性を示す熱可塑性樹脂を用いた。
【0061】
次に、図8(f)に示されているように、リジッド部分用基材として、ガラスエポキシ基材19の片面に銅箔20を設けられた片面銅箔付きガラスエポキシ基材21を用意し、この片面銅箔付きガラスエポキシ基材21にフレキシブル部分形成予定部Fpと同様の形状の開口部22を形成し、これを接着剤凸条34、接着剤層35上に真空下で、加熱・加圧して積層する。
【0062】
この積層工程時には、熱硬化温度の違いにより、つまり、接着剤層35より低温で硬化する接着剤凸条34は接着剤層35が流動性を持つよりも先に硬化する。これにより、片面銅箔付きガラスエポキシ基材21の積層工程時に、流動性をもった接着剤層35がフレキシブル部分形成予定部Fpの側へ流れ出そうとすることが、先に硬化した接着剤凸条(ダム効果部)34のダム効果によってくい止められる。これにより、流動性をもった接着剤層35がフレキシブル部分形成予定部Fpへ流出することが阻止される。
【0063】
この後、図11(g)〜図12(i)に示されているように、片面銅箔付きガラスエポキシ基材21の銅箔20をエッチングすることにより、導体パターン23を形成し、その上に、ビルドアップ樹脂層25を積層して外層導体パターン26を形成する工程は、実施形態1の図2(g)〜図3(i)に示されている工程と同じである。
【0064】
これにより、この実施形態でも、多層化されたリジッド部分Rと、そのリジッド部分R同士を接続するケーブルをなすフレキシブル部分Fとによるリジッド−フレックス多層プリント配線板が完成する。
【0065】
この実施形態でも、片面銅箔付きガラスエポキシ基材21の積層工程時に、先に硬化した接着剤凸条34のダム効果により、つまり、リジッド部分Rとフレキシブル部分Fとの境界部に存在する接着剤凸条34がリジッド部分R側の層間接着剤がフレキシブル部分F側へ流出することを防ぐダム効果部として機能することにより、流動性をもった接着剤層35がフレキシブル部分形成予定部Fp側へ流れ出そうとすることが阻止されているから、フレキシブル部分F上に接着剤層35が流出しておらず、フレキシブル部分F本来の柔軟性が確保され、リジッド−フレックス多層プリント配線板の利点の一つである折り曲げ機能に支障をきたすことがない。
【0066】
なお、本発明において、接着剤層等を開口する手段として、ルータ加工のほかに、レーザ加工、金型打ち抜きを用いることができる。また、ビルドアップ樹脂上には無電解銅めっき以外にもスパッタ法によるシード層形成を経て全面パネルめっきを行うことができる。また、めっき外層回路パターン形成は、サブトラクティブ法のほかにアディティブ法を用いることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】この発明によるリジッド−フレックス多層プリント配線板の製造方法の実施形態1を示す工程図である。
【図2】この発明によるリジッド−フレックス多層プリント配線板の製造方法の実施形態1を示す工程図である。
【図3】この発明によるリジッド−フレックス多層プリント配線板の製造方法の実施形態1を示す工程図である。
【図4】この発明によるリジッド−フレックス多層プリント配線板の製造方法の実施形態2を示す工程図である。
【図5】この発明によるリジッド−フレックス多層プリント配線板の製造方法の実施形態2を示す工程図である。
【図6】この発明によるリジッド−フレックス多層プリント配線板の製造方法の実施形態2を示す工程図である。
【図7】この発明によるリジッド−フレックス多層プリント配線板の製造方法の実施形態3を示す工程図である。
【図8】この発明によるリジッド−フレックス多層プリント配線板の製造方法の実施形態3を示す工程図である。
【図9】この発明によるリジッド−フレックス多層プリント配線板の製造方法の実施形態3を示す工程図である。
【図10】この発明によるリジッド−フレックス多層プリント配線板の製造方法の実施形態4を示す工程図である。
【図11】この発明によるリジッド−フレックス多層プリント配線板の製造方法の実施形態4を示す工程図である。
【図12】この発明によるリジッド−フレックス多層プリント配線板の製造方法の実施形態4を示す工程図である。
【図13】リジッド−フレックス多層プリント配線板の一般的な構造例を示す説明図である。
【図14】従来法によって製造されるリジッド−フレックス多層プリント配線板の問題点を示す説明図である。
【符号の説明】
【0068】
9 両面銅箔付きポリイミド基材
10 両面FPC
11 ポリイミドフィルム
12 銅箔
13 導体パターン
14 カバーレイフィルム
15 開口部
16 接着剤層
17 光マスク
18 接着剤硬化部分
19 ガラスエポキシ基材
20 銅箔
21 片面銅箔付きガラスエポキシ基材
22 開口部
23 導体パターン
24 開口部
25 ビルドアップ樹脂層
26 外層導体パターン
27 開口部
28 接着剤層
29 ヒータ
30 接着剤硬化部分
31 接着剤凸条
32 接着剤層
33 接着剤硬化部分
34 接着剤凸条
35 接着剤層
F フレキシブル部分
Fp フレキシブル部分形成予定部
R リジッド部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多層化されたリジッド部分と、接続ケーブルをなすフレキシブル部分とによるリジッド−フレックス多層プリント配線板において、
前記リジッド部分と前記フレキシブル部分との境界部に前記リジッド部分側の層間接着剤が前記フレキシブル部分側へ流出することを防ぐダム効果部を有するリジッド−フレックス多層プリント配線板。
【請求項2】
フレキシブル配線板上に、フレキシブル部分形成予定部相当の開口部を有するリジッド部分用基材を同等の開口部を有する接着剤層によって積層することにより、多層化されたリジッド部分と、接続ケーブルをなすフレキシブル部分とによるリジッド−フレックス多層プリント配線板を製造する製造方法において、
前記リジッド部分用基材の積層工程に先だって、前記フレキシブル配線板のフレキシブル部分形成予定部の外縁部分のうち前記リジッド部分と前記フレキシブル部分との境界部に相当する部位にダム効果部を形成する工程を含むリジッド−フレックス多層プリント配線板の製造方法。
【請求項3】
前記ダム効果部は、前記接着剤層の前記開口部の縁部のうち前記リジッド部分と前記フレキシブル部分との境界部に相当する部位を硬化させた接着剤硬化部分である請求項2記載のリジッド−フレックス多層プリント配線板の製造方法。
【請求項4】
前記接着剤層として光硬化性を付与された熱可塑性樹脂を用い、前記接着剤硬化部分は、前記リジッド部分用基材の積層工程前に、前記接着剤層の前記開口部の縁部のうち前記リジッド部分と前記フレキシブル部分との境界部に相当する部位に局部的に光照射し、当該接着剤層の前記開口部の縁部のうちの前記リジッド部分と前記フレキシブル部分との境界部に相当する部位を硬化させたものである請求項3記載のリジッド−フレックス多層プリント配線板の製造方法。
【請求項5】
前記接着剤層として熱硬化性を示す熱可塑性樹脂を用い、前記接着剤硬化部分は、前記リジッド部分用基材の積層工程前に、前記接着剤層の前記開口部の縁部のうち前記リジッド部分と前記フレキシブル部分との境界部に相当する部位を局部的に加熱し、当該接着剤層の前記開口部の縁部のうちの前記リジッド部分と前記フレキシブル部分との境界部に相当する部位を硬化させたものである請求項3記載のリジッド−フレックス多層プリント配線板の製造方法。
【請求項6】
前記ダム効果部を、前記接着剤層とは別に、光硬化性を付与された熱可塑性樹脂によって形成する請求項2記載のリジッド−フレックス多層プリント配線板の製造方法。
【請求項7】
前記ダム効果部を、前記接着剤層とは別に、前記接着剤層より低温で硬化する熱可塑性樹脂によって形成する請求項2記載のリジッド−フレックス多層プリント配線板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2006−228887(P2006−228887A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−39338(P2005−39338)
【出願日】平成17年2月16日(2005.2.16)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】