説明

ロボットハンドの挟み込み軽減機構及びロボットハンド

【課題】高い安全性と大きな指先力を確保できるロボットハンドの挟み込み軽減機構を提供する。
【解決手段】本発明の一形態に係るロボットハンドの挟み込み軽減機構1は、駆動機構6から伝達される駆動力によって開閉する一対のハンド部2を備えるロボットハンドの挟み込み軽減機構であって、ハンド部2が開方向に回転駆動するときのみ、ハンド部2に所定の大きさの負荷が作用すると、駆動機構6からハンド部2への駆動力の伝達を減少させる過負荷軽減機構7を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットハンドの挟み込み軽減機構及びそれを用いたロボットハンドに関し、特にハンド部が開方向に回転駆動した際に、ハンド部と当該ハンド部が連結される被連結部材との間での挟み込みを軽減する機構及びそれを用いたロボットハンドに関する。
【背景技術】
【0002】
ロボットハンドは、把持対象物を把持するために一対のハンド部が開閉する構成とされている。このハンド部は、基部等の被連結部材に回転可能に連結されている。このようなロボットハンドは、ハンド部に大きな負荷が作用する場合があり、この場合にハンド部が損傷しない構成とすることが好ましい。
【0003】
例えば特許文献1には、ハンド部と駆動機構との間にクラッチ機構を配置して、ハンド部に大きな負荷が作用した際に、ハンド部への駆動力の伝達を減少させる技術が開示されている。
【0004】
ちなみに、特許文献2及び3には、ロボットハンドの関節部にクラッチ機構を配置する技術が開示されている。具体的に云うと、特許文献2の技術は、関節部に所定の大きさの負荷が作用すると、クラッチ機構が関節部の連結状態を解除できる構成とされている。これにより、ハンド部を把持対象物の外形に沿わせている。また、特許文献3の技術は、ロボットハンドの故障等の原因で関節部が回動不能となると、クラッチ機構が関節部の連結状態を解除できる構成とされている。これにより、関節部をフリーの状態として、人間が手の届かない箇所からロボットハンドを回収可能としている。
また、特許文献4乃至7には、ハンド部を元位置に復帰させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−261504号公報
【特許文献2】特開昭63−47085号公報
【特許文献3】特開平5−301191号公報
【特許文献4】特開2008−149444号公報
【特許文献5】特開2009−101424号公報
【特許文献6】特開2003−145474号公報
【特許文献7】特開2001−277174号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の技術は、ハンド部が閉方向に回転駆動した場合と、開方向に回転駆動した場合と、の両方の場合で、クラッチ機構によってハンド部への駆動力の伝達を減少させる構成である。
【0007】
ハンド部が開方向に回転駆動した場合、ハンド部と被連結部材との間に物等が強く挟み込まれないように、ハンド部への駆動力の伝達を減少させる必要がある。つまり、ハンド部が開方向に回転駆動するときの安全性を確保する必要がある。
【0008】
一方、例えば重い物を把持しようとしてハンド部が閉方向に回転駆動する場合、ハンド部に大きな負荷が作用することになるが、このような場合にクラッチ機構によってハンド部への駆動力の伝達が減少されると、重い物を把持することができない。つまり、ハンド部が閉方向に回転駆動するときの指先力を確保する必要もある。
【0009】
本発明の目的は、このような問題を解決するためになされたものであり、高い安全性と大きな指先力を確保できるロボットハンドの挟み込み軽減機構とそれを用いたロボットハンドを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一形態に係るロボットハンドの挟み込み軽減機構は、駆動機構から伝達される駆動力によって開閉する一対のハンド部を備えるロボットハンドの挟み込み軽減機構であって、前記ハンド部が開方向に回転駆動するときのみ、前記ハンド部に所定の大きさの負荷が作用すると、前記駆動機構から前記ハンド部への駆動力の伝達を減少させる過負荷軽減機構を備える。
【0011】
前記過負荷軽減機構は、前記ハンド部又は前記ハンド部が連結される被連結部材の一方の端部に設けられた第1の回転軸と、他方の端部に設けられた前記駆動機構の第2の回転軸との間に、前記駆動機構の駆動力を前記第1の回転軸に伝達可能に配置された弾性部材と、前記第1の回転軸に連結された第1の突出部と、前記第2の回転軸に連結された第2の突出部と、を備え、前記ハンド部が閉方向に回転駆動するとき、前記第1の突出部と前記第2の突出部とが接触して、前記駆動機構の駆動力を前記ハンド部に伝達しつつ、外力による前記ハンド部の開方向への回転動作を拘束し、前記ハンド部が開方向に回転駆動するとき、前記第1の突出部と前記第2の突出部とが離間可能な状態となり、前記弾性部材を介して前記駆動機構の駆動力を前記ハンド部に伝達しつつ、外力による前記ハンド部の閉方向への回転動作を許容すること、が好ましい。
【0012】
前記過負荷軽減機構は、前記ハンド部が連結される被連結部材に搭載された前記駆動機構の回転軸に、当該回転軸から前記駆動機構の駆動力が伝達可能に設けられた第1の歯車と、前記第1の歯車と噛み合わされ、前記ハンド部の回転軸に回転可能に設けられた第2の歯車と、前記第2の歯車に設けられた突出部と、前記突出部が内部に配置され、前記ハンド部の端部に形成された切り欠き部と、一端が前記第2の歯車に係合され、他端が前記ハンド部に係合された弾性部材と、を備え、前記ハンド部が閉方向に回転駆動するとき、前記突出部と前記切り欠き部の端面とが接触して、前記駆動機構の駆動力を前記ハンド部に伝達しつつ、外力による前記ハンド部の開方向への回転動作を拘束し、前記ハンド部が開方向に回転駆動するとき、前記突出部が前記切り欠き部内を移動可能な状態となり、前記弾性部材を介して前記駆動機構の駆動力を前記ハンド部に伝達しつつ、外力による前記ハンド部の閉方向への回転動作を許容すること、が好ましい。
【0013】
前記弾性部材は、外力によって前記ハンド部を閉方向に回転動作させた際における前記突出部の前記切り欠き部内の位置から、前記突出部を前記切り欠き部内の所定の位置に復帰させること、が好ましい。
前記ハンド部が開方向に回転駆動する際の前記ハンド部の回転量を検出する検出部を備えること、が好ましい。
【0014】
前記過負荷軽減機構は、食い違い歯車の一方の歯車であって、前記ハンド部の回転軸に設けられた第1の歯車と、前記食い違い歯車の他方の歯車であって、前記第1の歯車と噛み合わされて前記駆動機構の駆動力を前記ハンド部に伝達し、前記ハンド部が連結される被連結部材の内部において長手方向に移動可能に配置された第2の歯車と、前記被連結部材の内部において、前記第2の歯車を被覆し、前記第2の歯車の移動に倣って移動する被覆部材と、前記被覆部材と、前記被連結部材の一方の内側面との間であって、前記第2の歯車の長手方向に配置された第1の弾性部材と、を備え、前記ハンド部が閉方向に回転駆動するとき、前記第2の歯車は前記第1の弾性部材を介して前記被連結部材の一方の内側面に反力をとって、前記駆動機構の駆動力を前記第1の歯車に伝達し、且つ前記被覆部材が前記被連結部材の他方側の内側面に接触して、外力による前記ハンド部の開方向への回転動作を拘束し、前記ハンド部が開方向に回転駆動するとき、前記被覆部材と前記被連結部材の他方側の内側面とが接触して、前記第2の歯車は前記被連結部材の他方側の内側面に反力をとって、前記駆動機構の駆動力を前記第1の歯車に伝達し、且つ前記第1の弾性部材の収縮によって、外力による前記ハンド部の閉方向への回転動作を許容すること、が好ましい。
【0015】
前記被覆部材と、前記被連結部材の他方の内側面との間であって、前記第2の歯車の長手方向に配置された第2の弾性部材を備え、前記第2の弾性部材の弾性係数は、前記第1の弾性部材の弾性係数より大きいこと、が好ましい。
前記第2の歯車の移動量を検出する検出部を備えること、が好ましい。
【0016】
前記駆動機構は、前記ハンド部が連結される被連結部材に搭載されており、前記駆動機構は、駆動源と、前記駆動源の回転軸に設けられた第1のプーリと、前記ハンド部の回転軸に設けられた第2のプーリと、前記第1のプーリと前記第2のプーリとに渡されたベルトと、を備え、前記過負荷軽減機構は、前記ハンド部が開方向に回転駆動するときに、前記ベルトにおける負荷が作用する側の前記第1のプーリと前記第2のプーリとの間に配置されていること、が好ましい。
【0017】
前記過負荷軽減機構は、前記ベルトの両端部を挟み込む一組の板材と、前記一組の板材に挟み込み力を付与する付与機構と、を備え、前記付加機構は、前記ハンド部が開方向に回転駆動するとき、前記ハンド部に所定の大きさの負荷が作用すると、前記一組の板材における前記ベルトの端部の挟み込み状態が破綻するように、前記一組の板材を挟み込むこと、が好ましい。
前記板材に対する前記ベルトの変位を検出する検出部を備えること、が好ましい。
【0018】
前記過負荷軽減機構は、磁気継手であって、前記磁気継手は、前記ハンド部が開方向に回転駆動するとき、前記ハンド部に所定の大きさの負荷が作用すると、前記磁気継手の接合関係が破綻すること、が好ましい。
【0019】
前記過負荷軽減機構は、弾性部材であって、前記弾性部材は、前記ハンド部が開方向に回転駆動するとき、前記ハンド部に所定の大きさの負荷が作用すると、前記ハンド部の閉方向への回転動作を許容すること、が好ましい。
【0020】
前記ハンド部は、前記駆動機構の駆動力が伝達される第1のリンク部と、前記第1のリンク部に前記過負荷軽減機構を介して連結される第2のリンク部と、を備え、前記過負荷軽減機構は、前記第2のリンク部に所定の大きさの負荷が作用すると、前記第2のリンク部の閉方向への回転動作を許容するように、与圧が与えられたボールジョイントと、前記第2のリンクの開方向への回転動作を所定の角度以下に拘束するストッパーと、を備えること、が好ましい。
前記第2のリンク部を元位置に復帰させる復帰部材を備えること、が好ましい。
前記第1のリンク部に対する前記第2のリンク部の閉方向への回転量を検出する検出部を備えること、が好ましい。
【0021】
本発明の一形態に係るロボットハンドは、上述のロボットハンドの挟み込み軽減機構を備える。
【発明の効果】
【0022】
以上、説明したように、本発明によると、高い安全性と大きな指先力を確保できるロボットハンドの挟み込み軽減機構とそれを用いたロボットハンドを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る実施の形態1のロボットハンドを概略的に示す図である。
【図2】(a)は図1のII−II矢視断面図である。(b)は(a)のB−B矢視断面図である。
【図3】ハンド部の回転量を検出する検出部を備えた、ロボットハンドの挟み込み軽減機構を示す断面図である。
【図4】本発明に係る実施の形態2のロボットハンドを概略的に示す図である。
【図5】本発明に係る実施の形態2のロボットハンドの挟み込み軽減機構を概略的に示す斜視図である。
【図6】本発明に係る実施の形態2のロボットハンドの挟み込み軽減機構における、弾性部材周辺を概略的に示す拡大図である。
【図7】本発明に係る実施の形態2のロボットハンドの挟み込み軽減機構における、ハンド部が閉方向に回転駆動する際の様子を概略的に示す斜視図である。
【図8】本発明に係る実施の形態2のロボットハンドの挟み込み軽減機構における、ハンド部が閉方向に回転動作する際の様子を概略的に示す斜視図である。
【図9】本発明に係る実施の形態3のロボットハンドを概略的に示す図である。
【図10】本発明に係る実施の形態3のロボットハンドの挟み込み軽減機構を概略的に示す部分断面図である。
【図11】本発明に係る実施の形態3のロボットハンドの挟み込み軽減機構における、ハンド部が閉方向に回転駆動する際の様子を概略的に示す図である。
【図12】本発明に係る実施の形態3のロボットハンドの挟み込み軽減機構における、ハンド部が閉方向に回転動作する際の様子を概略的に示す図である。
【図13】本発明に係る実施の形態4のロボットハンドを概略的に示す図である。
【図14】本発明に係る実施の形態4のロボットハンドの挟み込み軽減機構における、過負荷軽減機構を概略的に示す図である。
【図15】板材に対するベルトの変位を検出する検出部を備えた、過負荷軽減機構を示す図である。
【図16】本発明に係る実施の形態4のロボットハンドの挟み込み軽減機構における、異なる過負荷軽減機構を概略的に示す図である。
【図17】本発明に係る実施の形態4のロボットハンドの挟み込み軽減機構における、異なる過負荷軽減機構を概略的に示す図である。
【図18】本発明に係る実施の形態5のロボットハンドを概略的に示す図である。
【図19】復帰部材を備えた、ロボットハンドの挟み込み軽減機構を概略的に示す図である。
【図20】第1のリンク部に対する第2のリンク部の回転量を検出する検出部を備えた、ロボットハンドの挟み込み軽減機構を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、添付図面を参照しながら説明する。但し、本発明が以下の実施の形態に限定される訳ではない。また、説明を明確にするため、以下の記載及び図面は、適宜、簡略化されている。
【0025】
<実施の形態1>
本発明の実施の形態1に係るロボットハンドの挟み込み軽減機構(以下、単に挟み込み軽減機構と省略する場合がある。)1は、図1及び図2(a)、(b)に示すように、ハンド部2と当該ハンド部2が連結される被連結部材(例えば基部3。但し、ロボットを構成する他の要素でも良い。)との間での物等の挟み込みを軽減するために、ロボットハンド4に搭載される。
【0026】
ロボットハンド4は、一般的なロボットハンドを用いることができ、例えばロボットアーム5にX軸又はY軸と平行な軸回りに回転可能に基部3が連結された構成である。基部3には、当該基部3に搭載されている駆動機構6から伝達される駆動力によって開閉する一対のハンド部2が間隔を開けて連結されている。
【0027】
但し、ハンド部2は、少なくとも一対備えていれば良く、対の個数は限定されない。なお、本実施の形態のハンド部2は、図1に示す状態を初期状態とする。しかし、ハンド部2の初期状態は、適宜変更することができる。
【0028】
ハンド部2と基部3との連結部分、即ち関節部分に過負荷軽減機構7が配置されている。この過負荷軽減機構7が、ハンド部2が開方向に回転駆動するときのみ、ハンド部2に所定の大きさの負荷(駆動力や外力)が作用すると、駆動機構6からハンド部2への駆動力の伝達を減少(遮断も含む。)させることで、ハンド部2と基部3との間での物等の挟み込みを軽減する。なお、所定の大きさとしては、例えばハンド部2と基部3との間に物等が挟まった際に、当該物等が損傷しない大きさに設定される。
【0029】
ここで、ハンド部2と基部3との関節部分の構成を説明する。基部3の筐体3aには、図2(a)に示すように、ハンド部2の端部に形成された回転軸2aが軸受を介して嵌合されている。回転軸2aは、根元部分に形成された太径部分2a1、太径部分2a1より先端部に形成された細径部分2a2を有する。細径部分2a2の直径は、過負荷軽減機構7の弾性部材7aを外周に嵌め込むことができるように設定されている。また、細径部分2a2の長さは、過負荷軽減機構7の弾性部材7aの自然長よりも短く設定されている。
【0030】
さらに基部3の筐体3aは、ハンド部2の回転軸2aに駆動力を与える駆動機構6を支持している。駆動機構6は、駆動源の一種である駆動モータ6a、減速機6bを備える。すなわち、駆動モータ6aは、例えば図示を省略したロボットの制御装置の制御信号に基づいて動作する。駆動モータ6aの回転軸は、減速機6bの入力側に連結されている。減速機6bの出力軸は、ハンド部2の回転軸2aに連結されている。これにより、ハンド部2は、図1に示すように駆動モータ6aの駆動力によって開閉方向に回転駆動する。
【0031】
ちなみに、図2(a)では、駆動モータ6aの回転軸の中心と、減速機6bの出力軸の中心と、ハンド部2の回転軸2aの中心とが、同一線上に配置されているが、本実施の形態を実現するためには、少なくとも減速機6bの出力軸の中心と、ハンド部2の回転軸2aの中心とが、同一線上に配置されていれば良い。
【0032】
次に、過負荷軽減機構7の構成を説明する。過負荷軽減機構7は、図2(a)、(b)に示すように、弾性部材7a、第1の突出部7b、第2の突出部7cを備えている。
弾性部材7aは、ハンド部2の回転軸2aと減速機6bの出力軸との間に、減速機6bからの駆動力を当該回転軸2aに伝達可能に配置されている。詳細には、弾性部材7aは、圧縮した状態から復元力を発現する、コイルバネ等の部材である。弾性部材7aは、ハンド部2における回転軸2aの細径部分2a2の外周に嵌め込まれている。弾性部材7aは、被覆部材8によって覆われている。
【0033】
被覆部材8は、内部に被覆部材8を格納するのに十分な空間を有するカップ形状に形成されている。被覆部材8の底部外面は、減速機6bの出力軸に連結されている。一方、被覆部材8の底部内面は、弾性部材7aと接触している。
【0034】
つまり、弾性部材7aの一方の端部は、ハンド部2の回転軸2aにおける太径部分2a1と細径部分2a2との段差部分に接触し、他方の端部が被覆部材8の底部内面に接触することになる。
【0035】
ここで、ハンド部2を開方向に回転駆動させるとき、減速機6bからの駆動力がハンド部2の回転軸2aに伝達されるように、弾性部材7aの他方の端部が被覆部材8の底部内面に押され、弾性部材7aが圧縮した状態で、一方の端部がハンド部2の回転軸2aにおける太径部分2a1と細径部分2a2との段差部分に押し付けられる。すなわち、ハンド部2を開方向に回転駆動させるとき、減速機6bからの駆動力が被覆部材8の底部から弾性部材7aを介してハンド部2の回転軸2aに伝達されるように、弾性部材7aの圧縮力が設定される。
【0036】
その一方で、ハンド部2を開方向に回転駆動させるとき、ハンド部2と基部3との間で物等の挟み込みが生じて、ハンド部2、ひいては関節部分に所定の大きさの負荷が作用すると、弾性部材7aの一方の端部とハンド部2の回転軸2aにおける太径部分2a1と細径部分2a2との段差部分との間、又は弾性部材7aの他方の端部と被覆部材8の底部内面との間で滑りが生じて、ハンド部2に伝達される開方向への駆動力が減少するように弾性部材7aの圧縮力が設定される。
【0037】
第1の突出部7bは、ハンド部2の回転軸2aにおける太径部分2a1に設けられている。第1の突出部7bは、ハンド部2の回転軸2aの中心から外方に向かって突出する。第1の突出部7bは、ハンド部2の初期状態で第2の突出部7cと接触する。
【0038】
第2の突出部7cは、図2(b)に示すように、被覆部材8の開口部側の端面に設けられている。第2の突出部7cは、ハンド部2の回転軸2aと略平行に形成され、減速機6bと逆側に突出する。第2の突出部7cは、ハンド部2の初期状態で第1の突出部7bより当該ハンド部2の開方向に配置されている。つまり、図2(b)は、ハンド部2が初期状態における第1の突出部7bと第2の突出部7cとの配置関係を示している。
【0039】
これにより、ハンド部2を閉方向に回転駆動させるとき、減速機6bからの駆動力は被覆部材8の第2の突出部7cを介して回転軸2aの第1の突出部7bに伝達され、ハンド部2が閉方向に回転駆動する。
【0040】
このような構成の挟み込み軽減機構1は、以下のように動作する。ハンド部2が閉方向に回転駆動するとき、第1の突出部7bと第2の突出部7cとが接触して減速機6bからの駆動力をハンド部2に伝達する。
【0041】
このとき、外力によってハンド部2が開方向に動作しようとしても、第1の突出部7bが第2の突出部7cに接触して、ハンド部2の開方向への回転は殆ど拘束される。つまり、ハンド部2で把持対象物を把持する際に、外力によってハンド部2が開方向に逃げてしまうことがなく、ハンド部2に大きな指先力を発生させることが可能である。
【0042】
一方、ハンド部2が開方向に回転駆動するとき、弾性部材7aを介して減速機6bからの駆動力をハンド部2に伝達する。すなわち、ハンド部2が開方向に回転駆動するとき、第1の突出部7bと第2の突出部7cとが離間しようとするので、第1の突出部7bと第2の突出部7cとの接触状態が解除される。
【0043】
このとき、ハンド部2と基部3との間に物等が挟まっても、上述のように弾性部材7aの一方の端部とハンド部2の回転軸2aにおける太径部分2a1と細径部分2a2との段差部分との間、又は弾性部材7aの他方の端部と被覆部材8の底部内面との間で滑りが生じるので、ハンド部2に伝達される開方向への駆動力が減少する。
【0044】
しかも、弾性部材7aの一方の端部とハンド部2の回転軸2aにおける太径部分2a1と細径部分2a2との段差部分との間、又は弾性部材7aの他方の端部と被覆部材8の底部内面との間で滑りが生じる構成とされているので、外力(例えば人の力)によりハンド部2を閉方向に回転させることができ、ハンド部2と基部3との間に挟まった物等を容易に排除することができる。つまり、ハンド部2と基部3との間に物等が挟まっても、物等を強く挟み込むことがなく、しかも容易に排除することができるので、安全性が高い。
このように、本実施の形態の挟み込み軽減機構1は、高い安全性と大きな指先力を確保できる。
【0045】
ちなみに、図3に示すように、ハンド部2と基部3との関節部分に、冶具9を介して角度検出センサ10を設けることが好ましい。角度検出センサ10としては、例えばエンコーダやポテンションメータ等を用いることができる。角度検出センサ10は、少なくとも駆動モータ6aの駆動力によってハンド部2が開方向に回転駆動する際の、ハンド部2の回転量を検出し、図示を省略したロボットの制御装置に出力する。制御装置には、予め駆動モータ6aの回転数等とハンド部2の回転量との関係が格納されている。制御装置は、当該関係と、ハンド部2を開方向に回転駆動させる際の駆動モータ6aの回転数等とに基づいて、本来、回転しているはずであるハンド部2の回転量を算出する。そして、制御装置は、算出したハンド部2の回転量と、角度検出センサ10から入力されるハンド部2の回転量とを比較する。このとき、ハンド部2と基部3との間に物等が挟まって、ハンド部2の開方向への回転駆動が阻害されると、算出したハンド部2の回転量の方が、角度検出センサ10から入力されるハンド部2の回転量より大きくなる。そこで、制御装置は、このような比較結果となると、駆動モータ6aの駆動を停止、又はハンド部2を閉方向に回転駆動させる。これにより、安全性をより向上させることができる。
【0046】
<実施の形態2>
本発明の実施の形態2に係るロボットハンドの挟み込み軽減機構11も、図4及び図5に示すように、ハンド部12と当該ハンド部12が連結される被連結部材(例えば基部13。但し、ロボットを構成する他の要素でも良い。)との間での物等の挟み込みを軽減するために、ロボットハンド14に搭載される。
【0047】
ここで、ロボットハンド14も、一般的なロボットハンドを用いることができ、例えばロボットアーム15にX軸又はY軸と平行な軸回りに回転可能に基部13が連結された構成である。基部13には、当該基部13に搭載されている駆動機構16から伝達される駆動力によって開閉する一対のハンド部12が間隔を開けて連結されている。
【0048】
但し、ハンド部12は、少なくとも一対備えていれば良く、対の個数は限定されない。なお、本実施の形態のハンド部12は、図4に示す状態を初期状態とする。しかし、ハンド部2の初期状態は、適宜変更することができる。
【0049】
ハンド部12と基部13との関節部分に過負荷軽減機構17が配置されている。この過負荷軽減機構17が、ハンド部12が開方向に回転駆動するときのみ、ハンド部12に所定の大きさの負荷が作用すると、駆動機構16からハンド部12への駆動力の伝達を減少させることで、ハンド部12と基部13との間での物等の挟み込みを軽減する。
【0050】
ここで、ハンド部12と基部13との関節部分の構成を説明する。基部13の筐体13a内には、駆動機構16が内蔵されている。駆動機構16は、図5に示すように、駆動モータ(図示を省略)の駆動力を歯車列によって伝達する構成とされている。駆動機構16の最も出力側の歯車16aには、回転軸16bが通されて接合されている。歯車16aに伝達された駆動力は回転軸16bに伝達される。回転軸16bは、筐体13aに軸受(図示を省略)を介して回転可能に支持されている。一方、ハンド部12の回転軸12aは、回転軸16bの近傍に当該回転軸16bと略平行に配置され、基部13の筐体13aに設けられている。この駆動機構16の回転軸16bとハンド部12の回転軸12aとの間に、駆動モータの駆動力を伝達可能に過負荷軽減機構17が配置されている。
【0051】
次に、過負荷軽減機構17の構成を説明する。過負荷軽減機構17は、図5及び図6に示すように、第1の歯車17a、第2の歯車17b、突出部17c、切り欠き部17d、弾性部材17eを備える。なお、図6では第2の歯車17bを省略して示している。
【0052】
第1の歯車17aは、回転軸16bに設けられている。つまり、第1の歯車17aには、駆動機構16の回転軸16bが通されて接合されている。そのため、歯車16aの回転と同じく歯車17aも回転する。第2の歯車17bは、第1の歯車17aに噛み合わされている。第2の歯車17bは、ハンド部12の回転軸12aに回転可能に支持されている。
【0053】
突出部17cは、第2の歯車17bの両平面(歯が形成されていない面)のいずれか一方の面から突出する。切り欠き部17dは、ハンド部12の回転軸12a側の端部に形成されている。切り欠き部17d内には、突出部17cが配置されている。切り欠き部17dは、回転軸12aを中心とする略円弧状に形成されている。切り欠き部17dは、ハンド部12が図4に示す初期状態で、閉方向側の端面が突出部17cに略接触するように形成されている。また、切り欠き部17dは、ハンド部12と基部13との間に物等が挟まれたときに、駆動機構16からの駆動力を逃がし、且つ当該物等をハンド部12と基部13との間から排除するために当該ハンド部12を閉方向に回転させるために、突出部17cが当該切り欠き部17d内を移動できるように形成されている。
【0054】
弾性部材17eは、図6に示すように捩じりバネである。本実施の形態の弾性部材17eは、第2の歯車17b内に格納されている。弾性部材17eの一方の端部は、第2の歯車17bに形成された係止部(図示を省略)に係止されている。弾性部材17eの他方の端部は、ハンド部12に係止されている。弾性部材17eは、ハンド部12が図4に示す初期状態で、自然状態(即ち、復元力が発現していない状態)となるように調整される。
【0055】
このような構成の挟み込み軽減機構11は、以下のように動作する。ハンド部12が閉方向に回転駆動するとき、駆動機構16の駆動力を第1の歯車17aを介して第2の歯車17bに伝達する。第2の歯車17bはハンド部12の閉方向に回転して、図7に示すように、突出部17cが切り欠き部17dの閉方向側の端面に接触し、第2の歯車17bに伝達された駆動力を、突出部17cを介してハンド部12に伝達する。但し、図7も第2の歯車17bを省略して示している。
【0056】
このように、突出部17cが切り欠き部17dの閉方向側の端面に接触するので、外力によってハンド部12が開方向に動作しようとしても、ハンド部12の開方向への回転は殆ど拘束される。つまり、ハンド部12で把持対象物を把持する際に、ハンド部12が外力によって開方向に逃げてしまうことがなく、ハンド部12に大きな指先力を発生させることが可能である。
【0057】
一方、ハンド部12が開方向に回転駆動するとき、駆動機構16の駆動力を第1の歯車17aを介して第2の歯車17bに伝達する。第2の歯車17bはハンド部12の開方向に回転する。それに伴い、第2の歯車17bにおけるハンド部12の開方向の回転に倣うように弾性部材17eが捻じれ、第2の歯車17bに伝達された駆動力を、弾性部材17eを介してハンド部12に伝達する。
【0058】
このとき、ハンド部12と基部13との間に物等が挟まると、図8に示すように、突出部17cは切り欠き部17dの閉方向側の端面から離間するように、切り欠き部17d内を移動する。これにより、ハンド部12に伝達される開方向への駆動力が減少される。
【0059】
しかも、挟まった物等をハンド部12と基部13との間から排除しようとして、外力によってハンド部12を閉方向に回転させるとき、突出部17cを切り欠き部17dの閉方向側の端面から離間するように、切り欠き部17d内を移動させることができる。そのため、ハンド部12と基部13との間に挟まった物等を容易に排除することができる。つまり、ハンド部12と基部13との間に物等が挟まっても、物等を強く挟み込むことがなく、しかも容易に排除することができるので、安全性が高い。
【0060】
さらに、挟まった物等をハンド部12と基部13との間から排除した後は、弾性部材17eが復元力を発現するので、突出部17cを切り欠き部17d内におけるハンド部12と基部13との間に物等が挟まる以前の位置、即ち切り欠き部17dの閉方向側の端面に略接触した、初期状態に復帰させることができる。
このように、本実施の形態の挟み込み軽減機構11は、高い安全性と大きな指先力を確保できる。
【0061】
ちなみに、図示を省略するが、ハンド部12と当該ハンド部12の回転軸12aとの間に角度検出センサを配置することが好ましい。角度検出センサとしては、例えばエンコーダやポテンションメータ等を用いることができる。角度検出センサは、駆動モータの駆動力によってハンド部12が開方向に回転駆動する際の、回転軸12aに対するハンド部12の回転量を検出し、図示を省略したロボットの制御装置に出力する。制御装置には、予め駆動モータの回転数等と回転軸12aに対するハンド部12の回転量との関係が格納されている。制御装置は、当該関係と、ハンド部12を開方向に回転駆動させる際の駆動モータの回転数等とに基づいて、本来、回転しているはずであるハンド部12の回転量を算出する。そして、制御装置は、算出したハンド部12の回転量と、角度検出センサから入力されるハンド部12の回転量とを比較する。このとき、ハンド部12と基部13との間に物等が挟まって、ハンド部12の開方向への回転駆動が阻害されると、算出したハンド部12の回転量の方が、角度検出センサから入力されるハンド部12の回転量より大きくなる。そこで、制御装置は、このような比較結果となると、駆動モータの駆動を停止、又はハンド部12を閉方向に回転駆動させる。これにより、安全性をより向上させることができる。
【0062】
<実施の形態3>
本発明の実施の形態3に係るロボットハンドの挟み込み軽減機構21も、図9及び図10に示すように、ハンド部22と当該ハンド部22が連結される(例えば基部23。但し、ロボットを構成する他の要素でも良い。)との間での物等の挟み込みを軽減するために、ロボットハンド24に搭載される。ちなみに、図9に示すロボットハンド24は、ロボットアーム25と連続するようにカバー部材によって覆われている。
【0063】
ロボットハンド24も、一般的なロボットハンドを用いることができ、例えばロボットアーム25に基部23が連結された構成である。基部23には、当該基部23に搭載されている駆動機構26から伝達される駆動力によって開閉する一対のハンド部22が間隔を開けて連結されている。このとき、図示は省略するが、ハンド部22が基部23に対して開閉可能に、ハンド部22と基部23とが連結部材によって連結されている。
【0064】
但し、ハンド部22は、少なくとも一対備えていれば良く、対の個数は限定されない。なお、本実施の形態のハンド部22は、図9に示す状態を初期状態とする。しかし、ハンド部22の初期状態は、適宜変更することができる。
【0065】
ハンド部22と基部23との関節部分に過負荷軽減機構27が配置されている。この過負荷軽減機構27が、ハンド部22が開方向に回転駆動するときのみ、ハンド部22に所定の大きさの負荷が作用すると、駆動機構26からハンド部22への駆動力の伝達を減少させることで、ハンド部22と基部23との間での物等の挟み込みを軽減する。
【0066】
ここで、駆動機構26の構成を説明する。駆動機構26は、基部23の筐体23aに支持されている。駆動機構26は、駆動源である駆動モータ26a、減速機26b、第1のプーリ26c、第2のプーリ26d、ベルト26eを備えている。
【0067】
駆動モータ26aの回転軸は、減速機26bの入力側に連結されている。減速機26bの出力軸には、第1のプーリ26cが設けられている。
第1のプーリ26cと第2のプーリ26dとには、無端体であるベルト26eが渡されている。第2のプーリ26dは、後述する過負荷軽減機構27における第2の歯車27bの回転軸27b1に設けられている。これにより、駆動モータ26aの駆動力は、減速機26b、第1のプーリ26c、ベルト26e、第2のプーリ26dを介して第2の歯車27bに伝達される。
【0068】
ちなみに、第2のプーリ26dの幅寸法Tは、第2のプーリ26dの外周面をベルト26eが摺動して、後述する第2の歯車27bの軸方向への移動を許容できるように設定されている。
【0069】
次に、過負荷軽減機構27の構成を説明する。過負荷軽減機構27は、図10に示すように、第1の歯車27a、第2の歯車27b、被覆部材27c、弾性部材27dを備える。第1の歯車27aは、第2の歯車27bとで食い違い歯車を構成する、ウォームホイールである。
【0070】
第1の歯車27aは、ハンド部22における筐体22bの端部に設けられた回転軸22aに連結されている。この回転軸22aの端部は、第1の歯車27aから伝達される駆動力をハンド部22に伝達できるように、ハンド部22の筐体22bに接合されている。
【0071】
第1の歯車27aは、ハンド部22の端部に形成された開口部22b1から露出し、第2の歯車27bに噛み合わされている。この開口部22b1は、第1の歯車27aを第2の歯車27bに噛み合わせることができ、且つハンド部22の開閉方向への回転を阻害しないように、ハンド部22の筐体22bに形成されている。
【0072】
第2の歯車27bは、ウォームギアである。第2の歯車27bの歯車部分は、基部23の筐体23a内に格納されている。第2の歯車27bの歯車部分は、基部23の筐体23aに形成された開口部23a1から露出し、第1の歯車27aと噛み合わされている。この開口部23a1は、駆動モータ26aの駆動力によってハンド部22を回転駆動させるとき、第1の歯車27aと第2の歯車27bとを噛み合わせることができ、且つ外力よってハンド部22を閉方向に回転させるときに第2の歯車27bが軸方向に移動しても、第1の歯車27aと第2の歯車27bとを噛み合わせることができるように、基部23の筐体23aに形成されている。
第2の歯車27bの回転軸27b1は、基部23の筐体23aから突出する。第2の歯車27bの回転軸27b1には、第2のプーリ26dが設けられている。第2の歯車27bの歯車部分は、被覆部材27cで覆われている。
【0073】
被覆部材27cは、内部に第2の歯車27bの歯車部分を格納することが可能な空間を有する。被覆部材27cは、基部23の筐体23a内で第2の歯車27bが軸方向に移動することができるように、第2の歯車27bの歯車部分を覆う。詳細には、被覆部材27cの長手方向に配置された一方の端部27c1には、軸受28aを介して第2の歯車27bの先端軸が嵌合されている。被覆部材27cの長手方向に配置された他方の端部27c2には、軸受28bを介して第2の歯車27bにおける回転軸27b1の根元部分が通されている。
【0074】
被覆部材27cには、第2の歯車27bの歯車27b2を露出させるために、開口部27c3が形成されている。この開口部27c3は、駆動モータ26aの駆動力によってハンド部22を回転駆動させるとき、第1の歯車27aと第2の歯車27bとを噛み合わせることができ、且つ外力よってハンド部22を閉方向に回転させるときに第2の歯車27bが軸方向に移動しても、第1の歯車27aと第2の歯車27bとを噛み合わせることができるように、被覆部材27cに形成されている。
【0075】
つまり、ハンド部22の筐体22bの開口部22b1と、基部23の筐体23aの開口部23a1と、被覆部材27cの開口部27c3とは、駆動モータ26aの駆動力によってハンド部22を回転駆動させるときに、第1の歯車27aと第2の歯車27bとを噛み合わせることができ、且つ外力よってハンド部22を閉方向に回転させるときに第2の歯車27bが軸方向に移動しても、第1の歯車27aと第2の歯車27bとを噛み合わせることができるように、配置されている。
【0076】
このような被覆部材27cにおける端部27c2の外面は、ハンド部22の初期状態において、基部23の筐体23aにおける第2の歯車27bの軸方向に配置される一方の内側面23a2に略接触する。そして、被覆部材27cにおける端部27c1の外面と、基部23の筐体23aにおける第2の歯車27bの軸方向に配置される他方の内側面23a3との間には、弾性部材27dが配置されている。
【0077】
ちなみに、被覆部材27cにおける端部27c1の外面には、弾性部材27dを固定する突出部29aを形成し、対応するように基部23の筐体23aの他方の内側面23a3にも突出部29bを形成することが好ましい。弾性部材27dの両端部をそれぞれ、突出部29a、29bに嵌合することで、第2の歯車27bが軸方向に移動する際に弾性部材27dの位置がずれることがない。
【0078】
弾性部材27dは、圧縮した状態から復元力を発現する、コイルバネ等の部材である。弾性部材27dの弾性係数やバネレートは、外力によってハンド部22を閉方向に回転させて、第2の歯車27bを基部23の筐体23aの内側面23a3に向かって移動させることができ、且つハンド部22を開方向に回転駆動させる際に、基部23の筐体23aの内側面23a3から反力をとって、第2の歯車27bから第1の歯車27aに駆動力が伝達されるように、設定される。
【0079】
ちなみに、被覆部材27cの外周面と、基部23の筐体23aにおける当該外周面と向かい合う内周面との間に、摺動部材30を配置することが好ましい。摺動部材30としては、低摩擦樹脂素材やローラ、リニアガイド、油を塗布した部材等を用いることができる。これにより、基部23の筐体23a内で被覆部材27c、ひいては第2の歯車27bを良好に摺動させることができる。
【0080】
このような構成の挟み込み軽減機構21は、以下のように動作する。ハンド部22が閉方向に回転駆動するとき、駆動モータ26aの駆動力を、減速機26b、第1のプーリ26c、ベルト26e、第2のプーリ26dを介して第2の歯車27bに伝達する。第2の歯車27bは回転しつつ、弾性部材27dを介して基部23の筐体23aの内側面23a3から反力をとって、第1の歯車27a、ひいてはハンド部22を閉方向に回転させる。
【0081】
このとき、被覆部材27cにおける端部27c2の外面は、図11に示すように、基部23の筐体23aの内側面23a2に接触しているので、外力によってハンド部22が開方向に回転しようとしても、ハンド部22の開方向への回転は殆ど拘束される。つまり、ハンド部2で把持対象物を把持する際に、外力によってハンド部22が開方向に逃げてしまうことがなく、ハンド部22に大きな指先力を発生させることが可能である。
【0082】
一方、ハンド部22が開方向に回転駆動するとき、駆動モータ26aの駆動力を、減速機26b、第1のプーリ26c、ベルト26e、第2のプーリ26dを介して第2の歯車27bに伝達する。第2の歯車27bは回転しつつ、基部23の筐体23aの内側面23a2から反力をとって、第1の歯車27a、ひいてはハンド部22を開方向に回転させる。
【0083】
このとき、ハンド部22と基部23との間に物等が挟まると、第1の歯車27aの回転が略止まり、図12に示すように、第2の歯車27bが被覆部材27cを介して弾性部材27dを押し込んで、基部23の筐体23aの内側面23a3に向かって移動する。これにより、ハンド部22に伝達される開方向への駆動力が減少する。
【0084】
しかも、挟まった物等をハンド部22と基部23との間から排除しようとして、外力によってハンド部22を閉方向に回転させるとき、第1の歯車27aにおけるハンド部22の閉方向への回転が第2の歯車27bに伝達され、第2の歯車27bが被覆部材27cを介して弾性部材27dを押し込んで、基部23の筐体23aの内側面23a3に向かって移動する。この第2の歯車27bの移動に伴って第1の歯車27aがハンド部22の閉方向に回転し、ハンド部22は閉方向に回転する。
【0085】
そのため、ハンド部22と基部23との間に挟まった物等を容易に排除することができる。つまり、ハンド部22と基部23との間に物等が挟まっても、物等を強く挟み込むことがなく、しかも容易に排除することができるので、安全性が高い。
【0086】
さらに、挟まった物等をハンド部22と基部23との間から排除した後は、弾性部材27dが復元力を発現するので、被覆部材27cにおける端部27c2の外面が基部23の筐体23aの内側面23a2に略接触した、初期状態に復帰させることができる。
このように、本実施の形態の挟み込み軽減機構21は、高い安全性と大きな指先力を確保できる。
【0087】
ちなみに、図示を省略するが、被覆部材27cに距離センサを設けることが好ましい。距離センサとしては、例えば光ファイバやレーザを用いた光学式の距離センサ等を用いることができる。このとき、被覆部材27cの内側面23a3(但し、内側面23a2でも良い。)には、距離センサから出射される光等を反射する反射部材が設けられる。距離センサは、第2の歯車27bの軸方向への移動量を検出し、図示を省略したロボットの制御装置に出力する。このとき、ハンド部22と基部23との間に物等が挟まって、第1の歯車27aの回転が阻害されると、第2の歯車27bが軸方向、即ち基部23の筐体23aの内側面23a3に向かって移動する。そこで、制御装置は、例えば当該移動量が閾値より大きくなると、駆動モータ26aの駆動を停止、又はハンド部22を閉方向に回転駆動させる。これにより、安全性をより向上させることができる。
【0088】
なお、上記実施の形態では、被覆部材27cにおける端部27c1の外面と、基部23における筐体23aの内側面23a3との間にのみに弾性部材(第1の弾性部材)27dを配置したが、この限りでない。すなわち、図示を省略するが、被覆部材27cにおける端部27c2の外面と、基部23における筐体23aの内側面23a2との間にも、第2の弾性部材を配置しても良い。この場合は、第2の弾性部材の弾性係数は、第1の弾性部材の弾性係数より大きく設定される。
【0089】
また、上記実施の形態では、ウォームギアを構成要素とする食い違い歯車を用いたが、この限りでない。すなわち、図示を省略するが、ネジ歯車やハイポイントギア等を構成要素とする食い違い歯車を用いても、略同様に実施できる。
【0090】
<実施の形態4>
本発明の実施の形態4に係るロボットハンドの挟み込み軽減機構31も、図13に示すように、ハンド部32と当該ハンド部32が連結される被連結部材(例えば基部33。但し、ロボットを構成する他の要素でも良い。)との間での物等の挟み込みを軽減するために、ロボットハンド34に搭載される。
【0091】
ロボットハンド34も、一般的なロボットハンドを用いることができ、例えばロボットアーム35に基部33が連結された構成である。基部33には、当該基部33に搭載されている駆動機構36から伝達される駆動力によって開閉する一対のハンド部32が間隔を開けて連結されている。
【0092】
但し、ハンド部32は、少なくとも一対備えていれば良く、対の個数は限定されない。なお、図13では、一方のハンド部32の駆動機構36のみを図示しており、他方のハンド部32の駆動機構36の図示を省略している。
【0093】
ここで、ハンド部32と基部33との関節部分及び駆動機構36の構成を説明する。ハンド部32の根元部分には、回転軸32aが設けられている。回転軸32aは、基部33に軸受等を介して回転可能に連結されている。この回転軸32aに駆動機構36から駆動力が伝達されることで、ハンド部32が回転駆動する。
【0094】
駆動機構36は、基部33内に格納されている。駆動機構36は、駆動源である駆動モータ36a、減速機(図示を省略)、第1のプーリ36b、第2のプーリ36c、ベルト36dを備えている。
【0095】
駆動モータ36aの回転軸は、減速機の入力側に連結されている。減速機の出力軸には、第1のプーリ36bが設けられている。第2のプーリ36cは、ハンド部32の回転軸32aに設けられている。第1のプーリ36bと第2のプーリ36cとには、ベルト36dが渡されている。これにより、駆動モータ36aの駆動力が、減速機、第1のプーリ36b、ベルト36d、第2のプーリ36cを介してハンド部32に伝達される。本実施の形態では、一対のハンド部32の間に駆動モータ36aが配置されているので、駆動モータ36aからハンド部32に伝達される閉方向への駆動力は、ベルト36dにおける第1のプーリ36bと第2のプーリ36cとの間の一方の部分である、基部33の外方側の部分Mで伝達される。一方、駆動モータ36aからハンド部32に伝達される開方向への駆動力は、ベルト36dにおける第1のプーリ36bと第2のプーリ36cとの間の他方の部分である、基部33の内方側の部分Nで伝達される。
【0096】
ベルト36dには、ハンド部32が開方向に回転駆動するときに、負荷が作用する側の第1のプーリ36bと第2のプーリ36cとの間の部分、即ち当該部分Nに過負荷軽減機構37が配置されている。ちなみに、ベルト36dの当該部分Nの長さ、ひいては第1のプーリ36bと第2のプーリ36cとの間隔などは、ハンド部32が開方向及び閉方向に回転したときに、過負荷軽減機構37が第1のプーリ36b又は第2のプーリ36cに干渉しないように設定される。
【0097】
次に、過負荷軽減機構37の構成を説明する。過負荷軽減機構37は、ハンド部32が開方向に回転駆動するときのみ、ハンド部32に所定の大きさの負荷が作用すると、駆動機構36からハンド部32への駆動力の伝達を減少させることで、ハンド部32と基部33との間での物等の挟み込みを軽減する。
【0098】
具体的に云うと、過負荷軽減機構37は、図14に示すように、一組の板材37a、当該一組の板材37aに挟み込み力を付加する付加機構37bを備える。一組の板材37aは、ベルト36dの両端部を挟み込んでいる。このとき、ベルト36dの両端部は、間隔を開けて板材37aに挟み込まれる。一方の板材37aにおける当該間隔部分には、付加機構37bが通される貫通孔(図示を省略)が形成されている。他方の板材37aにおける当該間隔部分には、付加機構37bの先端部に形成された雄ネジ部が捻じ込まれる雌ネジ部(図示を省略)が形成されている。
【0099】
付加機構37bは、ボルト等の締結部材である。付加機構37bは、一方の板材37aにおける当該間隔部分の貫通孔に通され、その先端の雄ネジ部が他方の板材37aにおける当該間隔部分の雌ネジ部に捻じ込まれる。但し、付加機構37bは、一組の板材37aを挟み込むことができる機構であれば良い。
【0100】
このとき、付加機構37bは、ハンド部32が開方向に回転駆動するとき、ハンド部32に所定の大きさの負荷が作用すると、一組の板材37aにおけるベルト36dの端部の挟み込み状態が破綻するように、一組の板材37aを挟み込む。
【0101】
このような構成の挟み込み軽減機構31は、以下のように動作する。ハンド部32が閉方向に回転駆動するとき、駆動モータ36aの駆動力を、減速機、第1のプーリ36b、ベルト36d、第2のプーリ36cを介してハンド部32に伝達し、当該ハンド部32を閉方向に回転させる。
【0102】
このとき、ベルト36dの部分Mは、第1のプーリ36bと第2のプーリ36cとの間で張った状態であるので、外力によってハンド部32が開方向に回転しようとしても、ハンド部32の開方向への回転は殆ど拘束される。つまり、ハンド部32で把持対象物を把持する際に、外力によってハンド部32が開方向に逃げてしまうことがなく、ハンド部32に大きな指先力を発生させることが可能である。
【0103】
一方、ハンド部32が開方向に回転駆動するとき、駆動モータ36aの駆動力を、減速機、第1のプーリ36b、ベルト36d、第2のプーリ36cを介してハンド部32に伝達し、当該ハンド部32を開方向に回転させる。
【0104】
このとき、ハンド部32と基部33との間に物等が挟まって、ハンド部32に所定の大きさの負荷が作用すると、張った状態のベルト36dの部分Nは強く引っ張られ、一組の板材37aにおけるベルト36dの端部の挟み込み状態が破綻する。これにより、駆動モータ36aからのハンド部32の開方向への駆動力が遮断される。
【0105】
しかも、ハンド部32に所定の大きさの負荷が作用すると、一組の板材37aにおけるベルト36dの端部の挟み込み状態が破綻するので、ハンド部32と基部33との間に挟まった物等を容易に排除することができる。つまり、ハンド部32と基部33との間に物等が挟まっても、物等を強く挟み込むことがなく、しかも容易に排除することができるので、安全性が高い。
このように、本実施の形態の挟み込み軽減機構31は、高い安全性と大きな指先力を確保できる。
【0106】
ちなみに、図15に示すように、板材37aに距離センサ38を設けることが好ましい。距離センサ38としては、例えば光ファイバやレーザを用いた光学式の距離センサ等を用いることができる。このとき、ベルト36dの部分Mにおける板材37aを挟んで第1のプーリ36b側には、距離センサから出射される光等を反射する反射部材39が設けられる。距離センサ38は、板材37aに対するベルト36dの移動量(間隔)を検出し、図示を省略したロボットの制御装置に出力する。このとき、ハンド部32と基部33との間に物等が挟まって、ハンド部32の回転が阻害されると、ベルト36dの部分Mは強く引っ張られ、板材37aに対するベルト36dの移動量が大きくなる。そこで、制御装置は、当該移動量が閾値より大きくなると、駆動モータ36aの駆動を停止、又はハンド部32を閉方向に回転駆動させる。これにより、安全性をより向上させることができる。
【0107】
なお、上記実施の形態の過負荷軽減機構37は、一組の板材37a、付加機構37bを備える構成であるが、この限りでない。すなわち、図16に示すように、過負荷軽減機構37を磁気継手で構成しても良い。このとき、磁気継手の接合力は、ハンド部32が開方向に回転駆動するとき、ハンド部32に所定の大きさの負荷が作用すると、当該磁気継手の接合関係が破綻するように設定される。
【0108】
また、図17に示すように、過負荷軽減機構37を弾性部材で構成しても良い。このとき、弾性部材の弾性係数は、ハンド部32が開方向に回転駆動するとき、ハンド部32に所定の大きさの負荷が作用すると、外力によるハンド部32の閉方向への回転を許容するように設定される。但し、図17の過負荷軽減機構37は、コイルバネを用いたが、弾性係数などによって、ハンド部32が開方向に回転駆動するとき、ハンド部32に所定の大きさの負荷が作用すると、外力によるハンド部32の閉方向への回転を許容するように設定することができる部材であれば良い。
【0109】
<実施の形態5>
本発明の実施の形態5に係るロボットハンドの挟み込み軽減機構41も、図18に示すように、ハンド部42と当該ハンド部42が連結される被連結部材(例えばロボットアーム45。但し、ロボットを構成する他の要素でも良い。)との間での物等の挟み込みを軽減するために、ロボットハンド44に搭載される。
【0110】
ロボットハンド44も、一般的なロボットハンドを用いることができ、例えばロボットアーム45に基部43が連結された構成である。基部43には、当該基部43に搭載されている駆動機構(図示を省略)から伝達される駆動力によって開閉する一対のハンド部42が間隔を開けて連結されている。
【0111】
ハンド部42は、少なくとも第1のリンク部42b、第2のリンク部42cを備えている。第1のリンク部42bの一方の端部は、回転軸42aを有する。第1のリンク部42bの他方の端部は、過負荷軽減機構47を介して第2のリンク部42cと連結されている。この過負荷軽減機構47が、第2のリンク部42cが開方向に回転駆動するときのみ、第2のリンク部42cに所定の大きさの負荷が作用すると、駆動機構から第2のリンク部42cへの駆動力の伝達を減少させることで、ハンド部42と基部43との間での物等の挟み込みを軽減する。
【0112】
但し、ハンド部42は、少なくとも一対備えていれば良く、対の個数は限定されない。なお、図18では、一方のハンド部42のみを図示しており、他方のハンド部42の図示を省略している。
【0113】
ここで、ハンド部42と基部43との関節部分の構成を説明する。第1のリンク部42bの回転軸42aは、基部43に軸受等を介して回転可能に連結されている。この回転軸42aに駆動機構(図示を省略)から駆動力が伝達されることで、ハンド部42が回転駆動する。
【0114】
次に、過負荷軽減機構47の構成を説明する。過負荷軽減機構47は、ボールジョイント47a、ストッパー47bを備えている。ボールジョイント47aは、一般的なボールジョイントと略同様に、ボール部分が受け皿部分に嵌め込まれている。このとき、ボール部分は、第2のリンク部42cに所定の大きさの負荷が作用すると、第2のリンク部42cの回転を許容するように、バネ等の弾性部材によって与圧が与えられた状態で、受け皿部分に嵌め込まれている。これにより、第2のリンク部42cは、当該第2のリンク部42cに所定の大きさの負荷が作用すると、第1のリンク部42bに対してX・Y・Z軸と平行な軸回りに回転可能となる。
【0115】
ストッパー47bは、第1のリンク部42bの他方の端部における当該第1のリンク部42bの開方向側の隅部に形成されている。ストッパー47bは、第2のリンク部42cの開方向への回転を所定の角度以下に(本実施の形態では、第1のリンク部42bとで成す角度θが約180°以下になるように)拘束する。
【0116】
このような構成の挟み込み軽減機構41は、以下のように動作する。ハンド部42が閉方向に回転駆動するとき、駆動モータの駆動力を、第1のリンク部42b及びストッパー47bを介して第2のリンク部42cに伝達し、当該第2のリンク部42cを閉方向に回転させる。
【0117】
このとき、第2のリンク部42cの開方向への回転は、ストッパー47bによって拘束される。つまり、ハンド部42で把持対象物を把持する際に、外力によって第2のリンク部42cが開方向に逃げてしまうことがなく、ハンド部42に大きな指先力を発生させることが可能である。
【0118】
一方、ハンド部42が開方向に回転駆動するとき、駆動モータの駆動力を、第1のリンク部42b及びボールジョイント47aを介して第2のリンク部42cに伝達し、当該第2のリンク部42cを開方向に回転させる。
【0119】
このとき、第2のリンク部42cとロボットアーム45との間に物等が挟まって、第2のリンク部42cに所定の大きさの負荷が作用すると、第2のリンク部42cは、ボールジョイント47aによって第1のリンク部42bに対して閉方向への回転が許容されているので、閉方向に回転して逃げようとする。これにより、駆動モータから第2のリンク部42cに伝達される開方向への駆動力が減少する。
【0120】
しかも、第2のリンク部42cは、ボールジョイント47aによって第1のリンク部42bに対して閉方向への回転が許容されているので、第2のリンク部42cと基部43との間に挟まった物等を容易に排除することができる。つまり、第2のリンク部42cとロボットアーム45との間に物等が挟まっても、物等を強く挟み込むことがなく、しかも容易に排除することができるので、安全性が高い。
【0121】
また、例えば基部43をY軸と平行な軸回りに回転させた際に、第2のリンク部42cとロボットアーム45との間に物等が挟まっても、ボールジョイント47aによって第2のリンク部42cはX軸と平行な軸回りの回転も許容されているので、第2のリンク部42cがZ軸と平行な軸だけでなく、X軸と平行な軸回りにも回転して、挟まった物等を強く押し込むことがない。つまり、本実施の形態の過負荷軽減機構47は、基部43がX・Y・Z軸と平行な軸回りに回転可能なロボットハンドに好適に用いることができる。
このように、本実施の形態の挟み込み軽減機構41は、高い安全性と大きな指先力を確保できる。
【0122】
ちなみに、図19に示すように、第1のリンク部42bと第2のリンク部42cとを、バネやゴム等の弾性部材48で連結することが好ましい。弾性部材48は、第2のリンク部42cをX・Y・Z軸と平行な軸回りに回転した状態から元位置に復帰させることができるように、第1のリンク部42bと第2のリンク部42cとを連結する。これにより、第2のリンク部42cがX・Y・Z軸と平行な軸回りに回転しても、第2のリンク部42cを容易に元位置に復帰させることができる。
【0123】
また、図20に示すように、第1のリンク部42bに距離センサ49を設けることが好ましい。距離センサ49としては、例えば光ファイバやレーザを用いた光学式の距離センサ等を用いることができる。このとき、第2のリンク部42cには、距離センサ49から出射される光等を反射する反射部材50が設けられる。距離センサ49は、第1のリンク部42bに対する第2のリンク部42cの回転量(例えば、第1のリンク部42bに対する第2のリンク部42cの閉方向の移動量)を検出し、図示を省略したロボットの制御装置に出力する。このとき、第2のリンク部42cとロボットアーム45との間に物等が挟まると、第2のリンク部42cが閉方向に回転して第1のリンク部42に近付く。そこで、制御装置は、当該移動量が閾値より大きくなると、駆動モータの駆動を停止、又はハンド部を閉方向に回転駆動させる。これにより、安全性をより向上させることができる。但し、本実施の形態の距離センサ49は第1のリンク部42bに設け、反射部材50を第2のリンク部42cに設けたが、逆の構成でも良い。
【0124】
以上、本発明に係るロボットハンドの挟み込み軽減機構及びそれを用いたロボットハンドの実施の形態を説明したが、上記の構成に限らず、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲で、変更することが可能である。
【符号の説明】
【0125】
1 ロボットハンドの挟み込み軽減機構
2 ハンド部
2a 回転軸、2a1 太径部分、2a2 細径部分
3 基部、3a 筐体
4 ロボットハンド
5 ロボットアーム
6 駆動機構、6a 駆動モータ、6b 減速機
7 過負荷軽減機構
7a 弾性部材
7b 突出部
7c 突出部
8 被覆部材
9 冶具
10 角度検出センサ
11 ロボットハンドの挟み込み軽減機構
12 ハンド部、12a 回転軸
13 基部、13a 筐体
14 ロボットハンド
15 ロボットアーム
16 駆動機構、16a 歯車、16b 回転軸
17 過負荷軽減機構、17a 第1の歯車、17b 第2の歯車、17c 突出部、17d 切り欠き部、17e 弾性部材
21 ロボットハンドの挟み込み軽減機構
22 ハンド部、22a 回転軸、22b 筐体、22b1 開口部
23 基部、23a 筐体、23a1 開口部、23a2、23a3 内側面
24 ロボットハンド
25 ロボットアーム
26 駆動機構、26a 駆動モータ、26b 減速機、26c 第1のプーリ、26d第2のプーリ、26e ベルト
27 過負荷軽減機構、27a 第1の歯車、27b 第2の歯車、27b1 回転軸、27b2 歯車、27c 被覆部材、27d 弾性部材
28a、28b 軸受
29a、29b 突出部
30 摺動部材
31 ロボットハンドの挟み込み軽減機構
32 ハンド部、32a 回転軸
33 基部
34 ロボットハンド
35 ロボットアーム
36 駆動機構、36a 駆動モータ、36b第1のプーリ、36c 第2のプーリ、36d ベルト
37 過負荷軽減機構、37a 板材、37b 付加機構
38 距離センサ
39 反射部材
41 ロボットハンドの挟み込み軽減機構
42 ハンド部、42a 回転軸、42b 第1のリンク部、42c 第2のリンク部
43 基部
44 ロボットハンド
45 ロボットアーム
47 過負荷軽減機構、47a ボールジョイント、47b ストッパー
48 弾性部材
49 距離センサ
50 反射部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動機構から伝達される駆動力によって開閉する一対のハンド部を備えるロボットハンドの挟み込み軽減機構であって、
前記ハンド部が開方向に回転駆動するときのみ、前記ハンド部に所定の大きさの負荷が作用すると、前記駆動機構から前記ハンド部への駆動力の伝達を減少させる過負荷軽減機構を備えるロボットハンドの挟み込み軽減機構。
【請求項2】
前記過負荷軽減機構は、
前記ハンド部又は前記ハンド部が連結される被連結部材の一方の端部に設けられた第1の回転軸と、他方の端部に設けられた前記駆動機構の第2の回転軸との間に、前記駆動機構の駆動力を前記第1の回転軸に伝達可能に配置された弾性部材と、
前記第1の回転軸に連結された第1の突出部と、
前記第2の回転軸に連結された第2の突出部と、を備え、
前記ハンド部が閉方向に回転駆動するとき、前記第1の突出部と前記第2の突出部とが接触して前記駆動機構の駆動力を前記ハンド部に伝達しつつ、外力による前記ハンド部の開方向への回転動作を拘束し、
前記ハンド部が開方向に回転駆動するとき、前記第1の突出部と前記第2の突出部とが離間可能な状態となり、前記弾性部材を介して前記駆動機構の駆動力を前記ハンド部に伝達しつつ、外力による前記ハンド部の閉方向への回転動作を許容する請求項1に記載のロボットハンドの挟み込み軽減機構。
【請求項3】
前記過負荷軽減機構は、
前記ハンド部が連結される被連結部材に搭載された前記駆動機構の回転軸に、当該回転軸から前記駆動機構の駆動力が伝達可能に設けられた第1の歯車と、
前記第1の歯車と噛み合わされ、前記ハンド部の回転軸に回転可能に設けられた第2の歯車と、
前記第2の歯車に設けられた突出部と、
前記突出部が内部に配置され、前記ハンド部の端部に形成された切り欠き部と、
一端が前記第2の歯車に係合され、他端が前記ハンド部に係合された弾性部材と、を備え、
前記ハンド部が閉方向に回転駆動するとき、前記突出部と前記切り欠き部の端面とが接触して、前記駆動機構の駆動力を前記ハンド部に伝達しつつ、外力による前記ハンド部の開方向への回転動作を拘束し、
前記ハンド部が開方向に回転駆動するとき、前記突出部が前記切り欠き部内を移動可能な状態となり、前記弾性部材を介して前記駆動機構の駆動力を前記ハンド部に伝達しつつ、外力による前記ハンド部の閉方向への回転動作を許容する請求項1に記載のロボットハンドの挟み込み軽減機構。
【請求項4】
前記弾性部材は、外力によって前記ハンド部を閉方向に回転動作させた際における前記突出部の前記切り欠き部内の位置から、前記突出部を前記切り欠き部内の所定の位置に復帰させる請求項3に記載のロボットハンドの挟み込み軽減機構。
【請求項5】
前記ハンド部が開方向に回転駆動する際の前記ハンド部の回転量を検出する検出部を備える請求項1乃至4のいずれか1項に記載のロボットハンドの挟み込み軽減機構。
【請求項6】
前記過負荷軽減機構は、
食い違い歯車の一方の歯車であって、前記ハンド部の回転軸に設けられた第1の歯車と、
前記食い違い歯車の他方の歯車であって、前記第1の歯車と噛み合わされて前記駆動機構の駆動力を前記ハンド部に伝達し、前記ハンド部が連結される被連結部材の内部において長手方向に移動可能に配置された第2の歯車と、
前記被連結部材の内部において、前記第2の歯車を被覆し、前記第2の歯車の移動に倣って移動する被覆部材と、
前記被覆部材と、前記被連結部材の一方の内側面との間であって、前記第2の歯車の長手方向に配置された第1の弾性部材と、を備え、
前記ハンド部が閉方向に回転駆動するとき、前記第2の歯車は前記第1の弾性部材を介して前記被連結部材の一方の内側面に反力をとって、前記駆動機構の駆動力を前記第1の歯車に伝達し、且つ前記被覆部材が前記被連結部材の他方側の内側面に接触して、外力による前記ハンド部の開方向への回転動作を拘束し、
前記ハンド部が開方向に回転駆動するとき、前記被覆部材と前記被連結部材の他方側の内側面とが接触して、前記第2の歯車は前記被連結部材の他方側の内側面に反力をとって、前記駆動機構の駆動力を前記第1の歯車に伝達し、且つ前記第1の弾性部材の収縮によって、外力による前記ハンド部の閉方向への回転動作を許容する請求項1に記載のロボットハンドの挟み込み軽減機構。
【請求項7】
前記被覆部材と、前記被連結部材の他方の内側面との間であって、前記第2の歯車の長手方向に配置された第2の弾性部材を備え、
前記第2の弾性部材の弾性係数は、前記第1の弾性部材の弾性係数より大きい請求項6に記載のロボットハンドの挟み込み軽減機構。
【請求項8】
前記第2の歯車の移動量を検出する検出部を備える請求項6又は7に記載のロボットハンドの挟み込み軽減機構。
【請求項9】
前記駆動機構は、前記ハンド部が連結される被連結部材に搭載されており、
前記駆動機構は、
駆動源と、
前記駆動源の回転軸に設けられた第1のプーリと、
前記ハンド部の回転軸に設けられた第2のプーリと、
前記第1のプーリと前記第2のプーリとに渡されたベルトと、を備え、
前記過負荷軽減機構は、前記ハンド部が開方向に回転駆動するときに、前記ベルトにおける負荷が作用する側の前記第1のプーリと前記第2のプーリとの間に配置されている請求項1に記載のロボットハンドの挟み込み軽減機構。
【請求項10】
前記過負荷軽減機構は、
前記ベルトの両端部を挟み込む一組の板材と、
前記一組の板材に挟み込み力を付与する付与機構と、を備え、
前記付加機構は、前記ハンド部が開方向に回転駆動するとき、前記ハンド部に所定の大きさの負荷が作用すると、前記一組の板材における前記ベルトの端部の挟み込み状態が破綻するように、前記一組の板材を挟み込む請求項9に記載のロボットハンドの挟み込み軽減機構。
【請求項11】
前記板材に対する前記ベルトの変位を検出する検出部を備える請求項9又は10に記載のロボットハンドの挟み込み軽減機構。
【請求項12】
前記過負荷軽減機構は、磁気継手であって、
前記磁気継手は、前記ハンド部が開方向に回転駆動するとき、前記ハンド部に所定の大きさの負荷が作用すると、前記磁気継手の接合関係が破綻する請求項9に記載のロボットハンドの挟み込み軽減機構。
【請求項13】
前記過負荷軽減機構は、弾性部材であって、
前記弾性部材は、前記ハンド部が開方向に回転駆動するとき、前記ハンド部に所定の大きさの負荷が作用すると、前記ハンド部の閉方向への回転動作を許容する請求項9に記載のロボットハンドの挟み込み軽減機構。
【請求項14】
前記ハンド部は、
前記駆動機構の駆動力が伝達される第1のリンク部と、
前記第1のリンク部に前記過負荷軽減機構を介して連結される第2のリンク部と、を備え、
前記過負荷軽減機構は、
前記第2のリンク部に所定の大きさの負荷が作用すると、前記第2のリンク部の閉方向への回転動作を許容するように、与圧が与えられたボールジョイントと、
前記第2のリンクの開方向への回転動作を所定の角度以下に拘束するストッパーと、を備える請求項1に記載のロボットハンドの挟み込み軽減機構。
【請求項15】
前記第2のリンク部を元位置に復帰させる復帰部材を備える請求項14に記載のロボットハンドの挟み込み軽減機構。
【請求項16】
前記第1のリンク部に対する前記第2のリンク部の閉方向への回転量を検出する検出部を備える請求項14又は15に記載のロボットハンドの挟み込み軽減機構。
【請求項17】
請求項1乃至16のいずれか1項に記載のロボットハンドの挟み込み軽減機構を備えるロボットハンド。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate


【公開番号】特開2012−125877(P2012−125877A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−279346(P2010−279346)
【出願日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】