説明

ワーク搬送方法およびワーク搬送装置

【課題】ワークの種類に関わらずワークを精度よく搬送可能なワーク搬送方法およびワーク搬送装置を提供する。
【解決手段】同心円周上に所定ピッチで複数個の貫通孔が形成さえた、保持面から僅かに突出したパッド77を先端のU形の保持アーム34に、さらに所定ピッチで複数個有し、当該パッド77から保護シートに向けて圧縮空気を吹き付けて保持アーム34の保持面と保護シートとの間に負圧を発生させて保護シートを浮遊させた状態で懸垂保持し、あるいは当該パッド77で表面の回路の露出したウエハの裏面を吸着保持してそれぞれを搬送する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハ(以下、適宜「ウエハ」という)、プリント基板などの電子基板、あるいはシートなどを含むワークに応じて接触または非接触で各ワークを搬送するワーク搬送方法およびワーク搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
基板としてウエハを非接触で懸垂保持して搬送する保持装置が知られている。当該保持装置は、上ケースと下ケースから構成されるチャンバの下ケース側に複数個の貫通孔が形成されており、当該チャンバ内に気体を供給することにより、貫通孔からウエハの表面に向けて気体を吹き付けるように構成されている。すなわち、ウエハの表面に気体を吹き付けることにより、保持装置とウエハとの間に負圧領域を形成し、ベルヌーイ効果によりウエハを浮遊させて懸垂保持する(特許文献1を参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2008−168413号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、バックグラインド処理後のウエハ裏面に、金を蒸着させるなどの高温処理を施している。有機材料である粘着テープは、高温処理により溶融するので、高温処理前にウエハ表面から粘着テープが剥離され、その後にウエハ表面に新たな粘着テープが貼り付けられている。したがって、粘着テープの貼付処理と剥離処理を繰り返す必要があるので処理が煩雑になり、ひいては装置の大型化および処理速度の低下を招くといった不都合が生じている。
【0005】
バックグラインド処理後にウエハから表面保護用の粘着テープを剥離したままの状態であっても、ウエハが適度の剛性を有していれば、裏面を吸着して搬送することにより回路面に保持部材を接触させることなく搬送することができる。
【0006】
しかしながら、ダイシング処理する前に粘着テープを介してリングフレームにウエハを接着保持する必要がある。このとき、回路面側を支持してウエハ裏面側に粘着テープを貼付ローラで押圧しながら転動させて貼り付ける必要がある。
【0007】
この場合、金属製などの保持テーブルに露出した回路面が直接に押し付けられたり、あるいは貼付ローラの転動方向にウエハが引き摺られたりして回路を破損させる問題がある。
【0008】
上記問題を解決するために、発明者等は、保持テーブルとウエハとの間に回路面を保護する部材を介在させることに至った。そこで、発明者等は、保護部材としてメンテナンス性の高い物が好ましいので、シートを利用することにした。
【0009】
しかしながら、当該シートを介してウエハを保持テーブル上に吸着保持する必要がある場合、通気性を有するものが必要となる。当該シートは、吸着保持用の保持部材では吸着力が低下して確実に吸着搬送することができないといった新たな問題が発生している。
【0010】
シートの搬送だけであれば従来のベルヌーイ効果を利用した保持装置で搬送可能であるが、大径或いは適度の厚みのある自重の重いウエハを当該保持装置で懸垂保持して搬送することができないといった問題がある。
【0011】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、ワークの種類に関わらずワークを精度よく搬送可能なワーク搬送方法およびワーク搬送装置を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとる。
すなわち、ワークを搬送するワーク搬送方法であって、
前記ワークに応じて保持部材の保持面にワークを吸着保持、あるいは保持部材の保持面からワークに向けて圧縮空気を吹き付けて当該保持面とワーク表面との間に負圧を発生させて浮遊させた状態での懸垂保持のいずれかに切り換えて当該ワークを搬送する
ことを特徴とする。
【0013】
(作用・効果) 上記方法によれば、ワークに応じて保持部材の保持形態を、ワークを吸着保持する接触式、またはワークに圧縮空気を吹き付けて懸垂保持する非接触式に切り換えてワークを搬送することができる。
【0014】
例えば、非接触でワークを懸垂保持して搬送するとき、保持部材の内部に形成された流路の同じ位置から保持面に向けて先広がり放射状で、かつ同心円上に所定ピッチで形成した複数個の貫通孔群からワーク表面に向けて放射状に気体を吹き付けて懸垂保持する。また、ワークを吸着保持するとき、複数個の貫通孔でワークを吸着保持する(請求項2)。
【0015】
したがって、ワークの搬送工程で異なる種類のワークを搬送することができる。例えば、バックグラインド処理後の薄型化されて表面に保護用の粘着テープが貼り付けられている半導体ウエハまたは保護用の粘着テープの貼り付けられていない半導体ウエハ(請求項3)、あるいは通気性を有して吸着しづらいシート(請求項4)などを搬送する。
【0016】
すなわち、ワークが保護用の粘着テープを貼り付けて撓み変形しづらく補強した半導体ウエハ、および粘着テープの貼り付けがなくとも撓み変形しづらい程度の剛性および重量を有する半導体ウエハ単体の場合、保持部材をワークに接触させて搬送することができる。また、ワークが粘着テープの有無の関係なしに撓み変形する半導体ウエハ、あるいはシートを保持部材により非接触で搬送することができる。なお、シートについては、通気性の有無を問わない。したがって、ワークの種類に関わらずワークを破損させることなく搬送することができる。
【0017】
また、この発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとる。
【0018】
すなわち、ワークを搬送するワーク搬送装置であって、
前記ワークを保持する保持部材と、
流路を介して前記保持部材と連通接続された圧空装置と、
前記保持部材の保持面から圧縮空気をワークに向けて吹き付け、保持面とワークとの間で負圧を発生させてワークを懸垂保持して搬送、あるいは、保持部材でワークを吸着保持して搬送可能に前記圧空装置を切換制御する制御部と
を備えたことを特徴とする。
【0019】
(作用・効果) この構成によれば、流路を介して保持部材に連通接続された圧空装置を静圧駆動または負圧駆動に切り換えることにより、保持部材でワークを吸着保持あるいは非接触による懸垂保持のいずれかに切り換えて搬送することができる。
【0020】
上記構成において、保持部材は、当該保持面から内部の流路と連通する貫通孔が形成されており、前記貫通孔は、同心円周上に所定ピッチで形成された複数個の貫通孔群からなり、さらに当該貫通孔群を保持面に複数配備して構成することが好ましい(請求項6)。
【0021】
なお、貫通孔は、保持部材内部で連通する流路の同じ位置から保持面に向けて先広がりのテーパー状に形成されていることがより好ましい(請求項7)。
【0022】
この構成によれば、保持部材からワーク表面に吹き付けた圧縮空気が、その表面を放射状に滑らかに流れる。したがって、保持部材の保持面とワーク表面との間にエゼクタ効果およびベルヌーイ効果による負圧発生と、ワーク裏面側にエアクッション効果による静圧を効率よく発生させ、ワークを確実に浮遊させた状態で懸垂保持して搬送することができる。
【0023】
上記構成において、保持部材を上下反転する反転駆動機構を備えてもよい(請求項8)。この構成によれば、吸着保持して搬送するワークの表裏面を反転させてテーブルなどに載置することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明のワーク搬送方法およびワーク搬送装置によれば、保持部材によってワークを吸着保持する接触式と、ワークに向けて圧縮空気を吹き付けてワークと保持部材との間で負圧を発生させて懸垂保持する非接触式とに切り換えることにより、同一工程内で破損させることなく複数種類のワークを搬送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】粘着テープ貼付け装置の構成を示す平面図である。
【図2】粘着テープ貼付け装置の正面図である。
【図3】搬送機構の一部を示す正面図である。
【図4】搬送機構の一部を示す平面図である。
【図5】ワーク搬送装置の正面図である。
【図6】ワーク搬送装置の要部を示す平面図である。
【図7】保持アームの要部を示す平面図である。
【図8】保持アームのパッドを示す拡大平面図である。
【図9】図7に示す保持アームのパッド部分のA−A矢視断図である。
【図10】ワーク搬送装置およびフレーム搬送装置の移動構造を示す平面図である。
【図11】ワーク搬送装置およびフレーム搬送装置における前後移動構造の一部を示す正面図である。
【図12】ワーク搬送装置およびフレーム搬送装置における前後移動構造の一部を示す正面図である。
【図13】粘着テープ貼付け装置の動作説明図である。
【図14】粘着テープ貼付け装置の動作説明図である。
【図15】粘着テープ貼付け装置の動作説明図である。
【図16】粘着テープ貼付け装置の動作説明図である。
【図17】粘着テープ貼付け装置の動作説明図である。
【図18】粘着テープ貼付け装置の動作説明図である。
【図19】粘着テープ貼付け装置の動作説明図である。
【図20】粘着テープ貼付け装置の動作説明図である。
【図21】粘着テープ貼付け装置の動作説明図である。
【図22】粘着テープ貼付け装置の動作説明図である。
【図23】マウントフレームの斜視図である。
【図24】変形例装置の保持アームの平面図である。
【図25】変形例装置の保持アームの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。なお、本実施例では、バックグラインド処理後の薄型化された半導体ウエハ(以下、単に「ウエハ」という)の裏面に粘着テープを介してリングフレームに接着保持してマウントフレームを作成する粘着テープ貼付け装置に本発明のワーク搬送装置を備えた場合を例に採って説明する。
【0027】
図1に粘着テープ貼付け装置の平面図が、また、図2にその正面図がそれぞれ示されている。
【0028】
この粘着テープ貼付け装置は、図1に示すように、横長の矩形部Aとこの矩形部Aの中央部で連接して奥側に突出する突出部Bとからなる凸形に構成されている。なお、以後の説明において、矩形部Aの長手方向を左右方向、これと直交する水平方向を手前側および奥側(図1では下側および上側)と呼称する。
【0029】
矩形部Aには、ウエハW、リングフレームf、および、マウントフレームMFを搬送する搬送機構1が配備されるとともに、突出部Bには、リングフレームfとウエハWに粘着テープDTを貼り付けてマウントフレームMFを作成する粘着テープ貼付け部2が配備されている。
【0030】
図1および図2に示すように、矩形部Aの左右中心から右側寄りの手前にウエハWをカセット3に積層収容して供給するウエハ供給部4、およびウエハWの表面保護用の保護シートPを容器70に積層収納して供給するシート供給部71が設けられている。本実施例の場合、カセット3および容器70をそれぞれ2個ずつ並列に配備している。
【0031】
なお、本実施例では、シート供給部71に載置される容器70の一方に、粘着テープDTの貼付時にウエハ保持テーブル72とウエハWとの間に介在させた使用済の保護シートPの回収用として利用している。
【0032】
矩形部Aの左右中心から左側寄りの手前にリングフレームfを容器5に積層収容して供給するフレーム供給部6が配備されている。さらに、矩形部Aの左右中心近くの奥側(粘着テープ貼付け部2側)箇所には、ウエハWとリングフレームfを載置して粘着テープ貼付け部2に送り込む保持テーブル7が前後移動可能に配備されている。
【0033】
なお、本実施例で利用する保護シートPは、通気性を有する合紙を利用している。
【0034】
保持テーブル7は、図19に示すように、中央に保護シートPおよびウエハWを載置保持するウエハ保持テーブル72と、このウエハ保持テーブル72を囲うフレーム保持部73とが備わっている。
【0035】
ウエハ保持テーブル72は、金属製のチャックテーブルであり、内部に形成された流路を介して外部の真空装置と連通接続されている。つまり、ウエハ保持テーブル72上に載置した通気性を有する保護シートPを介してウエハWを吸着保持するように構成されている。また、ウエハ保持テーブル72は、シリンダ84によって昇降する。なお、ウエハ保持テーブル72は、金属製に限定されず、セラミックの多孔質で形成されたものであってもよい。
【0036】
フレーム保持部73は、フレーム厚みに相当する段部が形成されている。つまり、当該段部にリングフレームfを載置したときに、このフレーム保持部73の頂部とリングフレームfの上面とが平坦になるように構成されている。また、ウエハ保持テーブル73に保護シートPおよびウエハWを載置したときのウエハWの表面高さとリングフレームfの表面高さとが平坦になるようなっている。
【0037】
なお、図1に示すように、保持テーブル7は、図示しない駆動機構によってウエハWなどのセット位置と粘着テープ貼付け部2との間に敷設されたレール85に沿って往復移動可能に構成されている。
【0038】
搬送機構1には、矩形部Aの上部に左右水平に架設された案内レール8の右側に左右往復移動可能に支持されたワーク搬送装置9と、案内レール8の左側に左右移動可能に支持されたフレーム搬送装置10とが備えられている。また、矩形部Aの右奥側に、ノッチやオリエンテーションフラットを用いてウエハWの位置決めを行うアライナ11が設置される。さらに、フレーム供給部6の奥側にはリングフレームfの位置決めを行うアライナ12が設置されている。
【0039】
ワーク搬送装置9は、容器70から取り出した保護シートPおよびカセット3から取り出したウエハWを左右および前後に搬送するとともに、ウエハWの姿勢を表裏反転することができるよう構成されている。その詳細な構造が図3〜図12に示されている。
【0040】
また、ワーク搬送装置9は、図3および図5に示すように、案内レール8に沿って左右移動可能な左右移動可動台14が装備されている。この左右移動可動台14に備えられた案内レール15に沿って前後移動可能に前後移動可動台16が装備されている。さらに、この前後移動可動台16の下部にウエハWおよび保護シートを保持する保持ユニット17が上下移動可能に装備されている。
【0041】
図3および図4に示すように、案内レール8の右端近くにはモータ18で正逆転駆動される駆動プーリ19が軸支されるとともに、案内レール8の中央側には遊転プーリ20が軸支されている。これら駆動プーリ19と遊転プーリ20とに亘って巻き掛けられたベルト21に、左右移動可動台14のスライド係合部14aが連結され、ベルト21の正逆回動によって左右移動可動台14が左右に移動されるようになっている。
【0042】
図10〜図12に示すように、左右移動可動台14の奥端近くにはモータ22で正逆転駆動される駆動プーリ23、が軸支されるとともに、左右移動可動台14の前端近くには遊転プーリ24、54が軸支されている。これら駆動プーリ23と遊転プーリ24とに亘って巻き掛けられたベルト25に、前後移動可動台16のスライド係合16aが連結され、ベルト25の正逆回動によって前後移動可動台16が前後に移動されるようになっている。
【0043】
図5および図6に示すように、保持ユニット17は、前後移動可動台16の下部に連結された逆L字形の支持フレーム26、この支持フレーム26の縦枠部に沿ってモータ27でネジ送り昇降される昇降台28、昇降台28に回動軸29を介して縦向き支軸p周りに旋回可能に軸支された回動台30、回動軸29にベルト31を介して巻き掛け連動された旋回用モータ32、回動台30の下部に回動軸33を介して水平向き支軸q周りに反転回動可能に軸支された保持アーム34、回動軸33にベルト35を介して巻き掛け連動された反転用モータ36などで構成されている。なお、保持アーム34は、本発明の保持部材に相当する。
【0044】
図6および図7に示すように、保持アーム34はU形をしている。保持アーム34の保持面には、僅かに突出したパッド77が設けられている。図8に示すように、このパッド77の表面から内部に向けて小径(本実施例では約0.2mm)の貫通孔78が同心円周上に所定ピッチで形成されている。これら複数個の貫通孔78は、図6および図9に示すように、保持アーム34の内部に形成された1本の流路79の同じ位置に連通された貫通孔群を構成している。貫通孔群の個々の貫通孔78は、保持アーム内の流路79から保持面に向けて先広がりのテーパー状に形成されている。この貫通孔群を有するパッド77は、保持面の所定位置に複数配備されている。さらに、保持アーム34は、その内部に形成された流路79と、この流路79の基端側で連接された接続流路80を介して圧空装置81に連通接続されている。
【0045】
圧空装置81は、制御部82によって駆動切換される。つまり、圧空装置81を負圧駆動させることにより、ウエハWの裏面を保持アーム34のパッド77で吸着保持させる。また、圧空装置81を静圧駆動に切り換えることにより、保持アーム34を上下反転させて下向きの貫通孔群から保護シートPに圧縮空気を吹き付け、載置面と最上段の保護シートPとの間で負圧を発生させ、最上段の保護シートPのみを懸垂保持させる。
【0046】
上記した可動構造を利用することで、吸着保持したウエハWを保持アーム34によって前後移動、左右移動、および、縦向き支軸p周りに旋回移動するとともに、図5に示す水平向き支軸q周りの反転回動によってウエハWを表裏反転することができるようになっている。
【0047】
また、保持アーム34により保護シートPを懸垂保持したまま、前後移動および左右移動するようになっている。
【0048】
フレーム供給部6の左側には、図2に示すように、リングフレームfに粘着テープDTを介してウエハWを接着して作成したマウントフレームMFを積載して回収する収納部39が配備されている。この収納部39は、装置フレーム40に連結固定された縦レール41と、この縦レール41に沿ってモータ42でネジ送り昇降される昇降台43が備えられている。したがって、フレーム供給部6は、マウントフレームMFを昇降台43に載置してピッチ送り下降するよう構成されている。
【0049】
フレーム搬送装置10は、フレーム供給部6に積層して載置されたリングフレームfを最上段から順に取り出して、左右および前後に搬送することができるよう構成されており、その左右移動構造および前後移動構造はワーク搬送装置9と同様である。
【0050】
フレーム保持ユニット47は、図1および図2に示すように、前後移動可動台46の下部に連結された縦枠56、この縦枠56に沿ってスライド昇降可能に支持された昇降枠57、昇降枠57を上下動させる屈伸リンク機構58、この屈伸リンク機構58を正逆屈伸駆動するモータ59、昇降枠57における下端の前後左右箇所に装備された吸着パッド60などで構成されている。したがって、昇降台43に積載されたリングフレームfを最上段のものから順に吸着パッド60で吸着保持して上昇し、前後左右に搬送することができるようになっている。なお、吸着パッド60はリングフレームfのサイズに対応して水平方向にスライド調節可能となっている。
【0051】
粘着テープ貼付け部2は、図2、図20、および図21に示すように、ロール巻きした幅広の粘着テープ(ダイシングテープ)DTを装填するテープ供給部61、貼付ローラ62、剥離ローラ63、テープ切断機構64、およびテープ回収部65などを備えている。
【0052】
次に、上記実施例装置を用いてウエハWの裏面側に粘着テープDTを貼付ける基本動作について説明する。
【0053】
先ず、フレーム搬送装置10のフレーム保持ユニット47が、フレーム供給部6からリングフレームfを吸着してアライナ12に移載する。フレーム保持ユニット47が吸着を解除して上昇すると、アライナ12がリングフレームfの位置を行う。その後、フレーム保持ユニット47が再びリングフレームfを吸着保持して保持テーブル7に搬入し、ウエハWと同心状のフレーム保持部73に載置する。
【0054】
図13に示すように、パッド77を下向きにした状態で保持アーム34をシート供給部71の容器70上に移動させる。図14に示すように、保持アーム34を所定高さまで下降させて最上段の保護シートPに近接させ、その状態で圧空装置81を静圧駆動させて保持アーム34のパッド77から保護シートPに圧縮空気を吹き付ける。保護シートPの表面で放射状に滑らかに流れる気流によって保持面と保護シートPとの間に安定した負圧領域が形成され、保護シートPが浮遊する。
【0055】
図15に示すように、浮遊した保護シートPを保持アーム34で懸垂保持したまま、保持テーブル7上に移動させる。図16に示すように、保持テーブル7は、その表面がフレーム保持部73の表面よりも高い位置になるように上昇している。保護シートPが保持テーブル7上に接触する高さまで保持アーム34を下降させ、圧空装置81の駆動を停止して保護シートPをウエハ保持テーブル72に載置する。ウエハ保持テーブル72に載置された保護シートPは、位置合わせピンなどによって位置合わせされる。
【0056】
保護シートPを搬送したワーク搬送装置9は、ウエハ供給部4へと戻る。次に、ワーク搬送装置9は、保持アーム34のパッド77を上向きになるよう上下反転させる。この状態で、図17に示すように、ウエハ供給部4のカセット5に回路面を上向きにして積層収納されているウエハW同士の間に保持アーム34を前進移動させ、ウエハWの裏面に当接させる。パッド77がウエハWの裏面と当接すると、圧空装置81を負圧駆動させウエハ裏面を吸着保持して取り出す。保持アーム34でウエハWを吸着保持したままアライナ11上に搬送する。
【0057】
アライナ11は、その中央から突出した吸着パッド83によりウエハWの裏面中央を吸着する。同時に、保持アーム34は、ウエハWの吸着を解除して後退する。アライナ11は、吸着パッド83をテーブル内に収納し、ウエハWのノッチなどに基づいて位置合わせを行う。位置合わせが完了すると、ウエハWを吸着した吸着パッド83をアライナ11の面から突出させる。その位置に保持アーム34が移動し、ウエハWを裏面から吸着保持する。吸着パッド83は、吸着を解除して下降する。
【0058】
保持アーム34は、ウエハWの裏面を吸着保持した状態で所定高さまで上昇し、図18に示すように、ウエハWの回路面が下向きとなるように、上下反転する。その後、図19に示すように、保持アーム34は、保持テーブル7上に移動してウエハ保持テーブル72の保護シートP上にウエハWの回路面を下向きにしたまま載置する。ウエハ保持テーブル72は、保護シートPを介してウエハWを吸着保持する。
【0059】
保持テーブル7にウエハWおよびリングフレームfのセットが完了すると、ウエハ保持テーブル72は下降し、ウエハWとリングフレームfの両方の上面が同じ高さにされた後にレール85に沿って粘着テープ貼付け部2へと移動する。
【0060】
保持テーブル7がテープ貼付部け部2の搬入位置に達すると、図20に示すように、貼付ローラ62を下降させて粘着テープDT上で右から左に転動させる。これによってリングフレームfとウエハWの裏面側に粘着テープDTを貼り付ける。貼付ローラ62が終端位置に到達すると、図21に示すように、テープ切断機構64が下降し、リングフレームfに沿って丸刃のカッタを旋回させながら粘着テープDTを切断する。
【0061】
切断が完了すると、テープ切断機構64が上昇するとともに、図22に示すように、剥離ローラ63が右から左に移動し、切断後の不要テープを巻取り回収してゆく。
【0062】
図23に示すように、マウントフレームMFの作成が完了すると、保持テーブル7が図1中の矩形部Aのセット位置まで移動して停止する。その位置でフレーム保持ユニット47が、作成されたマウントフレームMFを吸着搬送して収納部39に収納する。また、ワーク搬送機構9が保持テーブル7まで移動する。保持アーム34は、使用済みの保護シートPを懸垂保持し、そのままの状態で、シート供給部71に配備された回収用の容器70に搬送する。
【0063】
以上で一巡の基本動作が終了し、以後同じ動作が繰り返される。
【0064】
上記実施例装置によれば、吸着搬送することのできない保護シートPと吸着搬送の必要なウエハWを一台のワーク搬送装置9により搬送することができる。また、保持アーム34の吸着パッドに形成された貫通孔78は、貫通孔78の流路が先広がりのテーパー状になっており、開口面が外向きに長い楕円形をしているので、保護シートPに向けて吹き付けられる圧縮空気がその表面に沿って滑らかな気流を発生させる。したがって、保持アーム34の保持面と保護シートPとの間に安定した負圧領域が形成されるので、保護シートPを安定した状態で懸垂保持できる。
【0065】
さらに、貫通孔78は、微小径であり、吸着保持するウエハWの裏面との接触面積が小さいので、バックグラインド処理後の薄型化されたウエハWのように、剛性が低下して撓み変形し易い場合であっても、吸着孔78にウエハWを吸い込んで凹入変形させることがない。すなわち、ウエハWを破損させることがない。
【0066】
なお、本発明は以下のような形態で実施することも可能である。
【0067】
(1)上記実施例装置では、保護シートPに通気性を有する合紙を利用したが、通気性を有さない保護シートを利用してもよい。例えば、弾性を有するシリコンシートや所定ピッチで凹凸段差を2次元アレー状に形成した保護シートなどが上げられる。
【0068】
(2)上記実施例装置の保持アーム34を、次のように構成してもよい。例えば、図24に示すように、アームの先端を環状にし、所定ピッチで貫通孔群を有するパッド77を設けてよい。また、図25に示すように、ウエハWと同じ直径の円形アームの複数箇所に貫通孔群を有するパッド77を備えた構成であってもよい。
【0069】
(3)上記実施例装置の保持アーム34は、ウエハWを吸着保持し、保護シートPを非接触で搬送する形態であったが、ウエハWを非接触で搬送するように構成してもよい。この形態の場合、ウエハWの回路面を下向きにして保護シートPを介在させて積層収納した容器70から保護シートP、ウエハWの順に保持アーム34によって非接触で懸垂保持して搬送する。
【符号の説明】
【0070】
1 … 搬送機構
2 … 粘着テープ貼付け部
4 … ウエハ供給部
6 … フレーム供給部
7 … 保持テーブル
9 … ワーク搬送装置
10 … フレーム搬送装置
73 … フレーム保持部
77 … パット
81 … 圧空装置
82 … 制御部
DT … 粘着テープ
W … 半導体ウエハ
f … リングフレーム
P … 保護シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを搬送するワーク搬送方法であって、
前記ワークに応じて保持部材の保持面にワークを吸着保持、あるいは保持部材の保持面からワークに向けて圧縮空気を吹き付けて当該保持面とワーク表面との間に負圧を発生させて浮遊させた状態での懸垂保持のいずれかに切り換えて当該ワークを搬送する
ことを特徴とするワーク搬送方法。
【請求項2】
請求項1に記載のワーク搬送方法において、
前記ワークを懸垂保持して搬送するとき、保持部材の内部に形成された流路の同じ位置から保持面に向けて先広がり放射状で、かつ同心円上に所定ピッチで形成した複数個の貫通孔群からワーク表面に向けて放射状に気体を吹き付けて懸垂保持し、
前記ワークを吸着保持するとき、複数個の前記貫通孔でワークを吸着保持する
ことを特徴とするワーク搬送方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のワーク搬送方法において、
前記ワークは、半導体ウエハである
ことを特徴とするワーク搬送方法。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載のワーク搬送方法において、
前記ワークは、通気性を有するシートである
ことを特徴とするワーク搬送方法。
【請求項5】
ワークを搬送するワーク搬送装置であって、
前記ワークを保持する保持部材と、
流路を介して前記保持部材と連通接続された圧空装置と、
前記保持部材の保持面から圧縮空気をワークに向けて吹き付け、保持面とワークとの間で負圧を発生させてワークを懸垂保持して搬送、あるいは、保持部材でワークを吸着保持して搬送可能に前記圧空装置を切換制御する制御部と
を備えたことを特徴とするワーク搬送装置。
【請求項6】
請求項5に記載のワーク搬送装置において、
前記保持部材は、当該保持面から内部の流路と連通する貫通孔が形成されており、
前記貫通孔は、同心円周上に所定ピッチで形成された複数個の貫通孔群からなり、さらに当該貫通孔群を保持面に複数配備して構成した
ことを特徴とするワーク搬送装置。
【請求項7】
請求項6に記載のワーク搬送装置において、
前記貫通孔は、保持部材内部で連通する流路の同じ位置から保持面に向けて先広がりのテーパー状に形成されている
ことを特徴とするワーク搬送装置。
【請求項8】
請求項5ないし請求項7のいずれかに記載のワーク搬送装置において、
前記保持部材を上下反転する反転駆動機構を備えた
ことを特徴とするワーク搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2011−199158(P2011−199158A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−66505(P2010−66505)
【出願日】平成22年3月23日(2010.3.23)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【出願人】(394016601)日東精機株式会社 (79)
【Fターム(参考)】