説明

半導体装置

【課題】電力破壊を抑制できる半導体装置を提供すること。
【解決手段】ベース領域12の表面に設定されたベースコンタクト領域14において、ベース電極15がベース領域12に接合されている。ベースコンタクト領域14の境界部の下方には、エミッタ領域13と同じ導電型を有するN型領域21がベースコンタクト領域14を包囲するように形成されている。言い換えれば、ベースコンタクト領域14の境界部の下方において、P型のベース領域12およびN型領域21によりPN型の寄生ダイオードが形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、PN接合を有する機能素子を含む半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から用いられているバイポーラトランジスタの原理的な構造は、図7に示されている。すなわち、N型半導体基板91の表層部にP型のベース領域92が形成され、このP型のベース領域92内にN型のエミッタ領域93が形成されている。ベース領域92およびエミッタ領域93には、それぞれベース電極94およびエミッタ電極95が接合されている。コレクタ電極は、N型半導体基板91の裏面側において、N+型領域96を介して取られるようになっている。97は絶縁膜である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭58−066356号公報
【特許文献2】特開昭62−058678号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ベース領域92は、N型半導体基板91の表面からP型不純物をドーピングすることにより形成される。そのため、ベース領域92の不純物濃度は表面側ほど濃くなっており、ベース−エミッタ間電流は、ベース領域92の表面付近に集中して流れる。したがって、ベース領域92の表面付近は、ベース領域92の他の部分と比較して電力消費による発熱に起因した電力破壊を生じやすく、このことが、バイポーラトランジスタ全体の静電破壊耐量、誘導性負荷耐量および抵抗性負荷耐量を低下させる原因となっていた。
【0005】
そこで、この発明の目的は、電力破壊を抑制できる半導体装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するための請求項1記載の発明は、半導体基板に形成された第1導電型半導体領域と、この第1導電型半導体領域に接合して形成され、第1導電型半導体領域とは異なる導電型の第2導電型半導体領域とを有する機能素子を含む半導体装置であって、第1導電型半導体領域において電極が接続されるコンタクト領域の境界部に寄生ダイオードが形成されていることを特徴とする半導体装置である。
【0007】
本発明の構成によれば、コンタクト領域の境界部に寄生ダイオードが形成されていることにより、第1導電型半導体領域に流れる電流が第1半導体領域の表面付近に集中することを防止できる。これにより、第1半導体領域の表面付近における電力破壊を抑制することができ、破壊耐量の向上を図ることができる。
より具体的には、上記寄生ダイオードが、第1導電型半導体領域と上記コンタクト領域の境界に接触した状態で第1導電型半導体領域に埋設された第1導電型半導体領域とは異なる導電型の第2導電型領域とからなるPNダイオードである場合(請求項2)、第1導電型半導体領域の多数キャリアの大半は、第1導電型半導体領域に接続された電極から第2導電型領域を回避して第2導電型半導体領域に向けて移動する。
【0008】
たとえば、上記機能素子がNPN型のバイポーラトランジスタであれば、第1導電型半導体領域としてのP型ベース領域を流れるベース電流の大半は、第2導電型領域としてのN型領域が形成されたベース領域の表面を回避して、第2導電型半導体領域としてのエミッタ領域に向けて流れる。これにより、ベース領域の表面に集中して電流が流れることを防止でき、その結果、ベース領域の表面付近における電力破壊を抑制することができる。また、N型領域の一部がベース電極に接触しているので、スイッチング動作時に、ベース領域に残留している少数キャリア(電子)をN型領域に引き込むことができる。これにより、ベース領域における電子の蓄積が抑制され、スイッチング動作を高速にすることができる。
【0009】
また、上記コンタクト領域内には、第1導電型半導体領域と同じ導電型の高濃度不純物領域が上記電極に接触させて形成されており、上記寄生ダイオードが、上記コンタクト領域に接続された電極と第1導電型半導体領域との間でショットキー接合を形成することにより構成されたショットキーダイオードである場合(請求項3)、第1導電型半導体領域の多数キャリアの大半は、第1導電型半導体領域に接続された電極から高濃度領域を通り、この高濃度領域から分散して第2導電型半導体領域に向けて移動する。
【0010】
たとえば、上記機能素子がNPN型のバイポーラトランジスタであれば、第1導電型半導体領域としてのP型ベース領域を流れるベース電流の大半は、高濃度領域であるP+型領域を通り、このP+型領域から分散して第2導電型半導体領域としてのエミッタ領域に向けて移動する。これにより、ベース電流は、ベース領域内を分散してエミッタ領域に向けて流れる。したがって、ベース領域の表面に集中して電流が流れることを防止でき、その結果、ベース領域の表面付近における電力破壊を抑制することができる。また、ベース領域に残留している少数キャリア(電子)は、ショットキー接合部を介して速やかに放出される。これにより、ベース領域における少数キャリアの蓄積を抑制でき、スイッチング動作を高速にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】この発明の一実施形態に係るバイポーラトランジスタの構造を示す断面図である。
【図2】上記バイポーラトランジスタを有する半導体装置の表面の構成を示す平面図である。
【図3】この実施形態のバイポーラトランジスタおよび従来のバイポーラトランジスタの静電破壊検査の結果を示す図である。
【図4】この発明の他の実施形態に係るバイポーラトランジスタの構成を示す断面図である。
【図5】この発明のさらに他の実施形態に係るバイポーラトランジスタの構成を示す断面図である。
【図6】上記実施形態の変形例について説明するための平面図である。
【図7】従来のバイポーラトランジスタの構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下では、この発明がNPN型のバイポーラトランジスタを有する半導体装置に適用された場合を例にとって、この発明のいくつかの実施形態を、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は、この発明の一実施形態に係るバイポーラトランジスタの構造を示す断面図である。また、図2は、上記バイポーラトランジスタを有する半導体装置の表面の構成を示す平面図である。N型半導体基板11の表面には、P型のベース領域12が形成されており、このP型のベース領域12内に、N型のエミッタ領域13が形成されている。これにより、NPN構造が形成されていて、N型半導体基板11がコレクタ領域を形成している。
【0013】
ベース領域12の表面には、たとえば平面略C字状にベースコンタクト領域14が設定されており、このベースコンタクト領域14において、ベース電極15がベース領域12に接合されている。また、エミッタ領域13には、エミッタ電極16が接合されている。ベース電極15およびエミッタ電極16は、それぞれ絶縁膜17に形成された開口18,19を介して露出しており、この露出した部分にベースワイヤおよびエミッタワイヤ(図示せず)がボンディングされることによって外部との電気接続が達成される。コレクタ電極は、半導体基板11の裏面側に形成されたN+型領域20から取られている。
【0014】
ベースコンタクト領域14の境界部、つまり、図2において、平面視におけるベースコンタクト領域14の外周縁部の下部には、エミッタ領域13と同じ導電型を有するN型領域21がベースコンタクト領域14を全周にわたって包囲するように形成されている。言い換えれば、ベースコンタクト領域14の境界部において、P型のベース領域12およびN型領域21によりPN型の寄生ダイオードが形成されている。なお、図2では、ハッチングによりN型領域21を示す。
【0015】
この構成により、ベース領域12における多数キャリアであるホールは、ベース電極15からN型領域21に挟まれた部分を通り、N型領域21の下方に回り込んでエミッタ領域13に向けて移動する。言い換えれば、ベース領域12を流れるベース電流は、N型領域21が形成されたベース領域12の表面を回避してエミッタ領域13に向けて流れる。これにより、ベース領域12の表面に集中して電流が流れることが防止され、その結果、ベース領域12の表面付近における電力破壊を抑制することができる。
【0016】
また、N型領域21の一部がベース電極15に接触しているので、スイッチング動作時に、ベース領域12に残留している少数キャリア(電子)をN型領域21に引き込むことができる。これにより、ベース領域12における少数キャリアの蓄積を抑制することができ、スイッチング動作を高速にすることができる。図3は、この実施形態のバイポーラトランジスタおよび従来のバイポーラトランジスタの静電破壊検査の結果を示す図である。
【0017】
静電破壊検査は、ベース電極15に抵抗(たとえば1kΩ)を介して接続されたコンデンサ(たとえば200pF)に電圧を印加して電荷を蓄積した後、このコンデンサに蓄積された電荷を放電させて、コレクタ−ベース間およびベース−エミッタ間に電流を流した時に生じる破壊数を調べることにより行われる。この静電破壊検査の結果として、図3(a)にはベース−エミッタ間に順方向バイアスを加えたときのベース−エミッタ電圧(コンデンサ印加電圧)と破壊数との関係が示されており、図3(b)にはベース−エミッタ間に逆方向バイアスを加えたときのベース−エミッタ電圧と破壊数との関係が示されている。また、この実施形態のバイポーラトランジスタについての結果は実線で示されており、従来のバイポーラトランジスタについての結果は破線で示されている。
【0018】
この静電破壊検査の結果から、ベース−エミッタ間に順方向バイアスを加えたとき、ベース−エミッタ間に逆方向バイアスを加えたときのいずれの場合であっても、この実施形態のバイポーラトランジスタが静電破壊を生じる最低のベース−エミッタ電圧(破壊電圧)は、従来のバイポーラトランジスタの破壊電圧の約1.5倍となり、この実施形態のバイポーラトランジスタは、従来のバイポーラトランジスタよりも破壊耐量が向上していることが理解される。
【0019】
図4は、この発明の他の実施形態に係るバイポーラトランジスタの構成を示す断面図である。この図4において、上述の図1の各部に対応する部分には、図1場合と同一の参照符号を付して示す。この実施形態では、ベースコンタクト領域14の中央部に、このベースコンタクト領域14よりも幅狭なP+型領域22が形成されている。そして、P+型領域22の側方においては、ベース電極15とP型のベース領域12との間でショットキー接合が形成されており、このショットキー接合によって、ベースコンタクト領域14の境界部にショットキーダイオードが形成されている。
【0020】
この構成の場合、ベース領域12における多数キャリアであるホールは、ベース電極15からP+型領域22を通り、このP+型領域22から分散してエミッタ領域13に向けて移動する。これにより、ベース電流は、ベース領域12内を分散してエミッタ領域13に向けて流れる。したがって、上述の第1の実施形態の場合と同様に、ベース領域12の表面に集中して電流が流れることを防止でき、その結果、ベース領域12の表面付近における電力破壊を抑制することができる。
【0021】
また、ベース領域12に残留している少数キャリア(電子)は、ショットキー接合部を介して速やかに放出される。これにより、上述の第1の実施形態の場合と同様に、ベース領域12における少数キャリアの蓄積を抑制でき、スイッチング動作を高速にすることができる。図5は、この発明のさらに他の実施形態に係るバイポーラトランジスタの構成を示す断面図である。この図5においても、上述の図1の各部に対応する部分には、図1場合と同一の参照符号を付して示す。この実施形態では、ベースコンタクト領域14の境界部に、微小幅のN+型領域23がベースコンタクト領域14を包囲するように設けられている。そして、N+型領域23により包囲される領域内には、微小幅のP+型領域24と微小幅のN+型領域25とが交互に配置されている。すなわち、ベースコンタクト領域14には、ユニバーサルコンタクト構造が形成されている。
【0022】
この構成の場合、ベース領域12における多数キャリアであるホールは、ベース電極15からP+型領域24を通り、N+型領域23の下方に回り込んでエミッタ領域13に向けて移動する。これにより、上述の第1の実施形態の場合と同様に、ベース領域12の表面に集中して電流が流れることを防止でき、その結果、ベース領域12の表面付近における電力破壊を抑制することができる。また、ベース領域12に残留している少数キャリアをN+型領域23,25に引き込むことにより、ベース領域12における電子の蓄積を抑制できるといった効果を奏する点も上述の第1の実施形態と同様である。
【0023】
この発明の3つの実施形態について説明したが、この発明は、他の形態で実施することも可能である。たとえば、上述の実施形態では、平面略C字状にベースコンタクト領域14が設定されているとしたが、図6に示すように、エミッタ領域13を包囲するリング状にベースコンタクト領域14が設定されてもよい。
また、N型領域21およびN+型領域23は、必ずしもベースコンタクト領域14の境界部全周に形成される必要はなく、たとえば図6に破線で示すように、ベース電極15の表面に設定されたボンディング領域26にベースワイヤ(図示せず)がボンディングされる場合、N型領域21およびN+型領域23は、ボンディング領域26に近い部分だけに形成され、ボンディング領域26から比較的離れた部分には形成されなくてもよい。また、N型領域21およびN+型領域23は、ベースコンタクト領域14の境界部のエミッタ領域13に近い側だけに形成されてもよい。
【0024】
さらに、上述の実施形態では、NPN型のバイポーラトランジスタを例にとったが、この発明は、PNP型のバイポーラトランジスタにも適用することができる。この場合には、N型のベース領域内に設定されたベースコンタクト領域の境界部に、エミッタ領域と同じ導電型であるP型領域またはP+型領域を設けるか、ベースコンタクト領域の中央部に、ベースコンタクト領域よりも幅狭なP+型領域を設ければよい。
【0025】
また、上述の実施形態では、1個のバイポーラトランジスタを有する半導体装置を例にとったが、この発明は、複数個のバイポーラトランジスタを有する半導体装置に適用することができる。また、サイリスタ、トライアックまたはGTO(gate turn−off thyristor)のようなバイポーラトランジスタ以外のPN接合を有する機能素子を含む半導体装置に適用することもできる。その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0026】
11 N型半導体基板
12 ベース領域(第1導電型領域)
13 エミッタ領域(第2導電型領域)
14 ベースコンタクト領域
15 ベース電極
16 エミッタ電極
21 N型領域(第2導電型領域)
22 P+型領域(高濃度領域)
23 N+型領域(第2導電型領域)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板に形成された第1導電型半導体領域と、この第1導電型半導体領域に接合して形成され、第1導電型半導体領域とは異なる導電型の第2導電型半導体領域とを有する機能素子を含む半導体装置であって、第1導電型半導体領域において電極が接続されるコンタクト領域の境界部に寄生ダイオードが形成されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
上記寄生ダイオードは、第1導電型半導体領域と、上記コンタクト領域の境界に接触した状態で第1導電型半導体領域に埋設された第1導電型半導体領域とは異なる導電型の第2導電型領域とからなるPNダイオードであることを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
上記コンタクト領域内には、第1導電型半導体領域と同じ導電型の高濃度不純物領域が上記電極に接触させて形成されており、上記寄生ダイオードは、上記コンタクト領域に接続された電極と第1導電型半導体領域との間でショットキー接合を形成することにより構成されたショットキーダイオードであることを特徴とする請求項1記載の半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−103484(P2011−103484A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−12370(P2011−12370)
【出願日】平成23年1月24日(2011.1.24)
【分割の表示】特願平11−255881の分割
【原出願日】平成11年9月9日(1999.9.9)
【出願人】(000116024)ローム株式会社 (3,539)
【Fターム(参考)】