型押し構造体の製造方法、薄膜トランジスター、薄膜キャパシター、アクチュエーター、圧電式インクジェットヘッド及び光学デバイス
【課題】従来よりも大幅に少ない原材料及び製造エネルギーを用いて、かつ、従来よりも短工程で製造することが可能な機能性デバイスの製造方法を提供する。
【解決手段】熱処理することにより金属酸化物又は金属となる液体材料を準備する第1工程と、基材上に液体材料を塗布することにより金属酸化物又は金属の前駆体組成物からなる前駆体組成物層を形成する第2工程と、前駆体組成物層に対して凹凸型を用いて型押し加工を施すことにより前駆体組成物層に残膜を含む型押し構造を形成する第3工程と、型押し構造が形成された前駆体組成物層に対して大気圧プラズマ又は減圧プラズマによるアッシング処理を施すことにより残膜を処理する第4工程と、前駆体組成物層を熱処理することにより、前駆体組成物層から金属酸化物又は金属からなる型押し構造体を形成する第5工程とをこの順序で含む型押し構造体の製造方法。
【解決手段】熱処理することにより金属酸化物又は金属となる液体材料を準備する第1工程と、基材上に液体材料を塗布することにより金属酸化物又は金属の前駆体組成物からなる前駆体組成物層を形成する第2工程と、前駆体組成物層に対して凹凸型を用いて型押し加工を施すことにより前駆体組成物層に残膜を含む型押し構造を形成する第3工程と、型押し構造が形成された前駆体組成物層に対して大気圧プラズマ又は減圧プラズマによるアッシング処理を施すことにより残膜を処理する第4工程と、前駆体組成物層を熱処理することにより、前駆体組成物層から金属酸化物又は金属からなる型押し構造体を形成する第5工程とをこの順序で含む型押し構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、型押し構造体の製造方法、薄膜トランジスター、薄膜キャパシター、アクチュエーター、圧電式インクジェットヘッド及び光学デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
図27は、従来の薄膜トランジスター900を説明するために示す図である。
従来の薄膜トランジスター900は、図27に示すように、ソース電極950及びドレイン電極960と、ソース電極950とドレイン電極960との間に位置するチャネル層940と、チャネル層940の導通状態を制御するゲート電極920と、ゲート電極920とチャネル層940との間に形成され、強誘電体材料からなるゲート絶縁層930とを備える。なお、図27において、符号910は絶縁性基板を示す。
【0003】
従来の薄膜トランジスター900においては、ゲート絶縁層930を構成する材料として、強誘電体材料(例えば、BLT(Bi4−xLaxTi3O12)、PZT(Pb(Zrx,Ti1−x)O3))が使用され、チャネル層940を構成する材料として、酸化物導電性材料(例えば、インジウム錫酸化物(ITO))が使用されている。
【0004】
従来の薄膜トランジスター900によれば、チャネル層を構成する材料として酸化物導電性材料を用いているためキャリア濃度を高くすることができ、また、ゲート絶縁層を構成する材料として強誘電体材料を用いているため低い駆動電圧で高速にスイッチングすることができ、その結果、大きな電流を低い駆動電圧で高速に制御することが可能となる。
【0005】
従来の薄膜トランジスターは、図28に示す従来の薄膜トランジスターの製造方法により製造することができる。図28は、従来の薄膜トランジスターの製造方法を説明するために示す図である。図28(a)〜図28(e)は各工程図であり、図28(f)は薄膜トランジスター900の平面図である。
【0006】
まず、図28(a)に示すように、表面にSiO2層が形成されたSi基板からなる絶縁性基板910上に、電子ビーム蒸着法により、Ti(10nm)及びPt(40nm)の積層膜からなるゲート電極920 を形成する。
次に、図28(b)に示すように、ゲート電極920の上方から、ゾルゲル法により、BLT(Bi3.25La0.75Ti3O12)又はPZT(Pb(Zr0.4Ti0.6)O3)からなるゲート絶縁層930(200nm)を形成する。
次に、図28(c)に示すように、ゲート絶縁層930上に、RFスパッタ法により、ITOからなるチャネル層940(5nm〜15nm)を形成する。
次に、図28(d)に示すように、チャネル層940上に、電子ビーム蒸着法により、Ti(30nm)及びPt(30nm)を真空蒸着してソース電極950及びドレイン電極960を形成する。
次に、RIE法及びウェットエッチング法(HF:HCl混合液)により、素子領域を他の素子領域から分離する。
これにより、図28(e)及び図28(f)に示すような、薄膜トランジスター900を製造することができる。
【0007】
図29は、従来の薄膜トランジスター900の電気特性を説明するために示す図である。なお、図29中、符号940aはチャネルを示し、符号940bは空乏層を示す。
従来の薄膜トランジスター900においては、図29に示すように、ゲート電圧が3V(VG=3V)のときのオン電流として約10−4A、オン/オフ比として1×104、電界効果移動度μFEとして10cm2/Vs、メモリウインドウとして約2Vの値が得られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−121029号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来の薄膜トランジスター900は、上記のような方法によって製造されたものであるため、ゲート電極920、チャネル層940、ソース電極950及びドレイン電極960を形成する過程で、高真空プロセスやフォトリソグラフィープロセスを用いる必要があり、原材料や製造エネルギーの使用効率が低く、また、製造に長時間を要するという問題がある。
【0010】
なお、このような問題は、上記した薄膜トランジスターを製造する方法だけに見られる問題ではなく、薄膜キャパシター、アクチュエーター、圧電式インクジェットヘッド、光学デバイスなどの機能性デバイスを製造する方法全般に見られる問題である。
【0011】
そこで、本発明は、上記した問題を解決するためになされたもので、上記のように優れた薄膜トランジスターをはじめとする種々の機能性デバイスを、従来よりも大幅に少ない原材料及び製造エネルギーを用いて、かつ、従来よりも短工程で製造することが可能な型押し構造体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
[1]本発明の型押し構造体の製造方法は、金属含有化合物を含有し熱処理することにより金属酸化物又は金属となる液体材料を準備する第1工程と、基材上に前記液体材料を塗布することにより前記金属酸化物又は前記金属の前駆体組成物からなる前駆体組成物層を形成する第2工程と、前記前駆体組成物層に対して凹凸型を用いて型押し加工を施すことにより前記前駆体組成物層に残膜を含む型押し構造を形成する第3工程と、前記型押し構造が形成された前記前駆体組成物層に対して大気圧プラズマ又は減圧プラズマによるアッシング処理を施すことにより前記残膜を処理する第4工程と、前記前駆体組成物層を熱処理することにより、前記型押し構造が形成された前記前駆体組成物層から前記金属酸化物又は前記金属からなる型押し構造体を形成する第5工程とをこの順序で含むことを特徴とする。
【0013】
本発明の型押し構造体の製造方法によれば、基材上に液体材料を塗布して前駆体組成物層を形成し、当該前駆体組成物層に対して型押し加工を施して型押し構造を形成し、さらには前駆体組成物層を高温で熱処理することにより、型押し構造体を形成することが可能となるため、また、サブミクロンオーダーの微細なパターンを有する型を用いて型押し加工を施すことにより、サブミクロンオーダーの微細なパターンを有する型押し構造体を形成することが可能となるため、上記のように優れた薄膜トランジスターをはじめとする種々の機能性デバイスを、従来よりも大幅に少ない原材料及び製造エネルギーを用いて、かつ、従来よりも短工程で製造することが可能となる。
【0014】
また、本発明の型押し構造体の製造方法によれば、前駆体組成物層に対してアッシング処理を施すことにより残膜を処理する第4工程をさらに含むことから、残膜の影響のない型押し構造体を形成することが可能となる。ここで、「残膜の影響のない型押し構造体」とは、残膜が存在していた部位で分断された構造を有する型押し構造体のことをいい、残膜が存在していた部位に残膜が全く残存しない場合と、残膜が存在していた部位に海島状の残膜が残存している場合の両方を含む。
【0015】
また、本発明の型押し構造体の製造方法によれば、前駆体組成物層に対して大気圧プラズマ又は減圧プラズマによるアッシング処理を施すこととしていることから、第4工程を実施する際に高真空の環境を必要としなくなるため、高価な高真空の設備を不要とすることが可能となり、また、第4工程を実施するに要する時間を短縮することが可能となる。
なお、高真空の環境を必要とすることなく型押し構造体を形成することができる技術として、各種印刷技術(活版印刷、グラビア印刷、オフセット印刷、スクリーン印刷、インクジェットによる印刷など)がある。しかしながら、これらの印刷技術によれば、せいぜい数十ミクロンオーダーのパターンを有する型押し構造体しか形成することができないため、サブミクロンオーダーの微細なパターンを有する型押し構造体を形成することができない。これに対して、本発明の型押し構造体の製造方法によれば、高真空の環境を必要とすることなく、サブミクロンオーダーの微細なパターンを有する型押し構造体を形成することが可能である。
【0016】
本発明の型押し構造体の製造方法においては、液体材料として、「金属アルコキシドを含有するゾルゲル溶液」、「有機金属化合物を含有するMOD(Metal Organic Decomposition)溶液」、「金属塩(例えば、金属塩化物、金属酸塩化物、金属硝酸塩、金属酢酸塩など)を含有する金属塩溶液」、「上記ゾルゲル溶液、上記MOD溶液及び上記金属塩溶液の少なくとも2つを混合した溶液」などの液体材料を好適に用いることができる。
【0017】
本発明の型押し構造体の製造方法において、残膜とは、第3工程において前駆体組成物層に対して凹凸型を用いて型押し加工を施したとき、凹凸型において最も突出した凸面と基材表面との間に残存する前駆体組成物層のことをいう。また、本発明の型押し構造体の製造方法において、残膜には、「個々の残膜形成領域内において連続している膜」に加えて「個々の残膜形成領域内において連続していない膜」(例えば海島構造を取る膜)も含まれる。
【0018】
なお、「型押し」は「ナノインプリント」と呼ばれることもある。
【0019】
[2]本発明の型押し構造体の製造方法において、前記第4工程においては、前記残膜を完全に除去することが好ましい。
【0020】
このような方法とすることにより、残膜の影響のない型押し構造体を形成することが可能となる。すなわち、第5工程において、前駆体組成物層が複数の領域に分断される結果、前駆体組成物層が無理なく面内方向に収縮できるようになるため、所望の型押し構造を高い精度で形成することが可能となる。
【0021】
残膜を完全に除去する方法としては、「アッシング処理による前駆体組成物層のエッチングレートと、残膜の厚さとの関係から算出した第1時間だけアッシングを施す方法(時間管理によるアッシング方法)」、「上記第1時間を超える時間、アッシングを施す方法(オーバーエッチングによるアッシング方法、この場合、基材がエッチングされることがある。)」、「基材として、エッチングストッパとなる材料からなる基材又はエッチングストッパとなる材料からなる層を少なくとも表面に備える基材を準備するとともに、上記第1時間を超える時間、アッシングを施す方法(エッチングストッパ併用によるアッシング方法)」などを好適に用いることができる。
【0022】
[3]本発明の型押し構造体の製造方法において、前記第4工程においては、当該第4工程に続く前記第5工程を実施することにより前記残膜が海島構造を取るようになる薄さまで前記残膜を薄くすることが好ましい。
【0023】
このような方法とすることによっても、残膜の影響のない型押し構造体を形成することが可能となる。すなわち、第5工程において、前駆体組成物層が複数の領域に分断される結果、前駆体組成物層が無理なく面内方向に収縮できるようになるため、所望の型押し構造を高い精度で形成することが可能となる。
【0024】
[4]本発明の型押し構造体の製造方法において、前記第4工程においては、前記型押し構造が形成された前記前駆体組成物層に対して大気圧プラズマによるアッシング処理を施すことが好ましい。
【0025】
このような方法とすることにより、真空プロセスを用いることなしに型押し構造体を製造することが可能となるため、残膜の影響のない型押し構造体を、従来よりも大幅に少ない製造エネルギーを用いて、かつ、従来よりも短工程で製造することが可能となる。
【0026】
[5]本発明の型押し構造体の製造方法において、前記第4工程においては、前記型押し構造が形成された前記前駆体組成物層に対して減圧プラズマによるアッシング処理を施すことも好ましい。
【0027】
このような方法とすることにより、高真空プロセスを用いることなしに型押し構造体を製造することが可能となるため、残膜の影響のない型押し構造体を、従来よりも大幅に少ない製造エネルギーを用いて、かつ、従来よりも短工程で製造することが可能となる。
【0028】
[6]本発明の型押し構造体の製造方法においては、0.1Pa以上の圧力の下で前記第4工程を実施することが好ましい。
【0029】
0.1Pa以上の圧力の下で第4工程を実施することとしたのは、0.1Pa未満の圧力の下で第4工程を実施する場合には、圧力環境を形成するのに時間がかかって生産性が低下したり、大がかりな減圧装置が必要になって製造コストを増大させたりする場合があるからである。このような観点から言えば、本発明の型押し構造体の製造方法においては、1Pa以上の圧力の下で第4工程を実施することが好ましく、10Pa以上の圧力の下で第4工程を実施することがより好ましい。
【0030】
一方、本発明の型押し構造体の製造方法においては、1000Pa〜100000Pa程度の圧力の下で第4工程を実施することが好ましい。このような圧力範囲であれば、短時間で圧力環境を形成することが可能となるからである。また、このような圧力範囲であれば、大気圧環境にあるワークを搬送しながら連続して圧力環境に投入することが可能となるからである。また、本発明の型押し構造体の製造方法においては、1000Pa以下の圧力の下で第4工程を実施することも好ましい。1000Pa以下の圧力の下で第4工程を実施する場合には、後述するように、バイアス電圧を印加した状態で安定して第4工程を実施することが可能となるからである。このような観点から言えば、本発明の型押し構造体の製造方法においては、100Pa以下の圧力の下で第4工程を実施することがより好ましい。
【0031】
[7]本発明の型押し構造体の製造方法においては、バイアス電圧を印加した状態で第4工程を実施することが好ましい。
【0032】
減圧条件下においては、バイアス電圧を印加した状態であっても安定したグロー放電を起こさせることが可能となる。このため、上記したように、バイアス電圧を印加した状態で第4工程を実施することにより、高いエッチングレートでアッシング工程を実施することが可能となり、ひいては、高い生産性で型押し構造体を製造することが可能となる。
【0033】
また、減圧条件下においては大気圧条件下においてよりもアッシングに用いるガス(アッシングガス)の平均自由行程が長くなるため、また、アッシングガスの飛翔方向が一方向に揃うようになるため、上記したように、バイアス電圧を印加した状態で第4工程を実施することにより、型押し構造の側面部分に対するエッチング(サイドエッチング)の割合を低減することが可能となり、ひいては、高い形状精度を有する型押し構造体を製造することが可能となる。
【0034】
[8]本発明の型押し構造体の製造方法においては、反応性ガスを用いて前記第4工程を実施することが好ましい。
【0035】
このような方法とすることにより、高いエッチングレートでアッシング工程を実施することが可能となり、ひいては、高い生産性で型押し構造体を製造することが可能となる。この場合、反応性ガスとしては、前駆体組成物層を構成する成分と化学反応を起こして前駆体組成物層をエッチングできる反応性ガスを用いることが好ましい。
【0036】
[9]本発明の型押し構造体の製造方法においては、前記反応性ガスとして、ハロゲン元素含有ガスを用いて前記第4工程を実施することが好ましい。
【0037】
このように、様々な種類の金属に対して反応性の高いハロゲン元素含有ガスを用いて第4工程を実施することにより、様々な種類の前駆体組成物層から、残膜の影響のない型押し構造体を製造することが可能となる。
【0038】
[10]本発明の型押し構造体の製造方法においては、前記反応性ガスとして、ハロゲン元素含有ガス及びArガスを含有する混合ガスを用いて前記第4工程を実施することが好ましい。
【0039】
このように、様々な種類の金属に対して反応性の高いハロゲン元素含有ガス及びミリング性の高いArガスを用いて第4工程を実施することにより、様々な種類の前駆体組成物層から、残膜の影響のない型押し構造体を高い生産性で形成することが可能となる。
【0040】
なお、本発明の型押し構造体の製造方法(上記[9]又は[10]のいずれかに記載の型押し構造体の製造方法)において、ハロゲン元素含有ガスとしては、フッ素系ガス、塩素系ガス、臭素系ガスなどを好適に用いることができる。具体的には、前駆体組成物層がSiを含有する物質からなる場合には、例えばCF4、CF4/O2、CF4/H2、CHF3、C2F6、C3F8、SF6、SF6/O2、NF3、SiF4/O2、Cl2、BCl3、CCl4、CF3Br、HBr、HBr/NF3、HBr/O2、BCl3/CCl4、BCl3/CF4などを好適に用いることができ、前駆体組成物層がAlを含有する物質からなる場合には、例えばCl2、BCl3、CCl4、SiCl4、BCl3/Cl2/Arなどを好適に用いることができ、前駆体組成物層がW、Mo、Ta及びTiのうち少なくとも1種を含有する物質からなる場合には、例えばCF4、CF4/O2、NF3、CCl4/O2などを好適に用いることができ、前駆体組成物層がCrを含有する物質からなる場合には、例えばCl2、Cl2/O2、CCl4/O2などを好適に用いることができ、前駆体組成物層がAu及びPtのうち少なくとも1種を含有する物質からなる場合には、例えばCl2、Cl2/Arなどを好適に用いることができる。
【0041】
本発明の型押し構造体の製造方法においては、キャリアガスとして、HeガスやN2ガスを用いることが好ましい。
【0042】
[11]本発明の型押し構造体の製造方法においては、前記第2工程と前記第3工程との間に、前記前駆体組成物層を80℃〜200℃の範囲内にある温度に加熱することにより前記前駆体組成物層の流動性を予め低くしておく予備加熱工程をさらに含み、前記第3工程においては、前記前駆体組成物層を80℃〜300℃の範囲内にある温度に加熱した状態で、かつ、80℃〜300℃の範囲内にある温度に加熱した型を用いて前記前駆体組成物層に対して型押し加工を施すことにより、前記前駆体組成物層に型押し構造を形成することが好ましい。
【0043】
このような方法とすることにより、80℃〜200℃の範囲内にある温度に加熱することにより前駆体組成物層の固化反応をある程度進めて前駆体組成物層の流動性を予め低くしておくとともに、80℃〜300℃の範囲内にある温度に加熱することにより前駆体組成物層の硬度を低くしておくことで高い塑性変形能力を得た前駆体組成物層に対して型押し加工を施すこととしているため、所望の型押し構造を高い精度で形成することが可能となり、その結果、所望の性能を有する型押し構造体を製造することが可能となる。
【0044】
ところで、高分子材料を用いて型押し加工を行う通常の型押し加工技術の場合とは異なり、熱処理することにより金属酸化物又は金属となる液体材料を用いて型押し加工を行う型押し加工技術の場合には室温で型押し加工を行うという報告例がある。しかしながら、これによれば、所定の塑性変形能力を付与するためには有機成分や溶媒などを含有させる必要が生ずるため、これに起因して焼成時の形状劣化が激しくなってしまう。
【0045】
しかしながら、本発明の発明者らの研究により、前駆体組成物層を80℃〜300℃の範囲内にある温度に加熱すれば、前駆体組成物層の塑性変形能力が高くなることが明らかとなった。また、主溶媒を除去できることが明らかとなった。そこで、本発明の型押し構造体の製造方法においては、80℃〜300℃の範囲内にある温度に加熱することで高い塑性変形能力を得るとともに焼成時の形状劣化の少ない前駆体組成物層に対して型押し加工を施すこととしているのである。
【0046】
ここで、前駆体組成物層の加熱温度を「80℃〜300℃」の範囲内としたのは、上記の加熱温度が80℃未満である場合には、前駆体組成物層が十分に軟化しないため前駆体組成物層の塑性変形能力を十分高くすることができないからであり、上記の加熱温度が300℃を超える場合には、前駆体組成物層の固化反応が進みすぎて前駆体組成物層の塑性変形能力が再び低下するからである。
【0047】
上記観点から言えば、前駆体組成物層を100℃〜200℃の範囲内にある温度に加熱した状態で前駆体組成物層に対して型押し加工を施すことがより好ましい。
【0048】
また、上記のように、80℃〜300℃の範囲内にある温度に加熱した型を用いて前駆体組成物層に対して型押し加工を施すこととしていることから、型押し加工を施している最中に、前駆体組成物層の塑性変形能力が低下することがなくなるため、所望の型押し構造を一層高い精度で形成することが可能となる。
【0049】
ここで、上記の型の加熱温度を「80℃〜300℃」の範囲内としたのは、上記の加熱温度が80℃未満の場合には、前駆体組成物層の温度が低下することに起因して前駆体組成物層の塑性変形能力が低下する場合があるからであり、上記の加熱温度が300℃を超える場合には、前駆体組成物層の脱水縮合反応が進みすぎることに起因して前駆体組成物層の塑性変形能力が低下するからである。
【0050】
上記観点から言えば、上記の第3工程においては、100℃〜200℃の範囲内にある温度に加熱した型を用いて型押し加工を施すことがより好ましい。
【0051】
本発明の型押し構造体の製造方法において、上記の第3工程においては、1MPa〜20MPaの範囲内にある圧力で型押し加工を施すことが好ましい。
【0052】
本発明の型押し構造体の製造方法によれば、上記したように、高い塑性変形能力を得た前駆体組成物層に対して型押し加工を施すこととしているため、型押し加工を施す際に印加する圧力を1MPa〜20MPaにまで低くしても前駆体組成物層が型の表面形状に追随して変形するようになり、所望の型押し構造を高い精度で形成することが可能となる。また、型押し加工を施す際に印加する圧力を1MPa〜20MPaにまで低くすることにより、型押し加工を施す際に型が損傷し難くなる。
【0053】
ここで、上記の圧力を「1MPa〜20MPa」の範囲内としたのは、上記の圧力が1MPa未満の場合には、圧力が低すぎて前駆体組成物を型押しすることができなくなる場合があるからであり、上記の圧力が20MPaもあれば十分に前駆体組成物を型押しすることができるため、これ以上の圧力を印加する必要がないからである。
【0054】
上記観点から言えば、第3工程においては、2MPa〜10MPaの範囲内にある圧力で型押し加工を施すことがより好ましい。
【0055】
[12]本発明の型押し構造体の製造方法において、前記第5工程においては、酸素含有雰囲気で熱処理することにより、金属酸化物からなる型押し構造体を形成することが好ましい。
【0056】
このような方法とすることにより、後述するように、型押し構造体料層を「薄膜トランジスターにおけるゲート電極層、ゲート絶縁層、ソース層、ドレイン層、チャネル層若しくは配線層」、「薄膜キャパシターにおける第1電極層、誘電体層、第2電極層若しくは配線層」、「アクチュエーターにおける圧電体層、電極層若しくは配線層」、「圧電式インクジェットヘッドにおける圧電体層又はキャビティ部材」、「光学デバイスにおける格子層(金属セラミックス製格子層)」として備える種々の機能性デバイスを製造することが可能となる。
【0057】
この場合、製造可能な金属酸化物としては、各種常誘電体材料(例えば、BZN(Bi1.5Zn1.0Nb1.5O7又はBST(BaxSr1−x)Ti3O12)、SiO2、SrTiO3、LaAlO3、HfO2)、各種強誘電体材料(例えば、PZT(Pb(Zrx,Ti1−x)O3)、BLT(Bi4−xLaxTi3O12)、NbドープPZT、LaドープPZT、チタン酸バリウム(BaTiO3)、チタン酸鉛(PbTiO3)、BTO(Bi4Ti3O12)、SBT(SrBi2Ta2O9)、BZN(Bi1.5Zn1.0Nb1.5O7)、ビスマスフェライト(BiFeO3))、各種半導体材料又は各種導電体材料(例えば、インジウム錫酸化物(ITO)、酸化インジウム(In2O3)、アンチモンドープ酸化錫(Sb−SnO2)、酸化亜鉛(ZnO)、アルミニウムドープ酸化亜鉛(Al−ZnO)、ガリウムドープ酸化亜鉛(Ga−ZnO)、酸化ルテニウム(RuO2)、酸化イリジウム(IrO2)、酸化錫(SnO2)、一酸化錫(SnO)、ニオブドープ二酸化チタン(Nb−TiO2)などの酸化物導電体材料、インジウムガリウム亜鉛複合酸化物(IGZO)、ガリウムドープ酸化インジウム(In−Ga−O(IGO))、インジウムドープ酸化亜鉛(In−Zn−O(IZO))などのアモルファス導電性酸化物材料、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)、ニオブドープチタン酸ストロンチウム(Nb−SrTiO3)、ストロンチウムバリウム複合酸化物(SrBaO3)、ストロンチウムカルシウム複合酸化物(SrCaO3)、ルテニウム酸ストロンチウム(SrRuO3)、酸化ニッケルランタン(LaNiO3)、酸化チタンランタン(LaTiO3)、酸化銅ランタン(LaCuO3)、酸化ニッケルネオジム(NdNiO3)、酸化ニッケルイットリウム(YNiO3)、酸化ランタンカルシウムマンガン複合酸化物(LCMO)、鉛酸バリウム(BaPbO3)、LSCO(LaxSr1−xCuO3)、LSMO(La1−xSrxMnO3)、YBCO(YBa2Cu3O7−x)、LNTO(La(NI1−xTix)O3)、LSTO((La1−x,Srx)TiO3)、STRO(Sr(Ti1−xRux)O3)その他のペロブスカイト型導電性酸化物又はパイロクロア型導電性酸化物)、その他材料(例えば、High−k材料(HfO2、Ta2O5、ZrO2、HfSixOy、ZrSixOy、LaAlO3、La2O3、(Ba1−x,Srx)TiO3、Al2O3、(Bi2−x,Znx)(Zny,Nb2−y)、Y2O3、GeO2、Gd2O3など)、ホイスラー系合金(Co、Co−Pt、Co−Fe、Mn−Pt、Ni−Fe、CoFeBなどの合金、Co−Cr−Fe−Al、Co2MnAlなど)、MRAM用バリア材料((La1−x,Srx)MnO3などの酸化物系ハーフメタルなどのMRAM用電極材料、AlAs,MgO、Al2O3など)、マルチフェロイック材料(ペロブスカイト型BiMnO3,BiFeO3,YbMnO3など、ガーネット型R3Fe2O12 (R=Dy,Ho,Er,Tm,Tb,Lu)、Y3Al5O12、Gd3Ga5O12、SGGG(Gd2.7Ca0.3)(Ga4.0Mg0.32Zr0.65Ca0.03)O12など)、PRAM材料(GexTe1−x、Ge2Sb2Te5などのカルコゲナイド系、Sb−X合金(X=Ge、Ga、In、Se、Te)など)、光触媒用ルチル型二酸化チタン(TiO2))を例示することができる。
【0058】
[13]本発明の型押し構造体の製造方法において、前記第5工程においては、還元雰囲気で熱処理することにより、金属からなる型押し構造体を形成することが好ましい。
【0059】
このような方法とすることにより、後述するように、機能性固体材料層を、「薄膜トランジスターにおけるゲート電極層若しくは配線層」、「薄膜キャパシターにおける第1電極層、第2電極層若しくは配線層」、「アクチュエーターにおける電極層」、「光学デバイスにおける格子層(金属製格子層)」などとすることが可能となるため、種々の機能性デバイスを製造することが可能となる。
【0060】
この場合、製造可能な金属としては、例えば、Au、Pt、Ag、Cu、Ti、Ge、In、Snなどを例示することができる。
【0061】
[14]本発明の薄膜トランジスターは、ゲート電極層、ゲート絶縁層、ソース層、ドレイン層、チャネル層及び配線層を備える薄膜トランジスターであって、前記ゲート電極層、前記ゲート絶縁層、前記ソース層、前記ドレイン層、前記チャネル層及び前記配線層のうち少なくとも1つの層は、本発明の型押し構造体の製造方法により形成されたものであることを特徴とする。
【0062】
このような方法とすることにより、薄膜トランジスターの少なくとも1つの層については、残膜の影響のない型押し構造体として、大幅に少ない原材料及び製造エネルギーを用いて、かつ、従来よりも短工程で製造することが可能となる。
【0063】
[15]本発明の薄膜トランジスターは、ソース領域及びドレイン領域並びにチャネル領域を含む酸化物導電体層と、前記チャネル領域の導通状態を制御するゲート電極と、前記ゲート電極と前記チャネル領域との間に形成され強誘電体材料又は常誘電体材料からなるゲート絶縁層とを備え、前記チャネル領域の層厚が前記ソース領域の層厚及び前記ドレイン領域の層厚よりも薄い薄膜トランジスターであって、前記チャネル領域の層厚が前記ソース領域の層厚及び前記ドレイン領域の層厚よりも薄い前記酸化物導電体層は、本発明の型押し構造体の製造方法により形成されたものであることを特徴とする。
【0064】
本発明の薄膜トランジスターによれば、チャネル領域を構成する材料として酸化物導電性材料を用いているためキャリア濃度を高くすることができ、また、ゲート絶縁層を構成する材料として強誘電体材料又は常誘電体材料を用いているため低い駆動電圧で高速にスイッチングすることができ、その結果、従来の薄膜トランジスターの場合と同様に、大きな電流を低い駆動電圧で高速に制御することが可能となる。
【0065】
また、本発明の薄膜トランジスターによれば、チャネル領域の層厚がソース領域の層厚及びドレイン領域の層厚よりも薄く、かつ、残膜の影響のない酸化物導電体層を本発明の型押し構造体の製造方法を用いて形成するだけで薄膜トランジスターを製造することが可能となるため、従来の薄膜トランジスターの場合のようにチャネル領域とソース領域及びドレイン領域とを異なる材料から形成しなくてもよくなり、上記のように優れた薄膜トランジスターを、従来よりも大幅に少ない原材料及び製造エネルギーを用いて、かつ、従来よりも短工程で製造することが可能となる。
【0066】
[16]本発明の薄膜トランジスターにおいては、前記チャネル領域のキャリア濃度及び層厚は、前記薄膜トランジスターがオフ状態のときに、前記チャネル領域全体が空乏化するような値に設定されていることが好ましい。
【0067】
このような構成とすることにより、酸化物導電体層のキャリア濃度を高くしたとしても薄膜トランジスターがオフ状態の時に流れる電流量を十分低くできるため、必要なオンオフ比を維持しつつ、大きな電流を低い駆動電圧で制御することが可能となる。
この場合において、薄膜トランジスターがエンハンスメント型のトランジスタである場合には、ゲート電極に0Vの制御電圧を印加したときに薄膜トランジスターがオフ状態となるため、このようなときにチャネル領域全体が空乏化するような値に設定されていればよく、薄膜トランジスターがディプレッション型のトランジスタである場合には、ゲート電極に負の制御電圧を印加したときに薄膜トランジスターがオフ状態となるため、このようなときにチャネル領域全体が空乏化するような値に設定されていればよい。
【0068】
[17]本発明の薄膜キャパシターは、第1電極層、誘電体層、第2電極層及び配線層を備える薄膜キャパシターであって、前記第1電極層、前記誘電体層、前記第2電極層及び前記配線層のうち少なくとも1つの層は、本発明の型押し構造体の製造方法により形成されたものであることを特徴とする。
【0069】
このような方法とすることにより、薄膜キャパシターの少なくとも1つの層については、残膜の影響のない型押し構造体として、大幅に少ない原材料及び製造エネルギーを用いて、かつ、従来よりも短工程で製造することが可能となる。
【0070】
[18]本発明のアクチュエーターは、圧電体層、電極層及び配線層を備えるアクチュエーターであって、前記圧電体層、前記電極層及び前記配線層のうち少なくとも1つの層は、本発明の型押し構造体の製造方法により形成されたものであることを特徴とする。
【0071】
このような方法とすることにより、少なくとも圧電体層については、残膜の影響のない型押し構造体として、大幅に少ない原材料及び製造エネルギーを用いて、かつ、従来よりも短工程で製造することが可能となる。
【0072】
この場合、液体材料として、熱処理することにより強誘電体材料となる液体材料を好適に用いることができる。
【0073】
[19]本発明の圧電式インクジェットヘッドは、キャビティ部材と、前記キャビティ部材の一方側に取り付けられ、圧電体層が形成された振動板と、前記キャビティ部材の他方側に取り付けられ、ノズル孔が形成されたノズルプレートと、前記キャビティ部材、前記振動板及び前記ノズルプレートによって画成されるインク室とを備える圧電式インクジェットヘッドであって、前記圧電体層及び/又は前記キャビティ部材は、本発明の型押し構造体の製造方法により形成されたものであることを特徴とする。
【0074】
本発明の圧電式インクジェットヘッドによれば、圧電体層及び/又はキャビティ部材が本発明の型押し構造体の製造方法を用いて形成されたものであるため、圧電式インクジェットヘッドを、残膜の影響のない型押し構造体として、従来よりも大幅に少ない原材料及び製造エネルギーを用いて、かつ、従来よりも短工程で製造することが可能となる。
【0075】
[20]本発明の光学デバイスは、基材上に格子層を備える光学デバイスであって、前記格子層は、本発明の型押し構造体の製造方法により形成されたものであることを特徴とする。
【0076】
このような方法とすることにより、格子層については、残膜の影響のない型押し構造体として、大幅に少ない原材料及び製造エネルギーを用いて、かつ、従来よりも短工程で製造することが可能となる。
【0077】
なお、格子層が絶縁体からなる場合には、液体材料として、熱処理することにより絶縁体材料となる液体材料を用いることができる。また、格子層が金属からなる場合には、熱処理することにより金属材料となる液体材料を用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】実施形態1に係る型押し構造体の製造方法を説明するために示す図。
【図2】実施形態2に係る型押し構造体の製造方法を説明するために示す図。
【図3】実施形態3に係る型押し構造体の製造方法を説明するために示す図。
【図4】実施形態4に係る型押し構造体の製造方法を説明するために示す図。
【図5】実施形態5に係る型押し構造体の製造方法を説明するために示す図。
【図6】実施形態6に用いるアッシング装置40を説明するために示す図である。
【図7】実施形態6に係る型押し構造体の製造方法を説明するために示す図。
【図8】実施形態7に用いるアッシング装置40aを説明するために示す図である。
【図9】実施形態7に係る型押し構造体の製造方法を説明するために示す図。
【図10】実施形態8に係る薄膜トランジスター100を説明するために示す図。
【図11】実施形態8に係る薄膜トランジスターの製造方法を説明するために示す図。
【図12】実施形態8に係る薄膜トランジスターの製造方法を説明するために示す図。
【図13】実施形態8に係る薄膜トランジスターの製造方法を説明するために示す図。
【図14】実施形態9に係る圧電式インクジェットヘッド300を説明するために示す図。
【図15】実施形態9に係る圧電式インクジェットヘッドの製造方法を説明するために示す図。
【図16】実施形態9に係る圧電式インクジェットヘッドの製造方法を説明するために示す図。
【図17】実施形態9に係る圧電式インクジェットヘッドの製造方法を説明するために示す図。
【図18】実施例1におけるアッシング処理を説明するために示す図である。
【図19】実施例1におけるアッシング処理の結果を示す図である。
【図20】実施例1におけるアッシング処理の結果を示す図である。
【図21】実施例1におけるアッシング処理の結果を示す図である。
【図22】実施例2におけるアッシング処理の結果を示す図である。
【図23】実施例3における評価方法を説明するために示す図である。
【図24】実施例3におけるアッシング処理の結果を示す図である。
【図25】実施例3におけるアッシング処理の結果を示す図である。
【図26】変形例に係る型押し構造体の製造方法を説明するために示す図。
【図27】従来の薄膜トランジスター900を説明するために示す図である。
【図28】従来の薄膜トランジスターの製造方法を説明するために示す図である。
【図29】従来の薄膜トランジスター900の電気特性を説明するために示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0079】
以下、本発明の型押し構造体の製造方法、薄膜トランジスター、薄膜キャパシター、アクチュエーター、圧電式インクジェットヘッド及び光学デバイスのうち、本発明の型押し構造体の製造方法、薄膜トランジスター及び圧電式インクジェットヘッドについて、図に示す実施の形態に基づいて説明する。実施形態1〜7は本発明の型押し構造体の製造方法に関する実施形態であり、実施形態8は本発明の薄膜トランジスターに関する実施形態であり、実施形態9は本発明の圧電式インクジェットヘッドに関する実施形態である。
【0080】
[実施形態1]
図1は、実施形態1に係る型押し構造体の製造方法を説明するために示す図である。図1(a)〜図1(g)は各工程図である。なお、図1において、符号Pはプラズマを示す。
【0081】
実施形態1に係る型押し構造体の製造方法は、図1に示すように、金属含有化合物を含有し熱処理することにより金属酸化物又は金属となる液体材料を準備する第1工程と、基材10上に液体材料を塗布することにより金属酸化物又は金属の前駆体組成物からなる前駆体組成物層20を形成する第2工程(図1(a)及び図1(b)参照。)と、前駆体組成物層20を80℃〜200℃の範囲内にある温度(例えば150℃)に加熱することにより前駆体組成物層20の流動性を予め低くしておく予備加熱工程(図1(c)参照。)と、前駆体組成物層20を80℃〜300℃の範囲内にある温度(例えば150℃)に加熱した状態で、かつ、80℃〜300℃の範囲内にある温度(例えば150℃)に加熱した凹凸型M1を用いて前駆体組成物層20に対して型押し加工を施すことにより前駆体組成物層20に残膜22を含む型押し構造を形成する第3工程(図1(d)参照。)と、型押し構造が形成された前駆体組成物層20に対して大気圧プラズマによるアッシング処理を施すことにより残膜22を処理する第4工程(図1(e)及び図1(f)参照。)と、前駆体組成物層20を熱処理することにより、型押し構造が形成された前駆体組成物層20から金属酸化物又は金属からなる型押し構造体30を形成する第5工程(図1(g)参照。)とをこの順序で含む。
【0082】
実施形態1に係る型押し構造体の製造方法においては、液体材料として、金属含有化合物を含有し熱処理することにより金属酸化物又は金属となる液体材料(例えば、「金属アルコキシドを含有するゾルゲル溶液」、「有機金属化合物を含有するMOD(Metal Organic Decomposition)溶液」、「金属塩(例えば、金属塩化物、金属酸塩化物、金属硝酸塩、金属酢酸塩など)を含有する金属塩溶液」、「上記ゾルゲル溶液、上記MOD溶液及び上記金属塩溶液の少なくとも2つを混合した溶液」などを用いる。
【0083】
実施形態1に係る型押し構造体の製造方法においては、第3工程において、凹凸型M1を用いて前駆体組成物層20に対して型押し加工を施すことから、図1(d)に示すように、前駆体組成物層20には残膜22を含む型押し構造が形成される。そこで、第4工程においては、このような前駆体組成物層20に対して大気圧プラズマによるアッシング処理を施すことにより、残膜22を処理する、具体的には、図1(e)及び図1(f)に示すように、残膜22を完全に除去することとしている。
【0084】
実施形態1に係る型押し構造体の製造方法においては、反応性ガス(例えば、「ハロゲン元素含有ガス」、「ハロゲン元素含有ガス及びArガスを含有する混合ガス」など)を用いて第4工程を実施する。この場合、ハロゲン元素含有ガスとしては、各種のフッ素系ガス、塩素系ガス、臭素系ガスなどを好適に用いることができる。
【0085】
このような方法とすることにより、残膜が完全に除去され「残膜の影響のない型押し構造体、すなわち、残膜が存在していた部位で分断された構造を有する型押し構造体」を形成することが可能となる。その結果、第5工程において、前駆体組成物層が個々の小さい領域に分断される結果、前駆体組成物層が無理なく面内方向に収縮できるようになるため、所望の型押し構造を高い精度で形成することが可能となる。
【0086】
残膜を完全に除去する方法としては、「アッシング処理による前駆体組成物層のエッチングレートと、残膜の厚さとの関係から算出した第1時間だけアッシングを施す方法(時間管理によるアッシング方法)」を用いる。
【0087】
実施形態1に係る型押し構造体の製造方法によれば、基材上に液体材料を塗布して前駆体組成物層を形成し、当該前駆体組成物層に対して型押し加工を施して型押し構造を形成し、さらには前駆体組成物層を高温で熱処理することにより、型押し構造体を形成することが可能となるため、また、サブミクロンオーダーの微細なパターンを有する型を用いて型押し加工を施すことにより、サブミクロンオーダーの微細なパターンを有する型押し構造体を形成することが可能となるため、上記のように優れた薄膜トランジスターをはじめとする種々の機能性デバイスを、従来よりも大幅に少ない原材料及び製造エネルギーを用いて、かつ、従来よりも短工程で製造することが可能となる。
【0088】
また、実施形態1に係る型押し構造体の製造方法によれば、前駆体組成物層に対してアッシング処理を施すことにより残膜を処理する第4工程をさらに含むことから、残膜の影響のない型押し構造体を形成することが可能となる。
【0089】
また、実施形態1に係る型押し構造体の製造方法によれば、前駆体組成物層に対して大気圧プラズマによるアッシング処理を施すこととしていることから、第4工程を実施する際に高真空の環境を必要としなくなるため、高価な高真空の設備を不要とすることが可能となり、また、第4工程を実施するに要する時間を短縮することが可能となる。
【0090】
また、実施形態1に係る型押し構造体の製造方法によれば、反応性ガスを用いて第4工程を実施することとしているため、高いエッチングレートでアッシング工程を実施することが可能となり、ひいては、高い生産性で型押し構造体を製造することが可能となる。
【0091】
また、実施形態1に係る型押し構造体の製造方法によれば、80℃〜200℃の範囲内にある温度に加熱することにより前駆体組成物層の固化反応をある程度進めて前駆体組成物層の流動性を予め低くしておくとともに、80℃〜300℃の範囲内にある温度に加熱することにより前駆体組成物層の硬度を低くしておくことで高い塑性変形能力を得た前駆体組成物層に対して型押し加工を施すこととしているため、所望の型押し構造を高い精度で形成することが可能となり、その結果、所望の性能を有する型押し構造体を製造することが可能となる。
【0092】
また、実施形態1に係る型押し構造体の製造方法によれば、80℃〜300℃の範囲内にある温度に加熱した型を用いて前駆体組成物層に対して型押し加工を施すこととしていることから、型押し加工を施している最中に、前駆体組成物層の塑性変形能力が低下することがなくなるため、所望の型押し構造を一層高い精度で形成することが可能となる。
【0093】
[実施形態2]
図2は、実施形態2に係る型押し構造体の製造方法を説明するために示す図である。図2(a)は第4工程で前駆体組成物層20に対してアッシング処理を施している最中の前駆体組成物層20の断面図であり、図2(b)は第4工程で前駆体組成物層20に対してアッシング処理を施した直後における前駆体組成物層20の断面図である。
【0094】
実施形態2に係る型押し構造体の製造方法は、基本的には実施形態1に係る型押し構造体の製造方法と同様の工程を含むが、第4工程の内容が実施形態1に係る型押し構造体の製造方法の場合と異なる。すなわち、実施形態2に係る型押し構造体の製造方法においては、図2に示すように、第4工程において、アッシング処理による前駆体組成物層のエッチングレートと、残膜22の厚さとの関係から算出した第1時間を超える時間、アッシングを施すこととしている。その結果、実施形態2に係る型押し構造体の製造方法においては、図2(b)に示すように、基材10に凹部24が形成されることとなる。
【0095】
このように、実施形態2に係る型押し構造体の製造方法は、第4工程の内容が実施形態1に係る型押し構造体の製造方法の場合と異なるが、実施形態1に係る型押し構造体の製造方法の場合と同様に、前駆体組成物層に対してアッシング処理を施すことにより残膜を処理する第4工程を含むことから、残膜の影響のない型押し構造体を形成することが可能となる。また、前駆体組成物層に対して大気圧プラズマによるアッシング処理を施すこととしていることから、第4工程を実施する際に高真空の環境を必要としなくなるため、高価な高真空の設備を不要とすることが可能となり、また、第4工程を実施するに要する時間を短縮することが可能となる。
【0096】
なお、実施形態2に係る型押し構造体の製造方法は、第4工程以外の内容が実施形態1に係る型押し構造体の製造方法の場合と同様であるため、実施形態1に係る型押し構造体の製造方法が有する効果のうち該当する効果を有する。
【0097】
[実施形態3]
図3は、実施形態3に係る型押し構造体の製造方法を説明するために示す図である。図3(a)は第4工程で前駆体組成物層20に対してアッシング処理を施している最中の前駆体組成物層20の断面図であり、図3(b)は第4工程で前駆体組成物層20に対してアッシング処理を施した直後における前駆体組成物層20の断面図である。
【0098】
実施形態3に係る型押し構造体の製造方法は、基本的には実施形態1に係る型押し構造体の製造方法と同様の工程を含むが、第4工程の内容が実施形態1に係る型押し構造体の製造方法の場合と異なる。すなわち、実施形態3に係る型押し構造体の製造方法においては、図3に示すように、基材として、エッチングストッパとなる材料からなる基材10aを用いるとともに、アッシング処理による前駆体組成物層のエッチングレートと、残膜22の厚さとの関係から算出した第1時間を超える時間、アッシングを施すこととしている。
【0099】
このように、実施形態3に係る型押し構造体の製造方法は、第4工程の内容が実施形態1に係る型押し構造体の製造方法の場合と異なるが、実施形態1に係る型押し構造体の製造方法の場合と同様に、前駆体組成物層に対してアッシング処理を施すことにより残膜を処理する第4工程を含むことから、残膜の影響のない型押し構造体を形成することが可能となる。また、前駆体組成物層に対して大気圧プラズマによるアッシング処理を施すこととしていることから、第4工程を実施する際に高真空の環境を必要としなくなるため、高価な高真空の設備を不要とすることが可能となり、また、第4工程を実施するに要する時間を短縮することが可能となる。
【0100】
また、実施形態3に係る型押し構造体の製造方法によれば、いわゆるオーバーエッチングの条件でアッシングを施しているにもかかわらず、実施形態2に係る型押し構造体の製造方法の場合とは異なり、図3(b)に示すように、基材10aに凹部が形成されないようになる。
【0101】
なお、実施形態3に係る型押し構造体の製造方法は、第4工程以外の内容が実施形態1に係る型押し構造体の製造方法の場合と同様であるため、実施形態1に係る型押し構造体の製造方法が有する効果のうち該当する効果を有する。
【0102】
[実施形態4]
図4は、実施形態4に係る型押し構造体の製造方法を説明するために示す図である。図4(a)は第4工程で前駆体組成物層20に対してアッシング処理を施している最中の前駆体組成物層20の断面図であり、図4(b)は第4工程で前駆体組成物層20に対してアッシング処理を施した直後における前駆体組成物層20の断面図である。
【0103】
実施形態4に係る型押し構造体の製造方法は、基本的には実施形態1に係る型押し構造体の製造方法と同様の工程を含むが、第4工程の内容が実施形態1に係る型押し構造体の製造方法の場合と異なる。すなわち、実施形態4に係る型押し構造体の製造方法においては、図4に示すように、基材として、第1基材12の表面にエッチングストッパとなる材料からなる層14を備える基材10bを用いるとともに、アッシング処理による前駆体組成物層のエッチングレートと、残膜22の厚さとの関係から算出した第1時間を超える時間、アッシングを施すこととしている。
【0104】
このように、実施形態4に係る型押し構造体の製造方法は、第4工程の内容が実施形態1に係る型押し構造体の製造方法の場合と異なるが、実施形態1に係る型押し構造体の製造方法の場合と同様に、前駆体組成物層に対してアッシング処理を施すことにより残膜を処理する第4工程を含むことから、残膜の影響のない型押し構造体を形成することが可能となる。また、前駆体組成物層に対して大気圧プラズマによるアッシング処理を施すこととしていることから、第4工程を実施する際に高真空の環境を必要としなくなるため、高価な高真空の設備を不要とすることが可能となり、また、第4工程を実施するに要する時間を短縮することが可能となる。
【0105】
また、実施形態4に係る型押し構造体の製造方法においても、実施形態3に係る型押し構造体の製造方法の場合と同様に、いわゆるオーバーエッチングの条件でアッシングを施しているにもかかわらず、図4(b)に示すように、基材10bに凹部が形成されないようになる。
【0106】
なお、実施形態4に係る型押し構造体の製造方法は、第4工程以外の内容が実施形態1に係る型押し構造体の製造方法の場合と同様であるため、実施形態1に係る型押し構造体の製造方法が有する効果のうち該当する効果を有する。
【0107】
[実施形態5]
図5は、実施形態5に係る型押し構造体の製造方法を説明するために示す図である。図5(a)は第4工程で前駆体組成物層20に対してアッシング処理を施している最中の前駆体組成物層20の断面図であり、図5(b)は第4工程で前駆体組成物層20に対してアッシング処理を施した直後における前駆体組成物層20の断面図であり、図5(c)は第5工程で前駆体組成物層20を熱処理することにより形成された型押し構造体30の断面図である。なお、図5においては、後述する海島構造24を見易くするために、図1〜図4においてよりも図面を拡大して示している。
【0108】
実施形態5に係る型押し構造体の製造方法は、基本的には実施形態1に係る型押し構造体の製造方法と同様の工程を含むが、第4工程の内容が実施形態1に係る型押し構造体の製造方法の場合と異なる。すなわち、実施形態5に係る型押し構造体の製造方法においては、図5に示すように、第4工程において、当該第4工程に続く第5工程を実施することにより残膜が海島構造26を取るようになる薄さまで残膜22を薄くすることとしている。
【0109】
このように、実施形態5に係る型押し構造体の製造方法は、第4工程の内容が実施形態1に係る型押し構造体の製造方法の場合と異なるが、実施形態1に係る型押し構造体の製造方法の場合と同様に、前駆体組成物層に対してアッシング処理を施すことにより残膜を処理する第4工程を含むことから、残膜の影響のない型押し構造体を形成することが可能となる。また、前駆体組成物層に対して大気圧プラズマによるアッシング処理を施すこととしていることから、第4工程を実施する際に高真空の環境を必要としなくなるため、高価な高真空の設備を不要とすることが可能となり、また、第4工程を実施するに要する時間を短縮することが可能となる
【0110】
また、実施形態5に係る型押し構造体の製造方法においては、第5工程終了後に、残膜が海島構造26を取るようになるため、第4工程終了で残膜を完全に除去しない場合であっても、残膜の影響のない型押し構造体を形成することが可能となる。
【0111】
なお、実施形態5に係る型押し構造体の製造方法は、第4工程以外の内容が実施形態1に係る型押し構造体の製造方法の場合と同様であるため、実施形態1に係る型押し構造体の製造方法が有する効果のうち該当する効果を有する。
【0112】
[実施形態6]
図6は、実施形態6に用いるアッシング装置40を説明するために示す図である。図7は、実施形態6に係る型押し構造体の製造方法を説明するために示す図である。図7(a)は第4工程で前駆体組成物層20に対してアッシング処理を施す直前の前駆体組成物層20の断面図であり、図7(b)は第4工程で前駆体組成物層20に対してアッシング処理を施した直後における前駆体組成物層20の断面図である。なお、図6中、符号41は一方の電極を示し、符号43は他方の電極を示す。また、図7においては、サイドエッチングの様子を見易くするために、図5においてよりもさらに図面を拡大して示している。
【0113】
実施形態6に係る型押し構造体の製造方法は、基本的には実施形態1に係る型押し構造体の製造方法と同様の工程を含む。そして、図6に示すように、アッシング装置40(大気圧プラズマアッシング装置)を用いて前駆体組成物層に対してアッシング処理を施すことにより第4工程を実施することとしている。
【0114】
このように、実施形態6に係る型押し構造体の製造方法は、実施形態1に係る型押し構造体の製造方法の場合と同様に、前駆体組成物層に対してアッシング処理を施すことにより残膜を処理する第4工程を含むことから、残膜の影響のない型押し構造体を形成することが可能となる。また、前駆体組成物層に対して大気圧プラズマによるアッシング処理を施すこととしていることから、第4工程を実施する際に高真空の環境を必要としなくなるため、高価な高真空の設備を不要とすることが可能となり、また、第4工程を実施するに要する時間を短縮することが可能となる。
【0115】
なお、実施形態6に係る型押し構造体の製造方法においては、前駆体組成物層に対して大気圧プラズマによるアッシング処理を施すこととしていることから、アッシングガスの平均自由行程が短くなって第4工程中にサイドエッチングが起こるため(図7参照。)、これを考慮して凹凸型のパターンを設計することが好ましい。このことは、実施形態1〜5に係る型押し構造体の製造方法の場合も同様である。
【0116】
[実施形態7]
図8は、実施形態7に用いるアッシング装置40aを説明するために示す図である。図9は、実施形態7に係る型押し構造体の製造方法を説明するために示す図である。図9(a)は第4工程で前駆体組成物層20に対してアッシング処理を施す直前の前駆体組成物層20の断面図であり、図9(b)は第4工程で前駆体組成物層20に対してアッシング処理を施した直後における前駆体組成物層20の断面図である。なお、図8中、符号42は正電極を示し、符号44は負電極を示す。
【0117】
実施形態7に係る型押し構造体の製造方法は、基本的には実施形態6に係る型押し構造体の製造方法と同様の工程を含むが、第4工程の内容が実施形態6に係る型押し構造体の製造方法の場合と異なる。すなわち、実施形態7に係る型押し構造体の製造方法においては、図8に示すように、アッシング装置40a(減圧プラズマアッシング装置)を用いて前駆体組成物層20に対して減圧プラズマによるアッシング処理を施すことにより第4工程を実施することとしている。実施形態7に係る型押し構造体の製造方法においては、例えば、1Pa〜1000Paの圧力条件(好ましくは10Pa〜100Pa)の下で減圧プラズマによるアッシング処理を行う。また、実施形態7に係る型押し構造体の製造方法においては、図8に示すように、バイアス電圧を印加した条件で第4工程を実施することとしている。
【0118】
このように、実施形態7に係る型押し構造体の製造方法は、第4工程の内容が実施形態6に係る型押し構造体の製造方法の場合と異なるが、実施形態6に係る型押し構造体の製造方法の場合と同様に、前駆体組成物層に対してアッシング処理を施すことにより残膜を処理する第4工程をさらに含むことから、残膜の影響のない型押し構造体を形成することが可能となる。また、バイアス電圧を印加した状態で第4工程を実施することとしていることから、アッシングガスの衝突エネルギーが高くなるため、高いエッチングレートでアッシング工程を実施することが可能となり、ひいては、高い生産性で型押し構造体を製造することが可能となる。
【0119】
また、実施形態7に係る型押し構造体の製造方法によれば、以下のような効果も得られる。すなわち、実施形態7に係る型押し構造体の製造方法によれば、大気圧条件下においてよりもアッシングに用いるガス(アッシングガス)の平均自由行程が長くなることから、また、アッシングガスの飛翔方向が一方向に揃うようになるため、図9に示すように、型押し構造の側面部分に対するエッチング(サイドエッチング)の割合を低減することが可能となり、ひいては、高い形状精度を有する型押し構造体を製造することが可能となる。また、バイアス電圧を印加した状態であっても安定したグロー放電が起こるようになるため、高いエッチングレートで安定してアッシング工程を実施することが可能となり、ひいては、高い生産性で安定して型押し構造体を製造することが可能となる。また、前駆体組成物層と反応性ガスとの反応によって生成する反応生成物が揮発して除去され易くなるため、この観点からも、高いエッチングレートで安定してアッシング工程を実施することが可能となり、ひいては、高い生産性で安定して型押し構造体を製造することが可能となる。
【0120】
なお、実施形態7に係る型押し構造体の製造方法は、第4工程以外の内容が実施形態に6係る型押し構造体の製造方法の場合と同様であるため、実施形態6に係る型押し構造体の製造方法が有する効果のうち該当する効果を有する。
【0121】
[実施形態8]
1.実施形態8に係る薄膜トランジスター100
図10は、実施形態8に係る薄膜トランジスター100を説明するために示す図である。図10(a)は薄膜トランジスター100の平面図であり、図10(b)は図10(a)のA1−A1断面図であり、図10(c)は図10(a)のA2−A2断面図である。
【0122】
実施形態8に係る薄膜トランジスター100は、図10(a)及び図10(b)に示すように、ソース領域144及びドレイン領域146並びにチャネル領域142を含む酸化物導電体層140と、チャネル領域142の導通状態を制御するゲート電極120と、ゲート電極120とチャネル領域142との間に形成され強誘電体材料からなるゲート絶縁層130とを備える。チャネル領域142の層厚は、ソース領域144の層厚及びドレイン領域146の層厚よりも薄い。チャネル領域142の層厚は、好ましくは、ソース領域144の層厚及びドレイン領域146の層厚の1/2以下である。ゲート電極120は、図10(a)及び図10(c)に示すように、スルーホール150を介して外部に露出するゲートパッド122に接続されている。
【0123】
実施形態8に係る薄膜トランジスター100においては、酸化物導電体層140は、型押し成形技術を用いて形成されたものである。
【0124】
実施形態8に係る薄膜トランジスター100においては、チャネル領域142のキャリア濃度及び層厚は、ゲート電極120にオフの制御電圧を印加したときに、チャネル領域142が空乏化するような値に設定されている。具体的には、チャネル領域142のキャリア濃度は、1×1015cm−3〜1×1021cm−3の範囲内にあり、チャネル領域142の層厚は、5nm〜100nmの範囲内にある。
【0125】
なお、実施形態8に係る薄膜トランジスター100においては、ソース領域144及びドレイン領域146の層厚は、50nm〜1000nmの範囲内にある。
【0126】
酸化物導電体層140は、例えばインジウム錫酸化物(ITO)からなり、ゲート絶縁層130は、例えばPZT(Pb(Zrx,Ti1−x)O3)からなり、ゲート電極120は、例えば酸化ニッケルランタン(LNO(LaNiO3))からなり、固体基板としての絶縁性基板110は、例えばSi基板の表面にSiO2層及びTi層を介してSTO(SrTiO)層を形成した絶縁性基板からなる。
【0127】
2.実施形態8に係る薄膜トランジスターの製造方法
実施形態8に係る薄膜トランジスター100は、以下に示す薄膜トランジスターの製造方法により製造することができる。以下、工程順に説明する。
【0128】
図11〜図13は、実施形態8に係る薄膜トランジスターの製造方法を説明するために示す図である。図11(a)〜図11(f)、図12(a)〜図12(f)及び図13(a)〜図13(e)は各工程図である。なお、各工程図において、左側に示す図は図10(b)に対応する図であり、右側に示す図は図10(c)に対応する図である。
【0129】
(1)ゲート電極120の形成
まず、熱処理することにより金属酸化物セラミックス(酸化ニッケルランタン)からなる機能性固体材料となる機能性液体材料を準備する(第1工程)。具体的には、金属無機塩(硝酸ランタン(六水和物)及び酢酸ニッケル(四水和物))を含有する溶液(溶媒:2ーメトキシエタノール)を準備する。
【0130】
次に、図11(a)及び図11(b)に示すように、絶縁性基板110における一方の表面に、スピンコート法を用いて機能性液体材料を塗布し(例えば、500rpm・25秒)、その後、絶縁体基板110をホットプレート上に置き60℃で1分間乾燥させることにより、酸化ニッケルランタンの前駆体組成物層120’(層厚300nm)を形成する(第2工程)。
【0131】
次に、図11(c)及び図11(d)に示すように、ゲート電極120及びゲートパッド122に対応する領域が凹となるように形成された凹凸型M2(高低差300nm)を用いて、150℃で前駆体組成物層120’に対して型押し加工を施すことにより、前駆体組成物層120’に型押し構造(凸部の層厚300nm、凹部の層厚50nm)を形成する(第3工程)。型押し加工を施すときの圧力は、5MPaとする。これにより、80℃〜300℃の範囲内にある第2温度に加熱することで高い塑性変形能力を得た前駆体組成物層に対して型押し加工を施すこととなるため、所望の型押し構造を高い精度で形成することが可能となる。
【0132】
次に、前駆体組成物層120’を全面アッシング処理することにより、図11(e)に示すように、ゲート電極120に対応する領域以外の領域に存在する残膜120’zを完全に除去する(第4工程)。第4工程はウェットエッチング装置を用いて行う。
【0133】
最後に、前駆体組成物層120’をRTA装置を用いて高温で(650℃、10分間)熱処理することにより、図11(f)に示すように、前駆体組成物層120’から、機能性固体材料層(酸化ニッケルランタン)からなるゲート電極120及びゲートパッド122を形成する(第5工程)。
【0134】
(2)ゲート絶縁層130の形成
まず、熱処理することにより金属酸化物セラミックス(PZT)からなる機能性固体材料となる機能性液体材料を準備する。具体的には、機能性液体材料として、金属アルコキシドを含有する溶液(三菱マテリアル株式会社製、PZTゾルゲル溶液)を準備する(第1工程)。
【0135】
次に、絶縁性基板110における一方の表面上に、スピンコート法を用いて上記した機能性液体材料を塗布し(例えば、2000rpm・25秒)、その後、絶縁体基板110をホットプレート上に置き250℃で5分間乾燥させる操作を3回繰り返すことにより、機能性固体材料(PZT)の前駆体組成物層130’(層厚300nm)を形成する(第2工程、図12(a)参照。)。
【0136】
次に、図12(b)及び図12(c)に示すように、スルーホール150に対応する領域が凸となるように形成された凹凸型M3(高低差300nm)を用いて、150℃で前駆体組成物層130’に対して型押し加工を施すことにより、前駆体組成物層130’にスルーホール150に対応する型押し構造を形成する(第3工程)。型押し加工を施すときの圧力は、5MPaとする。これにより、80℃〜300℃の範囲内にある第2温度に加熱することで高い塑性変形能力を得た前駆体組成物層に対して型押し加工を施すこととなるため、所望の型押し構造を高い精度で形成することが可能となる。
【0137】
次に、前駆体組成物層130’を全面アッシング処理することにより、図12(d)に示すように、後でチャネル領域142となる領域に存在する残膜130’zを完全に除去する(第4工程)。第4工程は、減圧プラズマエッチング装置を用いて、10Paの圧力条件の下で反応性ガス(例えばCF4ガス及びArガス)を導入しながら行う。
【0138】
最後に、前駆体組成物層130’をRTA装置を用いて高温で(650℃、10分間)熱処理することにより、図12(e)に示すように、前駆体組成物層130’から、機能性固体材料層(PZT)からなるゲート絶縁層130を形成する(第5工程)。
【0139】
(3)酸化物導電体層140の形成
まず、熱処理することにより金属酸化物セラミックス(ITO)からなる機能性固体材料となる機能性液体材料を準備する(第1工程)。具体的には、機能性液体材料として、金属カルボン酸塩を含有する溶液(株式会社高純度化学研究所製の機能性液体材料(商品名:ITO−05C)、原液:希釈液=1:1.5)を準備する。なお、当該機能性液体材料には、完成時にチャネル領域142のキャリア濃度が1×1015cm−3〜1×1021cm−3の範囲内になるような濃度の不純物が添加されている。
【0140】
次に、図12(f)に示すように、絶縁性基板110における一方の表面上に、スピンコート法を用いて上記した機能性液体材料を塗布し(例えば、2000rpm・25秒)、その後、絶縁体基板110をホットプレート上に置き150℃で3分間乾燥させることにより、機能性固体材料(ITO)の前駆体組成物層140’(層厚300nm)を形成する(第2工程)。
【0141】
次に、図13(a)〜図13(c)に示すように、ソース領域144に対応する領域及びドレイン領域146に対応する領域よりもチャネル領域142に対応する領域が凸となるように形成され凹凸型M4(高低差350nm)を用いて、前駆体組成物層140’に対して型押し加工を施すことにより、前駆体組成物層140’に型押し構造(凸部の層厚350nm、凹部の層厚100nm)を形成する(第3工程)。これにより、前駆体組成物層140’のうちチャネル領域142となる部分の層厚が他の部分よりも薄くなる。
【0142】
このとき、上記の工程においては、前駆体組成物層140’を150℃に加熱した状態で、かつ、150℃に加熱した型を用いて型押し加工を施すこととしている。この場合、型押し加工を施すときの圧力は、4MPa程度とする。
【0143】
なお、凹凸型M4は、チャネル領域142に対応する領域よりも素子分離領域160及びスルーホール150に対応する領域がさらに凸となるような構造を有しており、素子分離領域160及びスルーホール150に対応する領域には、前駆体組成物層140’の残膜140’zが形成されることとなる(図13(c)参照。)。
【0144】
次に、前駆体組成物層140’を全面アッシング処理することにより、図13(d)に示すように、素子分離領域160及びスルーホール150に対応する領域に存在する残膜140’zを完全に除去する(第4工程)。第4工程は、減圧プラズマエッチング装置を用いて、10Paの圧力条件の下で反応性ガス(例えばCF4ガス及びArガス)を導入しながら行う。
【0145】
最後に、前駆体組成物層140’に熱処理を施す(ホットプレート上で400℃・10分の条件で前駆体組成物層140’の焼成を行い、その後、RTA装置を用いて650℃・30分(前半15分酸素雰囲気、後半の15分窒素雰囲気)の条件で前駆体組成物層140’を加熱する)ことにより、ソース領域144、ドレイン領域146及びチャネル領域142を含む酸化物導電体層140を形成し(第5工程)、図13(e)に示すようなボトムゲート構造を有する、実施形態8に係る薄膜トランジスター100を製造することができる。
【0146】
3.実施形態8に係る薄膜トランジスター100の効果
実施形態8に係る薄膜トランジスター100によれば、チャネル領域142を構成する材料として酸化物導電性材料を用いているためキャリア濃度を高くすることができ、また、ゲート絶縁層130を構成する材料として強誘電体材料を用いているため低い駆動電圧で高速にスイッチングすることができ、その結果、従来の薄膜トランジスター900の場合と同様に、大きな電流を低い駆動電圧で高速に制御することが可能となる。
【0147】
また、実施形態8に係る薄膜トランジスター100によれば、チャネル領域142の層厚がソース領域144の層厚及びドレイン領域146の層厚よりも薄く、かつ、残膜の影響のない酸化物導電体層140を上記した型押し構造体の製造方法を用いて形成するだけで薄膜トランジスターを製造することが可能となるため、従来の薄膜トランジスター900の場合のようにチャネル領域とソース領域及びドレイン領域とを異なる材料から形成しなくてもよくなり、上記のように優れた薄膜トランジスターを、従来よりも大幅に少ない原材料及び製造エネルギーを用いて、かつ、従来よりも短工程で製造することが可能となる。
【0148】
また、実施形態8に係る薄膜トランジスター100によれば、酸化物導電体層140、ゲート電極120及びゲート絶縁層130はすべて、高真空プロセスを用いることなく形成されたものであるため、真空プロセスを用いることなしに薄膜トランジスターを製造することが可能となり、上記のように優れた薄膜トランジスターを、従来よりも大幅に少ない製造エネルギーを用いて、かつ、従来よりも短工程で製造することが可能となる。
【0149】
さらにまた、実施形態8に係る薄膜トランジスター100によれば、チャネル領域142のキャリア濃度及び層厚は、ゲート電極120にオフの制御電圧を印加したときに、チャネル領域142が空乏化するような値に設定されているため、酸化物導電体層のキャリア濃度を高くしたとしてもオフ時に流れる電流量を十分低くでき、必要なオンオフ比を維持しつつ大きな電流を低い駆動電圧で制御することが可能となる。
【0150】
[実施形態9]
図14は、実施形態9に係る圧電式インクジェットヘッド300を説明するために示す図である。図14(a)は圧電式インクジェットヘッド300の断面図であり、図14(b)及び図14(c)は圧電式インクジェットヘッド300がインクを吐出するときの様子を示す図である。
【0151】
1.実施形態9に係る圧電式インクジェットヘッド300の構成
実施形態9に係る圧電式インクジェットヘッド300は、図14(a)に示すように、キャビティ部材340と、キャビティ部材340の一方側に取り付けられ、圧電体素子320が形成された振動板350と、キャビティ部材340の他方側に取り付けられ、ノズル孔332が形成されたノズルプレート330と、キャビティ部材340、振動板350及びノズルプレート330によって画成されるインク室360とを備える。振動板350には、インク室360に連通しインク室360にインクを供給するためのインク供給口352が設けられている。
【0152】
実施形態9に係る圧電式インクジェットヘッド300によれば、図14(b)及び図14(c)に示すように、圧電体素子320に適宜の電圧を印加することにより、振動板350を一旦上方に撓ませて図示しないリザーバからインクをインク室360に供給した後、振動板350を下方に撓ませることにより、ノズル孔332を介してインク室360からインク滴iを吐出させる。これによって、被印刷物に鮮やかな印刷を行うことができる。
【0153】
2.実施形態9に係る圧電式インクジェットヘッドの製造方法
このような構造を有する圧電式インクジェットヘッド300は、圧電体素子320(第1電極層322、圧電体層324及び第2電極層326)及びキャビティ部材340がともに、本発明の型押し構造体の製造方法を用いて形成されたものである。以下、実施形態9に係る圧電式インクジェットヘッド300の製造方法を工程順に説明する。
【0154】
図15〜図17は、実施形態8に係る圧電式インクジェットヘッドの製造方法を説明するために示す図である。図15(a)〜図15(f)、図16(a)〜図16(d)及び図17(a)〜図17(e)は各工程図である。
【0155】
(1)圧電体素子320の形成
(1−1)第1電極層322の形成
まず、熱処理することにより金属酸化物セラミックス(酸化ニッケルランタン)からなる機能性固体材料となる機能性液体材料を準備する(第1工程)。具体的には、金属無機塩(硝酸ランタン(六水和物)及び酢酸ニッケル(四水和物))を含有する溶液(溶媒:2ーメトキシエタノール)を準備する。
【0156】
次に、図15(a)に示すように、ダミー基板310における一方の表面に、スピンコート法を用いて機能性液体材料を塗布し(例えば、500rpm・25秒)、その後、ダミー基板310をホットプレート上に置き60℃で1分間乾燥させることにより、機能性固体材料(酸化ニッケルランタン)の前駆体組成物層322’(層厚300nm)を形成する(第2工程)。
【0157】
次に、図15(b)に示すように、第1電極層322に対応する領域が凹となるように形成された凹凸型M8(高低差300nm)を用いて、150℃で前駆体組成物層322’に対して型押し加工を施すことにより、前駆体組成物層322’に型押し構造(凸部の層厚300nm、凹部の層厚50nm)を形成する(第3工程)。型押し加工を施すときの圧力は、5MPaとする。
【0158】
次に、前駆体組成物層322’を全面アッシング処理することにより、図15(c)に示すように、第1電極層322に対応する領域以外の領域に存在する残膜を完全に除去する(第4工程)。第4工程はウェットエッチング装置を用いて行う。
【0159】
最後に、前駆体組成物層322’をRTA装置を用いて高温で(650℃、10分間)熱処理することにより、図15(d)に示すように、前駆体組成物層326’から、機能性固体材料層(酸化ニッケルランタン)からなる第1電極層322を形成する(第5工程)。
【0160】
(1−2)圧電体層324の形成
まず、熱処理することにより金属酸化物セラミックス(PZT)からなる機能性固体材料となる機能性液体材料を準備する(第1工程)。具体的には、機能性液体材料として、金属アルコキシドを含有する溶液(三菱マテリアル株式会社製、PZTゾルゲル溶液)を準備する(第1工程)。
【0161】
次に、図15(e)に示すように、ダミー基板310における一方の表面上に、スピンコート法を用いて上記した機能性液体材料を塗布し、その後、ダミー基板310をホットプレート上に置き250℃で5分間乾燥させることにより、機能性固体材料(PZT)の前駆体組成物層324’(例えば層厚1μm〜10μm)を形成する(第2工程)。
【0162】
次に、図15(f)に示すように、圧電体層324に対応する領域が凹となるように形成された凹凸型M9(高低差500nm)を用いて、前駆体組成物層324’に対して型押し加工を施すことにより、前駆体組成物層324’に型押し構造(例えば凸部の層厚1μm〜10μm、凹部の層厚50nm)を形成する(第3工程)。
【0163】
このとき、上記の工程においては、前駆体組成物層324’を150℃に加熱した状態で、かつ、150℃に加熱した型を用いて型押し加工を施す。型押し加工を施すときの圧力は、4MPa程度とする。
【0164】
次に、前駆体組成物層324’を全面アッシング処理することにより、図15(g)に示すように、圧電体層324に対応する領域以外の領域に存在する残膜を完全に除去する(第4工程)。第4工程は、減圧プラズマエッチング装置を用いて、10Paの圧力条件の下で反応性ガス(例えばCF4ガス及びArガス)を導入しながら行う。
【0165】
最後に、前駆体組成物層324’をRTA装置を用いて高温で(650℃、10分間)熱処理することにより、図15(h)に示すように、前駆体組成物層324’から、機能性固体材料層(PZT)からなる圧電体層324を形成する(第5工程)。
【0166】
(1−3)第2電極層326の形成
まず、熱処理することにより金属酸化物セラミックス(酸化ニッケルランタン)からなる機能性固体材料となる機能性液体材料を準備する(第1工程)。具体的には、金属無機塩(硝酸ランタン(六水和物)及び酢酸ニッケル(四水和物))を含有する溶液(溶媒:2ーメトキシエタノール)を準備する。
【0167】
次に、図16(a)に示すように、ダミー基板310における一方の表面上に、スピンコート法を用いて機能性液体材料を塗布し(例えば、500rpm・25秒)、その後、ダミー基板310をホットプレート上に置き60℃で1分間乾燥させることにより、機能性固体材料(酸化ニッケルランタン)の前駆体組成物層326’(層厚300nm)を形成する(第2工程)。
【0168】
次に、図16(b)に示すように、第2電極層326に対応する領域が凹となるように形成された凹凸型M10(高低差300nm)を用いて、150℃で前駆体組成物層326’に対して型押し加工を施すことにより、前駆体組成物層326’に型押し構造(凸部の層厚300nm、凹部の層厚50nm)を形成する(第3工程)。型押し加工を施すときの圧力は、5MPaとする。
【0169】
次に、前駆体組成物層326’を全面アッシング処理することにより、図16(c)に示すように、第2電極層326に対応する領域以外の領域に存在する残膜を完全に除去する(第4工程)。第4工程はウェットエッチング装置を用いて行う。
【0170】
最後に、前駆体組成物層326’をRTA装置を用いて高温で(650℃、10分間)熱処理することにより、図16(d)に示すように、前駆体組成物層326’から、機能性固体材料層(酸化ニッケルランタン)からなる第2電極層326を形成する(第5工程)。これにより、第1電極層322,圧電体層324及び第2電極層326からなる圧電体素子320が完成する。
【0171】
(2)振動板350と圧電体素子320との貼り合わせ
図16(e)に示すように、インク供給口352を有する振動板350と圧電体素子320とを接着剤を用いて貼り合わせる。
【0172】
(3)キャビティ部材340の形成
まず、熱処理することにより金属酸化物セラミックス(石英ガラス)となる機能性液体材料を準備する(第1工程)。具体的には、機能性液体材料として、金属アルコキシド(イソプロピルシリケート(Si(OC3H7)4)を含有する溶液を準備する。
【0173】
次に、図17(a)に示すように、振動板350における一方の表面上に、スピンコート法を用いて上記した機能性液体材料を塗布し、その後、ダミー基板310をホットプレート上に置き150℃で5分間乾燥させることにより、機能性固体材料(石英ガラス)の前駆体組成物層340’(例えば層厚10μm〜20μm)を形成する(第2工程)。
【0174】
次に、図17(b)に示すように、インク室360等に対応する形状を有する凹凸型M11を用いて、前駆体組成物層340’に対して型押し加工を施すことにより、前駆体組成物層340’に型押し構造(例えば凸部の層厚10μm〜20μm、凹部の層厚50nm)を形成する(第3工程)。
【0175】
このとき、上記の工程においては、前駆体組成物層340’を150℃に加熱した状態で、かつ、150℃に加熱した型を用いて型押し加工を施す。型押し加工を施すときの圧力は、4MPa程度とする。
【0176】
次に、前駆体組成物層340’を全面アッシング処理することにより、図17(c)に示すように、キャビティ部材340を形成する領域以外の領域以外の領域に存在する残膜を完全に除去する(第4工程)。第4工程は、大気圧プラズマエッチング装置を用いて、大気圧条件の下で反応性ガス(例えばCF4ガス及びArガス)を導入しながら行う。
【0177】
最後に、前駆体組成物層340’をRTA装置を用いて高温で(650℃、10分間)熱処理することにより、図17(d)に示すように、前駆体組成物層340’から、機能性固体材料層(石英ガラス)からなるキャビティ部材340を形成する。
【0178】
(4)キャビティ部材340とノズルプレート330との貼り合わせ
図17(e)に示すように、キャビティ部材340と、ノズル孔332を有するノズルプレート330とを接着剤を用いて貼り合わせる。
【0179】
(5)ダミー基板310の取り外し
図17(f)に示すように、圧電体層320からダミー基板310を取り外す。これにより、実施形態9に係る圧電式インクジェットヘッド300が完成する。
【0180】
3.実施形態9に係る圧電式インクジェットヘッド300の効果
実施形態9に係る圧電式インクジェットヘッド300によれば、圧電体素子320(第1電極層322、圧電体層324及び第2電極層326)並びにキャビティ部材340が型押し成形技術を用いて形成されたものであるため、圧電式インクジェットヘッドを、従来よりも大幅に少ない原材料及び製造エネルギーを用いて、かつ、従来よりも短工程で製造することが可能となる。
【0181】
また、実施形態9に係る圧電式インクジェットヘッド300によれば、80℃〜300℃の範囲内にある第2温度で熱処理することで高い塑性変形能力を得た前駆体組成物層に対して型押し加工を施すことにより形成された、高い精度で形成された型押し構造を有する第1電極層、圧電体層、第2電極層及びキャビティ部材を備えるため、所望の性能を有する圧電式インクジェットヘッドとなる。
【0182】
また、実施形態9に係る圧電式インクジェットヘッド300によれば、圧電体素子320(第1電極層322、圧電体層324及び第2電極層326)並びにキャビティ部材340がともに、液体材料を用いて形成されたものであるため、型押し成形加工技術を用いて圧電式インクジェットヘッドを製造することが可能となり、上記のように優れた圧電式インクジェットヘッドを、従来よりも大幅に少ない原材料及び製造エネルギーを用いて製造することが可能となる。
【0183】
また、実施形態9に係る圧電式インクジェットヘッド300によれば、圧電体素子320(第1電極層322、圧電体層324及び第2電極層326)並びにキャビティ部材340がともに、高真空プロセスを用いることなく形成されたものであるため、上記のように優れた圧電式インクジェットヘッドを、従来よりも大幅に少ない製造エネルギーを用いて、かつ、従来よりも短工程で製造することが可能となる。
【0184】
また、実施形態9に係る圧電式インクジェットヘッド300によれば、キャビティ部材が大気圧プラズマ装置を用いて真空プロセスを用いることなしに製造されたものであるため、従来よりも大幅に少ない製造エネルギーを用いて、かつ、従来よりも短工程で製造することが可能となる。
【0185】
さらにまた、実施形態9に係る圧電式インクジェットヘッド300によれば、圧電体層及び/又はキャビティ部材が本発明の型押し構造体の製造方法を用いて形成されたものであるため、圧電式インクジェットヘッドを、残膜の影響のない型押し構造体として、従来よりも大幅に少ない原材料及び製造エネルギーを用いて、かつ、従来よりも短工程で製造することが可能となる。
【実施例】
【0186】
[実施例1]
実施例1は、反応性ガスを用いてアッシング処理を施すことにより、前駆体組成物層を完全に除去することができることを示す実施例である。
【0187】
図18は、実施例1におけるアッシング処理を説明するために示す図である。図18(a)〜図18(e)はアッシング処理の各工程図である。なお、図18(c)〜図18(e)のうち図18(c)はアッシング条件1におけるアッシング処理の結果を示す図であり、図18(b)はアッシング条件2におけるアッシング処理の結果を示す図であり、図18(c)はアッシング条件3におけるアッシング処理の結果を示す図である。
【0188】
図19は、実施例1におけるアッシング処理の結果を示す図である。横軸はアッシング時間を示し、縦軸は前駆体組成物層520に対してアッシング処理を施した後の前駆体組成物層の層厚を示す。なお、図19において、前駆体組成物層520の層厚がマイナスになっている領域においては、絶縁性基板510までエッチングされていることを示す。
【0189】
図20は、実施例1におけるアッシング処理の結果を示す図である。図20(a)はアッシング処理を施した部分とアッシング処理を施していない部分の境界部位におけるSEM写真を示す図であり、図20(b)は同境界部位におけるTi(チタン)の分布を示す図である。
【0190】
図21は、実施例1におけるアッシング処理の結果を示す図である。図21(a)はアッシング処理を施していない部分R1におけるEDXスペクトル(エネルギー分散型X線分光スペクトル)を示す図であり、図21(a)はアッシング処理を施した部分R2におけるEDXスペクトルを示す図である。
【0191】
実施例1においては、Si基板の表面にSiO2層を形成した絶縁性基板510上に、TiO2のゾルゲル溶液をスピンコート法により塗布して前駆体組成物層520を形成し、その後前駆体組成物層520が形成された絶縁性基板を200℃をホットプレート上で5分間乾燥したものを試料として用いた。絶縁性基板510のサイズ・形状としては、例えば、縦20mm×横20mm×高さ0.7mmの直方体のものを用いた。200℃乾燥後の前駆体組成物層520の層厚は、75nmである。
【0192】
その後、図18(a)に示すように、前駆体組成物層520の表面に耐熱性絶縁テープM20を部分的に貼り付けた後、図18(b)に示すように、前駆体組成物層520に対してアッシング処理を施した。反応性ガス(CF4ガス:流量0.1L/分)をキャリアガス(Heガス:流量9L/分)とともに流しながら前駆体組成物層520に対してアッシング処理を施すのをアッシング条件1とし、Arガス(流量0.1L/分)をキャリアガス(Heガス:流量9L/分)とともに流しながら前駆体組成物層520に対してアッシング処理を施すのをアッシング条件2とし、反応性ガス(CF4ガス:流量0.05L/分)及びArガス(流量0.05L/分)をキャリアガス(Heガス:流量9L/分)とともに流しながら前駆体組成物層520に対してアッシング処理を施すのをアッシング条件3とした。
【0193】
その後、アッシング条件1にてアッシング処理を施した試料について、前駆体組成物層320の表面から耐熱性絶縁テープM20を剥がした後、KLAテンコール株式会社製の段差計「Alpha Step−500」を用いて、前駆体組成物層320の表面からのエッチング量(段差)を測定した。また、日本電子株式会社製の走査電子顕微鏡/エネルギー分散型X線分析装置「JSM−5510」を用いて、アッシング処理を施した部分とアッシング処理を施していない部分の境界部位におけるSEM画像及び元素マッピング画像(Ti)を取得した。また、日本電子株式会社製の走査電子顕微鏡/エネルギー分散型X線分析装置「JSM−5510」を用いて、アッシング処理を施した部分とアッシング処理を施していない部分の境界部位におけるEDXスペクトル(エネルギー分散型X線分光スペクトル)を取得した。
【0194】
その結果、図18及び図19に示すように、アッシング条件1で前駆体組成物層520に対してアッシング処理を施した場合には、10分程度のアッシング時間で前駆体組成物層520を完全に除去可能であること及びアッシング時間を10分以上にしても絶縁性基板510はエッチングされないことが分かった(図18(c)及び図19参照。)。また、アッシング条件2で前駆体組成物層520に対してアッシング処理を施した場合には、3分程度のアッシング時間で前駆体組成物層520を完全に除去可能であることが分かった。但し、この場合、アッシング時間を5分以上にすると絶縁性基板510もエッチングされることがわかった(図18(d)及び図19参照。)。一方、アッシング条件3で前駆体組成物層520に対してアッシング処理を施した場合には、30分程度のアッシング時間では前駆体組成物層520を完全に除去することが困難であることが分かった(図18(e)及び図19参照。)。
【0195】
また、図20に示すように、アッシング処理を施した部分と施していない部分との間でSEM画像における明瞭な境界線が観測された(図20(a)参照。)。また、アッシング処理を施した部分においては、アッシング処理を施していない部分と比較して、観測されたTi(チタン)の量が大幅に低減されていることが確認された(図20(b)参照。)。
【0196】
また、図21に示すように、アッシング処理を施した部分R2においては、アッシング処理を施していない部分R1にて観測されたTiのピーク(4.6Kev及び4.9KeV)が観測されなかった(図21(a)及び図21(b)参照。)。
【0197】
[実施例2]
実施例2は、焼成前の前駆体組成物層に対してアッシング処理を施した場合には、焼成後の前駆体組成物層(金属酸化物層)に対してアッシング処理を施した場合よりも高速で前駆体組成物層又は金属酸化物層をエッチングすることができることを示す実施例である。
【0198】
図22は、実施例2におけるアッシング処理の結果を示す図である。図22(a)は焼成前の前駆体組成物層に対してアッシング処理を施した場合におけるアッシング処理の結果を示す図であり、図22(b)は焼成後の前駆体組成物層(金属酸化物層)に対してアッシング処理を施した場合におけるアッシング処理の結果を示す図である。
【0199】
実施例2においては、実施例1の場合と同様に、Si基板の表面にSiO2層を形成した絶縁性基板510上に、TiO2のゾルゲル溶液をスピンコート法により塗布して前駆体組成物層520を形成し、その後前駆体組成物層520が形成された絶縁性基板を200℃をホットプレート上で5分間乾燥したものを試料(試料1)として用いた。また、試料1をRTA装置により600℃で熱処理して焼成したものを試料(試料2)として用いた。
【0200】
その後、試料1及び試料2の表面に耐熱性絶縁テープM20を部分的に貼り付けた後、実施例1におけるアッシング条件3と同様の条件(反応性ガス(CF4ガス:流量0.05L/分)及びArガス(流量0.05L/分)をキャリアガス(Heガス:流量9L/分)とともに流しながらアッシング処理を施す条件)で試料1及び試料2に対してアッシング処理を施した。
【0201】
その後、試料1及び試料2の両方について、前駆体組成物層520の表面から耐熱性絶縁テープM20を剥がした後、KLAテンコール株式会社製の段差計「Alpha Step−500」を用いて、前駆体組成物層420の表面からのエッチング量を測定した。
【0202】
その結果、図22に示すように、焼成前の前駆体組成物層に対してアッシング処理を施した場合(図22(a)参照。)には、焼成後の前駆体組成物層(金属酸化物層)に対してアッシング処理を施した場合(図22(b)参照。)よりも高速で前駆体組成物層又は金属酸化物層をエッチング除去可能であることが分かった。
【0203】
[実施例3]
実施例3は、残膜を含む前駆体組成物層に対して所定のアッシング処理を施した場合に、当該残膜を完全に除去可能であることを示す実施例である。
【0204】
図23は、実施例3における評価方法を説明するために示す図である。図23(a)〜図23(d)はその手順を示す図である。図24は、実施例3におけるアッシング処理の結果(AFM画像又はSPM画像)を示す図である。図24(a)は、走査型プローブ顕微鏡(AFM又はSPM)による、アッシング処理を施した後における試料表面の3次元画像を示す図であり、図24(b)はその断面画像を示す図である。図25は、実施例3におけるアッシング処理の結果(I−V特性)を示す図である。図25中、符号Aは測定例1におけるI−V特性を示し、符号Bは測定例2におけるI−V特性を示す。
【0205】
実施例3においては、Si基板612の表面にPt層614を形成した基板610上に、TiO2のMOD溶液(0.4mol)をスピンコート法により塗布して(2000rpm、30秒)前駆体組成物層620を形成し、前駆体組成物層620が形成された基板610を150℃のホットプレート上で5分間乾燥したものを試料として用いた(図23(a)参照。)。基板610の寸法・形状としては、例えば、縦20mm×横20mm×高さ0.7mmの直方体のものを用いた。
【0206】
その後、10mm×10mmの正方形状の中央部に縦3μm×横3μm×高低差200nmの9個の正方形凹パターンが、縦横10μmピッチで3行3列のマトリクス状に配置された凹凸型を用いて、前駆体組成物層620に対して型押し加工(80℃→200℃→80℃、10MPa、5分)を施すことにより前駆体組成物層620に残膜622を含む型押し構造を形成した(図23(b)参照。)。
【0207】
その後、型押し構造が形成された前駆体組成物層620に対して大気圧プラズマによるアッシング処理(出力300W、時間3分、アッシングガス:He+Ar+CF4)を施すことにより残膜を処理した(図23(c)参照。)。
【0208】
その後、エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製の走査型プローブ顕微鏡「S−Image」を用いて、試料の表面の3次元画像及びその断面画像を取得した。また、図23(d)に示すI−V測定系を組んでI−V特性を測定した。
【0209】
その結果、図24からは、幅3μm、高さ170nmのきれいなパターンを形成可能であることが分かった。また、図24からは、測定例1(符号A参照。)においては極めて小さな電流しか流れなかったことから、前駆体組成物層620が高い絶縁性を有することが分かった(図25参照。)。また、測定例2(符号B参照。)においては極めて大きな電流が流れたことから、アッシング処理を施すことによって残膜622の存在していた領域630から残膜622がきれいに除去されていることが示唆された(図25参照。)。
【0210】
以上、本発明を上記の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において実施することが可能であり、例えば、次のような変形も可能である。
【0211】
(1)上記実施形態1〜4、6及び7においては「個々の残膜形成領域内において連続している残膜」を含む前駆体組成物層に対してアッシング処理を施すことにより残膜を完全に除去している。また、上記実施形態5においては「個々の残膜形成領域内において連続している残膜」を含む前駆体組成物層に対してアッシング処理を施すことにより、第5工程を実施することにより残膜が海島構造を取るようになる薄さまで残膜を薄くしている。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。
【0212】
図26は変形例に係る型押し構造体の製造方法を説明するために示す図である。図26(a)は第4工程で前駆体組成物層20に対してアッシング処理を施している最中の前駆体組成物層20の断面図であり、図26(b)は第4工程で前駆体組成物層20に対してアッシング処理を施した直後における前駆体組成物層20の断面図であり、図26(c)は第5工程で前駆体組成物層20を熱処理することにより形成された型押し構造体30の断面図である。
【0213】
変形例に係る型押し構造体の製造方法においては、図26(a)に示すように、第3工程においては、「個々の残膜形成領域内において連続していない残膜(例えば海島構造28を取る膜)」を含む型押し構造を形成するとともに(図26(a)参照。)とともに、第4工程においては、前駆体組成物層20に対してアッシング処理を施すことにより上記残膜を完全に除去するようにしてもよい(図26(a)〜図26(c)参照。)。
【0214】
(2)上記実施形態8においては薄膜トランジスターを例にとって本発明を説明し、上記実施形態9においては圧電式インクジェットヘッドを例にとって本発明を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、本発明は、第1電極層、誘電体層、第2電極層及び配線層を備える薄膜キャパシター、圧電体層、電極層及び配線層を備えるアクチュエーター、基材上に格子層(金属酸化物層又は金属層)を備える光学デバイス(例えば反射型偏光板、回折格子など)などを製造する際にも適用可能である。
【符号の説明】
【0215】
10,10a,10b…基材、12…第1基材、14…エッチングストッパとなる材料からなる層、20,20a…前駆体組成物層、22,22a,120’z,130’z,140’z…残膜、24…凹部、26,28…海島構造、30…型押し構造体、40,40a…アッシング装置、41,43…電極、42…正電極、44…負電極、100,900…薄膜トランジスター、110,910…絶縁性基板、120,920…ゲート電極、120’…前駆体組成物層(ゲート電極)、130,930…ゲート絶縁層、130’…前駆体組成物層(ゲート絶縁層)、140,…酸化物導電体層、140’…前駆体組成物層(酸化物導電性層)、142…チャネル領域、144…ソース領域、146…ドレイン領域、150…スルーホール、160…素子分離領域、300…圧電式インクジェットヘッド、310…ダミー基板、320…圧電体素子、322…第1電極層、324…圧電体層、326…第2電極層、330…ノズルプレート、332…ノズル孔、340…キャビティ部材、350…振動板、352…インク供給口、360…インク室、510…絶縁性基板、520…前駆体組成物層、522…残膜、610…基板、612…Si基板、614…Pt層、622…前駆体組成物層、622…残膜、630…残膜622の存在していた領域、940…チャネル層、950…ソース電極、960…ドレイン電極、M1,M2,M3,M4,M8,M9,M10,M11…凹凸型、M20…耐熱性絶縁テープ、P…プラズマ
【技術分野】
【0001】
本発明は、型押し構造体の製造方法、薄膜トランジスター、薄膜キャパシター、アクチュエーター、圧電式インクジェットヘッド及び光学デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
図27は、従来の薄膜トランジスター900を説明するために示す図である。
従来の薄膜トランジスター900は、図27に示すように、ソース電極950及びドレイン電極960と、ソース電極950とドレイン電極960との間に位置するチャネル層940と、チャネル層940の導通状態を制御するゲート電極920と、ゲート電極920とチャネル層940との間に形成され、強誘電体材料からなるゲート絶縁層930とを備える。なお、図27において、符号910は絶縁性基板を示す。
【0003】
従来の薄膜トランジスター900においては、ゲート絶縁層930を構成する材料として、強誘電体材料(例えば、BLT(Bi4−xLaxTi3O12)、PZT(Pb(Zrx,Ti1−x)O3))が使用され、チャネル層940を構成する材料として、酸化物導電性材料(例えば、インジウム錫酸化物(ITO))が使用されている。
【0004】
従来の薄膜トランジスター900によれば、チャネル層を構成する材料として酸化物導電性材料を用いているためキャリア濃度を高くすることができ、また、ゲート絶縁層を構成する材料として強誘電体材料を用いているため低い駆動電圧で高速にスイッチングすることができ、その結果、大きな電流を低い駆動電圧で高速に制御することが可能となる。
【0005】
従来の薄膜トランジスターは、図28に示す従来の薄膜トランジスターの製造方法により製造することができる。図28は、従来の薄膜トランジスターの製造方法を説明するために示す図である。図28(a)〜図28(e)は各工程図であり、図28(f)は薄膜トランジスター900の平面図である。
【0006】
まず、図28(a)に示すように、表面にSiO2層が形成されたSi基板からなる絶縁性基板910上に、電子ビーム蒸着法により、Ti(10nm)及びPt(40nm)の積層膜からなるゲート電極920 を形成する。
次に、図28(b)に示すように、ゲート電極920の上方から、ゾルゲル法により、BLT(Bi3.25La0.75Ti3O12)又はPZT(Pb(Zr0.4Ti0.6)O3)からなるゲート絶縁層930(200nm)を形成する。
次に、図28(c)に示すように、ゲート絶縁層930上に、RFスパッタ法により、ITOからなるチャネル層940(5nm〜15nm)を形成する。
次に、図28(d)に示すように、チャネル層940上に、電子ビーム蒸着法により、Ti(30nm)及びPt(30nm)を真空蒸着してソース電極950及びドレイン電極960を形成する。
次に、RIE法及びウェットエッチング法(HF:HCl混合液)により、素子領域を他の素子領域から分離する。
これにより、図28(e)及び図28(f)に示すような、薄膜トランジスター900を製造することができる。
【0007】
図29は、従来の薄膜トランジスター900の電気特性を説明するために示す図である。なお、図29中、符号940aはチャネルを示し、符号940bは空乏層を示す。
従来の薄膜トランジスター900においては、図29に示すように、ゲート電圧が3V(VG=3V)のときのオン電流として約10−4A、オン/オフ比として1×104、電界効果移動度μFEとして10cm2/Vs、メモリウインドウとして約2Vの値が得られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−121029号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来の薄膜トランジスター900は、上記のような方法によって製造されたものであるため、ゲート電極920、チャネル層940、ソース電極950及びドレイン電極960を形成する過程で、高真空プロセスやフォトリソグラフィープロセスを用いる必要があり、原材料や製造エネルギーの使用効率が低く、また、製造に長時間を要するという問題がある。
【0010】
なお、このような問題は、上記した薄膜トランジスターを製造する方法だけに見られる問題ではなく、薄膜キャパシター、アクチュエーター、圧電式インクジェットヘッド、光学デバイスなどの機能性デバイスを製造する方法全般に見られる問題である。
【0011】
そこで、本発明は、上記した問題を解決するためになされたもので、上記のように優れた薄膜トランジスターをはじめとする種々の機能性デバイスを、従来よりも大幅に少ない原材料及び製造エネルギーを用いて、かつ、従来よりも短工程で製造することが可能な型押し構造体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
[1]本発明の型押し構造体の製造方法は、金属含有化合物を含有し熱処理することにより金属酸化物又は金属となる液体材料を準備する第1工程と、基材上に前記液体材料を塗布することにより前記金属酸化物又は前記金属の前駆体組成物からなる前駆体組成物層を形成する第2工程と、前記前駆体組成物層に対して凹凸型を用いて型押し加工を施すことにより前記前駆体組成物層に残膜を含む型押し構造を形成する第3工程と、前記型押し構造が形成された前記前駆体組成物層に対して大気圧プラズマ又は減圧プラズマによるアッシング処理を施すことにより前記残膜を処理する第4工程と、前記前駆体組成物層を熱処理することにより、前記型押し構造が形成された前記前駆体組成物層から前記金属酸化物又は前記金属からなる型押し構造体を形成する第5工程とをこの順序で含むことを特徴とする。
【0013】
本発明の型押し構造体の製造方法によれば、基材上に液体材料を塗布して前駆体組成物層を形成し、当該前駆体組成物層に対して型押し加工を施して型押し構造を形成し、さらには前駆体組成物層を高温で熱処理することにより、型押し構造体を形成することが可能となるため、また、サブミクロンオーダーの微細なパターンを有する型を用いて型押し加工を施すことにより、サブミクロンオーダーの微細なパターンを有する型押し構造体を形成することが可能となるため、上記のように優れた薄膜トランジスターをはじめとする種々の機能性デバイスを、従来よりも大幅に少ない原材料及び製造エネルギーを用いて、かつ、従来よりも短工程で製造することが可能となる。
【0014】
また、本発明の型押し構造体の製造方法によれば、前駆体組成物層に対してアッシング処理を施すことにより残膜を処理する第4工程をさらに含むことから、残膜の影響のない型押し構造体を形成することが可能となる。ここで、「残膜の影響のない型押し構造体」とは、残膜が存在していた部位で分断された構造を有する型押し構造体のことをいい、残膜が存在していた部位に残膜が全く残存しない場合と、残膜が存在していた部位に海島状の残膜が残存している場合の両方を含む。
【0015】
また、本発明の型押し構造体の製造方法によれば、前駆体組成物層に対して大気圧プラズマ又は減圧プラズマによるアッシング処理を施すこととしていることから、第4工程を実施する際に高真空の環境を必要としなくなるため、高価な高真空の設備を不要とすることが可能となり、また、第4工程を実施するに要する時間を短縮することが可能となる。
なお、高真空の環境を必要とすることなく型押し構造体を形成することができる技術として、各種印刷技術(活版印刷、グラビア印刷、オフセット印刷、スクリーン印刷、インクジェットによる印刷など)がある。しかしながら、これらの印刷技術によれば、せいぜい数十ミクロンオーダーのパターンを有する型押し構造体しか形成することができないため、サブミクロンオーダーの微細なパターンを有する型押し構造体を形成することができない。これに対して、本発明の型押し構造体の製造方法によれば、高真空の環境を必要とすることなく、サブミクロンオーダーの微細なパターンを有する型押し構造体を形成することが可能である。
【0016】
本発明の型押し構造体の製造方法においては、液体材料として、「金属アルコキシドを含有するゾルゲル溶液」、「有機金属化合物を含有するMOD(Metal Organic Decomposition)溶液」、「金属塩(例えば、金属塩化物、金属酸塩化物、金属硝酸塩、金属酢酸塩など)を含有する金属塩溶液」、「上記ゾルゲル溶液、上記MOD溶液及び上記金属塩溶液の少なくとも2つを混合した溶液」などの液体材料を好適に用いることができる。
【0017】
本発明の型押し構造体の製造方法において、残膜とは、第3工程において前駆体組成物層に対して凹凸型を用いて型押し加工を施したとき、凹凸型において最も突出した凸面と基材表面との間に残存する前駆体組成物層のことをいう。また、本発明の型押し構造体の製造方法において、残膜には、「個々の残膜形成領域内において連続している膜」に加えて「個々の残膜形成領域内において連続していない膜」(例えば海島構造を取る膜)も含まれる。
【0018】
なお、「型押し」は「ナノインプリント」と呼ばれることもある。
【0019】
[2]本発明の型押し構造体の製造方法において、前記第4工程においては、前記残膜を完全に除去することが好ましい。
【0020】
このような方法とすることにより、残膜の影響のない型押し構造体を形成することが可能となる。すなわち、第5工程において、前駆体組成物層が複数の領域に分断される結果、前駆体組成物層が無理なく面内方向に収縮できるようになるため、所望の型押し構造を高い精度で形成することが可能となる。
【0021】
残膜を完全に除去する方法としては、「アッシング処理による前駆体組成物層のエッチングレートと、残膜の厚さとの関係から算出した第1時間だけアッシングを施す方法(時間管理によるアッシング方法)」、「上記第1時間を超える時間、アッシングを施す方法(オーバーエッチングによるアッシング方法、この場合、基材がエッチングされることがある。)」、「基材として、エッチングストッパとなる材料からなる基材又はエッチングストッパとなる材料からなる層を少なくとも表面に備える基材を準備するとともに、上記第1時間を超える時間、アッシングを施す方法(エッチングストッパ併用によるアッシング方法)」などを好適に用いることができる。
【0022】
[3]本発明の型押し構造体の製造方法において、前記第4工程においては、当該第4工程に続く前記第5工程を実施することにより前記残膜が海島構造を取るようになる薄さまで前記残膜を薄くすることが好ましい。
【0023】
このような方法とすることによっても、残膜の影響のない型押し構造体を形成することが可能となる。すなわち、第5工程において、前駆体組成物層が複数の領域に分断される結果、前駆体組成物層が無理なく面内方向に収縮できるようになるため、所望の型押し構造を高い精度で形成することが可能となる。
【0024】
[4]本発明の型押し構造体の製造方法において、前記第4工程においては、前記型押し構造が形成された前記前駆体組成物層に対して大気圧プラズマによるアッシング処理を施すことが好ましい。
【0025】
このような方法とすることにより、真空プロセスを用いることなしに型押し構造体を製造することが可能となるため、残膜の影響のない型押し構造体を、従来よりも大幅に少ない製造エネルギーを用いて、かつ、従来よりも短工程で製造することが可能となる。
【0026】
[5]本発明の型押し構造体の製造方法において、前記第4工程においては、前記型押し構造が形成された前記前駆体組成物層に対して減圧プラズマによるアッシング処理を施すことも好ましい。
【0027】
このような方法とすることにより、高真空プロセスを用いることなしに型押し構造体を製造することが可能となるため、残膜の影響のない型押し構造体を、従来よりも大幅に少ない製造エネルギーを用いて、かつ、従来よりも短工程で製造することが可能となる。
【0028】
[6]本発明の型押し構造体の製造方法においては、0.1Pa以上の圧力の下で前記第4工程を実施することが好ましい。
【0029】
0.1Pa以上の圧力の下で第4工程を実施することとしたのは、0.1Pa未満の圧力の下で第4工程を実施する場合には、圧力環境を形成するのに時間がかかって生産性が低下したり、大がかりな減圧装置が必要になって製造コストを増大させたりする場合があるからである。このような観点から言えば、本発明の型押し構造体の製造方法においては、1Pa以上の圧力の下で第4工程を実施することが好ましく、10Pa以上の圧力の下で第4工程を実施することがより好ましい。
【0030】
一方、本発明の型押し構造体の製造方法においては、1000Pa〜100000Pa程度の圧力の下で第4工程を実施することが好ましい。このような圧力範囲であれば、短時間で圧力環境を形成することが可能となるからである。また、このような圧力範囲であれば、大気圧環境にあるワークを搬送しながら連続して圧力環境に投入することが可能となるからである。また、本発明の型押し構造体の製造方法においては、1000Pa以下の圧力の下で第4工程を実施することも好ましい。1000Pa以下の圧力の下で第4工程を実施する場合には、後述するように、バイアス電圧を印加した状態で安定して第4工程を実施することが可能となるからである。このような観点から言えば、本発明の型押し構造体の製造方法においては、100Pa以下の圧力の下で第4工程を実施することがより好ましい。
【0031】
[7]本発明の型押し構造体の製造方法においては、バイアス電圧を印加した状態で第4工程を実施することが好ましい。
【0032】
減圧条件下においては、バイアス電圧を印加した状態であっても安定したグロー放電を起こさせることが可能となる。このため、上記したように、バイアス電圧を印加した状態で第4工程を実施することにより、高いエッチングレートでアッシング工程を実施することが可能となり、ひいては、高い生産性で型押し構造体を製造することが可能となる。
【0033】
また、減圧条件下においては大気圧条件下においてよりもアッシングに用いるガス(アッシングガス)の平均自由行程が長くなるため、また、アッシングガスの飛翔方向が一方向に揃うようになるため、上記したように、バイアス電圧を印加した状態で第4工程を実施することにより、型押し構造の側面部分に対するエッチング(サイドエッチング)の割合を低減することが可能となり、ひいては、高い形状精度を有する型押し構造体を製造することが可能となる。
【0034】
[8]本発明の型押し構造体の製造方法においては、反応性ガスを用いて前記第4工程を実施することが好ましい。
【0035】
このような方法とすることにより、高いエッチングレートでアッシング工程を実施することが可能となり、ひいては、高い生産性で型押し構造体を製造することが可能となる。この場合、反応性ガスとしては、前駆体組成物層を構成する成分と化学反応を起こして前駆体組成物層をエッチングできる反応性ガスを用いることが好ましい。
【0036】
[9]本発明の型押し構造体の製造方法においては、前記反応性ガスとして、ハロゲン元素含有ガスを用いて前記第4工程を実施することが好ましい。
【0037】
このように、様々な種類の金属に対して反応性の高いハロゲン元素含有ガスを用いて第4工程を実施することにより、様々な種類の前駆体組成物層から、残膜の影響のない型押し構造体を製造することが可能となる。
【0038】
[10]本発明の型押し構造体の製造方法においては、前記反応性ガスとして、ハロゲン元素含有ガス及びArガスを含有する混合ガスを用いて前記第4工程を実施することが好ましい。
【0039】
このように、様々な種類の金属に対して反応性の高いハロゲン元素含有ガス及びミリング性の高いArガスを用いて第4工程を実施することにより、様々な種類の前駆体組成物層から、残膜の影響のない型押し構造体を高い生産性で形成することが可能となる。
【0040】
なお、本発明の型押し構造体の製造方法(上記[9]又は[10]のいずれかに記載の型押し構造体の製造方法)において、ハロゲン元素含有ガスとしては、フッ素系ガス、塩素系ガス、臭素系ガスなどを好適に用いることができる。具体的には、前駆体組成物層がSiを含有する物質からなる場合には、例えばCF4、CF4/O2、CF4/H2、CHF3、C2F6、C3F8、SF6、SF6/O2、NF3、SiF4/O2、Cl2、BCl3、CCl4、CF3Br、HBr、HBr/NF3、HBr/O2、BCl3/CCl4、BCl3/CF4などを好適に用いることができ、前駆体組成物層がAlを含有する物質からなる場合には、例えばCl2、BCl3、CCl4、SiCl4、BCl3/Cl2/Arなどを好適に用いることができ、前駆体組成物層がW、Mo、Ta及びTiのうち少なくとも1種を含有する物質からなる場合には、例えばCF4、CF4/O2、NF3、CCl4/O2などを好適に用いることができ、前駆体組成物層がCrを含有する物質からなる場合には、例えばCl2、Cl2/O2、CCl4/O2などを好適に用いることができ、前駆体組成物層がAu及びPtのうち少なくとも1種を含有する物質からなる場合には、例えばCl2、Cl2/Arなどを好適に用いることができる。
【0041】
本発明の型押し構造体の製造方法においては、キャリアガスとして、HeガスやN2ガスを用いることが好ましい。
【0042】
[11]本発明の型押し構造体の製造方法においては、前記第2工程と前記第3工程との間に、前記前駆体組成物層を80℃〜200℃の範囲内にある温度に加熱することにより前記前駆体組成物層の流動性を予め低くしておく予備加熱工程をさらに含み、前記第3工程においては、前記前駆体組成物層を80℃〜300℃の範囲内にある温度に加熱した状態で、かつ、80℃〜300℃の範囲内にある温度に加熱した型を用いて前記前駆体組成物層に対して型押し加工を施すことにより、前記前駆体組成物層に型押し構造を形成することが好ましい。
【0043】
このような方法とすることにより、80℃〜200℃の範囲内にある温度に加熱することにより前駆体組成物層の固化反応をある程度進めて前駆体組成物層の流動性を予め低くしておくとともに、80℃〜300℃の範囲内にある温度に加熱することにより前駆体組成物層の硬度を低くしておくことで高い塑性変形能力を得た前駆体組成物層に対して型押し加工を施すこととしているため、所望の型押し構造を高い精度で形成することが可能となり、その結果、所望の性能を有する型押し構造体を製造することが可能となる。
【0044】
ところで、高分子材料を用いて型押し加工を行う通常の型押し加工技術の場合とは異なり、熱処理することにより金属酸化物又は金属となる液体材料を用いて型押し加工を行う型押し加工技術の場合には室温で型押し加工を行うという報告例がある。しかしながら、これによれば、所定の塑性変形能力を付与するためには有機成分や溶媒などを含有させる必要が生ずるため、これに起因して焼成時の形状劣化が激しくなってしまう。
【0045】
しかしながら、本発明の発明者らの研究により、前駆体組成物層を80℃〜300℃の範囲内にある温度に加熱すれば、前駆体組成物層の塑性変形能力が高くなることが明らかとなった。また、主溶媒を除去できることが明らかとなった。そこで、本発明の型押し構造体の製造方法においては、80℃〜300℃の範囲内にある温度に加熱することで高い塑性変形能力を得るとともに焼成時の形状劣化の少ない前駆体組成物層に対して型押し加工を施すこととしているのである。
【0046】
ここで、前駆体組成物層の加熱温度を「80℃〜300℃」の範囲内としたのは、上記の加熱温度が80℃未満である場合には、前駆体組成物層が十分に軟化しないため前駆体組成物層の塑性変形能力を十分高くすることができないからであり、上記の加熱温度が300℃を超える場合には、前駆体組成物層の固化反応が進みすぎて前駆体組成物層の塑性変形能力が再び低下するからである。
【0047】
上記観点から言えば、前駆体組成物層を100℃〜200℃の範囲内にある温度に加熱した状態で前駆体組成物層に対して型押し加工を施すことがより好ましい。
【0048】
また、上記のように、80℃〜300℃の範囲内にある温度に加熱した型を用いて前駆体組成物層に対して型押し加工を施すこととしていることから、型押し加工を施している最中に、前駆体組成物層の塑性変形能力が低下することがなくなるため、所望の型押し構造を一層高い精度で形成することが可能となる。
【0049】
ここで、上記の型の加熱温度を「80℃〜300℃」の範囲内としたのは、上記の加熱温度が80℃未満の場合には、前駆体組成物層の温度が低下することに起因して前駆体組成物層の塑性変形能力が低下する場合があるからであり、上記の加熱温度が300℃を超える場合には、前駆体組成物層の脱水縮合反応が進みすぎることに起因して前駆体組成物層の塑性変形能力が低下するからである。
【0050】
上記観点から言えば、上記の第3工程においては、100℃〜200℃の範囲内にある温度に加熱した型を用いて型押し加工を施すことがより好ましい。
【0051】
本発明の型押し構造体の製造方法において、上記の第3工程においては、1MPa〜20MPaの範囲内にある圧力で型押し加工を施すことが好ましい。
【0052】
本発明の型押し構造体の製造方法によれば、上記したように、高い塑性変形能力を得た前駆体組成物層に対して型押し加工を施すこととしているため、型押し加工を施す際に印加する圧力を1MPa〜20MPaにまで低くしても前駆体組成物層が型の表面形状に追随して変形するようになり、所望の型押し構造を高い精度で形成することが可能となる。また、型押し加工を施す際に印加する圧力を1MPa〜20MPaにまで低くすることにより、型押し加工を施す際に型が損傷し難くなる。
【0053】
ここで、上記の圧力を「1MPa〜20MPa」の範囲内としたのは、上記の圧力が1MPa未満の場合には、圧力が低すぎて前駆体組成物を型押しすることができなくなる場合があるからであり、上記の圧力が20MPaもあれば十分に前駆体組成物を型押しすることができるため、これ以上の圧力を印加する必要がないからである。
【0054】
上記観点から言えば、第3工程においては、2MPa〜10MPaの範囲内にある圧力で型押し加工を施すことがより好ましい。
【0055】
[12]本発明の型押し構造体の製造方法において、前記第5工程においては、酸素含有雰囲気で熱処理することにより、金属酸化物からなる型押し構造体を形成することが好ましい。
【0056】
このような方法とすることにより、後述するように、型押し構造体料層を「薄膜トランジスターにおけるゲート電極層、ゲート絶縁層、ソース層、ドレイン層、チャネル層若しくは配線層」、「薄膜キャパシターにおける第1電極層、誘電体層、第2電極層若しくは配線層」、「アクチュエーターにおける圧電体層、電極層若しくは配線層」、「圧電式インクジェットヘッドにおける圧電体層又はキャビティ部材」、「光学デバイスにおける格子層(金属セラミックス製格子層)」として備える種々の機能性デバイスを製造することが可能となる。
【0057】
この場合、製造可能な金属酸化物としては、各種常誘電体材料(例えば、BZN(Bi1.5Zn1.0Nb1.5O7又はBST(BaxSr1−x)Ti3O12)、SiO2、SrTiO3、LaAlO3、HfO2)、各種強誘電体材料(例えば、PZT(Pb(Zrx,Ti1−x)O3)、BLT(Bi4−xLaxTi3O12)、NbドープPZT、LaドープPZT、チタン酸バリウム(BaTiO3)、チタン酸鉛(PbTiO3)、BTO(Bi4Ti3O12)、SBT(SrBi2Ta2O9)、BZN(Bi1.5Zn1.0Nb1.5O7)、ビスマスフェライト(BiFeO3))、各種半導体材料又は各種導電体材料(例えば、インジウム錫酸化物(ITO)、酸化インジウム(In2O3)、アンチモンドープ酸化錫(Sb−SnO2)、酸化亜鉛(ZnO)、アルミニウムドープ酸化亜鉛(Al−ZnO)、ガリウムドープ酸化亜鉛(Ga−ZnO)、酸化ルテニウム(RuO2)、酸化イリジウム(IrO2)、酸化錫(SnO2)、一酸化錫(SnO)、ニオブドープ二酸化チタン(Nb−TiO2)などの酸化物導電体材料、インジウムガリウム亜鉛複合酸化物(IGZO)、ガリウムドープ酸化インジウム(In−Ga−O(IGO))、インジウムドープ酸化亜鉛(In−Zn−O(IZO))などのアモルファス導電性酸化物材料、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)、ニオブドープチタン酸ストロンチウム(Nb−SrTiO3)、ストロンチウムバリウム複合酸化物(SrBaO3)、ストロンチウムカルシウム複合酸化物(SrCaO3)、ルテニウム酸ストロンチウム(SrRuO3)、酸化ニッケルランタン(LaNiO3)、酸化チタンランタン(LaTiO3)、酸化銅ランタン(LaCuO3)、酸化ニッケルネオジム(NdNiO3)、酸化ニッケルイットリウム(YNiO3)、酸化ランタンカルシウムマンガン複合酸化物(LCMO)、鉛酸バリウム(BaPbO3)、LSCO(LaxSr1−xCuO3)、LSMO(La1−xSrxMnO3)、YBCO(YBa2Cu3O7−x)、LNTO(La(NI1−xTix)O3)、LSTO((La1−x,Srx)TiO3)、STRO(Sr(Ti1−xRux)O3)その他のペロブスカイト型導電性酸化物又はパイロクロア型導電性酸化物)、その他材料(例えば、High−k材料(HfO2、Ta2O5、ZrO2、HfSixOy、ZrSixOy、LaAlO3、La2O3、(Ba1−x,Srx)TiO3、Al2O3、(Bi2−x,Znx)(Zny,Nb2−y)、Y2O3、GeO2、Gd2O3など)、ホイスラー系合金(Co、Co−Pt、Co−Fe、Mn−Pt、Ni−Fe、CoFeBなどの合金、Co−Cr−Fe−Al、Co2MnAlなど)、MRAM用バリア材料((La1−x,Srx)MnO3などの酸化物系ハーフメタルなどのMRAM用電極材料、AlAs,MgO、Al2O3など)、マルチフェロイック材料(ペロブスカイト型BiMnO3,BiFeO3,YbMnO3など、ガーネット型R3Fe2O12 (R=Dy,Ho,Er,Tm,Tb,Lu)、Y3Al5O12、Gd3Ga5O12、SGGG(Gd2.7Ca0.3)(Ga4.0Mg0.32Zr0.65Ca0.03)O12など)、PRAM材料(GexTe1−x、Ge2Sb2Te5などのカルコゲナイド系、Sb−X合金(X=Ge、Ga、In、Se、Te)など)、光触媒用ルチル型二酸化チタン(TiO2))を例示することができる。
【0058】
[13]本発明の型押し構造体の製造方法において、前記第5工程においては、還元雰囲気で熱処理することにより、金属からなる型押し構造体を形成することが好ましい。
【0059】
このような方法とすることにより、後述するように、機能性固体材料層を、「薄膜トランジスターにおけるゲート電極層若しくは配線層」、「薄膜キャパシターにおける第1電極層、第2電極層若しくは配線層」、「アクチュエーターにおける電極層」、「光学デバイスにおける格子層(金属製格子層)」などとすることが可能となるため、種々の機能性デバイスを製造することが可能となる。
【0060】
この場合、製造可能な金属としては、例えば、Au、Pt、Ag、Cu、Ti、Ge、In、Snなどを例示することができる。
【0061】
[14]本発明の薄膜トランジスターは、ゲート電極層、ゲート絶縁層、ソース層、ドレイン層、チャネル層及び配線層を備える薄膜トランジスターであって、前記ゲート電極層、前記ゲート絶縁層、前記ソース層、前記ドレイン層、前記チャネル層及び前記配線層のうち少なくとも1つの層は、本発明の型押し構造体の製造方法により形成されたものであることを特徴とする。
【0062】
このような方法とすることにより、薄膜トランジスターの少なくとも1つの層については、残膜の影響のない型押し構造体として、大幅に少ない原材料及び製造エネルギーを用いて、かつ、従来よりも短工程で製造することが可能となる。
【0063】
[15]本発明の薄膜トランジスターは、ソース領域及びドレイン領域並びにチャネル領域を含む酸化物導電体層と、前記チャネル領域の導通状態を制御するゲート電極と、前記ゲート電極と前記チャネル領域との間に形成され強誘電体材料又は常誘電体材料からなるゲート絶縁層とを備え、前記チャネル領域の層厚が前記ソース領域の層厚及び前記ドレイン領域の層厚よりも薄い薄膜トランジスターであって、前記チャネル領域の層厚が前記ソース領域の層厚及び前記ドレイン領域の層厚よりも薄い前記酸化物導電体層は、本発明の型押し構造体の製造方法により形成されたものであることを特徴とする。
【0064】
本発明の薄膜トランジスターによれば、チャネル領域を構成する材料として酸化物導電性材料を用いているためキャリア濃度を高くすることができ、また、ゲート絶縁層を構成する材料として強誘電体材料又は常誘電体材料を用いているため低い駆動電圧で高速にスイッチングすることができ、その結果、従来の薄膜トランジスターの場合と同様に、大きな電流を低い駆動電圧で高速に制御することが可能となる。
【0065】
また、本発明の薄膜トランジスターによれば、チャネル領域の層厚がソース領域の層厚及びドレイン領域の層厚よりも薄く、かつ、残膜の影響のない酸化物導電体層を本発明の型押し構造体の製造方法を用いて形成するだけで薄膜トランジスターを製造することが可能となるため、従来の薄膜トランジスターの場合のようにチャネル領域とソース領域及びドレイン領域とを異なる材料から形成しなくてもよくなり、上記のように優れた薄膜トランジスターを、従来よりも大幅に少ない原材料及び製造エネルギーを用いて、かつ、従来よりも短工程で製造することが可能となる。
【0066】
[16]本発明の薄膜トランジスターにおいては、前記チャネル領域のキャリア濃度及び層厚は、前記薄膜トランジスターがオフ状態のときに、前記チャネル領域全体が空乏化するような値に設定されていることが好ましい。
【0067】
このような構成とすることにより、酸化物導電体層のキャリア濃度を高くしたとしても薄膜トランジスターがオフ状態の時に流れる電流量を十分低くできるため、必要なオンオフ比を維持しつつ、大きな電流を低い駆動電圧で制御することが可能となる。
この場合において、薄膜トランジスターがエンハンスメント型のトランジスタである場合には、ゲート電極に0Vの制御電圧を印加したときに薄膜トランジスターがオフ状態となるため、このようなときにチャネル領域全体が空乏化するような値に設定されていればよく、薄膜トランジスターがディプレッション型のトランジスタである場合には、ゲート電極に負の制御電圧を印加したときに薄膜トランジスターがオフ状態となるため、このようなときにチャネル領域全体が空乏化するような値に設定されていればよい。
【0068】
[17]本発明の薄膜キャパシターは、第1電極層、誘電体層、第2電極層及び配線層を備える薄膜キャパシターであって、前記第1電極層、前記誘電体層、前記第2電極層及び前記配線層のうち少なくとも1つの層は、本発明の型押し構造体の製造方法により形成されたものであることを特徴とする。
【0069】
このような方法とすることにより、薄膜キャパシターの少なくとも1つの層については、残膜の影響のない型押し構造体として、大幅に少ない原材料及び製造エネルギーを用いて、かつ、従来よりも短工程で製造することが可能となる。
【0070】
[18]本発明のアクチュエーターは、圧電体層、電極層及び配線層を備えるアクチュエーターであって、前記圧電体層、前記電極層及び前記配線層のうち少なくとも1つの層は、本発明の型押し構造体の製造方法により形成されたものであることを特徴とする。
【0071】
このような方法とすることにより、少なくとも圧電体層については、残膜の影響のない型押し構造体として、大幅に少ない原材料及び製造エネルギーを用いて、かつ、従来よりも短工程で製造することが可能となる。
【0072】
この場合、液体材料として、熱処理することにより強誘電体材料となる液体材料を好適に用いることができる。
【0073】
[19]本発明の圧電式インクジェットヘッドは、キャビティ部材と、前記キャビティ部材の一方側に取り付けられ、圧電体層が形成された振動板と、前記キャビティ部材の他方側に取り付けられ、ノズル孔が形成されたノズルプレートと、前記キャビティ部材、前記振動板及び前記ノズルプレートによって画成されるインク室とを備える圧電式インクジェットヘッドであって、前記圧電体層及び/又は前記キャビティ部材は、本発明の型押し構造体の製造方法により形成されたものであることを特徴とする。
【0074】
本発明の圧電式インクジェットヘッドによれば、圧電体層及び/又はキャビティ部材が本発明の型押し構造体の製造方法を用いて形成されたものであるため、圧電式インクジェットヘッドを、残膜の影響のない型押し構造体として、従来よりも大幅に少ない原材料及び製造エネルギーを用いて、かつ、従来よりも短工程で製造することが可能となる。
【0075】
[20]本発明の光学デバイスは、基材上に格子層を備える光学デバイスであって、前記格子層は、本発明の型押し構造体の製造方法により形成されたものであることを特徴とする。
【0076】
このような方法とすることにより、格子層については、残膜の影響のない型押し構造体として、大幅に少ない原材料及び製造エネルギーを用いて、かつ、従来よりも短工程で製造することが可能となる。
【0077】
なお、格子層が絶縁体からなる場合には、液体材料として、熱処理することにより絶縁体材料となる液体材料を用いることができる。また、格子層が金属からなる場合には、熱処理することにより金属材料となる液体材料を用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】実施形態1に係る型押し構造体の製造方法を説明するために示す図。
【図2】実施形態2に係る型押し構造体の製造方法を説明するために示す図。
【図3】実施形態3に係る型押し構造体の製造方法を説明するために示す図。
【図4】実施形態4に係る型押し構造体の製造方法を説明するために示す図。
【図5】実施形態5に係る型押し構造体の製造方法を説明するために示す図。
【図6】実施形態6に用いるアッシング装置40を説明するために示す図である。
【図7】実施形態6に係る型押し構造体の製造方法を説明するために示す図。
【図8】実施形態7に用いるアッシング装置40aを説明するために示す図である。
【図9】実施形態7に係る型押し構造体の製造方法を説明するために示す図。
【図10】実施形態8に係る薄膜トランジスター100を説明するために示す図。
【図11】実施形態8に係る薄膜トランジスターの製造方法を説明するために示す図。
【図12】実施形態8に係る薄膜トランジスターの製造方法を説明するために示す図。
【図13】実施形態8に係る薄膜トランジスターの製造方法を説明するために示す図。
【図14】実施形態9に係る圧電式インクジェットヘッド300を説明するために示す図。
【図15】実施形態9に係る圧電式インクジェットヘッドの製造方法を説明するために示す図。
【図16】実施形態9に係る圧電式インクジェットヘッドの製造方法を説明するために示す図。
【図17】実施形態9に係る圧電式インクジェットヘッドの製造方法を説明するために示す図。
【図18】実施例1におけるアッシング処理を説明するために示す図である。
【図19】実施例1におけるアッシング処理の結果を示す図である。
【図20】実施例1におけるアッシング処理の結果を示す図である。
【図21】実施例1におけるアッシング処理の結果を示す図である。
【図22】実施例2におけるアッシング処理の結果を示す図である。
【図23】実施例3における評価方法を説明するために示す図である。
【図24】実施例3におけるアッシング処理の結果を示す図である。
【図25】実施例3におけるアッシング処理の結果を示す図である。
【図26】変形例に係る型押し構造体の製造方法を説明するために示す図。
【図27】従来の薄膜トランジスター900を説明するために示す図である。
【図28】従来の薄膜トランジスターの製造方法を説明するために示す図である。
【図29】従来の薄膜トランジスター900の電気特性を説明するために示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0079】
以下、本発明の型押し構造体の製造方法、薄膜トランジスター、薄膜キャパシター、アクチュエーター、圧電式インクジェットヘッド及び光学デバイスのうち、本発明の型押し構造体の製造方法、薄膜トランジスター及び圧電式インクジェットヘッドについて、図に示す実施の形態に基づいて説明する。実施形態1〜7は本発明の型押し構造体の製造方法に関する実施形態であり、実施形態8は本発明の薄膜トランジスターに関する実施形態であり、実施形態9は本発明の圧電式インクジェットヘッドに関する実施形態である。
【0080】
[実施形態1]
図1は、実施形態1に係る型押し構造体の製造方法を説明するために示す図である。図1(a)〜図1(g)は各工程図である。なお、図1において、符号Pはプラズマを示す。
【0081】
実施形態1に係る型押し構造体の製造方法は、図1に示すように、金属含有化合物を含有し熱処理することにより金属酸化物又は金属となる液体材料を準備する第1工程と、基材10上に液体材料を塗布することにより金属酸化物又は金属の前駆体組成物からなる前駆体組成物層20を形成する第2工程(図1(a)及び図1(b)参照。)と、前駆体組成物層20を80℃〜200℃の範囲内にある温度(例えば150℃)に加熱することにより前駆体組成物層20の流動性を予め低くしておく予備加熱工程(図1(c)参照。)と、前駆体組成物層20を80℃〜300℃の範囲内にある温度(例えば150℃)に加熱した状態で、かつ、80℃〜300℃の範囲内にある温度(例えば150℃)に加熱した凹凸型M1を用いて前駆体組成物層20に対して型押し加工を施すことにより前駆体組成物層20に残膜22を含む型押し構造を形成する第3工程(図1(d)参照。)と、型押し構造が形成された前駆体組成物層20に対して大気圧プラズマによるアッシング処理を施すことにより残膜22を処理する第4工程(図1(e)及び図1(f)参照。)と、前駆体組成物層20を熱処理することにより、型押し構造が形成された前駆体組成物層20から金属酸化物又は金属からなる型押し構造体30を形成する第5工程(図1(g)参照。)とをこの順序で含む。
【0082】
実施形態1に係る型押し構造体の製造方法においては、液体材料として、金属含有化合物を含有し熱処理することにより金属酸化物又は金属となる液体材料(例えば、「金属アルコキシドを含有するゾルゲル溶液」、「有機金属化合物を含有するMOD(Metal Organic Decomposition)溶液」、「金属塩(例えば、金属塩化物、金属酸塩化物、金属硝酸塩、金属酢酸塩など)を含有する金属塩溶液」、「上記ゾルゲル溶液、上記MOD溶液及び上記金属塩溶液の少なくとも2つを混合した溶液」などを用いる。
【0083】
実施形態1に係る型押し構造体の製造方法においては、第3工程において、凹凸型M1を用いて前駆体組成物層20に対して型押し加工を施すことから、図1(d)に示すように、前駆体組成物層20には残膜22を含む型押し構造が形成される。そこで、第4工程においては、このような前駆体組成物層20に対して大気圧プラズマによるアッシング処理を施すことにより、残膜22を処理する、具体的には、図1(e)及び図1(f)に示すように、残膜22を完全に除去することとしている。
【0084】
実施形態1に係る型押し構造体の製造方法においては、反応性ガス(例えば、「ハロゲン元素含有ガス」、「ハロゲン元素含有ガス及びArガスを含有する混合ガス」など)を用いて第4工程を実施する。この場合、ハロゲン元素含有ガスとしては、各種のフッ素系ガス、塩素系ガス、臭素系ガスなどを好適に用いることができる。
【0085】
このような方法とすることにより、残膜が完全に除去され「残膜の影響のない型押し構造体、すなわち、残膜が存在していた部位で分断された構造を有する型押し構造体」を形成することが可能となる。その結果、第5工程において、前駆体組成物層が個々の小さい領域に分断される結果、前駆体組成物層が無理なく面内方向に収縮できるようになるため、所望の型押し構造を高い精度で形成することが可能となる。
【0086】
残膜を完全に除去する方法としては、「アッシング処理による前駆体組成物層のエッチングレートと、残膜の厚さとの関係から算出した第1時間だけアッシングを施す方法(時間管理によるアッシング方法)」を用いる。
【0087】
実施形態1に係る型押し構造体の製造方法によれば、基材上に液体材料を塗布して前駆体組成物層を形成し、当該前駆体組成物層に対して型押し加工を施して型押し構造を形成し、さらには前駆体組成物層を高温で熱処理することにより、型押し構造体を形成することが可能となるため、また、サブミクロンオーダーの微細なパターンを有する型を用いて型押し加工を施すことにより、サブミクロンオーダーの微細なパターンを有する型押し構造体を形成することが可能となるため、上記のように優れた薄膜トランジスターをはじめとする種々の機能性デバイスを、従来よりも大幅に少ない原材料及び製造エネルギーを用いて、かつ、従来よりも短工程で製造することが可能となる。
【0088】
また、実施形態1に係る型押し構造体の製造方法によれば、前駆体組成物層に対してアッシング処理を施すことにより残膜を処理する第4工程をさらに含むことから、残膜の影響のない型押し構造体を形成することが可能となる。
【0089】
また、実施形態1に係る型押し構造体の製造方法によれば、前駆体組成物層に対して大気圧プラズマによるアッシング処理を施すこととしていることから、第4工程を実施する際に高真空の環境を必要としなくなるため、高価な高真空の設備を不要とすることが可能となり、また、第4工程を実施するに要する時間を短縮することが可能となる。
【0090】
また、実施形態1に係る型押し構造体の製造方法によれば、反応性ガスを用いて第4工程を実施することとしているため、高いエッチングレートでアッシング工程を実施することが可能となり、ひいては、高い生産性で型押し構造体を製造することが可能となる。
【0091】
また、実施形態1に係る型押し構造体の製造方法によれば、80℃〜200℃の範囲内にある温度に加熱することにより前駆体組成物層の固化反応をある程度進めて前駆体組成物層の流動性を予め低くしておくとともに、80℃〜300℃の範囲内にある温度に加熱することにより前駆体組成物層の硬度を低くしておくことで高い塑性変形能力を得た前駆体組成物層に対して型押し加工を施すこととしているため、所望の型押し構造を高い精度で形成することが可能となり、その結果、所望の性能を有する型押し構造体を製造することが可能となる。
【0092】
また、実施形態1に係る型押し構造体の製造方法によれば、80℃〜300℃の範囲内にある温度に加熱した型を用いて前駆体組成物層に対して型押し加工を施すこととしていることから、型押し加工を施している最中に、前駆体組成物層の塑性変形能力が低下することがなくなるため、所望の型押し構造を一層高い精度で形成することが可能となる。
【0093】
[実施形態2]
図2は、実施形態2に係る型押し構造体の製造方法を説明するために示す図である。図2(a)は第4工程で前駆体組成物層20に対してアッシング処理を施している最中の前駆体組成物層20の断面図であり、図2(b)は第4工程で前駆体組成物層20に対してアッシング処理を施した直後における前駆体組成物層20の断面図である。
【0094】
実施形態2に係る型押し構造体の製造方法は、基本的には実施形態1に係る型押し構造体の製造方法と同様の工程を含むが、第4工程の内容が実施形態1に係る型押し構造体の製造方法の場合と異なる。すなわち、実施形態2に係る型押し構造体の製造方法においては、図2に示すように、第4工程において、アッシング処理による前駆体組成物層のエッチングレートと、残膜22の厚さとの関係から算出した第1時間を超える時間、アッシングを施すこととしている。その結果、実施形態2に係る型押し構造体の製造方法においては、図2(b)に示すように、基材10に凹部24が形成されることとなる。
【0095】
このように、実施形態2に係る型押し構造体の製造方法は、第4工程の内容が実施形態1に係る型押し構造体の製造方法の場合と異なるが、実施形態1に係る型押し構造体の製造方法の場合と同様に、前駆体組成物層に対してアッシング処理を施すことにより残膜を処理する第4工程を含むことから、残膜の影響のない型押し構造体を形成することが可能となる。また、前駆体組成物層に対して大気圧プラズマによるアッシング処理を施すこととしていることから、第4工程を実施する際に高真空の環境を必要としなくなるため、高価な高真空の設備を不要とすることが可能となり、また、第4工程を実施するに要する時間を短縮することが可能となる。
【0096】
なお、実施形態2に係る型押し構造体の製造方法は、第4工程以外の内容が実施形態1に係る型押し構造体の製造方法の場合と同様であるため、実施形態1に係る型押し構造体の製造方法が有する効果のうち該当する効果を有する。
【0097】
[実施形態3]
図3は、実施形態3に係る型押し構造体の製造方法を説明するために示す図である。図3(a)は第4工程で前駆体組成物層20に対してアッシング処理を施している最中の前駆体組成物層20の断面図であり、図3(b)は第4工程で前駆体組成物層20に対してアッシング処理を施した直後における前駆体組成物層20の断面図である。
【0098】
実施形態3に係る型押し構造体の製造方法は、基本的には実施形態1に係る型押し構造体の製造方法と同様の工程を含むが、第4工程の内容が実施形態1に係る型押し構造体の製造方法の場合と異なる。すなわち、実施形態3に係る型押し構造体の製造方法においては、図3に示すように、基材として、エッチングストッパとなる材料からなる基材10aを用いるとともに、アッシング処理による前駆体組成物層のエッチングレートと、残膜22の厚さとの関係から算出した第1時間を超える時間、アッシングを施すこととしている。
【0099】
このように、実施形態3に係る型押し構造体の製造方法は、第4工程の内容が実施形態1に係る型押し構造体の製造方法の場合と異なるが、実施形態1に係る型押し構造体の製造方法の場合と同様に、前駆体組成物層に対してアッシング処理を施すことにより残膜を処理する第4工程を含むことから、残膜の影響のない型押し構造体を形成することが可能となる。また、前駆体組成物層に対して大気圧プラズマによるアッシング処理を施すこととしていることから、第4工程を実施する際に高真空の環境を必要としなくなるため、高価な高真空の設備を不要とすることが可能となり、また、第4工程を実施するに要する時間を短縮することが可能となる。
【0100】
また、実施形態3に係る型押し構造体の製造方法によれば、いわゆるオーバーエッチングの条件でアッシングを施しているにもかかわらず、実施形態2に係る型押し構造体の製造方法の場合とは異なり、図3(b)に示すように、基材10aに凹部が形成されないようになる。
【0101】
なお、実施形態3に係る型押し構造体の製造方法は、第4工程以外の内容が実施形態1に係る型押し構造体の製造方法の場合と同様であるため、実施形態1に係る型押し構造体の製造方法が有する効果のうち該当する効果を有する。
【0102】
[実施形態4]
図4は、実施形態4に係る型押し構造体の製造方法を説明するために示す図である。図4(a)は第4工程で前駆体組成物層20に対してアッシング処理を施している最中の前駆体組成物層20の断面図であり、図4(b)は第4工程で前駆体組成物層20に対してアッシング処理を施した直後における前駆体組成物層20の断面図である。
【0103】
実施形態4に係る型押し構造体の製造方法は、基本的には実施形態1に係る型押し構造体の製造方法と同様の工程を含むが、第4工程の内容が実施形態1に係る型押し構造体の製造方法の場合と異なる。すなわち、実施形態4に係る型押し構造体の製造方法においては、図4に示すように、基材として、第1基材12の表面にエッチングストッパとなる材料からなる層14を備える基材10bを用いるとともに、アッシング処理による前駆体組成物層のエッチングレートと、残膜22の厚さとの関係から算出した第1時間を超える時間、アッシングを施すこととしている。
【0104】
このように、実施形態4に係る型押し構造体の製造方法は、第4工程の内容が実施形態1に係る型押し構造体の製造方法の場合と異なるが、実施形態1に係る型押し構造体の製造方法の場合と同様に、前駆体組成物層に対してアッシング処理を施すことにより残膜を処理する第4工程を含むことから、残膜の影響のない型押し構造体を形成することが可能となる。また、前駆体組成物層に対して大気圧プラズマによるアッシング処理を施すこととしていることから、第4工程を実施する際に高真空の環境を必要としなくなるため、高価な高真空の設備を不要とすることが可能となり、また、第4工程を実施するに要する時間を短縮することが可能となる。
【0105】
また、実施形態4に係る型押し構造体の製造方法においても、実施形態3に係る型押し構造体の製造方法の場合と同様に、いわゆるオーバーエッチングの条件でアッシングを施しているにもかかわらず、図4(b)に示すように、基材10bに凹部が形成されないようになる。
【0106】
なお、実施形態4に係る型押し構造体の製造方法は、第4工程以外の内容が実施形態1に係る型押し構造体の製造方法の場合と同様であるため、実施形態1に係る型押し構造体の製造方法が有する効果のうち該当する効果を有する。
【0107】
[実施形態5]
図5は、実施形態5に係る型押し構造体の製造方法を説明するために示す図である。図5(a)は第4工程で前駆体組成物層20に対してアッシング処理を施している最中の前駆体組成物層20の断面図であり、図5(b)は第4工程で前駆体組成物層20に対してアッシング処理を施した直後における前駆体組成物層20の断面図であり、図5(c)は第5工程で前駆体組成物層20を熱処理することにより形成された型押し構造体30の断面図である。なお、図5においては、後述する海島構造24を見易くするために、図1〜図4においてよりも図面を拡大して示している。
【0108】
実施形態5に係る型押し構造体の製造方法は、基本的には実施形態1に係る型押し構造体の製造方法と同様の工程を含むが、第4工程の内容が実施形態1に係る型押し構造体の製造方法の場合と異なる。すなわち、実施形態5に係る型押し構造体の製造方法においては、図5に示すように、第4工程において、当該第4工程に続く第5工程を実施することにより残膜が海島構造26を取るようになる薄さまで残膜22を薄くすることとしている。
【0109】
このように、実施形態5に係る型押し構造体の製造方法は、第4工程の内容が実施形態1に係る型押し構造体の製造方法の場合と異なるが、実施形態1に係る型押し構造体の製造方法の場合と同様に、前駆体組成物層に対してアッシング処理を施すことにより残膜を処理する第4工程を含むことから、残膜の影響のない型押し構造体を形成することが可能となる。また、前駆体組成物層に対して大気圧プラズマによるアッシング処理を施すこととしていることから、第4工程を実施する際に高真空の環境を必要としなくなるため、高価な高真空の設備を不要とすることが可能となり、また、第4工程を実施するに要する時間を短縮することが可能となる
【0110】
また、実施形態5に係る型押し構造体の製造方法においては、第5工程終了後に、残膜が海島構造26を取るようになるため、第4工程終了で残膜を完全に除去しない場合であっても、残膜の影響のない型押し構造体を形成することが可能となる。
【0111】
なお、実施形態5に係る型押し構造体の製造方法は、第4工程以外の内容が実施形態1に係る型押し構造体の製造方法の場合と同様であるため、実施形態1に係る型押し構造体の製造方法が有する効果のうち該当する効果を有する。
【0112】
[実施形態6]
図6は、実施形態6に用いるアッシング装置40を説明するために示す図である。図7は、実施形態6に係る型押し構造体の製造方法を説明するために示す図である。図7(a)は第4工程で前駆体組成物層20に対してアッシング処理を施す直前の前駆体組成物層20の断面図であり、図7(b)は第4工程で前駆体組成物層20に対してアッシング処理を施した直後における前駆体組成物層20の断面図である。なお、図6中、符号41は一方の電極を示し、符号43は他方の電極を示す。また、図7においては、サイドエッチングの様子を見易くするために、図5においてよりもさらに図面を拡大して示している。
【0113】
実施形態6に係る型押し構造体の製造方法は、基本的には実施形態1に係る型押し構造体の製造方法と同様の工程を含む。そして、図6に示すように、アッシング装置40(大気圧プラズマアッシング装置)を用いて前駆体組成物層に対してアッシング処理を施すことにより第4工程を実施することとしている。
【0114】
このように、実施形態6に係る型押し構造体の製造方法は、実施形態1に係る型押し構造体の製造方法の場合と同様に、前駆体組成物層に対してアッシング処理を施すことにより残膜を処理する第4工程を含むことから、残膜の影響のない型押し構造体を形成することが可能となる。また、前駆体組成物層に対して大気圧プラズマによるアッシング処理を施すこととしていることから、第4工程を実施する際に高真空の環境を必要としなくなるため、高価な高真空の設備を不要とすることが可能となり、また、第4工程を実施するに要する時間を短縮することが可能となる。
【0115】
なお、実施形態6に係る型押し構造体の製造方法においては、前駆体組成物層に対して大気圧プラズマによるアッシング処理を施すこととしていることから、アッシングガスの平均自由行程が短くなって第4工程中にサイドエッチングが起こるため(図7参照。)、これを考慮して凹凸型のパターンを設計することが好ましい。このことは、実施形態1〜5に係る型押し構造体の製造方法の場合も同様である。
【0116】
[実施形態7]
図8は、実施形態7に用いるアッシング装置40aを説明するために示す図である。図9は、実施形態7に係る型押し構造体の製造方法を説明するために示す図である。図9(a)は第4工程で前駆体組成物層20に対してアッシング処理を施す直前の前駆体組成物層20の断面図であり、図9(b)は第4工程で前駆体組成物層20に対してアッシング処理を施した直後における前駆体組成物層20の断面図である。なお、図8中、符号42は正電極を示し、符号44は負電極を示す。
【0117】
実施形態7に係る型押し構造体の製造方法は、基本的には実施形態6に係る型押し構造体の製造方法と同様の工程を含むが、第4工程の内容が実施形態6に係る型押し構造体の製造方法の場合と異なる。すなわち、実施形態7に係る型押し構造体の製造方法においては、図8に示すように、アッシング装置40a(減圧プラズマアッシング装置)を用いて前駆体組成物層20に対して減圧プラズマによるアッシング処理を施すことにより第4工程を実施することとしている。実施形態7に係る型押し構造体の製造方法においては、例えば、1Pa〜1000Paの圧力条件(好ましくは10Pa〜100Pa)の下で減圧プラズマによるアッシング処理を行う。また、実施形態7に係る型押し構造体の製造方法においては、図8に示すように、バイアス電圧を印加した条件で第4工程を実施することとしている。
【0118】
このように、実施形態7に係る型押し構造体の製造方法は、第4工程の内容が実施形態6に係る型押し構造体の製造方法の場合と異なるが、実施形態6に係る型押し構造体の製造方法の場合と同様に、前駆体組成物層に対してアッシング処理を施すことにより残膜を処理する第4工程をさらに含むことから、残膜の影響のない型押し構造体を形成することが可能となる。また、バイアス電圧を印加した状態で第4工程を実施することとしていることから、アッシングガスの衝突エネルギーが高くなるため、高いエッチングレートでアッシング工程を実施することが可能となり、ひいては、高い生産性で型押し構造体を製造することが可能となる。
【0119】
また、実施形態7に係る型押し構造体の製造方法によれば、以下のような効果も得られる。すなわち、実施形態7に係る型押し構造体の製造方法によれば、大気圧条件下においてよりもアッシングに用いるガス(アッシングガス)の平均自由行程が長くなることから、また、アッシングガスの飛翔方向が一方向に揃うようになるため、図9に示すように、型押し構造の側面部分に対するエッチング(サイドエッチング)の割合を低減することが可能となり、ひいては、高い形状精度を有する型押し構造体を製造することが可能となる。また、バイアス電圧を印加した状態であっても安定したグロー放電が起こるようになるため、高いエッチングレートで安定してアッシング工程を実施することが可能となり、ひいては、高い生産性で安定して型押し構造体を製造することが可能となる。また、前駆体組成物層と反応性ガスとの反応によって生成する反応生成物が揮発して除去され易くなるため、この観点からも、高いエッチングレートで安定してアッシング工程を実施することが可能となり、ひいては、高い生産性で安定して型押し構造体を製造することが可能となる。
【0120】
なお、実施形態7に係る型押し構造体の製造方法は、第4工程以外の内容が実施形態に6係る型押し構造体の製造方法の場合と同様であるため、実施形態6に係る型押し構造体の製造方法が有する効果のうち該当する効果を有する。
【0121】
[実施形態8]
1.実施形態8に係る薄膜トランジスター100
図10は、実施形態8に係る薄膜トランジスター100を説明するために示す図である。図10(a)は薄膜トランジスター100の平面図であり、図10(b)は図10(a)のA1−A1断面図であり、図10(c)は図10(a)のA2−A2断面図である。
【0122】
実施形態8に係る薄膜トランジスター100は、図10(a)及び図10(b)に示すように、ソース領域144及びドレイン領域146並びにチャネル領域142を含む酸化物導電体層140と、チャネル領域142の導通状態を制御するゲート電極120と、ゲート電極120とチャネル領域142との間に形成され強誘電体材料からなるゲート絶縁層130とを備える。チャネル領域142の層厚は、ソース領域144の層厚及びドレイン領域146の層厚よりも薄い。チャネル領域142の層厚は、好ましくは、ソース領域144の層厚及びドレイン領域146の層厚の1/2以下である。ゲート電極120は、図10(a)及び図10(c)に示すように、スルーホール150を介して外部に露出するゲートパッド122に接続されている。
【0123】
実施形態8に係る薄膜トランジスター100においては、酸化物導電体層140は、型押し成形技術を用いて形成されたものである。
【0124】
実施形態8に係る薄膜トランジスター100においては、チャネル領域142のキャリア濃度及び層厚は、ゲート電極120にオフの制御電圧を印加したときに、チャネル領域142が空乏化するような値に設定されている。具体的には、チャネル領域142のキャリア濃度は、1×1015cm−3〜1×1021cm−3の範囲内にあり、チャネル領域142の層厚は、5nm〜100nmの範囲内にある。
【0125】
なお、実施形態8に係る薄膜トランジスター100においては、ソース領域144及びドレイン領域146の層厚は、50nm〜1000nmの範囲内にある。
【0126】
酸化物導電体層140は、例えばインジウム錫酸化物(ITO)からなり、ゲート絶縁層130は、例えばPZT(Pb(Zrx,Ti1−x)O3)からなり、ゲート電極120は、例えば酸化ニッケルランタン(LNO(LaNiO3))からなり、固体基板としての絶縁性基板110は、例えばSi基板の表面にSiO2層及びTi層を介してSTO(SrTiO)層を形成した絶縁性基板からなる。
【0127】
2.実施形態8に係る薄膜トランジスターの製造方法
実施形態8に係る薄膜トランジスター100は、以下に示す薄膜トランジスターの製造方法により製造することができる。以下、工程順に説明する。
【0128】
図11〜図13は、実施形態8に係る薄膜トランジスターの製造方法を説明するために示す図である。図11(a)〜図11(f)、図12(a)〜図12(f)及び図13(a)〜図13(e)は各工程図である。なお、各工程図において、左側に示す図は図10(b)に対応する図であり、右側に示す図は図10(c)に対応する図である。
【0129】
(1)ゲート電極120の形成
まず、熱処理することにより金属酸化物セラミックス(酸化ニッケルランタン)からなる機能性固体材料となる機能性液体材料を準備する(第1工程)。具体的には、金属無機塩(硝酸ランタン(六水和物)及び酢酸ニッケル(四水和物))を含有する溶液(溶媒:2ーメトキシエタノール)を準備する。
【0130】
次に、図11(a)及び図11(b)に示すように、絶縁性基板110における一方の表面に、スピンコート法を用いて機能性液体材料を塗布し(例えば、500rpm・25秒)、その後、絶縁体基板110をホットプレート上に置き60℃で1分間乾燥させることにより、酸化ニッケルランタンの前駆体組成物層120’(層厚300nm)を形成する(第2工程)。
【0131】
次に、図11(c)及び図11(d)に示すように、ゲート電極120及びゲートパッド122に対応する領域が凹となるように形成された凹凸型M2(高低差300nm)を用いて、150℃で前駆体組成物層120’に対して型押し加工を施すことにより、前駆体組成物層120’に型押し構造(凸部の層厚300nm、凹部の層厚50nm)を形成する(第3工程)。型押し加工を施すときの圧力は、5MPaとする。これにより、80℃〜300℃の範囲内にある第2温度に加熱することで高い塑性変形能力を得た前駆体組成物層に対して型押し加工を施すこととなるため、所望の型押し構造を高い精度で形成することが可能となる。
【0132】
次に、前駆体組成物層120’を全面アッシング処理することにより、図11(e)に示すように、ゲート電極120に対応する領域以外の領域に存在する残膜120’zを完全に除去する(第4工程)。第4工程はウェットエッチング装置を用いて行う。
【0133】
最後に、前駆体組成物層120’をRTA装置を用いて高温で(650℃、10分間)熱処理することにより、図11(f)に示すように、前駆体組成物層120’から、機能性固体材料層(酸化ニッケルランタン)からなるゲート電極120及びゲートパッド122を形成する(第5工程)。
【0134】
(2)ゲート絶縁層130の形成
まず、熱処理することにより金属酸化物セラミックス(PZT)からなる機能性固体材料となる機能性液体材料を準備する。具体的には、機能性液体材料として、金属アルコキシドを含有する溶液(三菱マテリアル株式会社製、PZTゾルゲル溶液)を準備する(第1工程)。
【0135】
次に、絶縁性基板110における一方の表面上に、スピンコート法を用いて上記した機能性液体材料を塗布し(例えば、2000rpm・25秒)、その後、絶縁体基板110をホットプレート上に置き250℃で5分間乾燥させる操作を3回繰り返すことにより、機能性固体材料(PZT)の前駆体組成物層130’(層厚300nm)を形成する(第2工程、図12(a)参照。)。
【0136】
次に、図12(b)及び図12(c)に示すように、スルーホール150に対応する領域が凸となるように形成された凹凸型M3(高低差300nm)を用いて、150℃で前駆体組成物層130’に対して型押し加工を施すことにより、前駆体組成物層130’にスルーホール150に対応する型押し構造を形成する(第3工程)。型押し加工を施すときの圧力は、5MPaとする。これにより、80℃〜300℃の範囲内にある第2温度に加熱することで高い塑性変形能力を得た前駆体組成物層に対して型押し加工を施すこととなるため、所望の型押し構造を高い精度で形成することが可能となる。
【0137】
次に、前駆体組成物層130’を全面アッシング処理することにより、図12(d)に示すように、後でチャネル領域142となる領域に存在する残膜130’zを完全に除去する(第4工程)。第4工程は、減圧プラズマエッチング装置を用いて、10Paの圧力条件の下で反応性ガス(例えばCF4ガス及びArガス)を導入しながら行う。
【0138】
最後に、前駆体組成物層130’をRTA装置を用いて高温で(650℃、10分間)熱処理することにより、図12(e)に示すように、前駆体組成物層130’から、機能性固体材料層(PZT)からなるゲート絶縁層130を形成する(第5工程)。
【0139】
(3)酸化物導電体層140の形成
まず、熱処理することにより金属酸化物セラミックス(ITO)からなる機能性固体材料となる機能性液体材料を準備する(第1工程)。具体的には、機能性液体材料として、金属カルボン酸塩を含有する溶液(株式会社高純度化学研究所製の機能性液体材料(商品名:ITO−05C)、原液:希釈液=1:1.5)を準備する。なお、当該機能性液体材料には、完成時にチャネル領域142のキャリア濃度が1×1015cm−3〜1×1021cm−3の範囲内になるような濃度の不純物が添加されている。
【0140】
次に、図12(f)に示すように、絶縁性基板110における一方の表面上に、スピンコート法を用いて上記した機能性液体材料を塗布し(例えば、2000rpm・25秒)、その後、絶縁体基板110をホットプレート上に置き150℃で3分間乾燥させることにより、機能性固体材料(ITO)の前駆体組成物層140’(層厚300nm)を形成する(第2工程)。
【0141】
次に、図13(a)〜図13(c)に示すように、ソース領域144に対応する領域及びドレイン領域146に対応する領域よりもチャネル領域142に対応する領域が凸となるように形成され凹凸型M4(高低差350nm)を用いて、前駆体組成物層140’に対して型押し加工を施すことにより、前駆体組成物層140’に型押し構造(凸部の層厚350nm、凹部の層厚100nm)を形成する(第3工程)。これにより、前駆体組成物層140’のうちチャネル領域142となる部分の層厚が他の部分よりも薄くなる。
【0142】
このとき、上記の工程においては、前駆体組成物層140’を150℃に加熱した状態で、かつ、150℃に加熱した型を用いて型押し加工を施すこととしている。この場合、型押し加工を施すときの圧力は、4MPa程度とする。
【0143】
なお、凹凸型M4は、チャネル領域142に対応する領域よりも素子分離領域160及びスルーホール150に対応する領域がさらに凸となるような構造を有しており、素子分離領域160及びスルーホール150に対応する領域には、前駆体組成物層140’の残膜140’zが形成されることとなる(図13(c)参照。)。
【0144】
次に、前駆体組成物層140’を全面アッシング処理することにより、図13(d)に示すように、素子分離領域160及びスルーホール150に対応する領域に存在する残膜140’zを完全に除去する(第4工程)。第4工程は、減圧プラズマエッチング装置を用いて、10Paの圧力条件の下で反応性ガス(例えばCF4ガス及びArガス)を導入しながら行う。
【0145】
最後に、前駆体組成物層140’に熱処理を施す(ホットプレート上で400℃・10分の条件で前駆体組成物層140’の焼成を行い、その後、RTA装置を用いて650℃・30分(前半15分酸素雰囲気、後半の15分窒素雰囲気)の条件で前駆体組成物層140’を加熱する)ことにより、ソース領域144、ドレイン領域146及びチャネル領域142を含む酸化物導電体層140を形成し(第5工程)、図13(e)に示すようなボトムゲート構造を有する、実施形態8に係る薄膜トランジスター100を製造することができる。
【0146】
3.実施形態8に係る薄膜トランジスター100の効果
実施形態8に係る薄膜トランジスター100によれば、チャネル領域142を構成する材料として酸化物導電性材料を用いているためキャリア濃度を高くすることができ、また、ゲート絶縁層130を構成する材料として強誘電体材料を用いているため低い駆動電圧で高速にスイッチングすることができ、その結果、従来の薄膜トランジスター900の場合と同様に、大きな電流を低い駆動電圧で高速に制御することが可能となる。
【0147】
また、実施形態8に係る薄膜トランジスター100によれば、チャネル領域142の層厚がソース領域144の層厚及びドレイン領域146の層厚よりも薄く、かつ、残膜の影響のない酸化物導電体層140を上記した型押し構造体の製造方法を用いて形成するだけで薄膜トランジスターを製造することが可能となるため、従来の薄膜トランジスター900の場合のようにチャネル領域とソース領域及びドレイン領域とを異なる材料から形成しなくてもよくなり、上記のように優れた薄膜トランジスターを、従来よりも大幅に少ない原材料及び製造エネルギーを用いて、かつ、従来よりも短工程で製造することが可能となる。
【0148】
また、実施形態8に係る薄膜トランジスター100によれば、酸化物導電体層140、ゲート電極120及びゲート絶縁層130はすべて、高真空プロセスを用いることなく形成されたものであるため、真空プロセスを用いることなしに薄膜トランジスターを製造することが可能となり、上記のように優れた薄膜トランジスターを、従来よりも大幅に少ない製造エネルギーを用いて、かつ、従来よりも短工程で製造することが可能となる。
【0149】
さらにまた、実施形態8に係る薄膜トランジスター100によれば、チャネル領域142のキャリア濃度及び層厚は、ゲート電極120にオフの制御電圧を印加したときに、チャネル領域142が空乏化するような値に設定されているため、酸化物導電体層のキャリア濃度を高くしたとしてもオフ時に流れる電流量を十分低くでき、必要なオンオフ比を維持しつつ大きな電流を低い駆動電圧で制御することが可能となる。
【0150】
[実施形態9]
図14は、実施形態9に係る圧電式インクジェットヘッド300を説明するために示す図である。図14(a)は圧電式インクジェットヘッド300の断面図であり、図14(b)及び図14(c)は圧電式インクジェットヘッド300がインクを吐出するときの様子を示す図である。
【0151】
1.実施形態9に係る圧電式インクジェットヘッド300の構成
実施形態9に係る圧電式インクジェットヘッド300は、図14(a)に示すように、キャビティ部材340と、キャビティ部材340の一方側に取り付けられ、圧電体素子320が形成された振動板350と、キャビティ部材340の他方側に取り付けられ、ノズル孔332が形成されたノズルプレート330と、キャビティ部材340、振動板350及びノズルプレート330によって画成されるインク室360とを備える。振動板350には、インク室360に連通しインク室360にインクを供給するためのインク供給口352が設けられている。
【0152】
実施形態9に係る圧電式インクジェットヘッド300によれば、図14(b)及び図14(c)に示すように、圧電体素子320に適宜の電圧を印加することにより、振動板350を一旦上方に撓ませて図示しないリザーバからインクをインク室360に供給した後、振動板350を下方に撓ませることにより、ノズル孔332を介してインク室360からインク滴iを吐出させる。これによって、被印刷物に鮮やかな印刷を行うことができる。
【0153】
2.実施形態9に係る圧電式インクジェットヘッドの製造方法
このような構造を有する圧電式インクジェットヘッド300は、圧電体素子320(第1電極層322、圧電体層324及び第2電極層326)及びキャビティ部材340がともに、本発明の型押し構造体の製造方法を用いて形成されたものである。以下、実施形態9に係る圧電式インクジェットヘッド300の製造方法を工程順に説明する。
【0154】
図15〜図17は、実施形態8に係る圧電式インクジェットヘッドの製造方法を説明するために示す図である。図15(a)〜図15(f)、図16(a)〜図16(d)及び図17(a)〜図17(e)は各工程図である。
【0155】
(1)圧電体素子320の形成
(1−1)第1電極層322の形成
まず、熱処理することにより金属酸化物セラミックス(酸化ニッケルランタン)からなる機能性固体材料となる機能性液体材料を準備する(第1工程)。具体的には、金属無機塩(硝酸ランタン(六水和物)及び酢酸ニッケル(四水和物))を含有する溶液(溶媒:2ーメトキシエタノール)を準備する。
【0156】
次に、図15(a)に示すように、ダミー基板310における一方の表面に、スピンコート法を用いて機能性液体材料を塗布し(例えば、500rpm・25秒)、その後、ダミー基板310をホットプレート上に置き60℃で1分間乾燥させることにより、機能性固体材料(酸化ニッケルランタン)の前駆体組成物層322’(層厚300nm)を形成する(第2工程)。
【0157】
次に、図15(b)に示すように、第1電極層322に対応する領域が凹となるように形成された凹凸型M8(高低差300nm)を用いて、150℃で前駆体組成物層322’に対して型押し加工を施すことにより、前駆体組成物層322’に型押し構造(凸部の層厚300nm、凹部の層厚50nm)を形成する(第3工程)。型押し加工を施すときの圧力は、5MPaとする。
【0158】
次に、前駆体組成物層322’を全面アッシング処理することにより、図15(c)に示すように、第1電極層322に対応する領域以外の領域に存在する残膜を完全に除去する(第4工程)。第4工程はウェットエッチング装置を用いて行う。
【0159】
最後に、前駆体組成物層322’をRTA装置を用いて高温で(650℃、10分間)熱処理することにより、図15(d)に示すように、前駆体組成物層326’から、機能性固体材料層(酸化ニッケルランタン)からなる第1電極層322を形成する(第5工程)。
【0160】
(1−2)圧電体層324の形成
まず、熱処理することにより金属酸化物セラミックス(PZT)からなる機能性固体材料となる機能性液体材料を準備する(第1工程)。具体的には、機能性液体材料として、金属アルコキシドを含有する溶液(三菱マテリアル株式会社製、PZTゾルゲル溶液)を準備する(第1工程)。
【0161】
次に、図15(e)に示すように、ダミー基板310における一方の表面上に、スピンコート法を用いて上記した機能性液体材料を塗布し、その後、ダミー基板310をホットプレート上に置き250℃で5分間乾燥させることにより、機能性固体材料(PZT)の前駆体組成物層324’(例えば層厚1μm〜10μm)を形成する(第2工程)。
【0162】
次に、図15(f)に示すように、圧電体層324に対応する領域が凹となるように形成された凹凸型M9(高低差500nm)を用いて、前駆体組成物層324’に対して型押し加工を施すことにより、前駆体組成物層324’に型押し構造(例えば凸部の層厚1μm〜10μm、凹部の層厚50nm)を形成する(第3工程)。
【0163】
このとき、上記の工程においては、前駆体組成物層324’を150℃に加熱した状態で、かつ、150℃に加熱した型を用いて型押し加工を施す。型押し加工を施すときの圧力は、4MPa程度とする。
【0164】
次に、前駆体組成物層324’を全面アッシング処理することにより、図15(g)に示すように、圧電体層324に対応する領域以外の領域に存在する残膜を完全に除去する(第4工程)。第4工程は、減圧プラズマエッチング装置を用いて、10Paの圧力条件の下で反応性ガス(例えばCF4ガス及びArガス)を導入しながら行う。
【0165】
最後に、前駆体組成物層324’をRTA装置を用いて高温で(650℃、10分間)熱処理することにより、図15(h)に示すように、前駆体組成物層324’から、機能性固体材料層(PZT)からなる圧電体層324を形成する(第5工程)。
【0166】
(1−3)第2電極層326の形成
まず、熱処理することにより金属酸化物セラミックス(酸化ニッケルランタン)からなる機能性固体材料となる機能性液体材料を準備する(第1工程)。具体的には、金属無機塩(硝酸ランタン(六水和物)及び酢酸ニッケル(四水和物))を含有する溶液(溶媒:2ーメトキシエタノール)を準備する。
【0167】
次に、図16(a)に示すように、ダミー基板310における一方の表面上に、スピンコート法を用いて機能性液体材料を塗布し(例えば、500rpm・25秒)、その後、ダミー基板310をホットプレート上に置き60℃で1分間乾燥させることにより、機能性固体材料(酸化ニッケルランタン)の前駆体組成物層326’(層厚300nm)を形成する(第2工程)。
【0168】
次に、図16(b)に示すように、第2電極層326に対応する領域が凹となるように形成された凹凸型M10(高低差300nm)を用いて、150℃で前駆体組成物層326’に対して型押し加工を施すことにより、前駆体組成物層326’に型押し構造(凸部の層厚300nm、凹部の層厚50nm)を形成する(第3工程)。型押し加工を施すときの圧力は、5MPaとする。
【0169】
次に、前駆体組成物層326’を全面アッシング処理することにより、図16(c)に示すように、第2電極層326に対応する領域以外の領域に存在する残膜を完全に除去する(第4工程)。第4工程はウェットエッチング装置を用いて行う。
【0170】
最後に、前駆体組成物層326’をRTA装置を用いて高温で(650℃、10分間)熱処理することにより、図16(d)に示すように、前駆体組成物層326’から、機能性固体材料層(酸化ニッケルランタン)からなる第2電極層326を形成する(第5工程)。これにより、第1電極層322,圧電体層324及び第2電極層326からなる圧電体素子320が完成する。
【0171】
(2)振動板350と圧電体素子320との貼り合わせ
図16(e)に示すように、インク供給口352を有する振動板350と圧電体素子320とを接着剤を用いて貼り合わせる。
【0172】
(3)キャビティ部材340の形成
まず、熱処理することにより金属酸化物セラミックス(石英ガラス)となる機能性液体材料を準備する(第1工程)。具体的には、機能性液体材料として、金属アルコキシド(イソプロピルシリケート(Si(OC3H7)4)を含有する溶液を準備する。
【0173】
次に、図17(a)に示すように、振動板350における一方の表面上に、スピンコート法を用いて上記した機能性液体材料を塗布し、その後、ダミー基板310をホットプレート上に置き150℃で5分間乾燥させることにより、機能性固体材料(石英ガラス)の前駆体組成物層340’(例えば層厚10μm〜20μm)を形成する(第2工程)。
【0174】
次に、図17(b)に示すように、インク室360等に対応する形状を有する凹凸型M11を用いて、前駆体組成物層340’に対して型押し加工を施すことにより、前駆体組成物層340’に型押し構造(例えば凸部の層厚10μm〜20μm、凹部の層厚50nm)を形成する(第3工程)。
【0175】
このとき、上記の工程においては、前駆体組成物層340’を150℃に加熱した状態で、かつ、150℃に加熱した型を用いて型押し加工を施す。型押し加工を施すときの圧力は、4MPa程度とする。
【0176】
次に、前駆体組成物層340’を全面アッシング処理することにより、図17(c)に示すように、キャビティ部材340を形成する領域以外の領域以外の領域に存在する残膜を完全に除去する(第4工程)。第4工程は、大気圧プラズマエッチング装置を用いて、大気圧条件の下で反応性ガス(例えばCF4ガス及びArガス)を導入しながら行う。
【0177】
最後に、前駆体組成物層340’をRTA装置を用いて高温で(650℃、10分間)熱処理することにより、図17(d)に示すように、前駆体組成物層340’から、機能性固体材料層(石英ガラス)からなるキャビティ部材340を形成する。
【0178】
(4)キャビティ部材340とノズルプレート330との貼り合わせ
図17(e)に示すように、キャビティ部材340と、ノズル孔332を有するノズルプレート330とを接着剤を用いて貼り合わせる。
【0179】
(5)ダミー基板310の取り外し
図17(f)に示すように、圧電体層320からダミー基板310を取り外す。これにより、実施形態9に係る圧電式インクジェットヘッド300が完成する。
【0180】
3.実施形態9に係る圧電式インクジェットヘッド300の効果
実施形態9に係る圧電式インクジェットヘッド300によれば、圧電体素子320(第1電極層322、圧電体層324及び第2電極層326)並びにキャビティ部材340が型押し成形技術を用いて形成されたものであるため、圧電式インクジェットヘッドを、従来よりも大幅に少ない原材料及び製造エネルギーを用いて、かつ、従来よりも短工程で製造することが可能となる。
【0181】
また、実施形態9に係る圧電式インクジェットヘッド300によれば、80℃〜300℃の範囲内にある第2温度で熱処理することで高い塑性変形能力を得た前駆体組成物層に対して型押し加工を施すことにより形成された、高い精度で形成された型押し構造を有する第1電極層、圧電体層、第2電極層及びキャビティ部材を備えるため、所望の性能を有する圧電式インクジェットヘッドとなる。
【0182】
また、実施形態9に係る圧電式インクジェットヘッド300によれば、圧電体素子320(第1電極層322、圧電体層324及び第2電極層326)並びにキャビティ部材340がともに、液体材料を用いて形成されたものであるため、型押し成形加工技術を用いて圧電式インクジェットヘッドを製造することが可能となり、上記のように優れた圧電式インクジェットヘッドを、従来よりも大幅に少ない原材料及び製造エネルギーを用いて製造することが可能となる。
【0183】
また、実施形態9に係る圧電式インクジェットヘッド300によれば、圧電体素子320(第1電極層322、圧電体層324及び第2電極層326)並びにキャビティ部材340がともに、高真空プロセスを用いることなく形成されたものであるため、上記のように優れた圧電式インクジェットヘッドを、従来よりも大幅に少ない製造エネルギーを用いて、かつ、従来よりも短工程で製造することが可能となる。
【0184】
また、実施形態9に係る圧電式インクジェットヘッド300によれば、キャビティ部材が大気圧プラズマ装置を用いて真空プロセスを用いることなしに製造されたものであるため、従来よりも大幅に少ない製造エネルギーを用いて、かつ、従来よりも短工程で製造することが可能となる。
【0185】
さらにまた、実施形態9に係る圧電式インクジェットヘッド300によれば、圧電体層及び/又はキャビティ部材が本発明の型押し構造体の製造方法を用いて形成されたものであるため、圧電式インクジェットヘッドを、残膜の影響のない型押し構造体として、従来よりも大幅に少ない原材料及び製造エネルギーを用いて、かつ、従来よりも短工程で製造することが可能となる。
【実施例】
【0186】
[実施例1]
実施例1は、反応性ガスを用いてアッシング処理を施すことにより、前駆体組成物層を完全に除去することができることを示す実施例である。
【0187】
図18は、実施例1におけるアッシング処理を説明するために示す図である。図18(a)〜図18(e)はアッシング処理の各工程図である。なお、図18(c)〜図18(e)のうち図18(c)はアッシング条件1におけるアッシング処理の結果を示す図であり、図18(b)はアッシング条件2におけるアッシング処理の結果を示す図であり、図18(c)はアッシング条件3におけるアッシング処理の結果を示す図である。
【0188】
図19は、実施例1におけるアッシング処理の結果を示す図である。横軸はアッシング時間を示し、縦軸は前駆体組成物層520に対してアッシング処理を施した後の前駆体組成物層の層厚を示す。なお、図19において、前駆体組成物層520の層厚がマイナスになっている領域においては、絶縁性基板510までエッチングされていることを示す。
【0189】
図20は、実施例1におけるアッシング処理の結果を示す図である。図20(a)はアッシング処理を施した部分とアッシング処理を施していない部分の境界部位におけるSEM写真を示す図であり、図20(b)は同境界部位におけるTi(チタン)の分布を示す図である。
【0190】
図21は、実施例1におけるアッシング処理の結果を示す図である。図21(a)はアッシング処理を施していない部分R1におけるEDXスペクトル(エネルギー分散型X線分光スペクトル)を示す図であり、図21(a)はアッシング処理を施した部分R2におけるEDXスペクトルを示す図である。
【0191】
実施例1においては、Si基板の表面にSiO2層を形成した絶縁性基板510上に、TiO2のゾルゲル溶液をスピンコート法により塗布して前駆体組成物層520を形成し、その後前駆体組成物層520が形成された絶縁性基板を200℃をホットプレート上で5分間乾燥したものを試料として用いた。絶縁性基板510のサイズ・形状としては、例えば、縦20mm×横20mm×高さ0.7mmの直方体のものを用いた。200℃乾燥後の前駆体組成物層520の層厚は、75nmである。
【0192】
その後、図18(a)に示すように、前駆体組成物層520の表面に耐熱性絶縁テープM20を部分的に貼り付けた後、図18(b)に示すように、前駆体組成物層520に対してアッシング処理を施した。反応性ガス(CF4ガス:流量0.1L/分)をキャリアガス(Heガス:流量9L/分)とともに流しながら前駆体組成物層520に対してアッシング処理を施すのをアッシング条件1とし、Arガス(流量0.1L/分)をキャリアガス(Heガス:流量9L/分)とともに流しながら前駆体組成物層520に対してアッシング処理を施すのをアッシング条件2とし、反応性ガス(CF4ガス:流量0.05L/分)及びArガス(流量0.05L/分)をキャリアガス(Heガス:流量9L/分)とともに流しながら前駆体組成物層520に対してアッシング処理を施すのをアッシング条件3とした。
【0193】
その後、アッシング条件1にてアッシング処理を施した試料について、前駆体組成物層320の表面から耐熱性絶縁テープM20を剥がした後、KLAテンコール株式会社製の段差計「Alpha Step−500」を用いて、前駆体組成物層320の表面からのエッチング量(段差)を測定した。また、日本電子株式会社製の走査電子顕微鏡/エネルギー分散型X線分析装置「JSM−5510」を用いて、アッシング処理を施した部分とアッシング処理を施していない部分の境界部位におけるSEM画像及び元素マッピング画像(Ti)を取得した。また、日本電子株式会社製の走査電子顕微鏡/エネルギー分散型X線分析装置「JSM−5510」を用いて、アッシング処理を施した部分とアッシング処理を施していない部分の境界部位におけるEDXスペクトル(エネルギー分散型X線分光スペクトル)を取得した。
【0194】
その結果、図18及び図19に示すように、アッシング条件1で前駆体組成物層520に対してアッシング処理を施した場合には、10分程度のアッシング時間で前駆体組成物層520を完全に除去可能であること及びアッシング時間を10分以上にしても絶縁性基板510はエッチングされないことが分かった(図18(c)及び図19参照。)。また、アッシング条件2で前駆体組成物層520に対してアッシング処理を施した場合には、3分程度のアッシング時間で前駆体組成物層520を完全に除去可能であることが分かった。但し、この場合、アッシング時間を5分以上にすると絶縁性基板510もエッチングされることがわかった(図18(d)及び図19参照。)。一方、アッシング条件3で前駆体組成物層520に対してアッシング処理を施した場合には、30分程度のアッシング時間では前駆体組成物層520を完全に除去することが困難であることが分かった(図18(e)及び図19参照。)。
【0195】
また、図20に示すように、アッシング処理を施した部分と施していない部分との間でSEM画像における明瞭な境界線が観測された(図20(a)参照。)。また、アッシング処理を施した部分においては、アッシング処理を施していない部分と比較して、観測されたTi(チタン)の量が大幅に低減されていることが確認された(図20(b)参照。)。
【0196】
また、図21に示すように、アッシング処理を施した部分R2においては、アッシング処理を施していない部分R1にて観測されたTiのピーク(4.6Kev及び4.9KeV)が観測されなかった(図21(a)及び図21(b)参照。)。
【0197】
[実施例2]
実施例2は、焼成前の前駆体組成物層に対してアッシング処理を施した場合には、焼成後の前駆体組成物層(金属酸化物層)に対してアッシング処理を施した場合よりも高速で前駆体組成物層又は金属酸化物層をエッチングすることができることを示す実施例である。
【0198】
図22は、実施例2におけるアッシング処理の結果を示す図である。図22(a)は焼成前の前駆体組成物層に対してアッシング処理を施した場合におけるアッシング処理の結果を示す図であり、図22(b)は焼成後の前駆体組成物層(金属酸化物層)に対してアッシング処理を施した場合におけるアッシング処理の結果を示す図である。
【0199】
実施例2においては、実施例1の場合と同様に、Si基板の表面にSiO2層を形成した絶縁性基板510上に、TiO2のゾルゲル溶液をスピンコート法により塗布して前駆体組成物層520を形成し、その後前駆体組成物層520が形成された絶縁性基板を200℃をホットプレート上で5分間乾燥したものを試料(試料1)として用いた。また、試料1をRTA装置により600℃で熱処理して焼成したものを試料(試料2)として用いた。
【0200】
その後、試料1及び試料2の表面に耐熱性絶縁テープM20を部分的に貼り付けた後、実施例1におけるアッシング条件3と同様の条件(反応性ガス(CF4ガス:流量0.05L/分)及びArガス(流量0.05L/分)をキャリアガス(Heガス:流量9L/分)とともに流しながらアッシング処理を施す条件)で試料1及び試料2に対してアッシング処理を施した。
【0201】
その後、試料1及び試料2の両方について、前駆体組成物層520の表面から耐熱性絶縁テープM20を剥がした後、KLAテンコール株式会社製の段差計「Alpha Step−500」を用いて、前駆体組成物層420の表面からのエッチング量を測定した。
【0202】
その結果、図22に示すように、焼成前の前駆体組成物層に対してアッシング処理を施した場合(図22(a)参照。)には、焼成後の前駆体組成物層(金属酸化物層)に対してアッシング処理を施した場合(図22(b)参照。)よりも高速で前駆体組成物層又は金属酸化物層をエッチング除去可能であることが分かった。
【0203】
[実施例3]
実施例3は、残膜を含む前駆体組成物層に対して所定のアッシング処理を施した場合に、当該残膜を完全に除去可能であることを示す実施例である。
【0204】
図23は、実施例3における評価方法を説明するために示す図である。図23(a)〜図23(d)はその手順を示す図である。図24は、実施例3におけるアッシング処理の結果(AFM画像又はSPM画像)を示す図である。図24(a)は、走査型プローブ顕微鏡(AFM又はSPM)による、アッシング処理を施した後における試料表面の3次元画像を示す図であり、図24(b)はその断面画像を示す図である。図25は、実施例3におけるアッシング処理の結果(I−V特性)を示す図である。図25中、符号Aは測定例1におけるI−V特性を示し、符号Bは測定例2におけるI−V特性を示す。
【0205】
実施例3においては、Si基板612の表面にPt層614を形成した基板610上に、TiO2のMOD溶液(0.4mol)をスピンコート法により塗布して(2000rpm、30秒)前駆体組成物層620を形成し、前駆体組成物層620が形成された基板610を150℃のホットプレート上で5分間乾燥したものを試料として用いた(図23(a)参照。)。基板610の寸法・形状としては、例えば、縦20mm×横20mm×高さ0.7mmの直方体のものを用いた。
【0206】
その後、10mm×10mmの正方形状の中央部に縦3μm×横3μm×高低差200nmの9個の正方形凹パターンが、縦横10μmピッチで3行3列のマトリクス状に配置された凹凸型を用いて、前駆体組成物層620に対して型押し加工(80℃→200℃→80℃、10MPa、5分)を施すことにより前駆体組成物層620に残膜622を含む型押し構造を形成した(図23(b)参照。)。
【0207】
その後、型押し構造が形成された前駆体組成物層620に対して大気圧プラズマによるアッシング処理(出力300W、時間3分、アッシングガス:He+Ar+CF4)を施すことにより残膜を処理した(図23(c)参照。)。
【0208】
その後、エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製の走査型プローブ顕微鏡「S−Image」を用いて、試料の表面の3次元画像及びその断面画像を取得した。また、図23(d)に示すI−V測定系を組んでI−V特性を測定した。
【0209】
その結果、図24からは、幅3μm、高さ170nmのきれいなパターンを形成可能であることが分かった。また、図24からは、測定例1(符号A参照。)においては極めて小さな電流しか流れなかったことから、前駆体組成物層620が高い絶縁性を有することが分かった(図25参照。)。また、測定例2(符号B参照。)においては極めて大きな電流が流れたことから、アッシング処理を施すことによって残膜622の存在していた領域630から残膜622がきれいに除去されていることが示唆された(図25参照。)。
【0210】
以上、本発明を上記の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において実施することが可能であり、例えば、次のような変形も可能である。
【0211】
(1)上記実施形態1〜4、6及び7においては「個々の残膜形成領域内において連続している残膜」を含む前駆体組成物層に対してアッシング処理を施すことにより残膜を完全に除去している。また、上記実施形態5においては「個々の残膜形成領域内において連続している残膜」を含む前駆体組成物層に対してアッシング処理を施すことにより、第5工程を実施することにより残膜が海島構造を取るようになる薄さまで残膜を薄くしている。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。
【0212】
図26は変形例に係る型押し構造体の製造方法を説明するために示す図である。図26(a)は第4工程で前駆体組成物層20に対してアッシング処理を施している最中の前駆体組成物層20の断面図であり、図26(b)は第4工程で前駆体組成物層20に対してアッシング処理を施した直後における前駆体組成物層20の断面図であり、図26(c)は第5工程で前駆体組成物層20を熱処理することにより形成された型押し構造体30の断面図である。
【0213】
変形例に係る型押し構造体の製造方法においては、図26(a)に示すように、第3工程においては、「個々の残膜形成領域内において連続していない残膜(例えば海島構造28を取る膜)」を含む型押し構造を形成するとともに(図26(a)参照。)とともに、第4工程においては、前駆体組成物層20に対してアッシング処理を施すことにより上記残膜を完全に除去するようにしてもよい(図26(a)〜図26(c)参照。)。
【0214】
(2)上記実施形態8においては薄膜トランジスターを例にとって本発明を説明し、上記実施形態9においては圧電式インクジェットヘッドを例にとって本発明を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、本発明は、第1電極層、誘電体層、第2電極層及び配線層を備える薄膜キャパシター、圧電体層、電極層及び配線層を備えるアクチュエーター、基材上に格子層(金属酸化物層又は金属層)を備える光学デバイス(例えば反射型偏光板、回折格子など)などを製造する際にも適用可能である。
【符号の説明】
【0215】
10,10a,10b…基材、12…第1基材、14…エッチングストッパとなる材料からなる層、20,20a…前駆体組成物層、22,22a,120’z,130’z,140’z…残膜、24…凹部、26,28…海島構造、30…型押し構造体、40,40a…アッシング装置、41,43…電極、42…正電極、44…負電極、100,900…薄膜トランジスター、110,910…絶縁性基板、120,920…ゲート電極、120’…前駆体組成物層(ゲート電極)、130,930…ゲート絶縁層、130’…前駆体組成物層(ゲート絶縁層)、140,…酸化物導電体層、140’…前駆体組成物層(酸化物導電性層)、142…チャネル領域、144…ソース領域、146…ドレイン領域、150…スルーホール、160…素子分離領域、300…圧電式インクジェットヘッド、310…ダミー基板、320…圧電体素子、322…第1電極層、324…圧電体層、326…第2電極層、330…ノズルプレート、332…ノズル孔、340…キャビティ部材、350…振動板、352…インク供給口、360…インク室、510…絶縁性基板、520…前駆体組成物層、522…残膜、610…基板、612…Si基板、614…Pt層、622…前駆体組成物層、622…残膜、630…残膜622の存在していた領域、940…チャネル層、950…ソース電極、960…ドレイン電極、M1,M2,M3,M4,M8,M9,M10,M11…凹凸型、M20…耐熱性絶縁テープ、P…プラズマ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属含有化合物を含有し熱処理することにより金属酸化物又は金属となる液体材料を準備する第1工程と、
基材上に前記液体材料を塗布することにより前記金属酸化物又は前記金属の前駆体組成物からなる前駆体組成物層を形成する第2工程と、
前記前駆体組成物層に対して凹凸型を用いて型押し加工を施すことにより前記前駆体組成物層に残膜を含む型押し構造を形成する第3工程と、
前記型押し構造が形成された前記前駆体組成物層に対して大気圧プラズマ又は減圧プラズマによるアッシング処理を施すことにより前記残膜を処理する第4工程と、
前記前駆体組成物層を熱処理することにより、前記型押し構造が形成された前記前駆体組成物層から前記金属酸化物又は前記金属からなる型押し構造体を形成する第5工程とをこの順序で含むことを特徴とする型押し構造体の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の型押し構造体の製造方法において、
前記第4工程においては、前記残膜を完全に除去することを特徴とする型押し構造体の製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載の型押し構造体の製造方法において、
前記第4工程においては、当該第4工程に続く前記第5工程を実施することにより前記残膜が海島構造を取るようになる薄さまで前記残膜を薄くすることを特徴とする型押し構造体の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の型押し構造体の製造方法において、
前記第4工程においては、前記型押し構造が形成された前記前駆体組成物層に対して大気圧プラズマによるアッシング処理を施すことを特徴とする型押し構造体の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかに記載の型押し構造体の製造方法において、
前記第4工程においては、前記型押し構造が形成された前記前駆体組成物層に対して減圧プラズマによるアッシング処理を施すことを特徴とする型押し構造体の製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載の型押し構造体の製造方法において、
0.1Pa以上の圧力の下で前記第4工程を実施することを特徴とする型押し構造体の製造方法。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の型押し構造体の製造方法において、
バイアス電圧を印加した状態で前記第4工程を実施することを特徴とする型押し構造体の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の型押し構造体の製造方法において、
反応性ガスを用いて前記第4工程を実施することを特徴とする型押し構造体の製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載の型押し構造体の製造方法において、
ハロゲン元素含有ガスを用いて前記第4工程を実施することを特徴とする型押し構造体の製造方法。
【請求項10】
請求項8に記載の型押し構造体の製造方法において、
ハロゲン元素含有ガス及びArガスを含有する混合ガスを用いて前記第4工程を実施することを特徴とする型押し構造体の製造方法。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載の型押し構造体の製造方法において、
前記第2工程と前記第3工程との間に、前記前駆体組成物層を80℃〜200℃の範囲内にある温度に加熱することにより前記前駆体組成物層の流動性を予め低くしておく予備加熱工程をさらに含み、
前記第3工程においては、前記前駆体組成物層を80℃〜300℃の範囲内にある温度に加熱した状態で、かつ、80℃〜300℃の範囲内にある温度に加熱した型を用いて前記前駆体組成物層に対して型押し加工を施すことにより、前記前駆体組成物層に型押し構造を形成することを特徴とする型押し構造体の製造方法。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれかに記載の型押し構造体の製造方法において、
前記第5工程においては、酸素含有雰囲気で熱処理することにより、金属酸化物からなる型押し構造体を形成することを特徴とする型押し構造体の製造方法。
【請求項13】
請求項1〜11のいずれかに記載の型押し構造体の製造方法において、
前記第5工程においては、還元雰囲気で熱処理することにより、金属からなる型押し構造体を形成することを特徴とする型押し構造体の製造方法。
【請求項14】
ゲート電極層、ゲート絶縁層、ソース層、ドレイン層、チャネル層及び配線層を備える薄膜トランジスターであって、
前記ゲート電極層、前記ゲート絶縁層、前記ソース層、前記ドレイン層、前記チャネル層及び前記配線層のうち少なくとも1つの層は、請求項1〜13のいずれかに記載の型押し構造体の製造方法により形成されたものであることを特徴とする薄膜トランジスター。
【請求項15】
ソース領域及びドレイン領域並びにチャネル領域を含む酸化物導電体層と、
前記チャネル領域の導通状態を制御するゲート電極と、
前記ゲート電極と前記チャネル領域との間に形成され強誘電体材料又は常誘電体材料からなるゲート絶縁層とを備え、
前記チャネル領域の層厚が前記ソース領域の層厚及び前記ドレイン領域の層厚よりも薄い薄膜トランジスターであって、
前記チャネル領域の層厚が前記ソース領域の層厚及び前記ドレイン領域の層厚よりも薄い前記酸化物導電体層は、請求項1〜13のいずれかに記載の型押し構造体の製造方法により形成されたものであることを特徴とする薄膜トランジスター。
【請求項16】
請求項15に記載の薄膜トランジスターにおいて、
前記チャネル領域のキャリア濃度及び層厚は、前記薄膜トランジスターがオフ状態のときに、前記チャネル領域全体が空乏化するような値に設定されていることを特徴とする薄膜トランジスター。
【請求項17】
第1電極層、誘電体層、第2電極層及び配線層を備える薄膜キャパシターであって、
前記第1電極層、前記誘電体層、前記第2電極層及び前記配線層のうち少なくとも1つの層は、請求項1〜13のいずれかに記載の型押し構造体の製造方法により形成されたものであることを特徴とする薄膜キャパシター。
【請求項18】
圧電体層、電極層及び配線層を備えるアクチュエーターであって、
前記圧電体層、前記電極層及び前記配線層のうち少なくとも1つの層は、請求項1〜13のいずれかに記載の型押し構造体の製造方法により形成されたものであることを特徴とするアクチュエーター。
【請求項19】
キャビティ部材と、
前記キャビティ部材の一方側に取り付けられ、圧電体層が形成された振動板と、
前記キャビティ部材の他方側に取り付けられ、ノズル孔が形成されたノズルプレートと、
前記キャビティ部材、前記振動板及び前記ノズルプレートによって画成されるインク室とを備える圧電式インクジェットヘッドであって、
前記圧電体層及び/又は前記キャビティ部材は、請求項1〜13のいずれかに記載の型押し構造体の製造方法により形成されたものであることを特徴とする圧電式インクジェットヘッド。
【請求項20】
基材上に格子層を備える光学デバイスであって、
前記格子層は、請求項1〜13のいずれかに記載の型押し構造体の製造方法により形成されたものであることを特徴とする光学デバイス。
【請求項1】
金属含有化合物を含有し熱処理することにより金属酸化物又は金属となる液体材料を準備する第1工程と、
基材上に前記液体材料を塗布することにより前記金属酸化物又は前記金属の前駆体組成物からなる前駆体組成物層を形成する第2工程と、
前記前駆体組成物層に対して凹凸型を用いて型押し加工を施すことにより前記前駆体組成物層に残膜を含む型押し構造を形成する第3工程と、
前記型押し構造が形成された前記前駆体組成物層に対して大気圧プラズマ又は減圧プラズマによるアッシング処理を施すことにより前記残膜を処理する第4工程と、
前記前駆体組成物層を熱処理することにより、前記型押し構造が形成された前記前駆体組成物層から前記金属酸化物又は前記金属からなる型押し構造体を形成する第5工程とをこの順序で含むことを特徴とする型押し構造体の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の型押し構造体の製造方法において、
前記第4工程においては、前記残膜を完全に除去することを特徴とする型押し構造体の製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載の型押し構造体の製造方法において、
前記第4工程においては、当該第4工程に続く前記第5工程を実施することにより前記残膜が海島構造を取るようになる薄さまで前記残膜を薄くすることを特徴とする型押し構造体の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の型押し構造体の製造方法において、
前記第4工程においては、前記型押し構造が形成された前記前駆体組成物層に対して大気圧プラズマによるアッシング処理を施すことを特徴とする型押し構造体の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかに記載の型押し構造体の製造方法において、
前記第4工程においては、前記型押し構造が形成された前記前駆体組成物層に対して減圧プラズマによるアッシング処理を施すことを特徴とする型押し構造体の製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載の型押し構造体の製造方法において、
0.1Pa以上の圧力の下で前記第4工程を実施することを特徴とする型押し構造体の製造方法。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の型押し構造体の製造方法において、
バイアス電圧を印加した状態で前記第4工程を実施することを特徴とする型押し構造体の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の型押し構造体の製造方法において、
反応性ガスを用いて前記第4工程を実施することを特徴とする型押し構造体の製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載の型押し構造体の製造方法において、
ハロゲン元素含有ガスを用いて前記第4工程を実施することを特徴とする型押し構造体の製造方法。
【請求項10】
請求項8に記載の型押し構造体の製造方法において、
ハロゲン元素含有ガス及びArガスを含有する混合ガスを用いて前記第4工程を実施することを特徴とする型押し構造体の製造方法。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載の型押し構造体の製造方法において、
前記第2工程と前記第3工程との間に、前記前駆体組成物層を80℃〜200℃の範囲内にある温度に加熱することにより前記前駆体組成物層の流動性を予め低くしておく予備加熱工程をさらに含み、
前記第3工程においては、前記前駆体組成物層を80℃〜300℃の範囲内にある温度に加熱した状態で、かつ、80℃〜300℃の範囲内にある温度に加熱した型を用いて前記前駆体組成物層に対して型押し加工を施すことにより、前記前駆体組成物層に型押し構造を形成することを特徴とする型押し構造体の製造方法。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれかに記載の型押し構造体の製造方法において、
前記第5工程においては、酸素含有雰囲気で熱処理することにより、金属酸化物からなる型押し構造体を形成することを特徴とする型押し構造体の製造方法。
【請求項13】
請求項1〜11のいずれかに記載の型押し構造体の製造方法において、
前記第5工程においては、還元雰囲気で熱処理することにより、金属からなる型押し構造体を形成することを特徴とする型押し構造体の製造方法。
【請求項14】
ゲート電極層、ゲート絶縁層、ソース層、ドレイン層、チャネル層及び配線層を備える薄膜トランジスターであって、
前記ゲート電極層、前記ゲート絶縁層、前記ソース層、前記ドレイン層、前記チャネル層及び前記配線層のうち少なくとも1つの層は、請求項1〜13のいずれかに記載の型押し構造体の製造方法により形成されたものであることを特徴とする薄膜トランジスター。
【請求項15】
ソース領域及びドレイン領域並びにチャネル領域を含む酸化物導電体層と、
前記チャネル領域の導通状態を制御するゲート電極と、
前記ゲート電極と前記チャネル領域との間に形成され強誘電体材料又は常誘電体材料からなるゲート絶縁層とを備え、
前記チャネル領域の層厚が前記ソース領域の層厚及び前記ドレイン領域の層厚よりも薄い薄膜トランジスターであって、
前記チャネル領域の層厚が前記ソース領域の層厚及び前記ドレイン領域の層厚よりも薄い前記酸化物導電体層は、請求項1〜13のいずれかに記載の型押し構造体の製造方法により形成されたものであることを特徴とする薄膜トランジスター。
【請求項16】
請求項15に記載の薄膜トランジスターにおいて、
前記チャネル領域のキャリア濃度及び層厚は、前記薄膜トランジスターがオフ状態のときに、前記チャネル領域全体が空乏化するような値に設定されていることを特徴とする薄膜トランジスター。
【請求項17】
第1電極層、誘電体層、第2電極層及び配線層を備える薄膜キャパシターであって、
前記第1電極層、前記誘電体層、前記第2電極層及び前記配線層のうち少なくとも1つの層は、請求項1〜13のいずれかに記載の型押し構造体の製造方法により形成されたものであることを特徴とする薄膜キャパシター。
【請求項18】
圧電体層、電極層及び配線層を備えるアクチュエーターであって、
前記圧電体層、前記電極層及び前記配線層のうち少なくとも1つの層は、請求項1〜13のいずれかに記載の型押し構造体の製造方法により形成されたものであることを特徴とするアクチュエーター。
【請求項19】
キャビティ部材と、
前記キャビティ部材の一方側に取り付けられ、圧電体層が形成された振動板と、
前記キャビティ部材の他方側に取り付けられ、ノズル孔が形成されたノズルプレートと、
前記キャビティ部材、前記振動板及び前記ノズルプレートによって画成されるインク室とを備える圧電式インクジェットヘッドであって、
前記圧電体層及び/又は前記キャビティ部材は、請求項1〜13のいずれかに記載の型押し構造体の製造方法により形成されたものであることを特徴とする圧電式インクジェットヘッド。
【請求項20】
基材上に格子層を備える光学デバイスであって、
前記格子層は、請求項1〜13のいずれかに記載の型押し構造体の製造方法により形成されたものであることを特徴とする光学デバイス。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図22】
【図23】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図20】
【図21】
【図24】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図22】
【図23】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図20】
【図21】
【図24】
【公開番号】特開2013−102072(P2013−102072A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−245360(P2011−245360)
【出願日】平成23年11月9日(2011.11.9)
【出願人】(503360115)独立行政法人科学技術振興機構 (1,734)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月9日(2011.11.9)
【出願人】(503360115)独立行政法人科学技術振興機構 (1,734)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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