説明

建設機械

【課題】嵩が高くなるのを抑制しつつ排気ガス後処理装置を配設することができる建設機械を提供すること。
【解決手段】油圧ポンプ7の上面はエンジン6の上面よりも低く配置されているとともに、作動油タンク8、燃料タンク9の少なくとも一方を有するタンク装置は油圧ポンプ7の上面と略同等の高さ又はそれ以下の高さとされた上面12bをもつ低背部12cを後部に有し、排気ガス後処理装置11は、低背部12c及び油圧ポンプ7の上側の位置に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの排気ガスを浄化するための排気ガス後処理装置を備えた建設機械に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、作業アタッチメントを起伏可能に支持するベースフレームと、このベースフレーム上に設けられたエンジンとを備えた建設機械が知られている。
【0003】
この種の建設機械において、近年では、エンジンの排気ガスを浄化するための排気ガス後処理装置をベースフレーム上に搭載することが望まれている。
【0004】
具体的に前記排気ガス後処理装置は、エンジンの排気ガス中に含まれる煤やミストなどの粉塵の量を減少させるためのDPF(Diesel Particulate Filter)や、排気ガス中に含まれるNox量を減少させるための還元触媒を有するものである(例えば、特許文献1及び2)。
【特許文献1】特開2003−90214号公報
【特許文献2】特開2003−120277号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記ベースフレーム上には元々エンジン及びその周辺機器(油圧系統等)が平面的に密集してレイアウトされているため、当該ベースフレーム上に平面的なスペースとして排気ガス後処理装置を配設するためのスペースを新たに確保するのは困難であり、ベースフレームの上方に新たなスペースを確保すると建設機械自体が嵩の高いものとなってしまう。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、嵩が高くなるのを抑制しつつ排気ガス後処理装置を配設することができる建設機械を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、作業アタッチメントを起伏可能に支持するベースフレームと、このベースフレーム上に設けられたエンジンとを有する建設機械であって、前記エンジンの動力により作動可能となるように当該エンジンと左右方向に連結された油圧ポンプと、この油圧ポンプの前方に設けられ、作動油タンク、燃料タンクの少なくとも一方を有するタンク装置と、前記エンジンの排気ガスを浄化するための排気ガス後処理装置とを備え、前記油圧ポンプの上面はエンジンの上面よりも低く配置されているとともに、前記タンク装置は油圧ポンプの上面と略同等の高さ又はそれ以下の高さの上面を持つ低背部を少なくとも後部に有し、前記排気ガス後処理装置は、前記低背部及び油圧ポンプの上側の位置に設けられていることを特徴とする建設機械を提供する。
【0008】
本発明によれば、油圧ポンプの上面と略同等の高さ又はそれ以下の高さの上面を持つ低背部及び油圧ポンプの上側の位置に排気ガス後処理装置を設けているため、エンジンやタンク装置の上に排気ガス後処理装置をそのまま配置する場合と比較して、建設機械全体の高さを低く抑えることができる。
【0009】
なお、本発明において、「低背部を少なくとも後部に有する」とは、タンク装置の上面全体が油圧ポンプの上面と略同等の高さ又はそれ以下の高さとされ、タンク装置全体が低背部とされた構成を含む趣旨である。
【0010】
前記建設機械において、前記油圧ポンプの後方に設けられたカウンタウェイトをさらに備え、前記油圧ポンプの上面はカウンタウェイトの上面よりも低く配置されているとともに、前記排気ガス後処理装置は、前記低背部の前端部と前記カウンタウェイトの前面との間の領域内で、前記低背部及び油圧ポンプの上側の位置に設けられていることが好ましい。
【0011】
このようにすれば、油圧ポンプの上面と略同等の高さ又はそれ以下の高さの上面を持つ低背部の前端部とカウンタウェイトの前面との間の領域内で、低背部及び油圧ポンプの上側の位置に排気ガス後処理装置を設けている、つまり、カウンタウェイト、エンジン及びタンク装置の間にはめ込むようにして排気ガス後処理装置を配置することができる。
【0012】
前記建設機械において、前記カウンタウェイトの前面には、他の部分より後退する凹部が形成され、前記排気ガス後処理装置は、前記凹部が形成された部分における前記カウンタウェイトの前面と前記低背部の前端部との間に設けられていることが好ましい。
【0013】
この構成によれば、凹部として窪ませた分だけ、カウンタウェイトの前面から低背部の前端部までの前後範囲を広げることができるので、凹部を形成しない場合と比較して、より前後に大きな排気ガス後処理装置を配設することが可能となる。
【0014】
さらに、前記構成では、排気ガス後処理装置の配置に必要な箇所に凹部を形成し、それ以外の部分のカウンタウェイトをそのままの形態で維持することができるので、上述のように建設機械の高さの維持を図りながら、カウンタウェイトに要求される重量を確保することができる。
【0015】
前記タンク装置の全体を低背部としてもよいが、前記タンク装置は、前記油圧ポンプの上面よりも高い部分である高背部を、前記低背部の前側に有していることが特に好ましい。
【0016】
この構成によれば、排気ガス後処理装置を配置するのに必要な範囲を低背部としながら、それ以外の部分を高背部として残すことができるので、タンク容量を維持しながら、排気ガス後処理装置を適切に配置することができる。
【0017】
また、前記構成では、タンク装置の全体を低背部として当該タンク装置の上面全体が排ガス後処理装置により覆われる場合と異なり、タンク装置の上面に排ガス後処理装置から開放された部分(すなわち、高背部)を残すことができるため、この高背部に作動油や燃料の注入口を設けることにより、これらの注入作業を容易に行うことができる。
【0018】
なお、タンク装置のうちの作動油タンクに高背部を形成した場合には、当該作動油タンクから油圧機器に作動油を供給する際に当該作動油中に空気が入り込むのを抑制することができる。
【0019】
つまり、作動油タンクから作動油を導出する場合、通常は作動油タンクの下部の吸引口から作動油を吸い出すようにしているが、作動油タンク全体を低背部とした場合には作動油の液面と吸引口との落差が小さくなるため、建設機械が少し傾いただけでも吸引口が作動油タンク内の空気層に開放されてしまうことがあるのに対し、前記構成のように、作動油タンクの前部に高背部を形成することによりその内部まで液面を引き上げることができるので、建設機械の傾斜時に作動油中に空気が入り込むのを抑制することができる。
【0020】
前記建設機械において、前記排気ガス後処理装置は、前記エンジンの排気中の粉塵を捕集可能なフィルタを有する第一処理部と、尿素を還元剤とする触媒を利用して前記排気中の窒素酸化物を分解することが可能な第二処理部とを備えていることが好ましい。
【0021】
この構成によれば、1つの排気ガス後処理装置において煤やミストなどの粉塵と窒素酸化物(Nox)との双方を除去することが可能となる。
【0022】
前記建設機械において、前記第二処理部に供給可能となるように尿素水を収納する尿素水タンクをさらに備え、この尿素水タンクは、前記排気ガス後処理装置と前後に並べて配置されている構成とすることもできる。
【0023】
この構成によれば、触媒としての尿素水を供給するための尿素水タンクを配設するに当たり、当該尿素水タンクも油圧ポンプ及び低背部の上側に配置することができ、建設機械の高さを低く抑えることができる。
【0024】
前記建設機械において、前記排気ガス後処理装置の前後端部のうち前記尿素水タンクに隣接する側の端部から当該尿素水タンク側へ突出するとともに当該排気ガス後処理装置を前記ベースフレームに支持させるための左右一対の取付部をさらに備え、これら取付部同士の間隔が前記尿素水タンクの左右寸法よりも広くされていることが好ましい。
【0025】
この構成によれば、尿素水タンクを排気ガス後処理装置の前又は後ろに並べて配設するために必要となる前後方向のスペースを利用して、当該尿素水タンクの左右両側に取付部を設けることができるため、取付部を設けるためだけに余分なスペースを浪費するのを抑制することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、嵩が高くなるのを抑制しつつ排気ガス後処理装置を配設することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照して説明する。
【0028】
図1は、本発明の実施形態に係る油圧ショベルの上部旋回体の基本的構成を示す分解斜視図である。図2は、図1の平面図である。図3は、図1の油圧ショベルに排ガス後処理装置を搭載した状態を示す右側面図である。
【0029】
図1〜図3を参照して、油圧ショベル1は、クローラ式の下部走行体(図示せず)と、この下部走行体上に旋回可能に搭載された上部旋回体2と、この上部旋回体2に対して起伏可能に支持された作業アタッチメント3(図2参照)とを備えている。
【0030】
上部旋回体2は、前記下部走行体上に設けられたベースフレーム4と、このベースフレーム4上に設けられたキャビン5、エンジン6、油圧ポンプ7、作動油タンク8、燃料タンク9、カウンタウェイト10、排気ガス後処理装置11(図4参照)、ケーシング28及び取付部20〜28とを備えている。なお、前記キャビン5内の運転席(図示せず)に着座する乗員から見た前後及び左右方向を上部旋回体2の前後及び左右方向として以下説明する。
【0031】
ベースフレーム4には、前後方向に延びる左右一対の縦板4a、4bが左右方向の略中央位置に立設されている。これら縦板4a、4bの前部同士の間には、前記作業アタッチメント3が支持されている。また、左側の縦板4aの左前位置には、前記キャビン5が設けられている。
【0032】
エンジン6は、その長手方向を左右方向に向けた横向きの姿勢で前記縦板4a、4bを跨るようにベースフレーム4の後部に設けられている。エンジン6の右端部は、概ね右側の縦板4b上に配置されている。
【0033】
油圧ポンプ7は、前記エンジン6の動力により作動可能となるように当該エンジン6に対し左右方向に連結されている。具体的に、前記エンジン6の右端面には右方向に突出する出力軸(図示せず)が設けられ、この出力軸と油圧ポンプ7の左右方向に延びる入力軸(図示せず)とが互いにカップリング等を介して連結されている。その結果、油圧ポンプ7は、右側の縦板4bの上から当該縦板4bの右側の範囲に配置されることとなる(図2参照)。
【0034】
さらに、油圧ポンプ7の上面位置は、図3に示すように、エンジン6の上面位置よりも寸法D1だけ、カウンタウェイト10の上面位置よりも寸法D2だけ低く配置されている。そして、詳しくは後述するが、本実施形態ではエンジン6及びカウンタウェイト10と油圧ポンプ7との間の落差を利用して、排気ガス後処理装置11を配置するようになっている。
【0035】
本実施形態において、作動油タンク8と燃料タンク9とは、右側の縦板4bの右側位置で前後一列に並べて配設されてタンク装置を構成している。つまり、燃料タンク9が前、作動油タンク8が後ろに配設されており、その結果、作動油タンク8が油圧ポンプ7に隣接して当該油圧ポンプ7の前方に配置されている。
【0036】
この作動油タンク8は、タンク本体12と、このタンク本体12に固定されたブラケット14及びブラケット15とを備えている。
【0037】
タンク本体12は、その前部が後述するカウンタウェイト10の高さと略同等となる高さとされた高背部12aとされている一方、その後部が前記油圧ポンプ7の上面よりも若干低い高さとされた上面12bを有する低背部12cとされ、全体として側面視でL字形状とされている。
【0038】
本実施形態においては、図3に示すように、前記低背部12cの前端部である高背部12aの後面からカウンタウェイト10の前面までの距離D3は、後述する排気ガス後処理装置11の前後寸法D4(本実施形態では排気ガス後処理装置11を収納するケーシング28の前後寸法D4)よりも大きくなるように、前記上面12bの前後範囲が設定されている。
【0039】
ブラケット14は、L字型に曲げ加工が施された金属板であり、その上面が前記油圧ポンプ7の上面位置よりも若干上方の位置となるようにタンク本体12の上面12bに固定されている。
【0040】
一方、ブラケット15は、図5に示すように、L字型に曲げ加工が施された金属板であり、前記高背部12aと低背部12cとに跨るようにタンク本体12の左側面に固定されている。また、ブラケット15は、その上面が前記ブラケット14の上面と同じ高さ位置、かつ、同じ前後位置となるようにタンク本体12に固定されている。
【0041】
図1〜図3を参照して、カウンタウェイト10は、前記油圧ポンプ7の後方に配置されている。また、カウンタウェイト10は、ウェイト本体18と、このウェイト本体18の前面に固定されたブラケット16及びブラケット17とを備えている。
【0042】
ブラケット16は、前記ブラケット14と前後に相対向する位置に設けられ、L字型に曲げ加工が施された金属板である。このブラケット16は、その上面が前記ブラケット14の上面と同じ高さ位置となるようにウェイト本体18に取り付けられている。
【0043】
ブラケット17は、前記ブラケット15と前後に相対向し、かつ、前記ブラケット16と左右に並んで配置されている点を除き、前記ブラケット16と同一の構成であるため、ここでは説明を省略する。
【0044】
図4は、図3に示す排気ガス後処理装置11の平面一部略図である。
【0045】
図2〜図4を参照して、排気ガス後処理装置11は、エンジン6の排気通路に接続された第一処理部25と、この第一処理部25から排出されたガスを受け入れるとともに排気筒27を通して排出する第二処理部26とを備えている。
【0046】
第一処理部25は、エンジン6の排気ガス中における煤やミストを除去するためのフィルタ(Diesel Particulate Filter :以下DPFと称す。図示せず)を有している。このDPFは、内部に流通した排気ガス中の煤等を捕集する能力を有する一方、捕集された粉塵を高温で焼却することにより、前記捕集能力を再生することが可能となっている。
【0047】
第二処理部26は、エンジン6の排気ガス中におけるNoxを除去するための触媒層を有している。この触媒層は、尿素水が噴霧された状態にある排気ガスを内部に通過させることにより、いわゆる脱硝反応を生じさせて、排気ガス中の窒素酸化物(Nox)を窒素と酸素と水に分解するようになっている。つまり、触媒層は、尿素を還元剤とするものである。
【0048】
図4に示すように、本実施形態では、第一処理部25が右に、第二処理部26が左に配置されているが、これら処理部25、26を逆に配置することもできる。このようにすれば、第一処理部25とエンジン6とを近づけて両者を接続する配管を短くすることができるとともに、配管が短くなる結果、第一処理部25に送られる排気ガスの温度をより高く保持することができるので、当該第一処理部25の処理効率を上昇させることもできる。
【0049】
ケーシング28は、前記各処理部25、26を収納するとともに、前記エンジン6と作動油タンク8とカウンタウェイト10との間にはめ込むことができる大きさの平面形状(長方形)とされている。具体的に、ケーシング28の左右幅寸法は、前記エンジン6とベースフレーム4の右縁部(つまり、上部旋回体2の側面を構成するガードパネル)との間隔よりも若干小さく設定されているとともに、ケーシング28の前後寸法D4は、カウンタウェイト10の前面からタンク本体12の高背部12aの後面までの前後寸法D3よりも小さく設定されている。
【0050】
取付部20〜23は、それぞれ上方へ開くコの字型となるように曲げ加工が施された金属板である。また、取付部20〜23は、前記各ブラケット14〜17に対応する位置となるように、前記ケーシング28から左右外側に突出して形成されている。
【0051】
具体的に、取付部20はブラケット14に取付可能となるようにケーシング28の右側面から右に延び、取付部21はブラケット15に取付可能となるようにケーシング28の左側面から左に延び、取付部22はブラケット16に取付可能となるようにケーシング28の右側面から右に延び、取付部23はブラケット17に取付可能となるようにケーシング28の左側面から左に延びている。
【0052】
前記各取付部20〜23をブラケット14〜17に対してボルト等によって取り付けることにより、図3に示すように、エンジン6と油圧ポンプ7との落差D1を有効に利用して、エンジン6と作動油タンク8(高背部12a)とカウンタウェイト10との間に排気ガス後処理装置11をはめ込んで固定することができる。なお、本実施形態ではケーシング28を有する構成について説明しているが、ケーシング28を省略することもできる。ただし、この場合には、第一処理部25及び第二処理部26のそれぞれを直接ベースフレーム4上に取り付けることが必要となる。
【0053】
以上説明したように、前記実施形態によれば、油圧ポンプ7の上面より低い高さとされた低背部12c及び油圧ポンプ7の上側位置に排気ガス後処理装置11を設けているため、エンジン6や作動油タンク7の上に排気ガス後処理装置11をそのまま配置する場合と比較して、油圧ショベル1全体の高さを低く抑えることができる。
【0054】
前記実施形態では、油圧ポンプ7の上面より低い高さとされた低背部12cの前端部からカウンタウェイト10の前面までの前後範囲D3で、低背部12c及び油圧ポンプ7の上側位置に排気ガス後処理装置11を設けている、つまり、カウンタウェイト10、エンジン6及び作動油タンク8の間に排気ガス後処理装置11をはめ込むことができる。
【0055】
また、前記実施形態では、タンク本体12に低背部12cと高背部12aとが一体に設けられているため、作動油タンク8から油圧機器(油圧シリンダ、油圧モータ等)に作動油を供給する際に当該作動油中に空気が入り込むのを抑制することができる。
【0056】
つまり、作動油タンク8から作動油を導出する場合、通常は作動油タンク8の下部の吸引口(図示せず)から作動油を吸い出すようにしているが、作動油タンク8全体を低く形成した場合には作動油の液面と吸引口との落差が小さくなるため、油圧ショベル1が少し傾いただけでも吸引口が作動油タンク8内の空気層に開放されてしまうことがあるのに対し、前記構成のように、タンク本体12の前部に高背部12aを残すことによりその内部まで液面を引き上げることができるので、油圧ショベル1の傾斜時に作動油中に空気が入り込むのを抑制することができる。
【0057】
また、前記実施形態では、排気ガス後処理装置11から左右外側に取付部20〜23が突出した構成としているため、排気ガス後処理装置11を配置するための前後寸法を大きくすることなく取付部20〜23を形成することができる。
【0058】
さらに、排気ガス後処理装置11を配置するのに必要な範囲D3を得るのに必要な範囲を低背部12cとしながら、それ以外の部分を高背部12aとして残しているので、タンク容量を維持しながら、排気ガス後処理装置11を適切に配置することができる。
【0059】
以下、本発明の別の実施形態について図6〜図8を参照して説明する。図6は、本発明の別の実施形態に係る油圧ショベルの側面一部略図である。図7は、図6の油圧ショベルの平面図である。図8は、図6の作動油タンクの斜視図である。なお、前記実施形態と同様の構成について同一の符号を付してその説明を省略する。
【0060】
本実施形態では、前記取付部20〜23に代えて、ケーシング28の前端面から前に突出する左右一対の突出取付部30、31と、ケーシング28の後端面から後ろに突出する左右一対の突出取付部32、33とをそれぞれ有している点、作動油タンク8がタンク本体12の上面12bに左右一対のブラケット34、35を有している点、カウンタウェイト10の前面に他の部分より後退する凹部38が形成されているとともに、この凹部38内に突出取付部32、33を固定するための雌ねじ部36、37を有している点が前記実施形態と相違する。
【0061】
つまり、本実施形態では、突出取付部30〜33を排気ガス後処理装置11から前後方向に突出させている分だけ、排気ガス後処理装置11を配置するための左右寸法が小さくされている。そのため、ブラケット34、35は、図8に示すように、それぞれタンク本体12の上面12b上に設けられている。
【0062】
反対に、突出取付部30〜33の存在により排気ガス後処理装置11の前後寸法D5は、上面12bの前端部である高背部12aの後面からカウンタウェイト10の前面までの距離D3(図3参照)よりも大きくなっている。そこで、本実施形態では、凹部38が形成された部分における前記カウンタウェイト10の前面38aから高背部12aの後面までの前後寸法D6が排気ガス後処理装置11の前後寸法D5よりも大きく設定されている。したがって、作動油タンク8のタンク容量を維持しながら、排気ガス後処理装置11を作動油タンク8とカウンタウェイト10との間にはめ込むことが可能となる。
【0063】
また、前記各実施形態では、排気ガス後処理装置11の第二処理部26(図4及び図7参照)として尿素を還元剤とする触媒を利用するものを例に挙げて説明しているが、この尿素を提供するためには尿素水タンクを設ける必要がある。
【0064】
そこで、図9及び図10に示すように、尿素水タンク39を、前記高背部12aの後面から凹部38が形成された部分におけるカウンタウェイト10の前面38aまでの前後範囲内に、排気ガス後処理装置11と前後に並べて配置することができる。このようにすれば、尿素水タンク39を配設するに当たり、尿素水タンク39もカウンタウェイト10、エンジン6及び作動油タンク8の間にはめ込むことができ、油圧ポンプ1の高さを低く抑えることができる。
【0065】
さらに、図6〜図8に示す実施形態のように突出取付部30〜33を設けた構成においては、図9に示すように、突出取付部30、31同士の間、つまり、タンク本体12の上面12b上に尿素水タンク39を設けることや、図10に示すように、突出取付部32、33同士の間、つまり、カウンタウェイト10の凹部38内に尿素水タンク39を設けることができる。
【0066】
ここで、このように尿素水タンク39を設けるためには、凹部38が形成された部分におけるカウンタウェイト10の前面38aから高背部12aの後面までの前後寸法D6が尿素水タンク39と排気ガス後処理装置11とを前後に並べたときの前後の合算寸法D7(本実施形態ではケーシング28と突出取付部30〜33と尿素水タンク39とを前後に並べた寸法)よりも大きく設定されている必要がある。
【0067】
さらに、図9の場合には、突出取付部30、31同士の間の間隔が尿素水タンク39の左右寸法よりも大きいことが必要である。また、図10の場合には、突出取付部32、33同士の間の間隔が尿素水タンク39の左右寸法よりも大きいことが必要である。
【0068】
なお、前記図1〜図5は排気ガス後処理装置11から左右方向に突出する取付部20〜23のみを開示する一方、図6〜図10は排気ガス後処理装置11から前後方向に突出する突出取付部30〜33のみを開示しているが、図11に示すように、ケーシング28の後端側面からは左右方向に一対の取付部40、41が突出し、ケーシング28の前端面からは前方に一対の突出取付部42、43が突出する構成とすることもできる。
【0069】
この実施形態においても、カウンタウェイト10の前面からタンク本体12の高背部12aの後面までの距離D3が、ケーシング28の後端面から突出取付部42、43の前端部までの前後寸法D8よりも大きくなるように、タンク本体12の上面12bの前後範囲を設定することが必要である。このようにすれば、排気ガス後処理装置11を作動油タンク8とカウンタウェイト10との間にはめ込むことができる。
【0070】
さらに、図11の実施形態においても、左右の突出取付部42、43同士の間に尿素水タンク39を配置することもできる。この場合、カウンタウェイト10の前面からタンク本体12の高背部12aの後面までの距離D3が、尿素水タンク39と排気ガス後処理装置11とを前後に並べたときの前後寸法D9(本実施形態ではケーシング28と突出取付部42、43と尿素水タンク39とを前後に並べた寸法)よりも大きくなるように、タンク本体12の上面12bの前後範囲を設定することが必要である。
【0071】
なお、前記各実施形態では、作動油タンク8の後部に高背部12aを設けた構成について説明したが、図12に示すように、作動油タンク8の上面全体を油圧ポンプ7の上面よりも低い高さとして、当該作動油タンク8の全体を低背部12cとすることもできる。
【0072】
つまり、この実施形態では、作動油タンク8の全体が低背部12cとされているとともに、この作動油タンク8の前に位置する燃料タンク9の高さがカウンタウェイト10の高さと略同等とされている。その結果、この燃料タンク9の後面が低背部12cの前端部を構成することになる。
【0073】
そして、この実施形態では、低背部12cの前端部である燃料タンク9の後面とカウンタウェイト10の前面との前後範囲で、エンジン6と燃料タンク9とカウンタウェイト10との間に排気ガス後処理装置11がはめ込まれている。
【0074】
この実施形態によれば、上述した各実施形態と比較して、作動油タンク8の高背部12a(図3参照)を省略した分だけさらに前後に長い排気ガス後処理装置11を配置することができる。
【0075】
また、図12に示す実施形態では、燃料タンク9を高背部とする構成について説明しているが、高背部を必ずしも設ける必要はない。図示は省略するが、作動油タンク8及び燃料タンク9(つまり、タンク装置)の上面全体を油圧ポンプ7の上面と同等又はこれよりも低い位置として、これら作動油タンク8及び燃料タンク9(つまりタンク装置)の上面全体を覆うようにして排気ガス後処理装置11を配設することもできる。
【0076】
このように構成した場合には、低背部(作動油タンク8及び燃料タンク9の全体)の前端である燃料タンク9の前縁部とカウンタウェイト10の前面との前後範囲で、さらに前後に長い排気ガス後処理装置11を配置することが可能となる。
【0077】
そして、上述した各実施形態においては、燃料タンク9を前、作動油タンク8を後ろに配置した構成について説明したが、これらのタンク8、9の配置を逆転させて、作動油タンク8を前、燃料タンク9を後ろに配置した場合にも上記と同様に低背部を燃料タンク9、又は燃料タンク9及び作動油タンク8に設けることが可能である。
【0078】
一方、図13に示すように、作動油タンク8と燃料タンク9とを左右に並べて、これら作動油タンク8及び燃料タンク9のそれぞれに低背部44aと高背部44bとを設けることも可能である。作動油タンク8及び燃料タンク9の低背部44aの上面は、それぞれ前記各実施形態と同様に、油圧ポンプ7の上面と略同等又はこれより低い高さとされている。
【0079】
この実施形態における排気ガス後処理装置11は、各低背部44aの前端である高背部44bの後面とカウンタウェイト10の前面との前後範囲で、エンジン6と作動油タンク8及び燃料タンク9とカウンタウェイト10との間にはめ込まれている。
【0080】
この実施形態では、作動油タンク8と燃料タンク9のそれぞれに低背部44aを設けることとしているため、両タンク8、9のうちの一方にのみ低背部44aを形成する場合と異なり、一方のタンクの容量を極端に減らす必要がなくなる。
【0081】
そして、この実施形態のように作動油タンク8と燃料タンク9とを左右に並べた場合においても、これらのタンク8、9の上面全体を油圧ポンプ7の上面と略同等又はこれよりも低い高さとして、当該各タンク8、9の上面全体を覆うように排気ガス後処理装置11を配置することも可能である。
【0082】
なお、前記各実施形態では、排気ガス後処理装置11から左右又は前後に突出する取付部20〜23、30〜33、40〜43を有する構成について説明したが、ケーシング28の下面に取付部を設けた構成とすることもできる。
【0083】
このようにすれば、平面的なレイアウトにおいて、取付部と他の構成とが干渉することなく排気ガス後処理装置11をベースフレーム4上に設けることができる。
【0084】
さらに、前記実施形態では、排気ガス後処理装置11をベースフレーム4に支持させるために、排気ガス後処理装置11をカウンタウェイト10及び作動油タンク8に固定する構造を説明したが、ベースフレーム4上に取付部材を直接設けて、この取付部材に排気ガス後処理装置11を固定することも可能である。
【0085】
例えば、図14に示す取付部材45は、後方から見て下方に開くコの字型となるように両端が下方に曲げられた板部材であり、カウンタウェイト10の前面に沿った姿勢で、ベースフレーム4上に設けられている。
【0086】
具体的に、取付部材45の左右一対の脚部45aはベースフレーム上に立設され、この状態において脚部45aの上部同士を繋ぐ天板部45bは略水平に配置される。この天板部45bは、その左右両端の上に載置された上記排気ガス後処理装置11の取付部22、23をボルト等によって固定可能に構成されている。したがって、この取付部材45によって排気ガス後処理装置11の後部を支持することができる。
【0087】
なお、図14では、排気ガス後処理装置11の後端部を支持する取付部材45をカウンタウェイト10の前に設けた構成について説明しているが、図15に示すように、排気ガス後処理装置11の前部を支持するための取付部材46を油圧ポンプ7の前であって作動油タンク8の後ろに設けることもできる。このようにすれば、作動油タンク8の低背部12cの上面12bと排気ガス後処理装置11との間に取付部を設けることが不要となる分、低背部12cを高くすることができるため、タンク容量を大きくすることができる。
【0088】
なお、取付部材45、46の双方を設けることに限定する趣旨ではなく、取付部材46を設けて前記取付部材45を省略し、排気ガス後処理装置11の後端部をカウンタウェイト10に支持させることもできる。
【0089】
また、前記実施形態では、第一処理部25及び第二処理部26が、ガスの流れ方向を前後方向に沿わせるように配置された構成について説明したが、ガスの流れ方向を左右方向に沿わせるように両処理部25、26を配置することもできる。例えば、第一処理部25及び第二処理部26の流路を短くする場合、処理能力を維持するためには断面積の拡大が必要となり両処理部25、26を太くて短いものにする必要があるが、このような場合にガスの流れ方向を左右方向に沿わせるように両処理部25、26を配置することにより、左右方向にスペースが制限されている場合であっても低背部上のスペースを利用して当該各処理部25、26を配設することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明の実施形態に係る油圧ショベルの上部旋回体の基本的構成を示す分解斜視図である。
【図2】図1の平面図である。
【図3】図1の油圧ショベルに排ガス後処理装置を搭載した状態を示す右側面図である。
【図4】図3に示す排気ガス後処理装置の平面一部略図である。
【図5】図4の作動油タンク及び排ガス処理装置を示す斜視図である。
【図6】本発明の別の実施形態に係る油圧ショベルの側面一部略図である。
【図7】図6の油圧ショベルの平面図である。
【図8】図6の作動油タンクの斜視図である。
【図9】本発明のさらに別の実施形態に係る図4相当図である。
【図10】本発明のさらに別の実施形態に係る図4相当図である。
【図11】本発明のさらに別の実施形態に係る図4相当図である。
【図12】本発明のさらに別の実施形態に係る油圧ショベルの一部拡大図であり、(a)は平面図、(b)は側面図をそれぞれ示している。
【図13】本発明のさらに別の実施形態に係る図4相当図である。
【図14】本発明のさらに別の実施形態に係る油圧ショベルの一部拡大図であり、(a)は平面図、(b)は側面図をそれぞれ示している。
【図15】本発明のさらに別の実施形態に係る油圧ショベルの側面一部拡大図である。
【符号の説明】
【0091】
D1 寸法(油圧ポンプの上面位置とエンジンの上面位置との差)
D2 寸法(油圧ポンプの上面位置とカウンタウェイトの上面位置との差)
D3 前後寸法(略同等の高さ部分の前端部からカウンタウェイト前面までの前後寸法)
D4 前後寸法(ケーシングの前後寸法)
D5、D8 前後寸法(排気ガス後処理装置の前後寸法)
D6 前後寸法(凹部の後部底面から略同等の高さ部分の前端部までの前後寸法)
D7、D9 合算寸法(ケーシングと取付部と尿素水タンクとを前後に並べたときの合算寸法)
1 油圧ショベル(建設機械)
3 作業アタッチメント
4 ベースフレーム
6 エンジン
7 油圧ポンプ
8 作動油タンク
10 カウンタウェイト
11 排気ガス後処理装置
12 タンク本体
12a 高背部
12b 上面(略同等の高さ部分)
20〜23 取付部
25 第一処理部
26 第二処理部
30〜33 突出取付部
38 凹部
38a 後部底面
39 尿素水タンク
40、41 取付部
42、43 突出取付部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業アタッチメントを起伏可能に支持するベースフレームと、このベースフレーム上に設けられたエンジンとを有する建設機械であって、
前記エンジンの動力により作動可能となるように当該エンジンと左右方向に連結された油圧ポンプと、
この油圧ポンプの前方に設けられ、作動油タンク、燃料タンクの少なくとも一方を有するタンク装置と、
前記エンジンの排気ガスを浄化するための排気ガス後処理装置とを備え、
前記油圧ポンプの上面はエンジンの上面よりも低く配置されているとともに、前記タンク装置は油圧ポンプの上面と略同等の高さ又はそれ以下の高さの上面を持つ低背部を少なくとも後部に有し、前記排気ガス後処理装置は、前記低背部及び油圧ポンプの上側の位置に設けられていることを特徴とする建設機械。
【請求項2】
前記油圧ポンプの後方に設けられたカウンタウェイトをさらに備え、前記油圧ポンプの上面はカウンタウェイトの上面よりも低く配置されているとともに、前記排気ガス後処理装置は、前記低背部の前端部と前記カウンタウェイトの前面との間の領域内で、前記低背部及び油圧ポンプの上側の位置に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の建設機械。
【請求項3】
前記カウンタウェイトの前面には、他の部分より後退する凹部が形成され、前記排気ガス後処理装置は、前記凹部が形成された部分における前記カウンタウェイトの前面と前記低背部の前端部との間に設けられていることを特徴とする請求項2に記載の建設機械。
【請求項4】
前記タンク装置は、前記油圧ポンプの上面よりも高い部分である高背部を、前記低背部の前側に有していることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の建設機械。
【請求項5】
前記排気ガス後処理装置は、前記エンジンの排気中の粉塵を捕集可能なフィルタを有する第一処理部と、尿素を還元剤とする触媒を利用して前記排気中の窒素酸化物を分解することが可能な第二処理部とを備えていることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の建設機械。
【請求項6】
前記第二処理部に供給可能となるように尿素水を収納する尿素水タンクをさらに備え、この尿素水タンクは、前記排気ガス後処理装置と前後に並べて配置されていることを特徴とする請求項5に記載の建設機械。
【請求項7】
前記排気ガス後処理装置の前後端部のうち前記尿素水タンクに隣接する側の端部から当該尿素水タンク側へ突出するとともに当該排気ガス後処理装置を前記ベースフレームに支持させるための左右一対の取付部をさらに備え、これら取付部同士の間隔が前記尿素水タンクの左右寸法よりも広くされていることを特徴とする請求項6に記載の建設機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2009−79422(P2009−79422A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−249384(P2007−249384)
【出願日】平成19年9月26日(2007.9.26)
【出願人】(000246273)コベルコ建機株式会社 (644)
【Fターム(参考)】