永久磁石モータのトルクリプル抑制制御装置、電動パワーステアリングシステム
【課題】トルクリプルの直流成分を有効に使うことができるトルクリプル抑制制御装置および電動パワーステアリングシステムを提供する。
【解決手段】誘起電圧係数設定部8は、位置検出器5からの位置検出値θdcに基づいて永久磁石モータ1の誘起電圧係数に関する情報信号Ked,−Ked,−ΔKed,Keqおよび−ΔKeqを出力する。トルクリプル抑制演算部9は、この各情報信号に基づいて電流補正指令値ΔId*,ΔIq*を出力する。電流補正指令値ΔId*,ΔIq*は、電流指令変換部7からの電流指令値Id0*,Iq0*と加算され、電流指令値Id*,Iq*として電流制御演算部10へ出力される。電流制御演算部10は、電流検出値Idc,Iqcに基づいて電圧指令値Vdc*,Vqc*を座標変換部11へ出力する。座標変換部11は、電圧指令値Vdc*,Vqc*と位置検出値θdcを用いて三相交流の電圧指令値vu*,vv*,vw*を電力変換器2へ出力する。
【解決手段】誘起電圧係数設定部8は、位置検出器5からの位置検出値θdcに基づいて永久磁石モータ1の誘起電圧係数に関する情報信号Ked,−Ked,−ΔKed,Keqおよび−ΔKeqを出力する。トルクリプル抑制演算部9は、この各情報信号に基づいて電流補正指令値ΔId*,ΔIq*を出力する。電流補正指令値ΔId*,ΔIq*は、電流指令変換部7からの電流指令値Id0*,Iq0*と加算され、電流指令値Id*,Iq*として電流制御演算部10へ出力される。電流制御演算部10は、電流検出値Idc,Iqcに基づいて電圧指令値Vdc*,Vqc*を座標変換部11へ出力する。座標変換部11は、電圧指令値Vdc*,Vqc*と位置検出値θdcを用いて三相交流の電圧指令値vu*,vv*,vw*を電力変換器2へ出力する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、永久磁石モータにおける誘起電圧歪によるトルクリプルを抑制する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
モータの誘起電圧波形が矩形波(誘起電圧歪み)である場合のトルクリプル抑制方法として、以下のような方法が知られている。これは、3相の誘起電圧波形をd軸の電圧edとq軸の電圧eqに変換し、q軸の電流指令値Iqrefを下記式(1)に基づいて演算することにより、トルクリプルをキャンセルするものである。
【0003】
【数1】
---------------------------------------------------------------------------(1)
【0004】
式(1)において、Trefはトルク指令値、ωmはモータの機械角速度である。つまり式(1)では、モータの誘起電圧波形が矩形波であっても、モータのトルクが一定となる様に、脈動波形を含んだq軸の電流指令値Iqrefを演算している。この電流指令値に従いベクトル制御を行えば、トルクリプルを抑制することができる。
【0005】
しかし、上記の電流指令値Iqrefは脈動波形を含んだものとなるため、高応答な電流制御系を用いて、電流指令値Iqref に応じたq軸の電流Iqを制御する必要がある。つまり、電流制御の応答周波数を下記式(2)の関係を満たすように設定する必要が有る。
【0006】
【数2】
------------------------------------------------(2)
【0007】
式(2)において、nはモータの疑似矩形波を周波数分析した際における振幅成分の5%以上の次数波成分を表す。また、Pはモータの極数、ωはモータの実回転数を表す。
【0008】
以上説明したようなトルクリプル抑制方法は、特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004−201487号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記のような従来のトルクリプル抑制方法によれば、モータの誘起電圧波形が矩形波である場合に発生するトルクリプル成分をキャンセルする制御を行うことができる。ここでモータのトルクは、q軸の電圧eqに比例するq軸の誘起電圧係数(Kedと表す)とq軸の電流Iqとの乗算値に比例する。そのため、q軸の誘起電圧係数Kedと電流Iqの脈動成分をΔKed、ΔIqとそれぞれ表すと、これらの脈動成分の乗算値(ΔKed×ΔIq)に応じてトルクリプルの直流成分が発生する。しかし、従来のトルクリプル抑制方法では、このトルクリプルの直流成分を有効に使うことができない。
【0011】
本発明の目的は、トルクリプルの直流成分を有効に使うことができるトルクリプル抑制制御装置および電動パワーステアリングシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明による永久磁石モータのトルクリプル抑制制御装置は、外部より入力されるトルク指令値に基づいて電流指令値を出力する電流指令変換部と、永久磁石モータの回転位置を検出して位置検出値を出力する位置検出器と、永久磁石モータの電流を検出して電流検出値を出力する電流検出部と、位置検出値に基づいて永久磁石モータの誘起電圧係数に関する情報信号を出力する誘起電圧係数設定部と、情報信号および予め設定された比例ゲインに基づいて永久磁石モータの電流補正指令値を出力するトルクリプル抑制演算部と、電流指令値および電流補正指令値の加算結果と電流検出値とに基づいて永久磁石モータを駆動するための電圧指令値を出力する電流制御演算部と、電圧指令値に基づいて永久磁石モータを駆動するための電圧を出力する電力変換器とを備える。
本発明による電動パワーステアリングシステムは、上記の永久磁石モータのトルクリプル抑制制御装置と、永久磁石モータと、減速機構を介して永久磁石モータと機械的に接続されるステアリングシャフトと、ステアリングシャフトと機械的に接続されるステアリングホイールと、ステアリングホイールを介して入力される操作を検出するトルクセンサと、トルクセンサによる操作の検出結果に基づいてトルク指令値を出力するトルク指令部とを備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、トルクリプルの直流成分を有効に使うことができるトルクリプル抑制制御装置および電動パワーステアリングシステムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施の形態による永久磁石モータのトルク脈動抑制御装置の構成図
【図2】電流制御演算部の構成図
【図3】磁石モータの誘起電圧波形が正弦波の場合のトルク特性
【図4】磁石モータの誘起電圧波形が歪んでいる場合のトルク特性
【図5】誘起電圧係数設定部の構成図
【図6】位置信号と誘起電圧係数の情報信号との関係図
【図7】トルクリプル抑制演算部の構成図
【図8】誘起電圧波形が歪んでいる磁石モータを正弦波駆動した場合のトルク制御特性
【図9】トルクリプル抑制補償を行った場合のトルク制御特性
【図10】本発明の第2の実施の形態による永久磁石モータのトルク脈動抑制御装置の構成図
【図11】脈動外乱電流制御を用いない場合の高速領域における電流特性
【図12】脈動外乱電流制御を付加した電流制御演算部の構成図
【図13】d軸の脈動外乱電流制御演算部の構成図
【図14】q軸の脈動外乱電流制御演算部の構成図
【図15】脈動外乱電流制御を用いた場合の高速領域における電流特性
【図16】本発明の第3の実施の形態による永久磁石モータのトルク脈動抑制御装置の構成図
【図17】誘起電圧係数同定部の構成の一例
【図18】誘起電圧係数同定部の構成の他の一例
【図19】本発明を電動パワーステアリングシステムに適用した一例
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を用いて本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0016】
−第1の実施の形態−
図1は、本発明の一実施の形態による永久磁石モータのトルクリプル抑制制御装置の構成例を示す。磁石モータ1は、永久磁石の磁束によるトルク成分と電機子巻線のインダクタンスによるトルク成分を合成したモータ・トルクを出力する。電力変換器2は、三相交流の電圧指令値vu*,vv*,vw*に比例した電圧を出力し、磁石モータ1の出力電圧と回転数を可変する。
【0017】
直流電源3は、電力変換器2に直流電圧を供給する。電流検出部4は、磁石モータ1に流れる三相の交流電流iu,iv,iwを検出し、電流検出値iuc,ivc,iwcを出力する。位置検出器5は、モータの回転位置θを検出して位置検出値θdcを出力する。位置検出器5は、例えばレゾルバやエンコーダにより構成される。
【0018】
座標変換部6は、上記三相の交流電流の検出値iuc,ivc,iwcと位置検出値θdcを用いて、d軸およびq軸の電流検出値Idc,Iqcを演算し出力する。電流指令変換部7は、トルク指令値τ*に基づいて、d軸およびq軸の電流指令値Id0*,Iq0*を演算し出力する。
【0019】
誘起電圧係数設定部8は、位置検出器5からの位置検出値θdcを入力して、誘起電圧係数の情報信号Ked,−Ked,−ΔKed,Keqおよび−ΔKeqを出力する。なお、これらの誘起電圧係数の各情報信号が何を表すかについては、後で詳しく説明する。トルクリプル抑制演算部9は、誘起電圧係数設定部8から出力された上記の各情報信号に基づいて、d軸およびq軸の電流補正指令値ΔId*,ΔIq*を出力する。この電流補正指令値ΔId*,ΔIq*は、電流指令変換部7から出力されたd軸およびq軸の電流指令値Id0*,Iq0*にそれぞれ加算される。加算後の電流指令値Id0*,Iq0*は、新たな電流指令値Id*,Iq*として電流制御演算部10に入力される。
【0020】
電流制御演算部10は、上記の電流指令値Id*,Iq*に基づいて、d軸およびq軸の電流検出値Idc,Iqcが追従するように比例・積分演算を行い、その演算結果に応じてd軸およびq軸の電圧指令値Vdc*,Vqc*を座標変換部11へ出力する。座標変換部11は、電流制御演算部10からのd軸およびq軸の電圧指令値Vdc*,Vqc*と、位置検出器5からの位置検出値θdcとを用いて、三相交流の電圧指令値vu*,vv*,vw*を電力変換器2へ出力する。この電圧指令値vu*,vv*,vwに基づいて、電力変換器2が前述のように磁石モータ1の出力電圧と回転数を可変することにより、磁石モータ1の駆動制御が行われる。
【0021】
続いて、ベクトル制御方式の電圧制御と位相制御の基本動作について説明する。電圧制御の基本動作について先に説明する。電流制御演算部10の構成を図2に示す。図2において、d軸の電流指令値Id*と電流検出値Idcは、d軸の電流制御演算部10aに入力され、q軸の電流指令値Iq*と電流検出値Iqcは、q軸の電流制御演算部10bに入力される。電流制御演算部10a、10bは、以下の式(3)に従って、電流指令値Id0*,Iq0*に各成分の電流検出値Idc,Iqcが追従するようにそれぞれ比例・積分演算を行い、d軸およびq軸の電圧指令値Vdc*,Vqc*をそれぞれ出力する。
【0022】
【数3】
----------------------------------------------------------------- (3)
【0023】
式(3)において、Kpdはd軸の電流制御の比例ゲイン、Kidはd軸の電流制御の積分ゲイン、Kpqはq軸の電流制御の比例ゲイン、Kiqはq軸の電流制御の積分ゲインをそれぞれ表す。
【0024】
一方、位相制御では、レゾルバ、エンコーダ、磁極位置検出器などを用いて構成される位置検出器5において、磁石モータ1の回転位置θを検出し、位置検出値θdcを得る。座標変換部6,11では、この位置検出値θdcを用いて、以下の式(4)、(5)に示す座標変換をそれぞれ行う。
【0025】
【数4】
-------------------------------------------- (4)
【0026】
【数5】
------------------------------------------ (5)
【0027】
以上が、電圧制御と位相制御の基本動作である。
【0028】
次に、本発明の特徴である誘起電圧係数設定部8およびトルクリプル抑制演算部9を設けない場合の制御特性について述べる。図1の制御装置において、永久磁石モータ1の誘起電圧波形euv(u相−v相の線間電圧)が磁石モータ1のトルク特性に及ぼす影響を図3、図4に示す。
【0029】
図3は、誘起電圧波形euvが正弦波状であるときの誘起電圧波形euvとモータ・トルクτの関係を示している。図3により、モータ・トルクτは指令値τ*の100%に一致しており、トルクリプルは無く安定に制御されている様子が分かる。
【0030】
一方、図4は、誘起電圧波形euvが矩形波状であるときの誘起電圧波形euvとモータ・トルクτの関係を示している。ここでは、各相(u相,v相,w相)の誘起電圧波形に5次調波成分が10%含まれている例を示している。この場合、トルク指令値τ*の100%に対して、トルクリプルΔτは6次調波成分で20%も発生している様子が分かる。
【0031】
次に、本発明の特徴となる誘起電圧係数設定部8およびトルクリプル抑制演算部9の構成について説明を行う。誘起電圧設定部8の構成を図5に示す。誘起電圧設定部8では、位置検出値θdcが参照テーブル8aに入力される。参照テーブル8aには、様々なモータの回転位置に応じた誘起電圧係数の値が予めテーブル化されている。このテーブル化された誘起電圧係数の値を参照することにより、入力された位置検出値θdcに応じて、前述の誘起電圧係数の各情報信号Ked,−Ked,−ΔKed,Keqおよび−ΔKeqが誘起電圧設定部8から出力される。
【0032】
図6に、位置検出信号θdcと誘起電圧設定部8から出力される誘起電圧係数の各情報信号との関係を示す。位置検出信号θdcが変化すると、参照テーブルでは、図6の3段目に示すような誘起電圧係数の各情報信号Ked,−Ked,−ΔKed,Keqおよび−ΔKeqを出力する。これらの誘起電圧係数の各情報信号は、固定子座標系の三相交流の誘起電圧係数Ke(誘起電圧値をモータの電気角速度ωで除算した値)を、回転子座標系のd軸の成分値Kedおよびq軸の成分値Keqに分解したものである。なお、図6において、2段目には、図4に示した誘起電圧波形euvを参考のために示している。
【0033】
図6において、Kedはd軸の誘起電圧係数、Keqはq軸の誘起電圧係数をそれぞれ表す。また、−Kedはd軸の誘起電圧係数Kedの平均値、−ΔKedはd軸の誘起電圧係数Kedの脈動成分の振幅値、−ΔKeqはq軸の誘起電圧係数Keqの脈動成分の振幅値をそれぞれ表す。図6に示すように、d軸、q軸の誘起電圧係数Ked,Keqは位置検出値θdcに応じてそれぞれ変化する。一方、d軸の誘起電圧係数の平均値−Kedと、d軸、q軸の誘起電圧係数の脈動成分の振幅値−ΔKed,−ΔKeqは、いずれも位置検出値θdcに関わらず一定である。
【0034】
トルクリプル抑制演算部9の構成を図7に示す。トルクリプル抑制演算部9では、誘起電圧設定部8から出力された上記の誘起電圧係数の各情報信号のうち、信号Kedおよび信号−Kedが減算部9aに入力される。減算部9aは、入力された信号Ked,−Kedに基づいて、以下の式(6)により、d軸の誘起電圧係数Kedの脈動成分ΔKedを演算する。
【0035】
【数6】
----------------------------------------------------------------------- (6)
【0036】
なお、誘起電圧設定部8からの信号Keqには直流成分は含まれていないので、図7ではこの信号Keqをq軸の誘起電圧係数Keqの脈動成分ΔKeqとしている。
【0037】
上記のd軸の誘起電圧係数Kedの脈動成分ΔKedおよびq軸の誘起電圧係数Keqの脈動成分ΔKeqと、誘起電圧設定部8から出力されたd軸の誘起電圧係数Kedの脈動成分の振幅値−ΔKedおよびq軸の誘起電圧係数Keqの脈動成分の振幅値−ΔKeqは、電流補正指令演算部9bに入力される。電流補正指令演算部9bは、入力されたこれらの値に基づいて、以下の式(7)により、d軸およびq軸の電流補正指令値ΔId*,ΔIq*を演算する。
【0038】
【数7】
--------------------------------------------------------------------- (7)
【0039】
式(7)において、次数nは無限大が理想的ではあるが、実際は、n=3程度でも十分な効果を得ることができる。また、式(7)において、Gは比例ゲインである。この比例ゲインGの値を調整することにより、後で説明するように、トルクリプルのリプル成分と直流成分とを所定の関係で任意に制御することが可能となる。
【0040】
次に、本発明の特徴となるトルクリプル抑制演算部9の原理について説明する。d−q軸上のモータ・トルクτmは、以下の式(8)により求められる。
【0041】
【数8】
------------------------------------------- (8)
【0042】
式(8)において、Pmはモータの極対数、Ldはd軸のインダクタンス値、Lqはq軸のインダクタンス値をそれぞれ表す。
【0043】
また、d軸およびq軸の誘起電圧係数Ked、Keqは、これらの脈動成分ΔKed,ΔKeqと、d軸の誘起電圧係数Kedの平均値−Kedとにより、以下の式(9)のように表すことができる。
【0044】
【数9】
----------------------------------------------------------------------- (9)
【0045】
一方、d軸およびq軸の電流Id、Iqの脈動成分をそれぞれΔId,ΔIqと表し、平均値をそれぞれ−Id,−Iqと表すと、Id、Iqは以下の式(10)のように表すことができる。
【0046】
【数10】
-------------------------------------------------------------------------- (10)
【0047】
上記の式(9)、(10)を、モータ・トルク式である式(8)に代入すると、以下の式(11)が導かれる。
【0048】
【数11】
--------------------------------(11)
【0049】
非突極型モータでは、Ld= Lqの関係が成り立つため、式(11)を以下の式(12)のように変形することができる。
【0050】
【数12】
---------------------------------(12)
【0051】
ここで、磁石モータ1の交流電流iu,iv,iwを正弦波状に制御した場合について考える。このとき、Id = 0(ΔId = −Id = 0)、Iq = Iq*(ΔIq = 0)で、理想的な電流制御が行えるとすると、式(12)を以下の式(13)のように書き換えることができる。
【0052】
【数13】
--------------------------------------------------------------(13)
【0053】
また、モータ・トルクには電気角の6次調波成分が重畳しているので、d軸の誘起電圧係数Kedの脈動成分ΔKedは、以下の式(14)のように定義することができる。
【0054】
【数14】
---------------------------------------------------------------------(14)
【0055】
式(14)を式(13)に代入すると、以下の式(15)が導かれる。
【0056】
【数15】
------------------------------------------------------(15)
【0057】
図8は、式(15)で表されるトルクの制御特性を示す。この制御特性は、本発明による抑制補償を行わずに磁石モータ1を駆動制御した場合のトルク特性、すなわち、トルクリプル抑制演算部9からの電流補正指令値ΔId*,ΔIq*を電流指令値Id0*,Iq0*に加算しない場合に電流制御演算部10から出力される電圧指令値を用いて磁石モータ1を駆動制御したときのトルク特性を表している。図8において、u相の電流iuは正弦波であるが、ΔKedが原因でトルク脈動(トルクリプル)が20%(±10%)発生していることが分かる。
【0058】
次に、トルクリプル抑制方法について説明する。トルクリプル抑制演算部9において、q軸の脈動電流指令値ΔIq*は、以下の式(16)により演算される。
【0059】
【数16】
----(16)
【0060】
式(16)において、次数nは1以上の整数である。一例として3次の項までを考慮してみると、式(16)から以下の式(17)が得られる。
【0061】
【数17】
---------------------------------------------(17)
【0062】
式(17)を前述の式(12)に代入すると、モータ・トルクτmを以下の式(18)により表すことができる。
【0063】
【数18】
---(18)
【0064】
式(18)において、脈動トルク成分の大きさは、以下の式(19)により表すことができる。
【0065】
【数19】
--------------------------------------------------------------------(19)
【0066】
つまり、脈動トルク成分をほぼ零にすることができる。
【0067】
しかし、上記のように脈動トルク成分をほぼ零にするだけでは、直流的なトルクの増減はない。そこで、d軸の脈動電流指令値ΔId*により、直流トルク成分を確保する。具体的には、以下の式(20)によりΔId*を演算する。
【0068】
【数20】
------------------------------------------------------------(20)
【0069】
前述の式(18)を求めたのと同様に、式(17)と式(20)を式(12)に代入すると、モータ・トルクτmを表す以下の式(21)が得られる。
【0070】
【数21】
----------(21)
【0071】
前述の式(19)の関係により、式(21)を以下の式(22)のように書き換えることができる。
【0072】
【数22】
------------------------------(22)
【0073】
式(22)において、比例ゲインGの値を任意に設定することにより、12次調波の脈動トルク成分の波高値(p−p)すなわち振幅の1/2の大きさの分だけ、直流トルク成分を増加することができる。このようなトルクリプル抑制補償を行った場合のトルク特性を図9に示す。本抑制補償により、図9に示すように、図8の抑制補償なし時の特性と比べて、6次調波成分を大幅に低減することができる。また、磁石モータ1における12次調波の脈動トルク成分の振幅Δτm12の略1/2の大きさの分だけ直流トルク成分を増加させることができる。すなわち、比例ゲインGを調整することで、トルクリプルのリプル成分と直流成分とを任意に制御することができる。その結果、トルクリプルの直流成分を有効に使うことができる。
【0074】
−第2の実施の形態−
図10は、本発明の第2の実施の形態による永久磁石モータのトルクリプル抑制制御装置の構成例を示す。前述の第1の実施形態では、電流制御演算部10において比例・積分演算を用いた方式を採用した例を説明したが、本実施形態では、トルクリプルの周波数成分に感度を持つ脈動外乱電流制御演算を付加した例を以下に説明する。
【0075】
図1に示した第1の実施の形態では、電流制御演算部10において設定される式(3)に示した各制御ゲインKpd,Kid,Kpq,Kiqの値が小さい場合、高速領域において電流指令値への追従性が劣化するという問題がある。たとえば、電流制御演算部10に安価なマイコンを使用すると、制御演算周期が数msとなってしまうため、電流制御の応答周波数は数十Hz程度に制限されてしまう。
【0076】
図11は、永久磁石モータ1の回転数が高速領域にある際のd軸およびq軸の各電流情報Id*,Idc,Iq*,Iqcとu相の交流電流iucの動作波形を示す。図11により、モータの回転数が高速領域では、電流検出値Idc,Iqcが電流指令値Id*,Iq*に追従していない様子が分かる。この結果、第1の実施の形態で説明したような抑制補償を行った場合でも、トルクリプルが再び増大してしまう。
【0077】
そこで、本実施形態では、トルクリプルの周波数成分に感度を持つ脈動外乱電流制御演算を付加した制御を図10に示すトルクリプル抑制制御装置により行う。このトルクリプル抑制制御装置は、図1の電流制御演算部10に代わる電流制御演算部10´を備えている。なお、これ以外の部分は、図1のものと同一である。
【0078】
電流制御演算部10´は、図2に示す電流制御演算とは別に、トルクリプルの周波数成分に感度を持つ電流制御演算を行い、その出力値を図2に示す電流制御演算の出力に加算して、d軸およびq軸の電圧指令値Vdc**,Vqc**を出力する。
【0079】
図12を用いて、電流制御演算部10´を説明する。電流制御演算部10´において、d軸の脈動外乱電流制御演算部10´aは、入力されたd軸の電流偏差ΔId(=Id*−Idc)に基づいて、トルクリプルの周波数成分と同じ成分値を抑制する信号ΔVdc*を出力する。また、q軸の脈動外乱電流制御演算部10´bは、入力されたq軸の電流偏差ΔIq(=Iq*−Iqc)に基づいて、トルクリプルの脈動周波数成分と同じ成分値を抑制する信号ΔVqc*を出力する。電流制御演算部10´は、これらの信号ΔVdc*,ΔVqc*をd軸およびq軸の電圧指令値Vdc*,Vdc*にそれぞれ加算して、新しい電圧指令値Vdc**,Vdc**を出力する。
【0080】
次に、図13を用いて、d軸の脈動外乱電流制御演算部10´aの構成を説明する。d軸の脈動外乱電流制御演算部10´aにおいて、余弦信号発生部10´a2と正弦信号発生部10´a3には、位置検出器5からの位置検出値θdcと、定数発生部10´a1からの定数Nとがそれぞれ入力される。この入力された位置検出値θdcと定数Nにより、余弦信号発生部10´a2および正弦信号発生部10´a3から、余弦信号cos(N・θdc)、正弦信号sin(N・θdc)がそれぞれ出力される。これらの各信号には、d軸の電流偏差ΔIdが乗じられる。その後さらに、定数乗算部10´a4,10´a5において定数Kdがそれぞれ乗じられる。この余弦信号cos(N・θdc)、正弦信号sin(N・θdc)にd軸の電流偏差ΔIdおよび定数Kdをそれぞれ乗算した値は、もう一度余弦信号cos(N・θdc)、正弦信号sin(N・θdc)がそれぞれに乗じられた後、互いに加算される。この加算値を2倍した値が、d軸の脈動補償値ΔVdc*として、d軸の脈動外乱電流制御演算部10´aから出力される。
【0081】
次に、図14を用いて、q軸の脈動外乱電流制御演算部10´bの構成を説明する。q軸の脈動外乱電流制御演算部10´bにおいて、余弦信号発生部10´b2と正弦信号発生部10´b3には、位置検出器5からの位置検出値θdcと、定数発生部10´b1からの定数Nとがそれぞれ入力される。この入力された位置検出値θdcと定数Nにより、余弦信号発生部10´b2、正弦信号発生部10´b3から、図13の場合と同様に、余弦信号cos(N・θdc)、正弦信号sin(N・θdc)がそれぞれ出力される。これらの各信号には、q軸の電流偏差ΔIqが乗じられる。その後さらに、定数乗算部10´b4,10´b5において定数Kqがそれぞれ乗じられる。この余弦信号cos(N・θdc)、正弦信号sin(N・θdc)にq軸の電流偏差ΔIqおよび定数Kqをそれぞれ乗算した値は、図13の場合と同様に、もう一度余弦信号cos(N・θdc)、正弦信号sin(N・θdc)がそれぞれに乗じられた後、互いに加算される。この加算値を2倍した値が、q軸の脈動補償値ΔVqc*として、q軸の脈動外乱電流制御演算部10´bから出力される。
【0082】
ここからは、本発明の特徴となる上記の脈動電流制御演算部10´a,10´bについての原理説明を行う。ここでは、両者を代表して、脈動電流制御演算部10´bについて説明する。脈動電流制御演算部10´bでは、前述のように、余弦信号発生部10´b2と正弦信号発生部10´b3に、位置検出値θdcと、トルクの脈動周波数次数(電気周波数の一周期分に含まる1番大きな高調波成分の次数)を表す定数Nとがそれぞれ入力される。そして、余弦信号発生部10´b2と正弦信号発生部10´b3において、これらの乗算値(N・θdc)の余弦信号と正弦信号が演算される。
【0083】
ここで、q軸の電流検出値Iqcに含まれる高調波成分ΔIqripを、以下の式(23)により定義する。
【0084】
【数23】
----------------------------------------------------------------(23)
【0085】
式(23)において、|ΔIqrip|はN次高調波成分の振幅値である。
【0086】
余弦信号発生部10´b2と正弦信号発生部10´b3の出力信号のそれぞれに対して、上記の式(23)で定義される高調波成分の振幅値|ΔIqrip|を乗じた演算結果をIa1,Ib1とすると、これは以下の式(24)により表される。
【0087】
【数24】
------------------------------------------------------(24)
【0088】
式(24)の信号Ia1,Ib1に、定数乗算部10´b4,10´b5において所定の比例ゲインKqを乗じた結果をIa2,Ib2とすると、これは以下の式(25)により表される。
【0089】
【数25】
-----------------------------------------------(25)
【0090】
次に、上記の式(25)で求められた信号Ia2,Ib2を用いて、以下の式(26)によりq軸の脈動補償値ΔVqc*を演算する。
【0091】
【数26】
-----(26)
【0092】
上記の式(26)により、高調波成分ΔIqripをゲインKq倍した値で電圧値を補正することができることが分かる。
【0093】
d軸についても同様の演算を行い、d軸の脈動補償値ΔVdc*を演算する。これらの演算値ΔVdc*,ΔVqc*を、d軸およびq軸の電圧指令値Vdc*,Vqc*にそれぞれ加算して、インバータの出力電圧を制御する。これにより、トルクリプルの周波数成分Nに感度を持つ脈動外乱電流制御を行うことができる。
【0094】
図15に、本発明を用いた場合の制御特性を示す。上記のようなトルクリプル抑制補償を追加することにより、図11に示した抑制補償なし時の特性と比べて、モータの回転数が高速領域においても、電流検出値Idc,Iqcが電流指令値Id*,Iq*に精度良く追従している様子がわかる。つまり、高速領域においてもトルク脈動を抑制することが可能となる。
【0095】
なお、以上説明した第2の実施の形態において、d軸の脈動補償値ΔVdc*とq軸の脈動補償値ΔVqc*のいずれか一方のみを電流制御演算部10´において演算するようにしてもよい。すなわち、d軸の脈動外乱電流制御演算部10´aとq軸の脈動外乱電流制御演算部10´bのいずれか一方を有していなくてもよい。この場合、d軸またはq軸のうち脈動補償値の演算が行われない方は、第1の実施の形態と同様に、電圧指令値Vdc*またはVdc*をそのまま電流制御演算部10´から座標変換部11へ出力する。
【0096】
−第3の実施の形態−
図16は、本発明の第3の実施の形態による永久磁石モータのトルクリプル抑制制御装置の構成例を示す。前述の第1および第2の実施形態では、参照テーブル8aにより誘起電圧係数の情報信号を出力する例を説明したが、本実施形態では、脈動外乱電流制御の出力値を用いて誘起電圧係数の情報信号の推定演算を行い、トルクリプル抑制補償演算に用いる例を以下に説明する。
【0097】
図16に示すトルクリプル抑制制御装置は、図1,10の誘起電圧設定部8に代わる誘起電圧係数同定部8´を備えている。なお、これ以外の部分は、図10のものと同一である。
【0098】
誘起電圧係数同定部8´には、位置検出器5からの位置検出値θdcと、前述の第2の実施の形態で説明した電流制御演算部10´におけるd軸、q軸の脈動外乱電流制御演算部10´a、10´bからの出力値ΔVdc*,ΔVqc*とが入力される。これらの入力値に基づいて、誘起電圧係数同定部8´は、第1の実施の形態で説明した誘起電圧係数の各情報Ked,−Ked,−ΔKed,Keqおよび−ΔKeqに対して、それぞれの推定値Ked’,−Ked’,−ΔKed’,Keq’および−ΔKeq’を出力する。
【0099】
誘起電圧係数同定部8´の構成の一例を図17に示す。図17において、位置検出器5からの位置検出信号θdcは、微分演算部8´a1に入力される。微分演算部8´a1は、以下の式(27)の演算を行い、モータの角速度演算値ωdcを出力する。
【0100】
【数27】
----------------------------------------------------------------------(27)
【0101】
上記のようにして微分演算部8´a1から出力された信号ωdcは、脈動外乱電流制御演算部10´aの出力値ΔVdc*、または脈動外乱電流制御演算部10´bの出力値ΔVqc*のいずれかと共に、除算部8´a2、8´a3にそれぞれ入力される。除算部8´a2、8´a3は、入力された信号ωdcと、ΔVdc*またはΔVqc*とに基づいて、d軸、q軸の誘起電圧係数の推定値Ked^,Keq^を以下の式(28)によりそれぞれ演算する。
【0102】
【数28】
-------------------------------------------------------------------------(28)
【0103】
除算部8´a2、8´a3においてそれぞれ演算された推定値Ked^,Keq^は、位置検出信号θdcと共にメモリ部8´a4に入力される。メモリ部8´a4は、予め記憶された誘起電圧係数の各情報Ked,−Ked,−ΔKed,Keqおよび−ΔKeqに関するデータに基づいて、入力された信号θdcに応じた推定値Ked’,−Ked’,−ΔKed’,Keq’および−ΔKeq’を出力する。
【0104】
なお、メモリ部8´a4へのデータの記憶は、本装置の試運転時や調整時に行っても良い。あるいは、実運転中に行っても良い。いずれにしても、誘起電圧係数の各情報に関するデータをメモリ部8´a4へ記憶した後に、位置検出値θdcに応じて、それぞれの推定値Ked’,−Ked’,−ΔKed’,Keq’および−ΔKeq’を出力するようにすれば良い。
【0105】
あるいは、上記のように誘起電圧係数の各情報Ked,−Ked,−ΔKed,Keqおよび−ΔKeqに関するデータを予め記憶しておく代わりに、実運転中に誘起電圧係数の各情報を抽出し、その信号を推定値Ked’,−Ked’,−ΔKed’,Keq’および−ΔKeqとして出力するようにしても良い。
【0106】
図18は、これを実現する誘起電圧係数同定部8´の構成の一例を示す。図18において、位置検出器5からの位置検出信号θdcは微分演算部8´b1に入力される。微分演算部8´b1は、図17の微分演算部8´a1と同様に、式(27)の演算を行ってモータの角速度演算値ωdcを出力する。この信号ωdcは、脈動外乱電流制御演算部10´aの出力値ΔVdc*、または脈動外乱電流制御演算部10´bの出力値ΔVqc*のいずれかと共に、除算部8´b2、8´b3にそれぞれ入力される。除算部8´b2、8´b3は、図17の除算部8´a2、8´a3と同様に、入力された信号ωdcと、ΔVdc*またはΔVqc*とに基づいて、d軸、q軸の誘起電圧係数の推定値Ked^,Keq^を式(28)によりそれぞれ演算する。
【0107】
演算された推定値Ked^,Keq^は、誘起電圧係数情報抽出部8´b4に入力される。誘起電圧係数情報抽出部8´b4は、入力されたこれらの推定値に基づいて、誘起電圧係数の各情報の推定値Ked’,−Ked’,−ΔKed’,Keq’および−ΔKeq’を演算し、出力する。
【0108】
図19は、以上説明した第1〜第3いずれかの実施形態による永久磁石モータのトルクリプル抑制制御装置を車両の電動パワーステアリングシステムに対して適用した例を示す。図19において、符号101はステアリングホイール、符号102はステアリングホイール101と機械的に接続されたステアリングシャフト、符号103はトルクセンサ、符号104は磁石モータ1とステアリングシャフト102を機械的に接続する減速機構、符号105はECU(Engine Control Unit)、符号106はラックピニオン機構、符号107はタイロッドなどの連結機構、符号108は転舵輪をそれぞれ示す。ECU105には、第1〜第3いずれかの実施形態による永久磁石モータのトルクリプル抑制制御装置が搭載されている。なお、直流電源3、電流検出部4および位置検出器5は、図1、10および16に示したものと同一である。
【0109】
トルクセンサ103は、運転者のステアリングホイール101による転舵操作を検出する。ECU105は、トルクセンサ103による転舵操作の検出結果に基づいて、前述のトルクリプル抑制制御装置が有する電流指令変換部7へトルク指令値τ*を出力するトルク指令部を有している。これにより、得られたトルク指令値と出力トルクを一致させるように、トルクリプル抑制制御装置によって三相の電圧指令値が制御される。磁石モータ1は、減速機構104を介してステアリングシャフト102にアシスト力を加えることで、運転者のステアリングホイール101による転舵操作をアシストするものである。
【0110】
ECU105が有する永久磁石モータのトルクリプル抑制制御装置は、前述のようなトルクリプル抑制制御を行う。これにより、安価な誘起電圧が歪んでいる磁石モータ1を図19の電動パワーステアリングシステムにおいて用いた場合でも、高精度なトルク制御を実現することが可能である。たとえば、磁石モータ1の低速領域ではトルクリプルのリプル成分の抑制に重点を置く一方で、高速領域では直流成分の確保に重点を置く設定が可能となる。その結果、運転者がステアリングホイール101をゆっくり転舵した場合などに滑らかな操舵フィーリングを得ることができる。また、磁石モータ1の高速領域においては、直流トルク成分を確保することにより、磁石モータ1を高出力化することができる。したがって、磁石モータ1を小型化することも可能となる。
【0111】
−変形例−
以上説明した各実施の形態では、電流指令値Id*,Iq*と電流検出値Idc,Iqcに基づいて電圧指令値Vdc*,Vqc*を作成し、ベクトル制御を行う例を説明した。しかし、電流指令値Id*,Iq*と電流検出値Idc,Iqcに基づいて電圧補正値ΔVd、ΔVqを作成し、この電圧補正値と、電流指令値Id*,Iq*、速度演算値ωcdおよび磁石モータ1の定数とを用いて、以下の式(29)に従って電圧指令値Vdc*,Vqc*を演算することによりベクトル制御を行う場合にも、本発明を適用することができる。
【0112】
【数29】
------------------------------------------- (29)
【0113】
または、電流指令値Id*,Iq*と電流検出値Idc,Iqcから第2の電流指令値Id**,Iq**を作成し、この第2の電流指令値を用いて以下の式(30)に従ってベクトル制御を行う場合にも、本発明を適用することができる。
【0114】
【数30】
----------------------------------------------- (30)
【0115】
あるいは、誘起電圧係数Ke*を用いた上記の式(29)または(30)の代わりに、以下の式(31)または(32)を用いてベクトル制御を行うこととしてもよい。このようにすれば、図1の電流制御演算部10または図10、16の電流制御演算部10´の負担を減らすことができるため、電流指令値への追従性が良くなることは明らかである。
【0116】
【数31】
------------------------------------------- (31)
【0117】
【数32】
----------------------------------------------- (32)
【0118】
なお、上記の式(31)、(32)では、第1の実施の形態で説明した、予め設定された誘起電圧係数の情報Ked,Keqを使用している。しかし、これに代えて、第3の実施の形態で説明した誘起電圧係数の情報の推定値Ked’, Keq’を使用しても良い。
【0119】
また、第1〜第3の実施の形態では、電流検出器4で直接検出した交流電流iu〜iwを用いる例を説明したが、電力変換器2の過電流検出用に取り付けているワンシャント抵抗に流れる直流電流から交流電流iu〜iwを再現しても良い。
【0120】
さらに、第1〜第3の実施の形態では、エンコーダ、レゾルバ、磁極位置センサなどを用いた位置検出器5により磁石モータ1の回転位置を検出する例を説明したが、位置センサレス方式によりモータ制御を行う装置においても本発明を適用することができる。
【0121】
たとえば、電圧指令値Vdc*,Vqc*と電流検出値Idc,Iqcおよびモータ定数に基づいて、位相指令値とモータ位相値の偏差である位相誤差Δθcを以下の式(33)により演算する。
【0122】
【数33】
---------------------------------------------- (33)
【0123】
式(33)によって演算される信号Δθcをゼロにするように、周波数推定値ωdc´を制御することで、モータ制御を行うことができる。このような位置センサレス制御方式にも本発明を適用することができる。
【0124】
なお、以上説明した各実施形態と変形例の一つ、もしくは複数を組み合わせることも可能である。変形例をどのように組み合わせることも可能である。
【0125】
以上の説明はあくまで一例であり、本発明は上記実施形態の構成に何ら限定されるものではない。
【符号の説明】
【0126】
1…磁石モータ、2…電力変換器、3…直流電源、4…電流検出器、
5…位置検出器、6…座標変換部、7…電流指令変換部、
8…誘起電圧係数設定部、8´…誘起電圧係数同定部、
9…トルクリプル抑制演算部、10、10´…電流制御演算部、11…座標変換部
【技術分野】
【0001】
本発明は、永久磁石モータにおける誘起電圧歪によるトルクリプルを抑制する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
モータの誘起電圧波形が矩形波(誘起電圧歪み)である場合のトルクリプル抑制方法として、以下のような方法が知られている。これは、3相の誘起電圧波形をd軸の電圧edとq軸の電圧eqに変換し、q軸の電流指令値Iqrefを下記式(1)に基づいて演算することにより、トルクリプルをキャンセルするものである。
【0003】
【数1】
---------------------------------------------------------------------------(1)
【0004】
式(1)において、Trefはトルク指令値、ωmはモータの機械角速度である。つまり式(1)では、モータの誘起電圧波形が矩形波であっても、モータのトルクが一定となる様に、脈動波形を含んだq軸の電流指令値Iqrefを演算している。この電流指令値に従いベクトル制御を行えば、トルクリプルを抑制することができる。
【0005】
しかし、上記の電流指令値Iqrefは脈動波形を含んだものとなるため、高応答な電流制御系を用いて、電流指令値Iqref に応じたq軸の電流Iqを制御する必要がある。つまり、電流制御の応答周波数を下記式(2)の関係を満たすように設定する必要が有る。
【0006】
【数2】
------------------------------------------------(2)
【0007】
式(2)において、nはモータの疑似矩形波を周波数分析した際における振幅成分の5%以上の次数波成分を表す。また、Pはモータの極数、ωはモータの実回転数を表す。
【0008】
以上説明したようなトルクリプル抑制方法は、特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004−201487号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記のような従来のトルクリプル抑制方法によれば、モータの誘起電圧波形が矩形波である場合に発生するトルクリプル成分をキャンセルする制御を行うことができる。ここでモータのトルクは、q軸の電圧eqに比例するq軸の誘起電圧係数(Kedと表す)とq軸の電流Iqとの乗算値に比例する。そのため、q軸の誘起電圧係数Kedと電流Iqの脈動成分をΔKed、ΔIqとそれぞれ表すと、これらの脈動成分の乗算値(ΔKed×ΔIq)に応じてトルクリプルの直流成分が発生する。しかし、従来のトルクリプル抑制方法では、このトルクリプルの直流成分を有効に使うことができない。
【0011】
本発明の目的は、トルクリプルの直流成分を有効に使うことができるトルクリプル抑制制御装置および電動パワーステアリングシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明による永久磁石モータのトルクリプル抑制制御装置は、外部より入力されるトルク指令値に基づいて電流指令値を出力する電流指令変換部と、永久磁石モータの回転位置を検出して位置検出値を出力する位置検出器と、永久磁石モータの電流を検出して電流検出値を出力する電流検出部と、位置検出値に基づいて永久磁石モータの誘起電圧係数に関する情報信号を出力する誘起電圧係数設定部と、情報信号および予め設定された比例ゲインに基づいて永久磁石モータの電流補正指令値を出力するトルクリプル抑制演算部と、電流指令値および電流補正指令値の加算結果と電流検出値とに基づいて永久磁石モータを駆動するための電圧指令値を出力する電流制御演算部と、電圧指令値に基づいて永久磁石モータを駆動するための電圧を出力する電力変換器とを備える。
本発明による電動パワーステアリングシステムは、上記の永久磁石モータのトルクリプル抑制制御装置と、永久磁石モータと、減速機構を介して永久磁石モータと機械的に接続されるステアリングシャフトと、ステアリングシャフトと機械的に接続されるステアリングホイールと、ステアリングホイールを介して入力される操作を検出するトルクセンサと、トルクセンサによる操作の検出結果に基づいてトルク指令値を出力するトルク指令部とを備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、トルクリプルの直流成分を有効に使うことができるトルクリプル抑制制御装置および電動パワーステアリングシステムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施の形態による永久磁石モータのトルク脈動抑制御装置の構成図
【図2】電流制御演算部の構成図
【図3】磁石モータの誘起電圧波形が正弦波の場合のトルク特性
【図4】磁石モータの誘起電圧波形が歪んでいる場合のトルク特性
【図5】誘起電圧係数設定部の構成図
【図6】位置信号と誘起電圧係数の情報信号との関係図
【図7】トルクリプル抑制演算部の構成図
【図8】誘起電圧波形が歪んでいる磁石モータを正弦波駆動した場合のトルク制御特性
【図9】トルクリプル抑制補償を行った場合のトルク制御特性
【図10】本発明の第2の実施の形態による永久磁石モータのトルク脈動抑制御装置の構成図
【図11】脈動外乱電流制御を用いない場合の高速領域における電流特性
【図12】脈動外乱電流制御を付加した電流制御演算部の構成図
【図13】d軸の脈動外乱電流制御演算部の構成図
【図14】q軸の脈動外乱電流制御演算部の構成図
【図15】脈動外乱電流制御を用いた場合の高速領域における電流特性
【図16】本発明の第3の実施の形態による永久磁石モータのトルク脈動抑制御装置の構成図
【図17】誘起電圧係数同定部の構成の一例
【図18】誘起電圧係数同定部の構成の他の一例
【図19】本発明を電動パワーステアリングシステムに適用した一例
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を用いて本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0016】
−第1の実施の形態−
図1は、本発明の一実施の形態による永久磁石モータのトルクリプル抑制制御装置の構成例を示す。磁石モータ1は、永久磁石の磁束によるトルク成分と電機子巻線のインダクタンスによるトルク成分を合成したモータ・トルクを出力する。電力変換器2は、三相交流の電圧指令値vu*,vv*,vw*に比例した電圧を出力し、磁石モータ1の出力電圧と回転数を可変する。
【0017】
直流電源3は、電力変換器2に直流電圧を供給する。電流検出部4は、磁石モータ1に流れる三相の交流電流iu,iv,iwを検出し、電流検出値iuc,ivc,iwcを出力する。位置検出器5は、モータの回転位置θを検出して位置検出値θdcを出力する。位置検出器5は、例えばレゾルバやエンコーダにより構成される。
【0018】
座標変換部6は、上記三相の交流電流の検出値iuc,ivc,iwcと位置検出値θdcを用いて、d軸およびq軸の電流検出値Idc,Iqcを演算し出力する。電流指令変換部7は、トルク指令値τ*に基づいて、d軸およびq軸の電流指令値Id0*,Iq0*を演算し出力する。
【0019】
誘起電圧係数設定部8は、位置検出器5からの位置検出値θdcを入力して、誘起電圧係数の情報信号Ked,−Ked,−ΔKed,Keqおよび−ΔKeqを出力する。なお、これらの誘起電圧係数の各情報信号が何を表すかについては、後で詳しく説明する。トルクリプル抑制演算部9は、誘起電圧係数設定部8から出力された上記の各情報信号に基づいて、d軸およびq軸の電流補正指令値ΔId*,ΔIq*を出力する。この電流補正指令値ΔId*,ΔIq*は、電流指令変換部7から出力されたd軸およびq軸の電流指令値Id0*,Iq0*にそれぞれ加算される。加算後の電流指令値Id0*,Iq0*は、新たな電流指令値Id*,Iq*として電流制御演算部10に入力される。
【0020】
電流制御演算部10は、上記の電流指令値Id*,Iq*に基づいて、d軸およびq軸の電流検出値Idc,Iqcが追従するように比例・積分演算を行い、その演算結果に応じてd軸およびq軸の電圧指令値Vdc*,Vqc*を座標変換部11へ出力する。座標変換部11は、電流制御演算部10からのd軸およびq軸の電圧指令値Vdc*,Vqc*と、位置検出器5からの位置検出値θdcとを用いて、三相交流の電圧指令値vu*,vv*,vw*を電力変換器2へ出力する。この電圧指令値vu*,vv*,vwに基づいて、電力変換器2が前述のように磁石モータ1の出力電圧と回転数を可変することにより、磁石モータ1の駆動制御が行われる。
【0021】
続いて、ベクトル制御方式の電圧制御と位相制御の基本動作について説明する。電圧制御の基本動作について先に説明する。電流制御演算部10の構成を図2に示す。図2において、d軸の電流指令値Id*と電流検出値Idcは、d軸の電流制御演算部10aに入力され、q軸の電流指令値Iq*と電流検出値Iqcは、q軸の電流制御演算部10bに入力される。電流制御演算部10a、10bは、以下の式(3)に従って、電流指令値Id0*,Iq0*に各成分の電流検出値Idc,Iqcが追従するようにそれぞれ比例・積分演算を行い、d軸およびq軸の電圧指令値Vdc*,Vqc*をそれぞれ出力する。
【0022】
【数3】
----------------------------------------------------------------- (3)
【0023】
式(3)において、Kpdはd軸の電流制御の比例ゲイン、Kidはd軸の電流制御の積分ゲイン、Kpqはq軸の電流制御の比例ゲイン、Kiqはq軸の電流制御の積分ゲインをそれぞれ表す。
【0024】
一方、位相制御では、レゾルバ、エンコーダ、磁極位置検出器などを用いて構成される位置検出器5において、磁石モータ1の回転位置θを検出し、位置検出値θdcを得る。座標変換部6,11では、この位置検出値θdcを用いて、以下の式(4)、(5)に示す座標変換をそれぞれ行う。
【0025】
【数4】
-------------------------------------------- (4)
【0026】
【数5】
------------------------------------------ (5)
【0027】
以上が、電圧制御と位相制御の基本動作である。
【0028】
次に、本発明の特徴である誘起電圧係数設定部8およびトルクリプル抑制演算部9を設けない場合の制御特性について述べる。図1の制御装置において、永久磁石モータ1の誘起電圧波形euv(u相−v相の線間電圧)が磁石モータ1のトルク特性に及ぼす影響を図3、図4に示す。
【0029】
図3は、誘起電圧波形euvが正弦波状であるときの誘起電圧波形euvとモータ・トルクτの関係を示している。図3により、モータ・トルクτは指令値τ*の100%に一致しており、トルクリプルは無く安定に制御されている様子が分かる。
【0030】
一方、図4は、誘起電圧波形euvが矩形波状であるときの誘起電圧波形euvとモータ・トルクτの関係を示している。ここでは、各相(u相,v相,w相)の誘起電圧波形に5次調波成分が10%含まれている例を示している。この場合、トルク指令値τ*の100%に対して、トルクリプルΔτは6次調波成分で20%も発生している様子が分かる。
【0031】
次に、本発明の特徴となる誘起電圧係数設定部8およびトルクリプル抑制演算部9の構成について説明を行う。誘起電圧設定部8の構成を図5に示す。誘起電圧設定部8では、位置検出値θdcが参照テーブル8aに入力される。参照テーブル8aには、様々なモータの回転位置に応じた誘起電圧係数の値が予めテーブル化されている。このテーブル化された誘起電圧係数の値を参照することにより、入力された位置検出値θdcに応じて、前述の誘起電圧係数の各情報信号Ked,−Ked,−ΔKed,Keqおよび−ΔKeqが誘起電圧設定部8から出力される。
【0032】
図6に、位置検出信号θdcと誘起電圧設定部8から出力される誘起電圧係数の各情報信号との関係を示す。位置検出信号θdcが変化すると、参照テーブルでは、図6の3段目に示すような誘起電圧係数の各情報信号Ked,−Ked,−ΔKed,Keqおよび−ΔKeqを出力する。これらの誘起電圧係数の各情報信号は、固定子座標系の三相交流の誘起電圧係数Ke(誘起電圧値をモータの電気角速度ωで除算した値)を、回転子座標系のd軸の成分値Kedおよびq軸の成分値Keqに分解したものである。なお、図6において、2段目には、図4に示した誘起電圧波形euvを参考のために示している。
【0033】
図6において、Kedはd軸の誘起電圧係数、Keqはq軸の誘起電圧係数をそれぞれ表す。また、−Kedはd軸の誘起電圧係数Kedの平均値、−ΔKedはd軸の誘起電圧係数Kedの脈動成分の振幅値、−ΔKeqはq軸の誘起電圧係数Keqの脈動成分の振幅値をそれぞれ表す。図6に示すように、d軸、q軸の誘起電圧係数Ked,Keqは位置検出値θdcに応じてそれぞれ変化する。一方、d軸の誘起電圧係数の平均値−Kedと、d軸、q軸の誘起電圧係数の脈動成分の振幅値−ΔKed,−ΔKeqは、いずれも位置検出値θdcに関わらず一定である。
【0034】
トルクリプル抑制演算部9の構成を図7に示す。トルクリプル抑制演算部9では、誘起電圧設定部8から出力された上記の誘起電圧係数の各情報信号のうち、信号Kedおよび信号−Kedが減算部9aに入力される。減算部9aは、入力された信号Ked,−Kedに基づいて、以下の式(6)により、d軸の誘起電圧係数Kedの脈動成分ΔKedを演算する。
【0035】
【数6】
----------------------------------------------------------------------- (6)
【0036】
なお、誘起電圧設定部8からの信号Keqには直流成分は含まれていないので、図7ではこの信号Keqをq軸の誘起電圧係数Keqの脈動成分ΔKeqとしている。
【0037】
上記のd軸の誘起電圧係数Kedの脈動成分ΔKedおよびq軸の誘起電圧係数Keqの脈動成分ΔKeqと、誘起電圧設定部8から出力されたd軸の誘起電圧係数Kedの脈動成分の振幅値−ΔKedおよびq軸の誘起電圧係数Keqの脈動成分の振幅値−ΔKeqは、電流補正指令演算部9bに入力される。電流補正指令演算部9bは、入力されたこれらの値に基づいて、以下の式(7)により、d軸およびq軸の電流補正指令値ΔId*,ΔIq*を演算する。
【0038】
【数7】
--------------------------------------------------------------------- (7)
【0039】
式(7)において、次数nは無限大が理想的ではあるが、実際は、n=3程度でも十分な効果を得ることができる。また、式(7)において、Gは比例ゲインである。この比例ゲインGの値を調整することにより、後で説明するように、トルクリプルのリプル成分と直流成分とを所定の関係で任意に制御することが可能となる。
【0040】
次に、本発明の特徴となるトルクリプル抑制演算部9の原理について説明する。d−q軸上のモータ・トルクτmは、以下の式(8)により求められる。
【0041】
【数8】
------------------------------------------- (8)
【0042】
式(8)において、Pmはモータの極対数、Ldはd軸のインダクタンス値、Lqはq軸のインダクタンス値をそれぞれ表す。
【0043】
また、d軸およびq軸の誘起電圧係数Ked、Keqは、これらの脈動成分ΔKed,ΔKeqと、d軸の誘起電圧係数Kedの平均値−Kedとにより、以下の式(9)のように表すことができる。
【0044】
【数9】
----------------------------------------------------------------------- (9)
【0045】
一方、d軸およびq軸の電流Id、Iqの脈動成分をそれぞれΔId,ΔIqと表し、平均値をそれぞれ−Id,−Iqと表すと、Id、Iqは以下の式(10)のように表すことができる。
【0046】
【数10】
-------------------------------------------------------------------------- (10)
【0047】
上記の式(9)、(10)を、モータ・トルク式である式(8)に代入すると、以下の式(11)が導かれる。
【0048】
【数11】
--------------------------------(11)
【0049】
非突極型モータでは、Ld= Lqの関係が成り立つため、式(11)を以下の式(12)のように変形することができる。
【0050】
【数12】
---------------------------------(12)
【0051】
ここで、磁石モータ1の交流電流iu,iv,iwを正弦波状に制御した場合について考える。このとき、Id = 0(ΔId = −Id = 0)、Iq = Iq*(ΔIq = 0)で、理想的な電流制御が行えるとすると、式(12)を以下の式(13)のように書き換えることができる。
【0052】
【数13】
--------------------------------------------------------------(13)
【0053】
また、モータ・トルクには電気角の6次調波成分が重畳しているので、d軸の誘起電圧係数Kedの脈動成分ΔKedは、以下の式(14)のように定義することができる。
【0054】
【数14】
---------------------------------------------------------------------(14)
【0055】
式(14)を式(13)に代入すると、以下の式(15)が導かれる。
【0056】
【数15】
------------------------------------------------------(15)
【0057】
図8は、式(15)で表されるトルクの制御特性を示す。この制御特性は、本発明による抑制補償を行わずに磁石モータ1を駆動制御した場合のトルク特性、すなわち、トルクリプル抑制演算部9からの電流補正指令値ΔId*,ΔIq*を電流指令値Id0*,Iq0*に加算しない場合に電流制御演算部10から出力される電圧指令値を用いて磁石モータ1を駆動制御したときのトルク特性を表している。図8において、u相の電流iuは正弦波であるが、ΔKedが原因でトルク脈動(トルクリプル)が20%(±10%)発生していることが分かる。
【0058】
次に、トルクリプル抑制方法について説明する。トルクリプル抑制演算部9において、q軸の脈動電流指令値ΔIq*は、以下の式(16)により演算される。
【0059】
【数16】
----(16)
【0060】
式(16)において、次数nは1以上の整数である。一例として3次の項までを考慮してみると、式(16)から以下の式(17)が得られる。
【0061】
【数17】
---------------------------------------------(17)
【0062】
式(17)を前述の式(12)に代入すると、モータ・トルクτmを以下の式(18)により表すことができる。
【0063】
【数18】
---(18)
【0064】
式(18)において、脈動トルク成分の大きさは、以下の式(19)により表すことができる。
【0065】
【数19】
--------------------------------------------------------------------(19)
【0066】
つまり、脈動トルク成分をほぼ零にすることができる。
【0067】
しかし、上記のように脈動トルク成分をほぼ零にするだけでは、直流的なトルクの増減はない。そこで、d軸の脈動電流指令値ΔId*により、直流トルク成分を確保する。具体的には、以下の式(20)によりΔId*を演算する。
【0068】
【数20】
------------------------------------------------------------(20)
【0069】
前述の式(18)を求めたのと同様に、式(17)と式(20)を式(12)に代入すると、モータ・トルクτmを表す以下の式(21)が得られる。
【0070】
【数21】
----------(21)
【0071】
前述の式(19)の関係により、式(21)を以下の式(22)のように書き換えることができる。
【0072】
【数22】
------------------------------(22)
【0073】
式(22)において、比例ゲインGの値を任意に設定することにより、12次調波の脈動トルク成分の波高値(p−p)すなわち振幅の1/2の大きさの分だけ、直流トルク成分を増加することができる。このようなトルクリプル抑制補償を行った場合のトルク特性を図9に示す。本抑制補償により、図9に示すように、図8の抑制補償なし時の特性と比べて、6次調波成分を大幅に低減することができる。また、磁石モータ1における12次調波の脈動トルク成分の振幅Δτm12の略1/2の大きさの分だけ直流トルク成分を増加させることができる。すなわち、比例ゲインGを調整することで、トルクリプルのリプル成分と直流成分とを任意に制御することができる。その結果、トルクリプルの直流成分を有効に使うことができる。
【0074】
−第2の実施の形態−
図10は、本発明の第2の実施の形態による永久磁石モータのトルクリプル抑制制御装置の構成例を示す。前述の第1の実施形態では、電流制御演算部10において比例・積分演算を用いた方式を採用した例を説明したが、本実施形態では、トルクリプルの周波数成分に感度を持つ脈動外乱電流制御演算を付加した例を以下に説明する。
【0075】
図1に示した第1の実施の形態では、電流制御演算部10において設定される式(3)に示した各制御ゲインKpd,Kid,Kpq,Kiqの値が小さい場合、高速領域において電流指令値への追従性が劣化するという問題がある。たとえば、電流制御演算部10に安価なマイコンを使用すると、制御演算周期が数msとなってしまうため、電流制御の応答周波数は数十Hz程度に制限されてしまう。
【0076】
図11は、永久磁石モータ1の回転数が高速領域にある際のd軸およびq軸の各電流情報Id*,Idc,Iq*,Iqcとu相の交流電流iucの動作波形を示す。図11により、モータの回転数が高速領域では、電流検出値Idc,Iqcが電流指令値Id*,Iq*に追従していない様子が分かる。この結果、第1の実施の形態で説明したような抑制補償を行った場合でも、トルクリプルが再び増大してしまう。
【0077】
そこで、本実施形態では、トルクリプルの周波数成分に感度を持つ脈動外乱電流制御演算を付加した制御を図10に示すトルクリプル抑制制御装置により行う。このトルクリプル抑制制御装置は、図1の電流制御演算部10に代わる電流制御演算部10´を備えている。なお、これ以外の部分は、図1のものと同一である。
【0078】
電流制御演算部10´は、図2に示す電流制御演算とは別に、トルクリプルの周波数成分に感度を持つ電流制御演算を行い、その出力値を図2に示す電流制御演算の出力に加算して、d軸およびq軸の電圧指令値Vdc**,Vqc**を出力する。
【0079】
図12を用いて、電流制御演算部10´を説明する。電流制御演算部10´において、d軸の脈動外乱電流制御演算部10´aは、入力されたd軸の電流偏差ΔId(=Id*−Idc)に基づいて、トルクリプルの周波数成分と同じ成分値を抑制する信号ΔVdc*を出力する。また、q軸の脈動外乱電流制御演算部10´bは、入力されたq軸の電流偏差ΔIq(=Iq*−Iqc)に基づいて、トルクリプルの脈動周波数成分と同じ成分値を抑制する信号ΔVqc*を出力する。電流制御演算部10´は、これらの信号ΔVdc*,ΔVqc*をd軸およびq軸の電圧指令値Vdc*,Vdc*にそれぞれ加算して、新しい電圧指令値Vdc**,Vdc**を出力する。
【0080】
次に、図13を用いて、d軸の脈動外乱電流制御演算部10´aの構成を説明する。d軸の脈動外乱電流制御演算部10´aにおいて、余弦信号発生部10´a2と正弦信号発生部10´a3には、位置検出器5からの位置検出値θdcと、定数発生部10´a1からの定数Nとがそれぞれ入力される。この入力された位置検出値θdcと定数Nにより、余弦信号発生部10´a2および正弦信号発生部10´a3から、余弦信号cos(N・θdc)、正弦信号sin(N・θdc)がそれぞれ出力される。これらの各信号には、d軸の電流偏差ΔIdが乗じられる。その後さらに、定数乗算部10´a4,10´a5において定数Kdがそれぞれ乗じられる。この余弦信号cos(N・θdc)、正弦信号sin(N・θdc)にd軸の電流偏差ΔIdおよび定数Kdをそれぞれ乗算した値は、もう一度余弦信号cos(N・θdc)、正弦信号sin(N・θdc)がそれぞれに乗じられた後、互いに加算される。この加算値を2倍した値が、d軸の脈動補償値ΔVdc*として、d軸の脈動外乱電流制御演算部10´aから出力される。
【0081】
次に、図14を用いて、q軸の脈動外乱電流制御演算部10´bの構成を説明する。q軸の脈動外乱電流制御演算部10´bにおいて、余弦信号発生部10´b2と正弦信号発生部10´b3には、位置検出器5からの位置検出値θdcと、定数発生部10´b1からの定数Nとがそれぞれ入力される。この入力された位置検出値θdcと定数Nにより、余弦信号発生部10´b2、正弦信号発生部10´b3から、図13の場合と同様に、余弦信号cos(N・θdc)、正弦信号sin(N・θdc)がそれぞれ出力される。これらの各信号には、q軸の電流偏差ΔIqが乗じられる。その後さらに、定数乗算部10´b4,10´b5において定数Kqがそれぞれ乗じられる。この余弦信号cos(N・θdc)、正弦信号sin(N・θdc)にq軸の電流偏差ΔIqおよび定数Kqをそれぞれ乗算した値は、図13の場合と同様に、もう一度余弦信号cos(N・θdc)、正弦信号sin(N・θdc)がそれぞれに乗じられた後、互いに加算される。この加算値を2倍した値が、q軸の脈動補償値ΔVqc*として、q軸の脈動外乱電流制御演算部10´bから出力される。
【0082】
ここからは、本発明の特徴となる上記の脈動電流制御演算部10´a,10´bについての原理説明を行う。ここでは、両者を代表して、脈動電流制御演算部10´bについて説明する。脈動電流制御演算部10´bでは、前述のように、余弦信号発生部10´b2と正弦信号発生部10´b3に、位置検出値θdcと、トルクの脈動周波数次数(電気周波数の一周期分に含まる1番大きな高調波成分の次数)を表す定数Nとがそれぞれ入力される。そして、余弦信号発生部10´b2と正弦信号発生部10´b3において、これらの乗算値(N・θdc)の余弦信号と正弦信号が演算される。
【0083】
ここで、q軸の電流検出値Iqcに含まれる高調波成分ΔIqripを、以下の式(23)により定義する。
【0084】
【数23】
----------------------------------------------------------------(23)
【0085】
式(23)において、|ΔIqrip|はN次高調波成分の振幅値である。
【0086】
余弦信号発生部10´b2と正弦信号発生部10´b3の出力信号のそれぞれに対して、上記の式(23)で定義される高調波成分の振幅値|ΔIqrip|を乗じた演算結果をIa1,Ib1とすると、これは以下の式(24)により表される。
【0087】
【数24】
------------------------------------------------------(24)
【0088】
式(24)の信号Ia1,Ib1に、定数乗算部10´b4,10´b5において所定の比例ゲインKqを乗じた結果をIa2,Ib2とすると、これは以下の式(25)により表される。
【0089】
【数25】
-----------------------------------------------(25)
【0090】
次に、上記の式(25)で求められた信号Ia2,Ib2を用いて、以下の式(26)によりq軸の脈動補償値ΔVqc*を演算する。
【0091】
【数26】
-----(26)
【0092】
上記の式(26)により、高調波成分ΔIqripをゲインKq倍した値で電圧値を補正することができることが分かる。
【0093】
d軸についても同様の演算を行い、d軸の脈動補償値ΔVdc*を演算する。これらの演算値ΔVdc*,ΔVqc*を、d軸およびq軸の電圧指令値Vdc*,Vqc*にそれぞれ加算して、インバータの出力電圧を制御する。これにより、トルクリプルの周波数成分Nに感度を持つ脈動外乱電流制御を行うことができる。
【0094】
図15に、本発明を用いた場合の制御特性を示す。上記のようなトルクリプル抑制補償を追加することにより、図11に示した抑制補償なし時の特性と比べて、モータの回転数が高速領域においても、電流検出値Idc,Iqcが電流指令値Id*,Iq*に精度良く追従している様子がわかる。つまり、高速領域においてもトルク脈動を抑制することが可能となる。
【0095】
なお、以上説明した第2の実施の形態において、d軸の脈動補償値ΔVdc*とq軸の脈動補償値ΔVqc*のいずれか一方のみを電流制御演算部10´において演算するようにしてもよい。すなわち、d軸の脈動外乱電流制御演算部10´aとq軸の脈動外乱電流制御演算部10´bのいずれか一方を有していなくてもよい。この場合、d軸またはq軸のうち脈動補償値の演算が行われない方は、第1の実施の形態と同様に、電圧指令値Vdc*またはVdc*をそのまま電流制御演算部10´から座標変換部11へ出力する。
【0096】
−第3の実施の形態−
図16は、本発明の第3の実施の形態による永久磁石モータのトルクリプル抑制制御装置の構成例を示す。前述の第1および第2の実施形態では、参照テーブル8aにより誘起電圧係数の情報信号を出力する例を説明したが、本実施形態では、脈動外乱電流制御の出力値を用いて誘起電圧係数の情報信号の推定演算を行い、トルクリプル抑制補償演算に用いる例を以下に説明する。
【0097】
図16に示すトルクリプル抑制制御装置は、図1,10の誘起電圧設定部8に代わる誘起電圧係数同定部8´を備えている。なお、これ以外の部分は、図10のものと同一である。
【0098】
誘起電圧係数同定部8´には、位置検出器5からの位置検出値θdcと、前述の第2の実施の形態で説明した電流制御演算部10´におけるd軸、q軸の脈動外乱電流制御演算部10´a、10´bからの出力値ΔVdc*,ΔVqc*とが入力される。これらの入力値に基づいて、誘起電圧係数同定部8´は、第1の実施の形態で説明した誘起電圧係数の各情報Ked,−Ked,−ΔKed,Keqおよび−ΔKeqに対して、それぞれの推定値Ked’,−Ked’,−ΔKed’,Keq’および−ΔKeq’を出力する。
【0099】
誘起電圧係数同定部8´の構成の一例を図17に示す。図17において、位置検出器5からの位置検出信号θdcは、微分演算部8´a1に入力される。微分演算部8´a1は、以下の式(27)の演算を行い、モータの角速度演算値ωdcを出力する。
【0100】
【数27】
----------------------------------------------------------------------(27)
【0101】
上記のようにして微分演算部8´a1から出力された信号ωdcは、脈動外乱電流制御演算部10´aの出力値ΔVdc*、または脈動外乱電流制御演算部10´bの出力値ΔVqc*のいずれかと共に、除算部8´a2、8´a3にそれぞれ入力される。除算部8´a2、8´a3は、入力された信号ωdcと、ΔVdc*またはΔVqc*とに基づいて、d軸、q軸の誘起電圧係数の推定値Ked^,Keq^を以下の式(28)によりそれぞれ演算する。
【0102】
【数28】
-------------------------------------------------------------------------(28)
【0103】
除算部8´a2、8´a3においてそれぞれ演算された推定値Ked^,Keq^は、位置検出信号θdcと共にメモリ部8´a4に入力される。メモリ部8´a4は、予め記憶された誘起電圧係数の各情報Ked,−Ked,−ΔKed,Keqおよび−ΔKeqに関するデータに基づいて、入力された信号θdcに応じた推定値Ked’,−Ked’,−ΔKed’,Keq’および−ΔKeq’を出力する。
【0104】
なお、メモリ部8´a4へのデータの記憶は、本装置の試運転時や調整時に行っても良い。あるいは、実運転中に行っても良い。いずれにしても、誘起電圧係数の各情報に関するデータをメモリ部8´a4へ記憶した後に、位置検出値θdcに応じて、それぞれの推定値Ked’,−Ked’,−ΔKed’,Keq’および−ΔKeq’を出力するようにすれば良い。
【0105】
あるいは、上記のように誘起電圧係数の各情報Ked,−Ked,−ΔKed,Keqおよび−ΔKeqに関するデータを予め記憶しておく代わりに、実運転中に誘起電圧係数の各情報を抽出し、その信号を推定値Ked’,−Ked’,−ΔKed’,Keq’および−ΔKeqとして出力するようにしても良い。
【0106】
図18は、これを実現する誘起電圧係数同定部8´の構成の一例を示す。図18において、位置検出器5からの位置検出信号θdcは微分演算部8´b1に入力される。微分演算部8´b1は、図17の微分演算部8´a1と同様に、式(27)の演算を行ってモータの角速度演算値ωdcを出力する。この信号ωdcは、脈動外乱電流制御演算部10´aの出力値ΔVdc*、または脈動外乱電流制御演算部10´bの出力値ΔVqc*のいずれかと共に、除算部8´b2、8´b3にそれぞれ入力される。除算部8´b2、8´b3は、図17の除算部8´a2、8´a3と同様に、入力された信号ωdcと、ΔVdc*またはΔVqc*とに基づいて、d軸、q軸の誘起電圧係数の推定値Ked^,Keq^を式(28)によりそれぞれ演算する。
【0107】
演算された推定値Ked^,Keq^は、誘起電圧係数情報抽出部8´b4に入力される。誘起電圧係数情報抽出部8´b4は、入力されたこれらの推定値に基づいて、誘起電圧係数の各情報の推定値Ked’,−Ked’,−ΔKed’,Keq’および−ΔKeq’を演算し、出力する。
【0108】
図19は、以上説明した第1〜第3いずれかの実施形態による永久磁石モータのトルクリプル抑制制御装置を車両の電動パワーステアリングシステムに対して適用した例を示す。図19において、符号101はステアリングホイール、符号102はステアリングホイール101と機械的に接続されたステアリングシャフト、符号103はトルクセンサ、符号104は磁石モータ1とステアリングシャフト102を機械的に接続する減速機構、符号105はECU(Engine Control Unit)、符号106はラックピニオン機構、符号107はタイロッドなどの連結機構、符号108は転舵輪をそれぞれ示す。ECU105には、第1〜第3いずれかの実施形態による永久磁石モータのトルクリプル抑制制御装置が搭載されている。なお、直流電源3、電流検出部4および位置検出器5は、図1、10および16に示したものと同一である。
【0109】
トルクセンサ103は、運転者のステアリングホイール101による転舵操作を検出する。ECU105は、トルクセンサ103による転舵操作の検出結果に基づいて、前述のトルクリプル抑制制御装置が有する電流指令変換部7へトルク指令値τ*を出力するトルク指令部を有している。これにより、得られたトルク指令値と出力トルクを一致させるように、トルクリプル抑制制御装置によって三相の電圧指令値が制御される。磁石モータ1は、減速機構104を介してステアリングシャフト102にアシスト力を加えることで、運転者のステアリングホイール101による転舵操作をアシストするものである。
【0110】
ECU105が有する永久磁石モータのトルクリプル抑制制御装置は、前述のようなトルクリプル抑制制御を行う。これにより、安価な誘起電圧が歪んでいる磁石モータ1を図19の電動パワーステアリングシステムにおいて用いた場合でも、高精度なトルク制御を実現することが可能である。たとえば、磁石モータ1の低速領域ではトルクリプルのリプル成分の抑制に重点を置く一方で、高速領域では直流成分の確保に重点を置く設定が可能となる。その結果、運転者がステアリングホイール101をゆっくり転舵した場合などに滑らかな操舵フィーリングを得ることができる。また、磁石モータ1の高速領域においては、直流トルク成分を確保することにより、磁石モータ1を高出力化することができる。したがって、磁石モータ1を小型化することも可能となる。
【0111】
−変形例−
以上説明した各実施の形態では、電流指令値Id*,Iq*と電流検出値Idc,Iqcに基づいて電圧指令値Vdc*,Vqc*を作成し、ベクトル制御を行う例を説明した。しかし、電流指令値Id*,Iq*と電流検出値Idc,Iqcに基づいて電圧補正値ΔVd、ΔVqを作成し、この電圧補正値と、電流指令値Id*,Iq*、速度演算値ωcdおよび磁石モータ1の定数とを用いて、以下の式(29)に従って電圧指令値Vdc*,Vqc*を演算することによりベクトル制御を行う場合にも、本発明を適用することができる。
【0112】
【数29】
------------------------------------------- (29)
【0113】
または、電流指令値Id*,Iq*と電流検出値Idc,Iqcから第2の電流指令値Id**,Iq**を作成し、この第2の電流指令値を用いて以下の式(30)に従ってベクトル制御を行う場合にも、本発明を適用することができる。
【0114】
【数30】
----------------------------------------------- (30)
【0115】
あるいは、誘起電圧係数Ke*を用いた上記の式(29)または(30)の代わりに、以下の式(31)または(32)を用いてベクトル制御を行うこととしてもよい。このようにすれば、図1の電流制御演算部10または図10、16の電流制御演算部10´の負担を減らすことができるため、電流指令値への追従性が良くなることは明らかである。
【0116】
【数31】
------------------------------------------- (31)
【0117】
【数32】
----------------------------------------------- (32)
【0118】
なお、上記の式(31)、(32)では、第1の実施の形態で説明した、予め設定された誘起電圧係数の情報Ked,Keqを使用している。しかし、これに代えて、第3の実施の形態で説明した誘起電圧係数の情報の推定値Ked’, Keq’を使用しても良い。
【0119】
また、第1〜第3の実施の形態では、電流検出器4で直接検出した交流電流iu〜iwを用いる例を説明したが、電力変換器2の過電流検出用に取り付けているワンシャント抵抗に流れる直流電流から交流電流iu〜iwを再現しても良い。
【0120】
さらに、第1〜第3の実施の形態では、エンコーダ、レゾルバ、磁極位置センサなどを用いた位置検出器5により磁石モータ1の回転位置を検出する例を説明したが、位置センサレス方式によりモータ制御を行う装置においても本発明を適用することができる。
【0121】
たとえば、電圧指令値Vdc*,Vqc*と電流検出値Idc,Iqcおよびモータ定数に基づいて、位相指令値とモータ位相値の偏差である位相誤差Δθcを以下の式(33)により演算する。
【0122】
【数33】
---------------------------------------------- (33)
【0123】
式(33)によって演算される信号Δθcをゼロにするように、周波数推定値ωdc´を制御することで、モータ制御を行うことができる。このような位置センサレス制御方式にも本発明を適用することができる。
【0124】
なお、以上説明した各実施形態と変形例の一つ、もしくは複数を組み合わせることも可能である。変形例をどのように組み合わせることも可能である。
【0125】
以上の説明はあくまで一例であり、本発明は上記実施形態の構成に何ら限定されるものではない。
【符号の説明】
【0126】
1…磁石モータ、2…電力変換器、3…直流電源、4…電流検出器、
5…位置検出器、6…座標変換部、7…電流指令変換部、
8…誘起電圧係数設定部、8´…誘起電圧係数同定部、
9…トルクリプル抑制演算部、10、10´…電流制御演算部、11…座標変換部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部より入力されるトルク指令値に基づいて電流指令値を出力する電流指令変換部と、
永久磁石モータの回転位置を検出して位置検出値を出力する位置検出器と、
前記永久磁石モータの電流を検出して電流検出値を出力する電流検出部と、
前記位置検出値に基づいて前記永久磁石モータの誘起電圧係数に関する情報信号を出力する誘起電圧係数設定部と、
前記情報信号および予め設定された比例ゲインに基づいて前記永久磁石モータの電流補正指令値を出力するトルクリプル抑制演算部と、
前記電流指令値および前記電流補正指令値の加算結果と、前記電流検出値とに基づいて、前記永久磁石モータを駆動するための電圧指令値を出力する電流制御演算部と、
前記電圧指令値に基づいて前記永久磁石モータを駆動するための電圧を出力する電力変換器とを備えることを特徴とする永久磁石モータのトルクリプル抑制制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の永久磁石モータのトルクリプル抑制制御装置において、
前記電流指令変換部は、前記永久磁石モータの回転座標系のd軸およびq軸の各電流指令値を出力し、
前記誘起電圧係数設定部は、前記d軸および前記q軸の各誘起電圧係数に関する情報信号を出力し、
前記トルクリプル抑制演算部は、前記d軸および前記q軸の各電流補正指令値を出力し、
前記電流制御演算部は、前記d軸の電流指令値および前記d軸の電流補正指令値の加算結果と、前記q軸の電流指令値および前記q軸の電流補正指令値の加算結果と、前記電流検出値とに基づいて、前記d軸および前記q軸の各電圧指令値を出力することを特徴とする永久磁石モータのトルクリプル抑制制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載の永久磁石モータのトルクリプル抑制制御装置において、
前記d軸および前記q軸の各電圧指令値を前記永久磁石モータの固定子座標系の三相の電圧指令値に変換する座標変換部をさらに備え、
前記電力変換器は、前記三相の電圧指令値に基づいて前記電圧を出力することを特徴とする永久磁石モータのトルクリプル抑制制御装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載の永久磁石モータのトルクリプル抑制制御装置において、
前記誘起電圧係数設定部は、前記情報信号として、前記d軸および前記q軸の各誘起電圧係数と、前記d軸および前記q軸のいずれか少なくとも一方の誘起電圧係数の平均値および脈動成分の振幅値とを出力することを特徴とする永久磁石モータのトルクリプル抑制制御装置。
【請求項5】
請求項4に記載の永久磁石モータのトルクリプル抑制制御装置において、
前記d軸および前記q軸の各誘起電圧係数は前記位置検出値に応じてそれぞれ変化し、前記平均値および前記脈動成分の振幅値は前記位置検出値に関わらず一定であることを特徴とする永久磁石モータのトルクリプル抑制制御装置。
【請求項6】
請求項4または5に記載の永久磁石モータのトルクリプル抑制制御装置において、
前記トルクリプル抑制演算部は、前記d軸の誘起電圧係数の脈動成分および平均値に基づいて、前記q軸の電流補正指令値を出力することを特徴とする永久磁石モータのトルクリプル抑制制御装置。
【請求項7】
請求項6に記載の永久磁石モータのトルクリプル抑制制御装置において、
前記トルクリプル抑制演算部は、以下の式に基づいて前記q軸の電流補正指令値ΔIq*を出力することを特徴とする永久磁石モータのトルクリプル抑制制御装置。
【数34】
ただし、nは整数、ΔKedは前記d軸の誘起電圧係数の脈動成分、−Kedは前記d軸の誘起電圧係数の平均値、−Iqは前記q軸の電流の平均値をそれぞれ表す。
【請求項8】
請求項4〜7のいずれか一項に記載の永久磁石モータのトルクリプル抑制制御装置において、
前記トルクリプル抑制演算部は、前記比例ゲインと、前記d軸および前記q軸の各誘起電圧係数の脈動成分の振幅値と、前記q軸の誘起電圧係数の脈動成分と、前記d軸の誘起電圧係数の平均値とに基づいて、前記q軸の電流補正指令値を出力することを特徴とする永久磁石モータのトルクリプル抑制制御装置。
【請求項9】
請求項8に記載の永久磁石モータのトルクリプル抑制制御装置において、
前記トルクリプル抑制演算部は、以下の式に基づいて前記d軸の電流補正指令値ΔId*を出力することを特徴とする永久磁石モータのトルクリプル抑制制御装置。
【数35】
ただし、Gは比例ゲイン、−ΔKedは前記d軸の誘起電圧係数の脈動成分の振幅値、−ΔKeqは前記q軸の誘起電圧係数の脈動成分の振幅値、ΔKeqは前記q軸の誘起電圧係数の脈動成分、−Kedは前記d軸の誘起電圧係数の平均値、−Iqは前記q軸の電流の平均値をそれぞれ表す。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の永久磁石モータのトルクリプル抑制制御装置において、
前記電流制御演算部は、
前記位置検出値と前記永久磁石モータにおけるトルクの脈動周波数次数とに基づく脈動補償値を出力する脈動外乱電流制御演算部を含み、
前記電流指令値および前記電流補正指令値の加算結果と前記電流検出値とに基づく第1の電圧指令値と、前記脈動補償値とを加算し、その加算結果を前記電圧指令値として出力することを特徴とする永久磁石モータのトルクリプル抑制制御装置。
【請求項11】
請求項10に記載の永久磁石モータのトルクリプル抑制制御装置において、
前記脈動外乱電流制御演算部は、
前記位置検出値と前記脈動周波数次数とに基づく正弦信号を発生する正弦信号発生部と、
前記位置検出値と前記脈動周波数次数とに基づく余弦信号を発生する余弦信号発生部と、
前記正弦信号に前記電流指令値と前記電流検出値との差分である電流偏差を乗算し、その乗算結果に定数を乗算し、その乗算結果にさらに前記正弦信号を乗算した第1の演算値を求める正弦演算部と、
前記余弦信号に前記電流偏差を乗算し、その乗算結果に前記定数を乗算し、その乗算結果にさらに前記余弦信号を乗算した第2の演算値を求める余弦演算部と、
前記第1の演算値と前記第2の演算値とを加算した値を2倍した値を前記脈動補償値として出力することを特徴とする永久磁石モータのトルクリプル抑制制御装置。
【請求項12】
請求項11に記載の永久磁石モータのトルクリプル抑制制御装置において、
前記正弦信号発生部および前記余弦信号発生部は、前記位置検出値に前記脈動周波数次数を乗算した値の正弦値および余弦値を前記正弦信号および前記余弦信号としてそれぞれ出力することを特徴とする永久磁石モータのトルクリプル抑制制御装置。
【請求項13】
請求項10〜12のいずれか一項に記載の永久磁石モータのトルクリプル抑制制御装置において、
前記脈動外乱電流制御演算部は、前記永久磁石モータの回転座標系のd軸およびq軸のいずれか少なくとも一方について前記脈動補償値を出力し、
前記電流制御演算部は、前記脈動外乱電流制御演算部により前記脈動補償値が出力された軸に対しては、前記第1の電圧指令値と前記脈動補償値との加算結果を前記電圧指令値として出力し、前記脈動外乱電流制御演算部により前記脈動補償値が出力されない軸に対しては、前記第1の電圧指令値を前記電圧指令値として出力することを特徴とする永久磁石モータのトルクリプル抑制制御装置。
【請求項14】
請求項2〜9のいずれか一項に記載の永久磁石モータのトルクリプル抑制制御装置において、
前記誘起電圧係数設定部は、前記位置検出値と、前記d軸および前記q軸の各電圧指令値とに基づいて、前記d軸および前記q軸の各誘起電圧係数に関する情報信号を出力することを特徴とする永久磁石モータのトルクリプル抑制制御装置。
【請求項15】
請求項10〜13のいずれか一項に記載の永久磁石モータのトルクリプル抑制制御装置において、
前記脈動外乱電流制御演算部は、前記永久磁石モータの回転座標系のd軸およびq軸の各脈動補償値を出力し、
前記誘起電圧係数設定部は、前記位置検出値と、前記d軸および前記q軸の各脈動補償値とに基づいて、前記d軸および前記q軸の各誘起電圧係数に関する情報信号を出力することを特徴とする永久磁石モータのトルクリプル抑制制御装置。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれか一項に記載の永久磁石モータのトルクリプル抑制制御装置において、
前記電力変換器は、前記電流指令値に前記電流補正指令値を加算しない場合に前記電流制御演算部から出力される電圧指令値によって前記永久磁石モータを駆動した場合の直流トルクと比較して、前記永久磁石モータにおける12次調波の脈動トルク成分の振幅の略1/2分だけ前記永久磁石モータの直流トルクを増加させることを特徴とする永久磁石モータのトルクリプル抑制制御装置。
【請求項17】
請求項1〜16のいずれか一項に記載の永久磁石モータのトルクリプル抑制制御装置と、
前記永久磁石モータと、
減速機構を介して前記永久磁石モータと機械的に接続されるステアリングシャフトと、
前記ステアリングシャフトと機械的に接続されるステアリングホイールと、
前記ステアリングホイールを介して入力される操作を検出するトルクセンサと、
前記トルクセンサによる前記操作の検出結果に基づいて前記トルク指令値を出力するトルク指令部とを備えることを特徴とする電動パワーステアリングシステム。
【請求項1】
外部より入力されるトルク指令値に基づいて電流指令値を出力する電流指令変換部と、
永久磁石モータの回転位置を検出して位置検出値を出力する位置検出器と、
前記永久磁石モータの電流を検出して電流検出値を出力する電流検出部と、
前記位置検出値に基づいて前記永久磁石モータの誘起電圧係数に関する情報信号を出力する誘起電圧係数設定部と、
前記情報信号および予め設定された比例ゲインに基づいて前記永久磁石モータの電流補正指令値を出力するトルクリプル抑制演算部と、
前記電流指令値および前記電流補正指令値の加算結果と、前記電流検出値とに基づいて、前記永久磁石モータを駆動するための電圧指令値を出力する電流制御演算部と、
前記電圧指令値に基づいて前記永久磁石モータを駆動するための電圧を出力する電力変換器とを備えることを特徴とする永久磁石モータのトルクリプル抑制制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の永久磁石モータのトルクリプル抑制制御装置において、
前記電流指令変換部は、前記永久磁石モータの回転座標系のd軸およびq軸の各電流指令値を出力し、
前記誘起電圧係数設定部は、前記d軸および前記q軸の各誘起電圧係数に関する情報信号を出力し、
前記トルクリプル抑制演算部は、前記d軸および前記q軸の各電流補正指令値を出力し、
前記電流制御演算部は、前記d軸の電流指令値および前記d軸の電流補正指令値の加算結果と、前記q軸の電流指令値および前記q軸の電流補正指令値の加算結果と、前記電流検出値とに基づいて、前記d軸および前記q軸の各電圧指令値を出力することを特徴とする永久磁石モータのトルクリプル抑制制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載の永久磁石モータのトルクリプル抑制制御装置において、
前記d軸および前記q軸の各電圧指令値を前記永久磁石モータの固定子座標系の三相の電圧指令値に変換する座標変換部をさらに備え、
前記電力変換器は、前記三相の電圧指令値に基づいて前記電圧を出力することを特徴とする永久磁石モータのトルクリプル抑制制御装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載の永久磁石モータのトルクリプル抑制制御装置において、
前記誘起電圧係数設定部は、前記情報信号として、前記d軸および前記q軸の各誘起電圧係数と、前記d軸および前記q軸のいずれか少なくとも一方の誘起電圧係数の平均値および脈動成分の振幅値とを出力することを特徴とする永久磁石モータのトルクリプル抑制制御装置。
【請求項5】
請求項4に記載の永久磁石モータのトルクリプル抑制制御装置において、
前記d軸および前記q軸の各誘起電圧係数は前記位置検出値に応じてそれぞれ変化し、前記平均値および前記脈動成分の振幅値は前記位置検出値に関わらず一定であることを特徴とする永久磁石モータのトルクリプル抑制制御装置。
【請求項6】
請求項4または5に記載の永久磁石モータのトルクリプル抑制制御装置において、
前記トルクリプル抑制演算部は、前記d軸の誘起電圧係数の脈動成分および平均値に基づいて、前記q軸の電流補正指令値を出力することを特徴とする永久磁石モータのトルクリプル抑制制御装置。
【請求項7】
請求項6に記載の永久磁石モータのトルクリプル抑制制御装置において、
前記トルクリプル抑制演算部は、以下の式に基づいて前記q軸の電流補正指令値ΔIq*を出力することを特徴とする永久磁石モータのトルクリプル抑制制御装置。
【数34】
ただし、nは整数、ΔKedは前記d軸の誘起電圧係数の脈動成分、−Kedは前記d軸の誘起電圧係数の平均値、−Iqは前記q軸の電流の平均値をそれぞれ表す。
【請求項8】
請求項4〜7のいずれか一項に記載の永久磁石モータのトルクリプル抑制制御装置において、
前記トルクリプル抑制演算部は、前記比例ゲインと、前記d軸および前記q軸の各誘起電圧係数の脈動成分の振幅値と、前記q軸の誘起電圧係数の脈動成分と、前記d軸の誘起電圧係数の平均値とに基づいて、前記q軸の電流補正指令値を出力することを特徴とする永久磁石モータのトルクリプル抑制制御装置。
【請求項9】
請求項8に記載の永久磁石モータのトルクリプル抑制制御装置において、
前記トルクリプル抑制演算部は、以下の式に基づいて前記d軸の電流補正指令値ΔId*を出力することを特徴とする永久磁石モータのトルクリプル抑制制御装置。
【数35】
ただし、Gは比例ゲイン、−ΔKedは前記d軸の誘起電圧係数の脈動成分の振幅値、−ΔKeqは前記q軸の誘起電圧係数の脈動成分の振幅値、ΔKeqは前記q軸の誘起電圧係数の脈動成分、−Kedは前記d軸の誘起電圧係数の平均値、−Iqは前記q軸の電流の平均値をそれぞれ表す。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の永久磁石モータのトルクリプル抑制制御装置において、
前記電流制御演算部は、
前記位置検出値と前記永久磁石モータにおけるトルクの脈動周波数次数とに基づく脈動補償値を出力する脈動外乱電流制御演算部を含み、
前記電流指令値および前記電流補正指令値の加算結果と前記電流検出値とに基づく第1の電圧指令値と、前記脈動補償値とを加算し、その加算結果を前記電圧指令値として出力することを特徴とする永久磁石モータのトルクリプル抑制制御装置。
【請求項11】
請求項10に記載の永久磁石モータのトルクリプル抑制制御装置において、
前記脈動外乱電流制御演算部は、
前記位置検出値と前記脈動周波数次数とに基づく正弦信号を発生する正弦信号発生部と、
前記位置検出値と前記脈動周波数次数とに基づく余弦信号を発生する余弦信号発生部と、
前記正弦信号に前記電流指令値と前記電流検出値との差分である電流偏差を乗算し、その乗算結果に定数を乗算し、その乗算結果にさらに前記正弦信号を乗算した第1の演算値を求める正弦演算部と、
前記余弦信号に前記電流偏差を乗算し、その乗算結果に前記定数を乗算し、その乗算結果にさらに前記余弦信号を乗算した第2の演算値を求める余弦演算部と、
前記第1の演算値と前記第2の演算値とを加算した値を2倍した値を前記脈動補償値として出力することを特徴とする永久磁石モータのトルクリプル抑制制御装置。
【請求項12】
請求項11に記載の永久磁石モータのトルクリプル抑制制御装置において、
前記正弦信号発生部および前記余弦信号発生部は、前記位置検出値に前記脈動周波数次数を乗算した値の正弦値および余弦値を前記正弦信号および前記余弦信号としてそれぞれ出力することを特徴とする永久磁石モータのトルクリプル抑制制御装置。
【請求項13】
請求項10〜12のいずれか一項に記載の永久磁石モータのトルクリプル抑制制御装置において、
前記脈動外乱電流制御演算部は、前記永久磁石モータの回転座標系のd軸およびq軸のいずれか少なくとも一方について前記脈動補償値を出力し、
前記電流制御演算部は、前記脈動外乱電流制御演算部により前記脈動補償値が出力された軸に対しては、前記第1の電圧指令値と前記脈動補償値との加算結果を前記電圧指令値として出力し、前記脈動外乱電流制御演算部により前記脈動補償値が出力されない軸に対しては、前記第1の電圧指令値を前記電圧指令値として出力することを特徴とする永久磁石モータのトルクリプル抑制制御装置。
【請求項14】
請求項2〜9のいずれか一項に記載の永久磁石モータのトルクリプル抑制制御装置において、
前記誘起電圧係数設定部は、前記位置検出値と、前記d軸および前記q軸の各電圧指令値とに基づいて、前記d軸および前記q軸の各誘起電圧係数に関する情報信号を出力することを特徴とする永久磁石モータのトルクリプル抑制制御装置。
【請求項15】
請求項10〜13のいずれか一項に記載の永久磁石モータのトルクリプル抑制制御装置において、
前記脈動外乱電流制御演算部は、前記永久磁石モータの回転座標系のd軸およびq軸の各脈動補償値を出力し、
前記誘起電圧係数設定部は、前記位置検出値と、前記d軸および前記q軸の各脈動補償値とに基づいて、前記d軸および前記q軸の各誘起電圧係数に関する情報信号を出力することを特徴とする永久磁石モータのトルクリプル抑制制御装置。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれか一項に記載の永久磁石モータのトルクリプル抑制制御装置において、
前記電力変換器は、前記電流指令値に前記電流補正指令値を加算しない場合に前記電流制御演算部から出力される電圧指令値によって前記永久磁石モータを駆動した場合の直流トルクと比較して、前記永久磁石モータにおける12次調波の脈動トルク成分の振幅の略1/2分だけ前記永久磁石モータの直流トルクを増加させることを特徴とする永久磁石モータのトルクリプル抑制制御装置。
【請求項17】
請求項1〜16のいずれか一項に記載の永久磁石モータのトルクリプル抑制制御装置と、
前記永久磁石モータと、
減速機構を介して前記永久磁石モータと機械的に接続されるステアリングシャフトと、
前記ステアリングシャフトと機械的に接続されるステアリングホイールと、
前記ステアリングホイールを介して入力される操作を検出するトルクセンサと、
前記トルクセンサによる前記操作の検出結果に基づいて前記トルク指令値を出力するトルク指令部とを備えることを特徴とする電動パワーステアリングシステム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2011−151883(P2011−151883A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−9044(P2010−9044)
【出願日】平成22年1月19日(2010.1.19)
【出願人】(000001340)国産電機株式会社 (191)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年1月19日(2010.1.19)
【出願人】(000001340)国産電機株式会社 (191)
【Fターム(参考)】
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