説明

通信エリア設定装置

【課題】近距離無線通信の通信距離の確保と、通信端末内の回路破壊の防止とを両立することができる通信エリア設定装置を提供する。
【解決手段】リーダライタ10の可変式ダンプ抵抗22にHiインピーダンス抵抗23を並列接続し、Hiインピーダンス抵抗23によってアンテナ電流Iaを監視することにより、電子キー2の接近を検知する。アンテナ電流Iaが低下すると、電子キー2がアンテナ13に接近してきたとして可変式ダンプ抵抗22を高い値に切り換え、アンテナ電流Iaを弱める。このため、アンテナ13の送信磁界強度が低くなって、アンテナ13の送信エリアが小さくなる。よって、電子キー2の接近検知を広めにとるために、最初はアンテナ13の送信強度を高めに設定しておいても、電子キー2の接近に伴ってアンテナ13の送信磁界強度が弱に切り換えられるので、電子キー2に過剰な電力が供給されずに済む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁界アンテナの通信エリアを設定する通信エリア設定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、2者間の無線通信として、例えばNFC(Near Field Communication)が広く普及している(特許文献1等参照)。NFCには、例えばMifareやフェリカ(ともに登録商標)等がある。NFCでは、通信マスタにリーダライタが設置され、このリーダライタにタグがかざされると、双方向通信が開始される。詳しくは、リーダライタから送信された駆動電波によってタグが起動し、タグがデータをリーダライタに返信する。タグは、非常に小さなICチップからなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−266651号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、この種のNFCの通信距離は、電波法やISO規格を満たすために、例えば10cm以下と非常に短い現状がある。ここで、仮に通信距離を延ばすために、例えばリーダライタの送信磁界の強度を強くすることも想定されるが、この対策をとると、タグが接近した際に、タグの電子回路に過剰の電力が供給されるため、タグの電子回路が破壊される可能性があった。よって、NFCの通信距離の確保と、タグの回路破壊防止とを両立したいニーズがあった。
【0005】
本発明の目的は、近距離無線通信の通信距離の確保と、通信端末内の回路破壊の防止とを両立することができる通信エリア設定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記問題点を解決するために、本発明では、通信マスタとその通信端末とが磁界を電波とする近距離無線通信を介して通信する通信エリア設定装置において、前記通信マスタへの前記通信端末の接近距離を検出する距離検出手段と、前記通信マスタのアンテナの送信磁界強度を決める一要素である可変式設定要素と、前記距離検出手段の検出値を基に前記可変式設定要素の値を設定することにより、前記送信磁界強度を前記接近距離に応じた値に切り換えて、前記通信マスタの通信エリアを設定するエリア設定手段とを備えたことを要旨とする。
【0007】
この構成によれば、通信マスタへの通信端末の接近距離が監視され、この接近距離に応じた範囲に通信マスタの通信エリアが設定される。よって、通信マスタと通信端末との間の距離に応じて、通信マスタの通信エリアが調整される。このため、通信端末が通信マスタから遠い位置にある際、通信マスタの送信磁界強度を強くすれば、通信マスタの送信磁界が通信端末まで届くことになり、2者間の通信距離を広くとることが可能となる。
【0008】
また、通信マスタの通信エリアが通信端末との接近距離に応じて切り換わるので、通信端末が通信マスタに近づくに従い、通信マスタの送信磁界強度を低い値に切り換えることも可能である。よって、通信マスタと通信端末との通信距離を延ばした場合であっても、通信端末に高い電圧の送信磁界が加わらない。このため、通信端末の電子回路に高電圧がかからずに済むので、通信端末の電子回路を破損から保護することも可能となる。
【0009】
本発明では、前記エリア設定手段は、前記通信端末が前記通信マスタに近づくに従い、前記送信磁界強度を小さくすることを要旨とする。
この構成によれば、通信マスタと通信端末との間の通信距離を広くとるために、最初は通信マスタの送信磁界強度を強く設定していても、通信端末が通信マスタに接近するに従って、通信マスタの送信磁界強度が小さい値に切り換えられる。よって、通信マスタと通信端末との通信距離を延ばしても、通信端末に過度に強い送信磁界が付与されない。
【0010】
本発明では、前記距離検出手段は、前記アンテナに流れる電流を基に、前記接近距離を検出するアンテナ電流検出手段であることを要旨とする。
この構成によれば、アンテナ電流によって接近距離を検出するので、電流値を検出する素子を通信マスタに搭載するだけで接近距離を検出することが可能となる。
【0011】
本発明では、前記距離検出手段は、前記通信マスタにおける通信回路のインピーダンス変化を基に、前記接近距離を検出するインピーダンス検出手段であることを要旨とする。
この構成によれば、通信マスタにおける通信回路のインピーダンス変化を基に接近距離を検出するので、アンテナ電流で接近距離を検出する場合に必要であった素子等を用いることなく、接近距離を検出することが可能となる。
【0012】
本発明では、前記距離検出手段は、前記通信マスタの制御回路から流れ出る電流を基に、前記接近距離を検出する消費電流検出手段であることを要旨とする。
この構成によれば、通信マスタの制御回路から流れ出る電流を基に接近距離を検出するので、制御回路から流れ出る電流を直に見るという簡素な構成によって接近距離を検出することが可能となる。
【0013】
本発明では、前記可変式設定要素は、可変式のダンプ抵抗であることを要旨とする。
この構成によれば、可変式設定要素を可変式のダンプ抵抗としたので、アンテナの共振回路のQ値を低くするために通信マスタに元から備えられていたダンプ抵抗を、可変式のものに置き換えるだけで済む。よって、本例を採用するにあたって、大幅な回路変更が生じない。
【0014】
本発明では、前記可変式設定要素は、アンプであって、前記エリア設定手段は、前記アンプの利得を切り換えることにより、前記通信エリアを設定することを要旨とする。
この構成によれば、アンプの利得を切り換えることでアンテナの通信エリアを変更するので、アンテナ側のインピーダンスを大きく変化させることなく、アンテナの通信エリアのみを変更することが可能となる。このため、インピーダンス変化を要因とする消費電流の増加に影響を受けずに、アンテナの通信エリアの切り換えが可能となる。
【0015】
本発明では、前記可変式設定要素は、可変式のダンプ抵抗と、整合回路の静電容量成分とを備え、前記エリア設定は、前記可変式のダンプ抵抗及び前記静電容量成分を切り換えることにより、前記通信エリアを設定することを要旨とする。
【0016】
この構成によれば、例えば可変式ダンプ抵抗のみを調整することでアンテナの通信エリアを変更すると、アンテナ側のインピーダンスが大きく変化して、アンテナ側と制御回路側とでインピーダンスがマッチングし、消費電流が増加するとともに通信波形も変化する。従って、安定した通信が実現できる範囲での変化幅はそれ程大きくない。しかし、静電容量成分も同時に調整することにより、インピーダンス変化を軽減させるため、より効果的(劇的)にアンテナの通信エリアの切り換えが可能となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、近距離無線通信の通信距離の確保と、通信端末内の回路破壊の防止とを両立することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1実施形態における通信エリア設定装置の構成を示す回路ブロック図。
【図2】アンテナの共振回路のQ値をダンプする説明図。
【図3】接近距離とアンテナ電流との相関関係を示すグラフ。
【図4】(a),(b)は本例の作用を説明する遷移図。
【図5】第2実施形態における通信エリア設定装置の構成を示す回路ブロック図。
【図6】接近距離に応じたインピーダンスの移り変わりを示すスミスチャート。
【図7】(a),(b)はスミスチャートの構成原理を示す説明図。
【図8】第3実施形態における通信エリア設定装置の構成を示す回路ブロック図。
【図9】接近距離と通信回路消費電流との相関関係を示すグラフ。
【図10】第4実施形態における通信エリア設定装置の回路ブロック図。
【図11】リーダライタの出力と通信距離との関係を示すグラフ。
【図12】第5実施形態における通信エリア設定装置の回路ブロック図。
【図13】(a)〜(c)はRF回路インピーダンスの変化と電子キーの誘起電圧の変化との関係図。
【図14】別例におけるアンテナ構成を示す回路図。
【図15】他の別例におけるアンテナ構成を示す回路図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(第1実施形態)
以下、本発明を車両に具体化した通信エリア設定装置の第1実施形態を図1〜図4に従って説明する。
【0020】
図1に示すように、車両1には、電子キー2との近距離無線通信によりID照合を実行する電子キーシステム3が設けられている。近距離無線通信は、いわゆるNFC(Near Field Communication)であって、例えばMifareやフェリカ(ともに登録商標)等が使用されている。この電子キーシステム3において、車外でID照合(車外照合)が成立すれば、ドアロック施解錠が許可又は実行され、車内でID照合(車内照合)が成立すれば、エンジン始動が許可される。なお、電子キー2が通信端末に相当する。
【0021】
この場合、車両1には、電子キー2のIDコードを照合するキー照合装置4と、車両ドアの施解錠動作を管理するドアロック装置5と、エンジンの動作を管理するエンジン始動装置6とが設けられ、これらが車内バス7を介して接続されている。このうち、キー照合装置4には、IDコードの照合動作を実行する照合ECU8が設けられている。エンジン始動装置6には、車両1の電源状態を切り換える際に操作するエンジンスイッチ9が接続されている。
【0022】
照合ECU8には、電子キーシステム3の車両1側の通信装置としてリーダライタ10が接続されている。リーダライタ10は、通信相手である電子キー2への各種データの書き込み及び読み出しを行うものである。なお、リーダライタ10は、車外照合及び車内照合を行うために車外及び車内のそれぞれに設けられているが、本例の場合は便宜上、これらを1つのリーダライタ10として図示する。また、リーダライタ10が通信マスタに相当する。
【0023】
リーダライタ10には、電子キー2との近距離無線通信を管理するリーダライタ制御ECU11が設けられている。リーダライタ制御ECU11には、通信回路12を介して近距離無線通信用のアンテナ13が接続されている。アンテナ13は、電波として磁界を送信する磁界アンテナであって、例えばループアンテナが使用されている。アンテナ13は、送受信アンテナであって、例えばHF(High Frequency:13.56MHz)帯の電波を送受信する。アンテナ13は、インダクタンスLとしてのアンテナコイル14と、複数のキャパシタンスCを持つ整合回路(マッチング回路)15とを備える。通信回路12は、アンテナ13から送信する電波を変調したり、或いはアンテナ13で受信した電波を復調したりするものである。アンテナ13は、HF帯の磁界アンテナであるため、図4に示すように、平面視において略円形状の通信エリアEaを形成する。
【0024】
電子キー2は、リーダライタ10と近距離無線通信を行う、いわゆるICタグである。電子キー2には、電子キー2の動作を管理する通信制御回路17が設けられている。通信制御回路17には、電子キー2のIDコードが登録されている。
【0025】
通信制御回路17には、近距離無線通信用のアンテナ18が接続されている。アンテナ18は、磁界アンテナの一種として例えばループアンテナが使用されている。アンテナ18は、アンテナコイル19と共振用のコンデンサ20との並列共振回路からなる。電子キー2は、電磁誘導で発生した電圧を最大化するよう動作するため、並列共振をとる。アンテナ18は、送受信アンテナであって、例えばHF帯の電波を送受信する。
【0026】
リーダライタ制御ECU11は、例えば車両1が駐車状態にあるときや、ユーザが乗車したとき、アンテナ13から電子キー2の電源として駆動電波Svを断続的に送信する。電子キー2が駆動電波Svの通信エリアEa内に進入して駆動電波Svを受信すると、駆動電波Svを電源として起動して、ID信号Sidをアンテナ18から送信する。ID信号Sidには、電子キー2のIDコードが含まれる。リーダライタ制御ECU11は、ID信号Sidをアンテナ13で受信すると、ID信号Sid内のIDコードを照合ECU8に転送する。照合ECU8は、リーダライタ制御ECU11からIDコードを入力すると、ID照合を行い、ID照合が成立すれば、ドアロック施解錠やエンジン始動を許可又は実行する。
【0027】
電子キーシステム3には、リーダライタ10(アンテナ13)の通信エリアEaを電子キー2との距離(接近距離rと記す)に応じて設定する通信エリア設定装置21が設けられている。本例の通信エリア設定装置21は、接近距離rが小さくなると、リーダライタ10の磁界送信強度を低く設定して、リーダライタ10の通信エリアEa(図4参照)を小さいエリアに切り換えるものである。
【0028】
この場合、アンテナコイル14と整合回路15との間には、共振回路の共振の鋭さ(Q値)を低く抑えるダンプ抵抗(ダンピング抵抗)22が接続されている。アンテナ13は、アンテナコイル14のLと、整合回路15のCと、ダンプ抵抗22のRとのRLC共振回路からなる。ところで、Q値は、共振周波数をf、アンテナコイル14のインダクタンスをL、アンテナコイル14及びダンプ抵抗22の銅損をRとすると、次式により算出される。
Q=(2πfL)/R
よって、ダンプ抵抗22を大きくすれば、Q値を低く抑えられることが分かる。ところで、図2に示すように、Q値が高いと、送信電波の変調波形がなまり、送信電波のビットを正確に判断できない可能性に繋がる。しかし、Q値を低い値に抑えれば、送信帯域が広がり、結果、送信電波の変調波形が矩形波に近づくことになる。よって、正確なビット判定確保のために、アンテナ13にダンプ抵抗22を接続して、Q値を低くするようにしている。
【0029】
ダンプ抵抗22は、リーダライタ10に元から搭載されている部品であるが、本例の場合、これを可変式とする。可変式ダンプ抵抗22は、共振回路の一要素になっているため、アンテナ13の送信磁界強度、つまりリーダライタ10の通信エリアEaにも関係する要素となっている。よって、ダンプ抵抗22を可変式として値を切り換えると、アンテナ13に流れる電流(以降、アンテナ電流Iaと記す)が変化するため、リーダライタ10の送信磁界も変化する。従って、リーダライタ10の通信エリアEaがダンプ抵抗22の値に応じた範囲に設定される。なお、可変式ダンプ抵抗22が可変式設定要素を構成する。また、ダンプ抵抗22の抵抗値を必要以上に大きくすると、抵抗分でのロスが大きくなり、磁界強度が小さくなってしまう。さらに、ICの出力インピーダンスとの整合条件との関係からも、ダンプ抵抗22は単純に大きくすればよいものではなく、好適な目標値がある。
【0030】
可変式ダンプ抵抗22には、アンテナ電流Iaを検出するHiインピーダンス抵抗23が並列接続されている。ところで、図3に示すように、接近距離rとアンテナ電流Iaとの間には、接近距離rが短くなるに連れてアンテナ電流Iaが低下する相関関係がある。これは、アンテナ13の電力が電子キー2の接近によって電子キー2に伝送されるので、アンテナ13が有する磁界エネルギーの源であるアンテナ電流Iaは減少するためである。言い換えるならば、アンテナ13の磁界エネルギーが電子キー2に移動し、アンテナ13の共振回路に逆方向の誘起電流が流れるため、磁界を損失する方向にエネルギーが作用するからである。Hiインピーダンス抵抗23は、ダンプ抵抗22の端子間における誘起電圧Vs(図1参照)を検出することによって、アンテナ電流Iaを検出する。なお、Hiインピーダンス抵抗23が距離検出手段(アンテナ電流検出手段)を構成する。
【0031】
図1に示すように、車両1には、リーダライタ10の通信エリアEaを設定するエリア設定回路24が設けられている。エリア設定回路24は、リーダライタ制御ECU11から独立した例えば1チップICからなる。また、エリア設定回路24はリーダライタ制御ECU11中に形成されてもよい。
【0032】
エリア設定回路24には、Hiインピーダンス抵抗23に流れるアンテナ電流Iaを基に、電子キー2との接近距離rを算出する接近距離算出部25が設けられている。接近距離算出部25は、Hiインピーダンス抵抗23により求まる誘起電圧Vsを基に、電子キー2との接近距離rを算出する。
【0033】
エリア設定回路24には、接近距離算出部25が算出した接近距離rを基に、リーダライタ10の通信エリアEaを設定するエリア設定部26が設けられている。エリア設定部26は、接近距離rを基に可変式ダンプ抵抗22の値を調整することにより、アンテナ電流Iaの値を切り換えて、リーダライタ10の送信磁界強度、つまりリーダライタ10の通信エリアEaを設定する。例えば、電子キー2が接近してきている際には、ダンプ抵抗22を大きく設定してアンテナ電流Iaを制限することにより、通信エリアEaを小さくする。一方、電子キー2が離間していっている際には、ダンプ抵抗22を小さく設定してアンテナ電流Iaを開放することにより、通信エリアEaを大きくする。なお、エリア設定部26が設定手段に相当する。
【0034】
さて、図4(a)に示すように、アンテナ13の周辺に電子キー2が存在しない場合、エリア設定部26は、可変式ダンプ抵抗22を最小値に設定して、駆動電波Svの送信磁界強度を最大にする。これにより、通信エリアEaが最大範囲に設定され、車両1の周囲において電子キー2の有無が探査される。このとき、接近距離算出部25は、Hiインピーダンス抵抗23の誘起電圧Vsからアンテナ電流Iaを監視することにより、電子キー2の接近検知を行う。なお、図4に示す例では、運転席及び助手席にそれぞれリーダライタ10が搭載され、運転席及び助手席の各々に通信エリアEaが形成される。
【0035】
そして、図4(b)に示すように、アンテナ13の通信エリアEa内に電子キー2が進入したとする。このとき、同図に示すように、通信エリアEaの横から電子キー2が急に進入すると、進入した時点で電子キー2は、強い送信強度の電波に晒されることになる。よって、遠くの電子キー2との通信確立を確保するために、アンテナ13の送信強度を単に強く設定しただけでは、電子キー2に送信強度の強い電波がかかることになり、電子キー2の故障に繋がる。
【0036】
ところで、電子キー2が通信エリアEaに進入すると、アンテナ13の磁界エネルギーが電子キー2に奪われてアンテナ電流Iaが低下するので、電子キー2の接近が分かる。よって、エリア設定部26は、アンテナ電流Ia(誘起電圧Vs)に応じた値に可変式ダンプ抵抗22を大きくすることにより、電子キー2との接近距離rに応じた範囲に通信エリアEaを狭める。従って、電子キー2に送信強度の強い電波がかかることはない。
【0037】
ここで、近距離無線通信の規格には、通信において電子キー2にかかる電圧を一定値(例えば3V)に抑えなければならないISO規格がある。本例の場合、電子キー2の接近検知においてアンテナ13から駆動電波Svを強い送信強度で送信しているが、この状況下で電子キー2が駆動電波Svを受信しても、通信開始初期時はアンテナ13から電子キー2までの距離が長いので、実際に電子キー2にかかる電圧は低い値に収まる。よって、電子キー2の接近検知のために駆動電波Svを強い磁界強度で送信しても、規格に抵触することはない。
【0038】
なお、電波法で満たさなければならないリーダライタ10の送信磁界強度は非常に高い値であるので、本例において通信距離を延ばすべくリーダライタ10の送信磁界強度を高くするといっても、この電波法の範囲内に収まる値をとる。よって、本例の場合、電波法は問題なく準拠する。
【0039】
以上により、本例においては、ダンプ抵抗22にHiインピーダンス抵抗23を並列接続し、Hiインピーダンス抵抗23の誘起電圧Vsを基にアンテナ電流Iaを検出する。そして、アンテナ電流Iaに応じた値に可変式ダンプ抵抗22を設定することにより、アンテナ13の送信磁界を切り換えて、通信エリアEaの範囲を設定する。よって、電子キー2がアンテナ13に接近するのに伴い、アンテナ電流Iaが調整されて、アンテナ13の通信エリアEaが小エリアに設定される。
【0040】
このため、最初はアンテナ13の送信磁界を強く設定してリーダライタ10の通信エリアEaを広くとるので、リーダライタ10から遠い位置にある電子キー2とでも通信を確立することが可能となる。また、アンテナ13の送信磁界を強くして通信エリアEaを広くとっても、電子キー2がリーダライタ10に接近した際には、アンテナ13の磁界が弱められるので、電子キー2の電子回路に過度な電圧がかかることがない。従って、近距離無線通信の通信距離確保と、電子キー2の回路破壊防止とを両立することが可能となる。
【0041】
本実施形態の構成によれば、以下に記載の効果を得ることができる。
(1)Hiインピーダンス抵抗23によってアンテナ電流Iaを監視することで電子キー2の接近を検知し、電子キー2の接近に伴って可変式ダンプ抵抗22を調整することにより、アンテナ13の送信磁界強度を弱めて、リーダライタ10の送信エリアを小さくする。よって、最初はリーダライタ10から遠い位置にある電子キー2とも通信ができ、仮に通信エリアEaの横から電子キー2が急に入り込んでも、アンテナ13の送信磁界強度が弱められるで、電子キー2に高い電圧の磁界が加わらず、電子キー2の電子回路を破損から保護することもできる。よって、リーダライタ10及び電子キー2間の通信距離確保と電子キー2の電子回路保護とを両立することができる。
【0042】
(2)リーダライタ10にHiインピーダンス抵抗23を設け、電子キー2の接近を、Hiインピーダンス抵抗23から求まるアンテナ電流Iaによって検出する。よって、リーダライタ10のアンテナ13にHiインピーダンス抵抗23を搭載するという簡素な構成によって、電子キー2の接近を検出することができる。
【0043】
(3)ダンプ抵抗22を可変式とし、可変式ダンプ抵抗22の値を調整することにより、アンテナ13の送信磁界強度を設定する。よって、アンテナ13の共振回路のQ値を低くするためにアンテナ13に元から備えられていたダンプ抵抗22を、可変式のものに置き換えるだけで済む。よって、本例の通信エリア設定装置21を採用するにあたって、大幅な回路変更が生じない。
【0044】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態を図5〜図7に従って説明する。なお、第2実施形態は、電子キー2の接近検知方法を第1実施形態とは異なるものとし、他の基本的な部分は同じである。よって、同一部分には同一符号を付して詳しい説明を省略し、異なる箇所についてのみ説明する。
【0045】
通信回路12から見たRF回路(アンテナ回路)のインピーダンスは、一般的に通信回路12の出力インピーダンスに対して高めに設定されている。これは、リーダライタ10のアンテナ13(アンテナコイル14)が純粋なコイル(インダクタンス)であるため、アンテナ13の抵抗を上げて、共振回路のQ値をダンプしなければならないからである。これにより、通信帯域が広がり、無線通信が可能となる。ここで、RF回路とは、通信回路12より先のアンテナ方向の回路群のことを言う。また、通信回路12から見たRF回路のインピーダンスとは、アンテナコイル14、整合回路15、ダンプ抵抗22等から決まるインピーダンスのことである。
【0046】
ここで、Q値をダンプするために、例えば仮に共振回路に単純に抵抗を入れたとすると、抵抗によってエネルギーが消費されてしまうので、エネルギー効率がよくない。よって、整合回路15のキャパシタンスCを調整して、RF回路のインピーダンスを見た目に大きくすることにより、Q値がダンプされている。このような前提があるため、通信回路12の出力インピーダンスと、通信回路12から見たRF回路のインピーダンス(図6に示すプロット点のZ)とには、所定の差がある。
【0047】
図6に示すように、通信回路12から見たRF回路のインピーダンスは、電子キー2との接近距離rが短くなるに連れて、値が小さくなる関係をとる現状がある。これは、アンテナ13と電子キー2とが大きく離れているときには、アンテナ13より先がオープンな回路(接近距離rが∞)をとるのに対し、アンテナ13に電子キー2が接近すると、通信回路12が電子キー2と結合することにより、1つのインピーダンスとなった回路をとるためである。
【0048】
よって、本例では、通信回路12から見たRF回路のインピーダンス変化から電子キー2の接近距離rを検出する。この場合、図5に示すように、エリア設定回路24には、通信回路12から見たRF回路(アンテナ回路)のインピーダンスZを検出するインピーダンス検出部31が設けられている。インピーダンス検出部31は、検出したインピーダンスZの値を、接近距離算出部25に出力する。そして、接近距離算出部25は、インピーダンス検出部31から入力した検出値を基に、電子キー2の接近距離rを算出する。なお、インピーダンス検出部31が距離検出手段(インピーダンス検出手段)に相当する。
【0049】
さて、図6に示すスミスチャートは、周波数を掃引して測定したインピーダンスがプロットされたチャートとなっている。ところで、図7(a)に示すように、インピーダンスは複素数R+jXで表される。等抵抗線Laは、周波数によってリアクタンスが変わるが、抵抗が一定の軌跡である。一方、等リアクタンス線Lbは、抵抗が変わるが、リアクタンスが一定の軌跡である。なお、抵抗は正の値であるため、X軸の正方向のみ軌跡が現われる。
【0050】
そして、図7(b)に示すように、Y軸を円にするとともに、X軸の+∞とY軸の±∞とを繋げたものが、スミスチャートである。スミスチャートを円形とすると、インピーダンスと反射係数とが一対一で対応するため、値の比較が分かり易くなる。なお、スミスチャートでは、等抵抗線Laが等抵抗円L1となり、等リアクタンス線Lbが等リアクタンス円L2となる。
【0051】
図6のスミスチャートには、周波数が12〜15MHzのインピーダンス軌跡32がプロットされている。このうち、インピーダンス軌跡32上のZが、周波数が13.56MHzの搬送波の点、つまり通信回路12から見たRF回路のインピーダンスZである。よって、同図からも分かるように、電子キー2がr3→r2→r1とリーダライタ10に接近するに連れて、Zの値が小さくなる。つまり、リーダライタ制御ECU11側に移動するので、このZの動きによって電子キー2の接近距離rを算出する。
【0052】
そして、エリア設定部26は、通信回路12から見たRF回路のインピーダンスZが高い値をとれば、可変式ダンプ抵抗22を低い値に設定し、アンテナ電流Iaを増加させる。つまり、アンテナ13の送信磁界が強められる。一方、エリア設定部26は、通信回路12から見たRF回路のインピーダンスZが低い値をとれば、可変式ダンプ抵抗22を高い値に設定し、アンテナ電流Iaを減少させる。つまり、アンテナ13の送信磁界が弱められる。
【0053】
本実施形態の構成によれば、第1実施形態に記載の(1),(3)に加え、以下の効果を得ることができる。
(4)通信回路12から見たRF回路のインピーダンスZを基に接近距離rを検出するので、第1実施形態の場合に必要であったHiインピーダンス抵抗23が不要となる。よって、抵抗を別途設ける必要なく、接近距離rを検出することができる。
【0054】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態を図8及び図9に従って説明する。なお、第3実施形態も、電子キー2の接近検知方法を変更したのみであるので、変更した箇所のみ詳述する。
【0055】
図8に示すように、リーダライタ制御ECU11と通信回路12との間には、リーダライタ制御ECU11から出力される電流(以降、通信回路消費電流Ibと記す)を検出する電流検出部41が接続されている。電流検出部41は、いわゆる電流計であって、検出値を接近距離算出部25に出力する。通信回路消費電流Ibは、非通信時において固定電流を消費するため、リーダライタ制御ECU11から供給される電流変化分でもよい。接近距離算出部25は、電流検出部41から入力した通信回路消費電流Ibを基に、電子キー2との接近距離rを算出する。なお、電流検出部41が距離検出手段(消費電流検出手段)を構成する。
【0056】
ところで、図9に示すように、電子キー2との接近距離rと通信回路消費電流Ibとの間には、接近距離rが短くなるに連れて増加する相関関係がある。これは、第2実施形態で述べたように、電子キー2がアンテナ13に接近すると、通信回路12から見たRF回路のインピーダンスZが低下するため、リーダライタ制御ECU11の低インピーダンスと整合するからである。このように、2者のインピーダンスが近くなると、反射が減少する現象が生じ、結果として通信回路消費電流Ibが増加する。
【0057】
よって、エリア設定部26は、通信回路消費電流Ibが低ければ、可変式ダンプ抵抗22を低い値に設定し、アンテナ電流Iaを増加させる。つまり、アンテナ13の送信磁界が強められる。一方、エリア設定部26は、通信回路消費電流Ibが高ければ、可変式ダンプ抵抗22を高い値に設定し、アンテナ電流Iaを減少させる。つまり、アンテナ13の送信磁界が弱められる。
【0058】
本実施形態の構成によれば、第1実施形態に記載の(1),(3)に加え、以下の効果を得ることができる。
(5)リーダライタ制御ECU11から流れ出る通信回路消費電流Ibを基に接近距離rを検出するので、リーダライタ制御ECU11から出力される電流を単に見るという簡素な構成によって接近距離rを検出することができる。
【0059】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態を図10〜図11に従って説明する。なお、第4実施形態は、アンテナ13の送信磁界強度の切り換えをアンプにより行う点を変更しており、この変更箇所のみ詳述する。
【0060】
図10に示すように、通信回路12と整合回路15との間には、利得可変式のアンプ35が接続されている。本例の場合は、可変式のダンプ抵抗22を調整することでアンテナ13の送信磁界強度を切り換えるのではなく、ダンプ抵抗22は固定値とし、アンプ35の利得を調整することによって、アンテナ13の送信磁界強度を変更する。アンプ35の利得は、エリア設定部26により設定される。なお、アンプ35が可変式設定要素を構成する。
【0061】
ところで、可変式ダンプ抵抗22の抵抗値を大きくしてアンテナ13の送信磁界強度を低くした場合、可変式ダンプ抵抗22の抵抗値を大きくすると、その分だけ、通信回路12から見たRF回路のインピーダンス(以降、RF回路インピーダンスと記す)が大きく低下してしまう傾向がある。こうなると、RF回路インピーダンスと、通信回路12の出力インピーダンス(以降、IC回路インピーダンスと記す)とが近づき、インピーダンスがマッチングしてしまう。
【0062】
また、RF回路インピーダンスがIC回路インピーダンスに近づいた場合、アンテナ電流Iaが流れ易くなる特性があるため、可変式ダンプ抵抗22の抵抗値を上げてアンテナ電流Iaを流さないようにしても、RF回路インピーダンスの低下によりアンテナ電流Iaが増加する方向に作用し、消費電流が増加する問題に繋がる。よって、可変式ダンプ抵抗22にてアンテナ13の送信磁界強度を変化させる場合は、インピーダンス変化を加味すると、調整範囲に制限が生じ、アンテナ13の送信磁界強度を劇的に切り換えるには不向きである。
【0063】
一方、アンプ35には、アンプ35の利得を切り換えることにより、RF回路インピーダンスに過大な変化を伴わせずにアンテナ電流Iaを変更できる利点がある。よって、本例のようにアンプ35の利得によってアンテナ13の送信磁界強度を変更するようにすれば、消費電流の増加を伴わずにアンテナ13の送信磁界強度を変えることが可能となるので、アンテナ電流Iaの調整範囲も広くとれ、送信磁界強度を劇的に切り換えることが可能となる。
【0064】
図11のグラフに、あるアンテナを使用した場合のリーダライタ10の出力と通信距離との関係の一例を示す。図内の菱形点を繋いだ曲線Kaが一般的なリーダライタ10の波形である。電子キー2の通信距離は、図11の曲線と電子キー2の動作保証下限との交点で決まり、同図から分かるように、一般的なリーダライタ10の通信距離は約6.4cmと短い。但し、同図には動作保証上限や非破壊保証上限もあり、リーダライタ10の出力を上げるにしても、電子キー2の誘起電圧がこれら上限を超えないようにしなければならない。
【0065】
そこで、本例の場合、電子キー2の接近を待機する通常時、エリア設定部26はアンプ35の利得を上げておき、アンテナ13の送信磁界強度を強めにしておく。このとき、リーダライタ10の出力と通信距離との関係性は、図11の丸点を繋ぐ曲線Kbをとり、約12cmの通信距離をとることが可能である。よって、電子キー2が遠くに位置していても、リーダライタ10は電子キー2を捕獲することが可能である。
【0066】
そして、電子キー2の接近を検知したとき、エリア設定部26はアンプ35の利得を下げ、アンテナ13の送信磁界強度を弱めていく。これにより、図11に示すように、リーダライタ10の出力と通信距離との関係性は、同図の三角点を繋ぐ曲線Kcから、四角点を繋ぐ曲線Kdと徐々に変化していく。よって、アンテナ13の送信磁界強度が徐々に小さく変化するので、最初はリーダライタ10の通信エリアEaを広くとっておいても、電子キー2に過度の電圧をかけずに通信を成立させることが可能となる。
【0067】
本実施形態の構成によれば、前記実施形態に記載の(1)〜(5)に加え、以下の効果を得ることができる。
(6)アンプ35の利得を切り換えることによりアンテナ13の送信磁界強度を設定するので、RF回路インピーダンスの変化を抑えながらアンテナ13の送信磁界強度を変更することができる。よって、アンテナ13の送信磁界強度の調整が消費電流の増減に寄与して調整の逆方向に働くことがなくなるので、アンテナ13の送信磁界強度を、より大きな範囲で劇的に切り換えることができる。
【0068】
(第5実施形態)
次に、第5実施形態を図12及び図13に従って説明する。なお、第5実施形態は、アンテナ13の送信磁界強度の切り換えを、ダンプ抵抗及び整合回路をセットで制御することにより行う点を変更しており、この変更箇所のみ説明する。
【0069】
ところで、第4実施形態でも述べたように、アンテナ13の送信磁界強度を低下させるために可変式ダンプ抵抗22の抵抗値を上げると、これに伴ってRF回路インピーダンスが低下し、消費電流が増加してしまう現状がある。そこで、本例の場合は、可変式ダンプ抵抗22のインピーダンス変化分を、整合回路15のコンデンサC1,C2を調整することにより補完する。なお、コンデンサC1,C2が可変式設定要素及び静電容量成分を構成する。
【0070】
図12に示すように、本例のエリア設定部26は、可変式ダンプ抵抗22のみならず、整合回路15のC成分も制御することにより、アンテナ13の送信磁界強度を切り換える。このため、本例の整合回路15のコンデンサC1,C2は、例えばバリキャップダイオードやバラクタダイオード等の可変容量コンデンサが使用されている。そして、エリア設定部26は、可変式ダンプ抵抗22及びコンデンサC1,C2を調整することにより、アンテナ電流Iaの値を変化させ、アンテナ13の送信強度磁界を切り換える。
【0071】
ここでは、可変ダンプ抵抗22を大きくすることで下がったインピーダンスの分、コンデンサC1(直列コンデンサ)を大きくして、スミスチャートの軌跡32の円を大きくし、インピーダンスを上げる。しかし、このときは、同時に13.56MHzの点のインピーダンスが容量性、つまりスミスチャートの下半分に移動するので、コンデンサC2(並列コンデンサ)を小さくすることにより、X=0となるように調整する。即ち、スミスチャートの軌跡32の13.56MHzの点を、抵抗軸上に位置させる。
【0072】
また、可変式ダンプ抵抗22及びコンデンサC1,C2の値の組合せは、実験等で得たデータの相関から、予め組合せが設定されている。そして、エリア設定部26は、この組合せに基づき、可変式ダンプ抵抗22及びコンデンサC1,C2を段階的に切り換える。つまり、可変式ダンプ抵抗22は、例えば1Ω、2Ω、…というように段階的に切り換えられ、コンデンサC1,C2も、その時々の可変式ダンプ抵抗22に応じた値に適宜設定される。
【0073】
図13(a)〜(c)に、あるアンテナを仮定したときのRF回路インピーダンスの変化と出力(電子キー2の誘起電圧)の変化との関係を示す。まず、図13(a)に示すように、可変式ダンプ抵抗22が0Ωで、かつ整合回路15のコンデンサC1,C2も制御しない場合、リーダライタ10に電子キー2が例えば約3cmに接近したとき、電子キー2の誘起電圧は例えば27Vにもなり、図11のグラフで示す非破壊保証範囲外になってしまう。
【0074】
そこで、図13(b)に示すように、リーダライタ10の可変式ダンプ抵抗22を増加させる(例えば+2Ω)と、電子キー2の誘起電圧が23Vに抑えられ、非破壊保証範囲内に抑えられる。しかし、同図のスミスチャートを見ても分かるように、RF回路インピーダンスが大きく低下するので、消費電流が増加してしまう問題が発生する。
【0075】
図13(c)は、リーダライタ10の可変式ダンプ抵抗22を増加させた図13(b)の状態に、さらに整合回路15のコンデンサC1,C2も制御する本例のスミスチャートである。この場合は、電子キー2の誘起電圧を16Vという低い値に抑えることが可能となる。また、同図からも分かるように、RF回路インピーダンスの低下も抑制されるため、消費電流も低減することが可能である。よって、同図からも、消費電流の増加を抑制しつつ、アンテナ13の送信磁界強度を切り換えることができることが分かる。
【0076】
本実施形態の構成によれば、前記実施形態に記載の(1)〜(5)に加え、以下の効果を得ることができる。
(7)可変式ダンプ抵抗22とコンデンサC1,C2とをセットにして値を制御することにより、アンテナ13の送信磁界強度を切り換えるので、消費電流の増加を抑制しながら、アンテナ13の送信磁界強度を切り換えることができる。
【0077】
なお、実施形態はこれまでに述べた構成に限らず、以下の態様に変更してもよい。
・第1実施形態において、図14に示すように、アンテナ13の共振回路と並列にHiインピーダンス抵抗23を接続し、このHiインピーダンス抵抗23の誘起電圧Vsによって、アンテナ電流Iaを検出してもよい。
【0078】
・第1実施形態において、図15に示すように、ダンプ抵抗22を固定値の抵抗とし、アンテナ電流Iaを調整可能なシャント抵抗51をアンテナ13の共振回路に並列接続し、シャント抵抗51の値を調整することで、アンテナ13の送信強度を変更してもよい。
【0079】
・第1〜第5実施形態において、距離検出手段は、リーダライタ10に別途設けた近接センサでもよい。
・第1実施形態において、アンテナ電流Iaの検出は、ダンプ抵抗22の端子間電圧を見る方式に限定されない。例えば、共振回路に電流計を設け、電流計の値から直にアンテナ電流Iaを検出してもよい。
【0080】
・第1〜第5実施形態において、電子キー2は、例えばICカードのようなものも広義として含む。
・第1〜第5実施形態において、電子キーシステム3は、ポーリング式及びトリガ式のどちらを採用してもよい。なお、ポーリング式とは、駆動電波Svを常時発信して電子キー2の有無を探査するものである。また、トリガ式とは、例えば車外ドアハンドルがタッチ操作されるなどの所定操作をトリガとして駆動電波Svの送信を開始するものである。
【0081】
・第1〜第5実施形態において、近距離無線通信は、電波として磁界を用いるものであれば、どのような通信形式を採用してもよい。
・第1〜第5実施形態において、近距離無線通信の周波数は、HFに限らず、例えばLF(Low Frequency)やUHF(Ultra High Frequency)等の他の帯域を採用してもよい。
【0082】
・第1〜第5施形態において、可変式設定要素は、ダンプ抵抗22やシャント抵抗51に限らず、他の素子が使用可能である。
・第1〜第5実施形態において、通信エリアの変更とは、単に範囲の変更に限らず、アンテナ13の指向性としてもよい。
【0083】
・第1〜第5実施形態において、車両1には、NFCの電子キーシステム3の他に、キー操作フリーシステムやワイヤレスキーシステムが併設されていてもよい。なお、キー操作フリーシステムは、NFCよりも通信領域が広い、例えば周波数としてLFやUHFを使用したシステムである。また、ワイヤレスキーシステムは、電子キー2からの通信をトリガとして照合を行うシステムである。
【0084】
・第1〜第5実施形態において、通信エリア設定装置21は、車両1に使用されることに限らず、他の機器や装置に応用してもよい。
【符号の説明】
【0085】
2…通信端末としての電子キー、10…通信マスタとしてのリーダライタ、12…通信回路、13…アンテナ、15…整合回路、21…通信エリア設定装置、22…可変式設定要素を構成する可変式ダンプ抵抗、23…距離検出手段(アンテナ電流検出手段)を構成するHiインピーダンス抵抗、26…エリア設定手段としてのエリア設定部、31…距離検出手段(インピーダンス検出手段)を構成するインピーダンス検出部、35…可変式設定要素を構成するアンプ、41…距離検出手段(消費電流検出手段)を構成する電流検出部、51…可変式設定要素を構成するシャント抵抗、Ia…アンテナ電流、Ib…通信回路消費電流、r…接近距離、Ea…通信エリア、Z…インピーダンス、C1,C2…可変式設定要素及び静電容量成分を構成するコンデンサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信マスタとその通信端末とが磁界を電波とする近距離無線通信を介して通信する通信エリア設定装置において、
前記通信マスタへの前記通信端末の接近距離を検出する距離検出手段と、
前記通信マスタのアンテナの送信磁界強度を決める一要素である可変式設定要素と、
前記距離検出手段の検出値を基に前記可変式設定要素の値を設定することにより、前記送信磁界強度を前記接近距離に応じた値に切り換えて、前記通信マスタの通信エリアを設定するエリア設定手段と
を備えたことを特徴とする通信エリア設定装置。
【請求項2】
前記エリア設定手段は、前記通信端末が前記通信マスタに近づくに従い、前記送信磁界強度を小さくする
ことを特徴とする請求項1に記載の通信エリア設定装置。
【請求項3】
前記距離検出手段は、前記アンテナに流れる電流を基に、前記接近距離を検出するアンテナ電流検出手段である
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の通信エリア設定装置。
【請求項4】
前記距離検出手段は、前記通信マスタにおける通信回路のインピーダンス変化を基に、前記接近距離を検出するインピーダンス検出手段である
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の通信エリア設定装置。
【請求項5】
前記距離検出手段は、前記通信マスタの制御回路から流れ出る電流を基に、前記接近距離を検出する消費電流検出手段である
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の通信エリア設定装置。
【請求項6】
前記可変式設定要素は、可変式のダンプ抵抗である
ことを特徴とする請求項1〜5のうちいずれか一項に記載の通信エリア設定装置。
【請求項7】
前記可変式設定要素は、アンプであって、前記エリア設定手段は、前記アンプの利得を切り換えることにより、前記通信エリアを設定する
ことを特徴とする請求項1〜5のうちいずれか一項に記載の通信エリア設定装置。
【請求項8】
前記可変式設定要素は、可変式のダンプ抵抗と、整合回路の静電容量成分とを備え、前記エリア設定は、前記可変式のダンプ抵抗及び前記静電容量成分を切り換えることより、前記通信エリアを設定する
ことを特徴とする請求項1〜5のうちいずれか一項に記載の通信エリア設定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−15985(P2012−15985A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−202060(P2010−202060)
【出願日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】