説明

除草機

【課題】 機体全体の大型化及びコストアップを招くことなく、株元部分の除草位置及び除草範囲を簡単かつ容易に調節して常に適確良好な除草効果を発揮できるようにする。
【解決手段】 乗用走行機体4に昇降自在に連結された前後方向に長いフレーム22に接地ソリ23と、植付け条における株間に左右側方から作用するタイン24を前後複数に並設した株間除草手段10Aと、条間除草手段10Bとを取り付けてなる除草機であって、複数のタイン24を、左右方向に位置変更固定自在で、かつ、フレーム22に対する前後方向の傾斜角度変更固定自在に構成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、除草機に関し、主として水田に条植えされた稲苗の周囲である植付け条間及び植付け条における株間に生育する雑草を除草する水田除草機等として用いられる除草機に関し、特に、除草用として取り付けられる左右一対のタインの間隔を変更して除草範囲を容易に調節出来るようにするものである。
【背景技術】
【0002】
近時、作物の栽培において農薬を用いない有機栽培や減農栽培が活用されており、それに伴い、雑草の除去するため除草機が用いられている。
この種の除草機は、例えば、走行機体に昇降自在に連結されて前後方向に延在するフレームを機体の走行方向に対し直交する左右方向で作物の植付け条間隔に対応する間隔を隔てて複数個並設し、これら各フレームに、作物の植付け条間で作用する条間除草手段と、植付け条における株間にその左右方向の側方から作用する複数のタインを前後に列状に並設した株間除草手段と、接地ソリとが取り付けられている。
【0003】
前記株間除草手段として使用されるタインは、従来の除草機ではフレームに個別に固定されているのが一般的である。
また、従来、走行機体に対して左右方向に往復駆動移動自在な可動枠にタインを固定状態に取り付け、除草作業時の可動枠の左右往復駆動により、タインを植付け条の株間を左右方向に往復移動させて株間に生育している雑草を除草するように構成された除草機も数多く提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2003−204707号公報
【特許文献2】特開2003−204708号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、タインがフレームに固定された従来周知の除草機では、左右で対向するタインによる作物の根元部分への除草位置及び除草範囲を調節することができないため、作物が未だ十分に根を張っていない初期除草時にタインによる除草力が作物の根元部分に強く作用して作物を傷つけやすい。また、除草範囲を広くしたり、狭めたり調節する場合、予め形状や長さ等が相違する複数種類のタインを作製準備しておき、その複数種類のタインの中から所望の除草範囲に適応する一つのタインを選択し、その選択したタインを現在フレームに取り付けられているタインと付け替える必要がある。そのため、除草位置及び除草範囲の調節に多大な手間と労力を要するばかりでなく、形状や長さ等が異なる複数種類のタインを準備しなければならないので、製作コストのアップ、ひいては、使用者(農家)の経済的負担が大きくなるという問題がある。
【0006】
また、特許文献1等で提案されている従来の除草機では、タインを取り付けた可動枠を左右方向に往復駆動移動させるための構成が非常に複雑かつ大掛かりであるだけでなく、除草機全体の駆動負荷も大きくなり、それに伴って乗用走行機体の所要馬力の増大、除草機全体の大型化、コストアップは避けられないという問題があった。
【0007】
本発明は前記問題に鑑みてなされたもので、機体全体の大型化及びコストアップを招くことなく、株元部分の除草位置及び除草範囲を簡単かつ容易に調節可能とし、常に適確良好な除草効果を発揮させることができる除草機を提供することを主たる課題としている。
さらに、前記課題に加えて、特に、硬い圃場での初期株間除草を良好に行うことができるようにすることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記主たる課題を解決するため、第1の発明として、走行機体に、土壌表面に接地して除草を行う左右一対のタインを対向配置させると共にこれら左右一対のタインの複数組を前後方向に並設させて装備した除草機において、
前記前後方向に並設する複数のタインを前後方向に長尺な取付ステーに固定し、該取付ステーを、機体側の前後方向に延在させたフレームに対して左右方向に位置変更可能に固定して左右対向配置される前記タインの先端クロス量が調節可能とされていると共に、前記取付ステーを各フレームに対する前後方向の傾斜角度を変更可能に固定して前後並設される左右一対のタインのクロス量を前後方向で可変できる構成とされていることを特徴とする除草機を提供している。
【0009】
前記走行機体側のフレームは、機体に対して昇降自在に連結されて前後方向に延在し、かつ、機体の走行方向に対し直交する左右方向で、作物の植付け条間隔に対応する間隔を隔てて複数個並設されている。この各フレームには、作物の植付け条間で作用する条間除草手段と、植付け条における株間にその左右方向の側方から作用する複数の前記タインを前後に列状に並設した株間除草手段と、接地ソリとが取り付けられていることが好ましい。
【0010】
前記のように、前後方向に並設する複数のタインを取付ステーに固定しておき、該取付ステーをフレームに対して左右方向に位置変更して固定することのみにより、左右で対向するタインの先端同士のクロス量を大小に変更したり、クロスさせないで左右対向タインの先端同士間に任意な大きさの隙間を設けたりすることが可能となる。また、前部と後部とでタインのクロス角度を調節することができる。その結果、除草範囲を簡単に調節することができ、作物の大きさなどが異なる様々な圃場条件下においても常に効率よく良好な除草を行うことができる。
これによって、形状や長さ等が一種類のタインを用いながら、初期除草時にタインによって作物を傷めることのないような除草位置及び作物の根元部分の除草範囲を、多大な手間及び労力を要することなく簡単かつ容易に調節することができる。また、左右で対向するタインの先端部を土中に潜らせて機体の走行に伴い土中を移動させることで、株間に生育している雑草を掻き出して除草することができる。
【0011】
第2の発明として、走行機体に、土壌表面に接地して除草を行う左右一対のタインを対向配置させると共に、これら左右一対のタインの複数組を前後方向に並設させて取り付けた除草機において、
前記乗用走行機体の前部に、昇降および傾動可能に接地ソリが取り付けられ、該接地ソリより立設したフレームに、前後方向に並設される前記タインを固定した取付ステーが上下位置変更可能に固定され 前記タインの土壌への挿入深さを可変できる構成とされていることを特徴とする除草機を提供している。
【0012】
前記第2の発明の構成とすると、機体の走行に伴い、まず、接地ソリの前部に配置された複数のタインによって株間の雑草を引き抜くと同時に、その雑草の生育していたところの土壌を崩すことができる。また、第1の発明と同様に前後に並設するタインを取付ステーに固定し、該取付ステーを前記フレームに対して上下位置を変更して固定できるため、複数のタインの土壌への挿入深さを一度に調節することができる。
【0013】
前記タインの後方に、タインにより引き抜いた雑草を土中に押し込む回転羽根部材を配置し、該回転羽根部材は回転軸部から複数の羽板部が放射状に突出された構成とすることが好ましい。
【0014】
前記回転羽根部材をタインの後部に配置すると、タインにより引き抜いた雑草を回転羽根部材により土中に押し込むと同時に、残存している雑草を土壌より掻き出して除草することができる。このように、タインと回転羽根部材とを前後に併設配置することにより、タイン単体では初期除草時に作物を倒しやすいという問題及び回転羽根部材単体では硬い圃場で十分に除草できないという問題を一挙に解決することが可能で、硬い圃場での特に初期除草を確実、良好に行うことができる。
【0015】
前記複数のタインは、左右で対向する先端同士間に隙間を有し作物の周りの土を攪拌しする第1種タインと、左右対向する先端同士がクロスして作物の根元まで入り込んで株間の雑草を抜き取る第2種タインとを、前後方向に組み合わせている。
このように互いに機能の異なる第1種タイン及び第2種タインを組み合わせた複数のタインを用いることによって、硬い圃場であっても作物を傷つけたり、倒したりすることなく雑草を確実に抜き取ることができるとともに、その抜き取った雑草を土中に埋め込んで枯れさせるといったように効果的な除草を実現することができる。
なお、圃場の状況に応じて、第1種タインのみ、あるいは第2種タインのみを前後方向に並設してもよい。この同一種類のタインを用いる場合は、特に、前部と後部とのタインのクロス量を変えること、土壌の撹拌範囲および撹拌深さ、除草範囲等を調節することができる。
【0016】
さらに、前記取付ステーに取り付けられる各タインの取付基部は、略渦巻状に屈曲されて弾性変形可能に形成されていることが好ましい。
このように取付基部が弾性変形可能な略渦巻状に屈曲形成されたタインを用いることによって、土中に潜って移動するタインが局部的に硬い土壌部分や小石などの土中異物、あるいは作物の根元などに衝つかるなどして衝撃を受けたとき、タイン基部の弾性変形により、その衝撃力を吸収緩和することが可能であり、作物の損傷や倒れの防止並びにタイン自体の変形破損も防止してタインの耐久性向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0017】
以上の説明より明らかなように、第1の発明によれば、複数のタインを取り付けている取付ステーをフレームに対して左右方向に位置変更固定することで、複数のタインを一度に位置調節することができる。その結果、除草位置及び作物の根元部分の除草範囲を簡単容易に調節することができる上に、取付ステーのフレームに対する前後方向の傾斜角度を変更固定することにより、前後列状に並設された複数のタインにおける左右タインの先端同士のクロス量が前部と後部とで異なるように変更することが可能となる。
よって、従来の各タイン自体を左右方向に往復駆動移動させるように構成されている除草機に比べて、株間除草手段の構成が簡単かつ軽小であるうえに、除草機全体の駆動負荷も小さく、乗用走行機体の所要馬力の減小化、除草機全体の大型化およびコストダウンが可能である。かつ、多くのタイン種類を要しないことと相俟って、使用者の経済的負担の軽減に寄与することができる。
【0018】
また、第2の発明によれば、接地ソリの前部に前後方向に並設したタインを取付ステーに固定し、該取付ステーを接地ソリから立設したフレームに上下位置を変更して固定できる構成としているため、複数のタインを一括して土壌への挿入深さを調節することができる。
【0019】
また、前記タインの後方に、タインにより引き抜いた雑草を土中に押し込む回転羽根部材が配置すると、タイン単体では初期除草時に作物を倒しやすいという問題と回転羽根部材単体では硬い圃場で十分に除草できないという問題を同時に解決することができ、特に、硬い圃場での特に初期除草を確実、良好に行うことができる。
【0020】
さらに、複数のタインとしては、左右で対向するものの先端同士間に隙間を有し作物の周りの土を攪拌し柔らかくする第1種タインと、作物の根元まで入り込んで株間の雑草を抜き取るように左右で対向するものの先端同士が互いにクロスする第2種タインとの組み合わせとすると、硬い圃場であっても作物を傷つけたり、倒したりすることなく雑草を確実に抜き取ることができるとともに、その抜き取った雑草を土中に埋め込んで枯れさせるといったように効果的な除草を実現することができる。
【0021】
さらにまた、前記タインの取付基部を略渦巻状に屈曲させて弾性変形可能とすると、タインの先端が硬い土壌や小石などの土中異物等により衝撃を受けたとき、タイン基部の弾性変形して衝撃力を吸収緩和できる。その結果、作物の損傷や倒れの防止並びにタイン自体の変形破損も防止してタインの耐久性向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明に係る除草機の実施形態を、図面を参照して説明する。
図1乃至図6に示す第1実施形態は前記第1の発明に係わるもので、水田に条植えされた稲苗Nの周囲に生育する雑草Zを除草する4条用の水田除草機1からなる。
【0023】
水田除草機1の全体構成は図1の側面図、図2は概略平面図に示すように、前輪2と左右一対の後輪3とにわたって前後方向に機体4が縦断支持され、該機体4の後部中央部に操縦用ハンドル5及び乗用座席6が設けられ、後輪3を回転駆動するエンジン7が搭載されている。
【0024】
前記前輪2と後輪3との間で乗用走行機体4の下部には、平行四連式リンク機構8及び油圧シリンダ9を介して、除草装置10が乗用走行機体4に対して上下に平行移動可能(昇降可能)に取り付けられている。かつ、平行四連式リンク機構8と機体4に取り付けた位置調節手段12との間に引張りバネ11が張架され、除草装置10は弾性的に吊下げ支持されている。
【0025】
前記位置調節手段12は、機体4にブラケット13を介して固定されたハウジング14にネジ軸15が回転自在に支承され、このネジ軸15の上端に調節ハンドル16が固定されている。ネジ軸15に螺嵌されてハウジング14の下方へ突出された昇降棒17の下端が、固定軸18を支点として傾動可能に機体4に枢支された第1傾動片19の他端部にピン接合されている。かつ、固定軸18を支点として傾動可能に機体4に枢支された第2傾動片20の他端部の突起部20aに引張りバネ11の上端フック部11aを係止連結して構成されている。
【0026】
前記位置調節手段12は、作業者(運転者)が調節ハンドル16を廻してネジ軸15を回転させることにより、昇降棒17が昇降する。この昇降棒17の昇降に伴い第1傾動片19及び第2傾動片20が固定軸18を支点として傾動し、突起部20a及び引張りバネ11の上端フック部11aが上下に移動することで、前記引張りバネ11を介して前記除草装置10の接地圧を水田の硬さ等に応じて調節可能とするものである。
【0027】
前記除草装置10は、リンク機構8の前端部に連結部21aを介して回転自在に基部21に連結され、この基部21の下方に、図2に示すように、機体4の走行方向に対して直交する左右方向において稲苗Nの植付け条間隔Lに対応する間隔を隔てて、前後方向に延在する5個のフレーム22が並設されている。これらの各フレーム22の前端に昇降可能かつ傾動可能に接地ソリ23が連結され、接地ソリ23の後部で各フレーム22の直下部位置に、前後方向に列状に並設した複数のタイン24からなる株間除草手段10Aが設けられている。かつ、フレーム22の後端から斜め後方下方に向けて傾動片60を延出され、その後端部に回転ロータ式の条間除草手段10Bが設けられている。
前記株間除草手段10Aの複数のタイン24は植付け条における株間に左右方向の側方から作用して除草作用を行うものであり、前記条間除草手段10Bは植付け条間の除草作用を行うものである。
なお、図2においては、中央のフレーム22に取り付けるタインおよび接地ソリの図示を省略し、かつ、該中央のフレーム22のタインと対向してクロスする左右両側のフレーム22に取り付けるタインの図示も省略している。隣接するフレーム22に取り付けられるタイン24(24a、24b)は左右両側に図示する対向するタインと同様に先端がクロスしているタインと先端が開いているタインとを交互に設けている。
【0028】
前記接地ソリ23は、図3及び図4に示すように、その前端部23aが前方に向けて上方に反り返されているとともに、後端部23bは斜め下方に折り曲げられて略三角波状の爪に形成されている。かつ、前端寄り位置の底部には後方斜め下方へ向かって延びるスプリング爪25が固定されている。
接地ソリ23は、図3および図5に示すように、その上面に突設した左右一対の突出片26間に断面コ字状のスライド片27を挟持させ、該スライド片27に形成された上下方向の長孔27aにボルト29を通し、ナット30を介して、フレーム22の前端より垂下させた取付け片28に上下スライド可能に固定され、ソリ高さを調節自在としている。
さらに、前記スライド片27の下端部は軸31の軸芯を支点として前記突出片26に対して揺動可能に枢支連結されている。該ボルト軸31より上部のスライド片27に円弧状の長孔27bが形成され、この長孔27bに挿通するボルト32と、該ボルト32に締結されるナット33を介してボルト軸31を軸芯周りの揺動を固定し、これによって、ソリ角度を調節自在としている。
【0029】
前記各フレーム22における株間除草手段10Aを構成する複数のタイン24は、図3乃至図5に示するように、各フレーム22の側部に沿って配置された前後方向に長いステー34の前後方向にほぼ等しい間隔を隔てた箇所にボルト35を介して取り付けられている。ステー34の後端上辺部には左右側方に向けて水平板状に突出する突出片34aが一体連接されていると共に、前記フレーム22の後端下辺部には前記突出片34aに対面するように左右側方に突出する水平板状のステー取付片22aが溶接等によって固定されている。
【0030】
前記フレーム22側のステー取付片22aの前後二箇所には、左右方向に長い長孔36,36が形成されていると共に、前記ステー34側の突出片34aで前記長孔36,36に対応する前後二箇所にはボルト孔37,37が形成されている。
前記ステー取付片22a側から長孔36,36及びボルト孔37,37に挿通されたボルト38,38と突出片34aの下面側でボルト38,38に螺合されるナット39,39とを締付け固定及び締付け解除している。これにより、ステー34及びこれに取り付けられた複数のタイン24がフレーム22に対して同時に左右方向に位置変更させて固定できると共に、フレーム22に対する前後方向の傾斜角度を変更させて固定できる構成とされている。
【0031】
前記複数のタイン24は、図4及び図5に示すように、植付け条を挟み左右で対向するものの先端同士間に隙間Sを有し、それぞれ左右対称の第1種タイン24aと第2種タイン24bとから構成されている。第1種タイン24aが稲苗Nの周りの土を攪拌し柔らかくするものであり、左右の第1種タイン24aの先端間に隙間をあけている。第2種タイン24bは稲苗Nの根元部にまで入り込んで柔らかいタッチで株間の雑草を抜き取るように左右で対向する先端同士を互いにクロスさせている。
本第1実施例では、3つの第2種タイン24bと2つの第1種タイン24aとの合計5つが前方から後方にかけて交互に配置されている。これら各タイン24a,24bは、その取付基部24a1,24b1が略渦巻状に屈曲されて弾性変形可能に形成されている。
【0032】
前記回転ロータ式の条間除草手段10Bは、図3及び図4に示すように、傾動片60の後端部に略コ字形状のブラケット40が固定され、該ブラケット40に固定軸41が取り付けられている。固定軸41には複数本の棒状部材42が周方向に間隔をあけて取り付けられ、仮想円筒のカゴ状に形成されたロータ43を回転自在に支承させている。
【0033】
前記傾動片60は、その前端部がフレーム22の後端から斜め後方下方へ向けて突出させた取付片44に支軸45を介して連結し、支軸45の軸芯周りでの上下揺動により傾動可能に構成されている。また、取付片44に形成された長孔46にボルト47を挿通させ、該ボルト47を介して上下揺動範囲の任意の位置でナットで固定し、これによって、ロータ高さが調節自在とされている。
また、取付片44の後方下端の上端縁には階段状の切欠きによりローラ高さ調節用の目盛り44aが形成されていると共に、標準高さ位置を指し示す三角状の基準マーク44bが刻設されている。
【0034】
なお、図4では、4条のうち、最右側の植付け条における条間除草手段10B及び株間除草手段10Aの構成を詳細に示し、図5では、最右側の植付け条における株間除草手段10Aの構成を詳細に示しているが、他の条における条間除草手段10B及び株間除草手段10Aの構成もそれと同様である。
また、第1実施例では、タイン24として、第2種タイン24bと第1種タイン24aの合計5つを前方から後方にかけて交互に配置したもので示したが、タイン24の設置数は5つに限らず、2つでも3つでも6つ以上であってもよいこと勿論である。
さらに、進行方向の前端に第2種タイン24bを配置し、その後方に第1種タイン24aを配置し、これを繰り返す構成としてもよい。
さらにまた、雑草の状態に応じて、第1種タイン24a、第2種タイン24bのいずれか一方のみを前後方向に並設してもよい。
【0035】
次に、上記構成の第1実施例の水田除草機1による除草作業動作について説明する。
前輪2及び後輪3が土壌硬盤に載った状態で、調節ハンドル16を廻して、除草装置10全体を降下させ、接地ソリ23を水面よりも下層の土壌表面に接地させるとともに、スプリング爪25、株間除草手段10Aのタイン24及び条間除草手段10Bのロータ43を土壌表面より少し沈んだ状態にする。
【0036】
この状態で、乗用座席6に搭座した作業者によりハンドル5を操縦操作して機体4を前進走行させると、接地ソリ23は、その接地圧が引張りバネ11の振動吸収作用によって安定的に保たれて土壌表面上を追従移動する一方、タイン24(24a,24b)は土壌表面から少し潜った状態で牽引移動される。
【0037】
タイン24の牽引移動に伴い、まず、植付け条を挟み左右で対向する第1種タイン24aが稲苗Nの周りの土を攪拌し柔らかくするように作用した後、第2種タイン24bが稲苗Nの根元部にまで入り込んで柔らかいタッチで株間の雑草を抜き取るように作用して株間の除草が行われる。
【0038】
続いて、条間の土壌表面より少し沈んだ箇所を転動移動するロータ43が条間に生育している雑草を引き抜くとともに、その引き抜いた雑草及び前記タイン24によって抜き取られた雑草に土壌を被せてそれら雑草を枯れさせる。
【0039】
前記除草作用を行う水田除草機1は、株間除草手段10Aの左右対向する第1種タイン24a,24aの先端同士のクロス量を小さく調節することができる。その場合、タイン24を取り付けているステー34を、図6の(a)に概略的に示すように、長孔36,36及びボルト38,38、ナット39,39を介してフレーム22に対して矢印x−yで示す左右方向に位置を変更している。これによって、初期除草時における第1種タイン24a,24aの除草位置を、これらタイン24a,24によって稲苗Nを傷めることのないような位置に簡単かつ容易に調節することができる。
【0040】
また、図6の(b)に概略的に示すように、前記ステー34のフレーム22に対する前後方向の傾斜角度θを変更して固定し、左右で対向する第1種タイン24a,24aの先端同士のクロス量が前部と後部とで異なるように変更することができる。これによって、稲苗Nの生育度合いによる根元部の大きさなどに対応して除草範囲を調節するなど様々な圃場条件下においても常に確実、良好な除草を行うことができる。
【0041】
さらに、各タイン24a,24bは、その取付基部24a1,24b1が略渦巻状に屈曲されて弾性変形可能に形成されているので、土中に潜って移動することで大きな抵抗を受けるタイン24a,24bが局部的に硬い土壌部分や小石などの土中異物、あるいは作物の根元などに衝つかるなどして大きな衝撃を受けたとき、各タイン24a,24bの取付基部24a1,24b1が弾性変形して、その衝撃力を吸収緩和することができる。これによって、稲苗Nの損傷や倒れの防止並びにタイン24a,24b自体の変形破損も防止してそれらの耐久性を向上させることができる。
【0042】
図7乃至図10は第2実施形態を示し、前記第2の発明に係る水田用除草機からなる。
第2実施形態は第1実施形態と同様に、水田に条植えされた稲苗Nの周囲に生育する雑草Zを除草する4条用の水田除草機1からなり、第1実施形態との主たる相違点は、接地ソリ23の後部に回転羽部材48が配置され、タイン24により引き抜かれた雑草を土中に押し込むように作用させている。
【0043】
第2実施形態の除草装置10は、各フレーム22の前端に昇降可能かつ傾動可能に連結された接地ソリ23と、この接地ソリ23の前部に配置された複数のタイン24からなる株間除草手段10Aと、接地ソリ23の後部に配置されてタイン24により引き抜かれた雑草を土中に押し込むように作用する回転羽根部材48と、フレーム22から斜め後方下方に向けて延出させた傾動片24の後端部に回転自在に支承された回転ロータ式の条間除草手段10Bが備えられている。
前記株間除草手段10Aは植付け条における株間に左右方向の側方からタイン24により除草作用を行うものであり、条間除草手段10Bは植付け条間の除草作用を行うものである。
【0044】
前記株間除草手段10Aを構成する複数のタイン24は、第1実施形態と同様で、第1種タイン24aと第2種タイン24bの2種類のタインが組み合わされている。これらタイン24a,24bの略渦巻状に屈曲されて弾性変形可能に形成された取付基部24a1,24b1が図7及び図9に示するように、取付ステー53の前後二か所に取り付けられている。該取付ステー53は、接地ソリ23の前部寄り上面から上方に向けて立設されたフレーム49の上下方向の長孔50に、両切ボルト51と挟みナット54で上下位置変更可能に固定されている。
【0045】
前記回転羽根部材48は、図7及び図10に示するように、フレーム22から斜め下方へ向けて延出された取付片55の下端部に軸受56を介して回転自在に回転軸部57が支承され、該回転軸部57から放射状に突出された複数枚の羽板部58とを備え、回転軸部57の軸線は図10のように内向きに傾斜されている。羽板部58は、回転軸部57より下方へ突出するとともに、その下端部58aから先端部58bにかけて斜め上方に突出し、かつ、周方向に湾曲して形成され、羽板部58の先端部58aが土壌表面に接地することで自発的に回転するように構成されている。
【0046】
また、回転羽根部材48を支承する取付片55の上端部には、左右側方に向けて水平板状に突出する突出片55aが一体連接されていると共に、フレーム22の後端下辺部には突出片55aに対面するように左右側方に突出する水平板状のステー取付片22aが溶接等によって固定されている。前記フレーム22側のステー取付片22aの前後二箇所には、第1実施形態と同様に、左右方向に長い長孔36,36が形成され、回転羽根部材48側の突出片55aには長孔36,36に対応する前後二箇所にボルト孔37,37が形成されている。前記ステー取付片22a側から長孔36,36及びボルト孔37,37に挿通するボルト38,38と、突出片55aの下面側でボルト38,38にナット39、39を螺合されることで締付け固定し、また締付け解除している。これにより、回転羽根部材48をフレーム22に対して左右方向に位置変更自在に固定できるようにされている。
【0047】
なお、以上に説明した構成以外、例えば、スプリング爪25、ソリ高さやソリ角度の調節構造、条間除草手段10Bを構成するカゴ状ロータ43の構造及びロータ高さ調節構造、タイン24の取付基部の構造等は第1実施形態と同様であるため、同一部分は同一の符号を付して詳しい説明を省略する。
また、除草装置10を昇降可能に取り付けている乗用走行機体4の構成は図示していないが、その構成は第1実施例の場合と全く同様である。
【0048】
次に、前記第2実施形態の水田除草機1による除草作業動作について説明する。
除草装置10全体を降下させて、接地ソリ23を水面よりも下層の土壌表面に接地させるとともに、スプリング爪25、株間除草手段10Aのタイン24及び回転羽根部材48における羽板部58の先端部58b並びに条間除草手段10Bのロータ43を土壌表面より少し沈んだ状態にする。
【0049】
この状態で機体4が前進走行すると、接地ソリ23は、土壌表面上を追従移動する一方、タイン24(24a,24b)は土壌表面から少し潜った状態で牽引移動される。このタイン24の牽引移動に伴い、まず、植付け条を挟み左右で対向する第1種タイン24aが稲苗Nの周りの土を攪拌し柔らかくするように作用した後、第2種タイン24bが稲苗Nの根元部にまで入り込んで柔らかいタッチで株間の雑草を引き抜くとともに、雑草の生育していたところの土壌を崩す。続いて、植付け条を挟み左右で対向配置されている回転羽根部材48によってタイン24が引き抜いた雑草を土中に押し込むと同時に、残存している雑草を土壌より掻き出して除草する。そして、回転羽根部材48に引き続いて条間の土壌表面より少し沈んだ箇所を転動移動するロータ43が条間に生育している雑草を引き抜くとともに、その引き抜いた雑草及び前記タイン24、回転羽根部材48によって抜き取られた雑草に土壌を被せてそれら雑草を枯れさせる。
【0050】
この第2実施形態の水田除草機1では、タイン24と回転羽根部材48とが前後に併設配置されているので、タイン24単体では初期除草時に作物を倒しやすいという問題を解消できる。また、回転羽根部材48単体では硬い圃場で十分に除草できないという問題も解決することができ、硬い圃場での特に初期除草を確実、良好に行うことができる。
【0051】
さらに、株間除草手段10Aを構成する複数のタイン24を取り付けている取付ステー53を両切ボルト51及びこれに螺嵌された挟みナット54により上下方向に位置変更して固定することができる。回転羽根部材48は長孔36,36及びボルト38,38、ナット39,39を介してフレーム22に対して左右方向に位置変更して固定することができる。これにより、左右で対向する第1種タイン24a,24aの土壌への挿入深さを調節できる。また、回転羽根部材48の作用位置をこれらタイン24a,24及び回転羽根部材48によって稲苗Nを傷めることのないような位置に簡単かつ容易に調節することができる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、水田に条植えされた稲苗周囲に生育する雑草を除草する水田除草機に限らず、稲苗以外に、条植えされる各種の作物の周囲に生育する雑草の除草にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明に係る除草機の第1実施形態を示し、水田に条植えされた稲苗(作物の例)の周囲に生育する雑草を除草する4条用の水田除草機全体の側面図である。
【図2】第1実施形態の水田除草機全体の概略平面図である。
【図3】第1実施形態の水田除草機における主要部である除草装置の拡大側面図である。
【図4】第1実施形態の除草装置の使用状況を示す拡大平面図である。
【図5】第1実施形態の除草機装置における株間除草部付近の使用状況を示す拡大正面図である。
【図6】(a)は除草位置の調節状態を説明する概略平面図、(b)は除草範囲の調節状態を説明する概略平面図である。
【図7】本発明に係る除草機の第2実施形態を示し、水田に条植えされた稲苗(作物の例)の周囲に生育する雑草を除草する4条用の水田除草機の主要部である除草装置の拡大側面図である。
【図8】第2実施形態の除草装置の使用状況を示す拡大平面図である。
【図9】第2実施形態の除草機装置における株間除草部付近の作用状況を説明する拡大正面図である。
【図10】第2実施形態の除草装置における回転羽根部材の使用状況を示す拡大平面図である。
【符号の説明】
【0054】
1 水田除草機
4 乗用走行機体
10 除草装置
10A 株間除草手段
10B 条間除草手段
22 フレーム
24 タイン
24a 第1種タイン
24b 第2種タイン
24a1,24b1 タイン取付基部
34 ステー
48 回転羽根部材
57 回転軸部
58 羽板部
N 稲苗(作物の一例)
Z 雑草
S 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体に、土壌表面に接地して除草を行う左右一対のタインを対向配置させると共にこれら左右一対のタインの複数組を前後方向に並設させて装備した除草機において、
前記前後方向に並設する複数のタインを前後方向に長尺な取付ステーに固定し、該取付ステーを、機体側の前後方向に延在させたフレームに対して左右方向に位置変更可能に固定して左右対向配置される前記タインの先端クロス量が調節可能とされていると共に、前記取付ステーを各フレームに対する前後方向の傾斜角度を変更可能に固定して前後並設される左右一対のタインのクロス量を前後方向で可変できる構成とされていることを特徴とする除草機。
【請求項2】
走行機体に、土壌表面に接地して除草を行う左右一対のタインを対向配置させると共に、これら左右一対のタインの複数組を前後方向に並設させて取り付けた除草機において、
前記乗用走行機体の前部に、昇降および傾動可能に接地ソリが取り付けられ、該接地ソリより立設したフレームに、前後方向に並設される前記タインを固定した取付ステーが上下位置変更可能に固定され前記タインの土壌への挿入深さを可変できる構成とされていることを特徴とする除草機。
【請求項3】
前記タインの後方に、タインにより引き抜いた雑草を土中に押し込む回転羽根部材が配置され、該回転羽根部材は回転軸部から複数の羽板部が放射状に突出されている請求項1または請求項2にに記載の除草機。
【請求項4】
前記複数のタインは、左右で対向する先端同士間に隙間を有し作物の周りの土を攪拌しする第1種タインと、左右対向する先端同士がクロスして作物の根元まで入り込んで株間の雑草を抜き取る第2種タインとを、前後方向に組み合わせている請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の除草機。
【請求項5】
前記取付ステーに取り付けられる各タインの取付基部は、略渦巻状に屈曲されて弾性変形可能に形成されている請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の除草機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−340652(P2006−340652A)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−168853(P2005−168853)
【出願日】平成17年6月8日(2005.6.8)
【出願人】(000100469)みのる産業株式会社 (158)
【Fターム(参考)】