説明

電動パワーステアリング装置

【課題】 アシスト制御の停止後、速やかに昇圧回路の平滑コンデンサの端子電圧を低下させることのできる電動パワーステアリング装置を提供すること。
【解決手段】 マイコンは、アシスト制御停止後(ステップ203:YES)、第1FETをオフとして電源電圧の昇圧を停止する。そして、昇圧回路の出力電圧Voutが所定電圧V1に低下する(ステップ205:YES)まで、第2FETをオンとする(ステップ206)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源電圧を昇圧して出力する昇圧回路を備えた電動パワーステアリング装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、車両用パワーステアリング装置として、モータを駆動源とする電動パワーステアリング装置(EPS)が広く採用されるようになっており、こうしたEPSには、アシスト力の強化及びその立ち上がり特性の改善を図るべく、昇圧回路により電源電圧を昇圧し、該昇圧された昇圧電圧に基づいてモータ制御を行うものがある。
【0003】
例えば、特許文献1に記載のEPSは、車載電源と駆動回路との間に設けられた昇圧回路を備え、該昇圧回路は、一端に電源電圧が印加される昇圧コイルと、その他端を接地又は開放可能な第1のスイッチング素子と、昇圧コイル及び第1のスイッチング素子の接続点と出力端子とを接続又は開放可能な第2のスイッチング素子とを有している。
【0004】
そして、その第1及び第2のスイッチング素子を交互にオン/オフすることにより、電源電圧を昇圧し、その脈動的に変化する電圧・電流を出力端子に接続された平滑コンデンサにて平滑化して駆動回路に印加するようになっている。
【特許文献1】特開2003−319700号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、イグニッション・オフ(IGオフ)やEPSの異常等によりアシスト制御が停止した場合、その出力端子とその負荷であるモータとの接続がオフとなる。従って、アシスト制御の停止とともに昇圧制御を停止し、平滑コンデンサと車載電源との接続をオフとすれば、昇圧制御の停止後においても平滑コンデンサに蓄えられたエネルギーが消費されず、その端子電圧が長時間にわたって高電圧に維持されたままとなる。そのため、この高電圧部位がメンテナンス上の制約要因となっており、この点において、なお改善の余地を残すものとなっていた。
【0006】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、アシスト制御の停止後、速やかに昇圧回路の平滑コンデンサの端子電圧を低下させることのできる電動パワーステアリング装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、電源電圧を昇圧して出力する昇圧回路と、該昇圧回路の出力電圧を制御する制御手段とを備え、昇圧された前記出力電圧に基づく駆動電力の供給により制御されるモータを駆動源として操舵系にアシスト力を付与する電動パワーステアリング装置であって、前記昇圧回路は、一端に電源電圧が印加される昇圧コイルと、該昇圧コイルの他端を接地又は開放可能な第1のスイッチング素子と、前記昇圧コイル及び前記第1のスイッチング素子の接続点と出力端子とを接続又は開放可能な第2のスイッチング素子と、前記出力端子に接続された平滑コンデンサとを備え、前記制御手段は、前記第1及び第2のスイッチング素子をオン/オフ駆動することにより前記出力電圧を制御し、前記アシスト力の付与が停止された後は、前記出力電圧が所定電圧となるまで、前記第2のスイッチング素子をオンとすること、を要旨とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、電源電圧を昇圧して出力する昇圧回路と、該昇圧回路の出力電圧を制御する制御手段とを備え、昇圧された前記出力電圧に基づく駆動電力の供給により制御されるモータを駆動源として操舵系にアシスト力を付与する電動パワーステアリング装置であって、前記昇圧回路は、一端に電源電圧が印加される昇圧コイルと、該昇圧コイルの他端を接地又は開放可能な第1のスイッチング素子と、前記昇圧コイル及び前記第1のスイッチング素子の接続点と出力端子とを接続又は開放可能な第2のスイッチング素子と、前記出力端子に接続された平滑コンデンサとを備え、前記制御手段は、前記第1及び第2のスイッチング素子をオン/オフ駆動することにより前記出力電圧を制御し、前記アシスト力の付与が停止された後は、所定時間、前記第2のスイッチング素子をオンとすること、を要旨とする。
【0009】
上記各構成によれば、アシスト付与の停止、即ちアシスト制御の停止後、第2のスイッチング素子をオンとすることで、昇圧コイルと平滑コンデンサとが接続される。従って、同平滑コンデンサに蓄積されたエネルギー(電荷)を電源に帰還させることが可能となり、その結果、速やかに平滑コンデンサの端子電圧を低下させることができる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、前記制御手段は、前記第2のスイッチング素子をPWM制御により前記オンとすること、を要旨とする。
請求項4に記載の発明は、電源電圧を昇圧して出力する昇圧回路と、該昇圧回路の出力電圧を制御する制御手段とを備え、昇圧された前記出力電圧に基づく駆動電力の供給により制御されるモータを駆動源として操舵系にアシスト力を付与する電動パワーステアリング装置であって、前記制御手段は、検出された出力電圧とその目標電圧との偏差に基づくフィードバック制御により前記出力電圧を制御し、前記アシスト力の付与が停止された後は、前記目標電圧を時間経過とともに徐々に低減すること、を要旨とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、アシスト制御の停止後、速やかに昇圧回路の平滑コンデンサの端子電圧を低下させることが可能な電動パワーステアリング装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を昇圧装置付き電動パワーステアリング装置(EPS)に具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
図1に示すように、EPS1は、車両の操舵系にアシスト力を付与する駆動源としてのモータ2と、該モータ2を制御するECU3とを備えている。
【0013】
ステアリングホイール(ステアリング)4は、ステアリングシャフト5を介してラック6に連結されており、ステアリング操作に伴うステアリングシャフト5の回転は、ラックアンドピニオン機構(図示略)にてラック6の往復直線運動に変換され操舵輪8に伝達される。本実施形態のEPS1は、モータ2がラック6と同軸に配置された所謂ラック型EPSであり、モータ2が発生するアシストトルクは、ボール送り機構(図示略)を介してラック6に伝達される。そして、ECU3は、このモータ2が発生するアシストトルクを制御することにより、操舵系に付与するアシスト力を制御する。
【0014】
図2に示すように、ECU3は、モータ制御信号を出力するマイコン11と、モータ制御信号に基づいてモータ2に駆動電力を供給する駆動回路12とを備えている。尚、本実施形態のモータ2はブラシレスモータであり、駆動回路12は、モータ制御信号に基づいて三相(U,V,W)の駆動電力を供給する。
【0015】
マイコン11には、操舵トルクτを検出するためのトルクセンサ14、及び車速センサ15が接続されており(図1参照)、マイコン11は、入力された操舵トルクτ及び車速Vに基づいて操舵系に付与するアシスト力、即ちモータ2が発生するアシストトルクを決定する。
【0016】
また、マイコン11には、モータ2に通電される電流値を検出するための電流センサ17,18、及びモータ2の回転角(電気角)θを検出するための回転角センサ19が接続されており、マイコン11は、これら各センサの出力信号に基づいてモータ2の各相電流値Iu,Iv,Iw、及びその回転角θを検出する。そして、マイコン11は、この検出された各相電流値Iu,Iv,Iw及び回転角θに基づいて、モータ2に上記決定されたアシストトルクを発生させるべくモータ制御信号を出力する。
【0017】
尚、本実施形態では、マイコン11は、相電流値Iu,Iv,Iwをd/q変換し、d/q座標系における電流制御、詳しくは、q軸電流値がアシストトルクの目標値となるq軸電流指令値に追従するように制御する。そして、マイコン11は、このd/q座標系における電流制御に基づき決定されたモータ制御信号を駆動回路12に出力する。
【0018】
一方、駆動回路12は、モータ2の相数に対応する複数(2×3個)のパワーMOSFET(以下、単にFET)により構成されており、具体的にはFET21a,21dの直列回路、FET21b,21eの直列回路及びFET21c,21fの直列回路を並列接続することにより構成されている。そして、FET21a,21dの接続点22uはモータ2のU相コイルに接続され、FET21b,21eの接続点22vはモータ2のV相コイルに接続され、FET21c,21fの接続点22wはモータ2のW相コイルに接続されている。
【0019】
マイコン11から出力されるモータ制御信号は、各FET21a〜21fのゲート端子に印加される。そして、このモータ制御信号に応答して各FET21a〜21fがオン/オフすることにより、直流電源20から供給される直流電圧が三相(U,V,W)の駆動電力に変換されモータ2に供給されるようになっている。
【0020】
また、EPS1は、電源電圧Vinを昇圧して駆動回路12に出力する昇圧装置23を備えている。本実施形態では、昇圧装置23は、昇圧回路25と、制御手段としてのマイコン11とにより構成されており、昇圧回路25は、直流電源20と駆動回路12との間の電力供給経路に設けられている。そして、昇圧回路25は、マイコン11に制御されることにより直流電源20の電源電圧Vinを昇圧して駆動回路12に出力する。
【0021】
図3に示すように、本実施形態の昇圧回路25は、第1FET26a、第2FET26b、昇圧コイル27、及び平滑コンデンサ28により構成されている。昇圧コイル27は、一端が直流電源20に接続されるとともに他端が第1FET26aの一端に接続されており、第1FET26aの他端は接地されている。また、昇圧コイル27と第1FET26aとの間の接続点aは、第2FET26bの一端に接続されており、第2FET26bの他端は、駆動回路12に接続されている。そして、第2FET26bと駆動回路12との間の接続点bは、平滑コンデンサ28を介して接地されている。
【0022】
即ち、本実施形態では、第1FET26aが昇圧コイル27を接地又は開放可能な第1のスイッチング素子を構成し、接続点bが昇圧回路25の出力端子を構成する。そして、第2FET26bが、昇圧コイル27及び第1のスイッチング素子の接続点と出力端子とを接続又は開放可能な第2のスイッチング素子を構成する。
【0023】
第1FET26a及び第2FET26bのゲート端子は、マイコン11と接続されており、マイコン11は、第1FET26a及び第2FET26bのゲート端子に制御信号を印加することにより、第1FET26a及び第2FET26bを交互にオン/オフ制御する。これにより、接続点aにおける電圧は、第1FET26aのオフ時に昇圧コイル27に発生する逆起電力が電源電圧Vinに重畳された電圧となり、第1FET26aがオン時に接地電位となる。そして、この電圧が第2FET26bのオン時に接続点bに伝達され、その脈動的に変化する電圧・電流が平滑コンデンサ28にて平滑化されることにより、直流電源20の電源電圧Vinを昇圧した出力電圧Voutが出力されるようになっている。
【0024】
本実施形態では、マイコン11は、第1FET26a及び第2FET26bに対し、制御信号として所定のDUTY比を有するパルス信号を出力する、即ちPWM制御することにより、昇圧回路25の出力電圧Voutを制御する(昇圧制御)。
【0025】
具体的には、マイコン11には、電源電圧Vinを検出するための第1の電圧センサ29とともに、昇圧回路25の出力電圧Voutを検出するための第2の電圧センサ30が接続されている。そして、マイコン11は、この第2の電圧センサ30により検出された出力電圧Voutとその制御目標である目標電圧との偏差に基づいて、出力電圧Voutのフィードバック制御演算を行う。そして、マイコン11は、このフィードバック制御演算により決定されたDUTY比を有する制御信号を第1FET26a及び第2FET26bに出力し、同制御信号によって第1FET26a及び第2FET26bのオン/オフ時間が変化することにより、昇圧回路25の出力電圧Voutが制御されるようになっている。
【0026】
尚、昇圧回路25の出力電圧Voutは、制御信号のDUTY比(第1FET26aに対して出力する制御信号のオンDUTY比)が大きい場合に高くなり、そのDUTY比が小さい場合には低くなる。そして、本実施形態では、マイコン11は、予め設定された所定電圧V1を目標電圧として昇圧回路25の出力電圧Voutを制御する。
【0027】
[アシスト制御停止後の昇圧制御]
次に、アシスト制御停止後における昇圧制御の態様について詳述する。
図2に示すように、マイコン11には、イグニッションスイッチがオフ(IGオフ)されたことを示すIGオフ信号、及びモータ2を含むEPSシステムに何らかの異常が発生した旨を示す異常検出信号が入力されるようになっている。そして、マイコン11は、これらIGオフ信号又は異常検出信号の入力があった場合には、モータ2への駆動電力の供給を行うためのモータ制御信号の出力、即ち操舵系にアシスト力を付与するためのアシスト制御を停止する。
【0028】
また、本実施形態のマイコン11は、こうしたアシスト制御停止後も、出力電圧Voutの制御を続行する。そして、昇圧回路25の平滑コンデンサ28の端子電圧を速やかに低下させるべく、昇圧回路25の第1FET26a及び第2FET26bをオン/オフ制御する。
【0029】
具体的には、マイコン11は、アシスト制御停止後、第1FET26aをオフ(第1FET26aに出力する制御信号のオンDUTY比を「0」に固定)として電源電圧Vinの昇圧を停止する。そして、昇圧回路25の出力電圧Voutが所定電圧V1に低下するまで、第2FET26bをオン(第2FET26bに出力する制御信号のオンDUTY比を「100」に固定)とする。尚、本実施形態では、所定電圧V1は、メンテナンス性の妨げとならない電源電圧Vinと同等程度の電圧に設定されている。
【0030】
次に、本実施形態のマイコン11によるアシスト制御停止判定及び昇圧制御の処理手順について説明する。
本実施形態では、マイコン11は、定時割り込みにより、アシスト制御停止判定及び昇圧制御を実行する。即ち、図4のフローチャートに示すように、マイコン11は、IGオフ信号又は異常検出信号の入力があるか否かを判定することにより、アシスト制御の停止判定を行う(ステップ101)。そして、IGオフ信号又は異常検出信号の入力がある場合(ステップ101:YES)には、アシスト制御を停止し、アシスト制御停止フラグを「ON」とする(ステップ102)。尚、IGオフ信号又は異常検出信号の入力がない場合(ステップ101:NO)には、上記ステップ102の処理を実行せず、アシスト制御停止フラグを「OFF」とする(ステップ103)。
【0031】
また、図5のフローチャートに示すように、マイコン11は、昇圧制御処理において、先ず、目標電圧Vout*の設定(ステップ201)、及び出力電圧Voutの検出(ステップ202)を実行し、続いて、アシスト制御停止フラグが「ON」であるか否かを判定する(ステップ203)。そして、アシスト制御停止フラグが「ON」ではない場合(ステップ203:NO)には、フィードバック制御演算を実行し、出力電圧Voutを目標電圧Vout*に制御すべく制御信号の出力を実行する(ステップ204)。
【0032】
一方、上記ステップ203において、アシスト制御停止フラグが「ON」であると判定した場合(ステップ203:YES)、マイコン11は、続いて出力電圧Voutが所定電圧V1以下であるか否かを判定する(ステップ205)。そして、出力電圧Voutが所定電圧V1よりも大きい場合(Vout>V1、ステップ205:NO)には、第1FET26aをオフ、及び第2FET26bをオンとする(ステップ206)。そして、上記ステップ205において、出力電圧Voutが所定電圧V1以下と判定した場合(Vout≦V1、ステップ205:YES)には、昇圧回路25への制御信号の出力、即ち昇圧制御を停止する(ステップ207)。
【0033】
このように、マイコン11は、定時割り込みにて、上記アシスト制御停止判定及び昇圧制御を実行することにより、アシスト制御の停止後(アシスト制御停止フラグが「ON」、ステップ203:YES)は、出力電圧Voutが所定電圧V1以下となる(Vout≦V1、ステップ205:YES)まで、第2FET26bをオンとする(ステップ206)。
【0034】
即ち、第2FET26bのオンにより、昇圧コイル27と平滑コンデンサ28とが接続され、同平滑コンデンサ28に蓄積されたエネルギー(電荷)を昇圧コイル27を介して直流電源20に帰還させることが可能になる。そして、出力電圧Vout、即ち接続点bに接続された平滑コンデンサ28の端子電圧が所定電圧V1に低下するまで、第2FET26bをオンに固定することにより、その電圧をメンテナンス性の妨げとならない程度の電圧まで、速やかに低下させることができる。
【0035】
なお、本実施形態は、以下のように変更してもよい。
・本実施形態では、アシスト制御の停止後は、第2FET26bをオンに固定することとしたが、これに限らず、第2FET26bを断続的にオンとする構成としてもよい。この場合、アシスト制御停止後、第2FET26bに出力する制御信号のオンDUTY比を任意に設定すればよい。
【0036】
・本実施形態では、アシスト制御の停止後は、昇圧回路25の出力電圧Voutが所定電圧V1に低下するまで、第2FET26bをオンとすることとしたが、これに限らず、アシスト制御の停止後、所定時間を経過するまで、第2FET26bをオンとする構成としてもよい。このような構成としても。アシスト制御の停止後、速やかに昇圧回路の平滑コンデンサの端子電圧を低下させることができる。
【0037】
・また、アシスト制御の停止後は、フィードバック制御演算の目標電圧を時間経過とともに徐々に低減する構成としてもよい。例えば、目標電圧Vout*にアシスト制御停止からの時間経過とともに減少する補正係数G(図6参照)を乗ずることにより同目標電圧Vout*を補正し、その補正後の目標電圧Vout**に基づいてフィードバック制御演算を行う。
【0038】
即ち、図7のフローチャートに示すように、アシスト制御停止フラグが「ON」であると判定し(ステップ303:YES)、続いて出力電圧Voutが所定電圧V1よりも大きいと判定した場合(Vout>V1、ステップ305:NO)には、アシスト制御停止からの経過時間tに基づいて補正係数Gを決定する(ステップ306)。
【0039】
次に、この補正係数Gに基づいて目標電圧Vout*を補正し(Vout**=Vout*×G、ステップ307)、出力電圧Voutをその補正後の目標電圧Vout**に制御すべく制御信号の出力を実行する(ステップ308)。そして、アシスト制御停止からの経過時間tを計測するタイマをカウントアップする(ステップ309)。尚、この場合、アシスト制御停止からの経過時間tは、アシスト制御停止判定において、アシスト制御停止フラグを「オン」とした際に、経過時間tを計測するタイマをクリアし経過時間t=0とすればよい(図4参照、ステップ102)。
【0040】
そして、上記ステップ305において、出力電圧Voutが所定電圧V1以下と判定された場合(Vout≦V1、ステップ305:YES)には、昇圧回路25への制御信号の出力、即ち昇圧制御を停止する(ステップ310)。
【0041】
このように、アシスト制御停止後(ステップ303:YES)は、定時割り込み毎に、上記ステップ306〜ステップ309の処理を実行することで、ステップ306において決定される補正係数Gが経過時間tの増加とともに減少し、ステップ307において演算される補正後の目標電圧Vout**もまた、経過時間tの増加とともに減少する。そして、その補正後の目標電圧Vout**に出力電圧Voutを制御することで、速やかに昇圧回路の平滑コンデンサの端子電圧を低下させることができる。
【0042】
従って、以上のように構成しても、本実施形態と同様の効果を得ることができ、加えて、昇圧回路の構成に依存しないという利点がある。尚、図7のフローチャートにおけるステップ301〜ステップ304の処理は、図5に示すフローチャートにおけるステップ201〜ステップ204の処理と同一であるため、その説明を省略する。
【0043】
また、補正係数G並びに補正後の目標電圧Vout**の決定方法については、上記図7のフローチャートに示す方法に限るものではなく、アシスト制御停止からの時間経過とともに減少させるものであればよい。
【0044】
次に、以上の実施形態から把握することのできる請求項以外の技術的思想を記載する。
(イ)電源電圧を昇圧して出力する昇圧回路と、該昇圧回路の出力電圧を制御する制御手段とを備えた昇圧装置であって、前記昇圧回路は、一端に電源電圧が印加される昇圧コイルと、該昇圧コイルの他端を接地又は開放可能な第1のスイッチング素子と、前記昇圧コイル及び前記第1のスイッチング素子の接続点と出力端子とを接続又は開放可能な第2のスイッチング素子と、前記出力端子に接続された平滑コンデンサとを備え、前記制御手段は、前記第1及び第2のスイッチング素子をオン/オフ駆動することにより前記出力電圧を制御し、前記昇圧を停止する際には、前記出力電圧が所定電圧となるまで、前記第2のスイッチング素子をオンとすること、を特徴とする昇圧装置。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】電動パワーステアリング装置(EPS)の概略構成図。
【図2】EPSの電気的構成を示すブロック図。
【図3】昇圧装置の概略構成を示すブロック図。
【図4】アシスト制御停止判定の処理手順を示すフローチャート。
【図5】アシスト制御停止後における昇圧制御の処理手順を示すフローチャート。
【図6】補正係数についての決定方法を示す説明図。
【図7】別例の昇圧制御の処理手順を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0046】
1…EPS、2…モータ、11…マイコン、20…直流電源、23…昇圧装置、25…昇圧回路、26a…第1FET、26b…第2FET、27…昇圧コイル、28…平滑コンデンサ、a,b…接続点、Vin…電源電圧、Vout…出力電圧、Vout*,Vout**…目標電圧、V0,V1…所定電圧、t…経過時間。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源電圧を昇圧して出力する昇圧回路と、該昇圧回路の出力電圧を制御する制御手段とを備え、昇圧された前記出力電圧に基づく駆動電力の供給により制御されるモータを駆動源として操舵系にアシスト力を付与する電動パワーステアリング装置であって、
前記昇圧回路は、一端に電源電圧が印加される昇圧コイルと、該昇圧コイルの他端を接地又は開放可能な第1のスイッチング素子と、前記昇圧コイル及び前記第1のスイッチング素子の接続点と出力端子とを接続又は開放可能な第2のスイッチング素子と、前記出力端子に接続された平滑コンデンサとを備え、
前記制御手段は、前記第1及び第2のスイッチング素子をオン/オフ駆動することにより前記出力電圧を制御し、前記アシスト力の付与が停止された後は、前記出力電圧が所定電圧となるまで、前記第2のスイッチング素子をオンとすること、
を特徴とする電動パワーステアリング装置。
【請求項2】
電源電圧を昇圧して出力する昇圧回路と、該昇圧回路の出力電圧を制御する制御手段とを備え、昇圧された前記出力電圧に基づく駆動電力の供給により制御されるモータを駆動源として操舵系にアシスト力を付与する電動パワーステアリング装置であって、
前記昇圧回路は、一端に電源電圧が印加される昇圧コイルと、該昇圧コイルの他端を接地又は開放可能な第1のスイッチング素子と、前記昇圧コイル及び前記第1のスイッチング素子の接続点と出力端子とを接続又は開放可能な第2のスイッチング素子と、前記出力端子に接続された平滑コンデンサとを備え、
前記制御手段は、前記第1及び第2のスイッチング素子をオン/オフ駆動することにより前記出力電圧を制御し、前記アシスト力の付与が停止された後は、所定時間、前記第2のスイッチング素子をオンとすること、を特徴とする電動パワーステアリング装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の電動パワーステアリング装置において、
前記制御手段は、前記第2のスイッチング素子をPWM制御により前記オンとすること、を特徴とする電動パワーステアリング装置。
【請求項4】
電源電圧を昇圧して出力する昇圧回路と、該昇圧回路の出力電圧を制御する制御手段とを備え、昇圧された前記出力電圧に基づく駆動電力の供給により制御されるモータを駆動源として操舵系にアシスト力を付与する電動パワーステアリング装置であって、
前記制御手段は、検出された出力電圧とその目標電圧との偏差に基づくフィードバック制御により前記出力電圧を制御し、前記アシスト力の付与が停止された後は、前記目標電圧を時間経過とともに徐々に低減すること、を特徴とする電動パワーステアリング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−69328(P2006−69328A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−254407(P2004−254407)
【出願日】平成16年9月1日(2004.9.1)
【出願人】(302066630)株式会社ファーベス (138)
【出願人】(000003470)豊田工機株式会社 (198)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】