説明

電圧変換モジュール素子、及び電圧変換モジュール

【課題】電圧変換用ICの雑音除去性能を劣化させることなく、電圧変換用ICを多層配線板中に内蔵させた、新規な構成の電圧変換モジュール素子及び電圧変換モジュールを提供する。
【解決方法】多層配線板における複数の配線パターンの、内方に位置する配線パターンの一つに実装された電圧変換を行うための電圧変換用ICと、 前記複数の配線パターンの少なくとも一つにおいて、前記電圧変換用ICの入力側における入力端子及びグランド端子と電気的に接続するようにして実装されたコンデンサとを具える電圧変換モジュール素子及び電圧変換モジュールにおいて、前記コンデンサの、前記電圧変換用ICの前記入力端子及び前記グランド端子までの接続長の合計を1mm以下とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報通信機器及び移動体通信機器で好適に利用することのできる電圧変換モジュール素子及び電圧変換モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年の電子機器の高性能化・小型化の流れの中、回路部品の高密度、高機能化が一層求められている。かかる観点より、回路部品を搭載したモジュールにおいても、高密度、高機能化への対応が要求されている。このような要求に応えるべく、現在では配線板を多層化することが盛んに行われている。
【0003】
このような多層配線板においては、複数の配線パターンを厚さ方向において略平行となるように離隔して配置し、配線パターン間に絶縁部材を配し、さらに半導体部品などの電子部品は絶縁部材中の、配線パターンの少なくとも1つに電気的に接続するようにして埋設する。そして、絶縁部材間を厚さ方向に貫通した層間接続体(ビア)を形成し、複数の配線パターンを互いに電気的に接続するようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
一方、電圧変換用ICは、この電圧変換用ICを十分に駆動させるべく、入力側にコンデンサを電圧変換用ICに対して並列に配置する。上記コンデンサは、2μF程度の容量を有し、さらに例えば1mm×0.5mmの大きさを有して、主として電圧変換用ICへの入力電圧安定化及び雑音除去のために使用する。
【0005】
特許文献2においては、多層配線板中には電圧変換用ICのみを内蔵させ、上記コンデンサは、多層配線板上に形成したコンデンサ内蔵層中に配置するような構成を採っている。しかしながら、特許文献2に記載されているような構成のモジュールでは、上記コンデンサによる電圧変換用ICの雑音除去性能が十分に発揮されないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−197849号
【特許文献2】特開2003−115664号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、電圧変換用ICの雑音除去性能を劣化させることなく、電圧変換用ICを多層配線板中に内蔵させた、新規な構成の電圧変換モジュール素子及び電圧変換モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成すべく、本発明は、
互いに離隔して順次に積層されてなる複数の配線パターン、これら複数の配線パターン間それぞれに位置する絶縁部材、及び前記複数の配線パターン間を電気的に接続する層間接続体を有する多層配線板と、
前記複数の配線パターンの、内方に位置する配線パターンの一つに実装された電圧変換を行うための電圧変換用ICと、
前記複数の配線パターンの少なくとも一つにおいて、前記電圧変換用ICの入力側における入力端子及びグランド端子と電気的に接続するようにして実装されたコンデンサとを具え、
前記コンデンサの、前記電圧変換用ICの前記入力端子及び前記グランド端子までの接続長の合計が1mm以下であることを特徴とする、電圧変換モジュール素子に関する。
【0009】
本発明者は、従来問題であった電圧変換用ICの入力側のコンデンサの機能に着目した。その結果、当該コンデンサは、外部電源からの雑音除去と電圧変換用ICからの雑音除去とを兼ね備えていることを見出した。したがって、コンデンサと電圧変換用ICとの接続長、すなわち配線等を介した電気的な接続長が短いほど、当該接続部の抵抗(インピーダンス)を低減させることができるので、このようなコンデンサの、電圧変換用ICに対する雑音除去の機能を有効に発揮させることができるであろうことを想到した。
【0010】
しかしながら、コンデンサと電圧変換用ICとの接続長を適宜調整したにも拘らず、電圧変換用ICに対する雑音除去の機能を有効に発揮することができず、本発明者はさらなる鋭意検討を実施した。
【0011】
その結果、コンデンサと電圧変換用ICとの距離を1mm以下と極端に短くすることによって、コンデンサと電圧変換用ICとを接続する配線等の抵抗(インピーダンス)が著しく減少し、上記コンデンサの、電圧変換用ICの雑音除去の機能を充分に発揮させることができることを見出した。
【0012】
したがって、本発明によれば、電圧変換用ICの雑音除去性能を劣化させることなく、電圧変換用ICを多層配線板中に内蔵させた、新規な構成の電圧変換モジュール素子を提供できる。
【0013】
また、本発明者は、電圧変換用ICの雑音を効果的に除去するには、コンデンサは大容量のコンデンサではなくともよいということを見出した。すなわち、外部電源からの雑音は低周波(数十Hz〜数kHz)であるために大容量のコンデンサを必要とする一方、電圧変換用ICの雑音は高周波(数十kHz〜数十MHz)なのでそれほど大きな容量は必要ない。また、容量が小さいほどコンデンサの共振周波数が高いので、より高周波でコンデンサのインピーダンスが小さくなり、雑音除去の効果が上がる。
【0014】
したがって、本発明の一例においては、上記コンデンサは小型化できるので、多層配線板を構成する複数の配線パターンの内、内方に位置する配線パターンと電気的に接続して実装することができ、特に上記電圧変換用ICを実装してなる配線パターン上に実装することができる。この場合、電圧変換用ICとコンデンサとは近接して配置することができるので、上述した1mm以下という接続長を容易に達成することができる。
【0015】
なお、例えば、外部電源からの雑音除去のための大容量のコンデンサは、元電源等に付加することができる。
【0016】
また、本発明の一例において、コンデンサは、複数の配線パターンの、最外層に位置する配線パターン上に実装し、電圧変換用ICは、前記コンデンサの直下において、内方に位置する配線パターンの一つに実装するようにすることもできる。この場合も、コンデンサと電圧変換用ICとを比較的近接させて配置することができるので、上述した1mm以下という接続長を比較的容易に達成することができる。
【0017】
特に、最外層に位置する配線パターンと、内方に位置する配線パターンの一つとを互いに隣接して配置するようにすれば、1mm以下という接続長をより容易に達成することができる。
【0018】
なお、上述した電圧変換モジュール素子を実際の電圧変換モジュールとして機能させるには、多層配線板の主面上において、複数の配線パターン及び層間接続体を介し、電圧変換用ICの出力側において、前記電圧変換用ICと電気的に直列に接続するようにして実装されたインダクタと、多層配線板の主面上において、複数の配線パターン及び層間接続体又はインダクタを介して、電圧変換用ICの出力側において、電圧変換用ICと電気的に並列に接続するようにして実装された第2のコンデンサとを設ける。
【発明の効果】
【0019】
以上、本発明によれば、電圧変換用ICの雑音除去性能を劣化させることなく、電圧変換用ICを多層配線板中に内蔵させた、新規な構成の電圧変換モジュール素子及び電圧変換モジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】第1の実施形態の電圧変換モジュールを示す断面構成図である。
【図2】図1に示す電圧変換モジュールの、電圧変換用ICと第1のコンデンサとの接続状態を示す図である。
【図3】図1に示す電圧変換モジュールに関する等価回路図である。
【図4】第2の実施形態の電圧変換モジュールを示す断面構成図である。
【図5】第3の実施形態の電圧変換モジュールを示す上平面図である。
【図6】図5に示す電圧変換モジュールの上平面図である。
【図7】第4の実施形態の電圧変換モジュールを示す上平面図である。
【図8】実施例におけるコンデンサの、電圧変換用ICの入力端子及びグランド端子までの接続長と、入力電圧に対するスイッチングによる高周波ノイズ成分の比との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の具体的特徴について、発明を実施するための形態に基づいて説明する。
【0022】
(第1の実施形態)
図1は、本実施形態の電圧変換モジュールの一例を示す断面構成図であり、図2は、図1に示す電圧変換モジュールの、電圧変換用ICとコンデンサとの接続状態を示す図である。
【0023】
図1に示す電圧変換モジュール10は、下側から順に第1の配線パターン111、第2の配線パターン112、第3の配線パターン113、第4の配線パターン114、第5の配線パターン115、第6の配線パターン116、及び第7の配線パターン117を有している。
【0024】
また、第1の配線パターン111から第7の配線パターン117における隣接する配線パターン間には、第1の絶縁部材121から第6の絶縁部材126がそれぞれ介在している。
【0025】
具体的には、第1の配線パターン111及び第2の配線パターン112間には第1の絶縁部材121が存在し、第2の配線パターン112及び第3の配線パターン113間には第2の絶縁部材122が存在し、第3の配線パターン113及び第4の配線パターン114間には第3の絶縁部材123が存在している。さらに、第4の配線パターン114及び第5の配線パターン115間には第4の絶縁部材124が存在し、第5の配線パターン115及び第6の配線パターン116間には第5の絶縁部材125が存在し、第6の配線パターン116及び第7の配線パターン117間には第6の絶縁部材126が存在している。
【0026】
さらに、第1の配線パターン111から第7の配線パターン117における隣接する配線パターン間は、第1の層間接続体131から第6の層間接続体136によって互いに電気的に接続されている。
【0027】
第1の配線パターン111から第7の配線パターン117、第1の絶縁部材121から第6の絶縁部材126、及び第1の層間接続体131から第6の層間接続体136は、多層配線板を構成する。
【0028】
なお、第1の配線パターン111上には、この配線パターン111の一部が露出するようにしてレジスト層191が形成されており、第7の配線パターン117上には、この配線パターン117の一部が露出するようにしてレジスト層192が形成されている。
【0029】
図1においては、第1の絶縁部材121から第6の絶縁部材126を識別可能に記載しているが、実際には互いに融着しているので、これら絶縁部材の識別は困難である。本実施形態では、本発明の特徴を明確にすべく、便宜上、これら絶縁部材を識別可能に記載している。
【0030】
また、図1に示す電圧変換モジュール10、すなわちこれを構成する多層配線板は、本実施形態では7層としているが、必要に応じて任意の数とすることができる。
【0031】
図1に示す電圧変換モジュール10においては、第2の配線パターン112が部品実装配線パターンとして機能し、この配線パターン112上に電圧変換用IC15がはんだボール15Cを介して電気的及び機械的に接続、実装されている。また、同じ部品搭載配線パターン、すなわち第2の配線パターン112上には、電圧変換用IC15の入力側において、電圧変換用IC15と隣接し、電気的に接続するようにしてコンデンサ16が接続、実装されている。
【0032】
コンデンサ16の容量は、電圧変換用IC15の雑音除去の観点から、例えば0.1μF以下とすることができ、好ましくは10nF以上とすることができる。なお、このような比較的小さい容量のコンデンサは、そのサイズも例えば0.6mm×0.3mm程度と十分に小さいので、上述した多層配線板のサイズを増大させることなく、電圧変換用IC15とともに多層配線板中に簡易に内蔵させることができる。
【0033】
なお、図2に示すように、第2の配線パターン112の、電圧変換用IC15が実装された部分は、入力端子パターン112A及びグランドパターン112Bに分岐されており、コンデンサ16は、これら入力端子パターン112A及びグランド端子パターン112Bに跨って実装され、電圧変換用IC15と電気的に接続されている。電圧変換用IC15においてグランドパターン112Bを設置するのは、電圧変換用IC15に入力する電圧の電圧値を決定するための基準を設定するという観点からである。
【0034】
また、本実施形態では、電圧変換用IC15等を実装する配線パターンを第2の配線パターンとしたが、その他の配線パターンを部品実装配線層として使用することもできる。さらに、電圧変換用IC15及びコンデンサ16を第2の配線パターン112上に搭載したが、それぞれ内方に位置する異なる配線パターン上に搭載することもできる。
【0035】
さらに、第7の配線パターン117も部品実装配線層として機能し、この第7の配線パターン117上、すなわち上記多層配線板の主面上には、第2のコンデンサ17及びインダクタ18が互いに隣接するようにして実装されている。第2のコンデンサ17及びインダクタ18は、それらの底面及び側面においてはんだ材17A及び18Aによって第7の配線パターン117に接続されている。
【0036】
第2のコンデンサ17の容量は、4μF以上が好ましく、コストや大きさから10μF以下が好ましい。したがって、このような比較的大きな容量のコンデンサは、そのサイズも例えば2mm×1.25mm程度と十分に大きくなる。したがって、図1に示すように、上述した多層配線板に内蔵させることなく、その主面上に実装させることが好ましい。なお、インダクタ18についても同様である。
【0037】
インダクタ18は、第7の配線パターン117及び第1の層間接続体131〜第6の層間接続体136を介して、残りの配線パターン、すなわち、第1の配線パターン111〜第6の配線パターン116と電気的に接続されており、これによって、電圧変換用IC15の出力側において、電圧変換用IC15と電気的に直列となるようにして接続されている。
【0038】
また、第2のコンデンサ17も、第7の配線パターン117及び第1の層間接続体131〜第6の層間接続体136を介して、残りの配線パターン、すなわち、第1の配線パターン111〜第6の配線パターン116と電気的に接続されており、これによって、電圧変換用IC15の出力側において、電圧変換用IC15と電気的に並列となるようにして接続されている。
【0039】
多層配線板の主面上、すなわち第7の配線パターン117上に実装された第2のコンデンサ17は、インダクタ18とともに、主として電圧変換用IC15からの出力電圧安定化のために機能させることができる。
【0040】
したがって、図1に示す電圧変換モジュール10は、図3に示すような等価回路を構成するようになる。
【0041】
図1に示す電圧変換モジュール10においては、例えば、外部電源雑音除去のためのコンデンサを図示しない電源等に付加することができるので、コンデンサ16で電圧変換用IC15の雑音除去用の機能を十分に発揮させることができる。但し、当該機能を発揮させるためには、コンデンサ16の、電圧変換用IC15の入力端子15A及びグランド端子15Bまでの接続長2d=(d+d)の合計を1mm以下とする。この場合、コンデンサ16と電圧変換用IC15とを接続する入力端子パターン112A及びグランドパターンの抵抗(インピーダンス)が著しく減少し、コンデンサ16の、電圧変換用ICの雑音除去の機能を充分に発揮させることができる。
【0042】
したがって、本実施形態によれば、電圧変換用IC15の雑音除去性能を劣化させることなく、電圧変換用IC15を多層配線板中に内蔵させた、電圧変換モジュール素子、すなわち電圧変換モジュール10を提供できる。
【0043】
なお、多層配線板の最下層、すなわち上記主面と相対向する裏面上に位置する配線パターン、すなわち第1の配線パターン111は端子層として機能させることができる。これによって、図1に示す電圧変換モジュール10を外部回路や外部機器と簡易に接続することができ、これら外部回路や外部機器に対して電圧変換機能を付加せしめることができる。
【0044】
(第2の実施形態)
図4、本実施形態の電圧変換モジュールの一例を示す断面構成図である。なお、図1に示す電圧変換モジュール10と類似又は同一の構成要素に関しては、同一の参照数字を用いている。
【0045】
図4に示す電圧変換モジュール20は、図1に示す電圧変換モジュール10を構成する多層配線板において、電圧変換用IC15及びコンデンサ16が、第7の配線パターン117上に上下が反転した状態で電気的に接続され、実装されている。
【0046】
本実施形態においては、電圧変換用IC15が出力電圧安定化用の第2のコンデンサ17及びインダクタ18と近接して配置されているので、これら間に介在する配線のインダクタンス値及び抵抗値成分が、図1に示す第1の実施形態に係わる電圧変換モジュール10と比較して低減されている。したがって、第2のコンデンサ17及びインダクタ18の、電圧変換用IC15に対する出力電圧安定化の作用効果をより効果的に奏することができるようになる。
【0047】
なお、その他の構成については、図1に示す電圧変換モジュール10と同様であるので説明を省略するが、図1に示す電圧変換モジュール10と同様の構成を有することに基づいて、同様の作用効果を奏する。すなわち、コンデンサ16の、電圧変換用IC15の入力端子15A及びグランド端子15Bまでの接続長2d=(d+d)の合計を1mm以下とすることによって、コンデンサ16と電圧変換用IC15とを接続する入力端子パターン112A及びグランドパターンの抵抗(インピーダンス)が著しく減少し、コンデンサ16の、電圧変換用ICの雑音除去の機能を充分に発揮させることができる。
【0048】
(第3の実施形態)
図5は、本実施形態の電圧変換モジュールの一例を示す断面構成図であり、図6は、図5に示す電圧変換モジュールの上平面図である。なお、図1に示す電圧変換モジュール10と類似又は同一の構成要素に関しては、同一の参照数字を用いている。
【0049】
図5に示す電圧変換モジュール30においては、図1に示す電圧変換モジュール10を構成する多層配線板において、第6の配線パターン116が部品実装配線層として機能し、この配線パターン116上に電圧変換用IC15がはんだボール15Cを介して電気的及び機械的に接続、実装されている。
【0050】
また、第7の配線パターン117も部品実装配線層として機能し、この第7の配線パターン117上、すなわち上記多層配線板の主面上には、コンデンサ16、第2のコンデンサ17及びインダクタ18が互いに隣接するようにして実装されている。この際、コンデンサ16の両端に位置する電極部161,162間で規定される長さ方向、第2のコンデンサ17の両端に位置する電極部171,172間で規定される長さ方向、インダクタ18の両端に位置する電極部181,182間で規定される長さ方向が、互いに平行となるように並列配置される。
【0051】
コンデンサ16は、本実施形態の電圧変換モジュール30において、電圧変換用IC15に対して入力側に位置する。第2のコンデンサ17及びインダクタ18は、電圧変換用IC15に対して出力側に位置する。
【0052】
コンデンサ16の電極部162は、図5及び図6に示す電圧変換モジュール30における入力部を構成し、電極部161の電位はグランドに設定されている。また、コンデンサ16の入力部を構成する電極部162と対向する第2のコンデンサ17の電極部172はグランドに設定されている。さらに、インダクタ18の電極部181は、電圧変換モジュール30における出力部を構成し、電極部182は、グランドに設定されている。
【0053】
なお、第2のコンデンサ17の電極部171とインダクタ18の出力部を構成する電極部181とは、電気的良導体、例えばAu,Ag,Cuなどからなる配線パターン19によって電気的に接続されているので、第2のコンデンサ17及びインダクタ18は電気的に直列に接続されることになる。
【0054】
また、コンデンサ16及びインダクタ18は、第7の配線パターン117と図示しないはんだ材などを介して電気的に接続されている。
【0055】
さらに、電圧変換用IC15は、第2の配線パターン112及び第1の層間接続体131〜第6の層間接続体136を介して、残りの配線パターン、すなわち、第1の配線パターン111、及び第3の配線パターン113〜第7の配線パターン117と電気的に接続されている。また、コンデンサ16及びインダクタ18は、第7の配線パターン117及び第1の層間接続体131〜第6の層間接続体136を介して、残りの配線パターン、すなわち、第1の配線パターン111〜第6の配線パターン116と電気的に接続されている。
【0056】
電圧変換用IC15は、上述した配線パターン111〜117及び層間接続体131〜136を介して、コンデンサ16と電気的に並列に接続され、インダクタ18とは電気的に直列に接続されることになる。
【0057】
図5及び図6に示す電圧変換モジュール30においても、例えば、外部電源雑音除去のためのコンデンサを図示しない電源等に付加することができるので、コンデンサ16で電圧変換用IC15の雑音除去用の機能を十分に発揮させることができる。但し、当該機能を発揮させるためには、コンデンサ16の、配線パターン116〜117の厚さ、配線パターン116及び層間接続体136からなる電気的なパスを介した電圧変換用IC15の入力端子15A及びグランド端子15Bまでの接続長2d=(d+d)の合計を1mm以下とする。この場合、コンデンサ16と電圧変換用IC15とを接続する上記電気的なパスの抵抗(インピーダンス)が著しく減少し、コンデンサ16の、電圧変換用ICの雑音除去の機能を充分に発揮させることができる。
【0058】
なお、本実施形態では、電圧変換用IC15を第6の配線パターン116上に実装し、コンデンサ16を最外層の第7の配線パターン117上に実装させている。この場合、第6の配線パターン116及び第7の配線パターン117は互いに隣接しているので、コンデンサ16の、電圧変換用IC15の入力端子15A及びグランド端子15Bまでの接続長2dの合計を比較的簡易に1mm以下とすることができる。
【0059】
したがって、本実施形態によれば、電圧変換用IC15の雑音除去性能を劣化させることなく、電圧変換用IC15を多層配線板中に内蔵させた、電圧変換モジュール素子、すなわち電圧変換モジュール30を提供できる。
【0060】
(第4の実施形態)
図7は、本実施形態の電圧変換モジュールの一例を示す上平面図である。なお、図1に示す電圧変換モジュール10と類似又は同一の構成要素に関しては、同一の参照数字を用いている。
【0061】
図7に示すように、本実施形態の電圧変換モジュール40は、電圧変換用IC15が、多層配線板内において、この多層配線板上に実装されたコンデンサ16の直下に位置するようにしている。この場合、電圧変換用IC15とコンデンサ16とを接続する配線の長さを短くすることができるので、コンデンサ16の、配線パターン116〜117の厚さ、及び層間接続体136からなる電気的なパスを介した電圧変換用IC15の入力端子15A及びグランド端子15Bまでの接続長2d=(d+d)の合計を比較的簡易に1mm以下とすることができる。この結果、コンデンサ16と電圧変換用IC15とを接続する上記電気的なパスの抵抗(インピーダンス)が著しく減少し、コンデンサ16の、電圧変換用ICの雑音除去の機能を充分に発揮させることができる。
【0062】
したがって、本実施形態によれば、電圧変換用IC15の雑音除去性能を劣化させることなく、電圧変換用IC15を多層配線板中に内蔵させた、電圧変換モジュール素子、すなわち電圧変換モジュール40を提供できる。
【実施例】
【0063】
本実施例においては、第1の実施形態における電圧変換モジュール10における、コンデンサ16の、電圧変換用IC15の入力端子15A及びグランド端子15Bまでの接続長2dと、入力電圧に対するスイッチングによる高周波ノイズ成分の比(ノイズ/入力電圧)との関係を調べた。結果を図8に示す。
【0064】
なお、コンデンサ16の容量は0.1μFとし、第2のコンデンサ17の容量は4.7μFとし、インダクタ18のインダクタンスは0.47μHとした。また、電圧変換用IC15としては、発振周波数6MHzの同期整流型降圧DC/DCコンバーターであって、ドライバーON抵抗0.5Ωのものを用いた。
【0065】
図8から明らかなように、コンデンサ16の、電圧変換用IC15の入力端子15A及びグランド端子15Bまでの接続長2dが1mm以下の場合は、入力電圧に対する高周波ノイズ成分のレベルが0.1、すなわち10%以下と安定しているが、接続長2dが1mmを超えると、高周波ノイズ成分のレベルが急激に増大することが分かる。
【0066】
したがって、接続長2dが1mm以下の場合は、コンデンサ16及び電圧変換用IC15間を接続する入力端子パターン112A及びグランドパターンの抵抗(インピーダンス)が著しく低く、コンデンサ16の、電圧変換用ICの雑音除去の機能を充分に発揮させることができるが分かる。
【0067】
なお、特に図示しないものの、第2の実施形態から第4の実施形態の電圧変換モジュールについても同様の結果を得ることができた。
【0068】
以上、本発明を上記具体例に基づいて詳細に説明したが、本発明は上記具体例に限定されるものではなく、本発明の範疇を逸脱しない限りにおいて、あらゆる変形や変更が可能である。
【符号の説明】
【0069】
10、20、30、40 電圧変換モジュール
111〜117 配線パターン
121〜126 絶縁部材
131〜136 層間接続体
15 電圧変換用IC
16 コンデンサ
17 第2のコンデンサ
18 インダクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに離隔して順次に積層されてなる複数の配線パターン、これら複数の配線パターン間それぞれに位置する絶縁部材、及び前記複数の配線パターン間を電気的に接続する層間接続体を有する多層配線板と、
前記複数の配線パターンの、内方に位置する配線パターンの一つに実装された電圧変換を行うための電圧変換用ICと、
前記複数の配線パターンの少なくとも一つにおいて、前記電圧変換用ICの入力側における入力端子及びグランド端子と電気的に接続するようにして実装されたコンデンサとを具え、
前記コンデンサの、前記電圧変換用ICの前記入力端子及び前記グランド端子までの接続長の合計が1mm以下であることを特徴とする、電圧変換モジュール素子。
【請求項2】
前記コンデンサは、前記電圧変換用ICが実装された前記配線パターンの一つに実装されていることを特徴とする、請求項1に記載の電圧変換モジュール素子。
【請求項3】
前記コンデンサは、前記複数の配線パターンの、最外層に位置する配線パターン上に実装され、前記電圧変換用ICは、前記コンデンサの直下において、前記内方に位置する配線パターンの一つに実装されていることを特徴とする、請求項1に記載の電圧変換モジュール素子。
【請求項4】
前記最外層に位置する配線パターンと、前記内方に位置する配線パターンの一つとは互いに隣接して配置されていることを特徴とする、請求項3に記載の電圧変換モジュール素子。
【請求項5】
互いに離隔して順次に積層されてなる複数の配線パターン、これら複数の配線パターン間それぞれに位置する絶縁部材、及び前記複数の配線パターン間を電気的に接続する層間接続体を有する多層配線板と、
前記複数の配線パターンの、内方に位置する配線パターンの一つに実装された電圧変換を行うための電圧変換用ICと、
前記複数の配線パターンの少なくとも一つにおいて、前記電圧変換用ICの入力端子及びグランド端子と電気的に並列に接続するようにして実装されたコンデンサと、
前記多層配線板の主面上において、前記複数の配線パターン及び前記層間接続体を介し、前記電圧変換用ICの出力側において、前記電圧変換用ICと電気的に直列に接続するようにして実装されたインダクタと、
前記多層配線板の主面上において、前記複数の配線パターン及び前記層間接続体又は前記インダクタを介して、前記電圧変換用ICの出力側において、前記電圧変換用ICと電気的に並列に接続するようにして実装された第2のコンデンサとを具え、
前記コンデンサの、前記電圧変換用ICの前記入力端子及び前記グランド端子までの接続長の合計が1mm以下であることを特徴とする、電圧変換モジュール。
【請求項6】
前記コンデンサは、前記電圧変換用ICが実装された前記配線パターンの一つに実装されていることを特徴とする、請求項5に記載の電圧変換モジュール。
【請求項7】
前記コンデンサは、前記複数の配線パターンの、最外層に位置する配線パターン上に実装され、前記電圧変換用ICは、前記コンデンサの直下において、前記内方に位置する配線パターンの一つに実装されていることを特徴とする、請求項5に記載の電圧変換モジュール。
【請求項8】
前記最外層に位置する配線パターンと、前記内方に位置する配線パターンの一つとは互いに隣接して配置されていることを特徴とする、請求項7に記載の電圧変換モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−146913(P2012−146913A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−5857(P2011−5857)
【出願日】平成23年1月14日(2011.1.14)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】