説明

電池保持接続構造

【課題】従来に比べて、部品点数を削減でき、電池の端子にかかる負荷を低減できる、電池保持接続構造の提供。
【解決手段】(1)互いに並列に(横並びに)配置される電池20を、ホルダ30によって保持するとともにバスバー40で電気的に接続する、電池保持接続構造10であって、バスバー40はホルダ30に対して固定されており、電池20とホルダ30とに固定される樹脂部材50が設けられており、電池20がバスバー40に押し付けられた状態が樹脂部材50により維持されている、電池保持接続構造10。(2)樹脂部材50はインサート成形品であり、電池20は、樹脂部材50の成形時にキャビティ61に充填される溶融樹脂の圧力によりバスバー40に押し付けられ、この押し付けられた状態のまま溶融樹脂を冷却固化して樹脂部材50を成形することで、樹脂部材50によりバスバー40に押し付けられた状態が維持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、互いに並列に(横並びに)配置される電池を、ホルダによって保持するとともにバスバーで電気的に接続する電池保持接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2008−34318号公報は、互いに並列に(横並びに)配置される円筒型電池を、ホルダによって保持するとともにバスバーで電気的に接続する電池保持接続構造を開示している。該公報開示の電池保持接続構造では、バスバーがネジやナットを用いて各電池に連結されている。また、電池の寸法誤差で電池同士の端子の位置が電池軸方向に互いにばらついても、バスバーが弾性変形することでこのバラツキを吸収できるようになっている。
【0003】
しかし、従来の電池保持接続構造には、つぎの問題点がある。
(a)バスバーがネジやナットを用いて各電池に連結されるため、部品点数が多い。
(b)電池同士の端子の位置ずれをバスバーが弾性変形して吸収するため、弾性変形しているバスバーの復元力が電池の端子にかかってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−34318号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、従来に比べて、部品点数を削減でき、電池の端子にかかる負荷を低減できる、電池保持接続構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成する本発明はつぎの通りである。
(1) 互いに並列に配置される電池を、ホルダによって保持するとともにバスバーで電気的に接続する、電池保持接続構造であって、
前記バスバーは前記ホルダに対して固定されており、
前記電池と前記ホルダとに固定される樹脂部材が設けられており、
前記電池が前記バスバーに押し付けられた状態が、前記樹脂部材により維持されている、電池保持接続構造。
(2) 前記樹脂部材は、該樹脂部材を成形するための成形型に前記電池、前記ホルダおよび前記バスバーをセットした状態で前記成形型に設けられるキャビティに溶融樹脂を充填し冷却固化することで成形されるインサート成形品であり、
前記電池は、前記樹脂部材の成形時に前記キャビティに充填される前記溶融樹脂の圧力により前記バスバーに押し付けられ、この押し付けられた状態のまま前記溶融樹脂を冷却固化して前記樹脂部材を成形することで、前記樹脂部材により前記バスバーに押し付けられた状態が維持される、(1)記載の電池保持接続構造。
【発明の効果】
【0007】
上記(1)の電池保持接続構造によれば、つぎの効果を得ることができる。
電池がバスバーに押し付けられた状態が樹脂部材により維持されているため、ネジやナットを用いて電池とバスバーとを連結しなくても、樹脂部材により電池とバスバーとを確実に電気的に接続することができる。よって、部品点数を従来に比べて削減できる。
【0008】
上記(2)の電池保持接続構造によれば、つぎの効果を得ることができる。
電池が、樹脂部材の成形時にキャビティに充填される溶融樹脂の圧力によりバスバーに押し付けられ、この押し付けられた状態のまま溶融樹脂を冷却固化して樹脂部材を成形することで、樹脂部材によりバスバーに押し付けられた状態が維持されるため、樹脂部材の成形と同時に電池同士の端子の位置ずれを吸収できる。この構造では、バスバーを弾性変形させて電池同士の端子の位置ずれを吸収させる必要がないため、従来に比べて、電池の端子にかかる負荷を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明実施例の電池保持接続構造の一部断面図である。
【図2】図1の、電池の内部構造を簡略化した、A−A線断面図である。
【図3】本発明実施例の電池保持接続構造における樹脂部材を成形する成形型の、電池とホルダとバスバーとをセットした状態の一部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明実施例の電池保持接続構造を、図面を参照して説明する。
本発明実施例の電池保持接続構造(電池保持接続装置)10は、図1に示すように、互いに並列に配置される電池20を、ホルダ30によって保持するとともにバスバー40で電気的に接続する、電池保持接続構造である。なお、ここでいう「並列」とは、電池の並び方を示すものであり、電池を横並びに並べる並べ方を示すものである。
【0011】
電池20は、たとえば自動車に搭載される電池である。電池20は、リチウムイオン円筒型電池である。ただし、電池20は、円筒型電池に限定されるものではなく、角型電池であってもよい。また、電池20は、リチウムイオン電池に限定されるものではなく、ニッケル水素電池等であってもよい。互いに並列に配置される電池20同士は、一方の電池20が他方の電池20の熱の影響を受けることを抑制するために、互いに間隔をおいて配置されている。
【0012】
ホルダ30は、一部品構成である。ただし、ホルダ30は、複数部品が組付けられて一体化したものであってもよい。ホルダ30は、たとえば、アルミ合金製等の金属製である。ただし、ホルダ30は樹脂製であってもよい。ホルダ30は、電池20の側面21のみで、電池20を保持する。なお、「電池の側面」とは、電池20の端子22が設けられる面と直交する面であり、電池20が円筒型電池の場合電池20の軸方向に延びる面である。ホルダ30は、図2に示すように、電池20を、電池20の側面21の全周で保持している。ホルダ30は、図1に示すように、電池20を、電池20の側面21の周方向と直交する方向の一部のみ(電池20が円筒型電池の場合には電池20の軸方向の一部のみ)で保持する。
【0013】
バスバー40は、金属製の板状体からなる。バスバー40は電池20の端子22と対向する位置に配置されており、互いに並列に配置される両方の電池20の端子22に接触している。バスバー40と電池20の端子22とは、接圧が確保された状態で接触のみしており、溶接、接着、ネジ締め、ナット締め等により固定されてはいない。
【0014】
バスバー40は、ホルダ30に対して固定されている。バスバー40は、ホルダ30に、溶接、接着、ネジ締め、ナット締め等により直接固定されていてもよく、バスバー40およびホルダ30とは異なる図示略の別部材を少なくとも1つ介して固定されていてもよい。
【0015】
電池保持接続構造10は、上述の電池20、ホルダ30、バスバー40に加えて、さらに、単一の樹脂部材50を有する。
【0016】
樹脂部材50は、互いに並列に配置される両方の電池20とホルダ30とに固定されている。
樹脂部材50は、電池20の側面21とホルダ30との間の隙間Sを埋める部分である隙間充填部51と、隙間Sの外に位置しておりホルダ30側に回りこむホルダ側回りこみ部52と、隙間Sの外に位置しており電池20側に回りこむ電池側回りこみ部53と、を備える。
【0017】
ホルダ側回りこみ部52は、ホルダ30の、電池20の周方向と直交する方向(電池20が円筒型電池である場合電池20の軸方向)の両外側に回り込む部分である。
電池側回りこみ部53は、電池20の、端子22が設けられる面と反対側の面23の、電池20の周方向と直交する方向(電池20が円筒型電池である場合電池20の軸方向)の外側に回りこむ部分である。
【0018】
樹脂部材50は、図3に示すように、樹脂部材50を成形する成形型60に電池20、ホルダ30およびバスバー40をセット(インサート)した状態で成形(インサート成形)されるインサート成形品である。ただし、樹脂部材50は、樹脂部材50の成形時にバネ等を用いて電池20をバスバー40に押し付けておくことができるのであれば、図示はしないが、樹脂部材50を成形する成形機(成形型)に電池20、ホルダ30およびバスバー40をセットした状態でポッティングにて成形されていてもよい。
【0019】
樹脂部材50は、樹脂部材50の成形時に、キャビティ61に充填される溶融樹脂の圧力(静圧)により(射出圧により)、電池20をバスバー40に押し付ける(押し当てる)。すなわち、電池20は、樹脂部材50の成形時にキャビティ61に充填される溶融樹脂の圧力によりバスバー40に押し付けられる。また、電池20は、この押し付けられた状態のまま前記溶融樹脂を冷却固化して樹脂部材50を成形することで、樹脂部材50によりバスバー40に押し付けられた状態が維持される。
【0020】
つぎに、本発明実施例の作用を説明する。
(A)電池20がバスバー40に押し付けられた状態が樹脂部材50により維持されているため、ネジやナットを用いて電池とバスバーとを連結しなくても、樹脂部材50により電池20とバスバー40とを確実に電気的に接続することができる。よって、部品点数を従来に比べて削減できる。
【0021】
(B)電池20が、樹脂部材50の成形時にキャビティ61に充填される溶融樹脂の圧力によりバスバー40に押し付けられ、この押し付けられた状態のまま溶融樹脂を冷却固化して樹脂部材50を成形することで、樹脂部材50によりバスバー40に押し付けられた状態が維持される。そのため、次の作用が得られる。
電池20の寸法誤差があっても、該寸法誤差は樹脂部材50の電池側回りこみ部53を成形するためのキャビティ部分61aの容積に影響を及ぼすだけであり、成形後の樹脂部材50の電池側回り込み部53の厚みに影響を及ぼすだけである。そのため、樹脂部材40の成形と同時に電池20同士の端子22の位置ずれを吸収できる。この構造では、バスバーを弾性変形させて電池同士の端子の位置ずれを吸収させる必要がないため、従来に比べて、電池20の端子22にかかる負荷を低減できる。
【0022】
(C)樹脂部材50が隙間充填部51を備えるため、樹脂40と電池20および/またはホルダ30との接着力を利用して電池20をホルダ30で保持することができる。そのため、電池20をホルダ30から抜けにくくすることができる。
【0023】
(D)電池20の側面21とホルダ30との間の隙間Sが樹脂40で充填されているため、ホルダ30が金属製であっても電池20とホルダ30とを電気的に絶縁させることができる。また、電池20とホルダ30との間での熱の授受を抑制できる。
【0024】
(E)樹脂部材50がホルダ側回りこみ部52を備えるため、樹脂部材50がホルダ30から剥がれても、ホルダ側回りこみ部52がホルダ30に引っかかり樹脂部材50がホルダ30から脱落することを抑制できる。
【符号の説明】
【0025】
10 電池保持接続構造
20 電池
21 電池の側面
22 電池の端子
30 ホルダ
40 バスバー
50 樹脂部材
51 隙間充填部
52 ホルダ側回りこみ部
53 電池側回りこみ部53
60 金型
61 キャビティ
S 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに並列に配置される電池を、ホルダによって保持するとともにバスバーで電気的に接続する、電池保持接続構造であって、
前記バスバーは前記ホルダに対して固定されており、
前記電池と前記ホルダとに固定される樹脂部材が設けられており、
前記電池が前記バスバーに押し付けられた状態が、前記樹脂部材により維持されている、電池保持接続構造。
【請求項2】
前記樹脂部材は、該樹脂部材を成形するための成形型に前記電池、前記ホルダおよび前記バスバーをセットした状態で前記成形型に設けられるキャビティに溶融樹脂を充填し冷却固化することで成形されるインサート成形品であり、
前記電池は、前記樹脂部材の成形時に前記キャビティに充填される前記溶融樹脂の圧力により前記バスバーに押し付けられ、この押し付けられた状態のまま前記溶融樹脂を冷却固化して前記樹脂部材を成形することで、前記樹脂部材により前記バスバーに押し付けられた状態が維持される、請求項1記載の電池保持接続構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2012−248284(P2012−248284A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−116504(P2011−116504)
【出願日】平成23年5月25日(2011.5.25)
【出願人】(308013436)小島プレス工業株式会社 (386)
【Fターム(参考)】