説明

【課題】年齢、性別に関係なく日常履きとして安定して使用でき、平衡感覚、心臓の強化、下半身の筋肉、骨の強化、肥満の解消、生活習慣病の予防等肉体的或いは心理的効果を奏功する靴の提供。
【解決手段】靴底(3)のミッドソール(5)をポリウレタン製の硬度60±3度の下部ミッドソール(6)と、EVA製の硬度65±5度の上部ミッドソール(7)の2層構造とし、下部ミッドソール(6)と上部ミッドソール(7)の接合面を特有の曲面構造とし、踵部の湾曲面の接線と接地面との成す角度を5〜40度、踵部の湾曲面の曲率半径を15〜30、爪先部の湾曲面の接線と接地面との成す角度を2〜10度、爪先部の湾曲面の曲率半径を150〜180とし、靴底内部に空気循環システムを構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は靴に関する。より詳細の述べれば、本発明は、爪先と爪先の接地面とが形成する角度、及び踵と踵の接地面とが形成する角度が、それぞれ、通常の靴のそれらより大きく、靴底の特定箇所を支点として前後に揺動する靴に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、運動不足の解消、肥満改善、或いはメタボリックシンドローム(metabolicsyndrome)、いわゆる生活習慣病の改善等多様な目的でウオーキング或いはジョギングを行う人が、男女を問わず増えてきている。
【0003】
現在、多種多様なウオーキングシューズ、或いはジョギングシューズが上市されている。従来のウオーキングシューズ、或いはジョギングシューズを、構造面から解析すると、当然のことであるが、ある一定時間、たとえば、30〜60分間等継続して歩行すること、従って、踵から着地して親指の付け根(ボールジョイント)で蹴り出すまで、足裏が円弧を描くような、いわゆる「ローリング動作」を、たとえば30〜60分間等継続して行うことを前提とした構造になっている。そのことにより、心臓の強化、下半身の筋肉、骨の強化、肥満の解消、生活習慣病の予防等肉体的或いは心理的効果を奏功しようとするものでる。また、付加的機能として、長時間使用しても、骨、筋肉等に高負担を掛けない、歩行中発生した汗や熱を速やかに外部に排出させる等々を標榜している。
【0004】
従って、従来のウオーキングシューズ、或いはジョギングシューズを、たとえば、室内での歩行、リハビリテーション、散歩(いわゆる「ブラブラ歩き」)や、近所への買い物、日常履き等に使用しても、身体の平衡感覚、心臓の強化、下半身の筋肉、骨の強化、肥満の解消、生活習慣病の予防等肉体的或いは心理的効果を得ることはできない。
【0005】
従って、たとえば、室内での歩行、リハビリテーション、散歩(いわゆる「ブラブラ歩き」)や、近所への買い物、日常履きとして使用しても、ウオーキングシューズ或いはジョギングシューズを使用した場合に得られる身体の平衡感覚、心臓の強化、下半身の筋肉、骨の強化、肥満の解消、生活習慣病の予防等肉体的或いは心理的効果を奏功する靴が望まれていた。
【0006】
この要望を満たすべく幾つかの靴が提案されている。代表的なものは、スイスマサイテクノロジー(MBT)社が開発した靴がある(以下、このタイプの靴を「MBTタイプの靴」という)。これは、通常の靴の場合、踵の硬度が大きく、靴底は爪先へ向けて傾斜しているが、MBTタイプの靴は、踵が柔らかい発泡ポリウレタン製で、靴底が滑らかに凸状に反っていて、支点を中心にして前後に揺動運動するような構造になっている。この揺動運動の間に、重心が爪先方向へ移動し、不安定な運動を惹起するもので、この不安定な運動によって、主として下肢の多数の筋肉を強化しようとするものである。現在、各種構造のMBTタイプの靴が提案されている。然しながら、現在提案されているものは、極端に不安定な構造のものが多く、リハビリ訓練者等弱者、幼児、高齢者、女性等には、リスクを伴う場合がある。
特許文献1は、靴底にV字型の靴底台を取り付け、立っても、座っても、歩いても足、膝、腰に負担をかけないで疲れず、且つストレッチ、シェイアップ、トレーニングができ、歩行や走行時に、意識しなくてもアキレス腱や大腿二頭筋などの体の後側を伸ばすこと等ができる靴が開示されている。
【0007】
このV字型の靴底台は、爪先先端部から頂点部の前傾斜角度αを25度にした前傾斜面Aと、踵後端部から頂点部の後傾斜角度βを25度にした後傾斜面Bから構成されていて、前傾斜面Aと後傾斜面Bの接点は面ではなく、ほぼ点になっている。従って、極端な言い方をすれば、「ポックリ」或いは修験者などが履く一本歯の高下駄のような構造で、極めて不安定である。
【0008】
特許文献1に記載された靴の踵は、通常の靴の踵のように一定の厚さがある安定した構造ではなく、踵部本底から直接25度で斜め下方にに切り落とした構造である。従って、特許文献1に記載された靴の場合、後傾斜面B全体が、いわば踵の役目をすることになる。人が通常歩行する時には、踵から着地するが、特許文献1に記載された靴の場合、後傾斜面Bの全面を着地しない限り、不安定である。前傾斜面Aと後傾斜面Bの接点で着地した場合、前のめりになったり、或いは横にブレたりして、常に不安感、危険性がつきまとうという欠点がある。
【0009】
特許文献2は、足裏の土踏まずに対応する対応する靴やサンダル等の履物の底面の土踏まず底面を履物底の全長の30〜50%の範囲に平面状に成形し、その前後の足指側底面および踵側底面を足裏の足指側および踵側に向かって8〜15度の傾斜した面とした健康用靴等の履物を開示している。
【0010】
特許文献2に記載された健康用靴等の履物は、底の全長の30〜50%が平面状に成形されていて、これも、極端な言い方をすれば、「ポックリ」或いは修験者などが履く一本歯の高下駄のような構造で、極めて不安定である。従って、特許文献2に記載された健康用靴等の履物も、特許文献1に関して上述してと同じ欠点がある。
【0011】
特許文献3は、着用者の筋力を鍛えながら関節にかかる負担を軽減する靴底として、土踏まず周辺を下側から支持するための土踏まず支持部と、爪先周辺を下側から支持するための爪先支持部と、踵周辺を下側から支持するための踵支持部とから靴底を備えていて、土踏まず支持部の中央部周辺に肉厚が形成されていて、中央部の最下面が平坦に形成されている靴底を開示している。これも、極端な言い方をすれば、修験者などが履く一本歯の高下駄のような構造で、極めて不安定である。従って、特許文献3に記載された健康用靴等の履物も、特許文献1に関して上述してと同じ欠点がある。
【0012】
【特許文献1】特開11−285401号公報
【特許文献2】特開2003−304904号公報
【特許文献3】特開2006−204712号公報
【0013】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
発明が解決しようとする課題は、上記従来技術の欠点を解消し、たとえば、散歩(いわゆる「ブラブラ歩き」)や、近所への買い物、日常履きとして使用しても、ウオーキングシューズ或いはジョギングシューズを使用した場合に得られると同じような身体の平衡感覚、心臓の強化、下半身の筋肉、骨の強化、肥満の解消、生活習慣病の予防等肉体的或いは心理的効果を奏功し、しかも、年齢、性別に関係なく、歩行、走行時にも安定して履用することができる靴を提供することである。
【課題を解決する手段】
【0015】
上記課題は、下記に記載する手段によって解決される。
1.胛と靴底から構成される靴であって、靴底が、主として、アウトソールとミッドソールから構成されていて、ミッドソールが、下部ミッドソールおよび上部ミッドソールの2層構造である靴において、
イ。前記下部ミッドソールおよび上部ミッドソールの材料および硬度がそれぞれ異なること、および
ロ。前記下部ミッドソールの上面が、足長寸法の中間点を基点にして中足骨の前後の間において1〜20度で上方になだらかに傾斜していて、中足骨の後部から踵重心点までの間において1〜20度で上方になだらかに傾斜していて、中足骨の前側関節から指骨の間において1〜20度で上方になだらかに傾傾斜していることを特徴とする靴。
【0016】
2.前記1項において、イ。踵部の湾曲面の接線と接地面との成す角度を5〜40度で、踵部の湾曲面の曲率半径を15〜30の範囲に設定し、
ロ。爪先部の湾曲面の接線と接地面との成す角度を2〜10度で、爪先部の湾曲面の曲率半径を150〜180の範囲に設定する。
【0017】
3.前記1又は2項において、靴底が、アウトソール、下部ミッドソールおよび上部ミッドソールを含むミッドソール、中底、および中敷から構成されていて、
イ。下部ミッドソールの踵部に上面開口した空洞部を設け、空洞部に空洞部の底面と一体化した厚さ方向に少なくとも1個のピラーを所定間隔離隔して立設し、ピラーを介して形成される上面開口した空間をエアチャンバーとすること、
ロ。上部ミッドソールの裏向長手方向に前記エアチャンバ−と連通する少なくとも1本の空気流通流路を穿設し、空気流通流路の所定の箇所に上部ミッドソールを厚さ方向に貫通する少なくとも1個の透孔を穿設し、上部ミッドソールの表面の幅方向に少なくとも1本の横溝を設け、
ハ。前記上部ミッドソールに重合される中底の前記上部ミッドソールの表面に形成された横溝に対応する箇所に中底の幅方向に貫通する貫通溝を設け、
ニ。前記中底に載置される中敷の前記中底に形成された貫通溝に対応する箇所に中敷の幅方向に貫通する透孔を設ける。
【0018】
4.前記1〜3項のいずれかにおいて、上部ミッドソールと中底の踵対応箇所に、周辺に立ち上がり部を立設したスタビライザーを、上部ミッドソールと中底に一体的に嵌着する。
【0019】
5.前記1〜4項のいずれかにおいて、上部ミッドソールがエチレン−酢酸ビニル共重合体で硬度65±3度、下部ミッドソールがポリウレタンで硬度60±3度の範囲に成形する。
【発明の効果】
【0020】
請求項1に記載した発明により下記に例示する効果を得ることができる。
1.ミッドソールが、材料および硬度がそれぞれ異なる下部ミッドソールおよび上部ミッドソールの2層構造から構成されているので、下部ミッドソールおよび上部ミッドソールの材料および硬度を選択することにより、下部ミッドソールおよび上部ミッドソールに異なる物性を付与することができる。それによって、歩行或いは走行時の足の骨格、筋肉等の複雑な動きに対応し、応力を分散・吸収することができる。
【0021】
2.下部ミッドソールの上面が、足長寸法の中間点を基点にして中足骨の前後の間において1〜20度で上方になだらかに傾斜していて、中足骨の後部から踵重心点までの間において1〜20度で上方になだらかに傾斜していて、中足骨の前側関節から指骨の間において1〜20度で上方になだらかに傾傾斜している。即ち、下部ミッドソールと上部ミッドソールとの接合面が、直線や単純な曲線ではなく、足裏の解剖学的構造にほぼ沿った独特の緩やかな曲面になっているので、歩行或いは走行時の足の骨格、筋肉等の複雑な動きに、そのまま対応して、応力を分散・吸収することができる。より詳細に述べれば、着地時には、登坂するようなストレッチ感覚で、また、蹴出し時は足指全部の衝撃を吸収することができる。
【0022】
請求項2に記載した発明により下記に例示する効果を得ることができる。
踵部の湾曲面の接線と接地面との成す角度が5〜40度で、踵部の湾曲面の曲率半径が15〜30で、爪先部の湾曲面の接線と接地面との成す角度が2〜10度で、爪先部の湾曲面の曲率半径が150〜180の範囲に設定してあるので、靴底の接地面積が比較的大きい。従って、前記特許文献に記載されている修験者などが履く一本歯の高下駄、或いは「ポックリ」のような極めて不安定な構造の従来技術と異なり、前のめりになったり、或いは横にブレたりして、常に不安感、危険性がつきまとうという欠点がない。
【0023】
請求項3に記載した発明により下記に例示する効果を得ることができる。
1.下部ミッドソールの踵部に上面開口した空洞部を設け、空洞部に空洞部の底面と一体化した厚さ方向に少なくとも1個のピラーを立設したので、踵の荷重をピラーが受けるので、踵に空洞部があっても踵の形状が変形したり、いわゆる「ヘタリ」が発生しない。
【0024】
2.ピラーを介して形成される上面開口した空間をエアチャンバーとし、上部ミッドソールの裏面長手方向にエアチャンバーと連通する少なくとも1本の空気流通流路穿設し、空気流通流路の所定の箇所に上部ミッドソールを厚さ方向に貫通する少なくとも1個の透孔を穿設し、上部ミッドソールの表面の幅方向に少なくとも1本の横溝を設け、上部ミッドソールに重合される中底の前記上部ミッドソールの表面に形成された横溝に対応する箇所に中底の幅方向に貫通する貫通溝を設け、中底に重合される中敷の中底に形成された貫通溝に対応する箇所に中敷の幅方向に貫通する透孔を設ける。即ち、踵に形成されるエアチャンバ−→上部ミッドソールの裏面長手方向に形成される空気流通流路→上部ミッドソールを厚さ方向に貫通する透孔→上部ミッドソールの表面の幅方向に形成される横溝→中底の幅方向に貫通する貫通溝→中敷の幅方向に貫通する透孔が完全に連通され、1本の空気流通チャンネルが形成される。従って、着地時に空洞部が一種のポンプの役目をし、靴底から靴内への空気循環システムが構成される。
【0025】
請求項4に記載した発明により、上部ミッドソールと中底の踵対応箇所に、周辺に立上がり部を立設したスタビライザーを、上部ミッドソールと中底に一体的に嵌着するので、歩行時或いは走行時に、回内位或いは回外位、外後胛の型くずれ、ヘタレ等を防止することができ、靴の耐久性が向上する。
【0026】
請求項5に記載した発明により、上部ミッドソールがエチレン−酢酸ビニル共重合体で硬度65±3度、下部ミッドソールがポリウレタンで硬度60±3度の範囲に成形する。従って、この設定範囲で、上部ミッドソールを硬質に、下部ミッドソールを上部ミッドソールより柔質に成形することにより、下部ミッドソールに着地時の衝撃吸収・反発性能を付与し、上部ミッドソールに、前記[0022]で記載した効果と共に、それぞれ材料及び硬度が異なる上部ミッドソール下部ミッドソールの相乗作用により、快適な歩行感を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
添付図面を参照して発明を実施するための最良の形態を説明する。
図1は本発明の靴1の全体を示す斜視図、図2は本発明の靴の断面図、図3は本発明の靴に使用する靴底の断面図、図4は本発明の靴に使用する靴底の分解斜視図、図5は本発明の靴に使用する靴底の構成を示す断面図である。
【0028】
本発明の靴1は、胛2と靴底3の2主要部材から構成されている。胛2は、前胛8、外後胛材9、爪先補強材10、外爪先補強材11、後胛材12、履き口パタット13、砂除け12、スタビライザー13等から構成されている。これらの材料等は新規なものではないので、詳細な説明は割愛する。
【0029】
靴底2は、下部ミッドソール6,上部ミッドソール7、及び中底16が一体化し、さらにアウトソール4が嵌着状態で一体化されている。中底16には、中敷17が載置される。中敷17は、通常、いわゆる「カップインソール」が好ましい。
【0030】
靴底2を構成する材料は、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリウレタン、或いはゴム等任意の材料から射出成形法あるいは加硫成形法により製造される。どのような材料を選択するかは、主として靴の用途、製造コスト等を勘案して決定される。
【0031】
本発明の実施例では、下部ミッドソール6をポリウレタンで硬度60±3度の柔質構造に、上部ミッドソール7をエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)を材料に射出成形法により硬度65±3度の硬質構造に、一体に製造した。ここで、硬度はJIS−A型硬度計で測定した値である。
【0032】
下部ミッドソール6と上部ミッドソール7の接合面は、直線や単純な曲線ではなく、図2〜5に示したように、足裏の解剖学的構造にほぼ沿った独特の緩やかな曲面なるように成形した。即ち、図5に示したように、下部ミッドソール6の上面が、足長寸法の中間点(NP)を基点にして中足骨の前後の間(L1)において1〜20度で上方になだらかに傾斜していて、中足骨の後部から踵重心点(HP)までの間(L2)において1〜20度で上方になだらかに傾斜していて、中足骨の前側関節から指骨の間(L3)において1〜20度で上方になだらかに傾傾斜するように成形した。
【0033】
また、踵部と爪先部の上方傾斜角度、曲率半径にしては、踵部の湾曲面の接線(TL1)と接地面との成す角度(α)が5〜40度の範囲、踵部の湾曲面の曲率半径(R1)が15〜30、爪先部の湾曲面の接線(TL2)と接地面との成す角度(β)が2〜10度で、爪先部の湾曲面の曲率半径(R2)が150〜180の範囲になるように製造した。
【0034】
上述した、足長寸法の中間点(MP)を基点にして中足骨の前後の間(L1)の傾斜角度、中足骨の後部から踵重心点(HP)までの間(L2)における傾斜角度、中足骨の前側関節から指骨の間(L3)における傾斜角度、踵部の湾曲面の接線(TL1)と接地面との成す角度(α)、踵部の湾曲面の曲率半径(R1)、爪先部の湾曲面の接線(TL2)と接地面との成す角度(β)、爪先部の湾曲面の曲率半径(R2)等数値設定は、靴の使用目的、性別、年齢等諸条件に応じて適宜決定されるべきである。然しながら、通常、踵部の湾曲面の接線(TL1)と接地面との成す角度(α)は35.2度、踵部の湾曲面の曲率半径(R1)は16.7が、爪先部の湾曲面の接線(TL2)と接地面との成す角度(β)は10度、爪先部の湾曲面の曲率半径(R2)は160.6が最も好ましい。この値に設定することにより、前記特許文献に記載されている修験者などが履く一本歯の高下駄、或いは「ポックリ」のような極めて不安定な構造の従来技術と異なり、前のめりになったり、或いは横にブレたりして、常に不安感、危険性がつきまとうという欠点が解消される。
【0035】
下部ミッドソール6の踵部には、上面が開口した空洞部18を設ける。空洞部18を設けただけでは、そこ箇所が弱化部となり、踵の形状が変形したり、いわゆる「ヘタリ」が発生する。そこで、空洞部18に空洞部18の底面と一体化した厚さ方向に少なくとも1個のピラー19を所定間隔離隔して立設する。ピラー19を立設することにより、踵の荷重をピラーが受けるので、踵に空洞部があっても踵の形状が変形したり、いわゆる「ヘタリ」が発生しない。
【0036】
空洞部18にピラー19を所定間隔離隔して立設するので、ピラー19とピラー19の間、ピラー19と空洞部18を構成する壁面との間に空間が形成される。この空間をエアチャンバー20として活用する。
【0037】
図4−Cに示したように、上部ミッドソール7の裏面(即ち、下部ミッドソール6との接合面)の長手方向にエアチャンバー20と連通する少なくとも1本の空気流通流路21穿設する。図4−Cでは、空気流通流路21は踵部から爪先部に見てU字形であるが、必ずしもその形状は限定されない。それぞれ独立した溝を複数本設けてもよい。重要なことは、それらがエアチャンバー20と連通していることである。
【0038】
図4−Bに示したように、上部ミッドソール7の表面(即ち、下部ミッドソール6との接合面と対向する面)に、空気流通流路21と連通する所定の場所に上部ミッドソール7を厚さ方向に貫通する少なくとも1個の透孔22を穿設し、上部ミッドソール7の表面の幅方向に少なくとも1本の横溝23を設ける。この実施例では、図2及び3に示したように、この横溝23は、空気流通流路21と連通していない。横溝23を空気流通流路21と連通させると、横溝23が多数の場合、空気流通流路21と連通させると、その箇所が弱化部となって、上部ミッドソール7の強度を弱めるからであある。従って、横溝23を空気流通流路21と連通させるか否かは、横溝23の長手方向の幅、幅方向の長さ、及び個数を勘案して決定されるべきである。
【0039】
図4−Eは中底16を示している。中底16は上部ミッドソール7に重合され一体化される部材である。中底16において、上部ミッドソール7の表面に形成された横溝23に対応する箇所に中底16の幅方向に貫通する貫通溝24を設ける。貫通溝24は、上部ミッドソール7の表面の幅方向に穿設される横溝23に成るべく正確に対応させることが好ましい。そのことにより、上部ミッドソール7と中底16の間に滞留した空気が貫通溝24をから上部へ流れる効率が良くなる。
【0040】
図4−Fは中底16に載置される、好ましくはカップインソール型の中敷17である。カップインソール型の中敷は公知なので、詳細な説明は省略する。中敷17には、外側アーチから踵部を経て内側アーチに至る立上がり壁25が立設されている。これは、歩行時にアーチ状の土踏まず部分を保護し、長時間履いていても足が母趾側に向くのを防止し、足の土踏まずが垂下するのを防止し、足の回内位、回外位を防止して安定した歩行を行わせるためのものである。
【0041】
中敷17において、中底16に形成された貫通溝24に対応する箇所に中敷17の幅方向に貫通する複数個の透孔26を設ける。
【0042】
上述した構造の下部ミッドソール6、上部ミッドソール7、中底16、及び中敷17を組合わせて一体化すると、一部を図3に示したように、踵に形成されたエアチャンバー20→上部ミッドソール7の裏面長手方向に形成された空気流通流路21→上部ミッドソール7を厚さ方向に貫通する透孔22→上部ミッドソール7の表面の幅方向に形成された横溝23→中底16の幅方向に貫通する貫通溝24→中敷17の幅方向に貫通する透孔26が完全に連通され、1本の空気流通チャンネルが形成される。従って、着地時に空洞部が一種のポンプの役目をし、靴底から靴内への空気循環システムが構成される。
【0043】
図4−Dは、上部ミッドソール7と中底16の踵対応箇所に、上部ミッドソール7と中底16に一体的に嵌着されるスタビライザー14を示している。スタビライザー14の周縁には、左右から踵方向に向けて徐々に高くなる立上がり部14’が立設されている。スタビライザー14の材料は特段に限定されないが、本実施例の場合、ポリ塩化ビニルである。スタビライザー14を、上部ミッドソール7と中底16の踵対応箇所に、上部ミッドソール7と中底16に一体的に取り付けたので、歩行時或いは走行時に、回内位或いは回外位、外後胛の型くずれ、ヘタレ等を防止することができ、靴の耐久性が向上する。
【産業上の利用分野】
【0044】
本発明の靴は、上述した構成になっているので、「ポックリ」或いは修験者などが履く一本歯の高下駄のような極めて不安定な構造で、歩行時、或いは走行時に前のめりになったり、或いは横にブレたりして、常に不安感、危険性がつきまとうという欠点がある前記特許文献に記載されている従来技術と異なり、構造上無理が無く、安定しているので、たとえば、散歩(いわゆる「ブラブラ歩き」)や、近所への買い物、日常履きとして使用しても、ウオーキングシューズ或いはジョギングシューズを使用した場合に得られると同じような身体の平衡感覚、心臓の強化、下半身の筋肉、骨の強化、肥満の解消、生活習慣病の予防等肉体的或いは心理的効果を奏功し、しかも、年齢、性別に関係なく、歩行、走行時にも安定して履用することができる。従って、マーチャンダイジング、マーケッティングの観点からも、新たな用途の開発や、新たなユーザーの開拓が期待される。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の靴の1実施例の斜視図。
【図2】本発明の靴の断面図。
【図3】本発明の靴に使用する靴底の断面図。
【図4】本発明の靴に使用する靴底の分解斜視図。
【図5】本発明の靴に使用する靴底の構成を示す断面図。
【符号の説明】
【0046】
1 靴
2 胛
3 靴底
4 アウトソール
5 ミッドソール
6 下部ミッドソール
7 上部ミッドソール
8 前胛
9 外後胛
10 爪先補強材
11 爪先補強材
12 砂除け
13 履き口パテット
14 スタビライザー
14’ スタビライザーの立上がり部
15 裏胛
16 中底
17 中敷
18 空洞部
19 ピラー
20 エアチャンバー
21 空気流通流路
22 透孔
23 横溝
24 貫通溝
26 貫通孔
MP 足長寸法の中間点
HP 踵重心点
L1 中足骨間
L2 足根骨間
L3 指骨間
TL1 踵部の湾曲面の接線
TL2 爪先部の湾曲面の接線
R1 踵部の湾曲面の曲率半径
R2 爪先部の湾曲面の曲率半径
α 踵部の湾曲面の接線と接地面との成す角度
β 爪先部の湾曲面の接線と接地面との成す角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
胛(2)と靴底(3)から構成される靴(1)であって、靴底(3)が、主として、アウトソール(4)とミッドソール(5)から構成されていて、ミッドソール(5)が、下部ミッドソール(6)および上部ミッドソール(7)の2層構造である靴において、
イ。前記下部ミッドソール(6)および上部ミッドソール(7)の材料および硬度がそれぞれ異なること、および
ロ。前記下部ミッドソール(6)の上面が、足長寸法の中間点(MP)を基点にして中足骨の前後の間(L1)において1〜20度で上方になだらかに傾斜していて、中足骨の後部から踵重心点(HP)までの間(L2)において1〜20度で上方になだらかに傾斜していて、中足骨の前側関節から指骨の間(L3)において1〜20度で上方になだらかに傾傾斜していること、を特徴とする靴。
【請求項2】
イ。踵部の湾曲面の接線(TL1)と接地面との成す角度(α)が5〜40度で、踵部の湾曲面の曲率半径(R1)が15〜30であること、および
ロ。爪先部の湾曲面の接線(TL2)と接地面との成す角度(β)が2〜10度で、爪先部の湾曲面の曲率半径(R2)が150〜180であること、を特徴とする請求項1記載の靴。
【請求項3】
靴底(3)が、アウトソール(4)、下部ミッドソール(6)および上部ミッドソール(7)を含むミッドソール(5)、中底(16)、および中敷(17)から構成されていて、
イ。下部ミッドソール(6)の踵部に上面開口した空洞部(18)を設け、空洞部(18)に空洞部(18)の底面と一体化した厚さ方向に少なくとも1個のピラー(19)を所定間隔離隔して立設し、ピラー(19)を介して形成される上面開口した空間をエアチャンバー(20)とすること、
ロ。上部ミッドソール(7)の裏面長手方向に前記エアチャンバ−(20)と連通する少なくとも1本の空気流通流路(21)穿設し、空気流通流路(21)の所定の箇所に上部ミッドソール(7)を厚さ方向に貫通する少なくとも1個の透孔(22)を穿設し、上部ミッドソール(7)の表面の幅方向に少なくとも1本の横溝(23)を設け、
ハ。前記上部ミッドソール(7)に重合される中底(16)の前記上部ミッドソール(7)の表面に形成された横溝(23)に対応する箇所に中底(16)の幅方向に貫通する貫通溝(24)を設け、
二。前記中底(16)に載置される中敷(17)の前記中底(16)に形成された貫通溝(24)に対応する箇所に中敷(17)の幅方向に貫通する透孔(26)を設けたことを特徴とする請求項1または2記載の靴。
【請求項4】
前記上部ミッドソール(7)と中底(16)の踵対応箇所に、周辺に立上がり部(14’)を立設したスタビライザー(14)を、前記上部ミッドソール(7)と中底(16)に一体的に嵌着したことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の靴。
【請求項5】
上部ミッドソール(7)がエチレン−酢酸ビニル共重合体で硬度65±3度、下部ミッドソール(6)がポリウレタンで硬度60±3度の範囲に成形されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の靴。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4−A】
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【図4−B】
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【図4−C】
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【図4−D】
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【図4−E】
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【図4−F】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−94480(P2010−94480A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−291532(P2008−291532)
【出願日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【出願人】(000167820)広島化成株式会社 (65)
【Fターム(参考)】