説明

サブステアリングシステム

【課題】 車両への搭載性に優れたサブステアリングシステムを提供する。
【解決手段】 本発明のサブステアリングシステム40によれば、ステアバイワイヤシステム10に異常が発生して電動転舵モータ16が作動しなくなってもサブステアリングシステム40により転舵輪11をハンドル25で操舵することができる。そして、そのサブステアリングシステム40では、ハンドル25と共に回転するステアリングシャフト44Xに沿って第1のピストン43X及び第2の油圧シリンダ42Xが延びた構造になっているので、ハンドル25の回転軸から横方向への張り出しが抑えられ、搭載性が向上する。また、第2の油圧シリンダ42Y及びピストン43Yが転舵シャフト12と交差した方向に延びた構造になっているので、従来より転舵シャフト12を短くすることができ、この点においても車両への搭載性が向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1対の転舵輪の間に差し渡された転舵シャフトを電動転舵モータにより直動させて転舵輪を転舵するステアバイワイヤシステムに備えられ、そのステアバイワイヤシステムの異常により電動転舵モータへの給電が停止されたときにハンドルから転舵シャフトに力を伝達して転舵シャフトを直動させるサブステアリングシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
図4に示すように、従来のこの種のサブステアリングシステムとして、1対の転舵輪6,6の間に差し渡された転舵シャフト1とハンドル2との間を1対の油圧シリンダ3,4で連結した構成のものが知られている。このサブステアリングシステムでは、ハンドル2の回転軸2Aにピニオン2Gを設け、そのピニオン2Gに噛合したラック5をハンドル2の回転軸2Aと直交する方向に直動させて、一方の油圧シリンダ3におけるピストン3Pを駆動していた。また、他方の油圧シリンダ4には転舵シャフト1の一端が挿通され、その転舵シャフト1に固定されたピストン4Pが油圧シリンダ4内を直動するようになっていた。そして、これら油圧シリンダ3,4の間がオイル管によって連絡され、これによりハンドル2の操舵に連動して転舵シャフト1が直動し、転舵輪6,6が転舵されるようになっていた(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−29430号公報(段落[0015],[0019]、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述した従来のサブステアリングシステムは、一方の油圧シリンダ3とラック5とがハンドル2の回転軸2Aの横方向に張り出した構造になっているので、車両に搭載すること困難であった。また、転舵シャフト1を通常時に電動駆動するモータ7と異常時に油圧駆動する油圧シリンダ4とが直列に配置された構造になっているので、転舵シャフト1が長くなり、車幅の制限を考慮すると車両への搭載が困難であった。
【0004】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、従来より車両への搭載性に優れたサブステアリングシステムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するためになされた請求項1の発明に係るサブステアリングシステムは、1対の転舵輪の間に差し渡された転舵シャフトを電動転舵モータにより直動させて転舵輪を転舵するステアバイワイヤシステムに備えられ、ステアバイワイヤシステムの異常により電動転舵モータへの給電が停止されたときに、ハンドルから転舵シャフトに力を伝達して転舵シャフトを直動させるサブステアリングシステムであって、第1のピストンを直動可能に収容した第1の油圧シリンダと、第2のピストンを直動可能に収容した第2の油圧シリンダと、ハンドルと共に回転し、第1のピストンの中心部に挿通されたステアリングシャフトと、ステアリングシャフトの回転を第1のピストンの直動に変換する第1のボールネジ機構と、第2のピストンの中心部に挿通されたピニオンシャフトと、第2のピストンの直動をピニオンシャフトの回転に変換する第2のボールネジ機構と、ピニオンシャフトと転舵シャフトとに設けられたラックアンドピニオン機構と、第1と第2の油圧シリンダ同士の間を連絡し、第1と第2のうち一方の油圧シリンダが排出したオイルを他方の油圧シリンダに供給するための連絡管と、第1及び第2の油圧シリンダとに切換弁を介して連絡されたリザーバタンクと、ステアバイワイヤシステムの正常時には切換弁を開弁する一方、異常時には切換弁を閉弁する弁制御部とを備えてなるところに特徴を有する。
【0006】
請求項2の発明は、請求項1に記載のサブステアリングシステムにおいて、第1及び第2の油圧シリンダは、共に両端が閉じられかつ内部が第1及び第2のピストンによって1対の部屋に区画され、連絡管は、第1及び第2の油圧シリンダの間で一方の部屋同士と、他方の部屋同士を連絡するように対をなして設けられたところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0007】
[請求項1の発明]
請求項1の構成によれば、ステアバイワイヤシステムの正常時には切換弁が開弁し、第1及び第2の油圧シリンダにリザーバタンクが連通した状態になる。これにより、ハンドルに連動して第1のピストンが直動しても、或いは、電動転舵モータに連動して第2のピストンが直動しても、第1又は第2の油圧シリンダとリザーバタンクとの間でオイルが排出又は吸引されかつ、第1と第2の油圧シリンダの間の力の伝達が遮断される。
【0008】
一方、ステアバイワイヤシステムの異常時には切換弁が閉弁し、第1及び第2の油圧シリンダが連絡管を介して連絡された状態になる。これにより、第1と第2の油圧シリンダの間でオイルを介して力が伝達可能となり、ハンドルに連動して第1のピストンが直動すると、これに連動して第2のピストンと共に転舵シャフトが直動し、転舵輪が転舵する。これと同様に、転舵輪に外力がかかったときには、その外力をハンドル側に伝達することができる。
【0009】
そして、本発明では、ハンドルと共に回転するステアリングシャフトが第1のピストンに挿通され、そのステアリングシャフトに沿って第1のピストン及び第1の油圧シリンダが延びた構造になっているので、ハンドルの回転軸から横方向への張り出しが抑えられ、搭載性が向上する。また、第2のピストンと転舵シャフトとがラックアンドピニオン機構によって連結され、第2の油圧シリンダが転舵シャフトと交差した方向に延びた構造になっているので従来のサブステアリングシステムより転舵シャフトを短くすることができ、この点においても車両への搭載性が向上する。
【0010】
[請求項2の発明]
請求項2の構成によれば、第1及び第2の油圧シリンダにおいてピストンにて区画された2つの部屋のうち一方が加圧状態になり、他方が負圧状態になるので、オイルとピストンとの間で応答性良く力を伝達することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
[第1実施形態]
以下、本発明の一実施形態を図1及び図2に基づいて説明する。図1には、車両に搭載された本発明に係るステアバイワイヤシステム10の全体構成が示されている。同図において符号44Xは、ステアリングシャフトであって、車両本体に回転可能に軸支されると共に、車両に備えた1対の転舵輪11,11からは機械的に切り離されている。ステアリングシャフト44Xの上端部にはハンドル25が固定され、ステアリングシャフト44Xの中間部には、舵角センサ26、反力発生装置27が連結されている。なお、反力発生装置27は、例えば図示しない反力モータを備え、ハンドル25の回転操作に対する負荷トルクを反力モータにて生成してステアリングシャフト44Xに付与する。
【0012】
1対の転舵輪11,11の間には、転舵シャフト12が差し渡され、その転舵シャフト12の両端には、図示しないタイロッドを介して各転舵輪11,11に連結されている。転舵シャフト12は、筒形ハウジング13の内部に挿通され、その筒形ハウジング13は、車両の本体に固定されている。また、筒形ハウジング13のうち軸方向の中間部分に設けられた大径部13Dには、電動転舵モータ16が内蔵されている。電動転舵モータ16は、筒形ハウジング13の内面に嵌合固定されたステータ14と、ステータ14の内側に遊嵌された筒状のロータ15とを備えてなる。そして、転舵シャフト12は、そのロータ15内を貫通している。筒形ハウジング13のうち大径部13Dの一端には、ロータ15の回転位置を検出するための位置センサ20が設けられている。
【0013】
ロータ15の内面には、ボールナット18が組み付けられている。また、転舵シャフト12の軸方向の中間部分にはボールネジ部17が形成されている。これらボールナット18とボールネジ部17とからボールネジ機構19が構成されている。
【0014】
図1において符号28は、ECU(ECUは、「Electric Control Unit」の略である)であって、舵角センサ26、車速センサ29、その他図示しない制御装置から運転情報を取得し、その運転情報に応じてハンドル25の操舵角に対する転舵輪11の転舵角の比である伝達比を決定する。具体的には、低速走行時にはハンドル25の操舵によって転舵輪11が大きく転舵するように伝達比を比較的大きな値に決定し、高速走行時に急ハンドルを防ぐために伝達比を比較的小さな値に決定する。そして、決定された伝達比とハンドル25の操舵角とから転舵輪11の目標転舵角を決定して電動転舵モータ16を駆動し、転舵輪11,11を目標転舵角まで転舵させる。また、ECU28は、反力発生装置27からステアリングシャフト44Xに付与する目標負荷トルクを決定する。そして、目標負荷トルクに応じたモータ駆動電流を反力発生装置27に流し、これによりハンドル25に運転状況に応じた負荷トルクがかけられる。
【0015】
さて、ステアバイワイヤシステム10には、電動転舵モータ16、舵角センサ26及び車速センサ29等が正常に作動しなかった場合のために、サブステアリングシステム40が備えられている。サブステアリングシステム40は、図2に拡大して示されており、第1と第2の油圧シリンダ42X,42Yを備えてなる。第1の油圧シリンダ42Xは、車両本体のうちハンドル25の前側斜め下方に固定されている。また、第1の油圧シリンダ42Xは、第1のピストン43Xを直動可能に収容して備えている(以下、「第1の油圧シリンダ42X」、「第1のピストン43X」を、適宜、単に「油圧シリンダ42X」、「ピストン43X」という)。
【0016】
油圧シリンダ42X及びピストン43Xは共に一端有底の筒状をなし、開放端が共に上方を向いている。そして、油圧シリンダ42Xの内部のうちピストン43Xより下方がオイル充填室49になっている。油圧シリンダ42Xの周壁のうち下端寄り位置には、オイル給排口50が形成され、油圧シリンダ42X内でピストン43Xが直動すると、オイル充填室49内のオイルがオイル給排口50から出入りする。また、油圧シリンダ42X下端の閉塞端壁42Aにはピストン43Xに向けてストッパ壁42Xが突出形成されている。これにより、ピストン43Xが下方に移動してオイル給排口50を塞ぐことを防ぎかつ、ピストン43Xが閉塞端壁42A全体に密着してピストン43Xの受圧面積が大幅に減少することを防いでいる。
【0017】
ピストン43Xの外周面における両端部にはOリング溝43P,43Pが形成され、ここに装着された図示しないOリングにより、ピストン43Xと油圧シリンダ42Xとの間の隙間からオイルが漏れることを防いでいる。
【0018】
ピストン43Xの外周面のうち両Oリング溝43P,43Pの間には、軸方向に沿って係合溝43Aが形成されている。一方、油圧シリンダ42Xのうち軸方向の中間部分には貫通孔が形成され、その貫通孔の開口縁から円筒壁48Bが外方に突出している。円筒壁48Bの内部には係合部材48Kが直動可能に収容されている。係合部材48Kは一端有底の筒状をなし、その底部を油圧シリンダ42X内側に向けた状態にして、係合部材48Kの内部に圧縮コイルバネ48Sが収容され、その圧縮コイルバネ48Sを押さえつけるようにして、円筒壁48Bの先端開口における内側に螺合キャップ48Fがねじ込まれている。また、螺合キャップ48Fの外面には、螺合キャップ48Fを抜け止めするためのナット48Nが螺合されている。そして、圧縮コイルバネ48Sにより付勢された係合部材48Kの端部が係合溝43A内に係合している。これにより、油圧シリンダ42X内でピストン43Xの回転が規制されている。
【0019】
油圧シリンダ42X及びピストン43Xの内部には、開放端側からステアリングシャフト44Xの下端部が突入している。ステアリングシャフト44Xのうちピストン43X内に収容された部分には、ボールネジ部45が形成されている。また、ピストン43Xの内側にはボールナット46が組み付けられ、これらボールナット46とボールネジ部45とからボールネジ機構47が構成されている。なお、油圧シリンダ42Xの開放端内側には、ステアリングシャフト44Xを軸支するためのベアリング42Cが設けられている。
【0020】
一方、第2の油圧シリンダ42Yは、第2のピストン43Yを直動可能に収容して備えており、その第2のピストン43Yの内側には、ピニオンシャフト44Yが挿入されている。以下、第2の油圧シリンダ42Yのうち第1の油圧シリンダ42Xと同様の構成に関しては同一の符号を付して重複説明は省略し、異なる構成に関してのみ説明する。また、「第2の油圧シリンダ42Y」、「第2のピストン43Y」を、適宜、単に「油圧シリンダ42Y」、「ピストン43Y」ということとする。
【0021】
第2の油圧シリンダ42Yは、その開放した一端部を前記した筒形ハウジング13に接合して取り付けられている。そして、これにより第2の油圧シリンダ42Yは、筒形ハウジング13の軸方向に対して斜めに交差した方向に延びた状態になっている。また、ピニオンシャフト44Yの一端部には、ピニオン22が形成されており、このピニオン22が筒形ハウジング13内に突入し、転舵シャフト12に形成されたラック21に噛合している。そして、これらピニオン22とラック21とにより本発明に係るラックアンドピニオン機構23が構成されている。また、ピニオンシャフト44Yは、図示しないベアリングによって第2の油圧シリンダ42Y又は筒形ハウジング13に軸支されて、回転が許容されかつ軸方向への直動が規制されている。
【0022】
第1及び第2の油圧シリンダ42X,42Yは、連絡管51によって連絡されている。その連絡管51は、第1及び第2の油圧シリンダ42X,42Yの各オイル給排口50,50に両端が接続され、連絡管51の中間部には、切換弁53を介してリザーバタンク54が接続されている。この切換弁53は、例えばソレノイド駆動によって開閉され、給電により開弁状態になり、給電停止により閉弁状態になる。また、切換弁53はECU28によって駆動制御される。
【0023】
本実施形態の構成は以上であって、次に本実施形態の作用効果について説明する。ステアバイワイヤシステム10の正常時には、ECU28は、上述の如く舵角センサ26、車速センサ29が出力する運転情報に応じて電動転舵モータ16により転舵シャフト12を直動して転舵輪11,11を転舵する。このとき、ハンドル25が一方に操舵されてステアリングシャフト44Xが回転すると、そのステアリングシャフト44Xの回転がボールネジ機構47により第1のピストン43Xの直動に変換され、第1の油圧シリンダ42Xがオイルを排出又は吸引する。しかしながら、ステアバイワイヤシステム10の正常時には、ECU28が切換弁53を開弁し、第1の油圧シリンダ42Xとリザーバタンク54との間でオイルが排出又は吸引されて、第1の油圧シリンダ42Xから第2の油圧シリンダ42Yへの力の伝達が遮断される。同様に、転舵シャフト12に連動して第2のピストン43Yが直動しても、第2の油圧シリンダ42Yとリザーバタンク54との間でオイルが排出又は吸引されかつ、第2の油圧シリンダ42Yから第1の油圧シリンダ42Xへの力の伝達も遮断される。これにより、正常時におけるサブステアリングシステム40とステアバイワイヤシステム10との干渉が防がれる。
【0024】
ステアバイワイヤシステム10の異常時には、ECU28は切換弁53への給電を停止し切換弁53が閉弁される。これにより、リザーバタンク54が第1及び第2の油圧シリンダ42X,42Yから切り離されて、第1及び第2の油圧シリンダ42X,42Yのオイル充填室49,49同士が連絡管51を介して互いに連絡され、第1と第2の油圧シリンダ42X,42Yの間で、オイルを介して力が伝達可能になる。従って、ハンドル25に連動して第1のピストン43Xが直動すると、第1の油圧シリンダ42Xのオイル充填室49からオイルが例えば排出され、その排出されたオイルが連絡管51を通過して第2の油圧シリンダ42Yのオイル充填室49に流れ込む。すると、第2のピストン43Xが押されて直動し、その第2のピストン43Xの直動がボールネジ機構47によりピニオンシャフト44Yの回転に変換される。そして、ピニオンシャフト44Yの一端に設けたピニオン22と転舵シャフト12のラック21との噛合により転舵シャフト12が直動して転舵輪11,11が転舵する。ハンドル25が他方に操舵されたときには、第1の油圧シリンダ42Xが連絡管51を通して第2の油圧シリンダ42Yからオイルを吸引し、ピニオンシャフト44Yが逆方向に回転して転舵輪11が逆方向に転舵する。また、転舵輪11,11に外力がかかったときには、第2の油圧シリンダ42Y側から第1の油圧シリンダ42X側に力が伝達して、転舵輪11,11にかかった外力をハンドル25で感じ取ることができる。
【0025】
このように本実施形態の構成によれば、ステアバイワイヤシステム10に異常が発生して電動転舵モータ16が作動しなくなってもサブステアリングシステム40により転舵輪11をハンドル25で操舵することができる。そして、そのサブステアリングシステム40では、ハンドル25と共に回転するステアリングシャフト44Xに沿って第1のピストン43X及び第1の油圧シリンダ42Xが延びた構造になっているので、ハンドル25の回転軸から横方向への張り出しが抑えられ、搭載性が向上する。また、第2の油圧シリンダ42Y及び第2のピストン43Yが転舵シャフト12と交差した方向に延びた構造になっているので、従来より転舵シャフト12を短くすることができ、この点においても車両への搭載性が向上する。
【0026】
なお、上記構成のうち第1及び第2の油圧シリンダ42X,42Yを排除しかつピニオンシャフト44Yをステアリングシャフト44Xに連結することで、通常のステアリングシステムを構成することができる。即ち、上記した筒形ハウジング13、転舵シャフト12,電動転舵モータ16,ボールネジ機構19等を組み付けてなる電動パワーステアリング装置を、ステアバイワイヤシステムと通常のステアリングシステムとの間で流用することができる。
【0027】
[第2実施形態]
本実施形態のサブステアリングシステム60は、第1実施形態を変形させたものであって、図3には簡略化した構成が示されている。以下、第1実施形態と同じ構成に関しては同一符号を付して重複した説明は省略し、第1実施形態と異なる構成のみを説明する。同図に示すように、本実施形態の第1の油圧シリンダ42U及び第1のピストン43Uは、共に両端が閉じられている。そして、これら第1の油圧シリンダ42U及び第1のピストン43Uの一端をステアリングシャフト44Xが貫通している。また、ステアリングシャフト44Xの貫通部分には図示しないがシール処理が施されている。さらに、油圧シリンダ42Uのうち油圧シリンダ43Uにて区画された1対のオイル充填室49,61のそれぞれにはオイルが充填されている。
【0028】
第2の油圧シリンダ42V及び第2のピストン43Vに関しても同様の構成になっている。そして、第1及び第2の油圧シリンダ42U,42Vの間で一方のオイル充填室49,49同士が連絡管51にて連絡され、他方のオイル充填室61,61同士も連絡管63にて連絡されている。また、各連絡管51,63の中間部分には、それぞれ切換弁53,65を介してリザーバタンク54,66が連絡されている。
【0029】
本実施形態では、ステアバイワイヤシステム10の正常時には両切換弁53,65を共に開弁し、ステアバイワイヤシステム10の異常時には両切換弁53,65を共に閉弁する。これにより、ハンドル25を操舵した場合に、第1及び第2の油圧シリンダ42U,42Vの2つのオイル充填室49,61のうち一方が加圧状態になり、他方が負圧状態になるので、オイルとピストン43U,43Vとの間で確実に力を伝達することができる。
【0030】
[他の実施形態]
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下に説明するような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
(1)前記第1実施形態では、図2に示すように、第1及び第2の油圧シリンダ42X,43Yが同じ径をなし、第1の油圧シリンダ42Xと第2のピストン43Yとが連動して同じ距離だけ直動する構成になっていたが、第1の油圧シリンダ42Xの径と第2のピストン43Yの径を異ならせ、第1の油圧シリンダ42Xと第2のピストン43Yとが連動して直動したときに、それら直動距離が異なるように構成してもよい。
【0031】
(2)前記第1及び第2の実施形態では、リザーバタンク54,66が切換弁53,65を介して連絡管51,63に連絡されていたが、リザーバタンクが切換弁を介して第1又は第2の油圧シリンダのオイル充填室に連絡された構成にしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の第1実施形態に係るステアバイワイヤシステムの概念図
【図2】サブステアリングシステムの断面図
【図3】第2実施形態のサブステアリングシステムの断面図
【図4】従来のサブステアリングシステムのブロック図
【符号の説明】
【0033】
10,60 ステアバイワイヤシステム
11 転舵輪
12 転舵シャフト
16 電動転舵モータ
23 ラックアンドピニオン機構
25 ハンドル
40 サブステアリングシステム
42U,42X 第1の油圧シリンダ
42V,42Y 第2の油圧シリンダ
43U,43X 第1のピストン
43V,43Y 第2のピストン
44X ステアリングシャフト
44Y ピニオンシャフト
47 ボールネジ機構
51,63 連絡管
53,65 切換弁
54,66 リザーバタンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1対の転舵輪の間に差し渡された転舵シャフトを電動転舵モータにより直動させて前記転舵輪を転舵するステアバイワイヤシステムに備えられ、前記ステアバイワイヤシステムの異常により前記電動転舵モータへの給電が停止されたときに、ハンドルから前記転舵シャフトに力を伝達して前記転舵シャフトを直動させるサブステアリングシステムであって、
第1のピストンを直動可能に収容した第1の油圧シリンダと、
第2のピストンを直動可能に収容した第2の油圧シリンダと、
前記ハンドルと共に回転し、前記第1のピストンの中心部に挿通されたステアリングシャフトと、
前記ステアリングシャフトの回転を前記第1のピストンの直動に変換する第1のボールネジ機構と、
前記第2のピストンの中心部に挿通されたピニオンシャフトと、
前記第2のピストンの直動を前記ピニオンシャフトの回転に変換する第2のボールネジ機構と、
前記ピニオンシャフトと前記転舵シャフトとに設けられたラックアンドピニオン機構と、
前記第1と第2の油圧シリンダ同士の間を連絡し、前記第1と第2のうち一方の油圧シリンダが排出したオイルを他方の油圧シリンダに供給するための連絡管と、
前記第1及び第2の油圧シリンダとに切換弁を介して連絡されたリザーバタンクと、
前記ステアバイワイヤシステムの正常時には前記切換弁を開弁する一方、異常時には前記切換弁を閉弁する弁制御部とを備えてなることを特徴とするサブステアリングシステム。
【請求項2】
前記第1及び第2の油圧シリンダは、共に両端が閉じられかつ内部が前記第1及び第2のピストンによって1対の部屋に区画され、
前記連絡管は、前記第1及び第2の油圧シリンダの間で一方の部屋同士と、他方の部屋同士を連絡するように対をなして設けられたことを特徴とする請求項1に記載のサブステアリングシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−290308(P2006−290308A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−117644(P2005−117644)
【出願日】平成17年4月15日(2005.4.15)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【出願人】(302066630)株式会社ファーベス (138)
【Fターム(参考)】