説明

パターンの形成方法及び液滴吐出ヘッド

【課題】 パターン形成において、低コスト化及び形成時間の短縮化を図るとともに、微細パターンの形成を可能としたパターンの形成方法を提供する。
【解決手段】 本発明のパターン形成方法は、基板18上に第1金属膜28を形成する第1金属膜形成工程と、第1金属膜28上に、パターンを形成しない基板18上の位置に対応する第1金属膜28が露出するようにマスクパターン38を形成するマスクパターン形成工程と、マスクパターン38をマスクとして第1金属膜28上に絶縁膜40を形成する絶縁膜形成工程と、マスクパターン38を除去し、メッキ法により、マスクパターン38を除去した第1金属膜28上に絶縁膜40をマスクとして少なくとも第2金属膜42を形成する第2金属膜形成工程と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パターンの形成方法及び液滴吐出ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
液滴吐出ヘッド(インクジェットヘッド)においては、アクチュエータ基板と駆動する駆動回路とを接続するための配線を形成するが、この配線の形成方法としては、(1)フォトリソグラフィー法及び(2)無電解メッキ法が挙げられる。以下、(1),(2)に挙げる方法について簡単に説明する。
【0003】
(1)フォトリソグラフィー法による配線の形成方法では、封止基板表面にスパッタ、蒸着等によりNi−Crの金属薄膜を成膜し、ついで、Auの金属薄膜を成膜する。その後、フォトリソグラフィー処理により、レジストを塗布・露光・現像し、配線に対応したレジスト形状にパターニングする。次に、ドライエッチングやウエットエッチングにより、上記レジストをマスクにしてAu及びNi−Crからなる金属薄膜を配線形状にパターニングする。その後、例えばOプラズマアッシング等の方法によりレジストを剥離除去することにより、封止基板上に配線パターン(膜パターン)を形成する。
【0004】
(2)無電解メッキ法による配線の形成方法では、封止基板上にスパッタ法、フォトリソグラフィー法により上述した金属薄膜を成膜し、その後、フォトリソグラフィー処理により、レジストを塗布・露光・現像し、配線に対応したレジスト形状にパターニングする。次に、ドライエッチングやウエットエッチングにより、上記レジストをマスクにしてAu及びNi−Crからなる金属薄膜を配線形状にパターニングし、レジストを剥離除去する。その後、無電解メッキにより配線形状にパターニングされた金属薄膜上に配線材料を析出させて、封止基板上に配線パターン(膜パターン)を形成する(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特公昭61−31188号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記配線の形成方法では以下のような問題があった。
(1)フォトリソグラフィー法による配線の形成方法では、厚膜の配線を成膜する場合、その配線の膜厚に比例した時間、スパッタ等を行わなければならず、成膜に長時間を要するといった問題があった。また、配線の膜厚が厚くなると、前記配線膜の応力による封止基板の反りが大きくなるといった問題があった。
(2)無電解メッキ法による配線の形成方法(特許文献1参照)では、膜厚の配線が容易に得られる反面、配線パターンが微細化するにつれ、パターン間に残存する金属薄膜の残渣上にメッキが析出し、配線間のブリッジ(ショート)や異物発生の原因となるという問題があった。また、封止基板に貫通孔(開口部)がある場合には、スパッタ時に貫通孔の内壁面や封止基板の裏面側へスパッタ粒子が回り込み付着してしまう。従って、この付着した異物を核として、無電解メッキ時にメッキが析出し、同様に配線間のブリッジ(ショート)や異物発生の原因となるという問題があった。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、パターン形成において、低コスト化及び形成時間の短縮化を図るとともに、微細パターンの形成を可能としたパターンの形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するために、基板上に所定の金属パターンを形成するパターンの形成方法であって、前記基板上に第1金属膜を形成する第1金属膜形成工程と、前記第1金属膜上に、前記パターンを形成しない前記基板上の位置に対応する前記第1金属膜が露出するようにマスクパターンを形成するマスクパターン形成工程と、前記マスクパターンをマスクとして前記第1金属膜上に絶縁膜を形成する絶縁膜形成工程と、前記マスクパターンを除去し、メッキ法により、前記マスクパターンを除去した前記第1金属膜上に前記絶縁膜をマスクとして少なくとも第2金属膜を形成する第2金属膜形成工程と、を有することを特徴とする。
【0008】
この方法によれば、基板上のパターン形成領域にマスクパターンを選択的に形成し、このマスクパターンをマスクとして非パターン形成領域に絶縁膜を形成する。これにより、上記マスクパターンを剥離してパターン形成領域にパターンをメッキ処理により形成する際、パターン間(非パターン形成領域)には絶縁膜が形成されているため、非パターン形成領域には金属が析出しない。従って、従来法のようにパターン間の金属薄膜の残渣上に金属が析出することがないため、ブリッジ(ショート)が防止されることで、歩留りの向上を図ることができるとともに、微細パターンの形成が可能となる。
また、本発明の方法によれば、非パターン形成領域に絶縁膜を形成することで選択的に所望の領域にパターンを形成することができるため、従来法のスパッタ・フォトリソグラフィーを用いたパターンの方法に比べ、製造時間の短縮化及び低コスト化を図ることが可能となる。
【0009】
また本発明のパターン形成方法は、前記第1金属膜形成工程において、前記第1金属膜としてCu、Ni、Cr、Al、Ti若しくはW又はこれらの材料のうち少なくとも2種以上から選択される材料を用いたことも好ましい。
この方法によれば、前記パターン形成と前記非パターン形成領域において容易にメッキ析出の選択性をもたせることができるとともに、積層する金属膜表面の密着性の向上を図ることができる。
【0010】
また本発明のパターン形成方法は、前記第1金属膜形成工程の前に、前記基板に貫通孔を設け、前記絶縁膜形成工程において、前記貫通孔の内壁面及び前記基板の前記パターンを形成する面とは反対側の裏面に付着した前記第1金属膜を被覆するようにして絶縁膜を形成することも好ましい。
基板に貫通孔を形成した後、第1金属膜を基板上に形成した場合、基板の貫通孔の内壁面及び基板の裏面に金属が異物として付着することがある。本発明によれば、第3工程において、付着した異物を被覆するようにして絶縁膜を形成するため、メッキ法により第2金属膜を基板上に形成する際に、基板の貫通孔の内壁面及び基板の裏面に金属が析出・剥離すること防止できる。
【0011】
また本発明のパターン形成方法は、前記絶縁膜形成工程において、前記絶縁膜として酸化膜を用い、前記酸化膜を酸素プラズマ法、熱酸化法及びレーザー照射法のいずれかの方法により形成することも好ましい。
この方法によれば、酸化膜形成装置内において基板を所望の位置に設置することにより、基板上の非パターン形成領域のみならず、基板に形成した貫通孔の内壁面及び裏面にも酸化膜を形成することができる。
【0012】
また本発明のパターン形成方法は、前記絶縁膜形成工程において、前記メッキ処理が無電解メッキ処理であり、Ni、Cu、Au、Ag、Co若しくはPd又はこれらの材料のうち少なくとも2種以上から選択される材料を用いて無電解メッキ処理することも好ましい。
この材料によれば、形成するパターンの抵抗値を調整することができるとともに、積層する金属膜表面との密着性の向上及び前記パターン形成と前記非パターン形成領域において良好なメッキ析出の選択性を図ることができる。
【0013】
また本発明のパターン形成方法は、前記第2金属膜形成工程において、前記マスクパターンの材料としてレジストを用い、前記レジストを剥離液を用いて除去することも好ましい。
一般的に、レジストの除去をプラズマアッシングにより行った場合には、非パターン形成領域同様パターン形成領域の表面にも絶縁膜が形成されてしまうため、メッキ析出の選択性をもたせることができない。これに対し、本発明によれば、レジストの除去を剥離液を用いて除去するため、パターン形成領域の表面に絶縁膜を形成することなく、レジストを除去することが可能となる。
【0014】
また本発明のパターン形成方法は、前記第2金属膜形成工程により少なくとも前記第2金属膜を前記基板上に形成した後、前記第2金属膜をマスクとして、前記マスクに被覆されていない前記絶縁膜及び第1金属膜をエッチングにより除去し、前記基板上に前記第1金属膜及び第2金属膜からなるパターンを形成する金属パターン形成工程を有することも好ましい。
この方法によれば、メッキ処理後に、絶縁膜及び第1金属膜をエッチングにより除去するため、基板の貫通孔の内壁面及び基板の裏面に異物析出物があったとしても、上記除去時に同時に異物析出物を除去することができる。従って、貫通孔間等のブリッジ(ショート)及び異物発生を防止しつつ、所定パターンを形成することができる。
【0015】
また本発明のパターン形成方法は、前記金属パターン形成工程において、前記エッチングはウエットエッチングであることも好ましい。
この方法によれば、第2金属膜に被覆されていない領域をエッチングにより配線パターンを得るとともに基板の貫通孔の内壁面及び基板の裏面の異物を効率的に除去することができる。
【0016】
本発明の液滴吐出ヘッドは、上記パターンの形成方法により形成されたパターンを有する封止板を備えることを特徴とする。
この方法によれば、封止板には上記ブリッジ(ショート)が防止されたパターンが形成されるため誤作動のない高信頼性、且つ異物を低減できるため歩留りの良い液滴吐出ヘッドを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態につき、図面を参照して説明する。
なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0018】
(パターンの形成方法)
まず、本実施形態のパターンの形成方法について説明する。
図1(a)〜(c)及び図2(a)〜(d)は、パターンの形成方法の工程を示す図である。なお、本実施形態において、半導体基板18上にパターンを形成する領域をパターン形成領域と称し、パターンを形成しない領域を非パターン形成領域と称する。
【0019】
まず、図1(a)に示すように、シリコンからなる半導体基板18を用意した後、半導体基板18の表面を熱酸化処理し、半導体基板18表面に絶縁材料からなるSiO膜(図示省略)を形成する。次に、後述するように半導体基板18の上面に実装される駆動回路と、半導体基板18の下面に設けられる圧電素子とを電気的に接続するために、半導体基板18の厚み方向に貫通する複数の貫通孔48を形成する。具体的には、半導体基板18上にレジスト(マスクパターン)を塗布し、露光、現像処理によりレジストを所定形状にパターニングする。その後、パターニングしたレジストをマスクとして、フッ酸によりSiO膜(熱酸化膜)を除去後、KOH等のアルカリ溶液でウエットエッチングすることにより半導体基板18に貫通孔48を形成する。続けて、再度、半導体基板18に熱酸化処理を施し、半導体基板18の全面にSiO膜(図示省略)を形成する。
【0020】
次に、図1(b)に示すように、形成するパターンと基板表面との密着性を確保するためにスパッタ法により、半導体基板18上にNi−Cr合金(Cr20%)からなるNi−Cr膜28(第1金属膜)を形成する。Ni−Cr膜28の膜厚は例えば数10nmである。このとき、半導体基板18には複数の貫通孔48が形成されているため、スパッタ時にスパッタ粒子が貫通孔48の内壁面18a及び半導体基板18の裏面18bに回り込む。これにより、半導体基板18の内壁面18a及び裏面18bには、図1(b)に示すように、スパッタ粒子が異物(以下、異常析出物28aと称する)として付着する。なお、半導体基板18上に成膜する第1導電膜は、上記以外にもCu、Ni、Cr、Al、Ti若しくはW又はこれらの材料のうち少なくとも2種以上から選択される材料を用いて形成することができる。これにより、パターン形成と前記非パターン形成領域において良好なメッキ析出の選択性をえることができ、且つ積層する金属膜との良好な密着性をえることができる。
【0021】
次に、図1(c)に示すように、半導体基板18上の全面にレジストを塗布し、このレジストをフォトリソグラフィー法により、所定形状にパターニングする。このとき、レジストの形状は、非パターン形成領域に対応した位置のNi−Cr膜28が露出するように開口部52を形成するとともに、パターン形成領域に対応した位置のNi−Cr膜28がレジスト38に覆われるようにパターニング形成する。
【0022】
次に、図2(a)に示すように、バレルアッシャーを用いたOプラズマアッシング等のプラズマ処理により、半導体基板18の全面を酸素プラズマ雰囲気中に例えば5分間曝す。すると、図2(b)に示すように、所定形状にパターニングされたレジスト38をマスクとして、半導体基板18上に酸化膜40(絶縁膜)が選択的に形成される。ここで、プラズマ装置内において半導体基板18は半導体基板18の側面を底面側として立設されるため、半導体基板18の全面にプラズマ処理が施される。これにより、図2(b)に示すように、半導体基板18上のレジスト38に被覆されていないNi−Cr膜28の表面28bが酸化され、酸化膜40が形成される。同時に、図2(b)に示すように、半導体基板18の貫通孔48の内壁面18a及び基板の裏面18bに形成された異常析出物28aが酸化され、異常析出物28aを被覆するように酸化膜40が形成される。なお、酸化膜40は、プラズマ処理の他に、熱酸化法、又はレーザー照射法により形成しても良い。
【0023】
次に、図2(c)に示すように、半導体基板18を剥離液(剥離液106:東京応化)に例えば10分程度浸漬させ、レジスト38を剥離する。
【0024】
次に、非パターン形成領域に形成された酸化膜40をマスクとしてメッキ処理を行いパターンを形成するが、Ni−Cr膜28(合金)は放置しているだけで強固な酸化膜40を形成するため、予め半導体基板18に前処理を施す。
具体的には、Ni−Cr合金のエッチング効果が大きいエッチング液としての塩酸と、メッキ処理用のPd触媒を溶解した溶液とを混合した溶液に、常温で1〜5分間、半導体基板18を浸漬させる。ここで、混合液の濃度としては塩酸15〜30%、Pd塩10〜100ppmである。また、Pd触媒としては、濃厚な塩酸からなるエッチング液と混合してもPd触媒が分解しないように、塩酸系の溶液に溶解されているものを使用する。このように、上述した前処理を半導体基板18に施すことで、Ni−Cr膜28にPd触媒が付与される。
【0025】
次に、図2(d)に示すように、前処理が終了した後、80〜90℃に加温した無電解Niメッキ浴中に、半導体基板18を浸漬する。すると、酸化膜40がマスクとなり、レジスト38の剥離によりNi−Cr膜28が露出したパターン形成領域にPdを核として溶液中のニッケルイオンが還元される。これにより、ニッケルがNi−Cr膜28上に析出され、膜厚約0.3〜0.8μmのニッケル膜42(第2導電膜)が形成される。
【0026】
次に、60〜80℃に加温した無電解置換Auメッキ浴中に、半導体基板18を5〜20分浸漬し、図2(d)に示すように、ニッケル膜42上にAu膜44を約0.05〜0.2μm積層する。
さらに、45〜65℃に加温した自己触媒還元無電解Auメッキ浴中に半導体基板18を1〜2時間浸漬し、図2(d)に示すように、0.7〜1.2μmのAu膜44を積層して形成する。
また、無電解置換Auメッキ及び自己触媒還元無電解Auメッキには、亜硫酸浴を用い、上記の化学処理と化学処理との間では、純水による洗浄を3〜5分間行う。
なお、無電解メッキ液には、Ni、Cu、Au、Ag、Co若しくはPd又はこれらの材料のうち少なくとも2種以上から選択される材料を用いることも可能である。これにより、パターン形成と前記非パターン形成領域において良好なメッキ析出の選択性をえることができ、且つ積層する金属膜との良好な密着性をえることができる。
【0027】
次に、図2(e)に示すように、ニッケル膜42、Au膜44が積層された膜45をマスクとして、例えば硝酸を用いたウエットエッチングを半導体基板18に施す。このように、同じエッチング液により非パターン形成領域に形成された酸化膜、Ni−Cr膜28を除去する。
以上説明した工程により、半導体基板18のパターン形成領域に、Ni−Cr膜28c、ニッケル膜42及びAu膜44からなるパターン46を形成する。
【0028】
本実施形態によれば、半導体基板18上のパターン形成領域にレジスト38を選択的に形成し、このレジスト38をマスクとして非パターン形成領域に酸化膜40を形成する。これにより、上記レジスト38を剥離してパターン形成領域にパターンをメッキ処理により形成する際、パターン間(非パターン形成領域)には酸化膜40が形成されているため、非パターン形成領域には金属が析出しない。その後ウェットエッチングにより配線パターンをえるとともに基板の貫通孔の内壁面及び基板の裏面の異物を効率的に除去することができる。従って、パターン間のブリッジ(ショート)を防止し、且つ異物を低減することにより、歩留りの向上を図ることができるとともに、微細パターンの形成が可能となる。
また、本発明の方法によれば、スパッタ成膜時間が短くなり、さらにはメッキ処理はバッチ処理が可能であるため、従来法のスパッタ・フォトリソグラフィーを用いたパターンの方法に比べ、製造時間の短縮化及び低コスト化を図ることが可能となる。
【0029】
(液滴吐出ヘッド)
次に、上述したパターンの形成方法により形成されたパターンを有する封止基板を備えた液滴吐出ヘッドについて図3を参照して説明する。
図3は、液滴吐出ヘッドHの断面構成図である。
液滴吐出ヘッドHは、インク(機能液)を液滴状にしてノズルから吐出するものである。図3に示すように、液滴吐出ヘッド1は、液滴が吐出されるノズル開口15を備えたノズル基板16と、ノズル基板16の上面(+Z側)に接続されてインク流路を形成する流路形成基板10と、流路形成基板10の上面に接続されて圧電素子(駆動素子)300の駆動によって変位する振動板400と、振動板400の上面に接続されてリザーバ100を形成するリザーバ形成基板(保護基板)20と、封止基板20上に設けられた前記圧電素子300を駆動するための駆動回路部(ドライバIC)200A〜200Bと、駆動回路部200A〜200Bと接続された複数の配線パターン(膜パターン)34とを備えて構成されている。
【0030】
液滴吐出ヘッド1の動作は、各駆動回路部200A〜200Bに接続された図示略の外部コントローラによって制御される。流路形成基板10には、複数の平面視略櫛歯状の開口領域が区画形成されており、これらの開口領域は、ノズル基板16と振動板400とにより囲まれて圧力発生室12を形成する。また、上記平面視略櫛歯状の開口領域のうち、封止基板20と流路形成基板10とにより囲まれた部分がリザーバ100を形成している。
【0031】
流路形成基板10の図示下面側(−Z側)は開口しており、その開口を覆うようにノズル基板16が流路形成基板10の下面に接続されている。流路形成基板10の下面とノズル基板16とは、例えば接着剤や熱溶着フィルム等を介して固定されている。ノズル基板16には、液滴を吐出する複数のノズル開口15が設けられている。具体的には、ノズル基板16に設けられた複数(例えば720個程度)のノズル開口15はY軸方向(紙面と直交する方向)に配列されている。
【0032】
圧力発生室12とノズル開口15とは、各々対応して設けられている。すなわち、圧力発生室12は、複数のノズル開口15に対応するように、Y軸方向に複数並んで設けられている。圧力発生室12は、X軸方向に関して互いに対向するように配置されており、それらの間には隔壁10Kが形成されている。
【0033】
複数の圧力発生室12の基板中央部側の端部は上述した隔壁10Kによって閉塞されているが、基板外縁部側の端部は互いに接続するように集合され、リザーバ100と接続されている。リザーバ100は、機能液導入口25と圧力発生室12との間で機能液を一時的に保持するものであって、封止基板20にY軸方向に延びる平面視矩形状に形成されたリザーバ部21と、流路形成基板10に形成された連通部13とから構成されている。そして、連通部13において各圧力発生室12と接続され、複数の圧力発生室12の共通の機能液保持室(インク室)を形成している。図3に示す機能液の経路をみると、ヘッド外端上面に開口する機能液導入口25より導入された機能液が、導入路26を経てリザーバ100に流れ込み、供給路14を経て、複数の圧力発生室12のそれぞれに供給されるようになっている。
【0034】
流路形成基板10と封止基板20との間に配置された振動板400は、流路形成基板10側から順に弾性膜50と下電極膜60とを積層した構造を備えている。流路形成基板10側に配される弾性膜50は、例えば1〜2μm程度の厚さの酸化シリコン膜からなるものであり、弾性膜50上に形成される下電極膜60は、例えば0.2μm程度の厚さの金属膜からなるものである。本実施形態において、下電極膜60は、流路形成基板10と封止基板20との間に配される複数の圧電素子300の共通電極としても機能するようになっている。
【0035】
振動板400を変形させるための圧電素子300は、下電極膜60側から順に圧電体膜70と、上電極膜80とを積層した構造を備えている。圧電体膜70の厚さは例えば1μm程度、上電極膜80の厚さは例えば0.1μm程度である。
なお、圧電素子300の概念としては、圧電体膜70及び上電極膜80に加えて、下電極膜60を含むものであってもよい。下電極膜60は圧電素子300として機能する一方、振動板400としても機能するからである。本実施形態では、弾性膜50及び下電極膜60が振動板400として機能する構成を採用しているが、弾性膜50を省略して下電極膜60が弾性膜(50)を兼ねる構成とすることもできる。
【0036】
圧電素子300(圧電体膜70及び上電極膜80)は、複数のノズル開口15及び圧力発生室12のそれぞれに対応するように複数設けられている。
圧電素子300を含む振動板400上の領域を覆って、封止基板20が設けられており、封止基板20の上面(流路形成基板10と反対側面)には、封止膜31と固定板32とを積層した構造のコンプライアンス基板30が接合されている。このコンプライアンス基板30において、内側に配される封止膜31は、剛性が低く可撓性を有する材料(例えば、厚さ6μm程度のポリフェニレンスルフィドフィルム)からなり、この封止膜31によってリザーバ部21の上部が封止されている。他方、外側に配される固定板32は、金属等の硬質の材料(例えば、厚さ30μm程度のステンレス鋼)からなる板状部材である。
この固定板32には、リザーバ100に対応する平面領域を切り欠いてなる開口部33が形成されており、この構成によりリザーバ100の上部は、可撓性を有する封止膜31のみで封止され、内部圧力の変化によって変形可能な可撓部22となっている。
【0037】
通常、機能液導入口25からリザーバ100に機能液が供給されると、例えば、圧電素子300の駆動時の機能液の流れ、あるいは、周囲の熱などによってリザーバ100内に圧力変化が生じる。しかしながら、上述のように、リザーバ100の上部が封止膜31のみよって封止された可撓部22を有しているので、この可撓部22が撓み変形してその圧力変化を吸収する。従って、リザーバ100内は常に一定の圧力に保持される。なお、その他の部分は固定板32によって十分な強度に保持されている。そして、リザーバ100の外側のコンプライアンス基板30上には、リザーバ100に機能液を供給するための機能液導入口25が形成されており、封止基板20には、機能液導入口25とリザーバ100の側壁とを連通する導入路26が設けられている。
【0038】
封止基板20は、流路形成基板10とともに液滴吐出ヘッド1の基体を成す部材であるから剛体とすることが好ましく、封止基板20を形成する材料として流路形成基板10と略同一の熱膨張率を有する材料を用いることがより好ましい。本実施形態の場合、流路形成基板10がシリコンからなるものであるから、それと同一材料のシリコン単結晶基板が好適である。シリコン単結晶基板を用いた場合、異方性エッチングにより容易に高精度の加工を施すことが可能であるため、圧電素子保持部24や溝部700を容易に形成できるという利点が得られる。その他、流路形成基板10と同様、ガラス、セラミック材料等を用いて封止基板20を作製することもできる。
【0039】
封止基板20上には2個の駆動回路部200A〜200Bが配設されている。
駆動回路部200A〜200Bは、例えば回路基板あるいは駆動回路を含む半導体集積回路(IC)を含んで構成されている。各駆動回路部200A〜200Bは、複数の接続端子(図示せず)を備えており、一部の接続端子が封止基板20上に形成された配線パターン34に対してワイヤーW1により接続されている。駆動回路部200A〜200Bの他の一部の接続端子は、封止基板20の溝部700内に配置された上電極膜80に対してワイヤーW2により接続されている。
【0040】
封止基板20のうち、X軸方向に関して中央部には、Y軸方向に延びる溝部700が形成されている。
溝部700によってX軸方向に関し区画される封止基板20のうち、回路駆動部200Aと接続される複数の圧電素子300を封止している部分を第1封止部20Aとし、駆動回路部200Bと接続される複数の圧電素子300を封止ししている部分を第2封止部20Bとする。これらの第1封止部20A及び第2封止部20Bには、それぞれ圧電素子300に対向する領域に、圧電素子300の運動を阻害しない程度の空間を確保するとともに、その空間を密封する圧電素子保持部24が設けられている。圧電素子300のうち、少なくとも圧電体膜70は、この圧電素子保持部24内に密封されている。
【0041】
第1封止部20Aの圧電素子保持部24によって封止されている圧電素子300のうち、上電極膜80の−X側の端部は、第1封止部20Aの外側まで延びて、溝部700の底面部に露出している。溝部700における流路形成基板10上に下電極膜60の一部が配置されている場合においては、上電極膜80と下電極膜60との短絡を防止するための絶縁膜600が、上電極膜80と下電極膜60との間に介挿されている。同様に、第2封止部20Bの圧電素子保持部24によって封止されている圧電素子300のうち、上電極膜80の+X側の端部が、第2封止部20Bの外側まで延びて、溝部700内に露出しており、この露出側の端部にも、上電極膜80と下電極膜60との間に絶縁膜600が介挿されている。
【0042】
本実施形態では、配線パターン34、駆動回路部200A、200B等が設けられた封止基板20及び圧電素子300が設けられた流路形成基板10がそれぞれ本発明に係るデバイスの一部を構成し、これらのデバイスを組み立て、固定することにより、液滴吐出ヘッドHが製造される。
【0043】
上述した構成を有する液滴吐出ヘッド1により機能液の液滴を吐出するには、当該液滴吐出ヘッド1に接続された外部コントローラ(図示略)によって機能液導入口25に接続された不図示の外部機能液供給装置を駆動する。外部機能液供給装置から送出された機能液は、機能液導入口25を介してリザーバ100に供給された後、ノズル開口15に至るまでの液滴吐出ヘッド1の内部流路を満たす。
【0044】
また外部コントローラは、封止基板20上に実装された駆動回路部200A、200B等に例えば配線パターン34を介して駆動電力や指令信号を送信する。指令信号等を受信した駆動回路部200A、200Bは、外部コントローラからの指令に基づく駆動信号を、各圧電素子300に送信する。
すると、圧力発生室12に対応するそれぞれの下電極膜60と上電極膜80との間に電圧が印加される結果、弾性膜50、下電極膜60及び圧電体膜70に変位が生じ、この変位によって各圧力発生室12の容積が変化して内部圧力が高まり、ノズル開口15より液滴が吐出される。
【0045】
本実施形態によれば、封止基板20にはブリッジ(ショート)が防止された配線パターンが形成されるため、誤作動のない高信頼性の液滴吐出ヘッドHを提供することができる。
【0046】
(液滴吐出装置)
次に、上述した液滴吐出ヘッドHを備えた液滴吐出装置の一例について図4を参照しながら説明する。本例では、その一例として、前述の液滴吐出ヘッドを備えたインクジェット式記録装置について説明する。
【0047】
液滴吐出ヘッドは、インクカートリッジ等と連通するインク流路を具備する記録ヘッドユニットの一部を構成して、インクジェット式記録装置に搭載されている。図4に示すように、液滴吐出ヘッドを有する記録ヘッドユニット61A及び61Bには、インク供給手段を構成するカートリッジ62A及び62Bが着脱可能に設けられており、この記録ヘッドユニット61A及び61Bを搭載したキャリッジ63が、装置本体64に取り付けられたキャリッジ軸65に軸方向移動自在に取り付けられている。
【0048】
記録ヘッドユニット61A及び61Bは、例えば、それぞれブラックインク組成物及びカラーインク組成物を吐出するものとしている。そして、駆動モータ66の駆動力が図示しない複数の歯車及びタイミングベルト67を介してキャリッジ63に伝達されることで、記録ヘッドユニット61A及び61Bを搭載したキャリッジ63がキャリッジ軸65に沿って移動するようになっている。一方、装置本体64にはキャリッジ軸65に沿ってプラテン68が設けられており、図示しない給紙ローラなどにより給紙された紙等の記録媒体である記録シートSがプラテン68上に搬送されるようになっている。上記構成を具備したインクジェット式記録装置は、前述の液滴吐出ヘッドHを備えているので、小型で信頼性が高く、さらに低コストなインクジェット式記録装置となっている。
【0049】
なお、図4では、本発明の液滴吐出装置の一例としてプリンタ単体としてのインクジェット式記録装置を示したが、本発明はこれに限らず、係る液滴吐出ヘッドを組み込むことによって実現されるプリンタユニットに適用することも可能である。このようなプリンタユニットは、例えば、テレビ等の表示デバイスやホワイトボード等の入力デバイスに装着され、該表示デバイス又は入力デバイスによって表示若しくは入力された画像を印刷するために使用される。
【0050】
なお、本発明の技術範囲は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した実施形態に種々の変更を加えたものを含む。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】パターンの形成工程を示す断面図である。
【図2】図1に続くパターンの形成工程を示す断面図である。
【図3】液滴吐出ヘッドの概略構成を示す断面図である。
【図4】液滴吐出装置の概略構成を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0052】
18…半導体基板(基板)、 18a…内壁面、 18b…裏面、 20…封止基板、 28…Ni−Cr膜(第1導電膜)、 28a…異常析出物、 38…レジスト、 40…酸化膜、 42…ニッケル膜、 44…Au膜、 46…パターン、 48…貫通孔、 52…開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に所定の金属パターンを形成するパターンの形成方法であって、
前記基板上に第1金属膜を形成する第1金属膜形成工程と、
前記第1金属膜上に、前記パターンを形成しない前記基板上の位置に対応する前記第1金属膜が露出するようにマスクパターンを形成するマスクパターン形成工程と、
前記マスクパターンをマスクとして前記第1金属膜上に絶縁膜を形成する絶縁膜形成工程と、
前記マスクパターンを除去し、メッキ法により、前記マスクパターンを除去した前記第1金属膜上に前記絶縁膜をマスクとして少なくとも第2金属膜を形成する第2金属膜形成工程と、
を有することを特徴とするパターンの形成方法。
【請求項2】
前記第1金属膜形成工程において、
前記第1金属膜としてCu、Ni、Cr、Al、Ti若しくはW又はこれらの材料のうち少なくとも2種以上から選択される材料を用いたことを特徴とする請求項1に記載のパターンの形成方法。
【請求項3】
前記第1金属膜形成工程の前に、前記基板に貫通孔を設け、
前記絶縁膜形成工程において、前記貫通孔の内壁面及び前記基板の前記パターンを形成する面とは反対側の裏面に付着した前記第1金属膜を被覆するようにして絶縁膜を形成することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のパターンの形成方法。
【請求項4】
前記絶縁膜形成工程において、前記絶縁膜として酸化膜を用い、前記酸化膜を酸素プラズマ法、熱酸化法及びレーザー照射法のいずれかの方法により形成することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のパターンの形成方法。
【請求項5】
前記絶縁膜形成工程において、前記メッキ処理が無電解メッキ処理であり、
Ni、Cu、Au、Ag、Co若しくはPd又はこれらの材料のうち少なくとも2種以上から選択される材料を用いて無電解メッキ処理することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のパターンの形成方法。
【請求項6】
前記第2金属膜形成工程において、前記マスクパターンの材料としてレジストを用い、
前記レジストを剥離液を用いて除去することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のパターンの形成方法。
【請求項7】
前記第2金属膜形成工程により少なくとも前記第2金属膜を前記基板上に形成した後、
前記第2金属膜をマスクとして、前記マスクに被覆されていない前記絶縁膜及び第1金属膜をエッチングにより除去し、前記基板上に前記第1金属膜及び第2金属膜からなるパターンを形成する金属パターン形成工程を有すること特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載のパターンの形成方法。
【請求項8】
前記金属パターン形成工程において、
前記エッチングはウエットエッチングであることを特徴とする請求項7に記載のパターンの形成方法。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載のパターンの形成方法により形成されたパターンを有する封止基板を備えたことを特徴とする液滴吐出ヘッド。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2006−346962(P2006−346962A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−174883(P2005−174883)
【出願日】平成17年6月15日(2005.6.15)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】