説明

フレックスリジッド配線基板及びその製造方法

【課題】フレキシブル配線板の使用量を少なくできるので、コスト的に有利であり、しかも配線基板の信頼性を高めることができるフレックスリジッド配線基板、及びその製造方法を提供する。
【解決手段】フレキシブル配線板10で構成されるフレックス部17と、このフレックス部17に接続されたリジッド配線基板からなるリジッド部18とを備えるフレックスリジッド配線基板において、フレキシブル配線板10は、端部10aのみがリジッド部18の絶縁層に挟持されており、フレキシブル配線板10の端部10aに形成された配線パターンに対してリジッド部18の配線パターン23aが層間接続部22で導電接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1枚の配線基板にフレックス部とリジッド部とを備えるフレックスリジッド配線基板、及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、配線基板としては、硬質のリジッド配線基板と、軟質のフレキシブル配線基板とが一般的であったが、両者の長所を備えるべく、フレックス部とリジッド部とを有するフレックスリジッド配線基板も開発が進んでいる。このフレックスリジッド配線基板は、図5(c)に示すように、部品搭載が可能で、部品重量に耐え、筐体に固定するための強度を有するリジッド部18と、自由に屈曲し、小さい空間で配線板とコネクタの間や配線板同士の間をつなぐフレックス部17とからなっている。
【0003】
このようなフレックスリジッド配線基板は、従来、図5に示す方法で形成されていた。まず、図5(a)に示すように、予めプリント配線の施されたフレキシブル配線板10の両面(又は片面)に、絶縁と接着とを兼ねた半硬化のプリプレグ11を載せる。このとき、フレックス部17となる部分には空隙部15が形成される。前記プリプレグ11の上には、さらにリジッド部18のプリント配線を形成する銅箔12が載せられる。さらに、厚手の離型フィルム13を被せて上下の鏡面板14でプレスしつつ加熱する。
【0004】
図5(b)に示すように、プリプレグ11は、ガラス繊維からなる補強材に、熱硬化樹脂と硬化剤との混合したものを塗布して半硬化状態(B−stage)に形成したものであり、プレスしつつ加熱すると、プリプレグ11の内部で樹脂と硬化剤とが反応して一時的に柔らかになった後に硬化して、フレキシブル配線板10と銅箔12とを接続する接着剤として作用すると共に、絶縁層となる。
【0005】
図5(c)に示すように、プリプレグ11の硬化後に、鏡面板14と離型フィルム13を除くと、フレックス部17に樹脂が流れ出た状態でしみ出し部16が形成されたフレックスリジッド配線基板となる。また、プリプレグ11の流動を抑制するため、従来は、流動の少ない、ローフロープリプレグが使用されていた。
【0006】
また、このようなローフロープリプレグを使用せずに、プリプレグ11の流動を抑制する製造方法として、空隙部15に面したプリプレグ11の縁部を、加熱手段により予め硬化させておくフレックスリジッド配線基板の製造方法も知られている(例えば特許文献1参照)。
【0007】
しかしながら、従来のフレックスリジッド配線基板の製造方法では、フレキシブル配線板が、配線基板の全面に配設されるため、高価なフレキシブル配線板の使用量が多くコストが高くなり、また、フレキシブル配線板の材料は、リジッド部の他の材料と通常種類が異なるため、熱膨張率の相違による変形や剥離の問題が生じ易く、配線基板の信頼性が低下していた。
【特許文献1】特開2004−247453号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明の目的は、フレキシブル配線板の使用量を少なくできるので、コスト的に有利であり、しかも配線基板の信頼性を高めることができるフレックスリジッド配線基板、及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的は、下記の如き本発明により達成できる。
【0010】
即ち、本発明のフレックスリジッド配線基板は、フレキシブル配線板で構成されるフレックス部と、このフレックス部に接続されたリジッド配線基板からなるリジッド部とを備えるフレックスリジッド配線基板において、前記フレキシブル配線板は、端部のみが前記リジッド部の絶縁層に挟持されており、前記端部に形成された配線パターンに対して前記リジッド部の配線パターンが層間接続部で導電接続されていることを特徴とする。
【0011】
本発明のフレックスリジッド配線基板によると、端部のみが前記リジッド部の絶縁層に挟持されているため、フレキシブル配線板の使用量を少なくできるので、コスト的に有利となる。また、フレキシブル配線板が介在する面積が小さくなるため、熱膨張率の相違による変形や剥離の問題が生じにくく、配線基板の信頼性を高めることができる。更に、前記端部に形成された配線パターンに対して前記リジッド部の配線パターンが層間接続部で導電接続されているため、電気的な接続の問題を回避できる。
【0012】
上記において、前記層間接続部は、スルーホールメッキ又はレーザビアで形成されていることが好ましい。このような層間接続部であると、予めリジッド配線基板とフレキシブル配線板とを積層一体化した後に、上記のような層間接続部を容易かつ確実に形成することができる。
【0013】
一方、本発明のフレックスリジッド配線基板の製造方法は、熱接着性シートを介してリジッド配線基板の積層単位でフレキシブル配線板を両側から挟み込んだ積層物を加熱加圧して一体化させる工程を含むフレックスリジッド配線基板の製造方法において、前記積層物は前記フレキシブル配線板の端部のみを挟み込む構造であることを特徴とする。
【0014】
本発明の製造方法によると、加熱加圧して一体化させる積層物が、フレキシブル配線板の端部のみを挟み込む構造であるため、フレキシブル配線板の使用量を少なくできるので、コスト的に有利となる。また、フレキシブル配線板が介在する面積が小さくなるため、熱膨張率の相違による変形や剥離の問題が生じにくく、配線基板の信頼性を高めることができる。
【0015】
また、前記一体化を行った後、スルーホールメッキ又はレーザビアによって、前記端部に形成された配線パターンに対して前記リジッド部の配線パターンを導電接続する工程を更に含むことが好ましい。これによって、前記端部に形成された配線パターンに対して前記リジッド部の配線パターンを容易かつ確実に導電接続することができ、電気的な接続の問題を回避できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。図1〜図2は、本発明のフレックスリジッド配線基板の製造方法の一例を示す工程図である。特に、図2(b)には、本発明のフレックスリジッド配線基板の一例が示されている。まず、本発明のフレックスリジッド配線基板について説明する。
【0017】
本発明のフレックスリジッド配線基板は、図2(b)に示すように、フレキシブル配線板10で構成されるフレックス部17と、このフレックス部17に接続されたリジッド配線基板からなるリジッド部18とを備える。
【0018】
フレキシブル配線板10は、フレキシブルな絶縁基材の片面又は両面に配線パターン(図示省略)を形成したものである。絶縁基材としては、例えばポリイミドフィルムやポリエステルフィルム等が使用される。配線パターンの表面には、必要に応じてカバーレイが設けられる。
【0019】
リジッド配線基板は、より剛性の高い配線基板であり、プリプレグ11の硬化物などからなる絶縁層と、配線パターン23a等からなる配線層とで構成される。リジッド配線基板が多層配線基板である場合、絶縁層と配線層とが複数層設けられる。本実施形態では、リジッド配線基板が4層の配線層を有する例を示す。
【0020】
本発明では、図2(b)に示すように、フレキシブル配線板10の端部10aのみがリジッド部18の絶縁層に挟持されている。この絶縁層は、各種接着性シート等によって製造することができるが、汎用性が高いという理由から、プリプレグ11の硬化物で構成するのが好ましい。
【0021】
フレキシブル配線板10の端部10aは、幅3〜30mmの領域が挟持されるのが好ましく、幅5〜10mmの領域が挟持されるのがより好ましい。挟持される端部10aの幅が3mm未満では、接続の強度が不十分となり、また、層間接続部を形成するのが困難になる傾向がある。逆に、挟持される端部10aの幅が30mmを超えると、高価なフレキシブル配線板10の使用量が多くコストが高くなり、また、熱膨張率の相違による変形や剥離の問題が生じ易くなる傾向がある。
【0022】
また、フレキシブル配線板10の厚みは、10〜250μmが好ましい。フレキシブル配線板10の厚みが10μm未満であると、フレックス部17の強度や耐久性が不十分となる傾向があり、厚みが250μmを超えると、フレキシブル配線板10を挟持しない部分との厚みの差が生じて、密着不良やクラックの発生が生じ易くなる傾向がある。
【0023】
本発明のフレックスリジッド配線基板は、フレキシブル配線板10の端部10aに形成された配線パターンに対してリジッド部18の配線パターン23aが層間接続部で導電接続されている。本実施形態では、図2(b)に示すように、層間接続部がスルーホールメッキ22により形成されている例を示す。
【0024】
次に、本発明の製造方法について説明するが、本発明のフレックスリジッド配線基板は、以下で述べる本発明の製造方法により好適に製造することができる。
【0025】
本発明の製造方法は、図1(a)〜(d)に示すように、プリプレグ11などの熱接着性シートを介して、リジッド配線基板の積層単位でフレキシブル配線板10を両側から挟み込んだ積層物を加熱加圧して一体化させる工程を含むものである。本実施形態では、リジッド配線基板の積層単位として、2枚の両面配線基板の前躯体PW(片面のみパターン形成したもの)と2枚のプリプレグ11とを用いる例を示す。
【0026】
本実施形態では、まず、図1(a)に示すように、絶縁層19の両面に銅箔12が積層一体化され、銅箔12同士が層間接続部で導電接続された両面銅張積層板を準備する。層間接続部は、例えば導電性ペーストなどで形成することができ、予めレーザ加工等により半硬化した絶縁層19に開孔を形成し、開孔に導電性ペーストを充填した後、銅箔12を加熱加圧して積層一体化することで、上記の両面銅張積層板を製造できる。その他、層間接続部をスルーホールメッキやレーザビアなどで形成することも可能である。
【0027】
次に、図1(b)に示すように、フレックス部17を形成する部分の両面銅張積層板を、くり抜き加工し、また、リジッド部18の外形加工を行う。これらの加工は、ルータ等を用いて行うことができる。
【0028】
次いで、図1(c)に示すように、一方の銅箔12をエッチング等して、配線パターン12aを形成し、両面配線基板の前躯体PWを作成する。エッチングは、所定のパターンを有するエッチングレジストを形成した後に行うことができる。
【0029】
次いで、図1(d)に示すように、上記の配線パターン12a同士が向かい合うように、プリプレグ11を介して、リジッド配線基板の積層単位でフレキシブル配線板10を両側から挟み込んだ積層物とする。その際、本発明では、この積層物がフレキシブル配線板10の端部10aのみを挟み込む構造とする。
【0030】
プリプレグ11は、絶縁と接着とを兼ねた半硬化状態の樹脂を含むものであり、一般的に、ガラス繊維などからなる補強材に、熱硬化樹脂と硬化剤との混合したものを塗布して半硬化状態(B−stage)に形成したものである。
【0031】
積層する際、例えば、下部の鏡面板の上に、離型フィルムを介して、上記積層物を載置する。その上に、離型フィルム13を介して、上部の鏡面板を載せて、加熱加圧することで、積層物を一体化させる。
【0032】
プリプレグ11は、加熱されると、内部で樹脂と硬化剤とが反応して樹脂部分が一時的に柔らかになった後、硬化して、フレキシブル配線板10と両面配線基板の前躯体PWとを接続する接着剤として作用すると共に、リジッド配線基板の絶縁層となる。
【0033】
加熱加圧の条件は、プリプレグ11を形成する樹脂や硬化剤の量、種類などにもよるが、エポキシ樹脂を使用した場合、温度が150〜350℃、好ましくは、170〜300℃とするのがよい。
【0034】
本発明では、図2(a)〜(b)に示すように、前記一体化を行った後、スルーホールメッキ22又はレーザビアによって、端部10aに形成された配線パターンに対してリジッド部18の配線パターン23を導電接続する工程を更に含むことが好ましい。本実施形態では、スルーホールメッキ22により層間接続部を形成する例を示す。
【0035】
その場合、図2(a)に示すように、ドリリングやパンチングなどによって、端部10aが挟持されたリジッド部18に貫通孔(スルーホール)を形成した後、貫通孔を含むリジッド部18の表面に、メッキしてメッキ層23を形成する。メッキ方法としては、無電解メッキや、無電解メッキ等と電解メッキとの組合せが利用される。
【0036】
次いで、図2(b)に示すように、メッキ層23を所定のパターンにエッチング等して配線パターン23aを形成する。これによって、フレキシブル配線板10の端部10aに形成された配線パターンに対して、リジッド部18の配線パターン23aを導電接続することができる。
【0037】
[他の実施形態]
(1)前述の実施形態では、スルーホールメッキにより層間接続部を形成する例を示したが、本発明では、層間接続部の形成方法は何れでもよく、図3に示すように、レーザビア25によって、フレキシブル配線板10の端部10aに形成された配線パターンに対してリジッド部18の配線パターン23aを導電接続してもよい。
【0038】
その場合、まず、図3(a)に示すようにレーザ加工によって、端部10aが挟持されたリジッド部18に非貫通孔を形成した後、非貫通孔の内面を含むリジッド部18の表面に、メッキしてメッキ層23を形成する。
【0039】
次いで、図3(b)に示すように、メッキ層23を所定のパターンにエッチング等して配線パターン23aを形成する。これによって、フレキシブル配線板10の端部10aに形成された配線パターンに対して、リジッド部18の配線パターン23aを導電接続することができる。
【0040】
(2)前述の実施形態では、リジッド配線基板の積層単位として、2枚の両面配線基板の前躯体とプリプレグとを用いて、リジッド部が4層の配線層を有するフレックスリジッド配線基板を製造する例を示したが、本発明では、リジッド部の配線層の層数は何れでもよく、例えば図4に示すように、リジッド部18が2層の配線層を有するフレックスリジッド配線基板であってもよい。
【0041】
その場合、リジッド配線基板の積層単位として、プリプレグ11のみを用いて積層一体化し、その後、レーザ加工、メッキ、及びエッチングを行って、配線パターン23a、及びレーザビア25を形成することができる。また、リジッド配線基板の積層単位として、プリプレグ11と銅箔とを用いて積層一体化し、その後、貫通孔の形成、メッキ、及びエッチングを行って、配線パターン及びスルーホールメッキを形成することも可能である。
【0042】
なお、リジッド部が4層以上の配線層を有するフレックスリジッド配線基板を製造する場合、リジッド配線基板の積層単位として、より多数の両面配線基板を積層したり、両面配線基板の代わりに、多層配線基板を用いればよい。
【0043】
(3)前述の実施形態では、プリプレグ等の熱接着性シートと両面配線基板の前躯体とを別々に積層する例を示したが、本発明では、熱接着性シートを両面配線基板の前躯体と予め一体化させておき、これを積層する際に、フレキシブル配線板の端部のみを挟み込んで、この積層物を加熱加圧して一体化させてもよい。逆に、熱接着性シートでフレキシブル配線板の端部を挟み込んで予め一体化させておき、これに両面配線基板の前躯体を積層し、この積層物を加熱加圧して一体化させてもよい。
【0044】
(4)前述の実施形態では、複数のリジッド配線基板からなるリジッド部がフレックス部に接続されている例を示したが、本発明では、少なくとも1つのリジッド部と少なくとも1つのフレックス部が接続されていればよい。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明のフレックスリジッド配線基板の製造方法の一例を示す工程図
【図2】本発明のフレックスリジッド配線基板の製造方法の一例を示す工程図
【図3】本発明のフレックスリジッド配線基板の製造方法の他の例を示す工程図
【図4】本発明のフレックスリジッド配線基板の他の例を示す断面図
【図5】従来のフレックスリジッド配線基板の製造方法を示す工程図
【符号の説明】
【0046】
10 フレキシブル配線板
10a 端部
11 プリプレグ
17 フレックス部
18 リジッド部
22 スルーホールメッキ(層間接続部)
23a 配線パターン
25 レーザビア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレキシブル配線板で構成されるフレックス部と、このフレックス部に接続されたリジッド配線基板からなるリジッド部とを備えるフレックスリジッド配線基板において、
前記フレキシブル配線板は、端部のみが前記リジッド部の絶縁層に挟持されており、前記端部に形成された配線パターンに対して前記リジッド部の配線パターンが層間接続部で導電接続されていることを特徴とするフレックスリジッド配線基板。
【請求項2】
前記層間接続部は、スルーホールメッキ又はレーザビアで形成されている請求項1記載のフレックスリジッド配線基板。
【請求項3】
熱接着性シートを介してリジッド配線基板の積層単位でフレキシブル配線板を両側から挟み込んだ積層物を加熱加圧して一体化させる工程を含むフレックスリジッド配線基板の製造方法において、前記積層物は前記フレキシブル配線板の端部のみを挟み込む構造であることを特徴とするフレックスリジッド配線基板の製造方法。
【請求項4】
前記一体化を行った後、スルーホールメッキ又はレーザビアによって、前記端部に形成された配線パターンに対して前記リジッド部の配線パターンを導電接続する工程を更に含む請求項3記載のフレックスリジッド配線基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−294666(P2006−294666A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−109477(P2005−109477)
【出願日】平成17年4月6日(2005.4.6)
【出願人】(000103220)エルナー株式会社 (48)
【Fターム(参考)】