説明

プリント配線板の製造方法

【課題】 電子部品が実装される回路パターンを有するプリント配線板、特に、フレキシブルプリント回路において、耐マイグレーション性を向上させることができるプリント配線板の製造方法を提供する。
【解決手段】 絶縁材料からなる絶縁基材1aの表面上に、導電材料からなる回路パターン2を形成し、この回路パターン2の表面上に、熱酸化処理によって、酸化膜2aを形成する。この回路パターン2上に、接着剤層3aと絶縁層3bとからなるカバー層3をプレスキュアし、フレキシブルプリント回路とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品が実装される回路パターンを有するプリント配線板の製造方法に関し、特に、フレキシブルプリント回路における耐マイグレーション性の向上に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、プリント配線板を用いた電子回路として、FPC(フレキシブルプリント回路)が知られている。このFPCは、図3に示すように、概略、CCL(Copper Clad Lamination:銅貼積層板)101をエッチング処理することにより、回路パターン102を形成し、次に、この回路パターン付きCCL201上に、カバー層(CL:Cover Lay)103を圧着(プレスキュア)することによって作製される。
【0003】
前記CCLは、ポリイミド樹脂の如き絶縁材料からなる絶縁基材101aと、この絶縁基材101aの表面上に形成され回路パターン102となる銅の如き導電材料層101bとの二層構造となっている。このCCL101は、絶縁基材101a・導電材料層101b間に接着剤層(図3において図示せず)が介在された三層構造のものも使用される。
【0004】
カバー層103は、接着剤層103aと、ポリイミド樹脂の如き絶縁材料からなる絶縁層103bとから構成されている。このカバー層103は、接着剤層103a側を回路パターン102側として、回路パターン付きCCL201に接合される。
【0005】
すなわち、このフレキシブルプリント回路は、絶縁基材101a及び絶縁層103bの間に接着剤層103aが挟まれ、この接着剤層103a中に回路パターン102が埋設された状態に構成される。
【0006】
さらに、このようなフレキシブルプリント回路の両面側に、リジットプリント回路(RPC)を積層させて接合することによって、多層プリント回路であるリジット−フレックスプリント回路(R−F)が作製されている。
【0007】
ところで、このようなプリント配線板においては、回路パターン102に対する電圧の印加及び接着剤層103a中における水分の存在により、イオンマイグレーション(以下、「マイグレーション」という。)が発生することが問題となる。
【0008】
このマイグレーションとは、回路パターン102をなす金属材料が、絶縁層である接着剤層103a中に移行する現象である。すなわち、回路パターン102における+極において、この回路パターン102をなす金属材料が接着剤層103a中にイオン化し、イオン化した金属材料が、回路パターン102における−極において析出する。この析出現象が進展し、析出した金属材料が+極にまで達すると、回路パターン102における+極と−極との間の絶縁破壊が起こる。
【0009】
特に、リジット−フレックスプリント回路において内層部分となるフレキシブルプリント回路においては、フレキシブルプリント回路を単体で用いる場合よりも、析出の進展が早いことが問題となっている。
【0010】
従来、リジット−フレックスプリント回路の如き多層プリント回路においては、特許文献1及び特許文献2に記載されているように、回路パターン102と接着剤層103aとの密着性の向上や、耐マイグレーション性の向上などの目的で、回路パターン102の表面部に酸化膜を形成することが提案されている。この酸化膜の存在により、回路パターン102における+極での金属材料の溶解が抑制され、マイグレーションを抑制することができると考えられる。
【0011】
このような酸化膜は、回路パターン付きCCL201にカバー層103を圧着する前に、亜塩素酸ナトリウムや水酸化ナトリウムなどを含むアルカリ性水溶液中に、回路パターン付きCCL201を浸漬することによって作製されている。
【特許文献1】特開平8−204336号公報
【特許文献2】特開平11−354923号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかし、前述のようなフレキシブルプリント回路においては、回路パターン付きCCL201をアルカリ性水溶液中に浸漬すると、このアルカリ性水溶液のpHによっては、ポリイミド樹脂などからなる回路パターン付きCCL201の絶縁基材101aや、前記絶縁基材101a・回路パターン102間の接着剤層(図3において図示せず)がアルカリ性水溶液によって冒されてしまう可能性がある。これら絶縁基材101aや接着剤層が冒されてしまうと、これら絶縁基材101a等に穴が空いてしまうなどの虞れがある。したがって、これら絶縁基材101a等がアルカリ性水溶液によって冒されてしまうと、フレキシブルプリント回路を構成することができなくなってしまう。
【0013】
また、アルカリ性水溶液によって回路パターン表面の酸化を行った場合には、マイグレーションを十分に抑制することができないことがわかった。
【0014】
したがって、フレキシブルプリント回路においては、回路パターン102の表面部の酸化膜を、アルカリ性水溶液を用いて形成することは適当ではない。
【0015】
そこで、本発明の目的は、電子部品が実装される回路パターンを有するプリント配線板、特に、フレキシブルプリント回路において、絶縁基材や接着剤層を冒すことなく、耐マイグレーション性を向上させることができるプリント配線板の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは、CCLにおいて回路パターンを形成した後に、この回路パターンの表面部において、熱酸化によって酸化膜を形成することより、前記課題が解決できるという知見を得た。
【0017】
熱酸化によって酸化膜を形成すれぱ、CCLにおける絶縁基材や、この絶縁基材及び回路パターンの間の接着剤層が冒されることがなく、回路パターンの表面部に良好な酸化膜を形成することができる。
【0018】
そして、このような酸化膜の存在によって、回路パターンにおける+極での金属材料の溶解が抑制され、マイグレーションが抑制されると考えられる。
【0019】
絶縁基材上に回路パターンが形成された二層構造のCCLにおいては、熱酸化を行うための温度は、140°C乃至300°C、処理時間は、30分以上が望ましい。140°C以下、または、30分未満の処理では、十分な酸化膜が形成されず、300°Cより高温の処理では、ポリイミドなどからなる絶縁基材の熱劣化により、フレキシブルプリント回路が製造できなくなってしまうからである。
【0020】
また、絶縁基材上に接着剤層を介して回路パターンが形成された三層構造のCCLにおいては、熱酸化を行うための温度は、140°C乃至200°C、処理時間は、30分以上が望ましい。140°C以下、または、30分未満の処理では、十分な酸化膜が形成されず、200°Cより高温の処理では、絶縁基材と回路パターンとの間の接着剤層の熱劣化が生じ、また、接着剤層中の難燃剤が反応することによって、カバー層の接着剤層に対する密着性の低下が起こってしまうからである。
【0021】
したがって、本発明に係るプリント配線板の製造方法は、以下の構成の少なくとも一つを備えるものである。
【0022】
〔構成1〕
本発明に係るプリント配線板の製造方法は、絶縁材料からなる絶縁基材の表面上に導電材料からなる回路パターンを形成し、回路パターンの表面上に熱酸化処理によって酸化膜を形成することを特徴とするものである。
【0023】
〔構成2〕
本発明は、構成1を有するプリント配線板の製造方法において、酸化膜を形成するための熱酸化処理は、回路パターンを140°C乃至300°Cに加熱することによって行うことを特徴とするものである。
【0024】
〔構成3〕
本発明に係るプリント配線板の製造方法は、絶縁材料からなる絶縁基材の表面上に接着剤層を形成し、この接着剤層上に導電材料からなる回路パターンを形成し、この回路パターンの表面上に熱酸化処理によって酸化膜を形成することを特徴とするものである。
【0025】
〔構成4〕
本発明は、構成3を有するプリント配線板の製造方法において、酸化膜を形成するための熱酸化処理は、回路パターンを140°C乃至200°Cに加熱することによって行うことを特徴とするものである。
【0026】
〔構成5〕
本発明は、構成1乃至構成4のいずれか一を有するプリント配線板の製造方法において、酸化膜が形成された回路パターンの表面上に、接着剤層及び絶縁層からなるカバー層を形成することを特徴とするものである。
【0027】
〔構成6〕
本発明に係るプリント配線板の製造方法は、構成5記載のプリント配線板の製造方法により製造されたプリント配線板を内層として使用し、このプリント配線板の両面側にリジットプリント配線板を積層させて、リジット−フレックスプリント基板とすることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0028】
本発明に係るプリント配線板の製造方法においては、回路パターンの表面上に、熱酸化処理によって酸化膜が形成される。この酸化膜は、絶縁基材や接着剤層を破壊したり、これら絶縁基材や接着剤層の特性を損なうことなく、良好に形成することができる。
【0029】
すなわち、本発明は、電子部品が実装される回路パターンを有するプリント配線板、特に、フレキシブルプリント回路において、耐マイグレーション性を向上させることができるプリント配線板の製造方法を提供することができるものである。
【0030】
また、本発明は、プリント配線板、特に、フレキシブルプリント回路であって、耐マイグレーション性が向上されたプリント配線板を提供することができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照して説明する。
【0032】
この実施の形態は、本発明に係るプリント配線板の製造方法を、いわゆるフレキシブルプリント回路(FPC)の製造方法としたものである。
【0033】
図1は、本発明に係るプリント配線板の製造方法の第1の実施形態を示す工程図である。
【0034】
このプリント配線板の製造方法においては、図1に示すように、まず、CCL(Copper Clad Lamination:銅貼積層板)1をエッチング処理することにより、このCCL1において所定の回路パターン2を形成する。この回路パターン付きCCL31は、ポリイミド樹脂の如き絶縁材料からなる絶縁基材1aと、この絶縁基材1aの表面上に形成され回路パターン2となる銅の如き導電材料層1bとから、二層構造として構成されている。
【0035】
そして、回路パターン2の表面上に、熱酸化処理によって、酸化膜2aを形成する。この熱酸化処理は、回路パターン2を140°C乃至300°Cに30分以上に亘って加熱することによって行うことが望ましい。
【0036】
次に、この回路パターン付きCCL31上に、カバー層(CL:Cover Lay)3を圧着(プレスキュア)する。カバー層3は、接着剤層3aと、ポリイミド樹脂の如き絶縁材料からなる絶縁層3bとから構成されている。このカバー層3は、接着剤層3a側を回路パターン2側として、回路パターン付きCCL31に接合する。
【0037】
このようにして、絶縁基材1a及び絶縁層3bの間に接着剤層3aが挟まれ、この接着剤層3a中に回路パターン2が埋設された状態のフレキシブルプリント回路が構成される。
【0038】
さらに、このようなフレキシブルプリント回路の両面側に、リジットプリント回路(RPC)4,4を積層させて接合することによって、多層プリント回路であるリジット−フレックスプリント回路(R−F)が作製される。
【0039】
図2は、本発明に係るプリント配線板の製造方法の第2の実施形態を示す工程図である。
【0040】
このプリント配線板の製造方法においては、図2に示すように、ポリイミド樹脂の如き絶縁材料からなる絶縁基材11aと、この絶縁基材11aの表面上に形成され回路パターン12となる銅の如き導電材料層11bと、絶縁基材11a・導電材料層11b間に介在された接着剤層11cとから、三層構造として構成されたCCL11を用いて、フレキシブルプリント回路として構成する。
【0041】
この方法においても、CCL11をエッチング処理することにより、このCCL11において所定の回路パターン12を形成し、回路パターン付きCCL51を構成する。
【0042】
そして、回路パターン12の表面上に、熱酸化処理によって、酸化膜12aを形成する。この熱酸化処理は、回路パターン2を140°C乃至200°Cに30分以上に亘って加熱することによって行うことが望ましい。
【0043】
次に、この回路パターン付きCCL51上に、カバー層(CL:Cover Lay)3を圧着(プレスキュア)する。カバー層3は、接着剤層3aと、ポリイミド樹脂の如き絶縁材料からなる絶縁層3bとから構成されている。このカバー層3は、接着剤層3a側を回路パターン12側として、回路パターン付きCCL51に接合する。
【0044】
このようにして、絶縁基材11a及び絶縁層3bの間に接着剤層3aが挟まれ、この接着剤層3a中に回路パターン12が埋設された状態のフレキシブルプリント回路が構成される。
【0045】
さらに、このようなフレキシブルプリント回路の両面側に、リジットプリント回路4,4を積層させて接合することによって、多層プリント回路であるリジット−フレックスプリント回路が作製される。
【実施例】
【0046】
以下、本発明に係るプリント配線板の製造方法についての実施例及び比較例を挙げる。
【0047】
絶縁基材としては、ポリイミドフィルムである「カプトンEN」(商品名:東レデュポン社製)を使用した。
【0048】
〔二層構造CCLの実施例〕
ポリイミド上に接着剤を用いないで銅箔を積層した二層構造のCCLに、〔L/S〕=80/80μm(回路幅と回路間隔がともに80μm)の櫛歯回路パターンを形成した。その後、熱酸化処理として、以下の〔表1〕に示すように、実施例1乃至実施例6の各実施例ごとに異なる処理温度において異なる処理時間に亘って保持し、回路パターンの表面部に酸化膜を形成した。
【0049】
これら各実施例のCCLにカバー層をプレスキュアすることによって、フレキシブルプリント回路を作成した。カバー層としては、実験的に、マイグレーションが起こり易い接着剤からなるものを使用した。
【0050】
各実施例について、85°C、85%RHで50Vの電圧を印加し、250時間後の絶縁抵抗値と、マイグレーション発生の有無を調べた。なお、マイグレーション発生の有無は、顕微鏡により、フレキシブルプリント回路の回路パターンにおける金属の析出の有無を観察することによって判断した。
【0051】
これらの結果を以下の〔表1〕中の「絶縁抵抗(Ω)」の欄及び「マイグレーション」の欄に示す。
【0052】
なお、85°C、85%RHで50Vの電圧を250時間印加したときの絶縁抵抗値を基準とした判定は、一応の目安であり、実際の使用条件は、必ずしもこの基準に一致するものではない。
【0053】
また、これら各実施例のフレキシブルプリント回路の両面側にリジットプリント回路を積層させてリジット−フレックスプリント回路とし、85°C、85%RHで50Vの電圧を印加し、抵抗値が10Ω以上を維持する時間を調べた。
【0054】
これらの結果を以下の〔表1〕中の「R−F抵抗維持時間(h)」の欄に示す。
【表1】

【0055】
これら各実施例においては、250時間後の絶縁抵抗値は十分に高い値となっており、マイグレーションの発生は認められず、また、リジット−フレックスプリント回路として構成した場合においても、抵抗値が10Ω以上を維持する時間として十分に長い時間となっている。
【0056】
〔二層構造CCLの比較例〕
前述の二層構造CCLの実施例と同様に、ポリイミド上に接着剤を用いないで銅箔を積層した二層構造のCCLに、〔L/S〕=80/80μmの回路パターンを形成した。
【0057】
その後、比較例1については、熱酸化処理を行わず、比較例2乃至比較例6については、熱酸化処理として、前記〔表1〕に示すように、各比較例ごとに異なる処理温度において異なる処理時間に亘って保持し、回路パターンの表面部に酸化膜を形成した。
【0058】
これら各比較例のCCLにカバー層をプレスキュアすることによって、フレキシブルプリント回路を作成した。
【0059】
各比較例について、85°C、85%RHで50Vの電圧を印加し、250時間後の絶縁抵抗値と、マイグレーション発生の有無を調べた(なお、マイグレーション発生の有無は、顕微鏡により、フレキシブルプリント回路の回路パターンにおける金属の析出の有無を観察することによって判断した)。
【0060】
これらの結果を以下の〔表1〕中の「絶縁抵抗(Ω)」の欄及び「マイグレーション」の欄に示す。
【0061】
また、これら各比較例のフレキシブルプリント回路の両面側にリジットプリント回路を積層させてリジット−フレックスプリント回路とし、85°C、85%RHで50Vの電圧を印加し、抵抗値が10Ω以上を維持する時間を調べた。
【0062】
これらの結果を以下の〔表1〕中の「R−F抵抗維持時間(h)」の欄に示す。
【0063】
これら各比較例においては、250時間後の絶縁抵抗値が十分に高い値とはいえず、マイグレーションの発生が認められ、また、リジット−フレックスプリント回路として構成した場合においては、抵抗値が10Ω以上を維持する時間として十分な時間が確保されなかった。
【0064】
すなわち、本発明においては、プリント配線板、特に、フレキシブルプリント回路において、耐マイグレーション性を向上させることができることが確認された。
【0065】
〔三層構造CCLの実施例〕
ポリイミド上に接着剤を介して銅箔を積層させた三層構造のCCLに、〔L/S〕=80/80μm(回路幅と回路間隔がともに80μm)の回路パターンを形成した。その後、熱酸化処理として、以下の〔表2〕に示すように、実施例1乃至実施例4の各実施例ごとに異なる処理温度において異なる処理時間に亘って保持し、回路パターンの表面部に酸化膜を形成した。
【0066】
これら各実施例のCCLにカバー層をプレスキュアすることによって、フレキシブルプリント回路を作成した。カバー層としては、実験的に、マイグレーションが起こり易い接着剤からなるものを使用した。
【0067】
各実施例について、85°C、85%RHで50Vの電圧を印加し、250時間後の絶縁抵抗値と、マイグレーション発生の有無を調べた(なお、マイグレーション発生の有無は、顕微鏡により、フレキシブルプリント回路の回路パターンにおける金属の析出の有無を観察することによって判断した)。
【0068】
これらの結果を以下の〔表2〕中の「絶縁抵抗(Ω)」の欄及び「マイグレーション」の欄に示す。
【0069】
なお、85°C、85%RHで50Vの電圧を250時間印加したときの絶縁抵抗値を基準とした判定は、一応の目安であり、実際の使用条件は、必ずしもこの基準に一致するものではない。
【0070】
また、これら各実施例のフレキシブルプリント回路の両面側にリジットプリント回路を積層させてリジット−フレックスプリント回路とし、85°C、85%RHで50Vの電圧を印加し、抵抗値が10Ω以上を維持する時間を調べた。
【0071】
これらの結果を以下の〔表2〕中の「R−F抵抗維持時間(h)」の欄に示す。
【表2】

【0072】
これら各実施例においては、250時間後の絶縁抵抗値は十分に高い値となっており、マイグレーションの発生は認められず、また、リジット−フレックスプリント回路として構成した場合においても、抵抗値が10Ω以上を維持する時間として十分に長い時間となっている。
【0073】
〔三層構造CCLの比較例〕
前述の三層構造CCLの実施例と同様に、ポリイミド上に接着剤を介して銅箔を積層させた三層構造のCCLに、〔L/S〕=80/80μmの回路パターンを形成した。
【0074】
その後、比較例1については、熱酸化処理を行わず、比較例2乃至比較例5については、熱酸化処理として、前記〔表2〕に示すように、各比較例ごとに異なる処理温度において異なる処理時間に亘って保持し、回路パターンの表面部に酸化膜を形成した。
【0075】
これら各比較例のCCLにカバー層をプレスキュアすることによって、フレキシブルプリント回路を作成した。
【0076】
各比較例について、85°C、85%RHで50Vの電圧を印加し、250時間後の絶縁抵抗値と、マイグレーション発生の有無を調べた(なお、マイグレーション発生の有無は、顕微鏡により、フレキシブルプリント回路の回路パターンにおける金属の析出の有無を観察することによって判断した)。
【0077】
これらの結果を以下の〔表2〕中の「絶縁抵抗(Ω)」の欄及び「マイグレーション」の欄に示す。
【0078】
また、これら各比較例のフレキシブルプリント回路の両面側にリジットプリント回路を積層させてリジット−フレックスプリント回路とし、85°C、85%RHで50Vの電圧を印加し、抵抗値が10Ω以上を維持する時間を調べた。
【0079】
これらの結果を以下の〔表2〕中の「R−F抵抗維持時間(h)」の欄に示す。
【0080】
これら各比較例においては、250時間後の絶縁抵抗値が十分に高い値とはいえず、マイグレーションの発生が認められ、また、リジット−フレックスプリント回路として構成した場合においては、抵抗値が10Ω以上を維持する時間として十分な時間が確保されなかった。
【0081】
すなわち、本発明においては、プリント配線板、特に、フレキシブルプリント回路において、耐マイグレーション性を向上させることができることが確認された。
【0082】
〔アルカリ性水溶液によって回路パターン表面の酸化を行った場合〕
次に、アルカリ性水溶液を用いて回路パターンの表面を酸化させた場合に、マイグレーションが抑制されるかどうかを確認した。
【0083】
処理条件としては、薬液として、〔NaClO〕;15g/l、〔NaOH〕;5g/lのアルカリ性水溶液を用い、処理温度を85°Cとして、1分間の処理を行った。
【0084】
前述の実施例と同様に、85°C、85%RHで50Vの電圧を印加し、250時間後の絶縁抵抗値を調べたところ、3.2×10Ωであった。また、マイグレーション発生の有無を調べたところ、マイグレーションが発生していた。
【0085】
また、これら各比較例のフレキシブルプリント回路の両面側にリジットプリント回路を積層させてリジット−フレックスプリント回路とし、85°C、85%RHで50Vの電圧を印加し、抵抗値が10Ω以上を維持する時間を調べたところ、10.25時間であった。
【0086】
すなわち、アルカリ性水溶液を用いて回路パターンの表面を酸化させても、十分にマイグレーションを抑制することができないことがわかった。これは、アルカリ性水溶液による酸化では、緻密な酸化膜が形成されないためであると思われる。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】本発明に係るプリント配線板の製造方法の第1の実施形態を示す工程図である。
【図2】本発明に係るプリント配線板の製造方法の第2の実施形態を示す工程図である。
【図3】従来のプリント配線板の製造方法を示す工程図である。
【符号の説明】
【0088】
1,11 CCL
1a,11a 絶縁基材
1b,11b 導電材料層
11c 接着剤層
2,12 回路パターン
2a,12a 酸化膜
3 カバー層
3a 接着剤層
3b 絶縁層
4 リジットプリント回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁材料からなる絶縁基材の表面上に、導電材料からなる回路パターンを形成し、
前記回路パターンの表面上に、熱酸化処理によって、酸化膜を形成する
ことを特徴とするプリント配線板の製造方法。
【請求項2】
前記酸化膜を形成するための熱酸化処理は、前記回路パターンを140°C乃至300°Cに加熱することによって行う
ことを特徴とする請求項1記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項3】
絶縁材料からなる絶縁基材の表面上に、接着剤層を形成し、
前記接着剤層上に、導電材料からなる回路パターンを形成し、
前記回路パターンの表面上に、熱酸化処理によって、酸化膜を形成する
ことを特徴とするプリント配線板の製造方法。
【請求項4】
前記酸化膜を形成するための熱酸化処理は、前記回路パターンを140°C乃至200°Cに加熱することによって行う
ことを特徴とする請求項3記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項5】
前記酸化膜が形成された前記回路パターンの表面上に、接着剤層及び絶縁層からなるカバー層を形成する
ことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一に記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項6】
請求項5記載のプリント配線板の製造方法により製造されたプリント配線板を内層として使用し、
前記プリント配線板の両面側にリジットプリント配線板を積層させて、リジット−フレックスプリント基板とする
ことを特徴とするプリント配線板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−12987(P2006−12987A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−185243(P2004−185243)
【出願日】平成16年6月23日(2004.6.23)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】