半導体光集積素子
【課題】高精度の微細加工をしなくても容易に作製することが可能な半導体光集積素子を提供すること。
【解決手段】本発明に係る半導体光集積素子は、半導体基板上に下部クラッド層3、下部コア層4、中間クラッド層5、上部コア層6、及び上部クラッド層7がこの順に積層されており、第一領域、第二領域、及び第三領域に亘って、下部クラッド層3、下部コア層4、中間クラッド層5、上部コア層6、及び上部クラッド層7がそれぞれ形成されており、第一領域及び第三領域における中間クラッド層5の厚みD1が、第二領域における中間クラッド層5の厚みD2と異なることを特徴とする。
【解決手段】本発明に係る半導体光集積素子は、半導体基板上に下部クラッド層3、下部コア層4、中間クラッド層5、上部コア層6、及び上部クラッド層7がこの順に積層されており、第一領域、第二領域、及び第三領域に亘って、下部クラッド層3、下部コア層4、中間クラッド層5、上部コア層6、及び上部クラッド層7がそれぞれ形成されており、第一領域及び第三領域における中間クラッド層5の厚みD1が、第二領域における中間クラッド層5の厚みD2と異なることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体光集積素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体光集積素子には、単一モードの導波路を複数の導波路に分岐させる、あるいは、複数の導波路の光を一つの導波路に合流させる合分岐の機能を活用するものがある。このような半導体光集積素子の代表的なものとして、マッハツェンダ型変調器が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載のマッハツェンダ型変調器は、第一方向性結合器と第二方向性結合器との間に、位相シフト器が設けられた構造を有する。位相シフト器は、水平方向に並んで配置された二つの導波路からなる。第一方向性結合器は、位相シフト器の入力側に設けられており、光を分岐する機能を有する。第二方向性結合器は、位相シフト器の出力側に設けられており、光を結合する機能を有する。また、特許文献1に記載のマッハツェンダ型変調器には、ニオブ酸リチウム基板が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−250904号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のマッハツェンダ型変調器において、良好な特性を得るためには、水平方向に並んで配置される二つの導波路の分岐比が正確に制御されている必要がある。よって、高精度の微細加工が必要とされていた。また、小型化の観点から、アクティブデバイスとの集積が可能な化合物半導体材料を半導体光集積素子に用いることが望まれている。化合物半導体材料は、石英やニオブ酸リチウムなどの材料に比べて屈折率が高いため、化合物半導体材料を用いた場合、単一モード光導波路の導波路幅等のサイズを小さくすることが可能であり、小型化できる。しかし、化合物半導体材料で光導波路を作製する場合、高精度の微細加工が必要とされる。さらに、化合物半導体材料では、石英やニオブ酸リチウムなどの材料に比べて、光導波路を構成するコアとクラッドとの屈折率差を大きくできるため、光導波路内への光閉じ込めを大きくすることができる。しかし、マッハツェンダ型変調器などのように、複数の光導波路を光結合させるための光結合器を有する光導波路素子においては、複数の光導波路間の光結合を実現するために、石英やニオブ酸リチウムなどの材料を用いた場合に比べて、1桁程度小さい間隔で2つの光導波路を配置し、光結合する必要がある。光結合の状態や素子特性は、この2つの光導波路の間隔によって強く影響を受けるため、このような光導波路素子の作製には、さらに高精度の微細加工が必要とされるため、作製が困難であるという問題があった。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、高精度の微細加工をしなくても容易に作製することが可能な半導体光集積素子を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の課題を解決するため、本発明の半導体光集積素子は、半導体基板上に第一クラッド層、第一コア層、第二クラッド層、第二コア層、及び第三クラッド層がこの順に積層されており、第一領域、第二領域、及び第三領域に亘って、第一クラッド層、第一コア層、第二クラッド層、第二コア層、及び第三クラッド層が連結して形成されており、第一領域及び第三領域における第二クラッド層の厚みが、第二領域における第二クラッド層の厚みと異なることを特徴とする。
【0008】
本発明の半導体光集積素子は、第一コア層と第二コア層とが、水平方向に並んで配置された構造ではなく、垂直方向に積層された構造を有している。このような積層構造は、半導体基板上に第一クラッド層、第一コア層、第二クラッド層、及び第三コア層を順次、例えば、エピタキシャル成長させることにより容易に得られる。そして、第一領域及び第三領域における第二クラッド層の厚みが、第二領域における第二クラッド層の厚みと異なることにより、第一領域、第二領域、及び第三領域の機能を分離することができる。水平方向に並んで配置される2つのコア層の分岐比の制御と比較して、垂直方向に積層される第一コア層及び第二コア層の厚み制御は簡単にできる。このため、第一コア層と第二コア層との間隔をより高精度に微細加工しなくても、容易に作製することが可能な半導体光集積素子を提供することができる。
【0009】
また、第一領域には、第一クラッド層、第一コア層、第二クラッド層、第二コア層、及び第三クラッド層を有する第一方向性結合器が配置されており、第二領域には、第一クラッド層、第一コア層、第二クラッド層、第二コア層、及び第三クラッド層を有する光機能素子が配置されており、第三領域には、第一クラッド層、第一コア層、第二クラッド層、第二コア層、及び第三クラッド層を有する第二方向性結合器が配置されていることが好ましい。水平方向に並んで配置されるコア層の分岐比の制御と比較して、垂直方向に積層される2つのコア層における厚みの制御は簡単である。よって、第一方向性結合器における第一コア層及び第二コア層を含む導波路と、光機能素子における第一コア層及び第二コア層を含む導波路と、第二方向性結合器における第一コア層及び第二コア層を含む導波路との厚み制御を行うことにより、第一領域、第二領域、及び第三領域との機能を容易に分離することができる。このように、第一コア層と第二コア層との間隔をより高精度に微細加工しなくても、容易に作製することが可能な半導体光集積素子を提供することができる。
【0010】
また、第一領域から第二領域を介して第三領域へ光を移す場合、第一領域に存在する第一導波路の長さは、第一領域における第一コア層と第二コア層との第一結合長の10%以上であり、第二領域に存在する第二導波路の長さは、第二領域における第一コア層と第二コア層との第二結合長の10%以下であり、第三領域に存在する第三導波路の長さは、第三領域における第一コア層と第二コア層との第三結合長の10%以上であることが好ましい。第一導波路の長さが第一結合長の10%以上であることにより、第一領域を、光を分岐または結合する機能を有する光導波路として実用上十分に使用することができる。また、第二の領域における第一コア層と第二コア層との光結合がゼロでない場合には信号光の消光比が劣化するが、第二導波路の長さが、第二結合長の10%以下であることにより、第二の領域を光が進行する間に他方のコア層に移行する光の強度を10%以内に抑制することが出来る。この結果、第二の領域における第一コア層と第二コア層との光結合による信号光の消光比の劣化の影響を小さくすることができる。例えば、10dB以上の消光比を確保することが出来る。また、第三導波路の長さが第三結合長の10%以上であることにより、第三領域を、光を分岐または結合する機能を有する光導波路として実用上十分に使用することができる。ここで「結合長」とは、片方のコア層から入射した光が当該コア層中を伝搬する間に、他方のコア層に完全に乗り移るのに要する最短の長さをいう。
【0011】
また、第三クラッド層上に設けられたコンタクト層、コンタクト層上に設けられた第一電極、及び基板の裏面に設けられた第二電極を更に備え、半導体基板、第一クラッド層、及び第二クラッド層は第一導電型を有し、第三クラッド層及びコンタクト層は、第一導電型とは異なる第二導電型を有し、第一コア層は、アンドープまたは第一導電型の量子井戸層を有し、第二コア層は、アンドープの量子井戸層を有しても良い。これにより、第一導電型の第二クラッド層、アンドープの第二コア層、及び第二導電型の第三クラッド層からなるPIN構造が存在することとなる。このようなPIN構造に、第一電極及び第二電極を用いて逆バイアスを加えると、第二コア層の屈折率が変化する。従って、光を合波させるときの干渉条件を変えることができ、半導体光集積素子を、光のオン・オフを制御することが可能なマッハツェンダ型変調器として機能させることができる。
【0012】
また、第三クラッド層上に設けられたコンタクト層、コンタクト層上に設けられた第一電極、及び基板の裏面に設けられた第二電極を更に備え、半導体基板及び第一クラッド層は第一導電型を有し、第二クラッド層、第三クラッド層、及びコンタクト層は、第一導電型とは異なる第二導電型を有し、第一コア層は、アンドープの量子井戸層を有し、第二コア層は、アンドープまたは第二導電型の量子井戸層を有しても良い。これにより、第一導電型の第一クラッド層、アンドープの第一コア層、及び第二導電型の第二クラッド層からなるPIN構造が存在することとなる。このようなPIN構造に、第一電極及び第二電極を用いて逆バイアスを加えると、第一コア層の屈折率が変化する。従って、光を合波させるときの干渉条件を変えることができ、半導体光集積素子を、光のオン・オフを制御することが可能なマッハツェンダ型変調器として機能させることができる。
【0013】
また、第二領域において、第一コア層の幅が第二コア層の幅と異なっていても良い。このように、第一コア層と第二コア層を非対称な構造とすることにより、導波路長が同じなのにもかかわらず、位相シフトを生じさせることができる。よって、半導体光集積素子の無バイアス時の動作を制御することが出来る。
【0014】
また、第一クラッド層、第一コア層、第二クラッド層、第二コア層、及び第三クラッド層は、化合物半導体からなることが好ましい。半導体光素子に化合物半導体を用いる場合、水平方向に並んで配置される2つのコア層の間隔の制御と比較して、垂直方向に積層される第一コア層及び第二コア層の厚み制御は簡単である。従って、化合物半導体からなる半導体光素子をアクティブデバイスと集積することができ、小型化を達成することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、垂直方向に積層される第一コア層、第二クラッド層、及び第二コア層の厚みの制御を行うことにより、第一領域、第二領域、及び第三領域の機能を容易に分離することができる。従って、高精度の微細加工をしなくても容易に作製することが可能な半導体光集積素子が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本発明に係る半導体光集積素子を示す斜視図である。
【図2】図2は、図1におけるII−II線に沿った断面図である。
【図3】図3、図1におけるIII−III線に沿った断面図である。
【図4】図4は、図1におけるIV−IV線に沿った断面図である。
【図5】図5は、本発明に係る半導体光集積素子を構成する各層の厚みと結合長を示す表である。
【図6】図6は、半導体基板上に選択成長用マスクを配置した状態を示す上面図である。
【図7】図7(a)は、図6におけるVII−VIIに沿った断面図である。図7(b)は、選択成長用マスクを用いて各層を成膜した状態を示す断面図である。
【図8】図8は、半導体基板上に選択成長用マスク及びメサ用マスクを配置した状態を示す上面図である。
【図9】図9は、図8におけるIX−IXに沿った断面図である。
【図10】図10は、選択成長用マスク及びメサ用マスクを用いてエッチングした状態を示す断面図である。
【図11】図11は、メサ部及び半導体基板上に保護膜が形成された状態を示す上面図である。
【図12】図12は、保護膜に上部電極形成用の開口部が形成された状態を示す上面図である。
【図13】図13は、図12におけるXIII−XIII線に沿った断面図である。
【図14】図14は、半導体基板上に上部電極が形成された状態を示す上面図である。
【図15】図15は、本発明に係る半導体光集積素子の変形例を示す断面図である。
【図16】図16は、本発明に係る半導体光集積素子の製造方法の変形例に用いられる選択性成長用マスクを半導体基板上に配置した状態を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0018】
本発明に係る半導体光集積素子は、方向性結合器を有する光機能デバイスとして機能し、マッハツェンダ型変調器に適用することができる。図1は、本発明に係る半導体光集積素子を示す斜視図である。図2は、図1におけるII−II線に沿った断面図である。図3は、図1におけるIII−III線に沿った断面図である。図4は、図1におけるIV−IV線に沿った断面図である。
【0019】
図1及び図2に示すように、半導体光集積素子1は、一端S1側から他端S2側へ向かって順次連結するように形成された入力導波路IN、第一遷移領域T1、第一方向性結合器C1、第二遷移領域T2、光機能素子L、第三遷移領域T3、第二方向性結合器C2、第四遷移領域T4、及び出力導波路OUTを備えている。
【0020】
図2に示すように、入力導波路IN、第一遷移領域T1、第一方向性結合器C1、第二遷移領域T2、光機能素子L、第三遷移領域T3、第二方向性結合器C2、第四遷移領域T4、及び出力導波路OUTには、半導体基板S上に、下部クラッド層(第一クラッド層)3、下部コア層(第一コア層)4、中間クラッド層(第二クラッド層)5、上部コア層(第二コア層)6、上部クラッド層(第三クラッド層)7、コンタクト層8、及び絶縁層Bがこの順に積層されている。
【0021】
また、下部クラッド層3、下部コア層4、中間クラッド層5、上部コア層6、上部クラッド層7、コンタクト層8は、入力導波路IN、第一遷移領域T1、第一方向性結合器C1、第二遷移領域T2、光機能素子L、第三遷移領域T3、第二方向性結合器C2、第四遷移領域T4、及び出力導波路OUTの形成されている各領域に亘って連結して形成されている。
【0022】
図2に示すように、第一遷移領域T1は、入力導波路IN側から第一方向性結合器C1側へ向かって厚みが減少するように形成されている。第二遷移領域T2は、第一方向性結合器C1側から光機能素子L側へ向かって厚みが増加するように形成されている。第三遷移領域T3は、光機能素子L側から第二方向性結合器C2側へ向かって厚みが減少するように形成されている。第四遷移領域T4は、第二方向性結合器C2側から出力導波路OUT側へ向かって厚みが増加するように形成されている。
【0023】
半導体光集積素子1は、第一領域、第二領域、及び第三領域を有する。第一領域には、第一方向性結合器C1が配置されている。第二領域には、光機能素子Lが配置されている。第三領域には、第二方向性結合器C2が配置されている。図2に示すように、第一方向性結合器C1(第一領域)又は第二方向性結合器C2(第三領域)における中間クラッド層5の積層方向の厚みD1は、光機能素子L(第二領域)における中間クラッド層5の積層方向の厚みD2と異なる。第一方向性結合器C1又は第二方向性結合器C2における中間クラッド層5の積層方向の厚みD1は、光機能素子Lにおける中間クラッド層5の積層方向の厚みD2よりも小さい。
【0024】
図3に第一方向性結合器C1におけるY−Z断面を示すが、第二方向性結合器C2におけるY−Z断面も図3と同様の構造となる。図4は、光機能素子LにおけるY−Z断面を示す。図3または図4に示すように、下部クラッド層3、下部コア層4、中間クラッド層5、上部コア層6、上部クラッド層7、及びコンタクト層8の導波路幅W1(Y方向における長さ)は、入力導波路IN、第一遷移領域T1、第一方向性結合器C1、第二遷移領域T2、光機能素子L、第三遷移領域T3、第二方向性結合器C2、第四遷移領域T4、及び出力導波路OUTの形成されている各領域に亘って一定である。例えば、当該導波路幅W1として1.5μmとすることができる。
【0025】
図5に、半導体光集積素子1を構成する各層の厚みの一例を示す。図5の例では、第一方向性結合器C1及び第二方向性結合器C2における下部コア層4の厚さ(120nm)は、入力導波路IN、光機能素子L、及び出力導波路OUTにおける下部コア層4の厚さ(240nm)の半分である。第一方向性結合器C1及び第二方向性結合器C2における中間クラッド層5の厚さ(1700nm)は、入力導波路IN、光機能素子L、及び出力導波路OUTにおける中間クラッド層5の厚さ(3400nm)の半分である。第一方向性結合器C1及び第二方向性結合器C2における上部コア層6の厚さ(120nm)は、入力導波路IN、光機能素子L、及び出力導波路OUTにおける上部コア層6の厚さ(240nm)の半分である。第一方向性結合器C1及び第二方向性結合器C2における上部クラッド層7の厚さ(1500nm)は、入力導波路IN、光機能素子L、及び出力導波路OUTにおける上部クラッド層7の厚さ(3000nm)の半分である。
【0026】
図5の例では、第一方向性結合器C1における結合長(第一結合長)及び第二方向性結合器C2における結合長(第三結合長)は153μmである。対して、入力導波路IN、光機能素子L、及び出力導波路OUTにおける結合長(第二結合長)は39400μmである。ここで「結合長」とは、片方のコア層から入射した光が当該コア層中を伝搬する間に、他方のコア層に完全に乗り移るのに要する最短の長さをいう。なお、第一結合長、第二結合長、及び第三結合長は、波長1.3μmの光を想定して算出した値である。
【0027】
図2に示す入力導波路IN及び出力導波路OUTの素子長N1,N9は、例えば、それぞれ250μmとすることができる。第一〜第四遷移領域T1〜T4の素子長N2,N4,N6,N8は、例えば、それぞれ20μmとすることができる。第一方向性結合器C1及び第二方向性結合器C2の素子長N3,N7は、例えば、それぞれ70μmとすることができる。光機能素子Lの素子長N5は、例えば、1000μmとすることができる。
【0028】
光を分岐または結合させる観点から、第一方向性結合器C1(第一領域)の素子長(第一導波路の長さ)N3は、第一方向性結合器C1における下部コア層4と上部コア層6との第一結合長の10%以上とすることができる。これによって、第一領域において、実用上必要な下部コア層4と上部コア層6との光結合を得ることができる。より好適には、第一方向性結合器C1(第一領域)の素子長(第一導波路の長さ)N3は、第一方向性結合器C1における下部コア層4と上部コア層6との第一結合長の約1/2であることが望ましい。第一導波路の長さを第一結合長の約1/2とすることにより、例えば下部コア層4から導入された光を下部コア層4と上部コア層6とにほぼ同じ強度比で分岐することが出来る。また、第二方向性結合器C2(第三領域)の素子長(第三導波路の長さ)N7は、第二方向性結合器C2における下部コア層4と上部コア層6との第三結合長の10%以上とすることができる。これによって、第三領域において、実用上必要な下部コア層4と上部コア層6との光結合を得ることができる。より好適には、第二方向性結合器C2(第三領域)の素子長(第三導波路の長さ)N7は、第二方向性結合器C2における下部コア層4と上部コア層6との第三結合長の約1/2であることが望ましい。第三導波路の長さを第三結合長の約1/2とすることにより、下部コア層4と上部コア層6との光を効果的に干渉させて、一つのコア層に光を集光するスイッチ動作をさせることが出来る。例えば、第一領域に存在する第一導波路の長さを70μmとすると、遷移領域T1,T2における結合とあわせて、方向性結合器としての実効的な長さを、第一結合長の長さ(153μm)の約1/2とすることができる。同様に、例えば、第三領域に存在する第三導波路の長さを70μmとすることにより、方向性結合器の実効的な長さを第三結合長の長さ(153μm)の約1/2とすることができる。
【0029】
光を分岐または結合させない観点から、光機能素子L(第二領域)の素子長(第二導波路の長さ)N5は、光機能素子Lにおける下部コア層4と上部コア層6との第二結合長の10%以下であることが望ましい。第二導波路の長さが第二結合長の10%以下であることにより、第二の領域を光が進行する間に他方のコア層に移行する光の強度を10%以内に抑制することが出来る。第二の領域における下部コア層4と上部コア層6との光結合がゼロでない場合には、信号光の消光比が劣化するが、第二領域の長さが第二領域における結合長の10%以下であれば、この第二領域における下部コア層4と上部コア層6との光結合による消光比の劣化の影響は小さく、10dB以上の消光比を確保することが出来る。例えば、第二領域の中間クラッド層5の厚さを3400nmとした場合、理論上求められる結合長は39400μmとなる。このため、光機能素子Lの長さを一般的に用いられる、例えば、1000μmとしても、第二導波路の長さは、上記の第二結合長に対して十分短い長さにすることができる。
【0030】
半導体基板S、下部クラッド層3、下部コア層4、中間クラッド層5、上部コア層6、上部クラッド層7、及びコンタクト層8は、化合物半導体からなる。具体的には、半導体基板Sはn型InP基板である。下部クラッド層3は、n型InPから構成されている。下部コア層4は、多重量子井戸(MQW: Multiple Quantum Well)構造を有している。下部コア層4のMQW構造は、GaInAsP半導体からなるバリア層と、アンドープまたはn型GaInAsP半導体からなる量子井戸層とが交互に10周期積層された構造の両側に、SCH(Separate ConfinementHeterostructure)層が形成されたものである。例えば、バリア層の厚さを6nm、量子井戸層の厚さを4nmとすることができる。
【0031】
中間クラッド層5はn型InPから構成されている。上部コア層6は、MQW構造を有している。上部コア層6のMQW構造は、GaInAsP半導体からなるバリア層と、アンドープのGaInAsP半導体からなる量子井戸層とが交互に10周期積層された構造の両側に、SCH層が形成されたものである。なお、上部コア層6におけるバリア層、量子井戸層、及びSCH層の厚みは、下部コア層4におけるバリア層、量子井戸層、及びSCH層の厚みと同じにしても良いし、必要に応じて変えることも出来る。
【0032】
上部クラッド層7はp型InPから構成されている。コンタクト層8はp型InGaAsから構成されている。絶縁層BはSiO2から構成されている。コンタクト層8は、光機能素子Lと良好な電気的な接合を得るために設けることが望ましい。不要な領域に電流が流れ込むのを防ぐために、光機能素子L以外の部分のコンタクト層8は除去されていることが望ましい。
【0033】
図4に示すように、光機能素子Lにおける絶縁層B及びコンタクト層8の一部上には、コンタクト層8とp型オーミック接合が取られた上部電極E1が設けられている。一方、半導体基板Sの裏面には、半導体基板Sとn型オーミック接合が取られた下部電極E2が設けられている。
【0034】
以下に、本発明に係る半導体光集積素子の製造方法について述べる。図6は、半導体基板S上に選択成長用マスクM1を配置した状態を示す上面図である。図7(a)は、図6におけるVII−VIIに沿った断面図である。図7(b)は、選択成長用マスクM1を用いて、半導体光集積素子を構成する各層を成膜した状態を示す断面図である。
【0035】
まず、図6及び図7(a)に示すような選択成長用マスクM1を半導体基板S上に形成する。図6に示すように、6つの選択成長用マスクM1を半導体基板S上に設ける。具体的には、入力導波路INが形成される領域R1及び第一遷移領域T1が形成される領域R2の両側に、2つの選択成長用マスクM1を対向配置する。また、第二遷移領域T2が形成される領域R4、光機能素子Lが形成される領域R5、第三遷移領域T3が形成される領域R6の両側に、2つの選択成長用マスクM1を対向配置する。また、第四遷移領域T4が形成される領域R8及び出力導波路OUTが形成される領域R9の両側に、2つの選択成長用マスクM1を対向配置する。各選択成長用マスクM1において、第一遷移領域T1〜第四遷移領域T4が形成される領域R2,R4,R6,R8に対応する部分には傾斜Gを設ける。なお、選択成長用マスクM1は、SiO2とすることができる。
【0036】
この際、図6に示すように、対向する選択成長用マスクM1同士は、一定の間隔Wgapをおいて配置させる。また、各選択成長用マスクM1の傾斜Gを除く部分は、一定の幅Wmask1を有する。例えば、選択成長用マスクM1同士の間隔Wgapを8μmとし、選択成長用マスクM1の幅Wmask1を20μmとすることができる。
【0037】
次いで、有機金属気相成長装置を用いて、図7(b)に示すように、選択成長用マスクM1が形成されていない半導体基板S上に、下部クラッド層3となる膜13、下部コア層4となる膜14、中間クラッド層5となる膜15、上部コア層6となる膜16、上部クラッド層7となる膜17、及びコンタクト層8となる膜18をそれぞれ選択的に成長させる。
【0038】
なお、下部クラッド層3となる膜13には、キャリア濃度1×1018cm−3のSiをドーピングしたInPを用いる。中間クラッド層5となる膜15には、キャリア濃度1×1018cm−3のSiをドーピングしたInPを用いる。上部クラッド層7となる膜17には、キャリア濃度1×1017cm−3のZnをドーピングしたInPを用いる。コンタクト層8となる膜18には、キャリア濃度1×1019cm−3のZnをドーピングしたGaInAsを用いる。
【0039】
図6及び図7(a)を用いて説明した選択成長マスクM1を用いることにより、入力導波路INが形成される領域R1、光機能素子Lが形成される領域R5、及び出力導波路OUTが形成される領域R9における成膜速度が、第一方向性結合器C1が形成される領域R3及び第二方向性結合器C2が形成される領域R7における成膜速度の2倍となる。なお、選択成長用マスクM1の有無により、部分的に厚みの異なる膜が成膜されるが、この際、選択成長用マスクM1の有無によって成膜される膜における厚みの異なる部分間の組成の違いはほとんど無視できる。
【0040】
選択成長用マスクM1に傾斜Gが設けられているため、第一遷移領域T1が形成される領域R2、第二遷移領域T2が形成される領域R4、第三遷移領域T3が形成される領域R6、及び第四遷移領域T4が形成される領域R8を、図2に示すような勾配を有する形状とすることができる。
【0041】
図7(b)に示すように、下部クラッド層3となる膜13、下部コア層4となる膜14、中間クラッド層5となる膜15、上部コア層6となる膜16、上部クラッド層7となる膜17、及びコンタクト層8となる膜18からなる両側Q,Pの厚さは、中央部Cの厚さに比べてやや大きくなる。これは、マスクM1上に供給された原料が拡散することにより、マスク近傍の成長速度が増加するためである。
【0042】
次に、両側Q,P部分を取り除いてメサ部を形成する工程を説明する。図8に、メサ用マスクM2をさらに配置した状態を示す。図9は、図8におけるIX−IXに沿った断面図である。図9に示すように、コンタクト層となる膜18上に、メサ用マスクM2をフォトリソグラフィー技術により形成する。図8に示すように、メサ用マスクM2を、X方向を長軸とし、Y方向を短軸とする長方形状とする。また、メサ用マスクM2の幅(Y方向における長さ)Waは、例えば1.5μmとすることができる。なお、選択成長用マスクM1は、SiO2とすることができる。
【0043】
図10は、選択成長用マスクM1及びメサ用マスクM2を用いてエッチングした状態を示す断面図である。エッチングには、例えばCH4とH2との混合ガスを反応ガスとした反応性イオンエッチングを用いることができる。エッチングにより、メサ部9が形成される。ここで、選択成長用マスクM1が残るようにエッチング量を調整すると良い。選択成長用のマスクM1を残すことにより、不必要な段差が生じることを避けられ、図10に示すような素子構造が得られる。
【0044】
続いて、選択成長用マスクM1及びメサ用マスクM2を除去する。次に、光機能素子Lの部分にマスクを形成してから、このマスクを用いて、リン酸(過酸化水素を成分とする溶液)でエッチングすることにより、膜18における光機能素子L部以外の部分を選択的に除去することにより、コンタクト層8を得る。マスクには、SiO2、あるいはレジスト等を用いることができる。その後、図11に示すように、メサ部9及びエッチングにより露出した半導体基板Sの表面に、SiO2からなる保護膜10を形成する。
【0045】
次いで、レジストマスクを用いて、上記の光機能素子Lの部分のコンタクト層8が形成されている領域の保護膜10をエッチングし、上部電極E1形成用の開口部Hを形成する。開口部Hの部分には、コンタクト層8が露出している。図12に、保護膜10に上部電極形成用の開口部Hが形成された状態を示す上面図を示す。図13は、図12におけるXIII−XIII線に沿った断面図である。光機能素子Lのメサ部9の頂部に形成されている保護膜10の一部を除去することにより、開口部Hを形成する。これにより、図13に示されるような、開口部Hを有する絶縁層Bを得る。
【0046】
その後、開口部H及び絶縁層B上に、Ti、Pt、及びAuの積層構造からなる上部電極E1を形成する。図14に、半導体基板S上に上部電極E1が形成された状態を示す。さらに、半導体基板Sの裏面に、AuGe、Ni、及びAuの積層構造からなる下部電極E2を形成する。最後に、劈開することによりチップ化して、図1〜4に示したような半導体光集積素子1を得る。
【0047】
以下に、本発明に係る半導体光集積素子の動作を説明する。まず、光を、一端S1側から入力導波路INの上部コア層6に導入する。当該光は、第一遷移領域T1を介して、入力導波路INから第一方向性結合器C1の上部コア層6に進む。第一方向性結合器C1の上部コア層6に進んだ光の一部は、第一方向性結合器C1内の下部コア層4に分岐される。
【0048】
ここで、第一方向性結合器C1には、所定の光結合を有する下部コア層(第一導波路)と上部コア層(第一導波路)とが積層されている。具体的には、第一方向性結合器C1の素子長(第一導波路の長さ:例えば70μm)を、第一結合長(例えば153μm)の半分よりもわずかに短い長さに設定する。このため、第一方向性結合器C1の前後の第一遷移領域T1及び第二遷移領域T2の一部を加えた実効的な素子長を結合長の半分の長さにする。この場合、第一方向性結合器C1内へ入射した光は、下部コア層4と上部コア層6に50%ずつ分岐される。
【0049】
また、光機能素子Lでは、中間クラッド層5が厚いので、光結合が無視できるほど小さい。具体的には、光機能素子Lの素子長(第二導波路の長さ:例えば1000μm)を、光機能素子Lにおける下部コア層4と上部コア層6との第二結合長(例えば39400μm)よりも十分短く設定する。このため、光は、下部コア層4と上部コア層6とに50%ずつ分配されたままの状態で、第二方向性結合器C2へ導入される。
【0050】
また、第二方向性結合器C2には、所定の光結合を有する下部コア層(第三導波路)と上部コア層(第三導波路)とが積層されている。具体的には、第二方向性結合器C2の素子長(第三導波路の長さ:例えば70μm)を、第三結合長(例えば153μm)の半分よりもわずかに短い長さに設定する。第二方向性結合器C2においても、第一方向性結合器C1と同様に、第三遷移領域T3及び第四遷移領域T4の一部を加えた実効的な素子長を結合長の半分になるように設計している。このため、光機能素子Lをまったく同じ光学長で進行してきた上部コア層6及び下部コア層4の光は、第二方向性結合器C2にて結合して、その全てが下部コア層4へ100%遷移していく。そして、結合された光は、出力導波路OUTの下部コア層4から出射される。
【0051】
上述したように、光機能素子Lの上部を構成する中間クラッド層5はn型InPから構成され、上部コア層6はアンドープの量子井戸層から構成され、上部クラッド層7はp型InPから構成され、コンタクト層8はp型InGaAsから構成されている。すなわち、光機能素子Lの上部には、PIN構造が形成されている。このため、光機能素子Lの上部電極E1に負の電圧を印加すると、PN逆接合が存在する上部コア層6に電界がかかり、例えば量子閉じ込めシュタルク効果(QCSE:Quantum Confined Stark Effect)により、上部コア層6の屈折率が変化する。この際、下部コア層4にはほとんど電界が印加されない。例えば、光機能素子Lに−2.5Vの電圧を掛けると、第二方向性結合器C2に入射する下部コア層4と上部コア層6に存在する光の位相がπずれた状態になる。第二方向性結合器C2の出口では、下部コア層4に存在する光は上部コア層6に移り、下部コア層4からは光は出力されない。
【0052】
このように、下部コア層4と上部コア層6の各々の導波路に分岐された2つの光が受ける位相変化量の差により、合波後の光の強度が決まる。この位相変化量の差を変化させることで、変調器の光出力の強度を変化させることが可能となる。従って、本発明に係る半導体光集積素子をマッハツェンダ型変調器として動作させることができる。
【0053】
以下に、本発明に係る半導体光集積素子による効果を説明する。本発明の半導体光集積素子は、下部コア層と上部コア層とが、水平方向に並んで配置された構造ではなく、垂直方向に積層された縦積み構造を有している。このような縦積み構造は、半導体基板上に順次、下部クラッド層、下部コア層、中間クラッド層、及び上部コア層を例えばエピタキシャル成長させることにより容易に得られる。そして、第一領域及び第三領域における中間クラッド層の厚みが、第二領域における中間クラッド層の厚みと異なることにより、第一領域、第二領域、及び第三領域の機能を分離することができる。水平方向に並んで配置される2つのコア層の分岐比の制御と比較して、垂直方向に積層される下部コア層及び上部コア層の厚み制御は簡単にできる。このため、下部コア層と上部コア層との間隔を高精度に微細加工する必要を回避することができ、容易に作製することが可能な半導体光集積素子を提供することができる。
【0054】
以上、本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態では、上部コア層に電界をかける構造について説明したが、下部コア層に電界をかける構造でも良い。この場合、中間クラッド層の導電型を上部クラッド層と同じ導電型にすれば、上部コア層に電界を発生させず、下部コア層に電界を印加させることができる。具体的には、例えば、n型InPからなる半導体基板S上に、n型InPから構成される下部クラッド層、アンドープの量子井戸層を有する下部コア層、p型InPから構成される中間クラッド層、アンドープまたはp型の量子井戸層を有する上部コア層、p型InPから構成される上部クラッド層、及びp型InGaAsから構成されるコンタクト層をこの順に形成された半導体光素子を用いれば良い。すなわち、光機能素子の下部には、PIN構造が形成されている。このため、光機能素子の上部電極に負の電圧を印加すると、PN逆接合が存在する下部コア層に電界がかかり、下部コア層の屈折率が変化する。この際、上部コア層にはほとんど電界が印加されない。この場合においても、半導体光集積素子をマッハツェンダ型変調器として動作させることができる。
【0055】
また、上記実施形態では、下部コア層と上部コア層とが同じ幅を有し、同じ光学的特性を有している場合について説明したが、下部コア層と上部コア層とが異なる幅を有していても良い。すなわち、目的によっては、下部コア層と上部コア層の光学的長さを1/2波長ずらすなど、非対称な構造にしても良い。このような半導体光集積素子の変形例を図15に示す。この変形例では、半導体光素子は、下部クラッド層33、下部コア層34、中間クラッド層35、上部コア層36、上部クラッド層37、コンタクト層38を有しており、下部コア層34の導波路幅W2(Y方向における長さ)が、上部コア層36の導波路幅(Y方向における長さ)W3よりも大きい。
【0056】
このような半導体光集積素子を製造するには、素子全体のメサ部を1.8μmの幅(Y方向における長さW2)で形成した後に、光機能素子Lを形成する領域にのみ、幅1.2μmの抜き幅(Y方向における長さW3)を有するエッチングマスクを形成する。このエッチングマスクを用いて、中間クラッド層35の上層までドライエッチングする。これにより、光機能素子Lにおいて、下部コア層34の導波路幅(Y方向における長さ:1.8μm)W2を上部コア層36の導波路幅(Y方向における長さ:1.2μm)W3よりも大きくすることができる。この場合、光機能素子Lにおける下部コア層34の実効屈折率を3.2425、上部コア層36の実効屈折率を、3.2186とすることができる。このような条件では、波長1.55μmの光に対して、光機能素子Lの長さ、32.5μm毎に、1/2波長の位相ずれを生じさせることが出来る。また、光機能素子Lの長さを32.5μmの奇数倍、例えば、357.5μmにすることにより、下部コア層34と上部コア層36の導波路が光学的に位相を反転した素子を作ることができる。さらに、下部コア層34と上部コア層36の実効屈折率を合わせるために、上部コア層36の厚み(Z方向における長さ)を下部コア層34の厚み(Z方向における長さ)に対して大きくしても良い。
【0057】
また、上記実施形態では、6つの選択成長用マスクM1を用いて半導体光集積素子を製造する例を示した。しかしながら、本発明に係る半導体光集積素子の製造方法はこれに限定されない。例えば、図16に示すように、対向配置させた2つの選択成長用マスクM3を用いてもよい。このとき、2つの選択成長用マスクM3の間隔(導波路幅)Wbを1.5μmとすることができる。また、第一方向性結合器C1が形成される領域R3又は第二方向性結合器C2が形成される領域R7に隣接する選択成長用マスクM3の各領域R10の幅(Y方向における長さ)Wmask2を6μmとすることができる。また、入力導波路INが形成される領域R1、光機能素子Lが形成される領域R5、又は出力導波路OUTが形成される領域R9に隣接する領域から上記幅Wmask2を除いた幅Wmask3を18μmとすることができる。また、選択成長用マスクM3に傾斜Gを設けることによって、第一遷移領域T1が形成される領域R2、第二遷移領域T2が形成される領域R4、第三遷移領域T3が形成される領域R6、及び第四遷移領域T4が形成される領域R8を、図2に示すような勾配を有する形状とすることができる。
【符号の説明】
【0058】
1…半導体光集積素子、IN…入力導波路、E…光機能素子、C1…第一方向性結合器、C2…第二方向性結合器、OUT…出力導波路、S…半導体基板、E1…上部電極、E2…下部電極、3…下部クラッド層、4…下部コア層、5…中間クラッド層、6…上部コア層、7…上部クラッド層、8…コンタクト層、B…絶縁層。
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体光集積素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体光集積素子には、単一モードの導波路を複数の導波路に分岐させる、あるいは、複数の導波路の光を一つの導波路に合流させる合分岐の機能を活用するものがある。このような半導体光集積素子の代表的なものとして、マッハツェンダ型変調器が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載のマッハツェンダ型変調器は、第一方向性結合器と第二方向性結合器との間に、位相シフト器が設けられた構造を有する。位相シフト器は、水平方向に並んで配置された二つの導波路からなる。第一方向性結合器は、位相シフト器の入力側に設けられており、光を分岐する機能を有する。第二方向性結合器は、位相シフト器の出力側に設けられており、光を結合する機能を有する。また、特許文献1に記載のマッハツェンダ型変調器には、ニオブ酸リチウム基板が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−250904号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のマッハツェンダ型変調器において、良好な特性を得るためには、水平方向に並んで配置される二つの導波路の分岐比が正確に制御されている必要がある。よって、高精度の微細加工が必要とされていた。また、小型化の観点から、アクティブデバイスとの集積が可能な化合物半導体材料を半導体光集積素子に用いることが望まれている。化合物半導体材料は、石英やニオブ酸リチウムなどの材料に比べて屈折率が高いため、化合物半導体材料を用いた場合、単一モード光導波路の導波路幅等のサイズを小さくすることが可能であり、小型化できる。しかし、化合物半導体材料で光導波路を作製する場合、高精度の微細加工が必要とされる。さらに、化合物半導体材料では、石英やニオブ酸リチウムなどの材料に比べて、光導波路を構成するコアとクラッドとの屈折率差を大きくできるため、光導波路内への光閉じ込めを大きくすることができる。しかし、マッハツェンダ型変調器などのように、複数の光導波路を光結合させるための光結合器を有する光導波路素子においては、複数の光導波路間の光結合を実現するために、石英やニオブ酸リチウムなどの材料を用いた場合に比べて、1桁程度小さい間隔で2つの光導波路を配置し、光結合する必要がある。光結合の状態や素子特性は、この2つの光導波路の間隔によって強く影響を受けるため、このような光導波路素子の作製には、さらに高精度の微細加工が必要とされるため、作製が困難であるという問題があった。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、高精度の微細加工をしなくても容易に作製することが可能な半導体光集積素子を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の課題を解決するため、本発明の半導体光集積素子は、半導体基板上に第一クラッド層、第一コア層、第二クラッド層、第二コア層、及び第三クラッド層がこの順に積層されており、第一領域、第二領域、及び第三領域に亘って、第一クラッド層、第一コア層、第二クラッド層、第二コア層、及び第三クラッド層が連結して形成されており、第一領域及び第三領域における第二クラッド層の厚みが、第二領域における第二クラッド層の厚みと異なることを特徴とする。
【0008】
本発明の半導体光集積素子は、第一コア層と第二コア層とが、水平方向に並んで配置された構造ではなく、垂直方向に積層された構造を有している。このような積層構造は、半導体基板上に第一クラッド層、第一コア層、第二クラッド層、及び第三コア層を順次、例えば、エピタキシャル成長させることにより容易に得られる。そして、第一領域及び第三領域における第二クラッド層の厚みが、第二領域における第二クラッド層の厚みと異なることにより、第一領域、第二領域、及び第三領域の機能を分離することができる。水平方向に並んで配置される2つのコア層の分岐比の制御と比較して、垂直方向に積層される第一コア層及び第二コア層の厚み制御は簡単にできる。このため、第一コア層と第二コア層との間隔をより高精度に微細加工しなくても、容易に作製することが可能な半導体光集積素子を提供することができる。
【0009】
また、第一領域には、第一クラッド層、第一コア層、第二クラッド層、第二コア層、及び第三クラッド層を有する第一方向性結合器が配置されており、第二領域には、第一クラッド層、第一コア層、第二クラッド層、第二コア層、及び第三クラッド層を有する光機能素子が配置されており、第三領域には、第一クラッド層、第一コア層、第二クラッド層、第二コア層、及び第三クラッド層を有する第二方向性結合器が配置されていることが好ましい。水平方向に並んで配置されるコア層の分岐比の制御と比較して、垂直方向に積層される2つのコア層における厚みの制御は簡単である。よって、第一方向性結合器における第一コア層及び第二コア層を含む導波路と、光機能素子における第一コア層及び第二コア層を含む導波路と、第二方向性結合器における第一コア層及び第二コア層を含む導波路との厚み制御を行うことにより、第一領域、第二領域、及び第三領域との機能を容易に分離することができる。このように、第一コア層と第二コア層との間隔をより高精度に微細加工しなくても、容易に作製することが可能な半導体光集積素子を提供することができる。
【0010】
また、第一領域から第二領域を介して第三領域へ光を移す場合、第一領域に存在する第一導波路の長さは、第一領域における第一コア層と第二コア層との第一結合長の10%以上であり、第二領域に存在する第二導波路の長さは、第二領域における第一コア層と第二コア層との第二結合長の10%以下であり、第三領域に存在する第三導波路の長さは、第三領域における第一コア層と第二コア層との第三結合長の10%以上であることが好ましい。第一導波路の長さが第一結合長の10%以上であることにより、第一領域を、光を分岐または結合する機能を有する光導波路として実用上十分に使用することができる。また、第二の領域における第一コア層と第二コア層との光結合がゼロでない場合には信号光の消光比が劣化するが、第二導波路の長さが、第二結合長の10%以下であることにより、第二の領域を光が進行する間に他方のコア層に移行する光の強度を10%以内に抑制することが出来る。この結果、第二の領域における第一コア層と第二コア層との光結合による信号光の消光比の劣化の影響を小さくすることができる。例えば、10dB以上の消光比を確保することが出来る。また、第三導波路の長さが第三結合長の10%以上であることにより、第三領域を、光を分岐または結合する機能を有する光導波路として実用上十分に使用することができる。ここで「結合長」とは、片方のコア層から入射した光が当該コア層中を伝搬する間に、他方のコア層に完全に乗り移るのに要する最短の長さをいう。
【0011】
また、第三クラッド層上に設けられたコンタクト層、コンタクト層上に設けられた第一電極、及び基板の裏面に設けられた第二電極を更に備え、半導体基板、第一クラッド層、及び第二クラッド層は第一導電型を有し、第三クラッド層及びコンタクト層は、第一導電型とは異なる第二導電型を有し、第一コア層は、アンドープまたは第一導電型の量子井戸層を有し、第二コア層は、アンドープの量子井戸層を有しても良い。これにより、第一導電型の第二クラッド層、アンドープの第二コア層、及び第二導電型の第三クラッド層からなるPIN構造が存在することとなる。このようなPIN構造に、第一電極及び第二電極を用いて逆バイアスを加えると、第二コア層の屈折率が変化する。従って、光を合波させるときの干渉条件を変えることができ、半導体光集積素子を、光のオン・オフを制御することが可能なマッハツェンダ型変調器として機能させることができる。
【0012】
また、第三クラッド層上に設けられたコンタクト層、コンタクト層上に設けられた第一電極、及び基板の裏面に設けられた第二電極を更に備え、半導体基板及び第一クラッド層は第一導電型を有し、第二クラッド層、第三クラッド層、及びコンタクト層は、第一導電型とは異なる第二導電型を有し、第一コア層は、アンドープの量子井戸層を有し、第二コア層は、アンドープまたは第二導電型の量子井戸層を有しても良い。これにより、第一導電型の第一クラッド層、アンドープの第一コア層、及び第二導電型の第二クラッド層からなるPIN構造が存在することとなる。このようなPIN構造に、第一電極及び第二電極を用いて逆バイアスを加えると、第一コア層の屈折率が変化する。従って、光を合波させるときの干渉条件を変えることができ、半導体光集積素子を、光のオン・オフを制御することが可能なマッハツェンダ型変調器として機能させることができる。
【0013】
また、第二領域において、第一コア層の幅が第二コア層の幅と異なっていても良い。このように、第一コア層と第二コア層を非対称な構造とすることにより、導波路長が同じなのにもかかわらず、位相シフトを生じさせることができる。よって、半導体光集積素子の無バイアス時の動作を制御することが出来る。
【0014】
また、第一クラッド層、第一コア層、第二クラッド層、第二コア層、及び第三クラッド層は、化合物半導体からなることが好ましい。半導体光素子に化合物半導体を用いる場合、水平方向に並んで配置される2つのコア層の間隔の制御と比較して、垂直方向に積層される第一コア層及び第二コア層の厚み制御は簡単である。従って、化合物半導体からなる半導体光素子をアクティブデバイスと集積することができ、小型化を達成することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、垂直方向に積層される第一コア層、第二クラッド層、及び第二コア層の厚みの制御を行うことにより、第一領域、第二領域、及び第三領域の機能を容易に分離することができる。従って、高精度の微細加工をしなくても容易に作製することが可能な半導体光集積素子が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本発明に係る半導体光集積素子を示す斜視図である。
【図2】図2は、図1におけるII−II線に沿った断面図である。
【図3】図3、図1におけるIII−III線に沿った断面図である。
【図4】図4は、図1におけるIV−IV線に沿った断面図である。
【図5】図5は、本発明に係る半導体光集積素子を構成する各層の厚みと結合長を示す表である。
【図6】図6は、半導体基板上に選択成長用マスクを配置した状態を示す上面図である。
【図7】図7(a)は、図6におけるVII−VIIに沿った断面図である。図7(b)は、選択成長用マスクを用いて各層を成膜した状態を示す断面図である。
【図8】図8は、半導体基板上に選択成長用マスク及びメサ用マスクを配置した状態を示す上面図である。
【図9】図9は、図8におけるIX−IXに沿った断面図である。
【図10】図10は、選択成長用マスク及びメサ用マスクを用いてエッチングした状態を示す断面図である。
【図11】図11は、メサ部及び半導体基板上に保護膜が形成された状態を示す上面図である。
【図12】図12は、保護膜に上部電極形成用の開口部が形成された状態を示す上面図である。
【図13】図13は、図12におけるXIII−XIII線に沿った断面図である。
【図14】図14は、半導体基板上に上部電極が形成された状態を示す上面図である。
【図15】図15は、本発明に係る半導体光集積素子の変形例を示す断面図である。
【図16】図16は、本発明に係る半導体光集積素子の製造方法の変形例に用いられる選択性成長用マスクを半導体基板上に配置した状態を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0018】
本発明に係る半導体光集積素子は、方向性結合器を有する光機能デバイスとして機能し、マッハツェンダ型変調器に適用することができる。図1は、本発明に係る半導体光集積素子を示す斜視図である。図2は、図1におけるII−II線に沿った断面図である。図3は、図1におけるIII−III線に沿った断面図である。図4は、図1におけるIV−IV線に沿った断面図である。
【0019】
図1及び図2に示すように、半導体光集積素子1は、一端S1側から他端S2側へ向かって順次連結するように形成された入力導波路IN、第一遷移領域T1、第一方向性結合器C1、第二遷移領域T2、光機能素子L、第三遷移領域T3、第二方向性結合器C2、第四遷移領域T4、及び出力導波路OUTを備えている。
【0020】
図2に示すように、入力導波路IN、第一遷移領域T1、第一方向性結合器C1、第二遷移領域T2、光機能素子L、第三遷移領域T3、第二方向性結合器C2、第四遷移領域T4、及び出力導波路OUTには、半導体基板S上に、下部クラッド層(第一クラッド層)3、下部コア層(第一コア層)4、中間クラッド層(第二クラッド層)5、上部コア層(第二コア層)6、上部クラッド層(第三クラッド層)7、コンタクト層8、及び絶縁層Bがこの順に積層されている。
【0021】
また、下部クラッド層3、下部コア層4、中間クラッド層5、上部コア層6、上部クラッド層7、コンタクト層8は、入力導波路IN、第一遷移領域T1、第一方向性結合器C1、第二遷移領域T2、光機能素子L、第三遷移領域T3、第二方向性結合器C2、第四遷移領域T4、及び出力導波路OUTの形成されている各領域に亘って連結して形成されている。
【0022】
図2に示すように、第一遷移領域T1は、入力導波路IN側から第一方向性結合器C1側へ向かって厚みが減少するように形成されている。第二遷移領域T2は、第一方向性結合器C1側から光機能素子L側へ向かって厚みが増加するように形成されている。第三遷移領域T3は、光機能素子L側から第二方向性結合器C2側へ向かって厚みが減少するように形成されている。第四遷移領域T4は、第二方向性結合器C2側から出力導波路OUT側へ向かって厚みが増加するように形成されている。
【0023】
半導体光集積素子1は、第一領域、第二領域、及び第三領域を有する。第一領域には、第一方向性結合器C1が配置されている。第二領域には、光機能素子Lが配置されている。第三領域には、第二方向性結合器C2が配置されている。図2に示すように、第一方向性結合器C1(第一領域)又は第二方向性結合器C2(第三領域)における中間クラッド層5の積層方向の厚みD1は、光機能素子L(第二領域)における中間クラッド層5の積層方向の厚みD2と異なる。第一方向性結合器C1又は第二方向性結合器C2における中間クラッド層5の積層方向の厚みD1は、光機能素子Lにおける中間クラッド層5の積層方向の厚みD2よりも小さい。
【0024】
図3に第一方向性結合器C1におけるY−Z断面を示すが、第二方向性結合器C2におけるY−Z断面も図3と同様の構造となる。図4は、光機能素子LにおけるY−Z断面を示す。図3または図4に示すように、下部クラッド層3、下部コア層4、中間クラッド層5、上部コア層6、上部クラッド層7、及びコンタクト層8の導波路幅W1(Y方向における長さ)は、入力導波路IN、第一遷移領域T1、第一方向性結合器C1、第二遷移領域T2、光機能素子L、第三遷移領域T3、第二方向性結合器C2、第四遷移領域T4、及び出力導波路OUTの形成されている各領域に亘って一定である。例えば、当該導波路幅W1として1.5μmとすることができる。
【0025】
図5に、半導体光集積素子1を構成する各層の厚みの一例を示す。図5の例では、第一方向性結合器C1及び第二方向性結合器C2における下部コア層4の厚さ(120nm)は、入力導波路IN、光機能素子L、及び出力導波路OUTにおける下部コア層4の厚さ(240nm)の半分である。第一方向性結合器C1及び第二方向性結合器C2における中間クラッド層5の厚さ(1700nm)は、入力導波路IN、光機能素子L、及び出力導波路OUTにおける中間クラッド層5の厚さ(3400nm)の半分である。第一方向性結合器C1及び第二方向性結合器C2における上部コア層6の厚さ(120nm)は、入力導波路IN、光機能素子L、及び出力導波路OUTにおける上部コア層6の厚さ(240nm)の半分である。第一方向性結合器C1及び第二方向性結合器C2における上部クラッド層7の厚さ(1500nm)は、入力導波路IN、光機能素子L、及び出力導波路OUTにおける上部クラッド層7の厚さ(3000nm)の半分である。
【0026】
図5の例では、第一方向性結合器C1における結合長(第一結合長)及び第二方向性結合器C2における結合長(第三結合長)は153μmである。対して、入力導波路IN、光機能素子L、及び出力導波路OUTにおける結合長(第二結合長)は39400μmである。ここで「結合長」とは、片方のコア層から入射した光が当該コア層中を伝搬する間に、他方のコア層に完全に乗り移るのに要する最短の長さをいう。なお、第一結合長、第二結合長、及び第三結合長は、波長1.3μmの光を想定して算出した値である。
【0027】
図2に示す入力導波路IN及び出力導波路OUTの素子長N1,N9は、例えば、それぞれ250μmとすることができる。第一〜第四遷移領域T1〜T4の素子長N2,N4,N6,N8は、例えば、それぞれ20μmとすることができる。第一方向性結合器C1及び第二方向性結合器C2の素子長N3,N7は、例えば、それぞれ70μmとすることができる。光機能素子Lの素子長N5は、例えば、1000μmとすることができる。
【0028】
光を分岐または結合させる観点から、第一方向性結合器C1(第一領域)の素子長(第一導波路の長さ)N3は、第一方向性結合器C1における下部コア層4と上部コア層6との第一結合長の10%以上とすることができる。これによって、第一領域において、実用上必要な下部コア層4と上部コア層6との光結合を得ることができる。より好適には、第一方向性結合器C1(第一領域)の素子長(第一導波路の長さ)N3は、第一方向性結合器C1における下部コア層4と上部コア層6との第一結合長の約1/2であることが望ましい。第一導波路の長さを第一結合長の約1/2とすることにより、例えば下部コア層4から導入された光を下部コア層4と上部コア層6とにほぼ同じ強度比で分岐することが出来る。また、第二方向性結合器C2(第三領域)の素子長(第三導波路の長さ)N7は、第二方向性結合器C2における下部コア層4と上部コア層6との第三結合長の10%以上とすることができる。これによって、第三領域において、実用上必要な下部コア層4と上部コア層6との光結合を得ることができる。より好適には、第二方向性結合器C2(第三領域)の素子長(第三導波路の長さ)N7は、第二方向性結合器C2における下部コア層4と上部コア層6との第三結合長の約1/2であることが望ましい。第三導波路の長さを第三結合長の約1/2とすることにより、下部コア層4と上部コア層6との光を効果的に干渉させて、一つのコア層に光を集光するスイッチ動作をさせることが出来る。例えば、第一領域に存在する第一導波路の長さを70μmとすると、遷移領域T1,T2における結合とあわせて、方向性結合器としての実効的な長さを、第一結合長の長さ(153μm)の約1/2とすることができる。同様に、例えば、第三領域に存在する第三導波路の長さを70μmとすることにより、方向性結合器の実効的な長さを第三結合長の長さ(153μm)の約1/2とすることができる。
【0029】
光を分岐または結合させない観点から、光機能素子L(第二領域)の素子長(第二導波路の長さ)N5は、光機能素子Lにおける下部コア層4と上部コア層6との第二結合長の10%以下であることが望ましい。第二導波路の長さが第二結合長の10%以下であることにより、第二の領域を光が進行する間に他方のコア層に移行する光の強度を10%以内に抑制することが出来る。第二の領域における下部コア層4と上部コア層6との光結合がゼロでない場合には、信号光の消光比が劣化するが、第二領域の長さが第二領域における結合長の10%以下であれば、この第二領域における下部コア層4と上部コア層6との光結合による消光比の劣化の影響は小さく、10dB以上の消光比を確保することが出来る。例えば、第二領域の中間クラッド層5の厚さを3400nmとした場合、理論上求められる結合長は39400μmとなる。このため、光機能素子Lの長さを一般的に用いられる、例えば、1000μmとしても、第二導波路の長さは、上記の第二結合長に対して十分短い長さにすることができる。
【0030】
半導体基板S、下部クラッド層3、下部コア層4、中間クラッド層5、上部コア層6、上部クラッド層7、及びコンタクト層8は、化合物半導体からなる。具体的には、半導体基板Sはn型InP基板である。下部クラッド層3は、n型InPから構成されている。下部コア層4は、多重量子井戸(MQW: Multiple Quantum Well)構造を有している。下部コア層4のMQW構造は、GaInAsP半導体からなるバリア層と、アンドープまたはn型GaInAsP半導体からなる量子井戸層とが交互に10周期積層された構造の両側に、SCH(Separate ConfinementHeterostructure)層が形成されたものである。例えば、バリア層の厚さを6nm、量子井戸層の厚さを4nmとすることができる。
【0031】
中間クラッド層5はn型InPから構成されている。上部コア層6は、MQW構造を有している。上部コア層6のMQW構造は、GaInAsP半導体からなるバリア層と、アンドープのGaInAsP半導体からなる量子井戸層とが交互に10周期積層された構造の両側に、SCH層が形成されたものである。なお、上部コア層6におけるバリア層、量子井戸層、及びSCH層の厚みは、下部コア層4におけるバリア層、量子井戸層、及びSCH層の厚みと同じにしても良いし、必要に応じて変えることも出来る。
【0032】
上部クラッド層7はp型InPから構成されている。コンタクト層8はp型InGaAsから構成されている。絶縁層BはSiO2から構成されている。コンタクト層8は、光機能素子Lと良好な電気的な接合を得るために設けることが望ましい。不要な領域に電流が流れ込むのを防ぐために、光機能素子L以外の部分のコンタクト層8は除去されていることが望ましい。
【0033】
図4に示すように、光機能素子Lにおける絶縁層B及びコンタクト層8の一部上には、コンタクト層8とp型オーミック接合が取られた上部電極E1が設けられている。一方、半導体基板Sの裏面には、半導体基板Sとn型オーミック接合が取られた下部電極E2が設けられている。
【0034】
以下に、本発明に係る半導体光集積素子の製造方法について述べる。図6は、半導体基板S上に選択成長用マスクM1を配置した状態を示す上面図である。図7(a)は、図6におけるVII−VIIに沿った断面図である。図7(b)は、選択成長用マスクM1を用いて、半導体光集積素子を構成する各層を成膜した状態を示す断面図である。
【0035】
まず、図6及び図7(a)に示すような選択成長用マスクM1を半導体基板S上に形成する。図6に示すように、6つの選択成長用マスクM1を半導体基板S上に設ける。具体的には、入力導波路INが形成される領域R1及び第一遷移領域T1が形成される領域R2の両側に、2つの選択成長用マスクM1を対向配置する。また、第二遷移領域T2が形成される領域R4、光機能素子Lが形成される領域R5、第三遷移領域T3が形成される領域R6の両側に、2つの選択成長用マスクM1を対向配置する。また、第四遷移領域T4が形成される領域R8及び出力導波路OUTが形成される領域R9の両側に、2つの選択成長用マスクM1を対向配置する。各選択成長用マスクM1において、第一遷移領域T1〜第四遷移領域T4が形成される領域R2,R4,R6,R8に対応する部分には傾斜Gを設ける。なお、選択成長用マスクM1は、SiO2とすることができる。
【0036】
この際、図6に示すように、対向する選択成長用マスクM1同士は、一定の間隔Wgapをおいて配置させる。また、各選択成長用マスクM1の傾斜Gを除く部分は、一定の幅Wmask1を有する。例えば、選択成長用マスクM1同士の間隔Wgapを8μmとし、選択成長用マスクM1の幅Wmask1を20μmとすることができる。
【0037】
次いで、有機金属気相成長装置を用いて、図7(b)に示すように、選択成長用マスクM1が形成されていない半導体基板S上に、下部クラッド層3となる膜13、下部コア層4となる膜14、中間クラッド層5となる膜15、上部コア層6となる膜16、上部クラッド層7となる膜17、及びコンタクト層8となる膜18をそれぞれ選択的に成長させる。
【0038】
なお、下部クラッド層3となる膜13には、キャリア濃度1×1018cm−3のSiをドーピングしたInPを用いる。中間クラッド層5となる膜15には、キャリア濃度1×1018cm−3のSiをドーピングしたInPを用いる。上部クラッド層7となる膜17には、キャリア濃度1×1017cm−3のZnをドーピングしたInPを用いる。コンタクト層8となる膜18には、キャリア濃度1×1019cm−3のZnをドーピングしたGaInAsを用いる。
【0039】
図6及び図7(a)を用いて説明した選択成長マスクM1を用いることにより、入力導波路INが形成される領域R1、光機能素子Lが形成される領域R5、及び出力導波路OUTが形成される領域R9における成膜速度が、第一方向性結合器C1が形成される領域R3及び第二方向性結合器C2が形成される領域R7における成膜速度の2倍となる。なお、選択成長用マスクM1の有無により、部分的に厚みの異なる膜が成膜されるが、この際、選択成長用マスクM1の有無によって成膜される膜における厚みの異なる部分間の組成の違いはほとんど無視できる。
【0040】
選択成長用マスクM1に傾斜Gが設けられているため、第一遷移領域T1が形成される領域R2、第二遷移領域T2が形成される領域R4、第三遷移領域T3が形成される領域R6、及び第四遷移領域T4が形成される領域R8を、図2に示すような勾配を有する形状とすることができる。
【0041】
図7(b)に示すように、下部クラッド層3となる膜13、下部コア層4となる膜14、中間クラッド層5となる膜15、上部コア層6となる膜16、上部クラッド層7となる膜17、及びコンタクト層8となる膜18からなる両側Q,Pの厚さは、中央部Cの厚さに比べてやや大きくなる。これは、マスクM1上に供給された原料が拡散することにより、マスク近傍の成長速度が増加するためである。
【0042】
次に、両側Q,P部分を取り除いてメサ部を形成する工程を説明する。図8に、メサ用マスクM2をさらに配置した状態を示す。図9は、図8におけるIX−IXに沿った断面図である。図9に示すように、コンタクト層となる膜18上に、メサ用マスクM2をフォトリソグラフィー技術により形成する。図8に示すように、メサ用マスクM2を、X方向を長軸とし、Y方向を短軸とする長方形状とする。また、メサ用マスクM2の幅(Y方向における長さ)Waは、例えば1.5μmとすることができる。なお、選択成長用マスクM1は、SiO2とすることができる。
【0043】
図10は、選択成長用マスクM1及びメサ用マスクM2を用いてエッチングした状態を示す断面図である。エッチングには、例えばCH4とH2との混合ガスを反応ガスとした反応性イオンエッチングを用いることができる。エッチングにより、メサ部9が形成される。ここで、選択成長用マスクM1が残るようにエッチング量を調整すると良い。選択成長用のマスクM1を残すことにより、不必要な段差が生じることを避けられ、図10に示すような素子構造が得られる。
【0044】
続いて、選択成長用マスクM1及びメサ用マスクM2を除去する。次に、光機能素子Lの部分にマスクを形成してから、このマスクを用いて、リン酸(過酸化水素を成分とする溶液)でエッチングすることにより、膜18における光機能素子L部以外の部分を選択的に除去することにより、コンタクト層8を得る。マスクには、SiO2、あるいはレジスト等を用いることができる。その後、図11に示すように、メサ部9及びエッチングにより露出した半導体基板Sの表面に、SiO2からなる保護膜10を形成する。
【0045】
次いで、レジストマスクを用いて、上記の光機能素子Lの部分のコンタクト層8が形成されている領域の保護膜10をエッチングし、上部電極E1形成用の開口部Hを形成する。開口部Hの部分には、コンタクト層8が露出している。図12に、保護膜10に上部電極形成用の開口部Hが形成された状態を示す上面図を示す。図13は、図12におけるXIII−XIII線に沿った断面図である。光機能素子Lのメサ部9の頂部に形成されている保護膜10の一部を除去することにより、開口部Hを形成する。これにより、図13に示されるような、開口部Hを有する絶縁層Bを得る。
【0046】
その後、開口部H及び絶縁層B上に、Ti、Pt、及びAuの積層構造からなる上部電極E1を形成する。図14に、半導体基板S上に上部電極E1が形成された状態を示す。さらに、半導体基板Sの裏面に、AuGe、Ni、及びAuの積層構造からなる下部電極E2を形成する。最後に、劈開することによりチップ化して、図1〜4に示したような半導体光集積素子1を得る。
【0047】
以下に、本発明に係る半導体光集積素子の動作を説明する。まず、光を、一端S1側から入力導波路INの上部コア層6に導入する。当該光は、第一遷移領域T1を介して、入力導波路INから第一方向性結合器C1の上部コア層6に進む。第一方向性結合器C1の上部コア層6に進んだ光の一部は、第一方向性結合器C1内の下部コア層4に分岐される。
【0048】
ここで、第一方向性結合器C1には、所定の光結合を有する下部コア層(第一導波路)と上部コア層(第一導波路)とが積層されている。具体的には、第一方向性結合器C1の素子長(第一導波路の長さ:例えば70μm)を、第一結合長(例えば153μm)の半分よりもわずかに短い長さに設定する。このため、第一方向性結合器C1の前後の第一遷移領域T1及び第二遷移領域T2の一部を加えた実効的な素子長を結合長の半分の長さにする。この場合、第一方向性結合器C1内へ入射した光は、下部コア層4と上部コア層6に50%ずつ分岐される。
【0049】
また、光機能素子Lでは、中間クラッド層5が厚いので、光結合が無視できるほど小さい。具体的には、光機能素子Lの素子長(第二導波路の長さ:例えば1000μm)を、光機能素子Lにおける下部コア層4と上部コア層6との第二結合長(例えば39400μm)よりも十分短く設定する。このため、光は、下部コア層4と上部コア層6とに50%ずつ分配されたままの状態で、第二方向性結合器C2へ導入される。
【0050】
また、第二方向性結合器C2には、所定の光結合を有する下部コア層(第三導波路)と上部コア層(第三導波路)とが積層されている。具体的には、第二方向性結合器C2の素子長(第三導波路の長さ:例えば70μm)を、第三結合長(例えば153μm)の半分よりもわずかに短い長さに設定する。第二方向性結合器C2においても、第一方向性結合器C1と同様に、第三遷移領域T3及び第四遷移領域T4の一部を加えた実効的な素子長を結合長の半分になるように設計している。このため、光機能素子Lをまったく同じ光学長で進行してきた上部コア層6及び下部コア層4の光は、第二方向性結合器C2にて結合して、その全てが下部コア層4へ100%遷移していく。そして、結合された光は、出力導波路OUTの下部コア層4から出射される。
【0051】
上述したように、光機能素子Lの上部を構成する中間クラッド層5はn型InPから構成され、上部コア層6はアンドープの量子井戸層から構成され、上部クラッド層7はp型InPから構成され、コンタクト層8はp型InGaAsから構成されている。すなわち、光機能素子Lの上部には、PIN構造が形成されている。このため、光機能素子Lの上部電極E1に負の電圧を印加すると、PN逆接合が存在する上部コア層6に電界がかかり、例えば量子閉じ込めシュタルク効果(QCSE:Quantum Confined Stark Effect)により、上部コア層6の屈折率が変化する。この際、下部コア層4にはほとんど電界が印加されない。例えば、光機能素子Lに−2.5Vの電圧を掛けると、第二方向性結合器C2に入射する下部コア層4と上部コア層6に存在する光の位相がπずれた状態になる。第二方向性結合器C2の出口では、下部コア層4に存在する光は上部コア層6に移り、下部コア層4からは光は出力されない。
【0052】
このように、下部コア層4と上部コア層6の各々の導波路に分岐された2つの光が受ける位相変化量の差により、合波後の光の強度が決まる。この位相変化量の差を変化させることで、変調器の光出力の強度を変化させることが可能となる。従って、本発明に係る半導体光集積素子をマッハツェンダ型変調器として動作させることができる。
【0053】
以下に、本発明に係る半導体光集積素子による効果を説明する。本発明の半導体光集積素子は、下部コア層と上部コア層とが、水平方向に並んで配置された構造ではなく、垂直方向に積層された縦積み構造を有している。このような縦積み構造は、半導体基板上に順次、下部クラッド層、下部コア層、中間クラッド層、及び上部コア層を例えばエピタキシャル成長させることにより容易に得られる。そして、第一領域及び第三領域における中間クラッド層の厚みが、第二領域における中間クラッド層の厚みと異なることにより、第一領域、第二領域、及び第三領域の機能を分離することができる。水平方向に並んで配置される2つのコア層の分岐比の制御と比較して、垂直方向に積層される下部コア層及び上部コア層の厚み制御は簡単にできる。このため、下部コア層と上部コア層との間隔を高精度に微細加工する必要を回避することができ、容易に作製することが可能な半導体光集積素子を提供することができる。
【0054】
以上、本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態では、上部コア層に電界をかける構造について説明したが、下部コア層に電界をかける構造でも良い。この場合、中間クラッド層の導電型を上部クラッド層と同じ導電型にすれば、上部コア層に電界を発生させず、下部コア層に電界を印加させることができる。具体的には、例えば、n型InPからなる半導体基板S上に、n型InPから構成される下部クラッド層、アンドープの量子井戸層を有する下部コア層、p型InPから構成される中間クラッド層、アンドープまたはp型の量子井戸層を有する上部コア層、p型InPから構成される上部クラッド層、及びp型InGaAsから構成されるコンタクト層をこの順に形成された半導体光素子を用いれば良い。すなわち、光機能素子の下部には、PIN構造が形成されている。このため、光機能素子の上部電極に負の電圧を印加すると、PN逆接合が存在する下部コア層に電界がかかり、下部コア層の屈折率が変化する。この際、上部コア層にはほとんど電界が印加されない。この場合においても、半導体光集積素子をマッハツェンダ型変調器として動作させることができる。
【0055】
また、上記実施形態では、下部コア層と上部コア層とが同じ幅を有し、同じ光学的特性を有している場合について説明したが、下部コア層と上部コア層とが異なる幅を有していても良い。すなわち、目的によっては、下部コア層と上部コア層の光学的長さを1/2波長ずらすなど、非対称な構造にしても良い。このような半導体光集積素子の変形例を図15に示す。この変形例では、半導体光素子は、下部クラッド層33、下部コア層34、中間クラッド層35、上部コア層36、上部クラッド層37、コンタクト層38を有しており、下部コア層34の導波路幅W2(Y方向における長さ)が、上部コア層36の導波路幅(Y方向における長さ)W3よりも大きい。
【0056】
このような半導体光集積素子を製造するには、素子全体のメサ部を1.8μmの幅(Y方向における長さW2)で形成した後に、光機能素子Lを形成する領域にのみ、幅1.2μmの抜き幅(Y方向における長さW3)を有するエッチングマスクを形成する。このエッチングマスクを用いて、中間クラッド層35の上層までドライエッチングする。これにより、光機能素子Lにおいて、下部コア層34の導波路幅(Y方向における長さ:1.8μm)W2を上部コア層36の導波路幅(Y方向における長さ:1.2μm)W3よりも大きくすることができる。この場合、光機能素子Lにおける下部コア層34の実効屈折率を3.2425、上部コア層36の実効屈折率を、3.2186とすることができる。このような条件では、波長1.55μmの光に対して、光機能素子Lの長さ、32.5μm毎に、1/2波長の位相ずれを生じさせることが出来る。また、光機能素子Lの長さを32.5μmの奇数倍、例えば、357.5μmにすることにより、下部コア層34と上部コア層36の導波路が光学的に位相を反転した素子を作ることができる。さらに、下部コア層34と上部コア層36の実効屈折率を合わせるために、上部コア層36の厚み(Z方向における長さ)を下部コア層34の厚み(Z方向における長さ)に対して大きくしても良い。
【0057】
また、上記実施形態では、6つの選択成長用マスクM1を用いて半導体光集積素子を製造する例を示した。しかしながら、本発明に係る半導体光集積素子の製造方法はこれに限定されない。例えば、図16に示すように、対向配置させた2つの選択成長用マスクM3を用いてもよい。このとき、2つの選択成長用マスクM3の間隔(導波路幅)Wbを1.5μmとすることができる。また、第一方向性結合器C1が形成される領域R3又は第二方向性結合器C2が形成される領域R7に隣接する選択成長用マスクM3の各領域R10の幅(Y方向における長さ)Wmask2を6μmとすることができる。また、入力導波路INが形成される領域R1、光機能素子Lが形成される領域R5、又は出力導波路OUTが形成される領域R9に隣接する領域から上記幅Wmask2を除いた幅Wmask3を18μmとすることができる。また、選択成長用マスクM3に傾斜Gを設けることによって、第一遷移領域T1が形成される領域R2、第二遷移領域T2が形成される領域R4、第三遷移領域T3が形成される領域R6、及び第四遷移領域T4が形成される領域R8を、図2に示すような勾配を有する形状とすることができる。
【符号の説明】
【0058】
1…半導体光集積素子、IN…入力導波路、E…光機能素子、C1…第一方向性結合器、C2…第二方向性結合器、OUT…出力導波路、S…半導体基板、E1…上部電極、E2…下部電極、3…下部クラッド層、4…下部コア層、5…中間クラッド層、6…上部コア層、7…上部クラッド層、8…コンタクト層、B…絶縁層。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板上に第一クラッド層、第一コア層、第二クラッド層、第二コア層、及び第三クラッド層がこの順に積層されており、
第一領域、第二領域、及び第三領域に亘って、前記第一クラッド層、前記第一コア層、前記第二クラッド層、前記第二コア層、及び前記第三クラッド層が連結して形成されており、
前記第一領域及び第三領域における前記第二クラッド層の厚みが、前記第二領域における前記第二クラッド層の厚みと異なる半導体光集積素子。
【請求項2】
前記第一領域には、前記第一クラッド層、前記第一コア層、前記第二クラッド層、前記第二コア層、及び前記第三クラッド層を有する第一方向性結合器が配置されており、
前記第二領域には、前記第一クラッド層、前記第一コア層、前記第二クラッド層、前記第二コア層、及び前記第三クラッド層を有する光機能素子が配置されており、
前記第三領域には、前記第一クラッド層、前記第一コア層、前記第二クラッド層、前記第二コア層、及び前記第三クラッド層を有する第二方向性結合器が配置されている請求項1に記載の半導体光集積素子。
【請求項3】
前記第一領域から前記第二領域を介して前記第三領域へ光を移す場合、
前記第一領域に存在する第一導波路の長さは、前記第一領域における前記第一コア層と前記第二コア層との第一結合長の10%以上であり、
前記第二領域に存在する第二導波路の長さは、前記第二領域における前記第一コア層と前記第二コア層との第二結合長の10%以下であり、
前記第三領域に存在する第三導波路の長さは、前記第三領域における前記第一コア層と前記第二コア層との第三結合長の10%以上である請求項1または2に記載の半導体光集積素子。
【請求項4】
前記第三クラッド層上に設けられたコンタクト層、前記コンタクト層上に設けられた第一電極、及び前記基板の裏面に設けられた第二電極を更に備え、
前記半導体基板、前記第一クラッド層、及び前記第二クラッド層は第一導電型を有し、
前記第三クラッド層及び前記コンタクト層は、前記第一導電型とは異なる第二導電型を有し、
前記第一コア層は、アンドープまたは前記第一導電型の量子井戸層を有し、
前記第二コア層は、アンドープの量子井戸層を有する請求項1〜3のいずれか一項に記載の半導体光集積素子。
【請求項5】
前記第三クラッド層上に設けられたコンタクト層、前記コンタクト層上に設けられた第一電極、及び前記基板の裏面に設けられた第二電極を更に備え、
前記半導体基板及び前記第一クラッド層は第一導電型を有し、
前記第二クラッド層、前記第三クラッド層、及び前記コンタクト層は、前記第一導電型とは異なる第二導電型を有し、
前記第一コア層は、アンドープの量子井戸層を有し、
前記第二コア層は、アンドープまたは前記第二導電型の量子井戸層を有する請求項1〜3のいずれか一項に記載の半導体光集積素子。
【請求項6】
前記第二領域において、前記第一コア層の幅が前記第二コア層の幅と異なる請求項1〜5のいずれか一項に記載の半導体光集積素子。
【請求項7】
前記第一クラッド層、前記第一コア層、前記第二クラッド層、前記第二コア層、及び前記第三クラッド層は、化合物半導体からなる請求項1〜6のいずれか一項に記載の半導体光集積素子。
【請求項1】
半導体基板上に第一クラッド層、第一コア層、第二クラッド層、第二コア層、及び第三クラッド層がこの順に積層されており、
第一領域、第二領域、及び第三領域に亘って、前記第一クラッド層、前記第一コア層、前記第二クラッド層、前記第二コア層、及び前記第三クラッド層が連結して形成されており、
前記第一領域及び第三領域における前記第二クラッド層の厚みが、前記第二領域における前記第二クラッド層の厚みと異なる半導体光集積素子。
【請求項2】
前記第一領域には、前記第一クラッド層、前記第一コア層、前記第二クラッド層、前記第二コア層、及び前記第三クラッド層を有する第一方向性結合器が配置されており、
前記第二領域には、前記第一クラッド層、前記第一コア層、前記第二クラッド層、前記第二コア層、及び前記第三クラッド層を有する光機能素子が配置されており、
前記第三領域には、前記第一クラッド層、前記第一コア層、前記第二クラッド層、前記第二コア層、及び前記第三クラッド層を有する第二方向性結合器が配置されている請求項1に記載の半導体光集積素子。
【請求項3】
前記第一領域から前記第二領域を介して前記第三領域へ光を移す場合、
前記第一領域に存在する第一導波路の長さは、前記第一領域における前記第一コア層と前記第二コア層との第一結合長の10%以上であり、
前記第二領域に存在する第二導波路の長さは、前記第二領域における前記第一コア層と前記第二コア層との第二結合長の10%以下であり、
前記第三領域に存在する第三導波路の長さは、前記第三領域における前記第一コア層と前記第二コア層との第三結合長の10%以上である請求項1または2に記載の半導体光集積素子。
【請求項4】
前記第三クラッド層上に設けられたコンタクト層、前記コンタクト層上に設けられた第一電極、及び前記基板の裏面に設けられた第二電極を更に備え、
前記半導体基板、前記第一クラッド層、及び前記第二クラッド層は第一導電型を有し、
前記第三クラッド層及び前記コンタクト層は、前記第一導電型とは異なる第二導電型を有し、
前記第一コア層は、アンドープまたは前記第一導電型の量子井戸層を有し、
前記第二コア層は、アンドープの量子井戸層を有する請求項1〜3のいずれか一項に記載の半導体光集積素子。
【請求項5】
前記第三クラッド層上に設けられたコンタクト層、前記コンタクト層上に設けられた第一電極、及び前記基板の裏面に設けられた第二電極を更に備え、
前記半導体基板及び前記第一クラッド層は第一導電型を有し、
前記第二クラッド層、前記第三クラッド層、及び前記コンタクト層は、前記第一導電型とは異なる第二導電型を有し、
前記第一コア層は、アンドープの量子井戸層を有し、
前記第二コア層は、アンドープまたは前記第二導電型の量子井戸層を有する請求項1〜3のいずれか一項に記載の半導体光集積素子。
【請求項6】
前記第二領域において、前記第一コア層の幅が前記第二コア層の幅と異なる請求項1〜5のいずれか一項に記載の半導体光集積素子。
【請求項7】
前記第一クラッド層、前記第一コア層、前記第二クラッド層、前記第二コア層、及び前記第三クラッド層は、化合物半導体からなる請求項1〜6のいずれか一項に記載の半導体光集積素子。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
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【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2010−204364(P2010−204364A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−49465(P2009−49465)
【出願日】平成21年3月3日(2009.3.3)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月3日(2009.3.3)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】
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