説明

半導体装置の製造方法

【課題】 製造工程の短縮が可能なBiCMOS型半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】 エピタキシャル層12を形成したシリコン基板11表面に、素子分離領域15で分離されたバイポーラ/MOSトランジスタとなる領域を形成し、シリコン基板11表面に絶縁膜41を形成する工程と、エミッタ及びソース/ドレイン用の開口42を形成する工程と、これらのトランジスタ領域にポリシリコン膜を形成し、n型のPを導入する工程と、絶縁膜41の開口42及びその周辺部にあるポリシリコン膜にn型のAsを選択的に導入する工程と、絶縁膜41上のポリシリコン膜を残してエミッタ電極51、開口42のポリシリコン膜を残してソース/ドレイン電極52及びゲート電極53を形成する工程と、半導体基板11を熱処理して、n型不純物をベース領域23及びウェル領域33に拡散させて、エミッタ領域25及びソース/ドレイン領域32を形成する工程とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法に関し、特にBiCMOS(Bipolar Complementary Metal Oxide Semiconductor)型の半導体装置に適用して好適な製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、バイポーラトランジスタとMOSトランジスタを同一基板上に形成した、いわゆるBiCMOS型半導体装置は、バイポーラトランジスタの高速性と、MOSトランジスタの低消費電力性という特徴を生かして、様々な電気製品に使用されつつある。このBiCMOS型半導体装置は、バイポーラトランジスタの製造工程とMOSトランジスタの製造工程とを足し合わせて製造するために、製造工程が長くなる。
【0003】
例えば、p型のシリコン基板の表面に、n型のエピタキシャル層を形成して、そのn型のエピタキシャル層に縦型のnpnバイポーラトランジスタとnMOSトランジスタとを形成する半導体装置の製造工程では、ゲート酸化膜形成後、ポリシリコン膜にn型の不純物を導入しMOSトランジスタのゲート電極とし、その後、ソース領域とドレイン領域をn型の不純物のイオン注入で形成し、その後、別のポリシリコン膜にn型の不純物を導入し、熱拡散させて、バイポーラトランジスタのエミッタ領域を形成し、この別のポリシリコン膜をエミッタ電極としている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
この提案においては、npnバイポーラトランジスタのエミッタ領域/エミッタ電極及び、nMOSトランジスタのゲート電極、ソース/ドレイン領域は、それぞれ別々の形成工程を経て形成されている。すなわち、これらの工程において、ポリシリコン膜形成工程が2回、イオン注入工程が3回必要であり、製造工程が長いという問題があった。
【特許文献1】特開2003−234423号公報(第10〜11頁、図5〜図7)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、製造工程の短縮が可能なBiCMOS型半導体装置の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様の半導体装置の製造方法は、第1導電型のコレクタ領域と前記第1導電型とは逆の第2導電型のウェル領域とが素子分離領域で分離され、且つ前記コレクタ領域に第2導電型のベース領域が形成された半導体基板表面に絶縁膜を形成する工程と、前記ベース領域表面の前記絶縁膜部分に第1の開口を形成し、前記ウェル領域表面の前記絶縁膜部分に互いに離間した第2の開口を形成する工程と、前記第1及び第2の開口内、並びに前記絶縁膜上にポリシリコン膜を形成し、前記ポリシリコン膜中に第1導電型の第1の不純物を導入する工程と、前記第1及び第2の開口内の前記ポリシリコン膜中に選択的に第1導電型の第2の不純物を導入する工程と、前記第1の開口内の前記ポリシリコン膜を残し、他の前記ポリシリコン膜及び前記絶縁膜を選択的に除去してエミッタ電極を形成し、前記第2の開口内の前記ポリシリコン膜を残し、他の前記ポリシリコン膜及び前記絶縁膜を選択的に除去してソース又はドレイン電極を形成し、且つ前記第2の開口間に前記第2の開口と離間して前記絶縁膜及び前記ポリシリコン膜を残し、他の前記絶縁膜及び前記ポリシリコン膜を除去してゲート電極を形成する工程と、前記半導体基板を熱処理して、前記エミッタ電極を形成する前記ポリシリコン膜中の前記第1導電型の不純物を前記ベース領域に拡散させて第1導電型のエミッタ領域を形成し、前記ソース又はドレイン電極を形成する前記ポリシリコン膜中の前記第1導電型の不純物を前記ウェル領域に拡散させて第1導電型のソース又はドレイン領域を形成する工程とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、製造工程の短縮が可能なBiCMOS型半導体装置の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施例について、図面を参照しながら説明する。以下に示す図では、同一の構成要素には同一の符号を付す。
【実施例】
【0009】
本発明の実施例に係る半導体装置の製造方法について、図1乃至図3を参照しながら説明する。
【0010】
図1は、本発明の半導体装置の製造方法を工程順に説明するための図で、図1(a)〜図1(c)は模式的な断面図である。図2は、本発明の図1(c)に続く半導体装置の製造方法を、工程順に説明するための図で、図2(a)〜図2(c)は模式的な断面図である。図3は、本発明の図2(c)に続く半導体装置の製造方法を、工程順に説明するための図で、図3(a)、図3(b)は模式的な断面図である。
【0011】
まず、図1(a)に示すように、半導体基板であるシリコン基板11の表面上の層構造は、周知の方法により形成される。すなわち、第1導電型であるp型のシリコン基板11の表面上に、npnバイポーラトランジスタ(以下、npnトランジスタという)を形成する領域に第2導電型であるn型の不純物を固相拡散あるいはイオン注入し、nMOSトランジスタを形成する領域にn型の不純物をイオン注入して、前者にn+型のコレクタ埋め込み層21、後者にn+型の基板分離層31を形成する。
【0012】
その後、このシリコン基板11上にn型シリコンのエピタキシャル層12を0.5〜2.0μm程度形成し、次に、熱酸化あるいはリセスした後にCVD膜を形成することによって素子分離領域15を形成する。素子分離領域15形成時にできた表面の凹凸は平坦化しておく。なお、素子分離領域15に隣接するn+型コレクタ取り出し領域24、p+型のベース領域23、p型のウェル領域33はイオン注入法等で形成される。なお、シリコン基板11とエピタキシャル層12との境界を破線で示す。
【0013】
次に、図1(b)に示すように、npnトランジスタ及びnMOSトランジスタに必要な層構造を形成したシリコン基板11の表面上に、ゲート酸化膜となる絶縁膜41を、例えば、10〜50nm形成する。
【0014】
図1(c)に示すように、フォトレジスト膜(図示略)を付けて、パターニング(図示略)して、エッチング加工し、npnトランジスタのエミッタ領域にあたるベース領域23表面、及びnMOSトランジスタのソース/ドレイン領域にあたるウェル領域33表面の絶縁膜41に、それぞれ第1及び第2の開口42を形成する。その後、フォトレジスト膜を除去して、開口42を有する絶縁膜41が残される。
【0015】
図2(a)に示すように、絶縁膜41及び開口42を覆うように多結晶シリコンからなるポリシリコン膜43を、例えば、100〜300nm程度、CVD法で形成する。
【0016】
図2(b)に示すように、このポリシリコン膜43の抵抗を下げるため、及び、拡散源とするために、ポリシリコン膜43の表面に、第1の不純物であるn型不純物、例えば、リン(P)をイオン注入61する。
【0017】
図2(c)に示すように、npnトランジスタのエミッタ領域、nMOSトランジスタのソース/ドレイン領域に開口47を有するようにパターニングしたフォトレジスト膜46を形成する。フォトレジスト膜46の開口47は、シリコン基板11の表面から見た場合、ポリシリコン膜43の開口42より外側に広がっている。つまり、平面図的には、開口47の内側に開口42がすっぽり収まる位置関係にある。その後、フォトレジスト膜46及び開口47のポリシリコン膜43の表面に、n型不純物、例えば、ヒ素(As)をイオン注入63する。その後、マスクとして使用したフォトレジスト膜46を除去する。開口47部のポリシリコン膜43は、P及びAsがイオン注入された状態にある。
【0018】
図3(a)に示すように、P及びAsをイオン注入したポリシリコン膜43であるエミッタ電極51、ソース/ドレイン電極52及びPをイオン注入したポリシリコン膜43であるゲート電極52を残すように、ポリシリコン膜43の表面にフォトレジスト(図示略)でパターニングして、ポリシリコン膜43の他の部分をエッチング除去する。
【0019】
図3(b)に示すように、パターニングされたエミッタ電極51、ソース/ドレイン電極52及びゲート電極53等を含む表面に、例えば、CVD酸化膜(図示略)を形成し、アニール処理を行う。このアニール処理により、ポリシリコン膜43中にイオン注されていたP及びAsからなるn型不純物を固相拡散させ、npnトランジスタのエミッタ領域25をベース領域23の中に形成し、また、nMOSトランジスタのソース/ドレイン領域32をウェル領域33の中に、同時に形成する。
【0020】
その結果、シリコン基板11の表面に、素子分離領域15でそれぞれ電気的に分離された、n型のコレクタ領域22、p+型のベース領域23、n+型のエミッタ領域25が図面上下方向に配列され、エミッタ領域25に接して電気的接続が取れたエミッタ電極51を有するnpnバイポーラトランジスタ、及び、p型のウェル領域33の表面中央部にゲート酸化膜である絶縁膜41を介して配置されたゲート電極53、ゲート電極53の図面左右両端側に形成されたn型のソース/ドレイン領域32、ソース/ドレイン領域32に接続したソース/ドレイン電極52を有するnMOSトランジスタが形成される。この後は、周知の層間絶縁膜及びコンタクトプラグ形成工程等を経て、BiCMOS型の半導体装置が完成する。
【0021】
上述したように、BiCMOS型半導体装置の製造工程において、npnバイポーラトランジスタのエミッタ電極51とnMOSトランジスタのソース/ドレイン電極52及びゲート電極53は、同一のポリシリコン膜43を使用して、同時に形成可能である。同様に、ポリシリコン膜43中にイオン注されていたP及びAsからなるn型不純物を固相拡散させることによって、npnトランジスタのエミッタ領域25、及びnMOSトランジスタのソース/ドレイン領域32を同時に形成できる。
【0022】
すなわち、ポリシリコン膜43の形成工程は1回で済む。一方、ゲート電極53形成のためのイオン注入は1回であるが、エミッタ領域25及びソース/ドレイン領域32を形成するためのイオン注入は更に1回追加した2回必要となる。従って、本実施例の半導体装置の製造工程においては、従来に比較して、ポリシリコン膜の形成工程及びイオン注入工程においてそれぞれ1回ずつの短縮が可能となる。これらの工程の短縮に伴い、フォトリソグラフィ工程等の削減が可能となり、一層の工程の短縮が実現できる。
【0023】
本発明は、上述した実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で、種々、変形して実施することができる。
【0024】
例えば、実施例では、エミッタ領域25及びソース/ドレイン領域32形成のために、1回目のイオン種をP、2回目のイオン種をAsとしたが、2回とも同種の元素、例えば、PあるいはAsであっても差し支えない。
【0025】
また、実施例では、第1導電型をp型、第2導電型をn型とする例を示したが、第1導電型をn型、第2導電型をp型としても差し支えない。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施例に係る半導体装置の製造方法を工程順に説明するための図で、図1(a)〜図1(c)は模式的な断面図。
【図2】本発明の実施例に係る半導体装置の図1(c)に続く半導体装置の製造方法を、工程順に説明するための図で、図2(a)〜図2(c)は模式的な断面図。
【図3】本発明の実施例に係る半導体装置の図2(c)に続く半導体装置の製造方法を、工程順に説明するための図で、図3(a)、図3(b)は模式的な断面図である。
【符号の説明】
【0027】
11 シリコン基板
12 エピタキシャル層
15 素子分離領域
21 コレクタ埋め込み層
22 コレクタ領域
23 ベース領域
24 コレクタ取り出し領域
25 エミッタ領域
31 基板分離層
32 ソース/ドレイン領域
33 ウェル領域
41 絶縁膜
42、47 開口
43 ポリシリコン膜
46 フォトレジスト膜
51 エミッタ電極
52 ソース/ドレイン電極
53 ゲート電極
61、63 イオン注入

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電型のコレクタ領域と前記第1導電型とは逆の第2導電型のウェル領域とが素子分離領域で分離され、且つ前記コレクタ領域に第2導電型のベース領域が形成された半導体基板表面に絶縁膜を形成する工程と、
前記ベース領域表面の前記絶縁膜部分に第1の開口を形成し、前記ウェル領域表面の前記絶縁膜部分に互いに離間した第2の開口を形成する工程と、
前記第1及び第2の開口内、並びに前記絶縁膜上にポリシリコン膜を形成し、前記ポリシリコン膜中に第1導電型の第1の不純物を導入する工程と、
前記第1及び第2の開口内の前記ポリシリコン膜中に選択的に第1導電型の第2の不純物を導入する工程と、
前記第1の開口内の前記ポリシリコン膜を残し、他の前記ポリシリコン膜及び前記絶縁膜を選択的に除去してエミッタ電極を形成し、前記第2の開口内の前記ポリシリコン膜を残し、他の前記ポリシリコン膜及び前記絶縁膜を選択的に除去してソース又はドレイン電極を形成し、且つ前記第2の開口間に前記第2の開口と離間して前記絶縁膜及び前記ポリシリコン膜を残し、他の前記絶縁膜及び前記ポリシリコン膜を除去してゲート電極を形成する工程と、
前記半導体基板を熱処理して、前記エミッタ電極を形成する前記ポリシリコン膜中の前記第1導電型の不純物を前記ベース領域に拡散させて第1導電型のエミッタ領域を形成し、前記ソース又はドレイン電極を形成する前記ポリシリコン膜中の前記第1導電型の不純物を前記ウェル領域に拡散させて第1導電型のソース又はドレイン領域を形成する工程と
を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記第1の不純物はリン、前記第2の不純物はヒ素であることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記第1及び第2の不純物は、リンまたはヒ素であることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記第1及び第2の不純物の導入は、イオン注入で行うことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
第1導電型はn型、第2導電型はp型であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−147974(P2006−147974A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−338507(P2004−338507)
【出願日】平成16年11月24日(2004.11.24)
【出願人】(000221199)東芝マイクロエレクトロニクス株式会社 (376)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】