説明

搬送ロボット

【課題】昇降駆動手段において必要となる昇降駆動力を低減することができる搬送ロボットを提供すること。
【解決手段】本発明の搬送ロボットは、第1軸線周りに回転可能に構成された第1リンク部材と、第1軸線に対して所定距離に位置する第2軸線周りに回転可能に構成された第2リンク部材と、第2軸線に対して所定距離に位置する第3軸線周りに回転可能であり且つ物品を保持可能に構成された保持部材と、少なくとも保持部材を昇降駆動するための昇降駆動手段と、を備える。第1リンク部材、第2リンク部材、及び保持部材が、この順番で連結されてアームリンク機構を構成しており、昇降駆動手段が、第1リンク部材と保持部材との間に配置されてアームリンク機構の一部を構成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品を搬送するための搬送ロボットに関し、特に、ソーラーパネル用の大型ガラス基板のような重い基板の搬送に適している。
【背景技術】
【0002】
化学蒸着装置(CVD装置)のような基板処理装置に対して、処理すべき基板を搬入し、処理済みの基板を搬出するために、各種の搬送ロボットが用いられている。
【0003】
処理される基板の一例として、ソーラーパネルに用いられる角形のガラス基板があり、そのサイズは一辺が2mを超えており、大型の重量物である。
【0004】
このような大型のガラス基板を水平状態でラックに収容した場合、重力によってその中央部が下方に撓む。このため、複数のガラス基板をラックに収容するためには、ガラス基板同士の接触を防止するために上下方向において十分な間隔を確保する必要がある。
【0005】
その結果、ラック全体の高さが高くなり、この高さに対応するために、搬送ロボットにおいても、基板を保持するための基板保持部材の昇降動作について、高さ方向への十分な移動距離を確保する必要がある。
【0006】
従来、基板保持部材の昇降動作において十分な移動距離を確保すべく、基板保持部材を昇降駆動するための昇降駆動手段を備えた搬送ロボットが知られている。そのような昇降駆動手段としては、ロボットアームの基端部が装着された回転主軸を昇降させるものが知られている(特許文献1)。また、上下方向に延在する柱状部材と、この柱状部材に沿って昇降可能な昇降部材とを備え、昇降部材に基板保持部材を装着したものが知られている(特許文献2、3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平5−277970号公報
【特許文献2】特開2001−274218号公報
【特許文献3】WO2008/007516A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、上述した従来の搬送ロボットにおいては、第1リンク部材、第2リンク部材、及び基板保持部材から成るロボットアーム(水平多関節アーム)の全体を昇降させる構成であるため、ロボットアームの昇降駆動のために大きな駆動力が必要になるという問題があった(特許文献1、2、3)。
【0009】
特に、大型ガラス基板のような重量物を搬送するためには、十分な剛性を備えた部材によってロボットアームを構成する必要があるため、アーム重量が必然的に大きくなり、昇降駆動手段において必要となる昇降駆動力が益々大きくなる。
【0010】
また、従来の技術においては、ロボットアームの昇降駆動手段を水平面内で移動させるための機構を、第1リンク部材、第2リンク部材及び基板保持部材からなるリンク機構とは独立に設けていた(引用文献2、3)。
【0011】
このため、搬送ロボットを構成するために必要な部材の点数が増加し、搬送ロボットの構造が複雑化し、また、搬送ロボットによる専有面積(空間)が増大してしまうという問題があった。
【0012】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、昇降駆動手段において必要となる昇降駆動力を低減することができる搬送ロボットを提供することを目的とする。
【0013】
また、本発明は、搬送ロボットの昇降駆動手段を水平面内において移動させるための機構を、ロボット構造の複雑化を極力抑えながら実現できる搬送ロボットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために、本発明による搬送ロボットは、第1軸線周りに回転可能に構成された第1リンク部材と、前記第1軸線に対して所定距離に位置する第2軸線周りに回転可能に構成された第2リンク部材と、前記第2軸線に対して所定距離に位置する第3軸線周りに回転可能であり且つ物品を保持可能に構成された保持部材と、少なくとも前記保持部材を昇降駆動するための昇降駆動手段と、を備え、前記第1リンク部材、前記第2リンク部材、及び前記保持部材が、この順番で連結されてアームリンク機構を構成しており、前記昇降駆動手段が、前記第1リンク部材と前記保持部材との間に配置されて前記アームリンク機構の一部を構成していることを特徴とする。
【0015】
また、好ましくは、前記昇降駆動手段は、前記第2リンク部材と前記保持部材との連結に使用されている。
【0016】
また、好ましくは、前記昇降駆動手段は、前記第2リンク部材に固定して設けられた柱状部材と、前記柱状部材に対して昇降可能に設けられた昇降部材と、を有し、前記保持部材は、前記昇降部材に前記第3軸線周りに回転可能に設けられている。
【0017】
また、好ましくは、前記昇降駆動手段は、前記第2リンク部材に前記第3軸線周りに回転可能に設けられた柱状部材と、前記柱状部材に対して昇降可能に設けられた昇降部材と、を有し、前記保持部材は、前記昇降部材に固定して設けられている。
【0018】
また、好ましくは、前記昇降駆動手段は、前記第1リンク部材と前記第2リンク部材との連結に使用されている。
【0019】
また、好ましくは、前記昇降駆動手段は、前記第1リンクに固定して設けられた柱状部材と、前記柱状部材に対して昇降可能に設けられた昇降部材と、を有し、前記第2リンク部材は、前記昇降部材に前記第2軸線周りに回転可能に設けられており、前記保持部材は、前記第2リンク部材に前記第3軸線周りに回転可能に設けられている。
【0020】
また、好ましくは、前記昇降駆動手段は、前記第1リンク部材に前記第2軸線周りに回転可能に設けられた柱状部材と、前記柱状部材に対して昇降可能に設けられた昇降部材と、を有し、前記第2リンク部材は、前記昇降部材に固定して設けられている。
【0021】
また、好ましくは、前記第1軸線と前記第2軸線との前記所定距離が、前記第2軸線と前記第3軸線との前記所定距離に等しい。
【0022】
また、好ましくは、動作範囲制御上の最後退位置において物品を保持した前記保持部材、前記保持部材に保持された前記物品、前記第1リンク部材、前記第2リンク部材、前記昇降駆動手段を含む領域が、前記第1軸線から前記物品又は前記保持部材の最遠点までの距離を半径として前記第1軸線周りに1回転したときの旋回領域内に配置されるように、前記保持部材、前記第1リンク部材、前記第2リンク部材、前記昇降駆動手段の各寸法、前記昇降駆動手段の向きが選ばれている。
【発明の効果】
【0023】
本発明による搬送ロボットによれば、第1リンク部材、第2リンク部材、及び保持部材が、この順番で連結されてアームリンク機構を構成しており、昇降駆動手段が、第1リンク部材と保持部材との間に配置されてアームリンク機構の一部を構成しているので、少なくとも第1リンク部材を、昇降駆動手段による昇降対象から除くことができるので、昇降駆動手段において必要となる昇降駆動力を低減することができる。
【0024】
また、昇降駆動手段の水平面内での移動を、ロボットアームを構成する第1リンク部材及び/又は第2リンク部材の回転動作によって実施することができるので、ロボット構造の複雑化を極力抑ながら昇降駆動手段の水平移動を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施形態による搬送ロボットを示した図であり、(a)は平面図、(b)は側面図である。
【図2】図1に示した搬送ロボットの概略構成図。
【図3】図1に示した搬送ロボットの内部構造の概略を示した図。
【図3A】図1に示した搬送ロボットの内部構造の他の例の概略を示した図。
【図4】図1に示した搬送ロボットの動作を説明するための図であり、(a)は基板保持部を、動作範囲制限制御上、最も後退させた状態を示し、(c)は基板保持部を、動作範囲制限制御上、最も前進させた状態を示し、(b)は(a)の状態と(c)の状態との中間の状態を示している。
【図4A】図1に示した搬送ロボットにおける、基板を保持したロボットアームの自転動作を説明するための図であり、(a)は一方のラックの方向を向いた状態を示し、(b)は他方のラックの方向を向いた状態を示す。
【図5】本発明の他の実施形態による搬送ロボットを示した図であり、(a)は平面図、(b)は側面図である。
【図6】図5に示した搬送ロボットの概略構成図。
【図7】図5に示した搬送ロボットの内部構造の概略を示した図。
【図8】図5に示した搬送ロボットの動作を説明するための図であり、(a)は基板保持部を、動作範囲制限制御上、最も後退させた状態を示し、(c)は基板保持部を、動作範囲制限制御上、最も前進させた状態を示し、(b)は(a)の状態と(c)の状態との中間の状態を示している。
【図8A】図5に示した搬送ロボットにおける、基板を保持したロボットアームの自転動作を説明するための図であり、(a)は一方のラックの方向を向いた状態を示し、(b)は他方のラックの方向を向いた状態を示す。
【図9】本発明の更に他の実施形態による搬送ロボットを示した図であり、(a)は平面図、(b)は側面図である。
【図10】図9に示した搬送ロボットの概略構成図。
【図11】図9に示した搬送ロボットの内部構造の概略を示した図。
【図12】図9に示した搬送ロボットの動作を説明するための図であり、(a)は基板保持部を、動作範囲制限制御上、最も後退させた状態を示し、(c)は基板保持部を、動作範囲制限制御上、最も前進させた状態を示し、(b)は(a)の状態と(c)の状態との中間の状態を示している。
【図12A】図9に示した搬送ロボットにおける、基板を保持したロボットアームの自転動作を説明するための図であり、(a)は一方のラックの方向を向いた状態を示し、(b)は他方のラックの方向を向いた状態を示す。
【図13】図9に示した実施形態の一変形例による搬送ロボットを示した概略図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態による搬送ロボットについて、図面を参照して説明する。なお、以下に述べる搬送ロボットは、大型のガラス基板の搬送に適しており、単一のアームを備えている。
【0027】
まず初めに、図1乃至図4Aを参照して、本発明の一実施形態による搬送ロボットについて説明する。
【0028】
図1に示した実施形態による搬送ロボットは、基台1を備えており、この基台1に対して、第1リンク部材2の基端部が、第1軸線L1周りに回転可能に連結されている。第1リンク部材2の先端部には、第2リンク部材3の基端部が、第1軸線L1から所定距離D1に位置する第2軸線L2周りに回転可能に連結されている。
【0029】
第2リンク部材3上には昇降駆動手段4が設けられており、この昇降駆動手段4は、上下方向に延在する柱状部材5と、この柱状部材5に対して昇降可能に設けられた昇降部材6とを備えている。昇降駆動手段4の柱状部材5は、前面が開放した中空部材で形成されており、その水平断面が長方形を成している。柱状部材5の下端部は、第2リンク部材3上の、第2軸線L2よりも先端側の部分に固定して設けられている。
【0030】
昇降駆動手段4の昇降部材6は、水平方向に延在する細長い形状を有しており、昇降部材6自体が、ロボットアームの水平方向の実質的な長さの一部を形成している。図1(a)に示したように、昇降部材6は、柱状部材5の前面に対して斜め方向に張り出すように形成されている。
【0031】
昇降部材6の先端部の下面には、基板保持部材7の基端部8が第3軸線L3周りに回転可能に連結されている。第3軸線L3は、第2軸線L2から所定距離D2に位置しており、この距離D2は距離D1に等しい。
【0032】
基板保持部材7の基端部8から、複数(本例では2本)のフィンガー部9が水平方向に延在しており、フィンガー部9の上にガラス製の基板Sが保持される。フィンガー部9には、基板Sを吸着して保持するための手段(図示を省略)が設けられている。
【0033】
回転軸線L1、L2、L3は互いに平行であり、且つ、Z軸方向(鉛直方向)に延びており、基板保持部材7は、X軸、Y軸、及びZ軸の方向への自由度を有して変位駆動される。
【0034】
上記の通り本実施形態においては、昇降駆動手段4が、第2リンク部材3と基板保持部材7との間に配置され、アームリンク機構の一部を構成している。
【0035】
図1及び図2に示したように、本実施形態による搬送ロボットはロボット制御手段10を備えており、このロボット制御手段10によって、第1リンク駆動手段11、第2リンク駆動手段12、昇降駆動手段4、手首軸駆動手段13の駆動が制御される。
【0036】
図3に示したように、第1リンク部材2の基端部の下面には第1回転軸14が固定して設けられている。この第1回転軸14は、動力伝達機構15を介してサーボモータ16により回転駆動され、これにより、第1軸線L1周りに第1リンク部材2が回転する。動力伝達機構15及びサーボモータ16によって、図2に示した第1リンク駆動手段11が構成されている。
【0037】
第2リンク部材3の基端部の下面には、第2回転軸17が固定して設けられており、この第2回転軸17は、中空の第1リンク部材2の先端部上面に形成された孔に回転可能に挿入されている。この第2回転軸17は、第1リンク部材2内の動力伝達機構18を介してサーボモータ19により回転駆動され、これにより、第2軸線L2周りに第2リンク部材3が回転する。動力伝達機構18及びサーボモータ19によって、図2に示した第2リンク駆動手段12が構成されている。
【0038】
第2リンク部材3の先端側の部分の上面に、昇降駆動手段4が固定して設けられている。昇降駆動手段4は、昇降部材6を昇降させるための駆動機構(直動機構)を備えており、この駆動機構としては各種の機構を採用可能である。本実施形態においては、中空部材で形成した柱状部材5の内部の上端及び下端に一対のプーリ20、21を設け、その間にベルト22を掛け渡し、このベルト22に昇降部材6の基端部を固定する。そして、サーボモータ23によりプーリ20を回転駆動することにより、ベルト22と共に昇降部材6を昇降させる。
【0039】
基板保持部材7の基端部の上面には、第3回転軸(手首軸)24が固定して設けられており、この第3回転軸24は、中空の昇降部材6の先端部下面に形成された孔に回転可能に挿入されている。この第3回転軸24は、昇降部材6内の動力伝達機構25を介してサーボモータ26により回転駆動され、これにより、第3軸線L3周りに基板保持部材7が回転する。動力伝達機構25及びサーボモータ26によって、図2に示した手首軸駆動手段13が構成されている。
【0040】
動力伝達機構15、18、25には、減速機を備えた歯車動力伝達機構が用いられる。サーボモータ16、19、26の動力が減速機の入力側に伝達され、そのトルクが予め定める増幅比で増幅されると共に、その回転速度が予め定める減速比で減速されて、減速機の出力側から出力される。このようにして減速機の出力側から出力された動力によって、各回転軸14、17、24のそれぞれが回転駆動される。これにより、第1リンク部材2、第2リンク部材3、及び基板保持部材7のそれぞれが回転駆動される。
【0041】
なお、変形例としては、ダイレクトドライブモータによって各回転軸14、17、24を回転駆動するようにしても良い。
【0042】
図3Aに示したように、昇降駆動手段4における駆動機構(直動機構)の他の例としては、角変位量を調整可能な回転モータを用いたボールねじ機構30によって実現することもできる。このボールねじ機構30は、ねじ棒31と、このねじ棒31に螺合される螺合体32と、ねじ棒31を回転駆動する回転モータ33と、この回転モータ33の動力をねじ棒31に伝達する動力伝達機構34とを含み、螺合体32に昇降部材6の基端部が固定される。
【0043】
また、図3Aに示した例においては、第1リンク部材2を回転駆動するサーボモータ16及び動力伝達機構15が、第1リンク部材2の内部に配置されており、動力伝達機構15と第1回転軸14との間には減速機35が設けられている。
【0044】
同様に、図3Aに示した例においては、第2リンク部材3を回転駆動するサーボモータ19及び動力伝達機構18が、第2リンク部材3の内部に配置されており、動力伝達機構18と第2回転軸17との間には減速機36が設けられている。さらに、第3回転軸(手首軸)24と動力伝達機構25との間にも減速機37が設けられている。
【0045】
ロボット制御手段10は、第1リンク駆動手段11、第2リンク駆動手段12、昇降駆動手段4、及び手首軸駆動手段13のそれぞれのサーボモータ16、19、23、26のエンコーダから、各サーボモータ16、19、23、26の角度位置を取得することによって、各駆動手段11、12、4、13をフィードバック制御することができる。これにより、基板保持部材7を目的位置に精度良く位置合わせすることが可能となる。
【0046】
次に、図4を参照して、本実施形態による搬送ロボットの動作について説明する。
【0047】
図4(a)に示した、基板保持部材7を、動作範囲制限制御上(即ち、動作範囲ソフトリミット上、又は通常動作範囲上)、最も後退させた位置から、第1軸線L1を中心として、第1リンク部材2を、上方から見て時計回りに回転させる。すると、第1リンク部材2の回転に連動して、第2軸線L2を中心として第2リンク部材3が、上方から見て反時計回りに回転する(図4(b)、(c))。このとき、基板保持部材7も、第3軸線L3を中心として、上方から見て時計回りに回転し、基板保持部材7の向きが一定に維持される。
【0048】
図4(a)、(b)、(c)から分かるように、基板保持部材7の前後動作に際して、第3軸線L3は、第1軸線L1を通る共通の直線Mに沿って移動する。この共通の直線Mは基板保持部材7の中心線に略致しており、基板保持部材7に保持された基板Sの中心が共通の直線Mに沿って移動する。
【0049】
なお、基板Sを基板保持部材7で保持したロボットアームを自転させる際には、図4(a)に示した状態において、図4A(a)、(b)に示したように、第1軸線L1周りに第1リンク部材2を回転させる。これにより、異なる位置に配置された複数のラック40から基板Sを搬送又は搬出することができる。ここで、基板Sは重量物なので、その重心をなるべく第1軸線L1に近づけることで、基板Sを保持したロボットアームの自転時に必要となる動力を低減させることができると共に、自転時に基板S及びこれを保持するロボットアームが専有する回転専有面積を最小化することができる。
【0050】
このことは、長尺で且つ高い剛性を備えているためにその重量が大きい昇降駆動手段4においても同様である。そこで、本実施形態においては、昇降駆動手段4を図4(a)に示した位置に退避させることにより、基板Sの重心が第1軸線L1に近づくと共に、昇降駆動手段4を極力第1軸線L1に近づけてその旋回半径を最小化することを可能としている。
【0051】
図4Aに示したように、本実施形態においては、動作範囲制御上の最後退位置において基板Sを保持した基板保持部材7、基板保持部材7に保持された基板S、第1リンク部材2、第2リンク部材3、昇降駆動手段4を含む領域が、第1軸線L1から基板S又は基板保持部材7の最遠点までの距離を半径として第1軸線L1周りに1回転したときの旋回領域R内に配置されるように、基板保持部材7、第1リンク部材2、第2リンク部材3、昇降駆動手段4の各寸法、昇降駆動手段4の向きが選ばれている。
【0052】
上記構成より成る本実施形態によれば、第2リンク部材3と基板保持部材7との間に昇降駆動手段4を配置するようにしたので、昇降駆動手段4によって昇降させる部分が、ロボットアーム全体ではなく、昇降部材6に装着された基板保持部材7のみである。このため、昇降駆動手段4の昇降部材6にかかる荷重が減少し、昇降駆動手段4において必要となる駆動力を低減することができる。
【0053】
また、本実施形態においては、昇降駆動手段4を水平面内で移動させるための手段として、ロボットアームの一部である第1リンク部材2及び第2リンク部材3を利用しているので、ロボット構造の複雑化を極力抑えながら昇降駆動手段4の水平移動を可能としている。
【0054】
また、本実施形態においては、第2リンク部材3上の、第2軸線L2よりも先端側の部分に昇降駆動手段4を設けたので、図4(a)に示したように、基板保持部材7を、動作範囲制限制御上、最も後退させた状態において、基板S及び基板保持部材7との干渉をちょうど回避できる位置にくるように、昇降駆動手段4を設置することができる。
【0055】
また、本実施形態においては、基板Sを保持したロボットアームの自転時においてその重心をなるべく第1軸線L1に近づけると共に、昇降駆動手段4の旋回半径も最小化することで、自転時に必要となる動力を低減させることができると共に、自転時に基板S及びこれを保持するロボットアームが専有する回転専有面積を最小化することができる。
【0056】
特に本実施形態においては、昇降駆動手段4の柱状部材5が方形断面を有しており、その方形断面の一辺と基板Sの一辺とが平行になるように昇降駆動手段4を配置している。このため、図4(a)に示したように、昇降駆動手段4と基板Sとを極力接近させることができるので、第2リンク部材3上の昇降駆動手段4の位置に関して、第2軸線L2に近い位置に配置しつつ、基板Sを極力後退させることができる。これにより、自転時に基板S及びこれを保持するロボットアームが専有する回転専有面積をさらに最小化することができる。
【0057】
また、第1リンク部材2の動作と第2リンク部材3の動作との合成動作によって昇降駆動手段4を後退位置(図4(a))に移動させるようにしたので、合成動作中、昇降駆動手段4が、第1軸線L1からの距離が短くなるようにしながら移動できる。このため、1本のリンク部材によって円弧状に移動させる場合に比べて、基板Sの向きを一定に保ちつつ、昇降駆動手段4の移動距離自体を短くすることができると共に、重量物である昇降駆動手段4が、第1軸線L1からの距離を縮めながら移動できるので移動に要する駆動力を低減することができる。
【0058】
また、第2リンク部材3上の、第2軸線L2よりも先端側の部分に昇降駆動手段4を設けたので、図4(c)に示したように、ロボットアームを伸ばした状態において、昇降駆動手段4を共通の直線M上に位置させることができる。このため、アームを伸ばした状態において、昇降駆動手段4の重量がアームを捻る方向(ロール方向)に作用することを防止できる。
【0059】
また、昇降駆動手段4の柱状部材5の側面に昇降部材6を配置して、柱状部材5の側面に沿って昇降部材6と共に基板保持部材7が昇降できるようにしたので、従来の搬送ロボットにおけるパンタグラフ式の昇降手段に比べて、基板保持部材7の最下位置をより低くすることができる。
【0060】
次に、図5乃至図8Aを参照して、本発明の他の実施形態による搬送ロボットついて説明する。
【0061】
図5に示した実施形態による搬送ロボットは、基台1Aを備えており、この基台1Aに対して、第1リンク部材2Aの基端部が、第1軸線L1周りに回転可能に連結されている。第1リンク部材2Aの先端部には、第2リンク部材3Aの基端部が、第1軸線L1から所定距離D1に位置する第2軸線L2周りに回転可能に連結されている。
【0062】
なお、本実施形態における第2リンク部材3Aは、図1に示した実施形態における第2リンク部材3よりも長く、第1リンク部材2Aと同じ長さを有している。
【0063】
第2リンク部材3Aの先端部には昇降駆動手段4Aが設けられており、この昇降駆動手段4Aは、上下方向に延在する柱状部材5Aと、この柱状部材5Aに対して昇降可能に設けられた昇降部材6Aとを備えている。本実施形態においては、昇降部材6Aが、基板保持部材7Aの基端部8Aと一体的に形成されている。
【0064】
昇降駆動手段4Aの柱状部材5Aは、前面が開放した中空部材で形成されており、その水平断面が長方形を成している。柱状部材5Aの下端部は、第2リンク部材3Aの先端部に、第3軸線L3周りに回転可能に設けられている。第3軸線L3は、第2軸線L2から所定距離D2に位置しており、この距離D2は距離D1に等しい。
【0065】
基板保持部材7Aの基端部8Aから、複数(本例では2本)のフィンガー部9Aが水平方向に延在しており、フィンガー部9Aの上にガラス製の基板Sが保持される。フィンガー部9Aには、基板Sを吸着して保持するための手段(図示を省略)が設けられている。
【0066】
回転軸線L1、L2、L3は互いに平行であり、且つ、Z軸方向(鉛直方向)に延びており、基板保持部材7Aは、X軸、Y軸、及びZ軸の方向への自由度を有して変位駆動される。
【0067】
上記の通り本実施形態においては、昇降駆動手段4Aが、第2リンク部材3Aと基板保持部材7Aとの間に配置され、アームリンク機構の一部を構成している。また、昇降駆動手段4Aの柱状部材5Aが、第2リンク部材3Aの先端部に回転可能に設けられており、柱状部材5Aが基板保持部材7Aの回転軸として機能する。
【0068】
図5及び図6に示したように、本実施形態による搬送ロボットはロボット制御手段10Aを備えており、このロボット制御手段10Aによって、第1リンク駆動手段11A、第2リンク駆動手段12A、昇降駆動手段4A、手首軸駆動手段13Aの駆動が制御される。
【0069】
図7に示したように、第1リンク部材2Aの基端部の下面には第1回転軸14Aが固定して設けられている。この第1回転軸14Aは、動力伝達機構15Aを介してサーボモータ16Aにより回転駆動され、これにより、第1軸線L1周りに第1リンク部材2Aが回転する。動力伝達機構15A及びサーボモータ16Aによって、図6に示した第1リンク駆動手段11Aが構成されている。
【0070】
第2リンク部材3Aの基端部の下面には、第2回転軸17Aが固定して設けられており、この第2回転軸17Aは、中空の第1リンク部材2Aの先端部上面に形成された孔に回転可能に挿入されている。この第2回転軸17Aは、第1リンク部材2A内の動力伝達機構18Aを介してサーボモータ19Aにより回転駆動され、これにより、第2軸線L2周りに第2リンク部材3Aが回転する。動力伝達機構18A及びサーボモータ19Aによって、図6に示した第2リンク駆動手段12Aが構成されている。
【0071】
昇降駆動手段4Aの柱状部材5Aの下端部には、第3回転軸(手首軸)24Aが固定して設けられており、この第3回転軸24Aは、中空の第2リンク部材3Aの先端部上面に形成された孔に回転可能に挿入されている。この第3回転軸24Aは、第2リンク部材3A内の動力伝達機構25Aを介してサーボモータ26Aにより回転駆動され、これにより、第3軸線L3周りに昇降駆動手段4Aが回転する。動力伝達機構25A及びサーボモータ26Aによって、図6に示した手首軸駆動手段13Aが構成されている。
【0072】
昇降駆動手段4Aは、昇降部材6Aを昇降させるための駆動機構(直動機構)を備えており、この駆動機構としては各種の機構を採用可能である。本実施形態においては、中空部材で形成した柱状部材5Aの内部の上端及び下端に一対のプーリ20A、21Aを設け、その間にベルト22Aを掛け渡し、このベルト22Aに、基板保持部材7Aと一体的に形成された昇降部材6Aを固定する。そして、サーボモータ23Aによりプーリ20Aを回転駆動することにより、ベルト22Aと共に、昇降部材6A及び基板保持部材7Aを昇降させる。
【0073】
動力伝達機構15A、18A、25Aには、減速機を備えた歯車動力伝達機構が用いられる。サーボモータ16A、19A、26Aの動力が減速機の入力側に伝達され、そのトルクが予め定める増幅比で増幅されると共に、その回転速度が予め定める減速比で減速されて、減速機の出力側から出力される。このようにして減速機の出力側から出力された動力によって、各回転軸14A、17A、24Aのそれぞれが回転駆動される。これにより、第1リンク部材2A、第2リンク部材3A、及び基板保持部材7Aのそれぞれが回転駆動される。
【0074】
なお、変形例としては、ダイレクトドライブモータによって各回転軸14A、17A、24Aを回転駆動するようにしても良い。
【0075】
昇降駆動手段4Aにおける駆動機構(直動機構)の他の例としては、角変位量を調整可能な回転モータを用いたボールねじ機構によって実現することもできる。このボールねじ機構は、ねじ棒と、このねじ棒に螺合される螺合体と、ねじ棒を回転駆動する回転モータと、を含み、螺合体に昇降部材6Aが固定される。
【0076】
ロボット制御手段10Aは、第1リンク駆動手段11A、第2リンク駆動手段12A、手首軸駆動手段13A、及び昇降駆動手段4Aのそれぞれのサーボモータ16A、19A、26A、23Aのエンコーダから、各サーボモータ16A、19A、26A、23Aの角度位置を取得することによって、各駆動手段11A、12A、13A、4Aをフィードバック制御することができる。これにより、基板保持部材7Aを目的位置に精度良く位置合わせすることが可能となる。
【0077】
次に、図8を参照して、本実施形態による搬送ロボットの動作について説明する。
【0078】
図8(a)に示した、基板保持部材7Aを、動作範囲制限制御上、最も後退させた位置から、第1軸線L1を中心として、第1リンク部材2Aを、上方から見て時計回りに回転させる。すると、第1リンク部材2Aの回転に連動して、第2軸線L2を中心として、第2リンク部材3Aが、上方から見て反時計回りに回転する(図8(b)、(c))。このとき、昇降駆動手段4Aが、基板保持部材7Aと共に、第3軸線L3を中心として、上方から見て時計回りに回転し、基板保持部材7Aの向きが一定に維持される。
【0079】
図8(a)、(b)、(c)から分かるように、基板保持部材7Aの前後動作に際して、第3軸線L3は、第1軸線L1を通る共通の直線Mに沿って移動する。この共通の直線Mは基板保持部材7Aの中心線に略一致しており、基板保持部材7Aに保持された基板Sの中心が共通の直線Mに沿って移動する。
【0080】
なお、基板Sを基板保持部材7Aで保持したロボットアームを自転させる際には、図8(a)に示した状態において、図8A(a)、(b)に示したように、第1軸線L1周りに第1リンク部材2Aを回転させる。これにより、異なる位置に配置された複数のラック40から基板Sを搬送又は搬出することができる。ここで、基板Sは重量物なので、その重心をなるべく第1軸線L1に近づけることで、基板Sを保持したロボットアームの自転時に必要となる動力を低減させることができると共に、自転時に基板S及びこれを保持するロボットアームが専有する回転専有面積を最小化することができる。このことは、同じく重量物である昇降駆動手段4においても同様である。そこで、本実施形態においては、昇降駆動手段4を図8(a)に示した位置に退避させることにより、基板Sの重心が第1軸線L1に近づくと共に、昇降駆動手段4の旋回半径を最小化することを可能としている。
【0081】
図8Aに示したように、本実施形態においては、動作範囲制御上の最後退位置において基板Sを保持した基板保持部材7A、基板保持部材7Aに保持された基板S、第1リンク部材2A、第2リンク部材3A、昇降駆動手段4Aを含む領域が、第1軸線L1から基板S又は基板保持部材7Aの最遠点までの距離を半径として第1軸線L1周りに1回転したときの旋回領域R内に配置されるように、基板保持部材7A、第1リンク部材2A、第2リンク部材3A、昇降駆動手段4Aの各寸法、昇降駆動手段4Aの向きが選ばれている。
【0082】
上記構成より成る本実施形態によれば、第2リンク部材3Aと基板保持部材7Aとの間に昇降駆動手段4Aを配置するようにしたので、昇降駆動手段4Aによって昇降させる部分が、ロボットアーム全体ではなく、昇降部材6Aと一体に形成された基板保持部材7Aのみである。このため、昇降駆動手段4Aの昇降部材6Aにかかる荷重が減少し、昇降駆動手段4Aにおいて必要となる駆動力を低減することができる。
【0083】
特に本実施形態においては、図1に示した上記実施形態とは異なり、昇降駆動手段4Aを第2リンク部材3Aに対して回転可能に設けると共に、基板保持部材7Aを昇降駆動装置4Aに直接設けるようにしたので、手首軸駆動手段13Aを昇降対象から除外することができ、昇降駆動手段4Aの必要駆動力をさらに低減することができる。
【0084】
また、本実施形態においては、基板Sを保持したロボットアームの自転時においてその重心をなるべく第1軸線L1に近づけると共に、昇降駆動手段4の旋回半径も最小化することで、自転時に必要となる動力を低減させることができると共に、自転時に基板S及びこれを保持するロボットアームが専有する回転専有面積を最小化することができる。
【0085】
また、本実施形態においては、昇降駆動手段4Aを水平面内で移動させるための手段として、ロボットアームの一部である第1リンク部材2A及び第2リンク部材3Aを利用しているので、ロボット構造の複雑化を極力抑えながら昇降駆動手段4Aの水平移動を可能としている。
【0086】
また、第1リンク部材2Aの動作と第2リンク部材3Aの動作との合成動作によって昇降駆動手段4を後退位置(図8(a))に移動させるようにしたので、合成動作中、昇降駆動手段4が、第1軸線L1からの距離が短くなるようにしながら移動できる。このため、1本のリンク部材によって円弧状に移動させる場合に比べて、基板Sの向きを一定に保ちつつ、昇降駆動手段4Aの移動距離自体を短くすることができると共に、重量物である昇降駆動手段4が、第1軸線L1からの距離を縮めながら移動できるので移動に要する駆動力を低減することができる。
【0087】
また、第2リンク部材3Aの先端部に昇降駆動手段4Aを設けることにより、図8(c)に示したように、ロボットアームを伸ばした状態において、昇降駆動手段4Aを共通の直線M上に位置させることができる。このため、アームを伸ばした状態において、昇降駆動手段4Aの重量がアームを捻る方向(ロール方向)に作用することを防止できる。
【0088】
また、本実施形態においては、基板搬送動作の全体にわたって昇降駆動手段4Aが共通の直線M上に位置しており、昇降駆動手段4Aは直線的に移動するので、搬送時の揺れの発生を抑えることができる。
【0089】
また、昇降駆動手段4Aの柱状部材5Aの側面に昇降部材6Aを配置して、柱状部材5Aの側面に沿って昇降部材6Aと共に基板保持部材7Aが昇降できるようにしたので、従来の搬送ロボットにおけるパンタグラフ式の昇降手段に比べて、基板保持部材7Aの最下位置をより低くすることができる。
【0090】
次に、図9乃至図12Aを参照して、本発明のさらに他の実施形態による搬送ロボットについて説明する。
【0091】
図9に示した実施形態による搬送ロボットは、基台1Bを備えており、この基台1Bに対して、第1リンク部材2Bの基端部が、第1軸線L1周りに回転可能に連結されている。
【0092】
第1リンク部材2Bの先端部には昇降駆動手段4Bが設けられており、この昇降駆動手段4Bは、上下方向に延在する柱状部材5Bと、この柱状部材5Bに対して昇降可能に設けられた昇降部材6Bとを備えている。昇降駆動手段4Bの柱状部材5Bは、前面が開放した中空部材で形成されており、その水平断面が長方形を成している。柱状部材5Bの下端部は、第1リンク部材2Bの先端部の上面に固定して設けられている。
【0093】
昇降駆動手段4Bの昇降部材6Bには、第2リンク部材3Bの基端部が、第1軸線L1から所定距離D1に位置する第2軸線L2周りに回転可能に連結されている。昇降部材6Bは、水平方向に延在し且つ屈曲した張出し形状を有している。
【0094】
第2リンク部材3Bの先端部の下面には、基板保持部材7Bの基端部が、第3軸線L3周りに回転可能に連結されている。第3軸線L3は、第2軸線L2から所定距離D2に位置しており、この距離D2は距離D1に等しい。
【0095】
基板保持部材7Bの基端部8Bから、複数(本例では2本)のフィンガー部9Bが水平方向に延在しており、フィンガー部9Bの上にガラス製の基板Sが保持される。フィンガー部9Bには、基板Sを吸着して保持するための手段(図示を省略)が設けられている。
【0096】
回転軸線L1、L2、L3は互いに平行であり、且つ、Z軸方向(鉛直方向)に延びており、基板保持部材7Bは、X軸、Y軸、及びZ軸の方向への自由度を有して変位駆動される。
【0097】
上記の通り本実施形態においては、昇降駆動手段4Bが、第1リンク部材2Bと第2リンク部材3Bとの間に配置され、アームリンク機構の一部を構成している。
【0098】
図9及び図10に示したように、本実施形態による搬送ロボットはロボット制御手段10Bを備えており、このロボット制御手段10Bによって、第1リンク駆動手段11B、第2リンク駆動手段12B、昇降駆動手段4B、手首軸駆動手段13Bの駆動が制御される。
【0099】
図11に示したように、第1リンク部材2Bの基端部の下面には第1回転軸14Bが固定して設けられている。この第1回転軸14Bは、動力伝達機構15Bを介してサーボモータ16Bにより回転駆動され、これにより、第1軸線L1周りに第1リンク部材2Bが回転する。動力伝達機構15B及びサーボモータ16Bによって、図10に示した第1リンク駆動手段11Bが構成されている。
【0100】
第1リンク部材2Bの先端部の上面に、昇降駆動手段4Bが固定して設けられている。昇降駆動手段4Bは、昇降部材6Bを昇降させるための駆動機構(直動機構)を備えており、この駆動機構としては各種の機構を採用可能である。本実施形態においては、中空部材で形成した柱状部材5Bの内部の上端及び下端に一対のプーリ20B、21Bを設け、その間にベルト22Bを掛け渡し、このベルト22Bに昇降部材6Bの基端部を固定する。そして、サーボモータ23Bによりプーリ20Bを回転駆動することにより、ベルト22Bと共に昇降部材6Bを昇降させる。
【0101】
第2リンク部材3Bの基端部の上面には、第2回転軸17Bが固定して設けられており、この第2回転軸17Bは、中空の昇降部材6Bの先端部下面に形成された孔に回転可能に挿入されている。この第2回転軸17Bは、昇降部材6B内の動力伝達機構18Bを介してサーボモータ19Bにより回転駆動され、これにより、第2軸線L2周りに第2リンク部材3Bが回転する。動力伝達機構18B及びサーボモータ19Bによって、図10に示した第2リンク駆動手段12Bが構成されている。
【0102】
基板保持部材7Bの基端部の上面には第3回転軸(手首軸)24Bが固定して設けられており、この第3回転軸24Bは、第2リンク部材3Bの先端部下面に形成された孔に回転可能に挿入されている。この第3回転軸24Bは、第2リンク部材3B内の動力伝達機構25Bを介してサーボモータ26Bにより回転駆動され、これにより、第3軸線L3周りに基板保持部材7Bが回転する。動力伝達機構25B及びサーボモータ26Bによって、図10に示した手首軸駆動手段13Bが構成されている。
【0103】
動力伝達機構15B、18B、25Bには、減速機を備えた歯車動力伝達機構が用いられる。サーボモータ16B、19B、26Bの動力が減速機の入力側に伝達され、そのトルクが予め定める増幅比で増幅されると共に、その回転速度が予め定める減速比で減速されて、減速機の出力側から出力される。このようにして減速機の出力側から出力された動力によって、各回転軸14B、17B、24Bのそれぞれが回転駆動される。これにより、第1リンク部材2B、第2リンク部材3B、及び基板保持部材7Bのそれぞれが回転駆動される。
【0104】
なお、変形例としては、ダイレクトドライブモータによって各回転軸14B、17B、24Bを回転駆動するようにしても良い。
【0105】
昇降駆動手段4Bにおける駆動機構(直動機構)の他の例としては、角変位量を調整可能な回転モータを用いたボールねじ機構によって実現することもできる。このボールねじ機構は、ねじ棒と、このねじ棒に螺合される螺合体と、ねじ棒を回転駆動する回転モータと、を含み、螺合体に昇降部材6Bの基端部が固定される。
【0106】
ロボット制御手段10Bは、第1リンク駆動手段11B、昇降駆動手段4B、第2リンク駆動手段12B、及び手首軸駆動手段13Bのそれぞれのサーボモータ16B、23B、19B、26Bのエンコーダから、各サーボモータ16B、23B、19B、26Bの角度位置を取得することによって、各駆動手段11B、4B、12B、13Bをフィードバック制御することができる。これにより、基板保持部材7Bを目的位置に精度良く位置合わせすることが可能となる。
【0107】
次に、図12を参照して本実施形態による搬送ロボットの動作について説明する。
【0108】
図12(a)に示した、基板保持部材7Bを、動作範囲制限制御上、最も後退させた位置から、第1軸線L1を中心として、第1リンク部材2Bを、上方から見て時計回りに昇降駆動手段4Bと共に回転させる。すると、第1リンク部材2Bの回転に連動して、第2軸線L2を中心として第2リンク部材3Bが、上方から見て反時計回りに回転する(図12(b)、(c))。このとき、基板保持部材7Bも、第3軸線L3を中心として、上方から見て時計回りに回転し、基板保持部材7Bの向きが一定に維持される。
【0109】
図12(a)、(b)、(c)から分かるように、基板保持部材7Bの前後動作に際して、第3軸線L3は、第1軸線L1を通る共通の直線Mに沿って移動する。この共通の直線Mは基板保持部材7Bの中心線に略一致しており、基板保持部材7Bに保持された基板Sの中心が共通の直線Mに沿って移動する。
【0110】
なお、基板保持部材7Bで基板Sを保持したロボットアームを自転させる際には、図12(a)に示した状態において、図12A(a)、(b)に示したように、第1軸線L1周りに第1リンク部材2Bを回転させる。これにより、異なる位置に配置された複数のラック40から基板Sを搬送又は搬出することができる。ここで、基板Sは重量物なので、その重心をなるべく第1軸線L1に近づけることで、基板Sを保持したロボットアームの自転時に必要となる動力を低減させることができると共に、自転時に基板S及びこれを保持するロボットアームが専有する回転専有面積を最小化することができる。そこで、本実施形態においては、昇降駆動手段4Bを図12(a)に示した位置に退避させることにより、基板Sの重心が第1軸線L1に近づくと共に、昇降駆動手段4の旋回半径を最小化することを可能としている。
【0111】
図12Aに示したように、本実施形態においては、動作範囲制御上の最後退位置において基板Sを保持した基板保持部材7B、基板保持部材7Bに保持された基板S、第1リンク部材2B、第2リンク部材3B、昇降駆動手段4Bを含む領域が、第1軸線L1から基板S又は基板保持部材7Bの最遠点までの距離を半径として第1軸線L1周りに1回転したときの旋回領域R内に配置されるように、基板保持部材7B、第1リンク部材2B、第2リンク部材3B、昇降駆動手段4Bの各寸法、昇降駆動手段4Bの向きが選ばれている。
【0112】
上記構成より成る本実施形態によれば、第1リンク部材2Bと第2リンク部材3Bとの間に昇降駆動手段4Bを配置するようにしたので、昇降駆動手段4Bによって昇降させる部分が、ロボットアーム全体ではなく、昇降部材6に装着された第2リンク3B及び基板保持部材7Bのみである。このため、昇降駆動手段4Bの昇降部材6Bにかかる荷重が減少し、昇降駆動手段4Bにおいて必要となる駆動力を低減することができる。
【0113】
また、本実施形態においては、基板Sを保持したロボットアームの自転時においてその重心をなるべく第1軸線L1に近づけると共に、昇降駆動手段4の旋回半径も最小化することで、自転時に必要となる動力を低減させることができると共に、自転時に基板S及びこれを保持するロボットアームが専有する回転専有面積を最小化することができる。
【0114】
また、本実施形態においては、昇降駆動手段4Bを水平面内で移動させるための手段として、ロボットアームの一部である第1リンク部材2Bを利用しているので、ロボット構造の複雑化を極力抑えながら昇降駆動手段4Bの水平移動を可能としている。
【0115】
また、昇降駆動手段4Bの柱状部材5Bの側面に昇降部材6Bを配置して、柱状部材5Bの側面に沿って昇降部材6Bと共に基板保持部材7Bが昇降できるようにしたので、従来の搬送ロボットにおけるパンタグラフ式の昇降手段に比べて、基板保持部材7Bの最下位置をより低くすることができる。
【0116】
次に、図9乃至図12Aに示した上記実施形態の一変形例としては、図13に示したように、昇降駆動手段4Bの柱状部材5Bを第1リンク部材2Bに第2軸線L2周りに回転可能に設けると共に、第2リンク部材3Bを昇降部材6Bに固定して設けるようにしても良い。
【0117】
図13に示した変形例においては、柱状部材5Bの下端に第2回転軸17Bが設けられており、この第2回転軸17Bを回転させる第2リンク駆動手段12Bが、第1リンク部材2Bの内部に配置されている。
【0118】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、上記実施形態は、本発明の範囲内で適宜変更することができる。例えば、上記各実施形態においては、各回転軸に各サーボモータを設けて個別に駆動できるようにしているが、これに代えて、回転軸同士の間にベルトを掛け渡して一方の回転軸の回転力が他方の回転軸に伝達されるようにして、他方の回転軸のサーボモータを省略しても良い。また、昇降駆動手段における駆動機構は、ラックピニオン、リニアモータ、又はシリンダ、等の直動機構でも良い。
【符号の説明】
【0119】
1,1A,1B 基台
2,2A,2B 第1リンク部材
3,3A,3B 第2リンク部材
4,4A,4B 昇降駆動手段
5,5A,5B 昇降駆動手段の柱状部材
6,6A,6B 昇降駆動手段の昇降部材
7,7A,7B 基板保持部材
8,8A,8B 基板保持部材の基端部
9,9A,9B 基板保持部材のフィンガー部
10 ロボット制御手段
11 第1リンク駆動手段
12 第2リンク駆動手段
13 手首軸駆動手段
L1 第1軸線
L2 第2軸線
L3 第3軸線
M 共通の直線
S ガラス基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1軸線周りに回転可能に構成された第1リンク部材と、
前記第1軸線に対して所定距離に位置する第2軸線周りに回転可能に構成された第2リンク部材と、
前記第2軸線に対して所定距離に位置する第3軸線周りに回転可能であり且つ物品を保持可能に構成された保持部材と、
少なくとも前記保持部材を昇降駆動するための昇降駆動手段と、を備え、
前記第1リンク部材、前記第2リンク部材、及び前記保持部材が、この順番で連結されてアームリンク機構を構成しており、前記昇降駆動手段が、前記第1リンク部材と前記保持部材との間に配置されて前記アームリンク機構の一部を構成している、搬送ロボット。
【請求項2】
前記昇降駆動手段は、前記第2リンク部材と前記保持部材との連結に使用されている、請求項1記載の搬送ロボット。
【請求項3】
前記昇降駆動手段は、前記第2リンク部材に固定して設けられた柱状部材と、前記柱状部材に対して昇降可能に設けられた昇降部材と、を有し、前記保持部材は、前記昇降部材に前記第3軸線周りに回転可能に設けられている、請求項2記載の搬送ロボット。
【請求項4】
前記昇降駆動手段は、前記第2リンク部材に前記第3軸線周りに回転可能に設けられた柱状部材と、前記柱状部材に対して昇降可能に設けられた昇降部材と、を有し、前記保持部材は、前記昇降部材に固定して設けられている、請求項2記載の搬送ロボット。
【請求項5】
前記昇降駆動手段は、前記第1リンク部材と前記第2リンク部材との連結に使用されている、請求項1記載の搬送ロボット。
【請求項6】
前記昇降駆動手段は、前記第1リンクに固定して設けられた柱状部材と、前記柱状部材に対して昇降可能に設けられた昇降部材と、を有し、前記第2リンク部材は、前記昇降部材に前記第2軸線周りに回転可能に設けられており、前記保持部材は、前記第2リンク部材に前記第3軸線周りに回転可能に設けられている、請求項5記載の搬送ロボット。
【請求項7】
前記昇降駆動手段は、前記第1リンク部材に前記第2軸線周りに回転可能に設けられた柱状部材と、前記柱状部材に対して昇降可能に設けられた昇降部材と、を有し、前記第2リンク部材は、前記昇降部材に固定して設けられている、請求項5記載の搬送ロボット。
【請求項8】
前記第1軸線と前記第2軸線との前記所定距離が、前記第2軸線と前記第3軸線との前記所定距離に等しい、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の搬送ロボット。
【請求項9】
動作範囲制御上の最後退位置において物品を保持した前記保持部材、前記保持部材に保持された前記物品、前記第1リンク部材、前記第2リンク部材、前記昇降駆動手段を含む領域が、前記第1軸線から前記物品又は前記保持部材の最遠点までの距離を半径として前記第1軸線周りに1回転したときの旋回領域内に配置されるように、前記保持部材、前記第1リンク部材、前記第2リンク部材、前記昇降駆動手段の各寸法、前記昇降駆動手段の向きが選ばれていることを特徴とする、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の搬送ロボット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図3A】
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【図4】
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【図4A】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図8A】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図12A】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−115932(P2012−115932A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−266950(P2010−266950)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(000000974)川崎重工業株式会社 (1,710)
【Fターム(参考)】