説明

横型バイポーラトランジスタ、およびそれを有する半導体装置、ならびにそれらの製造方法

【課題】横型バイポーラトランジスタ、およびそれを有する半導体装置、ならびにそれらの製造方法において、エピタキシャル層表面近傍に潜在しているダメージによって横型バイポーラトランジスタの利得が得られないことを改善する。
【解決手段】ベース領域の上部に設けた不純物を含有する半導体層の前記不純物を熱拡散させてコレクタ拡散層とエミッタ拡散層とを並設してなる横型バイポーラトランジスタ、およびそれを有する半導体装置において、半導体層を横断させて不純物をさらにイオン注入した後に熱処理することによってコレクタ拡散層とエミッタ拡散層とを設ける。半導体層はシリコンゲルマニウム層とし、特に、半導体装置に横型バイポーラトランジスタとともに形成するシリコンゲルマニウムヘテロ接合バイポーラトランジスタの形成に用いるシリコンゲルマニウム層を利用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、横型バイポーラトランジスタおよびそれを有する半導体装置、ならびにそれらの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の電子機器の小型軽量化に伴って、バイポーラトランジスタとCMOSトランジスタとを同一半導体基板上に混載して、両トランジスタの長所を有効に利用したBiCMOS半導体装置が使用されるようになってきている。
【0003】
このようなBiCMOS半導体装置においては、半導体基板上にバイポーラトランジスタとCMOSトランジスタとを略同一工程にて製造することができるようにするために、ベース領域の上部にコレクタ領域とエミッタ領域とを並設した横型バイポーラトランジスタが採用されている。また、横型バイポーラトランジスタとシリコンゲルマニウムヘテロ接合バイポーラトランジスタとを同一半導体基板上に混載することも行われている。
【0004】
従来のPMOSトランジスタ、NMOSトランジスタ、および横型バイポーラトランジスタを同一基板上に形成した場合のシリコンゲルマニウムヘテロ接合バイポーラトランジスタ100の断面図を図7に示す。
【0005】
P型半導体基板102の内部に形成されたN型埋め込み層112およびP型半導体基板102の表面に形成したN型エピタキシャル層113中に形成したSIC(Selection Implantation Collector)から成るコレクタ領域124、ゲルマニウムを含むエピタキシャル層(シリコンゲルマニウム層)からなるベース領域120、多結晶シリコンからベース領域(シリコンゲルマニウム層)に不純物拡散させたエミッタ領域125が形成され、また、コレクタ取出層117、ベース領域120、エミッタ領域125、エミッタ電極126、金属シリサイド127、酸化膜114、酸化膜115、酸化膜129、P型素子分離層118、酸化膜123、窒化珪素膜128、層間膜130、タングステンプラグ131が形成されている。
【0006】
このシリコンゲルマニウムヘテロ接合バイポーラトランジスタ100の周波数特性を向上させるには、P型半導体基板102の上に形成するN型エピタキシャル層113の膜厚はできるだけ薄いほうが好ましい。
【0007】
また、従来のPMOSトランジスタ、NMOSトランジスタ、およびシリコンゲルマニウムヘテロ接合バイポーラトランジスタを同一基板上に形成した場合の横型バイポーラトランジスタ101の断面図を図8に示す。
【0008】
エミッタ領域109およびコレクタ領域108の取り出し部分となるP型半導体基板102の表面上に配された絶縁膜を開口し、ゲルマニウムを含むP型半導体膜をエピタキシャル成長させ,レジストパターンを用いたエッチングにより形成したエミッタ電極107とコレクタ電極106とを有している。
【0009】
この電極形成以降に熱処理を行うことにより、ゲルマニウムを含むP型半導体膜からの不純物拡散により横型バイポーラトランジスタのエミッタ拡散層122およびコレクタ拡散層121が自己整合的に形成される。ここで、N型エピタキシャル層104およびN+埋め込み層103はベース領域105を形成し、さらに酸化膜114、酸化膜115、酸化膜123、酸化膜129、ベース取出層116、P型素子分離層118、窒化珪素膜128、金属シリサイド127、層間膜130、タングステンプラグ131が形成されている。
【0010】
このようにエミッタ拡散層122およびコレクタ拡散層121を熱拡散によって形成することにより、エミッタ拡散層122およびコレクタ拡散層121を非常に浅く形成できるので、シリコンゲルマニウムヘテロ接合バイポーラトランジスタ100の周波数特性を向上させるためにN型エピタキシャル層104の膜厚を薄くしても、N+型埋め込み層103とエミッタ拡散層122およびコレクタ拡散層121との距離を十分持たせることができ、シリコンゲルマニウムヘテロ接合バイポーラトランジスタの周波数特性を向上させながら耐圧の低下を防ぐことを可能としていた(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2004−111575号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上述した従来の横型バイポーラトランジスタにあっては、エミッタおよびコレクタとベースとの接合部がエピタキシャル層表面に近くなりやすく、この表面近傍に潜在している格子欠陥などのダメージに起因して、エミッタ−ベース間、コレクタ−ベース間でリーク電流が発生し、図9のガンメルプロットに示すようにバイポーラトランジスタとしての利得が十分に得られなくなる場合があるという問題があった。
【0012】
この場合、エミッタ電極およびコレクタ電極の形成工程以降の熱処理を高温化もしくは長時間化することによって、エミッタ電極およびコレクタ電極の接合部をある程度深くすることにより問題の解消を図ることが考えられるが、この高温化もしくは長時間化した熱処理にともなって、同一基板上に形成されるシリコンゲルマニウムヘテロ接合バイポーラトランジスタにおけるベース層内の不純物も拡散してベース幅が厚くなり、シリコンゲルマニウムヘテロ接合バイポーラトランジスタの周波数特性を悪化させる虞があった。
【0013】
そこで、本発明では、横型バイポーラトランジスタのエミッタおよびコレクタとベースとの接合部がエピタキシャル層表面に近い場合であっても横型バイポーラトランジスタとしての利得が十分得られ、さらに、同一の半導体基板上に横型バイポーラトランジスタとシリコンゲルマニウムヘテロ接合バイポーラトランジスタとを同時に形成する場合であっても、シリコンゲルマニウムヘテロ接合バイポーラトランジスタの周波数特性を悪化させることなく、同時に、横型バイポーラトランジスタのエミッタ−ベース間、コレクタ−ベース間でリーク電流の発生が少ない横型バイポーラトランジスタ、およびそれを有する半導体装置の構造、ならびにそれらの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の横型バイポーラトランジスタでは、ベース領域の上部に設けた不純物を含有する半導体層の不純物を熱拡散させてコレクタ拡散層とエミッタ拡散層とを並設してなる横型バイポーラトランジスタにおいて、半導体層を横断させて前記不純物と同じ導電型となる不純物をさらにイオン注入した後に熱処理することによってコレクタ拡散層とエミッタ拡散層とを設けた。さらに、半導体層をシリコンゲルマニウム層としたことにも特徴を有するものである。
【0015】
本発明の半導体装置では、ベース領域の上部に設けた不純物を含有する半導体層の不純物を熱拡散させてコレクタ拡散層とエミッタ拡散層とを並設してなる横型バイポーラトランジスタと、シリコンゲルマニウムヘテロ接合バイポーラトランジスタとを同一の半導体基板上に形成してなる半導体装置において、半導体層を横断させて前記不純物と同じ導電型となる不純物をさらにイオン注入した後に熱処理することによってコレクタ拡散層とエミッタ拡散層とを設けた。さらに、半導体層をシリコンゲルマニウム層としたこと、特に、半導体層は、シリコンゲルマニウムヘテロ接合バイポーラトランジスタのベース領域を形成するために設けるシリコンゲルマニウム層で構成し、不純物のイオン注入は、ベース領域へのイオン注入と同時に行ったことにも特徴を有するものである。
【0016】
本発明の横型バイポーラトランジスタの製造方法では、ベース領域の上部に設けた不純物を含有する半導体層の不純物を熱拡散させてコレクタ拡散層とエミッタ拡散層とを形成する横型バイポーラトランジスタの製造方法において、半導体層を横断させて前記不純物と同じ導電型となる不純物をさらにイオン注入し、その後、熱処理を行うことによりコレクタ拡散層とエミッタ拡散層とを形成することとした。
【0017】
本発明の半導体装置の製造方法では、ベース領域の上部に設けた不純物を含有する半導体層の不純物を熱拡散させてコレクタ拡散層とエミッタ拡散層とを形成する横型バイポーラトランジスタと、シリコンゲルマニウムヘテロ接合バイポーラトランジスタとを同一の半導体基板上に形成する半導体装置の製造方法において、半導体層を横断させて前記不純物と同じ導電型となる不純物をさらにイオン注入し、その後、熱処理を行うことによりコレクタ拡散層とエミッタ拡散層とを形成することとした。
【発明の効果】
【0018】
請求項1記載の発明では、ベース領域の上部に設けた不純物を含有する半導体層の不純物を熱拡散させてコレクタ拡散層とエミッタ拡散層とを並設してなる横型バイポーラトランジスタにおいて、半導体層を横断させて前記不純物と同じ導電型となる不純物をさらにイオン注入した後に熱処理することによってコレクタ拡散層とエミッタ拡散層とを設けたことによって、高温もしくは長時間の熱処理を行うことなく表面における格子欠陥などのダメージの影響を受けない程度にベース接合部を深く形成でき、利得を十分に得ることができる横型バイポーラトランジスタを提供できる。
【0019】
請求項2記載の発明では、請求項1記載の横型バイポーラトランジスタにおいて、半導体層をシリコンゲルマニウム層としたことによって、シリコンゲルマニウム層によりイオン注入によって注入される不純物が深く注入されることを抑制して浅い接合とすることができ、耐圧性を維持しながらエミッタ−ベース間及びコレクタ−ベース間でのリーク電流を抑制して、利得を十分に得ることができる横型バイポーラトランジスタを提供できる。
【0020】
請求項3記載の発明では、ベース領域の上部に設けた不純物を含有する半導体層の不純物を熱拡散させてコレクタ拡散層とエミッタ拡散層とを並設してなる横型バイポーラトランジスタと、シリコンゲルマニウムヘテロ接合バイポーラトランジスタとを同一の半導体基板上に形成してなる半導体装置において、半導体層を横断させて前記不純物と同じ導電型となる不純物をさらにイオン注入した後に熱処理することによってコレクタ拡散層とエミッタ拡散層とを設けたことによって、高温もしくは長時間の熱処理を行うことなく表面における格子欠陥などのダメージの影響を受けない程度にベース接合部を深く形成でき、利得を十分に得ることができる横型バイポーラトランジスタを設けた半導体装置を提供できる。
【0021】
請求項4記載の発明では、請求項3記載の半導体装置において、半導体層をシリコンゲルマニウム層としたことによって、シリコンゲルマニウム層によりイオン注入によって注入される不純物が深く注入されることを抑制して浅い接合とすることができ、耐圧性を維持しながらエミッタ−ベース間及びコレクタ−ベース間でのリーク電流を抑制して、利得を十分に得ることができる横型バイポーラトランジスタを設けた半導体装置を提供できる。
【0022】
請求項5記載の発明では、請求項3記載の半導体装置において、半導体層は、シリコンゲルマニウムヘテロ接合バイポーラトランジスタのベース領域を形成するために設けるシリコンゲルマニウム層で構成し、不純物のイオン注入は、ベース領域へのイオン注入と同時に行ったことによって、シリコンゲルマニウムヘテロ接合バイポーラトランジスタのベース領域の低抵抗化の処理にともなって横型バイポーラトランジスタへの不純物の追加を行うことができ、しかも、シリコンゲルマニウム層によりイオン注入によって注入される不純物が深く注入されることを抑制して浅い接合とすることができ、耐圧性を維持しながらエミッタ−ベース間及びコレクタ−ベース間でのリーク電流を抑制して、利得を十分に得ることができる横型バイポーラトランジスタを設けた半導体装置を提供できる。
【0023】
請求項6記載の発明では、ベース領域の上部に設けた不純物を含有する半導体層の不純物を熱拡散させてコレクタ拡散層とエミッタ拡散層とを形成する横型バイポーラトランジスタの製造方法において、半導体層を横断させて前記不純物と同じ導電型となる不純物をさらにイオン注入し、その後、熱処理を行うことによりコレクタ拡散層とエミッタ拡散層とを形成することによって、請求項1記載の発明と同様に、高温もしくは長時間の熱処理を行うことなく表面における格子欠陥などのダメージの影響を受けない程度にベース接合部を深く形成でき、利得を十分に得ることができる横型バイポーラトランジスタを提供可能とすることができる。
【0024】
請求項7記載の発明では、ベース領域の上部に設けた不純物を含有する半導体層の不純物を熱拡散させてコレクタ拡散層とエミッタ拡散層とを形成する横型バイポーラトランジスタと、シリコンゲルマニウムヘテロ接合バイポーラトランジスタとを同一の半導体基板上に形成する半導体装置の製造方法において、半導体層を横断させて前記不純物と同じ導電型となる不純物をさらにイオン注入し、その後、熱処理を行うことによりコレクタ拡散層とエミッタ拡散層とを形成することによって、請求項3記載の発明と同様に、高温もしくは長時間の熱処理を行うことなく表面における格子欠陥などのダメージの影響を受けない程度にベース接合部を深く形成でき、利得を十分に得ることができる横型バイポーラトランジスタを設けた半導体装置を提供可能とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明に係る横型バイポーラトランジスタ及びこの横型バイポーラトランジスタを有する半導体装置は、横型バイポーラトランジスタのコレクタ拡散層とエミッタ拡散層とを、ベース領域の上部に設けた不純物を含有する半導体層中の不純物を熱拡散させて形成しているものであって、特に、ベース領域の上部に設けた半導体層に、この半導体層中の不純物と同じ導電型となる不純物をさらにイオン注入し、その後熱拡散させてコレクタ拡散層及びエミッタ拡散層を形成しているものである。
【0026】
このようにイオン注入によって不純物を追加注入して不純物の熱拡散を行うことにより、高温もしくは長時間の熱処理を行うことなく表面における格子欠陥などのダメージの影響を受けない程度にベース接合部を深く形成でき、横型バイポーラトランジスタの利得を十分に大きくすることができる。
【0027】
しかも、半導体層として不純物の拡散を抑制する組み合わせの半導体層を選択することにより、イオン注入を行った場合に不純物が深く注入されることを抑制でき、耐圧性を維持しながらエミッタ−ベース間及びコレクタ−ベース間でのリーク電流を抑制できる。
【0028】
このような半導体層と不純物の組み合わせとしては、シリコンゲルマニウム層とホウ素(B)の組み合わせを採用することが望ましい。なお、シリコンゲルマニウムに替えてシリコンゲルマニウムカーボンを用いる場合においても同様の作用と効果が期待できる。
【0029】
特に、シリコンゲルマニウム層(以下、「SiGe層」という)を用いる場合には、横型バイポーラトランジスタと同時に形成するシリコンゲルマニウムヘテロ接合バイポーラトランジスタ(以下、「SiGeHBT」という)のベース領域の形成に用いるシリコンゲルマニウム層を用いることができ、横型バイポーラトランジスタに用いるSiGe層と、SiGeHBTに用いるSiGe層とを同時に形成することができる。
【0030】
なお、横型バイポーラトランジスタのベース領域の上部に設けた半導体層であるSiGe層に含有させた不純物と、SiGe層の形成後にSiGe層を横断させて注入される不純物とは同一種であってもよいし、異種であってもよく、導電型が同じであればよい。
【0031】
このように、SiGe層に追加で不純物をイオン注入して濃度を上げ、その後の熱処理により不純物を拡散させることにより、格子欠陥などのダメージの潜在している領域を避けて接合部を形成することが、しかも、直接イオン注入で拡散領域を形成するよりも浅い位置に接合部を形成することができる。特にSiGe層を用いていることによって、不純物の拡散係数が小さく、そのために精密に拡散深さを制御することができる。
【0032】
したがって、耐圧の低下を微減にとどめながらエミッタ−ベース間、コレクタ−ベース間でのリーク電流を押さえることができるので、バイポーラトランジスタとしての利得を十分に得ることができる。そして、図1のガンメルプロットに示すような良好な特性が得られる。
【0033】
さらに、横型バイポーラトランジスタのコレクタ拡散層とエミッタ拡散層とを浅く形成することができるので、コレクタ拡散層及びエミッタ拡散層が形成されるピタキシャル層の膜厚も薄くすることができ、SiGeHBTの周波数特性を向上させることができる。
【0034】
以下において、本実施の形態について図面を参照しながら具体的に説明する。図2に示すように、本実施の形態に係る横型バイポーラトランジスタ1は、P型半導体基板2にN+埋め込み層3とN型エピタキシャル層4とからなるベース領域5が形成され、このベース領域5の上部にP型の不純物を含有するSiGe層からなるコレクタ層6とエミッタ層7とが左右に間隔をあけて積層され、その後、各コレクタ層6とエミッタ層7に含有させたP型の不純物をベース領域5のN型エピタキシャル層4の内部に拡散させてコレクタ拡散層21およびエミッタ拡散層22とが形成され、さらにこのSiGe層を通して不純物をイオン注入してコレクタ領域8およびエミッタ領域9が形成されている。
【0035】
なお、図2に示すように、横型バイポーラトランジスタ1には、背景技術に示すと同様の酸化膜14、酸化膜15、酸化膜23、酸化膜29、ベース取出層16、P型素子分離層18、窒化珪素膜28、金属シリサイド27、層間膜30、タングステンプラグ31がさらに形成されている。
【0036】
図3〜図6を参照しながら横型バイポーラトランジスタ1の製造方法を説明する。なお、以下の説明では、同一半導体基板上に横型バイポーラトランジスタ1と、背景技術で示したSiGeHBT100と同様な構成を有するSiGeHBT10とを同時に製造する場合の製造方法の説明を行う。
【0037】
以下の図3〜5のいずれにおいても、(a)は同一半導体基板上に形成される横型バイポーラトランジスタ1の製造方法の各工程を示し、(b)は同一半導体基板上に形成されるSiGeHBT10の製造法の各工程を示すものである。なお、より前の工程で説明された構成部分については同一の符号を付して説明を省略する。ここで、説明の便宜上、横型バイポーラトランジスタ1はPNP特性を有し、SiGeHBT10はNPN特性を有するものについて説明をする。
【0038】
まず、前処理としてP型半導体基板2の表面を犠牲酸化させた後にフッ酸などの薬液を用いて酸化膜を除去し、その後、熱酸化させてP型半導体基板2の表面に酸化膜を形成する(図示せず)。
【0039】
次に、P型半導体基板2の表面の酸化膜を、レジストパターンを用いたドライエッチングにより除去して、横型バイポーラトランジスタ1とSiGeHBT10とを形成するための領域に開口部を形成する(図示せず)。
【0040】
図3で示される工程を説明する。まず、アンチモン(Sb)を気相拡散させることでP型半導体基板2の内部にN+埋め込み層3、12をそれぞれ形成し、その後、フッ酸などの薬液を用いて表面の酸化膜を除去し、エピタキシャル法によってN型エピタキシャル層4,13を形成する。かかるN+埋め込み層3とN型エピタキシャル層4は、横型バイポーラトランジスタ1のベース領域5を構成する。
【0041】
次に、N型エピタキシャル層4、13の表面にLOCOS(LOCal Oxidation of Silicon)法によって部分的に酸化膜14を形成し、その後、酸化膜14の形成時に生じたダメージを除去するために熱酸化によって酸化膜15を形成する。
【0042】
次に、レジストパターンを用いたイオン注入によってN+埋め込み層3、12の上部にベース取出層16とコレクタ取出層17とをそれぞれ形成し、その後、レジストパターンを用いたイオン注入によってP型素子分離層18を形成する。
【0043】
次に、図4で示される工程を説明する。まず、減圧CVD(Chemical Vapor Deposition)法によって酸化膜を形成するとともに、窒素雰囲気中にて熱処理を行い、その後、レジストパターンを用いたドライエッチングおよびフッ酸などの薬液を用いたウエットエッチングによってN型エピタキシャル層4,13の表面にダメージが入らないように酸化膜15に開口部を形成し、N型エピタキシャル層4,13を露出させる。
【0044】
次に、エピタキシャル法によってP型の不純物であるホウ素(B)を含有するシリコンゲルマニウム(SiGe)をN型エピタキシャル層4,13の表面および酸化膜15の表面に積層してSiGe層を形成する。その際に、N型エピタキシャル層4,13の表面には単結晶のシリコンゲルマニウムが積層され、また、酸化膜15の表面には多結晶のシリコンゲルマニウムが積層される。これがSiGe層の積層工程である。
【0045】
次に、レジストパターンを用いたドライエッチングによってシリコンゲルマニウム層を所定形状に成形する。すなわち、横型バイポーラトランジスタ1ではコレクタ層6およびエミッタ層7を形成し、SiGeHBT10ではベース領域20を形成する。
【0046】
次に、図5で示される工程を説明する。まず、減圧CVD法によって酸化膜23を形成し、窒素雰囲気中にて熱処理を行った後、レジストパターンを用いたドライエッチングによってSiGeHBT10のベース領域20の上部に開口部を形成する。
【0047】
次に、レジストパターンを用いたイオン注入によってリンイオン(P+)を注入してN型エピタキシャル層13の内部にN型SIC(Selective Implanted Collector)からなるコレクタ領域24を形成する。
【0048】
次に、減圧CVD法によって多結晶シリコン膜と酸化膜とを順に成膜し、レジストパターンを用いたイオン注入によって砒素(As)を注入してベース領域20の上部にエミッタ領域25を形成し、さらにエミッタ電極26を形成し、レジストパターンを用いたドライエッチングにより多結晶シリコン膜を所定形状に成形する。
【0049】
次にレジストパターンを用いたドライエッチングによって、SiGeHBT10のグラフトベース部と、横型バイポーラトランジスタ1のエミッタ層7およびコレクタ層6の上部に開口を形成する。
【0050】
次に、本発明の要部であるSiGe層を横断させて不純物のイオン注入を行うために、レジストパターンを用いたイオン注入によってホウ素イオン(BF2+)を注入する。これがイオン注入工程である。
【0051】
このイオン注入によって、SiGeHBTのグラフトベース部の抵抗を下げるとともに、横型バイポーラトランジスタ1のコレクタ層6とエミッタ層7のホウ素(B)濃度を上昇させている。
【0052】
その後、エミッタ電極にイオン注入した砒素(As)の活性化のために熱処理を行う。この処理によって横型バイポーラトランジスタのコレクタ層6とエミッタ層7からはボロンが拡散され、コレクタ拡散層21とエミッタ拡散層22とが形成されることとなる。これが拡散層形成工程である。このようにして、コレクタ層6とコレクタ拡散層21とによりコレクタ領域8を形成し、エミッタ層7とエミッタ拡散層22とによりエミッタ領域9を形成している。
【0053】
このように横型バイポーラトランジスタ1のエミッタ拡散層22およびコレクタ拡散層21の形成前にイオン注入にてホウ素(B)濃度を上昇させておくことによって、その後のSiGeHBT10に対する熱処理のみで、接合部を格子欠陥などのダメージの潜在しているN型エピタキシャル層4の表面から10nm以上離すことができる。
【0054】
これによって、同時に形成するSiGeHBT10の特性を損なうことなく、横型バイポーラトランジスタのコレクタ−ベース間およびエミッタ−ベース間のリーク電流を減少させることが可能となる。なお、追加で行うホウ素(B)のイオン注入の量を制御することによって、この接合部の深さも制御できる。
【0055】
接合部とN+埋め込み層との間の距離が狭くなると耐圧の低下量も大きくなるので、接合深さは100nm以内が望ましい。すなわち、接合深さは10nmから100nmの範囲が望ましいものである。
【0056】
また、SiGeHBT10の高周波特性向上のためには熱処理の温度を下げる必要があるが、このように事前にホウ素(B)濃度を上げておくことにより低温の熱処理でも必要とする接合深さの制御を可能とすることができる。
【0057】
例えば、SiGeHBT10のエミッタ電極の砒素のイオン注入を、in-situのリンドープポリシリコンで形成した場合には、熱処理の温度を1000℃程度から900℃程度に低減することができ、これによりベース層のボロンプロファイルの拡散を抑止して、狭いベース幅を確保できる。したがって、SiGeHBT10の高周波特性を向上させることができる。
【0058】
上記したようにコレクタ拡散層21及びエミッタ拡散層22を形成した後、レジストパターンを用いたドライエッチングにより酸化膜23の所定箇所を開口し、コバルト(Co)又はチタン(Ti)などの金属膜を成膜し、次に窒化チタン(TiN)をスパッタリングして窒素雰囲気中にて熱処理を行うことにより金属シリサイド層27を形成する。
【0059】
次に、アンモニア過水などの薬液を用いて酸化膜23の表面に成膜された未反応金属膜を除去し、窒素雰囲気中にて熱処理を行い、金属シリサイド層27を低抵抗化する。
【0060】
次に、図6で示される工程を説明する。まず、減圧CVD法を用いて窒化珪素(Si3N4)膜28を形成した後に、減圧CVD法を用いて酸化膜29を形成する。
【0061】
次に、P型半導体基板2の表面に層間膜30を形成するとともに、所定箇所にタングステンプラグ31を設け、各タングステンプラグ31その後、所定の配線を施す。
【0062】
以上に説明した製造方法によって、同一半導体基板上に横型バイポーラトランジスタ1とSiGeHBT10とを同時に形成した半導体装置を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明に係る横型バイポーラトランジスタのガンメルプロットである。
【図2】本発明に係る横型バイポーラトランジスタの断面模式図である。
【図3】横型横型バイポーラトランジスタとシリコンゲルマニウムヘテロ接合バイポーラトランジスタを含む半導体装置の製造方法を示す説明図である。
【図4】横型横型バイポーラトランジスタとシリコンゲルマニウムヘテロ接合バイポーラトランジスタを含む半導体装置の製造方法を示す説明図である。
【図5】横型横型バイポーラトランジスタとシリコンゲルマニウムヘテロ接合バイポーラトランジスタを含む半導体装置の製造方法を示す説明図である。
【図6】横型横型バイポーラトランジスタとシリコンゲルマニウムヘテロ接合バイポーラトランジスタを含む半導体装置の製造方法を示す説明図である。
【図7】背景技術に示すヘテロ接合バイポーラトランジスタを示す断面模式図である。
【図8】背景技術に示す従来の横型バイポーラトランジスタを示す断面模式図である。
【図9】従来の横型バイポーラトランジスタのガンメルプロットである。
【符号の説明】
【0064】
1 横型バイポーラトランジスタ
2 P型半導体基板
3,12 N+埋め込み層
4,13 N型エピタキシャル層
5 ベース領域
6 コレクタ層
7 エミッタ層
8 コレクタ領域
9 エミッタ領域
10 シリコンゲルマニウムヘテロ接合バイポーラトランジスタ
14,15 酸化膜
16 ベース取出層
17 コレクタ取出層
18 P型素子分離層
20 ベース領域
21 コレクタ拡散層
22 エミッタ拡散層
23 酸化膜
24 コレクタ領域
25 エミッタ領域
26 エミッタ電極
27 金属シリサイド
28 窒化珪素(Si3N4)膜
29 酸化膜
30 層間膜
31 タングステンプラグ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース領域の上部に設けた不純物を含有する半導体層の前記不純物を熱拡散させてコレクタ拡散層とエミッタ拡散層とを並設してなる横型バイポーラトランジスタにおいて、 前記半導体層を横断させて前記不純物と同じ導電型となる不純物をさらにイオン注入した後に熱処理することによって前記コレクタ拡散層と前記エミッタ拡散層とを設けたことを特徴とする横型バイポーラトランジスタ。
【請求項2】
前記半導体層をシリコンゲルマニウム層としたことを特徴とする請求項1記載の横型バイポーラトランジスタ。
【請求項3】
ベース領域の上部に設けた不純物を含有する半導体層の前記不純物を熱拡散させてコレクタ拡散層とエミッタ拡散層とを並設してなる横型バイポーラトランジスタと、シリコンゲルマニウムヘテロ接合バイポーラトランジスタとを同一の半導体基板上に形成してなる半導体装置において、 前記半導体層を横断させて前記不純物と同じ導電型となる不純物をさらにイオン注入した後に熱処理することによって前記コレクタ拡散層と前記エミッタ拡散層とを設けたことを特徴とする半導体装置。
【請求項4】
前記半導体層をシリコンゲルマニウム層としたことを特徴とする請求項3記載の半導体装置。
【請求項5】
前記半導体層は、前記シリコンゲルマニウムヘテロ接合バイポーラトランジスタのベース領域を形成するために設けるシリコンゲルマニウム層で構成し、 前記不純物のイオン注入は、前記ベース領域へのイオン注入と同時に行ったことを特徴とする請求項3記載の半導体装置。
【請求項6】
ベース領域の上部に設けた不純物を含有する半導体層の前記不純物を熱拡散させてコレクタ拡散層とエミッタ拡散層とを形成する横型バイポーラトランジスタの製造方法において、 前記半導体層を横断させて前記不純物と同じ導電型となる不純物をさらにイオン注入し、その後、熱処理を行うことにより前記コレクタ拡散層と前記エミッタ拡散層とを形成することを特徴とする横型バイポーラトランジスタの製造方法。
【請求項7】
ベース領域の上部に設けた不純物を含有する半導体層の前記不純物を熱拡散させてコレクタ拡散層とエミッタ拡散層とを形成する横型バイポーラトランジスタと、シリコンゲルマニウムヘテロ接合バイポーラトランジスタとを同一の半導体基板上に形成する半導体装置の製造方法において、 前記半導体層を横断させて前記不純物と同じ導電型となる不純物をさらにイオン注入し、その後、熱処理を行うことにより前記コレクタ拡散層と前記エミッタ拡散層とを形成することを特徴とする半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−216922(P2006−216922A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−31131(P2005−31131)
【出願日】平成17年2月7日(2005.2.7)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】