説明

給湯装置

【課題】追焚循環回路を循環する浴槽水の循環流量を、キャビテーションを誘発することのない構造で検出することができるとともに、浴槽内の水位も検出することのできる給湯装置を提供すること。
【解決手段】追焚循環回路を循環する浴槽水の流線に対して中心線が平行な開口1cを有する第1圧力測定管1a内のゲージ圧を検出する圧力センサ2a(第1圧力検出手段)と、追焚循環回路を循環する浴槽水の流線に対して中心線が垂直な開口1dを有する第2圧力測定管1b内のゲージ圧を検出する圧力センサ2b(第2圧力検出手段)と、浴槽水が循環しているときに圧力センサ2aにより検出された全圧と圧力センサ2bにより検出された静圧とに基づいて浴槽水の循環流量を検出する循環流量検出手段と、浴槽水が循環していないときに圧力センサ2aまたは圧力センサ2bにより検出された圧力に基づいて浴槽内の水位を検出する浴槽水位検出手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴槽内の浴槽水を熱交換器に循環させる追焚循環回路を備えた給湯装置に関する。
【背景技術】
【0002】
浴槽内の浴槽水を加熱する熱交換器を備えた給湯装置が広く用いられている。このような給湯装置には、熱源となる流体を熱交換器に供給する熱源循環回路と、浴槽内の浴槽水を熱交換器に送るとともに熱交換器で加熱された浴槽水を浴槽内に戻す追焚循環回路とが更に備えられている。浴槽内の浴槽水を上記熱交換器によって加熱する追焚き運転を制御する上では、追焚循環回路を循環する浴槽水の流量を検出する流量検出装置を設け、浴槽水の循環流量を検出できるようにすることが望まれる。
【0003】
特許文献1には、流体通路内に配置されたオリフィス以降の2点間の差圧を測定する手段を有し、その測定結果に基づいて流体通路を流れる流体の流量を検出する流体流量検出装置を備えた風呂用の燃焼装置が開示されている。この装置では、上記差圧の測定手段がA室とB室との間に設けた圧力センサであり、A室には、オリフィス以降の2点のうちの1点であるオリフィス直後の管路拡大箇所の圧力を導き、B室には、オリフィス以降の2点のうちの他の1点として、より下流の箇所の圧力を導く構成とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4082789号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1記載の流量検出装置は、可動部を持たない構造であるので、浴槽から流れてくるゴミや髪の毛などの異物が付着することによる故障を抑制することができる。しかしながら、特許文献1記載の流量検出装置では、オリフィスが配管内でキャビテーションを発生させ、騒音が発生する可能性や、キャビテーションによるエロージョン・コロージョンが発生する可能性がある。また、オリフィスを設けることによって配管構造が複雑化する問題もある。
【0006】
また、浴槽に給湯する給湯装置では、種々の自動制御を行うために、浴槽内の水位を検出できるようにすることが望まれる。一般には、追焚循環回路内のゲージ圧を検出する圧力センサを設け、この圧力センサの圧力値に基づいて浴槽内の水位を検出している。しかしながら、特許文献1記載の流量検出装置が備える圧力センサは、A室とB室との差圧を検出するものであるので、浴槽内の水位の検出に用いることはできない。特許文献1記載の構成の場合、浴槽内の水位を検出するには、ゲージ圧を検出する圧力センサを別に設ける必要があるので、構造が複雑となり、コストも増加する。
【0007】
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、追焚循環回路を循環する浴槽水の循環流量を、キャビテーションを誘発することのない構造で検出することができるとともに、浴槽内の水位も検出することのできる給湯装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る給湯装置は、浴槽水と熱源流体との熱交換を行う熱交換器と、熱源流体を熱交換器に供給する熱源循環回路と、ふろ循環ポンプの作動により、浴槽内の浴槽水を熱交換器に送るとともに熱交換器で加熱された浴槽水を浴槽内に戻す追焚循環回路と、追焚循環回路の配管内に設置され、循環する浴槽水の流線に対して中心線が平行な開口を有する第1圧力測定管と、第1圧力測定管内のゲージ圧を検出する第1圧力検出手段と、追焚循環回路の配管内に設置され、循環する浴槽水の流線に対して中心線が垂直な開口を有する第2圧力測定管と、第2圧力測定管内のゲージ圧を検出する第2圧力検出手段と、追焚循環回路を浴槽水が循環しているときに、第1圧力検出手段により検出された全圧と、第2圧力検出手段により検出された静圧とに基づいて、浴槽水の循環流量を検出する循環流量検出手段と、追焚循環回路を浴槽水が循環していないときに、第1圧力検出手段または第2圧力検出手段により検出された圧力に基づいて、浴槽内の水位を検出する浴槽水位検出手段と、を備えたものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、可動部やオリフィスを持たない構造で浴槽水の循環流量を正確に検出することができる。このため、ゴミや髪の毛などの異物が可動部に付着することによる故障や、オリフィスによって誘発されるキャビテーションによる弊害(騒音、エロージョン・コロージョンによる配管の浸食など)を防止することができる。また、浴槽水が循環していないときには、第1圧力検出手段または第2圧力検出手段で検出されるゲージ圧に基づいて浴槽内の水位を検出することができる。このため、浴槽内の水位を検出するためのセンサを別個に設ける必要がないので、コスト低減に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態1の給湯装置が備える追焚部の構成図である。
【図2】図1に示す給湯装置が備える圧力・流量測定部を拡大して示す図である。
【図3】初期特性データを作成する制御動作のフローチャートである。
【図4】システム初期特性ファイルの例を示す図である。
【図5】ポンプ回転数特性を示すグラフである。
【図6】圧力特性を示すグラフである。
【図7】追焚き運転時に行う熱量算出処理の制御動作のフローチャートである。
【図8】熱交換量を記録したファイルの例を示す図である。
【図9】浴槽・配管システムの状態を診断する制御動作のフローチャートである。
【図10】圧力特性曲線とそれに対応する適正領域を示す判定曲線とを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、各図において共通する要素には、同一の符号を付して、重複する説明を省略する。
【0012】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1の給湯装置が備える追焚部200の構成図である。図1に示すように、本実施形態の給湯装置における追焚部200は、浴槽9の追焚き(保温を含む。以下同じ。)を行うための熱交換器7を備えている。熱交換器7には、追焚循環回路10と熱源循環回路13とが接続されている。追焚循環回路10は、浴槽9内の浴槽水を熱交換器7に送り、熱交換器7で加熱された浴槽水を再び浴槽9に戻す回路である。追焚循環回路10には、浴槽水を送水するふろ循環ポンプ8と、後述する圧力・流量測定部100と、熱交換器7に流入する浴槽水の温度を検出する熱交換器1次側温度センサ12(加熱前温度検出手段)と、熱交換器7から流出する浴槽水の温度を検出する熱交換器2次側温度センサ11(加熱後温度検出手段)とが更に設けられている。
【0013】
熱源循環回路13は、浴槽水を加熱する熱源となる湯等の流体を熱源循環ポンプ14の作動により熱交換器7に供給する回路である。本給湯装置は、湯を貯える貯湯タンク(図示せず)と、湯を生成するボイラー式もしくはヒートポンプ式等の加熱器(図示せず)との一方または両方を備えている。浴槽9の追焚き運転時には、その貯湯タンクまたは加熱器から供給される高温の湯が熱源循環ポンプ14の作動により熱源循環回路13を流れて熱交換器7に供給される。また、浴槽9の追焚き運転時には、ふろ循環ポンプ8の作動により、浴槽9内の浴槽水が追焚循環回路10を図1中で時計回りに流れる。熱交換器7では、高温の湯の熱によって浴槽水が加熱され、その加熱された浴槽水が浴槽9内に戻る。このようにして、浴槽9内の浴槽水の温度を上昇させることができる。
【0014】
追焚循環回路10には、浴槽9に湯を注ぐための注湯管4が接続されている。注湯管4の途中には、電磁弁5と、注湯量を検出する流量センサ6とが設けられている。浴槽9の湯張り時には、電磁弁5が開き、貯湯タンクまたは加熱器から供給される湯が設定温度に調節された上で注湯管4に流入する。注湯管4に流入した湯は、追焚循環回路10の配管を通って、浴槽9内に注がれる。
【0015】
本給湯装置は、演算装置および記憶装置を有する制御装置15を更に備えている。上述した図1中のアクチュエータやセンサ類を含む各種機器は、制御装置15と電気的に接続されている。本給湯装置の動作は、制御装置15により制御される。なお、図1においては、前述した貯湯タンクや加熱器の図示を省略しているほか、貯湯タンクや加熱器と上記追焚部200とを接続する配管、その配管に湯水を循環させるための駆動源であるポンプ、湯水の温度を測定するサーミスタ等の温度センサ、ユーザが動作を指示するリモコンのようなユーザーインターフェースなどについても、図示を省略している。
【0016】
図2は、図1に示す給湯装置が備える圧力・流量測定部100を拡大して示す図である。圧力・流量測定部100は、追焚循環回路10の配管の一部であるエルボ配管3の内部に挿入された二重管1を有している。エルボ配管3は、直角または直角に近い角度で曲がった屈曲部の両側に直線部を有するL字型の形状をなしており、二重管1はその一方の直線部に対し平行に挿入されている。二重管1は、内側の第1圧力測定管1aと、外側の第2圧力測定管1bとの二重構造となっている。第1圧力測定管1aの先端には、開口1cが形成されている。この第1圧力測定管1aの基端側は、圧力センサ2a(第1圧力検出手段)に連通している。圧力センサ2aは、第1圧力測定管1a内のゲージ圧を検出可能になっている。一方、第2圧力測定管1bの先端は閉じており、第2圧力測定管1bの側面に開口1dが形成されている。第2圧力測定管1bの基端側は、圧力センサ2b(第2圧力検出手段)に連通している。圧力センサ2bは、第2圧力測定管1b内のゲージ圧を検出可能になっている。
【0017】
図2に示しているエルボ配管3内の矢印A、Bは、流体の流れ方向を示している。矢印Aは、浴槽9内の浴槽水が追焚循環回路10を循環するときの流れ方向を示す。第1圧力測定管1aの開口1cは、その中心線(開口面の法線)が、矢印A方向に循環する浴槽水の流線に対し平行に位置する。このため、圧力センサ2aにより検出されるゲージ圧Paは、矢印A方向に循環する浴槽水の全圧に相当する。一方、第2圧力測定管1bの開口1dは、その中心線(開口面の法線)が、矢印A方向に循環する浴槽水の流線に対し垂直に位置する。このため、圧力センサ2bにより検出されるゲージ圧Pbは、矢印A方向に循環する浴槽水の静圧に相当する。したがって、全圧Paと静圧Pbとの差圧ΔPは、矢印A方向に循環する浴槽水の動圧に相当するので、差圧ΔPからベルヌーイの定理により矢印A方向に循環する浴槽水の流速を算出することができる。この流速に、予め制御装置15に記憶してあるエルボ配管3の断面積を乗算することにより、浴槽水の循環流量を算出することができる。
【0018】
圧力・流量測定部100によれば、上記のようにして、追焚循環回路10を循環する浴槽水の循環流量を検出することができる。このような圧力・流量測定部100は、可動部を持たない構造であるので、浴槽9内から浴槽水に乗って流れてくるゴミや髪の毛などの異物が絡んで動作不能になるようなことがない。このため、故障を抑制することができる。また、配管内にオリフィスを設ける必要がないため、オリフィスにより誘発されるキャビテーションの発生を確実に防止することができる。このため、キャビテーションによる弊害、例えば、騒音の発生や、エロージョン・コロージョンによる配管の管壁の浸食などの現象を確実に抑制することができる。また、図示の構成では、配管内には二重管1を挿入するだけでよいので、配管構造が簡単となり、コスト低減に寄与する。
【0019】
図2中の矢印Bは、注湯管4から追焚循環回路10を通して浴槽9へ注湯するときの流れ方向を示している。このように、本実施形態では、二重管1の設置箇所の流れ方向が、追焚循環回路10を浴槽水が循環するときと、注湯管4から追焚循環回路10を通して浴槽9へ注湯するときとで、逆の方向となる。これにより、次のような利点がある。追焚循環回路10を浴槽水が循環するときには、浴槽9内から浴槽水に乗って流れてくるゴミや髪の毛などの異物が二重管1に引っ掛かる場合がある。そのような場合であっても、注湯管4から浴槽9への注湯時に湯が逆方向に流れることにより、二重管1に引っ掛かっている異物を反対方向に押し流して取り除くことができる。このため、二重管1の周りに異物が堆積することを確実に抑制することができる。
【0020】
浴槽9内の浴槽水が追焚循環回路10に循環しておらず、静止しているときには、圧力センサ2aで検出されるゲージ圧Paおよび圧力センサ2bで検出されるゲージ圧Pbは、共に静水圧となる。浴槽9内の水位が高いほど、圧力センサ2a,2bで検出される静水圧も高くなる。したがって、浴槽9内の浴槽水が追焚循環回路10に循環しておらず、静止しているときには、圧力センサ2aで検出される圧力Paまたは圧力センサ2bで検出される圧力Pbを用いて、浴槽9内の水位を検出することができる。このように、圧力・流量測定部100によれば、循環流量だけでなく、浴槽9内の水位を検出することも可能である。このため、浴槽9内の水位を検出するためのセンサを別個に設ける必要がないので、構成を簡素化でき、コスト低減が図れる。
【0021】
なお、二重管1の周りに異物が堆積することをより確実に防止するための方法として、浴槽9内の浴槽水が排水された後、注湯管4から少量の湯水を注湯するように制御してもよい。この制御によれば、浴槽9内の浴槽水が排水された後、二重管1に引っ掛かった異物をすぐに押し流して取り除くことができるので、異物の付着をより確実に防止することができる。浴槽9内の浴槽水が排水されたことを検知する方法としては、例えば、浴槽9内の水位が一定時間内に規定値以上低下した場合、排水がなされたと判定することができる。
【0022】
次に、上記のように構成された本実施形態の給湯装置の動作について説明する。本実施形態では、追焚循環回路10の配管が閉塞等のない正常な状態であるとき(本実施形態では、給湯装置の施工後の初期、すなわち追焚循環回路10の配管が新品状態であるとき、とする)に、制御装置15は、一定期間、初期特性データを作成する。このときの動作を図3に示すフローチャートを用いて説明する。
【0023】
以下に説明するように、図3に示す初期特性作成モードの処理には、浴槽9に湯張りをする際に、電磁弁5および流量センサ6によって注湯量を制御し、予め設定された所定量ずつ複数回に分けて注湯し、注湯回毎に、圧力・流量測定部100の圧力センサ2a,2bにより検出される圧力値Pa,Pb(静水圧)を記録することにより、累積注湯量Vと圧力値Pa,Pb(静水圧)とを関係付け、制御装置15に逐次記憶させる処理が含まれる。
【0024】
図3のステップS1では、制御装置15でカウントされている湯張り回数が初期特性データを得るのに必要十分な回数として予め設定された指定回数M(例えばM=5)以下であるかどうか判定される。ステップS1でYESと判定された場合にはステップS2へ移行し、NOと判定された場合には初期特性作成モードを終了する。ステップS2では、1回分の注湯量Vaを予め設定された量(例えば10リットル)としたときに、設定湯量(例えば200リットル)に達するまで、何回の注湯が必要かを算出してその回数を変数αに代入する。上記例ではα=20となる。なお、適正な湯量は設定された浴槽9のサイズなどによって変わるので、制御装置15は設定湯量を浴槽9のサイズや配管長などに応じて適宜変更できるほか、上記指定回数M、1回分の注湯量Vaや後述する規定値βなどの各設定値を変更できる機能を備えている。
【0025】
ステップS2の処理後、ステップS3に移行する。ステップS3では、注湯をα回実行させるに際して注湯回数を把握するため、ループが実行される度に、変数nが1ずつ増えるカウントアップが行われる。ステップS3の処理後、ステップS4に移行する。ステップS4では、浴槽9の止水弁(図示省略)が外れているなどの理由により浴槽9に湯が溜まらない状態(以下、「浴槽水無し」と称する)を検出する処理を例えば次のようにして行う。浴槽9に湯が正常に溜まる状態であれば、注湯回数nの増加に伴って圧力センサ2a,2bにより検出されるゲージ圧Pa,Pb(静水圧)が高くなっていく。これに対し、浴槽水無しの場合には、注湯回数nが増加しても、圧力センサ2a,2bにより検出されるゲージ圧Pa,Pb(静水圧)にほとんど変化が見られない。このため、ステップS4では、注湯回数nが所定回数まで進んだ段階で圧力センサ2a,2bにより検出されるゲージ圧Pa,Pb(静水圧)に有意な上昇が確認できたかどうかが判断され、ゲージ圧Pa,Pb(静水圧)に有意な上昇が確認できない場合には、ステップS17に進み、浴槽水無しと判定される。浴槽水無しと判定された場合には、ステップS18に進み、浴槽水無しである旨が外部に報知される。外部への報知手段としては、例えば、給湯装置のユーザーインターフェースであるリモコンのディスプレイ、アラームランプ、スピーカなどに、エラー表示や音で報知することができる。
【0026】
ステップS4で浴槽水無しと判定されていない場合には、ステップS5に進む。ステップS5では、注湯量を制御する電磁弁5および流量センサ6により、予め設定された規定量Va(10L)を注湯する。このときの注湯量は、流量センサ6により正確に計測される。
【0027】
ステップS5の処理後、ステップS6に進む。ステップS6では、注湯後に圧力センサ2a,2bにより検出されたゲージ圧Pa,Pb(静水圧)を記録する。ステップS6の終了後、ステップS7に進む。ステップS7では、累積注湯量Vに注湯1回毎に規定量Vaを加算する処理をする。この累積注湯量Vは、浴槽9に溜まっている浴槽水の量であるとみなすことができる。ステップS7の処理後、ステップS8に進む。ステップS8ではステップS6およびS7の処理で記録されたゲージ圧Pa,Pb(静水圧)および累積注湯量Vの値をファイルに出力する。ファイルの形式は、図4に例示するような形式で出力する。
【0028】
ステップS8の処理後、ステップS9に進む。ステップS9では、現在の注湯回数nが規定回数αに達したか否かを確認する。現在の注湯回数nが規定回数αに達していない場合は、ステップS3の前に戻り、再度ステップS3〜S9までを繰り返す。そして、現在の注湯回数nが規定回数αに達した後、ステップS10に進み、上記S3〜S9までのループを終了する。
【0029】
ステップS10の処理後、ステップS11に進む。ステップS11では、ふろ循環ポンプ8を一定電圧(例えば定格電圧など)で所定時間(例えば30秒間)回転させる。また、ふろ循環ポンプ8の電圧は、スイープするなどして回転数を変動させた場合の数点で回転させても良い。
【0030】
ステップS11の処理後、ステップS12に進む。ステップS12では、ステップS11の実行中に図示しない回転数検出手段によって検出されるふろ循環ポンプ8の回転数Nと、追焚循環回路10を浴槽水が循環しているときに圧力センサ2a,2bにより検出されるゲージ圧Pa(全圧),Pb(静圧)とを記録する。ステップS12の処理後、ステップS13に進む。ステップS13では、ステップS12で記録したふろ循環ポンプ8の回転数Nおよび圧力センサ2a,2bのゲージ圧Pa(全圧),Pb(静圧)の値をファイルに出力する。このファイルの形式は、図4に例示する形式で出力する。ステップS13の処理後、ステップS14に進む。ステップS14では、ステップS13で記録されたゲージ圧Pa,Pbの差圧ΔP(動圧)を算出し、その差圧ΔP(動圧)に基づいて循環流量Qを算出する。前述したように、循環流量Qは、差圧ΔP(動圧)からベルヌーイの定理により流速を算出し、その流速に予め制御装置15に記憶してある配管断面積を乗算することで算出することができる。
【0031】
ステップS14の処理後、ステップS15に進む。ステップS15では、ステップS14で算出した差圧ΔPと循環流量Qを図4に例示するファイルに出力し記録する。ステップS15の処理後、ステップS16に進む。ステップS16で変数nおよびαがリセットされた後、初期特性作成モードは終了する。
【0032】
本給湯装置の施工後初期には、以上説明したような初期特性作成モードの処理が、指定回数であるM回行われ、その各回で図4のようなシステム初期特性ファイルが作成され、制御装置15に記憶される。制御装置15は、このシステム初期特性ファイルに記録されたデータに基づいて、浴槽水量特性、ポンプ回転数特性、および圧力特性を作成する。
【0033】
浴槽水量特性は、浴槽9内の浴槽水の量と、圧力センサ2a,2bで検出されるゲージ圧Pa,Pb(静水圧)との関係を表すものである。前述したように、システム初期特性ファイルに記録された累積注湯量Vは、浴槽9内の浴槽水の量とみなすことができる。図4に示すように、累積注湯量V、すなわち浴槽9内の浴槽水の量が多くなるほど、圧力センサ2a,2bで検出されるゲージ圧Pa,Pb(静水圧)が高くなる。制御装置15は、システム初期特性ファイルに記録されたデータに基づき、浴槽9内の浴槽水の量と、圧力センサ2a,2bで検出されるゲージ圧Pa,Pb(静水圧)との関係を表す近似曲線を作成し、その近似曲線を浴槽水量特性として記憶する。浴槽水量特性は、圧力センサ2aで検出されたゲージ圧Paと圧力センサ2bで検出されたゲージ圧Pbとの両方のデータに基づいて作成してもよく、何れか一方のデータのみに基づいて作成してもよい。
【0034】
本実施形態では、上記のような浴槽水量特性(図示省略)を作成することにより、次のような利点がある。制御装置15は、浴槽9内の浴槽水が追焚循環回路10に循環しておらず静止しているとき、圧力センサ2aで検出されるゲージ圧Pa(静水圧)と圧力センサ2bで検出されるゲージ圧Pb(静水圧)との少なくとも一方を浴槽水量特性と照合することにより、浴槽9内の浴槽水の量を検出することができる。このため、浴槽9内の浴槽水の量の情報を給湯制御に活用することができ、多様な給湯制御を正確に行うことが可能となる。例えば、入浴者が浴槽9内の浴槽水を汲み出して使った場合であっても浴槽9内の浴槽水の量が一定に保たれるように自動で湯の補充をする制御が実行可能となる。また、本実施形態では、浴槽9のサイズや形状にかかわらず、その浴槽9に適合した浴槽水量特性を作成することができる。このため、浴槽9のサイズや形状にかかわらず、浴槽9内の浴槽水の量を正確に検出することができる。
【0035】
図5は、ポンプ回転数特性を示すグラフである。図5に示すように、ポンプ回転数特性は、循環流量Q(リットル/分)と、ふろ循環ポンプ8の回転数N(rpm)との関係を表すものである。図5のグラフ中の複数の点は、指定回数Mの各回の初期特性データ作成処理で記録された値をプロットした点である。制御装置15は、これらの点に基づいて図5に示すような近似曲線を作成し、ポンプ回転数特性として記憶する。
【0036】
図6は、圧力特性を示すグラフである。圧力特性は、循環流量Q(リットル/分)と、圧力センサ2aで検出された動圧Paまたは圧力センサ2bで検出された静圧Pbとの関係を表すものである。図6では、代表して、圧力センサ2bで検出された静圧Pbの圧力特性を示す。図6のグラフ中の複数の点は、指定回数Mの各回の初期特性データ作成処理で記録された値をプロットした点である。制御装置15は、これらの点に基づいて図6に示すような近似曲線を作成し、圧力センサ2bで検出された静圧Pbの圧力特性として記憶する。制御装置15は、循環流量Qと圧力センサ2aで検出された動圧Paとの関係についても同様に近似曲線を作成し、動圧Paの圧力特性として記憶するようにしてもよい。
【0037】
制御装置15は、図3に示す初期特性作成モードの処理が1回終わる毎に、それまでに得られたデータに基づいて、上述した浴槽水量特性、ポンプ回転数特性、および圧力特性を作成・更新する。そして、指定回数M回目の初期特性作成モードの処理が終了した後、浴槽水量特性、ポンプ回転数特性、および圧力特性を確定して記憶する。
【0038】
図7は、追焚き運転時に行う熱量算出処理の制御動作のフローチャートである。図7のステップS19では、ふろ循環ポンプ8を一定電圧(例えば定格電圧、若しくは必要回転数となる電圧)で所定時間回転させる。ステップS19の処理後にステップS20に進む。ステップS20は、ふろ循環ポンプ8の回転数Nが0より大きいとき、つまりふろ循環ポンプ8が回転しているときにはループすることを示す。ステップS20の処理後、ステップS21に進む。ステップS21では、ふろ循環ポンプ8が回転しているときに圧力センサ2a,2bで検出されるゲージ圧Pa(全圧),Pb(静圧)と、熱交換器2次側温度センサ11で検出される加熱後温度T1と、熱交換器1次側温度センサ12で検出される加熱前温度T2とを記録する。ステップS21の処理後、ステップS22に進む。
【0039】
ステップS22では、ステップS21で記録した全圧Pa,静圧Pbよりベルヌーイの定理に基づき循環流量Qを算出し、更に各時刻の熱交換量(伝熱量)Qhtを算出する。熱交換量(伝熱量)Qhtは、熱交換器7で熱源流体と浴槽水との間でやりとりされる熱量である。熱交換量(伝熱量)Qhtは、加熱後温度T1と加熱前温度T2との温度差と、水の比熱と、循環流量Qとを乗算することにより算出することができる。ステップS22の処理後、ステップS23に進む。ステップS23では、上記ステップS21で記録した圧力Pa,Pb、加熱後温度T1、加熱前温度T2と、ステップS22で算出した循環流量Qおよび熱交換量(伝熱量)Qhtとを図8に示すようなファイルに出力する。ステップS23の処理後、ステップS24に進む。ステップS24では、ふろ循環ポンプ8の回転数Nを検出する。ステップS24の処理後、ステップS25に進む。
【0040】
ステップS25では、ふろ循環ポンプ8の動作状態を確認する。ふろ循環ポンプ8の回転数Nが0でない場合、すなわちふろ循環ポンプ8が停止していない場合は、ステップS20に戻りループを継続する。これに対し、ふろ循環ポンプ8の回転数Nが0である場合、すなわちふろ循環ポンプ8が停止している場合は、ステップS26に移行してループを終了する。ステップS27では、各時刻の熱交換量(伝熱量)Qhtの平均値Qhを算出する。ステップS27の処理後、ステップS28に進む。ステップS28では、ステップS27で求めた平均熱交換量(平均伝熱量)Qhを図8に示すようなファイルに出力する。図8に示すようなファイルは、制御装置15内部に作成され、随時更新される。
【0041】
本実施形態では、以上のような処理を追焚き運転時に行うことにより、熱交換器7での熱交換量(伝熱量)を正確に算出することができる。このため、追焚き運転で熱源(貯湯タンクまたは加熱器)に必要とされる熱量を正確に把握することができるので、その情報を給湯装置の貯湯運転などの運転制御に活用することにより、エネルギー効率の高い運転制御が可能となる。
【0042】
図9は、浴槽・配管システムの状態を診断する制御動作のフローチャートである。この動作は、本給湯装置の施工後、(M+1)回目以降の湯張り時に実行される。
【0043】
図9のステップS29では、最低湯量(例えば10リットル程度)を注湯し、追焚循環回路10内を水で満たす動作をする。ステップS29の処理後、ステップS30に進む。ステップS30では、ふろ循環ポンプ8を一定電圧(例えば定格電圧、若しくは必要回転数となる電圧)で所定時間回転させる。ステップS30の処理後、ステップS31に進む。ステップS31では、ふろ循環ポンプ8の回転数Nと、圧力センサ2a,2bより検出されるゲージ圧Pa(全圧),Pb(静圧)とを記録する。ステップS31の処理後、ステップS32に進む。ステップS32では、圧力センサ2a,2bより検出した全圧Pa,静圧Pbよりベルヌーイの定理に基づき循環流量Qを算出する。ステップS32の処理後、ステップS33に進む。
【0044】
ステップS33では、上記ステップS31およびS32で記録した静圧Pbおよび循環流量Qの値を、制御装置15に記憶された圧力特性(図6)と比較する。ステップS33の処理後、ステップS34に進む。
【0045】
ステップS34では全圧Pa,静圧Pbの検出可否を確認し、全圧Pa,静圧Pbの変化の有無を確認する。No判定の場合は、ステップS43の浴槽9に浴槽水が無いことを示す浴槽水無しとの判定がなされる。ステップS43の処理後、ステップS37に進む。一方、ステップS34でYes判定の場合は、ステップS35の浴槽9に浴槽水があることを示す浴槽水有りとの判定がなされる。ステップS35の処理後、ステップS36に進む。ステップS36では、浴槽9の水位(浴槽水の量)を検出し、外部のリモコンなどのユーザーインターフェースより指定された湯量との差を算出する。ステップS36の処理後、ステップS37に進む。
【0046】
ステップS37では、外部のリモコンなどのユーザーインターフェースで指示された水位まで必要な湯量を注湯する。ステップS37の処理後、ステップS38に進む。ステップS38では、ふろ循環ポンプ8を一定電圧(例えば定格電圧、若しくは必要回転数となる電圧)で所定時間回転させる。ステップS38の処理後、ステップS39に進む。ステップS39では、ふろ循環ポンプ8の回転数Nと、圧力センサ2a,2bにより検出される全圧Pa,静圧Pbとを記録する。ステップS39の処理後、ステップS40に進む。
【0047】
ステップS40では、圧力センサ2a,2bにより検出された全圧Pa,静圧Pbからベルヌーイの定理に基づき循環流量Qを算出する。ステップS40の処理後、ステップS41に進む。ステップS41では、上記ステップS39およびS40で記録した静圧Pbおよび循環流量Qの値を、制御装置15に記憶された圧力特性(図6)と比較することにより、追焚循環回路10の配管の状態を診断する。図10は、図6に示す圧力特性曲線と、それに対応する適正領域(例えば±10%以内)を示す判定曲線とを示すグラフである。上記ステップS39およびS40で記録した静圧Pbおよび循環流量Qの値が、図10のプラス側の判定曲線より上側の領域Aにあった場合には、追焚循環回路10の配管が凍結またはゴミ詰りなどにより閉塞していると診断される。これに対し、上記ステップS39およびS40で記録した静圧Pbおよび循環流量Qの値が、図10のマイナス側の判定曲線より下側の領域Bにあった場合には、追焚循環回路10の配管が破損していると診断される。ステップS41の処理後、ステップS42に進む。ステップS42では、ステップS41の診断の結果を前述したような報知手段により外部に報知する。これにより、配管の清掃や修理が必要な場合、その旨を適切にユーザーに知らせることができる。
【0048】
上述した説明では、静圧Pbの圧力特性に基づいて追焚循環回路10の配管の状態を診断する場合について説明したが、動圧Paの圧力特性に基づいて診断を行うようにしてもよい。また、図5に示すポンプ回転数特性に基づいて追焚循環回路10の配管の状態を診断することもできる。例えば、図5に示すポンプ回転数特性から定まる適正領域よりもふろ循環ポンプ8の回転数Nが高い場合、追焚循環回路10の配管が凍結またはゴミ詰りなどにより閉塞していると診断することができる。
【符号の説明】
【0049】
1 二重管
1a 第1圧力測定管
1b 第2圧力測定管
1c,1d 開口
2a,2b 圧力センサ
3 エルボ配管
4 注湯管
5 電磁弁
6 流量センサ
7 熱交換器
8 ふろ循環ポンプ
9 浴槽
10 追焚循環回路
11 熱交換器2次側温度センサ
12 熱交換器1次側温度センサ
13 熱源循環回路
14 熱源循環ポンプ
15 制御装置
100 圧力・流量測定部
200 追焚部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴槽水と熱源流体との熱交換を行う熱交換器と、
熱源流体を前記熱交換器に供給する熱源循環回路と、
ふろ循環ポンプの作動により、浴槽内の浴槽水を前記熱交換器に送るとともに前記熱交換器で加熱された浴槽水を前記浴槽内に戻す追焚循環回路と、
前記追焚循環回路の配管内に設置され、循環する浴槽水の流線に対して中心線が平行な開口を有する第1圧力測定管と、
前記第1圧力測定管内のゲージ圧を検出する第1圧力検出手段と、
前記追焚循環回路の配管内に設置され、循環する浴槽水の流線に対して中心線が垂直な開口を有する第2圧力測定管と、
前記第2圧力測定管内のゲージ圧を検出する第2圧力検出手段と、
前記追焚循環回路を浴槽水が循環しているときに、前記第1圧力検出手段により検出された全圧と、前記第2圧力検出手段により検出された静圧とに基づいて、浴槽水の循環流量を検出する循環流量検出手段と、
前記追焚循環回路を浴槽水が循環していないときに、前記第1圧力検出手段または前記第2圧力検出手段により検出された圧力に基づいて、前記浴槽内の水位を検出する浴槽水位検出手段と、
を備える給湯装置。
【請求項2】
前記ふろ循環ポンプの回転数を検出する回転数検出手段と、
前記追焚循環回路の配管が正常であるときに、前記回転数検出手段により検出された前記ふろ循環ポンプの回転数と、前記循環流量検出手段により検出された循環流量とを複数の点で記録し、その記録に基づいて、前記ふろ循環ポンプの回転数と前記循環流量との正常な関係を表すポンプ回転数特性を作成するポンプ回転数特性作成手段と、
前記回転数検出手段により検出された前記ふろ循環ポンプの回転数と、前記循環流量検出手段により検出された循環流量とを、前記ポンプ回転数特性と比較することにより、前記追焚循環回路の配管の状態を診断する配管状態診断手段と、
を備える請求項1記載の給湯装置。
【請求項3】
前記追焚循環回路の配管が正常であるときに、前記第1圧力検出手段により検出された全圧と前記第2圧力検出手段により検出された静圧との一方または両方と、前記循環流量検出手段により検出された循環流量とを複数の点で記録し、その記録に基づいて、前記第1圧力検出手段により検出された全圧と前記第2圧力検出手段により検出された静圧との一方または両方と、前記循環流量との正常な関係を表す圧力特性を作成する圧力特性作成手段と、
前記第1圧力検出手段により検出された全圧と前記第2圧力検出手段により検出された静圧との一方または両方と、前記循環流量検出手段により検出された循環流量とを、前記圧力特性と比較することにより、前記追焚循環回路の配管の状態を診断する配管状態診断手段と、
を備える請求項1記載の給湯装置。
【請求項4】
前記追焚循環回路において前記熱交換器に流入する浴槽水の温度を検出する加熱前温度検出手段と、
前記追焚循環回路において前記熱交換器から流出する浴槽水の温度を検出する加熱後温度検出手段と、
前記循環流量検出手段により検出された循環流量と、前記加熱前温度検出手段により検出された温度と、前記加熱後温度検出手段により検出された温度とに基づいて、前記熱交換器での熱交換量を算出する熱交換量算出手段と、
を備える請求項1乃至3の何れか1項記載の給湯装置。
【請求項5】
前記浴槽に湯を注ぐ注湯手段と、
前記注湯手段により前記浴槽に注がれる湯の量を検出する注湯量検出手段と、
前記注湯量検出手段により検出された注湯量と、前記第1圧力検出手段および/または前記第2圧力検出手段により検出された圧力とを複数の点で記録し、その記録に基づいて、前記浴槽内の浴槽水の量と前記第1圧力検出手段および/または前記第2圧力検出手段により検出された圧力との関係を表す浴槽水量特性を作成する浴槽水量特性作成手段と、
前記浴槽水位検出手段は、前記第1圧力検出手段または前記第2圧力検出手段により検出された圧力を前記浴槽水量特性に照合することにより前記浴槽内の浴槽水の量を検出する請求項1乃至4の何れか1項記載の給湯装置。
【請求項6】
前記追焚循環回路の配管を通して前記浴槽に湯を注ぐ注湯手段を備え、
前記第1圧力測定管および前記第2圧力測定管が設置されている位置では、前記注湯手段により前記浴槽に注湯されるときの流れの方向と、前記追焚循環回路を浴槽水が循環するときの流れの方向とが互いに逆の方向となる請求項1乃至5の何れか1項記載の給湯装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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