説明

草刈り作業機

【課題】作業部をオフセットさせての作業が可能で、刈取り作業部の位置や姿勢調整等が容易に行える草刈り作業機であり、トラクタへの装着が簡易な草刈り作業機を提供する。
【解決手段】トラクタ装着部2に回動基部を設けた平行リンクで構成されたオフセット機構部6移動端側には刈取り作業部5が設けられていて、オフセット機構部6は、オフセット用電動シリンダ63の伸縮により移動可能であり、刈取り作業部5はトラクタ進行方向と直交する方向の上下方向に刈取り部回動用電動シリンダ54の伸縮により回動自在で、回動量をトラクタ運転席から目視確認可能な確認ゲージが設けられ、各電動シリンダの伸縮は運転席に設けた電動操作部により遠隔操作可能である草刈り作業機による。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラクタに装着されて草刈り作業を行う農業用機械に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の刈取り装置の従来技術として特開昭60−62904号公報(従来技術1)または、特開平6−253603号公報(従来技術2)が開示されている。
【0003】
特開昭60−62904号公報(従来技術1)には、「トラクタにマストフレームを装着し、このマストフレームにトラクタ側部より突出させて上下動する補助支持ケースを有し、その補助支持ケースから下方に突出する出力軸に草刈具、中耕除草具あるいは穴掘具等の管理作業機を着脱自在に設けて前記管理作業機の作業位置をマストフレームに対して可変自在に設けた果樹園用管理機」で「果樹の幹周地形に合わせて三点リンクによって作業高さ、第1シリンダ19によって作業傾斜を、第2シリンダ20,20aによってトラクタからの作業位置突出量を決定して作業を行う」「果樹園用管理機」の開示がされている。
【0004】
また、特開平6−253603号公報(従来技術2)には、「走行車体の側方に、走行車体よりも機体の高さを低く構成した支持車輪を具備する中耕機体を、側方への突出度を調整できる突出調整機構を介して付設し、前記中耕機体に、中耕機体のロータリの耕深度を調節する耕深度調節機構を設けたことを特徴とする果樹園用中耕機。」の開示がされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭60−62904号公報(従来技術1)
【特許文献2】特開平6−253603号公報(従来技術2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
トラクタに装着されて使用される草刈り作業機の場合、果樹園などの樹木の周辺の圃場を下枝に支障なく除草を行うにはトラクタの側方に刈取り作業部をオフセットさせ作業を行う必要がある。また、トラクタの後方に刈取り作業部が位置した場合、トラクタのタイヤにより刈取り前の草が踏み倒されて刈り残しがでる問題があるためオフセットさせ作業を行うことで解消可能である。しかし、非作業時に作業部がトラクタより側方に常にオフセットした状態での移動や格納を行うには不便である為、オフセット状態と非オフセット状態に切替え可能な構造とする必要があり、オフセット移動させる為の機構部が必要となることや、オフセットさせる為の動力が必要となる。
【0007】
このため、前記従来技術1または従来技術2の様な構造のものがあるが、それぞれオフセット移動等に油圧シリンダを使用して動作させる構造となっている。このため、トラクタ側に油圧の取出し部や油圧バルブを設ける必要があり、容易にどのようなトラクタにも装着することができない問題が有る。また、作業者が任意に作業部の位置を変更可能に設けた場合、多様な状況に対応した位置に変更可能である反面、どの位置に設定すればよいのか解らないという場合や、トラクタに乗車した状態では作業部の姿勢が解りにくいという取扱性の問題があった。
【0008】
このため本発明の目的は、作業部をオフセットさせての作業が可能で、刈取り作業部の位置や姿勢調整等が容易に行えて作業に熟練を要さない草刈り作業機であり、トラクタへの装着が簡易な草刈り作業機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、走行機体であるトラクタに装着される装着部と、該装着部に回動基部を設け左右方向に移動可能な平行リンクで構成されたオフセット機構部と、該オフセット機構部移動端側には、トラクタからの動力により回転する進行方向と直交する水平方向の回転軸に放射状に複数の刈取り刃を揺動自在に設けた刈取り作業部とが設けられていて、前記オフセット機構部は、装着部側と平行リンクを構成する回動アームとの間に回動自在に連結された電動シリンダの伸縮により左右方向に移動可能であり、前記刈取り作業部は、オフセット機構部移動端側においてトラクタ進行方向と直交する方向の上下方向に回動自在で、オフセット機構部側と刈取り作業部側との間に回動自在に連結された電動シリンダの伸縮により回動されることを特徴とした草刈り作業機を提案する。
【0010】
また、刈取り作業部には、該刈取り作業部が上下方向に回動する回動量をトラクタ運転席から目視確認可能な確認ゲージが設けられていて、刈取り作業部を上下方向に回動させる電動シリンダの伸縮は運転席に設けた電動操作部により遠隔操作可能であることを特徴とした0009欄記載の草刈り作業機を提案する。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、左右方向に移動可能な平行リンクで構成されたオフセット機構部により、刈取り作業部はトラクタの側方にオフセット可能であり、トラクタのタイヤにより刈取り前の草を踏みつけることがなく、刈り残しの発生を回避可能で刈取り性能の向上が期待できるとともに、トラクタの後方位置から側方への最大オフセット位置まで全域にわたって刈取り作業が可能で有り、平行リンクで構成されたオフセット機構により構造がシンプルでメンテナンスが容易であるとともに生産コストも低く抑えることが可能である。また、刈取り作業部は、オフセット機構部移動端側においてトラクタ進行方向と直交する方向の上下方向に回動自在であるために、オフセットした側方の作業面が水平位置から上下に傾斜した作業面まで多彩に作業が可能である。
【0012】
また、刈取り作業部は、装着部側と平行リンクを構成する回動アームとの間に回動自在に連結された電動シリンダの伸縮により左右方向に移動可能であり、オフセット機構部移動端側においてトラクタ進行方向と直交する方向の上下方向に電動シリンダの伸縮により回動自在に構成されていて、従来のように油圧シリンダを使用した構成ではないために、トラクタ側に油圧取出部や油圧バルブを必要としないため、トラクタ側の仕様に関係なく装着が可能となる。
【0013】
さらに、刈取り作業部には、刈取り作業部が上下方向に回動する回動量をトラクタ運転席から目視確認可能な確認ゲージが設けられていて、上下方向に回動させる電動シリンダの伸縮は運転席に設けた電動操作部により遠隔操作可能であるために、刈取り作業部の姿勢を容易に確認できるとともに運転席から簡単に調整可能であり取扱性がよく作業効率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明を実施した草刈り作業機の側面図。
【図2】本発明を実施した草刈り作業機をトラクタ後方に位置させた状態の平面図。
【図3】本発明を実施した草刈り作業機をトラクタ側方にオフセットさせた状態の平面図。
【図4】刈取り作業部の要部正面図。
【図5】刈取り作業部を上方に回動させ傾斜させた刈取り作業部の要部正面図。
【図6】刈取り作業部を下方に回動させ傾斜させた刈取り作業部の要部正面図。
【図7】刈取り作業部を断面した要部側面図。
【図8】本発明を実施した草刈り作業機の動力系統説明図。
【図9】電動シリンダの配線図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施例を以下の図面に基づいて説明する。図1は本発明を実施した草刈り作業機の側面図、図2は同じく草刈り作業機をトラクタ後方に位置させた状態の平面図、図3は同じく草刈り作業機をトラクタ側方にオフセットさせた状態の平面図、図4は刈取り作業部の要部正面図、図5は刈取り作業部を上方に回動させ傾斜させた刈取り作業部の要部正面図、図6は刈取り作業部を下方に回動させ傾斜させた刈取り作業部の要部正面図、図7は刈取り作業部を断面した要部側面図、図8は本例の草刈り作業機の動力系統説明図、図9は本例草刈り作業機の電動シリンダの配線図を示したものである。
【0016】
本例に示す草刈り作業機は、トラクタ1の後方に設けた3点リンクヒッチ機構に装着され、トラクタ1からの動力により刈取り作業部5を駆動して使用されるものである。また、刈取り作業部5は、トラクタ1に対して左右に移動可能に設けられていて、トラクタ1の後方片側側方に位置させての作業も可能であり、トラクタ1のタイヤで刈取り前の草を踏まずに前進刈取り作業が可能である。
【0017】
本例の草刈り作業機は、前方部にトラクタ1に装着するための装着部2を設け、その後方に刈取り作業部5が設けられていて、装着部2と刈取り作業部5はオフセット機構部6を介して連結されている。オフセット機構部6は平面視平行リンクで構成されていて、平行リンク前方端が装着部2側に、後方端側が刈取り作業部5側に回動自在にそれぞれ連結されていて、刈取り作業部5が左右に移動しても進行方向に対して直交姿勢が変化しないように構成されている。
【0018】
トラクタ1の後方に設けた左右一対のロワーリンク11とその中央上方に設けたトップリンク10とからなる3点リンクヒッチ機構に、草刈り作業機の前方に設けた装着部2の下方左右に設けられたロワーリンクピン20が前記ロワーリンク11と、同じく左右のロワーリンクピン20部分から門型に形成したマストフレーム22の頂部に設けたトップリンクピン21が前記トップリンク10とをそれぞれ連結させてトラクタ1に草刈り作業機を装着する。本例におけるロワーリンクピン20は、マストフレーム22の下方位置に内側向きに対向して設けられている。
【0019】
刈取り作業部5は、刈取り作業部の片側側方上方部に動力の入力部であるベベルギヤケース3が設けられていて、このベベルギヤケース3から前方に向け突設させた入力軸30と図示していないトラクタPTO軸とユニバーサルジョイント12により連結させて動力がトラクタ1から取り出されて駆動される。
【0020】
ベベルギヤケース3は、図8の動力系統説明図に示すように、入力軸30に入力された動力を内部のベベルギヤ31により進行方向左右方向に変換及び変速する。変換された動力はベベルギヤケース3の片側側方から水平方向の出力軸32により刈取り作業部5の側方端側に伝達される。側方端部側の出力軸先端には出力プーリ40が固着されていて、さらに、その下方に前記刈取り作業部5の回転軸50の端部に固着された入力プーリ41が設けられていて、これらのプーリに掛け渡された伝動ベルト42により入力軸30に入力された動力は、刈取り作業部5の回転軸50に伝達され回転駆動する。前記プーリ及び伝動ベルト部はベルトカバー4により覆われてガードされている。
【0021】
刈取り作業部5は、トラクタ進行方向と直交する水平方向の回転軸50に放射状に複数の刈取り刃51を揺動自在に設け、これを回転軸50の上方を通過して前方から後方に掬い上げるように回転させ、雑草等を刈取りするとともに破砕する。刈取り刃51回転軌跡外周上方部は、刈取り部カバー52で覆われていて、切断された雑草等の飛散を防止するとともに刈取られた雑草等の一部を回転軸50周りに持ち回らせてさらに細かく破砕するように設けられている。
【0022】
刈取り作業部5後方下部にはゲージローラ7が設けられていて、刈取り作業部5の後方側の地上高さを保持する。ゲージローラ7は刈取り作業部5の左右の側板から後方に延設した取付け板70に左右端部を回転自在に保持されていて、側板への取付け板70取付け位置により高さを調整可能である。
【0023】
刈取り作業部5を左右に移動させるオフセット機構部6は、前端側を装着部2に水平回動自在に連結されて後方側へ延びる回動アーム60と、一端を装着部側に他端を回動アーム60側にそれぞれ水平回動自在に連結してその伸縮動作により回動アーム60を水平方向に回動させるオフセット用電動シリンダ63と、回動アーム60の回動端側で刈取り作業部5を保持する刈取り作業部保持ブラケット64を有し、回動アーム60は左右に一対平行に設けられ前方端が装着部2側に、後方端側が刈取り作業部5側の刈取り作業部保持ブラケット64にそれぞれ垂直方向に設けた前方回動軸61および後方回動軸62により連結されて平行リンクを構成していて、刈取り作業部5が図2に示すトラクタ後方位置から図3に示すトラクタの側方側双方への左右移動が行われても進行方向に対して刈取り作業部の直交姿勢が変化しないように構成されている。平行リンクを使用したオフセット機構で構成されているため、構造がシンプルで製造コストを低減可能である。
【0024】
刈取り作業部保持ブラケット64は、回動アーム60の回動端側に垂直方向の後方回動軸62により平行リンク機構を成して水平回動自在に保持されているとともに、進行方向と平行に水平に設けた刈取り部回動軸53により刈取り作業部5を進行方向と直行する面において上下方向回動自在に保持している。刈取り作業部5側と刈取り作業部保持ブラケット64側にそれぞれ両端部を回動自在に刈取り部回動用電動シリンダ54が連結されていて、トラクタ1運転席近傍に設けた図示していない電動操作部により操作して刈取り部回動用電動シリンダ54を伸縮動作させることにより、刈取り作業部5を刈取り部回動軸53を中心に上下に回動させることができる。刈取り作業部5を上下に回動させることにより、トラクタ1の走行面に対し側方の上下に傾斜した傾斜面の雑草等を刈取ることが可能となる。
【0025】
刈取り作業部5の上下方向回動は、刈取り作業部保持ブラケット64に対し進行方向と平行に水平に設けた刈取り部回動軸53を中心に回動される。刈取り部回動軸53は、刈取り作業部5側に設けられ、刈取り作業部保持ブラケット64に設けたボスに嵌合され回動する。刈取り部回動用電動シリンダ54の一端は刈取り作業部5側に回動自在に取付けられている。一方他端は、刈取り作業部保持ブラケット64側に回動自在に一端が取り付けられた第1リンクアーム56と刈取り作業部5側に回動自在に一端が取り付けられた第2リンクアーム57のそれぞれの他端部が回動自在に連結された連結部に回動自在に取付けられていて、刈取り部回動用電動シリンダ54を縮めると図5のように刈取り作業部5は上方に回動し、伸長させると図6のように下方に回動する。
【0026】
刈取り部回動用電動シリンダ54の前方側にはシリンダの伸縮位置を確認できる確認ゲージ55が設けられていて、確認ゲージ55は、シリンダの伸縮長さの状態を表示する目盛りが貼り付け表示された表示プレート550と、第1リンクアーム56の刈取り部回動用電動シリンダ54側端部に設けた指針55とで構成され、表示プレート550は、刈取り部回動用電動シリンダ54の一端が刈取り作業部5側に回動自在に取付けられた回動支点部に一端が保持され、他端側には前記目盛りが貼り付けされた下方部に刈取り部回動用電動シリンダ54と平行に設けた長穴が設けられ、該長穴に刈取り部回動用電動シリンダ54の第1リンクアーム56と第2リンクアーム57との連結支点部が挿入され設けられている。刈取り部回動用電動シリンダ54が伸縮すると、表示プレート550の前記長穴を第1リンクアーム56と第2リンクアーム57との連結支点部すなわち刈取り部回動用電動シリンダ54の一端側が移動し、第1リンクアーム56の指針551が表示プレート550の目盛り部分を移動してシリンダの伸縮長さの状態を表示する。目盛り部分はトラクタ1に乗車した運転者が目視確認できる前方側に向けて設けられ、常に運転者が刈取り作業部の傾きを目盛りにより確認できる。刈取り作業部5を水平状態でのみ使用する場合や移動時には、第1リンクアーム56と刈取り作業部保持ブラケット64に刈取り作業部5が水平位置で重合するロックピン孔58をそれぞれ設け、これにロックピンを挿通させ回動を固定することも可能である。
【0027】
オフセット用電動シリンダ63と刈取り部回動用電動シリンダ54の伸縮操作は、図9の電動シリンダ配線図に示すように、トラクタ1運転席近傍に設けた電動操作部9の切替スイッチ90を動作させたい電動シリンダ側に切替えて、回動スイッチ91を伸又は縮の方向に操作することで操作できる。切替スイッチ90を切換えると、オフセット用リレー92または回動用リレー93の何れかにバッテリー94の電源が供給され作動できる状態となり、回動スイッチ91を操作することにより、各リレーが作動して草刈り作業機側のオフセット用電動シリンダ63または刈取り部回動用電動シリンダ54を伸縮させる。刈取り作業部5の位置や回動姿勢の調整は各電動シリンダの伸縮により構成されていて、油圧シリンダを使用した構成ではないために、トラクタ1側に油圧取出部や油圧バルブを必要としないため、トラクタ側の仕様に関係なく装着が簡易になる。
【0028】
オフセット機構部6前端側の装着部2との連結は、装着部2の門型に形成したマストフレーム22の左右一方側の下方部に連結ブラケット23を介して連結されていて、連結ブラケット23の後方側に前記回動アーム60を垂直方向に設けた前方回動軸61により保持するとともに、連結ブラケット23の前方側一端を進行方向と直交する水平方向の上下回動軸230により装着部2のマストフレーム22に前後回動自在に連結している。該前後回動角は一定範囲に規制されているが、これにより装着部2に対し刈取り作業部5が前後に一定範囲で揺動可能となり、作業圃場の凹凸に対し追従できるように構成されている。
【0029】
装着部2の門型に形成したマストフレーム22の連結ブラケット23取付け側と反対側である左右一方側の下方部には、装着部2の下方への下げすぎを防止するための下降規制手段8が設けられていて、マストフレーム22に固着して設けた垂直方向のパイプ状に形成したホルダー81に側面視L形にパイプ材で形成したガイドシュー80の上方一端側を挿入して固定ピンで保持させ、下方の他端側を圃場面に摺動させるように設けて下降規制手段8は構成されている。固定ピンの差込み位置を変更可能にガイドシュー80に調整孔を設けることで上下調整が可能となる。尚、本例においてはガイドシュー80を連結ブラケット23側には設けていないが、マストフレーム22の左右に設けてもよく、また、ガイドシュー80の下方の摺動部をゲージ輪等の回転体で構成してもよい。
【0030】
刈取り作業部5後方下部には刈取り高さを安定させるゲージローラ7が設けられていて、装着部2には、装着部2の下降位置を規制する下降規制手段8が設けられていることにより、後方のゲージローラ7と前方の下降規制手段8の間に設けた刈取り作業部5の前後方向の姿勢が安定する。
【0031】
トラクタ1の3点リンク機構により保持された装着部2を下げすぎると、刈取り作業部5の姿勢が前方に傾斜した状態となり、刈取り高さや刈取り性能に影響が出る不都合が生ずる。特に刈取り作業部5がオフセット機構部等のためにトラクタ1から後方に離れる程トラクタの3点リンク機構の下降が起こりやすく、このため、正規の設計姿勢で作業が行われるように装着部2の高さを保持させることが必要となるが、作業途中においては方向転換等で頻繁に草刈り作業機を上げ下ろしする必要があり、その都度下降位置を調整する必要があると共に、トラクタに乗車した状態では上方から下降位置を見極めにくく調整が困難であり、下降規制手段8を設けることで容易に下降位置を調整することが可能となり、作業効率が向上するとともに草刈り作業機の性能を熟練を要さずに十分に発揮させることが可能となる。
【0032】
次にこの発明の草刈り作業機の作動について説明する。草刈り作業機の前方部に設けた装着部2によりトラクタ1に装着し、刈り取り作業部5の側方上方部に設けたベベルギヤケース3の入力軸30とトラクタPTO軸をユニバーサルジョイント12で連結し、トラクタ1からの動力により回転駆動させる。ベベルギヤケース3の内部のベベルギヤにより入力軸30の動力は進行方向左右方向に回転動力を変換及び変速して伝動され、出力軸32により動力を側方端側に伝達する。ベベルギヤケース3と反対側の側方端部の出力軸32先端には出力プーリ40が固着されていて、その下方に前記刈取り作業部5の回転軸50の端部に固着された入力プーリ41が設けられていて、これらのプーリに掛け渡された伝動ベルト42により出力軸32により伝達された動力は刈取り作業部5の回転軸50に伝達され回転駆動する。回転軸50には放射状に複数の刈取り刃51が揺動自在に設けられていて、これを切断された雑草等が回転軸50の上方を通過して前方から後方に掬い上げるように回転させ、トラクタの進行により雑草等を刈取りするとともに破砕させる。刈取り刃51回転軌跡外周上方部は、刈取り部カバー52で覆われていて、切断された雑草等の飛散を防止するとともに刈取られた雑草等の一部を刈取り刃51の掬い面の作用により回転軸50周りに持ち回らせてさらに細かく破砕させる。
【0033】
刈取り作業部5をトラクタ1運転席近傍に設けた電動操作部9のスイッチを操作して装着部2に対してオフセット機構部6のオフセット用電動シリンダ63を伸縮させることにより左右に移動させてトラクタ1からのオフセット位置を調整して作業を行う。トラクタ1のタイヤ側方から刈取り作業部5を外側にオフセットさせ、トラクタ1を刈取り後の圃場部面を走行させるとともに、刈取り作業部5を未刈取り部に位置させて作業を行うことで、タイヤが未作業部の雑草等を踏み倒すことによる刈残し発生を防止できる。電動操作部9の切替スイッチ90をオフセット用電動シリンダ63の操作側に切替え回動スイッチ91を操作することで、オフセット用電動シリンダ63を伸縮させオフセット位置を調整する。
【0034】
トラクタ1のタイヤ側方から刈取り作業部5を外側にオフセットさせ、さらに、刈取り部回動用電動シリンダ54を前記電動操作部9のスイッチを操作して伸縮させて刈取り作業部5を進行方向と直交する方向の上下に回動させることにより、トラクタ1の走行面に対して上下に傾斜している側方部の法面の草刈り作業が可能となる。電動操作部9の切替スイッチ90を刈取り部回動用電動シリンダ54の操作側に切替えて、回動スイッチ91を操作することで、刈取り部回動用電動シリンダ54を伸縮させる。
【0035】
刈取り作業部5をトラクタ1の3点リンクにより下降させ作業状態とする場合は、下降規制手段8のガイドシュー80の下方端が圃場面に接する位置に3点リンクを下降させることで刈取り作業部5の作業姿勢が正規の姿勢となるようにガイドシュー80の高さを予め調整しておくことで上下させるたびに作業姿勢が変わることがない。
【産業上の利用可能性】
【0036】
この発明は、トラクタ等の走行機後方に装着されて使用される草刈り作業をするための農業用機械に利用される。
【符号の説明】
【0037】
1 トラクタ
10 トップリンク
11 ロワーリンク
12 ユニバーサルジョイント
2 装着部
20 ロワーリンクピン
21 トップリンクピン
22 マストフレーム
23 連結ブラケット
230 上下回動軸
3 ベベルギヤケース
30 入力軸
31 ベベルギヤ
32 出力軸
4 ベルトカバー
40 出力プーリ
41 入力プーリ
42 伝動ベルト
5 刈取り作業部
50 回転軸
51 刈取り刃
52 刈取り部カバー
53 刈取り作業部回動軸
54 刈取り作業部回動用電動シリンダ
55 確認ゲージ
550 表示プレート
551 指針
56 第1リンクアーム
57 第2リンクアーム
6 オフセット機構部
60 回動アーム
61 前方回動軸
62 後方回動軸
63 オフセット用電動シリンダ
64 刈取り作業部保持ブラケット
7 ゲージローラ
70 取付け板
8 下降規制手段
80 ガイドシュー
81 ホルダー
9 電動操作部
90 切替スイッチ
91 回動スイッチ
92 オフセット用リレー
93 回動用リレー
94 バッテリー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体であるトラクタに装着される装着部と、該装着部に回動基部を設け左右方向に移動可能な平行リンクで構成されたオフセット機構部と、該オフセット機構部移動端側には、トラクタからの動力により回転する進行方向と直交する水平方向の回転軸に放射状に複数の刈取り刃を揺動自在に設けた刈取り作業部とが設けられていて、
前記オフセット機構部は、装着部側と平行リンクを構成する回動アームとの間に回動自在に連結された電動シリンダの伸縮により左右方向に移動可能であり、
前記刈取り作業部は、オフセット機構部移動端側においてトラクタ進行方向と直交する方向の上下方向に回動自在で、オフセット機構部側と刈取り作業部側との間に回動自在に連結された電動シリンダの伸縮により回動されることを特徴とした草刈り作業機。
【請求項2】
刈取り作業部には、該刈取り作業部がトラクタ進行方向と直交する方向の上下方向に回動する回動量をトラクタ運転席から目視確認可能な確認ゲージが設けられていて、刈取り作業部を上下方向に回動させる電動シリンダの伸縮は運転席に設けた電動操作部により遠隔操作可能であることを特徴とした請求項1記載の草刈り作業機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−103850(P2011−103850A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−265006(P2009−265006)
【出願日】平成21年11月20日(2009.11.20)
【出願人】(000171746)株式会社ササキコーポレーション (192)
【Fターム(参考)】