蓄電装置
【課題】 複数の蓄電素子を並べて配置していると、特定の蓄電素子が発熱したときに、隣り合って配置された他の蓄電素子にも熱が伝達されてしまう。
【解決手段】 所定方向に並んで配置された複数の蓄電素子(10)と、所定方向に延びており、複数の蓄電素子を互いに近づける方向の拘束力(F)を発生させるための拘束部材(50)と、を有している。拘束部材は、温度上昇に応じて変形し、拘束力を解除させるための曲げ部(50a)を有する。
【解決手段】 所定方向に並んで配置された複数の蓄電素子(10)と、所定方向に延びており、複数の蓄電素子を互いに近づける方向の拘束力(F)を発生させるための拘束部材(50)と、を有している。拘束部材は、温度上昇に応じて変形し、拘束力を解除させるための曲げ部(50a)を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の蓄電素子が並べて配置された蓄電装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両の動力源として、二次電池を用いる場合には、複数の二次電池(単電池)で構成された電池モジュールを車両に搭載している。具体的には、電池モジュールを構成する複数の二次電池を電気的に直列に接続することにより、車両の走行に必要なエネルギを出力できるようにしている。ここで、電池モジュールとしては、複数の二次電池を一方向に並べて配置したものがある。より具体的には、複数の角形の二次電池を、スペーサを挟んで並べるとともに、これらの二次電池を、配列方向における両端からエンドプレートによって挟むようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−151025号公報(図1)
【特許文献2】特開2002−124224号公報
【特許文献3】特開2003−346756号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複数の二次電池を並べて配置した構成では、例えば、特定の二次電池が過充電等によって発熱したときに、この熱が、特定の二次電池と隣り合って配置された他の二次電池にも伝達されてしまうことがある。ここで、複数の二次電池を、スペーサを挟んで配置した構成では、特定の二次電池で発生した熱が、スペーサを介して他の二次電池に伝達されてしまうことがある。
【0005】
そこで、本発明の目的は、複数の蓄電素子が並んで配置された構成において、特定の蓄電素子が発熱したとしても、隣り合って配置された他の蓄電素子に熱が伝達されるのを抑制することができる蓄電装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願第1の発明である蓄電装置は、所定方向に並んで配置された複数の蓄電素子と、所定方向に延びており、複数の蓄電素子を互いに近づける方向の拘束力を発生させるための拘束部材と、を有している。そして、拘束部材は、温度上昇に応じて変形し、拘束力を解除させるための曲げ部を有する。
【0007】
ここで、曲げ部を、蓄電素子から排出されたガスによる温度上昇に応じて変形させることにより、拘束部材のうち所定方向における両端部を互いに離れる方向に変位させることができる。これにより、複数の蓄電素子に対する拘束力を解除することができる。
【0008】
また、蓄電素子が、ガスを排出させる弁を有している場合において、拘束部材を、弁と対向する位置に配置することができる。これにより、弁から排出されたガスによって、拘束部材の温度を上昇させることができる。すなわち、弁から排出されたガスによって、拘束部材を容易に変形させることができる。
【0009】
ここで、上記拘束部材を、蓄電素子のうち電極端子が設けられた側に配置するとともに、拘束部材とともに拘束力を発生させるための他の拘束部材を、蓄電素子のうち電極端子が設けられた側とは反対側に配置することができる。そして、曲げ部を有する拘束部材を、温度上昇に応じて、他の拘束部材よりも大きな変形量で変形させることができる。
【0010】
一方、拘束部材が固定される一対のエンドプレートを、複数の蓄電素子に対して、所定方向における両端に配置することができる。また、熱交換媒体が移動する通路を形成するスペーサを、所定方向で隣り合う蓄電素子の間に配置することができる。熱交換媒体とは、蓄電装置との間で熱交換を行うための気体である。
【0011】
ここで、スペーサを温度上昇に応じて変形させることにより、スペーサのうち蓄電素子と接触する領域の一部を蓄電素子から離すことができる。これにより、蓄電素子に対するスペーサの接触面積を減らすことができ、蓄電素子で発生した熱がスペーサを介して他の蓄電素子に伝達されるのを抑制することができる。なお、スペーサは、形状記憶合金又は形状記憶樹脂で形成することができる。また、曲げ部を有する拘束部材も、形状記憶合金又は形状記憶樹脂で形成することができ、バイメタルで形成することもできる。
【0012】
本願第2の発明である蓄電装置は、所定方向に並んで配置された複数の蓄電素子と、所定方向に延びており、複数の蓄電素子を互いに近づける方向の拘束力を発生させるための第1および第2の拘束部材と、を有している。そして、第1および第2の拘束部材は、複数の蓄電素子を挟む位置に配置されており、線膨張率が互いに異なる。
【0013】
上述した発明において、蓄電素子の電極端子に、機械的強度が他の部分よりも低く、外力に応じて電極端子の破断を許容する破断部を設けることができる。これにより、蓄電素子の拘束力が解除されたときに、電極端子に応力を集中させて、破断部において電極端子を破断させることができる。そして、電極端子を破断させることにより、蓄電素子の充放電を禁止して、蓄電素子の更なる発熱を防止することができる。
【0014】
一方、所定方向で隣り合う蓄電素子の電極端子を電気的に接続するための接続部材を用いた場合において、接続部材に、機械的強度が他の部分よりも低く、外力に応じて接続部材の破断を許容する破断部を設けることができる。これにより、蓄電素子の拘束力が解除されたときに、電極端子の変位に応じて、破断部において接続部材を破断させることができる。具体的には、接続部材にそれぞれ接続される電極端子が互いに離れる方向に変位することに応じて、接続部材を破断部で破断させることができる。そして、接続部材を破断させることにより、蓄電素子の充放電を禁止して、蓄電素子の更なる発熱を防止することができる。
【0015】
また、温度上昇に応じて、接続部材を変形させるようにすれば、例えば、電極端子のうち接続部材と接触する部分に負荷を与えることができ、電極端子を破断させることができる。ここで、電極端子に上述した破断部を設けておけば、接続部材の変形に応じて、電極端子を破断させやすくすることができる。また、接続部材に上述した破断部を設けておけば、接続部材の変形に応じて、接続部材を破断部で破断させることができる。なお、接続部材は、例えば、形状記憶樹脂、形状記憶合金又はバイメタルで形成することができる。
【0016】
また、所定方向で隣り合って配置された蓄電素子における電極端子が基準位置で互いに接続されている場合において、温度上昇に応じた変形によって、電極端子を基準位置から変位させる変位構造を設けることができる。このように電極端子を基準位置から変位させることにより、隣り合う蓄電素子において、電極端子の接続構造に負荷を与えて、接続構造の一部を破断させることができる。これにより、電極端子を介した電気的な接続を遮断でき、蓄電素子の充放電を禁止して蓄電素子の更なる発熱を防止することができる。
【0017】
ここで、蓄電素子が、充放電を行うための発電要素と、発電要素を収容するケースとを有している場合において、変位構造として、ケースにおける少なくとも一部の領域を用いることができる。そして、少なくとも一部の領域を、温度上昇に応じて蓄電素子の外側に向かって凸となるように変形させることができる。ケースにおける一部の領域を、形状記憶合金等で形成すれば、上述した変形を行わせることができる。また、一部の領域としては、電極端子が設けられた上面又は、上面と鉛直方向で対向する底面とすることができる。ケースの上面を変形させれば、上面の変形に応じて電極端子を基準位置から変位させることができる。また、ケースの底面を変形させれば、ケースの上面を上方に向かって変位させるとともに、上面に設けられた電極端子も変位させることができる。
【0018】
また、複数の蓄電素子を収容するケースを有している場合において、変位構造として、ケースにおける一部の領域を用いることができる。そして、一部の領域を、温度上昇に応じて蓄電素子の側に向かって凸となるように変形させて、蓄電素子を変位させることができる。例えば、ケースにおける一部の領域を変形させて蓄電素子を押し込むことにより、蓄電素子を上方に向かって変位させたり、蓄電素子を水平方向で変位させたりすることができる。
【0019】
さらに、複数の蓄電素子を収容するケースを有している場合において、変位構造として、ケースの内面と蓄電素子の外面との間に配置した変形部材を用いることができる。そして、温度上昇に応じた変形部材の変形によって、蓄電素子を変位させることができる。例えば、変形部材の変形力を用いて、蓄電素子を上方に向かって変位させたり、水平方向で変位させたりすることができる。
【発明の効果】
【0020】
本願第1の発明によれば、温度上昇に応じて曲げ部を変形させることにより、複数の蓄電素子に対する拘束力を解除している。また、本願第2の発明では、互いに異なる線膨張率を有する第1および第2の拘束部材を熱膨張させることにより、拘束力を解除させることができる。そして、拘束力を解除することにより、複数の蓄電素子を互いに離れる方向に移動させやすくすることができる。これにより、複数の蓄電素子のうち、任意の蓄電素子が発熱したとしても、この熱が他の蓄電素子に伝達してしまうのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施例1である電池モジュールの上面図である。
【図2】実施例1である電池モジュールの側面図である。
【図3A】単電池からガスが発生する前の第1の拘束ロッドの上面図である。
【図3B】単電池からガスが発生した後の第1の拘束ロッドの上面図である。
【図4】第1の拘束ロッドが変形した状態における電池モジュールの側面図である。
【図5】本発明の実施例2である単電池において、正極端子の周辺構造を示す外観斜視図である。
【図6】実施例2において、正極端子およびバスバーの接続状態を示す断面図である。
【図7】実施例2において、正極端子の破断状態を示す断面図である。
【図8A】本発明の実施例3で用いられるバスバーの構成を示す正面図である。
【図8B】図8AのA−A断面図である。
【図8C】図8Aにおける領域R1の拡大図である。
【図9】実施例3におけるバスバーの破断状態を示す図である。
【図10】実施例3の変形例1であるバスバーの構成を示す正面図である。
【図11】変形例1におけるバスバーの破断状態を示す図である。
【図12A】実施例3の変形例2であるバスバーの構成を示す正面図である。
【図12B】図12AのB−B断面図である。
【図12C】図12AのC−C断面図である。
【図12D】図12Aにおける領域R2の拡大図である。
【図12E】図12Aにおける領域R3の拡大図である。
【図13】変形例2において、座屈部の構成を示す図である。
【図14】変形例2におけるバスバーの破断状態を示す図である。
【図15A】実施例3の変形例3であるバスバーの構成を示す正面図である。
【図15B】図15Aにおける領域R4の拡大図である。
【図16】変形例3におけるバスバーの破断状態を示す図である。
【図17】実施例3の変形例4であるバスバーの構成を示す正面図である。
【図18】変形例4におけるバスバーの破断状態を示す図である。
【図19A】実施例3の変形例5であるバスバーの構成を示す正面図である。
【図19B】図19Aにおける領域R5の拡大図である。
【図19C】図19Aにおける領域R6の拡大図である。
【図20】変形例5におけるバスバーの破断状態を示す図である。
【図21A】実施例3の変形例6であるバスバーの構成を示す正面図である。
【図21B】図21Aにおける領域R7の拡大図である。
【図21C】図21Aにおける領域R8の拡大図である。
【図22】変形例6におけるバスバーの破断状態を示す図である。
【図23】本発明の実施例4における単電池の構成を示す概略図である。
【図24】実施例4において、バスバーの破断状態を示す側面図である。
【図25】実施例4の変形例1である単電池の構成を示す概略図である。
【図26】実施例4の変形例2である単電池の構成を示す概略図である。
【図27】変形例2において、バスバーの破断状態を示す上面図である。
【図28】実施例4の変形例3である単電池の構成を示す概略図である。
【図29】変形例3において、バスバーの破断状態を示す上面図である。
【図30】本発明の実施例5である電池モジュールの構成を示す概略図である。
【図31】実施例5において、変形部材が変形した状態にあるときの図である。
【図32】実施例5において、バスバーの破断状態を示す側面図である。
【図33】実施例5の変形例である電池モジュールの構成を示す概略図である。
【図34】本発明の実施例6におけるスペーサの構造を示す図である。
【図35】図34のG−G断面図である。
【図36】実施例6において、一部のスペーサが変形したときの電池モジュールの上面図である。
【図37】実施例6の変形例において、一部のスペーサが変形したときの電池モジュールの側面図である。
【図38】本発明の実施例7におけるバスバーの正面図(A)および断面図(B)である。
【図39】実施例7において、変形状態にあるバスバーの正面図(A)および断面図(B)である。
【図40】実施例7の変形例におけるバスバーの破断状態を示す正面図(A)および断面図(B)である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0023】
本発明の実施例1である電池モジュール(蓄電装置)について、図1および図2を用いて説明する。ここで、図1は、電池モジュールの上面図であり、図2は、電池モジュールの側面図である。図1および図2において、X軸、Y軸およびZ軸は、互いに直交する軸であり、Z軸は、重力方向に相当する軸である。図1および図2以外の他の図面においても同様である。
【0024】
電池モジュール1は、複数の単電池(蓄電素子)10を有している。複数の単電池10は、X方向において並んで配置されており、隣り合う2つの単電池10の間には、スペーサ30が配置されている。単電池10としては、リチウムイオン電池やニッケル水素電池といった二次電池を用いることができる。また、二次電池の代わりに、電気二重層キャパシタ(コンデンサ)を用いることもできる。
【0025】
各単電池10の内部には、発電要素(不図示)が配置されている。発電要素は、充放電を行うことができる要素であり、公知の構成を適宜用いることができる。具体的には、正極素子と、電解液を含むセパレータと、負極素子とを、この順に積層することによって、発電要素を構成することができる。正極素子および負極素子はそれぞれ、集電板と、集電板の表面に形成された活物質層とで構成することができる。
【0026】
各単電池10の上部には、正極端子(電極端子)11および負極端子(電極端子)12が設けられている。正極端子11は、発電要素の正極素子と電気的および機械的に接続されている。また、負極端子12は、発電要素の負極素子と電気的および機械的に接続されている。
【0027】
単電池10の正極端子11は、隣り合って配置された他の単電池10における負極端子12と、バスバー(接続部材)20を介して電気的に接続されている。また、単電池10の負極端子12は、隣り合って配置された他の単電池10における正極端子11と、バスバー20を介して電気的に接続されている。これにより、電池モジュール1を構成する複数の単電池10が電気的に直列に接続される。ここで、複数の単電池10のうち、1つの単電池10における正極端子11は、電池モジュール1の総プラス端子となる。また、他の1つの単電池10における負極端子12は、電池モジュール1の総マイナス端子となる。
【0028】
各単電池10の上部には、安全弁21が設けられている。そして、安全弁21は、正極端子11および負極端子12の間に位置している。安全弁21は、単電池10の内部の発電要素から発生したガスを単電池10の外部に排出させるために用いられる。ここで、単電池10を過充電等した場合には、単電池10の発電要素から高温のガスが発生するおそれがある。そこで、ガスによる単電池10の膨張等を防止するために、安全弁21を介して、単電池10の外部にガスを排出させるようにしている。
【0029】
安全弁21としては、破壊型の弁又は、復帰型の弁を用いることができる。破壊型の弁とは、閉じ状態から開き状態に変形して、元の状態に戻らない弁である。例えば、単電池10の外装を構成する電池ケース(不図示)に、凹部を形成することにより、破壊型の弁を構成することができる。一方、復帰型の弁とは、単電池10の内部および外部における圧力の差に応じて、閉じ状態および開き状態の間で変化する弁である。例えば、バネを用いることにより、復帰型の弁を構成することができる。
【0030】
単電池10は、角形に形成されており、6つの面を有している。具体的には、単電池10は、上面、下面、2つの第1側面および2つの第2側面を有している。第1側面とは、単電池10のうちY−Z平面を構成する側面であり、第2側面とは、単電池10のうちX−Z平面を構成する側面である。単電池10の第1側面は、スペーサ30に接触している。
【0031】
ここで、電池モジュール1を構成する複数の単電池10のうち、X方向における両端に位置する単電池10については、2つの第1側面のうち、1つの第1側面だけがスペーサ30に接触している。そして、他の第1側面は、後述するエンドプレート40に接触している。
【0032】
スペーサ30は、樹脂で形成されており、図2に示すように、複数の突起部30aを有している。各突起部30aは、Y方向に延びている。また、複数の突起部30aは、Z方向に関して、所定の間隔を空けた状態で配置されている。なお、突起部30aの形状および数は、適宜設定することができる。すなわち、突起部30aにより、後述する熱交換媒体の移動スペースを形成することができればよい。
【0033】
スペーサ30は、2つの単電池10によって挟まれており、突起部30aの先端は、一方の単電池10における第1側面に接触している。また、スペーサ30のうち、突起部30aが形成された面とは反対側の面は、他方の単電池10における第1側面に接触している。ここで、突起部30aが単電池10の第1側面に接触することにより、単電池10の第1側面およびスペーサ30の間には、スペースが形成される。このスペースは、熱交換媒体(不図示)を移動させるための流路となる。
【0034】
単電池10は、充放電によって発熱することがある。また、単電池10は、所定の温度範囲内において所望の出力特性を示し、この温度範囲を外れる場合には、出力特性が劣化してしまうことがある。そこで、単電池10の温度状態に応じて、単電池10を温めたり、冷やしたりする必要がある。具体的には、電池モジュール10に対して、空気といった熱交換媒体(気体)を供給することにより、単電池10の温度を調節することができる。
【0035】
上述したスペースで熱交換媒体を移動させると、熱交換媒体が単電池10と接触することにより、単電池10との間で熱交換が行われる。これにより、単電池10の温度を調節することができる。すなわち、単電池10が発熱している場合には、冷えた熱交換媒体を単電池10に接触させることにより、単電池10の温度上昇を抑制することができる。また、単電池10が冷えている場合には、温められた熱交換媒体を単電池10に接触させることにより、単電池10の温度低下を抑制することができる。
【0036】
電池モジュール1のうち、X方向における両端には、一対のエンドプレート40が配置されている。各エンドプレート40は、電池モジュール1を構成する複数の単電池10のうち、X方向における両端に位置する単電池10と接触している。また、一対のエンドプレート40には、第1の拘束ロッド(拘束部材)50および第2の拘束ロッド(拘束部材)51が固定されている。なお、エンドプレート40は、樹脂で形成することができる。
【0037】
第1の拘束ロッド50は、単電池10の配列方向(X方向)に延びており、第1の拘束ロッド50の両端部は、固定ボルト41によって、一対のエンドプレート40の上面に固定されている。また、第1の拘束ロッド50は、形状記憶合金で形成されており、長手方向(X方向)における中央部分に、曲げ部50aを有している。曲げ部50aは、後述するように、第1の拘束ロッド50のX方向における長さを変化させるために用いられる。
【0038】
また、第1の拘束ロッド50は、図1に示すように、単電池10の安全弁21とZ方向で対向する位置に配置されている。言い換えれば、第1の拘束ロッド50は、複数の安全弁21に沿って配置されている。また、曲げ部50aは、特定の安全弁21とZ方向で向かい合っている。そして、第1の拘束ロッド50および安全弁21の間には、所定の間隔が空けられている。
【0039】
第2の拘束ロッド51は、単電池10の配列方向(X方向)に延びており、第2の拘束ロッド51の両端部は、固定ボルト41によって、一対のエンドプレート40の下面に固定されている。ここで、第2の拘束ロッド51は、金属で形成されており、第1の拘束ロッド50に設けられた曲げ部50aを有していない。
【0040】
また、第2の拘束ロッド51は、Z方向から見たときに、第1の拘束ロッド50と重なる位置に配置されている。このように、第1および第2の拘束ロッド50,51を配置することにより、後述するように、電池モジュール1を構成する複数の単電池10を効率良く保持することができる。なお、Z方向から見たときに、第1および第2の拘束ロッド50,51をY方向でずらして配置することもできる。
【0041】
上述した構成により、一対のエンドプレート40は、第1および第2の拘束ロッド50,51を介して連結されている。そして、X方向に並べられた複数の単電池10は、一対のエンドプレート40から図1の矢印Fで示す力を受けている。力Fは、一対のエンドプレート40が複数の単電池10を挟んで保持するための力となる。各単電池10は、力Fを受けることにより、スペーサ30に接触する。
【0042】
ここで、複数の単電池10を保持するための構造は、図1および図2に示す構造に限るものではない。すなわち、複数の単電池10に対して、図1の矢印Fで示す力を作用させるものであれば、いかなる構造であってもよい。具体的には、第1および第2の拘束ロッド50,51の位置や数を適宜変更することができる。また、本実施例では、第1および第2の拘束ロッド50,51を棒状に形成しているが、板状といった他の形状であってもよい。
【0043】
上述した電池モジュール1は、パックケース(不図示)に収容されている。これにより、電池パックが構成される。ここで、電池モジュール1の下部は、パックケースの底面に固定されている。
【0044】
この電池パックは、車両に搭載することができる。この車両としては、ハイブリッド自動車や電気自動車がある。ハイブリッド自動車とは、動力源としての電池パックに加えて、内燃機関や燃料電池といった他の動力源も備えた車である。また、電気自動車は、電池パックの出力だけを用いて走行する車である。本実施例の電池パックは、放電によって車両の走行に用いられるエネルギを出力したり、車両の制動時に発生する運動エネルギを回生電力として充電したりする。なお、車両の外部からの電力供給を受けて充電を行うこともできる。
【0045】
次に、本実施例の電池モジュール1において、単電池10からガスが発生したときの動作について説明する。
【0046】
電池モジュール1を構成する複数の単電池10のうち、いずれかの単電池10において、過充電等によって発電要素からガスが発生すると、単電池10の安全弁21が閉じ状態から開き状態に変化する。これにより、単電池10の内部で発生したガスは、単電池10の外部に排出される。安全弁21と対向する位置には、第1の拘束ロッド50が位置しているため、安全弁21から排出されたガスは、第1の拘束ロッド50に接触する。これにより、第1の拘束ロッド50の温度は、上昇することになる。
【0047】
本実施例では、第1の拘束ロッド50を、温度上昇に応じて変形させるようにしている。具体的には、第1の拘束ロッド50を、図3Aに示す状態から図3Bに示す状態に変形させるようにしている。ここで、図3Aは、安全弁21からガスが排出されていないときの第1の拘束ロッド50の上面図であり、図3Bは、安全弁21からガスが排出されたときの第1の拘束ロッド50の上面図である。図3Aおよび図3Bにおいて、第1の拘束ロッド50の両端に設けられた穴部50bは、固定ボルト41を貫通させるための穴部である。第1の拘束ロッド50が図3Aに示す状態にあるとき、曲げ部50aは、幅W1を有している。
【0048】
一方、安全弁21から排出されたガスが、第1の拘束ロッド50に接触して、第1の拘束ロッド50の温度が上昇すると、曲げ部50aが図3Bに示すように変形する。具体的には、曲げ部50aは、第1の拘束ロッド50の長手方向(X方向)に関して、第1の拘束ロッド50の両端部が互いに離れるように変形する。すなわち、曲げ部50aの変形によって、第1の拘束ロッド50は、X方向における長さが長くなる。このとき、曲げ部50aは、幅W1よりも広い幅W2を有している。
【0049】
第1の拘束ロッド50を、形状記憶合金で形成しておくことにより、第1の拘束ロッド50の温度上昇に応じて、第1の拘束ロッド50を、図3Aに示す状態から図3Bに示す状態に変形させることができる。形状記憶合金は、低温相(マルテンサイト)で変形させた後に、所定の温度(形状回復温度)以上に加熱すると、変形前の状態に回復する性質を有している。
【0050】
本実施例では、第1の拘束ロッド50を図3Bに示すように形成したうえで、第1の拘束ロッド50を低温相において、図3Aに示す形状に変形させておく。これにより、第1の拘束ロッド50の温度が所定温度(形状回復温度)に到達するまでは、第1の拘束ロッド50は、図3Aに示す形状に保持される。そして、第1の拘束ロッド50の温度が所定温度を超えると、第1の拘束ロッド50は、図3Bに示す形状に変形する。
【0051】
ここで、形状記憶合金の材料は、第1の拘束ロッド50を変形させるときの温度に基づいて、適宜選択することができる。具体的には、Ni−Ti系合金やCu−Zn−Al系合金を用いることができる。また、第1の拘束ロッド50を変形させるときの温度を、単電池10からガスが発生するときの温度(予測温度)とすることができる。
【0052】
第1の拘束ロッド50が図3Bに示す状態に変形すると、電池モジュール1は、図4に示す状態となる。図4に示す状態では、第1および第2の拘束ロッド50,51のうち、第1の拘束ロッド50が主に変形している。すなわち、第1の拘束ロッド50が図3Bに示すように変形することにより、一対のエンドプレート40の上部における間隔が広がる。
【0053】
一方、電池モジュール1の下部は、パックケースに固定されているとともに、一対のエンドプレート40に第2の拘束ロッド51が固定されている。このため、電池モジュール1の下部においては、一対のエンドプレート40の間隔が広がるのが抑制されている。ここで、第2の拘束ロッド51は、第1の拘束ロッド50の変形に応じて撓むことがある。
【0054】
第1の拘束ロッド50の長さが長くなることにより、一対のエンドプレート40が互いに離れる方向に変位すると、複数の単電池10に作用する力F(図1参照)が解除される。言い換えれば、単電池10をスペーサ30に接触させておく力が解除され、単電池10は、スペーサ30から離れやすくなる。これにより、単電池10およびスペーサ30の間に、空気層を形成することができる。
【0055】
ここで、複数の単電池10は、バスバー20を介して連結されているため、力Fが解除されても、複数の単電池10がばらつくことはない。また、単電池10およびスペーサ30が離れやすくなるように、第1の拘束ロッド50は、単電池10やスペーサ30の上面から所定量だけ離して配置することが好ましい。すなわち、複数の単電池10はバスバー20を介して連結されているため、単電池10およびスペーサ30の間隔を広げようとすると、単電池10の上部が上方に変位することになる。そこで、単電池10の上部が上方に変位した際に第1の拘束ロッド50に突き当たってしまわないように、第1の拘束ロッド50および単電池10の間隔を設定することが好ましい。
【0056】
電池モジュール1を構成する複数の単電池10のうち特定の単電池10からガスが排出されるとき、特定の単電池10の温度は、他の単電池10の温度よりも高くなっている。ここで、複数の単電池10に対して力Fを加えたままの構成(従来の構成)では、単電池10がスペーサ30に接触したままとなる。この場合には、特定の単電池10の熱が、スペーサ30を介して他の単電池10に伝達してしまうおそれがある。
【0057】
ここで、スペーサ30は、樹脂で形成されているため、スペーサ30と接触する単電池10(金属製の電池ケース)に比べて熱伝導率が小さいものの、大気(空気)よりは熱伝導率が大きくなっている。このため、スペーサ30は、大気よりも熱を伝達しやすくなっている。また、電池モジュール1を小型化するために、スペーサ30をX方向で薄くすれば、特定の単電池10の熱が他の単電池10に伝わりやすくなってしまう。
【0058】
そこで、本実施例のように、複数の単電池10に加える力(拘束力)Fを解除して、単電池10をスペーサ30から離すことにより、単電池10の熱がスペーサ30を介して他の単電池10に伝達されるのを抑制することができる。すなわち、単電池10およびスペーサ30の接触面積を減少させることができ、単電池10およびスペーサ30の間における熱伝達を抑制することができる。また、単電池10およびスペーサ30の間に空気層を形成することにより、単電池10の熱がスペーサ30に伝達されるのを抑制することができる。
【0059】
また、本実施例では、第1の拘束ロッド50を各単電池10の安全弁21と対向する位置に配置しているため、安全弁21から排出されたガスを第1の拘束ロッド50に接触させやすくしている。これにより、ガスの発生に応じて、第1の拘束ロッド50を変形させやすくすることができる。
【0060】
ここで、第1の拘束ロッド50は、Z方向に関して、安全弁21と対向する位置に配置しなくてもよい。すなわち、安全弁21から排出されたガスによって、第1の拘束ロッド50の温度を上昇させることができればよい。このため、上述した点に基づいて、第1の拘束ロッド50の位置を適宜設定することができる。
【0061】
例えば、第1の拘束ロッド50を、安全弁21と対向する位置に対して、ずらして配置することができる。この場合でも、安全弁21から排出されたガスによって、第1の拘束ロッド50の温度を上昇させることが可能である。すなわち、第1の拘束ロッド50を変形させることができる。一方、安全弁21から排出されたガスを、第1の拘束ロッド50に導くためのガイド部材を設けることもできる。具体的には、ガイド部材としてのダクトを用いることにより、複数の安全弁21および第1の拘束ロッド50の間において、ガスの移動経路を形成することができる。この構成では、第1の拘束ロッド50の位置を任意に設定することができる。
【0062】
一方、曲げ部50aの形状は、適宜設定することができる。すなわち、温度上昇に応じて、第1の拘束ロッド50の両端部が互いに離れる方向に変位するものであればよい。そして、本実施例では、第1の拘束ロッド50に対して、1つの曲げ部50aを設けているが、複数の曲げ部50aを設けることもできる。そして、複数の曲げ部50aを設ける場合には、各曲げ部50aを安全弁21に対してZ方向で対向させることが好ましい。これにより、各安全弁21から排出されたガスを、対応する曲げ部50aに容易に接触させることができ、第1の拘束ロッド50を容易に変形させることができる。
【0063】
また、本実施例では、第1の拘束ロッド50を形状記憶合金だけで形成しているが、これに限るものではない。具体的には、形状記憶合金の表面に樹脂をコーティングすることにより、第1の拘束ロッド50を構成することができる。また、形状記憶樹脂だけを用いて、第1の拘束ロッド50を形成することができる。これらの場合には、第1の拘束ロッド50を単電池10に接触させることができる。
【0064】
また、第1の拘束ロッド50の一部を、形状記憶合金で形成することができる。具体的には、曲げ部50aを形状記憶合金で形成し、曲げ部50aを除く他の部分を形状記憶合金以外の金属で形成することができる。このように構成しても、曲げ部50aを温度上昇に応じて変形させることができ、本実施例と同様の効果を得ることができる。
【0065】
さらに、第1の拘束ロッド50をバイメタルで形成することもできる。バイメタルとは、互いに異なる熱膨張率を有する複数の金属板を貼り合わせたものであり、温度変化によって変形するものである。第1の拘束ロッド50をバイメタルで形成する場合には、第1の拘束ロッド50が本実施例と同様に変形するように、金属材料を選択すればよい。具体的には、第1の拘束ロッド50のうち、単電池10(安全弁21)と対向する面を、第1の金属部材で構成するとともに、単電池10の側とは反対側を向く面を、第2の金属部材で構成することができる。そして、第1の金属部材の熱膨張率を、第2の金属部材の熱膨張率よりも大きくしておけばよい。この場合において、第1の拘束ロッド50には、曲げ部50aを設けなくてもよい。
【0066】
また、第1の拘束ロッド50および第2の拘束ロッド51の線膨張率を互いに異ならせることができる。具体的には、電池モジュール1を図4に示すように変形させる場合には、第1の拘束ロッド50の線膨張率を、第2の拘束ロッド51の線膨張率よりも大きくすることができる。この場合において、第1の拘束ロッド50には、曲げ部50aを設けなくてもよい。
【0067】
一方、本実施例では、電池モジュール1の下部をパックケースの底面に固定しているため、電池モジュール1の上部に配置された第1の拘束ロッド50を変形させているが、これに限るものではない。例えば、電池モジュール1の上部をパックケースの上面に固定した構成では、電池モジュール1の下部に配置された第2の拘束ロッド51を変形させることができる。この場合において、第2の拘束ロッド51の形状は、本実施例で説明した第1の拘束ロッド50と同様の形状とすることができる。
【0068】
ここで、第2の拘束ロッド51を変形させる場合には、単電池10から排出されるガスを第2の拘束ロッド51に到達しやすくすることが好ましい。具体的には、第2の拘束ロッド51と対向する位置に安全弁21を配置することができる。また、上述したガイド部材を用いることにより、安全弁21から排出されたガスを第2の拘束ロッド51に導くことが好ましい。
【0069】
また、電池モジュール1の一側面をパックケースの側面に固定した構成では、第1の拘束ロッド50だけでなく、第2の拘束ロッド51も変形させることができる。すなわち、第2の拘束ロッド51を、第1の拘束ロッド50と同様の構成とすることができる。この場合であっても、第1および第2の拘束ロッド50,51の変形によって、単電池10をスペーサ30から離すことができる。
【0070】
さらに、本実施例では、X方向で隣り合う単電池10の間にスペーサ30を配置しているが、これに限るものではない。すなわち、スペーサ30を省略することもできる。この場合には、単電池10の外装を構成する電池ケース(不図示)を樹脂で形成することが好ましい。
【実施例2】
【0071】
本発明の実施例2である電池モジュール(蓄電装置)について説明する。本実施例の電池モジュールは、実施例1で説明した電池モジュールの構成に加えて、以下に説明する構成を有している。以下、実施例1と異なる点について主に説明する。なお、実施例1で説明した部材と同一の機能を有する部材については同一符号を用い、詳細な説明は省略する。
【0072】
本実施例では、第1の拘束ロッド50が温度上昇に応じて変形した状態(図4に示す状態)において、単電池10の電極端子を破断させることにより、電池モジュール1内における電流を遮断するようにしている。以下、具体的に説明する。
【0073】
図5は、単電池10のうち、正極端子11の周辺構造を示す外観斜視図である。図5において、電池ケース13は発電要素を収容しており、電池ケース13の上面には、正極端子11が配置されている。
【0074】
正極端子11は、端子ネジ11aおよび端子座11bを有している。ここで、端子ネジ11aの基端には、切り欠き部(破断部)11cが形成されており、切り欠き部11cにおいては、端子ネジ11aの径が端子座11bに向かって連続的に小さくなっている。すなわち、切り欠き部11cはテーパ面で構成されている。このため、端子ネジ11aのうち、切り欠き部11cが形成された部分は、他の部分よりも機械的強度が低くなっている。
【0075】
図5では、正極端子11の構成を示しているが、負極端子12についても、図5に示す正極端子11と同様の構成となっている。なお、正極端子11および負極端子12のうち、一方の電極端子だけを、図5に示す構成とすることもできる。
【0076】
図6は、単電池10の正極端子11に対してバスバー20が接続された状態を示す断面図である。ここで、端子ネジ11aは、バスバー20の貫通孔20aを貫通している。また、端子ネジ11aの外周面に形成されたネジ部には、ナット22の内周面に形成されたネジ部22aが係合している。なお、端子ネジ11aの切り欠き部11cには、ネジ部が形成されていない。
【0077】
ナット22を端子ネジ11aに係合させることにより、バスバー20を正極端子11に固定することができる。このとき、バスバー20は、正極端子11の端子座11bに接触している。
【0078】
本実施例の電池モジュールにおいて、いずれかの単電池10の安全弁21からガスが発生すると、実施例1で説明したように、第1の拘束ロッド50が変形することにより、単電池10およびスペーサ30に対する拘束力(図1に示す力F)が解除される。ここで、X方向で隣り合って配置された2つの単電池10のうち、一方の単電池10の正極端子11は、他方の単電池10の負極端子12とバスバー20を介して接続されているため、正極端子11および負極端子12の位置関係は変化しない。
【0079】
一方、単電池10への拘束力が解除されると、発熱状態の単電池10が膨張することによって、X方向に変位することがある。このとき、バスバー20に接続された正極端子11および負極端子12は、位置関係が変化しないようになっているため、単電池10の変位によって正極端子11や負極端子12に応力が集中することになる。
【0080】
本実施例では、正極端子11の端子ネジ11aに切り欠き部11cを形成しているため、正極端子11に応力が集中したときに、図7に示すように、正極端子11を切り欠き部11cにおいて破断させることができる。また、負極端子12にも切り欠き部を形成しているため、負極端子12に応力を集中させることにより、負極端子12を破断させることができる。ここで、切り欠き部11cの機械的強度は、上述した応力集中が発生したときにのみ、電極端子を破断させる観点に基づいて、適宜設定することができる。
【0081】
図7に示すように、端子ネジ11aを端子座11bから分離させると、バスバー20を端子座11bから離すことができる。ここで、端子ネジ11aを端子座11bから分離させることにより、バスバー20の固定に用いられるナット22を、端子ネジ11aとともに端子座11bから分離させることができる。ナット22が外れると、バスバー20は、端子座11bに対して自由に変位可能な状態となる。そして、単電池10が膨張していることにより、バスバー20を端子座11bから離すことができる。
【0082】
上述したように、バスバー20を端子座11bから分離させることにより、隣り合う単電池10の間における電気的な接続を遮断することができ、電池モジュール1の充放電を禁止することができる。これにより、単電池10の更なる発熱を防止することができる。
【0083】
本実施例では、バスバー20を端子座11bに接触させて電流の経路を確保しているため、端子ネジ11aに切り欠き部11cを形成しても、正極端子11およびバスバー20の間における電気抵抗を悪化させることはない。
【0084】
なお、本実施例では、端子ネジ11aの径を連続的に小さくすることにより、切り欠き部11cを形成しているが、これに限るものではない。すなわち、単電池10の電極端子に応力が集中したときに、電極端子の一部を破断させることができる構造を有していればよい。
【0085】
具体的には、電極端子の一部分における機械的強度を他の部分における機械的強度よりも小さくしておくことにより、上記一部分を起点として電極端子を破断させることができる。例えば、端子ネジ11aの径を端子座11bに向かって段階的に小さくすることができる。また、円柱状に形成された端子ネジの一部に、孔部又は凹部を形成することもできる。
【実施例3】
【0086】
本発明の実施例3である電池モジュール(蓄電装置)について説明する。本実施例の電池モジュールは、実施例1で説明した電池モジュールの構成に加えて、以下に説明する構成を有している。以下、実施例1と異なる点について主に説明する。なお、実施例1,2で説明した部材と同一の機能を有する部材については同一符号を用い、詳細な説明は省略する。
【0087】
実施例2では、単電池10の電極端子(端子ネジ)を破断させることにより、単電池10の電気的な接続を遮断しているが、本実施例では、バスバー20を破断させることにより、単電池10の電気的な接続を遮断するようにしている。以下、本実施例について、具体的に説明する。
【0088】
図8Aは、本実施例で用いられるバスバー20の構成を示す図である。また、図8Bは、図8AのA−A断面図であり、図8Cは、図8Aに示す領域R1の拡大図である。
【0089】
バスバー20は、正極端子11および負極端子12を貫通させるための貫通孔20aを有している。また、バスバー20のうち、2つの貫通孔20aの間に位置する領域には、破断線L1が設けられている。破断線L1は、後述するように、バスバー20を破断させるための位置を示している。
【0090】
破断線L1は、2つの貫通孔20aから等距離の位置に設けられており、2つの貫通孔20aの並び方向に対して直交する方向に延びている。ここで、貫通孔20aの並び方向は、単電池10の配列方向(図1等に示すX方向)に相当する。
【0091】
図8Bに示すように、バスバー20の表面(図8Bの上面および下面)には、破断線L1に沿うように、凹状の切り欠き部(破断部)20b1が形成されている。切り欠き部20b1は、2つの傾斜面で構成されており、底部に向かって溝幅が狭くなっている。バスバー20の上面および下面に形成された切り欠き部20b1は、バスバー20の厚み方向(図8Bの上下方向)において、互いに向かい合うように配置されている。これにより、2つの切り欠き部20b1の間において、バスバー20の厚さが最も薄くなっている。
【0092】
また、図8Cに示すように、バスバー20の側辺部にも切り欠き部(破断部)20b2が形成されている。そして、切り欠き部20b1および切り欠き部20b2は、互いに連なっている。すなわち、本実施例では、破断線L1の位置において、バスバー20の外表面を囲むように切り欠き部20b1,20b2が形成されている。ここで、切り欠き部20b2は、バスバー20の厚み方向に延びる切り欠き部であり、切り欠き部20b1は、バスバー20の厚み方向と直交する面内で延びる切り欠き部である。
【0093】
本実施例の電池モジュールにおいて、いずれかの単電池10の安全弁21からガスが排出されると、実施例1で説明したように、第1の拘束ロッド50が変形することにより、単電池10およびスペーサ30に対する拘束力(図1に示す力F)が解除される。そして、拘束力が解除されると、ガスを排出している単電池10が膨張することにより、X方向で隣り合う単電池10における電極端子の間隔が広がることになる。すなわち、1つのバスバー20に接続された正極端子11および負極端子12が、互いに離れる方向に変位することにより、バスバー20に対して引張り力P(図9参照)を与える。
【0094】
本実施例のバスバー20は、破断線L1に切り欠き部20b1,20b2を有しており、バスバー20のうち破断線L1の強度は、他の部分の強度よりも低くなっている。したがって、バスバー20に引張り力Pが作用すると、図9に示すように、バスバー20は、破断線L1に沿って切断される。このように、バスバー20を切断することにより、バスバー20を介した電気的な接続が遮断され、電池モジュール1の充放電を禁止することができる。そして、充放電を禁止することにより、単電池10の更なる発熱を防止することができる。
【0095】
なお、切り欠き部20b1,20b2の大きさは、単電池10の膨張に伴ってバスバー20を破断させる観点に基づいて、適宜設定することができる。ここで、切り欠き部20b1,20b2の大きさには、切り欠き部20b1,20b2の形状、溝幅、溝深さといったパラメータが含まれる。
【0096】
本実施例では、実施例1の構成に加えて、バスバー20を図8Aに示す構成としているが、本実施例の構成に加えて、実施例2で説明した構成を適用することもできる。すなわち、バスバー20に切り欠き部20b1,20b2を形成するとともに、電極端子にも切り欠き部を形成することができる。
【0097】
破断線L1は、2つの貫通孔20aの間に位置していればよく、本実施例のように、2つの貫通孔20aから等距離の位置に設けなくてもよい。また、本実施例では、図8Aに示すように、破断線L1が、2つの貫通孔20aの並び方向に対して直交する方向、言い換えれば、単電池10の配列方向(X方向)に対して直交する方向に延びているが、これに限るものではない。例えば、破断線L1を、図8AのA−A線に対して傾斜させることができる。この場合において、破断線L1は、バスバー20の側辺部まで延びていることが好ましい。
【0098】
さらに、本実施例では、バスバー20に切り欠き部20b1,20b2を形成しているが、これに限るものではない。例えば、バスバー20の厚み方向に延びる穴部(破断部)を形成することができ、この場合には、複数の穴部を破断線L1に沿って形成すればよい。以下に説明する変形例における破断線についても同様である。
【0099】
(変形例1)
次に、本実施例の変形例1について、図10および図11を用いて説明する。ここで、図10は、本変形例で用いられるバスバーの構成を示す正面図であり、図11は、切断状態にあるバスバーの正面図である。以下、本実施例と異なる点について、主に説明する。
【0100】
本変形例では、実施例3のバスバーに対して、破断線の位置を変更している。具体的には、バスバー20に形成された2つの貫通孔20aのうち、一方の貫通孔20aに対応した位置に破断線L2が設けられている。そして、実施例3と同様に、破断線L2に沿って切り欠き部20b1,20b2が形成されている。
【0101】
破断線L2は、2つの貫通孔20aの並び方向に対して直交する方向に延びている。そして、破断線L2の一端はバスバー20の側辺部に位置しており、バスバー20の側辺部(領域R1)には、図8Cに示す場合と同様に、切り欠き部20b2が形成されている。一方、破断線L2の他端は貫通孔20aに位置している。ここで、本実施例では、貫通孔20aのうち、破断線L2との接続部分には、図8Cに相当する切り欠き部20b2が形成されていないが、このような切り欠き部20b2を形成することもできる。
【0102】
本変形例においも、単電池10からガスが排出されると、第1の拘束ロッド50が変形することにより、単電池10およびスペーサ30に対する拘束力が解除される。そして、単電池10の膨張によって、1つのバスバー20に接続された正極端子11および負極端子12が互いに離れる方向に変位すると、バスバー20に引張り力Pが作用することにより、バスバー20が破断線L2に沿って切断される(図11参照)。ここで、バスバー20のうち、破断線L2の強度は、他の部分の強度よりも低くなっており、バスバー20は破断線L2に沿って破断しやすくなっている。
【0103】
上述したようにバスバー20を切断させることにより、バスバー20を介した電気的な接続が遮断され、電池モジュール1の充放電を禁止することができる。
【0104】
一方、本変形例では、バスバー20のうち、2つの貫通孔20aの間に位置する領域Eとは異なる領域に、破断線L2を設けている。領域Eは、正極端子11および負極端子12の間における電流の主な流路となっている。
【0105】
ここで、バスバー20に切り欠き部20b1,20b2を形成すると、切り欠き部20b1,20b2を形成した分だけ、バスバー20の断面積が小さくなり、電流の流路が狭められてしまうことがある。そして、電流の流路が狭められた分だけ、バスバー20における電気的な抵抗が高くなってしまう。そこで、本変形例のように破断線L2を設けることにより、電流の主な流路(領域E)において、電気抵抗が増加してしまうのを抑制することができる。
【0106】
なお、本変形例では、2つの貫通孔20aのうち、一方の貫通孔20aに対応した位置に破断線L2を設けているが、これに限るものではない。例えば、2つの貫通孔20aのそれぞれに対応させて破断線L2を設けることもできる。また、破断線L2は、2つの貫通孔20aの並び方向に対して傾斜する方向に延びていてもよい。
【0107】
また、本実施例では、貫通孔20aの中心を通るように破断線L2を設定しているが、これに限るものではない。具体的には、貫通孔20aの領域内を通るように破断線L2を設定することができる。ここで、貫通孔20aの中心よりも他の貫通孔20aが位置する側の領域を通るように破断線L2を設定することが好ましい。
【0108】
(変形例2)
次に、本実施例の変形例2について説明する。図12Aは、本変形例におけるバスバーの構成を示す正面図である。図12Bは、図12AのB−B断面図であり、図12Cは、図12AのC−C断面図である。以下、本実施例と異なる点について、主に説明する。
【0109】
本変形例のバスバー20は、正極端子11および負極端子12をそれぞれ貫通させるための貫通孔20cを有しており、本実施例(図8A)と同様に、2つの貫通孔20cの間に破断線L1が設けられている。ここで、バスバー20の表面には、図12Bに示すように、破断線L1に沿うように切り欠き部20b1が形成されている。また、破断線L1の両端には、本実施例(図8C)と同様に切り欠き部20b2が形成されている。
【0110】
バスバー20には、破断線L1と直交する破断線L3が設けられており、破断線L3の両端は、貫通孔20c上に位置している。ここで、バスバー20の表面には、図12Cに示すように、破断線L3に沿うように切り欠き部20b1が形成されている。また、貫通孔20cのうち、破断線L3との接続部分には、図12Dに示すように、切り欠き部20b2が形成されている。図12Dは、図12Aにおける領域R2の拡大図である。
【0111】
破断線L1および破断線L3の交点には、図12Eに示すように、開口部20dが設けられている。ここで、図12Eは、図12Aにおける領域R3の拡大図である。開口部20dにおける4つの角部は、各破断線L1,L3上に形成された切り欠き部20b1と連なっている。
【0112】
一方、貫通孔20cは、図13に示すように、座屈部(変形部)20eを有している。座屈部20eは、貫通孔20cのうち、破断線L3との接続部分と対向する位置に設けられている。
【0113】
本変形例においても、単電池10からガスが排出されると、第1の拘束ロッド50が変形することにより、単電池10およびスペーサ30に対する拘束力が解除される。そして、単電池10の膨張によって、1つのバスバー20に接続された正極端子11および負極端子12が互いに離れる方向に変位する。
【0114】
このとき、正極端子11および負極端子12は、対応する貫通孔20の座屈部20eを押し込むことにより、座屈部20eを座屈させる。座屈部20eが変形すると、貫通孔20のうち、破断線L3との接続部分に形成された切り欠き部20b2に応力が集中することにより、この切り欠き部20b2から破断が開始される。そして、破断線L3に沿ってバスバー20が破断する。ここで、バスバー20における破断線L3の強度は、他の部分の強度よりも低くなっており、バスバー20は破断線L3に沿って破断しやすくなっている。
【0115】
一方、1つのバスバー20に接続された正極端子11および負極端子12が互いに離れる方向に変位することにより、バスバー20には引張り力P(図14参照)が作用する。これにより、バスバー20の側辺部に形成された切り欠き部20b2や、開口部20dの角部から破断が開始され、バスバー20は破断線L1に沿って破断する。
【0116】
上述したように、破断線L1,L3に沿って破断すると、バスバー20は図14に示す状態となる。これにより、バスバー20を介した電気的な接続が遮断され、電池モジュール1の充放電を禁止することができるとともに、単電池10の更なる発熱を防止することができる。
【0117】
なお、本実施例では、破断線L3が破断線L1に対して直交しているが、破断線L1に対して傾斜していてもよい。この場合でも、破断線L3を2つの貫通孔20eに接続しておくことが好ましい。また、貫通孔20cに形成される座屈部20eは、図13に示す形状に限るものではない。すなわち、貫通孔20cの一部を変形させて、破断線L3の端部に形成された切り欠き部20b2から破断を開始させることができればよい。
【0118】
(変形例3)
次に、本実施例の変形例3について、図15Aを用いて説明する。ここで、図15Aは、本変形例におけるバスバーの構成を示す正面図である。
【0119】
本変形例のバスバー20は、正極端子11および負極端子12のそれぞれが貫通する貫通孔20cを有しており、貫通孔20cには、変形例2と同様に、座屈部20eが設けられている。また、変形例2と同様に、2つの貫通孔20cには、破断線L3が接続されており、バスバー20の表面には、破断線L3に沿うように切り欠き部20b1が形成されている。さらに、貫通孔20cのうち、破断線L3との接続部には、図15Bに示すように、切り欠き部20b2が形成されている。図15Bは、図15Aに示す領域R4の拡大図である。
【0120】
一方、破断線L3の両端には、破断線L3と直交する方向に延びる破断線L4が接続されている。そして、破断線L4の両端には、切り欠き部20b2が形成されている。具体的には、破断線L4の一端は、バスバー20の側辺部に位置しており、実施例3の図8Cに示すような切り欠き部20b2が形成されている。また、破断線L4の他端は、貫通孔20c上に位置しており、図15Bに示すような切り欠き部20b2が形成されている。
【0121】
本変形例においても、単電池10からガスが排出されると、第1の拘束ロッド50が変形することにより、単電池10およびスペーサ30に対する拘束力が解除される。そして、単電池10の膨張によって、1つのバスバー20に接続された正極端子11および負極端子12が互いに離れる方向に変位する。
【0122】
このとき、正極端子11および負極端子12は、対応する貫通孔20の座屈部20eを押し込むことにより、座屈部20eを座屈させる。座屈部20eが変形すると、貫通孔20のうち、破断線L3との接続部分に形成された切り欠き部20b2に応力が集中することにより、この切り欠き部20b2から破断が開始される。そして、破断線L3に沿ってバスバー20が破断する。ここで、バスバー20における破断線L3の強度は、他の部分の強度よりも低くなっており、バスバー20は破断線L3に沿って破断しやすくなっている。
【0123】
一方、1つのバスバー20に接続された正極端子11および負極端子12が互いに離れる方向に変位することにより、バスバー20には引張り力が作用する。これにより、破断線L4の両端に形成された切り欠き部20b2から破断が開始され、バスバー20は破断線L4に沿って破断する。
【0124】
上述したように、破断線L3,L4に沿って破断すると、バスバー20は図16に示す状態となる。これにより、バスバー20を介した電気的な接続が遮断され、電池モジュール1の充放電を禁止することができるとともに、単電池10の更なる発熱を防止することができる。
【0125】
なお、本変形例では、破断線L4が破断線L3と直交する方向に延びているが、これに限るものではない。具体的には、破断線L4が破断線L3に対して傾斜する方向に延びていてもよい。また、本実施例では、破断線L4の両端に切り欠き部20b2を形成しているが、破断線L4のいずれか一方の端にのみ切り欠き部20b2を形成することもできる。
【0126】
(変形例4)
次に、本実施例の変形例4について、図17を用いて説明する。ここで、図17は、本変形例におけるバスバーの構成を示す正面図である。本変形例のバスバーは、変形例3のバスバーの構成において、破断線L4の位置を変更したものである。具体的には、破断線L4に代えて、変形例1(図10)と同様の破断線L2を設けている。なお、図17に示す領域R1,R2における拡大図は、図8Cおよび図12Dと同様である。
【0127】
本変形例においても、単電池10からガスが排出されると、第1の拘束ロッド50が変形することにより、単電池10およびスペーサ30に対する拘束力が解除される。そして、単電池10の膨張によって、1つのバスバー20に接続された正極端子11および負極端子12が互いに離れる方向に変位する。
【0128】
このとき、正極端子11および負極端子12は、対応する貫通孔20の座屈部20eを押し込むことにより、座屈部20eを座屈させ、貫通孔20のうち、破断線L3との接続部分に形成された切り欠き部20b2から破断を開始させる。これにより、バスバー20は、破断線L3に沿って破断する。
【0129】
また、1つのバスバー20に接続された正極端子11および負極端子12が互いに離れる方向に変位することにより、破断線L2の一端に形成された切り欠き部20b2から破断が開始され、バスバー20は破断線L2に沿って破断する。
【0130】
上述したように、破断線L2,L3に沿って破断すると、バスバー20は図18に示す状態となる。これにより、バスバー20を介した電気的な接続が遮断され、電池モジュール1の充放電を禁止することができるとともに、単電池10の更なる発熱を防止することができる。また、本変形例において、破断線L2は、2つの貫通孔20cの間に位置する領域(図10の領域E)とは異なる領域に配置されているため、バスバー20における電気抵抗が高くなってしまうのを防止することができる。
【0131】
(変形例5)
次に、本実施例の変形例5について説明する。図19Aは、本変形例におけるバスバーの構成を示す正面図である。本変形例において、貫通孔20cおよび破断線L3の構成については、変形例4と同様である。そして、本変形例では、変形例4のバスバー20の構成において、破断線L2の位置を変更したものである。以下、具体的に説明する。
【0132】
バスバー20には、破断線L3と直交する方向に延びる破断線L5が設けられている。破断線L5の一端は、貫通孔20c(座屈部20e)に接続されており、図19Bに示すように、破断線L5の一端には、切り欠き部20b2が形成されている。ここで、図19Bは、図19Aにおける領域R5の拡大図である。
【0133】
また、破断線L5の他端は、バスバー20の側辺部に接続されており、図19Cに示すように、破断線L5の他端には、切り欠き部20b2が形成されている。ここで、図19Cは、図19Aにおける領域R6の拡大図である。なお、図19Aにおける領域R3の構成は、変形例2(図12E参照)と同様である。
【0134】
本変形例においても、単電池10からガスが排出されると、第1の拘束ロッド50が変形することにより、単電池10およびスペーサ30に対する拘束力が解除される。そして、単電池10の膨張によって、1つのバスバー20に接続された正極端子11および負極端子12が互いに離れる方向に変位する。
【0135】
このとき、正極端子11および負極端子12は、対応する貫通孔20の座屈部20eを押し込むことにより、座屈部20eを座屈させる。これにより、貫通孔20のうち、破断線L3との接続部分に形成された切り欠き部20b2から破断が開始され、バスバー20は、破断線L3に沿って破断する。
【0136】
また、座屈部20eを変形させることにより、貫通孔20のうち、破断線L5との接続部分に形成された切り欠き部20b2から破断が開始され、バスバー20を破断線L5に沿って破断させることができる。さらに、正極端子11および負極端子12が互いに離れる方向に変位することにより、バスバー20の側辺部に形成された切り欠き部20b2においても、破断を開始させることができる。
【0137】
上述したように、破断線L3,L5に沿って破断すると、バスバー20は図20に示す状態となる。これにより、バスバー20を介した電気的な接続が遮断され、電池モジュール1の充放電を禁止することができるとともに、単電池10の更なる発熱を防止することができる。また、本変形例において、破断線L5は、2つの貫通孔20cの間に位置する領域(図10の領域E)とは異なる領域に配置されているため、バスバー20における電気抵抗が高くなってしまうのを防止することができる。
【0138】
なお、破断線L5は、破断線L3と直交する関係でなくてもよく、破断線L3に対して傾斜していてもよい。
【0139】
(変形例6)
次に、本実施例の変形例6について説明する。図21Aは、本変形例におけるバスバーの構成を示す正面図である。本変形例において、貫通孔20cおよび破断線L3の構成については、変形例4と同様である。そして、本変形例では、変形例4のバスバー20の構成において、破断線L2の位置を変更したものである。以下、具体的に説明する。
【0140】
バスバー20には、破断線L3に対して傾斜する方向に延びる破断線L6が設けられている。そして、破断線L6は、2つの貫通孔20cの間に位置する領域(図10の領域E)とは異なる領域に設けられている。バスバー20の表面には、破断線L6に沿って切り欠き部20b1が形成されている。
【0141】
破断線L6の一端は、貫通孔20cに接続されており、図21Bに示すように、破断線L6の一端には、切り欠き部20b2が形成されている。ここで、図21Bは、図21Aにおける領域R7の拡大図である。
【0142】
また、破断線L6の他端は、バスバー20の側辺部に接続されており、図21Cに示すように、破断線L6の他端には、切り欠き部20b2が形成されている。ここで、図21Cは、図21Aにおける領域R8の拡大図である。なお、図21Aにおける領域R3の構成は、変形例2(図12E参照)と同様である。
【0143】
本変形例においても、単電池10からガスが排出されると、第1の拘束ロッド50が変形することにより、単電池10およびスペーサ30に対する拘束力が解除される。そして、単電池10の膨張によって、1つのバスバー20に接続された正極端子11および負極端子12が互いに離れる方向に変位する。
【0144】
このとき、正極端子11および負極端子12は、対応する貫通孔20の座屈部20eを押し込むことにより、座屈部20eを座屈させる。これにより、貫通孔20のうち、破断線L3との接続部分に形成された切り欠き部20b2から破断が開始され、バスバー20は、破断線L3に沿って破断する。また、正極端子11および負極端子12が互いに離れる方向に変位することにより、破断線L6の両端に形成された切り欠き部20b2から破断が開始し、バスバー20は、破断線L6に沿って破断する。
【0145】
上述したように、破断線L3,L6に沿って破断すると、バスバー20は図22に示す状態となる。これにより、バスバー20を介した電気的な接続が遮断され、電池モジュール1の充放電を禁止することができるとともに、単電池10の更なる発熱を防止することができる。また、本変形例において、破断線L6は、2つの貫通孔20cの間に位置する領域(図10の領域E)とは異なる領域に配置されているため、バスバー20における電気抵抗が高くなってしまうのを防止することができる。
【実施例4】
【0146】
次に、本発明の実施例4である電池モジュールについて説明する。本実施例の電池モジュールは、実施例1で説明した構成に加えて、以下に説明する構成を有している。以下、実施例1と異なる点について、主に説明する。なお、実施例1,2で説明した部材と同一の機能を有する部材については、同一符号を用い、詳細な説明は省略する。
【0147】
本実施例では、実施例1で説明したように、単電池10およびスペーサ30に対する拘束力が解除された状態において、ガスが発生した単電池10の電極端子を基準位置(初期位置)から変位させることにより、電極端子およびバスバー20のうち少なくとも一方を破断させるようにしている。これにより、隣り合って配置された2つの単電池10における電気的な接続を遮断でき、電池モジュール1において電流が流れるのを禁止することができる。そして、電池モジュール1の充放電によって、単電池10が更に発熱してしまうのを抑制することができる。
【0148】
図23は、本実施例における単電池10の外観斜視図である。ここで、電池ケース13は、実施例1で説明したように発電要素を収容しており、電池ケース13の上面13bには、正極端子11および負極端子12が設けられている。また、電池ケース13の底面13aは、図23の点線で示すように、温度上昇に応じて矢印D1の方向に突出するように変形する。
【0149】
電池ケース13は、形状記憶合金で形成されており、電池ケース13の温度上昇に応じて、電池ケース13の底面13aが突出するように構成されている。言い換えれば、底面13aは、温度上昇に応じて、電池ケース13の外側に向かって凸となるように変形する。本実施例においては、底面13aが単電池10の外側に向かって凸となるように成形したうえで、底面13aを低温相で平坦状に変形させておくことにより、電池ケース13が構成される。これにより、電池ケース13の温度が所定温度(形状記憶合金の形状回復温度)に到達するまでは、電池ケース13の底面13aが、平坦面のままとなっている。そして、電池ケース13の温度が所定温度に到達すれば、電池ケース13の底面13aが電池ケース13の外側に向かって凸となるように変形する。
【0150】
単電池10が発熱していない場合には、電池ケース13の底面13aが平坦面となっている。ここで、過充電等によって単電池10が発熱すると、この単電池10における電池ケース13の底面13aは、上述したように変形する。電池ケース13の底面13aは、電池モジュール1を収容するパックケース(具体的には、ロアーケース)に接触しているため、底面13aが図23の点線で示すように変形することにより、電池ケース13の上面13bが、図24の矢印D2で示すように、上方に向かって変位することになる。ここで、単電池10が発熱していない状態では、単電池10およびスペーサ30は、拘束力F(図1参照)を受けているが、拘束力Fが解除されると、各単電池10は、他の単電池10に対して変位することができる。
【0151】
電池ケース13の上面13bには、正極端子11および負極端子12が固定されているため、上面13bが上方に変位することに応じて、正極端子11および負極端子12も基準位置に対して上方に向かって変位することになる。ここで、基準位置とは、単電池10からガスが発生しておらず、単電池10が正常状態にあるときの正極端子11および負極端子12の位置である。本実施例において、電池モジュール1を構成する複数の単電池10が正常状態にあるとき、すべての正極端子11および負極端子12は、同一面内(X−Y平面)に位置するようになっている。
【0152】
上述したように電池ケース13の上面13bが変位すると、図24に示すように、発熱した単電池10における電池ケース13の上面13bは、発熱していない他の単電池10における電池ケース13の上面13bよりも高い位置となる。ここで、隣り合って配置された2つの単電池10は、実施例1で説明したように、バスバー20を介して機械的に接続されている。この構造において、一方の単電池10における電池ケース13の上面13bが、他方の単電池10における電池ケース13の上面13bよりも高い位置に変位すると、バスバー20の一部や、電極端子11,12のうち、バスバー20との接触部分に過度の負荷がかかる。
【0153】
これにより、図24に示すように、バスバー20を破断させることができ、電池モジュール1に流れる電流を遮断することができる。ここで、バスバー20を、実施例3で説明した構成(図8A〜図22参照)にすれば、バスバー20を容易に破断させることができる。また、本実施例では、バスバー20を破断させるようにしているが、これに限るものではなく、単電池10における正極端子11又は負極端子12を破断させることもできる。ここで、正極端子11又は負極端子12を、実施例2で説明した構成(図5〜図7参照)にすれば、正極端子11又は負極端子12を容易に破断させることができる。
【0154】
なお、本実施例では、電池ケース13の全体を形状記憶合金で形成しているが、底面13aだけを形状記憶合金で形成することもできる。また、電池ケース13を本実施例で説明したように変形させることができれば、少なくとも底面13aを、形状記憶樹脂で形成したり、バイメタルで形成したりすることもできる。バイメタルとは、互いに異なる熱膨張率を有する複数の金属板を貼り合わせたものであり、温度変化によって変形するものである。
【0155】
底面13aをバイメタルで形成する場合には、底面13aが本実施例と同様に変形するように、金属材料を選択すればよい。具体的には、電池ケース13の底面13aを、内壁面を構成する第1の金属板と、外壁面を構成する第2の金属板とで構成し、第1の金属板の熱膨張率を、第2の金属板の熱膨張率よりも大きくしておけばよい。
【0156】
(変形例1)
次に、本実施例の変形例1について説明する。本実施例では、電池ケース13の底面13aを、温度上昇に応じて変形させているが、これに限るものではない。本変形例では、図25に示すように、電池ケース13の上面13bを、温度上昇に応じて、電池ケース13の外側に向かって凸となるように変形させている。図25において、実線で示す上面13bは、電池ケース13の温度が所定温度(形状記憶合金の形状回復温度)に到達する前の状態であり、平坦な面で構成されている。また、点線で示す上面13bは、電池ケース13の温度が所定温度に到達した後の状態であり、電池ケース13の外側に向かって凸となるように変形している。
【0157】
本変形例では、電池ケース13の上面13bを上方に向かって突出させることにより、この上面13bに設けられた正極端子11および負極端子12を上方に向かって変位させることができる。これにより、本実施例と同様に、バスバー20や電極端子11,12に過度の負荷を与えて破断させることができ、電池モジュール1に流れる電流を遮断することができる。
【0158】
なお、本変形例では、電池ケース13の全体を形状記憶合金等で形成したり、上面13bだけを形状記憶合金等で形成したりすることができる。また、電池ケース13の上面13bだけでなく、本実施例(図23)で説明したように、電池ケース13の底面13aも変形させることができる。これにより、上面13bおよび底面13aにおけるそれぞれの変形量を小さくしつつも、電極端子11,12の変位量(基準位置からの移動量)を、バスバー20等を破断させるのに十分な量とすることができる。
【0159】
(変形例2)
次に、本実施例の変形例2について説明する。本変形例では、図26に示すように、電池ケース13の側面13cを、温度上昇に応じて、電池ケース13の外側に向かって凸となるように変形させている。側面13cとは、電池ケース13を構成する側面のうち、X−Z平面を構成する側面である。すなわち、電池ケース13は、底面13aおよび上面13bの他に、Y−Z平面を構成する2つの側面(第1側面)と、X−Z平面を構成する2つの側面(第2側面)とを有している。図26に示す構成では、2つの第2側面13cのうち、一方の第2側面13cを変形させている。
【0160】
図26において、実線で示す側面13cは、電池ケース13の温度が所定温度(形状回復温度)に到達する前の状態であり、平坦な面で構成されている。また、点線で示す側面13cは、電池ケース13の温度が所定温度に到達した後の状態であり、電池ケース13の外側に向かって凸となるように変形している。
【0161】
電池モジュール1は、実施例1で説明したように、パックケースに収容されており、このパックケースは、電池ケース13の側面13cと対向する領域を有している。このため、電池ケース13における2つの第2側面13cのうち、一方の第2側面13cを変形させたときに、この第2側面13cをパックケース60に接触させることができる(図27参照)。そして、一方の第2側面13cをパックケース60に接触させた後も変形させれば、電池ケース13における他方の第2側面13cを、図27の矢印D3で示す方向に変位させることができる。これに伴い、電池ケース13の上面13bに設けられた正極端子11および負極端子12を矢印D3で示す方向に変位させて、基準位置からずらすことができる。
【0162】
これにより、隣り合って配置された2つの単電池10において、バスバー20や電極端子11,12に負荷を与えることができ、バスバー20等を破断させることができる。そして、電池モジュール1に流れる電流を遮断することができる。なお、図27では、バスバー20を破断させているが、バスバー20と接続されている電極端子11,12を破断させることもできる。また、本変形例の構成に加えて、本実施例(図23)および変形例1(図25)で説明した構成のうち少なくとも一方を適用することもできる。これにより、電池ケース13を構成する複数の面を用いて、バスバー20等を破断させるための電極端子11,12の変位量を確保することができる。
【0163】
(変形例3)
次に、本実施例の変形例3について、図28および図29を用いて説明する。本実施例および上述した変形例1,2では、発熱した単電池10における正極端子11および負極端子12を共に一方向に変位させているが、本変形例では、正極端子11だけを基準位置から変位させるようにしている。具体的には、図28に示すように、電池ケース13の上面13bのうち、正極端子11が設けられた領域だけを、電池ケース13の外側に向かって凸となるように変形させて、正極端子11を、図28の矢印D4で示す方向に傾けている。
【0164】
ここで、正極端子11は、二次元の面内(例えば、Y−Z面又はX−Z面)で傾けたり、三次元(X,Y,Z)の方向で傾けたりすることができる。また、本実施例では、図28に示すように、負極端子12の側に向かって正極端子11を傾けているが、これに限るものではない。すなわち、負極端子12から離れる方向に向かって、正極端子11を傾けることもできる。
【0165】
このように正極端子11を傾けると、この正極端子11と接続されたバスバー20が捻れることにより、バスバー20に負荷を与えることができる。これにより、バスバー20を破断させることができ、電池モジュール1に流れる電流を遮断することができる。
【0166】
なお、図29では、バスバー20を破断させているが、正極端子11又は負極端子12を破断させることもできる。また、正極端子11を傾かせるのではなく、負極端子12を傾かせたり、正極端子11および負極端子12を傾かせたりすることができる。この場合において、電極端子11,12を傾かせる方向は、適宜設定することができ、上面13bの一部を突出させる形状を適宜設定すればよい。
【0167】
さらに、本変形例では、電池ケース13における上面13bの一部を変形させているが、これに限るものではなく、電池ケース13における底面13aの一部を変形させることができる。具体的には、底面13aにおける一部の領域を、電池ケース13の外側に向かって凸となるように変形させれば、正極端子11や負極端子12を本変形例と同様に傾かせることができる。
【0168】
また、本変形例の構成に加えて、本実施例(図23)および変形例2(図26)で説明した構成のうち少なくとも一方を適用することもできる。これにより、電池ケース13を構成する複数の面を用いて、バスバー20等を破断させるための電極端子11,12の変位量を確保することができる。
【0169】
本実施例および変形例1〜3では、単電池10およびスペーサ30に対する拘束力が解除された状態において、電池ケース13の一部を変形させているが、これに限るものではない。すなわち、単電池10およびスペーサ30に対する拘束力が解除されていない状態でも、電池ケース13の一部を変形させることにより、バスバー20や電極端子11,12に負荷を与えて破断させることができる。
【実施例5】
【0170】
次に、本発明の実施例5である電池モジュールについて説明する。本実施例の電池モジュールは、実施例1で説明した構成に加えて、以下に説明する構成を有している。以下、実施例1と異なる点について、主に説明する。なお、実施例1,2で説明した部材と同一の機能を有する部材については、同一符号を用いている。
【0171】
実施例4では、電池ケース13の少なくとも一部を変形させることにより、電極端子11,12を基準位置から変位させているが、本実施例では、単電池10自体を変位させることにより、電極端子11,12を基準位置から変位させるようにしている。以下、本実施例の構成について、具体的に説明する。
【0172】
電池モジュール1(単電池10)の下方には、電池モジュール1を収容するパックケースの一部を構成するロアーケース70が位置している。ロアーケース70には、電池ケース13の底面をロアーケース70の表面から離すための突起部71が設けられている。突起部71は、単電池10の配列方向(X方向)に延びており、突起部71のうち、電池ケース13の底面と対向する領域には、形状記憶合金で形成された変形部材80が設けられている。そして、変形部材80は、単電池10毎に設けられている。具体的には、各単電池10の底面には、2つの変形部材80が接触している。そして、各単電池10と接触する変形部材80は、他の単電池10と接触する変形部材80からX方向で離れて配置されており、互いに接触していない。
【0173】
電池モジュール1を構成する複数の単電池10のうち、いずれかの単電池10からガスが発生して発熱すると、単電池10の熱が変形部材80に伝達される。そして、変形部材80の温度が、形状記憶合金の形状回復温度に到達すると、変形部材80は、上方に向かって凸となるように曲率を持った状態で変形するようになっている。本実施例の変形部材80は、上方に向かって凸となるように成形したうえで、低温相においてロアーケース70の突起部71に沿うように変形させておくことができる。これにより、温度上昇に応じて、変形部材80を上述したように変形させることができる。
【0174】
変形部材80が変形すると、単電池10が上方に向かって変位する。これに伴い、単電池10における正極端子11および負極端子12も上方に向かって変位する。このように発熱状態の単電池10において、正極端子11および負極端子12を上方に向かって変位させることにより、実施例4と同様に、バスバー20に負荷を与えて破断させることができる。これに伴い、電池モジュール1において電流が流れるのを遮断することができ、単電池10の更なる発熱を抑制することができる。ここで、発熱状態の単電池10が上方に変位したときの力を用いて、バスバー20の代わりに、正極端子11又は負極端子12を破断させることもできる。
【0175】
なお、変形部材80を変形させるときの形状は、単電池10を上方に向かって変位させることができればよく、この点に基づいて適宜設定することができる。また、変形部材80として、形状記憶合金の代わりに、形状記憶樹脂を用いたり、バイメタルを用いたりすることもできる。さらに、本実施例では、単電池10およびロアーケース70の間に変形部材80を配置しているが、これに限るものではない。具体的には、ロアーケース70の一部、言い換えれば、少なくとも突起部71を形状記憶合金で形成しておき、温度上昇に応じて突起部71を変形させることにより、単電池10を上方に向かって変位させることができる。
【0176】
また、本実施例では、電池ケース13の底面と対向する一対の突起部71に変形部材80をそれぞれ配置しておき、これらの変形部材80を温度上昇に応じて同様に変形させているが、これに限るものではない。具体的には、図33に示す構成とすることができる。図33において、ロアーケース70に設けられた一対の突起部71のうち、一方の突起部71には、本実施例と同様に、変形部材80が配置されている。また、他方の突起部71には、温度が上昇しても変形しにくい非変形部材81が配置されている。
【0177】
図33に示す構成では、単電池10の発熱によって、変形部材80だけが変形することになる。すなわち、電池ケース13の底面のうち、変形部材80と接触している領域だけが上方に向かって変位することにより、単電池10は、水平面(X−Y平面)に対して傾くことになる。これにより、正極端子11を主に基準位置から変位させることができる。なお、図33に示す構成では、正極端子11を変位させているが、負極端子12を変位させることもできる。
【0178】
さらに、本実施例では、単電池10を上方に向かって変位させているが、これに限るものではない。例えば、単電池10を水平面内(X−Y面内)で変位させることができる。ここで、電池ケース13のうち、X−Z面を構成する側面(実施例4の変形例2で説明した第2側面)を押し込むことができるように変形部材を変形させれば、単電池10を水平面内で変位させることができる。この場合には、電池ケース13の側面とパックケースとの間に変形部材を配置し、単電池10の温度上昇に応じて変形部材を単電池10の側に向かって凸となるように変形させればよい。
【0179】
また、本実施例では、単電池10およびスペーサ30に対する拘束力が解除された状態において、変形部材80を変形させているが、これに限るものではない。すなわち、単電池10およびスペーサ30に対する拘束力が解除されていない状態でも、変形部材80を変形させることにより、バスバー20や電極端子11,12に負荷を与えて破断させることができる。
【実施例6】
【0180】
次に、本発明の実施例6である電池モジュールについて説明する。本実施例では、実施例1で説明した構成において、図34および図35に示すスペーサ30を用いている。ここで、図34は、本実施例で用いられるスペーサの構造を示す図であり、一部の領域においてスペーサの内部構造を示している。また、図35は、図34のG−G断面図である。なお、上述した実施例で説明した部材と同一の機能を有する部材については、同一符号を用い、詳細な説明は省略する。
【0181】
本実施例において、スペーサ30は、形状記憶合金で形成された板部材31と、板部材31を覆い、スペーサ30の外形を形成する樹脂とを有している。ここで、突起部30aも樹脂で形成されている。形状記憶合金の材料は、実施例1で説明した場合と同様に、適宜選択することができる。また、板部材31を覆う樹脂の材料も適宜設定することができる。
【0182】
板部材31の温度が形状回復温度に到達すると、板部材31(スペーサ30)は、図36に示すように曲面を有する形状(いわゆる波形状)に変形するようになっている。ここで、図36は、本実施例の電池モジュール1の一部を上方から見たときの図である。
【0183】
本実施例の電池モジュール1において、過充電等によって単電池10からガスが排出されると、実施例1で説明したように、第1の拘束ロッド50が変形することにより、複数の単電池10に対する拘束力(図1に示す力F)が解除される。また、ガスを排出した単電池10と接触するスペーサ30は、この単電池10からの熱を受けることにより、図36に示すように波形状に変形する。すなわち、スペーサ30の温度は、単電池10から伝達される熱に応じて上昇し、形状回復温度に到達したときに、スペーサ30が波形状に変形する。
【0184】
ここで、単電池10は2つのスペーサ30と接触しているため、単電池10の温度上昇に応じて、2つのスペーサ30が変形することになる。なお、電池モジュール1の両端に位置する単電池10は、スペーサ30およびエンドプレート40に接触しているため、1つのスペーサ30が変形することになる。
【0185】
このようにスペーサ30を変形させることにより、単電池10およびスペーサ30の接触面積を減らすことができ、発熱状態の単電池10の熱が、スペーサ30を介して、他の単電池10に伝達されるのを抑制することができる。そして、電池モジュール1を構成する複数の単電池10が連鎖的に発熱状態となってしまうのを抑制することができる。
【0186】
なお、本実施例では、電池モジュール1を上方から見たときに、スペーサ30を図36に示すように変形させているが、これに限るものではない。すなわち、温度上昇に応じてスペーサ30を変形させることにより、スペーサ30および単電池10の接触面積を減少させることができればよい。すなわち、スペーサ30のうち、単電池10と接触している領域の一部を、単電池10から離れるように変形させればよい。
【0187】
例えば、スペーサ30を図37に示すように変形させることができる。図37は、電池モジュール1の一部を側面(Y方向)から見たときの図である。このようにスペーサ30を変形させると、スペーサ30に設けられた複数の突起部30aのうち、一部の突起部30aが単電池10から離れることになる。
【0188】
また、本実施例では、スペーサ30を、形状記憶合金で形成された板部材31と、板部材31を覆う樹脂とで構成しているが、これに限るものではない。すなわち、温度上昇に応じてスペーサ30を変形させることができればよく、例えば、スペーサ30を形状記憶樹脂だけで形成したり、バイメタルで形成したりすることができる。ここで、バイメタルを用いる場合には、単電池10間の絶縁を確保するために、本実施例と同様に、バイメタルを樹脂で覆うようにすることが好ましい。
【0189】
スペーサ30を形状記憶樹脂で形成する場合には、特定の樹脂材料に限定されることになるが、形状記憶合金の板部材31を用いれば、板部材31を覆う樹脂の材料として、幅広い選択肢の中から選択することができる。例えば、板部材31を覆う樹脂として、ポリプロピレンといった低コストの材料を用いることができる。
【0190】
また、本実施例では、第1の拘束ロッド50を変形させて複数の単電池10に対する拘束力を解除させるようにしているが、これに限るものではない。具体的には、複数の単電池10に対して拘束力を与えたままの状態において、スペーサ30を本実施例のように変形させることができる。この場合であっても、単電池10およびスペーサ30の接触面積を減らすことができ、スペーサ30を介した熱の伝達を抑制することができる。
【0191】
さらに、本実施例では、実施例1で説明した構成において、上述したスペーサ30を用いているが、これに限るものではない。すなわち、各実施例2〜6で説明した構成において、本実施例のスペーサ30を用いることができる。
【実施例7】
【0192】
次に、本発明の実施例7である電池モジュールについて説明する。ここで、上述した実施例で説明した部材と同一の機能を有する部材については、同一符号を用い、詳細な説明は省略する。本実施例は、実施例2で説明した構成(図5〜図7)において、以下に説明するバスバー20を用いている。
【0193】
バスバー20は、形状記憶合金で形成されており、バスバー20の温度が形状回復温度よりも低いときには、図38に示す状態となっている。ここで、図38(A)は、バスバー20の正面図であり、図38(B)は、図38(A)のA−A断面図である。図38に示す状態において、バスバー20は、平面(図6のX−Y平面)内に位置しており、2つの貫通孔20aでは、正極端子11および負極端子12が貫通している。なお、バスバー20を形成する形状記憶合金の材料は、実施例1で説明した場合と同様に、適宜選択することができる。
【0194】
一方、単電池10が過充電等によって発熱すると、単電池10の熱が電極端子11,12を介してバスバー20に伝達される。そして、バスバー20の温度が形状回復温度に到達すると、バスバー20は、図39に示す形状に変形するようになっている。ここで、図39(A)は、変形状態にあるバスバー20の正面図であり、図39(B)は、図39(A)のA−A断面図である。
【0195】
図39に示す状態において、バスバー20は、2つの貫通孔20aの間に位置する領域で変形しており、2つの貫通孔20aの間隔N2は、図38に示す状態における2つの貫通孔20aの間隔N1よりも狭くなっている。このようにバスバー20を変形させることにより、貫通孔20aを端子ネジ11a(図6参照)に密接させて、端子ネジ11aに外力を与えることができる。
【0196】
端子ネジ11aは、実施例2で説明したように、切り欠き部11cを有しているため、貫通孔20aからの外力によって、端子ネジ11aを端子座11bから分離させることができる(図7参照)。これにより、実施例2でも説明したように、隣り合って配置された2つの単電池10における電気的な接続を遮断することができ、電池モジュール1の充放電を禁止することができる。
【0197】
本実施例では、実施例1で説明したように複数の単電池10に対する拘束力を解除した状態で、バスバー20を変形させることもできるし、複数の単電池10に対して拘束力を与えたままの状態で、バスバー20を変形させることもできる。いずれの場合であっても、バスバー20の変形によって、端子ネジ11aを端子座11bから分離させることができる。
【0198】
なお、本実施例において、バスバー20を変形させたときの形状は、適宜設定することができる。すなわち、バスバー20を変形させることにより、電極端子11,12を破断させるための外力を発生させることができればよい。具体的には、本実施例で説明したように、2つの貫通孔20aが互いに近づくようにバスバー20を変形させることができる。また、2つの貫通孔20aが互いに離れるように、バスバー20を変形させることができる。
【0199】
2つの貫通孔20aが互いに離れる方向にバスバー20を変形させる場合としては、例えば、バスバー20の温度が形状回復温度よりも低い状態において、バスバー20を図39に示す形状に形成しておく。このとき、2つの貫通孔20aには、電極端子11,12が貫通するようになっている。そして、バスバー20の温度が形状回復温度を超えたときに、バスバー20を図38に示す形状に変形させることができる。これにより、2つの貫通孔20aの間隔は、間隔N2から間隔N1に広がることになる。
【0200】
一方、本実施例では、バスバー20を形状記憶合金で形成しているが、これに限るものではなく、例えば、バイメタルを用いることができる。バイメタルを用いた場合であっても、2つの貫通孔20aの間隔を変化させて、電極端子11,12に対して外力を与えることができる。
【0201】
また、本実施例では、端子ネジ11aの基端部に切り欠き部11cを形成しているが、切り欠き部11cを形成しなくてもよい。すなわち、端子ネジ11aを破断させやすい構造にすることなく、バスバー20の変形力だけで、端子ネジ11aを破断させることもできる。
【0202】
次に、本実施例の変形例におけるバスバー20について、図40を用いて説明する。本変形例では、実施例3の変形例1で説明した構成(図10及び図11)において、バスバー20を本実施例と同様に変形させるようにしている。ここで、図40(A)は、バスバー20が破断状態にあるときの正面図であり、図40(B)は、図40(A)のA−A断面図である。
【0203】
本変形例において、バスバー20は、形状記憶合金で形成されており、バスバー20の温度が形状回復温度よりも低いときには、バスバー20は、本実施例で説明した場合と同様に、平面内に位置している。ここで、バスバー20には、図10で説明したように、破断線L2が形成されている。
【0204】
一方、単電池10が過充電等によって発熱すると、単電池10の熱が電極端子11,12を介してバスバー20に伝達される。そして、バスバー20の温度が形状回復温度を超えると、バスバー20が図40に示すように変形するようになっている。具体的には、バスバー20のうち、2つの貫通孔20aの間に位置する領域が変形するようになっており、バスバー20の変形によって、2つの貫通孔20aの間隔が狭くなる。
【0205】
このようにバスバー20が変形すると、貫通孔20aが電極端子11,12に密接することになる。ここで、一方の貫通孔20aには、破断線L2が形成されているため、バスバー20は、破断線L2に沿って破断されることになり、図40に示す状態となる。本変形例によれば、バスバー20の変形によって、バスバー20を破断させることができ、バスバー20を介した2つの単電池10の電気的な接続を遮断することができる。
【0206】
本変形例において、電極端子11,12の構造を、実施例2で説明した構造(図5および図6)にすることもできる。すなわち、端子ネジ11aの基端部に切り欠き部11cを形成することができる。また、バスバー20をバイメタルで形成することもできる。
【0207】
また、本変形例では、実施例3の変形例1(図10)で説明したバスバー20を変形させているが、これに限るものではなく、実施例3(図8A)又は実施例3の各変形例2〜6(図12A〜図21A)で説明したバスバー20を変形させることができる。この場合であっても、バスバー20の変形によって、バスバー20を破断させることができる。なお、バスバー20に形成された破断線の位置によっては、バスバー20を変形させる方向や変形させた後の形状を適宜設定することにより、バスバー20を破断させやすくすることができる。
【符号の説明】
【0208】
1:電池モジュール(蓄電装置) 10:単電池(蓄電素子)
11:正極端子(電極端子) 11a:端子ネジ
11:端子座 11c:切り欠き部
12:負極端子(電極端子) 13:電池ケース
13a:底面 13b:上面
13c:側面 20:バスバー(接続部材)
20a,20c:貫通孔 20b1,20b2:切り欠き部
20d:開口部 20e:座屈部
21:安全弁 22:ナット
22a:ネジ部 30:スペーサ
40:エンドプレート 41:固定ボルト
50:第1の拘束ロッド(拘束部材) 50a:曲げ部
51:第2の拘束ロッド(拘束部材) 60:パックケース
70:ロアーケース 71:突起部
80:変形部材
L1〜L6:破断線
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の蓄電素子が並べて配置された蓄電装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両の動力源として、二次電池を用いる場合には、複数の二次電池(単電池)で構成された電池モジュールを車両に搭載している。具体的には、電池モジュールを構成する複数の二次電池を電気的に直列に接続することにより、車両の走行に必要なエネルギを出力できるようにしている。ここで、電池モジュールとしては、複数の二次電池を一方向に並べて配置したものがある。より具体的には、複数の角形の二次電池を、スペーサを挟んで並べるとともに、これらの二次電池を、配列方向における両端からエンドプレートによって挟むようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−151025号公報(図1)
【特許文献2】特開2002−124224号公報
【特許文献3】特開2003−346756号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複数の二次電池を並べて配置した構成では、例えば、特定の二次電池が過充電等によって発熱したときに、この熱が、特定の二次電池と隣り合って配置された他の二次電池にも伝達されてしまうことがある。ここで、複数の二次電池を、スペーサを挟んで配置した構成では、特定の二次電池で発生した熱が、スペーサを介して他の二次電池に伝達されてしまうことがある。
【0005】
そこで、本発明の目的は、複数の蓄電素子が並んで配置された構成において、特定の蓄電素子が発熱したとしても、隣り合って配置された他の蓄電素子に熱が伝達されるのを抑制することができる蓄電装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願第1の発明である蓄電装置は、所定方向に並んで配置された複数の蓄電素子と、所定方向に延びており、複数の蓄電素子を互いに近づける方向の拘束力を発生させるための拘束部材と、を有している。そして、拘束部材は、温度上昇に応じて変形し、拘束力を解除させるための曲げ部を有する。
【0007】
ここで、曲げ部を、蓄電素子から排出されたガスによる温度上昇に応じて変形させることにより、拘束部材のうち所定方向における両端部を互いに離れる方向に変位させることができる。これにより、複数の蓄電素子に対する拘束力を解除することができる。
【0008】
また、蓄電素子が、ガスを排出させる弁を有している場合において、拘束部材を、弁と対向する位置に配置することができる。これにより、弁から排出されたガスによって、拘束部材の温度を上昇させることができる。すなわち、弁から排出されたガスによって、拘束部材を容易に変形させることができる。
【0009】
ここで、上記拘束部材を、蓄電素子のうち電極端子が設けられた側に配置するとともに、拘束部材とともに拘束力を発生させるための他の拘束部材を、蓄電素子のうち電極端子が設けられた側とは反対側に配置することができる。そして、曲げ部を有する拘束部材を、温度上昇に応じて、他の拘束部材よりも大きな変形量で変形させることができる。
【0010】
一方、拘束部材が固定される一対のエンドプレートを、複数の蓄電素子に対して、所定方向における両端に配置することができる。また、熱交換媒体が移動する通路を形成するスペーサを、所定方向で隣り合う蓄電素子の間に配置することができる。熱交換媒体とは、蓄電装置との間で熱交換を行うための気体である。
【0011】
ここで、スペーサを温度上昇に応じて変形させることにより、スペーサのうち蓄電素子と接触する領域の一部を蓄電素子から離すことができる。これにより、蓄電素子に対するスペーサの接触面積を減らすことができ、蓄電素子で発生した熱がスペーサを介して他の蓄電素子に伝達されるのを抑制することができる。なお、スペーサは、形状記憶合金又は形状記憶樹脂で形成することができる。また、曲げ部を有する拘束部材も、形状記憶合金又は形状記憶樹脂で形成することができ、バイメタルで形成することもできる。
【0012】
本願第2の発明である蓄電装置は、所定方向に並んで配置された複数の蓄電素子と、所定方向に延びており、複数の蓄電素子を互いに近づける方向の拘束力を発生させるための第1および第2の拘束部材と、を有している。そして、第1および第2の拘束部材は、複数の蓄電素子を挟む位置に配置されており、線膨張率が互いに異なる。
【0013】
上述した発明において、蓄電素子の電極端子に、機械的強度が他の部分よりも低く、外力に応じて電極端子の破断を許容する破断部を設けることができる。これにより、蓄電素子の拘束力が解除されたときに、電極端子に応力を集中させて、破断部において電極端子を破断させることができる。そして、電極端子を破断させることにより、蓄電素子の充放電を禁止して、蓄電素子の更なる発熱を防止することができる。
【0014】
一方、所定方向で隣り合う蓄電素子の電極端子を電気的に接続するための接続部材を用いた場合において、接続部材に、機械的強度が他の部分よりも低く、外力に応じて接続部材の破断を許容する破断部を設けることができる。これにより、蓄電素子の拘束力が解除されたときに、電極端子の変位に応じて、破断部において接続部材を破断させることができる。具体的には、接続部材にそれぞれ接続される電極端子が互いに離れる方向に変位することに応じて、接続部材を破断部で破断させることができる。そして、接続部材を破断させることにより、蓄電素子の充放電を禁止して、蓄電素子の更なる発熱を防止することができる。
【0015】
また、温度上昇に応じて、接続部材を変形させるようにすれば、例えば、電極端子のうち接続部材と接触する部分に負荷を与えることができ、電極端子を破断させることができる。ここで、電極端子に上述した破断部を設けておけば、接続部材の変形に応じて、電極端子を破断させやすくすることができる。また、接続部材に上述した破断部を設けておけば、接続部材の変形に応じて、接続部材を破断部で破断させることができる。なお、接続部材は、例えば、形状記憶樹脂、形状記憶合金又はバイメタルで形成することができる。
【0016】
また、所定方向で隣り合って配置された蓄電素子における電極端子が基準位置で互いに接続されている場合において、温度上昇に応じた変形によって、電極端子を基準位置から変位させる変位構造を設けることができる。このように電極端子を基準位置から変位させることにより、隣り合う蓄電素子において、電極端子の接続構造に負荷を与えて、接続構造の一部を破断させることができる。これにより、電極端子を介した電気的な接続を遮断でき、蓄電素子の充放電を禁止して蓄電素子の更なる発熱を防止することができる。
【0017】
ここで、蓄電素子が、充放電を行うための発電要素と、発電要素を収容するケースとを有している場合において、変位構造として、ケースにおける少なくとも一部の領域を用いることができる。そして、少なくとも一部の領域を、温度上昇に応じて蓄電素子の外側に向かって凸となるように変形させることができる。ケースにおける一部の領域を、形状記憶合金等で形成すれば、上述した変形を行わせることができる。また、一部の領域としては、電極端子が設けられた上面又は、上面と鉛直方向で対向する底面とすることができる。ケースの上面を変形させれば、上面の変形に応じて電極端子を基準位置から変位させることができる。また、ケースの底面を変形させれば、ケースの上面を上方に向かって変位させるとともに、上面に設けられた電極端子も変位させることができる。
【0018】
また、複数の蓄電素子を収容するケースを有している場合において、変位構造として、ケースにおける一部の領域を用いることができる。そして、一部の領域を、温度上昇に応じて蓄電素子の側に向かって凸となるように変形させて、蓄電素子を変位させることができる。例えば、ケースにおける一部の領域を変形させて蓄電素子を押し込むことにより、蓄電素子を上方に向かって変位させたり、蓄電素子を水平方向で変位させたりすることができる。
【0019】
さらに、複数の蓄電素子を収容するケースを有している場合において、変位構造として、ケースの内面と蓄電素子の外面との間に配置した変形部材を用いることができる。そして、温度上昇に応じた変形部材の変形によって、蓄電素子を変位させることができる。例えば、変形部材の変形力を用いて、蓄電素子を上方に向かって変位させたり、水平方向で変位させたりすることができる。
【発明の効果】
【0020】
本願第1の発明によれば、温度上昇に応じて曲げ部を変形させることにより、複数の蓄電素子に対する拘束力を解除している。また、本願第2の発明では、互いに異なる線膨張率を有する第1および第2の拘束部材を熱膨張させることにより、拘束力を解除させることができる。そして、拘束力を解除することにより、複数の蓄電素子を互いに離れる方向に移動させやすくすることができる。これにより、複数の蓄電素子のうち、任意の蓄電素子が発熱したとしても、この熱が他の蓄電素子に伝達してしまうのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施例1である電池モジュールの上面図である。
【図2】実施例1である電池モジュールの側面図である。
【図3A】単電池からガスが発生する前の第1の拘束ロッドの上面図である。
【図3B】単電池からガスが発生した後の第1の拘束ロッドの上面図である。
【図4】第1の拘束ロッドが変形した状態における電池モジュールの側面図である。
【図5】本発明の実施例2である単電池において、正極端子の周辺構造を示す外観斜視図である。
【図6】実施例2において、正極端子およびバスバーの接続状態を示す断面図である。
【図7】実施例2において、正極端子の破断状態を示す断面図である。
【図8A】本発明の実施例3で用いられるバスバーの構成を示す正面図である。
【図8B】図8AのA−A断面図である。
【図8C】図8Aにおける領域R1の拡大図である。
【図9】実施例3におけるバスバーの破断状態を示す図である。
【図10】実施例3の変形例1であるバスバーの構成を示す正面図である。
【図11】変形例1におけるバスバーの破断状態を示す図である。
【図12A】実施例3の変形例2であるバスバーの構成を示す正面図である。
【図12B】図12AのB−B断面図である。
【図12C】図12AのC−C断面図である。
【図12D】図12Aにおける領域R2の拡大図である。
【図12E】図12Aにおける領域R3の拡大図である。
【図13】変形例2において、座屈部の構成を示す図である。
【図14】変形例2におけるバスバーの破断状態を示す図である。
【図15A】実施例3の変形例3であるバスバーの構成を示す正面図である。
【図15B】図15Aにおける領域R4の拡大図である。
【図16】変形例3におけるバスバーの破断状態を示す図である。
【図17】実施例3の変形例4であるバスバーの構成を示す正面図である。
【図18】変形例4におけるバスバーの破断状態を示す図である。
【図19A】実施例3の変形例5であるバスバーの構成を示す正面図である。
【図19B】図19Aにおける領域R5の拡大図である。
【図19C】図19Aにおける領域R6の拡大図である。
【図20】変形例5におけるバスバーの破断状態を示す図である。
【図21A】実施例3の変形例6であるバスバーの構成を示す正面図である。
【図21B】図21Aにおける領域R7の拡大図である。
【図21C】図21Aにおける領域R8の拡大図である。
【図22】変形例6におけるバスバーの破断状態を示す図である。
【図23】本発明の実施例4における単電池の構成を示す概略図である。
【図24】実施例4において、バスバーの破断状態を示す側面図である。
【図25】実施例4の変形例1である単電池の構成を示す概略図である。
【図26】実施例4の変形例2である単電池の構成を示す概略図である。
【図27】変形例2において、バスバーの破断状態を示す上面図である。
【図28】実施例4の変形例3である単電池の構成を示す概略図である。
【図29】変形例3において、バスバーの破断状態を示す上面図である。
【図30】本発明の実施例5である電池モジュールの構成を示す概略図である。
【図31】実施例5において、変形部材が変形した状態にあるときの図である。
【図32】実施例5において、バスバーの破断状態を示す側面図である。
【図33】実施例5の変形例である電池モジュールの構成を示す概略図である。
【図34】本発明の実施例6におけるスペーサの構造を示す図である。
【図35】図34のG−G断面図である。
【図36】実施例6において、一部のスペーサが変形したときの電池モジュールの上面図である。
【図37】実施例6の変形例において、一部のスペーサが変形したときの電池モジュールの側面図である。
【図38】本発明の実施例7におけるバスバーの正面図(A)および断面図(B)である。
【図39】実施例7において、変形状態にあるバスバーの正面図(A)および断面図(B)である。
【図40】実施例7の変形例におけるバスバーの破断状態を示す正面図(A)および断面図(B)である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0023】
本発明の実施例1である電池モジュール(蓄電装置)について、図1および図2を用いて説明する。ここで、図1は、電池モジュールの上面図であり、図2は、電池モジュールの側面図である。図1および図2において、X軸、Y軸およびZ軸は、互いに直交する軸であり、Z軸は、重力方向に相当する軸である。図1および図2以外の他の図面においても同様である。
【0024】
電池モジュール1は、複数の単電池(蓄電素子)10を有している。複数の単電池10は、X方向において並んで配置されており、隣り合う2つの単電池10の間には、スペーサ30が配置されている。単電池10としては、リチウムイオン電池やニッケル水素電池といった二次電池を用いることができる。また、二次電池の代わりに、電気二重層キャパシタ(コンデンサ)を用いることもできる。
【0025】
各単電池10の内部には、発電要素(不図示)が配置されている。発電要素は、充放電を行うことができる要素であり、公知の構成を適宜用いることができる。具体的には、正極素子と、電解液を含むセパレータと、負極素子とを、この順に積層することによって、発電要素を構成することができる。正極素子および負極素子はそれぞれ、集電板と、集電板の表面に形成された活物質層とで構成することができる。
【0026】
各単電池10の上部には、正極端子(電極端子)11および負極端子(電極端子)12が設けられている。正極端子11は、発電要素の正極素子と電気的および機械的に接続されている。また、負極端子12は、発電要素の負極素子と電気的および機械的に接続されている。
【0027】
単電池10の正極端子11は、隣り合って配置された他の単電池10における負極端子12と、バスバー(接続部材)20を介して電気的に接続されている。また、単電池10の負極端子12は、隣り合って配置された他の単電池10における正極端子11と、バスバー20を介して電気的に接続されている。これにより、電池モジュール1を構成する複数の単電池10が電気的に直列に接続される。ここで、複数の単電池10のうち、1つの単電池10における正極端子11は、電池モジュール1の総プラス端子となる。また、他の1つの単電池10における負極端子12は、電池モジュール1の総マイナス端子となる。
【0028】
各単電池10の上部には、安全弁21が設けられている。そして、安全弁21は、正極端子11および負極端子12の間に位置している。安全弁21は、単電池10の内部の発電要素から発生したガスを単電池10の外部に排出させるために用いられる。ここで、単電池10を過充電等した場合には、単電池10の発電要素から高温のガスが発生するおそれがある。そこで、ガスによる単電池10の膨張等を防止するために、安全弁21を介して、単電池10の外部にガスを排出させるようにしている。
【0029】
安全弁21としては、破壊型の弁又は、復帰型の弁を用いることができる。破壊型の弁とは、閉じ状態から開き状態に変形して、元の状態に戻らない弁である。例えば、単電池10の外装を構成する電池ケース(不図示)に、凹部を形成することにより、破壊型の弁を構成することができる。一方、復帰型の弁とは、単電池10の内部および外部における圧力の差に応じて、閉じ状態および開き状態の間で変化する弁である。例えば、バネを用いることにより、復帰型の弁を構成することができる。
【0030】
単電池10は、角形に形成されており、6つの面を有している。具体的には、単電池10は、上面、下面、2つの第1側面および2つの第2側面を有している。第1側面とは、単電池10のうちY−Z平面を構成する側面であり、第2側面とは、単電池10のうちX−Z平面を構成する側面である。単電池10の第1側面は、スペーサ30に接触している。
【0031】
ここで、電池モジュール1を構成する複数の単電池10のうち、X方向における両端に位置する単電池10については、2つの第1側面のうち、1つの第1側面だけがスペーサ30に接触している。そして、他の第1側面は、後述するエンドプレート40に接触している。
【0032】
スペーサ30は、樹脂で形成されており、図2に示すように、複数の突起部30aを有している。各突起部30aは、Y方向に延びている。また、複数の突起部30aは、Z方向に関して、所定の間隔を空けた状態で配置されている。なお、突起部30aの形状および数は、適宜設定することができる。すなわち、突起部30aにより、後述する熱交換媒体の移動スペースを形成することができればよい。
【0033】
スペーサ30は、2つの単電池10によって挟まれており、突起部30aの先端は、一方の単電池10における第1側面に接触している。また、スペーサ30のうち、突起部30aが形成された面とは反対側の面は、他方の単電池10における第1側面に接触している。ここで、突起部30aが単電池10の第1側面に接触することにより、単電池10の第1側面およびスペーサ30の間には、スペースが形成される。このスペースは、熱交換媒体(不図示)を移動させるための流路となる。
【0034】
単電池10は、充放電によって発熱することがある。また、単電池10は、所定の温度範囲内において所望の出力特性を示し、この温度範囲を外れる場合には、出力特性が劣化してしまうことがある。そこで、単電池10の温度状態に応じて、単電池10を温めたり、冷やしたりする必要がある。具体的には、電池モジュール10に対して、空気といった熱交換媒体(気体)を供給することにより、単電池10の温度を調節することができる。
【0035】
上述したスペースで熱交換媒体を移動させると、熱交換媒体が単電池10と接触することにより、単電池10との間で熱交換が行われる。これにより、単電池10の温度を調節することができる。すなわち、単電池10が発熱している場合には、冷えた熱交換媒体を単電池10に接触させることにより、単電池10の温度上昇を抑制することができる。また、単電池10が冷えている場合には、温められた熱交換媒体を単電池10に接触させることにより、単電池10の温度低下を抑制することができる。
【0036】
電池モジュール1のうち、X方向における両端には、一対のエンドプレート40が配置されている。各エンドプレート40は、電池モジュール1を構成する複数の単電池10のうち、X方向における両端に位置する単電池10と接触している。また、一対のエンドプレート40には、第1の拘束ロッド(拘束部材)50および第2の拘束ロッド(拘束部材)51が固定されている。なお、エンドプレート40は、樹脂で形成することができる。
【0037】
第1の拘束ロッド50は、単電池10の配列方向(X方向)に延びており、第1の拘束ロッド50の両端部は、固定ボルト41によって、一対のエンドプレート40の上面に固定されている。また、第1の拘束ロッド50は、形状記憶合金で形成されており、長手方向(X方向)における中央部分に、曲げ部50aを有している。曲げ部50aは、後述するように、第1の拘束ロッド50のX方向における長さを変化させるために用いられる。
【0038】
また、第1の拘束ロッド50は、図1に示すように、単電池10の安全弁21とZ方向で対向する位置に配置されている。言い換えれば、第1の拘束ロッド50は、複数の安全弁21に沿って配置されている。また、曲げ部50aは、特定の安全弁21とZ方向で向かい合っている。そして、第1の拘束ロッド50および安全弁21の間には、所定の間隔が空けられている。
【0039】
第2の拘束ロッド51は、単電池10の配列方向(X方向)に延びており、第2の拘束ロッド51の両端部は、固定ボルト41によって、一対のエンドプレート40の下面に固定されている。ここで、第2の拘束ロッド51は、金属で形成されており、第1の拘束ロッド50に設けられた曲げ部50aを有していない。
【0040】
また、第2の拘束ロッド51は、Z方向から見たときに、第1の拘束ロッド50と重なる位置に配置されている。このように、第1および第2の拘束ロッド50,51を配置することにより、後述するように、電池モジュール1を構成する複数の単電池10を効率良く保持することができる。なお、Z方向から見たときに、第1および第2の拘束ロッド50,51をY方向でずらして配置することもできる。
【0041】
上述した構成により、一対のエンドプレート40は、第1および第2の拘束ロッド50,51を介して連結されている。そして、X方向に並べられた複数の単電池10は、一対のエンドプレート40から図1の矢印Fで示す力を受けている。力Fは、一対のエンドプレート40が複数の単電池10を挟んで保持するための力となる。各単電池10は、力Fを受けることにより、スペーサ30に接触する。
【0042】
ここで、複数の単電池10を保持するための構造は、図1および図2に示す構造に限るものではない。すなわち、複数の単電池10に対して、図1の矢印Fで示す力を作用させるものであれば、いかなる構造であってもよい。具体的には、第1および第2の拘束ロッド50,51の位置や数を適宜変更することができる。また、本実施例では、第1および第2の拘束ロッド50,51を棒状に形成しているが、板状といった他の形状であってもよい。
【0043】
上述した電池モジュール1は、パックケース(不図示)に収容されている。これにより、電池パックが構成される。ここで、電池モジュール1の下部は、パックケースの底面に固定されている。
【0044】
この電池パックは、車両に搭載することができる。この車両としては、ハイブリッド自動車や電気自動車がある。ハイブリッド自動車とは、動力源としての電池パックに加えて、内燃機関や燃料電池といった他の動力源も備えた車である。また、電気自動車は、電池パックの出力だけを用いて走行する車である。本実施例の電池パックは、放電によって車両の走行に用いられるエネルギを出力したり、車両の制動時に発生する運動エネルギを回生電力として充電したりする。なお、車両の外部からの電力供給を受けて充電を行うこともできる。
【0045】
次に、本実施例の電池モジュール1において、単電池10からガスが発生したときの動作について説明する。
【0046】
電池モジュール1を構成する複数の単電池10のうち、いずれかの単電池10において、過充電等によって発電要素からガスが発生すると、単電池10の安全弁21が閉じ状態から開き状態に変化する。これにより、単電池10の内部で発生したガスは、単電池10の外部に排出される。安全弁21と対向する位置には、第1の拘束ロッド50が位置しているため、安全弁21から排出されたガスは、第1の拘束ロッド50に接触する。これにより、第1の拘束ロッド50の温度は、上昇することになる。
【0047】
本実施例では、第1の拘束ロッド50を、温度上昇に応じて変形させるようにしている。具体的には、第1の拘束ロッド50を、図3Aに示す状態から図3Bに示す状態に変形させるようにしている。ここで、図3Aは、安全弁21からガスが排出されていないときの第1の拘束ロッド50の上面図であり、図3Bは、安全弁21からガスが排出されたときの第1の拘束ロッド50の上面図である。図3Aおよび図3Bにおいて、第1の拘束ロッド50の両端に設けられた穴部50bは、固定ボルト41を貫通させるための穴部である。第1の拘束ロッド50が図3Aに示す状態にあるとき、曲げ部50aは、幅W1を有している。
【0048】
一方、安全弁21から排出されたガスが、第1の拘束ロッド50に接触して、第1の拘束ロッド50の温度が上昇すると、曲げ部50aが図3Bに示すように変形する。具体的には、曲げ部50aは、第1の拘束ロッド50の長手方向(X方向)に関して、第1の拘束ロッド50の両端部が互いに離れるように変形する。すなわち、曲げ部50aの変形によって、第1の拘束ロッド50は、X方向における長さが長くなる。このとき、曲げ部50aは、幅W1よりも広い幅W2を有している。
【0049】
第1の拘束ロッド50を、形状記憶合金で形成しておくことにより、第1の拘束ロッド50の温度上昇に応じて、第1の拘束ロッド50を、図3Aに示す状態から図3Bに示す状態に変形させることができる。形状記憶合金は、低温相(マルテンサイト)で変形させた後に、所定の温度(形状回復温度)以上に加熱すると、変形前の状態に回復する性質を有している。
【0050】
本実施例では、第1の拘束ロッド50を図3Bに示すように形成したうえで、第1の拘束ロッド50を低温相において、図3Aに示す形状に変形させておく。これにより、第1の拘束ロッド50の温度が所定温度(形状回復温度)に到達するまでは、第1の拘束ロッド50は、図3Aに示す形状に保持される。そして、第1の拘束ロッド50の温度が所定温度を超えると、第1の拘束ロッド50は、図3Bに示す形状に変形する。
【0051】
ここで、形状記憶合金の材料は、第1の拘束ロッド50を変形させるときの温度に基づいて、適宜選択することができる。具体的には、Ni−Ti系合金やCu−Zn−Al系合金を用いることができる。また、第1の拘束ロッド50を変形させるときの温度を、単電池10からガスが発生するときの温度(予測温度)とすることができる。
【0052】
第1の拘束ロッド50が図3Bに示す状態に変形すると、電池モジュール1は、図4に示す状態となる。図4に示す状態では、第1および第2の拘束ロッド50,51のうち、第1の拘束ロッド50が主に変形している。すなわち、第1の拘束ロッド50が図3Bに示すように変形することにより、一対のエンドプレート40の上部における間隔が広がる。
【0053】
一方、電池モジュール1の下部は、パックケースに固定されているとともに、一対のエンドプレート40に第2の拘束ロッド51が固定されている。このため、電池モジュール1の下部においては、一対のエンドプレート40の間隔が広がるのが抑制されている。ここで、第2の拘束ロッド51は、第1の拘束ロッド50の変形に応じて撓むことがある。
【0054】
第1の拘束ロッド50の長さが長くなることにより、一対のエンドプレート40が互いに離れる方向に変位すると、複数の単電池10に作用する力F(図1参照)が解除される。言い換えれば、単電池10をスペーサ30に接触させておく力が解除され、単電池10は、スペーサ30から離れやすくなる。これにより、単電池10およびスペーサ30の間に、空気層を形成することができる。
【0055】
ここで、複数の単電池10は、バスバー20を介して連結されているため、力Fが解除されても、複数の単電池10がばらつくことはない。また、単電池10およびスペーサ30が離れやすくなるように、第1の拘束ロッド50は、単電池10やスペーサ30の上面から所定量だけ離して配置することが好ましい。すなわち、複数の単電池10はバスバー20を介して連結されているため、単電池10およびスペーサ30の間隔を広げようとすると、単電池10の上部が上方に変位することになる。そこで、単電池10の上部が上方に変位した際に第1の拘束ロッド50に突き当たってしまわないように、第1の拘束ロッド50および単電池10の間隔を設定することが好ましい。
【0056】
電池モジュール1を構成する複数の単電池10のうち特定の単電池10からガスが排出されるとき、特定の単電池10の温度は、他の単電池10の温度よりも高くなっている。ここで、複数の単電池10に対して力Fを加えたままの構成(従来の構成)では、単電池10がスペーサ30に接触したままとなる。この場合には、特定の単電池10の熱が、スペーサ30を介して他の単電池10に伝達してしまうおそれがある。
【0057】
ここで、スペーサ30は、樹脂で形成されているため、スペーサ30と接触する単電池10(金属製の電池ケース)に比べて熱伝導率が小さいものの、大気(空気)よりは熱伝導率が大きくなっている。このため、スペーサ30は、大気よりも熱を伝達しやすくなっている。また、電池モジュール1を小型化するために、スペーサ30をX方向で薄くすれば、特定の単電池10の熱が他の単電池10に伝わりやすくなってしまう。
【0058】
そこで、本実施例のように、複数の単電池10に加える力(拘束力)Fを解除して、単電池10をスペーサ30から離すことにより、単電池10の熱がスペーサ30を介して他の単電池10に伝達されるのを抑制することができる。すなわち、単電池10およびスペーサ30の接触面積を減少させることができ、単電池10およびスペーサ30の間における熱伝達を抑制することができる。また、単電池10およびスペーサ30の間に空気層を形成することにより、単電池10の熱がスペーサ30に伝達されるのを抑制することができる。
【0059】
また、本実施例では、第1の拘束ロッド50を各単電池10の安全弁21と対向する位置に配置しているため、安全弁21から排出されたガスを第1の拘束ロッド50に接触させやすくしている。これにより、ガスの発生に応じて、第1の拘束ロッド50を変形させやすくすることができる。
【0060】
ここで、第1の拘束ロッド50は、Z方向に関して、安全弁21と対向する位置に配置しなくてもよい。すなわち、安全弁21から排出されたガスによって、第1の拘束ロッド50の温度を上昇させることができればよい。このため、上述した点に基づいて、第1の拘束ロッド50の位置を適宜設定することができる。
【0061】
例えば、第1の拘束ロッド50を、安全弁21と対向する位置に対して、ずらして配置することができる。この場合でも、安全弁21から排出されたガスによって、第1の拘束ロッド50の温度を上昇させることが可能である。すなわち、第1の拘束ロッド50を変形させることができる。一方、安全弁21から排出されたガスを、第1の拘束ロッド50に導くためのガイド部材を設けることもできる。具体的には、ガイド部材としてのダクトを用いることにより、複数の安全弁21および第1の拘束ロッド50の間において、ガスの移動経路を形成することができる。この構成では、第1の拘束ロッド50の位置を任意に設定することができる。
【0062】
一方、曲げ部50aの形状は、適宜設定することができる。すなわち、温度上昇に応じて、第1の拘束ロッド50の両端部が互いに離れる方向に変位するものであればよい。そして、本実施例では、第1の拘束ロッド50に対して、1つの曲げ部50aを設けているが、複数の曲げ部50aを設けることもできる。そして、複数の曲げ部50aを設ける場合には、各曲げ部50aを安全弁21に対してZ方向で対向させることが好ましい。これにより、各安全弁21から排出されたガスを、対応する曲げ部50aに容易に接触させることができ、第1の拘束ロッド50を容易に変形させることができる。
【0063】
また、本実施例では、第1の拘束ロッド50を形状記憶合金だけで形成しているが、これに限るものではない。具体的には、形状記憶合金の表面に樹脂をコーティングすることにより、第1の拘束ロッド50を構成することができる。また、形状記憶樹脂だけを用いて、第1の拘束ロッド50を形成することができる。これらの場合には、第1の拘束ロッド50を単電池10に接触させることができる。
【0064】
また、第1の拘束ロッド50の一部を、形状記憶合金で形成することができる。具体的には、曲げ部50aを形状記憶合金で形成し、曲げ部50aを除く他の部分を形状記憶合金以外の金属で形成することができる。このように構成しても、曲げ部50aを温度上昇に応じて変形させることができ、本実施例と同様の効果を得ることができる。
【0065】
さらに、第1の拘束ロッド50をバイメタルで形成することもできる。バイメタルとは、互いに異なる熱膨張率を有する複数の金属板を貼り合わせたものであり、温度変化によって変形するものである。第1の拘束ロッド50をバイメタルで形成する場合には、第1の拘束ロッド50が本実施例と同様に変形するように、金属材料を選択すればよい。具体的には、第1の拘束ロッド50のうち、単電池10(安全弁21)と対向する面を、第1の金属部材で構成するとともに、単電池10の側とは反対側を向く面を、第2の金属部材で構成することができる。そして、第1の金属部材の熱膨張率を、第2の金属部材の熱膨張率よりも大きくしておけばよい。この場合において、第1の拘束ロッド50には、曲げ部50aを設けなくてもよい。
【0066】
また、第1の拘束ロッド50および第2の拘束ロッド51の線膨張率を互いに異ならせることができる。具体的には、電池モジュール1を図4に示すように変形させる場合には、第1の拘束ロッド50の線膨張率を、第2の拘束ロッド51の線膨張率よりも大きくすることができる。この場合において、第1の拘束ロッド50には、曲げ部50aを設けなくてもよい。
【0067】
一方、本実施例では、電池モジュール1の下部をパックケースの底面に固定しているため、電池モジュール1の上部に配置された第1の拘束ロッド50を変形させているが、これに限るものではない。例えば、電池モジュール1の上部をパックケースの上面に固定した構成では、電池モジュール1の下部に配置された第2の拘束ロッド51を変形させることができる。この場合において、第2の拘束ロッド51の形状は、本実施例で説明した第1の拘束ロッド50と同様の形状とすることができる。
【0068】
ここで、第2の拘束ロッド51を変形させる場合には、単電池10から排出されるガスを第2の拘束ロッド51に到達しやすくすることが好ましい。具体的には、第2の拘束ロッド51と対向する位置に安全弁21を配置することができる。また、上述したガイド部材を用いることにより、安全弁21から排出されたガスを第2の拘束ロッド51に導くことが好ましい。
【0069】
また、電池モジュール1の一側面をパックケースの側面に固定した構成では、第1の拘束ロッド50だけでなく、第2の拘束ロッド51も変形させることができる。すなわち、第2の拘束ロッド51を、第1の拘束ロッド50と同様の構成とすることができる。この場合であっても、第1および第2の拘束ロッド50,51の変形によって、単電池10をスペーサ30から離すことができる。
【0070】
さらに、本実施例では、X方向で隣り合う単電池10の間にスペーサ30を配置しているが、これに限るものではない。すなわち、スペーサ30を省略することもできる。この場合には、単電池10の外装を構成する電池ケース(不図示)を樹脂で形成することが好ましい。
【実施例2】
【0071】
本発明の実施例2である電池モジュール(蓄電装置)について説明する。本実施例の電池モジュールは、実施例1で説明した電池モジュールの構成に加えて、以下に説明する構成を有している。以下、実施例1と異なる点について主に説明する。なお、実施例1で説明した部材と同一の機能を有する部材については同一符号を用い、詳細な説明は省略する。
【0072】
本実施例では、第1の拘束ロッド50が温度上昇に応じて変形した状態(図4に示す状態)において、単電池10の電極端子を破断させることにより、電池モジュール1内における電流を遮断するようにしている。以下、具体的に説明する。
【0073】
図5は、単電池10のうち、正極端子11の周辺構造を示す外観斜視図である。図5において、電池ケース13は発電要素を収容しており、電池ケース13の上面には、正極端子11が配置されている。
【0074】
正極端子11は、端子ネジ11aおよび端子座11bを有している。ここで、端子ネジ11aの基端には、切り欠き部(破断部)11cが形成されており、切り欠き部11cにおいては、端子ネジ11aの径が端子座11bに向かって連続的に小さくなっている。すなわち、切り欠き部11cはテーパ面で構成されている。このため、端子ネジ11aのうち、切り欠き部11cが形成された部分は、他の部分よりも機械的強度が低くなっている。
【0075】
図5では、正極端子11の構成を示しているが、負極端子12についても、図5に示す正極端子11と同様の構成となっている。なお、正極端子11および負極端子12のうち、一方の電極端子だけを、図5に示す構成とすることもできる。
【0076】
図6は、単電池10の正極端子11に対してバスバー20が接続された状態を示す断面図である。ここで、端子ネジ11aは、バスバー20の貫通孔20aを貫通している。また、端子ネジ11aの外周面に形成されたネジ部には、ナット22の内周面に形成されたネジ部22aが係合している。なお、端子ネジ11aの切り欠き部11cには、ネジ部が形成されていない。
【0077】
ナット22を端子ネジ11aに係合させることにより、バスバー20を正極端子11に固定することができる。このとき、バスバー20は、正極端子11の端子座11bに接触している。
【0078】
本実施例の電池モジュールにおいて、いずれかの単電池10の安全弁21からガスが発生すると、実施例1で説明したように、第1の拘束ロッド50が変形することにより、単電池10およびスペーサ30に対する拘束力(図1に示す力F)が解除される。ここで、X方向で隣り合って配置された2つの単電池10のうち、一方の単電池10の正極端子11は、他方の単電池10の負極端子12とバスバー20を介して接続されているため、正極端子11および負極端子12の位置関係は変化しない。
【0079】
一方、単電池10への拘束力が解除されると、発熱状態の単電池10が膨張することによって、X方向に変位することがある。このとき、バスバー20に接続された正極端子11および負極端子12は、位置関係が変化しないようになっているため、単電池10の変位によって正極端子11や負極端子12に応力が集中することになる。
【0080】
本実施例では、正極端子11の端子ネジ11aに切り欠き部11cを形成しているため、正極端子11に応力が集中したときに、図7に示すように、正極端子11を切り欠き部11cにおいて破断させることができる。また、負極端子12にも切り欠き部を形成しているため、負極端子12に応力を集中させることにより、負極端子12を破断させることができる。ここで、切り欠き部11cの機械的強度は、上述した応力集中が発生したときにのみ、電極端子を破断させる観点に基づいて、適宜設定することができる。
【0081】
図7に示すように、端子ネジ11aを端子座11bから分離させると、バスバー20を端子座11bから離すことができる。ここで、端子ネジ11aを端子座11bから分離させることにより、バスバー20の固定に用いられるナット22を、端子ネジ11aとともに端子座11bから分離させることができる。ナット22が外れると、バスバー20は、端子座11bに対して自由に変位可能な状態となる。そして、単電池10が膨張していることにより、バスバー20を端子座11bから離すことができる。
【0082】
上述したように、バスバー20を端子座11bから分離させることにより、隣り合う単電池10の間における電気的な接続を遮断することができ、電池モジュール1の充放電を禁止することができる。これにより、単電池10の更なる発熱を防止することができる。
【0083】
本実施例では、バスバー20を端子座11bに接触させて電流の経路を確保しているため、端子ネジ11aに切り欠き部11cを形成しても、正極端子11およびバスバー20の間における電気抵抗を悪化させることはない。
【0084】
なお、本実施例では、端子ネジ11aの径を連続的に小さくすることにより、切り欠き部11cを形成しているが、これに限るものではない。すなわち、単電池10の電極端子に応力が集中したときに、電極端子の一部を破断させることができる構造を有していればよい。
【0085】
具体的には、電極端子の一部分における機械的強度を他の部分における機械的強度よりも小さくしておくことにより、上記一部分を起点として電極端子を破断させることができる。例えば、端子ネジ11aの径を端子座11bに向かって段階的に小さくすることができる。また、円柱状に形成された端子ネジの一部に、孔部又は凹部を形成することもできる。
【実施例3】
【0086】
本発明の実施例3である電池モジュール(蓄電装置)について説明する。本実施例の電池モジュールは、実施例1で説明した電池モジュールの構成に加えて、以下に説明する構成を有している。以下、実施例1と異なる点について主に説明する。なお、実施例1,2で説明した部材と同一の機能を有する部材については同一符号を用い、詳細な説明は省略する。
【0087】
実施例2では、単電池10の電極端子(端子ネジ)を破断させることにより、単電池10の電気的な接続を遮断しているが、本実施例では、バスバー20を破断させることにより、単電池10の電気的な接続を遮断するようにしている。以下、本実施例について、具体的に説明する。
【0088】
図8Aは、本実施例で用いられるバスバー20の構成を示す図である。また、図8Bは、図8AのA−A断面図であり、図8Cは、図8Aに示す領域R1の拡大図である。
【0089】
バスバー20は、正極端子11および負極端子12を貫通させるための貫通孔20aを有している。また、バスバー20のうち、2つの貫通孔20aの間に位置する領域には、破断線L1が設けられている。破断線L1は、後述するように、バスバー20を破断させるための位置を示している。
【0090】
破断線L1は、2つの貫通孔20aから等距離の位置に設けられており、2つの貫通孔20aの並び方向に対して直交する方向に延びている。ここで、貫通孔20aの並び方向は、単電池10の配列方向(図1等に示すX方向)に相当する。
【0091】
図8Bに示すように、バスバー20の表面(図8Bの上面および下面)には、破断線L1に沿うように、凹状の切り欠き部(破断部)20b1が形成されている。切り欠き部20b1は、2つの傾斜面で構成されており、底部に向かって溝幅が狭くなっている。バスバー20の上面および下面に形成された切り欠き部20b1は、バスバー20の厚み方向(図8Bの上下方向)において、互いに向かい合うように配置されている。これにより、2つの切り欠き部20b1の間において、バスバー20の厚さが最も薄くなっている。
【0092】
また、図8Cに示すように、バスバー20の側辺部にも切り欠き部(破断部)20b2が形成されている。そして、切り欠き部20b1および切り欠き部20b2は、互いに連なっている。すなわち、本実施例では、破断線L1の位置において、バスバー20の外表面を囲むように切り欠き部20b1,20b2が形成されている。ここで、切り欠き部20b2は、バスバー20の厚み方向に延びる切り欠き部であり、切り欠き部20b1は、バスバー20の厚み方向と直交する面内で延びる切り欠き部である。
【0093】
本実施例の電池モジュールにおいて、いずれかの単電池10の安全弁21からガスが排出されると、実施例1で説明したように、第1の拘束ロッド50が変形することにより、単電池10およびスペーサ30に対する拘束力(図1に示す力F)が解除される。そして、拘束力が解除されると、ガスを排出している単電池10が膨張することにより、X方向で隣り合う単電池10における電極端子の間隔が広がることになる。すなわち、1つのバスバー20に接続された正極端子11および負極端子12が、互いに離れる方向に変位することにより、バスバー20に対して引張り力P(図9参照)を与える。
【0094】
本実施例のバスバー20は、破断線L1に切り欠き部20b1,20b2を有しており、バスバー20のうち破断線L1の強度は、他の部分の強度よりも低くなっている。したがって、バスバー20に引張り力Pが作用すると、図9に示すように、バスバー20は、破断線L1に沿って切断される。このように、バスバー20を切断することにより、バスバー20を介した電気的な接続が遮断され、電池モジュール1の充放電を禁止することができる。そして、充放電を禁止することにより、単電池10の更なる発熱を防止することができる。
【0095】
なお、切り欠き部20b1,20b2の大きさは、単電池10の膨張に伴ってバスバー20を破断させる観点に基づいて、適宜設定することができる。ここで、切り欠き部20b1,20b2の大きさには、切り欠き部20b1,20b2の形状、溝幅、溝深さといったパラメータが含まれる。
【0096】
本実施例では、実施例1の構成に加えて、バスバー20を図8Aに示す構成としているが、本実施例の構成に加えて、実施例2で説明した構成を適用することもできる。すなわち、バスバー20に切り欠き部20b1,20b2を形成するとともに、電極端子にも切り欠き部を形成することができる。
【0097】
破断線L1は、2つの貫通孔20aの間に位置していればよく、本実施例のように、2つの貫通孔20aから等距離の位置に設けなくてもよい。また、本実施例では、図8Aに示すように、破断線L1が、2つの貫通孔20aの並び方向に対して直交する方向、言い換えれば、単電池10の配列方向(X方向)に対して直交する方向に延びているが、これに限るものではない。例えば、破断線L1を、図8AのA−A線に対して傾斜させることができる。この場合において、破断線L1は、バスバー20の側辺部まで延びていることが好ましい。
【0098】
さらに、本実施例では、バスバー20に切り欠き部20b1,20b2を形成しているが、これに限るものではない。例えば、バスバー20の厚み方向に延びる穴部(破断部)を形成することができ、この場合には、複数の穴部を破断線L1に沿って形成すればよい。以下に説明する変形例における破断線についても同様である。
【0099】
(変形例1)
次に、本実施例の変形例1について、図10および図11を用いて説明する。ここで、図10は、本変形例で用いられるバスバーの構成を示す正面図であり、図11は、切断状態にあるバスバーの正面図である。以下、本実施例と異なる点について、主に説明する。
【0100】
本変形例では、実施例3のバスバーに対して、破断線の位置を変更している。具体的には、バスバー20に形成された2つの貫通孔20aのうち、一方の貫通孔20aに対応した位置に破断線L2が設けられている。そして、実施例3と同様に、破断線L2に沿って切り欠き部20b1,20b2が形成されている。
【0101】
破断線L2は、2つの貫通孔20aの並び方向に対して直交する方向に延びている。そして、破断線L2の一端はバスバー20の側辺部に位置しており、バスバー20の側辺部(領域R1)には、図8Cに示す場合と同様に、切り欠き部20b2が形成されている。一方、破断線L2の他端は貫通孔20aに位置している。ここで、本実施例では、貫通孔20aのうち、破断線L2との接続部分には、図8Cに相当する切り欠き部20b2が形成されていないが、このような切り欠き部20b2を形成することもできる。
【0102】
本変形例においも、単電池10からガスが排出されると、第1の拘束ロッド50が変形することにより、単電池10およびスペーサ30に対する拘束力が解除される。そして、単電池10の膨張によって、1つのバスバー20に接続された正極端子11および負極端子12が互いに離れる方向に変位すると、バスバー20に引張り力Pが作用することにより、バスバー20が破断線L2に沿って切断される(図11参照)。ここで、バスバー20のうち、破断線L2の強度は、他の部分の強度よりも低くなっており、バスバー20は破断線L2に沿って破断しやすくなっている。
【0103】
上述したようにバスバー20を切断させることにより、バスバー20を介した電気的な接続が遮断され、電池モジュール1の充放電を禁止することができる。
【0104】
一方、本変形例では、バスバー20のうち、2つの貫通孔20aの間に位置する領域Eとは異なる領域に、破断線L2を設けている。領域Eは、正極端子11および負極端子12の間における電流の主な流路となっている。
【0105】
ここで、バスバー20に切り欠き部20b1,20b2を形成すると、切り欠き部20b1,20b2を形成した分だけ、バスバー20の断面積が小さくなり、電流の流路が狭められてしまうことがある。そして、電流の流路が狭められた分だけ、バスバー20における電気的な抵抗が高くなってしまう。そこで、本変形例のように破断線L2を設けることにより、電流の主な流路(領域E)において、電気抵抗が増加してしまうのを抑制することができる。
【0106】
なお、本変形例では、2つの貫通孔20aのうち、一方の貫通孔20aに対応した位置に破断線L2を設けているが、これに限るものではない。例えば、2つの貫通孔20aのそれぞれに対応させて破断線L2を設けることもできる。また、破断線L2は、2つの貫通孔20aの並び方向に対して傾斜する方向に延びていてもよい。
【0107】
また、本実施例では、貫通孔20aの中心を通るように破断線L2を設定しているが、これに限るものではない。具体的には、貫通孔20aの領域内を通るように破断線L2を設定することができる。ここで、貫通孔20aの中心よりも他の貫通孔20aが位置する側の領域を通るように破断線L2を設定することが好ましい。
【0108】
(変形例2)
次に、本実施例の変形例2について説明する。図12Aは、本変形例におけるバスバーの構成を示す正面図である。図12Bは、図12AのB−B断面図であり、図12Cは、図12AのC−C断面図である。以下、本実施例と異なる点について、主に説明する。
【0109】
本変形例のバスバー20は、正極端子11および負極端子12をそれぞれ貫通させるための貫通孔20cを有しており、本実施例(図8A)と同様に、2つの貫通孔20cの間に破断線L1が設けられている。ここで、バスバー20の表面には、図12Bに示すように、破断線L1に沿うように切り欠き部20b1が形成されている。また、破断線L1の両端には、本実施例(図8C)と同様に切り欠き部20b2が形成されている。
【0110】
バスバー20には、破断線L1と直交する破断線L3が設けられており、破断線L3の両端は、貫通孔20c上に位置している。ここで、バスバー20の表面には、図12Cに示すように、破断線L3に沿うように切り欠き部20b1が形成されている。また、貫通孔20cのうち、破断線L3との接続部分には、図12Dに示すように、切り欠き部20b2が形成されている。図12Dは、図12Aにおける領域R2の拡大図である。
【0111】
破断線L1および破断線L3の交点には、図12Eに示すように、開口部20dが設けられている。ここで、図12Eは、図12Aにおける領域R3の拡大図である。開口部20dにおける4つの角部は、各破断線L1,L3上に形成された切り欠き部20b1と連なっている。
【0112】
一方、貫通孔20cは、図13に示すように、座屈部(変形部)20eを有している。座屈部20eは、貫通孔20cのうち、破断線L3との接続部分と対向する位置に設けられている。
【0113】
本変形例においても、単電池10からガスが排出されると、第1の拘束ロッド50が変形することにより、単電池10およびスペーサ30に対する拘束力が解除される。そして、単電池10の膨張によって、1つのバスバー20に接続された正極端子11および負極端子12が互いに離れる方向に変位する。
【0114】
このとき、正極端子11および負極端子12は、対応する貫通孔20の座屈部20eを押し込むことにより、座屈部20eを座屈させる。座屈部20eが変形すると、貫通孔20のうち、破断線L3との接続部分に形成された切り欠き部20b2に応力が集中することにより、この切り欠き部20b2から破断が開始される。そして、破断線L3に沿ってバスバー20が破断する。ここで、バスバー20における破断線L3の強度は、他の部分の強度よりも低くなっており、バスバー20は破断線L3に沿って破断しやすくなっている。
【0115】
一方、1つのバスバー20に接続された正極端子11および負極端子12が互いに離れる方向に変位することにより、バスバー20には引張り力P(図14参照)が作用する。これにより、バスバー20の側辺部に形成された切り欠き部20b2や、開口部20dの角部から破断が開始され、バスバー20は破断線L1に沿って破断する。
【0116】
上述したように、破断線L1,L3に沿って破断すると、バスバー20は図14に示す状態となる。これにより、バスバー20を介した電気的な接続が遮断され、電池モジュール1の充放電を禁止することができるとともに、単電池10の更なる発熱を防止することができる。
【0117】
なお、本実施例では、破断線L3が破断線L1に対して直交しているが、破断線L1に対して傾斜していてもよい。この場合でも、破断線L3を2つの貫通孔20eに接続しておくことが好ましい。また、貫通孔20cに形成される座屈部20eは、図13に示す形状に限るものではない。すなわち、貫通孔20cの一部を変形させて、破断線L3の端部に形成された切り欠き部20b2から破断を開始させることができればよい。
【0118】
(変形例3)
次に、本実施例の変形例3について、図15Aを用いて説明する。ここで、図15Aは、本変形例におけるバスバーの構成を示す正面図である。
【0119】
本変形例のバスバー20は、正極端子11および負極端子12のそれぞれが貫通する貫通孔20cを有しており、貫通孔20cには、変形例2と同様に、座屈部20eが設けられている。また、変形例2と同様に、2つの貫通孔20cには、破断線L3が接続されており、バスバー20の表面には、破断線L3に沿うように切り欠き部20b1が形成されている。さらに、貫通孔20cのうち、破断線L3との接続部には、図15Bに示すように、切り欠き部20b2が形成されている。図15Bは、図15Aに示す領域R4の拡大図である。
【0120】
一方、破断線L3の両端には、破断線L3と直交する方向に延びる破断線L4が接続されている。そして、破断線L4の両端には、切り欠き部20b2が形成されている。具体的には、破断線L4の一端は、バスバー20の側辺部に位置しており、実施例3の図8Cに示すような切り欠き部20b2が形成されている。また、破断線L4の他端は、貫通孔20c上に位置しており、図15Bに示すような切り欠き部20b2が形成されている。
【0121】
本変形例においても、単電池10からガスが排出されると、第1の拘束ロッド50が変形することにより、単電池10およびスペーサ30に対する拘束力が解除される。そして、単電池10の膨張によって、1つのバスバー20に接続された正極端子11および負極端子12が互いに離れる方向に変位する。
【0122】
このとき、正極端子11および負極端子12は、対応する貫通孔20の座屈部20eを押し込むことにより、座屈部20eを座屈させる。座屈部20eが変形すると、貫通孔20のうち、破断線L3との接続部分に形成された切り欠き部20b2に応力が集中することにより、この切り欠き部20b2から破断が開始される。そして、破断線L3に沿ってバスバー20が破断する。ここで、バスバー20における破断線L3の強度は、他の部分の強度よりも低くなっており、バスバー20は破断線L3に沿って破断しやすくなっている。
【0123】
一方、1つのバスバー20に接続された正極端子11および負極端子12が互いに離れる方向に変位することにより、バスバー20には引張り力が作用する。これにより、破断線L4の両端に形成された切り欠き部20b2から破断が開始され、バスバー20は破断線L4に沿って破断する。
【0124】
上述したように、破断線L3,L4に沿って破断すると、バスバー20は図16に示す状態となる。これにより、バスバー20を介した電気的な接続が遮断され、電池モジュール1の充放電を禁止することができるとともに、単電池10の更なる発熱を防止することができる。
【0125】
なお、本変形例では、破断線L4が破断線L3と直交する方向に延びているが、これに限るものではない。具体的には、破断線L4が破断線L3に対して傾斜する方向に延びていてもよい。また、本実施例では、破断線L4の両端に切り欠き部20b2を形成しているが、破断線L4のいずれか一方の端にのみ切り欠き部20b2を形成することもできる。
【0126】
(変形例4)
次に、本実施例の変形例4について、図17を用いて説明する。ここで、図17は、本変形例におけるバスバーの構成を示す正面図である。本変形例のバスバーは、変形例3のバスバーの構成において、破断線L4の位置を変更したものである。具体的には、破断線L4に代えて、変形例1(図10)と同様の破断線L2を設けている。なお、図17に示す領域R1,R2における拡大図は、図8Cおよび図12Dと同様である。
【0127】
本変形例においても、単電池10からガスが排出されると、第1の拘束ロッド50が変形することにより、単電池10およびスペーサ30に対する拘束力が解除される。そして、単電池10の膨張によって、1つのバスバー20に接続された正極端子11および負極端子12が互いに離れる方向に変位する。
【0128】
このとき、正極端子11および負極端子12は、対応する貫通孔20の座屈部20eを押し込むことにより、座屈部20eを座屈させ、貫通孔20のうち、破断線L3との接続部分に形成された切り欠き部20b2から破断を開始させる。これにより、バスバー20は、破断線L3に沿って破断する。
【0129】
また、1つのバスバー20に接続された正極端子11および負極端子12が互いに離れる方向に変位することにより、破断線L2の一端に形成された切り欠き部20b2から破断が開始され、バスバー20は破断線L2に沿って破断する。
【0130】
上述したように、破断線L2,L3に沿って破断すると、バスバー20は図18に示す状態となる。これにより、バスバー20を介した電気的な接続が遮断され、電池モジュール1の充放電を禁止することができるとともに、単電池10の更なる発熱を防止することができる。また、本変形例において、破断線L2は、2つの貫通孔20cの間に位置する領域(図10の領域E)とは異なる領域に配置されているため、バスバー20における電気抵抗が高くなってしまうのを防止することができる。
【0131】
(変形例5)
次に、本実施例の変形例5について説明する。図19Aは、本変形例におけるバスバーの構成を示す正面図である。本変形例において、貫通孔20cおよび破断線L3の構成については、変形例4と同様である。そして、本変形例では、変形例4のバスバー20の構成において、破断線L2の位置を変更したものである。以下、具体的に説明する。
【0132】
バスバー20には、破断線L3と直交する方向に延びる破断線L5が設けられている。破断線L5の一端は、貫通孔20c(座屈部20e)に接続されており、図19Bに示すように、破断線L5の一端には、切り欠き部20b2が形成されている。ここで、図19Bは、図19Aにおける領域R5の拡大図である。
【0133】
また、破断線L5の他端は、バスバー20の側辺部に接続されており、図19Cに示すように、破断線L5の他端には、切り欠き部20b2が形成されている。ここで、図19Cは、図19Aにおける領域R6の拡大図である。なお、図19Aにおける領域R3の構成は、変形例2(図12E参照)と同様である。
【0134】
本変形例においても、単電池10からガスが排出されると、第1の拘束ロッド50が変形することにより、単電池10およびスペーサ30に対する拘束力が解除される。そして、単電池10の膨張によって、1つのバスバー20に接続された正極端子11および負極端子12が互いに離れる方向に変位する。
【0135】
このとき、正極端子11および負極端子12は、対応する貫通孔20の座屈部20eを押し込むことにより、座屈部20eを座屈させる。これにより、貫通孔20のうち、破断線L3との接続部分に形成された切り欠き部20b2から破断が開始され、バスバー20は、破断線L3に沿って破断する。
【0136】
また、座屈部20eを変形させることにより、貫通孔20のうち、破断線L5との接続部分に形成された切り欠き部20b2から破断が開始され、バスバー20を破断線L5に沿って破断させることができる。さらに、正極端子11および負極端子12が互いに離れる方向に変位することにより、バスバー20の側辺部に形成された切り欠き部20b2においても、破断を開始させることができる。
【0137】
上述したように、破断線L3,L5に沿って破断すると、バスバー20は図20に示す状態となる。これにより、バスバー20を介した電気的な接続が遮断され、電池モジュール1の充放電を禁止することができるとともに、単電池10の更なる発熱を防止することができる。また、本変形例において、破断線L5は、2つの貫通孔20cの間に位置する領域(図10の領域E)とは異なる領域に配置されているため、バスバー20における電気抵抗が高くなってしまうのを防止することができる。
【0138】
なお、破断線L5は、破断線L3と直交する関係でなくてもよく、破断線L3に対して傾斜していてもよい。
【0139】
(変形例6)
次に、本実施例の変形例6について説明する。図21Aは、本変形例におけるバスバーの構成を示す正面図である。本変形例において、貫通孔20cおよび破断線L3の構成については、変形例4と同様である。そして、本変形例では、変形例4のバスバー20の構成において、破断線L2の位置を変更したものである。以下、具体的に説明する。
【0140】
バスバー20には、破断線L3に対して傾斜する方向に延びる破断線L6が設けられている。そして、破断線L6は、2つの貫通孔20cの間に位置する領域(図10の領域E)とは異なる領域に設けられている。バスバー20の表面には、破断線L6に沿って切り欠き部20b1が形成されている。
【0141】
破断線L6の一端は、貫通孔20cに接続されており、図21Bに示すように、破断線L6の一端には、切り欠き部20b2が形成されている。ここで、図21Bは、図21Aにおける領域R7の拡大図である。
【0142】
また、破断線L6の他端は、バスバー20の側辺部に接続されており、図21Cに示すように、破断線L6の他端には、切り欠き部20b2が形成されている。ここで、図21Cは、図21Aにおける領域R8の拡大図である。なお、図21Aにおける領域R3の構成は、変形例2(図12E参照)と同様である。
【0143】
本変形例においても、単電池10からガスが排出されると、第1の拘束ロッド50が変形することにより、単電池10およびスペーサ30に対する拘束力が解除される。そして、単電池10の膨張によって、1つのバスバー20に接続された正極端子11および負極端子12が互いに離れる方向に変位する。
【0144】
このとき、正極端子11および負極端子12は、対応する貫通孔20の座屈部20eを押し込むことにより、座屈部20eを座屈させる。これにより、貫通孔20のうち、破断線L3との接続部分に形成された切り欠き部20b2から破断が開始され、バスバー20は、破断線L3に沿って破断する。また、正極端子11および負極端子12が互いに離れる方向に変位することにより、破断線L6の両端に形成された切り欠き部20b2から破断が開始し、バスバー20は、破断線L6に沿って破断する。
【0145】
上述したように、破断線L3,L6に沿って破断すると、バスバー20は図22に示す状態となる。これにより、バスバー20を介した電気的な接続が遮断され、電池モジュール1の充放電を禁止することができるとともに、単電池10の更なる発熱を防止することができる。また、本変形例において、破断線L6は、2つの貫通孔20cの間に位置する領域(図10の領域E)とは異なる領域に配置されているため、バスバー20における電気抵抗が高くなってしまうのを防止することができる。
【実施例4】
【0146】
次に、本発明の実施例4である電池モジュールについて説明する。本実施例の電池モジュールは、実施例1で説明した構成に加えて、以下に説明する構成を有している。以下、実施例1と異なる点について、主に説明する。なお、実施例1,2で説明した部材と同一の機能を有する部材については、同一符号を用い、詳細な説明は省略する。
【0147】
本実施例では、実施例1で説明したように、単電池10およびスペーサ30に対する拘束力が解除された状態において、ガスが発生した単電池10の電極端子を基準位置(初期位置)から変位させることにより、電極端子およびバスバー20のうち少なくとも一方を破断させるようにしている。これにより、隣り合って配置された2つの単電池10における電気的な接続を遮断でき、電池モジュール1において電流が流れるのを禁止することができる。そして、電池モジュール1の充放電によって、単電池10が更に発熱してしまうのを抑制することができる。
【0148】
図23は、本実施例における単電池10の外観斜視図である。ここで、電池ケース13は、実施例1で説明したように発電要素を収容しており、電池ケース13の上面13bには、正極端子11および負極端子12が設けられている。また、電池ケース13の底面13aは、図23の点線で示すように、温度上昇に応じて矢印D1の方向に突出するように変形する。
【0149】
電池ケース13は、形状記憶合金で形成されており、電池ケース13の温度上昇に応じて、電池ケース13の底面13aが突出するように構成されている。言い換えれば、底面13aは、温度上昇に応じて、電池ケース13の外側に向かって凸となるように変形する。本実施例においては、底面13aが単電池10の外側に向かって凸となるように成形したうえで、底面13aを低温相で平坦状に変形させておくことにより、電池ケース13が構成される。これにより、電池ケース13の温度が所定温度(形状記憶合金の形状回復温度)に到達するまでは、電池ケース13の底面13aが、平坦面のままとなっている。そして、電池ケース13の温度が所定温度に到達すれば、電池ケース13の底面13aが電池ケース13の外側に向かって凸となるように変形する。
【0150】
単電池10が発熱していない場合には、電池ケース13の底面13aが平坦面となっている。ここで、過充電等によって単電池10が発熱すると、この単電池10における電池ケース13の底面13aは、上述したように変形する。電池ケース13の底面13aは、電池モジュール1を収容するパックケース(具体的には、ロアーケース)に接触しているため、底面13aが図23の点線で示すように変形することにより、電池ケース13の上面13bが、図24の矢印D2で示すように、上方に向かって変位することになる。ここで、単電池10が発熱していない状態では、単電池10およびスペーサ30は、拘束力F(図1参照)を受けているが、拘束力Fが解除されると、各単電池10は、他の単電池10に対して変位することができる。
【0151】
電池ケース13の上面13bには、正極端子11および負極端子12が固定されているため、上面13bが上方に変位することに応じて、正極端子11および負極端子12も基準位置に対して上方に向かって変位することになる。ここで、基準位置とは、単電池10からガスが発生しておらず、単電池10が正常状態にあるときの正極端子11および負極端子12の位置である。本実施例において、電池モジュール1を構成する複数の単電池10が正常状態にあるとき、すべての正極端子11および負極端子12は、同一面内(X−Y平面)に位置するようになっている。
【0152】
上述したように電池ケース13の上面13bが変位すると、図24に示すように、発熱した単電池10における電池ケース13の上面13bは、発熱していない他の単電池10における電池ケース13の上面13bよりも高い位置となる。ここで、隣り合って配置された2つの単電池10は、実施例1で説明したように、バスバー20を介して機械的に接続されている。この構造において、一方の単電池10における電池ケース13の上面13bが、他方の単電池10における電池ケース13の上面13bよりも高い位置に変位すると、バスバー20の一部や、電極端子11,12のうち、バスバー20との接触部分に過度の負荷がかかる。
【0153】
これにより、図24に示すように、バスバー20を破断させることができ、電池モジュール1に流れる電流を遮断することができる。ここで、バスバー20を、実施例3で説明した構成(図8A〜図22参照)にすれば、バスバー20を容易に破断させることができる。また、本実施例では、バスバー20を破断させるようにしているが、これに限るものではなく、単電池10における正極端子11又は負極端子12を破断させることもできる。ここで、正極端子11又は負極端子12を、実施例2で説明した構成(図5〜図7参照)にすれば、正極端子11又は負極端子12を容易に破断させることができる。
【0154】
なお、本実施例では、電池ケース13の全体を形状記憶合金で形成しているが、底面13aだけを形状記憶合金で形成することもできる。また、電池ケース13を本実施例で説明したように変形させることができれば、少なくとも底面13aを、形状記憶樹脂で形成したり、バイメタルで形成したりすることもできる。バイメタルとは、互いに異なる熱膨張率を有する複数の金属板を貼り合わせたものであり、温度変化によって変形するものである。
【0155】
底面13aをバイメタルで形成する場合には、底面13aが本実施例と同様に変形するように、金属材料を選択すればよい。具体的には、電池ケース13の底面13aを、内壁面を構成する第1の金属板と、外壁面を構成する第2の金属板とで構成し、第1の金属板の熱膨張率を、第2の金属板の熱膨張率よりも大きくしておけばよい。
【0156】
(変形例1)
次に、本実施例の変形例1について説明する。本実施例では、電池ケース13の底面13aを、温度上昇に応じて変形させているが、これに限るものではない。本変形例では、図25に示すように、電池ケース13の上面13bを、温度上昇に応じて、電池ケース13の外側に向かって凸となるように変形させている。図25において、実線で示す上面13bは、電池ケース13の温度が所定温度(形状記憶合金の形状回復温度)に到達する前の状態であり、平坦な面で構成されている。また、点線で示す上面13bは、電池ケース13の温度が所定温度に到達した後の状態であり、電池ケース13の外側に向かって凸となるように変形している。
【0157】
本変形例では、電池ケース13の上面13bを上方に向かって突出させることにより、この上面13bに設けられた正極端子11および負極端子12を上方に向かって変位させることができる。これにより、本実施例と同様に、バスバー20や電極端子11,12に過度の負荷を与えて破断させることができ、電池モジュール1に流れる電流を遮断することができる。
【0158】
なお、本変形例では、電池ケース13の全体を形状記憶合金等で形成したり、上面13bだけを形状記憶合金等で形成したりすることができる。また、電池ケース13の上面13bだけでなく、本実施例(図23)で説明したように、電池ケース13の底面13aも変形させることができる。これにより、上面13bおよび底面13aにおけるそれぞれの変形量を小さくしつつも、電極端子11,12の変位量(基準位置からの移動量)を、バスバー20等を破断させるのに十分な量とすることができる。
【0159】
(変形例2)
次に、本実施例の変形例2について説明する。本変形例では、図26に示すように、電池ケース13の側面13cを、温度上昇に応じて、電池ケース13の外側に向かって凸となるように変形させている。側面13cとは、電池ケース13を構成する側面のうち、X−Z平面を構成する側面である。すなわち、電池ケース13は、底面13aおよび上面13bの他に、Y−Z平面を構成する2つの側面(第1側面)と、X−Z平面を構成する2つの側面(第2側面)とを有している。図26に示す構成では、2つの第2側面13cのうち、一方の第2側面13cを変形させている。
【0160】
図26において、実線で示す側面13cは、電池ケース13の温度が所定温度(形状回復温度)に到達する前の状態であり、平坦な面で構成されている。また、点線で示す側面13cは、電池ケース13の温度が所定温度に到達した後の状態であり、電池ケース13の外側に向かって凸となるように変形している。
【0161】
電池モジュール1は、実施例1で説明したように、パックケースに収容されており、このパックケースは、電池ケース13の側面13cと対向する領域を有している。このため、電池ケース13における2つの第2側面13cのうち、一方の第2側面13cを変形させたときに、この第2側面13cをパックケース60に接触させることができる(図27参照)。そして、一方の第2側面13cをパックケース60に接触させた後も変形させれば、電池ケース13における他方の第2側面13cを、図27の矢印D3で示す方向に変位させることができる。これに伴い、電池ケース13の上面13bに設けられた正極端子11および負極端子12を矢印D3で示す方向に変位させて、基準位置からずらすことができる。
【0162】
これにより、隣り合って配置された2つの単電池10において、バスバー20や電極端子11,12に負荷を与えることができ、バスバー20等を破断させることができる。そして、電池モジュール1に流れる電流を遮断することができる。なお、図27では、バスバー20を破断させているが、バスバー20と接続されている電極端子11,12を破断させることもできる。また、本変形例の構成に加えて、本実施例(図23)および変形例1(図25)で説明した構成のうち少なくとも一方を適用することもできる。これにより、電池ケース13を構成する複数の面を用いて、バスバー20等を破断させるための電極端子11,12の変位量を確保することができる。
【0163】
(変形例3)
次に、本実施例の変形例3について、図28および図29を用いて説明する。本実施例および上述した変形例1,2では、発熱した単電池10における正極端子11および負極端子12を共に一方向に変位させているが、本変形例では、正極端子11だけを基準位置から変位させるようにしている。具体的には、図28に示すように、電池ケース13の上面13bのうち、正極端子11が設けられた領域だけを、電池ケース13の外側に向かって凸となるように変形させて、正極端子11を、図28の矢印D4で示す方向に傾けている。
【0164】
ここで、正極端子11は、二次元の面内(例えば、Y−Z面又はX−Z面)で傾けたり、三次元(X,Y,Z)の方向で傾けたりすることができる。また、本実施例では、図28に示すように、負極端子12の側に向かって正極端子11を傾けているが、これに限るものではない。すなわち、負極端子12から離れる方向に向かって、正極端子11を傾けることもできる。
【0165】
このように正極端子11を傾けると、この正極端子11と接続されたバスバー20が捻れることにより、バスバー20に負荷を与えることができる。これにより、バスバー20を破断させることができ、電池モジュール1に流れる電流を遮断することができる。
【0166】
なお、図29では、バスバー20を破断させているが、正極端子11又は負極端子12を破断させることもできる。また、正極端子11を傾かせるのではなく、負極端子12を傾かせたり、正極端子11および負極端子12を傾かせたりすることができる。この場合において、電極端子11,12を傾かせる方向は、適宜設定することができ、上面13bの一部を突出させる形状を適宜設定すればよい。
【0167】
さらに、本変形例では、電池ケース13における上面13bの一部を変形させているが、これに限るものではなく、電池ケース13における底面13aの一部を変形させることができる。具体的には、底面13aにおける一部の領域を、電池ケース13の外側に向かって凸となるように変形させれば、正極端子11や負極端子12を本変形例と同様に傾かせることができる。
【0168】
また、本変形例の構成に加えて、本実施例(図23)および変形例2(図26)で説明した構成のうち少なくとも一方を適用することもできる。これにより、電池ケース13を構成する複数の面を用いて、バスバー20等を破断させるための電極端子11,12の変位量を確保することができる。
【0169】
本実施例および変形例1〜3では、単電池10およびスペーサ30に対する拘束力が解除された状態において、電池ケース13の一部を変形させているが、これに限るものではない。すなわち、単電池10およびスペーサ30に対する拘束力が解除されていない状態でも、電池ケース13の一部を変形させることにより、バスバー20や電極端子11,12に負荷を与えて破断させることができる。
【実施例5】
【0170】
次に、本発明の実施例5である電池モジュールについて説明する。本実施例の電池モジュールは、実施例1で説明した構成に加えて、以下に説明する構成を有している。以下、実施例1と異なる点について、主に説明する。なお、実施例1,2で説明した部材と同一の機能を有する部材については、同一符号を用いている。
【0171】
実施例4では、電池ケース13の少なくとも一部を変形させることにより、電極端子11,12を基準位置から変位させているが、本実施例では、単電池10自体を変位させることにより、電極端子11,12を基準位置から変位させるようにしている。以下、本実施例の構成について、具体的に説明する。
【0172】
電池モジュール1(単電池10)の下方には、電池モジュール1を収容するパックケースの一部を構成するロアーケース70が位置している。ロアーケース70には、電池ケース13の底面をロアーケース70の表面から離すための突起部71が設けられている。突起部71は、単電池10の配列方向(X方向)に延びており、突起部71のうち、電池ケース13の底面と対向する領域には、形状記憶合金で形成された変形部材80が設けられている。そして、変形部材80は、単電池10毎に設けられている。具体的には、各単電池10の底面には、2つの変形部材80が接触している。そして、各単電池10と接触する変形部材80は、他の単電池10と接触する変形部材80からX方向で離れて配置されており、互いに接触していない。
【0173】
電池モジュール1を構成する複数の単電池10のうち、いずれかの単電池10からガスが発生して発熱すると、単電池10の熱が変形部材80に伝達される。そして、変形部材80の温度が、形状記憶合金の形状回復温度に到達すると、変形部材80は、上方に向かって凸となるように曲率を持った状態で変形するようになっている。本実施例の変形部材80は、上方に向かって凸となるように成形したうえで、低温相においてロアーケース70の突起部71に沿うように変形させておくことができる。これにより、温度上昇に応じて、変形部材80を上述したように変形させることができる。
【0174】
変形部材80が変形すると、単電池10が上方に向かって変位する。これに伴い、単電池10における正極端子11および負極端子12も上方に向かって変位する。このように発熱状態の単電池10において、正極端子11および負極端子12を上方に向かって変位させることにより、実施例4と同様に、バスバー20に負荷を与えて破断させることができる。これに伴い、電池モジュール1において電流が流れるのを遮断することができ、単電池10の更なる発熱を抑制することができる。ここで、発熱状態の単電池10が上方に変位したときの力を用いて、バスバー20の代わりに、正極端子11又は負極端子12を破断させることもできる。
【0175】
なお、変形部材80を変形させるときの形状は、単電池10を上方に向かって変位させることができればよく、この点に基づいて適宜設定することができる。また、変形部材80として、形状記憶合金の代わりに、形状記憶樹脂を用いたり、バイメタルを用いたりすることもできる。さらに、本実施例では、単電池10およびロアーケース70の間に変形部材80を配置しているが、これに限るものではない。具体的には、ロアーケース70の一部、言い換えれば、少なくとも突起部71を形状記憶合金で形成しておき、温度上昇に応じて突起部71を変形させることにより、単電池10を上方に向かって変位させることができる。
【0176】
また、本実施例では、電池ケース13の底面と対向する一対の突起部71に変形部材80をそれぞれ配置しておき、これらの変形部材80を温度上昇に応じて同様に変形させているが、これに限るものではない。具体的には、図33に示す構成とすることができる。図33において、ロアーケース70に設けられた一対の突起部71のうち、一方の突起部71には、本実施例と同様に、変形部材80が配置されている。また、他方の突起部71には、温度が上昇しても変形しにくい非変形部材81が配置されている。
【0177】
図33に示す構成では、単電池10の発熱によって、変形部材80だけが変形することになる。すなわち、電池ケース13の底面のうち、変形部材80と接触している領域だけが上方に向かって変位することにより、単電池10は、水平面(X−Y平面)に対して傾くことになる。これにより、正極端子11を主に基準位置から変位させることができる。なお、図33に示す構成では、正極端子11を変位させているが、負極端子12を変位させることもできる。
【0178】
さらに、本実施例では、単電池10を上方に向かって変位させているが、これに限るものではない。例えば、単電池10を水平面内(X−Y面内)で変位させることができる。ここで、電池ケース13のうち、X−Z面を構成する側面(実施例4の変形例2で説明した第2側面)を押し込むことができるように変形部材を変形させれば、単電池10を水平面内で変位させることができる。この場合には、電池ケース13の側面とパックケースとの間に変形部材を配置し、単電池10の温度上昇に応じて変形部材を単電池10の側に向かって凸となるように変形させればよい。
【0179】
また、本実施例では、単電池10およびスペーサ30に対する拘束力が解除された状態において、変形部材80を変形させているが、これに限るものではない。すなわち、単電池10およびスペーサ30に対する拘束力が解除されていない状態でも、変形部材80を変形させることにより、バスバー20や電極端子11,12に負荷を与えて破断させることができる。
【実施例6】
【0180】
次に、本発明の実施例6である電池モジュールについて説明する。本実施例では、実施例1で説明した構成において、図34および図35に示すスペーサ30を用いている。ここで、図34は、本実施例で用いられるスペーサの構造を示す図であり、一部の領域においてスペーサの内部構造を示している。また、図35は、図34のG−G断面図である。なお、上述した実施例で説明した部材と同一の機能を有する部材については、同一符号を用い、詳細な説明は省略する。
【0181】
本実施例において、スペーサ30は、形状記憶合金で形成された板部材31と、板部材31を覆い、スペーサ30の外形を形成する樹脂とを有している。ここで、突起部30aも樹脂で形成されている。形状記憶合金の材料は、実施例1で説明した場合と同様に、適宜選択することができる。また、板部材31を覆う樹脂の材料も適宜設定することができる。
【0182】
板部材31の温度が形状回復温度に到達すると、板部材31(スペーサ30)は、図36に示すように曲面を有する形状(いわゆる波形状)に変形するようになっている。ここで、図36は、本実施例の電池モジュール1の一部を上方から見たときの図である。
【0183】
本実施例の電池モジュール1において、過充電等によって単電池10からガスが排出されると、実施例1で説明したように、第1の拘束ロッド50が変形することにより、複数の単電池10に対する拘束力(図1に示す力F)が解除される。また、ガスを排出した単電池10と接触するスペーサ30は、この単電池10からの熱を受けることにより、図36に示すように波形状に変形する。すなわち、スペーサ30の温度は、単電池10から伝達される熱に応じて上昇し、形状回復温度に到達したときに、スペーサ30が波形状に変形する。
【0184】
ここで、単電池10は2つのスペーサ30と接触しているため、単電池10の温度上昇に応じて、2つのスペーサ30が変形することになる。なお、電池モジュール1の両端に位置する単電池10は、スペーサ30およびエンドプレート40に接触しているため、1つのスペーサ30が変形することになる。
【0185】
このようにスペーサ30を変形させることにより、単電池10およびスペーサ30の接触面積を減らすことができ、発熱状態の単電池10の熱が、スペーサ30を介して、他の単電池10に伝達されるのを抑制することができる。そして、電池モジュール1を構成する複数の単電池10が連鎖的に発熱状態となってしまうのを抑制することができる。
【0186】
なお、本実施例では、電池モジュール1を上方から見たときに、スペーサ30を図36に示すように変形させているが、これに限るものではない。すなわち、温度上昇に応じてスペーサ30を変形させることにより、スペーサ30および単電池10の接触面積を減少させることができればよい。すなわち、スペーサ30のうち、単電池10と接触している領域の一部を、単電池10から離れるように変形させればよい。
【0187】
例えば、スペーサ30を図37に示すように変形させることができる。図37は、電池モジュール1の一部を側面(Y方向)から見たときの図である。このようにスペーサ30を変形させると、スペーサ30に設けられた複数の突起部30aのうち、一部の突起部30aが単電池10から離れることになる。
【0188】
また、本実施例では、スペーサ30を、形状記憶合金で形成された板部材31と、板部材31を覆う樹脂とで構成しているが、これに限るものではない。すなわち、温度上昇に応じてスペーサ30を変形させることができればよく、例えば、スペーサ30を形状記憶樹脂だけで形成したり、バイメタルで形成したりすることができる。ここで、バイメタルを用いる場合には、単電池10間の絶縁を確保するために、本実施例と同様に、バイメタルを樹脂で覆うようにすることが好ましい。
【0189】
スペーサ30を形状記憶樹脂で形成する場合には、特定の樹脂材料に限定されることになるが、形状記憶合金の板部材31を用いれば、板部材31を覆う樹脂の材料として、幅広い選択肢の中から選択することができる。例えば、板部材31を覆う樹脂として、ポリプロピレンといった低コストの材料を用いることができる。
【0190】
また、本実施例では、第1の拘束ロッド50を変形させて複数の単電池10に対する拘束力を解除させるようにしているが、これに限るものではない。具体的には、複数の単電池10に対して拘束力を与えたままの状態において、スペーサ30を本実施例のように変形させることができる。この場合であっても、単電池10およびスペーサ30の接触面積を減らすことができ、スペーサ30を介した熱の伝達を抑制することができる。
【0191】
さらに、本実施例では、実施例1で説明した構成において、上述したスペーサ30を用いているが、これに限るものではない。すなわち、各実施例2〜6で説明した構成において、本実施例のスペーサ30を用いることができる。
【実施例7】
【0192】
次に、本発明の実施例7である電池モジュールについて説明する。ここで、上述した実施例で説明した部材と同一の機能を有する部材については、同一符号を用い、詳細な説明は省略する。本実施例は、実施例2で説明した構成(図5〜図7)において、以下に説明するバスバー20を用いている。
【0193】
バスバー20は、形状記憶合金で形成されており、バスバー20の温度が形状回復温度よりも低いときには、図38に示す状態となっている。ここで、図38(A)は、バスバー20の正面図であり、図38(B)は、図38(A)のA−A断面図である。図38に示す状態において、バスバー20は、平面(図6のX−Y平面)内に位置しており、2つの貫通孔20aでは、正極端子11および負極端子12が貫通している。なお、バスバー20を形成する形状記憶合金の材料は、実施例1で説明した場合と同様に、適宜選択することができる。
【0194】
一方、単電池10が過充電等によって発熱すると、単電池10の熱が電極端子11,12を介してバスバー20に伝達される。そして、バスバー20の温度が形状回復温度に到達すると、バスバー20は、図39に示す形状に変形するようになっている。ここで、図39(A)は、変形状態にあるバスバー20の正面図であり、図39(B)は、図39(A)のA−A断面図である。
【0195】
図39に示す状態において、バスバー20は、2つの貫通孔20aの間に位置する領域で変形しており、2つの貫通孔20aの間隔N2は、図38に示す状態における2つの貫通孔20aの間隔N1よりも狭くなっている。このようにバスバー20を変形させることにより、貫通孔20aを端子ネジ11a(図6参照)に密接させて、端子ネジ11aに外力を与えることができる。
【0196】
端子ネジ11aは、実施例2で説明したように、切り欠き部11cを有しているため、貫通孔20aからの外力によって、端子ネジ11aを端子座11bから分離させることができる(図7参照)。これにより、実施例2でも説明したように、隣り合って配置された2つの単電池10における電気的な接続を遮断することができ、電池モジュール1の充放電を禁止することができる。
【0197】
本実施例では、実施例1で説明したように複数の単電池10に対する拘束力を解除した状態で、バスバー20を変形させることもできるし、複数の単電池10に対して拘束力を与えたままの状態で、バスバー20を変形させることもできる。いずれの場合であっても、バスバー20の変形によって、端子ネジ11aを端子座11bから分離させることができる。
【0198】
なお、本実施例において、バスバー20を変形させたときの形状は、適宜設定することができる。すなわち、バスバー20を変形させることにより、電極端子11,12を破断させるための外力を発生させることができればよい。具体的には、本実施例で説明したように、2つの貫通孔20aが互いに近づくようにバスバー20を変形させることができる。また、2つの貫通孔20aが互いに離れるように、バスバー20を変形させることができる。
【0199】
2つの貫通孔20aが互いに離れる方向にバスバー20を変形させる場合としては、例えば、バスバー20の温度が形状回復温度よりも低い状態において、バスバー20を図39に示す形状に形成しておく。このとき、2つの貫通孔20aには、電極端子11,12が貫通するようになっている。そして、バスバー20の温度が形状回復温度を超えたときに、バスバー20を図38に示す形状に変形させることができる。これにより、2つの貫通孔20aの間隔は、間隔N2から間隔N1に広がることになる。
【0200】
一方、本実施例では、バスバー20を形状記憶合金で形成しているが、これに限るものではなく、例えば、バイメタルを用いることができる。バイメタルを用いた場合であっても、2つの貫通孔20aの間隔を変化させて、電極端子11,12に対して外力を与えることができる。
【0201】
また、本実施例では、端子ネジ11aの基端部に切り欠き部11cを形成しているが、切り欠き部11cを形成しなくてもよい。すなわち、端子ネジ11aを破断させやすい構造にすることなく、バスバー20の変形力だけで、端子ネジ11aを破断させることもできる。
【0202】
次に、本実施例の変形例におけるバスバー20について、図40を用いて説明する。本変形例では、実施例3の変形例1で説明した構成(図10及び図11)において、バスバー20を本実施例と同様に変形させるようにしている。ここで、図40(A)は、バスバー20が破断状態にあるときの正面図であり、図40(B)は、図40(A)のA−A断面図である。
【0203】
本変形例において、バスバー20は、形状記憶合金で形成されており、バスバー20の温度が形状回復温度よりも低いときには、バスバー20は、本実施例で説明した場合と同様に、平面内に位置している。ここで、バスバー20には、図10で説明したように、破断線L2が形成されている。
【0204】
一方、単電池10が過充電等によって発熱すると、単電池10の熱が電極端子11,12を介してバスバー20に伝達される。そして、バスバー20の温度が形状回復温度を超えると、バスバー20が図40に示すように変形するようになっている。具体的には、バスバー20のうち、2つの貫通孔20aの間に位置する領域が変形するようになっており、バスバー20の変形によって、2つの貫通孔20aの間隔が狭くなる。
【0205】
このようにバスバー20が変形すると、貫通孔20aが電極端子11,12に密接することになる。ここで、一方の貫通孔20aには、破断線L2が形成されているため、バスバー20は、破断線L2に沿って破断されることになり、図40に示す状態となる。本変形例によれば、バスバー20の変形によって、バスバー20を破断させることができ、バスバー20を介した2つの単電池10の電気的な接続を遮断することができる。
【0206】
本変形例において、電極端子11,12の構造を、実施例2で説明した構造(図5および図6)にすることもできる。すなわち、端子ネジ11aの基端部に切り欠き部11cを形成することができる。また、バスバー20をバイメタルで形成することもできる。
【0207】
また、本変形例では、実施例3の変形例1(図10)で説明したバスバー20を変形させているが、これに限るものではなく、実施例3(図8A)又は実施例3の各変形例2〜6(図12A〜図21A)で説明したバスバー20を変形させることができる。この場合であっても、バスバー20の変形によって、バスバー20を破断させることができる。なお、バスバー20に形成された破断線の位置によっては、バスバー20を変形させる方向や変形させた後の形状を適宜設定することにより、バスバー20を破断させやすくすることができる。
【符号の説明】
【0208】
1:電池モジュール(蓄電装置) 10:単電池(蓄電素子)
11:正極端子(電極端子) 11a:端子ネジ
11:端子座 11c:切り欠き部
12:負極端子(電極端子) 13:電池ケース
13a:底面 13b:上面
13c:側面 20:バスバー(接続部材)
20a,20c:貫通孔 20b1,20b2:切り欠き部
20d:開口部 20e:座屈部
21:安全弁 22:ナット
22a:ネジ部 30:スペーサ
40:エンドプレート 41:固定ボルト
50:第1の拘束ロッド(拘束部材) 50a:曲げ部
51:第2の拘束ロッド(拘束部材) 60:パックケース
70:ロアーケース 71:突起部
80:変形部材
L1〜L6:破断線
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定方向に並んで配置された複数の蓄電素子と、
前記所定方向に延びており、前記複数の蓄電素子を互いに近づける方向の拘束力を発生させるための拘束部材と、を有し、
前記拘束部材は、温度上昇に応じて変形し、前記拘束力を解除させるための曲げ部を有することを特徴とする蓄電装置。
【請求項2】
前記曲げ部は、前記蓄電素子から排出されたガスによる温度上昇に応じて変形し、前記拘束部材のうち前記所定方向における両端部を互いに離れる方向に変位させることを特徴とする請求項1に記載の蓄電装置。
【請求項3】
前記蓄電素子は、前記ガスを排出させる弁を有しており、
前記拘束部材は、前記弁と対向する位置に配置されていることを特徴とする請求項2に記載の蓄電装置。
【請求項4】
前記拘束部材が、前記蓄電素子のうち電極端子が設けられた側に配置されており、
前記拘束部材とともに前記拘束力を発生させるための他の拘束部材が、前記蓄電素子のうち前記電極端子が設けられた側とは反対側に配置されていることを特徴とする請求項3に記載の蓄電装置。
【請求項5】
前記曲げ部を有する前記拘束部材は、温度上昇に応じて、前記他の拘束部材よりも大きな変形量で変形することを特徴とする請求項4に記載の蓄電装置。
【請求項6】
前記複数の蓄電素子に対して、前記所定方向における両端に配置され、前記拘束部材が固定される一対のエンドプレートを有することを特徴とする請求項1から5のいずれか1つに記載の蓄電装置。
【請求項7】
前記所定方向で隣り合う前記蓄電素子の間に配置されており、前記蓄電素子との間で熱交換を行うための熱交換媒体が移動する通路を形成するスペーサを有することを特徴とする請求項1から6のいずれか1つに記載の蓄電装置。
【請求項8】
前記スペーサは、温度上昇に応じて、前記蓄電素子と接触する領域の一部を前記蓄電素子から離す方向に変形することを特徴とする請求項7に記載の蓄電装置。
【請求項9】
前記曲げ部を有する前記拘束部材は、形状記憶合金又は形状記憶樹脂で形成されていることを特徴とする請求項1から8のいずれか1つに記載の蓄電装置。
【請求項10】
所定方向に並んで配置された複数の蓄電素子と、
前記所定方向に延びており、前記複数の蓄電素子を互いに近づける方向の拘束力を発生させるための第1および第2の拘束部材と、を有し、
前記第1および第2の拘束部材は、前記複数の蓄電素子を挟む位置に配置されており、線膨張率が互いに異なることを特徴とする蓄電装置。
【請求項11】
前記蓄電素子の電極端子は、機械的強度が他の部分よりも低く、外力に応じて前記電極端子の破断を許容する破断部を有することを特徴とする請求項1から10のいずれか1つに記載の蓄電装置。
【請求項12】
前記所定方向で隣り合う2つの前記蓄電素子の電極端子を電気的に接続するための接続部材を有しており、
前記接続部材は、温度上昇に応じて変形することを特徴とする請求項1から11のいずれか1つに記載の蓄電装置。
【請求項13】
前記所定方向で隣り合う2つの前記蓄電素子の電極端子を電気的に接続するための接続部材を有しており、
前記接続部材は、機械的強度が他の部分よりも低く、外力に応じて前記接続部材の破断を許容する破断部を有することを特徴とする請求項1から12のいずれか1つに記載の蓄電装置。
【請求項14】
前記接続部材の前記破断部は、前記接続部材と接続された2つの前記電極端子が互いに離れる方向に変位することに応じて、前記接続部材を破断させることを特徴とする請求項13に記載の蓄電装置。
【請求項15】
前記接続部材の前記破断部は、前記所定方向と略直交する方向に延びていることを特徴とする請求項13又は14に記載の蓄電装置。
【請求項16】
前記接続部材は、2つの前記電極端子をそれぞれ貫通させる孔部を有しており、
前記接続部材の前記破断部は、前記接続部材のうち、前記孔部の間に位置する領域とは異なる領域に設けられていることを特徴とする請求項13から15のいずれか1つに記載の蓄電装置。
【請求項17】
前記接続部材の前記破断部は、前記所定方向に延びていることを特徴とする請求項13から15のいずれか1つに記載の蓄電装置。
【請求項18】
前記接続部材は、前記電極端子の変位に応じて変形し、前記破断部での破断力を発生させる変形部を有することを特徴とする請求項17に記載の蓄電装置。
【請求項19】
前記接続部材の前記破断部は、前記接続部材の表面に形成された凹部であることを特徴とする請求項13から18のいずれか1つに記載の蓄電装置。
【請求項20】
前記所定方向で隣り合って配置された2つの前記蓄電素子における電極端子が基準位置で互いに接続されており、
温度上昇に応じた変形によって、前記電極端子を前記基準位置から変位させる変位構造を有することを特徴とする請求項1から19のいずれか1つに記載の蓄電装置。
【請求項21】
前記蓄電素子は、充放電を行うための発電要素と、前記発電要素を収容するケースとを有しており、
前記変位構造は、前記ケースにおける少なくとも一部の領域であり、温度上昇に応じて前記蓄電素子の外側に向かって凸となるように変形することを特徴とする請求項20に記載の蓄電装置。
【請求項22】
前記一部の領域は、前記電極端子が設けられた上面又は、前記上面と鉛直方向で対向する底面であることを特徴とする請求項21に記載の蓄電装置。
【請求項23】
前記一部の領域が、形状記憶合金で形成されていることを特徴とする請求項21又は22に記載の蓄電装置。
【請求項24】
前記複数の蓄電素子を収容するケースを有しており、
前記変位構造は、前記ケースにおける一部の領域であり、温度上昇に応じて前記蓄電素子の側に向かって凸となるように変形して前記蓄電素子を変位させることを特徴とする請求項20に記載の蓄電装置。
【請求項25】
前記複数の蓄電素子を収容するケースを有しており、
前記変位構造は、前記ケースの内面と前記蓄電素子の外面との間に配置され、温度上昇に応じた変形によって前記蓄電素子を変位させる変形部材を有することを特徴とする請求項20に記載の蓄電装置。
【請求項1】
所定方向に並んで配置された複数の蓄電素子と、
前記所定方向に延びており、前記複数の蓄電素子を互いに近づける方向の拘束力を発生させるための拘束部材と、を有し、
前記拘束部材は、温度上昇に応じて変形し、前記拘束力を解除させるための曲げ部を有することを特徴とする蓄電装置。
【請求項2】
前記曲げ部は、前記蓄電素子から排出されたガスによる温度上昇に応じて変形し、前記拘束部材のうち前記所定方向における両端部を互いに離れる方向に変位させることを特徴とする請求項1に記載の蓄電装置。
【請求項3】
前記蓄電素子は、前記ガスを排出させる弁を有しており、
前記拘束部材は、前記弁と対向する位置に配置されていることを特徴とする請求項2に記載の蓄電装置。
【請求項4】
前記拘束部材が、前記蓄電素子のうち電極端子が設けられた側に配置されており、
前記拘束部材とともに前記拘束力を発生させるための他の拘束部材が、前記蓄電素子のうち前記電極端子が設けられた側とは反対側に配置されていることを特徴とする請求項3に記載の蓄電装置。
【請求項5】
前記曲げ部を有する前記拘束部材は、温度上昇に応じて、前記他の拘束部材よりも大きな変形量で変形することを特徴とする請求項4に記載の蓄電装置。
【請求項6】
前記複数の蓄電素子に対して、前記所定方向における両端に配置され、前記拘束部材が固定される一対のエンドプレートを有することを特徴とする請求項1から5のいずれか1つに記載の蓄電装置。
【請求項7】
前記所定方向で隣り合う前記蓄電素子の間に配置されており、前記蓄電素子との間で熱交換を行うための熱交換媒体が移動する通路を形成するスペーサを有することを特徴とする請求項1から6のいずれか1つに記載の蓄電装置。
【請求項8】
前記スペーサは、温度上昇に応じて、前記蓄電素子と接触する領域の一部を前記蓄電素子から離す方向に変形することを特徴とする請求項7に記載の蓄電装置。
【請求項9】
前記曲げ部を有する前記拘束部材は、形状記憶合金又は形状記憶樹脂で形成されていることを特徴とする請求項1から8のいずれか1つに記載の蓄電装置。
【請求項10】
所定方向に並んで配置された複数の蓄電素子と、
前記所定方向に延びており、前記複数の蓄電素子を互いに近づける方向の拘束力を発生させるための第1および第2の拘束部材と、を有し、
前記第1および第2の拘束部材は、前記複数の蓄電素子を挟む位置に配置されており、線膨張率が互いに異なることを特徴とする蓄電装置。
【請求項11】
前記蓄電素子の電極端子は、機械的強度が他の部分よりも低く、外力に応じて前記電極端子の破断を許容する破断部を有することを特徴とする請求項1から10のいずれか1つに記載の蓄電装置。
【請求項12】
前記所定方向で隣り合う2つの前記蓄電素子の電極端子を電気的に接続するための接続部材を有しており、
前記接続部材は、温度上昇に応じて変形することを特徴とする請求項1から11のいずれか1つに記載の蓄電装置。
【請求項13】
前記所定方向で隣り合う2つの前記蓄電素子の電極端子を電気的に接続するための接続部材を有しており、
前記接続部材は、機械的強度が他の部分よりも低く、外力に応じて前記接続部材の破断を許容する破断部を有することを特徴とする請求項1から12のいずれか1つに記載の蓄電装置。
【請求項14】
前記接続部材の前記破断部は、前記接続部材と接続された2つの前記電極端子が互いに離れる方向に変位することに応じて、前記接続部材を破断させることを特徴とする請求項13に記載の蓄電装置。
【請求項15】
前記接続部材の前記破断部は、前記所定方向と略直交する方向に延びていることを特徴とする請求項13又は14に記載の蓄電装置。
【請求項16】
前記接続部材は、2つの前記電極端子をそれぞれ貫通させる孔部を有しており、
前記接続部材の前記破断部は、前記接続部材のうち、前記孔部の間に位置する領域とは異なる領域に設けられていることを特徴とする請求項13から15のいずれか1つに記載の蓄電装置。
【請求項17】
前記接続部材の前記破断部は、前記所定方向に延びていることを特徴とする請求項13から15のいずれか1つに記載の蓄電装置。
【請求項18】
前記接続部材は、前記電極端子の変位に応じて変形し、前記破断部での破断力を発生させる変形部を有することを特徴とする請求項17に記載の蓄電装置。
【請求項19】
前記接続部材の前記破断部は、前記接続部材の表面に形成された凹部であることを特徴とする請求項13から18のいずれか1つに記載の蓄電装置。
【請求項20】
前記所定方向で隣り合って配置された2つの前記蓄電素子における電極端子が基準位置で互いに接続されており、
温度上昇に応じた変形によって、前記電極端子を前記基準位置から変位させる変位構造を有することを特徴とする請求項1から19のいずれか1つに記載の蓄電装置。
【請求項21】
前記蓄電素子は、充放電を行うための発電要素と、前記発電要素を収容するケースとを有しており、
前記変位構造は、前記ケースにおける少なくとも一部の領域であり、温度上昇に応じて前記蓄電素子の外側に向かって凸となるように変形することを特徴とする請求項20に記載の蓄電装置。
【請求項22】
前記一部の領域は、前記電極端子が設けられた上面又は、前記上面と鉛直方向で対向する底面であることを特徴とする請求項21に記載の蓄電装置。
【請求項23】
前記一部の領域が、形状記憶合金で形成されていることを特徴とする請求項21又は22に記載の蓄電装置。
【請求項24】
前記複数の蓄電素子を収容するケースを有しており、
前記変位構造は、前記ケースにおける一部の領域であり、温度上昇に応じて前記蓄電素子の側に向かって凸となるように変形して前記蓄電素子を変位させることを特徴とする請求項20に記載の蓄電装置。
【請求項25】
前記複数の蓄電素子を収容するケースを有しており、
前記変位構造は、前記ケースの内面と前記蓄電素子の外面との間に配置され、温度上昇に応じた変形によって前記蓄電素子を変位させる変形部材を有することを特徴とする請求項20に記載の蓄電装置。
【図1】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12A】
【図12B】
【図12C】
【図12D】
【図12E】
【図13】
【図14】
【図15A】
【図15B】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19A】
【図19B】
【図19C】
【図20】
【図21A】
【図21B】
【図21C】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12A】
【図12B】
【図12C】
【図12D】
【図12E】
【図13】
【図14】
【図15A】
【図15B】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19A】
【図19B】
【図19C】
【図20】
【図21A】
【図21B】
【図21C】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【公開番号】特開2010−92833(P2010−92833A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−95061(P2009−95061)
【出願日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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