車両用操舵装置
【課題】荷役車両の車両用操舵装置において、ノブを把持して操舵部材を操作するとき、ノブの位置に応じて運転者が操舵部材に力を掛け難い場合がある。
【解決手段】操舵部材10と転舵輪としての後輪との間の機械的な連結が断たれたステアバイワイヤ式の車両用操舵装置である。ホイール61の中心軸線C2に沿って操舵部材10を見たときに、ノブ63が操舵部材10の上部または下部に変位している場合の操舵反力を、ノブ63が操舵部材10の左部または右部に変位している場合の操舵反力よりも小さくするように、ECUが反力アクチュエータを反力制御する。
【解決手段】操舵部材10と転舵輪としての後輪との間の機械的な連結が断たれたステアバイワイヤ式の車両用操舵装置である。ホイール61の中心軸線C2に沿って操舵部材10を見たときに、ノブ63が操舵部材10の上部または下部に変位している場合の操舵反力を、ノブ63が操舵部材10の左部または右部に変位している場合の操舵反力よりも小さくするように、ECUが反力アクチュエータを反力制御する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用操舵装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
操舵部材と転舵輪との間の機械的な連結が断たれた、いわゆるステアバイワイヤシステムにおいて、操舵部材の操作角に応じて反力指令値を設定し、その反力指令値に基づいて反力アクチュエータをフィードバック制御する車両用操舵装置が提案されている(例えば特許文献1を参照。)。
また、ステアリングホイールにおいて、リング部に複数の圧力センサを埋設し、上記圧力センサが検出した押圧力をステアリングホイールの回動開始予測信号とする、ステアリングホイールが提案されている(例えば特許文献2を参照。)。
【0003】
また、運転者がノブを介してステアリングホイールに負荷する操舵トルクを、ノブの変位をレバーを介して回転センサにより検出することにより検出する、パワーステアリング装置の操舵トルク検出装置が提案されている(例えば特許文献3を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−63434号公報(請求項1、明細書の第15段落および第17段落)
【特許文献2】特開平5−310130号公報(明細書の第26段落および第42段落)
【特許文献3】特開平7−232647号公報(明細書の第29段落)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、フォークリフト等の荷役車両では、片手でハンドル(ステアリングホイール)操作ができるように、ハンドルにノブが設けられている。すなわち、運転者は、右手で荷役作業のためのレバー操作をしながら、左手でノブを把持してハンドル操作を行う。
ところで、片手でノブを用いてハンドル操作を行う場合、ノブがハンドルのどの回転位置にあるかで、運転者にとってノブへの力の掛け具合が変わってくる。すなわち、ハンドルにおけるノブの位置に応じて、運転者がノブに対して力を掛け易い場合と掛け難い場合とがあり、運転者の作業負担が大きくなっていた。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、操舵操作に関して作業者の負担を軽減することができる車両用操舵装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は、操舵部材(10)のホイール(61)に取り付けられ、操舵部材を回転操作するためのノブ(63)と、上記ノブの位置を検出するノブ位置検出手段(14)と、上記ノブ位置検出手段により検出されたノブの位置に応じて、操舵部材への操舵反力を制御する反力制御、または転舵機構(A2)への操舵補助力を制御する操舵補助制御を実行する制御手段(11)とを備えたことを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、ノブの位置に応じて操舵反力または操舵補助力を変更することにより、ノブを把持して操舵部材を操作するときの運転者の作業負担を格段に軽減することができる。
ところで、ノブが操舵部材の上部または下部に変位しているときは、ノブが操舵部材の左部または右部に変位しているときと比較して、運転者がノブに力を掛け難い傾向にある。
【0009】
そこで、上記操舵部材と転舵輪(6)との間の機械的な連結が断たれており、操舵部材に操舵反力を付与するための反力アクチュエータ(13)を備え、上記制御手段は、運転者から上記ホイールの中心軸線(C2)に沿って操舵部材を見たときに、ノブが操舵部材の上部または下部に変位している場合の操舵反力を、ノブが操舵部材の左部または右部に変位している場合の操舵反力よりも小さくするように、上記反力アクチュエータを反力制御することが好ましい(請求項2)。この場合、ノブが操舵部材の上部または下部に変位している場合の操舵反力を、ノブが操舵部材の左部または右部に変位している場合の操舵反力よりも小さくすることにより、運転者の負担を実質的に軽減する。これにより、運転者は、ノブの位置に拘らず、略一定の操作力でノブを介して操舵部材を操作することが可能となる。
【0010】
また、上記操舵部材と転舵輪とが機械的に連結されており、操舵補助力を発生する操舵補助力アクチュエータを備え、上記制御手段は、運転者から上記ホイールの中心軸線に沿って操舵部材を見たときに、ノブが操舵部材の上部または下部に変位している場合の操舵補助力を、ノブが操舵部材の左部または右部に変位している場合の操舵補助力よりも大きくするように、操舵補助力アクチュエータを操舵補助制御することが好ましい(請求項3)。この場合、ノブが操舵部材の上部または下部に変位している場合の操舵補助力を、ノブが操舵部材の左部または右部に変位している場合の操舵補助力よりも大きくすることにより、運転者の負担を実質的に軽減する。これにより、運転者は、ノブの位置に拘らず、略一定の操作力でノブを介して操舵部材を操作することが可能となる。
【0011】
また、上記ノブが把持されたことを検出する把持検出手段(65;65A;65B;65C)を備え、上記制御手段による反力制御または操舵補助制御は、上記把持検出手段によって上記ノブの把持が検出されることを条件として行われる場合がある(請求項4)。運転者が操舵部材を操作するときに、ノブを把持せずホイールを把持して操作する場合があり、そのような場合には、本発明による反力制御(または操舵補助力制御)は不要である。そこで、ノブの把持が検出されることを反力制御(または操舵補助力制御)の実行の条件とし、操舵部材の実際の操作態様に応じた反力制御(または操舵補助制御)を行うことができるようにした。
【0012】
なお、上記において、括弧内の英数字は、後述する実施形態における対応構成要素の参照符号を表すものであるが、これらの参照符号により特許請求の範囲を限定する趣旨ではない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施の形態の車両用操舵装置を含む荷役車両としてのフォークリフトの概略構成を示す模式的側面図である。
【図2】フォークを昇降させる動作原理を説明するための概略図である。
【図3】操舵部材の概略正面図であり、操舵部材のホイールの中心軸線に沿って操舵部材を見た図である。
【図4】操舵部材の要部の概略側面図である。
【図5】フォークリフトの電気的構成を示すブロック図である。
【図6】ノブが把持されて操舵部材が操作されるときの制御マップ(操舵角−操舵反力マップ)として用いる把持時マップを示すグラフである。
【図7】操舵部材の正面図である。(a)は、操舵部材を正面から見たときに(操舵部材のホイールの中心軸線に沿って見たときに)、ノブが操舵部材の上部に変位している状態を示し、(b)はノブが操舵部材の右部に変位している状態を示し、(c)は、ノブが操舵部材の下部に変位している状態を示し、(d)はノブが操舵部材の左部に変位している状態を示している。
【図8】ECUによる主たる制御の流れを示すフローチャートである。
【図9】(a)は本発明の別の実施の形態の車両用操舵装置の概略構成を示す模式的側面図であり、(b)は模式的平面図である。
【図10】図9の実施の形態において、電気的構成を示すブロック図である。
【図11】図9の実施の形態において、ECUによる主たる制御の流れを示すフローチャートである。
【図12】図9の実施の形態において、ノブが把持されて操舵部材が操作されるときの制御マップ(操舵角−操舵補助力マップ)として用いる把持時マップを示すグラフである。
【図13】把持検出手段としてのグリップセンサの変更例を示す概略図であり、(a)はグリップセンサとして歪みセンサを用いた例を示し、(b)はグリップセンサとして圧力センサを用いた例を示し、(c)はグリップセンサとして押しボタンスイッチを用いた例を示している。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の好ましい実施の形態の添付図面を参照しつつ説明する。
図1は本発明の一実施の形態の荷役車両としてのフォークリフトの概略構成を示す模式的側面図である。図1を参照して、フォークリフト1は、車体2と、その車体2の前部に設けられた荷役装置3と、車体2の後部に設けられたカウンタウェイト4と、車体2を支持する駆動輪としての前輪5および転舵輪としての後輪6と、例えばエンジンを含む車両の駆動源7と、油圧源としての油圧ポンプ8と、後輪6を転舵するための車両用操舵装置9とを備えている。
【0015】
車両用操舵装置9は、ノブ付きの手回しハンドルである操舵部材10と転舵輪である後輪6との間の機械的な連結が断たれた、いわゆるステアバイワイヤ式の車両用操舵装置として構成されている。転舵輪として、単一の後輪6を車体2の左右方向の中央に設けてもよいし、車体2の左右にそれぞれ後輪6を設けてもよい。
車両用操舵装置9は、上記操舵部材10と、操舵部材10の操作に応じて転舵輪としての後輪6を転舵するための例えば電動モータからなり、制御手段としてのECU11(電子制御ユニット)によって駆動制御される転舵アクチュエータ12と、操舵部材10に操舵反力を付与する例えば電動モータからなり、ECU11によって駆動制御される反力アクチュエータ13とを備えている。また、車両用操舵装置9は、操舵部材10の操舵角を検出する操舵角センサ14と、後輪6の転舵角を検出する転舵角センサ15とを備えている。
【0016】
転舵輪としての後輪6は、ほぼ鉛直な支持部材16によって回転可能に支持されている。その支持部材16は、車体2に保持された軸受17を介して、ほぼ鉛直な回転軸線C1の回りに回転可能に支持されている。
転舵アクチュエータ12の出力軸の回転は、伝達機構18を介して減速されて、支持部材16に伝達される。その伝達機構18は、転舵アクチュエータ12の出力軸とは同行回転する例えば駆動ギヤからなる駆動部材19と、回転軸線C1の回りに支持部材16とは同行回転可能に設けられ、上記駆動ギヤに噛み合う例えば従動ギヤからなる従動部材20とを有している。伝達機構18および転舵アクチュエータ12によって、転舵機構A1が構成されている。
【0017】
図示していないが、エンジン等の駆動源7の動力は、トルクコンバータを経て、前後進切替および変速動作を行うトランスミッションに伝達され、さらに、デファレンシャルを経て左右の前輪5(駆動輪)に伝達されるようになっている。トランスミッションには、前進クラッチおよび後進クラッチが内蔵されている。
フォークリフト1は、運転座席21を含む運転室22を備えている。運転室22は、車体2上にフレーム23によって取り囲まれた状態で形成されている。
【0018】
荷役装置3は、車体2によって、下端部24aを中心として傾動可能に支持された左右一対のアウターマスト24と、そのアウターマスト24によって昇降可能に支持されたインナーマスト25と、アウターマスト24によって昇降可能に支持されたリフトブラケット26と、そのリフトブラケット26に取り付けられ、荷物を積載する積載部としての左右一対のフォーク27とを備えている。
【0019】
アウターマスト24の所定部と車体2の所定部との間に、チルトシリンダ28が介在している。チルトシリンダ28は、車体2の所定部に揺動可能に連結された一端を有するシリンダ本体29と、シリンダ本体29の他端から突出するロッド30とを有している。ロッド30の先端は、アウターマスト24の所定部に揺動可能に連結されている。チルトシリンダ28のロッド30の伸縮動作に伴って、アウターマスト24が、直立姿勢および傾動姿勢に変位されるようになっている。
【0020】
また、アウターマスト24をガイドとしてインナーマスト25を昇降させるためのリフトシリンダ31が設けられている。リフトシリンダ31は、アウターマスト24に固定されたシリンダ本体32と、シリンダ本体32から突出するロッド33とを有している。ロッド33の先端は、インナーマスト25の所定部に設けられた取付部25aに固定されている。
【0021】
リフトシリンダ31のシリンダ本体32の下部には、荷役装置3の積載荷重を検出するための荷重検出手段としての荷重センサ34が取り付けられている。荷重センサ34からの信号は、ECU11に入力されるようになっている。
運転室22の前部において、運転室22の底面22a上には、操作スタンド35が設けられており、運転室22の後部には、上記運転座席21が固定されている。
【0022】
上記操作スタンド35には、運転者が手で操作するための複数の操作要素として、上記操舵部材10と、フォーク27を昇降させるための昇降操作レバー36と、アウターマスト24を揺動させるためチルト操作レバー37と、前進/後進切替レバー38とが設けられている。また、操作スタンド35には、主に後方を確認するための確認ミラー39が固定されている。また、操作スタンド35には、図示しない各種のスイッチ類が設けられている。
【0023】
また、操作スタンド35の基部近傍において、運転室22の底面22a上には、運転者が足で操作するための複数の操作要素として、アクセルペダル40、ブレーキペダル41、クラッチペダル42が設けられている。アクセルペダル40、ブレーキペダル41およびクラッチペダル42は、実際には紙面に垂直な方向(車両の左右方向に相当)に横並びで並べて配置されているが、図1では、模式的に示してある。また、図1では、操作要素としての昇降操作レバー36、チルト操作レバー37、前進/後進切替レバー38のレイアウトについても、模式的に示してある。
【0024】
フォーク27を昇降させる動作の原理を概念的に示す図2を参照して、インナーマスト25の上部には、スプロケット43が回転可能に支持されており、そのスプロケット43には、チェーン44が巻き掛けられている。そのチェーン44の一端44aが、アウターマスト24に設けられた固定部24bに固定され、チェーン44の他端44bが、リフトブラケット26に固定されている。これにより、リフトブラケット26およびフォーク27が、チェーン44を用いて懸架されている。
【0025】
リフトシリンダ31のロッド33の伸長に伴って、インナーマスト25が上昇すると、スプロケット43がアウターマスト24の固定部24bに対して上昇し、チェーン44を介して、リフトブラケット26および積載部としてのフォーク27を上昇させる。地表面48に対するフォーク27の上昇量は、リフトシリンダ31のロッド33の伸長量の2倍となる。
【0026】
積載部としてのフォーク27の高さを検出する積載部高さ検出手段としてのストロークセンサ45が設けられており、ストロークセンサ45からの信号は、ECU11に入力されるようになっている。ストロークセンサ45としてロータリエンコーダを用いるようにしてもよい。
具体的には、チェーン44の他端44bに一端が係止されたワイヤ46が、アウターマスト24に回転可能に支持されたワイヤドラム47に巻き取られており、フォーク27とともにチェーン44の他端44bが昇降すると、ワイヤ46がワイヤドラム47から巻き出されたり、巻き戻されたりする。このとき、ECU11は、ワイヤドラム47の回転数をストロークセンサ45としてのロータリエンコーダで検出し、その検出値に基づいてワイヤ46のワイヤドラム47からの巻き出し量を算出し、その算出値に基づいて、地表面48からのフォーク10の高さである積載部高さHを検出する。
【0027】
図3は、操舵部材10の正面図であり、図4は操舵部材10の要部の概略側面図である。図3および図4を参照して、操舵部材10は、傾斜状のステアリングシャフト60の上端に同伴回転可能に連結されている。操舵部材10は、ホイール61と、ホイール61をステアリングシャフト60の上端に連結する複数のスポーク62とを有している。
また、ホイール61には、操舵部材10が操舵中立位置にあるときに、操舵部材10の左部に位置するノブ63が取り付けられている。通例、運転者は、ノブ63を握って、操舵部材10を回転操作するようになっている。ノブ63は、操舵部材10の中心軸線C2(ステアリングシャフト60の中心軸線に一致)に平行に延びるアーム64の先端に連結されており、卵形形状の中空のブロックに形成されている。
【0028】
ノブ63の内部には、運転者がノブ63を把持したことを検出する把持検出手段として、静電センサからなるグリップセンサ65が配置されている。運転者がノブ63を把持すると、静電容量の変化に基づいてグリップセンサ65がECU11へ信号を出力するようになっている。
図5はフォークリフト1の主たる電気的構成を示すブロック図である。図5を参照して、ECU11には、操舵部材10の操舵角θH を検出するための操舵角センサ14、転舵輪としての後輪6の転舵角θW を検出するための転舵角センサ15、車速Vを検出するための車速センサ49、積載部としてのフォーク27の積載荷重Wを検出するための荷重検出手段としての荷重センサ34、積載部としてのフォーク27の高さである積載部高さHを検出するための積載部高さ検出手段としてのストロークセンサ45、昇降操作レバー36の位置を検出するための昇降操作レバー位置センサ50、チルト操作レバー37の位置を検出するためのチルト操作レバー位置センサ51、前進/後進切替レバー38の切替に応じて作動する前進/後進切替スイッチ52、およびグリップセンサ65のそれぞれから信号が入力されるようになっている。操舵角センサ14は、操舵部材10のノブ63の位置を検出するノブ位置検出手段としても機能する。
【0029】
また、ECU11から、転舵アクチュエータ12、反力アクチュエータ13、油圧ポンプ8からリフトシリンダ31への作動油の供給を制御する電磁式の比例制御弁からなる昇降用制御弁53、油圧ポンプ8からチルトシリンダ28への作動油の供給を制御する電磁式の比例制御弁からなるチルト用制御弁54、前進クラッチを係合/離脱させるための油圧シリンダに作動油の供給を制御する電磁式比例制御弁からなる前進クラッチ用制御弁55、および後進クラッチを係合/離脱させるための油圧シリンダに作動油の供給を制御する電磁式比例制御弁からなる後進クラッチ用制御弁56のそれぞれに信号が出力されるようになっている。
【0030】
ECU11は種々の制御を実行する。例えば、ECU11は、ノブ63の位置に応じた操舵反力を操舵部材10に与えるためのトルクを反力アクチュエータ13によって発生させるべく、操舵角センサ14から入力された操舵角θH に基づいて、反力アクチュエータ13を駆動制御する(すなわち反力制御を実施する)。
具体的には、ECU11は、所定の操舵角−操舵反力マップ(図示せず)をノブ63が把持されない非把持時マップ(図示せず)として記憶しているとともに、図6に示す操舵角−操舵反力マップをノブ63が把持されたときに対応する把持時マップとして記憶している。
【0031】
ECU11は、ノブ63が把持されていることがグリップセンサ65により検出されたときは、図6の把持時マップを用いて、入力された操舵角θH に応じた操舵反力TH を求め、求められた操舵反力TH を目標操舵反力TH * に決定する。操舵部材10が例えば左右それぞれ2回転する場合、図6に示す把持時マップ(操舵角−操舵反力マップ)では、操舵角θH が90°および270°で操舵反力TH が相対的に小さく、操舵角θH が180°および360°で操舵反力TH が相対的に大きくなるように設定されている。
【0032】
すなわち、図7に示すように、運転者から、ホイール61の中心軸線C2に沿って操舵部材10を見たときに、ノブ63が操舵部材10の上部〔図7(a)参照。操舵角θH が90°に相当〕または下部〔図7(c)参照。操舵角θH が270°に相当〕に変位している場合の操舵反力TH を、ノブ63が操舵部材10の右部〔図7(b)参照。操舵角θH が180°に相当〕または左部〔図7(d)参照。操舵角θH が360°に相当〕に変位している場合の操舵反力TH よりも小さくされている。
【0033】
また、ECU11は、昇降操作レバー位置センサ50から入力された昇降操作レバー36の位置に応じて、油圧ポンプ8からリフトシリンダ31への作動油の供給を制御する昇降用制御弁53に制御信号を出力する。
また、ECU11は、チルト操作レバー位置センサ51から入力されたチルト操作レバー37の位置に応じて、油圧ポンプ8からチルトシリンダ28への作動油の供給を制御するチルト用制御弁54に制御信号を出力する。
【0034】
また、ECU11は、前進/後進切替スイッチ52が前進へ切り替えられることに応じて前進クラッチ用制御弁55に制御信号を出力し、前進クラッチを作動させるための油圧シリンダに、油圧ポンプ8からの作動油が供給されるようにする。
また、ECU11は、前進/後進切替スイッチ52が後進へ切り替えられることに応じて後進クラッチ用制御弁56に制御信号を出力し、後進クラッチを作動させるための油圧シリンダに、油圧ポンプ8からの作動油が供給されるようにする。
【0035】
図8はECU11の主たる動作を示すフローチャートである。図8を参照して、ECU11は、まず、グリップセンサ65からの信号の入力があるか否かを検出し(ステップS1)、グリップセンサ65からの信号の入力がある場合(ステップS1にてYESの場合)には、図6に示す把持時マップを選択(ステップS2)した後、ステップS4に移行する。一方、グリップセンサ65からの信号の入力がない場合(ステップS1にてNOの場合)には、非把持時マップを選択(ステップS3)した後、ステップS4に移行する。
【0036】
次いで、ステップS4において、操舵角センサ14からの信号に基づいて得られた操舵角θH を読み込み、ステップS5において、上記読み込まれた操舵角θH に基づく操舵反力TH を、上記選択された把持時マップ(図6参照)または非把持時マップを用いて求め、求められた操舵反力TH を目標操舵反力TH * に決定する。
次いで、ステップS6では、決定された目標操舵反力TH * に基づいて、反力アクチュエータ13を駆動制御する(すなわち反力制御を実行する)。
【0037】
本実施の形態によれば、操舵部材10の回転操作するときのノブ63の位置に応じて操舵反力TH を変更することにより、ノブ63を把持して操舵部材10を操作するときの運転者の作業負担を格段に軽減することができる。
また、ノブ63が図7(a)および(c)に示すように操舵部材10の上部または下部に変位しているときは、ノブ63が図7(d)および(b)に示すように操舵部材10の左部または右部に変位しているときと比較して、運転者がノブ63に力を掛け難い傾向にあるという事情に鑑み、ノブ63が操舵部材の上部または下部に変位している場合の操舵反力TH を、ノブ63が操舵部材10の左部または右部に変位している場合の操舵反力TH よりも小さくするようにした。これにより、運転者の負担を実質的に軽減する。これにより、運転者は、ノブ63の位置に拘らず、略一定の操作力でノブ63を介して操舵部材10を操作することが可能となる。
【0038】
さらに、運転者が操舵部材10を操作するときに、ノブ63を把持せずにホイール61を把持して操作する場合があり、そのような場合には、ノブ63の位置に応じて操舵反力TH を変更する制御は不要である。そこで、ノブ63の把持が検出されない場合には、通常のマップ(非把持時マップ)を用いて、反力制御を行うようにした。これにより、操舵部材10の実際の操作態様に応じた制御を行うことができる。
【0039】
なお、上記把持時マップを操舵速度θH ’および車速Vの少なくとも一方に基づいて補正するようにしてもよい。具体的には、操舵角センサ14から取得した操舵角θH を微分して得られた操舵速度(操舵角速度)θH ’が大きいほど、また、車速センサ49から取得した車速Vが小さいほど、操舵反力TH が小さくなるように、把持時マップを補正する場合がある。この場合、操舵部材10の操作性を向上することができる。
【0040】
逆に、操舵角センサ14から取得した操舵角θH を微分して得られた操舵速度(操舵角速度)θH ’が大きいほど、また、車速センサ49から取得した車速Vが大きいほど、操舵反力TH が大きくなるように、把持時マップを補正する場合がある。この場合、フォークリフト1の走行の安全性を向上することができる。
図1〜図8の実施の形態では、操舵部材10と転舵輪としての後輪6との間の機械的な連結が断たれた、いわゆるステアバイワイヤ式の車両用操舵装置9において、ノブ63の位置に応じて操舵反力TH を変更する例を示したが、これに限らず、本発明を、図9〜図12に示すように、操舵部材10と転舵輪としての後輪6とが機械的または油圧的に連結された車両用操舵装置9Aに適用し、ノブ63の位置に応じて操舵補助力TA の大きさを変更するようにしてもよい。
【0041】
図9(a)および(b)を参照して、ステアリングシャフト60は自在継手66を介して支軸67に接続されている。その支軸67の下端に支軸67と同伴回転する第1ギヤ68が取り付けられている。その第1ギヤ68が第2ギヤ69に噛み合わされており、その第2ギヤ69の同軸上に、第2ギヤ69とは同伴回転する動プーリ70が設けられている。
【0042】
一方、後輪6の支持部材16とは同伴回転可能な従動プーリ71が設けられており、駆動プーリ70と従動プーリ71とは、伝動部材としての無端状のベルト72を介して、動力伝達可能に連結されている。他方、例えば電動モータからなる操舵補助力アクチュエータ73が設けられており、その操舵補助力アクチュエータ73の回転軸74によって駆動される第3ギヤ75が、上記の第2ギヤ69に噛み合わされている。
【0043】
第1ギヤ68および第2ギヤ69を含むギヤ機構、並びに、駆動プーリ70、ベルト72および従動プーリ71を含むベルトプーリ機構によって、転舵機構A2が構成されている。
操舵補助力アクチュエータ73のトルク(操舵補助力TA )が第3ギヤ75を介して転舵機構A2の第2ギヤ69に与えられ、転舵輪としての後輪6の操舵(転舵)を補助するようになっている。
【0044】
図10に示すように、ECU11からの信号が操舵補助力アクチュエータ73に与えられ、操舵補助力アクチュエータ73の動作が制御される。なお、図9および図10に示す構成要素において、図1および図5の実施の形態と同じ構成要素には、同一の符号を付してある。
図11はECU11の主たる動作を示すフローチャートである。図11を参照して、ECU11は、まず、グリップセンサ65からの信号の入力があるか否かを検出し(ステップS1)、グリップセンサ65からの信号の入力がある場合(ステップS1にてYESの場合)には、図12に示す把持時マップを選択(ステップS2)した後、ステップS4に移行する。一方、グリップセンサ65からの信号の入力がない場合(ステップS1にてNOの場合)には、非把持時マップを選択(ステップS3)した後、ステップS4に移行する。
【0045】
図12の操舵角−操舵補助力に関する把持時マップは、図6の実施の形態の操舵角−操舵反力に関する把持時マップとは逆の変化をするようになっている。すなわち、図12に示す把持時マップ(操舵角−操舵補助力マップ)では、操舵角θH が90°および270°で操舵補助力TH が相対的に大きく、操舵角θH が180°および360°で操舵補助力TH が相対的に小さくなるように設定されている。
【0046】
次いで、ステップS4では、操舵角センサ14からの信号に基づいて得られた操舵角θH を読み込み、ステップS5において、上記選択された把持時マップ(図12参照)または非把持時マップを用いて、上記読み込まれた操舵角θH に応じた操舵補助力TA を求め、求められた操舵補助力TA を目標操舵補助力TA * に決定する(ステップS5)。
次いで、ステップS6では、決定された目標操舵補助力TA * に基づいて、操舵補助力アクチュエータ73を駆動制御する(すなわち操舵補助制御を実行する)。
【0047】
本実施の形態によれば、操舵部材10の回転操作するときのノブ63の位置に応じて操舵補助力TH を変更することにより、ノブ63を把持して操舵部材10を操作するときの運転者の作業負担を格段に軽減することができる。
具体的には、ノブ63が操舵部材の上部または下部に変位している場合の操舵補助力TA を、ノブ63が操舵部材10の左部または右部に変位している場合の操舵補助力TA よりも大きくするようにした。これにより、運転者の負担を実質的に軽減することができる。これにより、運転者は、ノブ63の位置に拘らず、略一定の操作力でノブ63を介して操舵部材10を操作することが可能となる。
【0048】
さらに、運転者が操舵部材10を操作するときに、ノブ63を把持せずにホイール10を把持して操作する場合があり、そのような場合には、ノブ63の位置に応じて操舵補助力TH を変更する制御は不要である。そこで、ノブ63の把持が検出されない場合には、通常のマップ(非把持時マップ)を用いて、操舵補助制御を行うようにした。これにより、操舵部材10の実際の操作態様に応じた制御を行うことができる。
【0049】
なお、本実施の形態において、上記把持時マップを操舵速度θH ’および車速Vの少なくとも一方に基づいて補正するようにしてもよい。具体的には、操舵角センサ14から取得した操舵角θH を微分して得られた操舵速度(操舵角速度)θH ’が大きいほど、また、車速センサ49から取得した車速Vが小さいほど、操舵補助力TA が大きくなるように把持時マップを補正する場合がある。この場合、操舵部材10の操作性を向上することができる。
【0050】
逆に、操舵角センサ14から取得した操舵角θH を微分して得られた操舵速度(操舵角速度)θH ’が大きいほど、また、車速センサ49から取得した車速Vが大きいほど、操舵補助力TA を小さくなるように、把持時マップを補正する場合がある。この場合、フォークリフト1の走行の安全性を向上することができる。
なお、本発明は上記各実施の形態に限定されるものではなく、例えば把持検出手段として、図13(a)に示すようにアーム64の曲げを検出する歪みセンサからなるグリップセンサ65Aや、図13(b)に示すようにノブ63の表面に負荷される押圧力を検出する圧力センサからなるグリップセンサ65Bや、図13(c)に示すような押しボタンスイッチからなるグリップセンサ65Cを用いるようにしてもよい。また、これらのタイプの異なるグリップセンサ65,65A,65B,65Cを2つ以上組み合わせて用いるようにしてもよい。
【0051】
また、上記各実施の形態では、車両が荷役車両としてのフォークリフトである例に則して説明したが、本発明はこれに限られるものではなく、ノブ付きのハンドルを有する車両であれば、本発明に係る制御を適用可能である。その他、本発明の特許請求の範囲で種々の変更を施すことができる。
【符号の説明】
【0052】
1…フォークリフト(荷役車両)、2…車体、3…荷役装置、6…後輪(転舵輪)、9,9A…車両用操舵装置、10…操舵部材、11…ECU(制御手段)、12…転舵アクチュエータ、13…反力アクチュエータ、14…操舵角センサ(操舵角検出手段。ノブ位置検出手段)、61…ホイール、62…スポーク、63…ノブ、64…アーム、65,65A,65B,65C…グリップセンサ(把持検出手段)、73…操舵補助力アクチュエータ、A1,A2…転舵機構、C2…(ホイールの)中心軸線、θH …操舵角、TH …操舵反力、TH * …目標操舵反力、TA …操舵補助力、TA * …目標操舵補助力
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用操舵装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
操舵部材と転舵輪との間の機械的な連結が断たれた、いわゆるステアバイワイヤシステムにおいて、操舵部材の操作角に応じて反力指令値を設定し、その反力指令値に基づいて反力アクチュエータをフィードバック制御する車両用操舵装置が提案されている(例えば特許文献1を参照。)。
また、ステアリングホイールにおいて、リング部に複数の圧力センサを埋設し、上記圧力センサが検出した押圧力をステアリングホイールの回動開始予測信号とする、ステアリングホイールが提案されている(例えば特許文献2を参照。)。
【0003】
また、運転者がノブを介してステアリングホイールに負荷する操舵トルクを、ノブの変位をレバーを介して回転センサにより検出することにより検出する、パワーステアリング装置の操舵トルク検出装置が提案されている(例えば特許文献3を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−63434号公報(請求項1、明細書の第15段落および第17段落)
【特許文献2】特開平5−310130号公報(明細書の第26段落および第42段落)
【特許文献3】特開平7−232647号公報(明細書の第29段落)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、フォークリフト等の荷役車両では、片手でハンドル(ステアリングホイール)操作ができるように、ハンドルにノブが設けられている。すなわち、運転者は、右手で荷役作業のためのレバー操作をしながら、左手でノブを把持してハンドル操作を行う。
ところで、片手でノブを用いてハンドル操作を行う場合、ノブがハンドルのどの回転位置にあるかで、運転者にとってノブへの力の掛け具合が変わってくる。すなわち、ハンドルにおけるノブの位置に応じて、運転者がノブに対して力を掛け易い場合と掛け難い場合とがあり、運転者の作業負担が大きくなっていた。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、操舵操作に関して作業者の負担を軽減することができる車両用操舵装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は、操舵部材(10)のホイール(61)に取り付けられ、操舵部材を回転操作するためのノブ(63)と、上記ノブの位置を検出するノブ位置検出手段(14)と、上記ノブ位置検出手段により検出されたノブの位置に応じて、操舵部材への操舵反力を制御する反力制御、または転舵機構(A2)への操舵補助力を制御する操舵補助制御を実行する制御手段(11)とを備えたことを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、ノブの位置に応じて操舵反力または操舵補助力を変更することにより、ノブを把持して操舵部材を操作するときの運転者の作業負担を格段に軽減することができる。
ところで、ノブが操舵部材の上部または下部に変位しているときは、ノブが操舵部材の左部または右部に変位しているときと比較して、運転者がノブに力を掛け難い傾向にある。
【0009】
そこで、上記操舵部材と転舵輪(6)との間の機械的な連結が断たれており、操舵部材に操舵反力を付与するための反力アクチュエータ(13)を備え、上記制御手段は、運転者から上記ホイールの中心軸線(C2)に沿って操舵部材を見たときに、ノブが操舵部材の上部または下部に変位している場合の操舵反力を、ノブが操舵部材の左部または右部に変位している場合の操舵反力よりも小さくするように、上記反力アクチュエータを反力制御することが好ましい(請求項2)。この場合、ノブが操舵部材の上部または下部に変位している場合の操舵反力を、ノブが操舵部材の左部または右部に変位している場合の操舵反力よりも小さくすることにより、運転者の負担を実質的に軽減する。これにより、運転者は、ノブの位置に拘らず、略一定の操作力でノブを介して操舵部材を操作することが可能となる。
【0010】
また、上記操舵部材と転舵輪とが機械的に連結されており、操舵補助力を発生する操舵補助力アクチュエータを備え、上記制御手段は、運転者から上記ホイールの中心軸線に沿って操舵部材を見たときに、ノブが操舵部材の上部または下部に変位している場合の操舵補助力を、ノブが操舵部材の左部または右部に変位している場合の操舵補助力よりも大きくするように、操舵補助力アクチュエータを操舵補助制御することが好ましい(請求項3)。この場合、ノブが操舵部材の上部または下部に変位している場合の操舵補助力を、ノブが操舵部材の左部または右部に変位している場合の操舵補助力よりも大きくすることにより、運転者の負担を実質的に軽減する。これにより、運転者は、ノブの位置に拘らず、略一定の操作力でノブを介して操舵部材を操作することが可能となる。
【0011】
また、上記ノブが把持されたことを検出する把持検出手段(65;65A;65B;65C)を備え、上記制御手段による反力制御または操舵補助制御は、上記把持検出手段によって上記ノブの把持が検出されることを条件として行われる場合がある(請求項4)。運転者が操舵部材を操作するときに、ノブを把持せずホイールを把持して操作する場合があり、そのような場合には、本発明による反力制御(または操舵補助力制御)は不要である。そこで、ノブの把持が検出されることを反力制御(または操舵補助力制御)の実行の条件とし、操舵部材の実際の操作態様に応じた反力制御(または操舵補助制御)を行うことができるようにした。
【0012】
なお、上記において、括弧内の英数字は、後述する実施形態における対応構成要素の参照符号を表すものであるが、これらの参照符号により特許請求の範囲を限定する趣旨ではない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施の形態の車両用操舵装置を含む荷役車両としてのフォークリフトの概略構成を示す模式的側面図である。
【図2】フォークを昇降させる動作原理を説明するための概略図である。
【図3】操舵部材の概略正面図であり、操舵部材のホイールの中心軸線に沿って操舵部材を見た図である。
【図4】操舵部材の要部の概略側面図である。
【図5】フォークリフトの電気的構成を示すブロック図である。
【図6】ノブが把持されて操舵部材が操作されるときの制御マップ(操舵角−操舵反力マップ)として用いる把持時マップを示すグラフである。
【図7】操舵部材の正面図である。(a)は、操舵部材を正面から見たときに(操舵部材のホイールの中心軸線に沿って見たときに)、ノブが操舵部材の上部に変位している状態を示し、(b)はノブが操舵部材の右部に変位している状態を示し、(c)は、ノブが操舵部材の下部に変位している状態を示し、(d)はノブが操舵部材の左部に変位している状態を示している。
【図8】ECUによる主たる制御の流れを示すフローチャートである。
【図9】(a)は本発明の別の実施の形態の車両用操舵装置の概略構成を示す模式的側面図であり、(b)は模式的平面図である。
【図10】図9の実施の形態において、電気的構成を示すブロック図である。
【図11】図9の実施の形態において、ECUによる主たる制御の流れを示すフローチャートである。
【図12】図9の実施の形態において、ノブが把持されて操舵部材が操作されるときの制御マップ(操舵角−操舵補助力マップ)として用いる把持時マップを示すグラフである。
【図13】把持検出手段としてのグリップセンサの変更例を示す概略図であり、(a)はグリップセンサとして歪みセンサを用いた例を示し、(b)はグリップセンサとして圧力センサを用いた例を示し、(c)はグリップセンサとして押しボタンスイッチを用いた例を示している。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の好ましい実施の形態の添付図面を参照しつつ説明する。
図1は本発明の一実施の形態の荷役車両としてのフォークリフトの概略構成を示す模式的側面図である。図1を参照して、フォークリフト1は、車体2と、その車体2の前部に設けられた荷役装置3と、車体2の後部に設けられたカウンタウェイト4と、車体2を支持する駆動輪としての前輪5および転舵輪としての後輪6と、例えばエンジンを含む車両の駆動源7と、油圧源としての油圧ポンプ8と、後輪6を転舵するための車両用操舵装置9とを備えている。
【0015】
車両用操舵装置9は、ノブ付きの手回しハンドルである操舵部材10と転舵輪である後輪6との間の機械的な連結が断たれた、いわゆるステアバイワイヤ式の車両用操舵装置として構成されている。転舵輪として、単一の後輪6を車体2の左右方向の中央に設けてもよいし、車体2の左右にそれぞれ後輪6を設けてもよい。
車両用操舵装置9は、上記操舵部材10と、操舵部材10の操作に応じて転舵輪としての後輪6を転舵するための例えば電動モータからなり、制御手段としてのECU11(電子制御ユニット)によって駆動制御される転舵アクチュエータ12と、操舵部材10に操舵反力を付与する例えば電動モータからなり、ECU11によって駆動制御される反力アクチュエータ13とを備えている。また、車両用操舵装置9は、操舵部材10の操舵角を検出する操舵角センサ14と、後輪6の転舵角を検出する転舵角センサ15とを備えている。
【0016】
転舵輪としての後輪6は、ほぼ鉛直な支持部材16によって回転可能に支持されている。その支持部材16は、車体2に保持された軸受17を介して、ほぼ鉛直な回転軸線C1の回りに回転可能に支持されている。
転舵アクチュエータ12の出力軸の回転は、伝達機構18を介して減速されて、支持部材16に伝達される。その伝達機構18は、転舵アクチュエータ12の出力軸とは同行回転する例えば駆動ギヤからなる駆動部材19と、回転軸線C1の回りに支持部材16とは同行回転可能に設けられ、上記駆動ギヤに噛み合う例えば従動ギヤからなる従動部材20とを有している。伝達機構18および転舵アクチュエータ12によって、転舵機構A1が構成されている。
【0017】
図示していないが、エンジン等の駆動源7の動力は、トルクコンバータを経て、前後進切替および変速動作を行うトランスミッションに伝達され、さらに、デファレンシャルを経て左右の前輪5(駆動輪)に伝達されるようになっている。トランスミッションには、前進クラッチおよび後進クラッチが内蔵されている。
フォークリフト1は、運転座席21を含む運転室22を備えている。運転室22は、車体2上にフレーム23によって取り囲まれた状態で形成されている。
【0018】
荷役装置3は、車体2によって、下端部24aを中心として傾動可能に支持された左右一対のアウターマスト24と、そのアウターマスト24によって昇降可能に支持されたインナーマスト25と、アウターマスト24によって昇降可能に支持されたリフトブラケット26と、そのリフトブラケット26に取り付けられ、荷物を積載する積載部としての左右一対のフォーク27とを備えている。
【0019】
アウターマスト24の所定部と車体2の所定部との間に、チルトシリンダ28が介在している。チルトシリンダ28は、車体2の所定部に揺動可能に連結された一端を有するシリンダ本体29と、シリンダ本体29の他端から突出するロッド30とを有している。ロッド30の先端は、アウターマスト24の所定部に揺動可能に連結されている。チルトシリンダ28のロッド30の伸縮動作に伴って、アウターマスト24が、直立姿勢および傾動姿勢に変位されるようになっている。
【0020】
また、アウターマスト24をガイドとしてインナーマスト25を昇降させるためのリフトシリンダ31が設けられている。リフトシリンダ31は、アウターマスト24に固定されたシリンダ本体32と、シリンダ本体32から突出するロッド33とを有している。ロッド33の先端は、インナーマスト25の所定部に設けられた取付部25aに固定されている。
【0021】
リフトシリンダ31のシリンダ本体32の下部には、荷役装置3の積載荷重を検出するための荷重検出手段としての荷重センサ34が取り付けられている。荷重センサ34からの信号は、ECU11に入力されるようになっている。
運転室22の前部において、運転室22の底面22a上には、操作スタンド35が設けられており、運転室22の後部には、上記運転座席21が固定されている。
【0022】
上記操作スタンド35には、運転者が手で操作するための複数の操作要素として、上記操舵部材10と、フォーク27を昇降させるための昇降操作レバー36と、アウターマスト24を揺動させるためチルト操作レバー37と、前進/後進切替レバー38とが設けられている。また、操作スタンド35には、主に後方を確認するための確認ミラー39が固定されている。また、操作スタンド35には、図示しない各種のスイッチ類が設けられている。
【0023】
また、操作スタンド35の基部近傍において、運転室22の底面22a上には、運転者が足で操作するための複数の操作要素として、アクセルペダル40、ブレーキペダル41、クラッチペダル42が設けられている。アクセルペダル40、ブレーキペダル41およびクラッチペダル42は、実際には紙面に垂直な方向(車両の左右方向に相当)に横並びで並べて配置されているが、図1では、模式的に示してある。また、図1では、操作要素としての昇降操作レバー36、チルト操作レバー37、前進/後進切替レバー38のレイアウトについても、模式的に示してある。
【0024】
フォーク27を昇降させる動作の原理を概念的に示す図2を参照して、インナーマスト25の上部には、スプロケット43が回転可能に支持されており、そのスプロケット43には、チェーン44が巻き掛けられている。そのチェーン44の一端44aが、アウターマスト24に設けられた固定部24bに固定され、チェーン44の他端44bが、リフトブラケット26に固定されている。これにより、リフトブラケット26およびフォーク27が、チェーン44を用いて懸架されている。
【0025】
リフトシリンダ31のロッド33の伸長に伴って、インナーマスト25が上昇すると、スプロケット43がアウターマスト24の固定部24bに対して上昇し、チェーン44を介して、リフトブラケット26および積載部としてのフォーク27を上昇させる。地表面48に対するフォーク27の上昇量は、リフトシリンダ31のロッド33の伸長量の2倍となる。
【0026】
積載部としてのフォーク27の高さを検出する積載部高さ検出手段としてのストロークセンサ45が設けられており、ストロークセンサ45からの信号は、ECU11に入力されるようになっている。ストロークセンサ45としてロータリエンコーダを用いるようにしてもよい。
具体的には、チェーン44の他端44bに一端が係止されたワイヤ46が、アウターマスト24に回転可能に支持されたワイヤドラム47に巻き取られており、フォーク27とともにチェーン44の他端44bが昇降すると、ワイヤ46がワイヤドラム47から巻き出されたり、巻き戻されたりする。このとき、ECU11は、ワイヤドラム47の回転数をストロークセンサ45としてのロータリエンコーダで検出し、その検出値に基づいてワイヤ46のワイヤドラム47からの巻き出し量を算出し、その算出値に基づいて、地表面48からのフォーク10の高さである積載部高さHを検出する。
【0027】
図3は、操舵部材10の正面図であり、図4は操舵部材10の要部の概略側面図である。図3および図4を参照して、操舵部材10は、傾斜状のステアリングシャフト60の上端に同伴回転可能に連結されている。操舵部材10は、ホイール61と、ホイール61をステアリングシャフト60の上端に連結する複数のスポーク62とを有している。
また、ホイール61には、操舵部材10が操舵中立位置にあるときに、操舵部材10の左部に位置するノブ63が取り付けられている。通例、運転者は、ノブ63を握って、操舵部材10を回転操作するようになっている。ノブ63は、操舵部材10の中心軸線C2(ステアリングシャフト60の中心軸線に一致)に平行に延びるアーム64の先端に連結されており、卵形形状の中空のブロックに形成されている。
【0028】
ノブ63の内部には、運転者がノブ63を把持したことを検出する把持検出手段として、静電センサからなるグリップセンサ65が配置されている。運転者がノブ63を把持すると、静電容量の変化に基づいてグリップセンサ65がECU11へ信号を出力するようになっている。
図5はフォークリフト1の主たる電気的構成を示すブロック図である。図5を参照して、ECU11には、操舵部材10の操舵角θH を検出するための操舵角センサ14、転舵輪としての後輪6の転舵角θW を検出するための転舵角センサ15、車速Vを検出するための車速センサ49、積載部としてのフォーク27の積載荷重Wを検出するための荷重検出手段としての荷重センサ34、積載部としてのフォーク27の高さである積載部高さHを検出するための積載部高さ検出手段としてのストロークセンサ45、昇降操作レバー36の位置を検出するための昇降操作レバー位置センサ50、チルト操作レバー37の位置を検出するためのチルト操作レバー位置センサ51、前進/後進切替レバー38の切替に応じて作動する前進/後進切替スイッチ52、およびグリップセンサ65のそれぞれから信号が入力されるようになっている。操舵角センサ14は、操舵部材10のノブ63の位置を検出するノブ位置検出手段としても機能する。
【0029】
また、ECU11から、転舵アクチュエータ12、反力アクチュエータ13、油圧ポンプ8からリフトシリンダ31への作動油の供給を制御する電磁式の比例制御弁からなる昇降用制御弁53、油圧ポンプ8からチルトシリンダ28への作動油の供給を制御する電磁式の比例制御弁からなるチルト用制御弁54、前進クラッチを係合/離脱させるための油圧シリンダに作動油の供給を制御する電磁式比例制御弁からなる前進クラッチ用制御弁55、および後進クラッチを係合/離脱させるための油圧シリンダに作動油の供給を制御する電磁式比例制御弁からなる後進クラッチ用制御弁56のそれぞれに信号が出力されるようになっている。
【0030】
ECU11は種々の制御を実行する。例えば、ECU11は、ノブ63の位置に応じた操舵反力を操舵部材10に与えるためのトルクを反力アクチュエータ13によって発生させるべく、操舵角センサ14から入力された操舵角θH に基づいて、反力アクチュエータ13を駆動制御する(すなわち反力制御を実施する)。
具体的には、ECU11は、所定の操舵角−操舵反力マップ(図示せず)をノブ63が把持されない非把持時マップ(図示せず)として記憶しているとともに、図6に示す操舵角−操舵反力マップをノブ63が把持されたときに対応する把持時マップとして記憶している。
【0031】
ECU11は、ノブ63が把持されていることがグリップセンサ65により検出されたときは、図6の把持時マップを用いて、入力された操舵角θH に応じた操舵反力TH を求め、求められた操舵反力TH を目標操舵反力TH * に決定する。操舵部材10が例えば左右それぞれ2回転する場合、図6に示す把持時マップ(操舵角−操舵反力マップ)では、操舵角θH が90°および270°で操舵反力TH が相対的に小さく、操舵角θH が180°および360°で操舵反力TH が相対的に大きくなるように設定されている。
【0032】
すなわち、図7に示すように、運転者から、ホイール61の中心軸線C2に沿って操舵部材10を見たときに、ノブ63が操舵部材10の上部〔図7(a)参照。操舵角θH が90°に相当〕または下部〔図7(c)参照。操舵角θH が270°に相当〕に変位している場合の操舵反力TH を、ノブ63が操舵部材10の右部〔図7(b)参照。操舵角θH が180°に相当〕または左部〔図7(d)参照。操舵角θH が360°に相当〕に変位している場合の操舵反力TH よりも小さくされている。
【0033】
また、ECU11は、昇降操作レバー位置センサ50から入力された昇降操作レバー36の位置に応じて、油圧ポンプ8からリフトシリンダ31への作動油の供給を制御する昇降用制御弁53に制御信号を出力する。
また、ECU11は、チルト操作レバー位置センサ51から入力されたチルト操作レバー37の位置に応じて、油圧ポンプ8からチルトシリンダ28への作動油の供給を制御するチルト用制御弁54に制御信号を出力する。
【0034】
また、ECU11は、前進/後進切替スイッチ52が前進へ切り替えられることに応じて前進クラッチ用制御弁55に制御信号を出力し、前進クラッチを作動させるための油圧シリンダに、油圧ポンプ8からの作動油が供給されるようにする。
また、ECU11は、前進/後進切替スイッチ52が後進へ切り替えられることに応じて後進クラッチ用制御弁56に制御信号を出力し、後進クラッチを作動させるための油圧シリンダに、油圧ポンプ8からの作動油が供給されるようにする。
【0035】
図8はECU11の主たる動作を示すフローチャートである。図8を参照して、ECU11は、まず、グリップセンサ65からの信号の入力があるか否かを検出し(ステップS1)、グリップセンサ65からの信号の入力がある場合(ステップS1にてYESの場合)には、図6に示す把持時マップを選択(ステップS2)した後、ステップS4に移行する。一方、グリップセンサ65からの信号の入力がない場合(ステップS1にてNOの場合)には、非把持時マップを選択(ステップS3)した後、ステップS4に移行する。
【0036】
次いで、ステップS4において、操舵角センサ14からの信号に基づいて得られた操舵角θH を読み込み、ステップS5において、上記読み込まれた操舵角θH に基づく操舵反力TH を、上記選択された把持時マップ(図6参照)または非把持時マップを用いて求め、求められた操舵反力TH を目標操舵反力TH * に決定する。
次いで、ステップS6では、決定された目標操舵反力TH * に基づいて、反力アクチュエータ13を駆動制御する(すなわち反力制御を実行する)。
【0037】
本実施の形態によれば、操舵部材10の回転操作するときのノブ63の位置に応じて操舵反力TH を変更することにより、ノブ63を把持して操舵部材10を操作するときの運転者の作業負担を格段に軽減することができる。
また、ノブ63が図7(a)および(c)に示すように操舵部材10の上部または下部に変位しているときは、ノブ63が図7(d)および(b)に示すように操舵部材10の左部または右部に変位しているときと比較して、運転者がノブ63に力を掛け難い傾向にあるという事情に鑑み、ノブ63が操舵部材の上部または下部に変位している場合の操舵反力TH を、ノブ63が操舵部材10の左部または右部に変位している場合の操舵反力TH よりも小さくするようにした。これにより、運転者の負担を実質的に軽減する。これにより、運転者は、ノブ63の位置に拘らず、略一定の操作力でノブ63を介して操舵部材10を操作することが可能となる。
【0038】
さらに、運転者が操舵部材10を操作するときに、ノブ63を把持せずにホイール61を把持して操作する場合があり、そのような場合には、ノブ63の位置に応じて操舵反力TH を変更する制御は不要である。そこで、ノブ63の把持が検出されない場合には、通常のマップ(非把持時マップ)を用いて、反力制御を行うようにした。これにより、操舵部材10の実際の操作態様に応じた制御を行うことができる。
【0039】
なお、上記把持時マップを操舵速度θH ’および車速Vの少なくとも一方に基づいて補正するようにしてもよい。具体的には、操舵角センサ14から取得した操舵角θH を微分して得られた操舵速度(操舵角速度)θH ’が大きいほど、また、車速センサ49から取得した車速Vが小さいほど、操舵反力TH が小さくなるように、把持時マップを補正する場合がある。この場合、操舵部材10の操作性を向上することができる。
【0040】
逆に、操舵角センサ14から取得した操舵角θH を微分して得られた操舵速度(操舵角速度)θH ’が大きいほど、また、車速センサ49から取得した車速Vが大きいほど、操舵反力TH が大きくなるように、把持時マップを補正する場合がある。この場合、フォークリフト1の走行の安全性を向上することができる。
図1〜図8の実施の形態では、操舵部材10と転舵輪としての後輪6との間の機械的な連結が断たれた、いわゆるステアバイワイヤ式の車両用操舵装置9において、ノブ63の位置に応じて操舵反力TH を変更する例を示したが、これに限らず、本発明を、図9〜図12に示すように、操舵部材10と転舵輪としての後輪6とが機械的または油圧的に連結された車両用操舵装置9Aに適用し、ノブ63の位置に応じて操舵補助力TA の大きさを変更するようにしてもよい。
【0041】
図9(a)および(b)を参照して、ステアリングシャフト60は自在継手66を介して支軸67に接続されている。その支軸67の下端に支軸67と同伴回転する第1ギヤ68が取り付けられている。その第1ギヤ68が第2ギヤ69に噛み合わされており、その第2ギヤ69の同軸上に、第2ギヤ69とは同伴回転する動プーリ70が設けられている。
【0042】
一方、後輪6の支持部材16とは同伴回転可能な従動プーリ71が設けられており、駆動プーリ70と従動プーリ71とは、伝動部材としての無端状のベルト72を介して、動力伝達可能に連結されている。他方、例えば電動モータからなる操舵補助力アクチュエータ73が設けられており、その操舵補助力アクチュエータ73の回転軸74によって駆動される第3ギヤ75が、上記の第2ギヤ69に噛み合わされている。
【0043】
第1ギヤ68および第2ギヤ69を含むギヤ機構、並びに、駆動プーリ70、ベルト72および従動プーリ71を含むベルトプーリ機構によって、転舵機構A2が構成されている。
操舵補助力アクチュエータ73のトルク(操舵補助力TA )が第3ギヤ75を介して転舵機構A2の第2ギヤ69に与えられ、転舵輪としての後輪6の操舵(転舵)を補助するようになっている。
【0044】
図10に示すように、ECU11からの信号が操舵補助力アクチュエータ73に与えられ、操舵補助力アクチュエータ73の動作が制御される。なお、図9および図10に示す構成要素において、図1および図5の実施の形態と同じ構成要素には、同一の符号を付してある。
図11はECU11の主たる動作を示すフローチャートである。図11を参照して、ECU11は、まず、グリップセンサ65からの信号の入力があるか否かを検出し(ステップS1)、グリップセンサ65からの信号の入力がある場合(ステップS1にてYESの場合)には、図12に示す把持時マップを選択(ステップS2)した後、ステップS4に移行する。一方、グリップセンサ65からの信号の入力がない場合(ステップS1にてNOの場合)には、非把持時マップを選択(ステップS3)した後、ステップS4に移行する。
【0045】
図12の操舵角−操舵補助力に関する把持時マップは、図6の実施の形態の操舵角−操舵反力に関する把持時マップとは逆の変化をするようになっている。すなわち、図12に示す把持時マップ(操舵角−操舵補助力マップ)では、操舵角θH が90°および270°で操舵補助力TH が相対的に大きく、操舵角θH が180°および360°で操舵補助力TH が相対的に小さくなるように設定されている。
【0046】
次いで、ステップS4では、操舵角センサ14からの信号に基づいて得られた操舵角θH を読み込み、ステップS5において、上記選択された把持時マップ(図12参照)または非把持時マップを用いて、上記読み込まれた操舵角θH に応じた操舵補助力TA を求め、求められた操舵補助力TA を目標操舵補助力TA * に決定する(ステップS5)。
次いで、ステップS6では、決定された目標操舵補助力TA * に基づいて、操舵補助力アクチュエータ73を駆動制御する(すなわち操舵補助制御を実行する)。
【0047】
本実施の形態によれば、操舵部材10の回転操作するときのノブ63の位置に応じて操舵補助力TH を変更することにより、ノブ63を把持して操舵部材10を操作するときの運転者の作業負担を格段に軽減することができる。
具体的には、ノブ63が操舵部材の上部または下部に変位している場合の操舵補助力TA を、ノブ63が操舵部材10の左部または右部に変位している場合の操舵補助力TA よりも大きくするようにした。これにより、運転者の負担を実質的に軽減することができる。これにより、運転者は、ノブ63の位置に拘らず、略一定の操作力でノブ63を介して操舵部材10を操作することが可能となる。
【0048】
さらに、運転者が操舵部材10を操作するときに、ノブ63を把持せずにホイール10を把持して操作する場合があり、そのような場合には、ノブ63の位置に応じて操舵補助力TH を変更する制御は不要である。そこで、ノブ63の把持が検出されない場合には、通常のマップ(非把持時マップ)を用いて、操舵補助制御を行うようにした。これにより、操舵部材10の実際の操作態様に応じた制御を行うことができる。
【0049】
なお、本実施の形態において、上記把持時マップを操舵速度θH ’および車速Vの少なくとも一方に基づいて補正するようにしてもよい。具体的には、操舵角センサ14から取得した操舵角θH を微分して得られた操舵速度(操舵角速度)θH ’が大きいほど、また、車速センサ49から取得した車速Vが小さいほど、操舵補助力TA が大きくなるように把持時マップを補正する場合がある。この場合、操舵部材10の操作性を向上することができる。
【0050】
逆に、操舵角センサ14から取得した操舵角θH を微分して得られた操舵速度(操舵角速度)θH ’が大きいほど、また、車速センサ49から取得した車速Vが大きいほど、操舵補助力TA を小さくなるように、把持時マップを補正する場合がある。この場合、フォークリフト1の走行の安全性を向上することができる。
なお、本発明は上記各実施の形態に限定されるものではなく、例えば把持検出手段として、図13(a)に示すようにアーム64の曲げを検出する歪みセンサからなるグリップセンサ65Aや、図13(b)に示すようにノブ63の表面に負荷される押圧力を検出する圧力センサからなるグリップセンサ65Bや、図13(c)に示すような押しボタンスイッチからなるグリップセンサ65Cを用いるようにしてもよい。また、これらのタイプの異なるグリップセンサ65,65A,65B,65Cを2つ以上組み合わせて用いるようにしてもよい。
【0051】
また、上記各実施の形態では、車両が荷役車両としてのフォークリフトである例に則して説明したが、本発明はこれに限られるものではなく、ノブ付きのハンドルを有する車両であれば、本発明に係る制御を適用可能である。その他、本発明の特許請求の範囲で種々の変更を施すことができる。
【符号の説明】
【0052】
1…フォークリフト(荷役車両)、2…車体、3…荷役装置、6…後輪(転舵輪)、9,9A…車両用操舵装置、10…操舵部材、11…ECU(制御手段)、12…転舵アクチュエータ、13…反力アクチュエータ、14…操舵角センサ(操舵角検出手段。ノブ位置検出手段)、61…ホイール、62…スポーク、63…ノブ、64…アーム、65,65A,65B,65C…グリップセンサ(把持検出手段)、73…操舵補助力アクチュエータ、A1,A2…転舵機構、C2…(ホイールの)中心軸線、θH …操舵角、TH …操舵反力、TH * …目標操舵反力、TA …操舵補助力、TA * …目標操舵補助力
【特許請求の範囲】
【請求項1】
操舵部材のホイールに取り付けられ、操舵部材を回転操作するためのノブと、
上記ノブの位置を検出するノブ位置検出手段と、
上記ノブ位置検出手段により検出されたノブの位置に応じて、操舵部材への操舵反力を制御する反力制御、または転舵機構への操舵補助力を制御する操舵補助制御を実行する制御手段とを備えたことを特徴とする車両用操舵装置。
【請求項2】
請求項1において、上記操舵部材と転舵輪との間の機械的な連結が断たれており、
操舵部材に操舵反力を付与するための反力アクチュエータを備え、
上記制御手段は、運転者から上記ホイールの中心軸線に沿って操舵部材を見たときに、ノブが操舵部材の上部または下部に変位している場合の操舵反力を、ノブが操舵部材の左部または右部に変位している場合の操舵反力よりも小さくするように、上記反力アクチュエータを反力制御することを特徴とする車両用操舵装置。
【請求項3】
請求項1において、上記操舵部材と転舵輪とが機械的に連結されており、
操舵補助力を発生する操舵補助力アクチュエータを備え、
上記制御手段は、運転者から上記ホイールの中心軸線に沿って操舵部材を見たときに、ノブが操舵部材の上部または下部に変位している場合の操舵補助力を、ノブが操舵部材の左部または右部に変位している場合の操舵補助力よりも大きくするように、操舵補助力アクチュエータを操舵補助制御することを特徴とする車両用操舵装置。
【請求項4】
請求項1から3の何れか1項において、上記ノブが把持されたことを検出する把持検出手段を備え、
上記制御手段による反力制御または操舵補助制御は、上記把持検出手段によって上記ノブの把持が検出されることを条件として行われることを特徴とする車両用操舵装置。
【請求項1】
操舵部材のホイールに取り付けられ、操舵部材を回転操作するためのノブと、
上記ノブの位置を検出するノブ位置検出手段と、
上記ノブ位置検出手段により検出されたノブの位置に応じて、操舵部材への操舵反力を制御する反力制御、または転舵機構への操舵補助力を制御する操舵補助制御を実行する制御手段とを備えたことを特徴とする車両用操舵装置。
【請求項2】
請求項1において、上記操舵部材と転舵輪との間の機械的な連結が断たれており、
操舵部材に操舵反力を付与するための反力アクチュエータを備え、
上記制御手段は、運転者から上記ホイールの中心軸線に沿って操舵部材を見たときに、ノブが操舵部材の上部または下部に変位している場合の操舵反力を、ノブが操舵部材の左部または右部に変位している場合の操舵反力よりも小さくするように、上記反力アクチュエータを反力制御することを特徴とする車両用操舵装置。
【請求項3】
請求項1において、上記操舵部材と転舵輪とが機械的に連結されており、
操舵補助力を発生する操舵補助力アクチュエータを備え、
上記制御手段は、運転者から上記ホイールの中心軸線に沿って操舵部材を見たときに、ノブが操舵部材の上部または下部に変位している場合の操舵補助力を、ノブが操舵部材の左部または右部に変位している場合の操舵補助力よりも大きくするように、操舵補助力アクチュエータを操舵補助制御することを特徴とする車両用操舵装置。
【請求項4】
請求項1から3の何れか1項において、上記ノブが把持されたことを検出する把持検出手段を備え、
上記制御手段による反力制御または操舵補助制御は、上記把持検出手段によって上記ノブの把持が検出されることを条件として行われることを特徴とする車両用操舵装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2010−235026(P2010−235026A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−86980(P2009−86980)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】
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