説明

電池室、その電池室を備える電子機器および撮像装置

【課題】外形形状の差異に拘らず、高さ寸法の異なる複数の種類の電池を装填することのできる電池室を提供する。
【解決手段】電池装填口12aと電池接片35と挿入された電池11において蓋部材(15)に対向する後端面(11d)に係合可能な係止爪(22)と、を備える電池室10である。奥壁(32)を挿入方向に沿って移動可能に保持し、かつ係止爪を電池11の後端面に係合する係合位置と係止爪が電池の後端面に係合しない退避位置との間で移動可能に保持する爪機構を備え、爪機構は、電池11を挿入した際の奥壁の移動に伴って、係合位置とした際の係止爪から奥壁までの間隔が、電池11の挿入方向で見た高さ寸法となると、係止爪(22)を退避位置から係合位置へと移動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異なる種類の電池を装填可能な電池室に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、電子機器では、電力の供給源としての電池の装填のための電池室を備えているものがある。この電池室では、使い勝手を向上させるために、異なる種類の電池を装填可能な構成とすることが望ましい。
【0003】
ここで、電池の種類が異なると、高さ寸法に差異がある場合があることから、電池の種類に応じて一方の端子の高さ位置を変化させる構成の電池室が考えられている(例えば、特許文献1参照)。この電池室では、高さ寸法以外の外形形状の差異を利用して一方の端子の高さ位置を変化させることにより、高さ寸法の異なる2種類の電池の装填を可能としている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した従来の電池室では、高さ寸法以外の外形形状の差異を利用して一方の端子の高さ位置を変化させているので、高さ寸法以外の外形形状に差異がない複数の種類の電池には対応することができない。
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑みて為されたもので、外形形状の差異に拘らず、高さ寸法の異なる複数の種類の電池を装填することのできる電池室を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の電池室は、電池の挿入のための電池装填口と、該電池装填口からの前記電池の挿入方向の奥側に位置する奥壁または前記電池装填口を塞ぐべく開閉可能に設けられた蓋部材の少なくとも一方に設けられ電気的な端子を形成する電池接片と、前記蓋部材に対向する挿入された前記電池の後端面に係合可能な係止爪と、を備える電池室であって、前記奥壁を前記挿入方向に沿って移動可能に保持し、かつ前記係止爪を前記電池の後端面に係合する係合位置と前記係止爪が前記電池の後端面に係合しない退避位置との間で移動可能に保持する爪機構を備え、該爪機構は、前記電池を挿入した際の前記奥壁の移動に伴って、前記係合位置とした際の前記係止爪から前記奥壁までの間隔が、前記電池の挿入方向で見た高さ寸法となると、前記係止爪を前記退避位置から前記係合位置へと移動させることを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の電池室は、請求項1に記載の電池室であって、前記爪機構は、前記電池室の外方で前記電池の挿入方向に延在しつつ延在方向に直交する軸線回りに回動可能に支持された長尺部材からなり、一端に前記係止爪を有しかつ他端部に長尺方向に並列して複数の係合溝部を有する固定レバーと、前記奥壁の移動と共に前記固定レバーにおいて前記各係合溝部が設けられた面と対向しつつ前記電池の挿入方向に移動する係合突起と、を有し、該係合突起は、前記挿入方向での移動に伴って、前記係止爪を前記係合位置とする係止姿勢である前記固定レバーにおける前記各係合溝部が設けられた面に対して、干渉可能であるとともに前記各係合溝部への係合が可能な大きさ寸法とされ、該各係合溝部は、前記係合位置とした際の前記係止爪から前記奥壁までの間隔を、前記各電池の挿入方向で見た高さ寸法とする、前記奥壁の位置に対応する前記挿入方向での位置にある前記係合突起の係合を可能とするように、前記固定レバー上での長尺方向で見た位置が設定されていることを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の電池室は、請求項1または請求項2に記載の電池室であって、前記爪機構は、前記奥壁を前記電池装填口側へ向けて付勢していることを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の電池室は、請求項3に記載の電池室であって、前記各係合溝部は、前記一端側に前記奥壁への付勢により前記電池装填口側へ移動する前記係合突起と係合可能な係合面を有し、前記各係合溝部のうち少なくとも最も前記他端側に位置する前記係合溝部を除く前記各係合溝部は、前記他端側に前記奥壁への付勢に抗して前記電池装填口とは反対側へ移動する前記係合突起との摺動を可能とする傾斜面を有することを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載の電池室は、請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の電池室であって、さらに、前記電池を前記電池接片に適合する位置へと移動させるべく、前記電池の挿入方向に直交する方向へ向けて前記電池を押圧する押圧板を備えることを特徴とする。
【0011】
請求項6に記載の電子機器は、請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の電池室を備えることを特徴とする。
【0012】
請求項7に記載の撮像装置は、請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の電池室を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載の電池室では、奥壁の高さ位置(電池装填口から見た深さ位置)に応じて、適宜係止爪が退避位置から係止位置へと移動することから、外形形状に拘らず高さ寸法の差異のみで電池室の深さ寸法を変化させることができる。
【0014】
上記した構成に加えて、
前記爪機構は、前記電池室の外方で前記電池の挿入方向に延在しつつ延在方向に直交する軸線回りに回動可能に支持された長尺部材からなり、一端に前記係止爪を有しかつ他端部に長尺方向に並列して複数の係合溝部を有する固定レバーと、前記奥壁の移動と共に前記固定レバーにおいて前記各係合溝部が設けられた面と対向しつつ前記電池の挿入方向に移動する係合突起と、を有し、該係合突起は、前記挿入方向での移動に伴って、前記係止爪を前記係合位置とする係止姿勢である前記固定レバーにおける前記各係合溝部が設けられた面に対して、干渉可能であるとともに前記各係合溝部への係合が可能な大きさ寸法とされ、該各係合溝部は、前記係合位置とした際の前記係止爪から前記奥壁までの間隔を、前記各電池の挿入方向で見た高さ寸法とする、前記奥壁の位置に対応する前記挿入方向での位置にある前記係合突起の係合を可能とするように、前記固定レバー上での長尺方向で見た位置が設定されていることとすると、簡単な構成で爪機構を形成することができ、かつ係合溝部の設定位置を調節するだけで任意の高さ寸法の電池を装填対象とすることができ、さらに係合溝部の数を調節するだけで装填対象とする電池の数を設定することができる。
【0015】
上記した構成に加えて、前記爪機構は、前記奥壁を前記電池装填口側へ向けて付勢していることとすると、奥壁を、深さ寸法の設定のための移動機構として機能させるとともに、装填された電池の取出機構として機能させることができる。
【0016】
上記した構成に加えて、前記各係合溝部は、前記一端側に前記奥壁への付勢により前記電池装填口側へ移動する前記係合突起と係合可能な係合面を有し、前記各係合溝部のうち少なくとも最も前記他端側に位置する前記係合溝部を除く前記各係合溝部は、前記他端側に前記奥壁への付勢に抗して前記電池装填口とは反対側へ移動する前記係合突起との摺動を可能とする傾斜面を有することとすると、装填対象である電池の各々の高さ寸法に適合された電池室の深さ寸法を、奥壁への付勢力により維持することができる。また、装填対象である電池のうち、背の高い方の電池が電池装填口から挿入された際の、係合突起の移動すなわち奥壁の移動を円滑なものとすることができる。
【0017】
上記した構成に加えて、さらに、前記電池を前記電池接片に適合する位置へと移動させるべく、前記電池の挿入方向に直交する方向へ向けて前記電池を押圧する押圧板を備えることとすると、押圧板により寄せられた方向を基準として、高さ方向に直交する面で見た電池接片と電池の出力端子との設定位置が等しいものであれば、高さ方向に直交する方向の大きさ寸法の異なる電池も装填対象とすることができる。
【0018】
上記した構成の電池室を備える電子機器または撮像装置では、様々な種類の電池を利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る電池室10を備える撮像装置(電子機器)の一例としてのデジタルカメラ1を示す正面図である。
【図2】電池室10の構成を示す模式的な斜視図である。
【図3】図2の電池室10を電池蓋15側(通常のデジタルカメラ1の使用状態における下側)からみた模式的な底面図である。
【図4】電池室10の構成を示す模式的な断面図である。
【図5】電池室10に用いられる固定レバー20の構成を説明するための説明図であり、(a)は図2と同様の斜視図で示し、(b)は図4と同様の側面図で示している。
【図6】装填対象とする2種類の電池を示す模式的な斜視図であり、(a)は背の低い電池11Aを示し、(b)は背の高い電池11Bを示している。
【図7】電池蓋15を開成状態とした様子を示す図4と同様の断面図である。
【図8】電池室10に電池11Aを装填する様子を説明するための説明図であり、(a)は、電池11Aを挿入した様子を示し、(b)は、電池11Aを押し込んでいく様子を示し、(c)は、深さ寸法が電池11Aの高さ寸法となった様子を示している。
【図9】電池室10に電池11Bを装填する様子を説明するための説明図であり、(a)は、電池11Bを挿入した様子を示し、(b)は、電池11Bを押し込んでいく様子を示し、(c)は、深さ寸法が電池11Aの高さ寸法となった様子を示し、(d)は、さらに電池11Bを押し込んでいく様子を示し、(e)は、深さ寸法が電池11Bの高さ寸法となった様子を示している。
【図10】電池室10から電池11Aを取り出す様子を説明するための説明図であり、(a)は、ロック爪22を係止位置から退避位置へと移動させる様子を示し、(b)は、横壁部32が電池取出位置となった様子を示している。
【図11】押圧板により電池が寄せられる方向に対する基準位置を説明するための図3と同様の底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本願発明に係る電池室の実施例について図1ないし図10を参照しつつ説明する。なお、図3では、バネ用突起25およびトーションバネ26は省略して示している。
【実施例】
【0021】
本発明に係る電池室10は、図1に示すように、本実施例では電子機器の一例としてのデジタルカメラ1に設けられている。このデジタルカメラ1は、カメラ本体2の前面側に撮影光学系としての撮影レンズ系3を取付けたレンズ鏡胴4が設けられており、撮影レンズ系3を経て撮像素子(図示せず)で画像を取得する。デジタルカメラ1では、電池室10に装填された電池11(図8(c)および図9(e)参照)からメイン回路基板5(図4参照)へと電力が供給されることにより、撮影動作等の実行が可能とされている。このデジタルカメラ1の構成および動作等については、本発明とは直接関係するものではないことから、詳細な説明は省略する。以下の説明では、撮影光学系(撮影レンズ系3)の光軸方向をカメラ本体2の厚さ方向またはZ軸方向とし、デジタルカメラ1の通常の使用状態での上下方向をカメラ本体2の高さ方向またはY軸方向とし、その2つに直交する方向をカメラ本体2の幅方向またはX軸方向とする。ここで、Z軸方向の正の側をカメラの正面側(前側)とし、Z軸方向の負の側をカメラの背面側(後側)とする。また、Y軸方向の正の側を上側とし、Y軸方向の負の側を下側とし、X軸方向の正の側をカメラの背面側から見た右側とし、X軸方向の負の側をカメラの背面側から見た左側とする。
【0022】
この電池室10を構成すべく、カメラ本体2には、図2ないし図4に示すように、電池室用空間12と爪機構用空間13とが設けられている。この電池室用空間12は、カメラ本体2の底面から高さ方向(Y軸方向)に延在する全体に直方体状を呈し、そのカメラ本体2の底面を開口(12a)する。電池室用空間12は、後述する可動壁30の横壁部32と協働して、実質的に電池11を装填する空間である電池室10を構成する。このため、電池室用空間12の開口は、電池室10への電池11の装填(挿入)のための電池装填口12aとなる。また、電池11の電池室10への挿入方向は、電池室10すなわち電池室用空間12の延在方向である高さ方向(Y軸方向)となる。
【0023】
爪機構用空間13は、電池室用空間12よりも狭い幅寸法でカメラ本体2の底面から高さ方向(Y軸方向)に延在する全体に直方体状を呈し、そのカメラ本体2の底面を開口(13a)する。この爪機構用空間13は、電池室10に挿入された各電池11をロック(固定)するための爪機構(後述する固定レバー20、可動壁30およびコイルバネ36)を構成するものである。このため、爪機構用空間13の開口は、後述する固定レバー20のロック爪22を露出させるための挿通口13aとなる。
【0024】
この電池室用空間12と爪機構用空間13とは、底面側から見ると区画壁14を挟んで厚さ方向(Z軸方向)で隣接しており(図3参照)、底面側から見た奥側(デジタルカメラ1の通常の使用状態で見て上側(Y軸方向正側))が連通している。
【0025】
この電池室用空間12の電池装填口12aと爪機構用空間13の挿通口13aとは、蓋部材としての電池蓋15により遮蔽可能とされている。電池蓋15は、全体に平板状を呈し、回動軸15aを介してカメラ本体2の底面に開閉自在に設けられており、図示を略すロック機構により遮蔽(閉成)状態(図4参照)の維持が可能とされている。電池蓋15には、本実施例では、後述する固定レバー20の回動によるロック爪22の移動を許容するための凹所15bが設けられている。
【0026】
電池室用空間12および爪機構用空間13には、固定レバー20と可動壁30とが設けられている。固定レバー20は、全体に長尺な板状を呈し、爪機構用空間13で幅方向(X軸方向)に延在する回動軸21により、爪機構用空間13内で回動自在に軸支されている。この固定レバー20は、図5に示すように、一端(底面側)にロック爪22を有し、他端部(奥側)に2個の係合溝部23、24を有し、回動軸21よりも一端側にバネ用突起25を有する。
【0027】
ロック爪22は、区画壁14側の面(以下、固定レバー20の前面20aという)から固定レバー20の延在方向に対して直交して延出されている。このロック爪22は、他端側(図5等で見て下側)に平坦な係止面22aを形成している。ロック爪22は、電池室10に挿入された電池11(図8(c)および図9(e)参照)が、電池装填口12aから脱落することを防止すべくすなわち挿入された電池11の装填状態を維持すべく、係止面22aを挿入された電池11の後述する下面11dに面当接させて、当該電池11を係止(ロック(固定))するものである。ロック爪22は、固定レバー20が回動軸21に軸支されて高さ方向に沿う姿勢(直立姿勢)とされた状態において、爪機構用空間13の挿通口13aから区画壁14を超えて電池室用空間12(電池装填口12a)上に、このロック爪22の先端部分(係止面22a)が位置することが可能な長さ寸法とされている。このロック爪22の先端部分(係止面22a)は、電池室用空間12(電池装填口12a)上に位置することで、挿入された電池11の後述する下面11dを係止(ロック(固定))することができる(図8(c)および図9(e)参照)。以下では、これをロック爪22の係止位置とし、そのときの固定レバー20の姿勢を係止姿勢とする。また、ロック爪22は、固定レバー20が回動軸21に軸支されて係止姿勢から一端が電池室用空間12から離間する方向へと回動された状態において、電池室用空間12(電池装填口12a)上から爪機構用空間13へ退避することが可能とされている(図7等参照)。本実施例では、ロック爪22は、爪機構用空間13へ退避することにより、電池室用空間12(電池室10)に挿入された電池11の後述する下面11dに係合しないものとされている。以下では、これをロック爪22の退避位置とし、そのときの固定レバー20の姿勢を退避姿勢とする。
【0028】
2つの係合溝部23、24は、固定レバー20の幅方向(X軸方向)に沿って当該固定レバー20の後面20bを切り欠くように、固定レバー20の延在方向(Y軸方向)に並列して設けられている。両係合溝部23、24は、回動軸21側(一端側)に固定レバー20の延在方向に直交する平坦な係合面23a、24aを形成している。また、係合溝部23では、係合溝部24側(他端側)の面が傾斜面23bとされている。この係合溝部23および係合溝部24は、後述するように、可動壁30との協働により電池室10の深さ寸法を変更することを可能とするものである。
【0029】
本実施例では、係合溝部23は、後述する電池11A(図6(a)参照)を装填対象として設けられている。この係合溝部23は、後述する可動壁30の爪壁部33の係合突起34が係合すると、後述する可動壁30の横壁部32(その電池接片35を考慮する)から固定レバー20のロック爪22の係止面22aまでの間隔を、電池11Aにおける係止面22aへの当接面(下面11d)から電池接片35への当接面(出力端子11bの当接面)までの高さ寸法に適合させるように位置設定されている。また、係合溝部24は、後述する電池11B(図6(b)参照)を装填対象として設けられている。この係合溝部24は、後述する可動壁30の爪壁部33の係合突起34が係合すると、後述する可動壁30の横壁部32(その電池接片35を考慮する)から固定レバー20のロック爪22の係止面22aまでの間隔を、電池11Bにおける係止面22aへの当接面(下面11d)から電池接片35への当接面(出力端子11bの当接面)までの高さ寸法に適合させるように位置設定されている。なお、電池接片35を考慮するとは、装填された各電池11の出力端子(図6の符号11b参照)に対して、後述する電池接片35の弾性力を利用して当該電池接片35を適切な押圧力(接触圧)で当接させることを可能とするように、横壁部32(その上面)からロック爪22(その係止面22a)までの間隔を設定することをいう。
【0030】
バネ用突起25は、固定レバー20の側面から幅方向(X軸方向)に延出された突起であり、トーションバネ26の一端26aが係合される。このトーションバネ26は、爪機構用空間13の壁面から幅方向に延在する支持軸27に巻回部26bが挿通されて爪機構用空間13内に設けられている。トーションバネ26の他端26cは、区画壁14と対向し爪機構用空間13の一面を規定する壁面13bに係合されている(図2および図4参照)。このトーションバネ26は、爪機構用空間13の壁面13bから離間する方向へとバネ用突起25を付勢する(図4および図5の矢印A1参照)。このため、固定レバー20は、回動軸21回りに、一端側が区画壁14(電池室用空間12)に近づく方向へと、換言するとロック爪22が退避位置から係止位置へと移動する方向へと、常にトーションバネ26からの付勢力が付与されている。
【0031】
可動壁30は、図2ないし図4に示すように、全体にL字状を呈する板部材であり、区画壁14に沿って高さ方向に延在する縦壁部31と、電池室用空間12と爪機構用空間13との奥壁面に沿って厚さ方向に延在する横壁部32と、縦壁部31から高さ方向に延出する爪壁部33とを有する。この可動壁30は、縦壁部31および爪壁部33が固定レバー20から見て区画壁14(電池室用空間12)とは反対側で高さ方向(Y軸方向)に延在し、かつ横壁部32が区画壁14よりも奥側(デジタルカメラ1の通常の使用状態で見て上側)で電池室用空間12と爪機構用空間13との双方に跨って厚さ方向(Z軸方向)に延在するように、設けられている。このため、横壁部32の一部は、電池室用空間12において、電池装填口12aから見た奥側(デジタルカメラ1の通常の使用状態で見て上側)に位置する奥壁となり、電池室用空間12(区画壁14も含む)と協働して、実質的に電池11を装填(挿入)する空間である電池室10を構成する。
【0032】
この可動壁30は、上記した姿勢を維持しつつ高さ方向(Y軸方向)に所定の範囲内でスライド移動可能に、電池室用空間12および爪機構用空間13の壁面に保持されている。この所定の範囲とは、後述する電池取出位置から、少なくとも装填対象とする電池のうち最も大きな高さ寸法を有する電池(本実施例では、電池11B)に適合する深さ寸法とすることができる位置までをいう。なお、可動壁30をスライド移動可能に保持するものは、電池室用空間12または爪機構用空間13のいずれか一方の壁面であってもよい。
【0033】
可動壁30の爪壁部33は、固定レバー20の後面20bと厚さ方向(Z軸方向)で対向し、その後面20bへ向けて延出する係合突起34を有する。この係合突起34は、固定レバー20が係止姿勢であるときに(図8(c)、図9(e)参照)、その後面20bに設けられた係合溝部23または係合溝部24と係合可能であり、かつ係合溝部23または係合溝部24が設けられていない箇所では後面20bと干渉する大きさ寸法とされている。このため、係合突起34は、トーションバネ26の付勢による固定レバー20の回動方向とは逆側へと回動した状態(図7、図8(a)、(b)、図9(a)、(b)、(d)等参照)において、固定レバー20の後面20bもしくは係合溝部23の傾斜面23bに当接(摺動)する。また、係合突起34は、電池室用空間12の電池装填口12a側および爪機構用空間13の挿通口13a側(図2および図4等で見て上側)が、高さ方向(Y軸方向)に直交する面に沿う平坦な係合面34aとされている。このため、係合突起34の係合面34aは、当該係合突起34が係合溝部23または係合溝部24と係合した状態において、係合溝部23の係合面23aまたは係合溝部24の係合面24aと面当接可能である。なお、本実施例では、固定レバー20の後面20bとの摺動を円滑なものとすべく、係合突起34(係合面34a)の先端部を丸み面取りしている。
【0034】
可動壁30の横壁部32には、一対の電池接片35が設けられている。この両電池接片35は、一方が正極用、他方が負極用とされており、接続線35a(図4等参照)を介してカメラ本体2に設けられるメイン回路基板5に接続されている。接続線35aは、電池室用空間12内での可動壁30(横壁部32)の移動に拘らず接続線35aとメイン回路基板5とを電気的に接続するものであり、本実施例では、リード線が用いられている。なお、接続線35aは、可撓性と導電性とを有する部材で構成されていれば、金属ばねやFPC(フレキシブルプリント基板)であってもよく、本実施例に限定されるものではない。
【0035】
この一対の電池接片35の配設位置は、区画壁14を基準として、装填対象とする各電池11(図6の符号11Aおよび11B参照)の後述する出力端子11bの設定位置に適合するものとされている。一対の電池接片35は、本実施例では、中間位置が横壁部32の上面よりも上方へと突出するように折り曲げられた金属片で構成されている。これは、装填対象とする各電池11が装填された際に、一対の電池接片35の弾性力を利用して各電池11の出力端子(図6の符号11b参照)への適切な押圧力を得るためである。この可動壁30は、少なくとも一対の電池接片35が設けられた横壁部32が絶縁性を有する材料で形成されている。
【0036】
この可動壁30は、電池室用空間12と爪機構用空間13との奥壁面に設けられたコイルバネ36により、電池室用空間12の電池装填口12a側および爪機構用空間13の挿通口13a側(図2および図4等で見て上側(Y軸方向負側))へ向けて付勢されている。このため、可動壁30は、爪壁部33の係合突起34が固定レバー20の係合溝部23または係合溝部24と係合していない状態では、コイルバネ36からの付勢により、高さ方向(Y軸方向)に沿うスライド移動可能とされた範囲において最も奥壁面から離間した位置(図7参照)へと移動する(以下では、この位置を電池取出位置という)。このように、可動壁30が電池取出位置であると、図7に示すように、その爪壁部33の係合突起34(その先端)が、固定レバー20の後面20bにおける回動軸21に最も近接した位置に当接する。これにより、固定レバー20は、トーションバネ26の付勢により回動軸21回りに回動してロック爪22を退避位置とする退避姿勢となる。
【0037】
このコイルバネ36は、電池室10に電池(電池11Aまたは電池11B)が装填された状態、すなわち可動壁30の爪壁部33の係合突起34が固定レバー20に設けられた係合溝部23または係合溝部24に係合した状態を、その装填した電池(電池11Aまたは電池11B)に生じ得る高さ方向(Y軸方向)への移動力に抗して維持することができる付勢力に設定されている。ここで言う装填した電池に生じ得る高さ方向への移動力とは、電池室10(それを適用したデジタルカメラ1)において想定する急激な移動に伴って当該電池に生じる慣性に起因するものである。
【0038】
本実施例では、電池室用空間12の一面を規定すべく区画壁14と対向する壁面12bに、押圧板16が設けられている。この押圧板16は、平板状を呈し、壁面12bに形成された凹所12cに収容されている。押圧板16は、一端(電池室用空間12の開口端側(図2および図4等で見て上側(Y軸方向負側)))に回動軸16aを有し、この回動軸16aが凹所12c内で幅方向(X軸方向)に回動可能に保持されている。また、押圧板16は、図示を略す付勢手段(例えば、トーションバネ)により、凹所12cから電池室用空間12へと突出する方向(矢印A2参照)へと付勢されている。このため、押圧板16は、電池室10に電池11が装填(挿入)されていない状態において、他端が区画壁14に当接する姿勢まで回動軸16a回りに回動する(図4の二点鎖線で示す押圧板16参照)。
【0039】
電池室10は、本実施例では、図6に示すように、主に高さ寸法の異なる2種類の電池11(個別に述べるときは、背の低い方を11Aとし、背の高い方を11Bとする)を装填対象とする、すなわち両電池11(11A、11B)の適切な装填を可能とするものである。この2種類の電池11(11A、11B)は、互いに等しい出力電圧であって、上面11aにおける出力端子11bの配設位置が略等しいものとされている。ここでいう略とは、電池11Aと電池11Bとでは、厚さ寸法がわずかに異なるものとされていることから、双方の上面11aが完全な同一形状ではないことによる。なお、本実施例では、上述したように、一対の電池接片35が区画壁14を基準として配設位置が設定されていることから、電池11Aの周面11cにおいて電池室10に装填(挿入)された状態で区画壁14と対向する面を基準とする出力端子11bの配設位置が略等しいものとされている。
【0040】
その出力端子11bは、3つ並列された凹所として構成されており、1つが正極、もう1つが負極、残りが制御用の端子である。本実施例の電池室10では、可動壁30の横壁部32に設けられた一対の電池接片35が、電池11の出力端子11bのうち正極と負極との2つの端子に対応するものとされている(図2および図3参照)。
【0041】
本実施例では、図6(a)に示す電池11Aは、挿入方向で見た高さ寸法(Y軸参照)が49mm、幅寸法(X軸参照)が35mm、厚さ寸法(Z軸参照)が10mmである。また、図6(b)に示す電池11Bは、挿入方向で見た高さ寸法(Y軸参照)が53mm、幅寸法(X軸参照)が35mm、厚さ寸法(Z軸参照)が11mmである。このように出力電圧が等しいものであっても大きさ寸法(本実施例では、主に高さ寸法)が異なるのは、容量の差異によって大きさ寸法が異なるものとされていたり、同一の容量であっても技術革新により大きさ寸法が低減されたり、(出力端子の配設位置が略等しいことを前提として)製造元が異なることで大きさ寸法が異なるものとされていたり、することがあげられる。
【0042】
次に、2種類の電池11(11A、11B)の電池室10への装填および取り出しの動作について、図7ないし図10を用いて説明する。なお、装填および取り出しの動作説明では、図7ないし図10を正面視した上下方向を用いるものとする。先ずは、大きさ寸法の小さい(背の低い)電池11Aを装填する様子を、図7および図8を用いて説明する。
【0043】
この電池室10では、電池11を装填する際、先ず、図7に示すように、ロック機構(図示せず)を解除して電池蓋15を開成状態とする。このとき、電池室10では、上述したように、コイルバネ36の上方への付勢により可動壁30が電池取出位置に位置し、その爪壁部33の係合突起34(その先端)の固定レバー20の後面20bへの当接により、固定レバー20が退避姿勢とされて、そのロック爪22が退避位置とされている。また、押圧板16は、その先端が区画壁14に当接する姿勢まで回動されている。
【0044】
図8(a)に示すように、出力端子11bの位置(図6参照)を、電池室10における電池接片35の位置(図2および図3参照)に対応させて、電池11Aを上面11a側から電池装填口12a(電池室用空間12)へと挿入する。このとき、押圧板16は、電池11Aの周面11cに押圧されることにより電池室用空間12の凹所12cへと退避する方向に回動されるとともに、周面11cを押圧して電池11Aを区画壁14に押し当てる。また、上記したように電池11Aを挿入することにより、電池取出位置にある可動壁30の横壁部32の上面と電池11Aの上面11aとが対向し、その横壁部32に対を為して設けられた電池接片35が、電池11Aの出力端子11bのうちの対応する2つ(正極および負極)に当接する。
【0045】
その後、電池11Aの下面11d(図8で見ると上側の面)を押圧し、コイルバネ36の付勢力に抗して電池11Aを電池室用空間12(電池室10)へと押し込んでいく。すると、図8(b)に示すように、電池11Aを介して可動壁30(横壁部32)が押し下げられ、可動壁30の爪壁部33の係合突起34(その先端)の固定レバー20の後面20bへの当接位置が、回動軸21から遠ざかるように下方へと移動する。このため、固定レバー20は、トーションバネ26の付勢により、一端のロック爪22を退避位置から係止位置へと移動する方向(図4の矢印A1参照)へと、回動軸21回りに回動し始める。この固定レバー20の回動姿勢は、可動壁30の爪壁部33の係合突起34による後面20bへの当接位置に応じて変化することとなる。
【0046】
その後、電池11Aを介して可動壁30をさらに押し下げると、図8(c)に示すように、下方へと移動する可動壁30の爪壁部33の係合突起34(その先端)が、上側(回動軸21に近い側)の係合溝部23に到達する。すると、可動壁30の爪壁部33の係合突起34が、係合溝部23に係合する回動姿勢まで、固定レバー20が回動する。上述したように、係合突起34は、固定レバー20が係止姿勢であるときに、係合溝部23と係合する大きさ寸法とされていることから、固定レバー20は、係止姿勢まで回動する。このとき、固定レバー20の一端のロック爪22(その先端部分)は、爪機構用空間13の挿通口13aから区画壁14を超えて電池室用空間12(電池装填口12a)上に位置する係止位置となる。すると、固定レバー20(回動軸21とロック爪22と係合溝部23との位置関係)および可動壁30(縦壁部31と横壁部32と爪壁部33と係合突起34との位置関係)の設定により、ロック爪22の平坦な係止面22aが電池11Aの下面11dに面当接する。
【0047】
このとき、電池室10では、係合溝部23の固定レバー20における位置設定により、可動壁30の横壁部32から固定レバー20のロック爪22の係止面22aまでの間隔が、電池11Aにおける係止面22aへの当接面(下面11d)から電池接片35への当接面(出力端子11bの当接面)までの高さ寸法に適合されており、電池11Aの高さ寸法に適合する深さ寸法となる。このため、電池室10では、横壁部32に設けられた一対の電池接片35が、装填された電池11Aの出力端子11bに対して適切な押圧力で当接する。
【0048】
よって、電池室10では、電池11Aを電池装填口12aから挿入するだけで、固定レバー20と可動壁30との協働により、電池11Aに高さ寸法に適合する深さ寸法となり、電池11Aを適切に装填することができる。
【0049】
次に、大きさ寸法の大きい(背の高い)電池11Bを装填する様子を、図7および図9を用いて説明する。先ず、電池11Aのときと同様に、電池蓋15を開成状態とする(図7参照)。
【0050】
次に、図9(a)に示すように、出力端子11bの位置(図6参照)を、電池室10における電池接片35(図2および図3参照)に対応させて、電池11Bを上面11a側から電池装填口12aへと挿入する。すると、電池11Aのときと同様に、電池11Bが押圧板16により区画壁14に押し当てられながら、電池取出位置にある可動壁30の横壁部32の上面と電池11Bの上面11aとが対向し、その横壁部32に対を為して設けられた電池接片35が、電池11Bの出力端子11bのうちの対応する2つ(正極および負極)に当接する。
【0051】
その後、電池11Bの下面11d(図9で見ると上側の面)を押圧し、コイルバネ36の付勢力に抗して電池11Bを電池室用空間12(電池室10)へと押し込んでいく。すると、図9(b)に示すように、電池11Bを介して可動壁30が押し下げられるので、固定レバー20が、トーションバネ26の付勢により一端のロック爪22を退避位置から係止位置へと移動する方向(図4の矢印A1参照)へと、回動軸21回りに回動し始める。
【0052】
その後、電池11Bを介して可動壁30をさらに押し下げると、図9(c)に示すように、下方へと移動する可動壁30の爪壁部33の係合突起34(その先端)が、上側(回動軸21に近い側)の係合溝部23に到達する。このため、固定レバー20は、可動壁30の爪壁部33の係合突起34が、係合溝部23に係合する回動姿勢(係止姿勢)まで回動しようとする。このとき、係合溝部23が小さな高さ寸法の電池11Aに対応するものであって、それよりも大きい電池11Bは、電池室用空間12(電池室10)に収まりきっていないことから、固定レバー20のロック爪22(その先端)が電池11Bの周面11cに当接するので、固定レバー20が係止姿勢まで回動することはない。
【0053】
その後、電池11Bを介して可動壁30をさらに押し下げると、図9(d)に示すように、係合突起34は、下方への移動に伴って、係合溝部23の傾斜面23bに摺動し、その係合溝部23から相対的に抜け出して、係合溝部23と係合溝部24との間で固定レバー20の後面20bに当接(摺動)する。
【0054】
その後、電池11Bを介して可動壁30をさらに押し下げると、図9(e)に示すように、下方へと移動する可動壁30の爪壁部33の係合突起34(その先端)が下側(回動軸21から離間する側)の係合溝部24に到達する。すると、固定レバー20は、可動壁30の爪壁部33の係合突起34が、係合溝部24に係合する回動姿勢まで回動して、係止姿勢となる。このとき、固定レバー20の一端のロック爪22は、係止位置となる。この状態では、固定レバー20(回動軸21とロック爪22と係合溝部24との位置関係)および可動壁30(縦壁部31と横壁部32と爪壁部33と係合突起34との位置関係)の設定により、ロック爪22の平坦な係止面22aが電池11Bの下面11dに面当接する。
【0055】
このとき、電池室10では、係合溝部24の固定レバー20における位置設定により、可動壁30の横壁部32から固定レバー20のロック爪22の係止面22aまでの間隔が、電池11Bにおける係止面22aへの当接面(下面11d)から電池接片35への当接面(出力端子11bの当接面)までの高さ寸法に適合されており、電池11Bの高さ寸法に適合する深さ寸法となる。このため、電池室10では、横壁部32に設けられた一対の電池接片35が、装填された電池11Bの出力端子11bに対して適切な押圧力で当接する。
【0056】
よって、電池室10では、電池11Bを電池装填口12aから挿入するだけで、固定レバー20と可動壁30との協働により、電池11Bに高さ寸法に適合する深さ寸法となり、電池11Bを適切に装填することができる。
【0057】
このように、電池室10では、固定レバー20(回動軸21とロック爪22と係合溝部23と係合溝部24)、可動壁30(縦壁部31と横壁部32と爪壁部33と係合突起34)およびコイルバネ36は、電池室10の深さ寸法を装填対象である電池の各々の高さ寸法とするための爪機構として機能する。
【0058】
次に、装填された各電池11(電池11Aまたは電池11B)の電池室10からの取り出し動作について説明する。なお、各電池11の取り出しに関しては、電池の高さ寸法に拘らず等しい動作であることから、ここでは、図10を用いて電池11Aを取り出す場面について説明し、電池11Bの取り出しについては説明を省略する。
【0059】
電池11Aを取り出す場合、図10(a)に示すように、先ず、電池蓋15を開成状態とし、係止面22aが電池11Aの下面11dに面当接しているロック爪22を、爪機構用空間13(挿通口13a)側へと移動させて、電池室用空間12(電池装填口12a)上から退避させる(矢印A3参照)。すなわち、ロック爪22を係止位置から退避位置へと移動させる。これにより、固定レバー20が回動軸21回りに回動し、後面20bに設けられた係合溝部23が係合突起34から離間し、その係合溝部23と係合突起34との係合が解除される。このため、可動壁30に対する上方への移動の制限が解除される。
【0060】
すると、可動壁30は、図10(b)に示すように、コイルバネ36による上方(電池装填口12a側)への付勢により、スライド移動可能な範囲の上限位置である電池取出位置まで上方へと移動する。このため、電池11Aは、可動壁30の上方への移動により上方へと移動する横壁部32に押し上げられて上方へと移動し、電池室10の電池装填口12aから一部が突出される。これにより、電池室10から電池11Aを容易に取り出すことができる。なお、このとき、可動壁30の爪壁部33の係合突起34(その先端)の固定レバー20の後面20bへの当接により、固定レバー20は、退避姿勢が維持される。
【0061】
このように、電池室10では、可動壁30の横壁部32が、深さ寸法の設定のための電池接片35の移動機構として機能するとともに、コイルバネ36との協働により装填された電池11(11Aおよび11B)の取出機構として機能する。
【0062】
本実施例の電池室10(それを適用したデジタルカメラ1)では、固定レバー20(回動軸21とロック爪22と係合溝部23と係合溝部24との位置関係)および可動壁30(縦壁部31と横壁部32と爪壁部33と係合突起34との位置関係)の設定により、高さ寸法を除く外形形状に差異のない2種類の電池11Aおよび電池11Bのいずれであっても、電池11Aを挿入するとその電池11Aに適合する深さ寸法とすることができ、かつ電池11Bを挿入するとその電池11Bに適合する深さ寸法とすることができる。このため、各電池11(電池11Aまたは電池11B)を適切に装填することができる。すなわち、固定レバー20のロック爪22が、各電池11を介して横壁部32が押圧されることによる可動壁30の高さ位置(電池装填口12aから見た深さ位置)に応じて、適宜退避位置から係止位置となることから、挿入される電池の外形形状に拘らず高さ寸法の差異のみで電池室10の深さ寸法を変化させることができる。
【0063】
また、電池室10(それを適用したデジタルカメラ1)では、高さ寸法の異なる2種類の電池11Aおよび電池11Bであっても、各々電池装填口12aから挿入するだけで、挿入した電池11Aまたは電池11Bに適合する深さ寸法とすることができる。このため、後述する瞬断や接片(端子)の座屈、操作性の悪化、電池室自体(それを適用した電子機器自体)の耐久性が低下することを防止することができる。これは、以下のことによる。高さ寸法を除く外形形状に差異がない場合、一般的に、接片(端子)との対向位置にコイルバネを設け、そのコイルバネの伸縮により大きさ寸法の差異を吸収しつつ電池を接片(端子)に押し付ける構成が考えられる。このような構成の場合、背の高い電池を装填した際には、大きく圧縮されたコイルバネで電池を接片(端子)へと押し付けることとなり、背の低い電池を装填した際には、あまり圧縮されていないコイルバネで電池を接片(端子)へと押し付けることとなるので、電池の高さ寸法により電池と接片(端子)との接触圧が変化する。ここで、背の低い電池において、接触圧が足りないと、電池室(それを適用した電子機器)の急激な移動に伴って電池に生じる慣性に起因して、その電池が電池室内で移動することにより、当該電池と接片(端子)とが瞬間的にではあるが離間してしまい、電力供給が瞬間的に遮断されてしまういわゆる瞬断が生じてしまう虞がある。このことから、背の低い電池において、十分な接触圧を得ることができるように上記したコイルバネ(その弾性力)を設定すると、大きな寸法の電池を装填(挿入)する際に、コイルバネが大きく圧縮されることにより、その大きな弾性力に抗して行う電池の装填の操作性の悪化を招いたり、電池(その出力端子)と接片(端子)との接触圧が過大となり接片(端子)が座屈してしまったり、電池室を構成する箇所に過度の圧力がかかることに起因して電池室自体(それを適用した電子機器自体)の耐久性の低下を招いてしまう虞がある。これに対し、本発明における電池室10では、可動壁30を上側(電池装填口12a側)へと付勢するコイルバネ36を、可動壁30の爪壁部33の係合突起34と固定レバー20の係合溝部23または係合溝部24と係合した状態を維持するための付勢力として作用させることにより、適切な深さ寸法を維持する構成である、すなわちコイルバネ36の付勢力は係合突起34を介して係合溝部23または係合溝部24が受ける構成であるので、コイルバネ36の伸縮に拘らず各電池11(その出力端子11b)と電池接片35との接触圧を適切なものとすることができる。このため、電池室10では、瞬断や接片(端子)の座屈が生じることを防止することができる。また、電池室10では、各電池11(その出力端子11b)と電池接片35との接触圧に拘らず、固定レバー20の係合溝部23または係合溝部24と係合した状態を維持できるようにコイルバネ36の付勢力が設定されていることから、コイルバネの伸縮により大きさ寸法の差異を吸収しつつ電池を接片(端子)に押し付ける従来の構成のように電池室10を構成する箇所に過度の圧力がかかること、を防止することができるので、電池室10自体(それを適用したデジタルカメラ1自体)の耐久性が低下することを防止することができる。さらに、電池室10では、各電池11に適合する深さ寸法とするためにコイルバネ36の弾性力を利用し、その適合する深さ寸法とされた状態において、各電池11(その出力端子11b)と電池接片35との接触圧を適切なものとするために電池接片35の弾性力を利用するものであることから、背の高い電池11Bに適合するために大きく圧縮されるのがコイルバネ36だけとなるため、高さ寸法の差異を吸収しつつ電池と接片(端子)との接触圧を適切なものとすべく弾性力が設定されたコイルバネを用いることに比較して、操作性の悪化を防止することができる。
【0064】
さらに、電池室10(それを適用したデジタルカメラ1)では、電池室用空間12および爪機構用空間13に高さ方向に所定の範囲内でスライド移動可能に保持された可動壁30を、各電池11(11Aまたは11B)を介してコイルバネ36の付勢力に抗するように押し込んでいくものであることから、各電池(11Aまたは11B)を適切に装填することができるとともに、装填した各電池(11Aまたは11B)を容易に取り出すことができる。これは、一般的に、装填した電池を取り出すために、電池室から電池を脱出させる方向へと直接当該電池を付勢するコイルバネを設けることが考えられる。このような構成の場合、電池を装填する際、そのコイルバネを圧縮するように電池を押し込んでいくことから、コイルバネの圧縮方向に対して電池を押し込む方向に傾きが生じると、コイルバネが倒れてしまう(大きく湾曲することも含む)虞がある。このようにコイルバネが倒れると、電池(その出力端子)と接片(端子)との適切な接触の妨げとなったり、倒れたコイルバネにより意図しない接片同士を短絡させてしまったりする虞がある。また、コイルバネが倒れると、そのコイルバネでは、装填した電池を適切には押し出すことができなくなるので、電池の取り出しが困難となる。これに対して、電池室10では、電池室用空間12および爪機構用空間13に高さ方向に所定の範囲内でスライド移動可能に保持された可動壁30を介してコイルバネ36を押圧することから、コイルバネ36にその圧縮方向に直交する方向への力が作用することを防止することができるので、このコイルバネ36が倒れてしまうことを防止することができる。また、電池室10では、コイルバネ36と一対の電池接片35(その露出された箇所)との間に、絶縁性を有する横壁部32が設けられていることから、不測の事態が生じてコイルバネ36が倒れてしまった場合であっても、接片同士が短絡することを確実に防止することができる。
【0065】
電池室10では、固定レバー20(回動軸21とロック爪22と係合溝部23と係合溝部24との位置関係)および可動壁30(縦壁部31と横壁部32と爪壁部33と係合突起34との位置関係)の設定を調節することにより、特に、固定レバー20における係合溝部の設定位置を調節することにより、任意の高さ寸法の電池を装填対象とすることができるので、汎用性を向上させることができると共に、将来の容量の増加に容易に対応することができる。
【0066】
電池室10では、挿入された各電池11を押圧板16で押圧して区画壁14に押し当てることから、電池11Aと電池11Bとにおいて高さ寸法の他に厚さ寸法の差異がある場合であっても、各々電池装填口12aから挿入するだけで、電池11Aおよび電池11Bの出力端子11bを電池接片35に適切に接触させることができるので、装填対象とする電池の種類の数に拘らず一対の電池接片35を設けるだけで、各電池11を適切に装填することができる。このため、一対の電池接片35を設けるのみでよいことから、部品点数の削減によるコストダウンや省スペース化に寄与することができる。なお、この電池における厚さ寸法の差異は、区画壁14を基準とする一対の電池接片35の設定位置と、電池11の周面11cにおいて区画壁14に当接される面を基準とする出力端子11bの設定位置と、が適合する(電池接片35と出力端子11bとの大きさ寸法の差異による許容範囲を含む)ものであれば、一対の電池接片35を設けるだけで装填対象とすることができる。
【0067】
したがって、本発明に係る電池室10では、外形形状の差異に拘らず、高さ寸法の異なる複数の種類の電池を装填することができる。
【0068】
なお、上記した実施例では、固定レバー20に2つの係合溝部23および係合溝部24を設けることにより、高さ寸法の異なる2種類の電池11Aおよび電池11Bを装填対象とするものであったが、係合溝部の数を増加すれば装填対象として設定する電池の種類の数を増加することができるので、装填対象として設定する電池の種類の数は2つでなくてもよく、上記した実施例に限定されるものではない。なお、増加する係合溝部は、最も他端側に係合溝部24を設定することとして、係合溝部23のように傾斜面23bを有するものとすることが、係合突起34の円滑な摺動を可能とする観点から望ましい。
【0069】
また、上記した実施例では、ロック爪22と係合溝部23と係合溝部24とを有し回動軸21回りに回動自在とされてトーションバネ26により付勢された固定レバー20と、縦壁部31と横壁部32と爪壁部33と係合突起34とを有する可動壁30と、により爪機構が構成されていたが、係止爪(ロック爪22)を退避位置と係止位置とで移動可能に保持しつつ、奥壁(横壁部32)をスライド移動可能に保持するものであって、少なくとも挿入方向で見た高さ寸法の異なる二種類以上の電池の各々を装填対象として、電池を挿入した際の奥壁の移動に伴って、係合位置とした際の係止爪(係止位置にあると過程した際の係止爪)から奥壁までの間隔が、装填対象である電池の高さ寸法となると、係止爪を退避位置から係止位置へと移動させるものであればよく、換言すると深さ寸法を装填対象である複数の電池のうち挿入された電池の高さ寸法とするものであればよく、上記した実施例に限定されるものではない。
【0070】
さらに、上記した実施例では、挿入された電池11を押圧板16で厚さ方向に押圧して区画壁14に押し当てる構成とされていたが、図11に示すように、挿入された電池を幅方向に押圧する押圧板17(押圧板16と同様の構成のため説明は省略する)を設けてもよく、上記した実施例に限定されるものではない。このように押圧板17を設ける構成とした場合、高さ方向に直交する面で見て、基準点Cを基準とする一対の電池接片(35)の設定位置と、電池(11)の周面(11c)において基準点Cに近接される角を基準とする出力端子(11b)の設定位置と、が適合する(電池接片と出力端子との大きさ寸法の差異による許容範囲を含む)電池を装填対象とすることができる。
【0071】
上記した実施例では、挿入された電池11を押圧板16で厚さ方向に押圧して区画壁14に押し当てる構成とされていたが、押圧板16すなわち挿入された電池を高さ方向に直交する面で見た一方に寄せる機構がなくても、高さ寸法の異なる複数の種類の電池を装填対象とすることができるので、押圧板16(寄せる機構)をなくすことができる。しかしながら、押圧板16(寄せる機構)を設けると、上記した所定の条件を満たせば、厚さ寸法(幅寸法)の異なる電池も装填対象とすることができるので、押圧板16(寄せる機構)を設けることが望ましい。なお、押圧板16(寄せる機構)における高さ方向に直交する面で見た寄せる方向(押圧する方向)は、何れの方向であってもよく、上記した実施例に限定されるものではない。
【0072】
上記した実施例では、電子機器の一例としてデジタルカメラ1を示したが、電池を装填するための電池室を有する電子機器であればよく、上記した実施例に限定されるものではない。
【0073】
上記した実施例では、コイルバネ36が設けられていたが、可動壁30すなわちその横壁部32(奥壁)を電池装填口12a側へ向けて付勢するものであればよく、上記した実施例に限定されるものではない。
【0074】
上記した実施例では、一対の電池接片35が可動壁30の横壁部32(奥壁)に設けられていたが、電池蓋15に設けられていてもよく、上記した実施例に限定されるものではない。
【0075】
上記した実施例では、ロック爪22と係合溝部23と係合溝部24とを有し回動軸21回りに回動自在とされてトーションバネ26により付勢された固定レバー20と、縦壁部31と横壁部32と爪壁部33と係合突起34とを有する可動壁30と、により爪機構が構成されていたが、退避位置と係止位置とで移動可能な係止爪(ロック爪22)が一端に設けられた固定レバーを高さ方向(電池の挿入方向)と直交する面に沿う回転軸回りに回動自在に保持しつつ、奥壁(横壁部32)をスライド移動可能に保持し、奥壁の高さ方向(電池の挿入方向)への移動と共に高さ方向に移動する係合突起を有するものであって、固定レバーの他端部に、高さ方向(電池の挿入方向)で見た奥壁が、係合位置とした際の係止爪(係止位置にあると過程した際の係止爪)までの間隔を装填対象である電池の各々の高さ寸法とする位置となると、係止爪を退避位置から係止位置へと移動させるべく係合突起を受け入れる各係合溝部が設けられているものであればよく、上記した実施例に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0076】
1 (撮像装置(電子機器)としての)デジタルカメラ
10 電池室
11(11A、11B) 電池
11d (電池の後端面としての)下面
12a 電池装填口
15 電池蓋
16 押圧板
17 押圧板
20 固定レバー
20b (係合溝部が設けられた面としての)後面
22 (係止爪としての)ロック爪
23 係合溝部
23a 係合面
23b 傾斜面
24 係合溝部
24a 係合面
32 (奥壁としての)横壁部
34 係合突起
35 電池接片
36 (奥壁を付勢する)コイルバネ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0077】
【特許文献1】特開2002−373632号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池の挿入のための電池装填口と、該電池装填口からの前記電池の挿入方向の奥側に位置する奥壁または前記電池装填口を塞ぐべく開閉可能に設けられた蓋部材の少なくとも一方に設けられ電気的な端子を形成する電池接片と、前記蓋部材に対向する挿入された前記電池の後端面に係合可能な係止爪と、を備える電池室であって、
前記奥壁を前記挿入方向に沿って移動可能に保持し、かつ前記係止爪を前記電池の後端面に係合する係合位置と前記係止爪が前記電池の後端面に係合しない退避位置との間で移動可能に保持する爪機構を備え、
該爪機構は、前記電池を挿入した際の前記奥壁の移動に伴って、前記係合位置とした際の前記係止爪から前記奥壁までの間隔が、前記電池の挿入方向で見た高さ寸法となると、前記係止爪を前記退避位置から前記係合位置へと移動させることを特徴とする電池室。
【請求項2】
前記爪機構は、前記電池室の外方で前記電池の挿入方向に延在しつつ延在方向に直交する軸線回りに回動可能に支持された長尺部材からなり、一端に前記係止爪を有しかつ他端部に長尺方向に並列して複数の係合溝部を有する固定レバーと、
前記奥壁の移動と共に前記固定レバーにおいて前記各係合溝部が設けられた面と対向しつつ前記電池の挿入方向に移動する係合突起と、を有し、
該係合突起は、前記挿入方向での移動に伴って、前記係止爪を前記係合位置とする係止姿勢である前記固定レバーにおける前記各係合溝部が設けられた面に対して、干渉可能であるとともに前記各係合溝部への係合が可能な大きさ寸法とされ、
該各係合溝部は、前記係合位置とした際の前記係止爪から前記奥壁までの間隔を、前記各電池の挿入方向で見た高さ寸法とする、前記奥壁の位置に対応する前記挿入方向での位置にある前記係合突起の係合を可能とするように、前記固定レバー上での長尺方向で見た位置が設定されていることを特徴とする請求項1に記載の電池室。
【請求項3】
前記爪機構は、前記奥壁を前記電池装填口側へ向けて付勢していることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電池室。
【請求項4】
前記各係合溝部は、前記一端側に前記奥壁への付勢により前記電池装填口側へ移動する前記係合突起と係合可能な係合面を有し、
前記各係合溝部のうち少なくとも最も前記他端側に位置する前記係合溝部を除く前記各係合溝部は、前記他端側に前記奥壁への付勢に抗して前記電池装填口とは反対側へ移動する前記係合突起との摺動を可能とする傾斜面を有することを特徴とする請求項3に記載の電池室。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の電池室であって、
さらに、前記電池を前記電池接片に適合する位置へと移動させるべく、前記電池の挿入方向に直交する方向へ向けて前記電池を押圧する押圧板を備えることを特徴とする電池室。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の電池室を備えることを特徴とする電子機器。
【請求項7】
請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の電池室を備えることを特徴とする撮像装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−146324(P2011−146324A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−7848(P2010−7848)
【出願日】平成22年1月18日(2010.1.18)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】