説明

電池用電極の製造方法、電池の製造方法、電池、車両および電子機器

【課題】性能が良好な電池を優れた生産性で製造することのできる技術を提供する。また、小型で性能が良好で、優れた生産性で製造可能な電池およびこれを備える各種機器を提供する。
【解決手段】ヒーターを樹脂シートで被覆したシート状ヒーター体10と負極集電体11となる銅箔とを積層してなる積層体100の銅箔面に、負極活物質材料を含む塗布液32をノズル31から吐出させてライン状パターン121を形成する。このとき、外部電源6によりヒーターに通電し銅箔11を加熱しておくことにより、塗布液に含まれる溶剤を短時間で揮発させる。これにより、塗布液が周囲に流れ広がるのを抑制して、微細な凹凸パターンを有し表面積の大きな活物質層を形成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、活物質間に電解質層を介在させた電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えばリチウムイオン二次電池のような化学電池を製造する方法としては、従来より、正極活物質および負極活物質をそれぞれ付着させた集電体としての金属箔をセパレータを介して重ね合わせ、セパレータに電解液を含浸させる技術が知られている。しかしながら、電解液として揮発性の高い有機溶剤を含んだ電池は取り扱いに注意が必要であり、またさらなる小型化・大出力化が求められることから、近年では電解液に代えて固体電解質を用い、微細加工により全固体電池を製造するための技術が提案されてきている。
【0003】
例えば特許文献1には、集電体となる金属箔上に、表面に凹凸を有する活物質層をインクジェット法により形成し、該凹凸を埋めるように固体電解質層、もう一方の活物質層を順次インクジェット法によって立体的に積層する技術が開示されている。この技術では、1回の印刷工程で形成される正負の活物質層および固体電解質層などの異なる機能層が混在する層を、重ね塗りによって多層に積層することによって上記の立体的な構造を得ている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−116248号公報(例えば、段落0029)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した従来技術では、電池の材料物質を含む塗布液(インク)の吐出量が原理的に微量であるため、立体構造を得るためには多数回の重ね塗りが必要である。さらに、1回の塗布ごとに乾燥が必要であるので、所定の厚みを持った立体構造の電池を製造するのに長時間を要する。そこで、短時間でより多くの塗布液を塗布することのできる他の塗布方法を適用することが考えられる。しかしながら、1度に大量の塗布液を塗布する方法では、塗布された塗布液が周囲に広がるように流れてしまうため、微細な凹凸構造を精度よく形成することが困難であった。このことから、高性能の電池を生産性よく製造する技術は未だ確立されるに至っていない。
【0006】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、性能が良好な電池を優れた生産性で製造することのできる技術を提供することを第1の目的とする。また、小型で性能が良好であり、優れた生産性で製造可能な電池およびこれを備える車両、電子機器を提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明にかかる電池用電極の製造方法は、上記第1の目的を達成するため、集電体とヒーターとを積層して、前記集電体の一方表面側にヒーター層を形成するヒーター層積層工程と、前記集電体表面のうち前記ヒーター層が設けられた面とは反対側の他方表面に、活物質材料を含む塗布液を塗布して活物質層を形成する活物質層形成工程と、前記塗布液を塗布しながら、または前記塗布液を塗布した後に、前記ヒーターを発熱させて、前記集電体に塗布された前記塗布液を加熱する加熱工程とを備えることを特徴としている。
【0008】
このように構成された発明では、予め集電体にヒーター層を積層した状態で、活物質材料を含む塗布液を集電体に塗布する。そして、ヒーターを発熱させることで集電体に塗布された塗布液を加熱する。集電体に塗布された塗布液は加熱されることで短時間で乾燥するため、塗布後の塗布液の広がりを抑えて活物質層の表面形状を精度よく制御することができる。また、活物質層形成に要する時間も短くて済む。これにより、重ね塗りによらずとも任意の表面形状を有する電池用電極を製造することができる。そして、こうして製造された電池用電極を用いて、性能の良好な電池を優れた生産性で製造することが可能となる。
【0009】
この構成によれば、次のような利点もある。すなわち、材料物質を含んだ塗布液を基材に塗布する技術においては、塗布液の乾燥を促進するために基材を例えばホットプレートに載置するなどして基材を加熱することが行われる。ただし、塗布液が塗布される基材の形状や大きさ、耐熱性などに起因してこの技術が適用できない場合がある。これに対し本発明では、電池用電極自体にヒーター層を組み込んでおり塗布液を直近から加熱することができるので、このような制約は大きく軽減され、種々の基材上に電池を形成することが可能となる。
【0010】
この発明において、活物質層形成工程では、例えば集電体と接する面と反対側の表面が凹凸を有する活物質層を形成するようにしてもよい。活物質層をこのような凹凸構造とすることによって、活物質材料の使用体積に対する表面積が大きくなるので、こうして製造された電池用電極を用いることで、より高性能な電池を製造することができる。
【0011】
また、例えば、活物質層形成工程では、集電体に対し相対移動するノズルから吐出させた塗布液を集電体の表面に塗布するようにしてもよい。このような、いわゆるノズルディスペンス方式による塗布技術は、塗布液を微細な凹凸パターンに塗布することができる実績があり、本発明における塗布液の塗布に好適に適用することが可能である。そして、この方式では厚みのあるパターンを短時間で形成することができるので、インクジェット方式を適用した特許文献1に記載の従来技術よりもはるかに高い生産性で電池用電極および電池を製造することが可能となる。
【0012】
また、例えば、ヒーター層積層工程では、シート状のヒーターに、集電体の材料物質を含む塗布液を塗布して集電体を形成するようにしてもよい。集電体については、予め所定の形状に整形された金属板等を用いてもよいが、このようにシート状のヒーターに塗布液を塗布することによっても、集電体とヒーターとを積層した構造を形成することが可能である。この場合、集電体の材料物質を含む塗布液を塗布する際にもヒーターを発熱させるようにしてもよく、こうすることで集電体が短時間で形成可能となり、製造時間を短縮することができる。
【0013】
また、例えば、ヒーター層積層工程では、通電により発熱するヒーターと、集電体とを絶縁層を介して積層する一方、加熱工程では、ヒーターに通電して発熱させるようにしてもよい。こうすることで、ヒーターが集電体により電気的に短絡されることにより発熱量が不足するのを防止することができる。
【0014】
また、この発明にかかる電池の製造方法は、上記第1の目的を達成するため、上記したいずれかの製造方法により製造した電池用電極に、電解質層、第2活物質層および第2集電体層を積層することを特徴としている。このように構成された発明では、前記した理由により、性能の良好な電池を優れた生産性で製造することが可能である。
【0015】
この場合においては、例えば、電解質層、第2活物質層および第2集電体層のうち少なくとも1つを、当該層の材料物質を含む塗布液を塗布することによって形成し、しかも、該塗布液を塗布しながら、または塗布した後に、ヒーターを発熱させて塗布液を加熱するようにしてもよい。これらの機能層を形成する際にも、ヒーターによって塗布液を加熱することでその乾燥を促進し製造に要する時間を短縮することができる。
【0016】
また、この発明にかかる電池は、上記第2の目的を達成するため、ヒーター層と、第1集電体層と、第1活物質層と、電解質層と、第2活物質層と、第2集電体層とをこの順番に積層してなることを特徴としている。このように構成された発明では、第1集電体層以下の各機能層のいずれかを形成する際にヒーターによる加熱が可能となるので、短時間で製造が可能となる。また、例えば第1活物質層を塗布により形成する際にヒーター層を発熱させるようにすれば、塗布液が短時間で乾燥するため、微細なパターンを有し表面積の大きな第1活物質層を形成することができる。そのため、電気化学特性の優れた電池を構成することが可能である。
【0017】
また、電池内に組み込まれているヒーター層については、電池の完成後にも必要に応じて電池の加熱に供することが可能である。これにより、電池内部でのイオン導電性を向上させて電池としての性能をより向上させたり、低温環境下での使用を可能とすることができる。
【0018】
また、この発明にかかる車両は、上記第2の目的を達成するため、上記構成の電池を搭載したことを特徴としている。さらに、この発明にかかる電子機器は、上記第2の目的を達成するため、回路部と、前記回路部を保持する筐体と、前記筐体の表面に形成されて前記回路部に電力を供給する前記電池とを備えることを特徴としている。本発明にかかる電池の製造技術は、このような車両や電子機器に好適に適用可能なものである。また、機器の筐体表面に高性能の電池を直接作り込むことが可能であり、こうして筐体自体に電池を組み込むことで電子機器を小型化することができ、また製造コストの低減を図ることが可能である。
【0019】
この場合において、外部から供給される電力を受電し、その電力によりヒーターを発熱させながら電池を充電する充電部を備えるようにしてもよい。ヒーターにより電池の温度を上昇させた状態で充電を行うことにより、より短時間で大きな電力を電池に蓄えることが可能となる。例えば電解質層が固体電解質により構成されている場合には、常温付近では固体電解質におけるイオン導電性が低いため充電に時間を要するが、本発明では電池自体を加熱した状態で充電を行うことができるので、急速充電が可能となる。
【発明の効果】
【0020】
この発明によれば、性能が良好で、しかも生産性にも優れた電池を製造することができる。また、この発明によれば、小型で性能が良好であり、しかも優れた生産性で製造可能な電池およびこれを備える車両、電子機器を構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】リチウムイオン二次電池の概略構造を示す図である。
【図2】図1の電池の製造方法の一例を示すフローチャートである。
【図3】シート状ヒーター体の構造の一例を示す図である。
【図4】ノズルスキャン法による材料塗布の様子を模式的に示す図である。
【図5】スピンコート法による材料塗布の様子を模式的に示す図である。
【図6】ナイフコート法による正極活物質塗布の様子を模式的に示す図である。
【図7】この発明にかかる電池を搭載した機器の一例としての車両を模式的に示す図である。
【図8】この発明にかかる電池を適用した電子機器の一例を示す図である。
【図9】集電体とヒーターとを積層する第2の方法を例示する図である。
【図10】集電体とヒーターとを積層する第3の方法を例示する図である。
【図11】集電体とヒーターとを積層する第4の方法を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1はリチウムイオン二次電池の概略構造を示す図である。より詳しくは、図1(a)は本発明にかかる電池の一実施形態としてのリチウムイオン二次電池モジュール1の概観斜視図であり、図1(b)はその断面構造を示す図である。このリチウムイオン二次電池モジュール1は、後に詳しく説明するシート状ヒーター体10と負極集電体11とを積層してなる積層体100の負極集電体側表面に、負極活物質層12、固体電解質層13、正極活物質層14および正極集電体15を順番に積層した構造を有している。この明細書では、X、YおよびZ座標方向をそれぞれ図1(a)に示すように定義する。
【0023】
図1(b)に示すように、負極活物質層12はY方向に沿って延びるライン状のパターン121がX方向に一定間隔を空けて多数並んだ、ラインアンドスペース構造となっている。一方、固体電解質層13は固体電解質によって形成された略一定の厚さを有する連続した薄膜であり、上記のように負極集電体11上に負極活物質層12が形成されてなる積層体表面の凹凸に倣う(追従する)ように、該積層体上面のほぼ全体を一様に覆っている。
【0024】
また、正極活物質層14は、その下面側は固体電解質層13上面の凹凸に倣った凹凸構造を有するが、その上面は略平坦となっている。そして、このように略平坦に形成された正極活物質層14の上面に正極集電体15が積層されて、リチウムイオン二次電池モジュール1が形成される。このリチウムイオン二次電池モジュール1に適宜タブ電極が設けられたり、複数のモジュールが積層されてリチウムイオン電池が構成される。
【0025】
ここで、各層を構成する材料としては、リチウムイオン二次電池の構成材料として公知のものを用いることが可能であり、負極集電体11、正極集電体15としては、例えば銅箔、アルミニウム箔をそれぞれ用いることができる。また、正極活物質としては例えばLiCoO2(LCO)を主体とするものを、負極活物質としては例えばLi4Ti512(LTO)を主体としたものをそれぞれ用いることができる。また、固体電解質層13としては、例えばポリエチレンオキサイドおよびポリスチレンを用いることができる。なお、各機能層の材質についてはこれらに限定されるものではない。
【0026】
このような構造を有するリチウムイオン二次電池モジュール1は、薄型で折り曲げ容易である。また、負極活物質層12を図示したような凹凸を有する立体的構造として、その体積に対する表面積を大きくしているので、薄い固体電解質層13を介した正極活物質層14との対向面積を大きく取ることができ、高効率・高出力が得られる。このように、上記構造を有するリチウムイオン電池は小型で高性能を得ることができるものである。
【0027】
次に、上記したリチウムイオン二次電池モジュール1を製造する方法について説明する。従来、この種のモジュールは各機能層に対応する薄膜材料を積層することによって形成されてきたが、この製造方法ではモジュールの高密度化に限界がある。また、前記した特許文献1に記載の製造方法では、工程が多く製造に時間がかかり、また各機能層間の分離が難しい。これに対し、以下に説明する製造方法では、少ない工程で、また既存の処理装置を用いて、上記のような構造のリチウムイオン二次電池モジュール1を製造することが可能である。
【0028】
図2は図1の電池の製造方法の一例を示すフローチャートである。この製造方法では、まず以下にその構造を説明するシート状ヒーター体10の一方面に、負極集電体11となる金属箔、例えば銅箔を貼り付けて積層体100を作成する(ステップS101)。
【0029】
図3はシート状ヒーター体の構造の一例を示す図である。シート状ヒーター体10は、例えばポリイミド等の絶縁性樹脂製シート101に例えばニクロム線等のヒーター102を挟み込んだ構造を有しており、発熱体102はシート101の全面に略均等に配置される。ヒーター102にはタブ電極103,104が接続されており、これらのタブ電極103,104に外部電源6が接続されると、ヒーター102に通電されて該ヒーター102が発熱する。本実施形態において必要なヒーター102の到達温度は200℃程度である。そして、このような構造を有するシート状ヒーター体10に対して、負極集電体11がその一方主面(ヒーター側主面)11bを密着させるように貼り付けられて、積層体100が形成される。ヒーター102と負極集電体11とは樹脂製シート101によって電気的に絶縁され、ヒーター通電時の負極集電体による短絡を防止している。
【0030】
次に、こうして形成された積層体100に外部電源6を接続し、ヒーター102への通電を開始する(ステップS102)。これによりヒーター102が発熱して、積層体100が所定の温度に加熱される。この状態で、負極集電体11主面のうちヒーター側主面11bとは反対側の他方主面(活物質側主面)11aに対し、負極活物質を含む負極活物質塗布液をノズルディスペンス法、中でも塗布液を吐出するノズルを塗布対象面に対し相対移動させるノズルスキャン法により塗布する(ステップS103)。塗布液としては、例えば、前記した負極活物質を含む有機系LTO材料を用いることができる。塗布液には、負極活物質の他に、導電助剤としてのアセチレンブラックまたはケッチェンブラック、結着剤としてのポリフッ化ビニリデン(PVDF)、スチレンブタジエンラバー(SBR)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルアルコール(PVA)またはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、溶剤としてのN−メチル−2−ピロリドン(NMP)などを混合したものを用いることができる。なお、負極活物質材料としては上記したLTOの他に例えば黒鉛、金属リチウム、SnO2、合金系などを用いることが可能である。
【0031】
図4はノズルスキャン法による材料塗布の様子を模式的に示す図である。より詳しくは、図4(a)はノズルスキャン法による塗布の様子をX方向から見た図、図4(b)および図4(c)は同じ様子をそれぞれY方向、斜め上方から見た図である。ノズルスキャン法によって塗布液を基材に塗布する技術は公知であり、本方法においてもそのような公知技術を適用することが可能であるので、装置構成については説明を省略する。
【0032】
ノズルスキャン法では、上記有機系LTO材料を塗布液として吐出するための吐出口311を1つまたは複数穿設されたノズル31を銅箔(負極集電体)11の上方に配置し、吐出口311から一定量の塗布液32を吐出させながら、ノズル31を銅箔11に対し相対的に矢印方向Dnに一定速度で走査移動させる。こうすることで、銅箔11の活物質側主面11aには塗布液32がY方向に沿ったライン状に塗布される。ノズル31に複数の吐出口311を設けることで1回の走査移動で複数のストライプを形成することができ、必要に応じて走査移動を繰り返すことで、銅箔11の全面にライン状に塗布液を塗布することができる。これを乾燥硬化させることで、銅箔11の上面に負極活物質によるライン状パターン121が形成される。
【0033】
このとき、ヒーター102によって銅箔11が加熱されているため、銅箔表面に触れた負極活物質塗布液からは溶剤が急速に揮発し、該塗布液は粘度が増大して流動性を失う。このため、銅箔11表面(活物質側主面11a)に塗布された塗布液はほとんど周囲に流れ広がることなく、吐出直後の形状を維持したまま乾燥硬化する。したがって、ノズル31における吐出口311の断面形状および配列ピッチを適宜設定することにより、この実施形態では、任意の断面形状やピッチを有するライン状パターン121を形成することができる。このことは、幅に対する高さの比、すなわちアスペクト比の高いパターンを形成したり、微細なパターンを高密度に形成することを可能にする。このため、活物質の使用量(体積)に対して表面積の大きな負極活物質層12を形成することができる。
【0034】
この時点では、略平坦な銅箔11の活物質側主面11aに対して負極活物質層12を部分的に盛り上げた状態となっており、単に上面が平坦となるように塗布液を塗布する場合に比べて、活物質の使用量に対する表面積を大きくすることができるので、後に形成される正極活物質との対向面積を大きくして高出力を得ることができる。ライン状パターン121の形成後、ヒーターへの通電を終了する(ステップS104)。こうして、リチウムイオン二次電池モジュール1の構成要素のうち負極用電極に相当する積層体200が形成される。
【0035】
図2のフローチャートの説明を続ける。こうして形成された負極用電極、すなわちシート状ヒーター体10、銅箔11および負極活物質層12を積層してなる積層体200の上面に対し、適宜の塗布方法、例えばスピンコート法により電解質塗布液を塗布する(ステップS105)。電解質塗布液としては、前記した高分子電解質材料、例えばポリエチレンオキシド、ポリスチレンなどの樹脂、支持塩としての例えばLiPF6(六フッ化リン酸リチウム)および溶剤としての例えばジエチレンカーボネートなどを混合したものを用いることができる。
【0036】
図5はスピンコート法による材料塗布の様子を模式的に示す図である。シート状ヒーター体10上の銅箔11にライン状パターン121からなる負極活物質層12を積層した積層体200は、鉛直方向(Z方向)の回転軸周りを所定の回転方向Drに回転自在の回転ステージ42に略水平に載置される。そして、回転ステージ42が所定の回転速度で回転し、回転ステージ42の回転軸上の上部位置に設けられたノズル41から高分子電解質材料を含む塗布液43が積層体200に向かって吐出される。積層体200に滴下された塗布液は遠心力によって周囲に広がり、余分な液は積層体200の端部から振り切られる。こうすることで、積層体200の上面は薄く均一な塗布液によって覆われる。スピンコート法では、塗布液の粘度および回転ステージ42の回転速度によって膜厚を制御することができ、また本件積層体200のような表面に凹凸構造を有する被処理物に対してもその凹凸に沿った厚さの均一な薄膜を形成することについても十分な実績がある。
【0037】
固体電解質層13の厚さについては任意であるが、正負の活物質層間が確実に分離され、また内部抵抗が許容値以下となるような厚さであることが必要である。例えば20μm〜50μmとすることができる。なお、表面積を増大させるために設けた負極活物質層12の凹凸の意義を滅却しない、という観点からは、固体電解質層13の厚さ(図1(b)の符号t13)が負極活物質層12bの凹凸の高低差(図1(b)の符号t12)よりも小さいことが望ましい。
【0038】
図2のフローチャートの説明を続ける。こうして形成された、シート状ヒーター体10、銅箔11、負極活物質層12、固体電解質層13を積層してなる積層体に対して、適宜の方法、例えば公知のナイフコート法により正極活物質を含む正極活物質塗布液が塗布されて、正極活物質層14が形成される(ステップS106)。正極活物質を含む塗布液としては、例えば、前記した正極活物質と、導電助剤としての例えばアセチレンブラック、結着剤としてのSBR、分散剤としてのカルボキシメチルセルロース(CMC)および溶剤としての純水などを混合した水系LCO材料を用いることができる。正極活物質材料としては、上記したLCOの他、LiNiO2またはLiFePO4、LiMnPO4、LiMn24、またLiMeO2(Me=Mxyz;Me、Mは遷移金属、x+y+z=1)で代表的に示される化合物、例えばLiNi1/3Mn1/3Co1/32、LiNi0.8Co0.15Al0.052などを用いることができる。また、塗布方法としては、以下に例示するナイフコート法のほか、バーコート法やスピンコート法のように、平面上に平坦な膜を形成することが可能な公知の塗布方法を適宜採用することができる。
【0039】
図6はナイフコート法による正極活物質塗布の様子を模式的に示す図である。積層体200に固体電解質層13をさらに積層してなる積層体300の表面に対して、正極活物質を含む塗布液が図示しないノズルから吐出されると、積層体300の上面に近接配置されたブレード52がその下端を塗布液に接触させながら積層体上面を矢印方向Dn3に移動する。これにより、塗布液54の上面が平らに均される。このような塗布方法を実行する装置(ナイフコータ)としては、例えば特開平07−289973号公報に記載のものを用いることができる。
【0040】
このようにして正極活物質を含む塗布液54をブレード52により均しながら積層体300に塗布することで、下面が固体電解質層13の凹凸に沿った凹凸を有する一方、上面が略平坦な正極活物質層14が、シート状ヒーター体10、負極集電体11、負極活物質層12、固体電解層13を積層してなる積層体300上に形成される。正極活物質層14の厚さとしては20μm〜100μmが適当である。
【0041】
図2に戻って、こうして形成された正極活物質層14の上面に、正極集電体15となる金属箔、例えばアルミニウム箔を積層する(ステップS107)。このとき、先のステップS106で形成された正極活物質層14が硬化しないうちに、その上面に正極集電体15を重ねることが望ましい。こうすることで、正極活物質層14と正極集電体15とを互いに密着させて接合することができる。また正極活物質層14の上面は平らに均されているので、正極集電体15を隙間なく積層することが容易となっている。以上のようにして、図1(a)に示したリチウムイオン電池モジュール1を製造することができる。
【0042】
以上のように、この実施形態の電池の製造方法では、負極活物質塗布液をノズルスキャン法により負極集電体11上に塗布することで、ラインアンドスペース構造を有する負極活物質層12を形成する。これにより、材料の体積に対して表面積の大きな負極活物質層12を有する負極側電極を構成することができる。ノズルスキャン法を用いた塗布によれば、前記した従来技術のインクジェット法に比べてはるかに多量の塗布液を連続的に吐出することができるので、高低差の大きな凹凸パターンを有する負極活物質層12を短時間で形成することができる。
【0043】
また、予めシート状ヒーター体10と負極集電体11とを積層しておき、シート状ヒーター体10に設けたヒーター102に通電し負極集電体11を加熱しているため、負極集電体11に塗布された負極活物質塗布液が短時間で乾燥する。これにより、塗布液が流れ広がるのを抑制することができるため、アスペクト比の高い微細なパターンの負極活物質層12を形成することが可能である。このような効果を得るためには通常ホットプレート上で塗布液を塗布する等の手法が採られるが、この実施形態ではヒーター自体を電池に作り込んでいるため、より効果的に塗布液を加熱することができる。
【0044】
そして、こうして形成された負極側電極表面の凹凸に倣った凹凸を有する略均一な固体電解質層13をスピンコート法により形成し、さらに正極活物質層14および正極集電体15を順次積層してリチウムイオン二次電池モジュール1が完成する。こうして製造されるリチウムイオン二次電池モジュール1は薄型で電気化学特性が良好である。そして、これを用いて構成される電池は有機溶剤を含まない全固体電池であり、取り扱いが容易であるとともに、小型で優れた性能を有するものである。このような電池は、電気自動車、電動アシスト自転車、電動工具、ロボットなどの機械類や、パーソナルコンピュータ、携帯電話や携帯型音楽プレイヤー、デジタルカメラやビデオカメラなどのモバイル機器、スマートICカード、ゲーム機、ポータブル型の測定機器、通信機器や玩具など各種の電子機器に使用することが可能である。
【0045】
以下に、本発明にかかる電池を搭載した機器の例について説明するが、これらは本実施形態の電池を応用しうる機器の態様の一部を例示するものであって、本発明にかかる電池の適用範囲がこれらに限定されるものではない。
【0046】
図7はこの発明にかかる電池を搭載した機器の一例としての車両、具体的には電気自動車を模式的に示す図である。この電気自動車70は、車輪71と、該車輪71を駆動するモータ72と、該モータ72に電力を供給する電池73とを備えている。この電池73として、上記したリチウムイオン二次電池モジュール1を多数直並列接続した構成を採用することができる。このように構成された電池73は、高い電流供給能力を有するとともに短時間での充電が可能であるため、電気自動車70のような車両の駆動用電源として好適なものである。
【0047】
この分野においては、航続距離の延長および充電時間の短縮が求められており、本発明にかかる電池はこれらの要求に応えることのできるものである。すなわち、本発明によれば薄型で高出力の電池モジュールを構成することができ、重量当たりの出力が大きいので長い航続距離を得ることができ、また上記したように、ヒーターによる加熱を併用することで短時間での充電が可能となる。
【0048】
図8はこの発明にかかる電池を適用した電子機器の一例を示す図である。より具体的には、図8(a)は電子機器の一例としての電池内蔵型のICカードの外観斜視図であり、図8(b)はその電気的構成を示すブロック図である。図8(a)に示すように、このICカード80は、薄いプラスチック製のカード本体81に、本発明にかかる電池800、ICを含む回路ブロック82およびループ状のアンテナ83が作り込まれた構造となっている。
【0049】
アンテナ83は外部機器との間で電波を送受信して、外部機器と回路ブロック82とのデータ通信を担う。回路ブロック82は外部機器から受信したデータに対し所定のデータ処理を施したり、該データを記憶したり、送信すべきデータをアンテナ83に送出したりする。電池800は回路ブロック82が動作するための電源として機能する。図8(b)に示すように、回路ブロック82はICを含み種々のデータ処理を行うメイン回路部820の他に、整流部821,822を備えており、アンテナ83が受信した電波はメイン回路部820に送られるほか、整流部821,822によって整流され直流化される。
【0050】
電池800は前記したリチウムイオン二次電池モジュール1(図1)と同様の構成を有するものであり、実質的に電池として動作する電池部801と、該電池部801と一体的に積層されたヒーター部802とを備えている。電池部801は整流部822からの電力によって充電されるが、同様にこのとき整流部821からの電力がヒーター802に与えられる。これによりヒーター802が発熱し電池部801を温めるため、充電動作は電池部801が温められた状態で行われることになる。
【0051】
固体電解質を用いた全固体電池では、固体電解質のイオン導電性が充放電速度を律速するが、固体電解質のイオン導電性は高温ほど高くなるため、このように電解質を温めた状態で充電を行うことにより、急速充電が可能となる。このことは、例えば次のような利用法を可能とする。
【0052】
この種のICカードの利用法としては、例えば交通機関における自動改札システムのように、利用者がICカード(乗車カード)を携帯し、施設に設置された読み取り機(改札機)にICカードを近づけることで読み取り機とICカードとの間で通信を行うものがある。このようなシステムにおいては、利用者がICカード80を読み取り機に近接通過させるのは僅かな時間である一方、読み取り機は十分な電源容量を有している。したがって、ICカード80に設けられたヒーター802を発熱させつつ電池部801を充電するのに十分な電力をICカード80に伝達することができれば、短時間でも電池部801を十分に充電することが可能である。
【0053】
一方、こうして充電された電池部801によって動作するメイン回路部820は急速放電を要するものではないので、電池部801は常温でも十分にメイン回路部820の電源として機能する。このように、充電時には電池部801と共に作り込まれたヒーター802を外部からの電力によって発熱させつつ充電を行うことで、電池部801を短時間で充電することが可能である。電解質が電解液を使用したものであれば加熱による電解液の蒸発や有機溶剤の発火等が問題となり得るが、固体電解質においてはこのような問題は生じない。
【0054】
ここでは読み取り機に対して非接触のICカードを例示したが、例えば商用電源に接続することで充電するプラグイン型の電気自動車のように、外部電源と電池とを電気的に接続して充電を行う機器においても、外部電源側にヒーターに電力を与える能力を持たせることで同様に急速充電が可能である。この場合、充電時のヒーターのオン/オフを切り替えられるようにしておき、急速充電を要する時のみヒーターを使用するようにしてもよい。
【0055】
なお、上記したICカード80における電池800は、カード本体81の内部に収容することができるほか、該カード本体81の表面に作り込むことが可能である。すなわち、カード本体81の表面にまずヒーター802を貼り付け(または後述のように塗布により形成し)、その上に集電体層、活物質層等を順次積層してゆくことで、カード本体81の表面に電池800を構成することができる。このとき、塗布された塗布液をヒーター802により加熱することでその乾燥を促進し、微細パターンを有し性能の良好な電池を構成することが可能である。ホットプレート上にカード本体を載置しての加熱では塗布液に十分な熱が伝わらなかったり、カード本体が熱により劣化するなどの問題が生じうるが、電池にヒーターを作り込むことでこのような問題は回避することができる。このような利用形態においては、電池の形成後に電池表面を覆う絶縁保護層をさらに設けることが望ましい。
【0056】
以上説明したように、この実施形態では、負極集電体11が本発明の「集電体」および「第1集電体層」に相当する一方、負極活物質層12が本発明の「活物質層」および「第1活物質層」に相当している。また、シート状ヒーター体10、特にヒーター102が本発明の「ヒーター」に相当している。また、この実施形態では、固体電解質層13、正極活物質層14および正極集電体15がそれぞれ本発明の「電解質層」、「第2活物質層」および「第2集電体層」に相当している。また、シート状ヒーター体10、負極集電体11および負極活物質層12を積層してなる積層体200が、本発明の「電池用電極」に相当している。また、シート状ヒーター体10の樹脂製フィルム101が本発明の「絶縁層」に相当している。
【0057】
また、図2に示す電池の製造方法において、ステップS101、S102およびS103がそれぞれ本発明の「ヒーター層積層工程」、「加熱工程」および「活物質層形成工程」に相当している。また、図7の電気自動車70が本発明の「車両」に相当している。また、図8のICカード80においては、カード本体81が本発明の「筐体」として機能しており、メイン回路部820が本発明の「回路部」として機能している。また、整流部821,822が本発明の「充電部」として機能している。
【0058】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記実施形態におけるシート状ヒーター体10は、線状の発熱体であるニクロム線をヒーター102としているが、例えば他の線材や面状の抵抗体からなるヒーターを有するものであってもよい。また、ヒーターは通電により発熱するものに限定されず、例えば外部からの電磁誘導によって発熱するものであってもよい。
【0059】
また例えば、上記実施形態では、予めヒーター102が組み込まれたシート状ヒーター体10と、負極集電体11としての銅箔とを貼り合わせているが、集電体とヒーターとを積層した積層体を形成する方法としてはこれ以外にも例えば次のような方法がある。
【0060】
図9は集電体とヒーターとを積層する第2の方法を例示する図である。この例では、負極集電体としての銅箔をシート状ヒーター体10に貼り付けるのではなく、乾燥後に負極集電体として機能する粉末状の銅粒子を含む導電性ペーストをシート状ヒーター体10に塗布し、これを乾燥させることによって、シート状ヒーター体10と負極集電体11とを積層してなる積層体100aを形成する。
【0061】
導電性ペーストを塗布する塗布方法については任意であるが、例えば図9に示すナイフコート法を用いることができる。ナイフコート法によって塗布液を塗布するための塗布装置(ナイフコータ)は、X方向に移動自在に構成されて導電性ペーストを吐出する吐出ノズル91と、吐出ノズル91から吐出された塗布液をシート状ヒーター体10の表面に沿って均すナイフ状のブレード92と、該ブレード92を支持する支持ブロック93をY方向に水平移動させる移動機構94とを備えている。X方向に移動する吐出ノズル91が導電性ペーストをシート状ヒーター体10上に吐出すると、下端部がシート状ヒーター体10表面と所定のギャップを隔てて支持されたブレード92が支持ブロック93と共に移動機構94の作動によりY方向に水平移動することで、ペーストがシート状ヒーター体10上で平らに均されて、シート状ヒーター体10の上面に薄く均一な負極集電体層11が積層されてなる積層体100aが形成される。
【0062】
なお、負極集電体層11を形成する方法については上記したナイフコート法に限定されるものではなく、例えばドクターブレード法によってもよい。これ以外にも例えば、カーテンコータ、ファウンテンコータ(ダイコータ)、バーコータ、スピンコータなど、薄く平滑な膜を形成するのに適した種々の公知の塗布装置を適用することが可能である。また、以下に示すように、ノズルディスペンス法、特に塗布液を吐出するノズルと塗布対象物とを相対移動させるノズルスキャン法を用いた塗布によってもよい。
【0063】
図10は集電体とヒーターとを積層する第3の方法を例示する図である。ノズルスキャン法による塗布では、粉末状の銅粒子を含む導電性ペーストを連続的に吐出する吐出ノズル97をシート状ヒーター体10上でY方向に往復走査移動させながら、1走査ごとにX方向に少しずつ位置を変えてゆく。このとき、X方向への吐出ノズル97の送りピッチは、該吐出ノズル97から吐出される塗布液98の幅とほぼ等しくなるようにする。吐出ノズル97の吐出口径としては、例えば0.2mm〜1mm程度とすることができる。こうすることによっても、シート状ヒーター体10のほぼ全面に負極集電体層11を積層した積層体100bを形成することが可能となる。
【0064】
図11は集電体とヒーターとを積層する第4の方法を例示する図である。上記とは逆に、乾燥後にヒーターとして作用する抵抗体材料を含む塗布液を負極集電体11に塗布することによって、ヒーターと集電体との積層体を形成するようにしてもよい。この例の積層体100cでは、負極集電体11たる銅箔のヒーター側主面11bに対し、抵抗体材料を含む塗布液をノズルスキャン法により連続的に塗布し乾燥硬化させることで、ヒーター層10cを形成している。さらには、電池を搭載すべき電子機器の筐体に対し、塗布によってヒーター層、集電体層等を順次形成して電池を形成するようにしてもよい。
【0065】
また例えば、上記実施形態では、ヒーター102により負極集電体11を加熱しながら負極活物質塗布液を塗布するようにしているが、該塗布液を塗布してからヒーター102による加熱を行うようにしてもよい。また、この実施形態では負極活物質層12の形成後はヒーター102への通電を停止しているが、その後に固体電解質層13、正極活物質層14を形成するための塗布液の塗布の際にも、加熱による乾燥促進は製造工程の時間短縮を図る上で有効である。したがって、これらの各機能層を形成する際にも、ヒーター102へ通電して塗布液を加熱するようにしてもよい。
【0066】
また例えば、上記した実施形態では、固体電解質層13を形成するのにスピンコート法を適用しているが、塗布対象面の凹凸に追従した薄膜を形成することのできる方法であれば他の方法、例えばスプレーコート法によって高分子電解質を含む塗布液を塗布するようにしてもよい。
【0067】
また例えば、上記実施形態では、負極活物質層12を互いに平行な多数のライン状パターン121からなるラインアンドスペース構造としているが、負極活物質の塗布パターンはこれに限定されるものではなく、表面に凹凸構造を設けて表面積を大とされたパターンであれば任意のパターンを用いることができる。また、各ライン状パターン121が互いにつながっていてもよい。また、負極集電体11の表面全体が、凹凸を有する負極活物質層によって覆われた構造であってもよい。
【0068】
また例えば、上記実施形態では、正極活物質層14を形成するのにナイフコート法を適用しているが、塗布対象面と接する下面がその凹凸に追従し、かつ上面を略平坦に仕上げることが可能な塗布方法であれば他の方法であってもよい。このような目的を達成するには塗布液の粘度があまり高くないことが望ましいが、言い換えれば、塗布液の粘度が適切に選ばれていれば他の塗布方法でも下面を凹凸にかつ上面を略平坦に仕上げることは可能であり、例えばノズルスキャン法によって塗布対象面の凹凸のうち凹部に塗布液を流し込むようにしてもよい。
【0069】
また、上記実施形態では負極集電体上に負極活物質層、固体電解質層、正極活物質層および正極集電体を順次積層しているが、これとは反対に、正極集電体上に正極活物質層、固体電解質層、負極活物質層および負極集電体をこの順番に積層するようにしてもよい。
【0070】
また、上記実施形態で例示した集電体、活物質、電解質等の材料はその一例を示したものであってこれに限定されず、リチウムイオン電池の構成材料として用いられる他の材料を使用してリチウムイオン電池を製造する場合においても、本発明の製造方法を好適に適用することが可能である。また、リチウムイオン電池に限らず、他の材料を用いた化学電池(全固体電池)全般の製造に本発明を適用することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0071】
この発明は、電解質として例えばポリマー電解質などの固体電解質を用いた全固体電池の製造技術に好適に適用することができ、特に小型で電気化学特性の良好な電池を優れた生産性で製造するのに適している。
【符号の説明】
【0072】
10 シート状ヒーター体
11 負極集電体(集電体、第1集電体層)
12 負極活物質層(活物質層、第1活物質層)
13 固体電解質層(電解質層)
14 正極活物質層(第2活物質層)
15 正極集電体(第2集電体層)
70 電気自動車(車両)
80 ICカード(電子機器)
81 カード本体(筐体)
102 ヒーター
200 積層体(電池用電極)
820 メイン回路部(回路部)
821,822 整流部(充電部)
S101 ヒーター層積層工程
S102 加熱工程
S103 活物質層形成工程

【特許請求の範囲】
【請求項1】
集電体とヒーターとを積層して、前記集電体の一方表面側にヒーター層を形成するヒーター層積層工程と、
前記集電体表面のうち前記ヒーター層が設けられた面とは反対側の他方表面に、活物質材料を含む塗布液を塗布して活物質層を形成する活物質層形成工程と、
前記塗布液を塗布しながら、または前記塗布液を塗布した後に、前記ヒーターを発熱させて、前記集電体に塗布された前記塗布液を加熱する加熱工程と
を備えることを特徴とする電池用電極の製造方法。
【請求項2】
前記活物質層形成工程では、前記集電体と接する面と反対側の表面が凹凸を有する前記活物質層を形成する請求項1に記載の電池用電極の製造方法。
【請求項3】
前記活物質層形成工程では、前記集電体に対し相対移動するノズルから吐出させた前記塗布液を前記集電体の表面に塗布する請求項1または2に記載の電池用電極の製造方法。
【請求項4】
前記ヒーター層積層工程では、シート状の前記ヒーターに、前記集電体の材料物質を含む塗布液を塗布して前記集電体を形成する請求項1ないし3のいずれかに記載の電池用電極の製造方法。
【請求項5】
前記ヒーター層積層工程では、通電により発熱する前記ヒーターと、前記集電体とを絶縁層を介して積層する一方、前記加熱工程では、前記ヒーターに通電して発熱させる請求項1ないし4のいずれかに記載の電池用電極の製造方法。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかの製造方法により製造した電池用電極に、電解質層、第2活物質層および第2集電体層を積層することを特徴とする電池の製造方法。
【請求項7】
前記電解質層、前記第2活物質層および前記第2集電体層のうち少なくとも1つを、当該層の材料物質を含む塗布液を塗布することによって形成し、しかも、該塗布液を塗布しながら、または塗布した後に、前記ヒーターを発熱させて塗布液を加熱する請求項6に記載の電池の製造方法。
【請求項8】
ヒーター層と、第1集電体層と、第1活物質層と、電解質層と、第2活物質層と、第2集電体層とをこの順番に積層してなることを特徴とする電池。
【請求項9】
請求項8に記載の電池を搭載することを特徴とする車両。
【請求項10】
回路部と、
前記回路部を保持する筐体と、
前記筐体の表面に形成されて前記回路部に電力を供給する請求項8に記載の電池と
を備えることを特徴とする電子機器。
【請求項11】
外部から供給される電力を受電して、その電力により前記ヒーターを発熱させながら前記電池を充電する充電部を備える請求項10に記載の電子機器。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−18786(P2012−18786A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−154466(P2010−154466)
【出願日】平成22年7月7日(2010.7.7)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】