説明

靴の衝撃緩和用弾性シート材

【課題】 靴の中底の先端近傍部及び/又は踵部に使用する衝撃緩和シート部材を形成するための靴の衝撃緩和用弾性シート材を提供すること。
【解決手段】 衝撃緩和機能を有する衝撃緩和シート部材20は、シリコンゴム等の弾性力を有する素材により形成され、表面に断面半球形状の半球突起と各半球突起が接合して形成される谷部に通気孔を設けたものである。衝撃緩和シート部材20は、シート状成型品とした衝撃緩和用弾性シート材から任意の形状に切り抜き形成したものであり、1枚又は複数枚を中敷30に装着して使用するか又は靴の中底に直接張り付けて使用する。衝撃緩和シート部材20は、使用枚数を選択することにより、ファッション性を損なうことなく衝撃緩和機能を奏させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、靴の衝撃緩和用弾性シート材に関するものであり、さらに詳しくは、中敷に装着して使用し又は靴の中底に直接張り付けて使用することにより、衝撃緩和機能と通気性機能の両機能を奏する靴の衝撃緩和用弾性シート材に関している。
【背景技術】
【0002】
本願発明者は、衝撃吸収機能及び通気性機能の両機能を備えた靴を下記の特許文献1によって提案している。
【特許文献1】特許第3011408号公報
【0003】
特許文献1に記載された靴(以下、「先願の靴」という。)は、靴の底部11に、靴の内側に向って開口する凹窪13を設け、該凹窪13内に、衝撃吸収性能と通気性能を有する弾性体14を嵌合したものであって、当該弾性体14が、弾力があり表面に複数の空気流通孔18を形成したケース16内に弾力性を有する球粒17を隙間なくかつ複数層敷設したものであることを特徴としている。また、凹窪13は、底部11の先端部及び踵部に設けられたことを特徴としており、球粒17は、弾力性を有するゴム製の球体であることを特徴としている。なお、球粒17は、実施態様として、直径5ミリメートル、硬度40のゴム製球体を使用することが提案されている。
【0004】
先願の靴は、弾力性を有する球粒を隙間なく複数層に敷設して形成した弾性体を靴底の先端部及び踵部に設けたものであるから、歩行時の衝撃を弾性体が吸収する衝撃吸収性能を奏するものであり、同時に、球粒を収容したケースに空気流通孔を設けたことにより、弾性体の圧縮及び復元によって通気作用を促進させる通気性能を奏することができるものとなっている。
【0005】
しかし、先願の靴は、靴底の先端部及び踵部に弾性体を埋め込む構造であったから、弾性体を構成するために数多くの球粒を必要としていた。また、先願の靴は、球粒を複数層敷設して弾性体を構成しているが、スニーカーやウォーキングシューズに限らず、通勤等に使用するビジネスシューズにも適用できることを目的としたものであって、機能性を重視したあまり弾性体が厚くなってしまい、中敷に埋め込んだ場合には、中敷が厚くなりファッション性に欠けるきらいがあった。この他、先願の靴は、上記弾性体が球粒を隙間なくかつ複数層敷設したものではあるが、使用中に球粒が移動することがあったので、必ずしも使い勝手がよいと言えるものではなかった。
【0006】
このため、先願の靴は、中敷を使用しない靴並びにファッション性が要求される女性用シューズには適合し難いと言った問題があった。
【0007】
衝撃緩和機能を備えた靴は、スニーカー又はウォーキングシューズに限らず、ビジネスシューズにおいても要求されており、また、女性用シューズは中敷を使用しないことが多いが、パンプスをはじめミュール又はサンダル等においても、ファッション性を損なわない範囲で衝撃緩和機能を有するものが要望されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、靴の中底の先端近傍部及び/又は踵部に使用する衝撃緩和シート部材を形成するための靴の衝撃緩和用弾性シート材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
解決手段の第1は、衝撃緩和機能を有する素材により形成された衝撃緩和用弾性シート材が、シート基板の表面に断面半球形状の半球突起を隙間なく形成するとともに、該各半球突起が接合して形成される谷部に通気孔を設けてシート状成型品としたものであって、適宜形状に切り抜いて靴の中底の先端近傍部及び/又は踵部に使用する衝撃緩和シート部材を形成することを特徴とするものである。
【0010】
解決手段の第2は、解決手段の第1において、衝撃緩和シート部材が、中敷の先端近傍部及び/又は踵部に装着して使用されることを特徴とするものである。
【0011】
解決手段の第3は、解決手段の第1において、衝撃緩和シート部材が、靴の中底の先端近傍部及び/又は踵部に直接張り付けて使用されることを特徴とするものである。
【0012】
解決手段の第4は、解決手段の第1から第3のいずれかにおいて、衝撃緩和シート部材が、靴の中底の先端近傍部及び/又は踵部に1枚又は複数枚が使用されることを特徴とする。
【0013】
解決手段の第5は、衝撃緩和用弾性シート材が、衝撃緩和機能を有する素材により形成されており、シート基板の表面に断面半球形状の半球突起を隙間なく形成するとともに、該各半球突起が接合して形成される谷部に通気孔を設けてシート状成型品としたものであって、該衝撃緩和用弾性シート材から適宜形状に切抜き形成して靴底の先端近傍部及び/又は踵部に1枚又は複数枚を使用することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
請求項1は、衝撃緩和用弾性シート材が衝撃緩和機能を有する素材からシート状成型品に形成したものであるから、適宜形状に切抜き形成した衝撃緩和シート部材を、中敷に埋め込み又は靴の中底に直接張り付けて使用したときに、衝撃緩和機能及び通気性機能の両機能を奏するので、靴を長時間連続して履いても疲れることがないだけでなく、靴内の蒸れを改善できることの効果を有している。
【0015】
また、請求項1は、衝撃緩和用弾性シート材から適宜形状に切抜き形成するものであるから、当該衝撃緩和シート部材を靴の大きさ又は種類に応じて任意の形状に形成することができる効果がある。
【0016】
さらに、請求項1は、衝撃緩和シート部材が、靴の中底表面を被覆した中底用シートと中底との間に直接張り付けた場合は、ファッション性を損なわずに衝撃緩和機能を発揮させることができる効果がある。
【0017】
請求項2は、衝撃緩和機能を有する中敷が得られることの効果がある他、衝撃緩和シート部材の使用枚数を選択することにより、衝撃緩和機能と通気性機能を有する中敷を得ることができる効果がある。
【0018】
請求項3は、衝撃緩和シート部材の使用枚数を選択することにより、ファッション性を損なわずに衝撃緩和機能を有する靴が得られるので、特に、女性用シューズであるパンプス、ミューズ又はサンダル等にも適用できる効果がある。
【0019】
請求項4は、衝撃緩和シート部材が1枚又は複数枚を使用するものであるから、靴の種類によって使用枚数を選択することができ、ファッション性を損なわずに衝撃緩和機能を発揮させることができる効果がある。
【0020】
請求項5は、衝撃緩和シート部材が、衝撃緩和機能を有する衝撃緩和用弾性シート材から適宜形状に切抜き形成されているから、中敷に埋め込んで使用し又は靴の中底に直接張り付けて使用することができる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
図1は本発明の衝撃緩和用弾性シート材を示しており、(A)は表側からみた全体の斜視図、(B)は裏側からみた全体の斜視図、図2は衝撃緩和用弾性シート材の一部拡大図であり、(A)は平面図、(B)はb−b断面図、(C)はc−c断面図、図3は本発明の衝撃緩和シート部材を靴の中敷に使用した図であり、(A)は斜視図、(B)は断面図、図4は本発明の衝撃緩和シート部材を靴の中敷に装着してビジネスシューズに使用した状態を示す断面図、図5は本発明の衝撃緩和シート部材を女性用パンプスの靴の中底に直接張り付けて使用した状態を示す斜視図である。
【0022】
図1,図2において、衝撃緩和用弾性シート材1は、シリコンゴム等の衝撃緩和機能を有する素材により形成されたものであって、シート基板10の表面に断面半球形状の半球突起11を隙間なく形成するとともに、該各半球突起11が接合して形成される谷部に通気孔12を設けてシート状成型品としたものである。
【0023】
図3において、20は衝撃緩和シート部材を示しており、上記衝撃緩和用弾性シート材1から適宜形状に切抜き形成したものであって、中敷30に埋め込んで使用し又は靴の中底に直接張り付けて使用することにより、衝撃緩和機能と通気性機能の両機能を奏させるものである。なお、上記衝撃緩和シート部材20は、足裏の先端近傍部及び/又は踵部に使用するものであり、その形状は、足裏の先端近傍に使用する場合は長円形に形成し、踵部分に使用する場合は円形に形成するが、切抜き形状が任意であることは勿論である。
【0024】
中敷30は、ウレタン等により形成されたものであり、先端近傍部及び/又は踵部に凹穴31,32を形成し、該凹穴31,32内に1枚又は複数枚の衝撃緩和シート部材20を装着してなるものである。また、衝撃緩和シート部材20を中敷30の凹穴31,32に装着するときは、半球突起11を設けた面又はシート基板10の裏面のいずれの面を表側に現わしてもよいが、実施形態では、半球突起11を設けた面が表面に現れるようにしている。
【0025】
図4は、中敷30を靴40に使用した状態を示しており、中敷30は、衝撃緩和シート部材20の装着面を靴底に向けるか又は装着面を靴の内部に向けて使用する。実施形態では、3枚の衝撃緩和シート部材20を装着面が靴底に向くようにして使用しており、当該衝撃緩和シート部材20は、衝撃緩和機能と通気性機能の両機能を奏するものである。なお、靴40は、ビジネスシューズ又はカジュアルシューズ等である。
【0026】
図5は、衝撃緩和シート部材20を女性用パンプス50に使用した状態を示しており、衝撃緩和シート部材20は、靴の中底表面を被覆した中底用シート(図示しない)の内側と靴の中底との間に直接張り付けたものであり、この場合は、ファッション性が損なわれないようにするために、当該衝撃緩和シート部材20は1枚のみを使用している。なお、衝撃緩和シート部材20は、ミューズ又はサンダル等にも使用できるものである。
【0027】
実施形態において、衝撃緩和用弾性シート材1は、シリコンゴムで形成され、シート基板10の厚み0.5〜1.0mm、半球突起11の直径5,0mm、高さ1.5〜2.5mm、また、通気孔12の直径1.0mmである。したがって、衝撃緩和用弾性シート材1は、全体の厚みが2.0〜3.5mmとなっている。
【0028】
衝撃緩和シート部材20は、靴を履いたときに体重が最もかかる先端近傍部(爪先部分と土踏まずの間)及び/又は踵部に1枚又は複数枚を使用するものであり、歩行中の衝撃を緩和し同時に通気作用を促進する。すなわち、歩行中、着地時に衝撃緩和シート部材20が圧縮されることで衝撃力が緩和される。また、衝撃緩和シート部材20が圧縮変形された後の復元力によって通気孔12から空気が出入するので、靴内の通気作用を促進し靴内が蒸れるのを改善する。
【0029】
実施形態では、衝撃緩和シート部材20を、中敷30に対し3枚重ねに装着しているので、衝撃緩和機能と通気性機能の両機能が促進されるが、1枚のみの使用であっても、これらの機能を奏するものである。
【0030】
衝撃緩和シート部材20は、半球突起11がシート基板10に一体成型されてシート状成型品に形成されたものであるから、衝撃緩和シート部材20が圧縮されたときでも、半球突起11が移動したりすることがないので、使用中の不快感が全くないものである。
【0031】
また、衝撃緩和シート部材20は、衝撃緩和用弾性シート材1から切抜き形成したものであるから、靴の大きさ又は種類に応じて任意の形状に形成できるだけでなく、衝撃緩和弾性シート材1を、シート状成型品として提供できるので、従来技術において、ゴム製球粒を複数層に敷設して衝撃吸収部材としての弾性体を得ていたものに比べ製造コストが低減され経済的になっている。
【0032】
この他、衝撃緩和シート部材20は、中敷30に装着して使用するときは1枚又は複数枚を使用し、ファッション性を重要視する女性用シューズに使用するときは1枚のみを使用するなど、使用する靴の種類に合わせて1枚から複数枚を選択できるので、あらゆる種類の靴に適合できるものとなっている。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明に係る衝撃緩和用弾性シート材を示しており、(A)は表側からみた全体の斜視図、(B)は裏側からみた全体の斜視図。
【図2】衝撃緩和用弾性シート材の一部拡大図であり、(A)は平面図、(B)はb−b断面図、(C)はc−c断面図。
【図3】本発明の衝撃緩和シート部材を中敷に使用した図であり、(A)は全体の斜視図、(B)は断面図。
【図4】本発明の衝撃緩和シート部材を中敷に装着してビジネスシューズに使用した状態を示す断面図。
【図5】本発明の衝撃緩和シート部材を女性用パンプスの靴の中底に直接張り付けて使用した状態を示す斜視図。
【符号の説明】
【0034】
1 衝撃緩和用弾性シート材
10 シート基板
11 半球突起
12 通気孔
20 衝撃緩和シート部材
30 中敷
31,32 凹穴
40 靴
50 女性用パンプス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
衝撃緩和機能を有する素材により形成された衝撃緩和用弾性シート材が、シート基板(10)の表面に断面半球形状の半球突起(11)を隙間なく形成するとともに、該各半球突起が接合して形成される谷部に通気孔(12)を設けてシート状成型品としたものであって、適宜形状に切り抜いて靴の中底の先端近傍部及び/又は踵部に使用する衝撃緩和シート部材(20)を形成することを特徴とする靴の衝撃緩和用弾性シート材。
【請求項2】
衝撃緩和シート部材(20)が、中敷の先端近傍部及び/又は踵部に装着して使用されることを特徴とする請求項1に記載の靴の衝撃緩和用弾性シート材。
【請求項3】
衝撃緩和シート部材(20)が、靴の中底の先端近傍部及び/又は踵部に直接張り付けて使用されることを特徴とする請求項1に記載の靴の衝撃緩和用弾性シート材。
【請求項4】
衝撃緩和シート部材(20)が、靴の中底の先端近傍部及び/又は踵部に1枚又は複数枚が使用されることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の靴の衝撃緩和用弾性シート材。
【請求項5】
衝撃緩和用弾性シート材(1)が、衝撃緩和機能を有する素材により形成されており、シート基板(10)の表面に断面半球形状の半球突起(11)を隙間なく形成するとともに、該各半球突起が接合して形成される谷部に通気孔(12)を設けてシート状成型品としたものであって、該衝撃緩和用弾性シート材から適宜形状に切抜き形成して靴の中底の先端近傍部及び/又は踵部に1枚又は複数枚を使用することを特徴とする靴の衝撃緩和シート部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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