ガラス基板の研磨方法、パッケージの製造方法、圧電振動子、発振器、電子機器並びに電波時計
【課題】ガラス基板の接合面の表面精度の向上を図り、キャビティ内の気密を確保することができるガラス基板の研磨方法、パッケージの製造方法、圧電振動子、発振器、電子機器並びに電波時計を提供する。
【解決手段】研磨剤を供給しつつリッド基板用ウエハ50の接合面53を研磨する、研磨工程を有するガラス基板の研磨方法であって、研磨工程は、研磨剤に酸化セリウムを主成分とする第1研磨剤を用いてリッド基板用ウエハ50の接合面53を研磨する前段ポリッシュ工程と、研磨剤にコロイダルシリカを主成分とする第2研磨剤を用いてリッド基板用ウエハ50の接合面53を研磨する後段ポリッシュ工程と、を有することを特徴とする。
【解決手段】研磨剤を供給しつつリッド基板用ウエハ50の接合面53を研磨する、研磨工程を有するガラス基板の研磨方法であって、研磨工程は、研磨剤に酸化セリウムを主成分とする第1研磨剤を用いてリッド基板用ウエハ50の接合面53を研磨する前段ポリッシュ工程と、研磨剤にコロイダルシリカを主成分とする第2研磨剤を用いてリッド基板用ウエハ50の接合面53を研磨する後段ポリッシュ工程と、を有することを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス基板の研磨方法、パッケージの製造方法、圧電振動子、発振器、電子機器並びに電波時計に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話や携帯情報端末機器には、時刻源や制御信号等のタイミング源、リファレンス信号源等として水晶等を利用した圧電振動子(パッケージ)が用いられている。この種の圧電振動子は、様々なものが知られているが、その1つとして、表面実装(SMD)型の圧電振動子が知られている。この種の圧電振動子としては、例えば互いに接合されたガラス材料からなるベース基板及びリッド基板と、両基板の間に形成されたキャビティと、キャビティ内に気密封止された状態で収納された圧電振動片と、を備えている。
【0003】
このような2層構造タイプの圧電振動子を製造する場合、リッド基板にキャビティ用の凹部を形成する一方、ベース基板上に圧電振動片をマウントした後、接合材を介して両ウエハを陽極接合する。これにより、キャビティ内に圧電振動片が気密封止された圧電振動子を製造している。
【0004】
ところで、上述した圧電振動子の製造工程において、ベース基板とリッド基板とを接合する場合、キャビティの気密性を確保するためには、両基板の接合代(接合面の面積)及び接合面の表面精度を確保して、平坦面同士で接合することが重要になる。
そこで、例えば、特許文献1には、両基板を陽極接合するために、その前段で両基板の接合面を研磨して表面精度を向上させる研磨工程を有する構成が記載されている。研磨工程の一例としては、研磨パッドを設けた上下一対の定盤間に、基板を保持するキャリアを挟み、研磨剤を供給しながら定盤とキャリアとを相対的に回転、移動させて基板両面を同時に研磨する方法が知られている。なお、研磨剤には、一般的にガラス面の研磨に使用される酸化セリウム等が好適に用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−13628号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近時では、表面精度の更なる向上が要望されている。しかしながら、上述した研磨方法では、表面精度の向上に限界があり(例えば、表面粗さRa=3nm程度)、接合面に研磨痕が残存する虞がある。この場合には、その後に形成される接合材との密着性が悪く、キャビティの気密性や信頼性を確保することができない虞がある。すなわち、両基板を接合しようとすると、互いの接合面との間に隙間が生じてキャビティ内の気密を確保することができず、圧電振動子の振動特性が安定しない場合がある。
【0007】
そこで本発明は、このような事情に考慮してなされたもので、ガラス基板の接合面の表面精度の向上を図り、キャビティ内の気密を確保することができるガラス基板の研磨方法、パッケージの製造方法、圧電振動子、発振器、電子機器並びに電波時計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のガラス基板の研磨方法は、研磨剤を供給しつつガラス基板の表面を研磨する、研磨工程を有するガラス基板の研磨方法であって、前記研磨工程は、前記研磨剤に酸化セリウムを主成分とする第1研磨剤を用いて前記ガラス基板の前記表面を研磨する前段ポリッシュ工程と、前記研磨剤にコロイダルシリカを主成分とする第2研磨剤を用いて前記ガラス基板の前記表面を研磨する後段ポリッシュ工程と、を有することを特徴としている。
【0009】
この構成によれば、第1研磨剤を用いた前段ポリッシュ工程の後に、コロイダルシリカを主成分とした第2研磨剤を用いて後段ポリッシュ工程を行うことで、ガラス基板の表面の表面精度の向上を図ることができるとともに、平坦面を大きく確保することができるため、ガラス基板の表面を接合する場合の接合代を大きく確保することができる。その結果、気密性を確保した上で、ガラス基板を確実に接合することができる。
【0010】
また、前記ガラス基板の前記表面には、凹部が形成され、前記研磨工程では、前記凹部の周囲を取り囲む隔壁の先端面を研磨することを特徴としている。
この構成によれば、ガラス基板の隔壁の先端面を平坦化することで、隔壁の先端面を接合した場合に、隔壁の内側の気密性を確保した上で、ガラス基板を確実に接合することができる。
【0011】
また、前記後段ポリッシュ工程は、発泡ウレタンからなる研磨パッドを用いて行うことを特徴としている。
この構成によれば、発砲ウレタンからなる研磨パッドを使用することで、研磨パッドがガラス基板の角部の周縁に回り込まず、ガラス基板の表面上のみを摺動するので、ガラス基板の表面を積極的に研磨できる。そのため、ガラス基板の表面の周縁部に面ダレ部分が発生するのを抑制でき、ガラス基板の接合代を大きく確保できる。
【0012】
また、前記後段ポリッシュ工程では、前記前段ポリッシュ工程に比べて研磨圧力を大きく設定することを特徴としている。
この構成によれば、ガラス基板の表面と研磨パッドとの間に第2研磨剤を確実に介在させて、ガラス基板の表面を効率的に研磨することができる。
【0013】
また、本発明のパッケージの製造方法は、互いに接合された複数の基板との間に形成されたキャビティ内に、電子部品を封入可能なパッケージの製造方法であって、前記複数の基板のうち、第1基板の表面に前記キャビティ用の凹部を形成する凹部形成工程と、上記本発明のガラス基板の研磨方法を用い、前記凹部の周囲を取り囲む隔壁の先端面を研磨する研磨工程と、前記隔壁の先端面に、前記複数の基板のうち第2基板を陽極接合する工程と、を有することを特徴としている。
この構成によれば、上記本発明のガラス基板の研磨方法を用いて研磨を行うことで、第1基板の接合面の表面精度の向上を図るとともに、平坦面を大きく確保することができるため、第1基板の接合面を接合する場合の接合代を確保することができる。その結果、第1基板と第2基板とを確実に陽極接合し、キャビティ内の気密を確保することができる。
【0014】
また、本発明に係る圧電振動子は、上記本発明のパッケージの製造方法によって製造されたことを特徴としている。
この構成によれば、上記本発明のパッケージの製造方法によって製造された圧電振動子であるため、振動特性に優れた信頼性の高い圧電振動子を提供することができる。
【0015】
また、本発明に係る発振器は、上記本発明の圧電振動子が、発振子として集積回路に電気的に接続されていることを特徴としている。
【0016】
また、本発明に係る電子機器は、上記本発明の圧電振動子が、計時部に電気的に接続されていることを特徴としている。
【0017】
また、本発明に係る電波時計は、上記本発明の圧電振動子が、フィルタ部に電気的に接続されていることを特徴としている。
【0018】
本発明に係る発振器、電子機器及び電波時計においては、上記本発明の圧電振動子を備えているので、振動特性に優れた信頼性の高い製品を提供することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係るガラス基板の研磨方法によれば、ガラス基板の表面の表面精度の向上を図るとともに、平坦面を大きく確保することができるため、ガラス基板の表面を接合する場合の接合代を確保することができる。その結果、気密性を確保した上で、ガラス基板を確実に接合することができる。
また、本発明に係るパッケージの製造方法によれば、上記本発明のガラス基板の研磨方法を用いて研磨を行うことで、第1基板の接合面の表面精度の向上を図るとともに、平坦面を大きく確保することができるため、第1基板の接合面を接合する場合の接合代を確保することができる。その結果、第1基板と第2基板とを確実に陽極接合し、キャビティ内の気密を確保することができる。
また、本発明に係る圧電振動子によれば、上記本発明のパッケージの製造方法によって製造された圧電振動子であるので、振動特性に優れた信頼性の高い圧電振動子を提供することができる。
本発明に係る発振器、電子機器及び電波時計においては、上記本発明の圧電振動子を備えているので、振動特性に優れた信頼性の高い製品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施形態における圧電振動子を示す外観斜視図である。
【図2】圧電振動子の内部構成図であって、リッド基板を取り外した状態で圧電振動片を上方から見た図ある。
【図3】図2のA−A線に沿う断面図である。
【図4】圧電振動子の分解斜視図である。
【図5】図1に示す圧電振動子を製造する流れを示すフローチャートである。
【図6】圧電振動子の製造方法を説明するための工程図であって、ウエハ接合体の分解斜視図である。
【図7】リッド基板用ウエハ作製工程を説明するための工程図であって、リッド基板用ウエハの断面を示す図である。
【図8】3次ポリッシング工程で用いる片面研磨装置を示す概略構成図であって、(a)は側面図、(b)は平面図である。
【図9】本発明に係る発振器の一実施形態を示す構成図である。
【図10】本発明に係る電子機器の一実施形態を示す構成図である。
【図11】本発明に係る電波時計の一実施形態を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態を説明する。
(圧電振動子)
図1は、本実施形態における圧電振動子をリッド基板側から見た外観斜視図である。また図2は圧電振動子の内部構成図であって、リッド基板を取り外した状態で圧電振動片を上方から見た図ある。また、図3は図2に示すA−A線に沿った圧電振動子の断面図であり、図4は圧電振動子の分解斜視図である。
図1〜4に示すように、本実施形態の圧電振動子1は、ベース基板2及びリッド基板3が接合材23を介して陽極接合された箱状のパッケージ10と、パッケージ10のキャビティC内に収納された圧電振動片(電子部品)5と、を備えた表面実装型の圧電振動子1である。そして、圧電振動片5とベース基板2の第1面2a(図3中下面)に設置された外部電極6,7とが、ベース基板2を貫通する一対の貫通電極8,9によって電気的に接続されている。
【0022】
ベース基板2は、ガラス材料、例えばソーダ石灰ガラスからなる透明な絶縁基板で板状に形成されている。ベース基板2には、一対の貫通電極8,9が形成される一対の貫通孔21,22が形成されている。貫通孔21,22は、ベース基板2の第1面2aから第2面2b(図3中上面)に向かって漸次径が縮径したテーパ形状をなしている。
【0023】
リッド基板3は、ベース基板2と同様に、ガラス材料、例えばソーダ石灰ガラスからなる透明の絶縁基板であり、ベース基板2に重ね合わせ可能な大きさの板状に形成されている。そして、リッド基板3の第1面3b(図3中下面)側には、圧電振動片5が収容される矩形状の凹部3aが形成されている。この凹部3aは、ベース基板2及びリッド基板3が重ね合わされたときに、圧電振動片5を収容するキャビティCを形成する。そして、リッド基板3は、凹部3aをベース基板2側に対向させた状態でベース基板2に対して接合材23を介して陽極接合されている。すなわち、リッド基板3の第1面3b側は、中央部に形成された凹部3aと、凹部3aの周囲に形成され、ベース基板2との接合面となる額縁領域3cとを構成している。
【0024】
圧電振動片5は、水晶、タンタル酸リチウムやニオブ酸リチウム等の圧電材料から形成された音叉型の振動片であり、所定の電圧が印加されたときに振動するものである。
この圧電振動片5は、平行に配置された一対の振動腕部24,25と、一対の振動腕部24,25の基端側を一体的に固定する基部26とからなる音叉型で、一対の振動腕部24,25の外表面上には、振動腕部24,25を振動させる図示しない一対の第1の励振電極と第2の励振電極とからなる励振電極と、第1の励振電極及び第2の励振電極と後述する引き回し電極27,28とを電気的に接続する一対のマウント電極とを有している(何れも不図示)。
【0025】
このように構成された圧電振動片5は、図2,3に示すように、金等のバンプBを利用して、ベース基板2の第2面2bに形成された引き回し電極27,28上にバンプ接合されている。より具体的には、圧電振動片5の第1の励振電極が、一方のマウント電極及びバンプBを介して一方の引き回し電極27上にバンプ接合され、第2の励振電極が他方のマウント電極及びバンプBを介して他方の引き回し電極28上にバンプ接合されている。これにより、圧電振動片5は、ベース基板2の第2面2bから浮いた状態で支持されるとともに、各マウント電極と引き回し電極27,28とがそれぞれ電気的に接続された状態となる。
【0026】
外部電極6,7は、ベース基板2の第1面2aにおける長手方向の両側に設置されており、各貫通電極8,9及び各引き回し電極27,28を介して圧電振動片5に電気的に接続されている。より具体的には、一方の外部電極6は、一方の貫通電極8及び一方の引き回し電極27を介して圧電振動片5の一方のマウント電極に電気的に接続されている。また、他方の外部電極7は、他方の貫通電極9及び他方の引き回し電極28を介して、圧電振動片5の他方のマウント電極に電気的に接続されている。
【0027】
貫通電極8,9は、焼成によって貫通孔21,22に対して一体的に固定された筒体32、及び芯材部31によって形成されたものである。各貫通電極8,9は、貫通孔21,22を完全に塞いでキャビティC内の気密を維持しているとともに、外部電極6,7と引き回し電極27,28とを導通させる役割を担っている。具体的に、一方の貫通電極8は、外部電極6と基部26との間で引き回し電極27の下方に位置しており、他方の貫通電極9は、外部電極7と振動腕部25との間で引き回し電極28の下方に位置している。
【0028】
筒体32は、ペースト状のガラスフリットが焼成されたものである。筒体32は、両端が平坦で、かつベース基板2と略同じ厚みの円筒状に形成されている。そして、筒体32の中心には、芯材部31が筒体32を貫通するように配されている。また、本実施形態では貫通孔21,22の形状に合わせて、筒体32の外形が円錐状(断面テーパ状)となるように形成されている。そして、この筒体32は、貫通孔21,22内に埋め込まれた状態で焼成されており、これら貫通孔21,22に対して強固に固着されている。
【0029】
芯材部31は、金属材料により円柱状に形成された導電性の芯材であり、筒体32と同様に両端が平坦で、かつベース基板2の厚みと略同じ厚さとなるように形成されている。
そして、芯材部31を通して貫通電極8,9の電気導通性が確保されている。
【0030】
リッド基板3の第1面3b全体には、陽極接合用の接合材23が形成されている。具体的に、接合材23は、額縁領域3c及び凹部3aの内面全体に亘って形成されている。本実施形態の接合材23はSi膜で形成されているが、接合材23をAlで形成することも可能である。なお接合材23として、ドーピング等により低抵抗化したSiバルク材で形成することも可能である。そして後述するように、この接合材23とベース基板2とが陽極接合され、キャビティCが真空封止されている。
【0031】
このように構成された圧電振動子1を作動させる場合には、ベース基板2に形成された外部電極6,7に対して、所定の駆動電圧を印加する。これにより、圧電振動片5の各励振電極に電流を流すことができ、一対の振動腕部24,25を接近・離間させる方向に所定の周波数で振動させることができる。そして、この一対の振動腕部24,25の振動を利用して、時刻源、制御信号のタイミング源やリファレンス信号源等として利用することができる。
【0032】
(圧電振動子の製造方法)
次に、上述した圧電振動子の製造方法について、図5に示すフローチャートを参照しながら説明する。以下には、複数のベース基板2が連なるベース基板用ウエハ40と、複数のリッド基板3が連なるリッド基板用ウエハ50との間に複数の圧電振動片5を封入してウエハ接合体60を形成し、ウエハ接合体60を切断することにより複数の圧電振動子1を同時に製造する方法について説明する。なお、図6は、ウエハ接合体の分解斜視図であり、図6に示す破線Mは、後述する個片化工程(S90)で切断する切断線を図示したものである。
図5に示すように、本実施形態に係る圧電振動子の製造方法は、主に、圧電振動片作製工程(S10)と、ベース基板用ウエハ作製工程(S20)と、リッド基板用ウエハ作製工程(S30)と、組立工程(S40以下)と、を有している。そのうち、圧電振動片作製工程(S10)、ベース基板用ウエハ作製工程(S20)及びリッド基板用ウエハ作製工程(S30)は、並行して実施することが可能である。
【0033】
(圧電振動片作製工程)
初めに、圧電振動片作製工程を行って図1〜4に示す圧電振動片5を作製する(S10)。また、圧電振動片5を作製した後、共振周波数の粗調を行っておく。なお、共振周波数をより高精度に調整する微調に関しては、マウント後に行う。
【0034】
(ベース基板用ウエハ作製工程)
まず、図5,6に示すように、後にベース基板2となるベース基板用ウエハ40を、陽極接合を行う直前の状態まで作製するベース基板用ウエハ作製工程を行う(S20)。具体的には、ソーダ石灰ガラスを所定の厚さまで研磨加工して洗浄した後に、エッチング等により最表面の加工変質層を除去した円板状のベース基板用ウエハ40を形成する(S21)。次いで、例えばプレス加工等により、ベース基板用ウエハ40に一対の貫通電極8,9を配置するための貫通孔21,22を複数形成する貫通孔形成工程を行う(S22)。具体的には、プレス加工によりベース基板用ウエハ40の第1面40aに凹部を形成した後、ベース基板用ウエハ40の第2面40b側から研磨することで、凹部を貫通させ、貫通孔21,22を形成することができる。
【0035】
続いて、貫通孔形成工程(S22)で形成された貫通孔21,22内に貫通電極8,9を形成する貫通電極形成工程(S23)を行う。これにより、貫通孔21,22内において、芯材部31がベース基板用ウエハ40の両面40a,40bに対して面一な状態で保持される。以上により、貫通電極8,9を形成することができる。
【0036】
次に、ベース基板用ウエハ40の第2面40bに導電性材料をパターニングして、引き回し電極27,28を形成する引き回し電極形成工程を行う(S24)。このようにして、ベース基板用ウエハ作製工程(S20)が終了する。
【0037】
(リッド基板用ウエハ作製工程)
図7は、リッド基板用ウエハの断面図である。
上述したベース基板用ウエハ作製工程(S20)と同時或いは前後のタイミングで、後にリッド基板3となるリッド基板用ウエハ50を、陽極接合を行う直前の状態まで作製するリッド基板用ウエハ作製工程を行う(S30)。具体的には、図5〜7(a)に示すように、ソーダ石灰ガラスを所定の厚さまで研磨加工して洗浄した後に、エッチング等により最表面の加工変質層を除去した円板状のリッド基板用ウエハ50を形成する(S31)。
次いで、図7(b)に示すように、リッド基板用ウエハ50の第1面51に、プレス加工やエッチング等により、キャビティC用の凹部3aを行列方向に複数形成する凹部形成工程を行う(S32)。これにより、リッド基板用ウエハ50の第1面51側は、複数の凹部3aと、凹部3aの周囲に形成され、先端面がベース基板用ウエハ40との接合面53(上述した額縁領域3cに相当)になる隔壁54と、を構成している。
【0038】
(研磨工程)
次に、リッド基板用ウエハ50を研磨する研磨工程(S33)を行う。研磨工程(S33)は、リッド基板用ウエハ50に対して粗削りを行うラッピング工程(S34)と、鏡面仕上げを行うポリッシュ工程(S35)と、を有している。
まず、ラッピング工程(S33)では、図示しない両面ラッピング装置を用い、リッド基板用ウエハ50の両面(第1面51及び第1面51と反対側の第2面52)をラッピング(粗削り)する。具体的には、リッド基板用ウエハ50を鋳鉄等からなるラップによってラップ剤を介して挟持し、これらラップ剤とリッド基板用ウエハ50とを相対移動させる。これにより、リッド基板用ウエハ50の両面51,52を粗削りすることができる。
【0039】
続いて、リッド基板用ウエハ50の少なくとも接合面53を鏡面仕上げするために、ポリッシュ工程(S35)を行う。
ポリッシュ工程(S35)は、図示しない両面研磨装置を用いてリッド基板用ウエハ50の両面51,52を研磨する1次ポリッシュ工程(S35A:前段ポリッシュ工程)、及び2次ポリッシュ工程(S35B:前段ポリッシュ工程)と、後述する片面研磨装置61を用いてリッド基板用ウエハ50の第1面51(接合面53)を研磨する3次ポリッシュ工程(S35C:後段ポリッシュ工程)と、を有している。
【0040】
1次ポリッシュ工程(S35A)では、まず研磨パッドを設けた上下一対の定盤間に、リッド基板用ウエハ50を保持するキャリアを挟み込む。そして、両面研磨装置を駆動して、研磨パッドとリッド基板用ウエハ50の両面51,52との間に研磨剤(第1研磨剤)を供給しながら、研磨パッド(定盤)とリッド基板用ウエハ50とを相対的に回転、移動させることで、リッド基板用ウエハ50の両面51,52が鏡面加工される。なお、本実施形態の両面研磨装置では、研磨パッドとリッド基板用ウエハ50との間から外部へ流出した研磨剤は、回収されて研磨パッドとリッド基板用ウエハ50との間に再度供給される仕組みとなっている。
【0041】
この場合、1次ポリッシュ工程(S35A)で用いる研磨剤としては、ガラス面の研磨に一般的に使用される酸化セリウム等の砥粒を水中に分散させたスラリー状のものが好適に用いられている。また、研磨パッドとしては、例えば不織布やスエード状の研磨布であるセリウムパッド等が好適に用いられる。
なお、その他の1次ポリッシュ工程(S35A)における研磨条件は、例えば以下の通りである。
・研磨圧力 80g/cm2程度
・研磨剤の流量 数百cc/min
【0042】
ところで、1次ポリッシュ工程(S35A)では、リッド基板用ウエハ50の接合面53の表面精度を向上させるため、上述したセリウムパッド等の比較的軟らかい研磨パッドを使用する必要がある。そのため、図7(c)に示すように、研磨パッドが隔壁54の周縁まで回り込むことになり、隔壁54が中心から周縁にかけて漸次厚さが薄くなる。その結果、接合面53となる隔壁54の先端面が曲面形状をなすことになる。すなわち、ラッピング工程(S34)後における接合面53の平坦面の面積(接合代D1)に比べて(図7(b)参照)、1次ポリッシング工程(S35A)後における接合面53の平坦面の面積(接合代D2)が縮小し、後述する接合工程(S60)において、両ウエハ40,50を良好に接合することができない虞がある。
【0043】
そこで、本実施形態では、1次ポリッシュ工程(S35A)を経たリッド基板用ウエハ50に対して、2次ポリッシュ工程(S35B)を行う。2次ポリッシュ工程(S35B)では、リッド基板用ウエハ50の両側に配置される研磨パッドにそれぞれ異なる材料を使用している。具体的に、リッド基板用ウエハ50の第1面51側に配置される研磨パッドに、発砲ウレタンからなる研磨パッドを使用する。発泡ウレタンからなる研磨パッドは、不織布に発泡ウレタン樹脂が含浸されて形成されたものであり、上述したセリウムパッドに比べて硬質な研磨パッドである。
【0044】
一方、リッド基板用ウエハ50の第2面52側に配置される研磨パッドに、不織布ベースの連続発泡構造を持った研磨パッドを採用している。すなわち、第2面52側に配置される研磨パッドに、発砲ウレタンよりも軟質な研磨パッドを貼着している。これにより、第1面51(接合面53)と研磨パッドとの間の抵抗に比べて、第2面52と研磨パッドとの間の抵抗を減少させることができる。よって、第2面52の研磨速度に比べて第1面51(接合面53)の研磨速度を大きく確保することができるため、接合面53の面ダレ部分を積極的に研磨することができる。
そして、その他の研磨条件については、上述した1次ポリッシュ工程(S35A)の研磨条件と同様の条件でリッド基板用ウエハ50を研磨することで、第1面51のうち主に接合面53が研磨され、接合面53が接合代D3の平坦面となる(図7(d)参照)。なお、本実施形態では接合代D3を、ラッピング工程後の接合代D1に比べて90%〜95%程度に形成することができる。
【0045】
図8は片面研磨装置の概略図であって、(a)は側面図、(b)は下方から見た平面図である。
続いて、図5,8に示すように、片面研磨装置61を用いてリッド基板用ウエハ50の接合面53を研磨する3次ポリッシュ工程(S35C)を行う。片面研磨装置61は、平面視円形状の上定盤62と、上定盤62と同じ平面視円形状に形成され研磨パッド(不図示)が設けられた下定盤63と、上定盤62の下側に複数配置されて、リッド基板用ウエハ50を吸着固定する平面視円形状のキャリア64と、リッド基板用ウエハ50と下定盤63の研磨パッドとの間に研磨剤(第2研磨剤)Wを流入させる研磨剤流入手段65と、下定盤63及び各キャリア64をそれぞれ独立して回転させる図示しない回転手段と、から概略構成されている。なお、本実施形態の片面研磨装置61は、例えばリッド基板用ウエハ50が各キャリア64にそれぞれ3枚ずつ固定できるようになっている。
【0046】
下定盤63は、図8中の矢印A1の方向に水平方向に回転する構造であり、その研磨側の面(図8(a)中上面)に研磨パッド(不図示)が貼着されている。
キャリア64は、上定盤62に水平方向に回転自在に保持されて図8中の矢印A2の方向に自転する構造である。このように下定盤63が回転するとともに、キャリア64が回転する構造により、研磨面の片減りを無くし表面を平坦に研磨することができる。なお、本実施形態では、下定盤63の回転数に対してキャリア64の回転数が1回転少なくなるように設定している。
【0047】
研磨剤流入手段65は、研磨剤Wを収容し、攪拌するモータを備える図示しない収容部と、収容部内の研磨剤Wを搬送し、上定盤62に6〜8ヶ所ほど設けられた流入口65aから下定盤63上に流入させる図示しないポンプと、研磨剤WのPHを測定するPH測定器(不図示)と、を備えている。なお、本実施形態の片面研磨装置61では、研磨パッドとリッド基板用ウエハ50との間から外部へ流出した研磨剤Wは、回収されて研磨パッドとリッド基板用ウエハ50との間に再度供給される仕組みとなっている。
【0048】
3次ポリッシュ工程(S35C)では、リッド基板用ウエハ50の第1面51(接合面53)が下側となるように、リッド基板用ウエハ50をキャリア64に吸着固定させて片面研磨装置61にセットする。このとき、同一キャリア64には、上述した2次ポリッシュ工程(S35B)後の厚みムラが1μm以内のリッド基板用ウエハ50同士をセットする。また、上定盤62若しくはキャリア64の下側には、例えばガラスエポキシ樹脂(FR4)で形成された平板形状のダミー基板67を設置することが好ましい。ダミー基板67は、リッド基板用ウエハ50よりも厚く形成されていることが好ましく、その下端面が接合面53よりも下方に位置することが好ましい。
【0049】
そして、下定盤63のリッド基板用ウエハ50との対向面に研磨パッド(不図示)を貼着した後、研磨剤Wを供給しながら、下定盤63及びキャリア64をそれぞれ回転手段により回転させて研磨を行う。このとき、研磨剤Wとしてはコロイダルシリカが用いられている。コロイダルシリカは、二酸化珪素(SiO2)が水中に分散されたものである。
また、研磨パッドとしては、上述した2次ポリッシュ工程(S35B)で用いた研磨パッドと同様の材料(発泡ウレタン)を採用している。さらに、3次ポリッシュ工程(S35C)は、上述した1次、2次ポリッシュ工程(S35A,B)に比べて、研磨圧力(210g/cm2程度)が大きく、また回転数も多く設定されている。一方で、3次ポリッシュ工程(S35C)における研磨剤の流量は、1次、2次ポリッシュ工程(S35A,B)に比べて少なく(例えば、半分程度)設定されている。
【0050】
上述の条件で研磨を行うと、まず接合面53よりも先にダミー基板67が下定盤63に接触し、ダミー基板67が研磨され、その後に接合面53が下定盤63に接触してダミー基板67と共に研磨される。
このように、接合面53よりも先にダミー基板67が研磨され、その後に接合面53がダミー基板67とともに研磨されることにより、下定盤63からリッド基板用ウエハ50に対して徐々に圧力を負荷することが可能になり、リッド基板用ウエハ50の損傷を防止することができる。
【0051】
次に、図5,6に示すように、リッド基板用ウエハ50の第1面51全体(ベース基板用ウエハ40との接合面53及び凹部3aの内面)に接合材23を形成する接合材形成工程(S36)を行う。
このように、接合材23をリッド基板用ウエハ50の第1面51全体に形成することで、接合材23のパターニングが不要になり、製造コストを低減することができる。なお、接合材23の形成は、スパッタやCVD等の成膜方法によって行うことができる。また、接合材形成工程(S36)の前に接合面53を研磨しているので、接合材23の表面精度が確保され、ベース基板用ウエハ40との安定した接合を実現することができる。
以上により、リッド基板用ウエハ作製工程(S30)が終了する。
【0052】
(組立工程)
次に、ベース基板用ウエハ作製工程(S20)で作製されたベース基板用ウエハ40の引き回し電極27,28上に、圧電振動片作製工程(S10)で作製された圧電振動片5を、金等のバンプBを介してマウントする(S40)。
そして、上述した各ウエハ作製工程(S20,S30)で作製されたベース基板用ウエハ40及びリッド基板用ウエハ50を重ね合わせる、重ね合わせ工程を行う(S50)。
【0053】
具体的には、図示しない基準マーク等を指標としながら、ベース基板用ウエハ40及びリッド基板用ウエハ50を正しい位置にアライメントする。
これにより、マウントされた圧電振動片5が、リッド基板用ウエハ50に形成された凹部3aとベース基板用ウエハ40とで囲まれるキャビティC内に収納された状態となる。
【0054】
重ね合わせ工程(S50)後、重ね合わせた2枚のベース基板用ウエハ40及びリッド基板用ウエハ50を図示しない陽極接合装置に入れ、図示しない保持機構によりウエハ40,50の外周部分をクランプした状態で、所定の温度雰囲気で所定の電圧を印加して陽極接合する接合工程を行う(S60)。すると、接合材23とベース基板用ウエハ40との界面に電気化学的な反応が生じ、両者がそれぞれ強固に密着して陽極接合される。
これにより、圧電振動片5をキャビティC内に封止することができ、ベース基板用ウエハ40とリッド基板用ウエハ50とが接合されたウエハ接合体60を得ることができる。
【0055】
そして、本実施形態のようにリッド基板用ウエハ50及びベース基板用ウエハ40同士を陽極接合することで、接着剤等でリッド基板用ウエハ50及びベース基板用ウエハ40を接合した場合に比べて、経時劣化や衝撃等によるずれ、ウエハ接合体60の反り等を防ぎ、リッド基板用ウエハ50及びベース基板用ウエハ40をより強固に接合することができる。
【0056】
この後、一対の貫通電極8,9にそれぞれ電気的に接続された一対の外部電極6,7を形成し(S70)、圧電振動子1の周波数を微調整する(S80)。
そして、接合されたウエハ接合体60を切断線Mに沿って切断し、個片化する個片化工程(S90)を行う。
【0057】
そして、電気特性検査工程(S100)では、圧電振動子1の共振周波数や共振抵抗値、ドライブレベル特性(共振周波数及び共振抵抗値の励振電力依存性)等を測定してチェックする。また、絶縁抵抗特性等も併せてチェックする。
最後に、圧電振動子1の外観検査を行って、寸法や品質等を最終的にチェックする。
以上により、圧電振動子1が完成する。
【0058】
このように、本実施形態では、1次ポリッシュ工程(S35A)、及び2次ポリッシュ工程(S35B)による前段ポリッシュ工程に加え、研磨剤Wにコロイダルシリカを用いて3次ポリッシュ工程(S35C)を行う構成とした。
この構成によれば、前段ポリッシュ工程の後、コロイダルシリカによる最終研磨を行うことで、リッド基板用ウエハ50の接合面53の表面精度の向上を図ることができるとともに、接合面53の平坦面を大きく確保することができるため、接合面53の接合代を大きく確保することができる。その結果、接合面53と接合材23との密着性を向上させ、両ウエハ40,50を強固に接合することができる。
したがって、キャビティC内の気密性を確保できるため、振動特性に優れた信頼性の高い圧電振動子1を提供することができる。なお、本実施形態の3次ポリッシュ工程(S35C)を行うことで、接合面53の表面粗さはRa=0.3nm程度となり、従来に比べて1/10程度に低減することができた。本実施形態において、表面粗さとは例えばJIS B 0601に規格化されている算術平均粗さRaの数値である。
【0059】
また、3次ポリッシュ工程(S35C)において、発泡ウレタンからなる研磨パッドを使用することで、研磨パッドが隔壁54の角部の周縁に回り込まず、接合面53上のみを摺動するので、接合面53を積極的に研磨できる。そのため、リッド基板用ウエハ50の接合面53の周縁部に面ダレ部分が発生するのを抑制でき、リッド基板用ウエハ50の接合代を大きく確保できる。
また、3次ポリッシュ工程(S35C)における研磨圧力を1,2次ポリッシュ工程(S35A,S35B)に比べて大きく設定することで、リッド基板用ウエハ50の接合面53と研磨パッドとの間に研磨剤Wを確実に介在させて、接合面53を効率的に研磨することができる。
【0060】
次に、本発明に係る発振器の一実施形態について、図9を参照しながら説明する。
本実施形態の発振器100は、図9に示すように、圧電振動子1を、集積回路101に電気的に接続された発振子として構成したものである。この発振器100は、コンデンサ等の電子部品102が実装された基板103を備えている。基板103には、発振器用の上述した集積回路101が実装されており、この集積回路101の近傍に、圧電振動子1が実装されている。これら電子部品102、集積回路101及び圧電振動子1は、図示しない配線パターンによってそれぞれ電気的に接続されている。なお、各構成部品は、図示しない樹脂によりモールドされている。
【0061】
このように構成された発振器100において、圧電振動子1に電圧を印加すると、この圧電振動子1内の圧電振動片5が振動する。この振動は、圧電振動片5が有する圧電特性により電気信号に変換されて、集積回路101に電気信号として入力される。入力された電気信号は、集積回路101によって各種処理がなされ、周波数信号として出力される。
これにより、圧電振動子1が発振子として機能する。
また、集積回路101の構成を、例えば、RTC(リアルタイムクロック)モジュール等を要求に応じて選択的に設定することで、時計用単機能発振器等の他、当該機器や外部機器の動作日や時刻を制御したり、時刻やカレンダー等を提供したりする機能を付加することができる。
【0062】
本実施形態の発振器100は、上記のように信頼性に優れた圧電振動子1を備えているので、発振器100自体の信頼性も確保することができ、長期にわたって安定した高精度な周波数信号を得ることができる。
【0063】
(電子機器)
次に、本発明に係る電子機器の一実施形態について、図10を参照して説明する。なお電子機器として、上述した圧電振動子1を有する携帯情報機器110を例にして説明する。始めに本実施形態の携帯情報機器110は、例えば、携帯電話に代表されるものであり、従来技術における腕時計を発展、改良したものである。外観は腕時計に類似し、文字盤に相当する部分に液晶ディスプレイを配し、この画面上に現在の時刻等を表示させることができるものである。また、通信機として利用する場合には、手首から外し、バンドの内側部分に内蔵されたスピーカ及びマイクロフォンによって、従来技術の携帯電話と同様の通信を行うことが可能である。しかしながら、従来の携帯電話と比較して、格段に小型化及び軽量化されている。
【0064】
次に、本実施形態の携帯情報機器110の構成について説明する。この携帯情報機器110は、図10に示すように、圧電振動子1と、電力を供給するための電源部111とを備えている。電源部111は、例えば、リチウム二次電池からなっている。この電源部111には、各種制御を行う制御部112と、時刻等のカウントを行う計時部113と、外部との通信を行う通信部114と、各種情報を表示する表示部115と、それぞれの機能部の電圧を検出する電圧検出部116とが並列に接続されている。そして、電源部111によって、各機能部に電力が供給されるようになっている。
【0065】
制御部112は、各機能部を制御して音声データの送信及び受信、現在時刻の計測や表示等、システム全体の動作制御を行う。また、制御部112は、予めプログラムが書き込まれたROMと、このROMに書き込まれたプログラムを読み出して実行するCPUと、このCPUのワークエリアとして使用されるRAM等とを備えている。
【0066】
計時部113は、発振回路、レジスタ回路、カウンタ回路及びインターフェース回路等を内蔵する集積回路と、圧電振動子1とを備えている。圧電振動子1に電圧を印加すると圧電振動片5が振動し、この振動が水晶の有する圧電特性により電気信号に変換されて、発振回路に電気信号として入力される。発振回路の出力は二値化され、レジスタ回路とカウンタ回路とにより計数される。そして、インターフェース回路を介して、制御部112と信号の送受信が行われ、表示部115に、現在時刻や現在日付或いはカレンダー情報等が表示される。
【0067】
通信部114は、従来の携帯電話と同様の機能を有し、無線部117、音声処理部118、切替部119、増幅部120、音声入出力部121、電話番号入力部122、着信音発生部123及び呼制御メモリ部124を備えている。
無線部117は、音声データ等の各種データを、アンテナ125を介して基地局と送受信のやりとりを行う。音声処理部118は、無線部117又は増幅部120から入力された音声信号を符号化及び複号化する。増幅部120は、音声処理部118又は音声入出力部121から入力された信号を、所定のレベルまで増幅する。音声入出力部121は、スピーカやマイクロフォン等からなり、着信音や受話音声を拡声したり、音声を集音したりする。
【0068】
また、着信音発生部123は、基地局からの呼び出しに応じて着信音を生成する。切替部119は、着信時に限って、音声処理部118に接続されている増幅部120を着信音発生部123に切り替えることによって、着信音発生部123において生成された着信音が増幅部120を介して音声入出力部121に出力される。
なお、呼制御メモリ部124は、通信の発着呼制御に係るプログラムを格納する。また、電話番号入力部122は、例えば、0から9の番号キー及びその他のキーを備えており、これら番号キー等を押下することにより、通話先の電話番号等が入力される。
【0069】
電圧検出部116は、電源部111によって制御部112等の各機能部に対して加えられている電圧が、所定の値を下回った場合に、その電圧降下を検出して制御部112に通知する。このときの所定の電圧値は、通信部114を安定して動作させるために必要な最低限の電圧として予め設定されている値であり、例えば、3V程度となる。電圧検出部116から電圧降下の通知を受けた制御部112は、無線部117、音声処理部118、切替部119及び着信音発生部123の動作を禁止する。特に、消費電力の大きな無線部117の動作停止は、必須となる。更に、表示部115に、通信部114が電池残量の不足により使用不能になった旨が表示される。
【0070】
すなわち、電圧検出部116と制御部112とによって、通信部114の動作を禁止し、その旨を表示部115に表示することができる。この表示は、文字メッセージであっても良いが、より直感的な表示として、表示部115の表示面の上部に表示された電話アイコンに、×(バツ)印を付けるようにしても良い。
なお、通信部114の機能に係る部分の電源を、選択的に遮断することができる電源遮断部126を備えることで、通信部114の機能をより確実に停止することができる。
【0071】
本実施形態の携帯情報機器110は、上記のように信頼性に優れた圧電振動子1を備えているので、携帯情報機器110自体の信頼性も確保することができ、長期にわたって安定した高精度な時計情報を表示することができる。
【0072】
(電波時計)
次に、本発明に係る電波時計の一実施形態について、図11を参照して説明する。
本実施形態の電波時計130は、図11に示すように、フィルタ部131に電気的に接続された圧電振動子1を備えたものであり、時計情報を含む標準の電波を受信して、正確な時刻に自動修正して表示する機能を備えた時計である。
日本国内には、福島県(40kHz)と佐賀県(60kHz)とに、標準の電波を送信する送信所(送信局)があり、それぞれ標準電波を送信している。40kHz若しくは60kHzのような長波は、地表を伝播する性質と、電離層と地表とを反射しながら伝播する性質とを併せもつため、伝播範囲が広く、上述した2つの送信所で日本国内を全て網羅している。
【0073】
以下、電波時計130の機能的構成について詳細に説明する。
アンテナ132は、40kHz若しくは60kHzの長波の標準電波を受信する。長波の標準電波は、タイムコードと呼ばれる時刻情報を、40kHz若しくは60kHzの搬送波にAM変調をかけたものである。受信された長波の標準電波は、アンプ133によって増幅され、複数の圧電振動子1を有するフィルタ部131によって濾波、同調される。
本実施形態における圧電振動子1は、上述した搬送周波数と同一の40kHz及び60kHzの共振周波数を有する水晶振動子部138、139をそれぞれ備えている。
【0074】
さらに、濾波された所定周波数の信号は、検波、整流回路134により検波復調される。続いて、波形整形回路135を介してタイムコードが取り出され、CPU136でカウントされる。CPU136では、現在の年、積算日、曜日、時刻等の情報を読み取る。読み取られた情報は、RTC137に反映され、正確な時刻情報が表示される。
搬送波は、40kHz若しくは60kHzであるから、水晶振動子部138、139は、上述した音叉型の構造を持つ振動子が好適である。
【0075】
なお、上述の説明は、日本国内の例で示したが、長波の標準電波の周波数は、海外では異なっている。例えば、ドイツでは77.5KHzの標準電波が用いられている。従って、海外でも対応可能な電波時計130を携帯機器に組み込む場合には、さらに日本の場合とは異なる周波数の圧電振動子1を必要とする。
【0076】
本実施形態の電波時計130は、上記のように信頼性に優れた圧電振動子1を備えているので、電波時計130自体の信頼性も確保することができ、長期にわたって安定して高精度に時刻をカウントすることができる。
【0077】
以上、本発明の技術範囲は上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上述した実施形態では、本発明に係るパッケージの製造方法を使用しつつ、パッケージの内部に圧電振動片を封入して圧電振動子を製造したが、パッケージの内部に圧電振動片以外の電子部品を封入して、圧電振動子以外のデバイスを製造することも可能である。
また、上述した実施形態では、音叉型の圧電振動片を用いた圧電振動子を例に挙げて本発明のパッケージの製造方法を説明したが、これに限らず、例えばATカット型の圧電振動片(厚み滑り振動片)を用いた圧電振動子等に、本発明を適用しても構わない。
【0078】
さらに、上述した実施形態においては、リッド基板用ウエハ50に接合材23を形成する構成について説明したが、ベース基板用ウエハ40におけるリッド基板用ウエハ50の接合面53に対向する領域に接合材23を形成しても構わない。この場合にも、陽極接合時において、リッド基板用ウエハ50とベース基板用ウエハ40に形成された接合材23との密着性を向上させることができる。
また、上述した3次ポリッシュ工程(S35C)に片面研磨装置61を用いる構成について説明したが、両面研磨装置を用いても構わない。
【符号の説明】
【0079】
1…圧電振動子 3a…凹部 5…圧電振動片(電子部品) 10…パッケージ 40…ベース基板用ウエハ(第2基板) 50…リッド基板用ウエハ(第1基板、ガラス基板) 51…第1面 53…接合面(先端面) 54…隔壁 100…発振器 101…集積回路 110…携帯情報機器(電子機器) 113…計時部 130…電波時計 131…フィルタ部 C…キャビティ W…研磨剤(第2研磨剤)
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス基板の研磨方法、パッケージの製造方法、圧電振動子、発振器、電子機器並びに電波時計に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話や携帯情報端末機器には、時刻源や制御信号等のタイミング源、リファレンス信号源等として水晶等を利用した圧電振動子(パッケージ)が用いられている。この種の圧電振動子は、様々なものが知られているが、その1つとして、表面実装(SMD)型の圧電振動子が知られている。この種の圧電振動子としては、例えば互いに接合されたガラス材料からなるベース基板及びリッド基板と、両基板の間に形成されたキャビティと、キャビティ内に気密封止された状態で収納された圧電振動片と、を備えている。
【0003】
このような2層構造タイプの圧電振動子を製造する場合、リッド基板にキャビティ用の凹部を形成する一方、ベース基板上に圧電振動片をマウントした後、接合材を介して両ウエハを陽極接合する。これにより、キャビティ内に圧電振動片が気密封止された圧電振動子を製造している。
【0004】
ところで、上述した圧電振動子の製造工程において、ベース基板とリッド基板とを接合する場合、キャビティの気密性を確保するためには、両基板の接合代(接合面の面積)及び接合面の表面精度を確保して、平坦面同士で接合することが重要になる。
そこで、例えば、特許文献1には、両基板を陽極接合するために、その前段で両基板の接合面を研磨して表面精度を向上させる研磨工程を有する構成が記載されている。研磨工程の一例としては、研磨パッドを設けた上下一対の定盤間に、基板を保持するキャリアを挟み、研磨剤を供給しながら定盤とキャリアとを相対的に回転、移動させて基板両面を同時に研磨する方法が知られている。なお、研磨剤には、一般的にガラス面の研磨に使用される酸化セリウム等が好適に用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−13628号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近時では、表面精度の更なる向上が要望されている。しかしながら、上述した研磨方法では、表面精度の向上に限界があり(例えば、表面粗さRa=3nm程度)、接合面に研磨痕が残存する虞がある。この場合には、その後に形成される接合材との密着性が悪く、キャビティの気密性や信頼性を確保することができない虞がある。すなわち、両基板を接合しようとすると、互いの接合面との間に隙間が生じてキャビティ内の気密を確保することができず、圧電振動子の振動特性が安定しない場合がある。
【0007】
そこで本発明は、このような事情に考慮してなされたもので、ガラス基板の接合面の表面精度の向上を図り、キャビティ内の気密を確保することができるガラス基板の研磨方法、パッケージの製造方法、圧電振動子、発振器、電子機器並びに電波時計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のガラス基板の研磨方法は、研磨剤を供給しつつガラス基板の表面を研磨する、研磨工程を有するガラス基板の研磨方法であって、前記研磨工程は、前記研磨剤に酸化セリウムを主成分とする第1研磨剤を用いて前記ガラス基板の前記表面を研磨する前段ポリッシュ工程と、前記研磨剤にコロイダルシリカを主成分とする第2研磨剤を用いて前記ガラス基板の前記表面を研磨する後段ポリッシュ工程と、を有することを特徴としている。
【0009】
この構成によれば、第1研磨剤を用いた前段ポリッシュ工程の後に、コロイダルシリカを主成分とした第2研磨剤を用いて後段ポリッシュ工程を行うことで、ガラス基板の表面の表面精度の向上を図ることができるとともに、平坦面を大きく確保することができるため、ガラス基板の表面を接合する場合の接合代を大きく確保することができる。その結果、気密性を確保した上で、ガラス基板を確実に接合することができる。
【0010】
また、前記ガラス基板の前記表面には、凹部が形成され、前記研磨工程では、前記凹部の周囲を取り囲む隔壁の先端面を研磨することを特徴としている。
この構成によれば、ガラス基板の隔壁の先端面を平坦化することで、隔壁の先端面を接合した場合に、隔壁の内側の気密性を確保した上で、ガラス基板を確実に接合することができる。
【0011】
また、前記後段ポリッシュ工程は、発泡ウレタンからなる研磨パッドを用いて行うことを特徴としている。
この構成によれば、発砲ウレタンからなる研磨パッドを使用することで、研磨パッドがガラス基板の角部の周縁に回り込まず、ガラス基板の表面上のみを摺動するので、ガラス基板の表面を積極的に研磨できる。そのため、ガラス基板の表面の周縁部に面ダレ部分が発生するのを抑制でき、ガラス基板の接合代を大きく確保できる。
【0012】
また、前記後段ポリッシュ工程では、前記前段ポリッシュ工程に比べて研磨圧力を大きく設定することを特徴としている。
この構成によれば、ガラス基板の表面と研磨パッドとの間に第2研磨剤を確実に介在させて、ガラス基板の表面を効率的に研磨することができる。
【0013】
また、本発明のパッケージの製造方法は、互いに接合された複数の基板との間に形成されたキャビティ内に、電子部品を封入可能なパッケージの製造方法であって、前記複数の基板のうち、第1基板の表面に前記キャビティ用の凹部を形成する凹部形成工程と、上記本発明のガラス基板の研磨方法を用い、前記凹部の周囲を取り囲む隔壁の先端面を研磨する研磨工程と、前記隔壁の先端面に、前記複数の基板のうち第2基板を陽極接合する工程と、を有することを特徴としている。
この構成によれば、上記本発明のガラス基板の研磨方法を用いて研磨を行うことで、第1基板の接合面の表面精度の向上を図るとともに、平坦面を大きく確保することができるため、第1基板の接合面を接合する場合の接合代を確保することができる。その結果、第1基板と第2基板とを確実に陽極接合し、キャビティ内の気密を確保することができる。
【0014】
また、本発明に係る圧電振動子は、上記本発明のパッケージの製造方法によって製造されたことを特徴としている。
この構成によれば、上記本発明のパッケージの製造方法によって製造された圧電振動子であるため、振動特性に優れた信頼性の高い圧電振動子を提供することができる。
【0015】
また、本発明に係る発振器は、上記本発明の圧電振動子が、発振子として集積回路に電気的に接続されていることを特徴としている。
【0016】
また、本発明に係る電子機器は、上記本発明の圧電振動子が、計時部に電気的に接続されていることを特徴としている。
【0017】
また、本発明に係る電波時計は、上記本発明の圧電振動子が、フィルタ部に電気的に接続されていることを特徴としている。
【0018】
本発明に係る発振器、電子機器及び電波時計においては、上記本発明の圧電振動子を備えているので、振動特性に優れた信頼性の高い製品を提供することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係るガラス基板の研磨方法によれば、ガラス基板の表面の表面精度の向上を図るとともに、平坦面を大きく確保することができるため、ガラス基板の表面を接合する場合の接合代を確保することができる。その結果、気密性を確保した上で、ガラス基板を確実に接合することができる。
また、本発明に係るパッケージの製造方法によれば、上記本発明のガラス基板の研磨方法を用いて研磨を行うことで、第1基板の接合面の表面精度の向上を図るとともに、平坦面を大きく確保することができるため、第1基板の接合面を接合する場合の接合代を確保することができる。その結果、第1基板と第2基板とを確実に陽極接合し、キャビティ内の気密を確保することができる。
また、本発明に係る圧電振動子によれば、上記本発明のパッケージの製造方法によって製造された圧電振動子であるので、振動特性に優れた信頼性の高い圧電振動子を提供することができる。
本発明に係る発振器、電子機器及び電波時計においては、上記本発明の圧電振動子を備えているので、振動特性に優れた信頼性の高い製品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施形態における圧電振動子を示す外観斜視図である。
【図2】圧電振動子の内部構成図であって、リッド基板を取り外した状態で圧電振動片を上方から見た図ある。
【図3】図2のA−A線に沿う断面図である。
【図4】圧電振動子の分解斜視図である。
【図5】図1に示す圧電振動子を製造する流れを示すフローチャートである。
【図6】圧電振動子の製造方法を説明するための工程図であって、ウエハ接合体の分解斜視図である。
【図7】リッド基板用ウエハ作製工程を説明するための工程図であって、リッド基板用ウエハの断面を示す図である。
【図8】3次ポリッシング工程で用いる片面研磨装置を示す概略構成図であって、(a)は側面図、(b)は平面図である。
【図9】本発明に係る発振器の一実施形態を示す構成図である。
【図10】本発明に係る電子機器の一実施形態を示す構成図である。
【図11】本発明に係る電波時計の一実施形態を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態を説明する。
(圧電振動子)
図1は、本実施形態における圧電振動子をリッド基板側から見た外観斜視図である。また図2は圧電振動子の内部構成図であって、リッド基板を取り外した状態で圧電振動片を上方から見た図ある。また、図3は図2に示すA−A線に沿った圧電振動子の断面図であり、図4は圧電振動子の分解斜視図である。
図1〜4に示すように、本実施形態の圧電振動子1は、ベース基板2及びリッド基板3が接合材23を介して陽極接合された箱状のパッケージ10と、パッケージ10のキャビティC内に収納された圧電振動片(電子部品)5と、を備えた表面実装型の圧電振動子1である。そして、圧電振動片5とベース基板2の第1面2a(図3中下面)に設置された外部電極6,7とが、ベース基板2を貫通する一対の貫通電極8,9によって電気的に接続されている。
【0022】
ベース基板2は、ガラス材料、例えばソーダ石灰ガラスからなる透明な絶縁基板で板状に形成されている。ベース基板2には、一対の貫通電極8,9が形成される一対の貫通孔21,22が形成されている。貫通孔21,22は、ベース基板2の第1面2aから第2面2b(図3中上面)に向かって漸次径が縮径したテーパ形状をなしている。
【0023】
リッド基板3は、ベース基板2と同様に、ガラス材料、例えばソーダ石灰ガラスからなる透明の絶縁基板であり、ベース基板2に重ね合わせ可能な大きさの板状に形成されている。そして、リッド基板3の第1面3b(図3中下面)側には、圧電振動片5が収容される矩形状の凹部3aが形成されている。この凹部3aは、ベース基板2及びリッド基板3が重ね合わされたときに、圧電振動片5を収容するキャビティCを形成する。そして、リッド基板3は、凹部3aをベース基板2側に対向させた状態でベース基板2に対して接合材23を介して陽極接合されている。すなわち、リッド基板3の第1面3b側は、中央部に形成された凹部3aと、凹部3aの周囲に形成され、ベース基板2との接合面となる額縁領域3cとを構成している。
【0024】
圧電振動片5は、水晶、タンタル酸リチウムやニオブ酸リチウム等の圧電材料から形成された音叉型の振動片であり、所定の電圧が印加されたときに振動するものである。
この圧電振動片5は、平行に配置された一対の振動腕部24,25と、一対の振動腕部24,25の基端側を一体的に固定する基部26とからなる音叉型で、一対の振動腕部24,25の外表面上には、振動腕部24,25を振動させる図示しない一対の第1の励振電極と第2の励振電極とからなる励振電極と、第1の励振電極及び第2の励振電極と後述する引き回し電極27,28とを電気的に接続する一対のマウント電極とを有している(何れも不図示)。
【0025】
このように構成された圧電振動片5は、図2,3に示すように、金等のバンプBを利用して、ベース基板2の第2面2bに形成された引き回し電極27,28上にバンプ接合されている。より具体的には、圧電振動片5の第1の励振電極が、一方のマウント電極及びバンプBを介して一方の引き回し電極27上にバンプ接合され、第2の励振電極が他方のマウント電極及びバンプBを介して他方の引き回し電極28上にバンプ接合されている。これにより、圧電振動片5は、ベース基板2の第2面2bから浮いた状態で支持されるとともに、各マウント電極と引き回し電極27,28とがそれぞれ電気的に接続された状態となる。
【0026】
外部電極6,7は、ベース基板2の第1面2aにおける長手方向の両側に設置されており、各貫通電極8,9及び各引き回し電極27,28を介して圧電振動片5に電気的に接続されている。より具体的には、一方の外部電極6は、一方の貫通電極8及び一方の引き回し電極27を介して圧電振動片5の一方のマウント電極に電気的に接続されている。また、他方の外部電極7は、他方の貫通電極9及び他方の引き回し電極28を介して、圧電振動片5の他方のマウント電極に電気的に接続されている。
【0027】
貫通電極8,9は、焼成によって貫通孔21,22に対して一体的に固定された筒体32、及び芯材部31によって形成されたものである。各貫通電極8,9は、貫通孔21,22を完全に塞いでキャビティC内の気密を維持しているとともに、外部電極6,7と引き回し電極27,28とを導通させる役割を担っている。具体的に、一方の貫通電極8は、外部電極6と基部26との間で引き回し電極27の下方に位置しており、他方の貫通電極9は、外部電極7と振動腕部25との間で引き回し電極28の下方に位置している。
【0028】
筒体32は、ペースト状のガラスフリットが焼成されたものである。筒体32は、両端が平坦で、かつベース基板2と略同じ厚みの円筒状に形成されている。そして、筒体32の中心には、芯材部31が筒体32を貫通するように配されている。また、本実施形態では貫通孔21,22の形状に合わせて、筒体32の外形が円錐状(断面テーパ状)となるように形成されている。そして、この筒体32は、貫通孔21,22内に埋め込まれた状態で焼成されており、これら貫通孔21,22に対して強固に固着されている。
【0029】
芯材部31は、金属材料により円柱状に形成された導電性の芯材であり、筒体32と同様に両端が平坦で、かつベース基板2の厚みと略同じ厚さとなるように形成されている。
そして、芯材部31を通して貫通電極8,9の電気導通性が確保されている。
【0030】
リッド基板3の第1面3b全体には、陽極接合用の接合材23が形成されている。具体的に、接合材23は、額縁領域3c及び凹部3aの内面全体に亘って形成されている。本実施形態の接合材23はSi膜で形成されているが、接合材23をAlで形成することも可能である。なお接合材23として、ドーピング等により低抵抗化したSiバルク材で形成することも可能である。そして後述するように、この接合材23とベース基板2とが陽極接合され、キャビティCが真空封止されている。
【0031】
このように構成された圧電振動子1を作動させる場合には、ベース基板2に形成された外部電極6,7に対して、所定の駆動電圧を印加する。これにより、圧電振動片5の各励振電極に電流を流すことができ、一対の振動腕部24,25を接近・離間させる方向に所定の周波数で振動させることができる。そして、この一対の振動腕部24,25の振動を利用して、時刻源、制御信号のタイミング源やリファレンス信号源等として利用することができる。
【0032】
(圧電振動子の製造方法)
次に、上述した圧電振動子の製造方法について、図5に示すフローチャートを参照しながら説明する。以下には、複数のベース基板2が連なるベース基板用ウエハ40と、複数のリッド基板3が連なるリッド基板用ウエハ50との間に複数の圧電振動片5を封入してウエハ接合体60を形成し、ウエハ接合体60を切断することにより複数の圧電振動子1を同時に製造する方法について説明する。なお、図6は、ウエハ接合体の分解斜視図であり、図6に示す破線Mは、後述する個片化工程(S90)で切断する切断線を図示したものである。
図5に示すように、本実施形態に係る圧電振動子の製造方法は、主に、圧電振動片作製工程(S10)と、ベース基板用ウエハ作製工程(S20)と、リッド基板用ウエハ作製工程(S30)と、組立工程(S40以下)と、を有している。そのうち、圧電振動片作製工程(S10)、ベース基板用ウエハ作製工程(S20)及びリッド基板用ウエハ作製工程(S30)は、並行して実施することが可能である。
【0033】
(圧電振動片作製工程)
初めに、圧電振動片作製工程を行って図1〜4に示す圧電振動片5を作製する(S10)。また、圧電振動片5を作製した後、共振周波数の粗調を行っておく。なお、共振周波数をより高精度に調整する微調に関しては、マウント後に行う。
【0034】
(ベース基板用ウエハ作製工程)
まず、図5,6に示すように、後にベース基板2となるベース基板用ウエハ40を、陽極接合を行う直前の状態まで作製するベース基板用ウエハ作製工程を行う(S20)。具体的には、ソーダ石灰ガラスを所定の厚さまで研磨加工して洗浄した後に、エッチング等により最表面の加工変質層を除去した円板状のベース基板用ウエハ40を形成する(S21)。次いで、例えばプレス加工等により、ベース基板用ウエハ40に一対の貫通電極8,9を配置するための貫通孔21,22を複数形成する貫通孔形成工程を行う(S22)。具体的には、プレス加工によりベース基板用ウエハ40の第1面40aに凹部を形成した後、ベース基板用ウエハ40の第2面40b側から研磨することで、凹部を貫通させ、貫通孔21,22を形成することができる。
【0035】
続いて、貫通孔形成工程(S22)で形成された貫通孔21,22内に貫通電極8,9を形成する貫通電極形成工程(S23)を行う。これにより、貫通孔21,22内において、芯材部31がベース基板用ウエハ40の両面40a,40bに対して面一な状態で保持される。以上により、貫通電極8,9を形成することができる。
【0036】
次に、ベース基板用ウエハ40の第2面40bに導電性材料をパターニングして、引き回し電極27,28を形成する引き回し電極形成工程を行う(S24)。このようにして、ベース基板用ウエハ作製工程(S20)が終了する。
【0037】
(リッド基板用ウエハ作製工程)
図7は、リッド基板用ウエハの断面図である。
上述したベース基板用ウエハ作製工程(S20)と同時或いは前後のタイミングで、後にリッド基板3となるリッド基板用ウエハ50を、陽極接合を行う直前の状態まで作製するリッド基板用ウエハ作製工程を行う(S30)。具体的には、図5〜7(a)に示すように、ソーダ石灰ガラスを所定の厚さまで研磨加工して洗浄した後に、エッチング等により最表面の加工変質層を除去した円板状のリッド基板用ウエハ50を形成する(S31)。
次いで、図7(b)に示すように、リッド基板用ウエハ50の第1面51に、プレス加工やエッチング等により、キャビティC用の凹部3aを行列方向に複数形成する凹部形成工程を行う(S32)。これにより、リッド基板用ウエハ50の第1面51側は、複数の凹部3aと、凹部3aの周囲に形成され、先端面がベース基板用ウエハ40との接合面53(上述した額縁領域3cに相当)になる隔壁54と、を構成している。
【0038】
(研磨工程)
次に、リッド基板用ウエハ50を研磨する研磨工程(S33)を行う。研磨工程(S33)は、リッド基板用ウエハ50に対して粗削りを行うラッピング工程(S34)と、鏡面仕上げを行うポリッシュ工程(S35)と、を有している。
まず、ラッピング工程(S33)では、図示しない両面ラッピング装置を用い、リッド基板用ウエハ50の両面(第1面51及び第1面51と反対側の第2面52)をラッピング(粗削り)する。具体的には、リッド基板用ウエハ50を鋳鉄等からなるラップによってラップ剤を介して挟持し、これらラップ剤とリッド基板用ウエハ50とを相対移動させる。これにより、リッド基板用ウエハ50の両面51,52を粗削りすることができる。
【0039】
続いて、リッド基板用ウエハ50の少なくとも接合面53を鏡面仕上げするために、ポリッシュ工程(S35)を行う。
ポリッシュ工程(S35)は、図示しない両面研磨装置を用いてリッド基板用ウエハ50の両面51,52を研磨する1次ポリッシュ工程(S35A:前段ポリッシュ工程)、及び2次ポリッシュ工程(S35B:前段ポリッシュ工程)と、後述する片面研磨装置61を用いてリッド基板用ウエハ50の第1面51(接合面53)を研磨する3次ポリッシュ工程(S35C:後段ポリッシュ工程)と、を有している。
【0040】
1次ポリッシュ工程(S35A)では、まず研磨パッドを設けた上下一対の定盤間に、リッド基板用ウエハ50を保持するキャリアを挟み込む。そして、両面研磨装置を駆動して、研磨パッドとリッド基板用ウエハ50の両面51,52との間に研磨剤(第1研磨剤)を供給しながら、研磨パッド(定盤)とリッド基板用ウエハ50とを相対的に回転、移動させることで、リッド基板用ウエハ50の両面51,52が鏡面加工される。なお、本実施形態の両面研磨装置では、研磨パッドとリッド基板用ウエハ50との間から外部へ流出した研磨剤は、回収されて研磨パッドとリッド基板用ウエハ50との間に再度供給される仕組みとなっている。
【0041】
この場合、1次ポリッシュ工程(S35A)で用いる研磨剤としては、ガラス面の研磨に一般的に使用される酸化セリウム等の砥粒を水中に分散させたスラリー状のものが好適に用いられている。また、研磨パッドとしては、例えば不織布やスエード状の研磨布であるセリウムパッド等が好適に用いられる。
なお、その他の1次ポリッシュ工程(S35A)における研磨条件は、例えば以下の通りである。
・研磨圧力 80g/cm2程度
・研磨剤の流量 数百cc/min
【0042】
ところで、1次ポリッシュ工程(S35A)では、リッド基板用ウエハ50の接合面53の表面精度を向上させるため、上述したセリウムパッド等の比較的軟らかい研磨パッドを使用する必要がある。そのため、図7(c)に示すように、研磨パッドが隔壁54の周縁まで回り込むことになり、隔壁54が中心から周縁にかけて漸次厚さが薄くなる。その結果、接合面53となる隔壁54の先端面が曲面形状をなすことになる。すなわち、ラッピング工程(S34)後における接合面53の平坦面の面積(接合代D1)に比べて(図7(b)参照)、1次ポリッシング工程(S35A)後における接合面53の平坦面の面積(接合代D2)が縮小し、後述する接合工程(S60)において、両ウエハ40,50を良好に接合することができない虞がある。
【0043】
そこで、本実施形態では、1次ポリッシュ工程(S35A)を経たリッド基板用ウエハ50に対して、2次ポリッシュ工程(S35B)を行う。2次ポリッシュ工程(S35B)では、リッド基板用ウエハ50の両側に配置される研磨パッドにそれぞれ異なる材料を使用している。具体的に、リッド基板用ウエハ50の第1面51側に配置される研磨パッドに、発砲ウレタンからなる研磨パッドを使用する。発泡ウレタンからなる研磨パッドは、不織布に発泡ウレタン樹脂が含浸されて形成されたものであり、上述したセリウムパッドに比べて硬質な研磨パッドである。
【0044】
一方、リッド基板用ウエハ50の第2面52側に配置される研磨パッドに、不織布ベースの連続発泡構造を持った研磨パッドを採用している。すなわち、第2面52側に配置される研磨パッドに、発砲ウレタンよりも軟質な研磨パッドを貼着している。これにより、第1面51(接合面53)と研磨パッドとの間の抵抗に比べて、第2面52と研磨パッドとの間の抵抗を減少させることができる。よって、第2面52の研磨速度に比べて第1面51(接合面53)の研磨速度を大きく確保することができるため、接合面53の面ダレ部分を積極的に研磨することができる。
そして、その他の研磨条件については、上述した1次ポリッシュ工程(S35A)の研磨条件と同様の条件でリッド基板用ウエハ50を研磨することで、第1面51のうち主に接合面53が研磨され、接合面53が接合代D3の平坦面となる(図7(d)参照)。なお、本実施形態では接合代D3を、ラッピング工程後の接合代D1に比べて90%〜95%程度に形成することができる。
【0045】
図8は片面研磨装置の概略図であって、(a)は側面図、(b)は下方から見た平面図である。
続いて、図5,8に示すように、片面研磨装置61を用いてリッド基板用ウエハ50の接合面53を研磨する3次ポリッシュ工程(S35C)を行う。片面研磨装置61は、平面視円形状の上定盤62と、上定盤62と同じ平面視円形状に形成され研磨パッド(不図示)が設けられた下定盤63と、上定盤62の下側に複数配置されて、リッド基板用ウエハ50を吸着固定する平面視円形状のキャリア64と、リッド基板用ウエハ50と下定盤63の研磨パッドとの間に研磨剤(第2研磨剤)Wを流入させる研磨剤流入手段65と、下定盤63及び各キャリア64をそれぞれ独立して回転させる図示しない回転手段と、から概略構成されている。なお、本実施形態の片面研磨装置61は、例えばリッド基板用ウエハ50が各キャリア64にそれぞれ3枚ずつ固定できるようになっている。
【0046】
下定盤63は、図8中の矢印A1の方向に水平方向に回転する構造であり、その研磨側の面(図8(a)中上面)に研磨パッド(不図示)が貼着されている。
キャリア64は、上定盤62に水平方向に回転自在に保持されて図8中の矢印A2の方向に自転する構造である。このように下定盤63が回転するとともに、キャリア64が回転する構造により、研磨面の片減りを無くし表面を平坦に研磨することができる。なお、本実施形態では、下定盤63の回転数に対してキャリア64の回転数が1回転少なくなるように設定している。
【0047】
研磨剤流入手段65は、研磨剤Wを収容し、攪拌するモータを備える図示しない収容部と、収容部内の研磨剤Wを搬送し、上定盤62に6〜8ヶ所ほど設けられた流入口65aから下定盤63上に流入させる図示しないポンプと、研磨剤WのPHを測定するPH測定器(不図示)と、を備えている。なお、本実施形態の片面研磨装置61では、研磨パッドとリッド基板用ウエハ50との間から外部へ流出した研磨剤Wは、回収されて研磨パッドとリッド基板用ウエハ50との間に再度供給される仕組みとなっている。
【0048】
3次ポリッシュ工程(S35C)では、リッド基板用ウエハ50の第1面51(接合面53)が下側となるように、リッド基板用ウエハ50をキャリア64に吸着固定させて片面研磨装置61にセットする。このとき、同一キャリア64には、上述した2次ポリッシュ工程(S35B)後の厚みムラが1μm以内のリッド基板用ウエハ50同士をセットする。また、上定盤62若しくはキャリア64の下側には、例えばガラスエポキシ樹脂(FR4)で形成された平板形状のダミー基板67を設置することが好ましい。ダミー基板67は、リッド基板用ウエハ50よりも厚く形成されていることが好ましく、その下端面が接合面53よりも下方に位置することが好ましい。
【0049】
そして、下定盤63のリッド基板用ウエハ50との対向面に研磨パッド(不図示)を貼着した後、研磨剤Wを供給しながら、下定盤63及びキャリア64をそれぞれ回転手段により回転させて研磨を行う。このとき、研磨剤Wとしてはコロイダルシリカが用いられている。コロイダルシリカは、二酸化珪素(SiO2)が水中に分散されたものである。
また、研磨パッドとしては、上述した2次ポリッシュ工程(S35B)で用いた研磨パッドと同様の材料(発泡ウレタン)を採用している。さらに、3次ポリッシュ工程(S35C)は、上述した1次、2次ポリッシュ工程(S35A,B)に比べて、研磨圧力(210g/cm2程度)が大きく、また回転数も多く設定されている。一方で、3次ポリッシュ工程(S35C)における研磨剤の流量は、1次、2次ポリッシュ工程(S35A,B)に比べて少なく(例えば、半分程度)設定されている。
【0050】
上述の条件で研磨を行うと、まず接合面53よりも先にダミー基板67が下定盤63に接触し、ダミー基板67が研磨され、その後に接合面53が下定盤63に接触してダミー基板67と共に研磨される。
このように、接合面53よりも先にダミー基板67が研磨され、その後に接合面53がダミー基板67とともに研磨されることにより、下定盤63からリッド基板用ウエハ50に対して徐々に圧力を負荷することが可能になり、リッド基板用ウエハ50の損傷を防止することができる。
【0051】
次に、図5,6に示すように、リッド基板用ウエハ50の第1面51全体(ベース基板用ウエハ40との接合面53及び凹部3aの内面)に接合材23を形成する接合材形成工程(S36)を行う。
このように、接合材23をリッド基板用ウエハ50の第1面51全体に形成することで、接合材23のパターニングが不要になり、製造コストを低減することができる。なお、接合材23の形成は、スパッタやCVD等の成膜方法によって行うことができる。また、接合材形成工程(S36)の前に接合面53を研磨しているので、接合材23の表面精度が確保され、ベース基板用ウエハ40との安定した接合を実現することができる。
以上により、リッド基板用ウエハ作製工程(S30)が終了する。
【0052】
(組立工程)
次に、ベース基板用ウエハ作製工程(S20)で作製されたベース基板用ウエハ40の引き回し電極27,28上に、圧電振動片作製工程(S10)で作製された圧電振動片5を、金等のバンプBを介してマウントする(S40)。
そして、上述した各ウエハ作製工程(S20,S30)で作製されたベース基板用ウエハ40及びリッド基板用ウエハ50を重ね合わせる、重ね合わせ工程を行う(S50)。
【0053】
具体的には、図示しない基準マーク等を指標としながら、ベース基板用ウエハ40及びリッド基板用ウエハ50を正しい位置にアライメントする。
これにより、マウントされた圧電振動片5が、リッド基板用ウエハ50に形成された凹部3aとベース基板用ウエハ40とで囲まれるキャビティC内に収納された状態となる。
【0054】
重ね合わせ工程(S50)後、重ね合わせた2枚のベース基板用ウエハ40及びリッド基板用ウエハ50を図示しない陽極接合装置に入れ、図示しない保持機構によりウエハ40,50の外周部分をクランプした状態で、所定の温度雰囲気で所定の電圧を印加して陽極接合する接合工程を行う(S60)。すると、接合材23とベース基板用ウエハ40との界面に電気化学的な反応が生じ、両者がそれぞれ強固に密着して陽極接合される。
これにより、圧電振動片5をキャビティC内に封止することができ、ベース基板用ウエハ40とリッド基板用ウエハ50とが接合されたウエハ接合体60を得ることができる。
【0055】
そして、本実施形態のようにリッド基板用ウエハ50及びベース基板用ウエハ40同士を陽極接合することで、接着剤等でリッド基板用ウエハ50及びベース基板用ウエハ40を接合した場合に比べて、経時劣化や衝撃等によるずれ、ウエハ接合体60の反り等を防ぎ、リッド基板用ウエハ50及びベース基板用ウエハ40をより強固に接合することができる。
【0056】
この後、一対の貫通電極8,9にそれぞれ電気的に接続された一対の外部電極6,7を形成し(S70)、圧電振動子1の周波数を微調整する(S80)。
そして、接合されたウエハ接合体60を切断線Mに沿って切断し、個片化する個片化工程(S90)を行う。
【0057】
そして、電気特性検査工程(S100)では、圧電振動子1の共振周波数や共振抵抗値、ドライブレベル特性(共振周波数及び共振抵抗値の励振電力依存性)等を測定してチェックする。また、絶縁抵抗特性等も併せてチェックする。
最後に、圧電振動子1の外観検査を行って、寸法や品質等を最終的にチェックする。
以上により、圧電振動子1が完成する。
【0058】
このように、本実施形態では、1次ポリッシュ工程(S35A)、及び2次ポリッシュ工程(S35B)による前段ポリッシュ工程に加え、研磨剤Wにコロイダルシリカを用いて3次ポリッシュ工程(S35C)を行う構成とした。
この構成によれば、前段ポリッシュ工程の後、コロイダルシリカによる最終研磨を行うことで、リッド基板用ウエハ50の接合面53の表面精度の向上を図ることができるとともに、接合面53の平坦面を大きく確保することができるため、接合面53の接合代を大きく確保することができる。その結果、接合面53と接合材23との密着性を向上させ、両ウエハ40,50を強固に接合することができる。
したがって、キャビティC内の気密性を確保できるため、振動特性に優れた信頼性の高い圧電振動子1を提供することができる。なお、本実施形態の3次ポリッシュ工程(S35C)を行うことで、接合面53の表面粗さはRa=0.3nm程度となり、従来に比べて1/10程度に低減することができた。本実施形態において、表面粗さとは例えばJIS B 0601に規格化されている算術平均粗さRaの数値である。
【0059】
また、3次ポリッシュ工程(S35C)において、発泡ウレタンからなる研磨パッドを使用することで、研磨パッドが隔壁54の角部の周縁に回り込まず、接合面53上のみを摺動するので、接合面53を積極的に研磨できる。そのため、リッド基板用ウエハ50の接合面53の周縁部に面ダレ部分が発生するのを抑制でき、リッド基板用ウエハ50の接合代を大きく確保できる。
また、3次ポリッシュ工程(S35C)における研磨圧力を1,2次ポリッシュ工程(S35A,S35B)に比べて大きく設定することで、リッド基板用ウエハ50の接合面53と研磨パッドとの間に研磨剤Wを確実に介在させて、接合面53を効率的に研磨することができる。
【0060】
次に、本発明に係る発振器の一実施形態について、図9を参照しながら説明する。
本実施形態の発振器100は、図9に示すように、圧電振動子1を、集積回路101に電気的に接続された発振子として構成したものである。この発振器100は、コンデンサ等の電子部品102が実装された基板103を備えている。基板103には、発振器用の上述した集積回路101が実装されており、この集積回路101の近傍に、圧電振動子1が実装されている。これら電子部品102、集積回路101及び圧電振動子1は、図示しない配線パターンによってそれぞれ電気的に接続されている。なお、各構成部品は、図示しない樹脂によりモールドされている。
【0061】
このように構成された発振器100において、圧電振動子1に電圧を印加すると、この圧電振動子1内の圧電振動片5が振動する。この振動は、圧電振動片5が有する圧電特性により電気信号に変換されて、集積回路101に電気信号として入力される。入力された電気信号は、集積回路101によって各種処理がなされ、周波数信号として出力される。
これにより、圧電振動子1が発振子として機能する。
また、集積回路101の構成を、例えば、RTC(リアルタイムクロック)モジュール等を要求に応じて選択的に設定することで、時計用単機能発振器等の他、当該機器や外部機器の動作日や時刻を制御したり、時刻やカレンダー等を提供したりする機能を付加することができる。
【0062】
本実施形態の発振器100は、上記のように信頼性に優れた圧電振動子1を備えているので、発振器100自体の信頼性も確保することができ、長期にわたって安定した高精度な周波数信号を得ることができる。
【0063】
(電子機器)
次に、本発明に係る電子機器の一実施形態について、図10を参照して説明する。なお電子機器として、上述した圧電振動子1を有する携帯情報機器110を例にして説明する。始めに本実施形態の携帯情報機器110は、例えば、携帯電話に代表されるものであり、従来技術における腕時計を発展、改良したものである。外観は腕時計に類似し、文字盤に相当する部分に液晶ディスプレイを配し、この画面上に現在の時刻等を表示させることができるものである。また、通信機として利用する場合には、手首から外し、バンドの内側部分に内蔵されたスピーカ及びマイクロフォンによって、従来技術の携帯電話と同様の通信を行うことが可能である。しかしながら、従来の携帯電話と比較して、格段に小型化及び軽量化されている。
【0064】
次に、本実施形態の携帯情報機器110の構成について説明する。この携帯情報機器110は、図10に示すように、圧電振動子1と、電力を供給するための電源部111とを備えている。電源部111は、例えば、リチウム二次電池からなっている。この電源部111には、各種制御を行う制御部112と、時刻等のカウントを行う計時部113と、外部との通信を行う通信部114と、各種情報を表示する表示部115と、それぞれの機能部の電圧を検出する電圧検出部116とが並列に接続されている。そして、電源部111によって、各機能部に電力が供給されるようになっている。
【0065】
制御部112は、各機能部を制御して音声データの送信及び受信、現在時刻の計測や表示等、システム全体の動作制御を行う。また、制御部112は、予めプログラムが書き込まれたROMと、このROMに書き込まれたプログラムを読み出して実行するCPUと、このCPUのワークエリアとして使用されるRAM等とを備えている。
【0066】
計時部113は、発振回路、レジスタ回路、カウンタ回路及びインターフェース回路等を内蔵する集積回路と、圧電振動子1とを備えている。圧電振動子1に電圧を印加すると圧電振動片5が振動し、この振動が水晶の有する圧電特性により電気信号に変換されて、発振回路に電気信号として入力される。発振回路の出力は二値化され、レジスタ回路とカウンタ回路とにより計数される。そして、インターフェース回路を介して、制御部112と信号の送受信が行われ、表示部115に、現在時刻や現在日付或いはカレンダー情報等が表示される。
【0067】
通信部114は、従来の携帯電話と同様の機能を有し、無線部117、音声処理部118、切替部119、増幅部120、音声入出力部121、電話番号入力部122、着信音発生部123及び呼制御メモリ部124を備えている。
無線部117は、音声データ等の各種データを、アンテナ125を介して基地局と送受信のやりとりを行う。音声処理部118は、無線部117又は増幅部120から入力された音声信号を符号化及び複号化する。増幅部120は、音声処理部118又は音声入出力部121から入力された信号を、所定のレベルまで増幅する。音声入出力部121は、スピーカやマイクロフォン等からなり、着信音や受話音声を拡声したり、音声を集音したりする。
【0068】
また、着信音発生部123は、基地局からの呼び出しに応じて着信音を生成する。切替部119は、着信時に限って、音声処理部118に接続されている増幅部120を着信音発生部123に切り替えることによって、着信音発生部123において生成された着信音が増幅部120を介して音声入出力部121に出力される。
なお、呼制御メモリ部124は、通信の発着呼制御に係るプログラムを格納する。また、電話番号入力部122は、例えば、0から9の番号キー及びその他のキーを備えており、これら番号キー等を押下することにより、通話先の電話番号等が入力される。
【0069】
電圧検出部116は、電源部111によって制御部112等の各機能部に対して加えられている電圧が、所定の値を下回った場合に、その電圧降下を検出して制御部112に通知する。このときの所定の電圧値は、通信部114を安定して動作させるために必要な最低限の電圧として予め設定されている値であり、例えば、3V程度となる。電圧検出部116から電圧降下の通知を受けた制御部112は、無線部117、音声処理部118、切替部119及び着信音発生部123の動作を禁止する。特に、消費電力の大きな無線部117の動作停止は、必須となる。更に、表示部115に、通信部114が電池残量の不足により使用不能になった旨が表示される。
【0070】
すなわち、電圧検出部116と制御部112とによって、通信部114の動作を禁止し、その旨を表示部115に表示することができる。この表示は、文字メッセージであっても良いが、より直感的な表示として、表示部115の表示面の上部に表示された電話アイコンに、×(バツ)印を付けるようにしても良い。
なお、通信部114の機能に係る部分の電源を、選択的に遮断することができる電源遮断部126を備えることで、通信部114の機能をより確実に停止することができる。
【0071】
本実施形態の携帯情報機器110は、上記のように信頼性に優れた圧電振動子1を備えているので、携帯情報機器110自体の信頼性も確保することができ、長期にわたって安定した高精度な時計情報を表示することができる。
【0072】
(電波時計)
次に、本発明に係る電波時計の一実施形態について、図11を参照して説明する。
本実施形態の電波時計130は、図11に示すように、フィルタ部131に電気的に接続された圧電振動子1を備えたものであり、時計情報を含む標準の電波を受信して、正確な時刻に自動修正して表示する機能を備えた時計である。
日本国内には、福島県(40kHz)と佐賀県(60kHz)とに、標準の電波を送信する送信所(送信局)があり、それぞれ標準電波を送信している。40kHz若しくは60kHzのような長波は、地表を伝播する性質と、電離層と地表とを反射しながら伝播する性質とを併せもつため、伝播範囲が広く、上述した2つの送信所で日本国内を全て網羅している。
【0073】
以下、電波時計130の機能的構成について詳細に説明する。
アンテナ132は、40kHz若しくは60kHzの長波の標準電波を受信する。長波の標準電波は、タイムコードと呼ばれる時刻情報を、40kHz若しくは60kHzの搬送波にAM変調をかけたものである。受信された長波の標準電波は、アンプ133によって増幅され、複数の圧電振動子1を有するフィルタ部131によって濾波、同調される。
本実施形態における圧電振動子1は、上述した搬送周波数と同一の40kHz及び60kHzの共振周波数を有する水晶振動子部138、139をそれぞれ備えている。
【0074】
さらに、濾波された所定周波数の信号は、検波、整流回路134により検波復調される。続いて、波形整形回路135を介してタイムコードが取り出され、CPU136でカウントされる。CPU136では、現在の年、積算日、曜日、時刻等の情報を読み取る。読み取られた情報は、RTC137に反映され、正確な時刻情報が表示される。
搬送波は、40kHz若しくは60kHzであるから、水晶振動子部138、139は、上述した音叉型の構造を持つ振動子が好適である。
【0075】
なお、上述の説明は、日本国内の例で示したが、長波の標準電波の周波数は、海外では異なっている。例えば、ドイツでは77.5KHzの標準電波が用いられている。従って、海外でも対応可能な電波時計130を携帯機器に組み込む場合には、さらに日本の場合とは異なる周波数の圧電振動子1を必要とする。
【0076】
本実施形態の電波時計130は、上記のように信頼性に優れた圧電振動子1を備えているので、電波時計130自体の信頼性も確保することができ、長期にわたって安定して高精度に時刻をカウントすることができる。
【0077】
以上、本発明の技術範囲は上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上述した実施形態では、本発明に係るパッケージの製造方法を使用しつつ、パッケージの内部に圧電振動片を封入して圧電振動子を製造したが、パッケージの内部に圧電振動片以外の電子部品を封入して、圧電振動子以外のデバイスを製造することも可能である。
また、上述した実施形態では、音叉型の圧電振動片を用いた圧電振動子を例に挙げて本発明のパッケージの製造方法を説明したが、これに限らず、例えばATカット型の圧電振動片(厚み滑り振動片)を用いた圧電振動子等に、本発明を適用しても構わない。
【0078】
さらに、上述した実施形態においては、リッド基板用ウエハ50に接合材23を形成する構成について説明したが、ベース基板用ウエハ40におけるリッド基板用ウエハ50の接合面53に対向する領域に接合材23を形成しても構わない。この場合にも、陽極接合時において、リッド基板用ウエハ50とベース基板用ウエハ40に形成された接合材23との密着性を向上させることができる。
また、上述した3次ポリッシュ工程(S35C)に片面研磨装置61を用いる構成について説明したが、両面研磨装置を用いても構わない。
【符号の説明】
【0079】
1…圧電振動子 3a…凹部 5…圧電振動片(電子部品) 10…パッケージ 40…ベース基板用ウエハ(第2基板) 50…リッド基板用ウエハ(第1基板、ガラス基板) 51…第1面 53…接合面(先端面) 54…隔壁 100…発振器 101…集積回路 110…携帯情報機器(電子機器) 113…計時部 130…電波時計 131…フィルタ部 C…キャビティ W…研磨剤(第2研磨剤)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
研磨剤を供給しつつガラス基板の表面を研磨する、研磨工程を有するガラス基板の研磨方法であって、
前記研磨工程は、
前記研磨剤に酸化セリウムを主成分とする第1研磨剤を用いて前記ガラス基板の前記表面を研磨する前段ポリッシュ工程と、
前記研磨剤にコロイダルシリカを主成分とする第2研磨剤を用いて前記ガラス基板の前記表面を研磨する後段ポリッシュ工程と、を有することを特徴とするガラス基板の研磨方法。
【請求項2】
請求項1記載のガラス基板の研磨方法であって、
前記ガラス基板の前記表面には、凹部が形成され、
前記研磨工程では、前記凹部の周囲を取り囲む隔壁の先端面を研磨することを特徴とするガラス基板の研磨方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載のガラス基板の研磨方法であって、
前記後段ポリッシュ工程は、発泡ウレタンからなる研磨パッドを用いて行うことを特徴とするガラス基板の研磨方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3の何れか1項に記載のガラス基板の研磨方法であって、
前記後段ポリッシュ工程では、前記前段ポリッシュ工程に比べて研磨圧力を大きく設定することを特徴とするガラス基板の研磨方法。
【請求項5】
互いに接合された複数の基板との間に形成されたキャビティ内に、電子部品を封入可能なパッケージの製造方法であって、
前記複数の基板のうち、第1基板の表面に前記キャビティ用の凹部を形成する凹部形成工程と、
請求項1記載のガラス基板の研磨方法を用い、前記凹部の周囲を取り囲む隔壁の先端面を研磨する研磨工程と、
前記隔壁の先端面に、前記複数の基板のうち第2基板を陽極接合する工程と、を有することを特徴とするパッケージの製造方法。
【請求項6】
請求項5記載のパッケージの製造方法によって製造されたことを特徴とする圧電振動子。
【請求項7】
請求項6記載の圧電振動子が、発振子として集積回路に電気的に接続されていることを特徴とする発振器。
【請求項8】
請求項6記載の圧電振動子が、計時部に電気的に接続されていることを特徴とする電子機器。
【請求項9】
請求項6記載の圧電振動子が、フィルタ部に電気的に接続されていることを特徴とする電波時計。
【請求項1】
研磨剤を供給しつつガラス基板の表面を研磨する、研磨工程を有するガラス基板の研磨方法であって、
前記研磨工程は、
前記研磨剤に酸化セリウムを主成分とする第1研磨剤を用いて前記ガラス基板の前記表面を研磨する前段ポリッシュ工程と、
前記研磨剤にコロイダルシリカを主成分とする第2研磨剤を用いて前記ガラス基板の前記表面を研磨する後段ポリッシュ工程と、を有することを特徴とするガラス基板の研磨方法。
【請求項2】
請求項1記載のガラス基板の研磨方法であって、
前記ガラス基板の前記表面には、凹部が形成され、
前記研磨工程では、前記凹部の周囲を取り囲む隔壁の先端面を研磨することを特徴とするガラス基板の研磨方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載のガラス基板の研磨方法であって、
前記後段ポリッシュ工程は、発泡ウレタンからなる研磨パッドを用いて行うことを特徴とするガラス基板の研磨方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3の何れか1項に記載のガラス基板の研磨方法であって、
前記後段ポリッシュ工程では、前記前段ポリッシュ工程に比べて研磨圧力を大きく設定することを特徴とするガラス基板の研磨方法。
【請求項5】
互いに接合された複数の基板との間に形成されたキャビティ内に、電子部品を封入可能なパッケージの製造方法であって、
前記複数の基板のうち、第1基板の表面に前記キャビティ用の凹部を形成する凹部形成工程と、
請求項1記載のガラス基板の研磨方法を用い、前記凹部の周囲を取り囲む隔壁の先端面を研磨する研磨工程と、
前記隔壁の先端面に、前記複数の基板のうち第2基板を陽極接合する工程と、を有することを特徴とするパッケージの製造方法。
【請求項6】
請求項5記載のパッケージの製造方法によって製造されたことを特徴とする圧電振動子。
【請求項7】
請求項6記載の圧電振動子が、発振子として集積回路に電気的に接続されていることを特徴とする発振器。
【請求項8】
請求項6記載の圧電振動子が、計時部に電気的に接続されていることを特徴とする電子機器。
【請求項9】
請求項6記載の圧電振動子が、フィルタ部に電気的に接続されていることを特徴とする電波時計。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−31909(P2013−31909A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−170096(P2011−170096)
【出願日】平成23年8月3日(2011.8.3)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月3日(2011.8.3)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】
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