説明

リンク装置および搬送ロボット

【課題】 前進時および後退時の停止位置精度を高めることができるリンク装置を提供する。
【解決手段】 リンク装置は、中間部材12上の2つの第1支軸f1において、各第1リンクアーム10,11と一体的に回転するように設けられた一対の第1歯車100,110と、中間部材12上の2つの第2支軸f2において、各第2リンクアーム20,21と一体的に回転するように設けられた一対の第2歯車200,210とを備えており、かつ、一方の第2歯車210は、第1リンクアーム10,11を所定の方向に揺動させて移動部材を前進させる場合にのみ、一方の第1歯車110と噛み合った状態で回転させられる一方、他方の第2歯車200は、第1リンクアーム10,11を所定の方向とは逆方向に揺動させて移動部材を後退させる場合にのみ、他方の第1歯車100と噛み合った状態で回転させられるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、たとえば搬送対象物を受け渡しするための移動部材を直線的に前進および後退させるリンク装置および搬送ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
搬送対象物として平板状のワークを水平に保ちながら直線的に移動させる従来の搬送ロボットとしては、たとえば特許文献1に開示されたものがある。
【0003】
上記特許文献1に開示された搬送ロボットは、原動節として揺動させられる第1主アームと、従動節として揺動する第1副アームと、これら第1主アームおよび第1副アームを平行に連接する第1可動リンクとで構成された第1平行リンク機構を備えるとともに、上記第1可動リンクを固定節として揺動させられる第2主アームと、従動節として揺動する第2副アームと、これら第2主アームおよび第2副アームを平行に連接する第2可動リンクとで構成された第2平行リンク機構を備える。第1平行リンク機構および第2平行リンク機構は、それぞれ原動節となる第1主アームおよび第2主アームが連動して第2可動リンクが直線的に前進および後退するように1つのリンク装置として用いられる。
【0004】
上記リンク装置の具体的な仕組みとしては、第1主アームが所定の軸(第1支軸)を介して第1可動リンクに回転可能に支持され、この第1支軸に第1主アームと一体的に回転可能な第1歯車が設けられている。第2主アームは、第1支軸に隣接する所定の軸(第2支軸)を介して第1可動リンクに回転可能に支持され、この第2支軸には、第2主アームと一体的に回転可能な第2歯車が設けられている。これら第1歯車および第2歯車は、正逆両方向に噛み合って相互に回転する。
【0005】
すなわち、第1主アームを所定の方向に揺動させて第2可動リンクを前進させる場合、第1主アームが第1可動リンクに対して相対的に正方向(特許文献1に添付の図面上は時計回りの方向)に回転する。このとき、第1歯車および第2歯車が噛み合って相互に回転することにより、第2主アームは、第1主アームとは逆に第1可動リンクに対して相対的に逆方向(特許文献1に添付の図面上は反時計回りの方向)に回転し、その結果、第2可動リンクが前進する。一方、第1主アームを所定の方向とは逆方向に揺動させて第2可動リンクを後退させる場合には、第1主アームが第1可動リンクに対して相対的に逆方向に回転する。このときも第1歯車および第2歯車が噛み合って相互に回転することにより、第2主アームが第1主アームとは逆に第1可動リンクに対して相対的に正方向に回転し、その結果、第2可動リンクが後退する。
【0006】
【特許文献1】特開平10−6258号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来のリンク装置を備えた搬送ロボットでは、第2可動リンクを前進および後退させる場合のいずれにおいても、同じ組み合わせの第1歯車および第2歯車を介して第1主アームおよび第2主アームが互いに逆方向に揺動する。前進から後退や後退から前進へと方向転換すると、第1歯車および第2歯車の回転方向が逆転するが、このとき、第1歯車および第2歯車の歯間には、バックラッシュによる遊びが存在する。つまり、従来のリンク装置では、第1主アームと第2主アームとの間にバックラッシュによるずれが生じるため、移動部材となる第2可動リンクを前進時や後退時に目標とする停止位置に精度良く停止させることができない難点があった。
【0008】
本願発明は、このような事情のもとで考え出されたものであって、前進時および後退時の停止位置精度を高めることができるリンク装置、およびこのようなリンク装置を備えた搬送ロボットを提供することをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本願発明では、次の技術的手段を採用した。
【0010】
すなわち、本願発明の第1の側面によって提供されるリンク装置は、少なくともいずれか一方が原動節として揺動させられる一対の第1リンクアームと、これら一対の第1リンクアームを平行に連接する中間部材とで構成された第1平行リンク機構を備えるとともに、上記中間部材を固定節として揺動可能な一対の第2リンクアームと、これら一対の第2リンクアームを平行に連接する移動部材とで構成された第2平行リンク機構を備え、上記第1平行リンク機構および第2平行リンク機構を連動させることで上記移動部材が直線的に前進および後退するように構成されているリンク装置であって、上記第1リンクアームのそれぞれが上記中間部材に対して相対的に回転可能に支持された2つの第1支軸において、上記各第1リンクアームと一体的に回転するように設けられた一対の第1歯車と、上記第2リンクアームのそれぞれが上記中間部材に対して相対的に回転可能に支持された2つの第2支軸において、上記各第2リンクアームと一体的に回転するように設けられた一対の第2歯車と、を備えており、かつ、上記一対の第2歯車のうちの一方は、上記第1リンクアームを所定の方向に揺動させて上記移動部材を前進させる場合にのみ、上記一対の第1歯車のうちの一方と噛み合った状態で回転させられる一方、上記一対の第2歯車のうちの他方は、上記第1リンクアームを上記所定の方向とは逆方向に揺動させて上記移動部材を後退させる場合にのみ、上記一対の第1歯車のうちの他方と噛み合った状態で回転させられるように構成されていることを特徴としている。
【0011】
好ましい実施の形態においては、上記第1支軸には、上記第1リンクアームを回転可能に支持する第1軸体が設けられているとともに、上記第2支軸には、上記第2リンクアームを回転可能に支持する第2軸体が設けられており、上記第1歯車および第2歯車は、上記第1軸体および第2軸体のそれぞれに固定されている。
【0012】
このような構成では、一対の第1リンクアームおよび一対の第2リンクアームを連動させるための仕組みとして、第1歯車および第2歯車の組み合わせからなる歯車対が2組存在する。移動部材を前進させる場合、一方の組をなす歯車対が確実に噛み合った状態(バックラッシュの無い状態)で第1リンクアームおよび第2リンクアームが揺動する。これにより、移動部材は、第2リンクアームとともに第1リンクアームの揺動動作にずれることなく動き始め、目標とする停止位置へと円滑に前進する。これとは逆に移動部材を後退させる場合には、他方の組をなす歯車対が確実に噛み合った状態で第1リンクアームおよび第2リンクアームが上記とは逆方向に揺動する。これによっても、移動部材は、第2リンクアームとともに第1リンクアームの揺動動作にずれることなく動き始めるため、目標とする停止位置へと円滑に後退する。したがって、本願発明の第1の側面によるリンク装置によれば、前進時および後退時に目標とする停止位置に移動部材を精度良く停止させることができ、前進時や後退時の停止位置精度を高めることができる。
【0013】
他の好ましい実施の形態としては、上記第1軸体および第2軸体の少なくともいずれか一方は、位置決めされた状態の上記第1リンクアームあるいは第2リンクアームに対し、上記第1支軸あるいは第2支軸を中心とした取り付け角の調整可能な締結手段を介して取り付けられている。
【0014】
他の好ましい実施の形態としては、上記移動部材を前進させる場合にのみ噛み合う上記第1歯車および第2歯車は、上記取り付け角を調整することで互いに所定側の歯面が接するように組み付けられている一方、上記移動部材を後退させる場合にのみ噛み合う上記第1歯車および第2歯車は、上記取り付け角を調整することで互いに上記所定側とは正反対となる側の歯面が接するように組み付けられている。
【0015】
このような構成によれば、一方の組をなす歯車対と他方の組をなす歯車対とを互いに反対方向に噛み合うように組み付けることができる。これにより、一方の組をなす歯車対が相互に回転して第1リンクアームから第2リンクアームへと駆動力を伝える際には、他方の組をなす歯車対が空転して駆動力が伝えられない状態となり、他方の組をなす歯車対が相互に回転して第1リンクアームから第2リンクアームへと駆動力を伝える際には、一方の組をなす歯車対が空転して駆動力が伝えられない状態にすることができる。
【0016】
他の好ましい実施の形態としては、上記第1リンクアームおよび第2リンクアームは、立体交差状に配置されている。
【0017】
このような構成によれば、第1リンクアームおよび第2リンクアームを干渉させることなく互いに逆方向に揺動させることができる。
【0018】
本願発明の第2の側面によって提供される搬送ロボットは、上記第1の側面に係るリンク装置を備えたこと特徴としている。
【0019】
このような構成によれば、第1の側面によるものと同様の効果を得ることができ、たとえば搬送対象物を移動部材に載せた状態で当該搬送対象物を正確に目標とする停止位置へと搬送することができる。
【0020】
本願発明のその他の特徴および利点は、図面を参照して以下に行う詳細な説明から、より明らかとなろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本願発明に係るリンク装置およびこれを備えた搬送ロボットの好ましい実施形態について、図面を参照して具体的に説明する。
【0022】
図1〜7は、本願発明に係るリンク装置を備えた搬送ロボットの一実施形態を示している。
【0023】
図1および図2に示されているように、搬送ロボットは、固定ベース1の上部にリンク装置Aを備える。リンク装置Aは、搬送対象物を水平方向に沿って直線的に前進および後退させるためのものであり、このリンク装置Aは、第1平行リンク機構A1、第2平行リンク機構A2、これらを連動させるためのギアボックス3、搬送対象物としてのガラス基板Gを載せるためのハンド部材4を有して構成されている。固定ベース1の内部には、リンク装置Aに回転駆動力を伝えるための駆動モータMや駆動軸Sが組み込まれている(図1参照)。なお、特に図示しないが、固定ベース1の内部には、駆動モータMや駆動軸Sを鉛直軸周りに旋回させるための旋回装置や鉛直方向に上下移動させるための昇降装置も組み込まれており、リンク装置Aは、駆動モータMや駆動軸Sと一体的に旋回させたり上下移動させることも可能である。
【0024】
第1平行リンク機構A1は、固定ベース1の上部を固定節として揺動可能に支持された一対の第1リンクアーム10,11、および一対の第1リンクアーム10,11を平行に連接する中間部材12を主として備えて構成される。第2平行リンク機構A2は、上記中間部材12を固定節として揺動可能に支持された一対の第2リンクアーム20,21、および一対の第2リンクアーム20,21を平行に連接する移動部材22を主として備えて構成される。ギアボックス3は、第1リンクアーム10,11の先端部を挟んで中間部材12の下方に設けられており、その内部には、第1リンクアーム10,11および第2リンクアーム20,21を相互に回転させる歯車対が収められている。ハンド部材4は、移動部材22の上部に固定されている。
【0025】
第1平行リンク機構A1における第1リンクアーム10,11の基端部は、固定ベース1の上部に対し、第0支軸f0で鉛直軸周りに回転可能に支持されている。一方の第1リンクアーム10は、駆動軸Sを介して駆動モータMに連結されており、これらによって第0支軸f0を中心に原動節として揺動させられる。他方の第1リンクアーム11は、一方の第1リンクアーム10と平行姿勢をとりつつ従動節として揺動する。図3によく示されているように、第1リンクアーム10,11の各先端部には、第1軸体13がボルト14を介して固定されており、これらの第1軸体13は、中間部材12およびギアボックス3に対し、第1支軸f1で鉛直軸周りに回転可能となるように軸受け16を介して支持されている。第1軸体13の各下端部には、第1歯車100,110が固定されている。これら一対の第1歯車100,110は、ギアボックス3の内部で回転可能となるように配置されている。
【0026】
このような第1平行リンク機構A1では、一対の第1リンクアーム10,11が揺動すると、これらの先端部に追従して中間部材12およびギアボックス3が平行移動する。このとき、第1リンクアーム10,11のそれぞれは、中間部材12やギアボックス3に対して第1支軸f1を中心に相対的に回転し、それに応じて第1歯車100,110が第1支軸f1を中心に回転する。
【0027】
図3によく示されているように、第2平行リンク機構A2における第2リンクアーム20,21は、第1リンクアーム10,11と立体交差状をなすように中間部材12の上側に配置されている。第2リンクアーム20,21の各基端部には、第2軸体23がボルト24を介して固定されており、これらの第2軸体23は、中間部材12およびギアボックス3に対し、第2支軸f2で鉛直軸周りに回転可能となるように軸受け26を介して支持されている。第2軸体23の各下端部には、第2歯車200,210が固定されている。これら一対の第2歯車200,210は、ギアボックス3の内部で上記第1歯車100,110と各々組み合わされて2組の歯車対を構成するように配置されている。第2リンクアーム20,21の各先端部は、移動部材22に対し、第3支軸f3で鉛直軸周りに回転可能に支持されている(図1および図2参照)。上記第1リンクアーム10,11および第2リンクアーム20,21は、全て同じ長さであり、上記第0支軸f0間、第1支軸f1間、第2支軸f2間、第3支軸f3間の各軸間距離は、全て同じである。
【0028】
特に図4によく示されているように、第2軸体23の頭部には、ボルト24の固定位置を周方向に調整可能な複数の長孔25が設けられている。これらのボルト24および長孔25からなる締結手段により、第2軸体23は、第2支軸f2を中心とした取り付け角を調整した上で第2リンクアーム20,21に取り付けられている。
【0029】
具体的に第2軸体23を取り付ける際には、図4および図5に一例として示されるように、第1リンクアーム10,11および第2リンクアーム20,21を所定の揺動位置に位置決めした状態とし、第1歯車100,110を第1軸体13および第1リンクアーム10,11に対して完全に固定しておく。一方、第2歯車200,210は、第2軸体23に対して完全に固定しておくが、第2軸体23は、第2リンクアーム20,21に対して仮止めする。
【0030】
次の作業では、第1リンクアーム10,11および第2リンクアーム20,21を位置決めした状態で例えば一方の第2リンクアーム20に着手し、第2支軸f2を中心とした第2軸体23の取り付け角を調整した上で当該第2軸体23を第2リンクアーム20に固定する。これにより、第2歯車200は、第1歯車100に対して所定の方向にのみ噛み合った状態で回転させられるように固定される。
【0031】
さらに、他方の第2リンクアーム21については、第2支軸f2を中心とした第2軸体23の取り付け角を調整した上で当該第2軸体23を第2リンクアーム21に固定する。これにより、第2歯車210は、第1歯車110に対して上記所定の方向とは逆方向にのみ噛み合った状態で回転させられるように固定される。
【0032】
すなわち、一方の歯車対をなす第1歯車100および第2歯車200は、互いに所定側の歯面が接するように組み付けられ、第1歯車100が反時計回りの方向に回転する場合にのみ第2歯車200がバックラッシュの無い状態で時計回りの方向に回転させられる。他方の歯車対をなす第1歯車110および第2歯車210は、互いに上記所定側とは正反対となる側の歯面が接するように組み付けられ、第1歯車110が時計回りの方向に回転する場合にのみ第2歯車210がバックラッシュの無い状態で反時計回りの方向に回転させられる。
【0033】
このような第2平行リンク機構A2では、一対の第1リンクアーム10,11が第0支軸f0を中心として時計回りの方向に揺動すると、第1歯車100,110が第1支軸f1を中心に時計回りの方向に回転するが、このとき、第1歯車110のみが第2歯車210と確実に噛み合った状態で当該第2歯車210を反時計回りの方向に回転させる。これとは逆に、一対の第1リンクアーム10,11が第0支軸f0を中心として反時計回りの方向に揺動する際には、第1歯車100,110が第1支軸f1を中心に反時計回りの方向に回転することとなり、第1歯車100のみが第2歯車200と確実に噛み合った状態で当該第2歯車200を時計回りの方向に回転させる。つまり、第1リンクアーム10,11が時計回りの方向に揺動すると、これらにずれることなく第2リンクアーム21が原動節として反時計回りの方向に揺動し、これに追従して第2リンクアーム20が対をなす第2リンクアーム21と平行を保ちながら同方向に揺動し、その結果、移動部材22およびハンド部材4が所定の方向に沿って真っ直ぐ前進する。逆に、第1リンクアーム10,11が反時計回りの方向に揺動すると、これらにずれることなく第2リンクアーム20が原動節として時計回りの方向に揺動し、これに追従して第2リンクアーム21が対をなす第2リンクアーム20と平行を保ちながら同方向に揺動し、その結果、移動部材22およびハンド部材4が所定の方向に沿って真っ直ぐ後退する。
【0034】
このようなハンド部材4の前進および後退動作に加え、リンク装置A全体が旋回および上下移動することにより、搬送ロボットは、所定の前進停止位置にある搬送対象物としてのガラス基板Gをハンド部材4で下方からすくい取るようにして引き取ることができる。また、搬送ロボットは、ハンド部材4上にガラス基板Gを載せた状態で固定ベース1の略直上となる所定の後退停止位置まで当該ハンド部材4を後退させ、その後、リンク装置A全体を所定の方向に旋回させてからハンド部材4を前進させることにより、上記所定の前進停止位置とは異なる別の前進停止位置へとガラス基板Gを搬送することができる。
【0035】
次に、図6および図7を主に参照してリンク装置Aの前進および後退動作を説明する。
【0036】
図6に示されているように、移動部材22(およびハンド部材4)を前進させる場合、第1リンクアーム10,11が第0支軸f0を中心に時計回りの方向に揺動し、それに応じて中間部材12(およびギアボックス3)が同方向に平行移動する。このとき、中間部材12から観測すると、第1歯車100,110は、第1支軸f1を中心に時計回りの方向に回転している。
【0037】
このように、2つの第1歯車100,110は、いずれも同じ方向に回転するが、時計回りの回転方向では、第1歯車110のみが第2歯車210と噛み合った状態にある。これにより、第2リンクアーム21に回転駆動力が伝えられ、この第2リンクアーム21が原動節として第2支軸f2を中心に反時計回りの方向に揺動する。
【0038】
第2リンクアーム21が反時計回りの方向に揺動すると、それに追従して第2リンクアーム20も同方向に揺動する。すなわち、第1リンクアーム10,11および第2リンクアーム20,21は、中間部材12を挟んで立体交差状に干渉することなく互いになす角を広げるように揺動し、その結果、移動部材22が所定の方向に沿って真っ直ぐ前進する。このとき、中間部材12から観測すると、第2歯車200は、第2支軸f2を中心に反時計回りの方向に回転しているが、反時計回りの方向では、第2歯車200が第1歯車100に対して空転するため、第1歯車100および第2歯車200との間で回転駆動力が伝えられることはない。
【0039】
その後、時計回りの方向に揺動する第1リンクアーム10,11の動作が停止させられ、それに応じて第2リンクアーム20,21の揺動動作が停止すると、移動部材22は、所定の前進停止位置に達する。このとき、第1リンクアーム10,11の揺動動作を急激に停止させるほど、第2リンクアーム20,21および移動部材22に対して大きな慣性力が作用し、移動部材22が所定の前進停止位置よりもさらに前側に移動しようとする。しかしながら、前進時に回転駆動力を伝えない第1歯車100および第2歯車200がこのような状態を阻止する方向に噛み合った状態にあるため、第2リンクアーム20の揺動動作が規制され、これにより、移動部材22は、所定の前進停止位置に正確に止められる。
【0040】
所定の前進停止位置から移動部材22を後退させる場合、図7に示されているように、第1リンクアーム10,11が第0支軸f0を中心に前進時とは逆方向となる反時計回りの方向に揺動し、それに応じて中間部材12が同方向に平行移動する。このとき、中間部材12から観測すると、第1歯車100,110は、第1支軸f1を中心に反時計回りの方向に回転している。
【0041】
このような後退時においても、2つの第1歯車100,110は、いずれも同じ方向に回転するが、反時計回りの回転方向では、第1歯車100のみが第2歯車200と噛み合った状態にある。これにより、第2リンクアーム20に回転駆動力が伝えられ、この第2リンクアーム20が原動節として第2支軸f2を中心に時計回りの方向に揺動する。また、移動部材22を所定の前進停止位置から後退させようとする後退開始時には、すでに第1歯車100および第2歯車200の歯面がバックラッシュの無いほとんど接触した状態にあるため、第1リンクアーム10,11の揺動開始に応じて直ちに第2リンクアーム20が揺動し始める。
【0042】
第2リンクアーム20が時計回りの方向に揺動すると、それに追従して第2リンクアーム21も同方向に揺動する。すなわち、第1リンクアーム10,11および第2リンクアーム20,21は、中間部材12を挟んで立体交差状に干渉することなく互いになす角を狭めるように揺動し、その結果、移動部材22が所定の方向に沿って真っ直ぐ後退する。このとき、中間部材12から観測すると、第2歯車210は、第2支軸f2を中心に時計回りの方向に回転しているが、時計回りの方向では、第2歯車210が第1歯車110に対して空転するため、第1歯車110と第2歯車210との間で回転駆動力が伝えられることはない。
【0043】
その後、反時計回りの方向に揺動する第1リンクアーム10,11の動作が停止させられ、それに応じて第2リンクアーム20,21の揺動動作が停止すると、移動部材22は、所定の後退停止位置に達する。このときも、第1リンクアーム10,11の揺動動作を急激に停止させるほど、第2リンクアーム20,21および移動部材22に対して大きな慣性力が作用し、移動部材22が所定の後退停止位置よりもさらに後ろ側に移動しようとする。しかしながら、後退時に回転駆動力を伝えない第1歯車110および第2歯車210がこのような状態を阻止する方向に噛み合った状態にあるため、第2リンクアーム21の揺動動作が規制され、これにより、移動部材22は、所定の後退停止位置に正確に止められる。
【0044】
さらに、移動部材22を所定の後退停止位置から前進させようとする前進開始時には、すでに第1歯車110および第2歯車210の歯面がバックラッシュの無いほとんど接触した状態にあるため、第1リンクアーム10,11の揺動開始に応じて直ちに第2リンクアーム21が揺動し始める。これにより、移動部材22は、目標とする所定の前進停止位置および後退停止位置にずれることなく正確に停止させられるとともに、スムーズに前進および後退させられる。
【0045】
したがって、本実施形態の搬送ロボットによれば、前進時および後退時に目標とする所定の停止位置に移動部材22を精度良く停止させることができ、前進時や後退時の停止位置精度を高めることができる。
【0046】
なお、本願発明は、上記実施形態に限定されるものではない。
【0047】
上記実施形態では、第2リンクアーム20,21に対する第2軸体23の取り付け角を調整することにより、一方の歯車対(第1歯車100および第2歯車200)と他方の歯車対(第1歯車200および第2歯車210)とが互いに正反対の歯面を接するように組み付けられているが、たとえば第1リンクアームに対する第1軸体の取り付け角を調整可能なボルトおよび長孔からなる締結手段を設け、このような締結手段を用いて2組の歯車対が互いに正反対の歯面を接するようにしてもよい。
【0048】
また、第1軸体に対する第1歯車の取り付け角、あるいは第2軸体に対する第2歯車の取り付け角を調整することで、2組の歯車対が互いに正反対の歯面を接するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本願発明に係るリンク装置を備えた搬送ロボットの一実施形態を示す全体斜視図である。
【図2】図1に示す搬送ロボットの上面図である。
【図3】図2のIII−III線に沿うリンク装置の要部断面図である。
【図4】図3に対応するリンク装置の要部切り欠き斜視図である。
【図5】リンク装置の一部切り欠き上面図である。
【図6】リンク装置の前進動作を説明するための上面図である。
【図7】リンク装置の後退動作を説明するための上面図である。
【符号の説明】
【0050】
A リンク装置
A1 第1平行リンク機構
A2 第2平行リンク機構
10,11 第1リンクアーム
12 中間部材
13 第1軸体
100,110 第1歯車
f1 第1支軸
20,21 第2リンクアーム
22 移動部材
23 第2軸体
24 ボルト(締結手段)
25 長孔(締結手段)
200,210 第2歯車
f2 第2支軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともいずれか一方が原動節として揺動させられる一対の第1リンクアームと、これら一対の第1リンクアームを平行に連接する中間部材とで構成された第1平行リンク機構を備えるとともに、上記中間部材を固定節として揺動可能な一対の第2リンクアームと、これら一対の第2リンクアームを平行に連接する移動部材とで構成された第2平行リンク機構を備え、上記第1平行リンク機構および第2平行リンク機構を連動させることで上記移動部材が直線的に前進および後退するように構成されているリンク装置であって、
上記第1リンクアームのそれぞれが上記中間部材に対して相対的に回転可能に支持された2つの第1支軸において、上記各第1リンクアームと一体的に回転するように設けられた一対の第1歯車と、
上記第2リンクアームのそれぞれが上記中間部材に対して相対的に回転可能に支持された2つの第2支軸において、上記各第2リンクアームと一体的に回転するように設けられた一対の第2歯車と、
を備えており、かつ、
上記一対の第2歯車のうちの一方は、上記第1リンクアームを所定の方向に揺動させて上記移動部材を前進させる場合にのみ、上記一対の第1歯車のうちの一方と噛み合った状態で回転させられる一方、上記一対の第2歯車のうちの他方は、上記第1リンクアームを上記所定の方向とは逆方向に揺動させて上記移動部材を後退させる場合にのみ、上記一対の第1歯車のうちの他方と噛み合った状態で回転させられるように構成されていることを特徴とする、リンク装置。
【請求項2】
上記第1支軸には、上記第1リンクアームを回転可能に支持する第1軸体が設けられているとともに、上記第2支軸には、上記第2リンクアームを回転可能に支持する第2軸体が設けられており、上記第1歯車および第2歯車は、上記第1軸体および第2軸体のそれぞれに固定されている、請求項1に記載のリンク装置。
【請求項3】
上記第1軸体および第2軸体の少なくともいずれか一方は、位置決めされた状態の上記第1リンクアームあるいは第2リンクアームに対し、上記第1支軸あるいは第2支軸を中心とした取り付け角の調整可能な締結手段を介して取り付けられている、請求項2に記載のリンク装置。
【請求項4】
上記移動部材を前進させる場合にのみ噛み合う上記第1歯車および第2歯車は、上記取り付け角を調整することで互いに所定側の歯面が接するように組み付けられている一方、上記移動部材を後退させる場合にのみ噛み合う上記第1歯車および第2歯車は、上記取り付け角を調整することで互いに上記所定側とは正反対となる側の歯面が接するように組み付けられている、請求項3に記載のリンク装置。
【請求項5】
上記第1リンクアームおよび第2リンクアームは、立体交差状に配置されている、請求項1ないし4のいずれかに記載のリンク装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載のリンク装置を備えたこと特徴とする、搬送ロボット。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2007−15023(P2007−15023A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−195893(P2005−195893)
【出願日】平成17年7月5日(2005.7.5)
【出願人】(000000262)株式会社ダイヘン (990)
【Fターム(参考)】