説明

作業車

【課題】ロータリ耕耘装置を下降位置から上昇させる際に形成される耕耘跡の発生を防止でき、圃場での農作業の作業性を向上させることのできる作業車を実現する。
【解決手段】走行車体1の後部に装備されたロータリ耕耘装置Fを昇降駆動する昇降機構8,9と、操作指示を出す操作指示手段37と、を備え、操作指示手段37からの操作指示に基づいて、ロータリ耕耘装置Fを予め設定された中間位置から上昇位置まで上昇させる速度よりも低速で、ロータリ耕耘装置Fを下降位置から中間位置まで上昇させるように、昇降機構8,9を駆動させる耕耘装置自動上昇手段を備えて、作業車を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行車体の後部に装備されたロータリ耕耘装置を昇降駆動する昇降機構を備えた作業車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の技術としては、例えば特許文献1に開示されているように、回向レバー(特許文献1の図1の63)を右又は左方向に傾動操作することによって、作業機(特許文献1の図2の14)の上昇が自動的に行われる枕地コントローラ(特許文献1の図1の75)を備えた移動農機が知られている。
【0003】
【特許文献1】特許第3632779号(図1、図2、図5、図8及び段落番号「0020」参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の移動農機では、特許文献1の図8に開示されているように、回向レバーを右又は左に傾動操作することにより回向方向指令スイッチ(特許文献1の図1の64)が切り替えられて回向方向指令があると、昇降バルブ(特許文献1の図1の83)を上昇作動させて、昇降バルブに連係された昇降シリンダ(特許文献1の図1の82)を伸縮し、作業機を上昇させるように構成されており、作業機を素早く上昇させて早く旋回させるために、比較的高速な一定速度で作業機が上昇されていたと考えられる。
【0005】
特許文献1の移動農機のように、比較的高速な一定速度で作業機を上昇させると、作業機のロータリ爪(特許文献1の図5の29)が地中に深く入り込んだ状態から勢いよく上昇して、ロータリ爪の回転軌跡に沿った半円柱状の耕耘跡が圃場に形成されていたと考えられる。具体的には、例えば図24(イ)及び(ロ)に示すように、作業機のロータリ(図24(ロ)のF1)が地中に深く入り込んだ状態から勢いよく上昇すると、ロータリの回転軌跡に沿った側面視での形状が半円弧状の耕耘跡が圃場に形成されていたと考えられる。
【0006】
その結果、例えばロータリ爪によって形成された耕耘跡が圃場での作業機の走行や後々の圃場での作業(例えば代掻き作業や苗植付け作業)の妨げになって、圃場での農作業の作業性が悪くなるといった問題があった。
本発明は、ロータリ耕耘装置を下降位置から上昇させる際に形成される耕耘跡の発生を防止でき、圃場での農作業の作業性を向上させることのできる作業車を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[I]
(構成)
本発明の第1特徴は、作業車を次のように構成することにある。
走行車体の後部に装備されたロータリ耕耘装置を昇降駆動する昇降機構と、操作指示を出す操作指示手段と、を備え、
前記操作指示手段からの操作指示に基づいて、前記ロータリ耕耘装置を予め設定された中間位置から上昇位置まで上昇させる速度よりも低速で、前記ロータリ耕耘装置を下降位置から前記中間位置まで上昇させるように、前記昇降機構を駆動させる耕耘装置自動上昇手段を備える。
【0008】
(作用)
本発明の第1特徴によると、走行車体を走行させながら耕耘装置自動上昇手段により昇降機構を駆動してロータリ耕耘装置を下降位置から中間位置に低速で上昇させると、例えば図9(イ)及び(ロ)に示すように、ロータリ耕耘装置(図9の(ロ)のF1)が地中に入り込んだ下降位置から圃場を耕耘し後方に土等を飛ばしながらゆっくりと上昇し、下降位置で形成されたロータリ耕耘装置の耕耘跡の上に、ロータリ耕耘装置を低速で上昇させる際に耕耘された土等が盛られて、下降位置で形成された耕耘跡を小さくすることができる。その結果、ロータリ耕耘装置を下降位置から上昇させる際に形成される耕耘跡の発生を防止できる。
【0009】
本発明の第1特徴によると、中間位置から上方ではロータリ耕耘装置が中間位置まで上昇する速度より高速で上昇するので、下降位置から上昇位置まで低速で上昇させる場合に比べ、中間位置に上昇してからのロータリ耕耘装置を速く上昇位置にまで上昇させることができ、効率よく上昇位置までロータリ耕耘装置を上昇させることができる。その結果、例えば効率良く上昇位置までロータリ耕耘装置を上昇させて作業車を旋回させることができる。
【0010】
(発明の効果)
本発明の第1特徴によると、例えばロータリ耕耘装置を上昇させることによって形成された耕耘跡が作業車を圃場で走行させる際の妨げになり難くなって、作業車を無理なく走行させることができ、圃場での農作業の作業性を向上させることができる。また、例えばロータリ耕耘装置を上昇させることによって形成された耕耘跡が後々の圃場での作業(例えば代掻き作業や苗植付け作業)の妨げになり難くなって、圃場での農作業の作業性を向上させることができる。
【0011】
本発明の第1特徴によると、例えばロータリ耕耘装置が作業車を旋回させる際の妨げになり難くなって、作業車を無理なく旋回させることができ、作業車の旋回作業の作業性を向上させることができる。
【0012】
[II]
(構成)
本発明の第2特徴は、本発明の第1特徴の作業車において、次のように構成することにある。
前記操作指示手段によって走行車体の旋回方向を指示可能に構成するとともに、
前記操作指示手段からの操作指示に基づいて、前記旋回方向に前輪を操向操作し走行車体を自動旋回させる自動旋回制御手段を備える。
【0013】
(作用)
本発明の第2特徴によると、本発明の第1特徴と同様に前項[I]に記載の「作用」を備えており、これに加えて以下のような「作用」を備えている。
本発明の第2特徴によると、操作指示手段によって操作指示を出すことにより、耕耘装置自動上昇手段によって自動的に昇降機構が駆動できると共に、自動旋回制御手段によって自動的に旋回方向に前輪を操向操作し走行車体を自動旋回させることができる。その結果、例えば別個の操作手段により昇降機構の駆動と走行車体の自動旋回とを行う場合に比べ、昇降機構の駆動を行う操作手段と走行車体の自動旋回を行う操作手段とを兼用することができ、一つの操作指示手段によって昇降機構の駆動及び走行車体の自動旋回を簡易迅速に行うことができる。
【0014】
(発明の効果)
本発明の第2特徴によると、本発明の第1特徴と同様に前項[I]に記載の「発明の効果」を備えており、これに加えて以下のような「発明の効果」を備えている。
本発明の第2特徴によると、昇降機構の駆動及び走行車体の自動旋回の作業性を向上させることができ、圃場での農作業(耕耘作業)の作業性を更に向上させることができる。
【0015】
[III]
(構成)
本発明の第3特徴は、本発明の第2特徴の作業車において、次のように構成することにある。
前記ロータリ耕耘装置が前記下降位置から設定高さを超えて上昇してから、走行車体の自動旋回を開始するように、前記自動旋回制御手段を構成する。
【0016】
(作用)
本発明の第3特徴によると、本発明の第2特徴と同様に前項[II]に記載の「作用」を備えており、これに加えて以下のような「作用」を備えている。
本発明の第3特徴によると、ロータリ耕耘装置が地中に入り込んだ下降位置から設定高さに上昇するまで、自動旋回制御手段により前輪の操向操作が規制されて、ロータリ耕耘装置が地中に深く入り込んだ状態で走行車体が旋回することを防止できる。その結果、例えばロータリ耕耘装置を上昇させるのと略同時に前輪の操向操作を開始するように構成した場合のように、地中に入り込んだ状態のロータリ耕耘装置が走行車体の旋回に伴って横移動し、このロータリ耕耘装置の横移動によって圃場に耕耘跡が形成されることを防止できる。また、例えばロータリ耕耘装置を上昇させるのと略同時に前輪の操向操作を開始するように構成した場合のように、ロータリ耕耘装置に無理な力が作用することを防止できる。
【0017】
(発明の効果)
本発明の第3特徴によると、本発明の第2特徴と同様に前項[II]に記載の「発明の効果」を備えており、これに加えて以下のような「発明の効果」を備えている。
本発明の第3特徴によると、ロータリ耕耘装置を旋回させる際に形成される耕耘跡の発生を防止できるとともに、ロータリ耕耘装置の破損を防止できる。
【0018】
[IV]
(構成)
本発明の第4特徴は、本発明の第1〜第3特徴のいずれか一つの作業車において、次のように構成することにある。
前記中間位置に前記ロータリ耕耘装置を低速で上昇させる速度を変更調節可能な上昇速度調節手段を備える。
【0019】
(作用)
本発明の第4特徴によると、本発明の第1〜第3特徴と同様に前項[I]〜[III]のいずれか一つに記載の「作用」を備えており、これに加えて以下のような「作用」を備えている。
本発明の第4特徴によると、上昇速度調節手段を変更調節することで、耕耘装置自動上昇手段によりロータリ耕耘装置を低速で上昇させる速度を手動又は自動で変更することができ、耕耘作業の条件(例えば耕耘する速度、旋回する速度、作業車に装着するロータリ耕耘装置の種類等)や圃場等の条件(例えば圃場の硬さ、圃場を耕す深さ等)に応じてロータリ耕耘装置を低速で上昇させる速度を手動又は自動で変更することができる。その結果、耕耘作業の条件や圃場等の条件に合わせて、ロータリ耕耘装置を下降位置から上昇させる際に形成される耕耘跡の発生を防止できる。
【0020】
具体的には、例えば圃場の土等が比較的固く、ロータリ耕耘装置による耕耘跡が発生し易い場合には、ロータリ耕耘装置による耕耘跡が発生し難い圃場の土等が比較的柔らかい場合に比べ、ロータリ耕耘装置を低速で上昇させる速度を遅く変更して、より長い時間を掛けて耕耘しながらロータリ耕耘装置を低速で上昇させて、下降位置で形成された耕耘跡の上に多くの土等を盛ることができ、耕耘跡を小さくすることができる。
【0021】
(発明の効果)
本発明の第4特徴によると、本発明の第1〜第3特徴と同様に前項[I]〜[III]のいずれか一つに記載の「発明の効果」を備えており、これに加えて以下のような「発明の効果」を備えている。
本発明の第4特徴によると、耕耘作業の条件や圃場等の条件に応じて効率よく圃場を耕耘することができ、耕耘作業の作業性を向上させることができる。
【0022】
[V]
(構成)
本発明の第5特徴は、本発明の第1〜第4特徴のいずれか一つの作業車において、次のように構成することにある。
前記中間位置を変更調節可能な中間位置調節手段を備える。
【0023】
(作用)
本発明の第5特徴によると、本発明の第1〜第4特徴と同様に前項[I]〜[IV]のいずれか一つに記載の「作用」を備えており、これに加えて以下のような「作用」を備えている。
本発明の第5特徴によると、中間位置調節手段によって中間位置を変更調節することで、耕耘装置自動上昇手段により低速でロータリ耕耘装置を上昇させる中間位置を手動又は自動で変更することができ、耕耘作業の条件(例えば耕耘する速度、旋回する速度、作業車に装着するロータリ耕耘装置の種類等)や圃場等の条件(例えば圃場の硬さ、圃場を耕す深さ等)に応じて中間位置を手動又は自動で変更することができる。その結果、耕耘作業の条件や圃場等の条件に合わせて、ロータリ耕耘装置を下降位置から上昇させる際に形成される耕耘跡の発生を防止できる。
【0024】
具体的には、例えば圃場の土等が比較的固く、ロータリ耕耘装置による耕耘跡が発生し易い場合には、ロータリ耕耘装置による耕耘跡が発生し難い圃場の土等が比較的柔らかい場合に比べ、中間位置を高い位置に変更して、より長い距離を掛けて耕耘しながらロータリ耕耘装置を上昇させて、下降位置で形成された耕耘跡の上に多くの土等を盛ることができ、耕耘跡を小さくすることができる。
【0025】
(発明の効果)
本発明の第5特徴によると、本発明の第1〜第4特徴と同様に前項[I]〜[IV]のいずれか一つに記載の「発明の効果」を備えており、これに加えて以下のような「発明の効果」を備えている。
本発明の第5特徴によると、耕耘作業の条件や圃場等の条件に応じて効率よく圃場を耕耘することができ、耕耘作業の作業性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
〔トラクタの全体構成〕
図1に、作業車の一例としてのトラクタの全体左側面図を示す。図1に示すように、走行車体1の前部にエンジン2が配設されており、このエンジン2からの動力によって左右一対の操向自在な前輪3及び左右一対の後輪4を駆動させることで、運転座席5に着座した運転者のステアリングハンドル6の操作に従ってトラクタが走行及び旋回するように構成されている。
【0027】
走行車体1の後部に配設されたミッションケース7の後部に、左右一対のリフトアーム8が連係されており、リフトシリンダ9を操作することによって揺動アーム10を上下に揺動操作して、揺動アーム10の後端部に連結した耕耘装置F(ロータリ耕耘装置に相当)を昇降駆動できるように、昇降機構が構成されている。
【0028】
ミッションケース7の後部にエンジン2からの動力を取り出す後向きのPTО軸11が設けられており、このPTО軸11に耕耘装置Fを連動連結することで、耕耘装置FのロータリF1を回転駆動できるように構成されている。
【0029】
図2に示すように、ステアリング装置12は、パワーシリンダ13と、操作バルブ14と、メインポンプ16と、メータリングポンプ18とを備えて構成されている。なお、ステアリング装置12として異なる構成を採用してもよく、メインポンプ16やパワーシリンダ13等による油圧式のステアリング装置12ではなく、パワーシリンダ13を備えていないステアリング装置12や、パワーシリンダ13以外のアクチュエータを備えたステアリング装置12を採用してもよい。
【0030】
パワーシリンダ13は左右の前輪3のナックルアーム3aに連動連結されており、このパワーシリンダ13の操作バルブ14に、油圧回路15を介して、エンジン2に連動連結されたメインポンプ16が接続されている。操作バルブ14には油圧回路17を介してメータリングポンプ18が接続されており、このメータリングポンプ18の入力軸18aが後述するステアリング差動機構20を介してステアリングハンドル6に連動連結されている。
【0031】
[ステアリング差動機構]
図2に示すように、ステアリング差動機構20は、遊星歯車機構によって構成されており、メータリングポンプ18の入力軸18aに固定された太陽ギアとしての第1ギア21と、ステアリングハンドル6のハンドル操作軸6aに固定された第2ギア22と、ステアリングハンドル6のハンドル操作軸6aに相対回転自在に支持されたキャリア23と、このキャリア23と第1及び第2ギア21,22とに亘って配設された複数の第1及び第2遊星ギア24,25とを備えて構成されている。
【0032】
ステアリング装置12を構成するメータリングポンプ18の入力軸18aとステアリングハンドル6のハンドル操作軸6aは、同心状に配設されており、この入力軸18aとハンドル操作軸6aとの間にステアリング差動機構20が配設されている。
【0033】
キャリア23は、ステアリングハンドル6のハンドル操作軸6aに相対回転自在に支持された第1筒軸26に固定されており、このキャリア23の外周部の複数箇所に配設された支軸23aに相対回転自在に第2筒軸27が支持されている。第2筒軸27には第1遊星ギア24が固定されており、この第1遊星ギア24がメータリングポンプ18の入力軸18aに固定された第1ギア21に咬合されている。
【0034】
第2筒軸27には、第1遊星ギア24より歯数の少ない第2遊星ギア25が固定されており、この第2遊星ギア25が第1ギア21より歯数の多いハンドル操作軸6aに固定された第2ギア22に咬合されている。第1筒軸26には、入力ギア28が固定されており、この入力ギア28が、ステアリングモータ30の駆動軸30aに固定された、入力ギア28より歯数の少ない出力ギア29に咬合されている。
【0035】
以上のように、ステアリング装置12及びステアリング差動機構20を構成することにより、ステアリングモータ30を停止させて駆動軸30aが回転していない状態では、駆動軸30aに連結された出力ギア29、第1筒軸26及びキャリア23が回動しないため、運転者のステアリングハンドル6の操作によりハンドル操作軸6aが回動すると、第2ギア22、第2遊星ギア25、第2筒軸27、第1遊星ギア24及び第1ギア21を介してメータリングポンプ18の入力軸18aがステアリングハンドル6の操作量に対応して回動するように構成されている。
【0036】
なお、第1ギア21、第2ギア22、第1及び第2遊星ギア24,25は異なる歯数に設定されているため、ステアリングハンドル6のハンドル操作軸6aの回転が、増速されてメータリングポンプ18の入力軸18aに伝達されるように構成されている。
【0037】
一方、運転者がステアリングハンドル6を保持しハンドル操作軸6aが略回転していない状態で、ステアリングモータ30を正逆転させると、ステアリングモータ30の駆動軸30aに連結された出力ギア29及び入力ギア28を介して第1筒軸26が回動し、第1筒軸26に固定されたキャリア23がハンドル操作軸6aに対して相対回転して、キャリア23の支軸23aに対して第2筒軸27が相対回転し、この第2筒軸27に固定された第1及び第2遊星ギア24,25が回動する。第2遊星ギア25は回転していない第2ギア22に咬合されているため、第1及び第2遊星ギア24,25が回転すると、第1及び第2ギア21,22、並びに、第1及び第2遊星ギア24,25の伝動比に対応してメータリングポンプ18の入力軸18aが回動する。
【0038】
なお、出力ギア29と入力ギア28は異なる歯数に設定されており、入力ギア28はステアリング差動機構20を介してメータリングポンプ18の入力軸18aに連結されているため、ステアリングモータ30の駆動軸30aの回転が、出力ギア29、入力ギア28及びステアリング差動機構20によって減速されてメータリングポンプ19の入力軸18aに伝達されるように構成されている。
【0039】
ステアリングモータ30の回転数は任意に変更調節可能に構成されており、後述する制御装置31からモータ駆動回路45を介してステアリングモータ30の回転数を変更することにより、ステアリングモータ30の回転数に応じてメータリングポンプ18の入力軸18aの回転数を任意に変更調節できるように構成されている。
【0040】
従って、ステアリングハンドル6を保持しハンドル操作軸6aが回転していない状態でステアリングモータ30を正逆転させることで、メータリングポンプ18の入力軸18aを回転させることができ、左右の前輪3を操向操作することができる。
【0041】
運転者がステアリングハンドル6を回転させた方向と逆方向に第1筒軸26が回転するようにステアリングモータ30を正転させると、ステアリングモータ30の回転数に応じてメータリングポンプ18の入力軸18aの回転が増速されて、ステアリングレシオ(ステアリングハンドル6の操作量に対応するステアリング装置12の入力軸18aの操作量の比)を大きく変更することができる。
【0042】
逆に、運転者がステアリングハンドル6を回転させた方向と同じ方向に第1筒軸26が回転するようにステアリングモータ30を逆転させると、ステアリングモータ30の回転数に応じてメータリングポンプ18の入力軸18aの回転が減速されて、ステアリングレシオ(ステアリングハンドル6の操作量に対応するステアリング装置12の入力軸18aの操作量の比)を小さく変更することができる。
【0043】
ステアリングハンドル6を操作し、又はステアリングモータ30を回転させてメータリングポンプ18の入力軸18aが回転すると、この入力軸18aの操作量に応じて操作バルブ14が操作され、操作バルブ14からパワーシリンダ13に圧油が供給されて、パワーシリンダ13の作動により左右の前輪3をステアリングハンドル6又はステアリングモータ30の回転方向に応じた操向方向に、かつ、メータリングポンプ18の入力軸18aの操作量に応じた切れ角でナックルアーム3aを揺動操作する。そして、走行車体1をステアリングハンドル6又はステアリングモータ30の操作方向に対応する走行方向に、ステアリングハンドル6又はステアリングモータ30の操作量に応じて走行するように操向操作する。
【0044】
〔制御装置のブロック図及び走行伝動系〕
図3及び図4に、トラクタの制御装置31のブロック図及びトラクタの走行伝動系の概略平面図を示す。図3及び図4に示すように、このトラクタには操舵角センサ32、駆動軸回転センサ33、入力軸回転センサ34、レバー位置検出センサ36、旋回方向検出センサ38、方位センサ39、ヨーレートセンサ40、昇降位置検出センサ41、旋回角度調節具42、上昇速度調節具43(上昇速度調節手段に相当)、中間位置調節具44(中間位置調節手段に相当)、前輪切れ角センサ66、車速センサ67等の検出機器類が実装されている。
【0045】
図3に示すように、操舵角センサ32は、ステアリングハンドル6のハンドル操作軸6aに装備されており(図2参照)、基準位置からのハンドル操作軸6aの回転角を測定することにより左右の前輪3の操舵角を算出して、運転者のステアリングハンドル6の操作量(操舵操作量)及びステアリングハンドル6の操作速度(操舵操作速度)を検出できる。
【0046】
駆動軸回転センサ33及び入力軸回転センサ34は、それぞれステアリングモータ30の駆動軸30a及びメータリングポンプ18の入力軸18aに装備されており(図2参照)、ステアリングモータ30の駆動軸30a及びメータリングポンプ18の入力軸18aの回転数を検出できる。
【0047】
前述した操舵角センサ32、駆動軸回転センサ33及び入力軸回転センサ34からの検出結果をフィードバックして、モータ駆動回路45からステアリングモータ30へ出力することで、メータリングポンプ18の入力軸18aを、所定の回転数に精度よく回転させることができる。なお、このトラクタでは、操舵角センサ32、駆動軸回転センサ33及び入力軸回転センサ34の3つのセンサを装備してモータ駆動回路45からステアリングモータ30へ出力するように構成したが、これら3つのセンサのうちのいずれか2つのセンサをトラクタに装備し、この2つのセンサからの検出結果に基づいて制御装置31において演算処理することによりモータ駆動回路45からステアリングモータ30へ出力するように構成してもよい。
【0048】
ステアリングハンドル6の側部に、走行車体1を直進走行させる直進レバー35が揺動操作可能に装備されており、この直進レバー35は、直進レバー35を操作していない状態で中立位置に中立付勢されている。直進レバー35の根元部に、レバー位置検出センサ36が装備されており、直進レバー35の操作位置(手動上昇位置、中立位置、直進位置)を検出できる。なお、直進レバー35の手動上昇位置は、運転者が手動で耕耘装置Fを上昇させたい場合に操作するものであり、例えばステアリングハンドル6を操作して後述する自動直進制御が解除された場合等に人為的に耕耘装置Fを上昇させることができる。
【0049】
旋回レバー37(操作指示手段に相当)は、運転座席5の側部に装備されており、この旋回レバー37によって走行車体1の旋回及び旋回方向を指示することができる。旋回レバー37は、操作されていない状態では中立位置Nに中立付勢されている。旋回レバー37の根元部には、旋回レバー37の操作位置を検出する旋回方向検出センサ38が設けられており、この旋回方向検出センサ38によって、旋回レバー37の操作位置(左方向L、中立位置N及び右方向R)を検出できる。
【0050】
なお、直進レバー35と旋回レバー37の機能を有した4位置切り替え可能な操作レバー(図示せず)を装備する構成を採用してもよい。具体的には、例えばステアリングハンドル6の側部に上下及び前後揺動操作自在で中央部に付勢された操作レバーを装備し、上方又は下方に操作レバーを揺動操作すると手動上昇位置又は直進位置に操作され、前方又は後方に操作レバーを揺動操作すると左方向L又は右方向Rに操作されるように構成してもよい。
【0051】
方位センサ39は、走行車体1の左右中央部に配設されており、走行車体1の走行方向を検出する。ヨーレートセンサ40は、走行車体1の重心位置近傍に配設されており、トラクタに作用するヨーレートを検出する。リフトアーム8の揺動部(図1参照)には、昇降位置検出センサ41が設けられており、リフトシリンダ9によって昇降する耕耘装置Fの対地高さを検出できるように構成されている。
【0052】
前輪切れ角センサ66は、前輪3に連係されたナックルアーム3aの回転部に装着されており(図2参照)、ステアリング装置12により操作された前輪3の切れ角を検出する。車速センサ67は、走行車体1に装備されており、トラクタの車速を検出する。
【0053】
前輪切れ角センサ66の検出結果に基づいて、前輪3の切れ角が制御装置31によって監視されており、例えばパワーシリンダ13の作動油のリーク等により前輪3の切れ角が変化した場合等に、前輪切れ角センサ66の検出結果に基づいて制御装置31で前輪3の切れ角を補正し、正確な前輪3の切れ角が制御装置31で把握され、この補正された前輪3の切れ角で後述する自動直進制御及び自動旋回制御が実施されるように構成されている。
【0054】
運転座席5の側部には、後述する自動旋回制御の旋回角度の設定を行う旋回角度調節具42、自動旋回制御の上昇速度の設定を行う上昇速度調節具43、及び自動旋回制御の中間位置の設定を行う中間位置調節具44が装備されており、旋回角度調節具42、上昇速度調節具43又は中間位置調節具44をダイアル操作することにより、後述する自動旋回制御における旋回角度、上昇速度又は中間位置を運転者が希望する値に手動で変更調節することができる。
【0055】
制御装置31には、モータ駆動回路45、電磁弁46、電子ガバナコントローラ48、変速アクチュエータ51、前輪変速アクチュエータ52、操作バルブ54、PTOアクチュエータ55、デフロックアクチュエータ56、表示装置57等が接続されている。
【0056】
モータ駆動回路45は、ステアリングモータ30に接続されており、制御装置31からモータ駆動回路45に出力することで、制御装置31からの出力に基づいてステアリングモータ30の駆動及び停止、並びに、回転方向及び回転数の変更ができる。
【0057】
電磁弁46は、リフトシリンダ9に連係されており、電磁弁46に制御装置31から出力を行うことにより、リフトシリンダ9による耕耘装置Fの昇降操作を行うことができる。
【0058】
車両のエンジン2には、エンジン2の回転数を変更させるアクチュエータ(図示せず)を備えた電子ガバナ47が実装されており、アクセルペダル(図示せず)の操作量を検出するアクセルセンサ49、及びエンジン2の回転数を検出する回転センサ50からの検出結果に基づいて、制御装置31から電子ガバナ47に接続された電子ガバナコントローラ48に出力を行うことで、エンジン2の回転数を電気的に制御できるように構成されている。なお、エンジン2の回転数を電気的に制御できるのであれば、電子ガバナ47及び電子ガバナコントローラ48に限らず、他の構成(図示せず)を採用してもよい。
【0059】
トラクタの走行変速装置(図示せず)には、変速アクチュエータ51が装備されており、この変速アクチュエータ51に制御装置31から出力することにより、走行変速装置のシフト部材(図示せず)を操作して、走行変速装置の変速段数を電気的に変速操作できるように構成されている。
【0060】
図3及び図4に示すように、トラクタの前輪3への動力伝動系には前輪変速装置60が装備されており、前輪3を後輪4の周速度と等しい周速度で回転させる四輪駆動位置と、前輪3を後輪4の周速度より高速で回転させる増速位置とに切り替え可能に構成されている。前輪変速装置60には、前輪変速アクチュエータ52が連係されており、この前輪変速アクチュエータ52に制御装置31から出力することにより、前輪変速装置60のシフト部材61を操作して、前輪変速装置60を四輪駆動位置又は増速位置に切り替えて、前輪3の回転速度を変速操作できるように構成されている。
【0061】
後輪4,4には右及び左のサイドブレーキ62,62が装備されており、この右及び左のサイドブレーキ62,62に右及び左のサイドブレーキペダル62a,62aがそれぞれ連係されている。右及び左のサイドブレーキペダル62a,62aには、ブレーキシリンダ53,53が連係されており、このブレーキシリンダ53,53に接続された操作バルブ54,54に制御装置31から出力することにより、右又は左のサイドブレーキ62,62を電気的に制動側に操作できるように構成されている。
【0062】
図3に示すように、PTОアクチュエータ55は、ミッションケース7の後部に設けられたPTО軸11に連係されており、このPTОアクチュエータ55に制御装置31から出力することにより、PTО軸11に連動連結された耕耘装置FのロータリF1を駆動及び停止することができる。なお、このトラクタでは、昇降位置検出センサ41の検出結果に基づいて制御装置31からPTОアクチュエータ55に出力されて、耕耘装置Fが上昇位置に上昇したと判断される場合には、ロータリF1が自動的に停止し、耕耘装置Fが上昇位置から下降した場合には、ロータリF1が自動的に駆動されるように構成されている。
【0063】
デフロックアクチュエータ56は、トラクタの後輪デフ63のデフロック装置64に連係されており、このデフロックアクチュエータ56に制御装置31から出力することによりデフロック装置64を操作して後輪デフ63をロックし、左右の後輪4,4を略回転数差のない状態で回動させることができる。
【0064】
運転座席5の前部には、表示装置57(ブザー及びランプ)が装備されており、制御装置31から表示装置57に出力することにより、ブザーを鳴らし又はランプを点灯させることにより、運転者に視覚的又は聴覚的な情報を提供できる。
【0065】
上述した検出機器類及び出力機器類は制御装置31に接続されており、検出機器類からの検出結果に基づいて制御装置31からモータ駆動回路45、電磁弁46、電子ガバナコントローラ48等の出力機器類に出力を行うことで、後述する自動直進制御及び自動旋回制御を実現できる。
【0066】
〔自動直進制御及び自動旋回制御〕
図5〜図8に基づいて、このトラクタで実施されている自動直進制御及び自動旋回制御(自動旋回制御手段に相当)について説明する。図5は、この制御装置31のメインルーチンを示し、図6は、自動直進制御を実施した場合のサブルーチンをそれぞれ示す。図7及び図8は、自動旋回制御を実施した場合のサブルーチンを示す。
【0067】
図5に示すように、図3に示した検出機器類によって検出されて制御装置31に入力されたデータが監視されている(ステップ#11)。レバー位置検出センサ36の検出結果に基づいて、直進レバー35が直進位置に操作されたと判断される場合には(ステップ#12・YES)、後述する自動直進制御が実施される(ステップ#13)。
【0068】
一方、旋回方向検出センサ38の検出結果に基づいて、旋回レバー37が左方向L又は右方向Rに操作されたと判断される場合には(ステップ#14・YES)、後述する自動旋回制御が実施される(ステップ#15)。なお、直進レバー35が直進位置に操作された後、旋回レバー37が左方向L又は右方向Rに操作されると、後述する自動直進制御と自動旋回制御とが一時的に重複して実施される。
【0069】
図6に示すように、直進レバー35が直進位置に操作されて自動直進制御が実施されると、制御装置31から電磁弁46に出力されて耕耘装置Fが下降位置に下降するようにリフトシリンダ9が短縮されるとともに(ステップ#21)、制御装置31からデフロックアクチュエータ56に出力されて後輪デフ63がロックされて、左右の後輪4,4を略回転数差のない状態で回動させてトラクタの直進性を向上させる(ステップ#22)。なお、図示しないが、耕耘装置Fが上昇位置から下降すると、制御装置31からPTOアクチュエータ55に出力されて、自動的に耕耘装置FのロータリF1が回転駆動する。
【0070】
次に、車速センサ67により検出した車速をフィードバックしながら、制御装置31から電子ガバナコントローラ48及び変速アクチュエータ51に出力を行って、予め設定された直進時の車速になるようにエンジン2の回転数が電気的に制御されるとともに、予め設定された直進時の変速段数に走行変速装置が電気的に変速操作されて、直進時の車速に自動変速される(ステップ#23)。このように、自動的に直進時の車速を変更することにより、運転者がアクセルペダル(図示せず)の踏み操作を行わなくてもよくなって、直進作業の作業性を向上できるとともに、精度よくトラクタを直進走行させることができる。
【0071】
直進時のエンジン2の回転数及び走行変速装置の変速段数は、運転座席5付近に装備した直進回転数調節具(図示せず)及び直進変速段数調節具(図示せず)によって変更調節可能に構成されており、この直進回転数調節具又は直進変速段数調節具を運転者が操作することにより、圃場等の条件に応じて直進時の回転数又は変速段数(車速)を変更調節できる。なお、直進回転数調節具及び直進変速段数調節具に代えて、運転座席5付近に装備した直進車速調節具(図示せず)により直進時の車速を変更調節可能に構成してもよい。
【0072】
次に、操舵角センサ32の検出結果に基づいて、運転者がステアリングハンドル6を操作しているか否か判断され(ステップ#24)、運転者のステアリングハンドル6の操舵操作量が予め設定された設定操作量より少なく、運転者がステアリングハンドル6を保持し右及び左のいずれの方向にも操向操作していないと判断される場合(運転者がトラクタを直進させようとしている場合)には(ステップ#24・NO)、方位センサ39及びヨーレートセンサ40の検出結果に基づいて、走行車体1の走行方向が設定方向から外れたか否か判断される(ステップ#25)。なお、例えば図11のA0地点にトラクタを移動させて、直進レバー35が直進位置に操作されると、方位センサ39によって検出した検出結果に基づいて、トラクタが直進する図11のA0とB1を結ぶ直線の方向が設定方向として設定される。
【0073】
方位センサ39からの検出結果に基づいて設定した設定方向に対して、ヨーレートセンサ40によって検出したヨーレートが変化し走行車体1の走行方向が設定方向から外れたと判断される場合には(ステップ#25・YES)、設定方向からヨーレートが変化した方向とは逆方向に、前輪3が操向操作されるように、制御装置31からモータ駆動回路45に出力を行って、ステアリングモータ30を駆動させて、トラクタが予め設定された設定方向へ沿って移動するように自動操向する(ステップ#26)。
【0074】
図示しないが、駆動軸回転センサ33によって検出した駆動軸30aの回転数をフィードバックして、ステアリングモータ30が予め設定された所定の回転数で回転するように、モータ駆動回路45からステアリングモータ30に出力されるように構成されている。なお、ヨーレートセンサ40によって検出したヨーレートの変化量に比例した回転数でステアリングモータ30を回転させるように構成してもよく、ヨーレートセンサ40によって検出したヨーレートの変化量の増加とともに、徐々にステアリングモータ30の回転数を増加させるように構成してもよい。
【0075】
ヨーレートセンサ40の検出結果に基づいて、予め設定された設定方向に走行車体1の走行向きが修正されたと判断される場合には(ステップ#27・YES)、制御装置31からのモータ駆動回路45への出力を断って、ステアリングモータ30を停止させる(ステップ#28)。
【0076】
運転者がステアリングハンドル6を保持し右及び左方向のいずれの方向にもステアリングハンドル6を操向操作していないと判断される状態が継続されると、上述したステアリングモータ30の正逆転及び停止(ステップ#24〜#28)を繰り返しながら(#29・NO)、トラクタの走行向きを修正して、トラクタを予め設定された設定方向に沿って走行させる。
【0077】
なお、運転者がステアリングハンドル6を右又は左方向に操向操作していると判断される場合には(ステップ#24・YES)、運転者のステアリングハンドル6の操作意思が優先され、ステアリングモータ30は正逆転されずに自動直進制御が終了して、運転者のステアリングハンドル6の操作に従って前輪3が操向操作される。
【0078】
以上のように、ステアリング差動機構20を構成するステアリングモータ30を正逆転させることにより、ステアリング装置12を自動的に操作して、走行車体1を予め設定された設定方向に沿って自動操向するように構成されている。
【0079】
なお、自動直進制御が実施されている間に、後述する自動旋回制御によって自動直進制御が解除されると、自動直進制御が自動的に終了するように構成されている(ステップ#29・YES)。
【0080】
図7及び図8に示すように、旋回レバー37が左方向L又は右方向Rに操作されて自動旋回制御が実施されると、制御装置31から電磁弁46に出力されて耕耘装置Fが中間位置に低速で上昇するようにリフトシリンダ9が伸長される(ステップ#31)。この耕耘装置Fが上昇する速度は、上昇速度調節具43をダイアル操作することによって予め運転者により設定された第1上昇速度V1に設定されており、後述する中間位置から上昇位置に耕耘装置Fを上昇させる第2上昇速度V2より遅い速度に設定され、耕耘装置Fが圃場からゆっくりと上昇するように構成されている(図9(ロ)参照)。
【0081】
このように、旋回レバー37からの操作指示に基づいて、耕耘装置Fを予め設定された中間位置から上昇位置まで上昇させる速度よりも低速で、耕耘装置Fを下降位置から中間位置まで低速で上昇させるように、耕耘装置自動上昇手段が構成されている。
【0082】
耕耘装置Fを圃場からゆっくりと上昇させることにより、下降位置で形成された耕耘装置Fの耕耘跡の上に、耕耘装置Fを低速で上昇させる際に耕耘された土等が盛られて、下降位置で形成された耕耘跡を小さくすることができる。また、上昇速度調節具43によって第1上昇速度V1を変更調節可能に構成することにより、例えば圃場の硬さ、圃場を耕す深さ、トラクタに装着する耕耘装置Fの種類等に応じて、第1上昇速度V1を変更調節することができ、好適な耕耘装置Fの上昇速度で耕耘作業等を行うことができる。
【0083】
なお、上昇位置は、耕耘装置Fが最も上昇した位置に設定され、下降位置は、運転座席5に設けた耕深さ調節具(図示せず)によって予め運転者により設定された耕耘装置Fが地面に入り込んだ位置(圃場を耕す深さ)に設定されている。また、中間位置は、中間位置調節具44をダイアル操作することによって予め運転者により設定された高さ(例えばこの実施例では耕耘装置FのロータリF1の下端が圃場面と略同一になるような高さ)に設定されている(図9(ロ)参照)。
【0084】
次に、昇降位置検出センサ41の検出結果に基づいて、耕耘装置Fが中間位置に上昇したか判断され(ステップ#32)、耕耘装置Fが中間位置に上昇したと判断される場合には(ステップ#32・YES)、上述した自動直進制御が解除される(ステップ#33,ステップ#29・YES)。このように、旋回レバー37が操作されても、耕耘装置Fが中間位置に上昇するまで、自動直進制御を継続させることで、耕耘装置FのロータリF1が圃場に入り込んだ状態でトラクタが旋回することを防止でき、耕耘装置FのロータリF1が圃場を荒らすことを防止できる。
【0085】
耕耘装置Fが中間位置に上昇したと判断されると、制御装置31から電磁弁46に出力されて耕耘装置Fが上昇位置に高速で上昇するようにリフトシリンダ9が伸長される(ステップ#34)。中間位置から上昇位置に耕耘装置Fを上昇させる第2上昇速度V2は、上述した第1上昇速度V1より速い速度に設定され、圃場から上昇した耕耘装置Fをより速く上昇位置に上昇させることができ、トラクタの旋回作業の作業性を向上できるように構成されている。なお、図示しないが、耕耘装置Fが上昇位置に上昇すると、制御装置31からPTOアクチュエータ55への出力が遮断されて、自動的に耕耘装置FのロータリF1が停止する。
【0086】
次に、車速センサ67により検出した車速をフィードバックしながら、制御装置31から電子ガバナコントローラ48及び変速アクチュエータ51に出力を行って、予め設定された旋回時の車速になるようにエンジン2の回転数が電気的に制御され、予め設定された旋回時の変速段数に走行変速装置が電気的に変速操作されて、旋回時の車速に自動変速される(ステップ#35)。
【0087】
具体的には、例えば旋回時より高速で直進走行するように直進回転数調節具及び直進変速段数調節具(又は直進車速調節具)を設定した場合には、エンジン2の回転数が低回転に制御され、走行変速装置の変速段数が低い変速段数に変速操作される。また、例えば旋回時より低速で直進走行するように直進回転数調節具及び直進変速段数調節具(又は直進車速調節具)を設定した場合には、エンジン2の回転数が高回転に制御され、走行変速装置の変速段数が高い変速段数に変速操作される。このように、自動的に旋回時の車速を変更することにより、運転者がアクセルペダル(図示せず)の踏み操作を行わなくてもよくなって、旋回作業の作業性を向上できるとともに、精度よくトラクタを旋回させることができる。
【0088】
旋回時のエンジン2の回転数及び走行変速装置の変速段数は、運転座席5付近に装備した旋回回転数調節具(図示せず)又は旋回変速段数調節具(図示せず)によって変更調節可能に構成されており、この旋回回転数調節具又は旋回変速段数調節具を運転者が操作することにより、圃場等の条件に応じて旋回時の回転数又は変速段数(車速)を変更調節できる。なお、旋回回転数調節具及び旋回変速段数調節具に代えて、運転座席5付近に装備した旋回車速調節具(図示せず)により旋回時の車速を変更調節可能に構成してもよい。
【0089】
次に、制御装置31からデフロックアクチュエータ56へ出力されて、自動直進制御で作動させた後輪デフ63のロックが解除される(ステップ#36)。
【0090】
次に、運転者が旋回レバー37を左方向L又は右方向Rに操作した方向にトラクタが左又は右旋回するように、制御装置31からモータ駆動回路45に出力されて、ステアリング差動機構20のステアリングモータ30が旋回駆動される(ステップ#37)。
【0091】
次に、制御装置31から前輪変速アクチュエータ52に出力して、前輪変速装置60を増速位置に切り替えて(ステップ#38)、前輪3の回転速度を高速側に変速操作して増速し(ステップ#39)、制御装置31から操作バルブ54に出力しブレーキシリンダ53を操作して、旋回中心側のサイドブレーキ62を制動側に操作しトラクタを小回りで旋回させる。具体的には、例えば運転者が旋回レバー37を左方向に操作した場合には、トラクタが左旋回する左側のサイドブレーキ62に連係されたブレーキシリンダ53を操作して、左側の後輪4に制動力を付与する。
【0092】
耕耘装置Fが中間位置に上昇したと判断されてからのステップ#33〜#39の一連の制御は、略同時に実行されるように制御装置31が構成されており、トラクタを迅速に旋回状態に変更できるように構成されている。
【0093】
次に、前輪切れ角センサ66の検出結果に基づいて、前輪3が予め設定された前輪操向角度に操作されたか判断され(ステップ#40)、ステアリングモータ30を駆動させることによって、トラクタを旋回させる予め設定された旋回半径に対応する前輪操向角度に前輪3が操作された場合には(ステップ#40・YES)、制御装置31からのモータ駆動回路45への出力を遮断して、ステアリングモータ30の旋回駆動を停止して前輪3が所定の前輪操向角度に操作された状態を保持する(ステップ#41)。
【0094】
次に、方位センサ39及びヨーレートセンサ40の検出結果に基づいて、ステアリングハンドル6が所定の前輪操向角度に操作された状態でトラクタを旋回させ、トラクタが旋回角度より少し手前の予め設定された中間角度まで旋回したか判断される(ステップ#42)。トラクタが中間角度に旋回したと判断されると(ステップ#42・YES)、制御装置31からモータ駆動回路45に出力して、前輪3が直進方向(図10の白抜き矢印の方向)に向くように、ステアリングモータ30を直進駆動させる(ステップ#43)。
【0095】
このように、トラクタが中間角度に旋回すると、前輪3が直進方向に向くように構成することにより、例えば旋回角度にまでトラクタを旋回させてから前輪3を直進方向に向くように構成する場合に比べ、無理なく前輪3を直進方向に操作することができる。中間角度は、旋回角度調節具42により旋回角度を変更すると、旋回角度の変更に伴って変更されるように構成されている。なお、中間角度を変更可能な中間角度調節具(図示せず)を運転座席5付近に設けて、旋回角度に対する中間角度を大きく又は小さく変更できるように構成してもよい。
【0096】
次に、方位センサ39及びヨーレートセンサ40の検出結果に基づいて、旋回角度調節具42によって予め設定された旋回角度までトラクタが旋回したか判断されるとともに(ステップ#44)、前輪切れ角センサ66の検出結果に基づいて、前輪3が直進方向に向くように操作されたか判断される(ステップ#45)。トラクタが旋回角度まで旋回し前輪3が直進方向に向いたと判断された場合には(ステップ#44・YES,ステップ#45・YES)、制御装置31からのモータ駆動回路45への出力を遮断して、ステアリングモータ30を停止させてステリングモータ30の直進駆動を解除する(ステップ#46)。
【0097】
トラクタの旋回が終了すると、制御装置31から表示装置57に出力することにより、ブザーを鳴らし又はランプを点灯させて、運転者にトラクタの旋回が完了したことを視覚的又は聴覚的に知らせるとともに(ステップ#47)、エンジン2の回転数及び走行変速装置の変速段数の自動変速を解除し、運転者のアクセルペダル及び変速操作具(図示せず)の操作に従ってエンジン2の回転数及び走行変速装置の変速段数が変更される作業時の車速に自動変速して(ステップ#48)、自動旋回制御を終了する。
【0098】
自動旋回制御が終了すると、運転者が隣接する隣接耕に隣接耕合せをし、再び直進レバー35を直進位置に操作することで、自動直進制御が実施される。以降は、自動直進制御、自動旋回制御及び運転者による隣接耕合せを繰り返し実施することで、圃場を連続的に耕耘することができる。
【0099】
〔トラクタの旋回状況〕
図9、図10、図24及び図25に基づいて、上述した自動直進制御及び自動旋回制御を実施した場合のトラクタの旋回状況について説明する。図9は、運転者が旋回レバー37を操作してからの耕耘装置Fが上昇する状況をするための概略図を示し、図9(イ)及び(ロ)は、概略平面図及び概略側面図をそれぞれ示す。図10は、トラクタが旋回する状況を説明するための概略図を示し、旋回角度調節具42を200度(図10(イ))又は180度(図10(ロ))に設定した場合の概略平面図をそれぞれ示す。
【0100】
図24及び図25は、従来のトラクタの旋回状況を説明するための概略図を示し、それぞれ図9及び図10に対応するものである。なお、図25(イ)は、従来のトラクタで200度旋回させた場合を想定した概略図であり、従来のトラクタで旋回角度の調節が可能であったことを示すものではない。
【0101】
図9(イ)及び(ロ)に示すように、運転者が旋回レバー37を操作してから耕耘装置Fが中間位置に第1上昇速度V1で上昇し圃場面からロータリF1が完全に抜け出すまでの間(図9中のL1の間)は、自動直進制御が継続されてトラクタが旋回しない。その結果、図24(イ)及び(ロ)に示す従来のトラクタのように、運転者が旋回レバー37を操作するのと略同時に耕耘装置Fを上昇させ、耕耘装置FのロータリF1が圃場から抜け出していない状態で、トラクタが旋回するようなことがなくなって、トラクタの耕耘装置Fを上昇させることによって圃場を荒らすことが少なくなるとともに、耕耘装置Fに無理な力が作用し難くなって、耕耘装置Fの破損を防止できる。
【0102】
具体的には、図9(イ)及び図24(イ)に示すように、耕耘装置FのロータリF1が圃場から抜け出していない状態でトラクタを旋回させることによって、地中に入り込んだ状態の耕耘装置Fがトラクタの旋回に伴って横移動し、この耕耘装置Fの横移動によって圃場に耕耘跡が形成されることを防止できる。また、耕耘装置FのロータリF1が圃場から抜け出していない状態でトラクタが旋回して、耕耘装置Fに横方向の無理な力が作用することが少なくなって、耕耘装置Fの破損を防止できる。
【0103】
また、図9(ロ)及び図24(ロ)に示すように、耕耘装置FをロータリF1が圃場から抜け出すまでの間、第1上昇速度V1でゆっくりと低速で上昇させることにより、下降位置で形成された耕耘装置Fの耕耘跡の上に、耕耘装置Fを低速で上昇させる際に耕耘された土等が盛られて、下降位置で形成された耕耘跡を小さくすることができ、従来のトラクタのように高速で上昇させることによって、側面視で圃場に左右に長い半円柱状の下方に凹入したロータリF1の耕耘跡が形成されることを防止できる。なお、耕耘装置Fが第1上昇速度V1で中間位置まで上昇すると、中間位置から上昇位置までの間(図9中のL2の間)、耕耘装置Fが第2上昇速度V2で高速で上昇する。
【0104】
図10(イ)及び(ロ)に示すように、運転者が右方に旋回するように旋回レバー37を操作したA1地点から距離L1の間、自動直進制御が継続されてB1地点まで走行すると、自動旋回制御によってトラクタが自動旋回する。トラクタが所定の旋回半径(前輪3の前輪操向角度)で旋回し、旋回角度調節具42により設定した旋回角度(200度又は180度)の少し手前の中間角度にまで旋回すると、左右の前輪3,3がトラクタの旋回している方向とは逆方向に操向操作されながら、旋回角度にまで旋回すると左右の前輪3,3が自走車体1の直進方向(図10中の白抜き矢印の方向)と同じ方向に向いた状態に自動的に操作されて自動旋回制御が終了する。
【0105】
その結果、図25(イ)及び(ロ)に示す従来のトラクタのように、左右の前輪3,3がトラクタの旋回している方向と同じ方向に操向操作されたままの状態で、自動旋回制御が終了して、ステアリングハンドル6を自動旋回制御が終了してからトラクタの旋回した方向と逆方向に操作する必要がなくなり、旋回後の隣接耕合せ作業等の作業性を向上させることができる。
【0106】
また、図10(イ)及び(ロ)に示すように、耕耘装置Fの幅が異なる場合において、旋回角度調節具42により旋回角度を変更調節することで、例えば図10(イ)に示すように耕耘装置Fの幅が比較的狭く隣接耕が比較的近い場合には、旋回角度を大きく設定して(図10(イ)の例では200度)トラクタを多く旋回させ、例えば図10(ロ)に示すように耕耘装置Fの幅が比較的広く隣接耕が比較的遠い場合には、旋回角度を小さく設定し(図10(ロ)の例では180度)トラクタを少なく旋回させて、トラクタを隣接耕の近くに位置させることができ、旋回作業の作業性を向上できる。
【0107】
〔トラクタの耕耘作業の状況〕
図11に基づいて、上述した自動直進制御及び自動旋回制御を実施した場合のトラクタの耕耘作業の状況について説明する。図11は、トラクタが直進及び旋回する状況を説明するための概略平面図を示す。図11に示すように、トラクタをA0地点に移動させて直進レバー35を直進位置に操作すると、自動直進制御によって運転者がステアリング6を保持し続けるだけで自動的に前輪3が自動操向されて、A1地点までトラクタを自動的に直進走行させることができる。
【0108】
A1地点で旋回レバー37を操作すると、耕耘装置Fが上昇を開始し、A1地点から距離L1の間、自動直進制御が継続されてB1地点まで走行する。そして、自動旋回制御によって運転者がステアリング6を保持し続けるだけで自動的に前輪3が自動操向されて、C1地点までトラクタを自動的に旋回させることができる。
【0109】
トラクタがC1地点まで移動し旋回を終了すると、前輪3が自走車体1の直進方向と同じ方向に向いた状態で自動旋回制御が終了し、エンジン2の回転数及び走行変速装置の変速段数が変更されて運転者によるアクセルペダル及び変速操作具の操作が可能になる。
【0110】
C1地点から運転者がトラクタを操作して隣接する隣接耕に隣接耕合せを行い、トラクタをD1地点に移動させて再び直進レバー35を直進位置に操作すると、再び自動直進制御が実施されて、運転者が隣接耕合せを行った方向にトラクタを直進走行させることができる。以降は自動直進、自動旋回及び隣接耕合せを繰り返すことで、圃場を連続的に耕耘することができる。
【0111】
以上のように、自動直進及び自動旋回を行うようにトラクタを構成することにより、運転者が運転座席5に着座して、直進レバー35を操作してステアリングハンドル6を保持するだけで、走行車体1を自動直進させながら耕耘作業することができ、旋回レバー37を操作してステアリングハンドル6を保持するだけで、走行車体1を自動旋回させることができる。その結果、走行車体1を直進させるステアリングハンドル6の操作及び走行車体1を旋回させるステアリングハンドル6の操作が必要なくなって、走行車体1を直進及び旋回させるためのステアリングハンドル6の操作に注意を払わなくてもよくなり、容易に走行車体1を直進及び旋回させることができ、運転座席5に着座して圃場の状況を十分に確認しながら、効率よく耕耘作業を行うことができる。
【0112】
[発明の実施の第1別形態]
前述の[発明を実施するための最良の形態]においては、旋回レバー37の操作によってトラクタを自動旋回するように構成した例を示したが、GPS受信機70を用いて全自動で自動直進及び自動旋回させるようにトラクタを構成してもよい。なお、後述する以外の他の構成は、前述の[発明を実施するための最良の形態]と同様である。
【0113】
〔制御装置のブロック図〕
図13に示すように、制御装置31にはGPS受信機70、ナビゲーションシステム71、モニター72、操作位置検出センサ74が接続されており、トラクタに直進レバー35及び旋回レバー37は装備されておらず、直進レバー35及び旋回レバー37に代えて、モニター72を操作することにより、全自動運転で耕耘作業を行うことができる。
【0114】
GPS受信機70は、SBAS(静止衛星型衛星航法補強システム)に対応するSBAS受信機として構成されており、GPS衛星(図示せず)からの位置情報に加え、基準局(図示せず)からの航空用の補正情報を受信できるように構成されている。
【0115】
GPS受信機70には、ステアリングハンドル6の前部に装備されたGPSアンテナ19が接続されており(図12参照)、GPS受信機70によって受信したGPS衛星からの位置情報、及GPS受信機70によって受信した基準局からの補正情報が制御装置31に入力され、トラクタの現在位置を、例えば数センチ程度の誤差で検出する。
【0116】
ナビゲーションシステム71は、地図情報を提供するものであり、後述するメニュー表示画面M等が、ナビゲーションシステム71の地図情報とともに、ステアリングハンドル6の側部に装備されたモニター72に表示されるように構成されている。
【0117】
モニター72は、タッチパネル式に構成されており、後述するメニュー表示画面Mから、機体条件設定画面M1、旋回条件設定画面M2、圃場領域設定画面M3、耕耘領域設定画面M4及び全自動運転画面M5を選択して表示できるように構成されている。なお、モニター72の側部に操作ボタン(図示せず)を設け、後述するモニター72に表示された表示画面や設定ボタン等を、この操作ボタンにより選択できるように構成してもよい。
【0118】
前後進切替レバー73は、運転座席5の側部に装備されており、走行車体1の前進及び後進の切り替えを行うことができ、この前後進切替レバー73の操作位置(前進位置,中立位置及び後進位置)が、操作位置検出センサ74によって検出できる。
【0119】
〔モニターの操作方法〕
図14〜図18に基づいて、モニター72の操作方法について説明する。図14に示すように、制御装置31の起動時には、モニター72にメニュー表示画面Mが表示されている。メニュー表示画面Mには、機体条件設定M1、旋回条件設定M2、圃場領域設定M3、耕耘領域設定M4及び全自動運転M5のアイコンが表示されており、このアイコン画面を指で触れると、それぞれの画面が選択されてモニター72に表示されるように構成されている。
【0120】
図15(イ)に示すように、モニター72のメニュー表示画面Mから機体条件設定画面M1を選択すると、機体長さ、機体幅及び耕耘装置Fの種類の設定画面が表示され、機体長さ及び機体幅の調節ボタンR1を指で触れることにより、それぞれの値が変更されて機体長さ及び機体幅を変更でき、耕耘装置Fの型式ボタンR2(F−A〜F−D)を選択すると、耕耘装置Fの型式に応じて予め記憶された機体長さ及び機体幅が自動的に機体条件設定画面M1に表示され、耕耘装置Fの型式に応じて自動的に機体条件を設定することができる。
【0121】
機体条件の設定が完了して設定終了ボタンR3を押すと、機体条件が変更されて、再びメニュー表示画面Mが表示されるように構成されている。なお、機体条件設定画面M1には、クリアボタンR4とリセットボタンR5が備えられており、クリアボタンR4を押すことにより、直前の機体条件が表示され、リセットボタンR5を押すことにより初期設定された機体条件が表示される。
【0122】
図15(ロ)に示すように、モニター72のメニュー表示画面Mから旋回条件設定画面M2を選択すると、上昇速度及び中間位置の設定画面が表示され、それぞれの調節ボタンS1を指で触れることにより、それぞれの値が変更されて、上昇速度又は中間位置を変更できる。このように、モニター72を指で触れることにより、上昇速度又は中間位置を変更できるように、上昇速度調節手段及び中間位置調節手段が構成されている。
【0123】
旋回条件の設定が完了して設定終了ボタンS2を押すと、旋回条件が変更されて、再びメニュー表示画面M1が表示されるように構成されている。なお、旋回条件設定画面M2には、クリアボタンS3とリセットボタンS4が備えられており、クリアボタンS3を押すことにより、直前の旋回条件が表示され、リセットボタンS4を押すことにより初期設定された旋回条件が表示される。
【0124】
図16に示すように、モニター72のメニュー表示画面Mから圃場領域設定画面M3を選択すると、ナビゲーションシステム71の地図情報とともに各種ボタンが表示され、圃場領域設定開始ボタンT1を押すことにより、圃場領域の設定又は変更を開始することができる。
【0125】
GPS受信機70によってGPSアンテナ19の平面視での位置(トラクタのステアリングハンドル6の前部中央部の位置)が現在位置として制御装置31に入力されており、圃場領域設定画面M3を選択すると、このGPS受信機40によって受信した現在位置、及び予め制御装置31に入力された車体条件(作業装置の幅や走行車体1の全長等)に基づいて、トラクタの後部に装備した耕耘装置Fの右後端部の位置が制御装置31で演算処理されるように構成されている。
【0126】
圃場領域設定開始ボタンT1を押して、設定又は変更する圃場領域の四隅(P1〜P4)にトラクタを移動させて(耕耘装置Fの右後端部を四隅に位置決めして)、それぞれの位置で領域設定ボタンT2を押すことにより、ナビゲーションシステム71によって提供された地図情報上に、自動的にトラクタによる圃場領域(P1〜P4で囲まれた領域)が設定されて、この圃場領域がモニター72の圃場領域設定画面M3上にナビゲーションシステム71の地図情報とともに表示されるように構成されている。なお、圃場領域のP1〜P4の位置情報を制御装置31に入力することにより、圃場領域を設定するように構成してもよい。
【0127】
圃場領域の設定作業は、初めて耕耘作業等を行う圃場において、初回に一度設定することにより制御装置31に記憶され、2回目以降の耕耘作業等においては、トラクタを圃場領域の近くに移動させて、モニター72に圃場領域設定画面M3、耕耘領域設定画面M4又は全自動運転画面M5を表示させることにより、自動的に圃場領域がそれぞれの画面に表示される。圃場領域を変更する場合には、上述した手順に従って再設定することにより、圃場領域を変更できる。
【0128】
圃場領域の設定又は変更が完了して圃場領域設定終了ボタンT4を押すと、圃場領域が設定又は変更されて、再びメニュー表示画面M1が表示されるように構成されている。なお、圃場領域設定画面M1には、クリアボタンT3が備えられており、クリアボタンT3を押すことにより、直前の圃場領域が表示される。
【0129】
図17に示すように、モニター72のメニュー表示画面Mから耕耘領域設定画面M4を選択すると、ナビゲーションシステム71の地図情報及び圃場領域とともに各種ボタンが表示され、耕耘領域設定開始ボタンU1を押すことにより、耕耘領域の設定又は変更を開始することができる。
【0130】
GPS受信機70によってGPSアンテナ19の平面視での位置(トラクタのステアリングハンドル6の前部中央部の位置)が現在位置として制御装置31に入力されており、耕耘領域設定画面M4を選択すると、このGPS受信機40によって受信した現在位置、及び予め制御装置31に入力された車体条件(GPSアンテナ19から運転座席5の後部までの位置関係等)に基づいて、走行車体1の後部に装備した運転座席5に着座した運転者の位置が制御装置31で演算処理されるように構成されている。
【0131】
耕耘領域設定開始ボタンU1を押して、設定する圃場領域内の耕耘を行う耕耘領域の四隅(図17中のQ1〜Q4)にトラクタを移動して(運転者が目で位置を確認しながら運転座席5の後部を四隅に位置決めして)、この移動した位置で耕耘領域設定ボタンU2を押すと、ナビゲーションシステム71によって提供された地図情報上に、圃場領域の外周縁(図16中のP1〜P4)に平行な長方形状の耕耘領域(図17中のQ1〜Q4を結ぶ点線)が自動的に設定されて、この耕耘領域がモニター72の耕耘領域設定画面M4上にナビゲーションシステム71の地図情報及び圃場領域とともに表示される。
【0132】
なお、耕耘領域設定画面M4に表示された耕耘ライン(G1〜G4)のいずれかを指で触れて選択し、調節ボタンU3を押すことにより、耕耘領域を設定する位置にトラクタを移動させなくても画面上で耕耘領域を設定することができ、また、耕耘領域を設定する位置にトラクタを移動させなくても画面上で既に設定された耕耘領域の微調整及び変更を行うことができる。
【0133】
耕耘領域の設定又は変更が完了して耕耘領域設定終了ボタンU5を押すと、耕耘領域が設定又は変更されて、再びメニュー表示画面Mが表示されるように構成されている。なお、耕耘領域設定画面M4には、クリアボタンU4が備えられており、クリアボタンU4を押すことにより、直前の耕耘領域が表示される。
【0134】
図18に示すように、モニター72のメニュー表示画面Mから全自動運転画面M5を選択すると、ナビゲーションシステム71の地図情報、圃場領域、耕耘領域、トラクタの現在位置及び操作位置検出センサ74によって検出された前後進切替レバー73の操作位置(走行車体1の走行方向)とともに各種ボタンが表示される。全自動運転画面M5上には、上述した情報とともに、トラクタによって耕耘作業する耕耘経路H(設定位置)が表示されており、耕耘作業開始位置A0にトラクタを移動させて開始ボタンW1を押すことにより、予め設定された耕耘経路Hに沿って、後述する全自動運転が実施される。
【0135】
耕耘経路Hの直進部分は、上述した耕耘領域及び機体条件設定画面M1によって設定した機体条件に基づいて、耕耘領域の全域を隙間なく耕すことができるように、制御装置31によって自動的に演算処理されて設定される。また、耕耘経路Hの旋回部分は、上述した耕耘領域、圃場領域、機体条件設定画面M1によって設定した機体条件、旋回条件設定画面M2によって設定した旋回条件に基づいて、耕耘領域と圃場領域との間の領域でトラクタを旋回可能な旋回半径や、隣接耕合せに必要な旋回角度等が制御装置31によって自動的に演算処理されて設定される。
【0136】
全自動運転画面M5には、選択ボタンW2が設けられており、この選択ボタンW2を押すと複数の耕耘パターン(トラクタによって耕耘作業する耕耘経路Hのパターン)がモニター72の画面上に表示されて、複数の耕耘パターンを選択できる(図18に表示されている耕耘経路Hは一例である)。なお、全自動運転画面M5には、中断ボタンW3及び終了ボタンW4が備えられており、中断ボタンW3を押すと全自動運転を一時的に中断することができ、終了ボタンW4を押すことにより、全自動運転が終了して、メニュー表示画面Mが表示される。
【0137】
〔自動直進制御及び自動旋回制御〕
図19〜図22に基づいて、このトラクタで実施されている自動直進制御及び自動旋回制御について説明する。図19は、この制御装置31のメインルーチンを示し、図20は、自動直進制御を実施した場合のサブルーチンを示す。図21〜図22は、自動旋回制御を実施した場合のサブルーチンを示す。
【0138】
図19に示すように、図13に示した検出機器類によって検出されて制御装置31に入力されたデータが監視されている(ステップ#51)。GPS受信機70によって受信した現在位置及び予め設定した耕耘領域に基づいて、トラクタが耕耘領域に入った(耕耘ラインG1〜G4を通過した)と判断される場合には(ステップ#52・YES)、後述する自動直進制御が実施される(ステップ#53)。
【0139】
一方、GPS受信機70によって受信した現在位置及び予め設定した耕耘領域に基づいて、トラクタが耕耘領域から出た(耕耘ラインG1〜G4を通過した)と判断される場合には(ステップ#54・YES)、後述する自動旋回制御が実施される(ステップ#55)。なお、トラクタが耕耘領域に入った後、トラクタが耕耘領域から出ると、後述する自動直進制御と自動旋回制御とが一時的に重複して実施される。
【0140】
図20に示すように、トラクタが耕耘領域に入って自動直進制御が実施されると、制御装置31から電磁弁46に出力されて耕耘装置Fが下降位置に下降するようにリフトシリンダ9が短縮され(ステップ#61)、制御装置31からデフロックアクチュエータ56に出力されて後輪デフ63がロックされ、左右の後輪4,4を略同じ回転数で回動させてトラクタの直進性を向上させる(ステップ#62)。なお、図示しないが、耕耘装置Fが上昇位置から下降すると、制御装置31からPTOアクチュエータ55に出力されて、自動的に耕耘装置FのロータリF1が駆動する。
【0141】
次に、車速センサ67により検出した車速をフィードバックしながら、制御装置31から電子ガバナコントローラ48及び変速アクチュエータ51に出力を行って、予め設定された直進時の車速になるようにエンジン2の回転数が電気的に制御され、予め設定された直進時の変速段数に走行変速装置が電気的に変速操作されて、直進時の車速に自動変速される(ステップ#63)。
【0142】
次に、操舵角センサ32の検出結果に基づいて、運転者がステアリングハンドル6を操作しているか否か判断され(ステップ#64)、運転者のステアリングハンドル6の操舵操作量が予め設定された設定操作量より少なく、運転者がステアリングハンドル6を保持し右及び左方向のいずれの方向にも操向操作していないと判断される場合(運転者がトラクタを直進させようとしている場合)には(ステップ#64・NO)、GPS受信機70によって受信した現在位置及び予め設定した耕耘経路Hに基づいて、走行車体1の現在位置が耕耘経路H(設定位置)から外れたか否か判断される(ステップ#65)。
【0143】
GPS受信機70によって受信した現在位置が耕耘経路Hから外れたと判断される場合には(ステップ#65・YES)、耕耘経路Hから外れた方向とは逆方向に、前輪3が操向操作されるように、制御装置31からモータ駆動回路45に出力を行って、ステアリングモータ30を駆動させて、トラクタが予め設定された耕耘経路Hに沿って移動するように自動操向する(ステップ#66)。
【0144】
GPS受信機70によって受信した現在位置及び予め設定された耕耘経路Hに基づいて、走行車体1の現在位置が耕耘経路Hに修正されたと判断される場合には(ステップ#67・YES)、制御装置31からのモータ駆動回路45への出力を断って、ステアリングモータ30を停止させる(ステップ#68)。
【0145】
運転者がステアリングハンドル6を保持し右及び左方向のいずれの方向にもステアリングハンドル6を操向操作していないと判断される状態が継続されると、上述したステアリングモータ30の正逆転及び停止(ステップ#64〜#68)を繰り返しながら(#69・NO)、トラクタの現在位置を修正して、トラクタを耕耘経路Hに沿って走行させる。
【0146】
なお、運転者がステアリングハンドル6を右又は左方向に操向操作したと判断される場合には、運転者のステアリングハンドル6の操作意思が優先され(ステップ#64・YES)、ステアリングモータ30は正逆転されずに自動直進制御が終了して、運転者のステアリングハンドル6の操作に従って前輪3が操向操作される。
【0147】
以上のように、ステアリング差動機構20を構成するステアリングモータ30を正逆転させることにより、ステアリング装置12を自動的に操作して、走行車体1が予め設定された耕耘経路H(設定位置)に沿って自動操向するように構成されている。
【0148】
なお、自動直進制御が実施されている間に、後述する自動旋回制御によって自動直進制御が解除されると、自動直進制御が自動的に終了するように構成されている(ステップ#69・YES)。
【0149】
図21及び図22に示すように、トラクタが耕耘領域から出ると自動旋回制御が実施され、制御装置31から電磁弁46に出力されて耕耘装置Fが中間位置に低速で上昇するようにリフトシリンダ9が伸長される(ステップ#71)。
【0150】
次に、昇降位置検出センサ41の検出結果に基づいて、耕耘装置Fが中間位置に上昇したか判断され(ステップ#72)、耕耘装置Fが中間位置に上昇したと判断される場合には(ステップ#72・YES)、上述した自動直進制御が解除される(ステップ#73,ステップ#69・YES)。
【0151】
耕耘装置Fが中間位置に上昇したと判断されると、制御装置31から電磁弁46に出力されて耕耘装置Fが上昇位置に高速で上昇するようにリフトシリンダ9が伸長される(ステップ#74)。なお、図示しないが、耕耘装置Fが上昇位置に上昇すると、制御装置31からPTOアクチュエータ55への出力が遮断されて、自動的に耕耘装置FのロータリF1が停止する。
【0152】
このように、耕耘領域、耕耘経路H及びGPS受信機70によって受信した現在位置に基づいて制御装置31から操作指示が出されて、耕耘装置Fが中間位置まで低速で上昇し、耕耘装置Fが中間位置まで上昇してからトラクタが自動旋回するように、操作指示手段が構成されている。
【0153】
次に、車速センサ67により検出した車速をフィードバックしながら、制御装置31から電子ガバナコントローラ48及び変速アクチュエータ51に出力を行って、予め設定された旋回時の車速になるようにエンジン2の回転数が電気的に制御され、予め設定された旋回時の変速段数に走行変速装置が電気的に変速操作されて、旋回時の車速に自動変速される(ステップ#75)。
【0154】
次に、制御装置31からデフロックアクチュエータ56へ出力されて、自動直進制御で作動させた後輪デフ63のロックが解除される(ステップ#76)。
【0155】
次に、予め設定された方向(左方向L又は右方向R)の耕耘経路Hに沿ってトラクタが旋回するように、制御装置31からモータ駆動回路45に出力されて、ステアリング差動機構20のステアリングモータ30が旋回駆動される(ステップ#77)。
【0156】
次に、制御装置31から前輪変速アクチュエータ52に出力して、前輪変速装置60を増速位置に切り替えて(ステップ#78)、前輪3の回転速度を高速側に変速操作し(ステップ#79)、制御装置31から操作バルブ54に出力しブレーキシリンダ53を操作して、旋回中心側のサイドブレーキ62を制動側に操作しトラクタを小回りで旋回させる。
【0157】
耕耘装置Fが中間位置に上昇したと判断されてからのステップ#73〜#79の一連の制御は、略同時に実行されるように制御装置31が構成されており、トラクタを迅速に旋回状態に変更できるように構成されている。
【0158】
前輪切れ角センサ66の検出結果に基づいて、前輪3,3が予め設定された前輪操向角度に操作されたか判断され(ステップ#80)、ステアリングモータ30を旋回駆動することによって、トラクタを旋回させる予め設定された旋回半径に対応する前輪操向角度に前輪3,3が操作された場合には(ステップ#80・YES)、制御装置31からのモータ駆動回路45への出力を遮断して、ステアリングモータ30を停止して前輪3,3が所定の前輪操向角度に操作された状態を保持する(ステップ#81)。
【0159】
次に、前輪3,3が所定の前輪操向角度に操作された状態でトラクタを旋回させ、GPS受信機70によって受信した現在位置及び予め設定された耕耘経路Hに基づいて、トラクタが予め設定された旋回角度まで旋回したか判断される(ステップ#82)。トラクタが旋回角度に旋回したと判断されると(ステップ#82・YES)、制御装置31からモータ駆動回路45に出力して、トラクタを旋回させた方向とは逆方向に前輪3が操向操作されるように、ステアリングモータ30を徐々に逆回転駆動させて(ステップ#83)、GPS受信機70によって受信した現在位置及び前輪切れ角センサ66の検出結果並びに耕耘経路Hに基づいて、前輪3が直進向きになるように隣接する隣接耕に自動的に隣接耕合せをする。
【0160】
トラクタが隣接する隣接耕に隣接耕合せされると(ステップ#84)、制御装置31から表示装置57に出力することにより、ブザーを鳴らし又はランプを点灯させて、運転者にトラクタの旋回が完了したことを視覚的又は聴覚的に知らせて(ステップ#85)、自動旋回制御を終了する。
【0161】
自動旋回制御を終了すると直ちに耕耘領域(ステップ#52)に入るように、トラクタの旋回終了位置が設定されており、自動旋回制御が終了すると上述した自動直進制御が直ちに実施され、以降は自動直進制御(ステップ#53)及び自動旋回制御(ステップ#54)を交互に繰り返して、耕耘領域全域の耕耘作業が終了すると、全自動運転が終了するように構成されている。
【0162】
〔トラクタの耕耘作業の状況〕
図23に基づいて、上述した全自動運転を実施した場合のトラクタの耕耘状況について説明する。図23は、トラクタが直進及び旋回する状況を説明するための概略平面図を示す。図23に示すように、トラクタをA0地点に移動させてモニター72を全自動運転画面M5に切り替えて、開始ボタンW1を押して耕耘領域にトラクタが入ると自動直進制御が実施されて、耕耘経路Hに沿ってトラクタが自動的に直進走行する。
【0163】
トラクタがA1地点まで直進走行すると、A1地点で耕耘装置Fが自動的に上昇を開始し、A1地点から距離L1の間、自動直進制御が継続されてB1地点まで走行する。そして、自動旋回制御によってトラクタが自動的に旋回する。
【0164】
C1地点までトラクタが旋回し旋回を終了すると、D1地点に向って隣接する隣接耕に自動的に隣接耕合せされて、D1地点で自動旋回制御が終了する。そして、D1地点で再び自動直進制御が実施され、以降は自動直進及び自動旋回を交互に繰り返して、耕耘領域全域の耕耘作業が終了すると、全自動運転が終了する。
【0165】
以上のように、モニター72を操作するだけで、全自動で自動直進及び自動旋回を行うようにトラクタを構成することにより、運転者が運転座席5に着座して、ステアリングハンドル6を保持するだけで自動的に耕耘領域を耕耘することができ、走行車体1を直進させるステアリング操作及び走行車体1を旋回させるステアリング操作に加え、隣接耕合せの作業が必要なくなって、走行車体1を直進、旋回及び隣接耕合せするためのステアリングハンドル6の操作に注意を払わなくてもよくなり、容易に走行車体1を直進、旋回及び隣接耕合せすることができ、運転座席5に着座して圃場の状況を確認しながら、効率よく耕耘作業を行うことができる。
【0166】
[発明の実施の第2別形態]
前述の[発明を実施するための最良の形態]及び[発明の実施の第1別形態]においては、耕耘装置Fを低速で上昇させる中間位置を、ロータリF1の下端が圃場面と略同一に設定した例を示したが、中間位置を高く又は低く設定してもよく、中間位置を、ロータリF1の下端が地中に入り込んだ位置や、ロータリF1の下端が圃場面から上に上昇した位置に設定してもよい。
【0167】
前述の[発明を実施するための最良の形態]及び[発明の実施の第1別形態]においては、耕耘装置Fが中間位置に上昇するのと略同時に走行車体1が自動旋回を開始するように自動旋回制御を実施した例を示したが、耕耘装置Fが中間位置に上昇するタイミングと、走行車体1が自動旋回を開始するタイミングは、異なるタイミングであってもよく、例えば耕耘装置Fが中間位置に上昇するよりも早く走行車体1が自動旋回を開始するように自動旋回制御を実施してもよく、耕耘装置Fが中間位置に上昇した後に走行車体1が自動旋回を開始するように自動旋回制御を実施してもよい。
【0168】
前述の[発明を実施するための最良の形態]及び[発明の実施の第1別形態]においては、旋回レバー37又は制御装置31により操作指示を出すように、操作指示手段を構成した例を示したが、操作指示を出す操作指示手段として異なる構成を採用してもよく、例えば、スイッチ等(図示せず)の操作具や、タッチパネル式の画面操作によって操作指示を出すように、操作指示手段を構成してもよい。
【0169】
前述の[発明を実施するための最良の形態]においては、耕耘装置Fの上昇速度及び中間位置を、上昇速度調節具43又は中間位置調節具44のダイアル操作によって手動で変更調節できるように、上昇速度調節手段及び中間位置調節手段を構成した例を示したが、制御装置31により耕耘装置Fの上昇速度又は中間位置を自動で変更調節できるように構成してもよく、例えば昇降位置検出センサ41によって検出したリフトアーム8(耕耘装置F)の位置、又は耕耘深さ調節具によって設定された耕耘装置Fの下降位置等に基づいて上昇速度又は中間位置を自動的に変更調節できるように、上昇速度調節手段及び中間位置調節手段を構成してもよい。
【0170】
このように、上昇速度又は中間位置を自動的に変更調節できるように上昇速度調節手段又は中間位置調節手段を構成することにより、耕耘装置Fの高さや耕耘深さに応じて上昇速度又は中間位置を変更することができ、耕耘跡の発生を更に効果的に防止できる。
【0171】
前述の[発明を実施するための最良の形態]においては、耕耘装置Fの上昇速度及び中間位置を、上昇速度調節具43又は中間位置調節具44のダイアル操作によって変更調節できるように、上昇速度調節手段及び中間位置調節手段を構成した例を示し、前述の[発明の実施の第1別形態]においては、耕耘装置Fの上昇速度及び中間位置を、モニター72の旋回条件設定画面M2によって変更調節できるように、上昇速度調節手段及び中間位置調節手段を構成した例を示したが、上昇速度調節手段及び中間位置調節手段として異なる構成を採用してもよく、例えば複数の操作位置に切り替え可能な操作スイッチ(図示せず)により、一定速度又は一定高さずつ耕耘装置Fの上昇速度及び中間位置を変更調節できるように上昇速度調節手段及び中間位置調節手段を構成してもよい。
【0172】
[発明の実施の第3別形態]
前述の[発明を実施するための最良の形態]、[発明の実施の第1別形態]及び[発明の実施の第2別形態]においては、自動旋回制御に移行すると、耕耘装置Fを予め設定された中間位置から上昇位置まで上昇させる速度(第2上昇速度V2)よりも低速(第1上昇速度V1)で、耕耘装置Fを下降位置から中間位置まで上昇させるように、耕耘装置自動上昇手段を構成した例を示したが、耕耘装置Fを下降位置から上昇位置まで高速(例えば第2上昇速度V2)で上昇させる第1上昇モードと、耕耘装置Fを下降位置から中間位置まで低速(例えば第1上昇速度V1)で上昇させ中間位置から上昇位置まで高速(例えば第2上昇速度V2)で上昇させる第2上昇モードとを、運転座席5付近に備えた人為操作具(図示せず)を切替操作することにより、耕耘作業の条件等に応じて運転者により選択可能に構成してもよい。
【0173】
このように、必要に応じて耕耘装置Fを中間位置まで低速で上昇させることにより、例えば圃場に耕耘跡が発生し難いような場合には、第1上昇モードを選択して耕耘装置Fの上昇を優先させて、迅速にトラクタの旋回を行うことができ、例えば圃場に耕耘跡が発生し易い場合には、第2上昇モードを選択して耕耘跡の発生を効果的に防止できる。
【0174】
前述の[発明を実施するための最良の形態]、[発明の実施の第1別形態]及び[発明の実施の第2別形態]においては、耕耘装置Fを予め設定された中間位置から上昇位置まで上昇させる速度(第2上昇速度V2)よりも低速(第1上昇速度V1)で、耕耘装置Fを下降位置から中間位置まで上昇させるように、耕耘装置自動上昇手段を構成した例を示したが、耕耘装置Fを下降位置から上昇位置まで高速(例えば第2上昇速度V2)で上昇させる高速モードと、この高速モードで耕耘装置Fを上昇させる速度よりも低速(例えば第1上昇速度V1)で耕耘装置Fを下降位置から上昇位置まで上昇させる低速モードとを、運転座席5付近に備えた人為操作具(図示せず)を操作することにより、耕耘作業の条件等に応じて運転者により切り替え可能に構成してもよい。
【0175】
このように、必要に応じて耕耘装置Fを低速で上昇させることにより、例えば圃場に耕耘跡が発生し難いような場合には、高速モードを選択して耕耘装置Fの上昇を優先させて、迅速にトラクタの旋回を行うことができ、例えば圃場に耕耘跡が発生し易い場合には、低速モードを選択して耕耘跡の発生を効果的に防止できるとともに、中間位置を設けなくてもよくなるため、簡素な構成で耕耘跡の発生を防止できる。
【0176】
[発明の実施の第4別形態]
前述の[発明を実施するための最良の形態]、[発明の実施の第1別形態]、[発明の実施の第2別形態]及び[発明の実施の第3別形態]においては、作業車の一例として耕耘装置Fを備えたトラクタに自動直進制御、自動旋回制御及び全自動運転を適用した例を示したが、異なる作業装置を備えた異なる作業車においても同様に適用でき、例えば苗植付け装置を備えた田植機に適用することで、精度よく直進走行させることにより苗植付け作業の作業性を向上でき、精度よく旋回させることにより畦際での旋回作業の作業性を向上できる。また、後輪4に限らず例えば後車軸にクローラ走行装置(図示せず)を装着した作業車においても同様に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0177】
【図1】トラクタの全体左側面図
【図2】ステアリング装置及びステアリング差動機構の構造を示す概略図
【図3】制御装置のブロック図
【図4】トラクタの走行伝動系の概略図
【図5】制御装置のメインルーチンのフローチャート
【図6】自動直進制御のフローチャート
【図7】自動旋回制御のフローチャート
【図8】自動旋回制御のフローチャート
【図9】耕耘装置が上昇する状況を説明するための概略図
【図10】トラクタが旋回する状況を説明するための概略図
【図11】トラクタが直進及び旋回する状況を説明するための概略平面図
【図12】発明の実施の第1別形態でのトラクタの全体左側面図
【図13】発明の実施の第1別形態での制御装置のブロック図
【図14】発明の実施の第1別形態でのモニターのメニュー表示画面
【図15】発明の実施の第1別形態での機体条件設定画面及び旋回条件設定画面
【図16】発明の実施の第1別形態での圃場領域設定画面
【図17】発明の実施の第1別形態での耕耘領域設定画面
【図18】発明の実施の第1別形態での全自動運転画面
【図19】発明の実施の第1別形態での制御装置のメインルーチンのフローチャート
【図20】発明の実施の第1別形態での自動直進制御のフローチャート
【図21】発明の実施の第1別形態での自動旋回制御のフローチャート
【図22】発明の実施の第1別形態での自動旋回制御のフローチャート
【図23】発明の実施の第1別形態でのトラクタが直進及び旋回する状況を説明するための概略平面図
【図24】従来のトラクタの耕耘装置が上昇する状況を説明するための概略図
【図25】従来のトラクタが旋回する状況を説明するための概略図
【符号の説明】
【0178】
1 走行車体
3 前輪
8 リフトアーム(昇降機構)
9 リフトシリンダ(昇降機構)
37 旋回レバー(操作指示手段)
43 上昇速度調節具(上昇速度調節手段)
44 中間位置調節具(中間位置調節手段)
F 耕耘装置(ロータリ耕耘装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行車体の後部に装備されたロータリ耕耘装置を昇降駆動する昇降機構と、操作指示を出す操作指示手段と、を備え、
前記操作指示手段からの操作指示に基づいて、前記ロータリ耕耘装置を予め設定された中間位置から上昇位置まで上昇させる速度よりも低速で、前記ロータリ耕耘装置を下降位置から前記中間位置まで上昇させるように、前記昇降機構を駆動させる耕耘装置自動上昇手段を備えてある作業車。
【請求項2】
前記操作指示手段によって走行車体の旋回方向を指示可能に構成するとともに、
前記操作指示手段からの操作指示に基づいて、前記旋回方向に前輪を操向操作し走行車体を自動旋回させる自動旋回制御手段を備えてある請求項1記載の作業車。
【請求項3】
前記ロータリ耕耘装置が前記下降位置から設定高さを超えて上昇してから、走行車体の自動旋回を開始するように、前記自動旋回制御手段を構成してある請求項2記載の作業車。
【請求項4】
前記中間位置に前記ロータリ耕耘装置を低速で上昇させる速度を変更調節可能な上昇速度調節手段を備えてある請求項1〜3のいずれか一項に記載の作業車。
【請求項5】
前記中間位置を変更調節可能な中間位置調節手段を備えてある請求項1〜4のいずれか一項に記載の作業車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2008−278840(P2008−278840A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−128267(P2007−128267)
【出願日】平成19年5月14日(2007.5.14)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】