説明

脱穀装置

【課題】制御遅れをなくして穀稈の状態に応じた迅速に脱穀調整を行うことができる脱穀装置を提供すること。
【解決手段】刈り取った穀稈を脱穀して被処理物を選別する揺動棚51から落下する穀粒と藁屑を選別するファン59a,88で風力選別するにあたり、外気の温度と湿度と湿度を測定し、さらに前記外気条件下での揺動棚51上の被処理物の層厚を検知して、前記各検知した値に応じて選別ファン59a,88の送風量、送風強さ、シーブ53の開度を変更して脱穀性能を調整する脱穀装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバインの脱穀装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コンバインは、穀稈を刈取装置により刈り取って搬送し、フィードチェーンから脱穀装置に供給して、脱穀、選別し、脱穀選別された穀粒をグレンタンクに一時貯溜した後、グレンタンク内の穀粒をコンバインの外部に排出する構成である。
【0003】
上記コンバインにおいて脱穀装置内部で穀稈を脱穀する際に、穀稈の状態、例えば湿り過ぎた穀稈の場合には脱穀性能に大きく影響を与え、脱穀する際に脱ぷが生じることがあった。このような不具合を解消するために、例えば特開平8−214674号公報記載の発明では穀稈のぬれ状態を測定するセンサを刈取装置と脱穀装置の間の穀稈搬送路に設けており、該穀稈のぬれ状態測定センサの値が穀稈のぬれが大きいと判断したら脱穀装置内の扱胴の回転速度を低下させる方法を採用している。
【特許文献1】特開平8−214674号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1記載の穀稈のぬれ状態測定センサは脱穀装置内に設けたCCDカメラで、穀稈に照射した光源からの光の反射光を画像処理する構成である。しかし、このぬれ状態測定センサの測定結果に基づき扱胴の回転速度を制御する方法では、扱胴の回転速度制御が遅れることがある。
そこで、本発明の課題は、この様な制御遅れをなくして穀稈の状態に応じた迅速に脱穀調整を行うことができる脱穀装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記本発明の課題は、次の解決手段により解決される。
請求項1記載の発明は、刈り取った穀稈を脱穀して被処理物を選別するシーブ(53)付きの揺動棚(51)と該揺動棚(51)から落下した穀粒と藁屑を風力選別する選別ファン(59a,88)とを備えた脱穀装置(15)において、穀稈刈り取り時の外気の温度と湿度を検知する温度検知手段(106)と湿度検知手段(107)と揺動棚(51)上の被処理物の層厚を検知する検知手段(105)を設け、前記各検知手段(105〜107)の検知した値に応じて選別ファン(59a,88)の送風量、送風強さ、シーブ(53)の開度を変更して脱穀性能を調整する脱穀装置である。
【0006】
請求項2記載の発明は、外気温度検知手段(106)と外気湿度検知手段(107)を脱穀装置(15)と脱穀装置駆動用エンジン(21)の設置部から離れた箇所に設けた外気吸気部(108)に取り付けた請求項1記載の脱穀装置である。
【発明の効果】
【0007】
請求項1記載の発明によれば、外気温度、湿度の変化及び揺動棚(51)上の被処理物の層厚に応じて迅速の脱穀装置(15)の被処理物の処理性能を容易に調整することができる。
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明の効果に加えて、外気温度、湿度の測定に脱穀装置(15)と脱穀装置駆動用エンジン(21)の影響がないので正確に外気温度、湿度の測定ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の実施の形態を図面と共に説明する。
図1は本実施形態のコンバインの右側面図であり、図2は図1のコンバインの平面図であり、図3は正面図であり、図4は脱穀装置制御ブロック図であり、図5は脱穀装置の左側面から見た駆動系を示す図であり、図6は脱穀装置の左側面から見た内部構造を示す図であり、図7は図6のA−A線断面矢視図であり、図8は図6のB−B線断面矢視図であり、図9は図6のC−C線断面矢視図であり、図10は脱穀装置内の各駆動部のエンジンからの動力伝達機構図であり、図11は脱穀装置に天井部を取り除いた状態の平面図である。
なお、本明細書では、左側及び右側とはコンバインが前進する方向に向いたときの方向を言う。
【0009】
図1などに示すコンバイン1の走行フレーム2の下部には、ゴムなどの可撓性材料を素材として無端帯状に成型した左右一対のクローラ4を持ち、乾田はもちろんのこと、湿田においてもクローラ4が若干沈下するだけで自由に走行できる構成のクローラ駆動輪3を備え、走行フレーム2の前部には刈取装置6を搭載し、走行フレーム2の上部にはエンジン21ならびに脱穀装置15、操縦席20及びグレンタンク30を搭載する。
【0010】
刈取装置6は、図示しない刈取昇降シリンダの伸縮作用により刈取装置6全体を昇降して、圃場に植生する穀稈を所定の高さで刈取りができる構成としている。刈取装置6の前端下部に分草具7を、その背後に傾斜状にした図示しない穀稈引起し装置を、その後方底部には刈刃(図示せず)を配置している。刈刃と脱穀装置15のフィードチェン14の始端部との間に、前部搬送装置(図示せず)、該前部搬送装置へ穀稈を掻き込むスターホイール8、供給搬送装置9などを、順次穀稈の受継搬送と扱深さ調節とができるように配置している。
【0011】
コンバイン1の刈取装置6の作動は次のように行われる。
まず、エンジン21を始動して図示しない刈取レバーと脱穀レバーを入り操作して機体の回転各部を伝動しながら、変速レバー10をコンバイン1が前進するように操作しコンバイン1を前進走行させると、刈取、脱穀作業が開始される。圃場に植立する穀稈は刈取装置6の前端下部にある分草具7によって分草作用を受け、次いで穀稈引起し装置の引起し作用によって倒伏状態にあれば直立状態に引起こされ、穀稈の株元が刈刃に達して刈取られ、スターホイール8と前部搬送装置に掻込まれて後方に搬送され、供給搬送装置9に受け継がれて扱ぎ深さが調節され、順次連続状態で後部上方に搬送される。
【0012】
穀稈は供給搬送装置9からフィードチェン14の始端部に受け継がれ、脱穀装置15に供給される。脱穀装置15には、上側に扱胴69を軸架した扱室66を配置し、扱室66の下側に選別室50を一体的に設け、供給された刈取穀稈を脱穀選別する。
【0013】
脱穀装置15に供給された穀稈は、図6に示す主脱穀部である扱室66に送られて脱穀され、選別された穀粒は一番螺旋65から一番揚穀筒16(図8)を経てグレンタンク30へ搬送され、グレンタンク30に一時貯留される。
【0014】
脱穀装置15の扱室66の終端に到達した脱穀後の残りの穀稈で長尺のままのものは排藁チェーン80(図6,図10)及び排藁穂先チェーン(図示せず)に挟持されて搬送され、脱穀装置15の後部の藁用カッター81a,81b(図6、図11)に投入された後、切断され、圃場に放出される。
【0015】
グレンタンク30内の底部に穀粒移送用のグレンタンク螺旋(図示せず)を設け、グレンタンク螺旋を駆動する螺旋駆動軸(図示せず)に縦オーガ18及び横オーガ19からなる排出オーガを連接し、グレンタンク30内に貯留した穀粒を排出オーガ排出口からコンバイン1の外部に排出する。図示しないグレンタンク螺旋、縦オーガ螺旋及び横オーガ螺旋はエンジン21の動力の伝動を受けて回転駆動され、それぞれの螺旋羽根のスクリュウコンベヤ作用により貯留穀粒を搬送する。
【0016】
次に脱穀装置15内の各部材の説明をする。
脱穀装置15の主脱穀部である扱室66に軸架された扱胴69は、その表面に多数の扱歯69aが設けられており、図10に示すプーリとベルト群からなる駆動機構Aを経由して得られるエンジン21からの動力で回転する。扱室66に挿入された穀粒の付いた穀稈はフィードチェン14とスプリング12a付勢のフィードチェン挟扼杆12(図5、図7)との間に挟扼され、機体後方に移送されながら、回転する扱胴69の扱歯69aにより脱穀される。穀稈から分離された被処理物(穀粒や藁くず)は、扱室66から扱網72を矢印C1方向(図6)に通過して、揺動棚51で受け止められる。
【0017】
揺動棚51は図示しない揺動棚駆動機構の作動により上下前後方向に揺動するので、被処理物は矢印D方向(図6)に移動しながら、唐箕59からの送風を受けて風力選別され、比重の重い穀粒はシーブ53及び選別網63を矢印E方向に通過し、一番棚板64で集積され、一番螺旋65から一番揚穀筒16を経てグレンタンク30へ搬送される。グレンタンク30に貯留された穀粒は、オーガ18、19を経由してコンバイン1の外部へ搬送される。
【0018】
揺動棚51の上の被処理物のうち軽量のものは、揺動棚51の揺動作用と唐箕59のファン59aによる送風に吹き飛ばされて、シーブ53の上を矢印D方向(図6)に移動し、ストローラック62の上で大きさの小さい二番物は矢印G方向等に落下して二番棚板85上を通り、二番螺旋86の設置部分に集められ、二番揚穀筒87へ搬送される。さらに軽いものは矢印D1方向(図6、図9)へ飛んで、排塵ファン100で機外に排出される。
【0019】
正常な穀粒、枝梗粒、藁くずなどの混合物である二番物は、二番揚穀筒87の中を二番揚穀筒螺旋87a(図9)により矢印H方向(図6)に揚送されて、二番処理室入口から二番処理室67(図6、図7)の上方へ放出される。二番処理室67に軸架された二番処理胴70の多数の処理歯70aに衝突しながら、また処理歯70aと受け樋74の相互作用により枝梗粒の枝梗の除去や、正常な穀粒への促進が行われて、被処理物は二番処理胴70の端部から扱網72を矢印C2方向を通過して揺動棚51に落下し、扱室66からの被処理物と合流する。
【0020】
また、扱室66の被処理物搬送方向終端部に到達した被処理物の中で、藁くずなど短尺のものは、排塵処理室入口から排塵処理室68(図11)に入り、排塵処理室68では二番処理胴70と一体に回転する排塵処理胴71の前側の傾斜螺旋71a(図6、図8)により矢印K方向に搬送され、後側の処理歯71b(図6、図9)で処理され、藁くずは解砕されて、藁くず中に残っていた穀粒(ササリ粒)の一部と藁くずの一部は矢印C3方向に格子体(図示せず)を通り抜けて選別室50に落下する。落ちなかったものは、終端部から矢印C3aを通過して、選別室50に落下する。落ちなかったものは、終端部から矢印C3aを通過して選別室50に落下する。
【0021】
図10は本実施の形態の動力伝達系統の一部展開図であり、エンジン21からの動力はHST28と変速装置(主変速装置と副変速装置とデフ装置などを備えている)24を経由してクローラ駆動軸3を駆動し、またエンジン21からの動力は駆動軸90と同軸上に一対の割プーリからなるベルコンプーリ91(図7参照)に伝達され、図5の脱穀装置15側面から見た駆動伝達系に示すように、ベルコンプーリ91の駆動力はベルト92(図5)により一番螺旋65の回転軸に設けられた一対の割プーリからなるベルコンプーリ93と二番ファン88の駆動用のプーリ94、二番螺旋86の回転軸に設けられた二番プーリ95にそれぞれ伝達される。また図5に示すように前記ベルト92による駆動系のカウンタ軸97に設けられたプーリ98に排塵ファン駆動プーリ駆動用ベルト99が掛け渡されているので、エンジン動力が排塵ファン100に伝達される。カウンタ軸97に設けられたプーリ101により排塵ファン100を駆動することは後述する。また、図10に示すように排藁カッター81a,81bが排塵ファン100の駆動系に隣接したプーリ84(図5)を始めとするベルト・プーリ群Bで駆動される。さらに図10に示すように揺動棚51の揺動用のベルト・プーリ群によりフィードチェン14が駆動される。また、図10に示すように排藁カッター81a、81bに排藁を搬送する排藁チェーン80は扱胴69の駆動系から動力が伝達される。
【0022】
ところで、穀稈の刈取環境下での日照(晴れ、曇り)や刈取時間(昼夜)により外気温度や湿度は刻々と変化し、それらの条件は刈取作物に影響し、藁塵の質量、藁塵の発生率など、脱穀装置15の脱穀性能に影響を与え、特に揺動棚51などのある選別部の被処理物の選択性に影響している。
【0023】
そこで、本実施例では穀稈の乾燥程度など、穀稈の状態に応じて脱穀装置15による穀稈の脱穀を適切に行えるように、以下のような構成を採用する。
穀稈の刈取条件下の一定時間毎に外気の温度と湿度変化を検出する手段と記憶する手段を設け、刈取環境(外気)の変化に対し、制御装置103(図1〜図4)により脱穀装置15の調整を自動で行うように構成した。さらに揺動棚51上の被処理物の層厚を検知するための揺動棚上処理量検出センサ105により脱穀装置15の調整を自動で行うように構成した。図12〜図14には外気の温度と湿度と揺動棚上の穀粒の層厚の時間の経過と共に変化する例を示す。
【0024】
なお、外気の温度と湿度変化を検出するセンサ106,107はそれぞれ操縦席20の後方に設けた吸気ボックス108内に配置されており、吸気ボックス108の外気導入口108aからエアークリーナ109(図1)を介して吸気された外気の温度と湿度を検知できる。
【0025】
上記吸気ボックス108の下方部にエンジン21が設置されているのでエンジン21の熱気や脱穀装置15から発生する塵芥や振動などの影響が吸気ボックス108に及ばなく、また、外気導入口108aよりエアークリーナ109を通過して常に最新の外気を得ることができるので、正確に外気の変化状態を把握することができる。
【0026】
また、層厚検知センサ105は揺動棚51より所定距離上方の扱室66下面に取り付けられた光センサ105(図6)で構成される。さらに、本実施例では制御装置103はコンバイン1のフロントボディ内に配置している(図1〜図3)。
【0027】
図12に示す外気の温度と湿度の時間変化が少なく、かつ揺動棚51上の穀粒の層厚が目標層厚(例えば25mm)の時間変化ほぼ同じ場合には脱穀装置15の調整操作を行わず、従来通りとする。
また、図13に示すように単位時間毎の外気温度の上昇と湿度の低下がそれぞれ一定値(例えば8℃、15%)以上に急変し、揺動棚51上の穀粒の層厚が目標値(例えば25mm)より所定量(例えば10mm)以上少なくなるとシーブ53の開度を所定量(例えば5°)閉じるか又は唐箕59の送風量を所定量(例えば20%)減じて穀粒の層厚を目標値に近づけるように制御する。こうして単粒ロスの増加を防止することができ、層厚減少による稈切れ等の混入防止を図ることができる。
【0028】
さらに図14に示すように単位時間毎の外気温度の低下と湿度の上昇が単位時間((例えば30分)以内に一定値(例えば8℃)以上で急変し、揺動棚51上の穀粒の層厚が目標値より一定値(例えば15mm)以上大きくなった場合には、シーブ53の開度をシーブ開度制御モータ110(図4)と該モータ110のシーブ開度制御モータセンサ111(図4)により所定量(例えば5°)開くか又は唐箕59の送風量を(例えば25%)だけ多くして穀粒の層厚を目標値に近づけるように制御する。こうして単粒ロスの増加を防止することができ、層厚増加による穀粒などのオーバーフローの防止を図ることができる。
【0029】
また、唐箕59の送風量は唐箕ファン59aの回転数を制御モータ112と該制御モータ112の選別ファン制御モータセンサ113で制御する(図4)。
このようなコンバインに外気の温度・湿度変化の状況を記憶させ、次回の温度・湿度の変化に応じ脱穀装置15の前記調整を行うことで条件に応じた調整を自動で行うことで最適な選別状態やロスの状態を省力化して得ることができる。
【0030】
また、唐箕59の唐箕ファン59aの送風量を外気条件などに応じて変化させ、風量を増減することで、藁塵発生量や藁塵の質量の変化に応じて最適な藁塵と穀粒の選別風を処理物に供給し、最適な選別状態や過度の選別風量による又は風量不足による選別室50内の藁塵増加によるロスの増加を防止できる。
【0031】
図4に示すように唐箕ファン59aの回転軸の制御モータ112により唐箕ファン59aの回転数は制御されるが、該唐箕ファン59aの回転軸にはベルコンプーリ91が設けられ、該プーリ91の駆動力がベルコンプーリ93を経由して二番ファン88の駆動用プーリ94にベルト92を介して伝達される(図5、図10)。
【0032】
ここで、ベルコンプーリ91とベルコンプーリ93は一対の割プーリでできており(図7、図8参照)、各割プーリの間隔をそれぞれベルコンプーリ91とベルコンプーリ93に連結した操作ロッド117,118(図5)により連動して調整することで唐箕ファン59aと二番ファン88(合わせて選別ファンということがある)の回転数を制御できる。該操作ロッド117,118は制御モータ112で連動して駆動制御される。
【0033】
なお、上記外気条件などによる脱穀装置15の調整操作において、図13に示すように外気温度が高く、かつ低湿度の場合は選別風ファン59a,88を低速(標準速)とし、図14に示すように外気温度が低く、かつ高湿度となるほど選別ファン59a,88を高速となるように制御する。
【0034】
また、昼間で外気温度が高く低湿度の場合は刈取作物(穀稈)も湿気を帯びず、藁塵の比重も低いので揺動選別で比重選別が行われやすく、低風量で3番ロス(三番物として揺動棚より濾過せず外部に排出される穀粒)を少なくして、良好な選別が得られる。これに対して、急激な温度変化(低下)や湿度の発生、あるいは夕方からの夜露の発生後などは刈取作物も湿気を帯び、藁塵の比重も高くなるので低風量では比重選別が行われにくくなり、選別状態が悪くなり、青葉混入などの選別の悪化、揺動棚51からの機外への藁塵が排出されにくくなり二番物の循環量が増加し、間欠排塵や三番ロスが急増する(いわゆるオーバーフロー)の不具合が起こりやすいので、前記選別ファン59a,88を高速化(増速)し、選別風量を増加することで、上記不具合を防止できる。
【0035】
また、例えば夕方などで湿度が高く、夜露が止メ葉に付着する条件などで選別ファン59a,88を増速回転させると、一番物(揚穀筒16でグレンタンク30に搬送させる穀粒)に青葉が混入するなどの不具合が減少するが、反面、藁塵の二番螺旋86への混入が多くなり、3番ロスが多くなる場合がある。
【0036】
この様な場合には、一番物の風力選別能力を変化させるよりも吸塵効率や二番物の藁塵の除去効率を変化させた方が選別室50内での被処理物の処理量を一定に保ちやすく、結果として一番物の選別も良好に維持しやすくなり、湿度や温度変化による被処理物の藁塵発生量などの増減には対応しやすい。
【0037】
図10(図5も参照)に示すように、唐箕ファン59aからの駆動力を二番螺旋86に伝達し、さらに唐箕ファン59aからの駆動力をカウンタ軸97を介して一旦回転速度を変更した後、カウンタ軸97に直結したプーリ98で排塵ファン100を駆動させることで、二番螺旋86と排塵ファン100を連動させて増速又は減速することができ、選別室50内での被処理物量の増減を大きく左右する二番物の搬送効率と吸塵効率を同時に調整しているので、調整の効果が大きく、また速やかに吸塵効果が現れる。
【0038】
また、前記層厚検知センサ105による揺動棚51上の処理物の層厚検知により、穀稈刈取時の温度や湿度の環境変化に応じて脱穀装置15の選別ファン59a,88の回転数を変化する構成において、揺動棚51上の処理物の層厚を実際に層厚検知センサ105で検知した上で目標層厚が得られるようにシーブ53の傾斜角度制御、選別ファン59a,88、排塵ファン100などの回転数制御を行うことで正確で誤差の少ない処理物の層厚調整を自動的に行えるようになる。
【0039】
前記処理物層厚センサ105は図6に示すように扱室66の中板あるいは後板120の下端に設けている。これは揺動棚51上に設けた寄せ板(ガイド板)121(図6)の後方で均分化された後の被処理物の層厚を検知できるので、層厚検知誤差が少ない。また、前記層厚センサ105の設置箇所が扱網72の下方ではないので扱網72など扱室66からの被処理物の通過を妨げることが無く、またセンサ105上に濾過物が溜まることがない。
【0040】
前記層厚検知センサ105により測定した揺動棚51上の被処理物の層厚が目標層厚より多い場合は二番ファン88や排塵ファン100等のファン類の回転数を上げ、逆に少ない場合は前記ファン88,100の回転数を下げるよう制御する。
【0041】
これは、揺動棚51上の被処理物の層厚が目標層厚よりも多く、揺動棚51に導かれる被処理量が多い条件下では二番ファン88と排塵ファン100の回転速度を増速して藁塵の2番還元量を減少するようにし、揺動棚51上の被処理物量を目標値まで下げる。こうして被処理物の選別性能の悪化やロスの増加を防止できる。
【0042】
逆に揺動棚51上の被処理物量が少ない場合などは選別風が抜けすぎ(強すぎ)て三番ロスが増加することが多いので、二番ファン88や排塵ファン100の回転速度を減速して揺動棚51上の処理物量を適量とし、単粒ロスの減少が行え、又、枝梗や「カギ又」等も2番還元でき、選別も良好となる。
【0043】
前記揺動棚51上の処理物の増減に応じて選別ファン59a,88の回転数を変化させる構成において、ファン回転数の補正の周期は車速に応じて変える構成にしても良い。これは、揺動棚51上の被処理物の増減は作物の品種、収量又は収穫時期(熟度)や気象条件などと車両側の車速やエンジン(脱穀部)の回転数などの刈取条件で大きく変化してくる。また、さらに車速(作業速)に応じて選別ファン59a,88の回転数などの補正の周期(タイミング)を変化させることで選別ファン59a,88などの調整の効かせ過ぎや効果の不足を防止できる。
【0044】
車速に応じて選別ファン59a,88の回転数の補正周期を変化させる構成において、図15に示すように車速(作業速)の中速作業域と高速作業域で補正周期を異ならせ、中速作業域では高速作業域よりも補正周期を長くしている。
これは、被処理物量が少ない中速領域では揺動棚51上の処理物量も少ないので制御のタイミングが遅れにくく、逆に補正周期を短くしすぎるとハンチング傾向となるため高速作業域よりも補正周期を長くしている。
【0045】
また、図15の車速の低い一定領域(低速作業域)においては選別ファン59a,88の回転数の補正を行わない構成にしても良い。これは、作業能率のきわめて低い低速作業域においては揺動棚51の層厚もかなり少なく、揺動棚51上の被処理物の層厚の検知が難しく、また選別風量を極端に少なくすると選別が悪化し、稈切れ混入や枝梗が急増するおそれがあるので、制御を停止し、上記のような不具合を防止する。
【0046】
前記選別ファン59a,88の回転数の補正を行う車速領域で、ファン回転数の補正を加えても、揺動棚51上の処理物の層厚が目標値よりも一定以上(例えば15mm以上)多い場合には、揺動棚51のシーブ53の開度を一定量(例えば5°)開くような制御を行う。
【0047】
例えば、湿り気の多い穀稈や多収量の穀稈などは二番ファン88や唐箕ファン59a(あるいは排塵ファン100)の回転を増速しても被処理物の層厚が目標まで減少しないことがある。その場合には、揺動棚51のシーブ53での選別が極端に悪化しないレベルまで開度を大きくして揺動棚51上の被処理物(穀粒)の濾過率を上げることで揺動棚51上の処理物量を目標値まで下げることで3番ロスの増加を防止できるようになる。
【0048】
なお、シーブ53の開度は図16の脱穀装置15側面図と図17の選別室50側面図に示すように、シーブ調整レバー124の先端に設けたシーブ開度センサ(ポテンショメータ)125の測定値に基づきシーブ53の開度を検出し、シーブ調整レバー124の取っ手を上下することで、該調整レバー124の中間部に端部が接続されたシーブ開度調整ワイヤ126を上下移動させ、図17に示すシーブ揺動用アーム128と該アーム128の付勢スプリング129などの連結機構によりシーブ53の開度を調整する。
また、図16に示すシーブ開度調整モータ123によりワイヤーレバー124を回転させ、レバー126の伸縮により、シーブ開度を所定角度まで変更可能な構成も設けている。
【0049】
上記脱穀装置15の風力選別機構の制御において、選別ファン59a,88の回転数を手動で制御できるように図18に示す手動調整ダイヤル130を設け、自動から手動に切替選択可能としている。
こうして、脱穀装置15の風力選別機構の自動制御に使用している各センサの故障や作物条件、気象条件が想定している制御内容に合わず選別状態やロスなどが思わしくない場合などは手動にて調整することで調整範囲が広がり誤作動などがなくなる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明はコンバインなどの農業用作業車両においても利用可能性がある。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の実施の形態のコンバインの右側面図である。
【図2】図1のコンバインの平面図である。
【図3】図1のコンバインの正面図である。
【図4】図1のコンバインの脱穀装置制御ブロック図である。
【図5】図1のコンバインの脱穀装置の左側面から見た駆動系を示す図である。
【図6】図1のコンバインの脱穀装置の左側面から見た内部構造を示す図である。
【図7】図6のA−A線断面矢視図である。
【図8】図6のB−B線断面矢視図である。
【図9】図6のC−C線断面矢視図である。
【図10】図1のコンバインの脱穀装置内の各駆動部のエンジンからの動力伝達機構図である。
【図11】図1のコンバインの脱穀装置に天井部を取り除いた状態の平面図である。
【図12】外気温度と湿度と図1のコンバインの脱穀装置の揺動棚上の被処理物層厚の時間変化を示す図である。
【図13】外気温度と湿度と図1のコンバインの脱穀装置の揺動棚上の被処理物層厚の時間変化を示す図である。
【図14】外気温度と湿度と図1のコンバインの脱穀装置の揺動棚上の被処理物層厚の時間変化を示す図である。
【図15】図1のコンバインの走行速度と脱穀装置の揺動棚上の被処理物層厚の関係を示す図である。
【図16】図1のコンバインの脱穀装置の右側面から見たシーブ開閉機構を示す図である。
【図17】図16の脱穀装置の選別室のシーブ開閉機構を示す図である。
【図18】図16の脱穀装置の選別室のシーブ開閉機構を手動と自動に切り替えるダイヤルを示す図である。
【符号の説明】
【0052】
1 コンバイン 2 走行フレーム
3 クローラ駆動輪 4 クローラ
6 刈取装置 7 分草具
8 スターホイール 9 供給搬送装置
10 変速レバー 12 フィードチェン挟扼杆
12a スプリング 14 フィードチェン
15 脱穀装置 16 一番揚穀筒
18 縦オーガ 19 横オーガ
20 操縦席 21 エンジン
24 変速装置 28 HST
30 グレンタンク 50 選別室
51 揺動棚 53 シーブ
59 唐箕 59a 唐箕ファン
62 ストローラック 63 選別網
64 一番棚板 65 一番螺旋
66 扱室 67 二番処理室
68 排塵処理室 69 扱胴
69a 扱歯 70 二番処理胴
70a 処理歯 71 排塵処理胴
71a 螺旋 71b 羽根
72 扱網 74 受け樋
80 排藁チェーン 81 藁用カッター
84 プーリ 85 二番棚板
86 二番螺旋 87 二番揚穀筒
87a 二番揚穀筒螺旋 88 二番ファン
89 縦オーガ螺旋 90 駆動軸
91 ベルコンプーリ 92 ベルト
93 ベルコンプーリ 94 二番ファン駆動用プーリ
95 二番プーリ 97 カウンタ
98 プーリ 99 排塵ファン駆動プーリ駆動用ベルト
100 排塵ファン 103 制御装置
105 層厚検知センサ 106 外気温度センサ
107 外気湿度センサ 108 吸気ボックス
108a 外気導入口 109 エアークリーナ
110 シーブ開度制御モータ 111 シーブ開度制御モータセンサ
112 選別ファン制御モータ 113 選別ファン制御モータセンサ
118,117 操作ロッド 119 ファン回転数制御モータ
120 後板 121 寄せ板
123 シーブ開度調整モータ 124 シーブ調整レバー
125 カウンタシャフト 126 シーブ開度調整ワイヤ
128 シーブ揺動用アーム 129 付勢スプリング
130 手動調整ダイヤル 134 伝動軸
135 フィードチェン駆動用ギア機構
141 スプリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
刈り取った穀稈を脱穀して被処理物を選別するシーブ(53)付きの揺動棚(51)と該揺動棚(51)から落下した穀粒と藁屑を風力選別する選別ファン(59a,88)とを備えた脱穀装置(15)において、
穀稈刈り取り時の外気の温度と湿度を検知する温度検知手段(106)と湿度検知手段(107)と揺動棚(51)上の被処理物の層厚を検知する検知手段(105)を設け、前記各検知手段(105〜107)の検知した値に応じて選別ファン(59a,88)の送風量、送風強さ、シーブ(53)の開度を変更して脱穀性能を調整することを特徴とする脱穀装置。
【請求項2】
外気温度検知手段(106)と外気湿度検知手段(107)を脱穀装置(15)と脱穀装置駆動用エンジン(21)の設置部から離れた箇所に設けた外気吸気部(108)に取り付けたことを特徴とする請求項1記載の脱穀装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2008−116(P2008−116A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−175795(P2006−175795)
【出願日】平成18年6月26日(2006.6.26)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】