説明

配線基板

【課題】実装される半導体チップの端子部の狭ピッチ化に対応した配線基板を提供する。
【解決手段】半導体チップが実装される配線基板1であって、厚さ方向に互いに並行して延在する複数の貫通孔11が形成された陽極酸化層12と、複数の貫通孔11のうち導体で充たすように設けられた線状導体部14、15、16とを備えている。線状導体部15は、一端部が端子部34と接合され、他端部が配線パターン18bと接合されている。また、線状導体部16は、一端部が端子部33と接合され、他端部が配線パターン18aと接合されている。線状導体部14は、一端部が端子部35と接合され、他端部が接続部22と接合されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線基板に関し、特に、半導体チップが実装される配線基板に適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2000−31621号公報(特許文献1)には、異方導電性基板に関する技術が開示されている。この異方導電性基板は、複数の同一または異なる種類の導通路が、互いに絶縁された状態で、かつ基板の厚み方向に貫通した状態で配置され、各導通部の両端が当該基板の裏表に露出している。
【0003】
特開2009−147241号公報(特許文献2)には、配線基板に関する技術が開示されている。この配線基板は、ポーラスアルミナ基板と、スルーホール導体と、基板の両面に設けられた絶縁層および配線とを有し、配線は少なくとも複数のスルーホール導体により互いに導電接続されている。
【0004】
特開2004−273480号公報(特許文献3)には、配線基板に関する技術が開示されている。この配線基板は、貫通孔が多数形成されている多孔質金属酸化膜からなる基板と、基板の電極が配置される位置に形成されている貫通孔の内部を埋め込む導電材料と、導電材料が埋め込まれた以外の貫通孔の内部を埋め込む絶縁材料とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−31621号公報
【特許文献2】特開2009−147241号公報
【特許文献3】特開2004−273480号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
半導体装置の小型化、高機能化に伴い、例えばペリフェラル状やアレイ状に配置された半導体チップの端子部も狭ピッチ化、微細化してきている。このように狭ピッチ化、微細化された端子部を有する半導体チップを、配線基板(実装基板)上に実装する場合、半導体チップの端子部(例えば、導電バンプ)と、それに対応する配線基板の端子部(例えば、接続パッド)とが直接接続(接合)される。
【0007】
このような配線基板では、端子部は、例えば、最上の配線層に形成されており、ここからある程度、半導体チップの端子部のピッチ変換が行われる。例えば、配線基板では、端子部が形成された配線層(配線)が引き回されて、接続部(例えば、ブラインドヴィア、貫通孔)を介して下層の配線層に展開され、配線基板の外部接続用の端子部と電気的に接続される。
【0008】
図1は、例えばアディティブ法やサブトラクティブ法によって形成された配線基板101に半導体チップ102が実装された状態を模式的に示す要部断面図である。半導体チップ102の端子部103(例えば、導電バンプ)が配線基板101の端子部104(例えば、接続パッド)と直接接続(接合)されて、配線基板101に半導体チップ102が実装されている。なお、半導体チップ102では、その内部回路に対応して、端子部103が、例えば、信号用、電源用、接地用となる。
【0009】
配線基板101は、絶縁層105によって互いに電気的に分離された配線層106a、106b、106cおよびそれら配線層間を電気的に接続する接続部107(例えば、ヴィア)を有し、最表面に形成された絶縁層108(例えば、ソルダレジスト)によって保護されている。この絶縁層108から露出する配線層106aの部分が端子部104として形成されている。なお、端子部104上には、端子部104の保護や、端子部103との接続性を向上する金属膜(図示しない)が形成される。
【0010】
この配線基板101では、配線層106aは端子部104から配線層106bと電気的に接続された接続部107まで引き回されて形成されている。さらに、接続部107からは、下層の配線層(例えば配線層106b、106cなど)や別の接続部によって展開されて外部接続用の端子部(図示しない)まで電気的に接続される。すなわち、配線基板101では、例えば、接続部107を形成することができる領域が確保されるまで、配線層106aが引き回される。
【0011】
このように、アディティブ法などによって形成された配線基板では、接続部(例えば、ヴィア、貫通孔)や端子部の加工能力によって、半導体チップの実装密度向上の妨げとなってしまうことがある。また、引き回した配線層を形成するために、工程数が増えてしまうことがある。さらに、これらの設計ルールによっては、各端子部(例えば、接続パッド)間のピッチにも制約が発生してしまい、配線基板の設計自由度が低減してしまうことがある。
【0012】
本発明の目的は、実装される半導体チップの端子部の狭ピッチ化に対応した配線基板を提供することにある。本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【0013】
なお、本発明者らは、発明した結果に基づき、半導体チップが実装される配線基板において、半導体チップの端子部のピッチと同一ピッチで線状あるいは柱状の導体が形成される観点、および陽極酸化によって形成された貫通孔に充填された導体を有する観点で先行技術調査を行った。その結果、特許文献1〜3が抽出された。
【0014】
特許文献1の技術は、細線に接着性絶縁材料からなる被覆層を形成した絶縁導線として、この絶縁導線を芯材にロール状に巻く工程を含んで基板が製造されるため、半導体チップの端子部のピッチと同一ピッチで導通路(導体)を形成することができないと考えられる。すなわち、特許文献1で開示されたような配線基板では、端子部が狭ピッチ化された半導体チップを実装することができない。
【0015】
また、特許文献2の技術は、陽極酸化によって形成された貫通孔に充填された導体を有する配線基板(回路基板)に対して、基板の両面に設けられた配線同士を安定して接続させるものである。このため、特許文献2の技術は、実装される半導体チップとの関係において配線基板が改良されたものではない。
【0016】
また、特許文献3の技術は、陽極酸化によって形成された貫通孔に充填された導体を有する配線基板に対して、導体間の短絡を防止するものである。このため、特許文献3の技術は、実装される半導体チップとの関係において配線基板が改良されたものではない。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0018】
半導体チップが実装される配線基板であって、厚さ方向に互いに並行して延在する複数の貫通孔が形成された陽極酸化層と、前記複数の貫通孔のうち導体で充たすように設けられた第1貫通導体部および第2貫通導体部と、前記陽極酸化層の第1面上に形成された第1絶縁層と、前記陽極酸化層の第1面とは反対側の第2面上に形成され、前記第1貫通導体部と電気的に接続された第1配線層と、前記第1配線層を覆うように前記第2面上に形成された第2絶縁層と、前記第2絶縁層上に形成され、前記第2貫通導体部と電気的に接続された第2配線層と、前記第2絶縁層に形成され、前記第2貫通導体部および前記第2配線層と電気的に接続された接続部と、前記第1絶縁層に前記陽極酸化層を露出して形成された複数の開口部と、前記複数の開口部のうち導体で充たすように設けられた第1端子部および第2端子部とを備えている。ここで、前記第1貫通導体部は、一端部が前記第1端子部と接合され、他端部が第1配線層と接合されており、前記第2貫通導体部は、一端部が前記第2端子部と接合され、他端部が前記接続部と接合されている構成を含む。なお、配線基板における「貫通導体」は、その形状が線状であるため、以下では「線状導体」として記す。
【発明の効果】
【0019】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば、実装される半導体チップの端子部の狭ピッチ化に対応した配線基板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明者らが検討した配線基板に半導体チップが実装された状態を模式的に示す要部断面図である。
【図2】本発明の一実施形態における配線基板を模式的に示す平面図である。
【図3】図2のX1−X1線における配線基板を模式的に示す断面図である。
【図4】図2のX2−X2線における配線基板を模式的に示す断面図である。
【図5】図2のX3−X3線における配線基板を模式的に示す断面図である。
【図6】本発明の一実施形態における配線基板に半導体チップが実装された半導体装置を模式的に示す断面図である。
【図7】本発明の一実施形態における製造工程中の実装基板の断面図である。
【図8】図7に続く製造工程中の配線基板の断面図である。
【図9】図8に続く製造工程中の配線基板の断面図である。
【図10】図9に続く製造工程中の配線基板の断面図である。
【図11】図10に続く製造工程中の配線基板の断面図である。
【図12】図11に続く製造工程中の配線基板の断面図である。
【図13】図12に続く製造工程中の配線基板の断面図である。
【図14】本発明の他の実施形態における配線基板を平面視したとき、端子部とそれに接続される第1および第2配線層との配置関係を説明するための図である。
【図15】図14に示す第1配線層の配置を説明するための図である。
【図16】図14に示す第2配線層の配置を説明するための図である。
【図17】本発明の他の実施形態における配線基板を平面視したとき、端子部とそれに接続される第1および第2配線層との配置関係を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する場合がある。
【0022】
(実施形態1)
まず、本実施形態における配線基板の構造について説明する。この配線基板は、端子部が狭ピッチ化された半導体チップが実装されるものである。
【0023】
図2は本実施形態における配線基板1の平面図、図3は図2のX1−X1線における配線基板1の断面図、図4は図2のX2−X2線における配線基板1の断面図、および図5は図2のX3−X3線における配線基板1の断面図である。また、図6は配線基板1に半導体チップ2が実装された半導体装置の断面図であり、図2のX1−X1線に対応したものである。
【0024】
配線基板1は、絶縁層17上に半導体チップ2が実装される実装領域3(図2では破線で示している。)を有している。この実装領域3内では、実装領域3の周囲に沿うように半導体チップ2の外部接続用の端子部36と接合される端子部4が配置されており、この端子部4が配線基板1の最表面(絶縁層17)から露出している。端子部4は、実装領域3で半導体チップ2のペリフェラル状の端子部36に対応して、ペリフェラル状に設けられている。
【0025】
図3〜図5に示すように、配線基板1は、厚さ方向に互いに並行して延在する複数の貫通孔11が形成された陽極酸化層12を備えている。陽極酸化層12は、配線基板1の基材として設けられている。このような陽極酸化層12は、例えば、金属としてアルミニウム(Al)を用いた場合、それを陽極酸化することによって、厚さ方向に互いに並行して延在する複数の貫通孔11を有する酸化アルミニウムから形成される。
【0026】
アルミニウムの陽極酸化では、アルミニウムの表面が電気化学的に酸化され、酸化アルミニウムの層が形成される。この陽極酸化では、電解液の種類、電圧、時間などの条件により、陽極酸化層12の厚さ、貫通孔11の径やピッチを調整することができる。
【0027】
例えば、陽極酸化層12の厚さ(貫通孔11の深さ)を70μm以上180μm以下とし、貫通孔11の径を30nm以上1000nm以下、貫通孔11のピッチを40nm以上1200nm以下とすることができる。このように、陽極酸化層12では、貫通孔11のアスペクト比(孔深さと孔径の比)は高いものとなっている。
【0028】
陽極酸化層12では、酸化アルミニウムの厚さ方向に互いに並行して延在する複数の貫通孔11のそれぞれに導体で充たすように設けられた複数の線状導体13が形成されている。この陽極酸化層12に形成された複数の線状導体13のうちの数本の線状導体13によって線状導体部14、15、16が構成されている。
【0029】
線状導体13は、前述した貫通孔11に導体が充たされてなるので、例えば、線状導体13の長さは70μm以上180μm以下、線状導体13の径は30nm以上1000nm以下、線状導体13のピッチを40nm以上1200nm以下とすることができる。
【0030】
また、配線基板1は、陽極酸化層12の主面(半導体チップ2が実装される側の面)上に形成された絶縁層17を備えている。この絶縁層17は、配線基板1(陽極酸化層12)の表面を保護する保護層となっている。このような絶縁層17は、例えば、エポキシ樹脂からなる。
【0031】
また、配線基板1は、陽極酸化層12の主面とは反対側の裏面上にパターニングして形成され、線状導体部15、16と電気的に接続された配線層18を備えている。この配線層18は、半導体チップ2の電源用の配線パターン18aと、接地(グラウンド)用の配線パターン18bとを構成している。このような配線層18は、例えば、スパッタリングによって形成された銅(Cu)などの導体からなる。なお、配線層18は、めっき法によって形成しても良い。
【0032】
また、配線基板1は、配線層18を覆うように陽極酸化層12の裏面上に形成された絶縁層21を備えている。この絶縁層21は、陽極酸化層12の裏面を保護する保護層となっている。このような絶縁層21は、例えば、エポキシ樹脂からなる。
【0033】
また、配線基板1は、絶縁層21上にパターニングして形成された配線層23を備えている。この配線層23は、半導体チップ2の電源用の配線パターン23aと、接地用の配線パターン23bと、信用号の配線パターン23cとを構成している。このような配線層23は、例えば、スパッタリングによって形成された銅(Cu)などの導体からなる。なお、配線層23は、めっき法によって形成しても良い。
【0034】
陽極酸化層12に形成された複数の線状導体13のうちの数本の線状導体13によって形成された線状導体部14は、絶縁層21に形成された接続部22を介して配線層23の配線パターン23cと電気的に接続されている(図3参照)。接続部22は、例えば、レーザによるドライエッチングによって絶縁層21に形成された接続孔に、例えば、めっきによって形成された銅(Cu)などの導体からなる。なお、本実施形態では、接続部22は、線状導体部14と直接接続(接合)されているが、配線層18をパターニングしてなる配線パターンを介して線状導体部14と接続されても良い。
【0035】
この接続部22と同様に、絶縁層21には、接続部24、25が形成されている。接続部24は、配線層18の配線パターン18bと、配線層23の配線パターン23bと接合されている(図4参照)。また、接続部25は、配線層18の配線パターン18aと、配線層23の配線パターン23aと接合されている(図5参照)。
【0036】
また、配線基板1は、配線層23を覆うように絶縁層21に形成された絶縁層26を備えている。この絶縁層26は、配線基板1の裏面表面を保護する保護層となっている。このような絶縁層26は、例えば、エポキシ樹脂からなる。
【0037】
また、配線基板1は、その裏面側で、絶縁層26に形成された開口部27に設けられた端子部28を備えている。端子部28は、配線基板1が外部(例えば、他の配線基板)との接続のために設けられたものである。端子部28は、例えば、めっきによって形成された銅(Cu)などの導体からなる。なお、半導体装置を他の配線基板に実装するために、端子部28上に外部接続用の端子部31が設けられても良い(図6参照)。
【0038】
また、配線基板1は、その主面側で、絶縁層17に陽極酸化層12を露出して形成される複数の開口部32と、この複数の開口部32のうち導体で充たすように設けられた端子部4とを備えている。端子部4は、例えば、配線基板1において半導体チップ2をフリップチップ実装する際に、半導体チップ2の外部接続用の端子部36と接合されるものである。
【0039】
この端子部4は、半導体チップ2の電源用の端子部33と、接地用の接続電極34と、信用号の端子部35とを構成している。このような端子部4は、例えば、めっきによって形成された銅(Cu)などの導体からなる。
【0040】
このような配線基板1において、線状導体部14は、一端部が端子部35と接合され、他端部が接続部22と接合されている(図3参照)。すなわち、端子部35および接続部22に対して、複数の線状導体13が束になって接合されている。このため、端子部35と接続部22とを電気的に接続する線状導体13は、いわゆるヴィア(Via)としての機能を有しているといえる。また、端子部35、線状導体部14、接続部22は、配線基板1(陽極酸化層12)の平面視で同位置に設けられていることとなる。
【0041】
また、配線基板1において、線状導体部15は、一端部が端子部34と接合され、他端部が配線層18の配線パターン18bと接合されている(図4参照)。すなわち、端子部34および配線パターン18bに対して、複数の線状導体13が束になって接合されている。このため、端子部34と配線パターン18bとを電気的に接続する線状導体13は、いわゆるヴィア(Via)としての機能を有しているといえる。また、端子部34、線状導体部15は、配線基板1(陽極酸化層12)の平面視で同位置に設けられていることとなる。
【0042】
また、配線基板1において、線状導体部16は、一端部が端子部33と接合され、他端部が配線層18の配線パターン18aと接合されている(図5参照)。すなわち、端子部33および配線パターン18aに対して、複数の線状導体13が束になって接合されている。このため、端子部33と配線パターン18aとを電気的に接続する線状導体13は、いわゆるヴィア(Via)としての機能を有しているといえる。また、端子部33、線状導体部16は、配線基板1(陽極酸化層12)の平面視で同位置に設けられていることとなる。
【0043】
本実施形態では、線状導体13は、陽極酸化層12の面内において、径が30nm以上1000nm以下で、ピッチが40nm以上1200nm以下のように設けることができる。すなわち、陽極酸化層12の面内において、多数の線状導体13がその直径よりも小さなピッチ(間隔)で相互に並行に密に配置されている。このような陽極酸化層12を用いることによって、配線基板1は高密度化された半導体実装基板を実現することができる。すなわち、配線基板1は実装される半導体チップ2の端子部36の狭ピッチ化に対応したものとすることができる。
【0044】
図1で示した配線基板101は、実装される半導体チップ102の狭ピッチ化された端子部103や、配線基板101の接続部107の設計寸法などを考慮して、例えば、端子部104と接続部107との間で配線層106a(配線)を引き回す構造となっている。これは半導体チップ102の端子部103のピッチを変換するためでもある。
【0045】
この点において、本実施形態で示す配線基板1では、配線層を引き回す構造ではない。これは、配線基板1では、厚さ方向に互いに並行して延在する複数の線状導体13が密に形成されているので、配線基板1の端子部4(33、34、35)と接合した線状導体13自体がヴィアとなり、ピッチ変換をしなくとも接続部22、24、25を構成することができるからである。
【0046】
このため、図1で示した配線基板101より、配線基板1の内部では配線距離を短くすることができる。また、配線距離を短くすることでインダクタンス成分も減少するので、配線基板1では、例えば、高周波特性に優れた半導体チップ2を実装することもできる。
【0047】
次に、本実施形態における配線基板の製造方法について、図7〜図11および図3を参照して説明する。なお、図7〜図11は製造工程中の配線基板を模式的に示す断面図であり、図3と同様に図2のX1−X1線に対応したものである。
【0048】
図7に示すように、金属を陽極酸化することによって、厚さ方向に互いに並行して延在する複数の貫通孔11が密に形成された陽極酸化層12を準備する。金属としてアルミニウム(Al)を用いた場合、それを陽極酸化することによって陽極酸化層12として無機絶縁層である酸化アルミニウムが形成されることとなる。
【0049】
このような陽極酸化層12の形成について具体的に説明する。まず、例えば、アルミニウム板の一方を絶縁被膜したものを用意し、このアルミニウム板の表面を洗浄する。次いで、硫酸水溶液やシュウ酸水溶液などの電解液中にそのアルミニウム板を浸漬させて陽極とし、また、これに対向して配置される白金(Pd)板を陰極として通電(パルス電圧を印加)することで、アルミニウム板の表面に多孔質層(貫通孔11となる)を形成することができる。
【0050】
次いで、例えば切断することによって、残存するアルミニウム板から孔が貫通するように多孔質層を分離する。これによって、厚さ方向に延在する多孔、すなわち複数の微細な貫通孔11が形成された陽極酸化層12が得られる。
【0051】
続いて、図8に示すように、複数の貫通孔11のそれぞれに導体を充填することによって、複数の線状導体13を形成する。その後、陽極酸化層12の表面平坦性や、線状導体13の長さの均一性を確保するため、陽極酸化層12の表面を研磨する。
【0052】
例えば、陽極酸化層12の片側面に電極を設けた電解めっき法によって、微細な貫通孔11にも導体を充填することができ、その導体を含んでなる線状導体13を形成することができる。導体としては、電気伝導性、耐食性などを考慮して、銅(Cu)、ニッケル(Ni)などが用いられる。
【0053】
これにより、厚さ方向に互いに並行して延在する複数の線状導体13が設けられた陽極酸化層12が形成される。なお、陽極酸化層12の耐食性を向上するために、貫通孔11の内部をバリア膜で覆った後、銅などの導体を充填しても良い。
【0054】
このように、陽極酸化層12には、複数の線状導体13が形成される。このため、陽極酸化層12を備えた配線基板1は、一般的な多層配線基板に比べて熱伝導性が高いものとなる。
【0055】
続いて、図9に示すように、陽極酸化層12の主面上に絶縁層17を形成した後、絶縁層17に陽極酸化層12の表面を露出する複数の開口部32を形成する。絶縁層17は、例えばエポキシ樹脂を塗布、加熱することによって形成される。開口部32は、例えばドライエッチングによって絶縁層17に形成される。なお、複数の開口部32のそれぞれからは、複数の線状導体13の端部表面が露出することとなる。
【0056】
続いて、図10に示すように、開口部32に導体を埋め込んで端子部4を形成する。端子部4は、例えばめっき法によって開口部32に銅を埋め込んで形成される。この端子部4は、半導体チップ2の実装時に(図6参照)、半導体チップ2の端子部36と接合されるため、端子部36のピッチに対応したピッチで形成される。
【0057】
また、端子部4が形成されることによって、開口部32で露出している線状導体13の端部と端子部4は接続されることとなる。なお、前述したが、端子部4の面内位置が定められることによって、線状導体部14、15、16(ヴィア)の位置を任意に選択されることとなる。
【0058】
一方、図11に示すように、陽極酸化層12の裏面上に配線層18を形成する。配線層18は、例えば、銅(Cu)などの導体をスパッタリングすることによって、形成される。このスパッタリングの際、マスクを用いることによって、配線パターン18a、18bが形成される。これにより、配線パターン18a、18bは、線状導体13と接合される。なお、配線層18は、めっき法によって形成しても良い。
【0059】
続いて、図12に示すように、配線層18を覆うように陽極酸化層12の裏面上に絶縁層21を形成する。絶縁層21は、例えばエポキシ樹脂を塗布、加熱することによって形成される。次いで、絶縁層21に陽極酸化層12の表面を露出する複数の開口部37aを形成する。また、絶縁層21に配線層18の表面を露出する複数の開口部37bを形成する。開口部37a、37bは、例えばドライエッチングによって絶縁層21に形成される。
【0060】
次いで、開口部37a、37bに導体を埋め込んで接続部22、24を形成する。接続部22、24は、例えばめっき法によって開口部37a、37bに銅を埋め込んで形成される。これにより、接続部22は、線状導体13と接合され、接続部24は、配線層18と接合される。なお、同様にして、絶縁層21に配線層18の表面を露出する複数の開口部を形成し、その開口部に導体を埋め込んで、接続部25が形成される(図5参照)。
【0061】
続いて、図13に示すように、絶縁層21上に配線層23を形成する。配線層23は、例えば、銅(Cu)などの導体をスパッタリングすることによって、形成される。このスパッタリングの際、マスクを用いることによって、配線パターン23b、23cが形成される。これにより、配線パターン23bは、接続部24と接合され、配線パターン23cは、接続部22と接合される。なお、同様にして、配線パターン23aも形成される(図5参照)。また、配線層23は、めっき法によって形成しても良い。
【0062】
続いて、図3に示すように、配線層23を覆うように絶縁層21上に絶縁層26を形成し、絶縁層26に配線層23の表面を露出する複数の開口部27を形成した後、開口部27に導体を埋め込んで端子部28を形成する。この工程は、図12を参照して説明した工程と同様の工程を用いることができる。
【0063】
このようにして、配線基板1を製造(形成)することができる。本実施形態では、端子部35および接続部22は、陽極酸化層12(配線基板1)の平面視で同位置となるようにしている。このため、端子部35が形成される開口部32および接続部22が形成される開口部37は、同じフォトマスクを用いることができる。このため、配線基板1を形成するにあたり製造コストを低減することができる。
【0064】
また、配線基板1では、端子部4の面内位置が定められることによって、接続部22、24、25(ヴィア)の位置を任意に選択できる。言い換えると、配線基板1において、端子部4の位置が定まれば、その面内で接続部22、24、25の位置を定める必要がない。
【0065】
このため、接続部22、24、25の設計において、配線基板1の設計自由度を向上することができる。また、端子部4を形成すれば接続部22、24、25も形成されることとなるので、配線基板1の製造時間を短縮することができ、また、工程数を減らすことができる。この点においては、図1で示したような配線基板101よりは、配線基板1を安価に製造することができる。
【0066】
また、配線基板1は、配線基板101のように配線層を引き回して、その先に接続部が形成される構造ではないため、高額なフォトマスクを用いる必要もなく、製造コストを低減することができる。すなわち、本実施形態によれば、半導体チップを実装する配線基板を安価に提供することができる。
【0067】
その後、配線基板1を用いて図6に示すような半導体装置を製造することができる。例えば、半導体チップ2が実装される実装領域3(図2参照)に、配線基板1(絶縁層17)上に半導体チップ2を実装する。この際、半導体チップ2の端子部36と配線基板1の端子部4とが接合される。次いで、配線基板1と半導体チップ2との間に、絶縁性の接着樹脂38を注入する。
【0068】
このようにして形成された半導体装置は、例えば、配線基板1の端子部4(35、34、33)が、配線基板1の平面視で、線状導体部14、15、16と同位置となるため、小型化を図ることができる。また、前述したように、半導体チップ2を実装する配線基板1を安価に提供することができるので、半導体装置の製造コストを低減することができる。
【0069】
(実施形態2)
本実施形態では、実装される半導体チップ2の端子部36の狭ピッチ化に対応するための、配線基板1の配線パターン(配線層18、23)について説明する。なお、前記実施形態1と重複する説明は省略する場合がある。
【0070】
図14は配線基板1を平面視したとき、端子部4とそれに接続される配線層18および配線層23との配置関係を説明するための図である。図15は図14に示す配線層18の配置を説明するための図であり、図16は14に示す配線層23の配置を説明するための図である。なお、説明を容易にするために、図14では端子部4に、図15では配線層18および接続部22に、図16では配線層23にハッチングを付している。
【0071】
配線基板1では、図14に示すように、配線基板1の端子部4のうち、端子部33は半導体チップの電源用の端子部と接合されるものであり、端子部34は半導体チップの接地用の端子部と接合されるものである。また、配線基板1の端子部4のうち、端子部35は半導体チップの信号用の端子部と接合されるものである。
【0072】
配線基板1では、図15に示すように、配線層18が配線基板1面に広がってパターニング(ベタにパターニング)されている。この配線層18のうち、電源用の配線パターン18aがベタにパターニングされており、接地用の配線パターン18bもベタにパターニングされている。また、配線基板1では、図16に示すように、配線層23うち、信号用の配線パターン23cが接続部22から基板外側へ引き回されるようにパターニングされている。
【0073】
配線基板1に実装される半導体チップの動作周波数がマイクロ波の場合、例えば、図14に示したように、接地用の配線パターン18b上に、信号用の配線パターン23cが配置されてマイクロストリップラインが構成される。本実施形態では、配線パターン18bが形成される配線層18と、配線パターン23cが形成される配線層23とは別の層であるため、接地用の配線パターン23cからの信号用の配線パターン23cとの距離をある程度の間隔を保つことができ、特性インピーダンスの影響を低減することができる。
【0074】
また、半導体チップの動作周波数が高くなると、信号用の線幅が影響してくる。この点、配線基板1では、狭ピッチ化、微細化された半導体チップの端子部に対して、そのままの配置で線状導体部14を形成できる。すなわち、配線基板1では、微細な線状導体部14に対応した配線パターン23cを形成することができるので、半導体チップの動作周波数が高い場合でも、対応することができる。
【0075】
また、ベタ状に形成された接地用の配線パターン18bが、線状導体13と接続していることにより、信号用の配線パターン23cを含む信号線の周囲を外部ノイズからシールドする効果を得ることができる。
【0076】
また、図14に示すように、配線基板1では、信号用の端子部35は、電源用の端子部33と接地用の端子部34とに交互に配置されており、端子部35および端子部33、34が交互に配置されてペリフェラル状に配置されている。また、図15に示すように、接続部22が、パターニングされた配線層18(配線パターン18a、18b)で囲まれている。また、配線層18は、ペリフェラル状に設けられた端子部4で囲まれる領域内側に電源用の配線層(配線パターン18a)がベタにパターニングされており、領域外側に接地用の配線層(配線パターン18b)がベタにパターニングされている。
【0077】
また、信号用の、端子部35および接続部22に対して、線状導体部14の一端部および他端部が接合されている。また、電源用の、端子部33および配線パターン18aに対して、線状導体部16の一端部および他端部が接合されている。また、接地用の、端子部34および配線パターン18bに対して、線状導体部15の一端部および他端部が接合されている。
【0078】
配線基板1は、狭ピッチ化された端子部を有する半導体チップに対応して、配線基板1の端子部4も狭ピッチ化されたものとなる。このため、信号用の端子部4(端子部35)と接合される線状導体部14においては、信号間の容量結合が増加し、クロストークしてしまうことも考えられる。そこで、図15に示すように、線状導体部14と接合される接合部22を、電源用の配線パターン18aおよび接地用の配線パターン18bで囲むことによって、信号間の容量結合を低減している。また、各線状導体部14間に接地用の配線パターン18bが突き出した形状とすることもできる。
【0079】
なお、本実施形態では、配線基板1のペリフェラル状に設けられた端子部4が直線状に配置された場合について説明したが、千鳥状に配置されても良い。図17は配線基板1を平面視したとき、千鳥状に配置された端子部4とそれに接続される配線層18および配線層23との配置関係を説明するための図である。
【0080】
図17に示すような配線基板1の端子部4を千鳥配置することで、端子部が千鳥状に配置された半導体チップを実装することができる。陽極酸化層12に形成された線状導体13をヴィアのような接続部として用いることで、千鳥配置による実装密度を向上する効果を得ることができる。
【0081】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0082】
例えば、前記実施の形態では、フリップチップ接続される半導体チップに適用した場合について説明したが、さらにワイヤボンドされる半導体チップにも適用することができる。例えば、半導体チップの裏面(配線基板に実装される側の表面)では電源用または接地用の端子部がペリフェラル状に配置し、主面(半導体素子形成面)では信号用の端子部が配置された半導体チップにも適用することができる。
【0083】
また、例えば、絶縁層17と陽極酸化層12との間であって、電源用の配線パターン18a(ベタパターン)の形成領域に対応した箇所に、金属層(ベタパターン)を形成しても良い。これにより、電源配線に用いられる金属量が増加し、より多くの電流を流すことができることとなる。また、通電による発熱も抑制する効果がある。
【符号の説明】
【0084】
1 配線基板
2 半導体チップ
3 実装領域
4 端子部
11 貫通孔
12 陽極酸化層
13 線状導体
14、15、16 線状導体部
17 絶縁層
18 配線層
18a、18b 配線パターン
21 絶縁層
22 接続部
23 配線層
23a、23b、23c 配線パターン
24、25 接続部
26 絶縁層
27 開口部
28 端子部
31 端子部
32 開口部
33、34、35 端子部
36 端子部
37a、37b 開口部
38 接着樹脂
101 配線基板
102 半導体チップ
103 端子部
104 端子部
105 絶縁層
106a、106b、106c 配線層
107 接続部
108 絶縁層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体チップが実装される配線基板であって、
厚さ方向に互いに並行して延在する複数の貫通孔が形成された陽極酸化層と、
前記複数の貫通孔のうち導体で充たすように設けられた第1貫通導体部および第2貫通導体部と、
前記陽極酸化層の第1面上に形成された第1絶縁層と、
前記陽極酸化層の第1面とは反対側の第2面上に形成され、前記第1貫通導体部と電気的に接続された第1配線層と、
前記第1配線層を覆うように前記第2面上に形成された第2絶縁層と、
前記第2絶縁層上に形成され、前記第2貫通導体部と電気的に接続された第2配線層と、
前記第2絶縁層に形成され、前記第2貫通導体部および前記第2配線層と電気的に接続された接続部と、
前記第1絶縁層に前記陽極酸化層を露出して形成された複数の開口部と、
前記複数の開口部のうち導体で充たすように設けられた第1端子部および第2端子部とを備えており、
前記第1貫通導体部は、一端部が前記第1端子部と接合され、他端部が第1配線層と接合されており、
前記第2貫通導体部は、一端部が前記第2端子部と接合され、他端部が前記接続部と接合されている構成を含むことを特徴とする配線基板。
【請求項2】
請求項1記載の配線基板において、
前記第1端子部は、前記半導体チップの電源用または接地用の端子部と接合されるものであり、
前記第2端子部は、前記半導体チップの信号用の端子部と接合されるものであり、
前記第1配線層は、電源用または接地用の配線層としてベタにパターニングされており、
前記第2配線層は、信号用の配線層として前記接続部から基板外側へ引き回されるようにパターニングされていることを特徴とする配線基板。
【請求項3】
請求項2記載の配線基板において、
前記接続部が、パターニングされた前記第1配線層で囲まれていることを特徴とする配線基板。
【請求項4】
請求項3記載の配線基板において、
前記第1絶縁層上に前記半導体チップの実装領域が設けられており、
前記第1および第2端子部は、前記実装領域でペリフェラル状に設けられていることを特徴とする配線基板。
【請求項5】
請求項4記載の配線基板において、
前記第1配線層は、ペリフェラル状に設けられた前記第1および第2端子部で囲まれる領域内側に前記電源用の配線層がベタにパターニングされており、領域外側に前記接地用の配線層がベタにパターニングされていることを特徴とする配線基板。
【請求項6】
請求項4または5記載の配線基板において、
ペリフェラル状に設けられた前記第1および第2端子部が千鳥状に配置されていることを特徴とする配線基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2011−181642(P2011−181642A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−43715(P2010−43715)
【出願日】平成22年3月1日(2010.3.1)
【出願人】(000190688)新光電気工業株式会社 (1,516)
【Fターム(参考)】