説明

電源装置およびその製造方法

【課題】電源パック支持体上に複数積層した電源パックを強固に固定する電源装置を提供する。
【解決手段】二次電池又はキャパシタを収納し、互いに対向する辺部に貫通孔を形成した扁平型電源パックと、前記扁平型電源パックを複数積層して支持する電源パック支持体と、前記電源パック支持体に立設した電源パック固定用柱部と、前記電源パック固定用柱部に前記貫通孔を通して複数積層した扁平型電源パックを、前記電源パック支持体に押し付けるように、前記電源パック固定用柱部に形成した係止部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、扁平型電源パックを複数積層した電源装置及びその製造方法に関し、特に複数積層した扁平型電源パックを固定する構造を備える電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
大容量電源装置を構成するため、ラミネートフィルムで被覆された扁平型電池を複数積層する構造が公知である。例えば特許文献1は、電源端子を挟むラミネートフィルムの熱融着部を、その上下に設けた挟掴部により固定する構造を開示している。また特許文献2は、二次電池を内蔵するラミネートフィルムの1辺に2箇所、または2辺に1箇所電気機器との固定用開孔部または溝部を設け、この開孔部または溝部に対応する位置に電気機器に突起を設ける構造を開示している。また特許文献3は、発電要素を外装材に封止すると共に電極端子を外装材から外部に導出してなる扁平型電池を複数積層し、電極端子の両面側から電極端子を挟持するスペーサを設け、このスペーサに積層方向に沿って電極端子を貫通して電極端子を係止する係止手段を有する構造を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−63278号公報
【特許文献2】特開2003−132865号公報
【特許文献3】特開2006−210312号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の発明によれば、ラミネートフィルムで被覆された電池のシール性を高め、耐久性が向上した電池が提供される。また特許文献2の発明によれば、電池使用機器にラミネートフィルムで被覆された電池を安価で容易に精度よく固定することができる。また特許文献3の発明によれば、振動が加わった場合、スペーサによって電極端子の振動が抑制され、組電池の耐久性を向上させることができる。またスペーサによって電極端子間が絶縁されるので、距離を小さくすることができ、組電池をコンパクトにできる。
しかしながら、特許文献1及び2の発明は、金属容器を使用せずに発電要素を収納したラミネートフィルムのままでもシール性を向上させようとするものであり、金属容器を使用した場合のような強度を得ることができない。また特許文献2の発明は、樹脂ケースを使用せずに発電要素を収納したラミネートフィルムのままで電池使用機器に固定するものであり、樹脂ケースを使用した場合のように強固に固定することができない。また特許文献3の発明は、組電池を構成するものであり、この組電池を金属ケースまたは樹脂ケースに収納しなければならない。
【0005】
本発明は、上記のような課題を解決するものであり、電源パック支持体上に複数積層した電源パックを強固に固定する電源装置を提供することを目的とする。また、このような電源装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る電源装置は、上記課題を解決するために、二次電池又はキャパシタを収納し、互いに対向する辺部に貫通孔を形成した扁平型電源パックと、前記扁平型電源パックを複数積層して支持する電源パック支持体と、前記電源パック支持体に立設した電源パック固定用柱部と、前記電源パック固定用柱部に前記貫通孔を通して複数積層した扁平型電源パックを、前記電源パック支持体に押し付けるように、前記電源パック固定用柱部に形成した係止部とを備える。
これにより、複数積層した電源パックが電源パック支持体上に強固に固定され、積層した電源パックが積層ずれを生じることがない。また極めて簡単な構造であるので、複数の電源パックを安価に確実に固定することができる。
【0007】
本発明の実施形態においては、前記電源パック固定用柱部は断面形状がトラック状であり、前記貫通孔はトラック状貫通孔である。
また、本発明の実施形態においては、前記電源パック固定用柱部のトラック状の断面形状の長軸方向と、前記トラック状貫通孔の長軸方向が扁平型電源パックの辺部と同方向である。
これにより、電源パックの振動をトラック状電源パック固定用柱部の長軸方向で受けるので、電源装置の安定性が向上する。
【0008】
本発明の実施形態においては、前記複数の扁平型電源パックを積層する際に、前記電源パック固定用柱部にトラック状貫通孔を通して各扁平型電源パックの辺部の間にそれぞれスペーサを挟む構成であって、前記扁平型電源パックの辺部に形成したトラック状貫通孔の長軸方向の長さrと、前記スペーサに形成したトラック状貫通孔の長軸方向の長さsと、前記断面形状がトラック状の電源パック固定用柱部の長軸方向の長さtの関係が
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である。
これにより、電源装置の安全性が向上し、また電源パック固定用柱部は樹脂製でも金属性でも使用することが可能になる。
また本発明の実施形態においては、前記スペーサに弾力性樹脂を貼り付けたことを特徴とする。
これにより、押え部材の抜け留めと締め付け強度を大きくすることができる。
【0009】
本発明の実施形態においては、前記扁平型電源パックは、二次電池又はキャパシタを収納するラミネートフィルムと、前記扁平型電源パックの互いに対向する辺部に前記ラミネートフィルムより一部を露出させた正極端子及び負極端子と、前記扁平型電源パックの辺部において前記正極端子または負極端子の両側に前記貫通孔を有するものである。
これにより、複数積層した電源パックを安定に固定することができる。また、正極端子及び負極端子とラミネートフィルムの密着性を向上し、電源装置の安定性、安全性が向上する。
【0010】
本発明の実施形態においては、前記電源パック固定用柱部は、上方部に溝を備え、前記押え部材が前記溝に嵌合することにより係止されるものである。
これにより、極めて簡単な構造で、簡単な作業で非常に強固に固定することができると共に、溝の位置により積層した電源パックの押し付け強さを決めることができる。
【0011】
また、本発明は別の観点によれば、電源装置の製造方法であって、電源パックを複数積層して支持する電源パック支持体に、互いに対向する辺部位置に電源パック固定用柱部を立設する工程と、前記電源パック固定用柱部に、二次電池又はキャパシタを収納する扁平型電源パックの辺部に形成された貫通孔を通して、前記電源パック支持体上に前記複数の扁平型電源パックを積層する工程と、前記複数の電源パックを通した前記電源パック固定用柱部の上方部に、前記複数の積層された扁平型電源パックを押し付けるように押え部材を係止する工程とを備える。
これにより、簡単な作業手順により複数の電源パックを電源ケースに安定して積層することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、電源パック支持体上に複数積層した電源パックを強固に固定する電源装置を提供することができる。また、このような電源装置の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の電源装置の説明図を示す。
【図2】電源パック固定用柱部の構成を説明する図を示す。
【図3】電源パックの構成図を示す。
【図4】電源端子を説明する図を示す。
【図5】電源パック固定用柱部と、スペーサの貫通孔と、電源パックの貫通孔の関係を説明する図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の電源装置について説明する。
この電源装置の一例としてリチウムイオン二次電池を図1に示すが、他の二次電池やキャパシタにも適用可能である。図1は本発明の電源装置の概略構成を説明するための構成図を示す。
図1に示すように、本発明の電源装置は、電源パック支持体として電源ケース1の底内壁1aに電源パック固定用柱部2を立設し、この電源パック固定用柱部2に電源パック3に形成された貫通孔4を通し、各電源パック3の間にそれぞれスペーサ5を挟みながら積層することにより、構成される。
【0015】
電源ケース1は電源装置の機械的強度を大きくし、軽量、不燃性の観点からアルミニウムやステンレスのような金属が望ましいが、比較的機械的強度が大きく、難燃性の高い樹脂であってもかまわない。電源ケース1は、いわゆる箱型を形成するが、図1は電源パックを複数積層する構成を示すため、底内壁1aだけを示す。この電源ケース1の底内壁1aに電源パック固定用柱部2を4つ立設する。この図では電源ケース1の底内壁1aに直接電源パック固定用柱部2を立設する構造を示すが、この構造に代えて、電源ケースに収納される電源パック載置板に電源パック固定用柱部を立設してもよい。電源パック載置板を使用する場合は、複数の電源パックが電源パック載置板上に積層され、それを電源ケースに収納する。電源パック載置板の組成としてはポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、フェノール樹脂等が適している。
本発明では、上記底内壁及び電源パック載置板を合わせて、電源パック支持体と言っている。
【0016】
電源ケース1の底内壁1aに立設する電源パック固定用柱部2は、例えば、長方形の電源パック3の互いに対向する短辺側に2箇所ずつ、従って4つ(2a、2b、2c、2d)設ける。図1の例は電源パックの互いに対向する短辺側に電源パック固定用柱部2を立設したが、互いに対向する長辺側であってもよい。電源パック固定用柱部2は、断面形状が、陸上競技に使用されるトラックのような実質的に平行な2本の直線とそれらをつなぐ2つの半円形の曲線とからなる形状、または楕円形状、長円形状のように、長軸方向と短軸方向とを有する形状に形成される。本発明では、このような形状をトラック状と言う。そして、長軸方向が電源パック3の長辺方向にほぼ垂直方向になるように配置することが好ましい。つまり、電源パック固定用柱部2のトラック状の断面形状の長軸方向及び扁平型電源パック3の辺部に有するトラック状貫通孔4の長軸方向が扁平型電源パックの辺部に実質的に平行である。電源パック固定用柱部の組成としてはポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、フェノール樹脂等が適している。
【0017】
電源パック固定用柱部2を電源ケース1の底内壁1aに立設するため、図2に示すようにトラック状電源パック固定用柱部2の長軸方向に2箇所、例えば焦点付近の位置に対応して、底内壁1aにネジ穴8a、8bを形成する。このネジ穴8a、8bにネジ9a、9
bを通して、電源パック固定用柱部2に締め付けることにより、電源ケース1の底内壁1aに固定する。ネジ9a、9bを電源パック固定用柱部2に締め付けるために、電源パック固定用柱部2に雌ネジを形成するとより強固に固定することができる。
このようにして、電源ケース1の底内壁1aに電源パック固定用柱部2を垂直に立設することが可能であるが、嵌め合わせ構造であってもよい。電源パック固定用柱部2は底内壁1aに対して必ずしも垂直である必要はなく、複数の電源パック3が積層でき、振動が
加わった場合にも積層ずれが生じないのであれば、多少傾いてもよい。また電源パック3に同じ位置に貫通孔4が形成され、電源パック固定用柱部2に貫通孔4を貫通させて積層した場合に、積層ずれが生じないのであれば、多少傾いてもかまわない。
【0018】
電源パック固定用柱部2の上方から積層した電源パック3が抜けないように、かつ上方より積層した電源パック3を押し付けるように電源パック固定用柱部2の上方部に嵌合溝21を形成する。即ち、嵌合溝21の形成位置は、底内壁面から積層した電源パック3の辺部の厚さの合計と、各電源パック3の辺部の間に挿入する前の状態の各スペーサ5厚さの合計とを合わせた合計厚さより、各スペーサ5の弾性力により復元する合計厚さ分だけ少ない位置にする。
この溝21に対して、押え部材7が嵌め合わせられる。押え部材7は、溝21の幅より薄い厚さを有し、電源パック固定用柱部2の長軸方向から嵌められる。押え部材7はU字型に形成され、その先端部には戻り7aが形成されているので、溝21に嵌まると、抜け難い構造となっている。そして溝21から押え部材7を抜くには、先端を広げると抜き取ることができる。上記構成は、押え部材7が溝21に嵌まる構造であるが、この構造は、例えば電源パック固定用柱部の所定位置に穴を形成し、この穴にピンまたは棒が挿入される構造であってもよい。
【0019】
電源パック3は、発電要素(図示しない)の両面に発電要素の周囲でラミネートフィルム11を融着して、構成される。この電源パック3は、例えば幅が260mm、長さが420mm、厚さが3mmである。ラミネートフィルム11は、アルミフィルム12の外側面に外装樹脂13として、例えばナイロンを貼り付け、内側面に内装樹脂14を貼り付けてなる。内装樹脂14としては、融点が低く、密着性がよい、例えばポリプロピレンフィルムが適している。ラミネートフィルム11は、発電要素の両面に重ねて、その周囲を貼り合わせてもよいし、1枚のラミネートフィルムの中央部分を折り曲げて、先端部分を貼り合わせるようにしてもよい。融着はシーラーを使用する。このようにして、融着することにより、電源パック3内に水分が浸入するのを防止する。また、シーラーで融着する際にラミネートフィルムの外側面に微細な凹凸構造を持たせることができる。これによりスペーサ5との摩擦係数が改善され電源パックの固定力がより強固なものにできる。ラミネートフィルム外側面の凹凸ギャップは0.001〜0.1mmであるのが好ましい。
電源パック3は、図1に示すように長方形の平板状であってもよいが、図3に示すように電源パック3の両側の長辺部分3aを電源パックの厚さ程度の幅で垂直に折り曲げてもよい。あるいは長辺部分3aを折り畳むようにしてもよい。このように折り曲げ部分3aを形成することにより、電源パック3の長辺端で、ラミネートフィルムを構成するアルミフィルム12が電源装置の外側に露出するのを防止する。また折り曲げることにより、平板状電源パックの機械的強度を大きくし、振動吸収の役割を果たす。しかし、図1のように平板状にする場合は、折り曲げ工程がなくなると共に、電源装置を薄型に形成することが可能である。
【0020】
電源パック3は、図4に示すように正極端子16または負極端子(17)が導出される。正極端子16は、例えば幅が30mm、長さが15mm、厚さが100μmのアルミ板を用い、負極端子(17)は、例えば幅が30mm、長さが15mm、厚さが100μmのニッケル板を用いた。正極端子16または負極端子(17)は、長方形状の電源パックの互いに対向する短辺ほぼ中央部より導出される。
ラミネートフィルム11を発電要素(図示しない)の両面に重ね、発電要素の周囲でラミネートフィルム11を融着する際、正極端子16または負極端子(17)が導出されない部分では、ラミネートフィルム11は、内装樹脂14同士が接着するので、強固であるが、正極端子16または負極端子(17)が導出される部分では金属と樹脂が接着するので、一般に接着性が悪い。そのため正極端子16または負極端子(17)の導出部では、接着性を改善する樹脂15を挟む。接着性改善樹脂15としては、代表的には変性ポリプロピレンが使用される。
この例では、正極端子16と負極端子(17)は、長方形状の電源パックの互いに対向する短辺より導出されるが、互いに対応する長辺でもよい。また両方の端子を1つの短辺または1つの長辺より導出してもよい。
【0021】
本発明では、電源パック3の辺部において、正極端子16または負極端子(17)の両側に貫通孔4a、4b、また4c、4dを設ける。貫通孔4は、電源パック固定用柱部2の形状に対応してトラック状に形成される。ここで「電源パックの辺部」とは、電源パックを構成するラミネートフィルムが内側面で融着する等の方法で貼り合わせられた部分であって、貫通孔を形成しても電源パック内の電解液等が漏出することがない部分をいう。貫通孔を形成する位置は辺部の幅方向中央部が電源装置の安全性の点で好ましい。
このように、電源パック3に貫通孔4を形成することにより、ラミネート11を切断する工程、搬送する工程、位置決めする工程などにおいて、基準位置として利用することができる。
【0022】
電源パック3は、発電素子を収納する中央部の厚さより、正極端子16または負極端子(17)を導出する辺部の厚さの方が薄いので、電源パックを固定した状態でのスペーサ5の厚さは電源パック3の中央部の厚さからその辺部の厚さを差し引いた厚さとすることが、電源装置の安定性の観点から好ましい。具体的には、たとえば、複数の電源パックを積層する場合に、両者の厚さの差を調整し、両者をほぼ同じ厚さにするため、たとえば、この両者の厚さの半分程度の厚さを有するスペーサ5を電源パック3の辺部にそれぞれ挟む。スペーサ5は、例えばポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリイミド系樹脂、フェノール樹脂を用いることが好ましい。スペーサ5は電源パック3の辺部全部とほぼ同じ大きさを有するように形成するのが好ましいが、図1のように2つの電源パック固定用柱部2を含む大きさであれば電源パック3の辺部より少し小さくてもよい。これにより電源パック3が引っ張られたり、圧縮されたりしないようにする。またスペーサ5に多少の弾力性及び難燃性を有する弾性樹脂、例えばVHBテープを予め貼り付けておくことにより、押え部材7の抜け留めと、締め付け強度を大きくする作用を得ることができる。スペーサに弾性樹脂を貼り付ける以外に、スペーサ自身が弾性を有するような樹脂を使用してもよい。また、難燃性樹脂、自己消火性樹脂を使用することが電源装置の安全性の点で好ましい。
【0023】
スペーサ5は、電源パック3に形成された貫通孔4a、4b、4c、4dにそれぞれ対応する貫通孔6a、6b,6c,6dを有し、電源パック固定用柱部2が貫通孔4および貫通孔6を貫通することによって、正極端子または負極端子を保護する。
このように、電源ケース1の底内壁1aに立設された電源パック固定用柱部2に電源パック3の貫通孔4を貫通させ、各電源パック3の間にそれぞれスペーサ5を挟みながら積層し、最後に厚さ調整のために必要に応じて、押え板10を入れて、積層した複数の電源パックを押し付けるようにして、電源パック固定用柱部2の溝21に押え部材7が嵌め合わせられる。電源パックを複数積層する際、各電源パックの間を両面テープによって接着すると、積層ずれを防止できるので好ましい。
以上のように押え部材7によって積層した複数の電源パックを押し付けるので、電源パック3の正極端子16または負極端子(17)が導出される短辺は、電源パック3とスペーサ5とが密着し、そのため電源パック3およびスペーサ5が滑らない。特に、電源パック3の短辺部分またはスペーサ5に凹凸加工、粗面加工を施すと、積層ずれを生じにくくなる。また電源パック3を構成するラミネートフィルム11の周囲をシーラーによって融着する場合は、シーラーの表面に張り付けられたガラスクロスの凹凸がラミネートフィルム11の外装樹脂13にも転写形成され、その凹凸のため、電源パックが摩擦を増し、積層ずれを生じない。
【0024】
ここで、電源パック固定用柱部2と、電源パック3に形成された貫通孔4と、スペーサ5に形成された貫通孔6の大きさについて説明する。
図5に示すように、前記扁平型電源パック3の辺部に形成した貫通孔4の長軸方向の長さrと、前記スペーサ5に形成したトラック状貫通孔6の長軸方向の長さsと、前記断面形状がトラック状の電源パック固定用柱部2の長軸方向の長さtの関係を、
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にする。
このような関係を保つことにより、電源パック固定用柱部とラミネートフィルムを構成するアルミフィルムが接触しない構造となり、安全性が増す。したがって、上記関係を保つ場合は、電源パック固定用柱部を金属製にすることが可能になり、樹脂製のものより機械的強度が優れるため、電源装置の安全性の点で好ましい。電源パック固定用柱部を金属製にする場合は、上記関係において電源パック固定用柱部の長軸方向の長さtを機械的強度が損なわれない範囲でより小さくするのが、電源パックと電源装置との絶縁距離確保の点で好ましい。
【0025】
このような関係にすることにより、ラミネートフィルム11を構成するアルミフィルム12が電源パック固定用柱部4に接触しないので、ラミネートフィルム11のアルミフィルム12が電位を持つことがなく、電源装置の安全性が向上する。このため電源パック固定用柱部4は電気絶縁性のある樹脂だけでなく、導電性のある金属によって、電源パック固定用柱部4を形成しても安全性を確保することができる。また扁平型電源パック3に形成した貫通孔4、スペーサ5に形成した貫通孔6、電源パック固定用柱部2の断面形状をそれぞれトラック状に形成したので、振動が加わった場合にも応力がトラック状の1箇所に集中せず、貫通孔4から扁平型電源パック3が破れたり、貫通孔6からスペーサ5が破れたりしない。貫通孔4、6及び電源パック固定用柱部2の断面形状を円形にした場合は、振動が加わったとき、円形の1箇所に応力が集中することがあるので好ましくない。また角形の場合は、貫通孔の角から扁平型電源パック3が破れたり、スペーサ5が破れたりすることがある。
また、本発明では電源パック固定用柱部2の断面をトラック状に形成して、その長軸方向を電源パック3の長辺方向に対して垂直方向に配置したので、電源パック3の長辺方向の振動をトラック状電源パック固定用柱部2の長軸方向によって受けることができる。そのため電源パック3の長辺方向のずれを確実に止めることができ、電源装置の耐振性が向上し、安定性、安全性が向上する。
図1に示す電源装置は電源ケースの底内壁に電源パックを積層する構造であるが、電源ケースの上蓋がある場合は、図1の電源ケースに上蓋を被せるようにして、電源装置を構成する。更に上蓋を被せた後、上蓋に形成したネジ穴から電源パック固定用柱部2をねじ止めすると、電源パック固定用柱部2は、電源ケースの底内壁と、上蓋によって固定されるので、より強固に固定することができる。
【0026】
次に、本発明に使用される電源パック、例えばリチウムイオン二次電池の正極板、セパレータ、負極板について説明する。
例えば、正極板1は、正極活物質、導電剤、結着剤、有機溶剤とを含有するペーストを正極集電体上に塗布、乾燥、加圧することにより作製される。
正極活物質には、リチウムイオンを吸着、放出できる材質として、例えば、LiNiO2、LiCoO2、LiMn24等、及びこれらのリチウム複合酸化物、及びその一部を他元素で置換した化合物を用いることができる。
導電材としては、例えばアセチレンブラック、ケッチェンブラック等の炭素質材料を添加したり、公知の添加剤などを添加したりすることができる。
また、結着剤としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニルピリジンや、ポリテトラフルオロエチレン等を用いることができる。
有機溶剤としては、N−メチルー2−ピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)などを用いることができる。
正極集電体としては、例えばSUS、アルミニウム等の導電性金属箔や薄板を用いることができる。
【0027】
正極板1を封入するセパレータ3は、多孔質フィルムよりなり、耐溶剤性や耐酸化還元性を考慮すれば、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂からなる多孔質フィルムあるいは不織布が好適である。このような材質からなるものを単層または複数層にして用いる。
【0028】
負極板2は、負極活物質、導電材、結着剤、有機溶剤や純水を含有するペーストを負極集電体上に塗布、乾燥、加圧することにより作製する。
負極活物質には、リチウムイオンを挿入、離脱できる材質として、例えば、熱分解炭素類、コークス類、黒鉛類、ガラス状炭素類、有機高分子化合物焼結体、炭素繊維、活性炭等を用いることが出来る。
導電材としては、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等の炭素質材料を添加したり、公知の添加剤などを添加したりすることができる。
結着剤としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニルピリジン、ポリテトラフルオロエチレンやスチレンブタジエンゴム等を用いることが出来る。
有機溶剤としては、N-メチル-2-ピロリドン (NMP)、N,N-ジメチルホルムアミド (DMF) 等を用いることができる。
負極集電体としては、銅、ニッケル、SUS等の金属箔を用いることができる。
【0029】
また、発明において用いられる非水電解質としては、電解塩を有機溶剤に溶解してなる溶液が用いられる。
電解質塩としては、リチウムイオン二次電池を使用する場合、例えば、リチウムをカチオン成分とするものが好ましく、ホウフッ化リチウム、六フッ化リン酸リチウム、過塩素酸リチウム、フッ素置換有機スルホン酸等の有機酸をアニオン成分とするリチウム塩を用いることを例示することが出来る。キャパシタを使用する場合、例えば、(C254NBF4、(C254NPF6、(C494NBF4、(C494NPF6のようなアルキルアンモニウム塩を例示することが出来る。
電解液としての有機溶媒は、上記電解質塩を溶解するものであれば、どのようなものでも用いることができるが、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート等の環状炭酸エステル類、γ―ブチロラクトン等の環状エステル類、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン等のエーテル類、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート等の鎖状炭酸エステル類等を例示することが出来る。これらの有機溶剤は、単独で、又は2種類以上の混合物として用いられる。
【0030】
外装材は、例えば、樹脂層と金属層とがラミネート加工等で貼り合わされて二層以上に複合化されたラミネートフィルムであり、積層体と対向する面が樹脂層になるようにされている。樹脂層としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、変性ポリエチレン、変性ポリプロピレンおよび、これらの重合体、ポリオレフィン樹脂等と有する有機樹脂材料が用いられる。また、金属層としては、例えば、板状、箔状に成形されているアルミニウム、ステンレス、ニッケル、鉄等が用いられる。本発明の実施形態では図4に示すようにアルミフィルム12の内側と外側に樹脂を貼り合わせた3層構造になっている。
【0031】
本発明において、上記記載の各材質は一例であり、上記例示に限定されるものではなく、二次電池において知られているものであれば、いずれでも用いることが出来る。
【0032】
また、本発明の電源パックに内蔵される発電要素は、リチウムイオン電池に限定されず、他の二次電池であってもよく、また集電板両面に活性炭素を接着した分極性電極を複数枚用意し、その電極間に電解液を含有させたセパレータもしくはゲル電解質膜を交互に挟み込んだ電気二重層キャパシタでもかまわない。キャパシタに使用する材質は、公知のものを使用することができる。
【0033】
次に、本発明の電源装置の製造方法を説明する。
初めに、電源ケース1の底内壁1aのネジ孔8にネジ9を通し、電源パック固定用柱部2にねじ込むことにより、電源パック固定用柱部を4本取り付ける。次に、電源パック3の貫通孔4を電源パック固定用柱部2に通し、かつ各電源パック3の間にスペーサ5を挟み、複数の電源パック3を積層する。次に、押え板10の貫通孔を通し、押え部材7を積層した電源パックを押し付けながら、電源パック固定用柱部2の溝21に嵌める。さらに電源パックの固定強度を上げるために、上蓋を被せ、上蓋に形成したネジ穴から電源パック固定用柱部2にネジ止めしてもよい。
【符号の説明】
【0034】
1 電源パック支持体
2 電源パック固定用柱部
3 電源パック
4 貫通孔
5 スペーサ
6 貫通孔
7 押え部材
11 ラミネートフィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池又はキャパシタを収納し、互いに対向する辺部に貫通孔を形成した扁平型電源パックと、
前記扁平型電源パックを複数積層して支持する電源パック支持体と、
前記電源パック支持体に立設した電源パック固定用柱部と、
前記電源パック固定用柱部に前記貫通孔を通して複数積層した扁平型電源パックを、前記電源パック支持体に押し付けるように、前記電源パック固定用柱部に形成した係止部と
を備えることを特徴とする電源装置。
【請求項2】
前記電源パック固定用柱部は断面形状がトラック状であり、前記貫通孔はトラック状貫通孔であることを特徴とする請求項1に記載の電源装置。
【請求項3】
前記電源パック固定用柱部のトラック状の断面形状の長軸方向と、前記トラック状貫通孔の長軸方向が扁平型電源パックの辺部と同方向であることを特徴とする請求項2に記載の電源装置。
【請求項4】
前記複数の扁平型電源パックを積層する際に、前記電源パック固定用柱部にトラック状貫通孔を通して各扁平型電源パックの辺部の間にそれぞれスペーサを挟む構成であって、前記扁平型電源パックの辺部に形成したトラック状貫通孔の長軸方向の長さrと、前記スペーサに形成したトラック状貫通孔の長軸方向の長さsと、前記断面形状がトラック状の電源パック固定用柱部の長軸方向の長さtの関係が
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であることを特徴とする請求項1から3までのいずれか1項に記載の電源装置。
【請求項5】
前記スペーサに弾力性樹脂を貼り付けたことを特徴とする請求項1から4までのいずれか1項に記載の電源装置。
【請求項6】
前記扁平型電源パックは、二次電池又はキャパシタを収納するラミネートフィルムと、前記扁平型電源パックの互いに対向する辺部に前記ラミネートフィルムより一部を露出させた正極端子及び負極端子と、前記扁平型電源パックの辺部において前記正極端子または負極端子の両側に前記貫通孔を有することを特徴とする請求項1から5までのいずれか1項に記載の電源装置。
【請求項7】
前記電源パック固定用柱部は、上方部に溝を備え、前記押え部材が前記溝に嵌合することにより係止されることを特徴とする請求項1から6までのいずれか1項に記載の電源装置。
【請求項8】
電源パックを複数積層して支持する電源パック支持体に、互いに対向する辺部位置に電源パック固定用柱部を立設する工程と、
前記電源パック固定用柱部に、二次電池又はキャパシタを収納する扁平型電源パックの辺部に形成された貫通孔を通して、前記電源パック支持体上に前記複数の扁平型電源パックを積層する工程と、
前記複数の電源パックを通した前記電源パック固定用柱部の上方部に、前記複数の積層された扁平型電源パックを押し付けるように押え部材を係止する工程と
を備えることを特徴とする電源装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−234831(P2012−234831A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−184242(P2012−184242)
【出願日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【分割の表示】特願2007−110563(P2007−110563)の分割
【原出願日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】