コンバイン
【課題】第1及び第2スイッチの誤操作を防止しながら、第1及び第2スイッチの操作性を向上させることができ、操向レバーの操作性を向上させることができるコンバインを実現する。
【解決手段】コンバインにおいて、運転部Xの前部に機体操向用の操向レバー70を備えて、互いに相反する操作をする第1及び第2スイッチ74,75を、操向レバー70における操作部72の異なる面に配設する。
【解決手段】コンバインにおいて、運転部Xの前部に機体操向用の操向レバー70を備えて、互いに相反する操作をする第1及び第2スイッチ74,75を、操向レバー70における操作部72の異なる面に配設する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機体の前部に昇降自在に設けられた刈取部と、機体の横一方側に設けられた運転部とを備えると共に、運転部の前部に機体操向用の操向レバーを備えたコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の技術としては、例えば特許文献1に開示されているように、運転台(特許文献1の図1の10)に、操向兼刈取部昇降用レバー(特許文献1の図1の11)を備え、この操向兼刈取部昇降用レバーに設けた微調節スイッチ(特許文献1の図1の14,15)を操作することで、刈取部の高さを微調節できるように構成された刈取部昇降装置が知られている。
【0003】
【特許文献1】特開2001−204218号公報(図1参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の刈取部昇降装置では、上昇用微調節スイッチ(特許文献1の図1の14)と、下降用微調節スイッチ(特許文献1の図1の15)とが、操向兼刈取部昇降用レバーの同じ面に上下に並べて配設されている。その結果、機体前方の作物等を確認しながら、操向兼刈取部昇降用レバーを左右に揺動操作して機体を操向させると、機体前方の作物の状況や操向兼刈取部昇降用レバーの操作に気をとられて、微調節スイッチの位置を正確に確認して微調節スイッチを操作することが難しくなることがあり、上昇用微調節スイッチと下降用微調節スイッチとを誤操作するおそれがあった。
【0005】
また、特許文献1の刈取部昇降装置では、上昇用微調節スイッチと、下降用微調節スイッチとをいずれも右手の親指で操作するように構成されている。その結果、上昇用微調節スイッチを操作する場合と、下降用微調節スイッチを操作する場合とで、右手の指の動きがあまり相違しないため、上昇用微調節スイッチと下降用微調節スイッチとを誤操作するおそれがあった。
本発明は、第1及び第2スイッチの誤操作を防止しながら、第1及び第2スイッチの操作性を向上させることができ、操向レバーの操作性を向上させることができるコンバインを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[I]
(構成)
本発明の第1特徴は、コンバインを次のように構成することにある。
機体の前部に昇降自在に設けられた刈取部と、機体の横一方側に設けられた運転部とを備え、前記運転部の前部に機体操向用の操向レバーを備えて、互いに相反する操作をする第1及び第2スイッチを、前記操向レバーにおける操作部の異なる面に配設してある。
【0007】
(作用)
本発明の第1特徴によると、互いに相反する操作をする第1及び第2スイッチは、操向レバーにおける操作部の異なる面に配設されているので、例えば機体前方の作物の状況や操向レバーの操作に気をとられて第1及び第2スイッチの位置を正確に確認できない場合であっても、第1及び第2スイッチを誤操作することが少なくなる。
【0008】
本発明の第1特徴によると、互いに相反する操作をする第1及び第2スイッチを、操向レバーにおける操作部の異なる面に配設することで、第1及び第2スイッチを右手の異なる指で操作することができ、又は、第1及び第2スイッチを右手の指の異なる動きで操作することができる。その結果、第1及び第2スイッチを誤操作し難い位置に配置し、第1及び第2スイッチの誤操作を防止しながら、第1及び第2スイッチの操作性を向上させることができる。
【0009】
(発明の効果)
本発明の第1特徴によると、操向レバーの操作性を向上させることができ、コンバインの操作性を向上させることができる。
【0010】
[II]
(構成)
本発明の第2特徴は、本発明の第1特徴のコンバインにおいて、次のように構成することにある。
前記第1スイッチを、前記操向レバーにおける操作部の運転者側に向く操作面に配設すると共に、前記第2スイッチを、前記操向レバーにおける操作部の側面に配設してある。
【0011】
(作用)
本発明の第2特徴によると、本発明の第1特徴と同様に前項[I]に記載の「作用」を備えており、これに加えて以下のような「作用」を備えている。
本発明の第2特徴によると、例えば第1スイッチを右手の親指で操作し、第2スイッチを右手の親指以外の指で操作することができ、又は、例えば右手の親指を立てて第1スイッチを操作し、右手の親指を横に倒して第2スイッチを操作することができる。これにより、右手の親指以外の指で操向レバーを握って操向レバーを操作しながら、第1及び第2スイッチを容易に操作することができる。その結果、第1及び第2スイッチの操作性を更に向上させることができる。
【0012】
(発明の効果)
本発明の第2特徴によると、本発明の第1特徴と同様に前項[I]に記載の「発明の効果」を備えており、これに加えて以下のような「発明の効果」を備えている。
本発明の第2特徴によると、操向レバーの操作性を更に向上させることができ、コンバインの操作性を更に向上させることができる。
【0013】
[III]
(構成)
本発明の第3特徴は、本発明の第2特徴のコンバインにおいて、次のように構成することにある。
前記第1スイッチを、前記刈取部を上昇する上昇スイッチで構成し、前記第2スイッチを、前記刈取部を下降する下降スイッチで構成してある。
【0014】
(作用)
本発明の第3特徴によると、本発明の第2特徴と同様に前項[II]に記載の「作用」を備えており、これに加えて以下のような「作用」を備えている。
本発明の第3特徴によると、例えば上昇スイッチを右手の親指で操作して刈取部を上昇させ、下降スイッチを右手の親指以外の指で操作して刈取部を下降させることができ、又は、例えば右手の親指を立てて上昇スイッチを操作して刈取部を上昇させ、右手の親指を横に倒して下降スイッチを操作して刈取部を下降させることができる。これにより、右手の親指以外の指で操向レバーを握って操向レバーを操作しながら、上昇及び下降スイッチを容易に操作することができる。その結果、上昇及び下降スイッチにより、操向レバーを操作しながらの刈取部の昇降を容易に行うことができる。
【0015】
(発明の効果)
本発明の第3特徴によると、本発明の第2特徴と同様に前項[II]に記載の「発明の効果」を備えており、これに加えて以下のような「発明の効果」を備えている。
本発明の第3特徴によると、操向レバーの操作性を更に向上させることができ、コンバインの操作性を更に向上させることができる。
【0016】
[IV]
(構成)
本発明の第4特徴は、本発明の第3特徴のコンバインにおいて、次のように構成することにある。
前記上昇スイッチを操作すると、前記刈取部が自動的に上昇を開始すると共に、前記刈取部が最も上昇した上昇位置で自動的に停止し、前記下降スイッチを操作すると、前記刈取部が自動的に下降を開始すると共に、前記刈取部が刈取作業位置で自動的に停止する。
【0017】
(作用)
本発明の第4特徴によると、本発明の第3特徴と同様に前項[III]に記載の「作用」を備えており、これに加えて以下のような「作用」を備えている。
本発明の第4特徴によると、上昇スイッチを操作するだけで、刈取部を自動的に上昇位置に上昇させて停止することができ、下降スイッチを操作するだけで、刈取部を自動的に刈取作業位置に下降させて停止することができる。これにより、刈取部が上昇位置に上昇し又は刈取作業位置に下降するまで、上昇又は下降スイッチを押し続けなくても、刈取部を自動的に上昇位置又は刈取作業位置に昇降して位置決めできる。その結果、上昇及び下降スイッチにより、操向レバーを操作しながらの刈取部の昇降を更に容易に行うことができる。
【0018】
(発明の効果)
本発明の第4特徴によると、本発明の第3特徴と同様に前項[III]に記載の「発明の効果」を備えており、これに加えて以下のような「発明の効果」を備えている。
本発明の第4特徴によると、操向レバーの操作性を更に向上させることができ、コンバインの操作性を更に向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
[自脱型コンバインの全体構成]
図1及び図2に基づいてキャビン付き自脱型コンバインの全体構成について説明する。図1及び図2に示すように、右及び左のクローラ走行装置1で支持された機体の前部に支持フレーム2が横軸心P1周りに昇降自在に支持され、支持フレーム2を昇降駆動する昇降シリンダ2aが備えられており、支持フレーム2に刈取部3が支持されている。
【0020】
クローラ走行装置1には、前部及び後部昇降機構(図示せず)が装備されており、この前部及び後部昇降機構を操作することにより、機体フレームBに対するトラックフレーム1bの姿勢を変更することで、後述する自動水平制御又は自動左右方向制御を実施し、路面又は圃場の凹凸に対して機体の前後及び左右方向の傾斜を変更調節できるように構成されている。
【0021】
機体の前部の右側にキャビン4が備えられており、このキャビン4は、運転部フレーム4Aと、キャビン4の右側面に揺動開閉自在に設けられた乗降用ドア4Bと、キャビン4の前部及び前部側部を覆う前面ガラス4Cと、キャビン4の左側面に開閉自在に設けられた開閉式ドア(図示せず)と、キャビン4の天井を構成するルーフ部材4Dとを備えられて構成されている。これにより、キャビン4内に、運転部Xが形成されている。
【0022】
キャビン4の運転座席5の下側にエンジン6が備えられている。機体の後部の左側に扱ぎ胴(図示せず)を有する脱穀部7が備えられており、この脱穀部7の扱ぎ胴は、脱穀部7に揺動開閉自在に支持されて、メンテナンス時等に扱ぎ胴と共に脱穀部7の上部を開閉できるように構成されている。脱穀部7は、図示しない脱穀クラッチを介してエンジン6と連動連結されており、エンジン6からの動力で脱穀部7が駆動されるように構成されている。
【0023】
機体の後部の右側にグレンタンク8が備えられており、グレンタンク8の後部にアンローダ9が装備されている。機体の後部に排ワラ処理装置Aが装備されており、この排ワラ処理装置Aにより、排ワラを細かく切断する切断処理と、排ワラを結束する結束処理ができるように構成されている。
【0024】
機体の前部の左右中央付近にミッションケース10が備えられており、キャビン4がミッションケース10の右の横外側に備えられている。ミッションケース10の左の横外側の後方に横軸心P1が位置して、横軸心P1の位置から前側に支持フレーム2が延出されており、支持フレーム2がミッションケース10の左の横外側に位置している。
【0025】
[ミッションケース内の伝動系(直進系)の構造]
図2〜図5に基づいてミッションケース内の伝動系(直進系)の構造について説明する。図3及び図4に示すように、ミッションケース10はアルミダイキャスト製で、右側部分10R及び左側部分10Lの2分割構造に構成されて、ミッションケース10の右側部分10Rの上部の外部に段差状の凹部10aが形成されており、正面視(図3参照)においてミッションケース10(右及び左側部分10R,10L)の合わせ部10bの近傍にまで、凹部10aが入り込んでいる。
【0026】
静油圧式無段変速装置11がミッションケース10(右側部分10R)の凹部10aに入り込むように配置され、静油圧式無段変速装置11のポートブロック11aが、ミッションケース10(右側部分10R)の凹部10aに連結されている。静油圧式無段変速装置11のポートブロック11aに円筒状の支持部材12が連結されて、支持部材12が左側に延出されており、支持部材12のアーム12aがミッションケース10(左側部分10L)に連結されている。
【0027】
ミッションケース10(右及び左側部分10R,10L)の下部の外部に、右の支持部10c及び左の支持部10cが備えられている。右の伝動ケース14及び左の伝動ケース14が備えられており、右及び左の伝動ケース14が、ミッションケース10(右及び左側部分10R,10L)の右及び左の支持部10cに連結されて前側に延出されている。右及び左の伝動ケース14に右及び左の車軸ケース15が連結されて右及び左側に延出されており、右及び左のクローラ走行装置1を駆動するスプロケット1aが、右及び左の車軸ケース15の右及び左側の端部に備えられている。
【0028】
ミッションケース10(右側部分10R)の下部の外部において、ミッションケース10(右及び左側部分10R,10L)の右及び左の支持部10cとは異なる部分に、連結部10dが備えられており、ミッションケース10(右側部分10R)の連結部10dと右及び左の伝動ケース14とに亘って、連係部材13が連結されている。なお、比較的小型(比較的低出力のエンジン)の作業車においてもミッションケース10を転用できるように構成されており、この場合には、連結部材13を連結しない。
【0029】
図2に示すように、支持部材12に入力軸16が支持され、入力軸16の端部に入力プーリー17が連結されており、支持部材12の内部において静油圧式無段変速装置11の入力軸11bと入力軸16とが、連結部材18を介して連結されている(図5参照)。エンジン6の動力は伝動ベルト19を介して入力プーリー17に伝達されており、主クラッチ19aを入り側に操作すると、エンジン6の動力が伝動ベルト19を介して静油圧式無段変速装置11に伝達される。エンジン6の動力は伝動ベルト20を介して静油圧式無段変速装置21に伝達されており、刈取クラッチ20aを入り側に操作すると、エンジン6の動力が伝動ベルト20及び静油圧式無段変速装置21を介して刈取部3に伝達される。
【0030】
静油圧式無段変速装置21を操作することにより、刈取部3の速度が、機体の走行速度に比例して増加する標準速度と、機体の走行速度に比例しかつ標準速度よりも大きい変化率で機体の走行速度が増加する倒伏速度とに切り換え可能に構成されている。
【0031】
図4及び図5に示すように、ミッションケース10(右及び左側部分10R,10L)の上部において、ミッションケース10(右側部分10R)の凹部10aに隣接(対向)するように、ミッションケース10(左側部分10L)に入力軸22が支持され、入力軸22に伝動ギヤ23,24がスプライン構造により固定されている。静油圧式無段変速装置11の出力軸11cがミッションケース10(右及び左側部分10R,10L)の内部に挿入され、スプライン構造により伝動ギヤ24(入力軸22)に連結されている。
【0032】
ミッションケース10(右及び左側部分10R,10L)の上部に支持された伝動軸27に、高速ギヤ25及び低速ギヤ26が相対回転自在に外嵌され、伝動ギヤ23及び高速ギヤ25、伝動ギヤ24及び低速ギヤ26が咬合しており、シフト部材28がスプライン構造により伝動軸27に一体回転及びスライド自在に外嵌されている。これによって、伝動ギヤ23及び高速ギヤ25、伝動ギヤ24及び低速ギヤ26、シフト部材28により副変速装置が構成されており、シフト部材28を高速及び低速ギヤ25,26に咬合させることにより、入力軸22の動力が高低2段(高速及び低速位置)に変速されて、伝動軸27に伝達される。通常は、シフト部材28が高速ギヤ25に咬合する位置にスライド操作されて、高速位置が設定されている。
【0033】
図4に示すように、ミッションケース10(右及び左側部分10R,10L)の下部に亘って伝動軸29が支持され、伝動軸29の左側部(ミッションケース10の左側部分10Lの壁部の内面近傍)に伝動ギヤ31が固定されている。伝動軸27の左側部(ミッションケース10の左側部分10Lの壁部の内面近傍)に伝動ギヤ30が固定されて、伝動ギヤ30,31が咬合している。これにより、ミッションケース10(右及び左側部分10R,10L)の合わせ部10bに対して、左側(ミッションケース10の左側部分10L)に、入力軸22及び伝動軸27の大部分、伝動ギヤ30,31が配置されている。
【0034】
伝動軸27の右側部(ミッションケース10の右側部分10R)において、右及び左の出力ギヤ32R,32Lが伝動軸29に相対回転自在に外嵌され、右及び左の出力ギヤ32R,32Lの右及び左側に、右及び左の咬合部33R,33Lがスプライン構造により伝動軸29に一体回転及びスライド自在に外嵌されている(右の咬合部33Rがミッションケース10の右側部分10Rの壁部の内面近傍に配置されている)。右の出力ギヤ32R及び右の咬合部33Rの間で右のサイドクラッチ34が構成され、左の出力ギヤ32L及び左の咬合部33Lの間で左のサイドクラッチ34が構成されている。
【0035】
ミッションケース10(右及び左側部分10R,10L)の右及び左の支持部10cと、右及び左の伝動ケース14とに亘って伝動軸35が支持され、ミッションケース10(右及び左側部分10R,10L)の内部において伝動軸35に固定された伝動ギヤ36が、右及び左の出力ギヤ32R,32Lに咬合しており、右及び左の伝動ケース14の内部において、伝動軸35に伝動ギヤ37が固定されている。右及び左の伝動ケース14、右及び左の車軸ケース15に亘って、右及び左の車軸38が支持されており、右及び左の伝動ケース14の内部において、右及び左の車軸38に固定された伝動ギヤ39が伝動ギヤ37に咬合している。右及び左の車軸ケース15の内部において、右及び左の車軸38が右及び左側に延出されており、右及び左のクローラ走行装置1のスプロケット1a(図2参照)が、右及び左の車軸38の右及び左側の端部に連結されている。
【0036】
上記の構造により、図4に示すように、入力軸22の動力が、伝動軸27、伝動ギヤ30,31、伝動軸29、右及び左のサイドクラッチ34(右及び左の咬合部33R,33L)、右及び左の出力ギヤ32R,32L、伝動ギヤ36、伝動軸35、伝動ギヤ37,39、右及び左の車軸38を介して、右及び左のクローラ走行装置1に伝達されて、機体は直進する。
【0037】
右及び左のサイドクラッチ34は伝動状態と遮断状態とに操作可能に構成されており、右及び左のサイドクラッチ34が伝動状態に操作されると、伝動軸29の動力が右及び左のサイドクラッチ34を介して右及び左のクローラ走行装置1に伝達され、右及び左のサイドクラッチ34が遮断状態に操作されると、伝動軸29から右及び左のサイドクラッチ34を介しての右及び左のクローラ走行装置1への動力の伝達が遮断される。
【0038】
[ミッションケース内の伝動系(旋回系)の構造]
図4及び図5に基づいてミッションケース内の伝動系(旋回系)の構造について説明する。図4及び図5に示すように、緩旋回クラッチ46は摩擦多板式に構成されており、作動油が供給されることで伝動状態に操作され、作動油が排出されることで遮断状態に操作される。右及び左の旋回クラッチ49は摩擦多板式に構成されており、作動油が供給されることで伝動状態に操作される。この場合、右及び左の旋回クラッチ49において、摩擦板が互いに密になるように配置されており、作動油が排出されても右及び左の旋回クラッチ49が半伝動状態となるように構成されている。
【0039】
これにより、緩旋回クラッチ46が伝動状態に操作されると、伝動軸29の動力が右の咬合部32R、伝動ギヤ45、緩旋回クラッチ46、伝動軸44及び伝動ギヤ48を介して、伝動軸29と同方向の回転で伝動軸29よりも低速の動力として、旋回クラッチケース47に伝達される。右又は左のサイドクラッチ34を遮断状態に操作し、右又は左の旋回クラッチ49を伝動状態に操作すると、伝動軸29と同方向の回転で伝動軸29よりも低速の動力が右又は左の出力ギヤ32R,32Lに伝達される。
【0040】
伝動軸44の左側部に、ブレーキ50が備えられている。ブレーキ50は摩擦多板式に構成されており、作動油が供給されることで制動状態に操作され、作動油が排出されることで解除状態に操作される。これにより、ブレーキ50が制動状態に操作されると、伝動軸44及び伝動ギヤ48を介して、旋回クラッチケース47が制動状態となる。右又は左のサイドクラッチ34が遮断状態に操作され、右又は左の旋回クラッチ49が伝動状態に操作されると、右又は左の出力ギヤ32R,32Lが制動状態となる。
【0041】
伝動軸27の左側部に伝動ギヤ51が固定され、伝動軸44の左側部に伝動ギヤ52が相対回転自在に外嵌されて、伝動ギヤ51,52が咬合しており、伝動軸44と伝動ギヤ52との間に逆転クラッチ53が備えられている。逆転クラッチ53は摩擦多板式に構成されており、作動油が供給されることで伝動状態に操作され、作動油が排出されることで遮断状態に操作される。
【0042】
これにより、逆転クラッチ53が伝動状態に操作されると、伝動軸27の動力が伝動ギヤ51,52、逆転クラッチ53、伝動軸44及び伝動ギヤ48を介して、伝動軸29と逆方向の回転の動力として、旋回クラッチケース47に伝達される。右又は左のサイドクラッチ34が遮断状態に操作され、右又は左の旋回クラッチ49が伝動状態に操作されると、伝動軸29と逆方向の回転の動力が右又は左の出力ギヤ32R,32Lに伝達される。
【0043】
逆転クラッチ53は右又は左のクローラ走行装置1の一方と逆方向の動力を右又は左のクローラ走行装置1の他方に伝達するものであり、比較的大きなトルク(逆方向の動力)を伝達する。緩旋回クラッチ46は右又は左のクローラ走行装置1の一方と同方向で低速の動力を右又は左のクローラ走行装置1の他方に伝達するものであり、比較的小さなトルク(同方向の低速の動力)を伝達する。
【0044】
[運転部の詳細構造]
図6〜図11に基づいて運転部Xの詳細構造について説明する。図6及び図7に示すように、運転部フレーム4Aは、基部フレーム4aと、基部フレーム4aにおける後部の上面側から立設された座席支持フレーム4bと、基部フレーム4aにおける前部の上面側から立設されたサイドカバー4cと、基部フレーム4aにおける左側部の上面側から立設されたフロントカバー4dとを備えて構成されている。なお、運転部Xに装備されたスイッチ等は、図17に示すものを含め制御装置94に接続されている。
【0045】
座席支持フレーム4bには運転座席5が前後にスライド可能に支持されており、運転座席5の右側部にアームレスト80が座席支持フレーム4bの上部右側から立設されている。アームレスト80は、その後部の左右軸心周りで上下揺動自在に支持されており、後方に揺動させて運転座席5側に起立格納された格納姿勢と、前方下方に倒伏作用した作用姿勢(図7参照)とに姿勢変更可能に構成されている。
【0046】
サイドカバー4cの前端部とフロントカバー4dの左側端部とは連結されており、これにより、平面視でL字状の操縦部カバーが構成されている。
【0047】
サイドカバー4cの上部は、着脱可能に構成されたサイドパネル60で覆われており、このサイドパネル60に、主変速レバー61、サイド操作パネル62、クラッチレバー63、アンローダリモコン64等が装備されている。フロントカバー4dの上部は、着脱可能に構成されたフロントパネル66で覆われており、このフロントパネル66に、メータユニット67、操向レバー70、フロント操作パネル68、旋回状態切換操作具77、コンビネーションスイッチ78等が装備されている。
【0048】
フロントカバー4dの後方には、左側から、駐車ブレーキペダル81と、足載せ台82と、刈取掻き込みペダル83とが左右に並べて、フロントカバー4dの後面側に沿って配設されている。駐車ブレーキペダル81は、踏み込み操作により、機体に装備したブレーキ装置(図示せず)を作動させて、機体を停止した制動状態を現出できる。足載せ台82は、基部フレーム4aの上面側に固定されており、運転座席5に着座した運転者がこの足載せ台82に両足を載置できるように構成されている。
【0049】
刈取掻き込みペダル83を踏み込み操作して、主変速レバー61を中立位置Nから前進側に操作すると、機体は停止した状態のままで、刈取部3のみが駆動し、刈取部3における作物のこぼれを防止でき、これにより、畦際近くでの刈取作業を効率よく行うことができる。
【0050】
図8〜図10に示すように、サイドパネル60の前部には、前後に長い長穴形状の変速レバーガイド60aが形成されており、この変速レバーガイド60aを上下に連通するように主変速レバー61が装備されている。主変速レバー61は、サイドパネル60の前部下部で前後揺動自在に支持されており、後で詳説するが、主変速レバー61の操作位置に対応する位置に静油圧式無段変速装置11のポンプ11Pの斜板が操作され、変速レバーガイド60aの前後中間位置における中立位置Nから主変速レバー61を前方に揺動操作すると、主変速レバー61の前方への操作位置に対応して、静油圧式無段変速装置11が前進側に操作され、中立位置Nから主変速レバー61を後方に揺動操作すると、主変速レバー61の後方への操作位置に対応して、静油圧式無段変速装置11が後進側に操作される。
【0051】
サイドパネル60の前部は、斜め後方下方に傾斜する前部パネル面60Aが形成されており、この前部パネル面60Aに変速レバーガイド60aが形成され、主変速レバー61が装備されている。これにより、変速レバーガイド60aの外周部が見易くなって、変速レバーガイド60aの外周部における右側部に設けた操作位置表示部61cに対する主変速レバー61の位置関係を容易に確認できる。その結果、運転座席5に着座した運転者による主変速レバー61の操作性を向上できる。なお、前部パネル面60Aを右方下方に傾斜させてもよく、これにより、更に主変速レバー61が見易くなる。
【0052】
主変速レバー61は、レバー本体61aと、このレバー本体61aの上部に装着された握り部61bとを備えて構成されており、握り部61bには、ロックスイッチ61A、扱ぎ深さ手動スイッチ61B,61C、変速スイッチ61D、及び刈取変速スイッチ61Eが装備されている。
【0053】
ロックスイッチ61Aは、運転者が左手で握り部61bを握って、左手の親指で押し操作することで、主変速レバー61の位置保持が解除されて、主変速レバー61の前後揺動操作が許容されるように構成されている。扱ぎ深さ手動スイッチ61B,61Cは、押しボタン式に構成されており、扱ぎ深さ手動スイッチ61B,61Cを押し操作している間、脱穀部7による作物の扱ぎ深さが深く又は浅く変更調節され、扱ぎ深さ手動スイッチ61B,61Cの押し操作を止めると、その押し操作を止めた位置での扱ぎ深さに、脱穀部7での作物の扱ぎ深さが保持される。
【0054】
変速スイッチ61Dは、押しボタン式に構成されており、後で詳説するが、変速スイッチ61Dを左手の親指で押し操作すると、静油圧式無段変速装置11のモータ11Mの斜板が高速及び低速位置に操作される。これにより、変速スイッチ61Dを押し操作して、機体の走行速度を高速側又は低速側に切り替えることができる。変速スイッチ61Dを低速側に切り換えた状態で、通常の刈取作業等を行い、路上走行等における機体を高速で走行させる場合には、変速スイッチ61Dを高速側に切り換える。なお、変速スイッチ61Dの操作位置(高速側又は低速側)は、フロントパネル66のメータユニット67に表示される。また、フロントパネル66に備えた機体の電源を入切するメインスイッチ(図示せず)を入り側に操作した状態では、変速スイッチ61Dが低速側に設定変更(リセット)される。
【0055】
刈取変速スイッチ61Eは、押しボタン式に構成されており、刈取変速スイッチ61Eを左手の親指で押し操作して、機体の走行速度に対する刈取部3の速度を標準速度又は倒伏速度に切り換えることができる。これにより、機体を停止させなくても、刈取変速スイッチ61Eを操作することで、作物の状態により適正な刈取部3の速度を選択できる。なお、刈取変速スイッチ61Eの操作位置(標準速度又は倒伏速度)は、フロントパネル66のメータユニット67に表示される。また、フロントパネル66に備えた機体の電源を入切するメインスイッチ(図示せず)を入り側に操作した状態では、刈取変速スイッチ61Eが標準速度にリセットされる。
【0056】
変速レバーガイド60aは、その前端がフロントパネル66の後端より前側に長く延出された形状に成形されており(図6参照)、運転座席5に着座した運転者から見て、斜め左側前方の運転者の視界に入り易い位置に配設されている。これにより、主変速レバー61の誤操作を防止することができ、主変速レバー61の操作性を向上できる。
【0057】
変速レバーガイド60aの右側には、サイド操作パネル62が装着されている。サイドパネル60の前部右側部は、下方へ凹入した形状に成形されており、この凹入した形状に成形された部分に斜め右方下方に傾斜する操作パネル面60Bが形成されて、この操作パネル面60Bにサイド操作パネル62が装備されている。これにより、サイド操作パネル62が見易くなって、サイド操作パネル62に装備された操作スイッチ62A〜62Gの位置を容易に確認できる。その結果、運転座席5に着座した運転者によるサイド操作パネル62の操作性を向上できる。
【0058】
サイドパネル60の操作パネル面60Bは、主変速レバー61の右側に装備され、主変速レバー61を装着した前部パネル面60Aより低い位置に形成されている。これにより、主変速レバー61によって運転者の視界が遮られてサイド操作パネル62が見え難くなることを防止でき、かつ、サイド操作パネル62の操作スイッチ62A〜62Gによって運転者の視界が遮られて主変速レバー61の操作位置表示部61cが見え難くなることを防止できる。
【0059】
図11(a)に示すように、サイド操作パネル62には、前側から、分草杆操作スイッチ62A、刈高さ調節スイッチ62B、扱ぎ深さ自動スイッチ62Ca、オートクラッチスイッチ62Cb、わら処理切換スイッチ62D、自動走行制御スイッチ62E、脱穀操作スイッチ62F、扱ぎ胴操作スイッチ62Gが装備されている。
【0060】
分草杆操作スイッチ62Aは、押しボタン式の「開」及び「閉」の2つのスイッチからなり、分草杆開閉スイッチ62Aの「開」又は「閉」スイッチを押し操作している間、機体前部の左側部に揺動開閉自在に支持された分草杆(図示せず)を開閉することができ、分草杆開閉スイッチ62Aの押し操作を止めると、その押し操作を止めた位置で分草杆が停止する。
【0061】
刈高さ調節スイッチ62Bは、押しボタン式のリフトスイッチ62Ba、押しボタン式のオートスイッチ62Bbと、ダイアル式の刈高さ調節スイッチ62Bcとからなる。リフトスイッチ62Baを押し操作すると、刈取部3を圃場の凹凸が激しい場合等に、刈取部3が地面に突っ込まないように、刈取部3を上昇側へ制御し、オートスイッチ62Bbを押し操作すると、圃場の凹凸を感知しながら、刈取部3を昇降させて、適正な刈高さを保持するように制御する。また、刈高さ調節スイッチ62Bcをダイアル操作することで、刈取部3による刈高さを手動で高く又は低く変更調節できる。
【0062】
扱ぎ深さ自動スイッチ62Caは、押しボタン式のスイッチからなり、扱ぎ深さ自動スイッチ62Cを押し操作すると、脱穀部7の扱ぎ胴における作物の扱ぎ深さが適切な扱ぎ深さに自動で変更調節される。オートクラッチスイッチ62Cbは、押しボタン式のスイッチからなり、オートクラッチスイッチ62Cbを押し操作すると、主変速レバー61が中立位置Nに操作された場合、及び刈取部3を上昇させた場合に、刈取クラッチ20aが自動的に切り側に操作され、刈取部3の駆動が自動的に停止する。
【0063】
わら処理切換スイッチ62Dは、機体の後部に装備された排ワラ処理装置Aによる排ワラの処理形態を選択するスイッチであり、わら処理切換スイッチ62Dを押し操作することで、排ワラを細かく切断する切断処理(カッタ)と、排ワラを結束する結束処理(ドロッパ)とを選択できる。
【0064】
自動走行制御スイッチ62Eは、押しボタン式の自動方向制御スイッチ62Eaと、押しボタン式の自動車速制御スイッチ62Ebと、ダイアル式の車速変更スイッチ62Ecとからなり、自動方向制御スイッチ62Eaを押し操作すると、機体に装備された方位センサ(図示せず)の検出結果に基づいて、機体を精度よく直進させることのできる自動方向制御が実施される。自動車速制御スイッチ62Ebを押し操作すると、過去の走行速度(車速)を制御装置94で記憶及び更新しながら、走行速度が無理なく増減速され、圃場条件等に応じた最適な自動車速制御を実施する。また、車速変更スイッチ62Ecを操作することで、自動車速制御における走行速度を手動で速く又は遅く変更調節できる。
【0065】
脱穀操作スイッチ62Fは、押しボタン式の作物選択スイッチ62Faと、ダイアル式の選別板調節スイッチ62Fbと、ダイアル式の唐箕風量調節スイッチ62Fcとからなり、作物選択スイッチ62Faを押し操作することで、脱穀部7により処理する作物の種類(稲、麦等)を選択でき、作物の種類に応じた速度等に脱穀部7の仕様等が自動的に変更される。また、選別板調節スイッチ62Fbをダイアル操作することで、脱穀部7の選別板(図示せず)の開度を変更調節でき、唐箕風量調節スイッチ62Fcをダイアル操作することで、脱穀部7の唐箕(図示せず)から供給される選別風の風量を強く又は弱く変更調節できる。
【0066】
扱ぎ胴操作スイッチ62Gは、押しボタン式の「開」及び「閉」の2つのスイッチからなり、扱ぎ胴操作スイッチ62Gの「開」又は「閉」を押し操作している間、脱穀部7の扱ぎ胴(図示せず)を開閉することができ、扱ぎ胴操作スイッチ62Gの押し操作を止めると、その押し操作を止めた位置で扱ぎ胴が停止する。扱ぎ胴操作スイッチ62Gの「開」又は「閉」を押し続けて、扱ぎ胴が最も開いた最大開位置又は扱ぎ胴が最も閉じた下限閉位置に達すると、作動音(例えば「ピピッ」という音)が鳴り、聴覚的な情報が運転者に提供されるように構成されている。これにより、扱ぎ胴操作スイッチ62Gの「開」又は「閉」を作動音が鳴るまで押し続けて、扱ぎ胴操作スイッチ62Gの押し操作を止めることで、扱ぎ胴を最大開位置又は下限閉位置で停止させることができる。
【0067】
図8〜図10に示すように、サイドパネル60の後部には、斜め前方下方に傾斜する後部パネル面60Cが形成されており、この後部パネル面60Cに前後に長い長穴形状のクラッチレバーガイド60bが形成され、このクラッチレバーガイド60bを上下に連通するようにクラッチレバー63が装備されている。これにより、クラッチレバーガイド60bの外周部が見易くなって、クラッチレバーガイド60bの外周部における右側部に設けた操作位置表示部63cに対するクラッチレバー63の位置関係を容易に確認できる。その結果、運転座席5に着座した運転者によるクラッチレバー63の操作性を向上できる。なお、後部パネル面60Cを右方下方に傾斜させてもよく、これにより、クラッチレバー63が更に見易くなる。
【0068】
また、クラッチレバーガイド60bは、左右方向での位置が変速レバーガイド60aと略同一に設定され、変速レバーガイド60aとクラッチレバーガイド60bとが前後向きに直線状になるように配設されている(図6参照)。これにより、クラッチレバー63の操作性を向上できる。
【0069】
クラッチレバー63は、サイドパネル60の後部下部に揺動自在に支持されたレバー本体63aと、このレバー本体63aの上部に固定された握り部63bとを備えて構成されている。クラッチレバー63は、サイドパネル60の後部下部で前後揺動自在に支持されており、クラッチレバーガイド60bの後端位置にクラッチレバー63を操作すると図示しない脱穀クラッチ及び刈取クラッチ20aが切り側に操作され、クラッチレバーガイド60bの前後中間位置にクラッチレバー63を操作すると脱穀クラッチが入り側に操作され、クラッチレバー63の前端位置にクラッチレバー63を操作すると脱穀クラッチ及び刈取クラッチ20aが入り側に操作される。
【0070】
クラッチレバーガイド60bの右側には、リモコン装着部60Dが形成されている。リモコン装着部60Dのアンローダリモコン64を載置する面が、クラッチレバー63を装着した後部パネル面60Cより低くなるように、リモコン装着部60Dが下方に凹入した形状に形成されている。これにより、リモコン装着部60Dにアンローダリモコン64を装着した状態で、アンローダリモコン64に遮られてクラッチレバー63の操作位置表示部63cが見え難くなることを防止できる。
【0071】
リモコン装着部60Dには、アンローダ9を操作するアンローダリモコン64が着脱自在に装着されている。アンローダリモコン64は、伸縮ケーブル64aを介して制御装置94と接続されており、リモコン装着部60Dからアンローダリモコン64を取り外して、運転部Xにおいてアンローダ9を見ながら、アンローダリモコン64を操作できるように構成されている。
【0072】
フロントパネル66には、斜め後方下方に傾斜する傾斜面66Aが形成されており、この傾斜面の左右中央部に、メータユニット67が装備され、フロントパネル66における傾斜面66Aの左側部に、フロント操作パネル68が装備されている。
【0073】
図11(b)に示すように、フロント操作パネル68には、左側から、アクセルスイッチ68A、機体昇降制御スイッチ68B、自動変更スイッチ68Cが装備されている。
【0074】
アクセルスイッチ68Aは、押しボタン式の自動アクセルスイッチ68Aaと、ダイアル式のアクセル調節スイッチAbとからなり、自動アクセルスイッチ68Aaを押し操作することにより、自動アクセル制御の実施及び解除ができる。自動アクセルスイッチ68Aaを押し操作して自動アクセル制御が実施された状態で、クラッチレバー63を操作して図示しない脱穀クラッチを入り側に操作したり、主変速レバー61を操作して機体を走行させたりすると、アクセル調節スイッチAbのダイアル操作で設定したエンジン回転数に自動的に変更調節される。自動アクセルスイッチ68Aaを押し操作して、自動アクセル制御が解除された状態では、常にアクセル調節スイッチAbのダイアル操作で設定したエンジン回転数に調節される。
【0075】
機体昇降制御スイッチ68Bは、前後左右スイッチ(4PCスイッチ)68Baと、左右スイッチ68Bbと、湿田スイッチ68Bcと、上げ基準スイッチ68Bdと、変更スイッチ68Be,68Beからなり、前後左右スイッチ68Baを押し操作すると、自動水平制御が実施され、機体の前後及び左右方向の傾きを修正し、機体を前後及び左右方向において水平に保つことができ、左右スイッチ68Bbを押し操作すると、自動左右方向制御が実施され、機体の左右方向の傾きを修正し、機体を左右方向において水平に保つことができる。
【0076】
湿田スイッチ68Bcは、湿田での刈取作業で使用するスイッチであり、前後左右スイッチ68Ba又は前後左右スイッチ68Baが押し操作されている状態でのみ湿田スイッチ68Bcを入り操作できる。これにより、湿田スイッチ68Bcを入り操作すると、自動水平制御又は自動左右方向制御の応答性が速くなり、湿田での刈取作業の作業性を向上できる。
【0077】
上げ基準スイッチ68Bdは、自動水平制御を行う上げ基準モード及び下げ基準モードを切り換えるスイッチであり、上げ基準スイッチ68Bdを押し操作し、上げ基準モードに切り換えると、変更スイッチ68Be,68Beにより設定された設定高さ、すなわち、機体が最も上昇した位置を基準として自動水平制御が実施される。上げ基準スイッチ68Bdを押し操作し、下げ基準モードに切り換えると、変更スイッチ68Be,68Beにより設定された設定高さ、すなわち、機体が最も下降した位置を基準として自動水平制御が実施される。
【0078】
自動変更スイッチ68Cは、周囲刈スイッチ68Caと、複数の設定スイッチ68Cbとからなり、周囲刈スイッチ68Caを押し操作すると、予め設定された周囲刈りに適した刈取条件に、機体の刈取条件が変更される。設定スイッチ68Cbを所定時間長押しすることで、前後左右スイッチ68Ba、左右スイッチ68Bb、湿田スイッチ68Bc、上げ基準スイッチ68Bd、及び変更スイッチ68Be,68Beにより設定した刈取条件を記憶させることができ、設定スイッチ68Cbを押し操作することで、記憶させた刈取条件での刈取作業が可能になる。
【0079】
[操向レバー付近の詳細構造]
図12〜図15に基づいて操向レバー70付近の詳細構造について説明する。図12〜図14に示すように、フロントパネル66の右側部には、中立位置に付勢された操向レバー70が装備されている。操向レバー70は、フロントパネル66の右側部の下部に十字揺動式に揺動自在に支持されており(図12の黒矢印参照)、後で詳説するが、操向レバー70を右方に揺動操作すると、機体が右側に旋回し、操向レバー70を左方に揺動操作すると、機体が左側に旋回する。
【0080】
また、操向レバー70を前方(前側)に揺動操作すると、操向レバー70を前方に揺動操作している間は、操向レバー70の揺動操作量に対応する速度で刈取部3が下降し(揺動操作量が多い程、下降速度が速く変更される)、操向レバー70の揺動操作を止めて中立位置に付勢されると、刈取部3が下降した位置で停止する。操向レバー70を後方(後側)に揺動操作すると、操向レバー70を後方に揺動操作している間は、操向レバー70の揺動操作量に対応する速度で刈取部3が上昇し(揺動操作量が多い程、上昇速度が速く変更される)、操向レバー70の揺動操作を止めて中立位置に付勢されると、刈取部3が上昇した位置で停止する。
【0081】
操向レバー70は、握り部71の上部に操作部72を備えて構成されており、この操作部72に、傾斜角調節スイッチ73、上昇スイッチ74(第1スイッチに相当)、下降スイッチ75(第2スイッチに相当)、及び旋回状態変更スイッチ76が装備されている。
【0082】
操向レバー70の操作部72には、平らな操作面70A(運転座席5に着座した運転者側に向く面)が形成されており、この操作面70Aに、傾斜角調節スイッチ73及び上昇スイッチ74が備えられている。
【0083】
図14に示すように、傾斜角調節スイッチ73は、水平スイッチ73C、前方傾斜スイッチ73f、後方傾斜スイッチ73r、右側傾斜スイッチ73R、左側傾斜スイッチ73Lにより構成されており、傾斜スイッチ73f,73r,73R,73Lにより、上述した自動水平制御における機体の制御目標となる姿勢を変更調節できるように構成されている。
【0084】
具体的には、前方傾斜スイッチ73fを押し操作すると、前方傾斜スイッチ73fを押し操作している間は、機体が所定の速度で前下がり傾斜し、前方傾斜スイッチ73fを押し操作を止めると、機体が前下がり傾斜した姿勢に制御目標が変更される。後方傾斜スイッチ73rを押し操作すると、後方傾斜スイッチ73rを押し操作している間は、機体が所定の速度で後下がり傾斜し、後方傾斜スイッチ73rを押し操作を止めると、機体が後下がり傾斜した姿勢に制御目標が変更される。
【0085】
また、右側傾斜スイッチ73Rを押し操作すると、右側傾斜スイッチ73Rを押し操作している間は、機体が所定の速度で右下がり傾斜し、右側傾斜スイッチ73Rを押し操作を止めると、機体が右下がり傾斜した姿勢に制御目標が変更される。左側傾斜スイッチ73Lを押し操作すると、左側傾斜スイッチ73Lを押し操作している間は、機体が所定の速度で左下がり傾斜し、左側傾斜スイッチ73Lを押し操作を止めると、機体が左下がり傾斜した姿勢に制御目標が変更される。
【0086】
水平スイッチ73Cを押し操作すると、傾斜スイッチ73f,73r,73R,73Lにより設定された機体の姿勢がリセットされ、自動水平制御における機体の制御目標となる姿勢が水平な姿勢に変更される。
【0087】
図12〜図14に示すように、傾斜角調節スイッチ73の左側下部で、操作面70Aの下部左側に、押しボタン式の上昇スイッチ74が装備されている。握り部71の右側面の上部には、押しボタン式の下降スイッチ75が装備されており、握り部71における操作面70Aとは反対側の面には、前方下方に突出した形状の旋回状態変更スイッチ76が装備されている。
【0088】
下降スイッチ75の外周部における上側には、突出部72a(誤操作防止部)が一体成形されており、この突出部72aにより下降スイッチ75の押し操作が部分的に制限されている。これにより、右手の人指し指の指先を下降スイッチ75の表面に位置決めしなければ、下降スイッチ75を押し操作できなくなり(人指し指の第1関節辺りを下降スイッチ75の表面に位置させると、突出部72aにより下降スイッチ75の押し操作が制限され)、誤って下降スイッチ75に触れてしまったような場合に、下降スイッチ75の誤操作を防止できる。
【0089】
握り部71の左側面側の上下中央部には、左側に突出した形状の突出部71aが一体成形されており、この突出部71aの上側に右手の親指を載置して操向レバー70の握り位置を正確に位置決めできるように構成されている。
【0090】
フロントパネル66の右側部における傾斜面66Aで、操向レバー70の右下側に、旋回状態切換操作具77が装備されており、この旋回状態切換操作具77の右上側に、コンビネーションスイッチ78が装備されている。コンビネーションスイッチ78は、ダイアル式に構成されており、運転者によるダイアル操作で機体前部に装備された前照灯の入切及び照射角等が変更できるように構成されている。
【0091】
旋回状態切換操作具77は、緩旋回位置S、信地旋回位置M、及び超信地旋回位置Hの3つの操作位置を備えたダイアル式に構成されており、刈取掻き込みペダル83を踏み込み操作しなくても、旋回状態切換操作具77をダイアル操作することにより、機体の旋回状態を変更できるように構成されている。旋回状態切換操作具77を緩旋回位置Sに切り換えると、旋回半径が比較的大きい緩旋回状態に切り換えられ、旋回状態切換操作具77を信地旋回位置Mに切り換えると、旋回半径が中程度の信地旋回状態に切り換えられ、旋回状態切換操作具77を超信地旋回位置Hに切り換えると、旋回半径が比較的小さい超信地旋回状態に切り換えられる。
【0092】
操向レバー70の後部には、手首支持部79が立設されており、手首支持部79は、運転部Xの内側に向けて水平姿勢の手首置き部79aと、フロントパネル66から両持ち状態に延出された左右の支柱部79bとを備えて構成されている。これにより、右腕の肘部分をアームレスト80に載置し、手首を手首置き部79aに支持させて、伸ばした手で操向レバー70を操作する。
【0093】
図14及び図15に基づいて操向レバー70における上昇及び下降スイッチ74,75、並びに旋回状態変更スイッチ76の操作方法について説明する。図15(a)に示すように、操向レバー70の握り部71を右手で握った状態から、右手の親指を立てて右側に少し親指を移動させることで、右手の親指の指先を上昇スイッチ74の上側に移動させることができ、この状態で、右手の親指を操作面70Aに押し当てることで、図15(b)に示すように、上昇スイッチ74を押し操作できる。
【0094】
この場合、上昇スイッチ74は操作面70Aの下部左側に配設されているので、右手の親指を移動させる距離が短くなって、上昇スイッチ74を迅速に押し操作できる。
【0095】
図15(a)に示すように、操向レバー70の握り部71を右手で握った状態から、右手の人差し指を立てて上方に移動させることで、右手の人差し指の指先を下降スイッチ75の位置に移動させることができ、この状態で、右手の人差し指の指先を操作部72の右側面に押し当てることで、図15(c)に示すように、下降スイッチ75を押し操作できる。この場合、突出部72aにより下降スイッチ75の押し操作が部分的に制限されているため、右手の人指し指の指先を下降スイッチ75の位置に位置決めしなければ、下降スイッチ75を押し操作できない。
【0096】
上昇スイッチ74を押し操作すると、上昇スイッチ74を押し続けなくても、刈取部3が自動的に上昇を開始すると共に、刈取部3が最も上昇した上昇位置で自動的に停止する。一方、下降スイッチ75を押し操作すると、下降スイッチ75を押し続けなくても、刈取部3が自動的に下降を開始すると共に、刈取部3が刈取作業位置で自動的に停止する。
【0097】
図14に示すように、操向レバー70の握り部71を右手で握った状態から、右手の人差し指を前側及び上方に少し移動させることで、右手の人差し指を旋回状態変更スイッチ76の前側に移動させる。この状態で、右手の人差し指を握ることで、旋回状態変更スイッチ76が操作部72側に入り込んで、旋回状態変更スイッチ76を入り側に操作できる。
【0098】
旋回状態切換操作具77が緩旋回位置Sに切り換えられた状態で、旋回状態変更スイッチ76を押し操作すると、旋回状態変更スイッチ76を押し操作している間は、機体の旋回状態が信地旋回状態に自動的に切り換えられ、旋回状態変更スイッチ76を押し操作を止めると、機体の旋回状態が緩旋回状態に自動的に切り換えられる。また、旋回状態切換操作具77が信地旋回位置Mに切り換えられた状態で、旋回状態変更スイッチ76を押し操作すると、旋回状態変更スイッチ76を押し操作している間は、機体の旋回状態が超信地旋回状態に自動的に切り換えられ、旋回状態変更スイッチ76を押し操作を止めると、機体の旋回状態が信地旋回状態に自動的に切り換えられる。
【0099】
[静油圧式無段変速装置の操作]
図3,図5及び図17に基づいて静油圧式無段変速装置11の操作について説明する。図5及び図17に示すように、静油圧式無段変速装置11のポンプ11Pが、中立位置N、中立位置Nから前進Fの高速側及び後進Rの高速側に無段変速自在に構成されており、静油圧式無段変速装置11のモータ11Mが高低2段に変速自在に構成されている。静油圧式無段変速装置11のポンプ11Pの斜板を操作する油圧シリンダ89、油圧シリンダ89に作動油を給排操作する制御弁90が備えられて、この制御弁90と運転部Xに備えられた主変速レバー61とが機械的に連係されている。これにより、主変速レバー61を操作すると、制御弁90が操作されて油圧シリンダ89が作動し、主変速レバー61の操作位置に対応する位置に静油圧式無段変速装置11のポンプ11Pの斜板が操作される。
【0100】
静油圧式無段変速装置11のモータ11Mの斜板を操作する油圧シリンダ92、油圧シリンダ92に作動油を給排操作する電磁操作式の制御弁93が備えられており、主変速レバー61の変速スイッチ61Dの操作信号が制御装置94に入力されている。これにより、主変速レバー61の変速スイッチ61Dを操作すると、制御装置94により制御弁93が操作され油圧シリンダ92が作動して、静油圧式無段変速装置11のモータ11Mの斜板が高速及び低速位置に操作される。
【0101】
図17に示すように、主変速レバー61の操作位置を検出する操作位置センサー95が備えられ、機体の走行速度を検出する走行速度センサー96が備えられて、操作位置センサー95及び走行速度センサー96の検出値が制御装置94に入力されている。静油圧式無段変速装置11のモータ11Mの斜板が高速位置であるか低速位置であるかの検出は、主変速レバー61の変速スイッチ61Dの操作信号により、制御装置94で認識される。これにより、静油圧式無段変速装置11のポンプ11P及びモータ11Mの操作位置、機体の走行速度により、図4及び図5に示す副変速装置(シフト部材28)が高速位置であるか低速位置であるかを認識することができる。
【0102】
図5に示す静油圧式無段変速装置11と副変速装置(シフト部材28)とにおいて、機械効率の良い伝動状態及び機械効率の悪い伝動状態がある。静油圧式無段変速装置11(ポンプ11P及びモータ11M)が高速領域で副変速装置(シフト部材28)が高速位置、静油圧式無段変速装置11(ポンプ11P及びモータ11M)が低速領域で副変速装置(シフト部材28)が高速位置、静油圧式無段変速装置11(ポンプ11P及びモータ11M)が低速領域で副変速装置(シフト部材28)が低速位置の状態において、機械効率の良い伝動状態となる。静油圧式無段変速装置11(ポンプ11P及びモータ11M)が高速領域で副変速装置(シフト部材28)が低速位置の状態において、機械効率の悪い伝動状態となる。
【0103】
この場合、操作位置センサー95及び走行速度センサー96の検出値、主変速レバー61の変速スイッチ61Dの操作信号により、制御装置94において、静油圧式無段変速装置11(ポンプ11P及びモータ11M)が高速領域で副変速装置(シフト部材28)が低速位置の状態であると認識されると、機械効率の悪い伝動状態であることが運転部Xのメータユニット67に表示されて、運転者に注意が喚起される。
【0104】
旋回状態切換操作具77により緩旋回状態、信地旋回状態及び超信地旋回状態を選択することができるのは、主変速レバー61の変速スイッチ61Dにより、静油圧式無段変速装置11のモータ11Mの斜板が低速位置に操作されている状態である。主変速レバー61の変速スイッチ61Dにより、静油圧式無段変速装置11のモータ11Mの斜板が高速位置に操作されている状態であると、旋回状態切換操作具77の操作位置及び旋回状態変更スイッチ76の操作に関係なく、機体の旋回状態が自動的に緩旋回状態に切り換えられる。
【0105】
図3及び図5に示すように、静油圧式無段変速装置11の入力軸11bにおいて入力軸16とは反対側の部分(静油圧式無段変速装置11の右の横側部)に、チャージポンプ55及び油圧ポンプ56が接続されて、静油圧式無段変速装置11の入力軸11bにより、チャージポンプ55及び油圧ポンプ56が駆動されるように構成されており、チャージポンプ55の作動油が静油圧式無段変速装置11に供給されている。油圧ユニット57がミッションケース10(左側部分10L)の左の支持フレーム2側の横側部の外面に連結されており、油圧ポンプ56からの外部配管(図示せず)が、油圧ユニット57に接続されている。
【0106】
[油圧ユニット及び制御装置の構成]
図16及び図17に基づいて油圧ユニット57及び制御装置94の構成について説明する。図16に示すように、油圧ユニット57の内部に、右旋回制御弁97、左旋回制御弁98、リリーフ弁99、アンロード弁100、比例制御弁101、旋回切換制御弁102、パイロット操作弁103,104が備えられている。
【0107】
右及び左旋回制御弁97,98は供給位置97a,98a及び排出位置97b,98bに操作自在な電磁操作式に構成されて、排出位置97b,98bに付勢されている。アンロード弁100は遮断位置100a及び排出位置100bに操作自在な電磁操作式に構成されて、遮断位置100aに付勢されている。右及び左旋回制御弁97,98と伝動軸29の油路29bとの間から分岐した油路105に、比例制御弁101及び旋回切換制御弁102が直列的に接続されており、旋回切換制御弁102が緩旋回クラッチ46、逆転クラッチ53及びブレーキ50に接続されている。
【0108】
比例制御弁101は電磁操作式に構成されて、作動油の流量制御が可能である。旋回切換制御弁102は、緩旋回位置102a、信地旋回位置102b及び超信地旋回位置102cに操作自在なパイロット操作式に構成されて、緩旋回位置102aに付勢されている。油路105から分岐したパイロット作動油を旋回切換制御弁102に供給して信地旋回位置102bに操作するように、パイロット操作弁103が構成され、油路105から分岐したパイロット作動油を旋回切換制御弁102に供給して超信地旋回位置102cに操作するように、パイロット操作弁104が構成されている。
【0109】
[操向レバーによる直進状態]
図16及び図17に基づいて操向レバー70による直進状態について説明する。図17に示すように、運転部Xに備えられた操向レバー70の操作位置が制御装置94に入力されており、操向レバー70は直進位置N、右及び左第1旋回位置R1,L1、右及び左第2旋回位置R2,L2に操作自在に構成されている。旋回状態切換操作具77が運転部Xに備えられて、旋回状態切換操作具77の操作位置が制御装置94に入力されており、旋回状態切換操作具77は緩旋回位置S、信地旋回位置M及び超信地旋回位置Hを備えている。
【0110】
図16及び図17に示すように、旋回状態切換操作具77の操作位置及び旋回状態変更スイッチ76の操作に関係なく、操向レバー70が直進位置Nに操作されると、右及び左旋回制御弁97,98が排出位置97b,98bに操作され、アンロード弁100が排出位置100bに操作されて、右及び左のサイドクラッチ34(右及び左の咬合部33R,33L)、右及び左の旋回クラッチ49から作動油が排出され、右及び左のサイドクラッチ34(右及び左の咬合部33R,33L)が伝動状態に操作されて、右及び左の旋回クラッチ49が半伝動状態に操作される。比例制御弁101により緩旋回及び逆転クラッチ46,53が遮断状態に操作され、ブレーキ50が解除状態に操作される。
【0111】
これにより、入力軸22の動力が、伝動軸27、伝動ギヤ30,31、伝動軸29、右及び左のサイドクラッチ34(右及び左の咬合部33R,33L)、右及び左の出力ギヤ32R,32L、伝動ギヤ36、伝動軸35、伝動ギヤ37,39、右及び左の車軸38を介して、右及び左のクローラ走行装置1に伝達されて、機体は直進する。
【0112】
[操向レバーによる緩旋回状態]
図16及び図17に基づいて操向レバー70による緩旋回状態について説明する。図16及び図17に示すように、旋回状態切換操作具77が緩旋回位置Sに操作されると、パイロット操作弁103,104により、旋回切換制御弁102が緩旋回位置102aに操作される。これにより、操向レバー70が右第1旋回位置R1に操作されると、右旋回制御弁97が供給位置97aに操作されて、アンロード弁100が遮断位置100aに操作され、右のサイドクラッチ34(右の咬合部33R)及び右の旋回クラッチ49に作動油が供給されて、右のサイドクラッチ34(右の咬合部33R)が遮断状態に操作され、右の旋回クラッチ49が伝動状態に操作される。
【0113】
この場合、左の旋回クラッチ49が半伝動状態であるので、左のサイドクラッチ34(左の咬合部33L)の動力が、左の出力ギヤ32L及び左の旋回クラッチ49から、右の旋回クラッチ49を介して右の出力ギヤ32Rに伝達され、伝動軸29と同方向の回転で伝動軸29より少し低速の動力が右の出力ギヤ32Rに伝達される。これにより、機体は緩やかに右に向きを変える。
【0114】
操向レバー70が右第1旋回位置R1に操作されると、前述のように右旋回制御弁97が供給位置97aに操作されアンロード弁100が遮断位置100aに操作されるのと同時に、比例制御弁101及び旋回切換制御弁102(緩旋回位置102a)を介して、緩旋回クラッチ46に作動油が供給され始めるのであり、操向レバー70が右第1旋回位置R1から右第2旋回位置R2に操作されるほど、比例制御弁101により緩旋回クラッチ46の作動圧が昇圧操作される。
【0115】
操向レバー70の操作位置に基づいて比例制御弁101により緩旋回クラッチ46の作動圧が昇圧操作されるのに伴って、伝動軸29の動力が右の咬合部33R、伝動ギヤ45、緩旋回クラッチ46、伝動軸44、伝動ギヤ48、旋回クラッチケース47及び右の旋回クラッチ49を介して、伝動軸29と同方向の回転で伝動軸29よりも低速の動力が右の出力ギヤ32Rに伝達される。
【0116】
この場合、左のサイドクラッチ34(左の咬合部33L)からの動力と、緩旋回クラッチ46からの動力とが、同時に右の出力ギヤ32Rに伝達される状態となるので、緩旋回クラッチ46の作動圧が低圧の範囲では、左のサイドクラッチ34(左の咬合部33L)からの動力が緩旋回クラッチ46からの動力に打ち勝って、左のサイドクラッチ34(左の咬合部33L)からの動力により右の出力ギヤ32Rが駆動される。これにより、緩旋回クラッチ46の作動圧が低圧の範囲では、機体は緩やかに右に向きを変える。
【0117】
次に操向レバー70の操作位置が右第2旋回位置R2に接近し、緩旋回クラッチ46の作動圧が高圧になると、緩旋回クラッチ46からの動力が左のサイドクラッチ34(左の咬合部33L)からの動力に打ち勝って、緩旋回クラッチ46からの動力により右の出力ギヤ32Rが駆動される。この状態において、左のサイドクラッチ34(左の咬合部33L)からの動力により右の出力ギヤ32Rが駆動されるよりも、緩旋回クラッチ46からの動力により右の出力ギヤ32Rが駆動される方が、右の出力ギヤ32Rが低速で駆動されることになり、機体は右に緩旋回する。
【0118】
操向レバー70が左第1旋回位置L1に操作されると、左旋回制御弁98が供給位置98aに操作されて、アンロード弁100が遮断位置100aに操作され、左のサイドクラッチ34(左の咬合部33L)及び左の旋回クラッチ49に作動油が供給されて、左のサイドクラッチ34(左の咬合部33L)が遮断状態に操作されて、左の旋回クラッチ49が伝動状態に操作される。これと同時に、前述と同様な操作が行われて、機体は緩やかに左に向きを変える。操向レバー70が左第1旋回位置L1から左第2旋回位置L2に操作されると、前述と同様な操作が行われて、機体は左に緩旋回する。
【0119】
[操向レバーによる信地旋回状態]
図16及び図17に基づいて操向レバー70による信地旋回状態について説明する。図16及び図17に示すように、旋回状態切換操作具77が信地旋回位置Mに操作されると、パイロット操作弁103,104により旋回切換制御弁102が信地旋回位置102bに操作される。これにより、操向レバー70が右第1旋回位置R1に操作されると、右旋回制御弁97が供給位置97aに操作されて、アンロード弁100が遮断位置100aに操作され、右のサイドクラッチ34(右の咬合部33R)及び右の旋回クラッチ49に作動油が供給されて、右のサイドクラッチ34(右の咬合部33R)が遮断状態に操作され、右の旋回クラッチ49が伝動状態に操作される。この場合、左の旋回クラッチ49が半伝動状態であるので、機体は緩やかに右に向きを変える。
【0120】
操向レバー70が右第1旋回位置R1に操作されると、前述のように右旋回制御弁97が供給位置97aに操作されアンロード弁100が遮断位置100aに操作されるのと同時に、比例制御弁101及び旋回切換制御弁102(信地旋回位置102b)を介して、ブレーキ50に作動油が供給され始めるのであり、操向レバー70が右第1旋回位置R1から右第2旋回位置R2に操作されるほど、比例制御弁101によりブレーキ50の作動圧が昇圧操作される。
【0121】
操向レバー70の操作位置に基づいて比例制御弁101によりブレーキ50の作動圧が昇圧操作されるのに伴って、伝動軸44、伝動ギヤ48、旋回クラッチケース47及び右の旋回クラッチ49を介して、右の出力ギヤ32Rに制動力が掛かる(図4参照)。
【0122】
この場合、左のサイドクラッチ34(左の咬合部33L)からの動力と、ブレーキ50の制動力とが、同時に右の出力ギヤ32Rに伝達される状態となるので、ブレーキ50の作動圧が低圧の範囲では、左のサイドクラッチ34(左の咬合部33L)からの動力がブレーキ50の制動力に打ち勝って、左のサイドクラッチ34(左の咬合部33L)からの動力により右の出力ギヤ32Rが駆動される。これにより、ブレーキ50の作動圧が低圧の範囲では、機体は緩やかに右に向きを変える。
【0123】
次に操向レバー70の操作位置が右第2旋回位置R2に接近し、ブレーキ50の作動圧が高圧になると、ブレーキ50の制動力が左のサイドクラッチ34(左の咬合部33L)からの動力に打ち勝って、ブレーキ50の制動力により右の出力ギヤ32Rが制動状態となり、機体は右に信地旋回する。
【0124】
図16及び図17に示すように、操向レバー70が左第1旋回位置L1に操作されると、左旋回制御弁98が供給位置98aに操作されて、アンロード弁100が遮断位置100aに操作され、左のサイドクラッチ34(左の咬合部33L)及び左の旋回クラッチ49に作動油が供給されて、左のサイドクラッチ34(左の咬合部33L)が遮断状態に操作されて、左の旋回クラッチ49が伝動状態に操作される。これと同時に、前述と同様な操作が行われて、機体は緩やかに左に向きを変える。操向レバー70が左第1旋回位置L1から左第2旋回位置L2に操作されると、前述と同様な操作が行われて、機体は左に信地旋回する。
【0125】
操向レバー70の握り部72に備えられた旋回状態切換操作具77が緩旋回位置Sに操作され、操向レバー70が右(左)第1旋回位置R1(L1)から右(左)第2旋回位置R2(L2)に操作された右又は左の緩旋回状態において、もう少し小さな旋回半径で旋回する必要が生じたとする。
【0126】
この場合、操向レバー70を右(左)第1旋回位置R1(L1)から右(左)第2旋回位置R2(L2)に操作した状態で、操向レバー70の旋回状態変更スイッチ76が押し操作されると、旋回切換制御弁102が緩旋回位置102aから信地旋回位置102bに操作されて、機体は右(左)に信地旋回する。この信地旋回状態は操向レバー70の旋回状態変更スイッチ76が押し操作されている間だけであり、操向レバー70の旋回状態変更スイッチ76の押し操作を止めると、旋回切換制御弁102が信地旋回位置102bから緩旋回位置102aに操作されて、機体は緩旋回状態に戻る。
【0127】
[操向レバーによる超信地旋回状態]
図16及び図17に基づいて操向レバー70による超信地旋回状態について説明する。図16及び図17に示すように、旋回状態切換操作具77が超信地旋回位置Hに操作されると、パイロット操作弁103,104により旋回切換制御弁102が超信地旋回位置102cに操作される。これにより、操向レバー70が右第1旋回位置R1に操作されると、右旋回制御弁97が供給位置97aに操作されて、アンロード弁100が遮断位置100aに操作され、右のサイドクラッチ34(右の咬合部33R)及び右の旋回クラッチ49に作動油が供給されて、右のサイドクラッチ34(右の咬合部33R)が遮断状態に操作され、右の旋回クラッチ49が伝動状態に操作される。この場合、左の旋回クラッチ49が半伝動状態であるので、機体は緩やかに右に向きを変える。
【0128】
操向レバー70が右第1旋回位置R1に操作されると、前述のように右旋回制御弁97が供給位置97aに操作されアンロード弁100が遮断位置100aに操作されるのと同時に、比例制御弁101及び旋回切換制御弁102(超信地旋回位置102c)を介して、逆転クラッチ53に作動油が供給され始めるのであり、操向レバー70が右第1旋回位置R1から右第2旋回位置R2に操作されるほど、比例制御弁101により逆転クラッチ53の作動圧が昇圧操作される。
【0129】
操向レバー70の操作位置に基づいて比例制御弁101により逆転クラッチ53の作動圧が昇圧操作されるのに伴って、伝動軸27の動力が伝動ギヤ51,52、逆転クラッチ53、伝動軸44、伝動ギヤ48、旋回クラッチケース47及び右の旋回クラッチ49を介して、伝動軸29と逆方向の回転の動力として右の出力ギヤ32Rに伝達される(図4参照)。
【0130】
この場合、左のサイドクラッチ34(左の咬合部33L)からの動力と、逆転クラッチ53からの動力とが、同時に右の出力ギヤ32Rに伝達される状態となるので、逆転クラッチ53の作動圧が低圧の範囲では、左のサイドクラッチ34(左の咬合部33L)からの動力が逆転クラッチ53からの動力に打ち勝って、左のサイドクラッチ34(左の咬合部33L)からの動力により右の出力ギヤ32Rが駆動される。これにより、逆転クラッチ53の作動圧が低圧の範囲では、機体は緩やかに右に向きを変える。
【0131】
次に操向レバー70の操作位置が右第2旋回位置R2に接近し、逆転クラッチ53の作動圧が高圧になると、逆転クラッチ53からの動力が左のサイドクラッチ34(左の咬合部33L)からの動力に打ち勝って、逆転クラッチ53からの動力により右の出力ギヤ32Rが駆動される。この状態において、左の出力ギヤ32Lに対して、右の出力ギヤ32Rが逆方向に駆動されて、機体は右に超信地旋回する。
【0132】
図16及び図17に示すように、操向レバー70が左第1旋回位置L1に操作されると、左旋回制御弁98が供給位置98aに操作されて、アンロード弁100が遮断位置100aに操作され、左のサイドクラッチ34(左の咬合部33L)及び左の旋回クラッチ49に作動油が供給されて、左のサイドクラッチ34(左の咬合部33L)が遮断状態に操作されて、左の旋回クラッチ49が伝動状態に操作される。これと同時に、前述と同様な操作が行われて、機体は緩やかに左に向きを変える。操向レバー70が左第1旋回位置L1から左第2旋回位置L2に操作されると、前述と同様な操作が行われて、機体は左に超信地旋回する。
【0133】
操向レバー70の握り部72に備えられた旋回状態切換操作具77が信地旋回位置Mに操作され、操向レバー70が右(左)第1旋回位置R1(L1)から右(左)第2旋回位置R2(L2)に操作された右又は左の信地旋回状態において、もう少し小さな旋回半径で旋回する必要が生じたとする。
【0134】
この場合、操向レバー70を右(左)第1旋回位置R1(L1)から右(左)第2旋回位置R2(L2)に操作した状態で、操向レバー70の旋回状態変更スイッチ76が押し操作されると、旋回切換制御弁102が信地旋回位置102bから超信地旋回位置102cに操作されて、機体は右(左)に超信地旋回する。この超信地旋回状態は操向レバー70の旋回状態変更スイッチ76が押し操作されている間だけであり、操向レバー70の旋回状態変更スイッチ76の押し操作を止めると、旋回切換制御弁102が超信地旋回位置102cから信地旋回位置102bに操作されて、機体は信地旋回状態に戻る。
【0135】
[発明の実施の第1別形態]
前述の[発明を実施するための最良の形態]においては、操向レバー70に上昇スイッチ74及び下降スイッチ75を備えた例を示したが、図18に示すような、操向レバー770を採用してもよい。なお、後述する以外の他の構成は、前述の[発明を実施するための最良の形態]と同様である。
【0136】
図18に示すように、操向レバー70の操作面70Aの下部における左右中央部には、上昇スイッチ74が設けられており、操向レバー70の操作部72の前面側(操作面70Aと逆側の面)には、下降スイッチ75が設けられている。これにより、操向レバー70の握り部71を右手で握って、右手の親指で上昇スイッチ74を操作でき、右手の人差し指で下降スイッチ75を操作できる。
【0137】
操向レバー70の操作面70Aの下部における右側部で、傾斜角調節スイッチ73と上昇スイッチ74との間に、押しボタン式の右サイドクラッチスイッチ85Rが設けられており、操向レバー70の操作面70Aの下部における左側部で、傾斜角調節スイッチ73と上昇スイッチ74との間に、押しボタン式の左サイドクラッチスイッチ85Lが設けられている。右及び左のサイドクラッチスイッチ85R,85Lの形状は、三角形状に形成されており、これにより、操作するサイドクラッチ34が右又は左であるかを視覚的に判断できる。
【0138】
右のサイドクラッチスイッチ85Rを押し操作している間は、右のサイドクラッチ34が遮断状態に操作され、右のサイドクラッチスイッチ85Rを押し操作を止めると、右のサイドクラッチ34が伝動状態に操作される。これにより、右のサイドクラッチスイッチ85Rを押し操作すると、機体が右側に旋回する。また、左のサイドクラッチスイッチ85Lを押し操作している間は、右のサイドクラッチ34が遮断状態に操作され、右のサイドクラッチスイッチ85Lを押し操作を止めると、右のサイドクラッチ34が伝動状態に操作される。これにより、左のサイドクラッチスイッチ85Lを押し操作すると、機体が左側に旋回する。
【0139】
[発明の実施の第2別形態]
前述の[発明を実施するための最良の形態]及び[発明の実施の第1別形態]においては、操向レバー70の前後揺動操作により、刈取部3を昇降できるように構成した例を示したが、操向レバー70の左右揺動操作により、機体の操向のみができるように構成してもよく、操向レバー70の前後揺動操作により、異なる機器を駆動するように構成してもよい。
【0140】
前述の[発明を実施するための最良の形態]及び[発明の実施の第1別形態]においては、上昇スイッチ74を押し操作すると、上昇スイッチ74を押し続けなくても、刈取部3が自動的に上昇を開始すると共に、刈取部3が最も上昇した上昇位置で自動的に停止するように構成し、下降スイッチ75を押し操作すると、下降スイッチ75を押し続けなくても、刈取部3が自動的に下降を開始すると共に、刈取部3が刈取作業位置で自動的に停止するように構成した例を示したが、上昇スイッチ74を押し操作している間は、刈取部3が上昇し、上昇スイッチ74の押し操作を止めると、押し操作を止めた位置で刈取部3が停止するように構成し、下降スイッチ75を押し操作している間は、刈取部3が下降し、下降スイッチ75の押し操作を止めると、押し操作を止めた位置で刈取部3が停止するように構成してもよい。これにより、刈取部3の高さを微調節できる。
【0141】
[発明の実施の第3別形態]
前述の[発明を実施するための最良の形態]、[発明の実施の第1別形態]及び[発明の実施の第2別形態]においては、第1及び第2スイッチを上昇及び下降スイッチ74,75で構成し、第1及び第2スイッチにより、刈取部3を昇降した例を示したが、互いに反する操作をするのであれば、刈取部3の昇降以外に第1及び第2スイッチを採用してもよい。具体的には、例えば第1及び第2スイッチにより、機体の走行速度を高速側又は低速側に変速するように構成してもよく、例えば第1及び第2スイッチにより、分草杆を開閉するように構成してもよく、例えば第1及び第2スイッチを右及び左のサイドクラッチスイッチ85R,85Lで構成してもよい。
【0142】
この場合、例えば第1及び第2スイッチで走行速度を変速するように構成した場合においては、第1及び第2スイッチを押し操作している間、走行速度が所定の変化割合で変速されるように構成してもよく、第1及び第2スイッチを押し操作すると、走行速度が所定の走行速度に変速され、再び押し操作すると走行速度が変速前の走行速度に戻るように構成してもよい。また、例えば第1及び第2スイッチで分草杆を開閉するように構成した場合においては、第1及び第2スイッチを押し操作している間、分草杆が開閉し、押し操作を止めた位置で分草杆が停止するように構成してもよく、第1及び第2スイッチを押し操作すると、分草杆が所定の位置(揺動上限位置又は揺動下限位置)に自動的に開閉して自動的に停止するように構成してもよい。
【0143】
また、例えば第1及び第2スイッチを右及び左のサイドクラッチスイッチ85R,85Lで構成した場合においては、第1及び第2スイッチを押し操作している間、右及び左のサイドクラッチスイッチ85R,85Lが遮断状態に操作され、押し操作を止めると伝動状態に操作されるように構成してもよく、第1及び第2スイッチを押し操作すると、右及び左のサイドクラッチスイッチ85R,85Lが遮断状態に操作され、再び押し操作すると右及び左のサイドクラッチスイッチ85R,85Lが伝動状態に操作されるように構成してもよい。
【0144】
[発明の実施の第4別形態]
前述の[発明を実施するための最良の形態]、[発明の実施の第1別形態]、[発明の実施の第2別形態]及び[発明の実施の第3別形態]においては、上昇スイッチ74を操向レバー70の操作面70Aに配設し、下降スイッチ75を操向レバー70における操作部72の側面に配設した例を示したが、下降スイッチを操向レバー70の操作面70Aに配設し、上昇スイッチを操向レバー70における操作部72の側面に配設してもよい。
【0145】
前述の[発明を実施するための最良の形態]、[発明の実施の第1別形態]、[発明の実施の第2別形態]及び[発明の実施の第3別形態]においては、第1スイッチ(上昇スイッチ74)を操向レバー70における操作部72の操作面70Aに配設し、第2スイッチ(下降スイッチ75)を操向レバー70における操作部72の右側面に配設した例を示したが、操向レバー70における異なる面であれば、第1及び第2スイッチを配設する面は、操向レバー70の操作面70Aや操向レバー70における操作部72の右側面に限らない。具体的は、例えば第1スイッチを、操向レバー70における操作部72の右側面、左側面、上面、下面、又は裏面(操作面70Aと逆側の面)に配設してもよく、第2スイッチを操向レバー70における操作部72の左側面、上面、下面、操作面70A又は裏面(操作面70Aと逆側の面)に配設してもよい。
【0146】
[発明の実施の第5別形態]
前述の[発明を実施するための最良の形態]、[発明の実施の第1別形態]、[発明の実施の第2別形態]、[発明の実施の第3別形態]及び[発明の実施の第4別形態]においては、右手で操作する操向レバー70を例に示したが、左手で操作する操向レバー(図示せず)や、両手で操作する操向レバー(図示せず)においても同様に適用できる。
【0147】
[発明の実施の第6別形態]
前述の[発明を実施するための最良の形態]、[発明の実施の第1別形態]、[発明の実施の第2別形態]、[発明の実施の第3別形態]、[発明の実施の第4別形態]及び[発明の実施の第5別形態]においては、機体の右側に運転部Xを備え、機体の左側に脱穀部7を備えたコンバインを例に示したが、機体の左側に運転部Xを備え、機体の右側に脱穀部7を備えたコンバインにおいても同様に適用できる。
【0148】
前述の[発明を実施するための最良の形態]、[発明の実施の第1別形態]、[発明の実施の第2別形態]、[発明の実施の第3別形態]、[発明の実施の第4別形態]及び[発明の実施の第5別形態]においては、コンバインの一例としてキャビン付きの自脱型コンバインを例に示したが、キャビン4を装備していないコンバインや、普通型コンバインにおいても同様に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0149】
【図1】コンバインの全体側面図
【図2】コンバインの前部におけるミッションケース付近の平面図
【図3】コンバインの前部におけるミッションケース付近の正面図
【図4】ミッションケースの縦断正面図
【図5】静油圧式無段変速装置及びミッションケースの入力軸付近の縦断正面図
【図6】運転部の平面図
【図7】運転部の側面図
【図8】サイドパネル及びフロントパネル付近の側面図
【図9】フロントパネル付近の正面図
【図10】サイドパネル付近の斜視図
【図11】サイド操作パネル及びフロント操作パネルの平面図
【図12】操向レバー付近の平面図
【図13】操向レバー付近の側面図
【図14】操向レバーの構造を示す詳細図
【図15】操向レバーの操作方法を説明する概略図
【図16】油圧ユニットにおける油圧回路図
【図17】制御装置のブロック図
【図18】発明の実施の第1別形態における操向レバー付近の平面図
【符号の説明】
【0150】
3 刈取部
70 操向レバー
70A 操作面
72 操作部
74 上昇スイッチ(第1スイッチ)
75 下降スイッチ(第2スイッチ)
X 運転部
【技術分野】
【0001】
本発明は、機体の前部に昇降自在に設けられた刈取部と、機体の横一方側に設けられた運転部とを備えると共に、運転部の前部に機体操向用の操向レバーを備えたコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の技術としては、例えば特許文献1に開示されているように、運転台(特許文献1の図1の10)に、操向兼刈取部昇降用レバー(特許文献1の図1の11)を備え、この操向兼刈取部昇降用レバーに設けた微調節スイッチ(特許文献1の図1の14,15)を操作することで、刈取部の高さを微調節できるように構成された刈取部昇降装置が知られている。
【0003】
【特許文献1】特開2001−204218号公報(図1参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の刈取部昇降装置では、上昇用微調節スイッチ(特許文献1の図1の14)と、下降用微調節スイッチ(特許文献1の図1の15)とが、操向兼刈取部昇降用レバーの同じ面に上下に並べて配設されている。その結果、機体前方の作物等を確認しながら、操向兼刈取部昇降用レバーを左右に揺動操作して機体を操向させると、機体前方の作物の状況や操向兼刈取部昇降用レバーの操作に気をとられて、微調節スイッチの位置を正確に確認して微調節スイッチを操作することが難しくなることがあり、上昇用微調節スイッチと下降用微調節スイッチとを誤操作するおそれがあった。
【0005】
また、特許文献1の刈取部昇降装置では、上昇用微調節スイッチと、下降用微調節スイッチとをいずれも右手の親指で操作するように構成されている。その結果、上昇用微調節スイッチを操作する場合と、下降用微調節スイッチを操作する場合とで、右手の指の動きがあまり相違しないため、上昇用微調節スイッチと下降用微調節スイッチとを誤操作するおそれがあった。
本発明は、第1及び第2スイッチの誤操作を防止しながら、第1及び第2スイッチの操作性を向上させることができ、操向レバーの操作性を向上させることができるコンバインを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[I]
(構成)
本発明の第1特徴は、コンバインを次のように構成することにある。
機体の前部に昇降自在に設けられた刈取部と、機体の横一方側に設けられた運転部とを備え、前記運転部の前部に機体操向用の操向レバーを備えて、互いに相反する操作をする第1及び第2スイッチを、前記操向レバーにおける操作部の異なる面に配設してある。
【0007】
(作用)
本発明の第1特徴によると、互いに相反する操作をする第1及び第2スイッチは、操向レバーにおける操作部の異なる面に配設されているので、例えば機体前方の作物の状況や操向レバーの操作に気をとられて第1及び第2スイッチの位置を正確に確認できない場合であっても、第1及び第2スイッチを誤操作することが少なくなる。
【0008】
本発明の第1特徴によると、互いに相反する操作をする第1及び第2スイッチを、操向レバーにおける操作部の異なる面に配設することで、第1及び第2スイッチを右手の異なる指で操作することができ、又は、第1及び第2スイッチを右手の指の異なる動きで操作することができる。その結果、第1及び第2スイッチを誤操作し難い位置に配置し、第1及び第2スイッチの誤操作を防止しながら、第1及び第2スイッチの操作性を向上させることができる。
【0009】
(発明の効果)
本発明の第1特徴によると、操向レバーの操作性を向上させることができ、コンバインの操作性を向上させることができる。
【0010】
[II]
(構成)
本発明の第2特徴は、本発明の第1特徴のコンバインにおいて、次のように構成することにある。
前記第1スイッチを、前記操向レバーにおける操作部の運転者側に向く操作面に配設すると共に、前記第2スイッチを、前記操向レバーにおける操作部の側面に配設してある。
【0011】
(作用)
本発明の第2特徴によると、本発明の第1特徴と同様に前項[I]に記載の「作用」を備えており、これに加えて以下のような「作用」を備えている。
本発明の第2特徴によると、例えば第1スイッチを右手の親指で操作し、第2スイッチを右手の親指以外の指で操作することができ、又は、例えば右手の親指を立てて第1スイッチを操作し、右手の親指を横に倒して第2スイッチを操作することができる。これにより、右手の親指以外の指で操向レバーを握って操向レバーを操作しながら、第1及び第2スイッチを容易に操作することができる。その結果、第1及び第2スイッチの操作性を更に向上させることができる。
【0012】
(発明の効果)
本発明の第2特徴によると、本発明の第1特徴と同様に前項[I]に記載の「発明の効果」を備えており、これに加えて以下のような「発明の効果」を備えている。
本発明の第2特徴によると、操向レバーの操作性を更に向上させることができ、コンバインの操作性を更に向上させることができる。
【0013】
[III]
(構成)
本発明の第3特徴は、本発明の第2特徴のコンバインにおいて、次のように構成することにある。
前記第1スイッチを、前記刈取部を上昇する上昇スイッチで構成し、前記第2スイッチを、前記刈取部を下降する下降スイッチで構成してある。
【0014】
(作用)
本発明の第3特徴によると、本発明の第2特徴と同様に前項[II]に記載の「作用」を備えており、これに加えて以下のような「作用」を備えている。
本発明の第3特徴によると、例えば上昇スイッチを右手の親指で操作して刈取部を上昇させ、下降スイッチを右手の親指以外の指で操作して刈取部を下降させることができ、又は、例えば右手の親指を立てて上昇スイッチを操作して刈取部を上昇させ、右手の親指を横に倒して下降スイッチを操作して刈取部を下降させることができる。これにより、右手の親指以外の指で操向レバーを握って操向レバーを操作しながら、上昇及び下降スイッチを容易に操作することができる。その結果、上昇及び下降スイッチにより、操向レバーを操作しながらの刈取部の昇降を容易に行うことができる。
【0015】
(発明の効果)
本発明の第3特徴によると、本発明の第2特徴と同様に前項[II]に記載の「発明の効果」を備えており、これに加えて以下のような「発明の効果」を備えている。
本発明の第3特徴によると、操向レバーの操作性を更に向上させることができ、コンバインの操作性を更に向上させることができる。
【0016】
[IV]
(構成)
本発明の第4特徴は、本発明の第3特徴のコンバインにおいて、次のように構成することにある。
前記上昇スイッチを操作すると、前記刈取部が自動的に上昇を開始すると共に、前記刈取部が最も上昇した上昇位置で自動的に停止し、前記下降スイッチを操作すると、前記刈取部が自動的に下降を開始すると共に、前記刈取部が刈取作業位置で自動的に停止する。
【0017】
(作用)
本発明の第4特徴によると、本発明の第3特徴と同様に前項[III]に記載の「作用」を備えており、これに加えて以下のような「作用」を備えている。
本発明の第4特徴によると、上昇スイッチを操作するだけで、刈取部を自動的に上昇位置に上昇させて停止することができ、下降スイッチを操作するだけで、刈取部を自動的に刈取作業位置に下降させて停止することができる。これにより、刈取部が上昇位置に上昇し又は刈取作業位置に下降するまで、上昇又は下降スイッチを押し続けなくても、刈取部を自動的に上昇位置又は刈取作業位置に昇降して位置決めできる。その結果、上昇及び下降スイッチにより、操向レバーを操作しながらの刈取部の昇降を更に容易に行うことができる。
【0018】
(発明の効果)
本発明の第4特徴によると、本発明の第3特徴と同様に前項[III]に記載の「発明の効果」を備えており、これに加えて以下のような「発明の効果」を備えている。
本発明の第4特徴によると、操向レバーの操作性を更に向上させることができ、コンバインの操作性を更に向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
[自脱型コンバインの全体構成]
図1及び図2に基づいてキャビン付き自脱型コンバインの全体構成について説明する。図1及び図2に示すように、右及び左のクローラ走行装置1で支持された機体の前部に支持フレーム2が横軸心P1周りに昇降自在に支持され、支持フレーム2を昇降駆動する昇降シリンダ2aが備えられており、支持フレーム2に刈取部3が支持されている。
【0020】
クローラ走行装置1には、前部及び後部昇降機構(図示せず)が装備されており、この前部及び後部昇降機構を操作することにより、機体フレームBに対するトラックフレーム1bの姿勢を変更することで、後述する自動水平制御又は自動左右方向制御を実施し、路面又は圃場の凹凸に対して機体の前後及び左右方向の傾斜を変更調節できるように構成されている。
【0021】
機体の前部の右側にキャビン4が備えられており、このキャビン4は、運転部フレーム4Aと、キャビン4の右側面に揺動開閉自在に設けられた乗降用ドア4Bと、キャビン4の前部及び前部側部を覆う前面ガラス4Cと、キャビン4の左側面に開閉自在に設けられた開閉式ドア(図示せず)と、キャビン4の天井を構成するルーフ部材4Dとを備えられて構成されている。これにより、キャビン4内に、運転部Xが形成されている。
【0022】
キャビン4の運転座席5の下側にエンジン6が備えられている。機体の後部の左側に扱ぎ胴(図示せず)を有する脱穀部7が備えられており、この脱穀部7の扱ぎ胴は、脱穀部7に揺動開閉自在に支持されて、メンテナンス時等に扱ぎ胴と共に脱穀部7の上部を開閉できるように構成されている。脱穀部7は、図示しない脱穀クラッチを介してエンジン6と連動連結されており、エンジン6からの動力で脱穀部7が駆動されるように構成されている。
【0023】
機体の後部の右側にグレンタンク8が備えられており、グレンタンク8の後部にアンローダ9が装備されている。機体の後部に排ワラ処理装置Aが装備されており、この排ワラ処理装置Aにより、排ワラを細かく切断する切断処理と、排ワラを結束する結束処理ができるように構成されている。
【0024】
機体の前部の左右中央付近にミッションケース10が備えられており、キャビン4がミッションケース10の右の横外側に備えられている。ミッションケース10の左の横外側の後方に横軸心P1が位置して、横軸心P1の位置から前側に支持フレーム2が延出されており、支持フレーム2がミッションケース10の左の横外側に位置している。
【0025】
[ミッションケース内の伝動系(直進系)の構造]
図2〜図5に基づいてミッションケース内の伝動系(直進系)の構造について説明する。図3及び図4に示すように、ミッションケース10はアルミダイキャスト製で、右側部分10R及び左側部分10Lの2分割構造に構成されて、ミッションケース10の右側部分10Rの上部の外部に段差状の凹部10aが形成されており、正面視(図3参照)においてミッションケース10(右及び左側部分10R,10L)の合わせ部10bの近傍にまで、凹部10aが入り込んでいる。
【0026】
静油圧式無段変速装置11がミッションケース10(右側部分10R)の凹部10aに入り込むように配置され、静油圧式無段変速装置11のポートブロック11aが、ミッションケース10(右側部分10R)の凹部10aに連結されている。静油圧式無段変速装置11のポートブロック11aに円筒状の支持部材12が連結されて、支持部材12が左側に延出されており、支持部材12のアーム12aがミッションケース10(左側部分10L)に連結されている。
【0027】
ミッションケース10(右及び左側部分10R,10L)の下部の外部に、右の支持部10c及び左の支持部10cが備えられている。右の伝動ケース14及び左の伝動ケース14が備えられており、右及び左の伝動ケース14が、ミッションケース10(右及び左側部分10R,10L)の右及び左の支持部10cに連結されて前側に延出されている。右及び左の伝動ケース14に右及び左の車軸ケース15が連結されて右及び左側に延出されており、右及び左のクローラ走行装置1を駆動するスプロケット1aが、右及び左の車軸ケース15の右及び左側の端部に備えられている。
【0028】
ミッションケース10(右側部分10R)の下部の外部において、ミッションケース10(右及び左側部分10R,10L)の右及び左の支持部10cとは異なる部分に、連結部10dが備えられており、ミッションケース10(右側部分10R)の連結部10dと右及び左の伝動ケース14とに亘って、連係部材13が連結されている。なお、比較的小型(比較的低出力のエンジン)の作業車においてもミッションケース10を転用できるように構成されており、この場合には、連結部材13を連結しない。
【0029】
図2に示すように、支持部材12に入力軸16が支持され、入力軸16の端部に入力プーリー17が連結されており、支持部材12の内部において静油圧式無段変速装置11の入力軸11bと入力軸16とが、連結部材18を介して連結されている(図5参照)。エンジン6の動力は伝動ベルト19を介して入力プーリー17に伝達されており、主クラッチ19aを入り側に操作すると、エンジン6の動力が伝動ベルト19を介して静油圧式無段変速装置11に伝達される。エンジン6の動力は伝動ベルト20を介して静油圧式無段変速装置21に伝達されており、刈取クラッチ20aを入り側に操作すると、エンジン6の動力が伝動ベルト20及び静油圧式無段変速装置21を介して刈取部3に伝達される。
【0030】
静油圧式無段変速装置21を操作することにより、刈取部3の速度が、機体の走行速度に比例して増加する標準速度と、機体の走行速度に比例しかつ標準速度よりも大きい変化率で機体の走行速度が増加する倒伏速度とに切り換え可能に構成されている。
【0031】
図4及び図5に示すように、ミッションケース10(右及び左側部分10R,10L)の上部において、ミッションケース10(右側部分10R)の凹部10aに隣接(対向)するように、ミッションケース10(左側部分10L)に入力軸22が支持され、入力軸22に伝動ギヤ23,24がスプライン構造により固定されている。静油圧式無段変速装置11の出力軸11cがミッションケース10(右及び左側部分10R,10L)の内部に挿入され、スプライン構造により伝動ギヤ24(入力軸22)に連結されている。
【0032】
ミッションケース10(右及び左側部分10R,10L)の上部に支持された伝動軸27に、高速ギヤ25及び低速ギヤ26が相対回転自在に外嵌され、伝動ギヤ23及び高速ギヤ25、伝動ギヤ24及び低速ギヤ26が咬合しており、シフト部材28がスプライン構造により伝動軸27に一体回転及びスライド自在に外嵌されている。これによって、伝動ギヤ23及び高速ギヤ25、伝動ギヤ24及び低速ギヤ26、シフト部材28により副変速装置が構成されており、シフト部材28を高速及び低速ギヤ25,26に咬合させることにより、入力軸22の動力が高低2段(高速及び低速位置)に変速されて、伝動軸27に伝達される。通常は、シフト部材28が高速ギヤ25に咬合する位置にスライド操作されて、高速位置が設定されている。
【0033】
図4に示すように、ミッションケース10(右及び左側部分10R,10L)の下部に亘って伝動軸29が支持され、伝動軸29の左側部(ミッションケース10の左側部分10Lの壁部の内面近傍)に伝動ギヤ31が固定されている。伝動軸27の左側部(ミッションケース10の左側部分10Lの壁部の内面近傍)に伝動ギヤ30が固定されて、伝動ギヤ30,31が咬合している。これにより、ミッションケース10(右及び左側部分10R,10L)の合わせ部10bに対して、左側(ミッションケース10の左側部分10L)に、入力軸22及び伝動軸27の大部分、伝動ギヤ30,31が配置されている。
【0034】
伝動軸27の右側部(ミッションケース10の右側部分10R)において、右及び左の出力ギヤ32R,32Lが伝動軸29に相対回転自在に外嵌され、右及び左の出力ギヤ32R,32Lの右及び左側に、右及び左の咬合部33R,33Lがスプライン構造により伝動軸29に一体回転及びスライド自在に外嵌されている(右の咬合部33Rがミッションケース10の右側部分10Rの壁部の内面近傍に配置されている)。右の出力ギヤ32R及び右の咬合部33Rの間で右のサイドクラッチ34が構成され、左の出力ギヤ32L及び左の咬合部33Lの間で左のサイドクラッチ34が構成されている。
【0035】
ミッションケース10(右及び左側部分10R,10L)の右及び左の支持部10cと、右及び左の伝動ケース14とに亘って伝動軸35が支持され、ミッションケース10(右及び左側部分10R,10L)の内部において伝動軸35に固定された伝動ギヤ36が、右及び左の出力ギヤ32R,32Lに咬合しており、右及び左の伝動ケース14の内部において、伝動軸35に伝動ギヤ37が固定されている。右及び左の伝動ケース14、右及び左の車軸ケース15に亘って、右及び左の車軸38が支持されており、右及び左の伝動ケース14の内部において、右及び左の車軸38に固定された伝動ギヤ39が伝動ギヤ37に咬合している。右及び左の車軸ケース15の内部において、右及び左の車軸38が右及び左側に延出されており、右及び左のクローラ走行装置1のスプロケット1a(図2参照)が、右及び左の車軸38の右及び左側の端部に連結されている。
【0036】
上記の構造により、図4に示すように、入力軸22の動力が、伝動軸27、伝動ギヤ30,31、伝動軸29、右及び左のサイドクラッチ34(右及び左の咬合部33R,33L)、右及び左の出力ギヤ32R,32L、伝動ギヤ36、伝動軸35、伝動ギヤ37,39、右及び左の車軸38を介して、右及び左のクローラ走行装置1に伝達されて、機体は直進する。
【0037】
右及び左のサイドクラッチ34は伝動状態と遮断状態とに操作可能に構成されており、右及び左のサイドクラッチ34が伝動状態に操作されると、伝動軸29の動力が右及び左のサイドクラッチ34を介して右及び左のクローラ走行装置1に伝達され、右及び左のサイドクラッチ34が遮断状態に操作されると、伝動軸29から右及び左のサイドクラッチ34を介しての右及び左のクローラ走行装置1への動力の伝達が遮断される。
【0038】
[ミッションケース内の伝動系(旋回系)の構造]
図4及び図5に基づいてミッションケース内の伝動系(旋回系)の構造について説明する。図4及び図5に示すように、緩旋回クラッチ46は摩擦多板式に構成されており、作動油が供給されることで伝動状態に操作され、作動油が排出されることで遮断状態に操作される。右及び左の旋回クラッチ49は摩擦多板式に構成されており、作動油が供給されることで伝動状態に操作される。この場合、右及び左の旋回クラッチ49において、摩擦板が互いに密になるように配置されており、作動油が排出されても右及び左の旋回クラッチ49が半伝動状態となるように構成されている。
【0039】
これにより、緩旋回クラッチ46が伝動状態に操作されると、伝動軸29の動力が右の咬合部32R、伝動ギヤ45、緩旋回クラッチ46、伝動軸44及び伝動ギヤ48を介して、伝動軸29と同方向の回転で伝動軸29よりも低速の動力として、旋回クラッチケース47に伝達される。右又は左のサイドクラッチ34を遮断状態に操作し、右又は左の旋回クラッチ49を伝動状態に操作すると、伝動軸29と同方向の回転で伝動軸29よりも低速の動力が右又は左の出力ギヤ32R,32Lに伝達される。
【0040】
伝動軸44の左側部に、ブレーキ50が備えられている。ブレーキ50は摩擦多板式に構成されており、作動油が供給されることで制動状態に操作され、作動油が排出されることで解除状態に操作される。これにより、ブレーキ50が制動状態に操作されると、伝動軸44及び伝動ギヤ48を介して、旋回クラッチケース47が制動状態となる。右又は左のサイドクラッチ34が遮断状態に操作され、右又は左の旋回クラッチ49が伝動状態に操作されると、右又は左の出力ギヤ32R,32Lが制動状態となる。
【0041】
伝動軸27の左側部に伝動ギヤ51が固定され、伝動軸44の左側部に伝動ギヤ52が相対回転自在に外嵌されて、伝動ギヤ51,52が咬合しており、伝動軸44と伝動ギヤ52との間に逆転クラッチ53が備えられている。逆転クラッチ53は摩擦多板式に構成されており、作動油が供給されることで伝動状態に操作され、作動油が排出されることで遮断状態に操作される。
【0042】
これにより、逆転クラッチ53が伝動状態に操作されると、伝動軸27の動力が伝動ギヤ51,52、逆転クラッチ53、伝動軸44及び伝動ギヤ48を介して、伝動軸29と逆方向の回転の動力として、旋回クラッチケース47に伝達される。右又は左のサイドクラッチ34が遮断状態に操作され、右又は左の旋回クラッチ49が伝動状態に操作されると、伝動軸29と逆方向の回転の動力が右又は左の出力ギヤ32R,32Lに伝達される。
【0043】
逆転クラッチ53は右又は左のクローラ走行装置1の一方と逆方向の動力を右又は左のクローラ走行装置1の他方に伝達するものであり、比較的大きなトルク(逆方向の動力)を伝達する。緩旋回クラッチ46は右又は左のクローラ走行装置1の一方と同方向で低速の動力を右又は左のクローラ走行装置1の他方に伝達するものであり、比較的小さなトルク(同方向の低速の動力)を伝達する。
【0044】
[運転部の詳細構造]
図6〜図11に基づいて運転部Xの詳細構造について説明する。図6及び図7に示すように、運転部フレーム4Aは、基部フレーム4aと、基部フレーム4aにおける後部の上面側から立設された座席支持フレーム4bと、基部フレーム4aにおける前部の上面側から立設されたサイドカバー4cと、基部フレーム4aにおける左側部の上面側から立設されたフロントカバー4dとを備えて構成されている。なお、運転部Xに装備されたスイッチ等は、図17に示すものを含め制御装置94に接続されている。
【0045】
座席支持フレーム4bには運転座席5が前後にスライド可能に支持されており、運転座席5の右側部にアームレスト80が座席支持フレーム4bの上部右側から立設されている。アームレスト80は、その後部の左右軸心周りで上下揺動自在に支持されており、後方に揺動させて運転座席5側に起立格納された格納姿勢と、前方下方に倒伏作用した作用姿勢(図7参照)とに姿勢変更可能に構成されている。
【0046】
サイドカバー4cの前端部とフロントカバー4dの左側端部とは連結されており、これにより、平面視でL字状の操縦部カバーが構成されている。
【0047】
サイドカバー4cの上部は、着脱可能に構成されたサイドパネル60で覆われており、このサイドパネル60に、主変速レバー61、サイド操作パネル62、クラッチレバー63、アンローダリモコン64等が装備されている。フロントカバー4dの上部は、着脱可能に構成されたフロントパネル66で覆われており、このフロントパネル66に、メータユニット67、操向レバー70、フロント操作パネル68、旋回状態切換操作具77、コンビネーションスイッチ78等が装備されている。
【0048】
フロントカバー4dの後方には、左側から、駐車ブレーキペダル81と、足載せ台82と、刈取掻き込みペダル83とが左右に並べて、フロントカバー4dの後面側に沿って配設されている。駐車ブレーキペダル81は、踏み込み操作により、機体に装備したブレーキ装置(図示せず)を作動させて、機体を停止した制動状態を現出できる。足載せ台82は、基部フレーム4aの上面側に固定されており、運転座席5に着座した運転者がこの足載せ台82に両足を載置できるように構成されている。
【0049】
刈取掻き込みペダル83を踏み込み操作して、主変速レバー61を中立位置Nから前進側に操作すると、機体は停止した状態のままで、刈取部3のみが駆動し、刈取部3における作物のこぼれを防止でき、これにより、畦際近くでの刈取作業を効率よく行うことができる。
【0050】
図8〜図10に示すように、サイドパネル60の前部には、前後に長い長穴形状の変速レバーガイド60aが形成されており、この変速レバーガイド60aを上下に連通するように主変速レバー61が装備されている。主変速レバー61は、サイドパネル60の前部下部で前後揺動自在に支持されており、後で詳説するが、主変速レバー61の操作位置に対応する位置に静油圧式無段変速装置11のポンプ11Pの斜板が操作され、変速レバーガイド60aの前後中間位置における中立位置Nから主変速レバー61を前方に揺動操作すると、主変速レバー61の前方への操作位置に対応して、静油圧式無段変速装置11が前進側に操作され、中立位置Nから主変速レバー61を後方に揺動操作すると、主変速レバー61の後方への操作位置に対応して、静油圧式無段変速装置11が後進側に操作される。
【0051】
サイドパネル60の前部は、斜め後方下方に傾斜する前部パネル面60Aが形成されており、この前部パネル面60Aに変速レバーガイド60aが形成され、主変速レバー61が装備されている。これにより、変速レバーガイド60aの外周部が見易くなって、変速レバーガイド60aの外周部における右側部に設けた操作位置表示部61cに対する主変速レバー61の位置関係を容易に確認できる。その結果、運転座席5に着座した運転者による主変速レバー61の操作性を向上できる。なお、前部パネル面60Aを右方下方に傾斜させてもよく、これにより、更に主変速レバー61が見易くなる。
【0052】
主変速レバー61は、レバー本体61aと、このレバー本体61aの上部に装着された握り部61bとを備えて構成されており、握り部61bには、ロックスイッチ61A、扱ぎ深さ手動スイッチ61B,61C、変速スイッチ61D、及び刈取変速スイッチ61Eが装備されている。
【0053】
ロックスイッチ61Aは、運転者が左手で握り部61bを握って、左手の親指で押し操作することで、主変速レバー61の位置保持が解除されて、主変速レバー61の前後揺動操作が許容されるように構成されている。扱ぎ深さ手動スイッチ61B,61Cは、押しボタン式に構成されており、扱ぎ深さ手動スイッチ61B,61Cを押し操作している間、脱穀部7による作物の扱ぎ深さが深く又は浅く変更調節され、扱ぎ深さ手動スイッチ61B,61Cの押し操作を止めると、その押し操作を止めた位置での扱ぎ深さに、脱穀部7での作物の扱ぎ深さが保持される。
【0054】
変速スイッチ61Dは、押しボタン式に構成されており、後で詳説するが、変速スイッチ61Dを左手の親指で押し操作すると、静油圧式無段変速装置11のモータ11Mの斜板が高速及び低速位置に操作される。これにより、変速スイッチ61Dを押し操作して、機体の走行速度を高速側又は低速側に切り替えることができる。変速スイッチ61Dを低速側に切り換えた状態で、通常の刈取作業等を行い、路上走行等における機体を高速で走行させる場合には、変速スイッチ61Dを高速側に切り換える。なお、変速スイッチ61Dの操作位置(高速側又は低速側)は、フロントパネル66のメータユニット67に表示される。また、フロントパネル66に備えた機体の電源を入切するメインスイッチ(図示せず)を入り側に操作した状態では、変速スイッチ61Dが低速側に設定変更(リセット)される。
【0055】
刈取変速スイッチ61Eは、押しボタン式に構成されており、刈取変速スイッチ61Eを左手の親指で押し操作して、機体の走行速度に対する刈取部3の速度を標準速度又は倒伏速度に切り換えることができる。これにより、機体を停止させなくても、刈取変速スイッチ61Eを操作することで、作物の状態により適正な刈取部3の速度を選択できる。なお、刈取変速スイッチ61Eの操作位置(標準速度又は倒伏速度)は、フロントパネル66のメータユニット67に表示される。また、フロントパネル66に備えた機体の電源を入切するメインスイッチ(図示せず)を入り側に操作した状態では、刈取変速スイッチ61Eが標準速度にリセットされる。
【0056】
変速レバーガイド60aは、その前端がフロントパネル66の後端より前側に長く延出された形状に成形されており(図6参照)、運転座席5に着座した運転者から見て、斜め左側前方の運転者の視界に入り易い位置に配設されている。これにより、主変速レバー61の誤操作を防止することができ、主変速レバー61の操作性を向上できる。
【0057】
変速レバーガイド60aの右側には、サイド操作パネル62が装着されている。サイドパネル60の前部右側部は、下方へ凹入した形状に成形されており、この凹入した形状に成形された部分に斜め右方下方に傾斜する操作パネル面60Bが形成されて、この操作パネル面60Bにサイド操作パネル62が装備されている。これにより、サイド操作パネル62が見易くなって、サイド操作パネル62に装備された操作スイッチ62A〜62Gの位置を容易に確認できる。その結果、運転座席5に着座した運転者によるサイド操作パネル62の操作性を向上できる。
【0058】
サイドパネル60の操作パネル面60Bは、主変速レバー61の右側に装備され、主変速レバー61を装着した前部パネル面60Aより低い位置に形成されている。これにより、主変速レバー61によって運転者の視界が遮られてサイド操作パネル62が見え難くなることを防止でき、かつ、サイド操作パネル62の操作スイッチ62A〜62Gによって運転者の視界が遮られて主変速レバー61の操作位置表示部61cが見え難くなることを防止できる。
【0059】
図11(a)に示すように、サイド操作パネル62には、前側から、分草杆操作スイッチ62A、刈高さ調節スイッチ62B、扱ぎ深さ自動スイッチ62Ca、オートクラッチスイッチ62Cb、わら処理切換スイッチ62D、自動走行制御スイッチ62E、脱穀操作スイッチ62F、扱ぎ胴操作スイッチ62Gが装備されている。
【0060】
分草杆操作スイッチ62Aは、押しボタン式の「開」及び「閉」の2つのスイッチからなり、分草杆開閉スイッチ62Aの「開」又は「閉」スイッチを押し操作している間、機体前部の左側部に揺動開閉自在に支持された分草杆(図示せず)を開閉することができ、分草杆開閉スイッチ62Aの押し操作を止めると、その押し操作を止めた位置で分草杆が停止する。
【0061】
刈高さ調節スイッチ62Bは、押しボタン式のリフトスイッチ62Ba、押しボタン式のオートスイッチ62Bbと、ダイアル式の刈高さ調節スイッチ62Bcとからなる。リフトスイッチ62Baを押し操作すると、刈取部3を圃場の凹凸が激しい場合等に、刈取部3が地面に突っ込まないように、刈取部3を上昇側へ制御し、オートスイッチ62Bbを押し操作すると、圃場の凹凸を感知しながら、刈取部3を昇降させて、適正な刈高さを保持するように制御する。また、刈高さ調節スイッチ62Bcをダイアル操作することで、刈取部3による刈高さを手動で高く又は低く変更調節できる。
【0062】
扱ぎ深さ自動スイッチ62Caは、押しボタン式のスイッチからなり、扱ぎ深さ自動スイッチ62Cを押し操作すると、脱穀部7の扱ぎ胴における作物の扱ぎ深さが適切な扱ぎ深さに自動で変更調節される。オートクラッチスイッチ62Cbは、押しボタン式のスイッチからなり、オートクラッチスイッチ62Cbを押し操作すると、主変速レバー61が中立位置Nに操作された場合、及び刈取部3を上昇させた場合に、刈取クラッチ20aが自動的に切り側に操作され、刈取部3の駆動が自動的に停止する。
【0063】
わら処理切換スイッチ62Dは、機体の後部に装備された排ワラ処理装置Aによる排ワラの処理形態を選択するスイッチであり、わら処理切換スイッチ62Dを押し操作することで、排ワラを細かく切断する切断処理(カッタ)と、排ワラを結束する結束処理(ドロッパ)とを選択できる。
【0064】
自動走行制御スイッチ62Eは、押しボタン式の自動方向制御スイッチ62Eaと、押しボタン式の自動車速制御スイッチ62Ebと、ダイアル式の車速変更スイッチ62Ecとからなり、自動方向制御スイッチ62Eaを押し操作すると、機体に装備された方位センサ(図示せず)の検出結果に基づいて、機体を精度よく直進させることのできる自動方向制御が実施される。自動車速制御スイッチ62Ebを押し操作すると、過去の走行速度(車速)を制御装置94で記憶及び更新しながら、走行速度が無理なく増減速され、圃場条件等に応じた最適な自動車速制御を実施する。また、車速変更スイッチ62Ecを操作することで、自動車速制御における走行速度を手動で速く又は遅く変更調節できる。
【0065】
脱穀操作スイッチ62Fは、押しボタン式の作物選択スイッチ62Faと、ダイアル式の選別板調節スイッチ62Fbと、ダイアル式の唐箕風量調節スイッチ62Fcとからなり、作物選択スイッチ62Faを押し操作することで、脱穀部7により処理する作物の種類(稲、麦等)を選択でき、作物の種類に応じた速度等に脱穀部7の仕様等が自動的に変更される。また、選別板調節スイッチ62Fbをダイアル操作することで、脱穀部7の選別板(図示せず)の開度を変更調節でき、唐箕風量調節スイッチ62Fcをダイアル操作することで、脱穀部7の唐箕(図示せず)から供給される選別風の風量を強く又は弱く変更調節できる。
【0066】
扱ぎ胴操作スイッチ62Gは、押しボタン式の「開」及び「閉」の2つのスイッチからなり、扱ぎ胴操作スイッチ62Gの「開」又は「閉」を押し操作している間、脱穀部7の扱ぎ胴(図示せず)を開閉することができ、扱ぎ胴操作スイッチ62Gの押し操作を止めると、その押し操作を止めた位置で扱ぎ胴が停止する。扱ぎ胴操作スイッチ62Gの「開」又は「閉」を押し続けて、扱ぎ胴が最も開いた最大開位置又は扱ぎ胴が最も閉じた下限閉位置に達すると、作動音(例えば「ピピッ」という音)が鳴り、聴覚的な情報が運転者に提供されるように構成されている。これにより、扱ぎ胴操作スイッチ62Gの「開」又は「閉」を作動音が鳴るまで押し続けて、扱ぎ胴操作スイッチ62Gの押し操作を止めることで、扱ぎ胴を最大開位置又は下限閉位置で停止させることができる。
【0067】
図8〜図10に示すように、サイドパネル60の後部には、斜め前方下方に傾斜する後部パネル面60Cが形成されており、この後部パネル面60Cに前後に長い長穴形状のクラッチレバーガイド60bが形成され、このクラッチレバーガイド60bを上下に連通するようにクラッチレバー63が装備されている。これにより、クラッチレバーガイド60bの外周部が見易くなって、クラッチレバーガイド60bの外周部における右側部に設けた操作位置表示部63cに対するクラッチレバー63の位置関係を容易に確認できる。その結果、運転座席5に着座した運転者によるクラッチレバー63の操作性を向上できる。なお、後部パネル面60Cを右方下方に傾斜させてもよく、これにより、クラッチレバー63が更に見易くなる。
【0068】
また、クラッチレバーガイド60bは、左右方向での位置が変速レバーガイド60aと略同一に設定され、変速レバーガイド60aとクラッチレバーガイド60bとが前後向きに直線状になるように配設されている(図6参照)。これにより、クラッチレバー63の操作性を向上できる。
【0069】
クラッチレバー63は、サイドパネル60の後部下部に揺動自在に支持されたレバー本体63aと、このレバー本体63aの上部に固定された握り部63bとを備えて構成されている。クラッチレバー63は、サイドパネル60の後部下部で前後揺動自在に支持されており、クラッチレバーガイド60bの後端位置にクラッチレバー63を操作すると図示しない脱穀クラッチ及び刈取クラッチ20aが切り側に操作され、クラッチレバーガイド60bの前後中間位置にクラッチレバー63を操作すると脱穀クラッチが入り側に操作され、クラッチレバー63の前端位置にクラッチレバー63を操作すると脱穀クラッチ及び刈取クラッチ20aが入り側に操作される。
【0070】
クラッチレバーガイド60bの右側には、リモコン装着部60Dが形成されている。リモコン装着部60Dのアンローダリモコン64を載置する面が、クラッチレバー63を装着した後部パネル面60Cより低くなるように、リモコン装着部60Dが下方に凹入した形状に形成されている。これにより、リモコン装着部60Dにアンローダリモコン64を装着した状態で、アンローダリモコン64に遮られてクラッチレバー63の操作位置表示部63cが見え難くなることを防止できる。
【0071】
リモコン装着部60Dには、アンローダ9を操作するアンローダリモコン64が着脱自在に装着されている。アンローダリモコン64は、伸縮ケーブル64aを介して制御装置94と接続されており、リモコン装着部60Dからアンローダリモコン64を取り外して、運転部Xにおいてアンローダ9を見ながら、アンローダリモコン64を操作できるように構成されている。
【0072】
フロントパネル66には、斜め後方下方に傾斜する傾斜面66Aが形成されており、この傾斜面の左右中央部に、メータユニット67が装備され、フロントパネル66における傾斜面66Aの左側部に、フロント操作パネル68が装備されている。
【0073】
図11(b)に示すように、フロント操作パネル68には、左側から、アクセルスイッチ68A、機体昇降制御スイッチ68B、自動変更スイッチ68Cが装備されている。
【0074】
アクセルスイッチ68Aは、押しボタン式の自動アクセルスイッチ68Aaと、ダイアル式のアクセル調節スイッチAbとからなり、自動アクセルスイッチ68Aaを押し操作することにより、自動アクセル制御の実施及び解除ができる。自動アクセルスイッチ68Aaを押し操作して自動アクセル制御が実施された状態で、クラッチレバー63を操作して図示しない脱穀クラッチを入り側に操作したり、主変速レバー61を操作して機体を走行させたりすると、アクセル調節スイッチAbのダイアル操作で設定したエンジン回転数に自動的に変更調節される。自動アクセルスイッチ68Aaを押し操作して、自動アクセル制御が解除された状態では、常にアクセル調節スイッチAbのダイアル操作で設定したエンジン回転数に調節される。
【0075】
機体昇降制御スイッチ68Bは、前後左右スイッチ(4PCスイッチ)68Baと、左右スイッチ68Bbと、湿田スイッチ68Bcと、上げ基準スイッチ68Bdと、変更スイッチ68Be,68Beからなり、前後左右スイッチ68Baを押し操作すると、自動水平制御が実施され、機体の前後及び左右方向の傾きを修正し、機体を前後及び左右方向において水平に保つことができ、左右スイッチ68Bbを押し操作すると、自動左右方向制御が実施され、機体の左右方向の傾きを修正し、機体を左右方向において水平に保つことができる。
【0076】
湿田スイッチ68Bcは、湿田での刈取作業で使用するスイッチであり、前後左右スイッチ68Ba又は前後左右スイッチ68Baが押し操作されている状態でのみ湿田スイッチ68Bcを入り操作できる。これにより、湿田スイッチ68Bcを入り操作すると、自動水平制御又は自動左右方向制御の応答性が速くなり、湿田での刈取作業の作業性を向上できる。
【0077】
上げ基準スイッチ68Bdは、自動水平制御を行う上げ基準モード及び下げ基準モードを切り換えるスイッチであり、上げ基準スイッチ68Bdを押し操作し、上げ基準モードに切り換えると、変更スイッチ68Be,68Beにより設定された設定高さ、すなわち、機体が最も上昇した位置を基準として自動水平制御が実施される。上げ基準スイッチ68Bdを押し操作し、下げ基準モードに切り換えると、変更スイッチ68Be,68Beにより設定された設定高さ、すなわち、機体が最も下降した位置を基準として自動水平制御が実施される。
【0078】
自動変更スイッチ68Cは、周囲刈スイッチ68Caと、複数の設定スイッチ68Cbとからなり、周囲刈スイッチ68Caを押し操作すると、予め設定された周囲刈りに適した刈取条件に、機体の刈取条件が変更される。設定スイッチ68Cbを所定時間長押しすることで、前後左右スイッチ68Ba、左右スイッチ68Bb、湿田スイッチ68Bc、上げ基準スイッチ68Bd、及び変更スイッチ68Be,68Beにより設定した刈取条件を記憶させることができ、設定スイッチ68Cbを押し操作することで、記憶させた刈取条件での刈取作業が可能になる。
【0079】
[操向レバー付近の詳細構造]
図12〜図15に基づいて操向レバー70付近の詳細構造について説明する。図12〜図14に示すように、フロントパネル66の右側部には、中立位置に付勢された操向レバー70が装備されている。操向レバー70は、フロントパネル66の右側部の下部に十字揺動式に揺動自在に支持されており(図12の黒矢印参照)、後で詳説するが、操向レバー70を右方に揺動操作すると、機体が右側に旋回し、操向レバー70を左方に揺動操作すると、機体が左側に旋回する。
【0080】
また、操向レバー70を前方(前側)に揺動操作すると、操向レバー70を前方に揺動操作している間は、操向レバー70の揺動操作量に対応する速度で刈取部3が下降し(揺動操作量が多い程、下降速度が速く変更される)、操向レバー70の揺動操作を止めて中立位置に付勢されると、刈取部3が下降した位置で停止する。操向レバー70を後方(後側)に揺動操作すると、操向レバー70を後方に揺動操作している間は、操向レバー70の揺動操作量に対応する速度で刈取部3が上昇し(揺動操作量が多い程、上昇速度が速く変更される)、操向レバー70の揺動操作を止めて中立位置に付勢されると、刈取部3が上昇した位置で停止する。
【0081】
操向レバー70は、握り部71の上部に操作部72を備えて構成されており、この操作部72に、傾斜角調節スイッチ73、上昇スイッチ74(第1スイッチに相当)、下降スイッチ75(第2スイッチに相当)、及び旋回状態変更スイッチ76が装備されている。
【0082】
操向レバー70の操作部72には、平らな操作面70A(運転座席5に着座した運転者側に向く面)が形成されており、この操作面70Aに、傾斜角調節スイッチ73及び上昇スイッチ74が備えられている。
【0083】
図14に示すように、傾斜角調節スイッチ73は、水平スイッチ73C、前方傾斜スイッチ73f、後方傾斜スイッチ73r、右側傾斜スイッチ73R、左側傾斜スイッチ73Lにより構成されており、傾斜スイッチ73f,73r,73R,73Lにより、上述した自動水平制御における機体の制御目標となる姿勢を変更調節できるように構成されている。
【0084】
具体的には、前方傾斜スイッチ73fを押し操作すると、前方傾斜スイッチ73fを押し操作している間は、機体が所定の速度で前下がり傾斜し、前方傾斜スイッチ73fを押し操作を止めると、機体が前下がり傾斜した姿勢に制御目標が変更される。後方傾斜スイッチ73rを押し操作すると、後方傾斜スイッチ73rを押し操作している間は、機体が所定の速度で後下がり傾斜し、後方傾斜スイッチ73rを押し操作を止めると、機体が後下がり傾斜した姿勢に制御目標が変更される。
【0085】
また、右側傾斜スイッチ73Rを押し操作すると、右側傾斜スイッチ73Rを押し操作している間は、機体が所定の速度で右下がり傾斜し、右側傾斜スイッチ73Rを押し操作を止めると、機体が右下がり傾斜した姿勢に制御目標が変更される。左側傾斜スイッチ73Lを押し操作すると、左側傾斜スイッチ73Lを押し操作している間は、機体が所定の速度で左下がり傾斜し、左側傾斜スイッチ73Lを押し操作を止めると、機体が左下がり傾斜した姿勢に制御目標が変更される。
【0086】
水平スイッチ73Cを押し操作すると、傾斜スイッチ73f,73r,73R,73Lにより設定された機体の姿勢がリセットされ、自動水平制御における機体の制御目標となる姿勢が水平な姿勢に変更される。
【0087】
図12〜図14に示すように、傾斜角調節スイッチ73の左側下部で、操作面70Aの下部左側に、押しボタン式の上昇スイッチ74が装備されている。握り部71の右側面の上部には、押しボタン式の下降スイッチ75が装備されており、握り部71における操作面70Aとは反対側の面には、前方下方に突出した形状の旋回状態変更スイッチ76が装備されている。
【0088】
下降スイッチ75の外周部における上側には、突出部72a(誤操作防止部)が一体成形されており、この突出部72aにより下降スイッチ75の押し操作が部分的に制限されている。これにより、右手の人指し指の指先を下降スイッチ75の表面に位置決めしなければ、下降スイッチ75を押し操作できなくなり(人指し指の第1関節辺りを下降スイッチ75の表面に位置させると、突出部72aにより下降スイッチ75の押し操作が制限され)、誤って下降スイッチ75に触れてしまったような場合に、下降スイッチ75の誤操作を防止できる。
【0089】
握り部71の左側面側の上下中央部には、左側に突出した形状の突出部71aが一体成形されており、この突出部71aの上側に右手の親指を載置して操向レバー70の握り位置を正確に位置決めできるように構成されている。
【0090】
フロントパネル66の右側部における傾斜面66Aで、操向レバー70の右下側に、旋回状態切換操作具77が装備されており、この旋回状態切換操作具77の右上側に、コンビネーションスイッチ78が装備されている。コンビネーションスイッチ78は、ダイアル式に構成されており、運転者によるダイアル操作で機体前部に装備された前照灯の入切及び照射角等が変更できるように構成されている。
【0091】
旋回状態切換操作具77は、緩旋回位置S、信地旋回位置M、及び超信地旋回位置Hの3つの操作位置を備えたダイアル式に構成されており、刈取掻き込みペダル83を踏み込み操作しなくても、旋回状態切換操作具77をダイアル操作することにより、機体の旋回状態を変更できるように構成されている。旋回状態切換操作具77を緩旋回位置Sに切り換えると、旋回半径が比較的大きい緩旋回状態に切り換えられ、旋回状態切換操作具77を信地旋回位置Mに切り換えると、旋回半径が中程度の信地旋回状態に切り換えられ、旋回状態切換操作具77を超信地旋回位置Hに切り換えると、旋回半径が比較的小さい超信地旋回状態に切り換えられる。
【0092】
操向レバー70の後部には、手首支持部79が立設されており、手首支持部79は、運転部Xの内側に向けて水平姿勢の手首置き部79aと、フロントパネル66から両持ち状態に延出された左右の支柱部79bとを備えて構成されている。これにより、右腕の肘部分をアームレスト80に載置し、手首を手首置き部79aに支持させて、伸ばした手で操向レバー70を操作する。
【0093】
図14及び図15に基づいて操向レバー70における上昇及び下降スイッチ74,75、並びに旋回状態変更スイッチ76の操作方法について説明する。図15(a)に示すように、操向レバー70の握り部71を右手で握った状態から、右手の親指を立てて右側に少し親指を移動させることで、右手の親指の指先を上昇スイッチ74の上側に移動させることができ、この状態で、右手の親指を操作面70Aに押し当てることで、図15(b)に示すように、上昇スイッチ74を押し操作できる。
【0094】
この場合、上昇スイッチ74は操作面70Aの下部左側に配設されているので、右手の親指を移動させる距離が短くなって、上昇スイッチ74を迅速に押し操作できる。
【0095】
図15(a)に示すように、操向レバー70の握り部71を右手で握った状態から、右手の人差し指を立てて上方に移動させることで、右手の人差し指の指先を下降スイッチ75の位置に移動させることができ、この状態で、右手の人差し指の指先を操作部72の右側面に押し当てることで、図15(c)に示すように、下降スイッチ75を押し操作できる。この場合、突出部72aにより下降スイッチ75の押し操作が部分的に制限されているため、右手の人指し指の指先を下降スイッチ75の位置に位置決めしなければ、下降スイッチ75を押し操作できない。
【0096】
上昇スイッチ74を押し操作すると、上昇スイッチ74を押し続けなくても、刈取部3が自動的に上昇を開始すると共に、刈取部3が最も上昇した上昇位置で自動的に停止する。一方、下降スイッチ75を押し操作すると、下降スイッチ75を押し続けなくても、刈取部3が自動的に下降を開始すると共に、刈取部3が刈取作業位置で自動的に停止する。
【0097】
図14に示すように、操向レバー70の握り部71を右手で握った状態から、右手の人差し指を前側及び上方に少し移動させることで、右手の人差し指を旋回状態変更スイッチ76の前側に移動させる。この状態で、右手の人差し指を握ることで、旋回状態変更スイッチ76が操作部72側に入り込んで、旋回状態変更スイッチ76を入り側に操作できる。
【0098】
旋回状態切換操作具77が緩旋回位置Sに切り換えられた状態で、旋回状態変更スイッチ76を押し操作すると、旋回状態変更スイッチ76を押し操作している間は、機体の旋回状態が信地旋回状態に自動的に切り換えられ、旋回状態変更スイッチ76を押し操作を止めると、機体の旋回状態が緩旋回状態に自動的に切り換えられる。また、旋回状態切換操作具77が信地旋回位置Mに切り換えられた状態で、旋回状態変更スイッチ76を押し操作すると、旋回状態変更スイッチ76を押し操作している間は、機体の旋回状態が超信地旋回状態に自動的に切り換えられ、旋回状態変更スイッチ76を押し操作を止めると、機体の旋回状態が信地旋回状態に自動的に切り換えられる。
【0099】
[静油圧式無段変速装置の操作]
図3,図5及び図17に基づいて静油圧式無段変速装置11の操作について説明する。図5及び図17に示すように、静油圧式無段変速装置11のポンプ11Pが、中立位置N、中立位置Nから前進Fの高速側及び後進Rの高速側に無段変速自在に構成されており、静油圧式無段変速装置11のモータ11Mが高低2段に変速自在に構成されている。静油圧式無段変速装置11のポンプ11Pの斜板を操作する油圧シリンダ89、油圧シリンダ89に作動油を給排操作する制御弁90が備えられて、この制御弁90と運転部Xに備えられた主変速レバー61とが機械的に連係されている。これにより、主変速レバー61を操作すると、制御弁90が操作されて油圧シリンダ89が作動し、主変速レバー61の操作位置に対応する位置に静油圧式無段変速装置11のポンプ11Pの斜板が操作される。
【0100】
静油圧式無段変速装置11のモータ11Mの斜板を操作する油圧シリンダ92、油圧シリンダ92に作動油を給排操作する電磁操作式の制御弁93が備えられており、主変速レバー61の変速スイッチ61Dの操作信号が制御装置94に入力されている。これにより、主変速レバー61の変速スイッチ61Dを操作すると、制御装置94により制御弁93が操作され油圧シリンダ92が作動して、静油圧式無段変速装置11のモータ11Mの斜板が高速及び低速位置に操作される。
【0101】
図17に示すように、主変速レバー61の操作位置を検出する操作位置センサー95が備えられ、機体の走行速度を検出する走行速度センサー96が備えられて、操作位置センサー95及び走行速度センサー96の検出値が制御装置94に入力されている。静油圧式無段変速装置11のモータ11Mの斜板が高速位置であるか低速位置であるかの検出は、主変速レバー61の変速スイッチ61Dの操作信号により、制御装置94で認識される。これにより、静油圧式無段変速装置11のポンプ11P及びモータ11Mの操作位置、機体の走行速度により、図4及び図5に示す副変速装置(シフト部材28)が高速位置であるか低速位置であるかを認識することができる。
【0102】
図5に示す静油圧式無段変速装置11と副変速装置(シフト部材28)とにおいて、機械効率の良い伝動状態及び機械効率の悪い伝動状態がある。静油圧式無段変速装置11(ポンプ11P及びモータ11M)が高速領域で副変速装置(シフト部材28)が高速位置、静油圧式無段変速装置11(ポンプ11P及びモータ11M)が低速領域で副変速装置(シフト部材28)が高速位置、静油圧式無段変速装置11(ポンプ11P及びモータ11M)が低速領域で副変速装置(シフト部材28)が低速位置の状態において、機械効率の良い伝動状態となる。静油圧式無段変速装置11(ポンプ11P及びモータ11M)が高速領域で副変速装置(シフト部材28)が低速位置の状態において、機械効率の悪い伝動状態となる。
【0103】
この場合、操作位置センサー95及び走行速度センサー96の検出値、主変速レバー61の変速スイッチ61Dの操作信号により、制御装置94において、静油圧式無段変速装置11(ポンプ11P及びモータ11M)が高速領域で副変速装置(シフト部材28)が低速位置の状態であると認識されると、機械効率の悪い伝動状態であることが運転部Xのメータユニット67に表示されて、運転者に注意が喚起される。
【0104】
旋回状態切換操作具77により緩旋回状態、信地旋回状態及び超信地旋回状態を選択することができるのは、主変速レバー61の変速スイッチ61Dにより、静油圧式無段変速装置11のモータ11Mの斜板が低速位置に操作されている状態である。主変速レバー61の変速スイッチ61Dにより、静油圧式無段変速装置11のモータ11Mの斜板が高速位置に操作されている状態であると、旋回状態切換操作具77の操作位置及び旋回状態変更スイッチ76の操作に関係なく、機体の旋回状態が自動的に緩旋回状態に切り換えられる。
【0105】
図3及び図5に示すように、静油圧式無段変速装置11の入力軸11bにおいて入力軸16とは反対側の部分(静油圧式無段変速装置11の右の横側部)に、チャージポンプ55及び油圧ポンプ56が接続されて、静油圧式無段変速装置11の入力軸11bにより、チャージポンプ55及び油圧ポンプ56が駆動されるように構成されており、チャージポンプ55の作動油が静油圧式無段変速装置11に供給されている。油圧ユニット57がミッションケース10(左側部分10L)の左の支持フレーム2側の横側部の外面に連結されており、油圧ポンプ56からの外部配管(図示せず)が、油圧ユニット57に接続されている。
【0106】
[油圧ユニット及び制御装置の構成]
図16及び図17に基づいて油圧ユニット57及び制御装置94の構成について説明する。図16に示すように、油圧ユニット57の内部に、右旋回制御弁97、左旋回制御弁98、リリーフ弁99、アンロード弁100、比例制御弁101、旋回切換制御弁102、パイロット操作弁103,104が備えられている。
【0107】
右及び左旋回制御弁97,98は供給位置97a,98a及び排出位置97b,98bに操作自在な電磁操作式に構成されて、排出位置97b,98bに付勢されている。アンロード弁100は遮断位置100a及び排出位置100bに操作自在な電磁操作式に構成されて、遮断位置100aに付勢されている。右及び左旋回制御弁97,98と伝動軸29の油路29bとの間から分岐した油路105に、比例制御弁101及び旋回切換制御弁102が直列的に接続されており、旋回切換制御弁102が緩旋回クラッチ46、逆転クラッチ53及びブレーキ50に接続されている。
【0108】
比例制御弁101は電磁操作式に構成されて、作動油の流量制御が可能である。旋回切換制御弁102は、緩旋回位置102a、信地旋回位置102b及び超信地旋回位置102cに操作自在なパイロット操作式に構成されて、緩旋回位置102aに付勢されている。油路105から分岐したパイロット作動油を旋回切換制御弁102に供給して信地旋回位置102bに操作するように、パイロット操作弁103が構成され、油路105から分岐したパイロット作動油を旋回切換制御弁102に供給して超信地旋回位置102cに操作するように、パイロット操作弁104が構成されている。
【0109】
[操向レバーによる直進状態]
図16及び図17に基づいて操向レバー70による直進状態について説明する。図17に示すように、運転部Xに備えられた操向レバー70の操作位置が制御装置94に入力されており、操向レバー70は直進位置N、右及び左第1旋回位置R1,L1、右及び左第2旋回位置R2,L2に操作自在に構成されている。旋回状態切換操作具77が運転部Xに備えられて、旋回状態切換操作具77の操作位置が制御装置94に入力されており、旋回状態切換操作具77は緩旋回位置S、信地旋回位置M及び超信地旋回位置Hを備えている。
【0110】
図16及び図17に示すように、旋回状態切換操作具77の操作位置及び旋回状態変更スイッチ76の操作に関係なく、操向レバー70が直進位置Nに操作されると、右及び左旋回制御弁97,98が排出位置97b,98bに操作され、アンロード弁100が排出位置100bに操作されて、右及び左のサイドクラッチ34(右及び左の咬合部33R,33L)、右及び左の旋回クラッチ49から作動油が排出され、右及び左のサイドクラッチ34(右及び左の咬合部33R,33L)が伝動状態に操作されて、右及び左の旋回クラッチ49が半伝動状態に操作される。比例制御弁101により緩旋回及び逆転クラッチ46,53が遮断状態に操作され、ブレーキ50が解除状態に操作される。
【0111】
これにより、入力軸22の動力が、伝動軸27、伝動ギヤ30,31、伝動軸29、右及び左のサイドクラッチ34(右及び左の咬合部33R,33L)、右及び左の出力ギヤ32R,32L、伝動ギヤ36、伝動軸35、伝動ギヤ37,39、右及び左の車軸38を介して、右及び左のクローラ走行装置1に伝達されて、機体は直進する。
【0112】
[操向レバーによる緩旋回状態]
図16及び図17に基づいて操向レバー70による緩旋回状態について説明する。図16及び図17に示すように、旋回状態切換操作具77が緩旋回位置Sに操作されると、パイロット操作弁103,104により、旋回切換制御弁102が緩旋回位置102aに操作される。これにより、操向レバー70が右第1旋回位置R1に操作されると、右旋回制御弁97が供給位置97aに操作されて、アンロード弁100が遮断位置100aに操作され、右のサイドクラッチ34(右の咬合部33R)及び右の旋回クラッチ49に作動油が供給されて、右のサイドクラッチ34(右の咬合部33R)が遮断状態に操作され、右の旋回クラッチ49が伝動状態に操作される。
【0113】
この場合、左の旋回クラッチ49が半伝動状態であるので、左のサイドクラッチ34(左の咬合部33L)の動力が、左の出力ギヤ32L及び左の旋回クラッチ49から、右の旋回クラッチ49を介して右の出力ギヤ32Rに伝達され、伝動軸29と同方向の回転で伝動軸29より少し低速の動力が右の出力ギヤ32Rに伝達される。これにより、機体は緩やかに右に向きを変える。
【0114】
操向レバー70が右第1旋回位置R1に操作されると、前述のように右旋回制御弁97が供給位置97aに操作されアンロード弁100が遮断位置100aに操作されるのと同時に、比例制御弁101及び旋回切換制御弁102(緩旋回位置102a)を介して、緩旋回クラッチ46に作動油が供給され始めるのであり、操向レバー70が右第1旋回位置R1から右第2旋回位置R2に操作されるほど、比例制御弁101により緩旋回クラッチ46の作動圧が昇圧操作される。
【0115】
操向レバー70の操作位置に基づいて比例制御弁101により緩旋回クラッチ46の作動圧が昇圧操作されるのに伴って、伝動軸29の動力が右の咬合部33R、伝動ギヤ45、緩旋回クラッチ46、伝動軸44、伝動ギヤ48、旋回クラッチケース47及び右の旋回クラッチ49を介して、伝動軸29と同方向の回転で伝動軸29よりも低速の動力が右の出力ギヤ32Rに伝達される。
【0116】
この場合、左のサイドクラッチ34(左の咬合部33L)からの動力と、緩旋回クラッチ46からの動力とが、同時に右の出力ギヤ32Rに伝達される状態となるので、緩旋回クラッチ46の作動圧が低圧の範囲では、左のサイドクラッチ34(左の咬合部33L)からの動力が緩旋回クラッチ46からの動力に打ち勝って、左のサイドクラッチ34(左の咬合部33L)からの動力により右の出力ギヤ32Rが駆動される。これにより、緩旋回クラッチ46の作動圧が低圧の範囲では、機体は緩やかに右に向きを変える。
【0117】
次に操向レバー70の操作位置が右第2旋回位置R2に接近し、緩旋回クラッチ46の作動圧が高圧になると、緩旋回クラッチ46からの動力が左のサイドクラッチ34(左の咬合部33L)からの動力に打ち勝って、緩旋回クラッチ46からの動力により右の出力ギヤ32Rが駆動される。この状態において、左のサイドクラッチ34(左の咬合部33L)からの動力により右の出力ギヤ32Rが駆動されるよりも、緩旋回クラッチ46からの動力により右の出力ギヤ32Rが駆動される方が、右の出力ギヤ32Rが低速で駆動されることになり、機体は右に緩旋回する。
【0118】
操向レバー70が左第1旋回位置L1に操作されると、左旋回制御弁98が供給位置98aに操作されて、アンロード弁100が遮断位置100aに操作され、左のサイドクラッチ34(左の咬合部33L)及び左の旋回クラッチ49に作動油が供給されて、左のサイドクラッチ34(左の咬合部33L)が遮断状態に操作されて、左の旋回クラッチ49が伝動状態に操作される。これと同時に、前述と同様な操作が行われて、機体は緩やかに左に向きを変える。操向レバー70が左第1旋回位置L1から左第2旋回位置L2に操作されると、前述と同様な操作が行われて、機体は左に緩旋回する。
【0119】
[操向レバーによる信地旋回状態]
図16及び図17に基づいて操向レバー70による信地旋回状態について説明する。図16及び図17に示すように、旋回状態切換操作具77が信地旋回位置Mに操作されると、パイロット操作弁103,104により旋回切換制御弁102が信地旋回位置102bに操作される。これにより、操向レバー70が右第1旋回位置R1に操作されると、右旋回制御弁97が供給位置97aに操作されて、アンロード弁100が遮断位置100aに操作され、右のサイドクラッチ34(右の咬合部33R)及び右の旋回クラッチ49に作動油が供給されて、右のサイドクラッチ34(右の咬合部33R)が遮断状態に操作され、右の旋回クラッチ49が伝動状態に操作される。この場合、左の旋回クラッチ49が半伝動状態であるので、機体は緩やかに右に向きを変える。
【0120】
操向レバー70が右第1旋回位置R1に操作されると、前述のように右旋回制御弁97が供給位置97aに操作されアンロード弁100が遮断位置100aに操作されるのと同時に、比例制御弁101及び旋回切換制御弁102(信地旋回位置102b)を介して、ブレーキ50に作動油が供給され始めるのであり、操向レバー70が右第1旋回位置R1から右第2旋回位置R2に操作されるほど、比例制御弁101によりブレーキ50の作動圧が昇圧操作される。
【0121】
操向レバー70の操作位置に基づいて比例制御弁101によりブレーキ50の作動圧が昇圧操作されるのに伴って、伝動軸44、伝動ギヤ48、旋回クラッチケース47及び右の旋回クラッチ49を介して、右の出力ギヤ32Rに制動力が掛かる(図4参照)。
【0122】
この場合、左のサイドクラッチ34(左の咬合部33L)からの動力と、ブレーキ50の制動力とが、同時に右の出力ギヤ32Rに伝達される状態となるので、ブレーキ50の作動圧が低圧の範囲では、左のサイドクラッチ34(左の咬合部33L)からの動力がブレーキ50の制動力に打ち勝って、左のサイドクラッチ34(左の咬合部33L)からの動力により右の出力ギヤ32Rが駆動される。これにより、ブレーキ50の作動圧が低圧の範囲では、機体は緩やかに右に向きを変える。
【0123】
次に操向レバー70の操作位置が右第2旋回位置R2に接近し、ブレーキ50の作動圧が高圧になると、ブレーキ50の制動力が左のサイドクラッチ34(左の咬合部33L)からの動力に打ち勝って、ブレーキ50の制動力により右の出力ギヤ32Rが制動状態となり、機体は右に信地旋回する。
【0124】
図16及び図17に示すように、操向レバー70が左第1旋回位置L1に操作されると、左旋回制御弁98が供給位置98aに操作されて、アンロード弁100が遮断位置100aに操作され、左のサイドクラッチ34(左の咬合部33L)及び左の旋回クラッチ49に作動油が供給されて、左のサイドクラッチ34(左の咬合部33L)が遮断状態に操作されて、左の旋回クラッチ49が伝動状態に操作される。これと同時に、前述と同様な操作が行われて、機体は緩やかに左に向きを変える。操向レバー70が左第1旋回位置L1から左第2旋回位置L2に操作されると、前述と同様な操作が行われて、機体は左に信地旋回する。
【0125】
操向レバー70の握り部72に備えられた旋回状態切換操作具77が緩旋回位置Sに操作され、操向レバー70が右(左)第1旋回位置R1(L1)から右(左)第2旋回位置R2(L2)に操作された右又は左の緩旋回状態において、もう少し小さな旋回半径で旋回する必要が生じたとする。
【0126】
この場合、操向レバー70を右(左)第1旋回位置R1(L1)から右(左)第2旋回位置R2(L2)に操作した状態で、操向レバー70の旋回状態変更スイッチ76が押し操作されると、旋回切換制御弁102が緩旋回位置102aから信地旋回位置102bに操作されて、機体は右(左)に信地旋回する。この信地旋回状態は操向レバー70の旋回状態変更スイッチ76が押し操作されている間だけであり、操向レバー70の旋回状態変更スイッチ76の押し操作を止めると、旋回切換制御弁102が信地旋回位置102bから緩旋回位置102aに操作されて、機体は緩旋回状態に戻る。
【0127】
[操向レバーによる超信地旋回状態]
図16及び図17に基づいて操向レバー70による超信地旋回状態について説明する。図16及び図17に示すように、旋回状態切換操作具77が超信地旋回位置Hに操作されると、パイロット操作弁103,104により旋回切換制御弁102が超信地旋回位置102cに操作される。これにより、操向レバー70が右第1旋回位置R1に操作されると、右旋回制御弁97が供給位置97aに操作されて、アンロード弁100が遮断位置100aに操作され、右のサイドクラッチ34(右の咬合部33R)及び右の旋回クラッチ49に作動油が供給されて、右のサイドクラッチ34(右の咬合部33R)が遮断状態に操作され、右の旋回クラッチ49が伝動状態に操作される。この場合、左の旋回クラッチ49が半伝動状態であるので、機体は緩やかに右に向きを変える。
【0128】
操向レバー70が右第1旋回位置R1に操作されると、前述のように右旋回制御弁97が供給位置97aに操作されアンロード弁100が遮断位置100aに操作されるのと同時に、比例制御弁101及び旋回切換制御弁102(超信地旋回位置102c)を介して、逆転クラッチ53に作動油が供給され始めるのであり、操向レバー70が右第1旋回位置R1から右第2旋回位置R2に操作されるほど、比例制御弁101により逆転クラッチ53の作動圧が昇圧操作される。
【0129】
操向レバー70の操作位置に基づいて比例制御弁101により逆転クラッチ53の作動圧が昇圧操作されるのに伴って、伝動軸27の動力が伝動ギヤ51,52、逆転クラッチ53、伝動軸44、伝動ギヤ48、旋回クラッチケース47及び右の旋回クラッチ49を介して、伝動軸29と逆方向の回転の動力として右の出力ギヤ32Rに伝達される(図4参照)。
【0130】
この場合、左のサイドクラッチ34(左の咬合部33L)からの動力と、逆転クラッチ53からの動力とが、同時に右の出力ギヤ32Rに伝達される状態となるので、逆転クラッチ53の作動圧が低圧の範囲では、左のサイドクラッチ34(左の咬合部33L)からの動力が逆転クラッチ53からの動力に打ち勝って、左のサイドクラッチ34(左の咬合部33L)からの動力により右の出力ギヤ32Rが駆動される。これにより、逆転クラッチ53の作動圧が低圧の範囲では、機体は緩やかに右に向きを変える。
【0131】
次に操向レバー70の操作位置が右第2旋回位置R2に接近し、逆転クラッチ53の作動圧が高圧になると、逆転クラッチ53からの動力が左のサイドクラッチ34(左の咬合部33L)からの動力に打ち勝って、逆転クラッチ53からの動力により右の出力ギヤ32Rが駆動される。この状態において、左の出力ギヤ32Lに対して、右の出力ギヤ32Rが逆方向に駆動されて、機体は右に超信地旋回する。
【0132】
図16及び図17に示すように、操向レバー70が左第1旋回位置L1に操作されると、左旋回制御弁98が供給位置98aに操作されて、アンロード弁100が遮断位置100aに操作され、左のサイドクラッチ34(左の咬合部33L)及び左の旋回クラッチ49に作動油が供給されて、左のサイドクラッチ34(左の咬合部33L)が遮断状態に操作されて、左の旋回クラッチ49が伝動状態に操作される。これと同時に、前述と同様な操作が行われて、機体は緩やかに左に向きを変える。操向レバー70が左第1旋回位置L1から左第2旋回位置L2に操作されると、前述と同様な操作が行われて、機体は左に超信地旋回する。
【0133】
操向レバー70の握り部72に備えられた旋回状態切換操作具77が信地旋回位置Mに操作され、操向レバー70が右(左)第1旋回位置R1(L1)から右(左)第2旋回位置R2(L2)に操作された右又は左の信地旋回状態において、もう少し小さな旋回半径で旋回する必要が生じたとする。
【0134】
この場合、操向レバー70を右(左)第1旋回位置R1(L1)から右(左)第2旋回位置R2(L2)に操作した状態で、操向レバー70の旋回状態変更スイッチ76が押し操作されると、旋回切換制御弁102が信地旋回位置102bから超信地旋回位置102cに操作されて、機体は右(左)に超信地旋回する。この超信地旋回状態は操向レバー70の旋回状態変更スイッチ76が押し操作されている間だけであり、操向レバー70の旋回状態変更スイッチ76の押し操作を止めると、旋回切換制御弁102が超信地旋回位置102cから信地旋回位置102bに操作されて、機体は信地旋回状態に戻る。
【0135】
[発明の実施の第1別形態]
前述の[発明を実施するための最良の形態]においては、操向レバー70に上昇スイッチ74及び下降スイッチ75を備えた例を示したが、図18に示すような、操向レバー770を採用してもよい。なお、後述する以外の他の構成は、前述の[発明を実施するための最良の形態]と同様である。
【0136】
図18に示すように、操向レバー70の操作面70Aの下部における左右中央部には、上昇スイッチ74が設けられており、操向レバー70の操作部72の前面側(操作面70Aと逆側の面)には、下降スイッチ75が設けられている。これにより、操向レバー70の握り部71を右手で握って、右手の親指で上昇スイッチ74を操作でき、右手の人差し指で下降スイッチ75を操作できる。
【0137】
操向レバー70の操作面70Aの下部における右側部で、傾斜角調節スイッチ73と上昇スイッチ74との間に、押しボタン式の右サイドクラッチスイッチ85Rが設けられており、操向レバー70の操作面70Aの下部における左側部で、傾斜角調節スイッチ73と上昇スイッチ74との間に、押しボタン式の左サイドクラッチスイッチ85Lが設けられている。右及び左のサイドクラッチスイッチ85R,85Lの形状は、三角形状に形成されており、これにより、操作するサイドクラッチ34が右又は左であるかを視覚的に判断できる。
【0138】
右のサイドクラッチスイッチ85Rを押し操作している間は、右のサイドクラッチ34が遮断状態に操作され、右のサイドクラッチスイッチ85Rを押し操作を止めると、右のサイドクラッチ34が伝動状態に操作される。これにより、右のサイドクラッチスイッチ85Rを押し操作すると、機体が右側に旋回する。また、左のサイドクラッチスイッチ85Lを押し操作している間は、右のサイドクラッチ34が遮断状態に操作され、右のサイドクラッチスイッチ85Lを押し操作を止めると、右のサイドクラッチ34が伝動状態に操作される。これにより、左のサイドクラッチスイッチ85Lを押し操作すると、機体が左側に旋回する。
【0139】
[発明の実施の第2別形態]
前述の[発明を実施するための最良の形態]及び[発明の実施の第1別形態]においては、操向レバー70の前後揺動操作により、刈取部3を昇降できるように構成した例を示したが、操向レバー70の左右揺動操作により、機体の操向のみができるように構成してもよく、操向レバー70の前後揺動操作により、異なる機器を駆動するように構成してもよい。
【0140】
前述の[発明を実施するための最良の形態]及び[発明の実施の第1別形態]においては、上昇スイッチ74を押し操作すると、上昇スイッチ74を押し続けなくても、刈取部3が自動的に上昇を開始すると共に、刈取部3が最も上昇した上昇位置で自動的に停止するように構成し、下降スイッチ75を押し操作すると、下降スイッチ75を押し続けなくても、刈取部3が自動的に下降を開始すると共に、刈取部3が刈取作業位置で自動的に停止するように構成した例を示したが、上昇スイッチ74を押し操作している間は、刈取部3が上昇し、上昇スイッチ74の押し操作を止めると、押し操作を止めた位置で刈取部3が停止するように構成し、下降スイッチ75を押し操作している間は、刈取部3が下降し、下降スイッチ75の押し操作を止めると、押し操作を止めた位置で刈取部3が停止するように構成してもよい。これにより、刈取部3の高さを微調節できる。
【0141】
[発明の実施の第3別形態]
前述の[発明を実施するための最良の形態]、[発明の実施の第1別形態]及び[発明の実施の第2別形態]においては、第1及び第2スイッチを上昇及び下降スイッチ74,75で構成し、第1及び第2スイッチにより、刈取部3を昇降した例を示したが、互いに反する操作をするのであれば、刈取部3の昇降以外に第1及び第2スイッチを採用してもよい。具体的には、例えば第1及び第2スイッチにより、機体の走行速度を高速側又は低速側に変速するように構成してもよく、例えば第1及び第2スイッチにより、分草杆を開閉するように構成してもよく、例えば第1及び第2スイッチを右及び左のサイドクラッチスイッチ85R,85Lで構成してもよい。
【0142】
この場合、例えば第1及び第2スイッチで走行速度を変速するように構成した場合においては、第1及び第2スイッチを押し操作している間、走行速度が所定の変化割合で変速されるように構成してもよく、第1及び第2スイッチを押し操作すると、走行速度が所定の走行速度に変速され、再び押し操作すると走行速度が変速前の走行速度に戻るように構成してもよい。また、例えば第1及び第2スイッチで分草杆を開閉するように構成した場合においては、第1及び第2スイッチを押し操作している間、分草杆が開閉し、押し操作を止めた位置で分草杆が停止するように構成してもよく、第1及び第2スイッチを押し操作すると、分草杆が所定の位置(揺動上限位置又は揺動下限位置)に自動的に開閉して自動的に停止するように構成してもよい。
【0143】
また、例えば第1及び第2スイッチを右及び左のサイドクラッチスイッチ85R,85Lで構成した場合においては、第1及び第2スイッチを押し操作している間、右及び左のサイドクラッチスイッチ85R,85Lが遮断状態に操作され、押し操作を止めると伝動状態に操作されるように構成してもよく、第1及び第2スイッチを押し操作すると、右及び左のサイドクラッチスイッチ85R,85Lが遮断状態に操作され、再び押し操作すると右及び左のサイドクラッチスイッチ85R,85Lが伝動状態に操作されるように構成してもよい。
【0144】
[発明の実施の第4別形態]
前述の[発明を実施するための最良の形態]、[発明の実施の第1別形態]、[発明の実施の第2別形態]及び[発明の実施の第3別形態]においては、上昇スイッチ74を操向レバー70の操作面70Aに配設し、下降スイッチ75を操向レバー70における操作部72の側面に配設した例を示したが、下降スイッチを操向レバー70の操作面70Aに配設し、上昇スイッチを操向レバー70における操作部72の側面に配設してもよい。
【0145】
前述の[発明を実施するための最良の形態]、[発明の実施の第1別形態]、[発明の実施の第2別形態]及び[発明の実施の第3別形態]においては、第1スイッチ(上昇スイッチ74)を操向レバー70における操作部72の操作面70Aに配設し、第2スイッチ(下降スイッチ75)を操向レバー70における操作部72の右側面に配設した例を示したが、操向レバー70における異なる面であれば、第1及び第2スイッチを配設する面は、操向レバー70の操作面70Aや操向レバー70における操作部72の右側面に限らない。具体的は、例えば第1スイッチを、操向レバー70における操作部72の右側面、左側面、上面、下面、又は裏面(操作面70Aと逆側の面)に配設してもよく、第2スイッチを操向レバー70における操作部72の左側面、上面、下面、操作面70A又は裏面(操作面70Aと逆側の面)に配設してもよい。
【0146】
[発明の実施の第5別形態]
前述の[発明を実施するための最良の形態]、[発明の実施の第1別形態]、[発明の実施の第2別形態]、[発明の実施の第3別形態]及び[発明の実施の第4別形態]においては、右手で操作する操向レバー70を例に示したが、左手で操作する操向レバー(図示せず)や、両手で操作する操向レバー(図示せず)においても同様に適用できる。
【0147】
[発明の実施の第6別形態]
前述の[発明を実施するための最良の形態]、[発明の実施の第1別形態]、[発明の実施の第2別形態]、[発明の実施の第3別形態]、[発明の実施の第4別形態]及び[発明の実施の第5別形態]においては、機体の右側に運転部Xを備え、機体の左側に脱穀部7を備えたコンバインを例に示したが、機体の左側に運転部Xを備え、機体の右側に脱穀部7を備えたコンバインにおいても同様に適用できる。
【0148】
前述の[発明を実施するための最良の形態]、[発明の実施の第1別形態]、[発明の実施の第2別形態]、[発明の実施の第3別形態]、[発明の実施の第4別形態]及び[発明の実施の第5別形態]においては、コンバインの一例としてキャビン付きの自脱型コンバインを例に示したが、キャビン4を装備していないコンバインや、普通型コンバインにおいても同様に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0149】
【図1】コンバインの全体側面図
【図2】コンバインの前部におけるミッションケース付近の平面図
【図3】コンバインの前部におけるミッションケース付近の正面図
【図4】ミッションケースの縦断正面図
【図5】静油圧式無段変速装置及びミッションケースの入力軸付近の縦断正面図
【図6】運転部の平面図
【図7】運転部の側面図
【図8】サイドパネル及びフロントパネル付近の側面図
【図9】フロントパネル付近の正面図
【図10】サイドパネル付近の斜視図
【図11】サイド操作パネル及びフロント操作パネルの平面図
【図12】操向レバー付近の平面図
【図13】操向レバー付近の側面図
【図14】操向レバーの構造を示す詳細図
【図15】操向レバーの操作方法を説明する概略図
【図16】油圧ユニットにおける油圧回路図
【図17】制御装置のブロック図
【図18】発明の実施の第1別形態における操向レバー付近の平面図
【符号の説明】
【0150】
3 刈取部
70 操向レバー
70A 操作面
72 操作部
74 上昇スイッチ(第1スイッチ)
75 下降スイッチ(第2スイッチ)
X 運転部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体の前部に昇降自在に設けられた刈取部と、機体の横一方側に設けられた運転部とを備え、
前記運転部の前部に機体操向用の操向レバーを備えて、
互いに相反する操作をする第1及び第2スイッチを、前記操向レバーにおける操作部の異なる面に配設してあるコンバイン。
【請求項2】
前記第1スイッチを、前記操向レバーにおける操作部の運転者側に向く操作面に配設すると共に、前記第2スイッチを、前記操向レバーにおける操作部の側面に配設してある請求項1記載のコンバイン。
【請求項3】
前記第1スイッチを、前記刈取部を上昇する上昇スイッチで構成し、前記第2スイッチを、前記刈取部を下降する下降スイッチで構成してある請求項2記載のコンバイン。
【請求項4】
前記上昇スイッチを操作すると、前記刈取部が自動的に上昇を開始すると共に、前記刈取部が最も上昇した上昇位置で自動的に停止し、
前記下降スイッチを操作すると、前記刈取部が自動的に下降を開始すると共に、前記刈取部が刈取作業位置で自動的に停止する請求項3記載のコンバイン。
【請求項1】
機体の前部に昇降自在に設けられた刈取部と、機体の横一方側に設けられた運転部とを備え、
前記運転部の前部に機体操向用の操向レバーを備えて、
互いに相反する操作をする第1及び第2スイッチを、前記操向レバーにおける操作部の異なる面に配設してあるコンバイン。
【請求項2】
前記第1スイッチを、前記操向レバーにおける操作部の運転者側に向く操作面に配設すると共に、前記第2スイッチを、前記操向レバーにおける操作部の側面に配設してある請求項1記載のコンバイン。
【請求項3】
前記第1スイッチを、前記刈取部を上昇する上昇スイッチで構成し、前記第2スイッチを、前記刈取部を下降する下降スイッチで構成してある請求項2記載のコンバイン。
【請求項4】
前記上昇スイッチを操作すると、前記刈取部が自動的に上昇を開始すると共に、前記刈取部が最も上昇した上昇位置で自動的に停止し、
前記下降スイッチを操作すると、前記刈取部が自動的に下降を開始すると共に、前記刈取部が刈取作業位置で自動的に停止する請求項3記載のコンバイン。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2009−95290(P2009−95290A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−270445(P2007−270445)
【出願日】平成19年10月17日(2007.10.17)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年10月17日(2007.10.17)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】
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