説明

プリント配線板及びプリント配線板の製造方法

【課題】 コンデンサを内蔵し、接続信頼性を高めたプリント配線板及びプリント配線板の製造方法を提供することにある。
【解決手段】 コア基板30にチップコンデンサ20を内蔵させ、チップコンデンサ20上に、チップコンデンサ20の端子21,22と接続する相対的に大きなビア52を形成し、コア基板30の上面の層間樹脂絶縁層60に、ビア52へ接続された複数個の相対的に小さなビア69を配設する。これにより、コンデンサ20の配設位置ずれに対応して、コンデンサ20の端子21、22とビア52とを確実に接続することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】ICチップなどの電子部品を載置するプリント基板に関し、特にコンデンサを内蔵するプリント配線板に関するものである。
【0002】
【従来の技術】現在、パッケージ基板用のプリント配線板では、ICチップへの電力の供給を円滑にする等の目的のため、チップコンデンサを表面実装することがある。
【0003】チップコンデンサからICチップまでの配線のリアクタンス分は周波数に依存するため、ICチップの駆動周波数の増加に伴い、チップコンデンサを表面実装させても十分な効果を得ることができなかった。このため、本出願人は、特願平11−248311号にて、コア基板に凹部を形成し、凹部にチップコンデンサを収容させる技術を提案した。また、コンデンサを基板に埋め込む技術としては、特開平6−326472号、特開平7−263619号、特開平10−256429号、特開平11−45955号、特開平11−126978号、特開平11−312868号等がある。
【0004】特開平6−326472号には、ガラスエポキシからなる樹脂基板に、コンデンサを埋め込む技術が開示されている。この構成により、電源ノイズを低減し、かつ、チップコンデンサを実装するスペースが不要になり、絶縁性基板を小型化できる。また、特開平7−263619号には、セラミック、アルミナなどの基板にコンデンサを埋め込む技術が開示されている。この構成により、電源層及び接地層の間に接続することで、配線長を短くし、配線のインダクタンスを低減している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述した特開平6−326472号、特開平7−263619号は、ICチップからコンデンサの距離をあまり短くできず、ICチップの更なる高周波数領域においては、現在必要とされるようにインダクタンスを低減することができなかった。特に、樹脂製の多層ビルドアップ配線板においては、セラミックから成るコンデンサと、樹脂からなるコア基板及び層間樹脂絶縁層の熱膨張率の違いから、チップコンデンサの端子とビアとの間に断線、チップコンデンサと層間樹脂絶縁層との間で剥離、層間樹脂絶縁層にクラックが発生し、長期に渡り高い信頼性を達成することができなかった。
【0006】一方、特願平11−248311号の発明では、コンデンサの配設位置ずれがあったとき、コンデンサの端子とビアとの接続が正確にできず、コンデンサからICチップへの電力供給ができなくなる恐れがあった。
【0007】本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、その目的は、コンデンサを内蔵し、接続信頼性を高めたプリント配線板及びプリント配線板の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】上記目的を達成するため、請求項1の発明では、コア基板に樹脂絶縁層と導体回路を積層してなるプリント配線板であって、前記コア基板にコンデンサを内蔵させ、前記コンデンサの端子と接続する相対的に大きな下層ビアを形成し、前記コア基板の上面の層間樹脂絶縁層に、1の前記下層ビアと接続された複数個の相対的に小さな上層ビアを配設したことを技術的特徴とする。
【0009】請求項1では、コア基板にコンデンサを内蔵させ、コンデンサ上にコンデンサの端子と接続する相対的に大きな下層ビアを形成し、コア基板の上面の層間樹脂絶縁層に、1の下層ビアと接続された複数個の相対的に小さな上層ビアを配設している。これにより、コンデンサの配設位置ずれに対応して、コンデンサの端子と下層ビアとを接続することが可能となり、コンデンサからICチップへの電力供給を確実に行うことができる。また、相対的に小さな上層ビアを複数個配設したことにより、インダクタンス分を並列接続したと同様な効果を得れるため、電源線及び接地線の高周波数特性が高まり、電力供給不足或いはアースレベルの変動によるICチップの誤動作を防止することが可能となる。さらに、配線長を短縮することができるので、ループインダクタンスを低減することが可能となる。
【0010】凹部内には、樹脂を充填させることが望ましい。コンデンサ、コア基板間の空隙をなくすことによって、内蔵されたコンデンサが、挙動することが小さくなるし、コンデンサを起点とする応力が発生したとしても、該充填された樹脂により緩和することができる。また、該樹脂には、コンデンサとコア基板との接着やマイグレーションの低下させるという効果も有する。
【0011】請求項2、3では、下層ビアとして表面が平坦なフィルドビアが用いられている。これにより、1の下層ビアに複数個の上層ビアを直接接続することが可能となる。よって、下層ビアと上層ビアとの接続性を高めることができ、コンデンサからICチップへの電力供給を確実に行うことが可能となる。
【0012】請求項4では、コア基板に形成された凹部の中に1個のコンデンサを収容している。これにより、コア基板内にコンデンサを配置するため、ICチップとコンデンサとの距離が短くなり、ループインダクタンスを低減することが可能となる。
【0013】請求項5では、凹部に多数個のコンデンサを収容させれるため、コンデンサの高集積化が可能となる。
【0014】請求項6、7では、金属膜を形成したチップコンデンサの電極へめっきによりなるビアで電気的接続を取ってある。ここで、チップコンデンサの電極は、メタライズからなり表面に凹凸があるが、金属膜により表面が平滑になり、ビアを形成するため、電極上に被覆された樹脂に通孔を形成した際に、樹脂残さが残らず、ビアと電極との接続信頼性を高めることができる。更に、めっきの形成された電極に、めっきによりビアを形成するため、電極とビアとの接続性が高く、ヒートサイクル試験を実施しても、電極とビア間の断線が生じることがない。
【0015】チップコンデンサの表面は粗化処理を施すとよい。これにより、セラミックから成るチップコンデンサと樹脂からなる接着層、層間樹脂絶縁層との密着性が高く、ヒートサイクル試験を実施しても界面での接着層、層間樹脂絶縁層の剥離が発生することがない。
【0016】請求項8では、コア基板とコンデンサとの間に、樹脂を充填し、樹脂の熱膨張率を、コア基板よりも小さく、即ち、セラミックからなるコンデンサに近いように設定してある。このため、ヒートサイクル試験において、コア基板とコンデンサとの間に熱膨張率差から内応力が発生しても、コア基板にクラック、剥離等が生じ難く、高い信頼性を達成できる。
【0017】請求項9では、基板内に収容したコンデンサに加えて表面にコンデンサを配設してある。プリント配線板内にコンデンサが収容してあるために、ICチップとコンデンサとの距離が短くなり、ループインダクタンスを低減し、瞬時に電源を供給することができ、一方、プリント配線板の表面にもコンデンサが配設してあるので、大容量のコンデンサを取り付けることができ、ICチップに大電力を容易に供給することが可能となる。
【0018】請求項10では、表面のコンデンサの静電容量は、内層のコンデンサの静電容量以上であるため、高周波領域における電源供給の不足がなく、所望のICチップの動作が確保される。
【0019】請求項11では、表面のコンデンサのインダクタンスは、内層のコンデンサのインダクタンス以上であるため、高周波領域における電源供給の不足がなく、所望のICチップの動作が確保される。
【0020】請求項12では、チップコンデンサの電極の被覆層から、少なくとも一部が露出してプリント配線板に収容し、被覆層から露出した電極に電気的接続を取ってある。このとき、被覆層から露出した金属は、主成分がCuであることが望ましい。接続抵抗を低減することができるからである。
【0021】請求項13では、外縁の内側に電極の形成されたチップコンデンサを用いるため、バイアホールを経て導通を取っても外部電極が大きく取れ、アライメントの許容範囲が広がるために、接続不良がなくなる。
【0022】請求項14では、マトリクス状に電極が形成されたコンデンサを用いるので、大判のチップコンデンサをコア基板に収容することが容易になる。そのため、静電容量を大きくできるので、電気的な問題を解決することができる。さらに、種々の熱履歴などを経てもプリント配線板に反りが発生し難くなる。
【0023】請求項15では、コンデンサに多数個取り用のチップコンデンサを複数連結させてもよい。それによって、静電容量を適宜調整することができ、適切にICチップを動作させることができる。
【0024】請求項16のプリント配線板の製造方法では、少なくとも以下(a)〜(e)の工程を備えることを技術的特徴とする:(a)コア基板に、コンデンサを内蔵する工程;
(b)前記コンデンサの上面に樹脂絶縁層を形成する工程;
(c)前記樹脂絶縁層に、前記コンデンサの端子と接続する相対的に大きな下層ビアを形成する工程;
(d)前記コア基板の上面に、層間樹脂絶縁層を形成する工程;
(e)前記層間樹脂絶縁層に、1の前記下層ビアと接続された複数個の相対的に小さな上層ビアを配設する工程。
【0025】請求項16では、コア基板にコンデンサを内蔵させ、コンデンサ上にコンデンサの端子と接続する相対的に大きな下層ビアを形成し、コア基板の上面の層間樹脂絶縁層に、1の下層ビアと接続された複数個の相対的に小さな上層ビアを配設している。これにより、コンデンサの配設位置ずれに対応して、コンデンサの端子と下層ビアとを接続することが可能となり、コンデンサからICチップへの電力供給を確実に行うことができる。また、相対的に小さな上層ビアを複数個配設したことにより、インダクタンス分を並列接続したと同様な効果を得れるため、電源線及び接地線の高周波数特性が高まり、電力供給不足或いはアースレベルの変動によるICチップの誤動作を防止することが可能となる。さらに、配線長を短縮することができるので、ループインダクタンスを低減することが可能となる。
【0026】請求項17では、コア基板に形成された凹部の中に1個のコンデンサを収容している。これにより、コア基板内にコンデンサを配置するため、ICチップとコンデンサとの距離が短くなり、ループインダクタンスを低減することが可能とな
【0027】請求項18では、凹部に多数個のコンデンサを収容させれるため、コンデンサの高集積化が可能となる。
【0028】請求項19では、心材となる樹脂を含有させてなる樹脂材料に通孔を形成し、通孔を形成した樹脂材料に、樹脂材料を貼り付けて、凹部を有するコア基板を形成している。これにより、底部が平坦な凹部を有するコア基板を形成することができる。
【0029】請求項20、請求項21では、下層ビアとして表面が平坦なフィルドビアが用いられている。これにより、1の下層ビアに複数個の上層ビアを直接接続することが可能となる。よって、下層ビアと上層ビアとの接続性を高めることができ、コンデンサからICチップへの電力供給を確実に行うことが可能となる。
【0030】請求項22の発明では、凹部内の複数個のコンデンサの上面に圧力を加え、もしくは叩くことによりコンデンサの上面の高さを揃えている。それにより、凹部内にコンデンサを配設した際に、複数個のコンデンサの大きさに、ばらつきがあっても高さを揃えることができ、コア基板を平滑にすることができる。よって、コア基板の平滑性が損なわれず、上層の層間樹脂絶縁層および導体回路を適切に形成することができるので、プリント配線板の不良品発生率を低下させることができる。
【0031】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態について図を参照して説明する。先ず、本発明の第1実施形態に係るプリント配線板の構成について、図7〜図9を参照して説明する。図7は、プリント配線板10の断面を示し、図8は、図7に示すプリント配線板10にICチップ90を搭載し、ドータボード94側へ取り付けた状態を示している。図9(A)は、図7中のビア52の拡大図であり、図9(B)は、図9(A)中のビア52に複数個のビア69を配設した状態を矢印B側からた見た状態を示す模式図である。
【0032】図7に示すようにプリント配線板10は、複数個のチップコンデンサ20を収容するコア基板30と、ビルドアップ配線層80A、80Bとからなる。コア基板30に収容された複数個のチップコンデンサ20の端子21、22には、相対的に大きなビア52が接続されている。また、ビルドアップ配線層80A、80Bは、層間樹脂絶縁層60、160からなる。層間樹脂絶縁層60には、導体回路68および相対的に小さなビア69が形成され、層間樹脂絶縁層160には、導体回路168および相対的に小さなビア169が形成されている。層間樹脂絶縁層160の上には、ソルダーレジスト層70が配設されている。
【0033】チップコンデンサ20は、図19(A)に示すように第1端子21と第2端子22と、第1、第2端子に挟まれた誘電体23とから成り、誘電体23には、第1端子21側に接続された第1導電膜24と、第2端子22側に接続された第2導電膜25とが複数枚対向配置されている。
【0034】図8に示すように、上側のビルドアップ配線層80Aのビア169には、ICチップ90のパッド92へ接続するための半田バンプ76Uが形成されている。一方、下側のビルドアップ配線層80Bのビア169には、ドータボード95のパッド94へ接続するための半田バンプ76Dが形成されている。
【0035】コア基板としては、樹脂からなるものを用いた。例えば、ガラスエポキシ樹脂含浸基材、フェノール樹脂含浸基材などの一般的なプリント配線板で用いられる樹脂材料を用いることができる。しかし、コア基板をセラミックやAINなどの基板を用いることはできなかった。該基板は外形加工性が悪く、コンデンサを収容することができないことがあり、樹脂で充填させても空隙が生じてしまうからである。
【0036】また、チップコンデンサ20を、コア基板30に形成された凹部32に複数個収容するため、チップコンデンサ20の高密度に配置することができる。さらに、凹部32に複数個のチップコンデンサ20を収容するため、チップコンデンサ20の高さを揃えることができる。このため、チップコンデンサ20上の樹脂層40を均一の厚さにできるため、ビア52を適切に形成することが可能となる。その上、ICチップ90とチップコンデンサ20との距離が短くなるため、ループインダクタンスを低減することができる。
【0037】また、図7及び、図7のビア52の拡大図である図9(A)に示すように上側のビルドアップ配線層80Aのビア69は、1のビア52に複数個接続している。図9(B)に示すよう大きなビア52は、内径125μm、ランド径165μmに、小さなビア69は、内径25μm、ランド径65μmに形成してある。一方、チップコンデンサ20は、矩形に形成されており、第1端子21及び第2端子21も一辺250μmの矩形に形成されている。このため、チップコンデンサ20の配設位置が数十μmずれていても、チップコンデンサ20の第1端子21及び第2端子22とビア52との接続を取ることが可能となり、チップコンデンサ20からICチップ90への電力供給を確実に行うことができる。また、ビア69を複数個配設したことにより、インダクタンス分を並列接続したと同様な効果を得れるため、電源線及び接地線の高周波数特性が高まり、電力供給不足或いはアースレベルの変動によるICチップの誤動作を防止することが可能となる。さらに、ICチップからチップコンデンサ20までの配線長を短縮することができるので、ループインダクタンスを低減することが可能となる。
【0038】図7に示すように、ビア52には、めっきを充填して表面が平坦なフィルドビアとして形成されている。これにより、ビア52上に複数個のビア69を直接接続することが可能となる。よって、ビア52とビア69との接続性を高めることができ、チップコンデンサ20からICチップ90への電力供給を確実に行うことが可能となる。なお、本実施形態では、めっき充填でフィルドビアを形成したが、この代わりに、ビア52としては、内部に樹脂を充填した後、表面に金属膜が配設されたフィルドビアを用いてもよい。
【0039】なお、樹脂充填剤36及びチップコンデンサ20下部の接着材料34の熱膨張率を、コア基板30及び樹脂絶縁層40よりも小さく、即ち、セラミックからなるチップコンデンサ20に近いように設定してある。このため、ヒートサイクル試験において、コア基板30及び樹脂絶縁層40とチップコンデンサ20との間に熱膨張率差から内応力が発生しても、コア基板30及び樹脂絶縁層40にクラック、剥離等が生じ難く、高い信頼性を達成できる。
【0040】また、チップコンデンサ20間の樹脂層36に、スルーホール46を形成してあるため、セラミックから成るチップコンデンサ20を信号線が通過しないので、高誘電体によるインピーダンス不連続による反射及び高誘電体通過による伝搬遅延が発生しない。
【0041】チップコンデンサ20は、図19(A)に示すように第1電極21及び第2電極22を構成する金属層26の表面に銅めっき膜29を被覆してある。めっき膜の被覆は、電解めっき、無電解めっきなどのめっきで形成されている。そして、図7に示すように銅めっき膜29を被覆した第1、第2電極21,22に銅めっきよりなるビア52で電気的接続を取ってある。ここで、チップコンデンサの電極21,22は、メタライズからなり表面に凹凸がある。このため、金属層26を剥き出した状態で用いると、後述する樹脂絶縁層40に開口42を穿設する工程において、該凹凸に樹脂が残ることがある。この際には、当該樹脂残さにより第1、第2電極21,22とビア52との接続不良が発生することがある。これに対して、本実施形態では、銅めっき膜29によって第1、第2電極21,22の表面が平滑になり、電極上に被覆された樹脂絶縁層40に開口42を穿設した際に、樹脂残さが残らず、ビア52を形成した際の電極21,22との接続信頼性を高めることができる。
【0042】更に、銅めっき膜29の形成された電極21、22に、めっきによりビア52を形成するため、電極21、22とビア52との接続性が高く、ヒートサイクル試験を実施しても、電極21、22とビア52との間で断線が生じることがない。
【0043】なお、上記銅めっき膜29は、チップコンデンサの製造段階で金属層26の表面に被覆されたニッケル/スズ層を、プリント配線板への搭載の段階で剥離してから設ける。この代わりに、チップコンデンサ20の製造段階で、金属層26の上に直接銅めっき膜29を被覆することも可能である。即ち、本実施形態では、レーザにて電極の銅めっき膜29へ至る開口を設けた後、デスミヤ処理等を行い、ビアを銅めっきにより形成する。従って、銅めっき膜29の表面に酸化膜が形成されていても、上記レーザ及びデスミヤ処理で酸化膜を除去できるため、適正に接続を取ることができる。
【0044】また、図19(B)に示すようにチップコンデンサ20の第1電極21、第2電極22の被覆層28から、上部を露出させてプリント配線板に収容し、被覆層28から露出した第1電極21、第2電極22に電気的接続を取ることもできる。このとき、被覆層28から露出した金属は、主成分がCuであることが望ましい。接続抵抗を低減することができるからである。
【0045】更に、チップコンデンサ20のセラミックから成る誘電体23の表面には粗化層23aが設けられてもよい。これにより、セラミックから成るチップコンデンサ20と樹脂からなる樹脂絶縁層40との密着性が高く、ヒートサイクル試験を実施しても界面での樹脂絶縁層40の剥離が発生することがない。この粗化層23aは、焼成後に、チップコンデンサ20の表面を研磨することにより、また、焼成前に、粗化処理を施すことにより形成できる。なお、本実施形態では、コンデンサの表面に粗化処理を施し、樹脂との密着性を高めたが、この代わりに、コンデンサの表面にシランカップリング処理を施すことも可能である。
【0046】引き続き、図7を参照して上述したプリント配線板の製造方法について、図1〜図7を参照して説明する。
【0047】(1)先ず、絶縁樹脂基板からなるコア基板30を出発材料とする(図1(A)参照)。次に、コア基板30の片面に、ザグリ加工、もしくは絶縁樹脂に通孔を設けてプレス、貼り合わせによって、コンデンサ配設用の凹部32を形成する(図1(B)参照)。このとき、凹部32は複数個のコンデンサを配設できるエリアよりも、広く大きく形成する。これにより、複数個のコンデンサをコア基板30へ確実に配設できるようにする。
【0048】(2)その後、凹部32に、印刷機を用いて接着材料34を塗布する(図1(C)参照)。あるいは、ポッティング、ダイボンディング、接着シートを貼り付けるなどの方法によって凹部に接着材料を塗ることができる。接着材料34は、熱膨張率がコア基板よりも小さいものを用いる。次に、凹部32にセラミックから成る複数個のチップコンデンサ20を接着材料34を介して接着する(図1(D)参照)。ここで、底部が平滑な凹部32に複数個のチップコンデンサ20を配設することにより、複数個のチップコンデンサ20の高さが揃う。よって、後述する工程で、コア基板30の上に樹脂絶縁層40を均一の厚みに形成でき、ビア52を適切に形成することが可能となる。
【0049】そして、複数個のチップコンデンサ20の上面が同じ高さになるように、チップコンデンサ20の上面を押す、もしくは叩いて高さを揃える(図1(E)参照)。この工程により、凹部32内に複数個のチップコンデンサ20を配設した際に、複数個のチップコンデンサ20の大きさにばらつきがあっても、高さを完全に揃えることができ、コア基板30を平滑にすることができる。
【0050】(3)その後、凹部32内のチップコンデンサ20間に、熱硬化性樹脂を充填し、加熱硬化して樹脂層36を形成する(図2(A)参照)。このとき、熱硬化性樹脂としては、エポキシ、フェノール、ポリイミド、トリアジンが好ましい。これにより、凹部32内のチップコンデンサ20を固定することができる。樹脂層36は、熱膨張率がコア基板よりも小さいものを用いる。
【0051】それ以外にも熱可塑性樹脂などの樹脂を用いてもよい。また、樹脂中に熱膨脹率を整合させるために、フィラーを含浸させてもよい。そのフィラーの例としては、無機フィラー、セラミックフィラー、金属フィラーなどがある。
【0052】(4)さらに、その上から後述するエポキシ系樹脂もしくはポリオレフィン系樹脂を印刷機を用いて塗布し樹脂絶縁層40を形成する(図2(B)参照)。なお、樹脂を塗布する代わりに、樹脂フィルムを貼り付けてもよい。
【0053】それ以外には、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、感光性樹脂熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂の複合体、感光性樹脂と熱可塑性樹脂の複合体などの樹脂を1種以上用いることができる。それらを2層構成にしてもよい。
【0054】(5)次に、レーザにより樹脂絶縁層40に相対的に大きなビア用開口42を形成する(図2(C)参照)。その後、デスミア処理を行う。レーザの代わりに、露光・現像処理を用いることもできる。そして、樹脂層36にドリルまたはレーザにより、スルーホール用の通孔44を形成し、加熱硬化する(図2(D)参照)。場合によっては、酸あるいは酸化剤もしくは薬液による粗化処理、プラズマ処理による粗化処理を施してもよい。それによって、粗化層の密着性が確保される。
【0055】(6)その後、無電解銅めっきにより銅めっき膜46を樹脂絶縁層40の表面に形成する(図3(A)参照)。無電解めっきの代わりに、Ni及びCuをターゲットにしたスパッタリングを行い、Ni/Cu金属層を形成してもよい。また、場合によってはスパッタで形成した後に、無電解めっき膜を形成させてもよい。
【0056】(7)次に、銅めっき膜46の表面に感光性ドライフィルムを貼り付け、マスクを載置して、露光・現像処理し、所定パターンのレジスト48を形成する。そして、電解めっき液にコア基板30を浸漬し、銅めっき膜46を介して電流を流し、レジスト48非形成部に電解めっき50を充填する(図3(B)参照)。
【0057】(8)ついで、めっきレジスト48を5%NaOHで剥離除去した後、そのめっきレジスト48下の銅めっき膜46を硫酸と過酸化水素の混合液でエッチング処理して溶解除去し、銅めっき膜46と電解銅めっき50からなるフィルドビア構造である相対的に大きなビア52及びスルーホール54を形成する。その大きなビア径は、100〜600μmの範囲であることが望ましい。特に、125〜350μmであることが望ましい。この場合は、165μmで形成させた。スルーホールは、250μmで形成させた。そして、基板30の両面にエッチング液をスプレイで吹きつけ、ビア52の表面及びスルーホール54のランド表面とをエッチングすることにより、ビア52及びスルーホール54の全表面に粗化面52αを形成する(図3(C)参照)。
【0058】(9)その後、スルーホール54内にエポキシ系樹脂を主成分とする樹脂充填剤56を充填して、乾燥する(図3(D)参照)。
【0059】(10)上記工程を経た基板30の両面に、厚さ50μmの熱硬化型エポキシ系樹脂シートを温度50〜150℃まで昇温しながら圧力5kg/cm2で真空圧着ラミネートし、エポキシ系樹脂からなる層間樹脂絶縁層60を設ける(図4(A)参照)。真空圧着時の真空度は、10mmHgである。エポキシ系樹脂の代わりにシクロオレフィン系樹脂を用いることもできる。
【0060】(11)次に、CO2ガスレーザにて、層間樹脂絶縁層60に65μmの相対的に小さなビア用開口61を設ける(図4(B)参照)。相対的に小さなビア径は、25〜100μmの範囲であることが望ましい。この後、酸素プラズマを用いてデスミア処理を行う。
【0061】(12)次に、日本真空技術株式会社製のSV―4540を用いてプラズマ処理を行い、層間樹脂絶縁層60の表面を粗化し、粗化面60αを形成する(図4(C)参照)。この際、不活性ガスとしてはアルゴンガスを使用し、電力200W、ガス圧0.6Pa、温度70℃の条件で、2分間プラズマ処理を実施する。酸あるいは酸化剤によって粗化処理を施してもよい。また、粗化層は、0.1〜5μmが望ましい。
【0062】(13)次に、同じ装置を用い、内部のアルゴンガスを交換した後、Ni及びCuをターゲットにしたスパッタリングを、気圧0.6Pa、温度80℃、電力200W、時間5分間の条件で行い、Ni/Cu金属層62を層間樹脂絶縁層60の表面に形成する。このとき、形成されたNi/Cu金属層62の厚さは0.2μmである(図4(D)参照)。無電解めっきなどのめっき膜、あるいはスパッタの上にめっき膜を施してもよい。
【0063】(14)上記処理を終えた基板30の両面に、市販の感光性ドライフィルムを貼り付け、フォトマスクフィルムを載置して、100mJ/cm2で露光した後、0.8%炭酸ナトリウムで現像処理し、厚さ15μmのめっきレジスト64を設ける。次に、以下の条件で電解めっきを施して、厚さ15μmの電解めっき膜66を形成する(図5(A)参照)。なお、電解めっき水溶液中の添加剤は、アトテックジャパン社製のカパラシドHLである。
【0064】〔電解めっき水溶液〕
硫酸 2.24 mol/l硫酸銅 0.26 mol/l添加剤(アトテックジャパン製、カパラシドHL)19.5 ml/l〔電解めっき条件〕
電流密度 1A/dm時間 65分温度 22±2℃
【0065】(15)めっきレジスト64を5%NaOHで剥離除去した後、そのめっきレジスト下のNi/Cu金属層62を硝酸および硫酸と過酸化水素の混合液を用いるエッチングにて溶解除去し、Ni/Cu金属層62と電解めっき膜66からなる導体回路68およびビア52上に接続した複数個の相対的に小さなビア69を形成する(図5(B)参照)。本実施形態では、ビア52をフィルドビア構造にすることにより、ビア52に複数個のビア69を直接接続することが可能となる。
【0066】(16)次に、基板を水洗いし、乾燥した後、エッチング液を基板の両面にスプレイで吹きつけて、導体回路68の表面をエッチングすることにより、導体回路68の全表面に粗化面68αを形成する(図5(C)参照)。エッチング液として、イミダゾール銅(II)錯体10重量部、グリコール酸7重量部、塩化カリウム5重量部およびイオン交換水78重量部を混合したものを使用する。
【0067】(17)次いで、上記(10)〜(16)の工程を、繰り返すことにより、さらに上層の層間樹脂絶縁層160及び導体回路168(ビア169を含む)を形成する(図5(D)参照)。
【0068】(18)次に、ジエチレングリコールジメチルエーテル(DMDG)に60重量%の濃度になるように溶解させた、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬社製)のエポキシ基50%をアクリル化した感光性付与のオリゴマー(分子量4000)46.67重量部、メチルエチルケトンに溶解させた80重量%のビスフェノールA型エポキシ樹脂(油化シェル社製、商品名:エピコート1001)15重量部、イミダゾール硬化剤(四国化成社製、商品名:2E4MZ−CN)1.6重量部、感光性モノマーである多官能アクリルモノマー(共栄化学社製、商品名:R604)3重量部、同じく多価アクリルモノマー(共栄化学社製、商品名:DPE6A)1.5重量部、分散系消泡剤(サンノプコ社製、商品名:S−65)0.71重量部を容器にとり、攪拌、混合して混合組成物を調整し、この混合組成物に対して光重量開始剤としてベンゾフェノン(関東化学社製)2.0重量部、光増感剤としてのミヒラーケトン(関東化学社製)0.2重量部を加えて、粘度を25℃で2.0Pa・sに調整したソルダーレジスト組成物(有機樹脂絶縁材料)を得る。なお、粘度測定は、B型粘度計(東京計器社製、DVL−B型)で60rpmの場合はローターNo.4、6rpmの場合はローターNo.3によった。
【0069】(19)次に、基板30の両面に、上記ソルダーレジスト組成物を20μmの厚さで塗布し、70℃で20分間、70℃で30分間の条件で乾燥処理を行った後、ソルダーレジストレジスト開口部のパターンが描画された厚さ5mmのフォトマスクをソルダーレジスト層70に密着させて1000mJ/cm2の紫外線で露光し、DMTG溶液で現像処理し、開口71U、71Dを形成する(図6(A)参照)。また、LPSRなどの市販のソルダーレジストを用いてもよい。
【0070】(20)次に、ソルダーレジスト層(有機樹脂絶縁層)70を形成した基板を、塩化ニッケル(2.3×10-1mol/l)、次亞リン酸ナトリウム(2.8×10-1mol/l)、クエン酸ナトリウム(1.6×10-1mol/l)を含むpH=4.5の無電解ニッケルめっき液に20分間浸漬して、開口部71U、71Dに厚さ5μmのニッケルめっき層72を形成する。さらに、その基板を、シアン化金カリウム(7.6×10-3mol/l)、塩化アンモニウム(1.9×10-1mol/l)、クエン酸ナトリウム(1.2×10-1mol/l)、次亜リン酸ナトリウム(1.7×10-1mol/l)を含む無電解めっき液に80℃の条件で7.5分間浸漬して、ニッケルめっき層72上に厚さ0.03μmの金めっき層74を形成する(図6(B)参照)。
【0071】(21)この後、ソルダーレジスト層70の開口部71U、71Dに、はんだペーストを印刷して、200℃でリフローすることにより、はんだバンプ(半田体)76U、76Dを形成する。これにより、半田バンプ76U、76Dを有するプリント配線板10を得ることができる(図7参照)。
【0072】次に、上述した工程で完成したプリント配線板10へのICチップの載置および、ドータボードへの取り付けについて、図8を参照して説明する。完成したプリント配線板10の半田バンプ76UにICチップ90の半田パッド92が対応するように、ICチップ90を載置し、リフローを行うことでICチップ90の取り付けを行う。同様に、プリント配線板10の半田バンプ76Dにドータボード95のパッド94が対応するように、リフローすることで、ドータボード95へプリント配線板10を取り付ける。
【0073】上述した樹脂フィルムには、難溶性樹脂、可溶性粒子、硬化剤、その他の成分が含有されている。それぞれについて以下に説明する。
【0074】本発明の製造方法において使用する樹脂フィルムは、酸または酸化剤に可溶性の粒子(以下、可溶性粒子という)が酸または酸化剤に難溶性の樹脂(以下、難溶性樹脂という)中に分散したものである。なお、本発明で使用する「難溶性」「可溶性」という語は、同一の酸または酸化剤からなる溶液に同一時間浸漬した場合に、相対的に溶解速度の早いものを便宜上「可溶性」と呼び、相対的に溶解速度の遅いものを便宜上「難溶性」と呼ぶ。
【0075】上記可溶性粒子としては、例えば、酸または酸化剤に可溶性の樹脂粒子(以下、可溶性樹脂粒子)、酸または酸化剤に可溶性の無機粒子(以下、可溶性無機粒子)、酸または酸化剤に可溶性の金属粒子(以下、可溶性金属粒子)等が挙げられる。これらの可溶性粒子は、単独で用いても良いし、2種以上併用してもよい。
【0076】上記可溶性粒子の形状は特に限定されず、球状、破砕状等が挙げられる。また、上記可溶性粒子の形状は、一様な形状であることが望ましい。均一な粗さの凹凸を有する粗化面を形成することができるからである。
【0077】上記可溶性粒子の平均粒径としては、0.1〜10μmが望ましい。この粒径の範囲であれば、2種類以上の異なる粒径のものを含有してもよい。すなわち、平均粒径が0.1〜0.5μmの可溶性粒子と平均粒径が1〜3μmの可溶性粒子とを含有する等である。これにより、より複雑な粗化面を形成することができ、導体回路との密着性にも優れる。なお、本発明において、可溶性粒子の粒径とは、可溶性粒子の一番長い部分の長さである。
【0078】上記可溶性樹脂粒子としては、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等からなるものが挙げられ、酸あるいは酸化剤からなる溶液に浸漬した場合に、上記難溶性樹脂よりも溶解速度が速いものであれば特に限定されない。上記可溶性樹脂粒子の具体例としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリフェニレン樹脂、ポリオレフィン樹脂、フッ素樹脂等からなるものが挙げられ、これらの樹脂の一種からなるものであってもよいし、2種以上の樹脂の混合物からなるものであってもよい。
【0079】また、上記可溶性樹脂粒子としては、ゴムからなる樹脂粒子を用いることもできる。上記ゴムとしては、例えば、ポリブタジエンゴム、エポキシ変性、ウレタン変性、(メタ)アクリロニトリル変性等の各種変性ポリブタジエンゴム、カルボキシル基を含有した(メタ)アクリロニトリル・ブタジエンゴム等が挙げられる。これらのゴムを使用することにより、可溶性樹脂粒子が酸あるいは酸化剤に溶解しやすくなる。つまり、酸を用いて可溶性樹脂粒子を溶解する際には、強酸以外の酸でも溶解することができ、酸化剤を用いて可溶性樹脂粒子を溶解する際には、比較的酸化力の弱い過マンガン酸塩でも溶解することができる。また、クロム酸を用いた場合でも、低濃度で溶解することができる。そのため、酸や酸化剤が樹脂表面に残留することがなく、後述するように、粗化面形成後、塩化パラジウム等の触媒を付与する際に、触媒が付与されなたかったり、触媒が酸化されたりすることがない。
【0080】上記可溶性無機粒子としては、例えば、アルミニウム化合物、カルシウム化合物、カリウム化合物、マグネシウム化合物およびケイ素化合物からなる群より選択される少なくとも一種からなる粒子等が挙げられる。
【0081】上記アルミニウム化合物としては、例えば、アルミナ、水酸化アルミニウム等が挙げられ、上記カルシウム化合物としては、例えば、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム等が挙げられ、上記カリウム化合物としては、炭酸カリウム等が挙げられ、上記マグネシウム化合物としては、マグネシア、ドロマイト、塩基性炭酸マグネシウム等が挙げられ、上記ケイ素化合物としては、シリカ、ゼオライト等が挙げられる。これらは単独で用いても良いし、2種以上併用してもよい。
【0082】上記可溶性金属粒子としては、例えば、銅、ニッケル、鉄、亜鉛、鉛、金、銀、アルミニウム、マグネシウム、カルシウムおよびケイ素からなる群より選択される少なくとも一種からなる粒子等が挙げられる。また、これらの可溶性金属粒子は、絶縁性を確保するために、表層が樹脂等により被覆されていてもよい。
【0083】上記可溶性粒子を、2種以上混合して用いる場合、混合する2種の可溶性粒子の組み合わせとしては、樹脂粒子と無機粒子との組み合わせが望ましい。両者とも導電性が低くいため樹脂フィルムの絶縁性を確保することができるとともに、難溶性樹脂との間で熱膨張の調整が図りやすく、樹脂フィルムからなる層間樹脂絶縁層にクラックが発生せず、層間樹脂絶縁層と導体回路との間で剥離が発生しないからである。
【0084】上記難溶性樹脂としては、層間樹脂絶縁層に酸または酸化剤を用いて粗化面を形成する際に、粗化面の形状を保持できるものであれば特に限定されず、例えば、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、これらの複合体等が挙げられる。また、これらの樹脂に感光性を付与した感光性樹脂であってもよい。感光性樹脂を用いることにより、層間樹脂絶縁層に露光、現像処理を用いてビア用開口を形成することできる。これらのなかでは、熱硬化性樹脂を含有しているものが望ましい。それにより、めっき液あるいは種々の加熱処理によっても粗化面の形状を保持することができるからである。
【0085】上記難溶性樹脂の具体例としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、フェノキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリフェニレン樹脂、ポリオレフィン樹脂、フッ素樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。さらには、1分子中に、2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂がより望ましい。前述の粗化面を形成することができるばかりでなく、耐熱性等にも優れてるため、ヒートサイクル条件下においても、金属層に応力の集中が発生せず、金属層の剥離などが起きにくいからである。
【0086】上記エポキシ樹脂としては、例えば、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、アルキルフェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェノールF型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、フェノール類とフェノール性水酸基を有する芳香族アルデヒドとの縮合物のエポキシ化物、トリグリシジルイソシアヌレート、脂環式エポキシ樹脂等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。それにより、耐熱性等に優れるものとなる。
【0087】本発明で用いる樹脂フィルムにおいて、上記可溶性粒子は、上記難溶性樹脂中にほぼ均一に分散されていることが望ましい。均一な粗さの凹凸を有する粗化面を形成することができ、樹脂フィルムにビアやスルーホールを形成しても、その上に形成する導体回路の金属層の密着性を確保することができるからである。また、粗化面を形成する表層部だけに可溶性粒子を含有する樹脂フィルムを用いてもよい。それによって、樹脂フィルムの表層部以外は酸または酸化剤にさらされることがないため、層間樹脂絶縁層を介した導体回路間の絶縁性が確実に保たれる。
【0088】上記樹脂フィルムにおいて、難溶性樹脂中に分散している可溶性粒子の配合量は、樹脂フィルムに対して、3〜40重量%が望ましい。可溶性粒子の配合量が3重量%未満では、所望の凹凸を有する粗化面を形成することができない場合があり、40重量%を超えると、酸または酸化剤を用いて可溶性粒子を溶解した際に、樹脂フィルムの深部まで溶解してしまい、樹脂フィルムからなる層間樹脂絶縁層を介した導体回路間の絶縁性を維持できず、短絡の原因となる場合がある。
【0089】上記樹脂フィルムは、上記可溶性粒子、上記難溶性樹脂以外に、硬化剤、その他の成分等を含有していることが望ましい。上記硬化剤としては、例えば、イミダゾール系硬化剤、アミン系硬化剤、グアニジン系硬化剤、これらの硬化剤のエポキシアダクトやこれらの硬化剤をマイクロカプセル化したもの、トリフェニルホスフィン、テトラフェニルホスフォニウム・テトラフェニルボレート等の有機ホスフィン系化合物等が挙げられる。
【0090】上記硬化剤の含有量は、樹脂フィルムに対して0.05〜10重量%であることが望ましい。0.05重量%未満では、樹脂フィルムの硬化が不十分であるため、酸や酸化剤が樹脂フィルムに侵入する度合いが大きくなり、樹脂フィルムの絶縁性が損なわれることがある。一方、10重量%を超えると、過剰な硬化剤成分が樹脂の組成を変性させることがあり、信頼性の低下を招いたりしてしまうことがある。
【0091】上記その他の成分としては、例えば、粗化面の形成に影響しない無機化合物あるいは樹脂等のフィラーが挙げられる。上記無機化合物としては、例えば、シリカ、アルミナ、ドロマイト等が挙げられ、上記樹脂としては、例えば、ポリイミド樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリフェニレン樹脂、メラニン樹脂、オレフィン系樹脂等が挙げられる。これらのフィラーを含有させることによって、熱膨脹係数の整合や耐熱性、耐薬品性の向上などを図りプリント配線板の性能を向上させることができる。
【0092】また、上記樹脂フィルムは、溶剤を含有していてもよい。上記溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテートやトルエン、キシレン等の芳香族炭化水素等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種類以上併用してもよい。
【0093】引き続き、本発明の第2実施形態に係るプリント配線板110について、図17を参照して説明する。上述した第1実施形態では、BGAを配設した場合で説明した。第2実施形態では、第1実施形態とほぼ同様であるが、図17に示すように導電性接続ピン96を介して接続を取るPGA方式に構成されている。
【0094】続いて、図17を参照して上述したプリント配線板の製造方法について、図10〜図17を参照して説明する。
【0095】(1)先ず、エポキシ樹脂を含浸させたプリプレク31を4枚積層してなる積層板30αに、チップコンデンサ収容用の通孔33aを形成する。また、その一方で、プリプレク31を2枚積層してなる積層板30βを用意する(図10(A)参照)。ここで、プリプレク31としては、エポキシ以外にも、BT、フェノール樹脂、あるいはガラスクロスなどの補強材を含有したものを用い得る。
【0096】(2)次に、積層板30αと積層板30βとを圧着し、加熱して硬化させることで、複数個のチップコンデンサ20を収容可能な凹部33を備えた、コア基板30を形成する(図10(B)参照)。
【0097】(3)そして、凹部33のコンデンサ配設位置にポッテング(ディスペンサー)を用いて接着材料34を塗布する(図10(C)参照)。あるいは、印刷、ダイボンディグ、接着シートを貼り付けるなどの方法によって凹部に接着材料を塗ることができる。その後、凹部33内にセラミックから成る複数個のチップコンデンサ20を接着材料34を介して収容する(図10(D)参照)。
【0098】(4)その後、凹部33内のチップコンデンサ20間に、熱硬化性樹脂を充填し、加熱硬化して樹脂層36を形成する(図11(A)参照)。このとき、熱硬化性樹脂としては、エポキシ、フェノール、ポリイミド、トリアジンが好ましい。これにより、凹部33内のチップコンデンサ20を固定することができる。
【0099】(5)さらに、その上から前述したエポキシ系もしくはポリオレフィン系からなる樹脂を印刷機を用いて塗布し樹脂絶縁層40を形成する(図11(B)参照)。なお、樹脂を塗布する代わりに、樹脂フィルムを貼り付けてもよい。
【0100】(6)次に、露光・現像処理又はレーザにより樹脂絶縁層40に相対的に大きなビア用開口42を形成する(図11(C)参照)。その大きなビア径は、100〜600μmの範囲であることが望ましい。特に、125〜350μmであることが望ましい。この場合は、165μmで形成させた。そして、樹脂層36にドリルまたはレーザにより、250μm径のスルーホール用の通孔44を形成し、加熱硬化する(図11(D)参照)。
【0101】(7)そして、基板30にパラジウム触媒を付与してから、無電解めっき液にコア基板を浸漬し、均一に無電解めっき膜45を析出させる(図12(A)参照)。その後、無電解めっき膜45を形成した開口42の内部に樹脂充填剤を充填し、乾燥する。これにより、開口42の内部に樹脂層47を形成する(図12(B)参照)。
【0102】(8)その後、無電解めっき膜45の表面に感光性ドライフィルムを貼り付け、マスクを載置して、露光・現像処理し、所定パターンのレジスト48を形成する。そして、無電解めっき液にコア基板30を浸漬し、無電解めっき膜から成る蓋めっき51を形成する(図12(C)参照)。
【0103】(9)上記工程の後、レジスト48を5%のNaOHで剥離した後、レジスト48下の無電解めっき膜45を硫酸と過酸化水素混合液でエッチングをして除去し、フィルドビア構造である相対的に大きなビア53及びスルーホール54を形成する(図12(D)参照)。ビア53をフィルドビア構造にすることにより、後述する工程で1のビア53に複数個のビア69を直接接続することが可能となる。
【0104】(10)そして、基板30を水洗、酸性脱脂した後、ソフトエッチングし、次いで、エッチング液を基板30の両面にスプレイで吹きつけて、ビア53の表面とスルーホール54のランド表面と内壁とをエッチングして、ビア53及びスルーホール54の全表面に粗化面53αを形成する(図13(A)参照)。エッチング液としては、イミダゾール銅(II)錯体10重量部、グリコール酸7重量部、塩化カリウム5重量部からなるエッチング液(メック社製、メックエッチボンド)を使用する。
【0105】(11)次に、ビスフェノールF型エポキシモノマー(油化シェル社製、分子量:310、YL983U)100重量部、表面にシランカップリング剤がコーティングされた平均粒径が1.6μmで、最大粒子の直径が15μm以下のSiO2 球状粒子(アドテック社製、CRS 1101−CE)170重量部およびレベリング剤(サンノプコ社製 ペレノールS4)1.5重量部を容器にとり、攪拌混合することにより、その粘度が23±1℃で45〜49Pa・sの樹脂充填剤62を調製する。なお、硬化剤として、イミダゾール硬化剤(四国化成社製、2E4MZ−CN)6.5重量部を用いた。その後、スルーホール54内に樹脂充填剤56を充填して、乾燥する(図13(B)参照)。
【0106】(12)次に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量469,油化シェルエポキシ社製エピコート1001)30重量部、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(エポキシ当量215,大日本インキ化学工業社製 エピクロンN−673)40重量部、トリアジン構造含有フェノールノボラック樹脂(フェノール性水酸基当量120,大日本インキ化学工業社製 フェノライトKA−7052)30重量部をエチルジグリコールアセテート20重量部、ソルベントナフサ20重量部に攪拌しながら加熱溶解させ、そこへ末端エポキシ化ポリブタジエンゴム(ナガセ化成工業社製 デナレックスR−45EPT)15重量部と2−フェニル−4、5−ビス(ヒドロキシメチル)イミダゾール粉砕品1.5重量部、微粉砕シリカ2重量部、シリコン系消泡剤0.5重量部を添加しエポキシ樹脂組成物を調製する。得られたエポキシ樹脂組成物を厚さ38μmのPETフィルム上に乾燥後の厚さが50μmとなるようにロールコーターを用いて塗布した後、80〜120℃で10分間乾燥させることにより、層間樹脂絶縁層用樹脂フィルムを作製する。
【0107】(13)基板の両面に、(12)で作製した基板30より少し大きめの層間樹脂絶縁層用樹脂フィルムを基板30上に載置し、圧力4kgf/cm2 、温度80℃、圧着時間10秒の条件で仮圧着して裁断した後、さらに、以下の方法により真空ラミネーター装置を用いて貼り付けることにより層間樹脂絶縁層60を形成する(図13(C)参照)。すなわち、層間樹脂絶縁層用樹脂フィルムを基板30上に、真空度0.5Torr、圧力4kgf/cm2 、温度80℃、圧着時間60秒の条件で本圧着し、その後、170℃で30分間熱硬化させる。
【0108】(14)次に、層間樹脂絶縁層60上に、厚さ1.2mmの貫通孔57aが形成されたマスク57を介して、CO2 ガスレーザで層間樹脂絶縁層60に、65μmの相対的に小さなビア用開口61を形成する(図13(D)参照)。相対的に小さなビア径は、25〜100μmの範囲であることが望ましい。
【0109】(15)ビア用開口61を形成した基板30を、60g/lの過マンガン酸を含む80℃の溶液に10分間浸漬し、層間樹脂絶縁層60の表面に存在するエポキシ樹脂粒子を溶解除去することにより、ビア用開口61の内壁を含む層間樹脂絶縁層60の表面を粗化面60αとする(図14(A)参照)。酸あるいは酸化剤によって粗化処理を施してもよい。また、粗化層は、0.1〜5μmが望ましい。
【0110】(16)次に、上記処理を終えた基板30を、中和溶液(シプレイ社製)に浸漬してから水洗いする。さらに、粗面化処理(粗化深さ3μm)した該基板30の表面に、パラジウム触媒を付与することにより、層間樹脂絶縁層60の表面およびビア用開口61の内壁面に触媒核を付着させる。
【0111】(17)次に、以下の組成の無電解銅めっき水溶液中に基板30を浸漬して、粗化面60α全体に厚さ0.6〜3.0μmの無電解銅めっき膜63を形成する(図14(B)参照)。
〔無電解めっき水溶液〕
NiSO4 0.003 mol/l酒石酸 0.200 mol/l硫酸銅 0.030 mol/lHCHO 0.050 mol/lNaOH 0.100 mol/lα、α′−ビピリジル 40 mg/lポリエチレングリコール(PEG) 0.10 g/l〔無電解めっき条件〕
35℃の液温度で40分
【0112】(18)市販の感光性ドライフィルムを無電解銅めっき膜63に貼り付け、マスクを載置して、100mJ/cm2 で露光し、0.8%炭酸ナトリウム水溶液で現像処理することにより、厚さ30μmのめっきレジスト64を設ける。次いで、基板30を50℃の水で洗浄して脱脂し、25℃の水で水洗後、さらに硫酸で洗浄してから、以下の条件で電解めっきを施し、厚さ20μmの電解銅めっき膜66を形成する(図14(C)参照)。
〔電解めっき水溶液〕
硫酸 2.24 mol/l硫酸銅 0.26 mol/l添加剤 19.5 ml/l(アトテックジャパン社製、カパラシドHL)
〔電解めっき条件〕
電流密度 1 A/dm2時間 65 分温度 22±2 ℃
【0113】(19)めっきレジスト64を5%NaOHで剥離除去した後、そのめっきレジスト64下の無電解銅めっき膜63を硫酸と過酸化水素の混合液でエッチング処理して溶解除去し、無電解銅めっき膜63と電解銅めっき膜66からなる厚さ18μmの導体回路68および相対的に小さなビア69を形成する(図14(D)参照)。その後、(10)と同様の処理を行い、第二銅錯体と有機酸とを含有するエッチング液によって、粗化面68αを形成する(図15(A)参照)。
【0114】(20)続いて、上記(13)〜(19)の工程を繰り返すことにより、さらに上層の層間樹脂絶縁層160及び導体回路168およびビア169を形成する(図15(B)参照)。
【0115】(21)次に、ジエチレングリコールジメチルエーテル(DMDG)に60重量%の濃度になるように溶解させた、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬社製)のエポキシ基50%をアクリル化した感光性付与のオリゴマー(分子量4000)46.67重量部、メチルエチルケトンに溶解させた80重量%のビスフェノールA型エポキシ樹脂(油化シェル社製、商品名:エピコート1001)15重量部、イミダゾール硬化剤(四国化成社製、商品名:2E4MZ−CN)1.6重量部、感光性モノマーである2官能アクリルモノマー(共栄化学社製、商品名:R604)4.5重量部、同じく多価アクリルモノマー(共栄化学社製、商品名:DPE6A)1.5重量部、分散系消泡剤(サンノプコ社製、商品名:S−65)0.71重量部を容器にとり、攪拌、混合して混合組成物を調整し、この混合組成物に対して光重量開始剤としてベンゾフェノン(関東化学社製)2.0重量部、光増感剤としてのミヒラーケトン(関東化学社製)0.2重量部を加えて、粘度を25℃で2.0Pa・sに調整したソルダーレジスト組成物(有機樹脂絶縁材料)を得る。なお、粘度測定は、B型粘度計(東京計器社製、DVL−B型)で60rpmの場合はローターNo.4、6rpmの場合はローターNo.3によった。
【0116】(22)次に、多層配線基板の両面に、(21)で調製したソルダーレジスト組成物を20μmの厚さで塗布する。その後、70℃で20分間、70℃で30分間の条件で乾燥処理を行った後、ソルダーレジスト開口部のパターンが描画された厚さ5mmのフォトマスクをソルダーレジスト組成物に密着させて1000mJ/cm2 の紫外線で露光し、DMTG溶液で現像処理し、開口71U、71Dを形成する。そして、さらに、80℃で1時間、100℃で1時間、120℃で1時間、150℃で3時間の条件でそれぞれ加熱処理を行ってソルダーレジスト組成物を硬化させ、開口71U、71Dを有する、厚さ20μmのソルダーレジスト層70を形成する(図16(A)参照)。上記ソルダーレジスト組成物としては、市販のソルダーレジスト組成物を使用することもできる。
【0117】(23)次に、ソルダーレジスト層70を形成した基板を、塩化ニッケル(2.3×10-1mol/l)、次亜リン酸ナトリウム(2.8×10-1mol/l)、クエン酸ナトリウム(1.6×10-1mol/l)を含むpH=4.5の無電解ニッケルめっき液に20分間浸漬して、開口部71U、71Dに厚さ5μmのニッケルめっき層72を形成する。さらに、その基板をシアン化金カリウム(7.6×10-3mol/l)、塩化アンモニウム(1.9×10-1mol/l)、クエン酸ナトリウム(1.2×10-1mol/l)、次亜リン酸ナトリウム(1.7×10-1mol/l)を含む無電解金めっき液に80℃の条件で7.5分間浸漬して、ニッケルめっき層72上に、厚さ0.03μmの金めっき層74を形成する(図16(B)参照)。
【0118】(24)この後、基板のICチップを載置する面のソルダーレジスト層70の開口71Uにスズ−鉛を含有する半田ペーストを印刷する。さらに、他方の面の開口部71D内に導電性接着剤97として半田ペーストを印刷する。次に、導電性接続ピン96を適当なピン保持装置に取り付けて支持し、導電性接続ピン96の固定部98を開口部71D内の導電性接着剤97に当接させる。そしてリフローを行い、導電性接続ピン96を導電性接着剤97に固定する。また、導電性接続ピン96の取り付け方法としては、導電性接着剤97をボール状等に形成したものを開口部71D内に入れる、あるいは、固定部98に導電性接着剤97を接合させて導電性接続ピン96を取り付け、その後にリフローさせてもよい。
【0119】その後、プリント配線板110の開口71U側の半田バンプ76にICチップ90の半田パッド92が対応するように、ICチップ90を載置し、リフローを行うことでICチップ90の取り付けを行う(図17参照)。
【0120】引き続き、本発明の第3実施形態に係るプリント配線板について、図18を参照して説明する。第3実施形態のプリント配線板210は、上述した第1実施形態とほぼ同様である。但し、この第3実施形態のプリント配線板210では、コア基板30に形成された凹部35に一個のチップコンデンサ20が収容されている。コア基板30内にチップコンデンサ20を配置するため、ICチップ90とチップコンデンサ20との距離が短くなり、ループインダクタンスを低減することが可能となる。
【0121】引き続き、本発明の第4実施形態に係るプリント配線板について、図20を参照して説明する。上述した第1実施形態では、コア基板30に収容されるチップコンデンサ20のみを備えていたが、第4実施形態では、表面及び裏面に大容量のチップコンデンサ98が実装されている。
【0122】ICチップは、瞬時的に大電力を消費して複雑な演算処理を行う。ここで、ICチップ側に大電力を供給するために、改変例では、プリント配線板に電源用のチップコンデンサ20及びチップコンデンサ98を備えてある。このチップコンデンサによる効果について、図21を参照して説明する。
【0123】図21は、縦軸にICチップへ供給される電圧を、横軸に時間を取ってある。ここで、二点鎖線Cは、電源用コンデンサを備えないプリント配線板の電圧変動を示している。電源用コンデンサを備えない場合には、大きく電圧が減衰する。破線Aは、表面にチップコンデンサを実装したプリント配線板の電圧変動を示している。上記二点鎖線Cと比較して電圧は大きく落ち込まないが、ループ長さが長くなるので、律速の電源供給が十分に行えていない。即ち、電力の供給開始時に電圧が降下している。また、二点鎖線Bは、図7を参照して上述したチップコンデンサを内蔵するプリント配線板の電圧降下を示している。ループ長さは短縮できているが、コア基板30に容量の大きなチップコンデンサを収容することができないため、電圧が変動している。ここで、実線Eは、図20を参照して上述したコア基板内のチップコンデンサ20を、また表面に大容量のチップコンデンサ98を実装する第4実施形態のプリント配線板の電圧変動を示している。ICチップの近傍にチップコンデンサ20を、また、大容量(及び相対的に大きなインダクタンス)のチップコンデンサ98を備えることで、電圧変動を最小に押さえている。
【0124】引き続き、本発明の第5実施形態に係るプリント配線板の構成について図22を参照して説明する。この第5実施形態のプリント配線板の構成は、上述した第1実施形態とほぼ同様である。但し、コア基板30への収容されるチップコンデンサ20が異なる。図22は、チップコンデンサの平面図を示している。図22(A)は、多数個取り用の裁断前のチップコンデンサを示し、図中で一点鎖線は、裁断線を示している。上述した第1実施形態のプリント配線板では、図22(B)に平面図を示すようにチップコンデンサの側縁に第1電極21及び第2電極22を配設してある。図22(C)は、第5実施形態の多数個取り用の裁断前のチップコンデンサを示し、図中で一点鎖線は、裁断線を示している。第5実施形態のプリント配線板では、図22(D)に平面図を示すようにチップコンデンサの側縁の内側に第1電極21及び第2電極22を配設してある。
【0125】この第5実施形態のプリント配線板では、外縁の内側に電極の形成されたチップコンデンサ20を用いるため、容量の大きなチップコンデンサを用いることができる。引き続き、第5実施形態の第1改変例に係るプリント配線板について図23を参照して説明する。図23は、第1改変例に係るプリント配線板のコア基板に収容されるチップコンデンサ20の平面図を示している。上述した第1実施形態では、複数個の小容量のチップコンデンサをコア基板に収容したが、第1改変例では、大容量の大判のチップコンデンサ20をコア基板に収容してある。ここで、チップコンデンサ20は、第1電極21と第2電極22と、誘電体23と、第1電極21へ接続された第1導電膜24と、第2電極22側に接続された第2導電膜25と、第1導電膜24及び第2導電膜25へ接続されていないチップコンデンサの上下面の接続用の電極27とから成る。この電極27を介してICチップ側とドータボード側とが接続されている。
【0126】この第1改変例のプリント配線板では、大判のチップコンデンサ20を用いるため、容量の大きなチップコンデンサを用いることができる。また、大判のチップコンデンサ20を用いるため、ヒートサイクルを繰り返してもプリント配線板に反りが発生することがない。
【0127】図24を参照して第2改変例に係るプリント配線板について説明する。図24(A)は、多数個取り用の裁断前のチップコンデンサを示し、図中で一点鎖線は、通常の裁断線を示し、図24(B)は、チップコンデンサの平面図を示している。図24(B)に示すように、この第2改変例では、多数個取り用のチップコンデンサを複数個(図中の例では3枚)連結させて大判で用いている。
【0128】この第2改変例では、大判のチップコンデンサ20を用いるため、容量の大きなチップコンデンサを用いることができる。また、大判のチップコンデンサ20を用いるため、ヒートサイクルを繰り返してもプリント配線板に反りが発生することがない。
【0129】上述した第5実施形態では、チップコンデンサをプリント配線板に内蔵させたが、チップコンデンサの代わりに、セラミック板に導電体膜を設けてなる板状のコンデンサを用いることも可能である。
【0130】ここで、第1実施形態のプリント配線板について、コア基板内に埋め込んだチップコンデンサ20のインダクタンスと、プリント配線板の裏面(ドータボード側の面)に実装したチップコンデンサのインダクタンスとを測定した値を以下に示す。
コンデンサ単体の場合埋め込み形 137pH裏面実装形 287pHコンデンサを8個並列に接続した場合埋め込み形 60pH裏面実装形 72pH以上のように、コンデンサを単体で用いても、容量を増大させるため並列に接続した場合にも、チップコンデンサを内蔵することでインダクタンスを低減できる。
【0131】次に、信頼性試験を行った結果について説明する。ここでは、第1実施形態のプリント配線板において、1個のチップコンデンサの静電容量の変化率を測定した。
静電容量変化率 (測定周波数100Hz) (測定周波数1kHz)
Steam 168時間: 0.3% 0.4%HAST 100時間: -0.9% -0.9%TS 1000cycles: 1.1% 1.3%
【0132】Steam試験は、蒸気に当て湿度100%に保った。また、HAST試験では、相対湿度100%、印加電圧1.3V、温度121℃で100時間放置した。TS試験では、−125℃で30分、55℃で30分放置する試験を1000回線り返した。
【0133】上記信頼性試験において、チップコンデンサを内蔵するプリント配線板においても、既存のコンデンサ表面実装形と同等の信頼性が達成できていることが分かった。また、上述したように、TS試験において、セラミックから成るコンデンサと、樹脂からなるコア基板及び層間樹脂絶縁層の熱膨張率の違いから、内部応力が発生しても、チップコンデンサの端子とビアとの間に断線、チップコンデンサと層間樹脂絶縁層との間で剥離、層間樹脂絶縁層にクラックが発生せず、長期に渡り高い信頼性を達成できることが判明した。
【0134】
【発明の効果】本発明の構成では、導体回路とコンデンサの間に、本願発明のビアが形成されているので、電源供給不足による動作の遅延をすることがなく、所望の性能を保つことができ、信頼性試験を行っても問題を引き起こさなかった。また、該ビアにより、層間絶縁層のバイアホールを形成しても、位置ずれを引き起こしても、その許容範囲が広くなるために、電気接続性が確保される。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1(A)、(B)、(C)、(D)、(E)は、本発明の第1実施形態に係るプリント配線板の製造工程図である。
【図2】図2(A)、(B)、(C)、(D)は、本発明の第1実施形態に係るプリント配線板の製造工程図である。
【図3】図3(A)、(B)、(C)、(D)は、本発明の第1実施形態に係るプリント配線板の製造工程図である。
【図4】図4(A)、(B)、(C)、(D)は、本発明の第1実施形態に係るプリント配線板の製造工程図である。
【図5】図5(A)、(B)、(C)、(D)は、本発明の第1実施形態に係るプリント配線板の製造工程図である。
【図6】図6(A)、(B)は、本発明の第1実施形態に係るプリント配線板の製造工程図である。
【図7】本発明の第1実施形態に係るプリント配線板の断面図である。
【図8】本発明の第1実施形態に係るプリント配線板にICチップを搭載した状態を示す断面図である。
【図9】図9(A)は、図7中のビア52の拡大図であり、図9(B)は、図9(A)のB矢印図である。
【図10】図10(A)、(B)、(C)、(D)は、本発明の第2実施形態に係るプリント配線板の製造工程図である。
【図11】図11(A)、(B)、(C)、(D)は、本発明の第2実施形態に係るプリント配線板の製造工程図である。
【図12】図12(A)、(B)、(C)、(D)は、本発明の第2実施形態に係るプリント配線板の製造工程図である。
【図13】図13(A)、(B)、(C)、(D)は、本発明の第2実施形態に係るプリント配線板の製造工程図である。
【図14】図14(A)、(B)、(C)、(D)は、本発明の第2実施形態に係るプリント配線板の製造工程図である。
【図15】図15(A)、(B)は、本発明の第2実施形態に係るプリント配線板の製造工程図である。
【図16】図16(A)、(B)は、本発明の第2実施形態に係るプリント配線板の製造工程図である。
【図17】本発明の第2実施形態に係るプリント配線板にICチップを搭載した状態を示す断面図である。
【図18】本発明の第3実施形態に係るプリント配線板にICチップを搭載した状態を示す断面図である。
【図19】本発明の第1実施形態に係るプリント配線板のチップコンデンサの断面図である。
【図20】本発明の第4実施形態に係るプリント配線板を示す断面図である。
【図21】ICチップへの供給電圧と時間との変化を示すグラフである。
【図22】(A)、(B)、(C)、(D)は、第5実施形態のプリント配線板のチップコンデンサの平面図である。
【図23】第5実施形態に係るプリント配線板のチップコンデンサの平面図である。
【図24】第5実施形態の改変例に係るプリント配線板のチップコンデンサの平面図である。
【符号の説明】
20 チップコンデンサ
21 第1端子
22 第2端子
30 コア基板
32 凹部
33 凹部
35 凹部
36 樹脂層
40 樹脂絶縁層
52 ビア
53 ビア
60 層間樹脂絶縁層
68 導体回路
69 ビア
70 ソルダーレジスト層
71U、71D 開口部
72 ニッケルめっき層
74 金めっき層
76 半田バンプ
90 ICチップ
92 半田パッド(ICチップ側)
94 ドータボード
95 半田パッド(ドータボード側)
96 導電性接続ピン
97 導電性接着剤
98 固定部
160 層間樹脂絶縁層
168 導体回路
169 ビア

【特許請求の範囲】
【請求項1】 コア基板に樹脂絶縁層と導体回路を積層してなるプリント配線板であって、前記コア基板にコンデンサを内蔵させ、前記コンデンサの端子と接続する相対的に大きな下層ビアを形成し、前記コア基板の上面の層間樹脂絶縁層に、1の前記下層ビアと接続された複数個の相対的に小さな上層ビアを配設したことを特徴とするプリント配線板。
【請求項2】 前記下層ビアは、めっきが充填されてなる表面が平坦なフィルドビアであることを特徴とする請求項1に記載のプリント配線板。
【請求項3】 前記下層ビアは、内部に樹脂が充填されて表面に金属膜が形成されてなるフィルドビアであることを特徴とする請求項1に記載のプリント配線板。
【請求項4】 前記コンデンサは、前記コア基板に形成された凹部の中に1個収容されていることを特徴とする請求項1に記載のプリント配線板。
【請求項5】 前記コンデンサは、前記コア基板に形成された凹部の中に複数個収容されていることを特徴とする請求項1に記載のプリント配線板。
【請求項6】 前記コンデンサの電極に金属膜を形成し、前記金属膜を形成させた電極へめっきにより電気的接続を取ったことを特徴とする請求項1のプリント配線板。
【請求項7】 前記チップコンデンサの電極に形成した金属膜は、銅を主とするめっき膜であることを特徴とする請求項6に記載のプリント配線板。
【請求項8】 前記コア基板とコンデンサとの間に、コア基板よりも熱膨張率の小さい樹脂を充填したことを特徴とする請求項1に記載のプリント配線板。
【請求項9】 前記プリント配線板の表面にコンデンサを実装したことを特徴とする請求項1〜請求項8の内1に記載のプリント配線板。
【請求項10】 前記表面のチップコンデンサの静電容量は、内層のチップコンデンサの静電容量以上であることを特徴とする請求項9に記載のプリント配線板。
【請求項11】 前記表面のチップコンデンサのインダクタンスは、内層のチップコンデンサのインダクタンス以上であることを特徴とする請求項9に記載のプリント配線板。
【請求項12】 前記コンデンサの電極の被覆層を少なくとも一部を露出させて、前記被覆層から露出した電極にめっきにより電気的接続を取ったことを特徴とする請求項1〜請求項5、請求項9〜請求項11の内1に記載のプリント配線板。
【請求項13】 前記コンデンサとして、外縁の内側に電極が形成されたチップコンデンサを用いたことを特徴とする請求項1〜請求項12の内1に記載のプリント配線板。
【請求項14】 前記コンデンサとして、マトリクス状に電極を形成されたチップコンデンサを用いたことを特徴とする請求項1〜請求項13の内1に記載のプリント配線板
【請求項15】 前記コンデンサとして、多数個取り用のチップコンデンサを複数個連結させて用いたことを特徴とする請求項1〜請求項14の内1に記載のプリント配線板。
【請求項16】 少なくとも以下(a)〜(e)の工程を備えることを特徴とするプリント配線板の製造方法:(a)コア基板に、コンデンサを内蔵する工程;
(b)前記コンデンサの上面に樹脂絶縁層を形成する工程;
(c)前記樹脂絶縁層に、前記コンデンサの端子と接続する相対的に大きな下層ビアを形成する工程;
(d)前記コア基板の上面に、層間樹脂絶縁層を形成する工程;
(e)前記層間樹脂絶縁層に、1の前記下層ビアと接続された複数個の相対的に小さな上層ビアを配設する工程。
【請求項17】前記(a)工程の前に、前記コア基板に凹部を形成し、前記凹部の中に前記コンデンサを1個収容する工程を備えることを特徴とする請求項16に記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項18】前記(a)工程の前に、前記コア基板に凹部を形成し、前記凹部の中に前記コンデンサを複数個収容する工程を備えることを特徴とする請求項16に記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項19】 前記(a)工程の前に、樹脂板に通孔を形成し、前記通孔を形成した樹脂板に、樹脂板を貼り付けて、凹部を有するコア基板を形成する工程を備えることを特徴とする請求項16に記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項20】 前記下層ビアを形成する際に、めっきを充填して表面の平坦なフィルドビアを形成することを特徴とする請求項16に記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項21】 前記下層ビアを形成する際に、内部に樹脂を充填した後、表面に金属膜が配設してなるフィルドビアを形成することを特徴とする請求項16に記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項22】 前記(a)工程の後に、前記凹部内の前記複数個のコンデンサの上面に、上から圧力を加え、前記コンデンサの上面の高さを揃える工程を備えることを特徴とする請求項18に記載のプリント配線板の製造方法。

【図7】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図15】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図16】
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【図23】
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【図13】
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【図14】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図22】
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【図20】
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【図21】
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【図24】
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【公開番号】特開2002−100870(P2002−100870A)
【公開日】平成14年4月5日(2002.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−266282(P2000−266282)
【出願日】平成12年9月1日(2000.9.1)
【出願人】(000000158)イビデン株式会社 (856)
【Fターム(参考)】