説明

半導体装置およびその製造方法ならびに不揮発性半導体記憶装置

【課題】これまでのMOSFETと同等の集積性を維持しながら、MOSFETに比べて優れたスイッチング特性をもつ、すなわち、室温においてS値が60mV/桁より小さな値をもつ半導体素子を提供する。
【解決手段】MOSFETと、トンネル接合を有するトンネルバイポーラトランジスタを組み合わせることにより、低電圧であっても、ゲート電位変化に対してドレイン電流が急峻な変化(S値が60mV/桁よりも小さい)を示す半導体素子を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置およびその製造技術ならびに不揮発性半導体記憶装置に関し、特に、低電圧で動作可能な半導体装置およびその製造技術ならびに不揮発性半導体記憶装置に適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2009−290095号公報(特許文献1)には、大規模集積回路に用いられているプレーナ型のロジック回路用MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)において、ドレイン拡散層電極のなかに、ダイオード素子と抵抗素子が並列配置されるように形成する技術が記載されている。これにより、低電圧であっても、ゲート電圧変化に対してドレイン電流が急峻な変化を示す高性能トランジスタを実現できるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−290095号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
20世紀末から21世紀にかけて、CMOS(Complementary MOS)デバイスを縮小し、集積度を高めることで、飛躍的に情報処理能力を高めた半導体集積回路(半導体チップ)が実現されてきた。CMOSデバイスの縮小には、MOSFETの構造が極めてシンプルであったこと、また、加工に用いるプレーナ技術の継続的な進歩が大きな役割を果たしてきたものと考えることができる。この集積度の増大は、半導体チップの消費電力を増大させることになるため、デバイスのサイズを縮小させるとともに、使用電圧を低下させる“スケーリング”が行われてきた。論理回路に用いられるいわゆる“ロジックCMOS”の電源電圧としては、例えば、90nmプレーナ技術世代では、1.2V、さらに先の45nm世代では1Vといった電圧設定が行われている。この様子は、例えばInternational Technology Roadmap for Semiconductor(ITRS)2005年版に見ることができる。この文献にも示されているが、さらにデバイスサイズを縮小してゆくには、1V以下まで電圧を下げることが必要になるものと考えられる。
【0005】
しかし、1V以下の電圧でMOSFETを動作させるには、スイッチング特性が大きな課題になるものと考えられている。MOSFETのスイッチングは、ゲート電極にゲート電圧を加えることで、MOSFETのオン・オフを変化させている。これは、ある電圧(閾値)を境にMOSFETのチャネルの伝導性が急激に変化することを用いたものである。この変化をチャネル電流の変化として評価するSubthreshold Swing(以下、S値という)を用いると、S値は約100mV/桁になっている。すなわち、0.1V程度のゲート電圧を加えることで、チャネル電流を1桁増大させることができる。このため、S値が小さいほど、急峻なスイッチング特性を示すことになる。MOSFETでは、1Vの電圧に対して10桁程度、チャネル電流の大きさが変化することから、充分に急峻なスイッチング特性を得ることができており、MOSFETは、デジタル回路動作の基本素子となっている。
【0006】
このS値については、ゲート電極の電界効果により誘起されるチャネル電荷により支配されていることが知られている。すなわち、チャネル表面状態がボルツマン分布に従うことから、理想的なMOSFETが実現した場合に、S値は、S=2.3kT/qと表すことができる。ここにkはボルツマン定数、Tは温度、qは電子電荷である。例えば、室温(300°K)において、S値は59.5mVをとることになる。MOSFETにおいては、S値をこれ以下にすることはできないため、MOSFETの課題のなかで、60mVの壁として知られている問題になっている。
【0007】
先に述べたように、消費電力を低減するために電源電圧を低下させることが行なわれるが、電源電圧を低下させる上で、このS値に下限があることは大きな障害となる。例えば、電源電圧を0.3Vに設定すると、5桁のオン・オフ比をとることが限界になることを示している。実際のMOSFETにおいては、これに閾値のバラツキなどの効果が加わることから、さらに、オン・オフ比が低下することになり、良好な回路動作を得ることができなくなる。
【0008】
これまで、S値を改善(低減)させた低S値デバイスの新たな構造の提案が行われてきている。例えば、2002年にPlummer等は、International Electron Device Meetingにおいて、I−MOSと呼ばれる構造の提案を行っている(2002年アイ・イー・イー インターナショナル エレクトロン デバイシーズ ミーティング テクニカル ダイジェスト 289頁から291頁 (IEEE International Electron Devices Meeting Technical Digest pp. 289-292, 2002))。I−MOSでは、高電界によりアバランシェ現象を起こすことで、電荷量を増幅させ、ボルツマン分布で規定される電荷を超える電荷を得ることが行われている。
【0009】
しかし、この原理では、増幅させて発生させた電荷のゲート電極による制御性が劣化すること、また、高電界を発生させるため、高い電圧が必要になる。これらは、本発明が解決すべき課題として考えている電力低減のための電源電圧低減と逆行している。そのため、これまで提案されてきた低S値デバイス構造は、本発明の取り扱う分野では用いることはできないものと考えられる。すなわち、増幅作用を用いる素子では、半導体のバンドギャップに比べ大きな電圧をかけることが通常行われることから、バンドギャップに比べ、小さな電圧下で動作する状態において、有効に働く半導体素子を開発する必要がある。
【0010】
本発明の目的は、これまでのMOSFETと同等の集積性を維持しながら、MOSFETに比べて優れたスイッチング特性をもつ、すなわち、室温においてS値が60mV/桁より小さな値をもつ半導体素子を提供することにある。
【0011】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0013】
本発明における半導体装置は、半導体基板に形成された第1電界効果トランジスタとバイポーラトランジスタから構成される半導体素子を備える。このとき、前記半導体素子を構成する前記第1電界効果トランジスタは、(a)前記半導体基板内に設けられた第1ソース領域となる第1導電型の第1半導体領域と、(b)前記半導体基板内で前記第1半導体領域と離間して設けられた第1ドレイン領域となる前記第1導電型の第2半導体領域とを有する。そして、(c)前記第1半導体領域と前記第2半導体領域の間の前記半導体基板内に形成された前記第1導電型とは逆導電型である第2導電型の第1チャネル領域と、(d)前記第1チャネル領域上に形成された第1ゲート絶縁膜と、(e)前記第1ゲート絶縁膜上に形成された第1ゲート電極とを有する。また、前記半導体素子を構成する前記バイポーラトランジスタは、(f)前記第2半導体領域に内包されるように形成されたエミッタ領域となる前記第2導電型の第3半導体領域と、(g)ベース領域となる前記第1導電型の前記第2半導体領域と、(h)コレクタ領域となる前記第2導電型の前記半導体基板とを有する。ここで、前記第2半導体領域と前記第3半導体領域の境界領域にトンネル接合が形成されていることを特徴とするものである。
【0014】
また、本発明における半導体装置は、支持基板と、前記支持基板上に形成された埋め込み絶縁層と、前記埋め込み絶縁層上に形成された活性層よりなるSOI基板に形成された第1電界効果トランジスタとバイポーラトランジスタから構成される半導体素子を備える。このとき、前記半導体素子を構成する前記電界効果トランジスタは、(a)前記活性層内に設けられた第1ソース領域となる第1導電型の第1半導体領域と、(b)前記活性層内で前記第1半導体領域と離間して設けられた第1ドレイン領域となる前記第1導電型の第2半導体領域とを有する。さらに、(c)前記第1半導体領域と前記第2半導体領域の間の前記活性層内に形成された第1チャネル領域となる前記第1導電型とは逆導電型である第2導電型の第1ボディ領域と、(d)前記第1ボディ領域上に形成された第1ゲート絶縁膜と、(e)前記第1ゲート絶縁膜上に形成された第1ゲート電極とを有する。また、前記半導体素子を構成する前記バイポーラトランジスタは、(f)前記第2半導体領域に内包されるように形成されたエミッタ領域となる前記第2導電型の第3半導体領域と、(g)ベース領域となる前記第1導電型の前記第2半導体領域と、(h)コレクタ領域となる前記第2導電型の前記ボディ領域とを有する。ここで、前記第2半導体領域と前記第3半導体領域の境界領域にトンネル接合が形成されていることを特徴とするものである。
【0015】
さらに、本発明における不揮発性半導体記憶装置は、半導体基板に形成されたメモリトランジスタとバイポーラトランジスタから構成されるメモリセルを備える。そして、前記メモリセルを構成する前記メモリトランジスタは、(a)前記半導体基板内に設けられたソース領域となる第1導電型の第1半導体領域と、(b)前記半導体基板内で前記第1半導体領域と離間して設けられたドレイン領域となる前記第1導電型の第2半導体領域と、(c)前記第1半導体領域と前記第2半導体領域の間の前記半導体基板内に形成された前記第1導電型とは逆導電型である第2導電型のチャネル領域とを有する。さらに、(d)前記チャネル領域上に形成された第1電位障壁膜と、(e)前記第1電位障壁膜上に形成された電荷蓄積膜と、(f)前記電荷蓄積膜上に形成された第2電位障壁膜と、(g)前記第2電位障壁膜上に形成されたゲート電極とを有する。また、前記メモリセルを構成する前記バイポーラトランジスタは、(h)前記第2半導体領域に内包されるように形成されたエミッタ領域となる前記第2導電型の第3半導体領域と、(i)ベース領域となる前記第1導電型の前記第2半導体領域と、(j)コレクタ領域となる前記第2導電型の前記半導体基板とを有する。ここで、前記第2半導体領域と前記第3半導体領域の境界領域にトンネル接合が形成されていることを特徴とするものである。
【0016】
また、本発明における半導体装置の製造方法は、(a)前記半導体基板を用意する工程と、(b)前記半導体基板上にゲート絶縁膜を形成する工程と、(c)前記ゲート絶縁膜上にゲート電極を形成する工程と、(d)前記(c)工程後、前記半導体基板内に第1導電型不純物を導入することにより、第1導電型の第1半導体領域および前記第1導電型の第2半導体領域を互いに離間して形成する工程とを備える。次に、(e)前記(d)工程後、前記半導体基板内に第2導電型不純物を導入することにより、前記第2半導体領域に内包されるように、第1導電型とは逆導電型の第2導電型の第3半導体領域を形成する工程とを備える。続いて、(f)前記(e)工程後、前記第1半導体領域および前記第2半導体領域に導入した前記第1導電型不純物と、前記第3半導体領域に導入した前記第2導電型不純物を活性化するための熱処理を実施する工程とを備える。ここで、前記(d)工程で前記第1半導体領域および前記第2半導体領域に導入する前記第1導電型不純物の濃度、前記(e)工程で前記第3半導体領域に導入する前記第2導電型不純物の濃度、および、前記(f)工程で実施する熱処理を調整することにより、前記第2半導体領域と前記第3半導体領域の境界領域にトンネル接合を形成することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0017】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下のとおりである。
【0018】
これまでのMOSFETと同等の集積性を維持しながら、MOSFETに比べて優れたスイッチング特性をもつ、すなわち、室温においてS値が60mVより小さな値をもつ半導体素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態1における半導体素子の等価回路図を示したものである。
【図2】ゲート電極に電圧を印加した場合のノードにおける電位変化を測定した結果を示すグラフである。
【図3】実施の形態1における半導体素子のドレイン電流−ゲート電圧特性を示すグラフである。
【図4】実施の形態1における半導体素子を上部から見た平面図である。
【図5】図4のX1−X1線で切断した断面図である。
【図6】通常のpn接合とトンネル接合において、接合に印加する電圧と、接合を流れる電流の絶対値との関係を示すグラフである。
【図7】通常のpn接合に電圧を印加しない場合におけるバンド図である。
【図8】所定電圧以下の順バイアスを印加した場合におけるバンド図である。
【図9】所定電圧よりも大きな順バイアスを印加した場合におけるバンド図である。
【図10】トンネル接合に電圧を印加しない場合におけるバンド図である。
【図11】所定電圧以下の順バイアスを印加した場合におけるバンド図である。
【図12】所定電圧よりも大きな順バイアスを印加した場合におけるバンド図である。
【図13】p型半導体領域とn型半導体領域の不純物プロファイルを示すグラフである。
【図14】実施の形態1における半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図15】図14に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図16】図15に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図17】図16に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図18】図17に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図19】図18に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図20】実施の形態2におけるインバータ回路を示す回路図である。
【図21】nチャネル型半導体素子とpチャネル型半導体素子のデバイス構造を示す断面図である。
【図22】実施の形態2における半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図23】図22に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図24】図23に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図25】図24に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図26】図25に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図27】図26に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図28】実施の形態3における半導体装置のデバイス構造を示す断面図である。
【図29】実施の形態3における半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図30】図29に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図31】図30に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図32】図31に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図33】図32に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図34】図33に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図35】2つ単体トランジスタおよび2つのnチャネル型半導体素子を組み合わせてSRAMセルを構成する例を示す回路図である。
【図36】2つ単体トランジスタ、2つのnチャネル型半導体素子および2つのpチャネル型半導体素子を組み合わせてSRAMセルを構成する例を示す回路図である。
【図37】実施の形態4における半導体素子を上部から見た平面図である。
【図38】図37のX2−X2線で切断した断面図である。
【図39】実施の形態4における半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図40】図39に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図41】図40に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図42】図41に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図43】図42に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図44】図43に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図45】図44に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図46】変形例1を示す断面図である。
【図47】埋め込み絶縁層を薄膜化する構成例を示す断面図である。
【図48】実施の形態5において、ゲート電極に電圧を印加した場合のノードにおける電位変化を測定した結果を示すグラフである。
【図49】例えば、0.8Vという比較的高い電位をドレイン端子に印加した場合における半導体素子のドレイン電流−ゲート電圧特性を示すグラフである。
【図50】実施の形態5における半導体チップの回路ブロック図である。
【図51】実施の形態6における不揮発性メモリセルのデバイス構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。
【0021】
また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でもよい。
【0022】
さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。
【0023】
同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうではないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
【0024】
また、実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。なお、図面をわかりやすくするために平面図であってもハッチングを付す場合がある。
【0025】
(実施の形態1)
<本願発明の回路構成による特徴説明>
従来のMOSFETのドレイン領域(ドレイン拡散層)内にトンネルダイオード素子を形成し、基板電極を用いたトンネルバイポーラトランジスタを形成することにより、上述した目的を達成することができる。トンネルバイポーラトランジスタとは、エミッタ―ベース間にトンネル接合を持ったバイポーラトランジスタのことである。後で製造工程(加工プロセス)をもとに詳しく説明するが、この構造では、集積性の問題は生じることはない。すなわちプレーナ技術においてMOSFETのドレイン領域(ドレイン拡散層)およびソース領域(ソース拡散層)は、ゲート電極に対してイオン打ち込み法を用いることで自己整合的に形成される。そのため、ゲート電極を小さく形成すれば、それに合わせて素子特性を決めるドレイン領域およびソース領域も極めて小さく(近接させて)形成することができる。この結果、素子性能を向上させながら全体を小さくできるので、集積性を高くできる要因になっている。現在、半導体産業において広く用いられているスペーサ技術を用いると、本発明のトンネルダイオードをゲート電極に対して自己整合的に形成することができる。そのため、本発明の構造によれば集積性の問題を生じないことは明らかである。
【0026】
次に、本実施の形態1における半導体素子によれば、S値を小さくできることを、図1を用いて説明する。図1は、本実施の形態1における半導体素子の等価回路図を示したものである。本実施の形態1における半導体素子は、構造としては1素子でありながら、ドレイン領域(ドレイン拡散層)にトンネルダイオードを組み込むことで、等価回路的には、MOSFETとトンネルバイポーラトランジスタを含むものとみることができる。
【0027】
トンネルバイポーラトランジスタは、これまで一般的ではなかったため、広く用いられている等価回路記号がない。したがって、本明細書では、パイポーラトランジスタを模して、通常矢印で接合を表現するのに習い、接合に矩形記号を用いて説明することにする。矢印での表記では、N/P接合の向きの意が含まれているが、ここでの矩形記号は、単に接合位置を表すものにしている。本実施の形態1における半導体素子において、MOSFETにはnチャネル型MOSFETを使用し、また、トンネルバイポーラトランジスタにはPNP型トンネルバイポーラトランジスタを使用して説明する。
【0028】
図1において、本実施の形態1における半導体素子は、MOSFETとトンネルバイポーラトランジスタを有している。MOSFETのソース領域はソース端子Sと接続され、MOSFETのゲート電極はゲート端子GTと接続されている。そして、MOSFETのドレイン領域は、トンネルバイポーラトランジスタのベース領域と接続されおり、この接続領域をノードAと表現している。そして、トンネルバイポーラトランジスタのエミッタ領域は、ドレイン端子Dと接続されており、トンネルバイポーラトランジスタのコレクタ領域は、基板端子Subと接続されている。このトンネルバイポーラトランジスタにおいては、エミッタ領域とベース領域の接合がトンネル接合となっており、図1の矩形記号で表現されている。
【0029】
続いて、図2は、ゲート電極に電圧を印加した場合のノードAにおける電位(φn)変化を測定した結果を示すグラフである。図2に示すように、ドレイン端子Dにドレイン電位Vを印加し、ゲート端子GTに印加するゲート電位Vを上げてゆくと、ノードAの電位(φn)はゲート電位Vとは逆に、ドレイン電位Vから急激に低下することがわかる。これは、図1に示すBの破線で囲んだMOSFETとトンネルダイオードとの接続がインバータを形成しているとみることで理解することができる。
【0030】
つまり、MOSFETとトンネルダイオードとの接続領域であるノードAは、回路的に、ソース端子SとMOSFETのチャネル抵抗で接続され、かつ、ドレイン端子Dとトンネルダイオードのトンネル抵抗で接続されているとみることができる。したがって、ノードAの電位は、ソース端子Sに印加されるソース電位Vとドレイン端子Dに印加されるドレイン電位Vとの間の電圧をチャネル抵抗とトンネル抵抗で抵抗分割した電位が現れることになる。このため、例えば、MOSFETのチャネルがオフした状態では、トンネル抵抗に比べてチャネル抵抗が非常に高いため、ノードAの電位はほとんどドレイン電位Vと同じになる。一方、MOSFETのチャネルがオンした状態では、トンネル抵抗に比べてチャネル抵抗が低いため、ノードAにはほとんどソース電位Vと同じになる。このことから、Bの破線で囲んだMOSFETとトンネルダイオードの接続は、ゲート端子GTに印加されるゲート電位Vの変化に対して、図2で示すようなインバータ動作をすることになる。
【0031】
このとき、トンネルバイポーラトランジスタのエミッタ領域とベース領域の間に形成されるトンネルダイオードには、V−φnの電圧が印加されることになる。すなわち、ゲート端子GTに印加するゲート電圧Vを大きくしていくと、一定なドレイン電位Vに対して、図2に示すように、電位φnが急激に変化する。このため、極めて急激に大きな電圧がトンネルダイオードに印加されることになる。この結果、トンネルバイポーラトランジスタでは、トンネル効果により、エミッタ領域からベース領域に向って急激な電荷(正孔)の注入が起こり、ベース領域に注入された電荷(正孔)の大半が半導体基板(基板端子Sub)に到達することになる。したがって、本実施の形態1における半導体素子によれば、ドレイン端子Dにおいて、急激に増大する電流を得ることができる。すなわち、本実施の形態1における半導体素子のように、MOSFETとトンネルバイポーラトランジスタを組み合わせることにより、MOSFET単体では得られないような大きな電流を得ることができるのである。
【0032】
具体的に、本実施の形態1における半導体素子のドレイン電流とゲート電圧との関係について説明する。図3は、本実施の形態1における半導体素子のドレイン電流−ゲート電圧特性を示すグラフである。測定は、ドレイン電位Vを0.6Vに設定し、ソース電位Vおよび基板電位Vsubを0Vに設定して行った。図3において、実線で示した曲線は、本実施の形態1における半導体素子のドレイン電流−ゲート電圧特性であり、破線で示した曲線は、比較のために示した通常のMOSFET単体でのサブスレショルド特性である。
【0033】
図3に示すように、本実施の形態1における半導体素子のドレイン電流−ゲート電圧特性によれば、これまでのMOSFET単体の理論限界である60mV/桁よりも急峻な傾きをもっていることがわかる。つまり、本実施の形態1によれば、単体MOSFETに比べて優れたスイッチング特性をもつ、すなわち、室温においてS値が60mVより小さな値をもつ半導体素子を提供することができる。
【0034】
上述した動作説明からわかるように、ドレイン電流の立ち上がるゲート電位Vは、MOSFETのしきい値電圧に依存することになる。そのため、通常のイオン打ち込みなどの方法により、ドレイン電流の立ち上がり位置の調整を容易に行うことができる。本実施の形態1における半導体素子によれば、60mVより小さなS値を得ることができるため、優れたスイッチング特性を持った半導体素子を実現することができる。
【0035】
図1の等価回路で示すように、本実施の形態1における半導体素子は、MOSFETとトンネルバイポーラトランジスタをダーリントン接続として知られている接続法によりつないだ構成となっている。MOSFETと通常のバイポーラトランジスタを接続させる構成をとることは、これまで広く用いられている。この構成をとることで、MOSFETの利点であるゲート入力の応答性の良さと、バイポーラトランジスタの利点である電流駆動能力の高さを組み合わせることができるからである。
【0036】
しかし、これまでの通常のバイポーラトランジスタでは、エミッタ領域とベース領域の間に形成されるPN接合のビルトインポテンシャルによる注入障壁があるため、低電圧ではバイポーラトランジスタをオン動作させることができなかった。本実施の形態1においては、トンネル接合を有するトンネルバイポーラトランジスタを使用することで、MOSFETのゲート電極への入力(ゲート電圧V)に対して、ドレイン電流のより大きな変化を起こせるようにし、さらに、このトンネルバイポーラトランジスタは低電圧で駆動できるため、本実施の形態1における半導体素子によれば、低電圧でも優れたスイッチング特性を得ることができる。
【0037】
つまり、通常のバイポーラトランジスタでは、エミッタ領域とベース領域の境界領域に形成されているpn接合のビルトインポテンシャルに起因して、pn接合に順バイアスを印加しても、所定電圧(立ち上り電圧)以下の順バイアスでは、電流が流れない。例えば、MOSFETと通常のバイポーラトランジスタを図1に示すように組み合わせた場合を考える。このとき、電源電圧の低電圧化により、例えば、ドレイン端子Dに0.3Vを印加し、ソース端子Sに0Vを印加する場合を考える。この場合、MOSFETにしきい値電圧以上のゲート電圧Vを印加してMOSFETをオンしても、通常のバイポーラトランジスタのエミッタ領域とベース領域の間には0.3Vの順方向バイアスしか印加されないことになる。通常のバイポーラトランジスタでは、順方向バイアスが所定電圧(立ち上り電圧)以下では、エミッタ領域とベース領域の間に電流が流れない。このため、通常のバイポーラトランジスタはオン動作せず、ドレイン電流を確保することができない。すなわち、単に、MOSFETと通常のバイポーラトランジスタを組み合わせても、単体MOSFETに比べて優れたスイッチング特性をもつ、すなわち、室温においてS値が60mVより小さな値をもつ半導体素子を得ることはできないのである。
【0038】
これに対し、本実施の形態1における半導体素子のように、MOSFETとトンネルバイポーラトランジスタを組み合わせる場合を考える。このトンネルバイポーラトランジスタでは、エミッタ領域とベース領域の境界領域に形成されているpn接合はトンネル接合となっている。このトンネル接合の場合もビルトインポテンシャルが存在するが、バンド間トンネリングによって電流(トンネル電流)が流れるのである。すなわち、トンネル接合では、トンネル接合に順バイアスを印加すると、所定電圧以下の順バイアスでもバンド間トンネリングに起因した電流が流れる。
【0039】
例えば、電源電圧の低電圧化により、ドレイン端子Dに0.3Vを印加し、ソース端子Sに0Vを印加する場合を考える。この場合、MOSFETにしきい値電圧以上のゲート電圧Vを印加してMOSFETをオンすると、トンネルバイポーラトランジスタのエミッタ領域とベース領域の間には0.3Vの順方向バイアスが印加される。すなわち、エミッタ領域とベース領域の境界領域に形成されているトンネル接合に0.3Vの順バイアスが印加される。上述したように、トンネル接合では、通常のpn接合ではビルトインポテンシャルによって電流が流れない所定電圧以下の電圧(0.3V)であっても、バンド間トンネリングによるトンネル電流が流れる。このことから、ドレイン端子Dに低電圧しか印加されない場合であっても、MOSFETにしきい値電圧以上のゲート電圧Vを印加してMOSFETをオンすると、トンネルバイポーラトランジスタもオンしてエミッタ領域とベース領域の間に電流が流れ、大きなドレイン電流を確保できるのである。この結果、本実施の形態1における半導体素子によれば、トンネルバイポーラトランジスタの増幅機能によって、MOSFET単体では確保できないような大きなドレイン電流を得ることができ、これにより、これまでのMOSFET単体の理論限界である60mV/桁よりも急峻な傾きをもつドレイン電流−ゲート電圧特性を得ることができるのである。つまり、本実施の形態1によれば、単体MOSFETに比べて優れたスイッチング特性をもつ、すなわち、室温においてS値が60mVより小さな値をもつ半導体素子を提供することができる。
【0040】
特に、本実施の形態1では、トンネルバイポーラトランジスタのバイポーラトランジスタとしての電流増幅機能と、エミッタ領域とベース領域の境界領域に形成されるトンネル接合において、順方向バイアスが低電圧であってもバンド間トンネリングによってトンネル電流が流れるという特性を利用することにより、低動作電圧であっても、室温においてS値が60mVより小さな値をもつ半導体素子を実現することができる。
【0041】
<本願発明のデバイス構造による特徴説明>
続いて、本願発明における半導体素子のデバイス構造の観点から、本願発明の特徴について説明する。図4は、本実施の形態1における半導体素子を上部から見た平面図である。図4において、X方向に離間して並ぶようにn型半導体領域NRsとn型半導体領域NRbが形成されている。そして、n型半導体領域NRbの上部にはp型半導体領域PRdが形成されている。このp型半導体領域PRdと電気的に接続するようにプラグPLG1が形成され、n型半導体領域NRsと電気的に接続するようにプラグPLG2が形成されている。さらに、離間されて配置されているn型半導体領域NRsと半導体領域NRbの間をY方向に延在するようにゲート電極Gが形成されている。そして、ゲート電極Gの一端部でゲート電極GはプラグPLG3と電気的に接続されている。
【0042】
次に、図5は、図4のX1−X1線で切断した断面図である。図5に示すように、本実施の形態1における半導体素子は、半導体基板1Sに形成された素子分離領域STIで区画されたアクティブ領域に形成されている。具体的に、素子分離領域STIで区画された半導体基板1S内には、例えば、ボロンなどのp型不純物を導入したp型ウェルPWLが形成されており、このp型ウェルPWL内に離間して一対の低濃度n型半導体領域EX1が形成されている。低濃度n型半導体領域EX1は、リンなどのn型不純物を導入した半導体領域であり、一対の低濃度n型半導体領域EX1で挟まれたp型ウェルPWL内の領域がチャネル領域となる。そして、低濃度n型半導体領域EX1の外側にはn型半導体領域NRsとn型半導体領域NRbが形成されている。すなわち、一対の低濃度n型半導体領域EX1のうち左側の低濃度n型半導体領域EX1のさらに左側にn型半導体領域NRsが形成され、一対の低濃度n型半導体領域EX1のうち右側の低濃度n型半導体領域EX1のさらに右側にn型半導体領域NRbが形成されている。このn型半導体領域NRsおよびn型半導体領域NRbは、砒素などのn型不純物が導入された半導体領域である。
【0043】
さらに、本実施の形態1における半導体素子においては、n型半導体領域NRbに内包されるように、p型半導体領域PRdが形成されている。このp型半導体領域PRdは、ボロンなどのp型不純物が導入された半導体領域である。
【0044】
次に、チャネル領域上にはゲート絶縁膜GOXが形成されており、このゲート絶縁膜GOX上にゲート電極Gが形成されている。ゲート絶縁膜GOXは、例えば、酸化シリコン膜から形成されるが、これに限らず、例えば、酸化ハフニウム膜などの酸化シリコン膜よりも誘電率の高い高誘電率膜から形成してもよい。また、ゲート電極Gは、例えば、リンを導入したポリシリコン膜PF1(n型ポリシリコン膜)と、ポリシリコン膜PF1上に形成されたシリサイド膜SLから形成されている。シリサイド膜SLは、ゲート電極Gの低抵抗化のために形成された膜であり、シリサイド膜SLは、例えば、コバルトシリサイド膜、チタンシリサイド膜、ニッケルシリサイド膜、プラチナシリサイド膜、あるいは、ニッケルプラチナシリサイド膜などから形成されている。
【0045】
ゲート電極Gの両側の側壁にはサイドウォールSW1が形成されており、このサイドウォールSW1の外側にサイドウォールSW2が形成されている。そして、サイドウォールSW2よりも外側の領域にシリサイド膜SLが形成されている。具体的に、左側のサイドウォールSW2の外側に露出しているn型半導体領域NRsの表面にシリサイド膜SLが形成されているとともに、右側のサイドウォールSW2の外側に露出しているp型半導体領域PRdの表面にもシリサイド膜SLが形成されている。
【0046】
本実施の形態1における半導体素子は上記のように構成されており、この半導体素子は、MOSFETとトンネルバイポーラトランジスタを備えている。つまり、左側の低濃度n型半導体領域EX1とn型半導体領域NRsおよびシリサイド膜SLにより、MOSFETのソース領域が形成されている。そして、チャネル領域上に形成されたゲート絶縁膜GOXがMOSFETのゲート絶縁膜を構成し、かつ、ゲート絶縁膜GOX上に形成されているゲート電極GがMOSFETのゲート電極を構成している。さらに、右側の低濃度n型半導体領域EX1とn型半導体領域NRbがMOSFETとトンネルバイポーラトランジスタとの接続領域(MOSFETのドレイン領域)を形成している。
【0047】
続いて、p型半導体領域PRdとシリサイド膜SLがトンネルバイポーラトランジスタのエミッタ領域となっており、右側の低濃度n型半導体領域EX1およびn型半導体領域NRbがトンネルバイポーラトランジスタのベース領域となっている。そして、p型ウェルPWLおよび半導体基板1Sがトンネルバイポーラトランジスタのコレクタ領域となっている。以上のことから、本実施の形態1における半導体素子は、MOSFETとトンネルバイポーラトランジスタを備え、MOSFETのドレイン領域がトンネルバイポーラトランジスタのベース領域となるように、MOSFETとトンネルバイポーラトランジスタが電気的に接続された構成をしていることがわかる。
【0048】
このように構成されている半導体素子を覆う半導体基板1S上には、例えば、図5に示すように、TEOSを原料とした酸化シリコン膜からなるコンタクト層間絶縁膜CILが形成されている。そして、このコンタクト層間絶縁膜CILを貫通してp型半導体領域PRdの表面に形成されたシリサイド膜SLに達するようにコンタクトホールCNT1が形成されている。同様に、コンタクト層間絶縁膜CILを貫通してn型半導体領域NRsの表面に形成されたシリサイド膜SLに達するようにコンタクトホールCNT2が形成されている。コンタクトホールCNT1の内部とコンタクトホールCNT2の内部には、バリア導体膜となるチタン/窒化チタン膜と、このバリア導体膜上に形成されたタングステン膜が埋め込まれて、プラグPLG1およびプラグPLG2が形成されている。プラグPLG1およびプラグPLG2を形成したコンタクト層間絶縁膜CIL上には、配線L1が形成されている。この配線L1は、例えば、窒化チタン膜と、アルミニウム膜と、窒化チタン膜の積層膜から形成されている。
【0049】
ここで、本実施の形態1における半導体素子の特徴は、n型半導体領域NRbに内包されるようにp型半導体領域PRdが形成されており、このn型半導体領域NRbとp型半導体領域PRdの間の境界領域にトンネル接合が形成されていることにある。これにより、例えば、p型半導体領域PRdに低電圧を印加した場合であっても、p型半導体領域PRdとn型半導体領域NRbの間にはトンネル接合が形成されているので、p型半導体領域PRdよりなるエミッタ領域から、n型半導体領域NRbよりなるベース領域に正孔が注入され、このベース領域に注入された正孔がp型ウェルPWL(半導体基板1S)よりなるコレクタ領域に引き抜かれることにより、トンネルバイポーラトランジスタとして機能させることができるのである。つまり、本実施の形態1における半導体素子では、MOSFETとトンネルバイポーラトランジスタを接続し、MOSFETをオンしたとき、低電圧であってもトンネルバイポーラトランジスタのエミッタ領域とベース領域の間にバンド間トンネリングにとってトンネル電流が流れることを利用している。これにより、MOSFET単体では得ることができないような大きなドレイン電流をトンネルバイポーラトランジスタの増幅機能で得ることができる。この結果、本実施の形態1によれば、単体MOSFETに比べて優れたスイッチング特性をもつ、すなわち、室温においてS値が60mVより小さな値をもつ半導体素子を得ることができるのである。
【0050】
通常のバイポーラトランジスタをオンさせるためには、エミッタ領域とベース領域との間に所定電圧(立ち上がり電圧)以上の電圧を印加させなければならないが、本実施の形態1における半導体素子では、通常のバイポーラトランジスタではなく、トンネルバイポーラトランジスタを使用している。このため、トンネルバイポーラトランジスタのエミッタ領域とベース領域の間に上述した所定電圧(立ち上り電圧)以下の順方向バイアスを印加する場合であっても、トンネルバイポーラトランジスタをオンさせることができる。
【0051】
つまり、本実施の形態1は、まず、MOSFET単体では、S値を60mV/桁以下にすることができないことを考慮して、MOSFETと電流増幅機能を有するバイポーラトランジスタを組み合わせることで、S値が60mV以下の半導体素子を得られるようにしたものである。このとき、単に通常のバイポーラトランジスタを組み合わせるだけでは、所定電圧(立ち上り電圧)以下の順方向バイアスでバイポーラトランジスタをオンすることができないので、電源電圧の低電圧化に対応することができない。このことを考慮して、本実施の形態1では、所定電圧(立ち上り電圧)以下の順方向バイアスでオン動作させることができるトンネルバイポーラトランジスタに着目しているのである。すなわち、本実施の形態1では、MOSFETとバイポーラトランジスタを組み合わせることによりバイポーラトランジスタの電流増幅機能を利用することで、ゲート電圧の変化に対して単体のMOSFETでは得られないほど低いS値を有する半導体素子を得ることができるのである。そして、特に、本実施の形態1では、電源電圧の低電圧化に対応して、バイポーラトランジスタとして通常のバイポーラトランジスタを使用するのではなく、トンネルバイポーラトランジスタを使用することにより、電源電圧が低電圧でもオン動作させることができ、この結果、低電圧動作で、かつ、S値が60mV/桁以下の半導体素子を得ることができるのである。
【0052】
以下に、通常のバイポーラトランジスタのpn接合と、本実施の形態1におけるトンネルバイポーラトランジスタのトンネル接合との特性の相違点について説明する。図6は、接合に印加する電圧と、接合を流れる電流の絶対値との関係を示すグラフであり、実線が本実施の形態1におけるトンネル接合を示し、破線が通常のpn接合を示している。図6において、横軸は接合に印加する電圧を示している。このとき、正方向の電圧は、接合に逆バイアスを印加することを示しており、負方向の電圧は、接合に順バイアスを印加することを示している。一方、縦軸は、接合に流れる電流の絶対値を対数表示で示している。
【0053】
まず、破線で示されている通常のpn接合の特性について説明する。図6に示すように、通常のpn接合に逆バイアスが印加される場合、電流値は1×10−13(1E−13)A以下であり、ほとんど電流が流れないことがわかる。続いて、通常のpn接合に順方向バイアスを印加した場合を考える。この場合、順バイアスが図6のVf以下の場合、ほとんど電流が流れず、順バイアスの大きさがVfを超えると、急激に通常のpn接合に電流(順方向電流)が流れることがわかる。以上のことから、通常のpn接合とは、逆バイアスを印加したときにほとんど電流(逆方向電流)が流れず、かつ、順方向バイアスを印加した場合も順方向バイアスが所定電圧(立ち上り電圧)(Vf)以下であると電流が流れず、順方向バイアスが所定電圧(Vf)を超えてはじめて電流(順方向電流)が流れるという特性をもっている接合として定義することができる。
【0054】
次に、実線で示されている本実施の形態1におけるトンネル接合の特性について説明する。図6に示すように、トンネル接合に逆バイアスが印加される場合、逆バイアスを増加していっても、電流値は1×10−9(1E−09)A以下に抑制されていることがわかる。つまり、実線で示すトンネル接合では、破線に示す通常のpn接合よりは、逆方向電流が増加する傾向があるが、それでも、逆方向バイアスを増加していっても電流値が一定値以下に抑えられているので、このトンネル接合も逆バイアスに対して一定の電流抑制機能(整流機能)を有していることがわかる。一方、トンネル接合に順方向バイアスを印加した場合を考える。この場合、順バイアスが0Vより大きくなると急激に電流(順方向電流)が流れることがわかる。つまり、トンネル接合では、所定電圧以下の順バイアスを印加した場合でも電流(順方向電流)が流れることがわかる。すなわち、通常のpn接合では、順バイアスが所定電圧(Vf)以下である場合は電流(順方向電流)がほとんど流れないのに対し、トンネル接合では、順バイアスが所定電圧(Vf)以下である場合であっても大きな電流(順方向電流)が流れることが大きく相違する。以上のことから、本実施の形態1におけるトンネル接合とは、順方向に所定電圧(Vf)以下の順バイアスを印加した場合にも、ほとんど電流が流れないのではなく、順方向電流が流れ、かつ、逆バイアスを印加した時に一定の電流抑制機能を有する接合であると定義することができる。
【0055】
このように通常のpn接合の特性と、本実施の形態1におけるトンネル接合の特性との間には大きな相違点があるが、この相違点が発生するメカニズムについて以下で説明する。
【0056】
まず、通常のpn接合での順方向特性についてバンド図を使用して説明する。図7は、通常のpn接合に電圧を印加しない場合(V=0)におけるバンド図である。図7の左側領域がp型半導体領域を示し、図7の右側領域がn型半導体領域を示している。このとき、通常のpn接合を形成するp型半導体領域の不純物濃度およびn型半導体領域の不純物濃度は縮退しない程度の低い濃度となっているので、p型半導体領域のフェルミ準位Efは、価電子帯Evの直上に存在し、かつ、n型半導体領域のフェルミ準位Efは、伝導帯Ecの直下に存在する。そして、平衡状態(V=0)では、p型半導体領域のフェルミ準位Efと、n型半導体領域のフェルミ準位Efが一致することから、図7に示すように、通常のpn接合ではビルトインポテンシャルが存在することになる。
【0057】
続いて、図8は、所定電圧(Vf)以下の順バイアス(│V│<│Vf│)を印加した場合におけるバンド図である。図8に示すように、所定電圧(Vf)以下の順バイアスを印加することにより、p型半導体領域のフェルミ準位Efと、n型半導体領域のフェルミ準位Efの間に電位差│V│が生じて、ビルトインポテンシャルが平衡状態のビルトインポテンシャルよりも小さくなる。しかし、まだ、ビルトインポテンシャルの大きさが大きいため、n型半導体領域の伝導帯Ecにある電子が、ビルトインポテンシャルを乗り越えてp型半導体領域の伝導帯Ecに拡散することや、p型半導体領域の価電子帯Evにある正孔が、ビルトインポテンシャルを乗り越えてn型半導体領域の価電子帯Evへ拡散することが生じにくくなっている。このことから、所定電圧(Vf)以下の順バイアス(│V│<│Vf│)を印加した場合、通常のpn接合では、p型半導体領域からn型半導体領域へ電流(順方向電流)がほとんど流れないことがわかる。
【0058】
さらに、図9は、所定電圧(Vf)よりも大きな順バイアス(│V│>│Vf│)を印加した場合におけるバンド図である。図9に示すように、所定電圧(Vf)よりも大きな順バイアスを印加することにより、p型半導体領域のフェルミ準位Efと、n型半導体領域のフェルミ準位Efの間に電位差│V│が生じて、ビルトインポテンシャルが平衡状態のビルトインポテンシャルよりも充分に小さくなることがわかる。このため、n型半導体領域の伝導帯Ecにある電子が、容易にビルトインポテンシャルを乗り越えてp型半導体領域の伝導帯Ecに拡散する。同様に、p型半導体領域の価電子帯Evにある正孔が、ビルトインポテンシャルを乗り越えてn型半導体領域の価電子帯Evへ拡散する。このことから、所定電圧(Vf)よりも大きな順バイアス(│V│>│Vf│)を印加した場合、通常のpn接合では、p型半導体領域からn型半導体領域へ大きな電流(順方向電流)が流れることがわかる。したがって、順方向バイアスを印加した場合も順方向バイアスが所定電圧(立ち上り電圧)(Vf)以下であると電流が流れず、順方向バイアスが所定電圧(Vf)を超えてはじめて電流(順方向電流)が流れるという特性を、通常のpn接合はもっていることが説明される。
【0059】
次に、トンネル接合での順方向特性についてバンド図を使用して説明する。図10は、トンネル接合に電圧を印加しない場合(V=0)におけるバンド図である。図10の左側領域がp型半導体領域を示し、図10の右側領域がn型半導体領域を示している。このとき、トンネル接合を形成するp型半導体領域の不純物濃度およびn型半導体領域の不純物濃度は縮退する程度の高い濃度となっているので、p型半導体領域のフェルミ準位Efは、価電子帯Evの内部に入り込み、かつ、n型半導体領域のフェルミ準位Efは、伝導帯Ecの内部に入り込むようになっている。そして、平衡状態(V=0)では、p型半導体領域のフェルミ準位Efと、n型半導体領域のフェルミ準位Efが一致することから、図10に示すように、トンネル接合でもビルトインポテンシャルが存在することになる。
【0060】
続いて、図11は、所定電圧(Vf)以下の順バイアス(│V│<│Vf│)を印加した場合におけるバンド図である。図11に示すように、所定電圧(Vf)以下の順バイアスを印加することにより、p型半導体領域のフェルミ準位Efと、n型半導体領域のフェルミ準位Efの間に電位差│V│が生じる。このとき、トンネル接合では、p型半導体領域のフェルミ準位Efは、価電子帯Evの内部に入り込み、かつ、n型半導体領域のフェルミ準位Efは、伝導帯Ecの内部に入り込んでいることから、p型半導体領域の価電子帯Evとn型半導体領域の伝導帯Ecの間に重なり(オーバーラップ)が生じる。つまり、p型半導体領域に存在する空の準位と、n型半導体領域に存在する満たされた準位が同じエネルギーレベルで相対することになる。そして、トンネル接合では、p型半導体領域の不純物濃度やn型半導体領域の不純物濃度が縮退する程度に高濃度となっていることから、トンネル接合で形成される空乏層は非常に狭くなり、トンネル接合での電界は極めて大きくなる。したがって、トンネル接合では、有限の高さをもった狭いビルトインポテンシャルで分離された空の準位(価電子帯Ev)と満たされた準位(伝導帯Ec)の間でバンド間トンネリングの発生条件が成立する。例えば、図11に示すように、p型半導体領域に存在する正孔が、p型半導体領域の価電子帯Evからn型半導体領域の伝導帯Ecへバンド間トンネリングで移動(トンネル)する。同様に、n型半導体領域に存在する電子が、n型半導体領域の伝導帯Ecからp型半導体領域の価電子帯Evへバンド間トンネリングで移動(トンネル)する。この結果、トンネル接合では、所定電圧(Vf)以下の順バイアス(│V│<│Vf│)を印加した場合でも、バンド間トンネリングによる電流(順方向電流)が流れることがわかる。
【0061】
さらに、図12は、所定電圧(Vf)よりも大きな順バイアス(│V│>│Vf│)を印加した場合におけるバンド図である。図12に示すように、所定電圧(Vf)よりも大きな順バイアスを印加することにより、p型半導体領域のフェルミ準位Efと、n型半導体領域のフェルミ準位Efの間に電位差│V│が生じて、ビルトインポテンシャルが平衡状態のビルトインポテンシャルよりも充分に小さくなることがわかる。このため、n型半導体領域の伝導帯Ecにある電子が、容易にビルトインポテンシャルを乗り越えてp型半導体領域の伝導帯Ecに拡散する。同様に、p型半導体領域の価電子帯Evにある正孔が、ビルトインポテンシャルを乗り越えてn型半導体領域の価電子帯Evへ拡散する。このことから、所定電圧(Vf)よりも大きな順バイアス(│V│>│Vf│)を印加した場合、トンネル接合では、p型半導体領域からn型半導体領域へ大きな電流(順方向電流)が流れることがわかる。したがって、順方向に所定電圧(Vf)以下の順バイアスを印加した場合にも、順方向電流が流れるという特性を、トンネル接合はもっていることが説明される。
【0062】
本実施の形態1における半導体素子は、図5に示すように、p型半導体領域PRdとn型半導体領域NRbの境界領域に形成される接合を上述したトンネル接合で形成する。このことから、p型半導体領域PRdの不純物濃度と、n型半導体領域NRbの不純物濃度は、縮退する程度に高濃度である必要がある。しかし、本実施の形態1では、n型半導体領域NRbの不純物濃度は、縮退する程度の濃度でありながら、なるべく低濃度である必要がある。この理由について説明する。
【0063】
図5に示すように、本実施の形態1における半導体素子は、p型半導体領域PRdをエミッタ領域、n型半導体領域NRbをベース領域、p型ウェルPWL(半導体基板1S)をコレクタ領域とするトンネルバイポーラトランジスタを含んでいる。この場合、エミッタ領域であるp型半導体領域PRdと、ベース領域であるn型半導体領域NRbの間にトンネル接合が形成されており、トンネルバイポーラトランジスタのエミッタ領域とベース領域の間に順バイアスが印加されると、エミッタ領域からベース領域へエミッタ電流が流れる。このエミッタ電流は、トンネル接合でのバンド間トンネリングによる電流であり、エミッタ領域(p型半導体領域PRd)からベース領域(n型半導体領域NRb)へ流れる正孔電流と、ベース領域(n型半導体領域NRb)からエミッタ領域(p型半導体領域PRd)へ流れる電子電流から構成される。
【0064】
このとき、トンネルバイポーラトランジスタとして考えた場合、エミッタ電流のほとんどが正孔電流であることがトンネルバイポーラトランジスタの増幅率を増大させる観点から望ましい。つまり、エミッタ領域からベース領域に注入された正孔電流のほとんどがコレクタ領域に引き抜かれることで、トンネルバイポーラトランジスタの増幅動作が行われる一方、ベース領域からエミッタ領域へ注入される電子電流はトンネルバイポーラトランジスタの増幅動作には寄与しない。したがって、エミッタ領域からベース領域に流れる正孔電流を増大させ、かつ、ベース領域からエミッタ領域へ流れる電子電流をできるだけ小さくするほうが、トンネルバイポーラトランジスタの増幅率を向上させることができるのである。このことは、エミッタ注入効率(正孔電流/(正孔電流+電子電流))をできるだけ1に近づけることが望ましいことを意味している。
【0065】
ここで、トンネルバイポーラトランジスタにおいて、エミッタ注入効率を向上させることは、ベース領域の不純物濃度を低くし、かつ、エミッタ領域の不純物濃度を高くすることで実現できる。したがって、p型半導体領域PRdとn型半導体領域NRbの境界領域に形成される接合をトンネル接合で形成する必要性から、ベース領域となるn型半導体領域NRbの不純物濃度を縮退する程度に高濃度にする必要性がある一方で、トンネルバイポーラトランジスタとして考えた場合、ベース領域となるn型半導体領域NRbの不純物濃度は低くすることが望ましい。以上のことから、n型半導体領域NRbの不純物濃度は、縮退する程度の濃度でありながら、なるべく低濃度であることが望ましいのである。このため、本実施の形態1では、エミッタ領域となるp型半導体領域PRdの不純物濃度よりも、ベース領域となるn型半導体領域NRbの不純物濃度を低くしているのである。具体的に、本実施の形態1では、p型半導体領域PRdの不純物濃度を1020/cmのオーダーとし、n型半導体領域NRbの不純物濃度を1019/cmのオーダーとしている。
【0066】
図13は、p型半導体領域PRdとn型半導体領域NRbの不純物プロファイルを示すグラフである。図13において、横軸は半導体基板からの深さ(基板深さ)を示しており、縦軸は不純物濃度を示している。図13に示すように、p型半導体領域PRdは、深さ0nm〜15nm程度の深さにわたって形成され、p型半導体領域PRdの不純物濃度(ボロン濃度)のピークは1020/cmのオーダーとなっている。一方、n型半導体領域NRbは、深さ0nm〜25nm程度の深さにわたって形成され、n型半導体領域NRbの不純物濃度(砒素濃度)のピークは1019/cmのオーダーとなっている。
【0067】
以上のように、本実施の形態1では、p型半導体領域PRdとn型半導体領域NRbによってトンネル接合が形成されているとともに、p型半導体領域PRdの不純物濃度に比べてn型半導体領域NRbの不純物濃度を低くすることにより、トンネルバイポーラトランジスタのエミッタ注入効率を向上させている。本実施の形態1におけるトンネル接合では、p型半導体領域PRdとn型半導体領域NRbを縮退させることで、順方向に所定電圧(Vf)以下の順バイアスを印加した場合にも、バンド間トンネリングにより順方向電流が流れるという特性を持たせている。そして、p型半導体領域PRdの不純物濃度に比べてn型半導体領域NRbの不純物濃度を低くすることにより、逆バイアスを印加したときに電流抑制機能が発揮されることになる。つまり、本実施の形態1における半導体素子では、p型半導体領域PRdの不純物濃度に比べてn型半導体領域NRbの不純物濃度を低くするという構成は、トンネルバイポーラトランジスタの観点からエミッタ注入効率を向上させるためになされているということができる。一方、この構成は、トンネル接合の観点から見ると、n型半導体領域NRbの不純物濃度ができるだけ低濃度となっていることから、逆バイアスを印加したときに空乏層が延び、その結果、逆バイアス印加時のバンド間トンネリングが抑制されて、逆方向電流が抑制されるともいえる。したがって、本実施の形態1におけるトンネル接合は、順方向に所定電圧(Vf)以下の順バイアスを印加した場合にも、ほとんど電流が流れないのではなく、順方向電流が流れ、かつ、逆バイアスを印加した時に一定の電流抑制機能を有する接合であるということができる。
【0068】
なお、トンネル接合の特性向上方法として、バンドギャップの狭いゲルマニウムやシリコン・ゲルマニウムの結晶を使用してヘテロ構造をとる技術が知られており、本実施の形態1でもその技術を応用することができる。
【0069】
<実施の形態1における半導体装置の製造方法>
本実施の形態1における半導体装置は上記のように構成されており、以下にその製造方法について図面を参照しながら説明する。
【0070】
まず、図14に示すように、半導体基板(p型シリコン基板)1Sの表面に、例えば、10nmの酸化シリコン膜を熱酸化法で形成した後、100nmの窒化シリコン膜をCVD(Chemical Vapor Deposition)法を用いて堆積する。そして、フォトリソグラフィ技術を用いて、活性領域をパターニングする。その後、ドライエッチング技術を使用することにより、窒化シリコン膜および酸化シリコン膜を半導体基板1Sの主面(基板面)に対して垂直方向に異方性エッチングした後、さらに、半導体基板1Sを異方性エッチングして、半導体基板1Sに、例えば、300nmの深さの溝(トレンチ)を形成する。
【0071】
続いて、溝の内部に露出したシリコン表面を酸化することにより、5nmの酸化シリコン膜を形成し、さらに、CVD法により、700nmの酸化シリコン膜を半導体基板1S上に堆積する。次に、CMP(Chemical Mechanical Polishing)法を使用することにより、窒化シリコン膜を下地マスクとして、堆積した酸化シリコン膜の研磨を行い、溝の内部を除いて、半導体基板1S上に堆積した酸化シリコン膜を除去する。その後、マスクとして使用した窒化シリコン膜を熱リン酸によるウェットエッチングで除去する。以上のようにして、半導体基板1Sの主面側に素子分離領域STIを形成することができる。
【0072】
次に、イオン注入法および熱処理を使用することにより、半導体基板1S内に、例えば、ボロン(B)などのp型不純物を導入することで、基板表面付近の不純物濃度を8×1017/cm−3に設定したp型ウェルPWLを形成する。このp型ウェルPWLにおける不純物濃度プロファイルを設定することにより、MOSFETの閾値を調整することができる。そして、窒化シリコン膜の下に形成していた酸化シリコン膜をフッ酸で除去することにより、半導体基板1Sの表面(シリコン表面)を露出させる。
【0073】
続いて、図15に示すように、熱酸化法を使用することにより、活性領域に、例えば、3nmのゲート絶縁膜GOXを形成する。ゲート絶縁膜GOXは、例えば、酸化シリコン膜から形成されるが、これに限らず、酸化シリコン膜よりも誘電率の高い高誘電率膜から形成してもよい。その後、ゲート絶縁膜GOX上に、CVD法を用いて、ポリシリコン膜PF1を100nm程度の厚さで堆積する。このとき、ポリシリコン膜PF1には、in-situドーピング法またはイオン注入法などを用いて高濃度にリンをドーピングする。そして、フォトリソグラフィ技術およびドライエッチング法を使用することにより、ポリシリコン膜PF1をパターニングする。具体的には、フォトリソグラフィ技術を使用してポリシリコン膜PF1上に形成されたレジスト膜をパターニングする。そして、パターニングしたレジスト膜をマスクにして、ポリシリコン膜PF1をドライエッチングする。このように、ポリシリコン膜PF1を半導体基板1Sの基板面に垂直方向に異方性エッチングすることで、ポリシリコン膜PF1からなるゲート電極Gを形成する。
【0074】
次に、図16に示すように、フォトリソグラフィ技術およびイオン注入法を使用することにより、半導体基板1S内にゲート電極Gに整合した低濃度n型半導体領域EX1を形成する。そして、図17に示すように、CVD法により、ゲート電極Gを覆う半導体基板1S上に酸化シリコン膜を50nm程度の厚さで堆積し、堆積した酸化シリコン膜に対して異方的にエッチングすることにより、ゲート電極Gの両側の側壁にサイドウォールSW1を形成する。
【0075】
その後、サイドウォールSW1を形成したゲート電極Gをマスクにしたイオン注入法により、半導体基板1S内に砒素を、25keVの加速エネルギー、かつ、5×1014/cm程度のドーズ量でドーピングする。これにより、n型半導体領域NRsおよびn型半導体領域NRbを形成することができる。その後、熱処理によって導入した不純物(砒素)の活性化を行ってもよい。ここで、イオン注入法を実施する際、サイドウォールSW1を形成したゲート電極Gとともに、レジスト膜をパターニングしてイオン注入法のマスクとすることができる。この場合、n型半導体領域NRsとn型半導体領域NRbを異なる不純物濃度にすることができる。
【0076】
続いて、図18に示すように、CVD法により、ゲート電極Gを覆う半導体基板1S上に酸化シリコン膜を50nm程度の厚さで堆積する。次に、堆積した酸化シリコン膜に対して異方的にエッチングすることにより、サイドウォールSW1の外側にサイドウォールSW2を形成する。そして、フォトリソグラフィ技術およびイオン注入法を使用することにより、n型半導体領域NRbに内包されるようにp型半導体領域PRdを形成する。このとき、イオン注入法では、p型不純物であるボロン(B)を、2keVの加速エネルギー、かつ、2×1015/cm程度のドーズ量でドーピングする。
【0077】
その後、Laser Spike Annealing(LSA)を用いて短時間での高温活性化処理を行う。これにより、例えば、n型半導体領域NRbおよびp型半導体領域PRdは、図13に示すような不純物プロファイルを有するように形成される。この結果、n型半導体領域NRbとp型半導体領域PRdの間の境界領域にトンネル接合を形成することができる。
【0078】
本発明の特徴の一つは、自己整合的にp型半導体領域PRdをn型半導体領域NRb内に形成できる点にある。そして、p型半導体領域PRdは、n型半導体領域NRbに内包されるように形成されるので、新たにp型半導体領域PRdを形成しても、本実施の形態1における半導体素子のサイズは、単体のMOSFETのサイズと同じサイズで形成することができる。このため、本実施の形態1における半導体素子は、集積度に影響を与えることなく、単体のMOSFETと同等の集積度で形成できる利点がある。
【0079】
なお、本実施の形態1における半導体素子では、正電圧(例えば0.6V)をp型半導体領域PRdであるドレイン領域に印加しても、p型ウェルPWL(半導体基板1S)とは、反対導電型であるn型半導体領域NRbのみが接しているため、半導体基板1Sとの間に順方向バイアスによるリーク電流を生じることはない。さらに、p型半導体領域PRdとn型半導体領域NRbによって形成されるトンネル接合の特性は、p型半導体領域PRdやn型半導体領域NRbに注入する不純物の注入エネルギーを調整することにより、変化させることができる。
【0080】
また、p型半導体領域PRdよりn型半導体領域NRbに注入された電荷(正孔)の半導体基板1Sへの引き抜きは、p型半導体領域PRdとn型半導体領域NRbの縦方向不純物分布、すなわち、実効的なn型半導体領域NRb(ベース領域)の厚さとともに、横方向の幅、すなわち、サイドウォールSW2の幅、および、チャネル領域の不純物プロファイルを調整することにより制御することができる。すなわち、n型半導体領域NRb(ベース領域)の幅を小さくすることで、引き抜き効率を向上させることができる。一方、n型半導体領域NRb(ベース領域)の幅を大きくすることで、リーク電流を減らすことができる。また、サイドウォールSW2の幅を小さくすることで引き抜き効率を向上させることができるとともに、チャネル領域の不純物濃度を上げることで引き抜き効率を向上させることができる。
【0081】
次に、図19に示すように、サイドウォールSW2をマスクにして選択的に、ゲート電極Gの上面、p型半導体領域PRdの表面、および、n型半導体領域NRsの表面にシリサイド膜SLを形成する。これにより、ゲート電極G、p型半導体領域PRd、および、n型半導体領域NRsを低抵抗化することができる。これは、サリサイド工程として知られる通常の工程である。このシリサイド膜SLは、例えば、コバルトシリサイド膜、チタンシリサイド膜、ニッケルシリサイド膜、プラチナシリサイド膜、あるいは、ニッケルプラチナシリサイド膜から形成することができる。
【0082】
その後、図5に示すように、通常のLSIで用いられている配線工程を行うことで、本実施の形態1における半導体素子を得ることができる。具体的には、図5に示すように、半導体基板1S上に、例えば、酸化シリコン膜からなるコンタクト層間絶縁膜CILを形成し、その表面をCMP法で平坦化する。そして、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を使用することにより、コンタクト層間絶縁膜CILを貫通するコンタクトホールCNT1およびコンタクトホールCNT2を形成する。
【0083】
次に、コンタクトホールCNT1、CNT2の底面および内壁を含むコンタクト層間絶縁膜CIL上にチタン/窒化チタン膜を形成する。チタン/窒化チタン膜は、チタン膜と窒化チタン膜の積層膜から構成され、例えばスパッタリング法を使用することにより形成することができる。このチタン/窒化チタン膜は、例えば、後の工程で埋め込む膜の材料であるタングステンがシリコン中へ拡散するのを防止する、いわゆるバリア性を有する。
【0084】
続いて、コンタクトホールCNT1、CNT2を埋め込むように、半導体基板1Sの主面の全面にタングステン膜を形成する。このタングステン膜は、例えばCVD法を使用して形成することができる。そして、コンタクト層間絶縁膜CIL上に形成された不要なチタン/窒化チタン膜およびタングステン膜を例えばCMP法で除去することにより、プラグPLG1およびプラグPLG2を形成することができる。
【0085】
次に、コンタクト層間絶縁膜CILおよびプラグPLG1、PLG2上にチタン/窒化チタン膜、アルミニウム膜、チタン/窒化チタン膜を順次、形成する。これらの膜は、例えばスパッタリング法を使用することにより形成することができる。続いて、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を使用することにより、これらの膜のパターニングを行うことにより配線L1を形成することができる。
【0086】
なお、これらの配線工程には、これまで知られている抵抗低減プロセスなどを用いることができる。例えば、上述した配線工程で形成される配線L1はアルミニウム配線となっているが、配線L1を銅配線(ダマシン配線)から形成することもできる。また、必要に応じて、多層配線を形成することもできる。
【0087】
以上のようにして、本実施の形態1における半導体装置を製造することができる。上述した製造工程によって形成される半導体素子は、通常のMOSFETと同じ平面レイアウトで製造することができることは明らかである。このため、本実施の形態1における半導体装置によれば、集積性を損ねることなく、高性能な半導体装置を得ることができる。
【0088】
なお、本実施の形態1における半導体素子の等価回路を示す図1で、ソース端子Sと基板端子Subを説明のため、ソース端子Sと基板端子Subとを分離して示しているが、ソース電位Vおよび基板電位Vsubはともに0Vに設定するため、両端子をつないで、3端子素子を形成することができる。また、注入電荷をn型半導体領域NRbより半導体基板1Sに引き抜くことを考えると、基板電位Vsubをソース電位Vに比べて低く設定し、n型半導体領域NRbと半導体基板1Sの間に逆バイアスを印加することで、引き抜き効率を向上させることもできる。
【0089】
(実施の形態2)
前記実施の形態1では、nチャネル型MOSFETとPNP型トンネルバイポーラトランジスタを組み合わせたnチャネル型半導体素子について説明したが、本願発明の半導体素子では、pチャネル型MOSFETとNPN型トンネルバイポーラトランジスタを組み合わせたpチャネル型半導体素子も形成できる。したがって、本願発明の半導体素子では、nチャネル型半導体素子とpチャネル型半導体素子とを利用して相補型(Complementary)の半導体素子を形成することができる。本実施の形態2では、nチャネル型半導体素子とpチャネル型半導体素子を組み合わせた相補型半導体素子について説明する。特に、本実施の形態2では、相補型半導体素子を利用した回路として、インバータ回路を例に挙げて説明する。
【0090】
図20は、本実施の形態2におけるインバータ回路を示す回路図である。図20に示すように、電源電位VDDとグランド電位GNDとの間にpチャネル型半導体素子PTrとnチャネル型半導体素子NTrが直列に接続されている。具体的には、電源電位VDD側にpチャネル型半導体素子PTrが配置され、グランド電位GND側にnチャネル型半導体素子NTrが配置されている。そして、pチャネル型半導体素子PTrのゲート電極とnチャネル型半導体素子のゲート電極が電気的に接続されて入力INとなっており、pチャネル型半導体素子のドレイン領域とnチャネル型半導体素子のドレイン領域を接続したノードが出力OUTとなっている。
【0091】
このように構成されているインバータ回路によれば、入力INに「H」(例えば、1V)が入力されると、pチャネル型半導体素子PTrのゲート電極とnチャネル型半導体素子NTrのゲート電極に「H」が印加される。この場合、pチャネル型半導体素子PTrはオフし、かつ、nチャネル型半導体素子NTrがオンする。したがって、出力OUTはオンしたnチャネル型半導体素子NTrによってグランド電位GNDと電気的に接続され、出力OUTから「L」(例えば、0V)が出力される。一方、入力INに「L」(例えば、0V)が入力されると、pチャネル型半導体素子PTrのゲート電極とnチャネル型半導体素子NTrのゲート電極に「L」が印加される。この場合、nチャネル型半導体素子NTrはオフし、かつ、pチャネル型半導体素子PTrがオンする。したがって、出力OUTはオンしたpチャネル型半導体素子PTrによって電源電位VDDと電気的に接続され、出力OUTから「H」(例えば、1V)が出力される。このようにして、出力OUTには入力INと反対の電位が出力されてインバータ回路が動作することになる。
【0092】
次に、上述したインバータ回路を構成するnチャネル型半導体素子NTrとpチャネル型半導体素子PTrのデバイス構造について説明する。図21は、nチャネル型半導体素子NTrとpチャネル型半導体素子PTrのデバイス構造を示す断面図である。図21において、半導体基板1S上の主面側には素子分離領域STIが形成されており、素子分離領域STIで区画された活性領域(アクティブ領域)にp型ウェルPWLとn型ウェルNWLが形成されている。図21では左側領域にp型ウェルPWLが形成され、右側領域にn型ウェルNWLが形成されている。そして、p型ウェルPWL上にnチャネル型半導体素子NTrが形成され、n型ウェルNWL上にpチャネル型半導体素子PTrが形成されている。
【0093】
まず、p型ウェルPWL上に形成されているnチャネル型半導体素子NTrの構造について説明する。素子分離領域STIで区画された半導体基板1S内には、例えば、ボロンなどのp型不純物を導入したp型ウェルPWLが形成されており、このp型ウェルPWL内に離間して一対の低濃度n型半導体領域EX1が形成されている。低濃度n型半導体領域EX1は、リンなどのn型不純物を導入した半導体領域であり、一対の低濃度n型半導体領域EX1で挟まれたp型ウェルPWL内の領域がチャネル領域となる。そして、低濃度n型半導体領域EX1の外側にはn型半導体領域NRsとn型半導体領域NRbが形成されている。すなわち、一対の低濃度n型半導体領域EX1のうち左側の低濃度n型半導体領域EX1のさらに左側にn型半導体領域NRsが形成され、一対の低濃度n型半導体領域EX1のうち右側の低濃度n型半導体領域EX1のさらに右側にn型半導体領域NRbが形成されている。このn型半導体領域NRsおよびn型半導体領域NRbは、砒素などのn型不純物が導入された半導体領域である。
【0094】
さらに、本実施の形態2におけるnチャネル型半導体素子NTrにおいては、n型半導体領域NRbに内包されるように、p型半導体領域PRdが形成されている。このp型半導体領域PRdは、ボロンなどのp型不純物が導入された半導体領域である。
【0095】
次に、チャネル領域上にはゲート絶縁膜GOXが形成されており、このゲート絶縁膜GOX上にゲート電極G1が形成されている。ゲート絶縁膜GOXは、例えば、酸化シリコン膜から形成されるが、これに限らず、例えば、酸化ハフニウム膜などの酸化シリコン膜よりも誘電率の高い高誘電率膜から形成してもよい。また、ゲート電極G1は、例えば、リンを導入したポリシリコン膜PF1(n型ポリシリコン膜)と、ポリシリコン膜PF1上に形成されたシリサイド膜SLから形成されている。シリサイド膜SLは、ゲート電極G1の低抵抗化のために形成された膜であり、シリサイド膜SLは、例えば、コバルトシリサイド膜、チタンシリサイド膜、ニッケルシリサイド膜、プラチナシリサイド膜、あるいは、ニッケルプラチナシリサイド膜などから形成されている。
【0096】
ゲート電極G1の両側の側壁にはサイドウォールSW1が形成されており、このサイドウォールSW1の外側にサイドウォールSW2が形成されている。そして、サイドウォールSW2よりも外側の領域にシリサイド膜SLが形成されている。具体的に、左側のサイドウォールSW2の外側に露出しているn型半導体領域NRsの表面にシリサイド膜SLが形成されているとともに、右側のサイドウォールSW2の外側に露出しているp型半導体領域PRdの表面にもシリサイド膜SLが形成されている。
【0097】
本実施の形態2におけるnチャネル型半導体素子NTrは上記のように構成されており、このnチャネル型半導体素子NTrは、nチャネル型MOSFETとPNP型トンネルバイポーラトランジスタを備えている。つまり、左側の低濃度n型半導体領域EX1とn型半導体領域NRsおよびシリサイド膜SLにより、nチャネル型MOSFETのソース領域が形成されている。そして、チャネル領域上に形成されたゲート絶縁膜GOXがnチャネル型MOSFETのゲート絶縁膜を構成し、かつ、ゲート絶縁膜GOX上に形成されているゲート電極G1がnチャネル型MOSFETのゲート電極を構成している。さらに、右側の低濃度n型半導体領域EX1とn型半導体領域NRbがnチャネル型MOSFETとPNP型トンネルバイポーラトランジスタとの接続領域を形成している。
【0098】
続いて、p型半導体領域PRdとシリサイド膜SLがPNP型トンネルバイポーラトランジスタのエミッタ領域となっており、右側の低濃度n型半導体領域EX1およびn型半導体領域NRbがPNP型トンネルバイポーラトランジスタのベース領域となっている。そして、p型ウェルPWLおよび半導体基板1SがPNP型トンネルバイポーラトランジスタのコレクタ領域となっている。以上のことから、本実施の形態2におけるnチャネル型半導体素子NTrは、nチャネル型MOSFETとPNP型トンネルバイポーラトランジスタを備え、nチャネル型MOSFETのドレイン領域がPNP型トンネルバイポーラトランジスタのベース領域となるように、nチャネル型MOSFETとPNP型トンネルバイポーラトランジスタが電気的に接続された構成をしている。なお、p型ウェルPWLには、p型ウェルPWLに電位を供給するためのp型給電領域PR1も形成されている。
【0099】
続いて、n型ウェルNWL上に形成されているpチャネル型半導体素子PTrの構造について説明する。素子分離領域STIで区画された半導体基板1S内には、例えば、リンや砒素などのn型不純物を導入したn型ウェルNWLが形成されており、このn型ウェルNWL内に離間して一対の低濃度p型半導体領域EX2が形成されている。低濃度p型半導体領域EX2は、ボロンなどのp型不純物を導入した半導体領域であり、一対の低濃度p型半導体領域EX2で挟まれたn型ウェルNWL内の領域がチャネル領域となる。そして、低濃度p型半導体領域EX2の外側にはp型半導体領域PRbとp型半導体領域PRsが形成されている。すなわち、一対の低濃度p型半導体領域EX2のうち左側の低濃度p型半導体領域EX2のさらに左側にp型半導体領域PRbが形成され、一対の低濃度p型半導体領域EX2のうち右側の低濃度p型半導体領域EX2のさらに右側にp型半導体領域PRsが形成されている。このp型半導体領域PRbおよびp型半導体領域PRsは、ボロンなどのp型不純物が導入された半導体領域である。
【0100】
さらに、本実施の形態2におけるpチャネル型半導体素子PTrにおいては、p型半導体領域PRbに内包されるように、n型半導体領域NRdが形成されている。このn型半導体領域NRdは、リンや砒素などのn型不純物が導入された半導体領域である。
【0101】
次に、チャネル領域上にはゲート絶縁膜GOXが形成されており、このゲート絶縁膜GOX上にゲート電極G2が形成されている。ゲート絶縁膜GOXは、例えば、酸化シリコン膜から形成されるが、これに限らず、例えば、酸化ハフニウム膜などの酸化シリコン膜よりも誘電率の高い高誘電率膜から形成してもよい。また、ゲート電極G2は、例えば、ボロンを導入したポリシリコン膜PF1(p型ポリシリコン膜)と、ポリシリコン膜PF1上に形成されたシリサイド膜SLから形成されている。シリサイド膜SLは、ゲート電極G2の低抵抗化のために形成された膜であり、シリサイド膜SLは、例えば、コバルトシリサイド膜、チタンシリサイド膜、ニッケルシリサイド膜、プラチナシリサイド膜、あるいは、ニッケルプラチナシリサイド膜などから形成されている。
【0102】
ゲート電極G2の両側の側壁にはサイドウォールSW1が形成されており、このサイドウォールSW1の外側にサイドウォールSW2が形成されている。そして、サイドウォールSW2よりも外側の領域にシリサイド膜SLが形成されている。具体的に、左側のサイドウォールSW2の外側に露出しているn型半導体領域NRdの表面にシリサイド膜SLが形成されているとともに、右側のサイドウォールSW2の外側に露出しているp型半導体領域PRsの表面にもシリサイド膜SLが形成されている。
【0103】
本実施の形態2におけるpチャネル型半導体素子PTrは上記のように構成されており、このpチャネル型半導体素子PTrは、pチャネル型MOSFETとNPN型トンネルバイポーラトランジスタを備えている。つまり、右側の低濃度p型半導体領域EX2とp型半導体領域PRsおよびシリサイド膜SLにより、pチャネル型MOSFETのソース領域が形成されている。そして、チャネル領域上に形成されたゲート絶縁膜GOXがpチャネル型MOSFETのゲート絶縁膜を構成し、かつ、ゲート絶縁膜GOX上に形成されているゲート電極G2がpチャネル型MOSFETのゲート電極を構成している。さらに、左側の低濃度p型半導体領域EX2とp型半導体領域PRbがpチャネル型MOSFETとNPN型トンネルバイポーラトランジスタとの接続領域を形成している。
【0104】
続いて、n型半導体領域NRdとシリサイド膜SLがNPN型トンネルバイポーラトランジスタのエミッタ領域となっており、左側の低濃度p型半導体領域EX2およびp型半導体領域PRbがNPN型トンネルバイポーラトランジスタのベース領域となっている。そして、n型ウェルNWLがNPN型トンネルバイポーラトランジスタのコレクタ領域となっている。以上のことから、本実施の形態2におけるpチャネル型半導体素子PTrは、pチャネル型MOSFETとNPN型トンネルバイポーラトランジスタを備え、pチャネル型MOSFETのドレイン領域がNPN型トンネルバイポーラトランジスタのベース領域となるように、pチャネル型MOSFETとNPN型トンネルバイポーラトランジスタが電気的に接続された構成をしている。なお、n型ウェルNWLには、n型ウェルNWLに電位を供給するためのn型給電領域NR1も形成されている。
【0105】
このように構成されているnチャネル型半導体素子NTrとpチャネル型半導体素子PTrを覆う半導体基板1S上には、例えば、図21に示すように、TEOSを原料とした酸化シリコン膜からなるコンタクト層間絶縁膜CILが形成されている。そして、このコンタクト層間絶縁膜CILを貫通してシリサイド膜SLに達するようにコンタクトホールCNTが形成されている。コンタクトホールCNTの内部には、バリア導体膜となるチタン/窒化チタン膜と、このバリア導体膜上に形成されたタングステン膜が埋め込まれて、プラグPLGが形成されている。プラグPLGを形成したコンタクト層間絶縁膜CIL上には、配線L1が形成されている。この配線L1は、例えば、窒化チタン膜と、アルミニウム膜と、窒化チタン膜の積層膜から形成されている。
【0106】
本実施の形態2における半導体装置は上記のように構成されており、以下に、その製造方法について図面を参照しながら説明する。
【0107】
まず、図22に示すように、半導体基板(p型シリコン基板)1Sの表面に、例えば、10nmの酸化シリコン膜を熱酸化法で形成した後、100nmの窒化シリコン膜をCVD(Chemical Vapor Deposition)法を用いて堆積する。そして、フォトリソグラフィ技術を用いて、活性領域をパターニングする。その後、ドライエッチング技術を使用することにより、窒化シリコン膜および酸化シリコン膜を半導体基板1Sの主面(基板面)に対して垂直方向に異方性エッチングした後、さらに、半導体基板1Sを異方性エッチングして、半導体基板1Sに、例えば、300nmの深さの溝(トレンチ)を形成する。
【0108】
続いて、溝の内部に露出したシリコン表面を酸化することにより、5nmの酸化シリコン膜を形成し、さらに、CVD法により、700nmの酸化シリコン膜を半導体基板1S上に堆積する。次に、CMP(Chemical Mechanical Polishing)法を使用することにより、窒化シリコン膜を下地マスクとして、堆積した酸化シリコン膜の研磨を行い、溝の内部を除いて、半導体基板1S上に堆積した酸化シリコン膜を除去する。その後、マスクとして使用した窒化シリコン膜を熱リン酸によるウェットエッチングで除去する。以上のようにして、半導体基板1Sの主面側に素子分離領域STIを形成することができる。
【0109】
次に、イオン注入法および熱処理を使用することにより、半導体基板1S内にp型ウェルPWLおよびn型ウェルNWLを形成する。そして、窒化シリコン膜の下に形成していた酸化シリコン膜をフッ酸で除去することにより、半導体基板1Sの表面(シリコン表面)を露出させる。
【0110】
続いて、図23に示すように、熱酸化法を使用することにより、活性領域に、例えば、3nmのゲート絶縁膜GOXを形成する。ゲート絶縁膜GOXは、例えば、酸化シリコン膜から形成されるが、これに限らず、酸化シリコン膜よりも誘電率の高い高誘電率膜から形成してもよい。その後、ゲート絶縁膜GOX上に、CVD法を用いて、ポリシリコン膜PF1を100nm程度の厚さで堆積する。このとき、nチャネル型半導体素子形成領域に形成されているポリシリコン膜PF1には、イオン注入法などを用いて高濃度にリンをドーピングする。同様に、pチャネル型半導体素子形成領域に形成されているポリシリコン膜PF1には、イオン注入法などを用いて高濃度にボロンをドーピングする。
【0111】
そして、フォトリソグラフィ技術およびドライエッチング法を使用することにより、ポリシリコン膜PF1をパターニングする。具体的には、フォトリソグラフィ技術を使用してポリシリコン膜PF1上に形成されたレジスト膜をパターニングする。そして、パターニングしたレジスト膜をマスクにして、ポリシリコン膜PF1をドライエッチングする。このように、ポリシリコン膜PF1を半導体基板1Sの基板面に垂直方向に異方性エッチングすることで、ポリシリコン膜PF1からなるゲート電極G1およびゲート電極G2を形成する。
【0112】
次に、図24に示すように、フォトリソグラフィ技術およびイオン注入法を使用することにより、半導体基板1S内にゲート電極G1に整合した低濃度n型半導体領域EX1を形成する。同様に、フォトリソグラフィ技術およびイオン注入法を使用することにより、半導体基板1S内にゲート電極G2に整合した低濃度p型半導体領域EX2を形成する。そして、図25に示すように、CVD法により、ゲート電極G1とゲート電極G2を覆う半導体基板1S上に酸化シリコン膜を50nm程度の厚さで堆積し、堆積した酸化シリコン膜に対して異方的にエッチングすることにより、ゲート電極G1およびゲート電極G2の両側の側壁にサイドウォールSW1を形成する。
【0113】
その後、サイドウォールSW1を形成したゲート電極G1およびパターニングしたレジスト膜をマスクにしたイオン注入法により、p型ウェルPWL内に砒素をドーピングする。これにより、n型半導体領域NRsおよびn型半導体領域NRbを形成することができる。このとき、n型ウェルNWL内にn型給電領域NR1も形成する。同様に、サイドウォールSW1を形成したゲート電極G2およびパターニングしたレジスト膜をマスクにしたイオン注入法により、n型ウェルNWL内にボロンをドーピングする。これにより、p型半導体領域PRsおよびp型半導体領域PRbを形成することができる。このとき、p型ウェルPWL内にp型給電領域PR1も形成する。その後、熱処理によって導入した不純物(砒素とボロン)の活性化を行ってもよい。
【0114】
続いて、図26に示すように、CVD法により、ゲート電極G1およびゲート電極G2を覆う半導体基板1S上に酸化シリコン膜を50nm程度の厚さで堆積する。次に、堆積した酸化シリコン膜に対して異方的にエッチングすることにより、サイドウォールSW1の外側にサイドウォールSW2を形成する。そして、nチャネル型半導体素子形成領域においては、フォトリソグラフィ技術およびイオン注入法を使用することにより、n型半導体領域NRbに内包されるようにp型半導体領域PRdを形成する。同様に、pチャネル型半導体素子形成領域においては、フォトリソグラフィ技術およびイオン注入法を使用することにより、p型半導体領域PRbに内包されるようにn型半導体領域NRdを形成する。
【0115】
その後、Laser Spike Annealing(LSA)を用いて短時間での高温活性化処理を行う。これにより、nチャネル型半導体素子形成領域においては、n型半導体領域NRbとp型半導体領域PRdの間の境界領域にトンネル接合を形成することができる。同様に、pチャネル型半導体素子形成領域においては、p型半導体領域PRbとn型半導体領域NRdの間の境界領域にトンネル接合を形成することができる。
【0116】
次に、図27に示すように、サイドウォールSW2をマスクにして選択的に、ゲート電極G1およびゲート電極G2の上面、p型半導体領域PRdの表面、n型導体領域NRsの表面、n型半導体領域NRdの表面、p型半導体領域PRsの表面、p型給電領域PR1の表面、および、n型給電領域NR1の表面にシリサイド膜SLを形成する。これにより、ゲート電極G1、G2、p型半導体領域PRd、n型半導体領域NRs、n型半導体領域NRd、p型半導体領域PRs、p型給電領域PR1、および、n型給電領域NR1を低抵抗化することができる。これは、サリサイド工程として知られる通常の工程である。このシリサイド膜SLは、例えば、コバルトシリサイド膜、チタンシリサイド膜、ニッケルシリサイド膜、プラチナシリサイド膜、あるいは、ニッケルプラチナシリサイド膜から形成することができる。
【0117】
その後、図21に示すように、通常のLSIで用いられている配線工程を行うことで、本実施の形態2における半導体装置を得ることができる。具体的には、図21に示すように、半導体基板1S上に、例えば、酸化シリコン膜からなるコンタクト層間絶縁膜CILを形成し、その表面をCMP法で平坦化する。そして、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を使用することにより、コンタクト層間絶縁膜CILを貫通するコンタクトホールCNTを形成する。
【0118】
次に、コンタクトホールCNTの底面および内壁を含むコンタクト層間絶縁膜CIL上にチタン/窒化チタン膜を形成する。チタン/窒化チタン膜は、チタン膜と窒化チタン膜の積層膜から構成され、例えばスパッタリング法を使用することにより形成することができる。このチタン/窒化チタン膜は、例えば、後の工程で埋め込む膜の材料であるタングステンがシリコン中へ拡散するのを防止する、いわゆるバリア性を有する。
【0119】
続いて、コンタクトホールCNTを埋め込むように、半導体基板1Sの主面の全面にタングステン膜を形成する。このタングステン膜は、例えばCVD法を使用して形成することができる。そして、コンタクト層間絶縁膜CIL上に形成された不要なチタン/窒化チタン膜およびタングステン膜を例えばCMP法で除去することにより、プラグPLGを形成することができる。
【0120】
次に、コンタクト層間絶縁膜CILおよびプラグPLG上にチタン/窒化チタン膜、アルミニウム膜、チタン/窒化チタン膜を順次、形成する。これらの膜は、例えばスパッタリング法を使用することにより形成することができる。続いて、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を使用することにより、これらの膜のパターニングを行うことにより配線L1を形成することができる。
【0121】
なお、これらの配線工程には、これまで知られている抵抗低減プロセスなどを用いることができる。例えば、上述した配線工程で形成される配線L1はアルミニウム配線となっているが、配線L1を銅配線(ダマシン配線)から形成することもできる。また、必要に応じて、多層配線を形成することもできる。以上のようにして、本実施の形態2における半導体装置を製造することができる。
【0122】
なお、本実施の形態2では、インバータを例に挙げて説明している。インバータは、デジタル回路の基本単位となっており、これを組み合わせることで、デジタル回路で用いられるNAND回路、NOR回路、EX−OR回路、フリップフロップ回路などの基本論理回路を形成することができる。つまり、本実施の形態2におけるnチャネル型半導体素子NTrおよびpチャネル型半導体素子PTrを使用してデジタル回路を構築することができることがわかる。
【0123】
(実施の形態3)
本実施の形態3では、同一の半導体基板上に、本願発明における半導体素子と、単体MOSFETからなる単体トランジスタとを形成する例について説明する。
【0124】
図28は、本実施の形態3における半導体装置のデバイス構造を示す断面図である。図28に示すように、半導体基板1S上の主面側には素子分離領域STIが形成されており、素子分離領域STIで区画された活性領域(アクティブ領域)にp型ウェルPWL1とp型ウェルPWL2が形成されている。図28では左側領域にp型ウェルPWL1が形成され、右側領域にp型ウェルPWL2が形成されている。そして、p型ウェルPWL1上にnチャネル型半導体素子NTr1が形成され、p型ウェルPWL2上に単体トランジスタNTr2が形成されている。
【0125】
ここで、nチャネル型半導体素子NTr1の構造は前記実施の形態2で説明したnチャネル型半導体素子NTr(図21参照)と同様の構成をしているので、その説明は省略する。一方、単体トランジスタNTr2は、広く用いられている単体MOSFETであり、以下に、この構造について図28を参照しながら説明する。
【0126】
素子分離領域STIで区画された半導体基板1S内には、例えば、ボロンなどのp型不純物を導入したp型ウェルPWL2が形成されており、このp型ウェルPWL2内に離間して一対の低濃度n型半導体領域EX3が形成されている。低濃度n型半導体領域EX3は、リンなどのn型不純物を導入した半導体領域であり、一対の低濃度n型半導体領域EX3で挟まれたp型ウェルPWL2内の領域がチャネル領域となる。そして、低濃度n型半導体領域EX3の外側にはn型半導体領域NRs2とn型半導体領域NRb2が形成されている。すなわち、一対の低濃度n型半導体領域EX3のうち左側の低濃度n型半導体領域EX3のさらに左側にn型半導体領域NRs2が形成され、一対の低濃度n型半導体領域EX3のうち右側の低濃度n型半導体領域EX3のさらに右側にn型半導体領域NRb2が形成されている。このn型半導体領域NRs2およびn型半導体領域NRb2は、砒素などのn型不純物が導入された半導体領域である。
【0127】
次に、チャネル領域上にはゲート絶縁膜GOXが形成されており、このゲート絶縁膜GOX上にゲート電極G3が形成されている。ゲート絶縁膜GOXは、例えば、酸化シリコン膜から形成されるが、これに限らず、例えば、酸化ハフニウム膜などの酸化シリコン膜よりも誘電率の高い高誘電率膜から形成してもよい。また、ゲート電極G3は、例えば、リンを導入したポリシリコン膜PF1(n型ポリシリコン膜)と、ポリシリコン膜PF1上に形成されたシリサイド膜SLから形成されている。シリサイド膜SLは、ゲート電極G1の低抵抗化のために形成された膜であり、シリサイド膜SLは、例えば、コバルトシリサイド膜、チタンシリサイド膜、ニッケルシリサイド膜、プラチナシリサイド膜、あるいは、ニッケルプラチナシリサイド膜などから形成されている。
【0128】
ゲート電極G3の両側の側壁にはサイドウォールSW1が形成されており、このサイドウォールSW1の外側にサイドウォールSW2が形成されている。そして、サイドウォールSW2よりも外側の領域にシリサイド膜SLが形成されている。具体的に、左側のサイドウォールSW2の外側に露出しているn型半導体領域NRs2の表面にシリサイド膜SLが形成されているとともに、右側のサイドウォールSW2の外側に露出しているn型半導体領域NRb2の表面にもシリサイド膜SLが形成されている。なお、p型ウェルPWL2には、p型ウェルPWL2に電位を供給するためのp型給電領域PR2も形成されている。
【0129】
本実施の形態3における半導体装置は上記のように構成されており、以下に、その製造方法について図面を参照しながら説明する。
【0130】
まず、図29に示すように、半導体基板(p型シリコン基板)1Sの表面に、例えば、10nmの酸化シリコン膜を熱酸化法で形成した後、100nmの窒化シリコン膜をCVD(Chemical Vapor Deposition)法を用いて堆積する。そして、フォトリソグラフィ技術を用いて、活性領域をパターニングする。その後、ドライエッチング技術を使用することにより、窒化シリコン膜および酸化シリコン膜を半導体基板1Sの主面(基板面)に対して垂直方向に異方性エッチングした後、さらに、半導体基板1Sを異方性エッチングして、半導体基板1Sに、例えば、300nmの深さの溝(トレンチ)を形成する。
【0131】
続いて、溝の内部に露出したシリコン表面を酸化することにより、5nmの酸化シリコン膜を形成し、さらに、CVD法により、700nmの酸化シリコン膜を半導体基板1S上に堆積する。次に、CMP(Chemical Mechanical Polishing)法を使用することにより、窒化シリコン膜を下地マスクとして、堆積した酸化シリコン膜の研磨を行い、溝の内部を除いて、半導体基板1S上に堆積した酸化シリコン膜を除去する。その後、マスクとして使用した窒化シリコン膜を熱リン酸によるウェットエッチングで除去する。以上のようにして、半導体基板1Sの主面側に素子分離領域STIを形成することができる。
【0132】
次に、イオン注入法および熱処理を使用することにより、半導体基板1S内にp型ウェルPWLおよびn型ウェルNWLを形成する。そして、窒化シリコン膜の下に形成していた酸化シリコン膜をフッ酸で除去することにより、半導体基板1Sの表面(シリコン表面)を露出させる。
【0133】
続いて、図30に示すように、熱酸化法を使用することにより、活性領域に、例えば、3nmのゲート絶縁膜GOXを形成する。ゲート絶縁膜GOXは、例えば、酸化シリコン膜から形成されるが、これに限らず、酸化シリコン膜よりも誘電率の高い高誘電率膜から形成してもよい。その後、ゲート絶縁膜GOX上に、CVD法を用いて、ポリシリコン膜PF1を100nm程度の厚さで堆積する。このとき、nチャネル型半導体素子形成領域に形成されているポリシリコン膜PF1には、イオン注入法などを用いて高濃度にリンをドーピングする。
【0134】
そして、フォトリソグラフィ技術およびドライエッチング法を使用することにより、ポリシリコン膜PF1をパターニングする。具体的には、フォトリソグラフィ技術を使用してポリシリコン膜PF1上に形成されたレジスト膜をパターニングする。そして、パターニングしたレジスト膜をマスクにして、ポリシリコン膜PF1をドライエッチングする。このように、ポリシリコン膜PF1を半導体基板1Sの基板面に垂直方向に異方性エッチングすることで、ポリシリコン膜PF1からなるゲート電極G1およびゲート電極G3を形成する。
【0135】
次に、図31に示すように、フォトリソグラフィ技術およびイオン注入法を使用することにより、半導体基板1S内にゲート電極G1に整合した低濃度n型半導体領域EX1を形成する。同様に、フォトリソグラフィ技術およびイオン注入法を使用することにより、半導体基板1S内にゲート電極G3に整合した低濃度n型半導体領域EX3を形成する。そして、図32に示すように、CVD法により、ゲート電極G1とゲート電極G3を覆う半導体基板1S上に酸化シリコン膜を50nm程度の厚さで堆積し、堆積した酸化シリコン膜に対して異方的にエッチングすることにより、ゲート電極G1およびゲート電極G3の両側の側壁にサイドウォールSW1を形成する。
【0136】
その後、サイドウォールSW1を形成したゲート電極G1およびパターニングしたレジスト膜をマスクにしたイオン注入法により、p型ウェルPWL1内に砒素をドーピングする。これにより、n型半導体領域NRsおよびn型半導体領域NRbを形成することができる。同様に、サイドウォールSW1を形成したゲート電極G3およびパターニングしたレジスト膜をマスクにしたイオン注入法により、p型ウェルPWL2内に砒素をドーピングする。これにより、n型半導体領域NRs2およびn型半導体領域NRb2を形成することができる。さらに、フォトリソグラフィ技術およびイオン注入法を使用して、p型ウェルPWL1にボロンを導入することにより、p型ウェルPWL1内にp型給電領域PR1を形成する。同様に、フォトリソグラフィ技術およびイオン注入法を使用して、p型ウェルPWL2にボロンを導入することにより、p型ウェルPWL2内にp型給電領域PR2を形成する。その後、熱処理によって導入した不純物(砒素とボロン)の活性化を行ってもよい。
【0137】
続いて、図33に示すように、CVD法により、ゲート電極G1およびゲート電極G3を覆う半導体基板1S上に酸化シリコン膜を50nm程度の厚さで堆積する。次に、堆積した酸化シリコン膜に対して異方的にエッチングすることにより、サイドウォールSW1の外側にサイドウォールSW2を形成する。そして、nチャネル型半導体素子形成領域においては、フォトリソグラフィ技術およびイオン注入法を使用することにより、n型半導体領域NRbに内包されるようにp型半導体領域PRdを形成する。
【0138】
その後、Laser Spike Annealing(LSA)を用いて短時間での高温活性化処理を行う。これにより、nチャネル型半導体素子形成領域においては、n型半導体領域NRbとp型半導体領域PRdの間の境界領域にトンネル接合を形成することができる。
【0139】
次に、図34に示すように、サイドウォールSW2をマスクにして選択的に、ゲート電極G1およびゲート電極G3の上面、p型半導体領域PRdの表面、n型導体領域NRsの表面、n型半導体領域NRs2の表面、n型半導体領域NRb2の表面、p型給電領域PR1の表面、および、p型給電領域PR2の表面にシリサイド膜SLを形成する。これにより、ゲート電極G1、G3、p型半導体領域PRd、n型半導体領域NRs、n型半導体領域NRs2、n型半導体領域NRb2、p型給電領域PR1、および、p型給電領域PR2を低抵抗化することができる。これは、サリサイド工程として知られる通常の工程である。このシリサイド膜SLは、例えば、コバルトシリサイド膜、チタンシリサイド膜、ニッケルシリサイド膜、プラチナシリサイド膜、あるいは、ニッケルプラチナシリサイド膜から形成することができる。
【0140】
その後、図28に示すように、通常のLSIで用いられている配線工程を行うことで、本実施の形態3における半導体装置を得ることができる。具体的には、図28に示すように、半導体基板1S上に、例えば、酸化シリコン膜からなるコンタクト層間絶縁膜CILを形成し、その表面をCMP法で平坦化する。そして、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を使用することにより、コンタクト層間絶縁膜CILを貫通するコンタクトホールCNTを形成する。
【0141】
次に、コンタクトホールCNTの底面および内壁を含むコンタクト層間絶縁膜CIL上にチタン/窒化チタン膜を形成する。チタン/窒化チタン膜は、チタン膜と窒化チタン膜の積層膜から構成され、例えばスパッタリング法を使用することにより形成することができる。このチタン/窒化チタン膜は、例えば、後の工程で埋め込む膜の材料であるタングステンがシリコン中へ拡散するのを防止する、いわゆるバリア性を有する。
【0142】
続いて、コンタクトホールCNTを埋め込むように、半導体基板1Sの主面の全面にタングステン膜を形成する。このタングステン膜は、例えばCVD法を使用して形成することができる。そして、コンタクト層間絶縁膜CIL上に形成された不要なチタン/窒化チタン膜およびタングステン膜を例えばCMP法で除去することにより、プラグPLGを形成することができる。
【0143】
次に、コンタクト層間絶縁膜CILおよびプラグPLG上にチタン/窒化チタン膜、アルミニウム膜、チタン/窒化チタン膜を順次、形成する。これらの膜は、例えばスパッタリング法を使用することにより形成することができる。続いて、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を使用することにより、これらの膜のパターニングを行うことにより配線L1を形成することができる。
【0144】
なお、これらの配線工程には、これまで知られている抵抗低減プロセスなどを用いることができる。例えば、上述した配線工程で形成される配線L1はアルミニウム配線となっているが、配線L1を銅配線(ダマシン配線)から形成することもできる。また、必要に応じて、多層配線を形成することもできる。以上のようにして、本実施の形態3における半導体装置を製造することができる。
【0145】
上述したように、本実施の形態3における半導体装置では、nチャネル型半導体素子NTr1と単体トランジスタNTr2を容易に集積することができる。本願発明のnチャネル型半導体素子NTr1は、極めて優れたスイッチング特性を持っているが、ソース領域とドレイン領域が異なる構造を持っているため、非対称な構造になっている。このため、回路構成上、対称性が要求されるパストランジスタとして用いられるところでは、単体トランジスタNTr2と置き換えることができない問題がある。
【0146】
しかし、本実施の形態3で説明したように、本願発明のnチャネル型半導体素子NTr1は、単体トランジスタNTr2と高い集積性をもつことから、対称性の必要なところに単体トランジスタを用いて、本願発明のnチャネル型半導体素子NTr1と単体トランジスタNTr2を組み合わせることで優れた特性を得ることができる。
【0147】
例として、nチャネル型半導体素子NTr1と単体トランジスタNTr2の組み合わせをSRAMセルに用いた場合について説明する。図35は、2つ単体トランジスタNTr2および2つのnチャネル型半導体素子NTr1を組み合わせてSRAMセルを構成する例を示す回路図である。図35に示すSRAMセルでは、記憶ノードに2つのnチャネル型半導体素子NTr1を使用し、対称性の必要なパストランジスタ(転送用トランジスタ)に単体トランジスタNTr2を使用している。
【0148】
また、図36は、2つ単体トランジスタNTr2、2つのnチャネル型半導体素子NTr1および2つのpチャネル型半導体素子PTr1を組み合わせてSRAMセルを構成する例を示す回路図である。図36に示すSRAMセルでは、記憶ノードに2つのインバータを使用し、対称性の必要なパストランジスタ(転送用トランジスタ)に単体トランジスタNTr2を使用している。そして、2つのインバータは、それぞれ、nチャネル型半導体素子NTr1とpチャネル型半導体素子PTr1から構成している。
【0149】
このように、図35や図36に示すSRAMセルでは、対称性の必要なパストランジスタには、対称性を有する単体トランジスタを使用する一方、記憶ノードには、低電圧で動作し、かつ、優れたスイッチング特性を有する本願発明の半導体素子(nチャネル型半導体素子NTr1、pチャネル型半導体素子PTr1)を使用している。これにより、従来のSRAMセルでは動作できない低電圧(0.2〜0.3V)においても、本願発明の半導体素子を用いることで極めて良好なメモリ特性を得ることができる。
【0150】
(実施の形態4)
本実施の形態4では、SOI(Silicon On Insulator)基板上に本願発明の半導体素子を形成する例について説明する。図37は、本実施の形態4における半導体素子を上部から見た平面図である。図37において、X方向に離間して並ぶようにn型半導体領域NRsとn型半導体領域NRbが形成されている。そして、n型半導体領域NRbの上部にはp型半導体領域PRdが形成されている。このp型半導体領域PRdと電気的に接続するようにプラグPLG1が形成されている。また、n型半導体領域NRsの外側領域には、p型半導体領域PRcが形成されており、このp型半導体領域PRcとn型半導体領域NRsの両方と電気的に接続するようにプラグPLG2が形成されている。さらに、離間されて配置されているn型半導体領域NRsと半導体領域NRbの間をY方向に延在するようにゲート電極Gが形成されている。そして、ゲート電極Gの一端部でゲート電極GはプラグPLG3と電気的に接続されている。
【0151】
次に、図38は、図37のX2−X2線で切断した断面図である。図38に示すように、本実施の形態4における半導体素子は、支持基板HSと、支持基板HS上に形成された埋め込み絶縁層BOXと、埋め込み絶縁層BOX上に形成されたシリコン層(活性層)からなるSOI基板に形成されている。具体的に、SOI基板のシリコン層は、シリコン層を貫通して埋め込み絶縁層に達する素子分離領域STIによって区画され、この区画されたシリコン層に本実施の形態4における半導体素子が形成されている。素子分離領域STIで区画されたシリコン層はp型半導体領域からなるボディ領域BDと呼ばれており、このボディ領域BD内に離間して一対の低濃度n型半導体領域EX1が形成されている。低濃度n型半導体領域EX1は、リンなどのn型不純物を導入した半導体領域であり、一対の低濃度n型半導体領域EX1で挟まれたボディ領域BD内の領域がチャネル領域となる。そして、低濃度n型半導体領域EX1の外側にはn型半導体領域NRsとn型半導体領域NRbが形成されている。すなわち、一対の低濃度n型半導体領域EX1のうち左側の低濃度n型半導体領域EX1のさらに左側にn型半導体領域NRsが形成され、一対の低濃度n型半導体領域EX1のうち右側の低濃度n型半導体領域EX1のさらに右側にn型半導体領域NRbが形成されている。このn型半導体領域NRsおよびn型半導体領域NRbは、砒素などのn型不純物が導入された半導体領域である。
【0152】
ここで、n型半導体領域NRbは埋め込み絶縁層BOXまで達している一方、n型半導体領域NRsは、埋め込み絶縁層BOXまで達していない。そして、このn型半導体領域NRsのn型半導体領域NRb側とは反対側に埋め込み絶縁層BOXまで達するp型半導体領域PRcが形成されている。したがって、p型半導体領域PRcとボディ領域BDはともにp型不純物を導入した半導体領域から構成されているので、電気的に接続されていることになる。つまり、本実施の形態4では、p型半導体領域PRcとボディ領域BDとを電気的に接続するため、n型半導体領域NRsを埋め込み絶縁層BOXまで達しないように構成しているのである。
【0153】
さらに、本実施の形態4における半導体素子においては、n型半導体領域NRbに内包されるように、p型半導体領域PRdが形成されている。このp型半導体領域PRdは、ボロンなどのp型不純物が導入された半導体領域である。
【0154】
次に、チャネル領域(ボディ領域BD)上にはゲート絶縁膜GOXが形成されており、このゲート絶縁膜GOX上にゲート電極Gが形成されている。ゲート絶縁膜GOXは、例えば、酸化シリコン膜から形成されるが、これに限らず、例えば、酸化ハフニウム膜などの酸化シリコン膜よりも誘電率の高い高誘電率膜から形成してもよい。また、ゲート電極Gは、例えば、リンを導入したポリシリコン膜PF1(n型ポリシリコン膜)と、ポリシリコン膜PF1上に形成されたシリサイド膜SLから形成されている。シリサイド膜SLは、ゲート電極Gの低抵抗化のために形成された膜であり、シリサイド膜SLは、例えば、コバルトシリサイド膜、チタンシリサイド膜、ニッケルシリサイド膜、プラチナシリサイド膜、あるいは、ニッケルプラチナシリサイド膜などから形成されている。
【0155】
ゲート電極Gの両側の側壁にはサイドウォールSW1が形成されており、このサイドウォールSW1の外側にサイドウォールSW2が形成されている。そして、サイドウォールSW2よりも外側の領域にシリサイド膜SLが形成されている。具体的に、左側のサイドウォールSW2の外側に露出しているn型半導体領域NRsの表面およびp型半導体領域PRcの表面にシリサイド膜SLが形成されているとともに、右側のサイドウォールSW2の外側に露出しているp型半導体領域PRdの表面にもシリサイド膜SLが形成されている。
【0156】
本実施の形態4における半導体素子は上記のように構成されており、この半導体素子は、MOSFETとトンネルバイポーラトランジスタを備えている。つまり、左側の低濃度n型半導体領域EX1とn型半導体領域NRsおよびシリサイド膜SLにより、MOSFETのソース領域が形成されている。そして、チャネル領域上に形成されたゲート絶縁膜GOXがMOSFETのゲート絶縁膜を構成し、かつ、ゲート絶縁膜GOX上に形成されているゲート電極GがMOSFETのゲート電極を構成している。さらに、右側の低濃度n型半導体領域EX1とn型半導体領域NRbがMOSFETとトンネルバイポーラトランジスタとの接続領域を形成している。
【0157】
続いて、p型半導体領域PRdとシリサイド膜SLがトンネルバイポーラトランジスタのエミッタ領域となっており、右側の低濃度n型半導体領域EX1およびn型半導体領域NRbがトンネルバイポーラトランジスタのベース領域となっている。そして、ボディ領域BDがトンネルバイポーラトランジスタのコレクタ領域となっている。以上のことから、本実施の形態4における半導体素子は、MOSFETとトンネルバイポーラトランジスタを備え、MOSFETのドレイン領域がトンネルバイポーラトランジスタのベース領域となるように、MOSFETとトンネルバイポーラトランジスタが電気的に接続された構成をしていることがわかる。
【0158】
このように構成されている半導体素子を覆う半導体基板1S上には、例えば、図38に示すように、TEOSを原料とした酸化シリコン膜からなるコンタクト層間絶縁膜CILが形成されている。そして、このコンタクト層間絶縁膜CILを貫通してp型半導体領域PRdの表面に形成されたシリサイド膜SLに達するようにコンタクトホールCNT1が形成されている。一方、コンタクト層間絶縁膜CILを貫通してn型半導体領域NRsの表面に形成されたシリサイド膜SLと、p型半導体領域PRcの表面に形成されたシリサイド膜SLの両方に達するようにコンタクトホールCNT2が形成されている。
【0159】
コンタクトホールCNT1の内部とコンタクトホールCNT2の内部には、バリア導体膜となるチタン/窒化チタン膜と、このバリア導体膜上に形成されたタングステン膜が埋め込まれて、プラグPLG1およびプラグPLG2が形成されている。プラグPLG1およびプラグPLG2を形成したコンタクト層間絶縁膜CIL上には、配線L1が形成されている。この配線L1は、例えば、窒化チタン膜と、アルミニウム膜と、窒化チタン膜の積層膜から形成されている。
【0160】
以上のことから、本実施の形態4における半導体素子では、n型半導体領域NRsとp型半導体領域PRcの両方に接するように、n型半導体領域NRsおよびp型半導体領域PRc上にプラグPLG2が形成されていることがわかる。このため、本実施の形態4における半導体素子では、プラグPLG2を介してn型半導体領域NRsとp型半導体領域PRcに同じ電位が供給され、さらに、p型半導体領域PRcはボディ領域BDと電気的に接続されていることから、結局、n型半導体領域PRcとボディ領域BDに同じ電位が供給されることになる。
【0161】
ここで、本実施の形態4における半導体素子の特徴は、ボディ領域BDがp型半導体領域PRcを介してプラグPLG2と電気的に接続されていることから、ボディ領域BDがフローティング状態になっていない点にある。これにより、本実施の形態4における半導体素子をSOI基板上に形成した場合、以下に示す利点が得られる。
【0162】
例えば、通常のSOI基板では、支持基板HSとボディ領域BDの間に埋め込み絶縁層BOXが存在するため、ボディ領域BDに給電することができず、基板浮遊現象と呼ばれる不安定動作を生じることが知られている。これに対し、本実施の形態4では、n型半導体領域NRsの外側にp型半導体領域PRcを設け、このp型半導体領域PRcとボディ領域BDを電気的に接続している。そして、このp型半導体領域PRcはプラグPLG2と接続されていることから、ボディ領域BDはフローティング状態となっていない。この結果、本実施の形態4によれば、基板浮遊現象による不安定動作を抑制できる利点がある。
【0163】
本実施の形態4における半導体装置は上記のように構成されており、以下に、その製造方法について図面を参照しながら説明する。
【0164】
まず、図39に示すように、支持基板HSと、支持基板HS上に形成された埋め込み絶縁層BOXと、埋め込み絶縁層BOX上に形成されたシリコン層からなるSOI基板を用意する。そして、このSOI基板に素子分離領域STIを形成し、この素子分離領域STIによって活性領域を区画する。区画された活性領域(シリコン層)はボディ領域BDとなる。このとき、ボディ領域BDの厚さは、例えば、50nm程度であり、p型半導体領域となっている。例えば、ボディ領域BDの不純物濃度(p型不純物)は、1015/cm3のオーダーとなっている。
【0165】
続いて、図40に示すように、熱酸化法を使用することにより、ボディ領域BD上に、例えば、3nmのゲート絶縁膜GOXを形成する。ゲート絶縁膜GOXは、例えば、酸化シリコン膜から形成されるが、これに限らず、酸化シリコン膜よりも誘電率の高い高誘電率膜から形成してもよい。その後、ゲート絶縁膜GOX上に、CVD法を用いて、ポリシリコン膜PF1を100nm程度の厚さで堆積する。このとき、ポリシリコン膜PF1には、in-situドーピング法またはイオン注入法などを用いて高濃度にリンをドーピングする。そして、フォトリソグラフィ技術およびドライエッチング法を使用することにより、ポリシリコン膜PF1をパターニングする。具体的には、フォトリソグラフィ技術を使用してポリシリコン膜PF1上に形成されたレジスト膜をパターニングする。そして、パターニングしたレジスト膜をマスクにして、ポリシリコン膜PF1をドライエッチングする。このように、ポリシリコン膜PF1を半導体基板1Sの基板面に垂直方向に異方性エッチングすることで、ポリシリコン膜PF1からなるゲート電極Gを形成する。
【0166】
次に、図41に示すように、フォトリソグラフィ技術およびイオン注入法を使用することにより、半導体基板1S内にゲート電極Gに整合した低濃度n型半導体領域EX1を形成する。そして、図42に示すように、CVD法により、ゲート電極Gを覆う半導体基板1S上に酸化シリコン膜を50nm程度の厚さで堆積し、堆積した酸化シリコン膜に対して異方的にエッチングすることにより、ゲート電極Gの両側の側壁にサイドウォールSW1を形成する。
【0167】
その後、サイドウォールSW1を形成したゲート電極Gをマスクにしたイオン注入法により、半導体基板1S内に砒素をドーピングする。これにより、n型半導体領域NRsおよびn型半導体領域NRbを形成することができる。その後、熱処理によって導入した不純物(砒素)の活性化を行ってもよい。ここで、イオン注入法を実施する際、サイドウォールSW1を形成したゲート電極Gとともに、レジスト膜をパターニングしてイオン注入法のマスクとする。この場合、n型半導体領域NRsとn型半導体領域NRbを異なる不純物濃度および異なる深さにすることができる。例えば、n型半導体領域NRbを形成する際の注入エネルギーよりも、n型半導体領域NRsを形成する際の注入エネルギーを低くすることにより、n型半導体領域NRbを埋め込み絶縁層BOXまで達するように形成できる一方、n型半導体領域NRsを埋め込み絶縁層BOXまで達しないように形成することができる。
【0168】
続いて、図43に示すように、CVD法により、ゲート電極Gを覆う半導体基板1S上に酸化シリコン膜を50nm程度の厚さで堆積する。次に、堆積した酸化シリコン膜に対して異方的にエッチングすることにより、サイドウォールSW1の外側にサイドウォールSW2を形成する。そして、フォトリソグラフィ技術およびイオン注入法を使用することにより、n型半導体領域NRbに内包されるようにp型半導体領域PRdを形成する。
【0169】
その後、図44に示すように、フォトリソグラフィ技術およびイオン注入法を使用することにより、n型半導体領域NRsの外側領域に、埋め込み絶縁層BOXにまで達するp型半導体領域PRcを形成する。このとき、n型半導体領域NRsの底部は埋め込み絶縁層BOXにまで達していないことから、p型半導体領域PRcはボディ領域BDと電気的に接続されることになる。
【0170】
次に、Laser Spike Annealing(LSA)を用いて短時間での高温活性化処理を行う。これにより、n型半導体領域NRbとp型半導体領域PRdの間の境界領域にトンネル接合を形成することができる。
【0171】
続いて、図45に示すように、サイドウォールSW2をマスクにして選択的に、ゲート電極Gの上面、p型半導体領域PRdの表面、n型半導体領域NRsの表面、および、p型半導体領域PRcの表面にシリサイド膜SLを形成する。これにより、ゲート電極G、p型半導体領域PRd、n型半導体領域NRs、および、p型半導体領域PRcを低抵抗化することができる。これは、サリサイド工程として知られる通常の工程である。このシリサイド膜SLは、例えば、コバルトシリサイド膜、チタンシリサイド膜、ニッケルシリサイド膜、プラチナシリサイド膜、あるいは、ニッケルプラチナシリサイド膜から形成することができる。
【0172】
その後、図38に示すように、通常のLSIで用いられている配線工程を行うことで、本実施の形態4における半導体素子を得ることができる。具体的には、図38に示すように、半導体基板1S上に、例えば、酸化シリコン膜からなるコンタクト層間絶縁膜CILを形成し、その表面をCMP法で平坦化する。そして、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を使用することにより、コンタクト層間絶縁膜CILを貫通するコンタクトホールCNT1およびコンタクトホールCNT2を形成する。このとき、コンタクトホールCNT2の底面は、p型半導体領域PRcとn型半導体領域NRcの両方に接するように形成される。
【0173】
次に、コンタクトホールCNT1、CNT2の底面および内壁を含むコンタクト層間絶縁膜CIL上にチタン/窒化チタン膜を形成する。チタン/窒化チタン膜は、チタン膜と窒化チタン膜の積層膜から構成され、例えばスパッタリング法を使用することにより形成することができる。このチタン/窒化チタン膜は、例えば、後の工程で埋め込む膜の材料であるタングステンがシリコン中へ拡散するのを防止する、いわゆるバリア性を有する。
【0174】
続いて、コンタクトホールCNT1、CNT2を埋め込むように、半導体基板1Sの主面の全面にタングステン膜を形成する。このタングステン膜は、例えばCVD法を使用して形成することができる。そして、コンタクト層間絶縁膜CIL上に形成された不要なチタン/窒化チタン膜およびタングステン膜を例えばCMP法で除去することにより、プラグPLG1およびプラグPLG2を形成することができる。このとき、プラグPLG2は、p型半導体領域PRcとn型半導体領域NRsの両方と電気的に接続されることになる。
【0175】
次に、コンタクト層間絶縁膜CILおよびプラグPLG1、PLG2上にチタン/窒化チタン膜、アルミニウム膜、チタン/窒化チタン膜を順次、形成する。これらの膜は、例えばスパッタリング法を使用することにより形成することができる。続いて、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を使用することにより、これらの膜のパターニングを行うことにより配線L1を形成することができる。以上のようにして、本実施の形態4における半導体装置を製造することができる。
【0176】
上述した本実施の形態4における半導体素子では、ボディ領域BDへ給電するために、n型半導体領域NRsを埋め込み絶縁層BOXまで達しないように形成するとともに、n型半導体領域NRsの外側領域に埋め込み絶縁層BOXまで達するp型半導体領域PRcを形成する例について説明した。
【0177】
以下では、この構造とは異なる他の構造でボディ領域BDへ給電する変形例1について説明する。図46は、本変形例1における半導体素子のデバイス構造を示す断面図である。図46に示す本変形例1における半導体素子のデバイス構造は、図38に示す半導体素子のデバイス構造とほぼ同様の構成をしているため、異なる構成について説明する。
【0178】
図46に示すように、本変形例1においては、n型半導体領域NRsは埋め込み絶縁層BOXまで達しておらず、このn型半導体領域NRsと埋め込み絶縁層BOXの間にp型半導体領域PRc2が形成されている。このp型半導体領域PRc2の不純物濃度は、1020/cmよりも高い濃度で形成されているため、このp型半導体領域PRc2とn型半導体領域NRsとは整流作用を有する通常のpn接合ではなく、オーミック接触を形成している。オーミック接触とは、整流作用がなく、かつ、電流・電圧特性が抵抗性を示す接触を示している。したがって、本変形例1において、n型半導体領域NRsとp型半導体領域PRc2は抵抗性接触で電気的に接続されていることになり、さらに、p型半導体領域PRc2はボディ領域BDと接続されることになるから、結局、n型半導体領域NRsとボディ領域BDとは電気的に接続されることになる。そして、n型半導体領域NRsはプラグPLG2と接続されていることから、プラグPLG2からn型半導体領域NRsおよびp型半導体領域PRc2を介してボディ領域BDに給電することができる。したがって、変形例1においても、ボディ領域BDはフローティング状態とはならず、ボディ領域BDがフローティング状態になることによる基板浮遊現象(不安定動作)を抑制することができる。
【0179】
この変形例1の構成によれば、以下に示すような利点を有する。例えば、図38に示すように、n型半導体領域NRsの外側領域にp型半導体領域PRcを形成する場合には、p型半導体領域PRcを形成するための特別なマスク(微細な開口部を有するマスク)が必要となる。これに対し、本変形例1を示す図46において、p型半導体領域PRc2は、ゲート電極Gの側壁に形成されているサイドウォールSW2に整合して形成することができる。つまり、本変形例1では、図38に示すp型半導体領域PRcを形成するときのように特別なマスクを必要とせずに、サイドウォールSW2に整合してp型半導体領域PRc2を形成できる利点が得られる。
【0180】
なお、本実施の形態4のように、SOI基板上に本願発明の半導体素子を形成する場合、SOI基板に特有の構造をうまく利用することが有用である。すなわち、本実施の形態4における半導体素子においても、PNP型トンネルバイポーラトランジスタが含まれており、このPNP型トンネルバイポーラトランジスタによる増幅機能を利用して、単体MOSFETでは得ることができない60mV/桁以下のS値を実現している。このとき、PNP型トンネルバイポーラトランジスタの電流増幅機能は、PNP型トンネルバイポーラトランジスタのエミッタ領域となるp型半導体領域PRdから、PNP型トンネルバイポーラトランジスタのベース領域となるn型半導体領域NRbへ正孔を注入し、ベース領域に注入された正孔をコレクタ領域となるボディ領域BDへ引き抜くことにより実現される。したがって、ベース領域に注入された正孔をなるべく多くボディ領域BDへ引き抜くことが重要となってくる。ここで、SOI基板では、エミッタ領域からベース領域に注入された正孔をボディ領域BDへ引き抜く際、埋め込み絶縁層BOXの下層にある支持基板HSをバックゲートとして用いることにより、ベース領域からボディ領域BD(コレクタ領域)へ効果的に正孔を引き抜くことができる。
【0181】
具体的には、支持基板HSに負電位を印加すると、ボディ領域BDの埋め込み絶縁層BOXとの界面に正孔を蓄積することができる。つまり、ボディ領域BDと埋め込み絶縁層BOXの界面に正孔による蓄積領域が形成される。この蓄積領域は、高濃度のp型半導体領域となることから、この蓄積領域がn型半導体領域NRb(ベース領域)と接触することにより、蓄積領域とn型半導体領域NRb(ベース領域)との間のpn接合において空乏層の幅が小さくなる。この結果、ベース領域からボディ領域BDへ正孔が引き抜きやすくなるのである。特に、図47に示すように、埋め込み絶縁層BOXの厚さを薄くすることにより、支持基板HS(バックゲート)に印加する電位を低くしても、ボディ領域BDと埋め込み絶縁層BOXとの界面に正孔による蓄積領域を容易に形成することができ、この結果、ベース領域(n型半導体領域NRb)からコレクタ領域(ボディ領域BD)への正孔の引き抜き効率を向上させることができる。
【0182】
p型半導体領域PRdを深く形成し、下面がBOXに接するように形成することも有用である。前記実施の形態1で用いた通常の半導体基板1S(ウエハ)では、n型半導体領域NRbよりp型半導体領域PRdを深く形成すると、p型半導体領域PRdがp型ウエルPWLと接し、PN接合がなくなる。そのため、エミッタ−コレクタ間が短絡することになる。しかし、SOI基板では、埋め込み絶縁層BOXとn型半導体領域NRbでp型半導体領域PRdを囲うことができるため、p型半導体領域PRdはボディ領域BDと短絡しない。このとき、ボディ領域BD−n型半導体領域NRb−p型半導体領域PRbは、横方向配置のPNP型トンネルバイポーラトランジスタとなる。このとき、埋め込み絶縁層BOXを介して支持基板HSから電界効果を及ぼすことができるため、支持基板HSを用いて、ボディ領域BD−p型半導体領域PRb間のキャリアの流れを制御することができる。
【0183】
特に、本願発明の技術的思想は、電源電位が低電圧となった場合でも、60mV/桁以下のS値を実現する半導体素子を実現するためのものであるから、SOI基板の埋め込み絶縁層BOXの厚さを薄くして、支持基板HS(バックゲート)に印加する電圧を低電位化できる構成は有用である。
【0184】
(実施の形態5)
本願発明における半導体素子は、MOSFETとトンネルバイポーラトランジスタを組み合わせることにより、60mV/桁以下のS値を実現することができ、この結果、低電圧においても優れたスイッチング特性を有するデバイスである。つまり、本願発明における半導体素子は、低電圧での動作で特に有効であるという第1特徴点を有している。一方、本願発明における半導体素子は上述した第1特徴点とは別の有効な第2特徴点も有している。この第2特徴点について説明する。
【0185】
図48は、ゲート電極に電圧を印加した場合のノードA(図1参照)における電位(φn)変化を測定した結果を示すグラフである。図1および図48に示すように、ドレイン端子Dに、例えば、0.8Vという比較的高い電位のドレイン電位Vを印加し、ゲート端子GTに印加するゲート電位Vを上げてゆくと、ノードAの電位(φn)はゲート電位Vとは逆に、ドレイン電位Vから急激に低下することがわかる。つまり、図48に示すように、ゲート電位Vを上げていくと、急激な電位変化がノードAに生じるが、図48の領域ARで示す領域では、さらに急峻に電位変化がノードAに生じていることがわかる。すなわち、例えば、0.8Vという比較的高い電位のドレイン電位Vを印加する場合は、例えば、0.3Vという比較的低い電位のドレイン電位Vを印加する場合には存在しないさらに急峻な電位変化(図48の領域AR参照)が生じるのである。これは、トンネル接合に比較的低電位の順バイアス(例えば、0.3V)が印加される場合、トンネル接合にはバンド間トンネリング現象によるトンネル電流が支配的になる(図11参照)。これに対し、トンネル接合に比較的高電位の順バイアス(例えば、0.8V)が印加される場合、伝導帯間での拡散電流が支配的になり、急激に抵抗が小さくなるため、ノードAの電位変化がより加速されて現れてきたものと考えることができる。
【0186】
図49は、例えば、0.8Vという比較的高い電位のドレイン電位Vをドレイン端子Dに印加した場合における半導体素子のドレイン電流−ゲート電圧特性を示すグラフである。図49に示すドレイン電流−ゲート電圧特性によれば、ゲート電位の変化に対して、非常に急峻な傾きをもっていることがわかる。このことから、本願発明における半導体素子においては、比較的高いドレイン電位Vを印加することにより、より大きな電流を得ることができることがわかる。つまり、本願発明における半導体素子の第2特徴点は、比較的高いドレイン電位Vを印加することにより、より大きな駆動電流を得ることができる点にある。以上のことから、本願発明の半導体素子は、低電圧においても優れたスイッチング特性を有するという第1特徴点と、高電圧においてはより大きな駆動電流を得ることができるという第2特徴点を兼ね備えていることがわかる。
【0187】
そこで、本実施の形態5では、上述した半導体素子の第1特徴点と第2特徴点を有効に活用する技術的思想を提供するものである。例えば、半導体チップとして消費電力の低減を考えると、動作電圧の異なる回路領域を作り集積することで、より有効に本願発明の半導体素子を活用することができる。
【0188】
図50は、本実施の形態5における半導体チップの回路ブロック図である。図50に示すように、本実施の形態5における半導体チップは、電源回路部PCU、I/O回路部IOU、低電圧動作部LVU、および、高電圧動作部HVUを有している。このように構成されている半導体チップにおいては、電源回路部PCUからI/O回路部IOU、低電圧動作部LVU、および、高電圧動作部HVUへ電源電位を供給するようになっている。そして、低電圧動作部LVUには相対的に低い電源電位が供給され、高電圧動作部HVUには相対的に高い電源電位が供給される。
【0189】
低電圧動作部LVUおよび高電圧動作部HVUにはともに本願発明における半導体素子が組み込まれており、低電圧動作部LVUでは、本願発明における半導体素子の第1特徴点を利用して低電圧で優れたスイッチング特性を提供することができる。例えば、SRAMなどのメモリに本願発明の半導体素子を適用することにより、低電圧でSRAMを動作させることができる。一方、高電圧動作部HVUでは、本願発明における半導体素子の第2特徴点を利用して高電圧でより大きな電流駆動力を提供することができる。例えば、演算部などのCPUに本願発明の半導体素子を適用することにより、高電圧で高速動作させることができる。このように本願発明における半導体素子は低電圧動作で優れたスイッチング特性を有するという第1特徴点と、高電圧でより大きな電流駆動力を提供できるという第2特徴点により、低電圧動作部LVUと高電圧動作部HVUという異なる機能を有する回路に同一構造の半導体素子を適用することができる。そして、低電圧で動作が可能な回路は低電圧動作部LVUに集積し、高電圧で電流駆動力が必要な回路は高電圧動作部HVUに集積することにより、電源回路部PCUから供給される電力を有効に活用することができる。
【0190】
(実施の形態6)
本実施の形態6では、本願発明の技術的思想を不揮発性半導体記憶装置に適用する例について説明する。図51は本実施の形態6におけるメモリセルのデバイス構造を示す断面図である。図51に示すように、本実施の形態6におけるメモリセルは、半導体基板1Sに形成された素子分離領域STIで区画されたアクティブ領域に形成されている。具体的に、素子分離領域STIで区画された半導体基板1S内には、例えば、ボロンなどのp型不純物を導入したp型ウェルPWLが形成されており、このp型ウェルPWL内に離間して一対の低濃度n型半導体領域EX1が形成されている。低濃度n型半導体領域EX1は、リンなどのn型不純物を導入した半導体領域であり、一対の低濃度n型半導体領域EX1で挟まれたp型ウェルPWL内の領域がチャネル領域となる。そして、低濃度n型半導体領域EX1の外側にはn型半導体領域NRsとn型半導体領域NRbが形成されている。すなわち、一対の低濃度n型半導体領域EX1のうち左側の低濃度n型半導体領域EX1のさらに左側にn型半導体領域NRsが形成され、一対の低濃度n型半導体領域EX1のうち右側の低濃度n型半導体領域EX1のさらに右側にn型半導体領域NRbが形成されている。このn型半導体領域NRsおよびn型半導体領域NRbは、砒素などのn型不純物が導入された半導体領域である。
【0191】
さらに、本実施の形態6におけるメモリセルにおいては、n型半導体領域NRbに内包されるように、p型半導体領域PRdが形成されている。このp型半導体領域PRdは、ボロンなどのp型不純物が導入された半導体領域である。
【0192】
次に、チャネル領域上には第1電位障壁膜EB1が形成されており、この第1電位障壁膜EB1上に電荷蓄積膜ECが形成されている。そして、電荷蓄積膜EC上に第2電位障壁膜EB2が形成され、この第2電位障壁膜EB2上にゲート電極Gが形成されている。
【0193】
第1電位障壁膜EB1や第2電位障壁膜EB2は、例えば、酸化シリコン膜から形成される。また、ゲート電極Gは、例えば、リンを導入したポリシリコン膜PF1(n型ポリシリコン膜)と、ポリシリコン膜PF1上に形成されたシリサイド膜SLから形成されている。シリサイド膜SLは、ゲート電極Gの低抵抗化のために形成された膜であり、シリサイド膜SLは、例えば、コバルトシリサイド膜、チタンシリサイド膜、ニッケルシリサイド膜、プラチナシリサイド膜、あるいは、ニッケルプラチナシリサイド膜などから形成されている。さらに、電荷蓄積膜ECは、例えば、導体膜であるポリシリコン膜や、トラップ準位を有する絶縁膜である窒化シリコン膜から形成されている。
【0194】
ゲート電極Gの両側の側壁にはサイドウォールSW1が形成されており、このサイドウォールSW1の外側にサイドウォールSW2が形成されている。そして、サイドウォールSW2よりも外側の領域にシリサイド膜SLが形成されている。具体的に、左側のサイドウォールSW2の外側に露出しているn型半導体領域NRsの表面にシリサイド膜SLが形成されているとともに、右側のサイドウォールSW2の外側に露出しているp型半導体領域PRdの表面にもシリサイド膜SLが形成されている。
【0195】
本実施の形態6におけるメモリセルは上記のように構成されており、このメモリセルは、メモリトランジスタとトンネルバイポーラトランジスタを備えている。つまり、左側の低濃度n型半導体領域EX1とn型半導体領域NRsおよびシリサイド膜SLにより、メモリトランジスタのソース領域が形成されている。そして、ゲート電極Gがメモリトランジスタのゲート電極を構成している。さらに、右側の低濃度n型半導体領域EX1とn型半導体領域NRbがメモリトランジスタとトンネルバイポーラトランジスタとの接続領域を形成している。
【0196】
続いて、p型半導体領域PRdとシリサイド膜SLがトンネルバイポーラトランジスタのエミッタ領域となっており、右側の低濃度n型半導体領域EX1およびn型半導体領域NRbがトンネルバイポーラトランジスタのベース領域となっている。そして、p型ウェルPWLおよび半導体基板1Sがトンネルバイポーラトランジスタのコレクタ領域となっている。以上のことから、本実施の形態6におけるメモリセルは、メモリトランジスタとトンネルバイポーラトランジスタを備え、メモリトランジスタのドレイン領域がトンネルバイポーラトランジスタのベース領域となるように、メモリトランジスタとトンネルバイポーラトランジスタが電気的に接続された構成をしていることがわかる。
【0197】
このように構成されているメモリセルを覆う半導体基板1S上には、例えば、図51に示すように、TEOSを原料とした酸化シリコン膜からなるコンタクト層間絶縁膜CILが形成されている。そして、このコンタクト層間絶縁膜CILを貫通してp型半導体領域PRdの表面に形成されたシリサイド膜SLに達するようにコンタクトホールCNT1が形成されている。同様に、コンタクト層間絶縁膜CILを貫通してn型半導体領域NRsの表面に形成されたシリサイド膜SLに達するようにコンタクトホールCNT2が形成されている。コンタクトホールCNT1の内部とコンタクトホールCNT2の内部には、バリア導体膜となるチタン/窒化チタン膜と、このバリア導体膜上に形成されたタングステン膜が埋め込まれて、プラグPLG1およびプラグPLG2が形成されている。プラグPLG1およびプラグPLG2を形成したコンタクト層間絶縁膜CIL上には、配線L1が形成されている。この配線L1は、例えば、窒化チタン膜と、アルミニウム膜と、窒化チタン膜の積層膜から形成されている。
【0198】
続いて、本実施の形態6におけるメモリセルの動作について説明する。まず、書き込み動作について説明する。この書き込み動作とは、図51に示す電荷蓄積膜ECに電子を注入することにより、メモリトランジスタのしきい値電圧を上昇させる動作として定義される。例えば、p型ウェルPWL(半導体基板1S)とゲート電極Gの間に電位差を生じさせることにより、p型ウェルPWL内のチャネル領域から第1電位障壁膜EB1をトンネルして電荷蓄積膜ECへ電子を注入することができる。つまり、FNトンネル現象を使用することにより、電荷蓄積膜ECに電子を注入して書き込み動作を行うことができる。
【0199】
次に、消去動作について説明する。消去動作とは、図51に示す電荷蓄積膜ECから電子を引き抜いて、メモリトランジスタのしきい値電圧を低下させる動作として定義される。例えば、p型ウェルPWL(半導体基板1S)とゲート電極Gの間に書き込み動作とは反対の電位差を生じさせることにより、電荷蓄積膜ECから第1電位障壁膜EB1をトンネルしてチャネル領域(p型ウェルPWL)へ電子を引き抜くことができる。つまり、FNトンネル現象を使用することにより、電荷蓄積膜ECから電子を引き抜いて消去動作を行うことができる。
【0200】
最後に、読み出し動作について説明する。はじめに、ソース領域となるn型半導体領域NRsとドレイン領域となるn型半導体領域NRbの間に電位差を生じさせる。そして、ゲート電極Gに所定電位のゲート電位を印加する。このとき、メモリセルが消去状態にある場合、メモリトランジスタのしきい値電圧は低くなっているので、チャネル領域に電流が流れる。一方、メモリセルが書き込み状態にある場合、メモリトランジスタのしきい値電圧は高くなっているので、チャネル領域に電流がほとんど流れない。このように、ソース領域とドレイン領域の間のチャネル領域に流れる電流の有無を検出することにより、メモリセルが書き込み状態「1」にあるのか、消去状態「0」にあるのかを判別することができる。
【0201】
ここで、本実施の形態6におけるメモリセルでは、n型半導体領域NRbに内包されるようにp型半導体領域PRdが形成されており、このn型半導体領域NRbとp型半導体領域PRdの間の境界領域にトンネル接合が形成されている。このトンネル接合において、p型半導体領域PRdの不純物濃度はn型半導体領域NRbの不純物濃度よりも高くなっている。例えば、p型半導体領域PRdの不純物濃度は、1020/cmのオーダーであり、n型半導体領域NRbの不純物濃度は、1019/cmのオーダーである。
【0202】
これにより、メモリセルの読み出し動作時に、例えば、p型半導体領域PRdに低電圧を印加した場合であっても、p型半導体領域PRdとn型半導体領域NRbの間にはトンネル接合が形成されているので、p型半導体領域PRdよりなるエミッタ領域から、n型半導体領域NRbよりなるベース領域に正孔が注入され、このベース領域に注入された正孔がp型ウェルPWL(半導体基板1S)よりなるコレクタ領域に引き抜かれることにより、トンネルバイポーラトランジスタとして機能させることができる。つまり、本実施の形態6におけるメモリセルでは、メモリトランジスタとトンネルバイポーラトランジスタを接続し、メモリトランジスタをオンしたとき、低電圧であってもトンネルバイポーラトランジスタのエミッタ領域とベース領域の間にバンド間トンネリングにとってトンネル電流が流れることを利用している。これにより、低電圧であっても、大きなドレイン電流(読み出し電流)をトンネルバイポーラトランジスタの増幅機能で得ることができる。したがって、本実施の形態6におけるメモリセルによれば、低電圧でも充分な読み出し電流を確保することができるので、読み出し動作の低電圧化を図ることができる。
【0203】
以上、本発明者によってなされた発明をその実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0204】
本発明は、半導体装置を製造する製造業に幅広く利用することができる。
【符号の説明】
【0205】
1S 半導体基板
A ノード
BD ボディ領域
BOX 埋め込み絶縁層
CIL コンタクト層間絶縁膜
CNT コンタクトホール
CNT1 コンタクトホール
CNT2 コンタクトホール
D ドレイン端子
EB1 第1電位障壁膜
EB2 第2電位障壁膜
EC 電荷蓄積膜
Ec 伝導帯
Ef フェルミ準位
Ev 価電子帯
EX1 低濃度n型半導体領域
EX2 低濃度p型半導体領域
EX3 低濃度n型半導体領域
G ゲート電極
G1 ゲート電極
G2 ゲート電極
GND グランド電位
GOX ゲート絶縁膜
GT ゲート端子
HS 支持基板
HVU 高電圧動作部
IN 入力
IOU I/O回路部
L1 配線
LVU 低電圧動作部
NRb n型半導体領域
NRb2 n型半導体領域
NRd n型半導体領域
NRs n型半導体領域
NRs2 n型半導体領域
NR1 n型給電領域
NTr nチャネル型半導体素子
NTr1 nチャネル型半導体素子
NTr2 単体トランジスタ
NWL n型ウェル
OUT 出力
PCU 電源回路部
PF1 ポリシリコン膜
PLG プラグ
PLG1 プラグ
PLG2 プラグ
PLG3 プラグ
PRb p型半導体領域
PRc p型半導体領域
PRc2 p型半導体領域
PRd p型半導体領域
PRs p型半導体領域
PR1 p型給電領域
PR2 p型給電領域
PTr pチャネル型半導体素子
PTr1 pチャネル型半導体素子
PWL p型ウェル
PWL1 p型ウェル
PWL2 p型ウェル
S ソース端子
SL シリサイド膜
STI 素子分離領域
Sub 基板端子
SW1 サイドウォール
SW2 サイドウォール
ドレイン電位
VDD 電源電位
ゲート電位
ソース電位
sub 基板電位

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板に形成された第1電界効果トランジスタとバイポーラトランジスタから構成される半導体素子を備え、
前記半導体素子を構成する前記第1電界効果トランジスタは、
(a)前記半導体基板内に設けられた第1ソース領域となる第1導電型の第1半導体領域と、
(b)前記半導体基板内で前記第1半導体領域と離間して設けられた第1ドレイン領域となる前記第1導電型の第2半導体領域と、
(c)前記第1半導体領域と前記第2半導体領域の間の前記半導体基板内に形成された前記第1導電型とは逆導電型である第2導電型の第1チャネル領域と、
(d)前記第1チャネル領域上に形成された第1ゲート絶縁膜と、
(e)前記第1ゲート絶縁膜上に形成された第1ゲート電極とを有し、
前記半導体素子を構成する前記バイポーラトランジスタは、
(f)前記第2半導体領域に内包されるように形成されたエミッタ領域となる前記第2導電型の第3半導体領域と、
(g)ベース領域となる前記第1導電型の前記第2半導体領域と、
(h)コレクタ領域となる前記第2導電型の前記半導体基板とを有する半導体装置であって、
前記第2半導体領域と前記第3半導体領域の境界領域にトンネル接合が形成されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
請求項1記載の半導体装置であって、
前記トンネル接合とは、順方向に所定電圧以下の順バイアスを印加した場合にも、電流が流れないのではなく、バンド間トンネリングに起因した電流が流れ、かつ、逆バイアスを印加した時に一定の電流抑制機能を有する接合であることを特徴とする半導体装置。
【請求項3】
請求項2記載の半導体装置であって、
前記第3半導体領域の不純物濃度は前記第2半導体領域の不純物濃度よりも高いことを特徴とする半導体装置。
【請求項4】
請求項3記載の半導体装置であって、
前記第3半導体領域の不純物濃度は、1020/cmのオーダーであり、
前記第2半導体領域の不純物濃度は、1019/cmのオーダーであることを特徴とする半導体装置。
【請求項5】
支持基板と、前記支持基板上に形成された埋め込み絶縁層と、前記埋め込み絶縁層上に形成された活性層よりなるSOI基板に形成された第1電界効果トランジスタとバイポーラトランジスタから構成される半導体素子を備え、
前記半導体素子を構成する前記電界効果トランジスタは、
(a)前記活性層内に設けられた第1ソース領域となる第1導電型の第1半導体領域と、
(b)前記活性層内で前記第1半導体領域と離間して設けられた第1ドレイン領域となる前記第1導電型の第2半導体領域と、
(c)前記第1半導体領域と前記第2半導体領域の間の前記活性層内に形成された第1チャネル領域となる前記第1導電型とは逆導電型である第2導電型の第1ボディ領域と、
(d)前記第1ボディ領域上に形成された第1ゲート絶縁膜と、
(e)前記第1ゲート絶縁膜上に形成された第1ゲート電極とを有し、
前記半導体素子を構成する前記バイポーラトランジスタは、
(f)前記第2半導体領域に内包されるように形成されたエミッタ領域となる前記第2導電型の第3半導体領域と、
(g)ベース領域となる前記第1導電型の前記第2半導体領域と、
(h)コレクタ領域となる前記第2導電型の前記ボディ領域とを有する半導体装置であって、
前記第2半導体領域と前記第3半導体領域の境界領域にトンネル接合が形成されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項6】
請求項5記載の半導体装置であって、
前記トンネル接合とは、順方向に所定電圧以下の順バイアスを印加した場合にも、電流が流れないのではなく、バンド間トンネリングに起因した電流が流れ、かつ、逆バイアスを印加した時に一定の電流抑制機能を有する接合であることを特徴とする半導体装置。
【請求項7】
請求項6記載の半導体装置であって、
前記第3半導体領域の不純物濃度は前記第2半導体領域の不純物濃度よりも高いことを特徴とする半導体装置。
【請求項8】
請求項7記載の半導体装置であって、
前記第3半導体領域の不純物濃度は、1020/cmのオーダーであり、
前記第2半導体領域の不純物濃度は、1019/cmのオーダーであることを特徴とする半導体装置。
【請求項9】
請求項5記載の半導体装置であって、
前記第1半導体領域は、前記埋め込み絶縁層まで達しておらず、かつ、前記第1半導体領域の前記第2半導体領域側とは反対側に前記埋め込み絶縁層まで達する前記第2導電型の第4半導体領域が形成されており、
前記第4半導体領域と前記第1ボディ領域とは電気的に接続されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項10】
請求項9記載の半導体装置であって、
前記第1半導体領域と前記第4半導体領域の両方に接するように、前記第1半導体領域および前記第4半導体領域上にプラグが形成されており、
前記プラグを介して前記第1半導体領域と前記第1ボディ領域に同じ電位が印加されることを特徴とする半導体装置。
【請求項11】
請求項5記載の半導体装置であって、
前記第1半導体領域は、前記埋め込み絶縁層まで達しておらず、かつ、前記第1半導体領域と前記埋め込み絶縁層の間に前記第2導電型の第5半導体領域が形成されており、
前記第1半導体領域と前記第5半導体領域とはオーミック接触していることを特徴とする半導体装置。
【請求項12】
請求項11記載の半導体装置であって、
前記オーミック接触とは、整流作用がなく、かつ、電流・電圧特性が抵抗性を示す接触であることを特徴とする半導体装置。
【請求項13】
請求項1記載の半導体装置であって、
前記半導体装置は、複数の前記半導体素子を有し、
複数の前記半導体素子は、第1半導体素子と第2半導体素子を含み、
前記第1半導体素子は、前記第1導電型がN型であり、かつ、前記第2導電型がP型である前記半導体素子であり、
前記第2半導体素子は、前記第1導電型がP型であり、かつ、前記第2導電型がN型である前記半導体素子であることを特徴とする半導体装置。
【請求項14】
請求項13記載の半導体装置であって、
前記第1半導体素子と前記第2半導体素子がインバータを構成していることを特徴とする半導体装置。
【請求項15】
請求項14記載の半導体装置であって、
前記インバータは、SRAMのメモリセルに使用されることを特徴とする半導体装置。
【請求項16】
請求項1記載の半導体装置であって、
前記半導体装置は、複数の前記半導体素子を有し、
複数の前記半導体素子の中には、低電圧で動作する低電圧半導体素子と、前記低電圧より高い高電圧で動作する高電圧半導体素子が含まれていることを特徴とする半導体装置。
【請求項17】
請求項1記載の半導体装置であって、
前記半導体装置は、前記半導体素子とは別の第2電界効果トランジスタを有し、
前記第2電界効果トランジスタは、
(i)前記半導体基板内に設けられた第2ソース領域と、
(j)前記半導体基板内で前記第2ソース領域と離間して設けられた第2ドレイン領域と、
(k)前記第2ソース領域と前記第2ドレイン領域の間の前記半導体基板内に形成された第2チャネル領域と、
(l)前記第2チャネル領域上に形成された第2ゲート絶縁膜と、
(m)前記第2ゲート絶縁膜上に形成された第2ゲート電極とを有することを特徴とする半導体装置。
【請求項18】
半導体基板に形成されたメモリトランジスタとバイポーラトランジスタから構成されるメモリセルを備え、
前記メモリセルを構成する前記メモリトランジスタは、
(a)前記半導体基板内に設けられたソース領域となる第1導電型の第1半導体領域と、
(b)前記半導体基板内で前記第1半導体領域と離間して設けられたドレイン領域となる前記第1導電型の第2半導体領域と、
(c)前記第1半導体領域と前記第2半導体領域の間の前記半導体基板内に形成された前記第1導電型とは逆導電型である第2導電型のチャネル領域と、
(d)前記チャネル領域上に形成された第1電位障壁膜と、
(e)前記第1電位障壁膜上に形成された電荷蓄積膜と、
(f)前記電荷蓄積膜上に形成された第2電位障壁膜と、
(g)前記第2電位障壁膜上に形成されたゲート電極とを有し、
前記メモリセルを構成する前記バイポーラトランジスタは、
(h)前記第2半導体領域に内包されるように形成されたエミッタ領域となる前記第2導電型の第3半導体領域と、
(i)ベース領域となる前記第1導電型の前記第2半導体領域と、
(j)コレクタ領域となる前記第2導電型の前記半導体基板とを有する不揮発性半導体記憶装置であって、
前記第2半導体領域と前記第3半導体領域の境界領域にトンネル接合が形成されていることを特徴とする不揮発性半導体記憶装置。
【請求項19】
請求項18記載の不揮発性半導体記憶装置であって、
前記トンネル接合とは、順方向に所定電圧以下の順バイアスを印加した場合にも、電流が流れないのではなく、バンド間トンネリングに起因した電流が流れ、かつ、逆バイアスを印加した時に一定の電流抑制機能を有する接合であることを特徴とする不揮発性半導体記憶装置。
【請求項20】
請求項19記載の不揮発性半導体記憶装置であって、
前記第3半導体領域の不純物濃度は前記第2半導体領域の不純物濃度よりも高いことを特徴とする不揮発性半導体記憶装置。
【請求項21】
請求項20記載の不揮発性半導体記憶装置であって、
前記第3半導体領域の不純物濃度は、1020/cmのオーダーであり、
前記第2半導体領域の不純物濃度は、1019/cmのオーダーであることを特徴とする不揮発性半導体記憶装置。
【請求項22】
請求項18記載の不揮発性半導体記憶装置であって、
前記電荷蓄積膜は、導体膜から形成されていることを特徴とする不揮発性半導体記憶装置。
【請求項23】
請求項18記載の不揮発性半導体記憶装置であって、
前記電荷蓄積膜は、トラップ準位を有する絶縁膜から形成されていることを特徴とする不揮発性半導体記憶装置。
【請求項24】
(a)前記半導体基板を用意する工程と、
(b)前記半導体基板上にゲート絶縁膜を形成する工程と、
(c)前記ゲート絶縁膜上にゲート電極を形成する工程と、
(d)前記(c)工程後、前記半導体基板内に第1導電型不純物を導入することにより、第1導電型の第1半導体領域および前記第1導電型の第2半導体領域を互いに離間して形成する工程と、
(e)前記(d)工程後、前記半導体基板内に第2導電型不純物を導入することにより、前記第2半導体領域に内包されるように、第1導電型とは逆導電型の第2導電型の第3半導体領域を形成する工程と、
(f)前記(e)工程後、前記第1半導体領域および前記第2半導体領域に導入した前記第1導電型不純物と、前記第3半導体領域に導入した前記第2導電型不純物を活性化するための熱処理を実施する工程とを備え、
前記(d)工程で前記第1半導体領域および前記第2半導体領域に導入する前記第1導電型不純物の濃度、前記(e)工程で前記第3半導体領域に導入する前記第2導電型不純物の濃度、および、前記(f)工程で実施する熱処理を調整することにより、前記第2半導体領域と前記第3半導体領域の境界領域にトンネル接合を形成することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項25】
請求項24記載の半導体装置の製造方法であって、
前記(f)工程で実施する熱処理は、レーザ・スパイク・アニールであることを特徴とする半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【図48】
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【図49】
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【図50】
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【図51】
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【公開番号】特開2012−33834(P2012−33834A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−174172(P2010−174172)
【出願日】平成22年8月3日(2010.8.3)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】