説明

圧電トランス制御回路

【課題】
圧電トランスの出力端における短絡発生時においては圧電トランスを保護しつつ、回路自体を確実に起動させることが可能な圧電トランス制御回路を提供する。
【解決手段】
制御電圧に応じた発振周波数を有する発振信号を生成する発振手段と、前記発振手段からの発振信号に応じて圧電トランスを駆動する駆動手段と、前記圧電トランスの出力側に接続された負荷の負荷電流を検出し、前記負荷電流を略一定にすべく前記制御電圧を調整して前記発振手段の発振周波数又は振幅を制御する制御手段と、前記圧電トランスの出力電圧を検出し、検出された前記出力電圧を第1の所定値と比較する第1の比較手段と、前記制御電圧を第2の所定値と比較する第2の比較手段と、前記出力電圧が前記第1の所定値より小さくなり、かつ、前記制御電圧が前記第2の所定値より大きくなった場合に、前記圧電トランスの駆動を停止させる駆動停止手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電トランス制御回路に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、持ち運びの容易なノート型パーソナルコンピュータ等には、その表示装置として液晶表示器が広く用いられている。この液晶表示装置の内部には、液晶表示パネルを背照すべく、所謂バックライトとして冷陰極管が備えられており、その冷陰極管を点灯させる昇圧インバータには、昇圧用トランスとして、圧電トランスが普及しつつある。
【0003】
圧電トランスは、出力負荷(負荷抵抗)の大きさによって昇圧比が大きく変化するという一般には好ましくない特性を有しているが、一方でこの負荷抵抗への依存性が冷陰極管のインバータ電源の特性に適しており、液晶表示器の薄型化、高効率化の要求に応える小型高電圧電源として注目されている。
【0004】
このような圧電トランスの制御回路の一例として、短絡時における圧電トランスの保護が可能な回路方式が提案されている(特許文献1を参照。)。ここで短絡とは、例えば、圧電トランスの出力端が筐体に触れた場合などに発生する。
【0005】
図10は、上記のような圧電トランス制御回路の構成を示す図である。1は圧電トランスである。2は圧電トランス1の出力側に接続された冷陰極管等の負荷である。3は負荷に流れる電流を検出するための検出用抵抗Rdetである。4は、検出用抵抗3により検出される検出電圧を整流するための整流回路である。
【0006】
5は、整流回路4から出力される管電流検出電圧と、参照電圧Vref1との比較結果である差を増幅して出力する誤差アンプである。誤差アンプ5からの出力は電圧制御発振回路6の制御電圧Vctrとなる。6は、制御電圧Vctrに応じた発振周波数を有する発振信号を出力する電圧制御発振回路である。7は電圧制御発振回路6の発振信号に応じて圧電トランス1を駆動する駆動回路である。
【0007】
また、8a及び8bは、圧電トランス1の出力電圧を1/100から1/10000程度に分圧し、その分圧された電圧により該出力電圧を検出する出力電圧検出抵抗である。尚、これらの出力電圧検出抵抗8a,8bは、圧電トランス1の出力電圧に影響しないような高抵抗(数百kΩ〜数MΩ)である。9は、出力電圧検出抵抗8a、8bからの交流の検出電圧を直流に変換する整流回路である。
【0008】
電圧比較回路10は、所謂ワイヤードOR接続されたコンパレータ10a及び10bにより構成されており、整流回路9からの検出電圧Vdetを、基準電圧Vref2及びVref3と比較し、そのそれぞれの比較結果に応じて“High”または“Low”の信号を出力する。また、電圧比較回路10においてコンパレータ10aまたは10bの何れかの出力が“Low”になると、その回路特性上、電圧比較回路10の出力は共に“Low”となる。
【0009】
ここで、電圧制御発振回路6は、誤差増幅回路5の出力電圧に応じて駆動回路7に発振信号を出力する電圧制御発振回路であるが、更に、電圧制御発振回路6の発振を停止するストローブ端子Pが設けられている。ストローブ端子Pには、電圧比較回路10の出力が与えられ、この出力がLOWの場合には発振が停止される。
【0010】
このような圧電トランス制御回路では、圧電トランスの出力端の短絡時において出力電圧が所定値以下となったことを検出し、圧電トランスを保護することが可能となっている。
【特許文献1】特開平10−327586号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上述の圧電トランス制御回路では、圧電トランスの出力端の出力電圧レベルに基づいて回路動作を制御しているため、例えば圧電トランスの制御回路の起動時のように、短絡が発生していなくても出力電圧が所定値以下になる場合でも、保護回路が働いて回路動作が停止されてしまうため、回路自体を起動することができない、という問題がある。
【0012】
そこで、本発明では、圧電トランスの出力端における短絡発生時においては圧電トランスを保護しつつ、回路自体を確実に起動させることが可能な圧電トランス制御回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するための本願発明は、制御電圧に応じた発振周波数を有する発振信号を生成する発振手段と、前記発振手段からの発振信号に応じて圧電トランスを駆動する駆動手段と、前記圧電トランスの出力側に接続された負荷の負荷電流を検出し、前記負荷電流を略一定にすべく前記制御電圧を調整して前記発振手段の発振周波数又は振幅を制御する制御手段と、前記圧電トランスの出力電圧を検出し、検出された前記出力電圧を所定値と比較する比較手段と、前記出力電圧が前記所定値より低い場合に計時を行う計時手段と、前記出力電圧が前記所定値より低くなった後、前記計時手段により所定時間の経過が計時された場合に、前記圧電トランスの駆動を停止させる駆動停止手段とを備える。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、圧電トランスの出力端における短絡発生時においては圧電トランスを保護しつつ、回路自体を確実に起動させることが可能な圧電トランス制御回路を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、添付する図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。
【0016】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態に対応する圧電トランス制御回路のブロック構成図である。
【0017】
図1において、101は圧電トランスである。102は圧電トランス101の出力側に接続された冷陰極管等の負荷である。103は負荷に流れる電流を検出するための検出用抵抗である。104は、検出用抵抗103により検出される検出電圧を整流するための整流回路である。
【0018】
105は、整流回路104から出力される管電流検出電圧と、参照電圧Vref1との比較結果である差を増幅して出力する誤差アンプである。誤差アンプ105からの出力は電圧制御発振回路106の制御電圧Vctrとなる。106は、制御電圧Vctrに応じた発振周波数を有する発振信号を出力する電圧制御発振回路である。107は電圧制御発振回路106の発振信号に応じて圧電トランス101を駆動する駆動回路である。
【0019】
また、108a及び108bは、圧電トランス101の出力電圧を1/100から1/10000程度に分圧し、その分圧された電圧により該出力電圧を検出する出力電圧検出抵抗である。尚、これらの出力電圧検出抵抗108a、108bは、圧電トランス101の出力電圧に影響しないような高抵抗(数百kΩ〜数MΩ)である。109は、出力電圧検出抵抗108a、108bからの交流の検出電圧を直流に変換し、検出電圧Vdetを出力する整流回路である。
【0020】
110は、保護回路であり、コンパレータ110aとタイマ110bから構成される。保護回路110からは、電圧制御発振回路106の発振を停止するストローブ信号が出力され、電圧制御発振回路106が備えるストローブ端子Pへ入力される。
【0021】
上記の構成を備える圧電トランス制御回路の動作について図2を参照して説明する。図2は、本実施形態に対応する圧電トランス制御回路において、検出電圧Vdet、コンパレータ110aの出力Vc、タイマ110bの出力Vtとの関係の一例を、(a)短絡発生時と、(b)起動時とについてそれぞれ記載した図である。
【0022】
まず図2(a)の短絡発生時について説明する。t1のタイミングにおいて圧電トランスの出力端において短絡が発生すると、検出電圧Vdetは、t1以前の所定の電圧レベルから急激に0Vレベルまで降下する。このとき、コンパレータ110aでは、検出電圧Vdetと参照電圧Vref3とを比較しており、検出電圧VdetがVref3よりも小さくなった時点(t2)において、タイマ110bへの出力VcをHIGHからLOWへ切り替える。
【0023】
タイマ110bでは、コンパレータ110aからの出力Vcを常に監視しており、コンパレータ110aの出力VcがHIGHからLOWに切り替わった時点(t2)から、カウント(計時)を開始して時間tdが経過した場合に、電圧制御発振回路106への出力VtをHIGHからLOWへ切り替える。
【0024】
電圧制御発振回路106では、ストローブ端子Pへ入力される保護回路110からの出力信号Vtを監視しており、VtがHIGHの場合には駆動回路107への発振信号を出力するが、VtがHIGHからLOWへ切り替わると、発振信号の出力を停止する。
【0025】
ここにおける電圧制御発振回路106の構成例は図4に示すようになる。図4において、106aはスイッチング素子であり、出力信号VtがHIGHの場合にONとなり、VtがLOWの場合にOFFとなる。106bは、電圧を周波数に変換するV/Fコンバータであり、誤差アンプ105から入力される制御電圧Vctrを、対応する周波数の発振信号に変換して出力する。
【0026】
次に、図2(b)の起動時の場合を説明する。例えば、時間t4において制御回路の電源が投入され、圧電トランスの駆動が開始されると、t4の時点では、検出電圧は0V付近にあるが、徐々に増加してt5の時点でVref3に一致する。コンパレータ110aでは、検出電圧VdetがVref3に一致するまでは、タイマ110bに対してLOWレベルの出力Vcを出力しているが、t5の時点でVcはLOWからHIGHに切り替わる。
【0027】
一方のタイマ110bでは、電源投入時には出力VtのレベルをHIGHとして出力するとともに、コンパレータ110aからLOWレベルの出力Vcが入力されているのでカウントを開始する。このカウントが時間tdを経過するまで継続されれば、図2(a)の場合のように、出力VtをHIGHからLOWへ切り替えるが、図2(b)の場合は、td経過以前に検出電圧Vdetが参照電圧Vref3を超えるので、コンパレータ110aの出力VcがHIGHになってカウントがうち切られる。
【0028】
よって、起動時においては、電圧制御発振回路106における動作は停止されることなく維持される。
【0029】
このように短絡が発生した場合には、起動時とは異なり短絡状態が解消されない限りは検出電圧Vdetが参照電圧Vref3より大きいレベルにまで復帰することはないので、一定時間を超えて電圧レベルが回復しなければ、電圧制御発振回路106の動作を停止させる。
【0030】
一方、起動時は、検出電圧Vdetが0V付近であり、起動と共に検出電圧Vdetが徐々に向上する。よって、タイマ110bの出力VcをHIGHからLOWへ切り替えるタイミングを規定する時間tdを、検出電圧Vdetが所定電圧レベル(Vref3)に達する時間を考慮して設定しておけば、電圧制御発振回路106の動作が妨げられることなく、圧電トランス制御回路を起動することができる。
【0031】
次に、時間tdの設定について説明する。時間tdが長ければ起動時における保護動作の弊害を確実に防止することができるが、時間tdが長すぎた場合、短絡後の圧電トランスの保護動作が行われる前に、圧電トランスの駆動周波数が低周波側へスイープされ、短絡状態における共振周波数に到達してしまうことになる。この共振周波数では、圧電トランスの振動速度が非常に大きくなり、最悪折損してしまう場合もある。
【0032】
そこで、タイマの設定時間は短絡時の共振周波数へのスイープに必要な時間より短いことが必要となる。より具体的に図3を参照すると、図3は、圧電トランスの昇圧比と、電圧制御発振回路106から出力される発振信号の発振周波数との関係を表したグラフであり、fuは上限周波数、fLは下限周波数、fwは発振周波数範囲、fdは短絡が発生していない通常動作時における発振周波数、frは短絡時の共振周波数を示している。通常動作時と短絡時とでは、周波数範囲及び昇圧比が図3に示すように異なっており、短絡状態になると、管電流が検出できなくなって発振周波数が低周波側へシフトされるので、周波数範囲全体が低周波側に移動してしまう。
【0033】
通常動作時の周波数fdと短絡時の共振周波数frの差(fd−fr)は、frの約1/10程度であり、発振信号の周波数範囲をfw、全範囲のスイープ時間をTswとすると、正常動作時の発振周波数fdが短絡時の共振周波数に達するのにかかる時間は(fr・Tsw)/(10・fw)で計算される。従って、タイマの遅延時間Tdは(fr・Tsw)/(10・fw)以下であるのが望ましい。尚、Tswは、外部定数により任意に設定される。
【0034】
以上のように、本実施形態においては、圧電トランス制御回路の起動時における保護動作を抑制しつつ、短絡時には、発振信号の周波数が共振周波数に到達する以前に圧電トランスの駆動を停止するように回路動作を制御することができる。
【0035】
また、本実施形態では、検出電圧Vdetが降下し始めた場合であっても、参照電圧Vref3より小さくなるまで降下しない限り、保護動作が実行されることはないので、動作条件に応じて圧電トランスの出力端の電圧に変化が生じた場合であっても、保護回路が誤って動作する可能性が低くなり、安定的な回路動作を確保することができる。
【0036】
[第2の実施形態]
第2の実施形態に対応する本発明は、第1の実施形態に対応する圧電トランス制御回路に、調光機能を追加した圧電トランス制御回路である。
【0037】
本実施形態に対応する圧電トランス制御回路の構成例は図5に示すとおりである。この構成において、101から110までの各構成は図1に示した第1の実施形態と同一であるので、詳細な説明は省略する。
【0038】
本実施形態に対応する圧電トランスの制御回路では、パルス発振回路502から出力されるパルス発振信号により圧電トランス101が間欠的に駆動されることで、圧電トランス101の出力電圧が間欠的に出力され、パルス発振信号のデューティー比を変えることで、停止(消灯)期間と動作(点灯)期間の割合が変化し冷陰極管の明るさを変えることができる。所謂、PWM調光である。
【0039】
本実施形態において新たに追加された構成である501は、サンプルホールド回路であって、誤差アンプ105からの出力をサンプリングしてコンデンサに蓄積する。サンプルホールド回路501は、スイッチ501a、コンデンサ501b及びバッファ501cから構成され、スイッチ501aには、パルス発振回路502からスイッチ501aのオン/オフを制御する切替信号が与えられる。バッファからの出力は、電圧制御発振回路106の制御電圧Vctrとして出力される。
【0040】
502はパルス発振回路であり、圧電トランス101が間欠的に駆動されるように、駆動回路107に対し停止期間と動作期間の割合に対応した所定のデューティー比を有する発振信号を与える。
【0041】
上記の構成を備える圧電トランス制御回路において、タイマ110bには、パルス発振回路202からのパルス発振信号Vpが入力される。この信号は図6に示すように、HIGH、LOWが交互に切り替わる信号であり、タイマ110bはVpがHIGHの期間において作動し、LOWの期間において停止するように構成されている。
【0042】
従って、パルス発振信号VpがHIGHの場合には、第1の実施形態において記載した通りの動作を行い、短絡が検知された場合には電圧制御発振回路106に対して出力VtをLOWにすることにより、圧電トランスの駆動が停止されるように動作する。一方、パルス発振信号VpがLOWの場合にはそもそも圧電トランスが駆動されていないので、短絡が検知されることなくタイマ110bは動作を停止する。
【0043】
また、パルス発振信号VpがLOWからHIGHへ切り替わった場合、即ち圧電トランスの駆動が再開された場合には、同時にタイマ110bが起動される。この場合、第1の実施形態における図2(b)起動時と同様の状態が形成されるので、第1の実施形態において説明した起動時と同様の動作が実行されることとなる。ただし、調光時において圧電トランスの駆動が再開される時、制御電圧Vctrは既に動作中の電圧に設定されている為、起動時より早く検出電圧Vdetが立ち上がる。
【0044】
以上のように、本実施形態においては、圧電トランスを間欠的に駆動して冷陰極管の調光(PWM調光)を行う圧電トランス制御回路においても、起動時における保護動作の働きを抑制しつつ、短絡時には、発振信号の周波数が共振周波数に到達する以前に圧電トランスの駆動を停止するように回路動作を制御することができる。
【0045】
[第3の実施形態]
第3の実施形態に対応する本発明は、第1の実施形態に対応する圧電トランス制御回路とは異なる保護回路の構成において、起動時における保護動作の働きを抑制しつつ、短絡時には、発振信号の周波数が共振周波数に到達する以前に圧電トランスの駆動を停止するように回路動作を制御することを特徴とする。
【0046】
本実施形態に対応する圧電トランス制御回路の構成例は図7に示すとおりである。この構成において、101から109までの各構成は図1に示した第1の実施形態と同一であるので、詳細な説明は省略する。
【0047】
本実施形態に対応する保護回路701は、コンパレータ701a、コンパレータ701b、OR回路701cで構成される。
【0048】
コンパレータ701aは、第1の実施形態におけるコンパレータ110aと同様に、整流回路109から出力される検出電圧Vdetと参照電圧Vref3とを比較して、Vdet>Vref3の場合に、比較結果出力Vc1としてHIGHを出力し、Vdet≦Vref3の場合に、比較結果出力Vc1としてLOWを出力する。コンパレータ701bは、誤差アンプ105から出力される制御電圧Vctrと参照電圧Vref4とを比較して、Vctr≧Vref4の場合に、比較結果出力Vc2としてLOWを出力し、Vctr<Vref4の場合に、比較結果出力Vc2としてHIGHを出力する。
【0049】
OR回路701cは、コンパレータ701a及び701bからの出力Vc1及びVc2との論理和を算出し、電圧制御発振回路106へ出力Voを出力する。出力Vo、Vc1、Vc2、検出電圧Vdet、制御電圧Vctr、参照電圧Vref3及びVref4との関係は図8の様になる。
【0050】
次に、図9を参照して、本実施形態における圧電トランス制御回路の具体的な動作について説明する。図9は、検出電圧Vdet、出力Vc1、制御電圧Vctr、出力Vc2、出力Voとの関係の一例を、(a)短絡発生時と、(b)起動時とについてそれぞれ記載した図である
まず図9(a)の短絡発生時について説明する。t1のタイミングにおいて圧電トランスの出力端において短絡が発生すると、検出電圧Vdetは、t1以前の所定の電圧レベルから急激に0Vレベルまで降下する。このとき、コンパレータ701aでは、検出電圧Vdetと参照電圧Vref3とを比較しており、検出電圧VdetがVref3よりも小さくなった時点(t2)において、OR回路701cへの出力をHIGHからLOWへ切り替える。
【0051】
一方コンパレータ701bでは、制御電圧Vctrと参照電圧Vref4とを比較している。t1で短絡が発生すると、整流回路104から出力される管電流検出電圧が低下して参照電圧Vref1よりも小さくなるために、誤差アンプ105から出力される制御電圧Vctrは増大していく。従って、t1以前は、参照電圧Vref4よりも小さかった制御電圧Vctrは、短絡の発生により増大し始め、いずれVref4よりも大きくなる。Vctr=Vref4となる時点をt3とすると、コンパレータ701bは、t3以前はVref4>Vctrであったために、出力Vc2としてHIGHを出力していたが、t3以降は、出力Vc2をLOWとして出力する。
【0052】
OR回路701cは、コンパレータ701a及び701bからの出力Vc1及びVc2とを監視しており、両方の出力が共にLOWに切り替わった時点(図9では、t3)において出力VoをHIGHからLOWに切り替える。
【0053】
出力Voは電圧制御発振回路106に入力され、図4に示すストローブ端子Pを介してスイッチング素子106aを切り替えるので、出力VoがLOWになると、駆動回路107への発振信号の出力が停止され、圧電トランスの駆動が停止される。
【0054】
以上において、短絡が発生した場合であっても速やかに保護動作を実行して、圧電トランスの駆動を停止することができる。
【0055】
上記において、Vref4は、図3における短絡時の発振周波数frに対応する制御電圧Vctrよりも小さい値であればよい。即ち、Vref4がかかる制御電圧よりも小さければ、制御電圧Vctrが増大して短絡時の共振周波数に到達する以前に圧電トランスの駆動を停止することができるので、第1の実施形態のようにタイマを利用して時間計測せずとも、確実に保護動作を実行することができる。
【0056】
次に、図9(b)の起動時の場合を説明する。例えば、時間t4において制御回路の電源が投入され、圧電トランスの駆動が開始されると、t4の時点では、検出電圧Vdetは0V付近にあるが、徐々に増加してt5の時点でVref3に一致する。コンパレータ701aでは、検出電圧VdetがVref3に一致するまでは、OR回路701cに対してLOWレベルの出力Vc1を出力しているが、t5の時点でVc1はLOWからHIGHに切り替わる。
【0057】
一方、コンパレータ701bでは、電源投入時t4には制御電圧Vctrはほぼ0Vであり、当然にVref4よりも小さい値であるので、出力Vc2はHIGHとして出力される。OR回路701cは、コンパレータ701bからの出力Vc1が、t4の時点においてHIGHとなっているので、同様に出力VoをHIGHとして出力する。
【0058】
このように、起動時においては、出力VoはHIGHの状態で推移するので、電圧制御発振回路106における動作は停止されることなく維持される。
【0059】
以上のように、本実施形態においては、検出電圧Vdetが所定値を下回り、且つ、制御電圧Vctrが、短絡時の共振周波数に対応する電圧レベルに到達する以前に、圧電トランスの駆動を停止するので、短絡が発生した場合でも、圧電トランスの破壊を伴わずに確実に保護動作を実行することができると共に、起動時における保護動作の発動を防止して確実に回路を起動することができる。
【0060】
[その他の実施形態]
なお、上記の実施形態の圧電トランス制御回路では、電圧制御発振回路106から出力する発振信号の発振周波数を、負荷102に流れる電流値に基づく管電流検出電圧が、参照電圧に一致するように制御することにより調整していた。
【0061】
本発明における圧電トランスの保護技術は、このような圧電トランス制御回路のみに適用されるものではなく、他の制御回路、例えば、圧電トランスの入力電圧と出力電圧又は出力電流との位相差が所定値になるように周波数を制御する回路構成においても適用可能である。
【0062】
また、上記の実施形態に対応する圧電トランス制御回路は、制御電圧Vctrが増加するに従って、電圧制御発振回路から出力される発振信号の発振周波数が低域側にシフトするように構成されていた。しかしながら、本発明における圧電トランスの保護技術は、このような圧電トランス制御回路に限定されることなく、制御電圧が増加するに従って、当該発振周波数が高域側にシフトするように構成された回路についても同様に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の第1の実施形態に対応する圧電トランス制御回路の構成例を示す図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に対応する圧電トランス制御回路の動作を説明するための図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に対応する圧電トランスの動作状態を説明するための図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に対応する電圧制御発振回路106の構成の一例を示す図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に対応する圧電トランス制御回路の構成例を示す図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に対応するタイマ110bの動作状態を説明するための図である。
【図7】本発明の第3の実施形態に対応する圧電トランス制御回路の構成例を示す図である。
【図8】本発明の第3の実施形態に対応する保護回路701の動作を説明するための図である。
【図9】本発明の第3の実施形態に対応する圧電トランス制御回路の動作を説明するための図である。
【図10】従来の圧電トランス制御回路の構成例を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御電圧に応じた発振周波数を有する発振信号を生成する発振手段と、
前記発振手段からの発振信号に応じて圧電トランスを駆動する駆動手段と、
前記圧電トランスの出力側に接続された負荷の負荷電流を検出し、前記負荷電流を略一定にすべく前記制御電圧を調整して前記発振手段の発振周波数又は振幅を制御する制御手段と、
前記圧電トランスの出力電圧を検出し、検出された前記出力電圧を所定値と比較する比較手段と、
前記出力電圧が前記所定値より低い場合に計時を行う計時手段と、
前記出力電圧が前記所定値より低くなった後、前記計時手段により所定時間の経過が計時された場合に、前記圧電トランスの駆動を停止させる駆動停止手段と
を備えることを特徴とする圧電トランス制御回路。
【請求項2】
前記駆動停止手段は、
前記発振手段から前記駆動手段への前記発振信号の供給を停止させることにより、前記圧電トランスの駆動を停止させることを特徴とする請求項1に記載の圧電トランス制御回路。
【請求項3】
前記圧電トランスを間欠的に駆動するためのパルス発振信号を前記駆動手段に与えるパルス発振回路を更に備え、
前記圧電トランスが間欠的に駆動されている場合に、前記駆動が停止されている期間において前記計時手段は計時を抑制することを特徴とする請求項1又は2に記載の圧電トランス制御回路。
【請求項4】
前記所定時間は、
前記圧電トランスの共振周波数をfr、
前記発振周波数の上限周波数と下限周波数との差で定まる周波数範囲をfw、
前記発振手段が前記周波数範囲を掃引するのに要する時間をTsw
とした場合に、(fr・Tsw)/(10・fw)を超えないことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の圧電トランス制御回路。
【請求項5】
制御電圧に応じた発振周波数を有する発振信号を生成する発振手段と、
前記発振手段からの発振信号に応じて圧電トランスを駆動する駆動手段と、
前記圧電トランスの出力側に接続された負荷の負荷電流を検出し、前記負荷電流を略一定にすべく前記制御電圧を調整して前記発振手段の発振周波数又は振幅を制御する制御手段と、
前記圧電トランスの出力電圧を検出し、検出された前記出力電圧を第1の所定値と比較する第1の比較手段と、
前記制御電圧を第2の所定値と比較する第2の比較手段と、
前記出力電圧が前記第1の所定値以下になり、かつ、前記制御電圧が前記第2の所定値以上になった場合に、前記圧電トランスの駆動を停止させる駆動停止手段と
を備えることを特徴とする圧電トランス制御回路。
【請求項6】
制御電圧に応じた発振周波数を有する発振信号を生成する発振手段と、
前記発振手段からの発振信号に応じて圧電トランスを駆動する駆動手段と、
前記圧電トランスの出力側に接続された負荷の負荷電流を検出し、前記負荷電流を略一定にすべく前記制御電圧を調整して前記発振手段の発振周波数又は振幅を制御する制御手段と、
前記圧電トランスの出力電圧を検出し、検出された前記出力電圧を第1の所定値と比較する第1の比較手段と、
前記制御電圧を第2の所定値と比較する第2の比較手段と、
前記出力電圧が前記第1の所定値以下になり、かつ、前記制御電圧が前記第2の所定値以下になった場合に、前記圧電トランスの駆動を停止させる駆動停止手段と
を備えることを特徴とする圧電トランス制御回路。
【請求項7】
前記第2の所定値は、前記圧電トランスの出力側短絡時における共振周波数よりも高周波よりの所定の周波数に対応する制御電圧に一致することを特徴とする請求項5又は6に記載の圧電トランス制御回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−33948(P2006−33948A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−206399(P2004−206399)
【出願日】平成16年7月13日(2004.7.13)
【出願人】(000000240)太平洋セメント株式会社 (1,449)
【Fターム(参考)】