説明

絶縁基材、配線基板及び多層基板

【課題】配線の進行方向に平行なガラスクロスの糸を、差動配線と交差するように蛇行させ、P配線・N配線の片方に位相ずれが蓄積させず、結果として、配線間スキューの発生を防止する。
【解決手段】積層用基板作成に用いるガラスクロスを構成する縦糸4及び横糸5の配置を工夫する。すなわち、縦糸4又は横糸5のいずれか一方または双方を差動配線の幅及び配線間距離の合計の長さだけ蛇行させる。これにより、積層用基板の比誘電率の変化を平均化させ、結果差動伝送時の波形品質の劣化を抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高速信号伝送向けのガラスクロスを用いた多層基板に関わる。
【背景技術】
【0002】
サーバ・ルータのバックプレーン基板では高速・長距離(100cm程度)の信号伝送を行うため、伝送路の損失によって信号波形の品質が劣化し、電源・グランドのノイズ(コモンノイズ)の影響が大きくなる。
【0003】
このコモンノイズを低減するために、差動伝送を用いることがバックプレーン基板では一般的である。差動伝送では1対の信号線を使って信号を伝送し、対をなす2本の信号線にはそれぞれ逆位相の信号を伝送する。信号伝送の結果、この2本の信号線(P配線・N配線)にはほぼ同じコモンノイズが乗るため、受信側で信号の差を取ることでコモンノイズを除去することができる。
【0004】
図9はこれまで伝送基板に用いられていた従来の積層用基板51を用いた従来の多層基板52の断面斜視図である。また、図10は従来の積層用基板51に用いられていたガラスクロス2の構成を表す概念図、図11は従来の積層用基板51の断面図である。
【0005】
この図で示すバックプレーン基板等の高速伝送基板に用いられる従来の積層用基板51は導体層7と絶縁層8から成り、導体層7はP配線6p、N配線6nからなる差動配線6と電源グランドプレーン11からなる。絶縁層8はガラスクロス2と樹脂3から成る。
【0006】
ガラスクロス2は縦糸4と横糸5が直交して編まれた構造である。このため、従来の積層用基板51の絶縁層の構造は図10のように縦糸のみがある部分100、横糸のみがある部分101、ガラスクロスがない部分200、縦糸・横糸交差部300に分けられる。このため、差動配線6に垂直な断面では、図11のように比較的高誘電率なガラスクロス2の部分と低誘電率な樹脂3の部分が混在する不均質な構造を採る事になる。
【0007】
この結果、差動配線6を絶縁層8の上に配置する際、差動配線6とガラスクロス2の位置関係はほとんどの場合に差動配線6の中心に対して線対称にならず、差動配線6のP配線6p・N配線6n直近の絶縁層構造は図11のようにガラスクロスの多い部分400とガラスクロスの少ない部分500の混ざり合った配線となり、比誘電率に差異が生じることとなる。
【0008】
このとき、P配線6p、N配線6nとガラスクロス2の縦糸4又は横糸5がほぼ平行に配置されると、P配線6pとN配線6nの比誘電率の差に起因する位相ずれは配線長に応じて蓄積される。結果、図12に示すように受信端での位相ずれが大きくなるため、差動伝送波形が歪み、伝送波形の品質劣化を招くこととなる。
【0009】
このため、P配線6p・N配線6nの直下のガラスクロス構造に起因する比誘電率の差を低減または平均化し、差動伝送時の波形品質の劣化を抑制することが課題となる。
【0010】
従来の信号伝送でも上述の差動伝送を用いており、コモンノイズを除去するのに重要な役割を果たしていた。しかし、近年の高速・大容量化するサーバ・ルータ機器に対応して伝送系の信号伝送が高速化すると、差動配線の配線間でスキューが発生し、それによりコモンノイズの除去率が低下するようになった。信号伝送の高速化のためには、配線間のスキューを低減し、コモンノイズを十分低減する必要がある。この要求に対して各種の提案がなされている。
【0011】
Design con 2007にて公表された下記非特許文献1においては、主に配線パターンを傾斜させてガラスクロスと配線に角度をつけることで比誘電率の変化を短周期化している。
【非特許文献1】Design con 2007 6−TA2: Fiber Weave Effect:Practical Impact Analysis and Mitigation Strategies
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかし、上記文献記載の発明では、配線パターンを傾斜させ、配線とガラスクロスとの角度を付けることで比誘電率の変化を短周期化させているが、この手法では配線パターンの配置の自由度が低下する。
【0013】
本発明の目的は、配線の進行方向に平行なガラスクロスの糸を、差動配線と交差するように蛇行させることで、P配線・N配線の片方に位相ずれを蓄積させず、結果として、配線間スキューの発生を防止させることにある。
【0014】
本発明の前記並びにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述及び添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次の通りである。
【0016】
本発明の代表的な実施の形態に関わる絶縁基材は縦糸及び横糸から構成されるガラスクロスを有し、縦糸又は横糸のいずれか又は双方を蛇行させ、樹脂によって硬化することを特徴とする。
【0017】
また、本発明の代表的な実施の形態に関わる別の配線基板は、縦糸及び横糸を編んで生成されるガラスクロス及び一対二本の差動配線を含んで構成され、ガラスクロスの縦糸又は横糸の少なくともいずれか一方が差動配線の進行方向に対して周期的に変化するよう蛇行した状態で樹脂によって硬化され絶縁基材が形成され、差動配線はこの絶縁基材上に形成され、差動配線に影響する絶縁基材の比誘電率が差動配線の進行方向に対して周期的に変化することを特徴とする。
【0018】
この配線基板は、縦糸又は横糸の蛇行が差動配線の配線幅及び配線間隔を合わせた長さ以上の幅で蛇行することを特徴としても良い。
【0019】
この配線基板において、ガラスクロスの蛇行させた縦糸又は横糸の中心線に対して平行にストリップ配線で差動配線を設けることを特徴としても良い。
【0020】
これらの配線基板を用い、この配線基板を複数枚積層して多層基板を形成しても良い。
【0021】
本発明の代表的な実施の形態に関わる別の配線基板は縦糸及び横糸を編んで生成されるガラスクロスと、一対二本の差動配線と、縦糸及び横糸を編んで生成されるプリプレグ材を含み、このガラスクロスの縦糸又は横糸のいずれかが差動配線の進行方向に対して周期的に変化するよう蛇行した状態で樹脂によって硬化され絶縁基材を形成し、差動配線はこの絶縁基材上に形成され、この差動配線に影響する絶縁基材の比誘電率が差動配線の進行方向に対して周期的に変化し、プリプレグ材と絶縁基材との間に差動配線が間挿されるようガラスクロスと前記プリプレグ材が積層されることを特徴としても良い。
【0022】
この配線基板において、プリプレグ材は縦糸及び横糸を編んで生成されるガラスクロスを含み、プリプレグ材の縦糸又は横糸のいずれかが周期的に変化するよう蛇行した状態で樹脂によって硬化されることを特徴としても良い。
【0023】
また、この配線基板は、絶縁基材の蛇行した縦糸または横糸の中心線と、プリプレグ材の蛇行した縦糸又は横糸の中心線が略90度の角度を有することを特徴としても良い。
【発明の効果】
【0024】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下の通りである。
【0025】
本発明の代表的な実施の形態に関わる伝送基板を用いることで、絶縁層のガラスクロスと樹脂の比誘電率の差に起因したP配線、N配線の伝送波形形状の差を低減でき、伝送波形の品質劣化を抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明に関わる実施の形態に関し、図を参酌して説明する。
【0027】
(第1の実施の形態)
図1は本発明の第1の実施の形態に関わる積層用基板1の構造を表す構造図である。また図2は本発明の第1の実施の形態に関わる積層用基板1を複数枚重ねた多層基板30の断面を表す断面図である。また図3は、この多層基板30を利用した差動配線基板31及びその上に実装した各ドーターボードを表す斜視図である。
【0028】
本発明の多層基板30は積層用基板1を複数枚積層して作成する。
【0029】
本発明の多層基板30は、導体層7C1、7C2と絶縁層8d1から成るコア層10C1、絶縁層8d2から成るプリプレグ20P1、導体層7C3、7C4と絶縁層8d3から成るコア層10C2、絶縁層8d4から成るプリプレグ20P2、導体層7C5、7C6と絶縁層8d5から成るコア層10C3、絶縁層8d6から成るプリプレグ20P3、導体層7C7、7C8と絶縁層8d7から成るコア層10C4で構成される。
【0030】
各コア層は絶縁層8の両面に銅箔で導体層7を形成した基材であり、コア層10の両面に形成される導体層7のうち片面は信号層、もう片面はグランド又は電源層である。
【0031】
プリプレグとは、ガラスクロスや炭素繊維束で作った織物に、樹脂などを含浸させたもの(プリプレグ材)である。本発明においては、各プリプレグには導体層7は形成されない。
【0032】
絶縁層8はガラスクロス2と樹脂3から成り、ガラスクロス2は直径10μm程度のガラス繊維を100本程度束ねた径300μm程度の糸が直交に交差して編まれた形状である。図1に示す通り、ガラスクロスの横糸5は縦糸4の垂線を中心線として蛇行している。この蛇行の幅は±200〜300μm、周期は20mmを想定する。
【0033】
ここで幅を±200〜300μmとするのはP配線6pとN配線6nの間隔、及びP配線6p、N配線6nの配線幅の合計値から導出しているからである。この幅及び周期の元でガラスクロス2の糸を蛇行させることで、比誘電率の変化をP配線6pとN配線6nに均等に発生させることを考慮している。
【0034】
本実施の形態の積層用基板1、多層基板30を採用した差動配線基板31では、図3に示すように、ドーターボード1aは積層用基板1による差動配線基板31に設置されたコネクタ9aを介して積層用基板1内の差動配線6に電気的に接続される。差動配線6はガラスクロスの横糸5の蛇行の中心線と平行に100cm程度の距離を配線されて差動配線基板31に別途設置されたコネクタ9bと接続し、コネクタ9bを介してドーターボード1bと電気的に接続されている。
【0035】
次に、この積層用基板1と多層基板30及びそれを利用した差動配線基板31の製造方法について説明する。
【0036】
図4は本発明の第1の実施の形態に関わる積層用基板1に用いるガラスクロス2の製法を表す概念図である。
【0037】
プリプレグ製造過程として、ガラスクロス2は、直径10μm程度のガラス繊維を100本ほど束ねた糸を直行するように編んで作成する。このとき、径300μm程度の縦糸4と横糸5はほぼ直交する。このガラスクロス2を図4に示すように20mm間隔で縦糸方向に引っ張り、ガラスクロス2の横糸5を揺れ幅±200μm以上で蛇行させる。その後、ガラスクロス2を60cm(縦糸方向)×120cm(横糸方向)の大きさに裁断し、FR4樹脂に浸した後、乾燥させて樹脂を半硬化させて厚さ150μm程度の絶縁基材であるプリプレグ材を作成する。これを本実施の形態のプリプレグ20として使用する。
【0038】
次にコア層10の製法について述べる。既述のプリプレグ製造過程を経由して製造したプリプレグ材の両面に銅エッチングで、片面に電源グランドプレーン11(図2中では導体層7C1、7C3、7C5、7C7)、もう片面にストリップライン伝送路の差動配線6(図2中では導体層7C2、7C4、7C6、7C8)の導体層7を設け、コア層10を作成する。
【0039】
差動配線6は配線幅100μm、配線間隔100μm、導体厚さ20μmとし、基板の左辺端部のコネクタ9aと右辺端部のコネクタ9b間の距離100cmを電気的に接続する。
【0040】
その後、配線長のコア層10とプリプレグ20を交互に積層後、高温で加熱し接着することで多層基板30を作成する。この際、複数のコア層10と複数のプリプレグ20を一度に接着してもよいし、1枚ずつ積層用基板1を作り、完成した積層用基板1を複数枚重ねて多層基板30を作っても良い。
【0041】
仕上げ工程として、多層基板30の外周に流れ出した樹脂を裁断して除去し、寸法50cm(縦糸方向)×110cm(横糸方向)に仕上げる。この多層基板30にコネクタ9a、コネクタ9b等を物理的に固定し、実際に装置に用いる差動配線基板31を作る。
【0042】
なお、この積層用基板1は使用条件に応じて1枚で使用することも可能である。用途によっては積層用基板1を積層しない場合もある。この場合も含める意味で本明細書では積層用基板1を配線基板とも称呼する。
【0043】
この積層用基板1の作成方法を図5及び図6に基づき説明する。
【0044】
図5は本発明の第1の実施の形態に基づくガラスクロス2の加工工程を表す図であり、図6はこの加工工程において、本発明にかかわるガラスクロス2の加工に関する加工の具体的な内容を表す概念図である。
【0045】
ガラスクロス2は、直径10μm程度のガラス繊維100本程度束ねた糸を直交するように編んで作成する。このとき径300μm程度の縦糸4と横糸5はほぼ直行する。作成したガラスクロス基材15は図5に示すようにガラスクロス加工機の切りかき13を設けたローラー14で運搬される。
【0046】
図6に示すように、切り欠き13は20mm間隔で設けられており、ガラスクロス2の運搬と共に、縦糸4の一部が引っ張られることで横糸5が蛇行し、蛇行する横糸5の揺れ幅が±200μm以上となる。横糸5が蛇行したガラスクロス2はガラスクロス加工機12の中でFR4樹脂に浸され、乾燥工程で半硬化された後、既述の通り60cm(縦糸方向)×120cm(横糸方向)の大きさに裁断される。
【0047】
本実施の形態の効果を説明する。
【0048】
ガラスクロス2の横糸5が蛇行することで、差動配線6のP配線6p、N配線6n直下のガラスクロス2と樹脂3の厚さ・位置関係が配線進行方向に対して短い周期で変化するため、P配線6p、N配線6nの比誘電率も同じ周期で変化する。このとき比誘電率が短周期で変化するため差動配線6の位相差は蓄積されず、P配線6p、N配線6nで極端な位相差が付くことはなく、差動伝送時の波形品質の劣化を抑制することができる。
【0049】
(第2の実施の形態)
次に本発明の第2の実施の形態を図に基づき説明する。
【0050】
図7は本発明の第2の実施の形態の積層用基板1向けのガラスクロス2の構造を表す構造図である。本実施の形態では、ガラスクロス2の構造が第1の実施の形態のガラスクロス2の構造と相違する点に特徴がある。
【0051】
本実施の形態のガラスクロスは第1の実施の形態同様縦糸と横糸が編まれた構造となる。
【0052】
本実施の形態では、縦糸4と横糸5は双方、幅±200〜300μm、周期20mmで蛇行しており、縦糸4と横糸5の蛇行の中心線は互いに直交している。
【0053】
このガラスクロスの作成工程を図7に基づき説明する。
【0054】
第1の実施の形態の作成過程を踏み、60cm(縦糸方向)×120cm(横糸方向)の大きさにガラスクロス2を裁断する。この裁断されたガラスクロス2を20mm間隔で縦糸方向と横糸方向に引っ張り、ガラスクロスの縦糸4、横糸5を蛇行させる。このとき、蛇行する縦糸4、横糸5の振れ幅は±200μm以上とする。
【0055】
以降の積層用基板1の作成工程は第1の実施の形態と同様である。
【0056】
第1の実施の形態では1方向のみの伝送波形の品質劣化の抑制を図っていたが、本実施の形態では、このようにすることで、2方向以上の伝送波形の品質劣化の抑制を図ることが可能になる。
【0057】
(第3の実施の形態)
以下本発明の第3の実施の形態について図に基づき説明する。図8は本発明の第3の実施の形態における積層用基板1の構造を表す概念図である。
【0058】
第3の実施の形態の積層用基板1も図2のようにコア層10とプリプレグ20からなる。また、この積層用基板1を複数枚積層して多層基板30を形成する点も同様である。
【0059】
コア層10を構成する絶縁層8d1、8d3、8d5、8d7は、図1、図11に示すようにガラスクロス2と樹脂3から成る。ガラスクロス2は直径10μm程度のガラス繊維を100本ほど束ねた径300μm程度の糸が直交して編まれた形状である。ガラスクロス2の横糸5は縦糸4の垂線を中心線(基準線)16として幅±200〜300μm・周期20mmで蛇行している。
【0060】
プリプレグ20で構成される絶縁層8d2、8d4、8d6は、コア層10を構成する絶縁層8d1、8d3、8d5、8d7と同様にガラスクロス2と樹脂3から成る。ガラスクロス2は絶縁層8d1、8d3、8d5、8d7で用いたガラスクロス2を略90度回転させたものである。
【0061】
コア層10とプリプレグ20を積層してできた積層用基板1では、ストリップライン配線等の導体層は、上下をコア層の絶縁層8d1、8d3、8d5、8d7、プリプレグの絶縁層8d2、8d4、8d6で挟まれる構造となる。このとき、図8に示すように、配線を挟む絶縁層のガラスクロス2aとガラスクロス2bで蛇行する横糸5の中心線16と17は方向が略90度異なっており、中心線16か17のどちらかが差動配線6に対して常に平行となる。
【0062】
本実施の形態の積層用基板の作成工程を説明する。
【0063】
第1の実施の形態同様、ガラスクロス2aを作成して、図1に示すように20mm間隔で縦糸方向と横糸方向に引っ張り、ガラスクロス2aの横糸5を揺れ幅±200μm以上で蛇行させる。
【0064】
横糸を蛇行させたガラスクロス2aを元に60cm(縦糸方向)×110cm(横糸方向)の大きさに裁断し、コア層10の絶縁層8に用いるガラスクロスを作成する。そして、このガラスクロスの両面に銅エッチングを行い、片面に電源グランドプレーン11、もう片面にストリップライン伝送路の差動配線6を設けたコア層10を作成する。
【0065】
一方、縦糸4と横糸5を90度回転させたガラスクロス2bは、横糸を蛇行させたガラスクロス2を60cm(横糸方向)×110cm(縦糸方向)の大きさに裁断して作成する。この作成したガラスクロス2bをFR4樹脂に浸した後、乾燥させて樹脂を半硬化させて、厚さ150μm程度のプリプレグ20として用いるガラスクロスを作成する。
【0066】
以降、第1の実施の形態の積層工程を用いることで、多層基板を形成し、最終的に用いる差動配線基板を作成する。
【0067】
このようにすることで、第2の実施の形態では別途ガラスクロスを引っ張るという工程を要したが、この実施の形態では、そのような工数が不要となる。すなわち第1の実施の形態と同じガラスクロスの生成、裁断、絶縁基板とプリプレグの作成及び接着という工程で第2の実施の形態の効果を発揮することが可能である。
【0068】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能であることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本明細書の説明にもあるように、主に一方向に配線されるバックプレーン基板等の高速伝送基板で用いることを想定している。しかし、第2の実施の形態、第3の実施の形態などで説明したとおり、縦糸・横糸双方を蛇行させたり、プリプレグと配線基板の積層時の向きを90度ずらしたりすることで、2方向以上の配線にも対応可能にすることで一般の電子機器用の基板への適用も可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の第1の実施の形態に関わる積層用基板の構造を表す構造図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に関わる多層基板の断面を表す断面図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に関わる多層基板を利用した差動配線基板及びその上に実装したドーターボードを表す斜視図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態に関わるガラスクロスの製法を表す概念図である。
【図5】本発明に関わるガラスクロスの加工工程を表す図である。
【図6】本発明にかかわるガラスクロスの加工に関する加工の具体的な内容を表す概念図である。
【図7】本発明の第2の実施の形態の多層基板のガラスクロスの構造を表す構造図である。
【図8】本発明の第3の実施の形態における積層用基板の構造を表す概念図である。
【図9】従来の伝送基板を表す断面斜視図である。
【図10】従来の伝送基板に用いられるガラスクロスの構成を表す概念図である。
【図11】従来の伝送基板の断面図である。
【図12】差動伝送において希望される波形と、伝播遅延の生じた波形との対比を表すグラフ群である。
【符号の説明】
【0071】
1…積層用基板、1a、1b…ドーターボード、2、2a、2b…ガラスクロス、
3…樹脂、4…縦糸、5…横糸、6…差動配線、6p…P配線、6n…N配線、
7、7C1、7C2、7C3、7C4、7C5、7C6、7C7、7C8…導体層、
8、8d1、8d2、8d3、8d4、8d5、8d6、8d7、8d8…絶縁層、
9a、9b…コネクタ、
10、10C1、10C2、10C3、10C4…コア層、
11…電源グランドプレーン、13…切りかき、14…ローラー、
15…ガラスクロス基材、16、17…中心線、
20、20P1、20P2、20P3、20P4…プリプレグ、
30…多層基板、31…差動配線基板
51…従来の積層用基板、52…従来の多層基板、
100…縦糸のみがある部分、101…横糸のみがある部分、
200…ガラスクロスがない部分、300…縦糸・横糸交差部、
400…ガラスクロスの多い部分、500…ガラスクロスが少ない部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦糸及び横糸から構成されるガラスクロスを有する絶縁基材であって、
前記縦糸又は前記横糸のいずれか又は双方を蛇行させ、樹脂によって硬化することを特徴とする絶縁基材。
【請求項2】
縦糸及び横糸を編んで生成されるガラスクロス及び一対二本の差動配線を含んで構成される配線基板であって、
前記ガラスクロスの前記縦糸又は前記横糸の少なくともいずれか一方が前記差動配線の進行方向に対して周期的に変化するよう蛇行した状態で樹脂によって硬化され絶縁基材を形成し、
前記差動配線は前記絶縁基材上に形成され、
前記差動配線に影響する前記絶縁基材の比誘電率が前記差動配線の進行方向に対して周期的に変化することを特徴とする配線基板。
【請求項3】
請求項2記載の配線基板において、前記縦糸又は前記横糸の蛇行が前記差動配線の配線幅と前記差動配線の配線間隔とを合わせた長さ以上の幅で蛇行することを特徴とする配線基板。
【請求項4】
請求項2又は3記載の配線基板において、前記ガラスクロスの蛇行させた前記縦糸又は前記横糸の中心線に対して平行にストリップ配線で前記差動配線を設けることを特徴とする配線基板。
【請求項5】
請求項2ないし4のいずれか1項記載の配線基板を用い、前記配線基板を複数枚積層して形成されることを特徴とする多層基板。
【請求項6】
縦糸及び横糸を編んで生成されるガラスクロスと、
一対二本の差動配線と、
縦糸及び横糸を編んで生成されるプリプレグ材を含んで構成される配線基板であって、
前記ガラスクロスの前記縦糸又は前記横糸のいずれかが前記差動配線の進行方向に対して周期的に変化するよう蛇行した状態で樹脂によって硬化され絶縁基材を形成し、
前記差動配線は前記絶縁基材上に形成され、
前記差動配線に影響する前記絶縁基材の比誘電率が前記差動配線の進行方向に対して周期的に変化し、
前記プリプレグ材と前記絶縁基材との間に前記差動配線が間挿されるよう前記ガラスクロスと前記プリプレグ材を積層することを特徴とする配線基板。
【請求項7】
請求項6記載の配線基板において、前記プリプレグ材は縦糸及び横糸を編んで生成されるガラスクロスを含み、前記プリプレグ材の前記縦糸又は前記横糸のいずれかが周期的に変化するよう蛇行した状態で樹脂によって硬化されることを特徴とする配線基板。
【請求項8】
請求項7記載の配線基板において、前記絶縁基材の蛇行した縦糸又は横糸の中心線と、前記プリプレグ材の蛇行した縦糸又は横糸の中心線が略90度の角度を有することを特徴とする配線基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−73946(P2009−73946A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−244637(P2007−244637)
【出願日】平成19年9月21日(2007.9.21)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】