説明

車両用操舵装置

【課題】ドライバの操舵遅れを効果的に補償するとともに舵角のオーバーシュートを防止した車両用操舵装置を提供する。
【解決手段】車両用操舵装置1を、ドライバが操舵操作を入力する操舵入力部30と、操舵入力部の操作量を検出する操作量検出手段91と、操舵入力部の操作量の履歴に基づいて予測操作量を演算する予測操作量演算手段90と、操作量検出手段が検出した操舵入力部の実際の操作量と、予測操作量演算手段が演算した前記予測操作量との比較結果に基づいて、操舵入力部の操作量に応じた基礎舵角に付加される付加舵角を演算する付加舵角演算手段90と、基礎舵角及び前記付加舵角に応じて前輪を操向する操舵機構部50、80とを備える構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車両の前輪を操舵する操舵装置に関し、特に、操舵操作量に比例した基礎舵角に、ドライバの急操舵操作に応じた付加舵角を重畳させる操舵装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車の操舵装置は、一般に、ステアリングホイールの回転運動を、ステアリングシャフトを介してステアリングギヤボックスに伝達し、ここで車幅方向の直進運動に変換して前輪を操向している。
近年、例えばステアリングシャフトの途中にアクチュエータを有する舵角補正機構を配置し、ステアリングホイールの操作量に対して舵角補正機構の作動角を重畳させて前輪の実舵角を制御する操舵装置が提案されている。このようなアクチュエータを備えた操舵装置は、例えば車両の走行速度に応じて見かけ上のステアリングギヤ比を変化させるステアリングギヤ比可変制御や、車両に不安定な挙動が生じた際に、自動的に舵角を修正して車両を復元させる制御等が可能となり、アクティブステアリングと通称されている。
【0003】
上述した操舵装置において、ステアリングホイール操作量に応じた舵角に、ステアリングホイール操作量の微分値に比例した付加舵角を付加する、いわゆる微分ステアリング制御を行うこと知られている(例えば、非特許文献1参照)。このような微分ステアリング制御を行うと、ドライバの操舵操作の遅れを補償して車両ヨー運動の応答性を高めることができる。
また、アクティブステア制御を行う車両用操舵装置において、反力トルクの変動を抑制することを目的として、モータ駆動に基づく舵角の角速度、角加速度が所定値を超えないようにガードすることが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【非特許文献1】鈴村将人他著「フロントステア制御システムの開発」社団法人自動車技術会学術講演会前刷集No.34−03
【特許文献1】特開2006−335250号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、微分ステアリング制御を行う場合、例えば障害物を緊急回避する場合のようにドライバの操舵速度が速い場合には、微分値に応じた付加舵角が過度に大きくなって、前輪実舵角がドライバの意図する目標舵角よりも大きく切り込まれるオーバーシュートが生じる場合があった。この場合、前輪は目標舵角以上に切り込まれた後に切り戻されることになり、ドライバが意図しない過剰なヨー運動を発生させ、ドライバに強い違和感を与えることになる。
これに対し、微分値に応じた付加舵角のゲインを下げることによってオーバーシュートの影響を低減することは可能であるが、この場合微分ステアリング制御によってドライバの操舵遅れを補償する効果も減殺されてしまう。
上述した問題に鑑み、本発明は、ドライバの操舵遅れを効果的に補償するとともに舵角のオーバーシュートを防止した車両用操舵装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下のような解決手段により、上述した課題を解決する。
請求項1の発明は、ドライバが操舵操作を入力する操舵入力部と、前記操舵入力部の操作量を検出する操作量検出手段と、前記操舵入力部の前記操作量の履歴に基づいて予測操作量を演算する予測操作量演算手段と、前記操作量検出手段が検出した前記操舵入力部の実際の操作量と、前記予測操作量演算手段が演算した前記予測操作量との比較結果に基づいて、前記操舵入力部の操作量に応じた基礎舵角に付加される付加舵角を演算する付加舵角演算手段と、前記基礎舵角及び前記付加舵角に応じて前輪を操向する操舵機構部とを備えることを特徴とする車両用操舵装置である。
ここで、予測操作量は典型的には滑らかなステアリング操作を前提とした最新の操作量であって、これは例えば過去の複数時点での操作量をサンプリングし、テイラー展開することによって求めることができる。
【0006】
請求項2の発明は、請求項1に記載の車両用操舵装置において、前記操舵入力部の操作量の微分値を検出する微分値検出手段を備え、前記付加舵角演算手段は、前記実際の操作量と前記予測操作量との偏差の増大に応じて増加する微分ステアリング制御ゲインに前記微分値を乗算して前記付加舵角を求めることを特徴とする車両用操舵装置である。
請求項3の発明は、請求項1に記載の車両用操舵装置において、前記付加舵角演算手段は、前記実際の操作量と前記予測操作量との偏差に所定のゲインを乗算して前記付加舵角を求めることを特徴とする車両用制御装置である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)操舵入力部の操作量の履歴に基づいて演算した予測操作量と実際の操作量との比較結果に基づいて付加舵角を演算することによって、例えば危険回避時のように急なステアリング操作が行われた場合(予測操作量と実際の操作量との偏差が大きい場合)に、大きな付加舵角を与えることでドライバの操舵遅れを効果的に補償することができる。また、ステアリング操作の中期から後期にかけては偏差が小さくなることから、付加舵角が過大となって生じる実舵角のオーバーシュートを防止することができる。
(2)実際の操作量と予測操作量との偏差の増大に応じて微分ステアリング制御ゲインを増加させることによって、急なステアリング操作が開始されて偏差及び操舵速度が大きい場合に、これらの積に応じて付加舵角を大きくしてドライバの操舵遅れを確実に補償することができる。また、ステアリング操作が収束しつつあって偏差及び操舵速度が小さくなった場合に付加舵角を小さくしてオーバーシュートの防止を確実に行うことができる。
(3)実際の操作量と予測操作量との偏差に所定のゲインを乗算して付加舵角を求めることによって、操舵入力部の操作量を微分する必要がなくなり、演算負荷の軽減を図るとともに、微分処理の際に生じる波形の乱れ、信号の出力遅れ等の影響を排除することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明は、ドライバの操舵遅れを効果的に補償するとともに舵角のオーバーシュートを防止した車両用操舵装置を提供する課題を、操舵操作量の履歴を2次テイラー展開することによって滑らかなステアリング操作を前提とした予測操舵操作量を算出し、この予測操舵操作量と実際の操舵操作量との偏差に応じて微分ステアリング制御のゲインを設定することによって解決した。
また、本発明の他の態様によれば、上述した予測操作量と実際の操舵操作量との偏差に所定の定数を乗じて付加舵角を算出することによって上記課題を解決した。
【実施例1】
【0009】
以下、本発明を適用した車両用操舵装置の実施例1について説明する。
実施例1の操舵装置は、例えば4輪の乗用車の前輪を操舵するものである。
図1は、実施例1の操舵装置の構成を示す図である。なお、左右設けられる構成要素に関しては、左右それぞれL,Rの添え字を付して図示する。
操舵装置1は、左右の前輪10及びハウジング20を操向するものである。
ハウジング20は、前輪10を回転可能に支持する図示しないハブベアリングユニットを収容する部材である。ハウジング20は、操向軸線(キングピン軸)から車両後方側へ突出したナックルアーム21を備えている。
【0010】
操舵装置1は、ステアリングホイール30、アッパステアリングシャフト40、舵角補正機構50、ロワステアリングシャフト60、ジョイント部70、ステアリングギヤボックス80、操舵制御部90、モータ駆動部100等を備えて構成されている。
ステアリングホイール30は、ドライバが操舵操作を入力する操舵入力部である。
アッパステアリングシャフト40は、ステアリングホイール30と舵角補正機構50とを連結し、ステアリングホイール30の回転を舵角補正機構50の後述するサンギヤ51に伝達する回転軸である。
【0011】
舵角補正機構50は、アッパステアリングシャフト40からの入力舵角に、所望の付加舵角を重畳させてロワステアリングシャフト60に伝達するものである。付加舵角は、舵角補正機構50がアッパステアリングシャフト40に対してロワステアリングシャフト60を回転させることによって発生する。
舵角補正機構50は、サンギヤ51,52、プラネタリギヤ53,54、ピニオン軸55、キャリヤ56、モータ57、ドライブギヤ58、ドリブンギヤ59等を備えて構成されている。
【0012】
サンギヤ51は、アッパステアリングシャフト40の舵角補正機構50側の端部に固定されている。
サンギヤ52は、ロワステアリングシャフト60の舵角補正機構50側の端部に固定されている。
これらのサンギヤ51,52は、その回転中心軸が一致して配置されている。
【0013】
プラネタリギヤ53,54は、それぞれサンギヤ51,52と噛合されている。
これらのプラネタリギヤ53,54は、その回転中心軸が一致して配置されている。
ピニオン軸55は、プラネタリギヤ53,54が両端部にそれぞれ固定された回転軸である。
キャリヤ56は、ピニオン軸55及びプラネタリギヤ53,54を、サンギヤ51,52のそれぞれに対してこれらと同じ回転中心軸回りに公転可能に支持するとともに、ピニオン軸55の中心軸回りに自転可能に支持する部材である。
【0014】
モータ57は、モータ駆動部100によって駆動され、キャリヤ56を回転駆動することによって所望の付加舵角を発生させるものである。
ドライブギヤ58は、モータ57の出力軸に固定されている。
ドリブンギヤ59は、キャリヤ56のステアリングホイール30側の端部外径側に設けられ、ドライブギヤ58と噛合され、ドライブギヤ58によって駆動される。
【0015】
ロワステアリングシャフト60は、舵角補正機構50とジョイント部70とを連結し、舵角補正機構50のサンギヤ52の回転をジョイント部70に伝達する回転軸である。
ジョイント部70は、ロワステアリングシャフト60とステアリングギヤボックス80のピニオン軸81とを連結し、ロワステアリングシャフト60の回転を、方向を変えつつピニオン軸81に伝達する。
ジョイント部70は、直列に配置されたユニバーサルジョイント71,72、及び、これらを連結するジョイント軸73を備えている。
【0016】
ステアリングギヤボックス80は、ピニオン軸81から入力される回転運動を、図示しないステアリングラックの車幅方向の直進往復運動に変換するラックアンドピニオン機構を備えている。
また、ステアリングギヤボックス80は、車幅方向の両端部に、ステアリングラックの動きをハウジング20のナックルアーム21に伝達するタイロッド82を備えている。
【0017】
操舵制御部90は、ステアリングホイール30の回転中心軸回りにおける位置(角度)を検出する舵角センサ(操作量検出手段)91を備え、この舵角センサ91の出力に応じて、舵角補正機構50で付加される付加舵角を演算する付加舵角演算手段である。
舵角センサ91は、例えばステアリングコラムに設けられ、アッパステアリングシャフト40の回転と連動して相対移動するように配置された磁性体と磁気検出素子とを備え、磁気検出素子の出力に応じてアッパステアリングシャフト40の角度(ステアリングホイール30の角度と等しい)を検出する。
なお、操舵制御部90における付加舵角の演算については、後に詳しく説明する。
モータ駆動部100は、操舵制御部90が演算した付加舵角に応じて、舵角補正機構50のモータ57を駆動し、舵角補正機構50が目標とする付加舵角を発生するように制御するものである。
【0018】
次に、上述した操舵装置1における付加舵角の演算について説明する。
操舵制御部90は、舵角センサ91が検出したステアリングホイール30の角度θHを所定のサンプリングレートでサンプリングし、例えば過去3点(k−1,k−2,k−3)のステアリングホイール角度を用いて、k−1時点を中心とする2次テイラー展開により算出されるk時点でのステアリングホイール角度予測値θH_P(k)を求める。そして、舵角予測値θH_P(k)と、実際のk時点におけるステアリングホイール角度θ(k)との差をとることによって、k時点での予測誤差値eを求める。すなわち、ここでは操舵制御部90は、予測操作量演算手段として機能する。
【0019】
ステアリングホイール角度予測値θH_P(k)は、以下の式1によって求められる。

θH_P(k)=θH(k−1)+(θH(k−1)−θH(k−2))
+0.5((θH(k−1)−θH(k−2))−(θH(k−2)−θH(k−3))) ・・・式1

また、予測誤差値(偏差)eは、以下の式2によって求められる。
e=θ(k)−θH_P(k) ・・・式2

θ(k):k時点における実際のステアリングホイール角度
【0020】
また、操舵制御部90は、微分ステアリング制御のゲインK及び舵角補正機構50における付加舵角θH_d(アッパステアリングシャフト40に対するロワステアリングシャフト60の回転角度)を、以下の式3及び式4の通り設定する。

【数1】

【数2】

ここで、ステアリングホイール角度θHと予測誤差値eとが同符号である場合とは、ドライバが急激にステアリングホイールを切り増した場合を意味する。
図2は、実施例1における予測誤差値eと微分ステアリング制御ゲインKとの相関を示すグラフである。図2において、横軸は予測誤差値e、縦軸はゲインKをそれぞれ示している(後述する図4において同じ)。
【0021】
上述した舵角補正機構50の付加舵角θH_dによる前輪10切れ角の変化量である前輪付加舵角δf_aは、以下の式5によって表される。

【数3】

このとき、前輪10の実舵角は、δ+δf_aとなる。ここで、舵角δは、舵角補正機構50によって舵角補正を行わない場合(モータ57を駆動しない場合)における前輪の舵角である。
【0022】
次に、上述した実施例1の効果を、以下説明する本発明の比較例1,2と対比して説明する。なお、比較例1,2及び後述する実施例2において、実施例1と実質的に同様の箇所については説明を省略し、主に相違点について説明する。
比較例1は、ステアリングホイール角速度に応じた付加舵角を与えない(微分ステアリング制御を行わない)既存の操舵装置である。
比較例2は、ステアリングホイール角速度に一定のゲインを乗じて付加舵角を設定している操舵装置である。
【0023】
図3は、実施例1及び比較例1,2において同じ操舵操作を行った際の舵角、実施例における偏差、及び、比較例2における操舵速度の履歴の一例を示すグラフである。
図3において、横軸は時間、縦軸は各項目の値の大きさをそれぞれ示している。
また、図3において、実施例1における舵角及び予測誤差値を実線及び破線、比較例1における舵角を一点鎖線、比較例2における舵角及び操舵速度を二点鎖線及び三点鎖線でそれぞれ示している。
【0024】
図3に示すように、微分ステアリング制御を行わない比較例1においては、ドライバの操舵遅れによって、初期における舵角の立ち上がりが遅く、その結果、車両に発生するヨー運動の発生も遅れてしまう。
これに対し、ステアリングホイール角速度に一定のゲインを乗じて付加舵角を算出する微分ステアリング制御を行う比較例2の場合には、初期における舵角の立ち上がりが比較例1に対して早くなり、早期に車両のヨー運動を発生させることができる。しかし、比較例2では、舵角がドライバの意図する目標舵角よりも大きく切り込まれ、その後目標舵角まで戻される舵角のオーバーシュートが発生し、ドライバに違和感を与えてしまう。
【0025】
これに対し、実施例1によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)過去3時点のステアリングホイール角度θをテイラー展開して得た予測操作量と、実際の操作量との偏差である予測誤差値eに基づいて付加舵角θH_dを演算することによって、例えば危険回避時のように急なステアリング操作が行われた場合に、付加舵角によって効果的にドライバの操舵遅れを補償し、早期に車両のヨー運動を発生させることができる。また、ステアリング操作の中期から後期にかけては上述した偏差が小さくなることから、付加舵角が過大となって生じる実舵角のオーバーシュートを防止することができる。
(2)予測誤差値eの増大に応じて微分ステアリング制御ゲインKを増加させることによって、急なステアリング操作が開始されて予測誤差値e及び操舵速度が大きい場合に、これらの積に比例させて付加舵角を大きくし、ドライバの操舵遅れを確実に補償することができる。また、ステアリング操作が収束しつつあって偏差が小さくなった場合に付加舵角を小さくしてオーバーシュートの防止を確実に行うことができる。
【実施例2】
【0026】
次に、本発明を適用した車両用操舵装置の実施例2について説明する。
実施例2の車両用操舵装置は、上述した実施例1の式3に代えて、微分ステアリング制御のゲインKを以下の式6に示すようにしたものである。

【数4】

図4は、実施例2における予測誤差値eと微分ステアリング制御ゲインKとの相関を示すグラフである。
以上説明した実施例2によれば、上述した実施例1と同様の効果に加えて、所定の予測誤差値eに対するゲインKの絶対値が大きくなることによって、微分ステアリング制御の効果を増大し、ドライバの操舵遅れの補償効果を高めることができる。
【実施例3】
【0027】
次に、本発明を適用した車両用操舵装置の実施例3について説明する。
実施例3の車両用操舵装置においては、上述した実施例1における微分ステアリング制御に代えて、式2において求めた予測誤差値eに所定のゲインKを直接乗じたものを、舵角補正機構50における付加舵角θH_dとしている。
すなわち、実施例3においては、舵角補正機構50における付加舵角θH_dは以下の式7のようになる。

【数5】

以上説明した実施例3によれば、上述した実施例1と同様の効果に加えて、微分処理を行う必要がないことから、ハードウェアの演算負荷を軽減することができ、また、微分に伴う波形の乱れや微分値出力の遅れといった問題を防止することができる。
【0028】
(変形例)
本発明は、以上説明した実施例に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の技術的範囲内である。
(1)各実施例の操舵装置は、ステアリングコラムの途中にプラネタリギヤ式の舵角補正機構を設ける構成としているが、舵角補正機構の構成はこれに限らず適宜変更することができる。例えば、波動歯車装置を用いた舵角補正機構を用いてもよい。また、本発明はこのような舵角補正機構を用いたものに限らず、例えばステアリングホイールとステアリングギヤボックスとが機械的に接続されていないいわゆるステア・バイ・ワイヤの操舵装置にも適用することができる。
(2)各実施例の操舵装置は、舵角補正機構による付加舵角としてステアリングホイール操作速度に応じたもののみを用いているが、これを他の制御に基づく付加舵角と合成して用いてもよい。例えば、車両の走行速度に応じて見かけ上のステアリングギヤ比を変化させる可変ギヤ比制御に基づく付加舵角や、車両にオーバーステア、アンダーステア等の挙動が生じた際に、挙動を安定化させるために設定される付加舵角と、本発明による付加舵角とを重畳する構成としてもよい。
(3)操舵装置の機械的、ハードウェア的構成は上述した各実施例のものに限定されない。例えば、舵角補正機構の構造、配置や、ステアリングギヤボックスのキングピン軸に対する後置き、前置き等は適宜変更することができる。また、各制御手段を共通のECUに統合したり、複数のECUに分散することも可能である。
(4)実施例1では、舵角センサの出力を微分して操舵入力部の操作量の微分値を得ているが、これに限らず、操舵入力部の操作速度を検出する速度センサを設け、この出力を微分値として用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明を適用した車両用操舵装置の実施例1の構成を示す図である。
【図2】図1の車両用操舵装置における予測誤差値eと微分ステアリング制御ゲインKとの相関を示すグラフである。
【図3】図1の車両用操舵装置におけるステアリングホイール角、操舵速度及び前輪実舵角の時間履歴の一例を示すグラフである。
【図4】本発明を適用した車両用操舵装置の実施例2における予測誤差値eと微分ステアリング制御ゲインKとの相関を示すグラフである。
【符号の説明】
【0030】
1 操舵装置 10 前輪
20 ハウジング 21 ナックルアーム
30 ステアリングホイール 40 アッパステアリングシャフト
50 舵角補正機構 51,52 サンギヤ
53,54 プラネタリギヤ 55 ピニオン軸
56 キャリヤ 57 モータ
58 ドライブギヤ 59 ドリブンギヤ
60 ロワステアリングシャフト 70 ジョイント部
71,72 ユニバーサルジョイント 73 ジョイント軸
80 ステアリングギヤボックス 81 ピニオン軸
90 操舵制御部 91 舵角センサ
100 モータ駆動部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドライバが操舵操作を入力する操舵入力部と、
前記操舵入力部の操作量を検出する操作量検出手段と、
前記操舵入力部の前記操作量の履歴に基づいて予測操作量を演算する予測操作量演算手段と、
前記操作量検出手段が検出した前記操舵入力部の実際の操作量と、前記予測操作量演算手段が演算した前記予測操作量との比較結果に基づいて、前記操舵入力部の操作量に応じた基礎舵角に付加される付加舵角を演算する付加舵角演算手段と、
前記基礎舵角及び前記付加舵角に応じて前輪を操向する操舵機構部と
を備えることを特徴とする車両用操舵装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用操舵装置において、
前記操舵入力部の操作量の微分値を検出する微分値検出手段を備え、
前記付加舵角演算手段は、前記実際の操作量と前記予測操作量との偏差の増大に応じて増加する微分ステアリング制御ゲインに前記微分値を乗算して前記付加舵角を求めること
を特徴とする車両用操舵装置。
【請求項3】
請求項1に記載の車両用操舵装置において、
前記付加舵角演算手段は、前記実際の操作量と前記予測操作量との偏差に所定のゲインを乗算して前記付加舵角を求めること
を特徴とする車両用制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−113509(P2009−113509A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−285121(P2007−285121)
【出願日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【Fターム(参考)】