説明

トランジスタ素子及びその製造方法並びに発光素子及びディスプレイ

【課題】エミッタ電極−コレクタ電極間において、低電圧で大電流変調を可能とするトランジスタ素子を提供する。また、そうしたトランジスタ素子の製造方法、また、そのトランジスタ素子有する発光素子及びディスプレイを提供する。
【解決手段】エミッタ電極3とコレクタ電極2との間に、半導体層5(5A,5B)とシート状のベース電極4が設けられているトランジスタ素子により、上記課題を解決する。半導体層5は、エミッタ電極3とベース電極4との間及びコレクタ電極2とベース電極4との間に設けられて、それぞれ第2半導体層5B及び第1半導体層5Aを構成し、さらに、ベース電極の厚さが80nm以下であることが好ましい。また、少なくともエミッタ電極とベース電極との間又はコレクタ電極とベース電極との間には、暗電流抑制層が設けられていてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トランジスタ素子及びその製造方法並びに発光素子及びディスプレイに関し、更に詳しくは、エミッタ−コレクタ間に低電圧で大電流変調を可能とするトランジスタ素子及びその製造方法、並びにそのトランジスタ素子を有する発光素子及びディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機トランジスタを用いたディスプレイの試作例がいくつか報告されているが、その多くは、有機電界効果型トランジスタ(有機FET)と液晶又は電気泳動セルとを組合せたものであり、有機ELを用いた例はほとんど報告されていない。これは、現状の有機FETでは、電流駆動デバイスである有機ELをスイッチングするだけの大電流を流すのが難しいためである。そのため、より低電圧かつ大電流で動作する有機FETの開発が望まれている。
【0003】
現在までに知られている有機材料の移動度を前提にした場合、それを実現するためにはチャネル長を短くすることが必要であるが、ディスプレイの大量生産を視野に入れたパターニング技術では、チャネル長を数μm以下にすることは難しい。この問題を解決するため、膜厚方向に電流を流すことにより低電圧かつ大電流で動作可能な「縦型トランジスタ構造」が研究されている。一般にサンドイッチデバイスに用いられる膜厚は数十nmであり、しかも数Åオーダーの高い精度で制御可能であることから、チャネルを膜厚方向にすることによって、1μm以下の短いチャネル長を容易に実現できる。このような縦型の有機トランジスタとして、これまでに、ポリマーグリッドトライオード構造、静電誘導型トランジスタ(Static Induction Transistor, SIT)等が提案されている。
【0004】
最近、単純な半導体/金属/半導体の積層構造を作製するだけで、高性能なトランジスタ特性を発現する有機トランジスタ素子が提案されている(非特許文献1を参照)。この有機トランジスタ素子では、エミッタ電極から注入された電子が中間金属電極を透過することにより、パイポーラトランジスタに似た電流増幅が観測され、その中間金属電極がベース電極のように働くことから、メタルベース有機トランジスタ(Metal-Base Organic Transistor, MBOT)と呼んでいる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】S.Fujimoto, K.Nakayama, and M.Yokoyama, Appl. Phys. Lett., 87, 133503(2005).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記トランジスタ動作は半導体/金属/半導体の積層構造を作製すれば必ず観測されるというものではなかった。
【0007】
本発明の目的は、エミッタ電極−コレクタ電極間において、低電圧で大電流変調を可能とするトランジスタ素子を提供することにある。また、本発明の他の目的は、そうしたトランジスタ素子の製造方法を提供すること、また、当該トランジスタ素子有する発光素子及びディスプレイを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(第1のトランジスタ素子)
上記課題を解決するための本発明の第1のトランジスタ素子は、エミッタ電極とコレクタ電極との間に、半導体層とシート状のベース電極が設けられていることを特徴とする。また、本発明のトランジスタ素子において、前記半導体層が、前記エミッタ電極と前記ベース電極との間及び前記コレクタ電極と前記ベース電極との間に設けられていることを特徴とする。
【0009】
この発明によれば、エミッタ電極とコレクタ電極との間に半導体層が設けられ、且つその半導体層中にシート状ベース電極が設けられているので、エミッタ電極とコレクタ電極との間にコレクタ電圧を印加し、さらにエミッタ電極とベース電極と間にベース電圧を印加すれば、そのベース電圧の作用により、エミッタ電極から注入された電荷(電子又は正孔)が著しく加速されてベース電極を透過し、コレクタ電極に到達する。すなわち、ベース電圧の印加によってエミッタ電極−コレクタ電極間に流れる電流を増幅させることができる。そして、この発明によれば、シート状のベース電極は、エミッタ電極から供給された電荷をベース電圧で加速して弾道電子又は弾道正孔とし、その弾道電子又は弾道正孔をコレクタ電極側の半導体層内に容易に透過することができる範囲の厚さで全面に形成されるので、形成された全面で電荷が著しく加速され、しかも加速された電荷がベース電極を容易に透過することができる。一方、本発明者の研究によれば、ベース電極がシート状に設けられていない場合(すなわちベース電極が穴やクラック等の欠陥部を含む場合)、その欠陥部では、エミッタ電極から注入された電荷はあまり加速されないので、その部分の電荷はベース電極を透過し難くなり、その結果、エミッタ電極−コレクタ電極間に流れる電流は全体としてあまり増幅させることができないとともに、各部位での電流量の増加にムラが生じてしまう。したがって、本発明のトランジスタ素子によれば、バイポーラトランジスタと同じような電流増幅作用を安定して得ることができる。
【0010】
本発明の第1のトランジスタ素子において、前記ベース電極の厚さが、80nm以下であることを特徴とする。この発明によれば、ベース電極の厚さが80nm以下であるので、ベース電圧Vbで加速された弾道電子又は弾道正孔を容易に透過することができる。その結果、シート状のベース電極の全面で電荷が著しく加速され、しかも加速された電荷がベース電極を容易に透過することができる。なお、ベース電極は半導体層中に切れ目なく(穴やクラック等の欠陥部なく)設けられていればよいので、その厚さの下限は特に限定されないが、通常、1nm程度であればよい。
【0011】
本発明の第1のトランジスタ素子において、前記ベース電極が、凹凸形状を有することを特徴とする。凹凸形状を有するベース電極(又は、表面粗さが粗いベース電極ということもできる。)は所定の平均厚さのベース電極を形成した場合であっても薄いところと厚いところを有するが、本発明によれば、ベース電極が凹凸形状を有する場合に、電流増幅作用を安定して得ることができる。
【0012】
本発明の第1のトランジスタ素子において、前記コレクタ電極と前記ベース電極との間に設けられた半導体層が、結晶性の半導体層であることを特徴とする。コレクタ電極とベース電極との間に設けられた結晶性の半導体層はその表面が凹凸形状(又は、表面粗さが粗いということもできる。)であるので、その結晶性の半導体層上に設けられたベース電極も凹凸形状で形成される。凹凸形状を有するベース電極は所定の平均厚さのベース電極を形成した場合であっても薄いところと厚いところを有するが、本発明によれば、ベース電極が凹凸形状を有する場合に、電流増幅作用を安定して得ることができる。
【0013】
本発明の第1のトランジスタ素子において、前記半導体層の結晶粒径が、前記ベース電極の厚さ以上又は厚さ程度の大きさであって、前記ベース電極に凹凸形状を付与することができる大きさであることを特徴とする。この発明によれば、上記結晶性の半導体層の結晶粒径がベース電極の厚さ以上又は厚さ程度の大きさであって該ベース電極に凹凸形状を付与することができる大きさであるので、その上にベース電極を形成すれば、凹凸形状を有するベース電極を容易に形成できる。
【0014】
さらに、本発明の第1のトランジスタ素子において、(1)前記ベース電極が金属からなり、当該ベース電極の片面又は両面に当該ベース電極の酸化膜が形成されていること、(2)前記コレクタ電極と前記ベース電極との間に設けられた第1半導体層と、前記エミッタ電極と前記ベース電極との間に設けられた第2半導体層とが、異なる半導体材料で形成されていること、(3)前記第1半導体層及び前記第2半導体層が正孔輸送材料又は電子輸送材料で形成されてなること、(4)前記エミッタ電極と前記ベース電極との間又は前記コレクタ電極と前記ベース電極との間に設けられた半導体層が、有機化合物で形成されていること、(5)前記コレクタ電極と前記ベース電極との間に設けられた半導体層の厚さT1と、前記エミッタ電極と前記ベース電極との間に設けられた半導体層の厚さT2との比(T1/T2)が、1/1〜10/1の範囲内であること、(6)前記エミッタ電極と当該エミッタ電極に隣接する半導体層との間に、電荷注入層を有すること、又は、(7)前記電荷注入層が、LiF、Ca等のアルカリ金属又はその化合物を含むこと、が好ましい。
【0015】
(第2のトランジスタ素子)
本発明の第2のトランジスタ素子は、エミッタ電極とコレクタ電極との間に、半導体層とシート状のベース電極が設けられたトランジスタ素子であって、少なくとも前記エミッタ電極と前記ベース電極との間又は前記コレクタ電極と前記ベース電極との間に暗電流抑制層が設けられていることを特徴とする。
【0016】
この第2のトランジスタ素子は、上記第1のトランジスタ素子のエミッタ電極−コレクタ電極間に例えば5Vの電圧Vcを印加したとき、エミッタ電極−ベース電極間に小さい電圧Vbを印加した場合又は電圧Vbを印加しない場合に、ベース電極−コレクタ電極間に動作に必要な電流成分以外の漏れ電流が流れ、ON/OFF比が低下することがあるという問題を解決したものであり、その目的は、半導体層中に薄いシート状のベース電極を挿入したトランジスタ素子において、動作に必要な漏れ電流を抑制してON/OFF比を向上させたトランジスタ素子を提供することにある。
【0017】
この発明によれば、少なくともエミッタ電極とベース電極との間又はコレクタ電極とベース電極との間に暗電流抑制層が設けられているので、その暗電流抑制層により、エミッタ電極−ベース電極間に小さい電圧Vbを印加した場合又は電圧Vbを印加しない場合に、ベース電極−コレクタ電極間にトランジスタ動作に必要な電流成分以外の漏れ電流(「暗電流」(スイッチOFF時に流れる電流)という。)が流れるのを効果的に抑制することができ、その結果、ON/OFF比を向上させることができる。なお、暗電流抑制層は、例えばエミッタ電極−ベース電極間に電圧Vbを印加しない場合の暗電流は効果的に抑制できるが、エミッタ電極−ベース電極間に電圧Vbを印加した場合のいわゆるON電流はあまり妨げないように機能する。
【0018】
本発明の第2のトランジスタ素子において、前記暗電流抑制層が、前記コレクタ電極と前記ベース電極との間に設けられていることを特徴とする。また、前記暗電流抑制層と前記ベース電極とが隣接して設けられていることを特徴とする。これらの発明によれば、暗電流抑制層がコレクタ電極とベース電極との間に設けられていることにより、暗電流が流れるのを効果的に抑制することができ、その結果、ON/OFF比を向上させることができる。
【0019】
本発明の第2のトランジスタ素子において、(イ)前記暗電流抑制層が、有機系絶縁層又は無機系絶縁層であること、(ロ)前記暗電流抑制層が、有機系半導体層又は無機系半導体層であること、(ハ)前記暗電流抑制層が、酸化ケイ素又は酸化アルミニウムで形成されていること、(ニ)前記暗電流抑制層が、前記ベース電極の化学反応によって形成されていること、(ホ)前記暗電流抑制層の厚さが、20nm以下であること、又は、(ヘ)前記エミッタ電極と前記ベース電極との間又は前記コレクタ電極と前記ベース電極との間に設けられた半導体層が、有機化合物で形成されていること、が好ましい。
【0020】
(トランジスタ素子の製造方法)
本発明のトランジスタ素子の製造方法は、エミッタ電極とコレクタ電極との間に半導体層及びシート状のベース電極が設けられ、少なくとも前記エミッタ電極と前記ベース電極との間又は前記コレクタ電極と前記ベース電極との間に暗電流抑制層を形成する上記第2のトランジスタ素子の製造方法であって、前記ベース電極を化学反応させることにより、前記暗電流抑制層を形成することを特徴とする。
【0021】
本発明のトランジスタ素子の製造方法において、前記ベース電極を形成した後に当該ベース電極の一部を酸化させて前記暗電流抑制層を形成すること、又は、前記ベース電極を形成した後に当該ベース電極を加熱処理して前記暗電流抑制層を形成すること、が好ましい。これらの発明によれば、暗電流抑制層を容易に形成することができ、漏れ電流を抑制してON/OFF比を向上させたトランジスタ素子を容易に提供することができる。
【0022】
(電子デバイス)
本発明の電子デバイスは、上記本発明の第1のトランジスタ素子をスイッチング素子として有するもの、又は、上記本発明の第2のトランジスタ素子をスイッチング素子として有するもの、であることが好ましい。本発明は、本発明の第1又は第2のトランジスタ素子をスイッチング素子として、例えば有機EL素子と組み合わせた電子デバイスとすることができる。
【0023】
これらの発明によれば、上記第1又は第2のトランジスタ素子が低電圧で大電流変調が可能であることから、例えば有機ELのスイッチング素子である駆動トランジスタとして好ましく組み合わせてなる電子デバイスを提供できる。
【0024】
(発光素子)
本発明の第1の発光素子は、上記本発明の第1のトランジスタ素子のベース電極とコレクタ電極との間に有機EL層を有し、当該有機EL層が少なくとも発光層を1層以上含むことを特徴とし、又、本発明の第2の発光素子は、上記本発明の第2のトランジスタ素子のベース電極とコレクタ電極との間に有機EL層を有し、当該有機EL層が少なくとも発光層を1層以上含むことを特徴とする。
【0025】
近年、実用的な性能を示す有機発光トランジスタとしては、縦型の有機SITを用いたものが知られている(工藤一浩、「有機トランジスタの現状と将来展望」、応用物理、第72巻、第9号、第1151頁〜第1156頁、2003年)が、その性能は未だ十分とはいえず、今後さらなる性能の向上が課題とされている。本発明の発光素子は、ベース電極とコレクタ電極との間に有機EL層を有し、その有機EL層が少なくとも1層以上の発光層を含むので、大電流による面状発光が可能になる。しかも、その場合、従来のSIT構造のようなベース電極の微細パターニングが不必要であるとともに、低電圧で大電流変調が可能であり、さらにON/OFF比を向上させることができるので、簡単な構造からなる実用的な発光素子を提供できる。
【0026】
本発明の第1及び第2の発光素子において、(a)前記有機EL層が、正孔輸送層、電子輸送層、正孔注入層及び電子注入層から選ばれる1又は2以上の層を有すること、又は、(b)前記有機EL層が、励起子ブロック層を有すること、が好ましい。
【0027】
(ディスプレイ)
本発明のディスプレイは、上記本発明の発光素子が、基板上に形成されていることを特徴とする。この発明によれば、実用的なディスプレイとなる。
【発明の効果】
【0028】
本発明の第1のトランジスタ素子によれば、シート状のベース電極はベース電圧Vbで加速された弾道電子又は弾道正孔を容易に透過することができる範囲の厚さで全面に形成されるので、形成された全面で電荷が著しく加速され、しかも加速された電荷がベース電極を容易に透過することができる。その結果、本発明の第1のトランジスタ素子は、バイポーラトランジスタと同じような電流増幅作用を安定して得ることができる。
【0029】
本発明の第2のトランジスタ素子によれば、暗電流抑制層により、エミッタ電極−ベース電極間に小さい電圧Vbを印加した場合又は電圧Vbを印加しない場合に、暗電流が流れるのを効果的に抑制することができるので、ON/OFF比を向上させることができ、トランジスタとしてのコントラストを向上させることができる。
【0030】
また、本発明の第2のトランジスタ素子の製造方法によれば、暗電流抑制層を容易に形成することができ、漏れ電流を抑制してON/OFF比を向上させたトランジスタ素子を容易に提供することができる。
【0031】
また、本発明の電子デバイスによれば、上記第1又は第2のトランジスタ素子が低電圧で大電流変調が可能であることから、例えば有機ELのスイッチング素子である駆動トランジスタとして好ましく組み合わせてなる電子デバイスを提供できる。
【0032】
また、本発明の発光素子によれば、上記第1又は第2のトランジスタ素子を構成するベース電極とコレクタ電極との間に有機EL層を有し、その有機EL層が少なくとも1層以上の発光層を含むので、大電流による面状発光が可能になる。しかも、その場合、従来のSIT構造のようなベース電極の微細パターニングが不必要であるとともに、低電圧で大電流変調が可能であり、さらにON/OFF比を向上させることができるので、簡単な構造からなる実用的な発光素子を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の第1のトランジスタ素子の一例を示す模式的な断面図である。
【図2】コレクタ電圧に対するコレクタ電流の変化を示すグラフである。
【図3】コレクタ電流の変化に対するベース電流の変化の比率(電流増幅率(hFE))を示すグラフである。
【図4】ベース電極の厚さ以外は図2及び図3で測定したトランジスタ素子と同じ構成のものを用いた場合において、変調電流量Ic(A)及び電流増幅率hFE(B)の、ベース電極の膜厚依存性を示したグラフである。
【図5】ベース電極の厚さを変化させた際における電流透過率αを示したグラフである。
【図6】ベース電極の形成材料を変更した場合の、エミッタ電極からの注入電流(A)と、コレクタ電極への到達電流(B)とに対するベース電圧依存性を示すグラフである。
【図7】本発明のトランジスタ素子のエネルギーダイアグラムである。
【図8】本発明の第2のトランジスタ素子の一例を示す模式的な断面図である。
【図9】本発明の第2のトランジスタ素子の他の一例を示す模式的な断面図である。
【図10】図8の第2のトランジスタ素子の場合におけるON電流とOFF電流の経路を示したものである。
【図11】図9の第2のトランジスタ素子の場合におけるON電流とOFF電流の経路を示したものである。
【図12】暗電流抑制層として酸化ケイ素膜を形成した場合でのON電流と、ON/OFF比の実験結果を示すグラフである。
【図13】暗電流抑制層が形成されていない場合のコレクタ電流のグラフを示したものである。
【図14】暗電流抑制層を自然酸化により形成した後のコレクタ電流のグラフを示したものである。
【図15】大気環境中に放置した時間と、ON/OFF比の関係である。
【図16】第1のトランジスタ素子のベース電極とコレクタ電極との間に有機EL層を有し、その有機EL層が少なくとも発光層を1層以上含む発光素子の一例を示す模式断面図である。
【図17】第2のトランジスタ素子のベース電極とコレクタ電極との間に有機EL層を有し、その有機EL層が少なくとも発光層を1層以上含む発光素子の一例を示す模式断面図である。
【図18】図16に示す構成の発光素子の実験例であり、コレクタ電圧Vcとして一定の電圧を印加しながらベース電圧Vbを変化させたときのEL輝度の変化を示すグラフである。
【図19】本発明のトランジスタ素子を用いた有機ELのスイッチング構造を示す模式的な断面図である。
【図20】コプラナー型デバイスにトータル電圧VDDを印加しながらベース電圧Vbを印加したときの、電流経路を示す模式図である。
【図21】図19に示すコプラナー型の直列デバイスにおける、輝度変調特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明のトランジスタ素子及びその製造方法並びに発光素子及びディスプレイについて、第1のトランジスタ素子、第2のトランジスタ素子、第2のトランジスタ素子の製造方法、発光素子及びディスプレイの順で説明する。なお、これらの発明は、それぞれの技術的特徴を有すれば、種々の変形が可能であり、以下に具体的に示す実施形態に限定されるものではない。
【0035】
(第1のトランジスタ素子)
図1は、本発明の第1のトランジスタ素子の一例を示す模式的な断面図である。本発明の第1のトランジスタ素子10は、図1に示すように、エミッタ電極3とコレクタ電極2との間に、半導体層5(5A,5B)とシート状のベース電極4が設けられている。この半導体層5は、詳しくは、コレクタ電極2とベース電極4との間に設けられた第1半導体層5Aと、エミッタ電極3とベース電極4との間に設けられた第2半導体層5Bとを有している。なお、符号1は、基板を表している。こうした形態からなる第1のトランジスタ素子10は、縦型のトランジスタ素子でありながら、グリッドやストライプ等の微細電極のパターニングが必要ないという利点がある。
【0036】
この第1のトランジスタ素子の具体例としては、例えば、厚さ100nmの透明ITO電極をコレクタ電極2とし、その上に、n型有機半導体であるペリレン顔料(Me−PTC、平均厚さ500nm)からなる第1半導体層5Aと、酸化ケイ素からなる厚さ2.5nm又は5nmの暗電流抑制層6と、アルミニウムからなる平均厚さ20nmのベース電極4と、フラーレン(C60、平均厚さ100nm)からなる第2半導体層5Bと、銀からなる平均厚さ30nmのエミッタ電極3とを、真空蒸着等の成膜手段でその順に積層した。ON電流とOFF電流は、エミッタ電極−コレクタ電極間にコレクタ電圧Vcを5V印加し、さらにエミッタ電極−ベース電極間にベース電圧Vbを印加したときと、印加しないときの、コレクタ電流Ic及びベース電流Ibの変化量を測定して行った。
【0037】
図2に示すように、ベース電圧Vbが印加されないとき(Vb=0)は、エミッタ電極−コレクタ電極間にほとんど電流が流れないが、ベース電圧Vbの印加によって大幅に電流量が増加し、電流が変調されていることがわかる。そして、図2に示すように、Vc=5V及びVb=3Vのときの電流密度は、350mA/cmに達しており、この電流密度は例えば有機ELを数千cd/m発光させるのに十分な大きな電流量である。一般的に、FET構造の場合には、ソース・ドレイン電圧、ゲート電圧ともに数十ボルトを要することからも、本発明に係る第1のトランジスタ素子10が低電圧で大電流変調を実現できていることが容易に理解できる。また、このとき、ベース電極4は半導体層5に対して直接接触しているにもかかわらず、ほとんどベース電極4への電流の流入が起こらない。その結果、図3に示すように、コレクタ電流の変化に対するベース電流の変化の比率、すなわち電流増幅率(hFE)は1を超え、最大で170に達していた。このように本発明の第1のトランジスタ素子は、見かけ上パイポーラトランジスタと同様の電流増幅型のトランジスタ素子として有効に機能することが確認できた。
【0038】
すなわち、第1のトランジスタ素子10は、エミッタ電極3とコレクタ電極2との間に半導体層5(5A,5B)が設けられ、且つその半導体層5中にシート状ベース電極4が設けられているので、図2及び図3に示すような本発明の第1のトランジスタ素子10のトランジスタ性能は、エミッタ電極3とコレクタ電極2との間にコレクタ電圧Vcを印加し、さらにエミッタ電極3とベース電極4と間にベース電圧Vbを印加すれば、そのベース電圧Vbの作用により、エミッタ電極3から注入された電荷(電子又は正孔)が著しく加速されてベース電極4を透過し、コレクタ電極2に到達するという原理に基づくものである。すなわち、ベース電圧Vbの印加によってエミッタ電極−コレクタ電極間に流れる電流を増幅させることができる。そして、この第1のトランジスタ素子10では、シート状のベース電極4はベース電圧Vbで加速された弾道電子又は弾道正孔を容易に透過することができる範囲の厚さで全面(図1においては所定の有効幅Wのことである。)に形成されるので、形成された全面で電荷が著しく加速され、しかも加速された電荷がベース電極4を容易に透過することができる。したがって、本発明の第1のトランジスタ素子10によれば、バイポーラトランジスタと同じような電流増幅作用を安定して得ることができる。
【0039】
以下に、本発明の第1のトランジスタ素子を構成する各層及び各電極について説明する。
【0040】
(基板)
図1においては、基板上に本発明の第1のトランジスタ素子が形成されているが、その基板1の種類や構造は特に限定されるものではなく、積層する各層の材質等により適宜決めることができ、例えば、Al等の金属、ガラス、石英又は樹脂等の各種の材料からなるものを用いることができる。後述する本発明に係る発光素子のように、光を基板1側から出射させるボトムエミッション構造の有機発光素子の場合には、透明又は半透明になる材料で基板が形成されることが好ましいが、光をエミッタ電極3側から出射させるトップエミッション構造の有機発光素子を作製した場合には、必ずしも透明又は半透明になる材料を用いる必要はなく、不透明材料で基板を形成してもよい。
【0041】
特に、有機EL素子の基板として一般的に用いられているもの、すなわち、有機EL素子を強度的に支持しているものを好ましく用いることができる。基板の材質は、用途に応じてフレキシブルな材質や硬質な材質等が選択される。具体的に用いることができる材料としては、例えば、ガラス、石英、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリメタクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリエステル、ポリカーボネート等を挙げることができる。また、基板1の形状としては、枚葉状でも連続状でもよく、具体的な形状としては、例えばカード状、フィルム状、ディスク状、チップ状等を挙げることができる。
【0042】
(電極)
本発明の第1のトランジスタ素子を構成する電極としては、コレクタ電極2、エミッタ電極3及びベース電極4があり、図1に示すように、通常、コレクタ電極2は基板1上に設けられ、ベース電極4は半導体層5(第1半導体層5A及び第2半導体層5B)内に埋め込まれるように設けられ、エミッタ電極3はコレクタ電極2と対向する位置に半導体層5とベース電極4を挟むように設けられる。電極材料としては、金属、導電性酸化物、導電性高分子等の薄膜が用いられる。なお、基板1とコレクタ電極2との間にはバリア層や平滑層等が設けられていてもよい。
【0043】
例えば本発明の第1のトランジスタ素子を構成する半導体層5が有機化合物からなる電子輸送層である場合、コレクタ電極2の形成材料としては、例えば、ITO(インジウム錫オキサイド)、酸化インジウム、IZO(インジウム亜鉛オキサイド)、SnO、ZnO等の透明導電膜、金、クロムのような仕事関数の大きな金属、ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリアルキルチオフェン誘導体、ポリシラン誘導体のような導電性高分子等を挙げることができる。一方、エミッタ電極3の形成材料としては、アルミ、銀等の単体金属、MgAg等のマグネシウム合金、AlLi、AlCa、AlMg等のアルミニウム合金、Li、Caをはじめとするアルカリ金属類、それらアルカリ金属類の合金のような仕事関数の小さな金属等を挙げることができる。
【0044】
一方、本発明の第1のトランジスタ素子を構成する半導体層5が有機化合物からなる正孔輸送層である場合には、上記のコレクタ電極2の形成材料と上記のエミッタ電極3の形成材料とは逆になる。
【0045】
また、ベース電極4は半導体層5の構成材料とショットキー接触を形成するので、ベース電極4の形成材料としては、上記コレクタ電極2やエミッタ電極3に用いられる電極と同様の電極を挙げることができる。ベース電極4は、エミッタ電極3から供給された電荷をコレクタ電極2側の第1半導体層5A内に強制的に供給するように作用するので、ベース電極4の形成材料としては、必ずしも第1半導体層5Aに電荷を注入し易い材料である必要はない。しかし、コレクタ電極2側の第1半導体層5Aが正孔注入層又は正孔注入材料を有する層である場合には、仕事関数が小さい材料でベース電極4を形成することが好ましく、一方、その第1半導体層5Aが電子注入層又は電子注入材料を有する層である場合には、仕事関数が大きい材料でベース電極4を形成することが好ましい。こうしたベース電極4の形成材料としては、例えば、アルミ、銀等の単体金属、MgAg等のマグネシウム合金、AlLi、AlCa、AlMg等のアルミニウム合金、Li、Caをはじめとするアルカリ金属類、LiF等のアルカリ金属類の合金のような仕事関数の小さな金属等を好ましく使用することができるが、電荷(正孔、電子)注入層とショットキー接触を形成することが可能であれば、ITO(インジウム錫オキサイド)、酸化インジウム、IZO(インジウム亜鉛オキサイド)、SnO、ZnO等の透明導電膜、金、クロムのような仕事関数の大きな金属、ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリアルキルチオフェン誘導体、ポリシラン誘導体のような導電性高分子等も使用することができる。
【0046】
なお、後述する本発明に係る発光素子のように、光を基板1側から出射させるボトムエミッション構造の有機発光素子の場合には、少なくともコレクタ電極2を透明又は半透明の材料で形成することが好ましく、一方、光をエミッタ電極3側から出射させるトップエミッション構造の有機発光素子を作製する場合には、ベース電極4とエミッタ電極3を透明又は半透明の材料で形成することが好ましい。こうした構成により、光取り出し効率を向上させることができ。透明又は半透明の電極材料としては、ITO(インジウム錫オキサイド)、酸化インジウム、IZO(インジウム亜鉛オキサイド)、SnO、ZnO等の透明導電膜が好ましく用いられる。
【0047】
上記の各電極のうちコレクタ電極2とエミッタ電極3については、真空蒸着、スパッタリング、CVD等の真空プロセスあるいは塗布により形成され、その膜厚は使用する材料等によっても異なるが、例えば10nm〜1000nm程度であることが好ましい。これらの膜厚は、厚さ方向の試料断面を透過型電子顕微鏡(TEM)により5箇所の平均値を測定したものである。
【0048】
図4は、ベース電極4の厚さ以外は上記図2及び図3で測定したトランジスタ素子と同じ構成のものを用いた場合において、変調電流量Ic(図4(A))及び電流増幅率hFE(図4(B))の、ベース電極4の膜厚依存性を示したグラフである。また、図5は、ベース電極4の厚さを変化させた際における電流透過率αを示したグラフである。図5に示す電流透過率αは、[Ic(コレクタ電極に到達した電荷)]/[Ic+Ib(エミッタ電極から注入された電荷)]により表される。
【0049】
図4に示すように、変調電流量Ic及び電流増幅率hFEは、いずれもベース電極4が厚くなるのにともなって急激に減少しており、十分なトランジスタ性能を得るためには、薄いベース電極4が必要不可欠であることが分かる。このとき、コレクタ電極2に到達した電荷に対する、エミッタ電極3から注入された電荷の比率である、電流透過率αを算出すると、図5に示すように、ベース電極4の厚さが40nm以下では、99%程度の非常に高い値を示していることが分かった。これは、エミッタ電極3からの電荷がほとんど全てベース電極4を透過していることを意味しており、その結果、パイポーラトランジスタと同様の電流増幅作用が得られているものと考えられる。
【0050】
したがって、ベース電極4については、その厚さを40nm以下とすることが好ましいが、図4に示すように、80nm未満とした場合であっても使用可能である。40nm以下の厚さはベース電圧Vbで加速された弾道電子又は弾道正孔を半導体層内に容易に透過させる厚さであるので、シート状のベース電極4の全面で電荷(電子又は正孔)が著しく加速され、しかも加速された電荷がベース電極4を容易に透過することができる。なお、ベース電極4は半導体層5中に切れ目なく(穴やクラック等の欠陥部なく)設けられていればよいので、その厚さの下限は特に限定されないが、通常、1nm程度であればよい。ベース電極4の厚さは、厚さ方向の試料断面を透過型電子顕微鏡により測定した。
【0051】
図6は、ベース電極4の形成材料を変更した場合の、エミッタ電極3からの注入電流(図6(A))と、コレクタ電極2への到達電流(図6(B))とに対するベース電圧依存性を示すグラフである。なお、このグラフは、ベース電極4の厚さを40nmとした以外は上記図2及び図3で測定したトランジスタ素子と同じ構成のものを用いて測定したものである。図6に示すように、ベース電圧Vbを変化させた場合であっても、エミッタ電極3からの注入電流とコレクタ電極2への到達電流とはほぼ同じであり、電流透過率α[Ic/(Ic+Ib)]は、ベース電極4の材料をLiF/Al、Au、Agとした各試料において、0.99の高確率でベース電極4を透過していることがわかった。
【0052】
また、図6に示すように、ベース電極4の材料をLiF(厚さ0.5nm)/Al(厚さ100nm)、Au(厚さ30nm)、Ag(厚さ30nm)とした各試料を対比すると、電流値の大きさが異なり、LiF/Alが最も高く、Ag、Auの順に低くなっていた。この結果から、ベース電極4の材料により電流値の大きさはことなるが、電流透過率αに対する材料依存性は小さいことがわかった。
【0053】
ベース電極4がシート状に設けられ、且つその厚さが所定の厚さ以下である場合に高い電流透過率αを示すメカニズムは必ずしも明確ではないが、現時点では以下のメカニズムが考えられる。
【0054】
本発明においては、ベース電極4がシート状に設けられている場合(すなわちベース電極4が穴やクラック等の欠陥部を含まない場合)、エミッタ電極3から注入された電荷がシート状のベース電極4全面で加速され、エミッタ電極3から注入された電荷のほとんど全てが弾道電子又は弾道正孔となってベース電極4を透過すると考えられる。その結果、コレクタ電極に到達した電荷の量がエミッタ電極から注入された電荷の量とほぼ同じになって、全体として著しい電流増幅作用を示すと考えられる。一方、本発明者の研究によれば、ベース電極4がシート状に設けられていない試料(すなわちベース電極4が穴やクラック等の欠陥部を含む試料)を作製した場合においては、結果として、コレクタ電極に到達した電荷の量はエミッタ電極から注入された電荷の量よりも少なく、ON/OFF比も小さくなることを確認している。その原因としては、その欠陥部ではエミッタ電極3から注入された電荷を加速できず、その部分の電荷はベース電極4を透過し難くなり、各部位での電流量の増加にムラが生じてしまうと考えられる。
【0055】
また、ベース電極4が所定の厚さ以下である場合に高い電流透過率αを示すが、これは、エミッタ電極3から注入された電荷がベース電極4を弾道電子又は弾道正孔として透過することによるものと考えられる。つまり、薄いベース電極4が、パイポーラトランジスタのベース層と同じような働き(すなわち、ベースへのキャリア流入を防ぎつつエミッタ電流の増加だけを引き起こすという作用)を受け持つと考え、図7に示すエネルギーダイアグラムを提案する。図7からもわかるように、エミッタ電極−ベース電極間に印加されたベース電圧Vbによって、エミッタ電極3からC60からなる第2半導体層5Bへの電荷注入電流が増大し、その電荷がベース電極4に落ち込むことなく、Me−PCTからなる第1半導体層5Aの伝導帯に高い確率で到達してコレクタ電極2に収集された結果、大きなコレクタ電流変調が得られたものと考えられる。電荷がベース電極4中を弾道的に透過できる距離(電子又は正孔の平均自由行程)は一般的には数nmから数十nm程度と言われているが、これは上記40nm以下の厚さが好ましいという本発明の実験結果とほぼ一致する。
【0056】
また、ベース電極4を凹凸形状を有するものとすることができる。この凹凸形状を有するベース電極4は、表面粗さが粗いベース電極ということもできるが、こうしたベース電極4は、所定の平均厚さのベース電極を形成した場合であっても薄いところと厚いところを有する。こうした構成からなるベース電極は、電流増幅作用を安定して得ることができる点で好ましい。なお、凹凸形状からなる表面形状は、接触式表面形状測定装置(メーカー:SLOAN THECHNOLOGY、型番:DEKTAK3)又は、AFM(Seiko Instruments, SPI3800)で評価した。
【0057】
例えば、コレクタ電極2とベース電極4との間に設けられた第1半導体層5Aを、結晶性の有機化合物で真空蒸着した場合には、ベース電極4が形成される側の第1半導体層5Aの表面は凹凸形状となっている。そのため、その結晶性の第1半導体層5A上に設けられたベース電極4も凹凸形状で形成される。凹凸形状を有するベース電極4は所定の平均厚さのベース電極4を形成した場合であっても薄いところと厚いところを有するが、本発明によれば、ベース電極4が凹凸形状を有する場合に、電流増幅作用を安定して得ることができる。
【0058】
結晶性の半導体層を構成する材料としては、上記図2又は図3の結果を示すトランジスタ素子の構成材料である、n型有機半導体であるペリレン顔料(Me−PTC)を好ましく挙げることができる。また、他の材料としては、後述の化学式で示すC60、NTCDA、PTCDA若しくはPh−Et−PTCを挙げることができる。また、これら以外の有機化合物であってもよい。このn型有機半導体であるペリレン顔料(Me−PTC、厚さ400nm)を真空蒸着で形成した際の、ベース電極4側の表面は、X線回折法で測定した結果、明確な結晶性ピークが得られた。また、C60、NTCDA、PTCDA若しくはPh−Et−PTCにおいても、X線回折法で測定した結果、結晶性ピークが得られた。なお、上記図2又は図3の結果を示すトランジスタ素子の結晶性の半導体層5Aの表面粗さはその上に設けられるベース電極4の表面粗さに反映された。したがって、上記図2又は図3の結果を示すトランジスタ素子のベース電極4が所定の表面粗さ(凹凸形状)を有する場合に、電流増幅作用を安定して得ることができることを確認できた。
【0059】
なお、結晶性の半導体層の結晶粒径は、透過型電子顕微鏡で測定でき、その結晶粒径は、ベース電極4の厚さ以上又は厚さ程度の50nm又はそれ以上であった。このように、結晶性の第1半導体層5Aの結晶粒径をベース電極4の厚さ以上となるようにすれば、その第1半導体層5A上にベース電極4を形成することにより、凹凸形状を有するベース電極を容易に形成できる。結晶性の半導体層の表面粗さRzは、AFM(Seiko Instruments, SPI3800)で評価し、Me-PTCでは200nm〜400nm程度であり、NTCDAでは300nm〜500nmであり、C60では50nm〜100nmであった。Rzは、JIS B 0601に準拠した。
【0060】
また、ベース電極4が金属からなり、そのベース電極4の片面又は両面にベース電極5の酸化物薄膜が形成されているように構成することもできる。また、半導体層5(5A,5B)上に電極を成膜する場合は、電極成膜時にその半導体層5に加わるダメージを軽減するための保護層(図示しない)を半導体層5上に設けてもよい。保護層としては、例えばAu、Ag、Al等の半透明膜やZnS、ZnSe等の無機半導体膜等の蒸着膜又はスパッタ膜のように、成膜時にダメージを与え難いものが1〜500nm程度の厚さで予め成膜されることが好ましい。
【0061】
(半導体層)
本発明の第1のトランジスタ素子を構成する半導体層5としては、種々の半導体材料を例示でき、通常は電荷輸送特性の良い電荷輸送材料を例示できる。その形態としては、(i)コレクタ電極2とベース電極4との間に設けられた第1半導体層5Aと、エミッタ電極3とベース電極4との間に設けられた第2半導体層5Bとが、異なる半導体材料で形成されていること、(ii)第1半導体層5A及び第2半導体層5Bが正孔輸送材料又は電子輸送材料で形成されてなること、(iii)エミッタ電極3とベース電極4との間又はコレクタ電極2とベース電極4との間に設けられた半導体層5A,5Bのいずれもが、有機化合物で形成されていること、(iv)コレクタ電極2とベース電極4との間に設けられた第1半導体層5Aの厚さT1と、エミッタ電極3とベース電極4との間に設けられた第2半導体層5Bの厚さT2との比(T1/T2)が、1/1〜10/1の範囲内であること、好ましくは3/1〜7/1の範囲内であること、(v)エミッタ電極3と、エミッタ電極3に隣接する第2半導体層5Bとの間に、電荷注入層を有すること、又は、(vi)その電荷注入層が、LiF、Ca等のアルカリ金属又はその化合物で形成されていること、が好ましい。
【0062】
半導体層5(5A,5B)の形成材料としては、後述の実験例で用いたAlq、C60、NTCDA、PTCDA、Me−PTC、若しくはPh−Et−PTCを挙げることができ、また、アントラキノジメタン、フルオレニリデンメタン、テトラシアノエチレン、フルオレノン、ジフェノキノンオキサジアゾール、アントロン、チオピランジオキシド、ジフェノキノン、ベンゾキノン、マロノニトリル、ニジトロベンゼン、ニトロアントラキノン、無水マレイン酸若しくはペリレンテトラカルボン酸、又はこれらの誘導体等、電荷輸送材料として通常使用されるものを用いることができる。また、コレクタ電極2とベース電極4との間に設けられた第1半導体層5Aにおいては、後述する本発明の発光素子の説明欄で列記した発光層形成材料を用いてもよい。
【0063】
半導体層5(5A,5B)の電荷移動度は、なるべく高いことが望ましく、少なくとも、0.001cm/Vs以上であることが望ましい。また、コレクタ電極2側の第1半導体層5Aの厚さは、通常、300nm〜1000nm程度を挙げることができるが、好ましくは400nm〜700nm程度である。なお、その厚さが300nm未満の場合又は1000nmを超える場合は、トランジスタ動作を生じないことがある。一方、エミッタ電極3側の第2半導体層5Bの厚さは、第2半導体層5Bに比べて基本的に薄いことが望ましく、通常、500nm程度以下を挙げることができるが、好ましくは50nm〜150nm程度である。なお、その厚さが50nm未満の場合は、導通の問題が発生して歩留まりが低下することがある。
【0064】
コレクタ電極2とベース電極4との間に設けられる第1半導体層5Aの形成材料として、下記の各有機化合物を用いて実験を行った。実験は、厚さ100nmの透明ITO電極をコレクタ電極2とし、その上に、下記の5種の化合物(Alq、C60、NTCDA、PTCDA、Me−PTC)から選択した1種からなる第1半導体層5Aと、アルミニウムからなる平均厚さ20nmのベース電極4と、フラーレン(C60、平均厚さ100nm)からなる第2半導体層5Bと、銀からなる平均厚さ30nmのエミッタ電極3とを、真空蒸着等の成膜手段でその順に積層したトランジスタ素子を用いた。第1半導体層5Aの厚さは、Alq、C60においては100nmとし、NTCDA、PTCDA、Me−PTCにおいては100nmとした。
【0065】
こうして作製した5種のトランジスタ素子について、コレクタ電圧Vcを5Vとし、ベース電圧Vbを0V〜3Vの範囲で変調させた。出力変調特性の測定は、図2及び図3の場合と同様、エミッタ電極−コレクタ電極間にコレクタ電圧Vcを印加し、さらにエミッタ電極−ベース電極間にベース電圧Vbを印加した時の、コレクタ電流Ic及びベース電流Ibの変化量を測定して行った。また、コレクタ電流の変化に対するベース電流の変化の比率、すなわち電流増幅率(hFE)を算出した。表1は、その結果を示している。
【0066】
【化1】

【0067】
【化2】

【0068】
【表1】

【0069】
表1に示すように、C60からなる第2半導体層5Bに対して、AlqやC60からなる第1半導体層5Aを形成した場合には、十分な結果を得ることができなかった。また、NTCDAやPTCDAからなる第1半導体層5Aを形成した場合の電流増幅率(hFE)は、電流増幅が認められ、それぞれ15、46であった。一方、Me−PTCからなる第1半導体層5Aを形成した場合の電流増幅率(hFE)は、200という著しく高い値を示した。このように、本発明の第1のトランジスタ素子を構成する半導体層5(5A,5B)には、電荷輸送材料を用いることができるが、詳細には、材料の組み合わせにより高い電流増幅作用を生じさせることができる。そして、その組み合わせは、現時点では、図7に示すように、半導体材料のLUMOの位置が関係していると考えられるので、その点を考慮して組み合わせることが望ましい。
【0070】
表1には、コレクタ電圧Vcを5Vとし、ベース電圧VbのON電圧を3V、OFF電圧を0Vとしたときの、ON/OFF比の測定結果も併せて示した。表1に示したように、ON/OFF比は、NTCDAやPTCDAからなる第1半導体層5Aを形成した場合は、大きな値となり、それぞれ40、20であった。一方、Me−PTCからなる第1半導体層5Aを形成した場合のON/OFF比は、100という著しく高い値を示した。
【0071】
このように本発明の第1のトランジスタ素子は、見かけ上パイポーラトランジスタと同様の電流増幅型のトランジスタ素子として有効に機能することが確認できた。
【0072】
(第2のトランジスタ素子)
次に、本発明の第2のトランジスタ素子について説明する。図8は、本発明の第2のトランジスタ素子の一例を示す模式的な断面図であり、図9は、本発明の第2のトランジスタ素子の他の一例を示す模式的な断面図である。本発明の第2のトランジスタ素子20,30は、エミッタ電極3とコレクタ電極2との間に、半導体層5とシート状のベース電極4が設けられたトランジスタ素子であって、少なくともエミッタ電極3とベース電極4との間又はコレクタ電極2とベース電極4との間に、暗電流抑制層6,7が設けられている。図8においては、コレクタ電極2とベース電極4との間に暗電流抑制層6が設けられており、図9においては、コレクタ電極2とベース電極4との間に暗電流抑制層6が設けられ、さらにエミッタ電極3とベース電極4との間にも暗電流抑制層7が設けられている。なお、第2のトランジスタ素子は、上記第1のトランジスタ素子と比較して、暗電流抑制層が設けられている点が異なりその他の点は上記第1のトランジスタ素子と同じであるので、図8及び図9並びに以下の説明においては、同一の符号を用いてその説明を省略する。また、図8及び図9では基板は省略して図示している。
【0073】
図10は、図8の第2のトランジスタ素子20の場合におけるON電流とOFF電流の経路を示したものであり、図11は、図9の第2のトランジスタ素子30の場合におけるON電流とOFF電流の経路を示したものである。これらの第2のトランジスタ素子20,30は、上記第1のトランジスタ素子10のエミッタ電極−コレクタ電極間に例えば5Vのコレクタ電圧Vcを印加したとき、エミッタ電極−ベース電極間に小さいベース電圧Vbを印加した場合又はベース電圧Vbを印加しない場合(Vb=0V)にベース電極−コレクタ電極間に動作に必要な電流成分以外の漏れ電流が流れ、ON/OFF比が低下することがあるという問題を解決したものである、そして、上記のように、半導体層5中に形成された薄いシート状のベース電極4の一方又は両面に暗電流抑制層(6,7)を形成することにより、動作に必要な漏れ電流を抑制してON/OFF比を向上させたトランジスタ素子である。
【0074】
本発明の第2のトランジスタ素子20,30によれば、図10及び図11に示すように、少なくともエミッタ電極3とベース電極4との間又はコレクタ電極2とベース電極4との間に暗電流抑制層(6,7)が設けられているので、その暗電流抑制層により、エミッタ電極−ベース電極間に小さい電圧Vbを印加した場合又は電圧Vbを印加しない場合に、ベース電極−コレクタ電極間にトランジスタ動作に暗電流が流れるのを効果的に抑制することができ、その結果、ON/OFF比を向上させることができる。なお、暗電流抑制層6,7は、例えばエミッタ電極−ベース電極間に電圧Vbを印加しない場合の暗電流は効果的に抑制できるが、エミッタ電極−ベース電極間に電圧Vbを印加した場合のいわゆるON電流はあまり妨げないものを用いることが望ましい。
【0075】
暗電流抑制層6,7は、ベース電圧VbをOFFにした際に、コレクタ電圧Vcによって生じたエミッタ電流がベース電極4を透過しないように作用するので、図8に示すように少なくともコレクタ電極2とベース電極4との間に設けられる。なお、必要に応じてベース電極4の両面に暗電流抑制層7を設けることができる。また、形成する暗電流抑制層は、ベース電極4に隣接して(すなわち、ベース電極4に接触するように)設けられていることが好ましい。
【0076】
暗電流抑制層としては、ベース電極4に一様に形成されていることが好ましい。ここで、「一様に」とは、穴や切れ目がなく全面に形成されていることをいう。暗電流抑制層の厚さが薄すぎると、一様な暗電流抑制層を成膜し難いという難点があり、暗電流抑制層の厚さが厚すぎると、ベース電圧VbをON状態にしたときの電流も顕著に抑制されることがある。
【0077】
暗電流抑制層の形成材料としては、有機系絶縁層や無機系絶縁層を挙げることができるが、上記厚さで成膜できることと暗電流抑制層としての作用効果を奏することを条件に以下の具体例を挙げることができる。例えば、SiO、SiN、A1等の無機材料や、ポリクロロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリオキシメチレン、ポリビニルクロライド、ポリフッ化ビニリデン、シアノエチルプルラン、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルフェノール、ポリサルホン、ポリカーボネート、ポリイミド等の有機材料等を挙げることができる。なお、これらの形成材料は、単独で用いてもよいし、2種以上の材料を用いてもよい。
【0078】
また、暗電流抑制層の形成材料として、有機系半導体材料を用いてもよいし、無機系半導体材料を用いてもよい。これらの材料から、上記厚さで成膜できることと暗電流抑制層としての作用効果を奏することを条件に最適なものが選定される。これらの形成材料も上記同様、単独で用いてもよいし、2種以上の材料を用いてもよい。
【0079】
図12は、暗電流抑制層として酸化ケイ素膜を形成した場合でのON電流と、ON/OFF比の実験結果を示すグラフである。実験は、厚さ100nmの透明ITO電極をコレクタ電極2とし、その上に、Me−PTCからなる第1半導体層5A(厚さ400nm)と、アルミニウムからなる平均厚さ20nmのベース電極4と、フラーレン(C60、平均厚さ100nm)からなる第2半導体層5Bと、銀からなる平均厚さ30nmのエミッタ電極3とを、真空蒸着等の成膜手段でその順に積層したトランジスタ素子を用いた。なお、比較試料として、酸化ケイ素を設けないトランジスタ素子を作製した。
【0080】
前記の試料について、ON電流とOFF電流を測定した。測定は、エミッタ電極−コレクタ電極間にコレクタ電圧Vcを5V印加し、さらにエミッタ電極−ベース電極間にベース電圧Vbを印加したときに測定したコレクタ電流をON電流とし、印加しないときに測定したコレクタ電流をOFF電流とした。図12に示したように、暗電流抑制層である酸化ケイ素の厚さが5nmのときのON/OFF比は、約250であった。なお、このときのON電流は、酸化ケイ素膜を設けないときに比べて低下していたものの、厚さ2.5nmの酸化ケイ素膜を設けた場合と比べてあまり変化がなかった。こうしたことは、ON電流をあまり低下させずにON/OFFを向上させることができるので好ましい。
【0081】
図13及び図14は、暗電流抑制層を自然酸化により形成した場合のコレクタ電流の経時変化を示したものであり、図13は、暗電流抑制層が形成されていない場合のコレクタ電流のグラフを示したものであり、図14は、暗電流抑制層を自然酸化により形成した後のコレクタ電流のグラフを示したものである。実験は、厚さ100nmの透明ITO電極をコレクタ電極2とし、その上に、Me−PTCからなる平均厚さ400nmの第1半導体層5Aと、アルミニウムからなる平均厚さ20nmのベース電極4と、フラーレン(C60、平均厚さ100nm)からなる第2半導体層5Bと、銀からなる平均厚さ30nmのエミッタ電極3とを、真空蒸着等の成膜手段でその順に積層したトランジスタ素子を用いた。
【0082】
前記の試料について、エミッタ電極−コレクタ電極間にコレクタ電圧Vcを0V〜5Vまで印加し、さらにエミッタ電極−ベース電極間にベース電圧Vbを3V印加した場合と4V印加した場合に測定したコレクタ電流をON電流とし、印加しないときに測定したコレクタ電流をOFF電流とした。図13の結果は、上記トランジスタ素子を形成した直後に測定したものであり、ベース電極4の両面には暗電流抑制層6,7は生じていない場合のものである。一方、図14の結果は、上記トランジスタ素子を形成し、温度20〜25℃、湿度30〜70%の室内での大気環境中に37分間放置した後に測定したものであり、ベース電極4の両面には酸化アルミニウムからなる暗電流抑制層6,7が生じていた。このときの酸化アルミニウムは、アルミニウムからなるベース電極4の自然酸化膜であり、TEMによる厚さ測定により確認した。
【0083】
図13において、コレクタ電圧Vcが5Vで、ベース電圧Vbが0VのときのOFF電流は2.89mA/cmであったのに対し、図14において、コレクタ電圧Vcが5Vで、ベース電圧Vbが0VのときのOFF電流は0.0025mA/cmであり、ON/OFF比は、図13での36から、図14での330にまで著しく向上した。図15は、上記のように温度20〜25℃、湿度30〜70%の室内での大気環境中に放置した時間と、ON/OFF比の関係である。ON/OFF比は、放置時間が20分までは顕著に向上し、20分経過後に300を超える高い値で安定した。なお、酸化アルミニウム膜の厚さは、時間の経過とともに厚くなることが確認され、放置時間20分のときの酸化アルミニウムの厚さよりも、放置時間37分のときの酸化アルミニウムの厚さが厚かった。こうした結果は、上記図12での実験と合わせて考えれば、主にコレクタ電極2側に設けられた酸化アルミニウム膜の作用効果によるものと考えられる。
【0084】
この第2のトランジスタ素子におけるその他の構成、すなわち、各電極の形成材料や半導体層の形成材料等は、上記第1のトランジスタ素子の欄で説明したものと同じである。
【0085】
(トランジスタ素子の製造方法)
本発明のトランジスタ素子の製造方法は、上記第2のトランジスタ素子の製造方法に係るものであって、エミッタ電極3とコレクタ電極2との間に半導体層5(5A,5B)及びシート状のベース電極4が設けられ、少なくともエミッタ電極3とベース電極4との間又はコレクタ電極2とベース電極4との間に暗電流抑制層(6,7)を形成する方法である。そして、その特徴は、ベース電極4を化学反応させることにより、暗電流抑制層を形成する。こうした化学反応としては、図12〜図14の実験結果のところで示したように、ベース電極4を形成した後に該ベース電極4の一部(半導体層側に接する側の面)を酸化させて暗電流抑制層(6,7)を形成する方法、又は、ベース電極4を形成した後に該ベース電極4を加熱処理して暗電流抑制層(6,7)を形成する方法、を挙げることができる。こうした方法により、暗電流抑制層(6,7)を容易に形成することができ、漏れ電流を抑制してON/OFF比を向上させたトランジスタ素子を容易に提供することができる。
【0086】
なお、暗電流抑制層をコレクタ電極2側にのみ設ける場合には、第1半導体層5A上にベース電極4を形成した後、そのベース電極4上に酸化等の化学反応を防止することを目的の保護層を設ければ、上暗電流抑制層をコレクタ電極2側にのみ、ベース電極4の自然酸化膜もしくは加熱酸化膜を設けることができる。
【0087】
(電子デバイス)
本発明の電子デバイスは、上記本発明の第1のトランジスタ素子をスイッチング素子として有するもの、又は、上記本発明の第2のトランジスタ素子をスイッチング素子として有するもの、であることが好ましい。本発明は、第1又は第2のトランジスタ素子をスイッチング素子として、例えば有機EL素子と組み合わせた電子デバイスとすることができる。第1又は第2のトランジスタ素子が低電圧で大電流変調が可能であることから、例えば有機ELのスイッチング素子である駆動トランジスタとして好ましく組み合わせてなる電子デバイスを提供できる。
【0088】
本発明のトランジスタ素子をn型トランジスタとして用いる場合において、ベース電極4とコレクタ電極2との間に有機EL層を設け、ベース電極4を陰極として用いて電子デバイスを構成すれば、従来のように電子を注入し易いが酸化し易いアルカリ金属を陰極として用いなくても、有機EL層を構成する電荷輸送層中に電荷を効果的に注入することができるという優れた効果を奏する。
【0089】
(発光素子)
次に、発光素子について説明する。図16は、第1のトランジスタ素子のベース電極4とコレクタ電極2との間に有機EL層41を有し、その有機EL層41が少なくとも発光層42を1層以上含む発光素子40の一例を示す模式断面図である。この第1の発光素子40は、図16に示すように、例えば厚さ100nmの透明ITO電極をコレクタ電極2とし、その上に、CuPcからなる厚さ2nmの正孔注入層44と、NPDからなる厚さ30nmの正孔輸送層43と、Alq3からなる厚さ30nmの発光層42と、BCPからなる厚さ10nmの励起子ブロック層45と、n型有機半導体のペリレン顔料(Me−PTC、厚さ500nm)からなる電子輸送性の第1半導体層5Aと、アルミニウムからなる厚さ20nmのベース電極4と、フラーレン(C60、厚さ100nm)からなる第2半導体層5Bと、銀からなる厚さ30nmのエミッタ電極3とを、真空蒸着等の成膜手段でその順に積層したものである。
【0090】
また、図17は、第2のトランジスタ素子のベース電極4とコレクタ電極2との間に有機EL層41を有し、その有機EL層41が少なくとも発光層42を1層以上含む発光素子50の一例を示す模式断面図である。この第2の発光素子40は、図17に示すように、第1半導体層5Aとベース電極4との間に、酸化ケイ素からなる厚さ5nmの暗電流抑制層6を形成した他は、上記第1の発光素子40と同じ構成である。
【0091】
なお、図16及び図17に示す本発明の発光素子40,50のトランジスタとしての構成は、上記第1及び第2のトランジスタ素子の基本的な構成と同じであるので、既に説明した同じ構成については、同一の符号を用いて詳しい説明を省略する。また、図16及び図17に示す発光素子40,50を構成する有機EL層の構成材料の化学式を以下に示す。
【0092】
【化3】

【0093】
図18は、図16に示す構成の発光素子の実験例であり、コレクタ電圧Vcとして一定の電圧を印加しながらベース電圧Vbを変化させたときのEL輝度の変化を示すグラフである。図18に示すように、ベース電圧Vbの印加によって有機EL層にかかる電圧は減少しているにもかかわらず、EL輝度は増大し、Vc=12V、Vb=2.5Vの低電圧で、約100cd/mの輝度の変調を達成した。
【0094】
このように、本発明の発光素子は、トランジスタ素子の第1半導体層5Aとコレクタ電極2との間に有機EL層41を有し、全体としてその有機EL層41と同様の面状の積層構造となるので、面状の電流を変調できる。こうした構造の発光素子は、駆動素子であるトランジスタ素子と、有機EL素子を一度に作製できるだけでなく、駆動トランジスタの占有面積が実質ゼロとなることから開口率を大きくできるというメリットがある。近年において、有機FET構造でも発光が観測されるようになったが、まだその性能は低く、実用的な性能を示す有機発光トランジスタとしては、縦型の有機SITを用いたものが知られている。本発明の発光素子は、コレクタ電極2側に有機EL層を積層するだけで電流変調可能な発光素子を実現できた。しかも、本発明の発光素子は、中間電極等の微細パターニングが不必要であり、極めて実用的である。
【0095】
有機EL層41は、上記のように、少なくとも1層以上の発光層42を有し、さらに、正孔注入層44、正孔輸送層43、電子輸送層、及び電子注入層から選ばれる1又は2以上の層を有することが好ましい。図16及び図17の例では、発光層42のコレクタ電極2側に正孔輸送層43と正孔注入層44が設けられている。また、発光層42のベース電極4側には励起子ブロック層45が設けられている。この発光素子40,50はトランジスタ素子により多くの電荷が加速されて有機EL層41の発光層42に到達するので、ベース電極4からの電荷の注入は容易である。したがって、有機EL層41は必ずしも電荷注入層を有していなくてもよいという利点がある。そのため、従来のように電子を注入し易いが酸化し易いアルカリ金属を陰極として用いなくてもよいという効果がある。
【0096】
発光層42の形成材料としては、有機EL素子の発光層として一般的に用いられている材料であれば特に限定されず、例えば色素系発光材料、金属錯体系発光材料、高分子系発光材料等を挙げることができる。
【0097】
色素系発光材料としては、例えば、シクロペンタジエン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、トリフェニルアミン誘導体、オキサジアゾール誘導体、ピラゾロキノリン誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、ジスチリルアリーレン誘導体、シロール誘導体、チオフェン環化合物、ピリジン環化合物、ペリノン誘導体、ペリレン誘導体、オリゴチオフェン誘導体、トリフマニルアミン誘導体、オキサジアゾールダイマー、ピラゾリンダイマー等を挙げることができる。
【0098】
金属錯体系発光材料としては、例えば、アルミキノリノール錯体、ベンゾキノリノールベリリウム錯体、ベンゾオキサゾール亜鉛錯体、ベンゾチアゾール亜鉛錯体、アゾメチル亜鉛錯体、ポルフィリン亜鉛錯体、ユーロピウム錯体等、中心金属に、Al、Zn、Be等、又はTb、Eu、Dy等の希土類金属を有し、配位子にオキサジアゾール、チアジアゾール、フェニルピリジン、フェニルベンゾイミダゾール、キノリン構造等を有する金属錯体等を挙げることができる。
【0099】
高分子系発光材料としては、例えば、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリシラン誘導体、ポリアセチレン誘導体、ポリビニルカルバゾール、ポリフルオレノン誘導体、ポリフルオレン誘導体、ポリキノキサリン誘導体、及びそれらの共重合体等を挙げることができる。
【0100】
発光層42中には、発光効率の向上や発光波長を変化させる等の目的でドーピング剤等の添加剤を添加するようにしてもよい。ドーピング剤としては、例えば、ペリレン誘導体、クマリン誘導体、ルブレン誘導体、キナクリドン誘導体、スクアリウム誘導体、ポルフィリン誘導体、スチリル色素、テトラセン誘導体、ピラゾリン誘導体、デカシクレン、フェノキサゾン、キノキサリン誘導体、カルバゾール誘導体、フルオレン誘導体等を挙げることができる。
【0101】
正孔輸送層43の形成材料としては、フタロシアニン、ナフタロシアニン、ポリフィリン、オキサジアゾール、トリフェニルアミン、トリアゾール、イミダゾール、イミダゾロン、ピラゾリン、テトラヒドロイミダゾール、ヒドラゾン、スチルベン、ペンタセン、ポリチオフェン若しくはブタジエン、又はこれらの誘導体等、正孔輸送材料として通常使用されるものを用いることができる。また、正孔輸送層43の形成材料として市販されている、例えばポリ(3、4)エチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホネート(略称PEDOT/PSS、バイエル社製、商品名;Baytron P AI4083、水溶液として市販。)等も使用することができる。正孔輸送層43は、こうした化合物を含有した正孔輸送層形成用塗液を用いて形成される。なお、これらの正孔輸送材料は、上記の発光層42内に混ぜてもよいし、正孔注入層44内に混ぜてもよい。
【0102】
また、図16及び図17では、Me−PTCからなる第1半導体層5Aが電子輸送性の層であるので、別個に電子輸送層として設けていないが、必要に応じて発光層42のベース電極4側に設けてもよい。電子輸送層の形成材料としては、アントラキノジメタン、フルオレニリデンメタン、テトラシアノエチレン、フルオレノン、ジフェノキノンオキサジアゾール、アントロン、チオピランジオキシド、ジフェノキノン、ベンゾキノン、マロノニトリル、ニジトロベンゼン、ニトロアントラキノン、無水マレイン酸若しくはペリレンテトラカルボン酸、又はこれらの誘導体等、電子輸送材料として通常使用されるものを用いることができる。電子輸送層は、こうした化合物を含有した電子輸送層形成用塗液を用いて形成される。なお、これらの電子輸送材料は、上記の発光層42内に混ぜてもよいし、電子注入層内に混ぜてもよい。
【0103】
正孔注入層44の形成材料としては、例えば、発光層42の発光材料に例示した化合物の他、フェニルアミン系、スターバースト型アミン系、フタロシアニン系、酸化バナジウム、酸化モリブデン、酸化ルテニウム、酸化アルミニウムなどの酸化物、アモルファスカーボン、ポリアニリン、ポリチオフェンなどの誘導体等を挙げることができる。
【0104】
図16及び図17には含まれないが、必要であれば電子注入層を設けてもよい。電子注入層の形成材料としては、発光層の発光材料に例示した化合物の他、アルミニウム、フッ化リチウム、ストロンチウム、酸化マグネシウム、フッ化マグネシウム、フッ化ストロンチウム、フッ化カルシウム、フッ化バリウム、酸化アルミニウム、酸化ストロンチウム、カルシウム、ポリメチルメタクリレートポリスチレンスルホン酸ナトリウム、リチウム、セシウム、フッ化セシウム等のようにアルカリ金属類、及びアルカリ金属類のハロゲン化物、アルカリ金属の有機錯体等を挙げることができる。
【0105】
なお、上述した発光層や電荷輸送層等の有機層中には、必要に応じてオリゴマー材料又はデンドリマー材料の発光材料若しくは電荷輸送注入材料を含有させてもよい。
【0106】
上述した各層は、真空蒸着法によって成膜するか、あるいは、それぞれの形成材料をトルエン、クロロホルム、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン、ジオキサン等の溶媒に溶解又は分散させて塗布液を調整し、その塗布液を塗布装置等を用いて塗布又は印刷等することで形成される。
【0107】
励起子ブロック層45は、正孔ブロック層、電子ブロック層等として機能する層であり、キャリア(正孔、電子)のつきぬけを防止し、効率よくキャリアの再結合させるためのブロック層である。図16及び図17においては、トランジスタ素子がn型半導体材料で構成されているので、コレクタ電極2が陽極として作用する。その結果、コレクタ電極2から正孔が注入されるので、発光層42のベース電極4側の隣接面には正孔ブロック層としての励起子ブロック層45を形成することが好ましい。図16及び図17に示す発光素子では、励起子ブロック層45の形成材料として、BCP(1-ブロモ-3-クロロプロパン) を用いた。
【0108】
図16及び図17に示すBCPからなる励起子ブロック層45は、エネルギーダイアグラムにおいて、LUMOがMe−PTCとほぼ同じなのでMe−PTCからの電子をブロックしないが、HOMOがAlq3よりも高いのでAlq3からの正孔はブロックする。BCPの励起状態はAlq3の励起状態よりもエネルギーが高いので、Alq3で発生した励起子はBCPに拡散しない。
【0109】
なお、トランジスタ素子がp型半導体材料で構成され他場合には、コレクタ電極2が陰極として作用することになり、その結果、コレクタ電極2から電子が注入されるので、発光層42のベース電極4側の隣接面には電子ブロック層としての励起子ブロック層45を形成することが好ましい。
【0110】
(コプラナー型デバイス)
次に、トランジスタ素子を有機ELの駆動トランジスタとして用いたコプラナー型デバイスについて説明する。有機ELを用いたフレキシブルディスプレイでは、有機トランジスタによるアクティブマトリックス回路を構成する必要がある。単一ピクセルレベルでは、これまでに有機FETと有機ELとを組み合わせたものが報告されているが、大きな電流を流すことが難しい有機FETでは、数十ボルトの大きな電圧や、大電流をかせぐための広い櫛形電極が必要であったが、上述した本発明のトランジスタ素子は、低電圧で大電流変調が可能であることから、有機ELの駆動用トランジスタとして最適である。
【0111】
図19は、本発明のトランジスタ素子を用いた有機ELのスイッチング構造を示す模式的な断面図である。このコプラナー型デバイスは、同一のITO電極ガラス基板上に、第1半導体層5AであるMe−PTC(厚さ500nm)と、ベース電極4であるAl(厚さ20nm)と、第2半導体層5BであるC60(厚さ100nm)と、エミッタ電極3であるAg(30nm)とをその順で積層した構造を持つトランジスタ素子と、有機ELデバイスを並置し、トランジスタ素子のコレクタ電極2と重なるように有機ELの陰極であるLiF(厚さ0.5nm)/Al(厚さ100nm)を蒸着し接続した。有機ELデバイスとしては、同一のITO電極ガラス基板上に、CuPcからなる厚さ7nmの正孔注入層44と、NPDからなる厚さ40nmの正孔輸送層43と、Alq3からなる厚さ70nmの発光層42とをその順で積層した構造とした。
【0112】
図20は、コプラナー型デバイスにトータル電圧VDDを印加しながらベース電圧Vbを印加したときの、電流経路を示す模式図である。また、図21は、図19に示すコプラナー型の直列デバイスにおける、輝度変調特性を示すグラフである。これは、トータル電圧VDDを印加しながらベース電圧Vbを印加したときの、有機EL出力光強度の変調を輝度計で測定したものである。
【0113】
図21に示すように、トータル電圧14Vのときには、制御電圧わずか4Vで1200cd/m以上の輝度変調を得ることができた。また、トータル電圧VDDが12Vのときには、ベース電圧Vbが0のOFF状態における発光が目視では確認できないレベルに抑えられたため、完全なON/OFFを実現することができた。これらの電圧は、現在報告きれている有機FETと有機ELの組み合わせ素子よりもかなり低く、本発明のトランジスタ素子を用いることにより大幅な低電圧化を実現することができた。
【0114】
このように、本発明のトランジスタ素子は、その低電圧・大電流変調の特性から、有機ELの駆動用トランジスタとして高い性能を示すことが分かった。大電流変調が可能であるということは、一つのピクセル内におけるトランジスタの占有面積を小さくできることを意味しており、ディスプレイにおける開口率の向上につながる。そのような観点からも、本発明のトランジスタ素子はフレキシブルディスプレイの駆動用トランジスタとして期待できる。
【0115】
以上説明したように、本発明の発光素子は、ベース電極とコレクタ電極との間に設けた有機EL層による大電流面状発光が可能になり、しかも、その場合、従来のSIT構造のようなベース電極の微細パターニングが不必要であるとともに、低電圧で大電流変調が可能であり、さらにON/OFF比を向上させることができるので、簡単な構造からなる実用的な発光素子を提供できる。
【0116】
(ディスプレイ)
本発明のディスプレイは、上記本発明の発光素子を基板上に形成し、輝度の高いディスプレイとすることができる。基板は、上記第1のトランジスタ素子のところで説明した種々のものを用いることができる。また、フレキシブル基板としては、例えば、ガラス、石英、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリメタクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリエステル、ポリカーボネート等からなるフレキシブル基板を挙げることができる。また、基板の形状としては、枚葉状でも連続状でもよく、具体的な形状としては、例えばカード状、フィルム状、ディスク状、チップ状等を挙げることができる。
【符号の説明】
【0117】
1 基板
2 コレクタ電極
3 エミッタ電極
4 ベース電極
5,5A,5B 半導体層
6,7 暗電流抑制層
10,20 トランジスタ素子
40,50 発光素子
41 有機EL層
42 発光層
43 正孔輸送層
44 正孔注入層
45 励起子ブロック層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エミッタ電極とコレクタ電極との間に、結晶性の有機半導体層と厚さ40nm以下のベース電極がその順で設けられていることを特徴とするトランジスタ素子。
【請求項2】
前記有機半導体層が、前記エミッタ電極と前記ベース電極との間及び前記コレクタ電極と前記ベース電極との間に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のトランジスタ素子。
【請求項3】
前記ベース電極が、凹凸形状を有することを特徴とする請求項1又は2に記載のトランジスタ素子。
【請求項4】
前記有機半導体層の結晶粒径が、前記ベース電極の厚さ以上又は厚さ程度の大きさであって、前記ベース電極に凹凸形状を付与することができる大きさであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のトランジスタ素子。
【請求項5】
前記ベース電極が金属からなり、当該ベース電極の片面又は両面に当該ベース電極の酸化膜が形成されていることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載のトランジスタ素子。
【請求項6】
前記コレクタ電極と前記ベース電極との間に設けられた第1半導体層と、前記エミッタ電極と前記ベース電極との間に設けられた第2半導体層とが、異なる半導体材料で形成されていることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載のトランジスタ素子。
【請求項7】
前記第1半導体層及び前記第2半導体層が、正孔輸送材料又は電子輸送材料で形成されてなることを特徴とする請求項に記載のトランジスタ素子。
【請求項8】
前記コレクタ電極と前記ベース電極との間に設けられた半導体層の厚さT1と、前記エミッタ電極と前記ベース電極との間に設けられた半導体層の厚さT2との比(T1/T2)が、1/1〜10/1の範囲内であることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載のトランジスタ素子。
【請求項9】
前記エミッタ電極と当該エミッタ電極に隣接する半導体層との間に、電荷注入層を有することを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載のトランジスタ素子。
【請求項10】
前記電荷注入層が、LiF、Ca等のアルカリ金属又はその化合物を含むことを特徴とする請求項に記載のトランジスタ素子。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載のトランジスタ素子をスイッチング素子として有することを特徴とする電子デバイス。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれかに記載のトランジスタ素子のベース電極とコレクタ電極との間に有機EL層を有し、当該有機EL層が少なくとも発光層を1層以上含むことを特徴とする発光素子。
【請求項13】
前記有機EL層が、正孔輸送層、電子輸送層、正孔注入層及び電子注入層から選ばれる1又は2以上の層を有することを特徴とする請求項12に記載の発光素子。
【請求項14】
前記有機EL層が、励起子ブロック層を有することを特徴とする請求項12又は13に記載の発光素子。
【請求項15】
請求項1214のいずれかに記載の発光素子が、基板上に形成されていることを特徴とするディスプレイ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2010−135809(P2010−135809A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−501(P2010−501)
【出願日】平成22年1月5日(2010.1.5)
【分割の表示】特願2006−78237(P2006−78237)の分割
【原出願日】平成18年3月22日(2006.3.22)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2006年3月22日 社団法人応用物理学会発行の「2006年(平成18年)春季 第53回応用物理学関係連合講演会予稿集 第3分冊」に発表
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成15年度新エネルギー・産業技術総合開発機構「高効率有機デバイスの開発事業」委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受けるもの)
【出願人】(504176911)国立大学法人大阪大学 (1,536)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【出願人】(000005016)パイオニア株式会社 (3,620)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】